説明

高圧流体用途向け交差型流路を備える筺体

第1の軸を画定し、第1の平面の上方境界(36)および第2の平面の下方境界(38)によって境界を接する拡大直径(32b)の領域を有する第1の穿孔(32a,32b)と、第2の軸を画定し、交差領域(44)を介して第1の穿孔(32a,32b)と交差する第2の穿孔(42)とを備える高圧流体用途で使用するための筺体(30)。交差領域(44)は、交差領域(44)の天井を画定し、拡大直径(32b)の領域の上方境界(36)と交差する第1の実質的に平坦な面(54)と、第1の実質的に平坦な面(56)に対向し、交差領域(44)の床を画定し、拡大直径(32b)の領域の下方境界(38)と交差する第2の実質的に平坦な面(56)とを含む。平坦な面が最大円周応力の領域と(すなわち、第1の穿孔の拡大直径領域の上方境界および下方境界と)整列すると、それらは交差部(44)で重大な応力を引き起こすものとして作用しない。本発明の別の態様では、第1の穿孔は、拡大直径の領域を有する必要はなく、交差領域は第1の穿孔の円周に対して接線方向面を有し、その結果、交差領域は円周応力の領域に交差しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差型穿孔または流路を備える、高圧流体用途で使用するための筺体に関する。具体的には、本発明は、流路の交差領域での筺体の形状に関する。本発明は、自動車用途向け高圧ポンプの分野での用途を有するが、その分野に限定されるわけではない。具体的には、本発明は、高圧の穿孔間に成形された交差部を有するコモンレール式圧縮点火(ディーゼル)内燃機関エンジン用のポンプ組立体の一部に関するが、それに限定されるわけではない。
【背景技術】
【0002】
交差型流路を有する工学技術構成要素を設計し、作動するときにしばしば出会う1つの問題は、流路が圧力下にあるとき、流路間の交差部または移行部で応力集中が生じることである。例えば、ポンプなどの油圧応用では、流路は、流路の壁に作用して高い応力集中を生成する高圧流体を運搬し、それにより交差部近傍または交差部で疲労による構成要素の損傷が生じることがある。コモンレール式燃料ポンプなどのいくつかの応用では、生成された応力は、ポンプ内に生成された燃料の圧力がかなり高いことにより、極端に高くなることがある。
【0003】
図1(a)は、コモンレール式ディーゼルエンジンでの使用向け既知のポンプ組立体の部分を示す。ポンプ組立体が盲穴12を備えるポンプ筺体10を含み、使用中、ポンププランジャ(図示せず)が、駆動装置(図示せず)の影響を受けて盲穴12内部で往復運動をする。プランジャおよびその穴12は、ポンプ筺体10を通って同軸方向に延在し、穴の上方領域が燃料用のポンプ室14を画定する。燃料は、相対的に低い圧力で、入口逆止弁(図示せず)の制御の下で入口流路16を通ってポンプ室14に配送される。燃料は、プランジャが穴12内で往復運動をするにつれて、ポンプ室14内で加圧され、圧力が所定の水準に達すると、全体的に符号18で参照される出口流路に、穴12まで横方向に延在する出口弁(図示せず)を介して配送される。出口流路18はプランジャ穴12に凹所20で交差し、凹所20は、穴の残部に沿った直径に比較して拡大直径を有する。出口流路18は、燃料噴射システムの下流コモンレールに加圧された燃料を配送する。
【0004】
圧送サイクル中に、ポンプ室14内に周期的に生成される高圧力により、前述の型のポンプ組立体内部に起こり得る1つの問題は、プランジャ穴12および20と出口通路18との間の交差領域での増加した圧力による部品の高圧疲労である。プランジャが穴12内で往復運動し、燃料がポンプ室14内で高水準まで圧縮されると、脈動性張力がポンプ筺体10内で発生し、それがクラックの成長の原因になることがある。脈動性張力はポンプ筺体10内の2つの主な影響を有し、その影響とは、特にポンプ室14近傍のプランジャ穴12および20の周辺の周りに作用する円周応力(換言すれば、フープ応力)、およびプランジャ穴12および20の長さに沿って作用する軸方向応力である。
【0005】
流体流路間の交差部における応力集中が、1つの流路の端部で交差部を成形することによって、例えば交差部を円弧状にして、交差部での材料の尖った特徴および薄い領域を減らすことによって低減され得ることがすでに示されている。図1(b)は、ポンプ組立体の横断面を示して、出口流路18とプランジャ穴凹所20との間の交差部の円弧形状を図示している。その交差部端部で、出口流路18は円錐面22を含み、円錐22とプランジャ穴凹所20との間の混合(blend)半径24で終結する。
