説明

高圧放電ランプおよび高圧放電ランプの点灯方法

【課題】ほぼ矩形波状の交流電流で点灯する場合、放電管の黒化ができるだけ僅かになるようにする。
【解決手段】電極(2)の直径は、点弧相の終了後の高圧放電ランプの安定な点灯状態中に予め定められた定格電力およびほぼ矩形波状の交流電流によってランプを点灯する場合電極(2)内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の一定値を有するように設定される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放電管と、その中に封入された放電媒体と、この放電媒体内にガス放電を発生させるための円柱状の電極とを備えた高圧放電ランプに関する。
【0002】本発明は、さらに、放電管と、その中に封入された放電媒体と、この放電媒体内にガス放電を発生させるための電極とを有する高圧放電ランプを、ほぼ矩形波状の交流電流によって点灯する高圧放電ランプの点灯方法に関する。
【0003】
【従来の技術】ほぼ正弦波状の系統周波数の交流電流を有するいわゆる従来形の安定器で点灯するように設計された高圧放電ランプを、約100Hz〜500Hzの範囲の周波数を持つほぼ矩形波状の交流電流を有するいわゆる電子安定器で点灯することは知られている。電子安定器でこの高圧放電ランプを点灯することは従来形の安定器で点灯する場合に比べて種々の利点を有している。例えば、ランプ電圧または系統電圧の変動に対してランプ電力の調整によって良好な色一定性が保証され、フリッカをなくすことができる。
【0004】冒頭で述べた高圧放電ランプおよび高圧放電ランプの点灯方法は例えば欧州特許出願公開第1045622号および第0908926号明細書に開示されている。前者の公開明細書には50Hz〜5kHzの周波数を持つ矩形波状の交流電流で無水銀メタルハライドランプを点灯する安定器が記載されている。後者の公開明細書にはナトリウムおよびスカンジウムをベースとする封入物が封入され270Hzの矩形波パルスで点灯されるメタルハライドランプが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、ほぼ矩形波状の交流電流で点灯する場合、放電管の黒化ができるだけ僅かになる高圧放電ランプを提供することにある。
【0006】さらに、本発明の課題は、点灯中の放電管の黒化ができるだけ僅かになるようにほぼ矩形波状の交流電流で高圧放電ランプを点灯する高圧放電ランプの点灯方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】高圧放電ランプに関する課題は、本発明によれば、電極の直径が、点弧相の終了後の高圧放電ランプの安定な点灯状態中に予め定められた定格電力およびほぼ矩形波状の交流電流によってランプを点灯する場合電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の一定値を有するように設定されていることによって解決される。
【0008】高圧放電ランプの点灯方法に関する課題は、本発明によれば、高圧放電ランプの点弧相の終了後の高圧放電ランプの安定な点灯状態中に、電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の一定値を有するように、高圧放電ランプがほぼ矩形波状の交流電流を与えられることによって解決される。
【0009】本発明の特に有利な実施態様は従属請求項に記載されている。
【0010】本発明による高圧放電ランプは、放電管と、その中に封入された放電媒体と、この放電媒体内にガス放電を発生させるための円柱状の電極とを有している。電極の直径は、点弧相の終了後の高圧放電ランプの安定な点灯状態中に予め定められた定格電力およびほぼ矩形波状の交流電流によってランプを点灯する場合電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の範囲内の一定値を有するように設定される。交流電流の実効値は高圧放電ランプの定格データによって決定され、電流密度は交流電流の実効値と電極断面積との商から得られるので、上述した積の前記範囲データは本発明による高圧放電ランプの円柱状の電極の直径を設定するための指令を意味している。電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の範囲内の一定値を有する場合にのみ、矩形波状の交流電流で高圧放電ランプを点灯する場合の放電管の黒化が最小になる。ランプの電極直径が、前記積が5A4/3mm-2よりも小さい値を有するように設定される場合、電極材料の高いスパッタに起因して放電管の黒化が増大する。しかし、ランプの電極直径が、前記積が10A4/3mm-2よりも大きな値を有するように設定される場合、電極材料の高い蒸発に起因して放電管の黒化が増大する。