【0006】
出願人に付与された欧州特許第06256052号は、出口流路と高圧コモンレール内のプランジャ穴との間で使用され、出口流路がプランジャ穴に出会う場所の応力集中をさらに低減することができるより複雑な形状の交差部を説明している。その解決策は、全体的に矩形形状のプランジャ穴に向かってフレア形状に広がる交差領域を提案しており、フレア形状とプランジャ穴との間の移行部を滑らかにするためにフレア上に、ある半径が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの手法は、一定の圧力水準で作動する高圧ポンプ用途では成功したが、現在のコモンレール式ポンプに要求されるますます高い圧力下では、交差領域での応力集中は、疲労問題を大きく減少させるほど低減されていない。
【0008】
本発明の目的は、高圧燃料ポンプを提供し、より一般的には、交差流路間の応力集中が既知の解決策と比較してさらに低減される高圧流体用途向け筺体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、第1の軸を画定し、第1の平面の上方境界および第2の平面の下方境界によって画定される境界を有する拡大直径の領域を有する第1の穿孔と、第2の軸を画定し、交差領域を介して第1の穿孔と交差する第2の穿孔とを備える、高圧流体用途で使用するための筺体が提供される。交差領域が、交差領域の天井を画定し、拡大直径領域の上方境界と交差する第1の実質的に平坦な面と、第1の実質的に平坦な面に対向し、交差領域の床を画定し、拡大直径領域の下方境界と交差する第2の実質的に平坦な面とを含む。
【0010】
第1の実質的に平坦な面および第2の実質的に平坦な面が、それぞれ上方境界および下方境界に実質的に90度で交差して、それぞれ上方境界および下方境界の一方の面と整列するようになることが好ましい。したがって平坦な面は互いに平行である。このようにして平坦な面が最大円周応力の領域と(すなわち、拡大直径領域の上方境界および下方境界と)整列し、交差部で重大な応力を引き起こすものとして作用しない。
【0011】
交差領域は、第1の穿孔の円周に対して接線を形成する、第1の接線方向面およびこれに対向する第2の接線方向面を含むことができる側壁を有する。加えて、または別法として、交差領域は、交差領域の側壁を画定する、互いに対向する第1の円弧状面および第2の円弧状面を含むことができる。
【0012】
第1の円弧状面および対向する第2の円弧状面のそれぞれが、第1の接線方向面および対向する第2の接線方向面の一方に対して接線を形成することが好ましい。
本発明は、燃料ポンプ組立体、例えば主ポンプ筺体向けポンプ頭部での具体的な用途を有し、その用途では、第1の穿孔がポンプのプランジャを受けるための穴であり、第2の穿孔が、使用中、高圧燃料をプランジャ穴からポンプ出口(例えば、出口流路)まで運搬するための流路である。この場合、拡大直径領域はプランジャ穴凹所を形成し、その凹所内に燃料を加圧するためのポンプ室が画定される。交差部が、従来技術で知られているようにプランジャ穴凹所の壁に割り込むのではなく、むしろ、プランジャ穴凹所の境界と整列する上方平坦面および下方平坦面によって形成されることができると認識することにより、集中円周応力の領域が交差部によって避けられ、したがって部品の疲労および損傷がかなり低減され得る。
【0013】
プランジャ穴凹所の深さが出口流路の直径と実質的に同じであり、それによりポンプ室の死容積が既知の配置に比較して低減されることが追加の利点である。
別の実施形態では、交差領域が先細りにされてよく、先細りの方向は、第1の実質的に平坦な面および第2の実質的に平坦な面が、それぞれ拡大直径領域の上方境界および下方境界との交差部で末広がりになるようなものである。別法として、先細りの方向は、第1の実質的に平坦な面および第2の実質的に平坦な面が、それぞれ拡大直径領域の上方境界および下方境界との交差部で収束するようなものである。
【0014】
好ましくは、第1の実質的に平坦な面および第2の実質的に平坦な面が、略三角形の形状であり、すなわちそれらが端と端で連結された3つの辺を有して、たとえ辺が正確にまっすぐではないにしても、三辺の多角形を形成する。例えば、第1の実質的に平坦な略三角形状面および第2の実質的に平坦な略三角形状面のそれぞれが、上方境界および下方境界のそれぞれ一方に結合する底辺と、第2の穿孔の端部と交差する、底辺に対向する頂点とを有することができる。
【0015】
それぞれ第1の穿孔の第1の軸および第2の穿孔の第2の軸が互いに交差することが好都合であるが、しかしこのようになる必要はない。