【0011】既に上記において述べたように、本発明による高圧放電ランプの電極は円柱状に形成される。これは、少なくとも放電空間内に突入する電極部分が均一な太さつまり一様な直径を有することを意味している。電極の放電側端部はしかし丸く形成されていてもよい。このような電極は通常ピン電極または棒電極と呼ばれている。この電極の熱特性を最適化するために、電極の放電側端部は電極棒に対して同軸に配置された電極コイルを備えることができる。
【0012】本発明の優れた実施態様によれば、高圧放電ランプの電極は高融点材料(例えばタングステン)から構成された円柱状のピンから形成されている。この場合、ピンの太さつまり直径は、点弧相の終了後の高圧放電ランプの安定な点灯状態中に定格電力およびほぼ矩形波状の交流電流によってランプを点灯する場合電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の一定値を有するように設定され、これによって点灯中の放電管の黒化ができるだけ僅少になる。
【0013】本発明の他の優れた実施態様によれば、高圧放電ランプの電極はそれぞれ円柱状の電極ピンから構成され、この電極ピンがその放電側端部に電極ピンに対して同軸に配置された電極コイルを備えている。放電管の黒化をできるだけ僅少にするために、電極ピンの直径は、点弧相の終了後の高圧放電ランプの安定な点灯状態中にほぼ矩形波状の交流電流によってランプを点灯する場合電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の一定値を有するように設定される。
【0014】放電管の黒化をできるだけ僅少にするために、本発明による高圧放電ランプの点灯方法において、電極を流れるほぼ矩形波状の交流電流は、高圧放電ランプの点弧相の終了後の高圧放電ランプの安定な点灯状態中、電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の一定値を有するように設定される。前記積が5A4/3mm-2よりも小さい値を有するように、電極が低いほぼ矩形波状の交流電流を与えられる場合、電極材料のスパッタに起因して放電管の黒化が増大する。他方、前記積が10A4/3mm-2よりも大きい値を有するように、電極が高いほぼ矩形波状の交流電流を与えられる場合、電極材料の蒸発に起因して放電管の黒化が増大する。
【0015】矩形波状の交流電流の周波数が50Hz〜500Hzの値であると有利である。当該範囲(50Hz〜500Hz)の周波数よりも高い周波数(つまり500Hzよりも高い周波数)の場合、放電媒体内に音響共振の問題が発生する。さらに、当該範囲の周波数よりも高い周波数の場合、費用のかかる電子回路が必要とされる。当該範囲の周波数よりも低い周波数(つまり50Hzよりも低い周波数)の場合、逆にランプの放電アークのフリッカが見えるようになる。
【0016】図2には高圧放電ランプの1つの型の例として、ほぼ正弦波状の系統周波数の交流電流で点灯する場合の放電管の黒化(特性線1)と、50Hzの周波数を持つほぼ矩形波状の交流電流で点灯する場合の放電管の黒化(特性線2)との比較を示す。図2の特性図の横軸はランプの電流の実効値を相対的単位で示し、縦軸(対数尺度)は放電管の黒化を同じく相対的単位で示す。特性線1における黒化の最小値が黒化の基準値として、その時の電流の実効値が電流の実効値の基準値として用いられている。両特性線は特定の電流に対して最小の黒化挙動を示している。ランプを点灯する電流が小さすぎると、電極材料のスパッタに起因して放電管の黒化が増大する。しかし、ランプを点灯する電流が大きすぎると、電極材料の蒸発に起因して放電管の黒化が増大する。矩形波状の交流電流で高圧放電ランプを点灯する場合、矩形波状の交流電流で点灯する場合の電流の実効値が、正弦波状の系統周波数の交流電流で点灯する場合の特性線1で示された黒化最小時の電流の実効値の約56%であると、放電管の黒化の絶対最小値が達成されることが明らかである。
【0017】寿命期間中の光束減少が少なくなるように経験的に最適化される高圧放電ランプを正弦波状の系統周波数の交流電流で点灯する場合の放電管の黒化の最小はまさにこのランプにその定格電流を与える場合に生じることが明らかである。正弦波状の系統周波数の交流電流で点灯される公知の高圧放電ランプにおいて、電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積は10A4/3mm-2よりも大きい値を有している。
【0018】放電管の黒化を減少させるために、本発明によれば、電極内の電流密度は、電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の一定値を有するように設定される。これは、好ましくはピン電極として形成され頭部に電極コイルを備えることができる円柱状の電極を有する本発明による高圧放電ランプにおいて、電極ピン直径の適当な設定によって達成される。
【0019】
【発明の実施の形態】以下において本発明を複数の優れた実施例に基づいて詳細に説明する。図1は高圧放電ランプの全ての実施例に当てはまる構成の概略図を示す。全ての実施例においてランプの構成はほぼ同じである。ランプはその寸法とその点灯データのみが異なるだけである。
【0020】図1に示された高圧放電ランプは両側を密封された放電管1を有している。この放電管1は例えば石英ガラスまたは酸化アルミニウムセラミックスのような光透過性材料から構成されている。放電管1の内部にはイオン化可能な放電媒体が気密に封入されている。この放電媒体は主要成分として金属ハロゲン化物およびさらに希ガスまたは水銀を含んでいる。放電媒体内にガス放電を発生させるために、2つの同種に形成された電極2が使われ、これらの電極2は放電管1内にその軸線方向に対向して配置されている。各電極2は円柱状の電極ピン2aから構成されており、この電極ピン2aは放電側端部に電極ピン2aに対して同軸に配置された電極コイル2bを備えている。放電管1は光透過性の外管3によって包囲されている。電極2はそれぞれ放電管端部1a内に気密に封着されたリード4を介してランプの電気接触片5に接続されている。
【0021】本発明の第1実施例は70Wの電力入力すなわち定格電力を有するメタルハライドランプである。このランプの電極ピン2aは0.41mmの直径を有している。このランプは120Hzのほぼ矩形波状の交流電流によって点灯される。ランプの点弧相の終了後、ランプがその定格電力で点灯される準安定な平衡点灯状態が達成されると、交流電流の実効値は1Aになり、電極内の電流密度は7.6A/mm2になる。力率は約1であり、ランプ電圧は70Vである。従って、電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積は7.6A4/3mm-2になる。
【0022】本発明の第2実施例は150Wの電力入力すなわち定格電力を有するメタルハライドランプである。このランプの電極ピン2aは0.62mmの直径を有している。このランプは120Hzのほぼ矩形波状の交流電流によって点灯される。ランプの点弧相の終了後、ランプがその定格電力で点灯される準安定な平衡点灯状態が達成されると、交流電流の実効値は1.8Aになり、電極内の電流密度は6A/mm2になる。力率は約1であり、ランプ電圧は83.3Vである。電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積は従って7.3A4/3mm-2になる。
【0023】本発明の第3実施例は150Wの電力入力すなわち定格電力を有するメタルハライドランプである。このランプの電極ピン2aは0.33mmの直径を有している。このランプは120Hzのほぼ矩形波状の交流電流によって点灯される。ランプの点弧相の終了後、ランプがその定格電力で点灯される準安定な平衡点灯状態が達成されると、交流電流の実効値は0.75Aになり、電極内の電流密度は8.8A/mm2になる。力率は約1であり、ランプ電圧は200Vである。従って、電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積は8.0A4/3mm-2になる。
【0024】本発明の第4実施例は150Wの電力入力すなわち定格電力を有する無水銀メタルハライドランプである。このランプの電極ピン2aは0.72mmの直径を有している。このランプは120Hzのほぼ矩形波状の交流電流によって点灯される。ランプの点弧相の終了後、ランプがその定格電力で点灯される準安定な平衡点灯状態が達成されると、交流電流の実効値は2.5Aになり、電極内の電流密度は6.1A/mm2になる。力率は約1であり、ランプ電圧は60Vである。従って、電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積は8.3A4/3mm-2になる。
【0025】本発明の第5実施例は250Wの電力入力すなわち定格電力を有するメタルハライドランプである。このランプの電極ピン2aは0.88mmの直径を有している。このランプは120Hzのほぼ矩形波状の交流電流によって点灯される。ランプの点弧相の終了後、ランプがその定格電力で点灯される準安定な平衡点灯状態が達成されると、交流電流の実効値は3Aになり、電極内の電流密度は4.9A/mm2になる。力率は1であり、ランプ電圧は83.3Vである。従って、電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積は7.1A4/3mm-2になる。