本発明の特に好ましい実施形態では、燃料ポンプ組立体のための筺体が提供され、第1の穿孔が、ポンプのプランジャを受けるための穴であり、第2の穿孔が、使用中、高圧燃料をプランジャ穴からポンプ出口まで運搬するための流路である。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、第1の軸を画定する第1の穿孔と、第2の軸を画定し、交差領域を介して第1の穿孔と交差する第2の穿孔とを備える高圧流体用途で使用するための筺体が提供される。交差領域が、第1の穿孔の円周に対して接線を形成する第1の接線方向面およびこれに対向する第2の接線方向面によって画定される側壁を含む。第1の実質的に平坦な面が交差領域の天井を画定し、第1の実質的に平坦な面に対向する第2の実質的に平坦な面が、交差領域の床を画定する。
【0017】
一実施形態では、側壁が、第1の円弧状面および対向する第2の円弧状面をさらに含み、それぞれが第1の接線方向面および対向する第2の接線方向面のそれぞれ一方に対して接線を形成する。
【0018】
この配置では、交差領域は第1の穿孔の円周に対する接線であるので、交差領域は第1の穿孔の円周応力に干渉しない。
本発明の第1の態様の好ましい、および/または任意の特徴が、単独で組み入れられることができ、または本発明の第2の態様に適切に併せて組み入れることができることが理解されるであろう。
【0019】
次に、本発明の好ましい実施形態が添付の図面を参照して、例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)は、既に説明された、高圧燃料向け出口穿孔とプランジャ穴凹所との間の交差領域を図示する、コモンレール式燃料ポンプの既知のポンプ組立体の一部の横断面図である。図1(b)は、線A−Aに沿った、ポンプ組立体の同じ部分の横断面図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、図1(a)及び図1(b)と比較した、高圧燃料向け出口穿孔とプランジャ穴凹所との間の交差領域を図示する本発明の第1の実施形態のポンプ組立体の一部の横断面図である。
【図3】図2(a)および図2(b)の交差領域の斜視図である。
【図4】図1(a)および1(b)の既知のポンプ組立体の、出口穿孔との交差領域内のプランジャ穴の拡大凹所の展開図である。
【図5】図4と比較した、図2(a)および図2(b)のポンプ組立体の、出口穿孔を有する交差領域内のプランジャ穴の展開図である。
【図6】本発明の第2の実施形態のプランジャ穴と出口穿孔との間の交差領域の横断面図である。
【図7】図6の交差領域の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明における「上方(upper)」、「下方(lower)」および「側面(side)」ならびに配向の意味を有する他の用語に対する言及は、限定する意図はなく、添付の図面に示された部品の配向に言及するのみである。
【0022】
本発明は、高圧流体を運搬する2つの穿孔が筺体内の交差領域内部で互いに交差する場所で、高圧流体用途に適用可能である。
本発明の1つの具体的な実施形態は、コモンレール式燃料噴射システム用の燃料ポンプ組立体に存する。図2(a)、図2(b)および図3を参照すると、ポンプ組立体が、ポンプ組立体のプランジャ(図示せず)を受けるための穴32を備えるポンプ頭部の形態の筺体30を含む。当業者ならよく知るように、プランジャが、使用中、駆動装置の影響を受けてプランジャ穴32内で往復運動をするように配置される。典型的には、ポンプ頭部は組立体の主ポンプ筺体(図示せず)に取り付けられる。
【0023】
プランジャ穴は2つの別々の領域、すなわち、均一な直径の下方穴領域32aおよびプランジャ穴凹所と言及される、拡大直径の上方穴領域32bを含む。プランジャ穴凹所32bは上方円錐形流路33と連結し、流路33の内側面が、ポンプ組立体の入口弁(図示せず)用の弁座を画定する。上方縁部が円錐形流路33とプランジャ穴凹所32bとの間に画定され、下方縁部がプランジャ穴凹所32bと下方穴領域32aとの間に画定されて、その結果、上方縁部がプランジャ穴凹所32bの上方境界36を画定し、下方縁部がプランジャ穴凹所32bの下方境界38を画定する。プランジャ穴凹所は、上方境界36と下方境界38との間に画定された深さDを有する。プランジャ穴凹所32bの拡大直径は、典型的には、プランジャ穴が筺体30内部に形成される方法の結果として生じ、既知のポンプ組立体の特徴である。