【0026】本発明の第6実施例は400Wの電力入力すなわち定格電力を有するメタルハライドランプである。このランプの電極ピン2aは1.1mmの直径を有している。このランプは120Hzのほぼ矩形波状の交流電流によって点灯される。ランプの点弧相の終了後、ランプがその定格電力で点灯される準安定な平衡点灯状態が達成されると、交流電流の実効値は4Aになり、電極内の電流密度は4.2A/mm2になる。力率は1であり、ランプ電圧は100Vである。従って、電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積は6.7A4/3mm-2になる。
【0027】本発明は上記において詳細に説明した実施例に限定されない。例えば、電極は高融点材料(例えばタングステン)から構成され電極コイルを備えていないピン電極として形成されていてもよい。この場合、ピンの太さつまり直径は、電極内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の一定値を有するように設定される必要がある。
【0028】さらに、本発明の適用は矩形波状の交流電流の特殊な周波数に限定されない。ほぼ矩形波状の交流電流に対して50Hz〜500Hzの範囲の周波数が選定されると好ましい。
【0029】さらに、本発明は、図1に概略的に示された両側を密閉された両口金形高圧放電ランプに限定されない。放電管の形状および外管の口金は本発明にとっては重要ではない。特に本発明は片側を密閉された放電管を有する高圧放電ランプおよび片口金形放電ランプにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】高圧放電ランプの構成を示す概略図
【図2】電流の実効値−放電管の黒化特性図
【符号の説明】
1 放電管
1a 放電管端部
2 電極
2a 電極ピン
2b 電極コイル
3 外管
4 リード
5 接触片

【特許請求の範囲】
【請求項1】 放電管(1)と、その中に封入された放電媒体と、この放電媒体内にガス放電を発生させるための円柱状の電極(2)とを備えた高圧放電ランプにおいて、電極(2)の直径が、点弧相の終了後の高圧放電ランプの安定な点灯状態中に予め定められた定格電力およびほぼ矩形波状の交流電流によってランプを点灯する場合電極(2)内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の一定値を有するように設定されていることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】 電極(2)がそれぞれ棒状の電極ピン(2a)から構成され、この電極ピン(2a)がその放電側端部に電極ピン(2a)に対して同軸に配置された電極コイル(2b)を備え、電極ピン(2a)の直径が、点弧相の終了後の高圧放電ランプの安定な点灯状態中にほぼ矩形波状の交流電流によってランプを点灯する場合電極(2)内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の一定値を有するように設定されていることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】 放電管(1)と、その中に封入された放電媒体と、この放電媒体内にガス放電を発生させるための電極(2)とを有する高圧放電ランプを、ほぼ矩形波状の交流電流によって点灯する高圧放電ランプの点灯方法において、高圧放電ランプの点弧相の終了後の高圧放電ランプの安定な点灯状態中に、電極(2)内の電流密度と交流電流の実効値の三乗根との積が5A4/3mm-2と10A4/3mm-2との間の一定値を有するように、高圧放電ランプがほぼ矩形波状の交流電流を与えられることを特徴とする高圧放電ランプの点灯方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2003−22782(P2003−22782A)
【公開日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−175260(P2002−175260)
【出願日】平成14年6月17日(2002.6.17)
【出願人】(391045794)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユア エレクトリツシエ グリユーランペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (15)
【氏名又は名称原語表記】PATENT−TREUHAND−GESELLSCHAFT FUR ELEKTRISCHE GLUHLAMPEN MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】