【0024】
低圧力の燃料を受け取るポンプ室40は、プランジャ穴凹所32bの内部に画定され、使用中、プランジャが往復運動するとその内部で燃料が高水準まで加圧される。ポンプの使用中、燃料は入口流路41を通ってポンプ室40に配送され、ポンプの行程中にポンプ室40内で加圧され、ポンプの行程では、プランジャがプランジャ穴内部の最下方位置(行程の底部)からプランジャ穴内部の最上方位置(行程の頂部)まで移動する。
【0025】
ポンプ室40からの出口穿孔42は、プランジャ穴凹所32bと連通し、使用中、ポンプ室40内で加圧された燃料を、下流コモンレール(図示せず)と連通するポンプ出口(図示せず)まで運搬する。出口穿孔42は、プランジャ穴に垂直であり、プランジャ穴凹所の深さDと実質的に同じである最小直径dを有する。本発明は、特に、出口穿孔42が、出口穿孔42とプランジャ穴凹所との間の交差領域44を介してプランジャ穴凹所と連通する方法に関する。
【0026】
図2(a)の断面図に示すように、交差領域44は円弧形状の一対の対向する面46および48(円弧状面と称される)を含むように成形され、それらの面は出口穿孔42の端部に設けられる。図2(b)の断面図では、円弧状面の一方だけが見える。出口穿孔42から離れたそれらの端部では、円弧状面46および48は、対応する一対の対向する面50および52に接線(tangent)で結合する。さらに、対向する面50および52はプランジャ穴凹所32bの円周面に接線で交差して(したがって、それらは接線方向面50および52と称される)、その結果、円弧状面46および48ならびに接線方向面50および52は、交差領域44の対向する側壁を共に画定する。
【0027】
交差領域44は、三角形様の形状の一対の対向する平坦な面54および56をさらに含み、その中の一方のみが図2(a)の断面図に見られる。一方の第1の三角形様面54が、交差領域44の天井を画定し、一方の第2の三角形様面56が交差領域44の床を画定する。図3の交差部44の斜視図は、円弧状面46および48、接線方向面50および52、ならびに平坦な面54および56の配置をより詳細に図示する。各三角形様面は、その底辺54aがプランジャ穴凹所32bの上方境界36および下方境界38のそれぞれ1つに実質的に90度で結合し、底辺の反対側のその頂点54bは円弧形状が開始する場所で穿孔42の端部に結合するように配向される。
【0028】
三角形様面54および56は3つのまっすぐな辺を有する正確な三角形ではなく、具体的には、底辺54aが、プランジャ穴凹所32bの円周面に結合し、その結果、それらが結合する場所で円弧を形成することが理解されよう。それにもかかわらず、面54および56は、端から端までつながった3つの線分によって閉じられて、三辺を持った多角形を形成し、その結果、三角形様の形状を有する。
【0029】
上述の形状を有するので、穿孔42の端部とプランジャ穴凹所32bとの間の交差領域44は穿孔42の軸の周りに回転方向に対称的ではなく、プランジャ穴軸および穿孔軸を通る平面に沿って、ならびに前述の平面に対して90度で穿孔軸に交差する平面によって鏡面対称になる。
【0030】
既知のポンプ組立体および本発明の比較可能な交差領域をそれぞれ示す図1と図2を比較すると、本発明は、交差領域44の円弧形状面46および48、接線方向面50および52、ならびに三角形様面54および56によって、従来技術のものとはかなり異なることを理解することができる。図1では、交差領域が、出口穿孔18の端部の円錐形面22とプランジャ穴凹所20との間に円周上に連続する混合半径24を含み、混合半径24はプランジャ穴凹所20自体に侵入している。対照的に本発明では、交差領域44は、2つの別々の円弧状面46および48、ならびにプランジャ穴凹所32bに対する2つの接線方向面50および52を含み、交差領域44の端部で混合半径は存在せず、しかし平坦な面54および56を介してプランジャ穴凹所20の上方境界および下方境界と正確に整列する交差領域が存在する。
【0031】
図4は図1の既知のポンプのプランジャ穴12および20の展開図を示し、図5は本発明のプランジャ穴32aおよび32bの展開図を示す。これらの図面を比較すると、本発明のプランジャ穴凹所32bは既知のポンプ組立体のプランジャ穴凹所20に比較して深さが浅いことを理解することができる。さらに、交差領域の平坦な面54および56が、プランジャ穴凹所32bの上方境界36および下方境界38と整列され、その結果、平坦な面54および56はその領域内の円周応力の面と整列するが、その円周応力の面に交差することはない。交差領域44の平坦な面54および56をプランジャ穴凹所の境界36および38に、したがって円周応力の面と整列させることにより、その交差部で応力が生じる影響はまったくない。これは図1の既知のポンプ組立体と対照的であり、図1では出口穿孔18の端部で円弧状面24がプランジャ穴凹所20の境界と整列されず、その結果、この領域の円周応力が増加する(図1および4に×で示される)。プランジャ穴12内への出口穿孔18は、したがって、既知の技術では応力集中部として作用し、それが高圧疲労による部品の損傷につながることがある。
【0032】
プランジャ穴凹所32bが既知のポンプ組立体に比較して、減少した深さを有し、それがポンプ室40の死容積(すなわち、プランジャがその行程の最後でプランジャ穴内で最上位置にあるとき、依然として燃料で充填されているポンプ室40の容積)の減少を生じさせることが本発明の追加の利点である。これにより、特に高い燃料圧でポンプ出力が改善される。
【0033】
図6および7は本発明の第2の実施形態が示され、その実施形態では出口穿孔の最小直径dが、図2の最小直径dの長さに比較してより長い長さL’を有する。他のすべての点については、出口穿孔42とプランジャ穴32bとの間の交差領域44は、図6および7では図2および3と同様である。
【0034】
上記に説明された本発明の実施形態では、プランジャ穴凹所32bの深さは、最小直径の位置の出口穿孔42の直径dと実質的に同じ寸法である。言い換えれば、プランジャ穴凹所の深さDは、出口穿孔42の直径dと実質的に同じである。
【0035】
他の実施形態(図示せず)では、これらの直径dおよびDは、正確に等しい必要はない。例えば、交差領域44は、出口穿孔42とプランジャ穴凹所32bとの間で次第に変化する先細り(換言すれば、テーパ部)を有することができる。先細りは、対向する平坦な面54および56が、それぞれ上方境界36および下方境界38と交差するとき収束していくように配向されることができ、または対向する平坦な面54および56が、それぞれ上方境界36および下方境界38と交差するとき広がっていくように配向されることができる。しかし、実際には、最適な配置は前述のように、第1の平坦な面54および第2の平坦な面56が互いに実質的に平行であり、プランジャ穴の軸に実質的に垂直であり、その結果、各平坦な面の平面がそれぞれ上方境界36および下方境界38の一方と整列している。
【0036】
本発明の追加の実施形態では、第2の穿孔42が交差する第1の穿孔32aは均一な直径であることができ、その結果、第1の穿孔の拡大直径領域がまったく存在しない(すなわち領域32bが存在しない)。この場合、交差領域は、交差領域の平坦な面54および56が交差する境界がないという点を除いて、上記に記載した方法と同じ方法で成形される。その代わり、交差領域44は、それぞれ接線方向面50および52に接線を形成する円弧状面46および48を備え、それらが今度は第1の穿孔32aの円周に対する接線を形成する。この実施形態は、上記に説明されたポンプ頭部よりもむしろ、コモンレールおよびポンプ筺体用途に適用可能であることがあり、その場合、第1の穿孔はポンプ頭部のポンププランジャ用穴の場合のように、拡大直径領域を含まない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸を画定し、且つ、第1の平面の上方境界(36)および第2の平面の下方境界(38)によって画定される境界を有する拡大直径(32b)の領域を有する、第1の穿孔(32a,32b)と、
第2の軸を画定し、且つ、交差領域(44)を介して前記第1の穿孔(32a,32b)と交差する、第2の穿孔(42)と
を備える高圧流体用途で使用するための筺体(30)であって、
前記交差領域(44)が、
前記交差領域(44)の天井を画定し、前記上方境界(36)と交差する第1の実質的に平坦な面(54)と、
前記交差領域(44)の床を画定し、前記下方境界(38)と交差する、前記第1の実質的に平坦な面(54)に対向する第2の実質的に平坦な面(56)と
を含む、筺体(30)。
【請求項2】
前記交差領域(44)が、前記第1の穿孔(32a,32b)の円周に対して接線を形成する、第1の接線方向面(50)および前記第1の接線方向面(50)に対向する第2の接線方向面(52)によって画定される側壁をさらに含む、請求項1に記載の筺体。
【請求項3】
前記交差領域(44)が、第1の円弧状面(46)および前記第1の円弧状面(46)に対向する第2の円弧状面(48)によって画定される側壁をさらに含む、請求項1または2に記載の筺体(30)。
【請求項4】
前記第1の円弧状面(46)と前記第2の円弧状面(48)が、それぞれ、前記第1の接線方向面(50)と前記第2の接線方向面(52)の一方に対して接線を形成する、請求項2に従属する請求項3に記載の筺体。
【請求項5】
前記第1の実質的に平坦な面(54)と前記第2の実質的に平坦な面(56)が、それぞれ、前記上方境界(36)と前記下方境界(38)の一方の平面と整列するように前記第1の軸に実質的に垂直である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の筺体。
【請求項6】
前記交差領域(44)が、前記第2の穿孔(42)と前記第1の穿孔(32a,32b)との間で次第に先細りにされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の筺体。
【請求項7】
前記第1の実質的に平坦な面(54)と前記第2の実質的に平坦な面(56)が、それぞれ、前記拡大直径の領域(32b)の前記上方境界(36)と前記下方境界(38)との交差部で末広がりになるように、前記先細りの方向が決められている、請求項6に記載の筺体。
【請求項8】
前記第1の実質的に平坦な面(54)と前記第2の実質的に平坦な面(56)が、それぞれ、前記拡大直径の領域(32b)の前記上方境界(36)と前記下方境界(38)との交差部で収束するように、前記先細りの方向が決められている、請求項6に記載の筺体。
【請求項9】
前記第1の実質的に平坦な面(54)および前記第2の実質的に平坦な面(56)が、略三角形形状である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の筺体。
【請求項10】
略三角形形状の前記第1の実質的に平坦な面と略三角形形状の前記第2の実質的に平坦な面が、それぞれ、前記上方境界(36)および前記下方境界(38)の一方に結合する底辺(54a)と、前記第2の穿孔(42)の端部と交差する、前記底辺(54a)に対向する頂点(54b)とを有する、請求項9に記載の筺体。
【請求項11】
第1の軸を画定する第1の穿孔(32a,32b)と、
第2の軸を画定し、交差領域(44)を介して前記第1の穿孔(32a,32b)と交差する第2の穿孔(42)と
を備える高圧流体用途で使用するための筺体(30)であって、
前記交差領域(44)が、前記第1の穿孔(32a,32b)の円周に対して接線を形成する、第1の接線方向面(50)および前記第1の接線方向面(50)に対向する第2の接線方向面(52)の形態を有する側壁と、前記交差領域(44)の天井を画定する第1の実質的に平坦な面(54)と、前記交差領域(44)の床を画定する、前記第1の実質的に平坦な面(56)に対向する第2の実質的に平坦な面(56)とを含む、筺体(30)。
【請求項12】
前記側壁が、第1の円弧状面(46)および前記第1の円弧状面(46)に対向する第2の円弧状面(48)をさらに含む、請求項11に記載の筺体(30)。
【請求項13】
前記第1の円弧状面(46)と前記第2の円弧状面(48)が、それぞれ、前記第1の接線方向面(50)と第2の接線方向面(52)の一方に対して接線を形成する、請求項12に記載の筺体。
【請求項14】
前記第1の軸および前記第2の軸が互いに交差する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の筺体(30)。
【請求項15】
前記第1の穿孔(32a,32b)が、ポンプのプランジャを受けるための穴であり、前記第2の穿孔(42)が、使用中、高圧燃料をプランジャ穴(32a,32b)からポンプ出口まで運搬するための流路である、燃料ポンプ組立体のための筺体の形態の、請求項1〜14のいずれか一項に記載の筺体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−510260(P2013−510260A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537414(P2012−537414)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066970
【国際公開番号】WO2011/054948
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(510119821)デルファイ・テクノロジーズ・ホールディング・エス.アー.エール.エル. (45)
【Fターム(参考)】