説明

高圧流体発生装置

【課題】油がシリンダ内に混入したとしてもこれを効率的に回収し、シリンダ内が油によって過度に汚染されることを防止し、分解清浄化の頻度が少なく、かつ外部を油で汚染しない高圧流体発生装置を実現する。
【解決手段】ピストンロッドを備えたピストンをシリンダ内に設け、ピストンの一方の側に復帰バネを設け、他方の側を圧力室として、圧縮空気を給排気弁を介して圧力室に給排することによってピストンが往復動作し、その往復動作によってプランジャ式ポンプを駆動して、高圧流体を発生する装置において、シリンダ内から外界に接続された油回収用経路と、油回収用経路に設けられた油回収用逆止弁と、を本体に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧を用いてピストンを動作させてプランジャポンプを駆動することにより高圧の流体を発生する高圧流体発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高圧流体発生装置としては、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されたものが挙げられ、圧油の消費に応じて空気圧を油圧に変換して供給するような用途に使用した場合、圧油の消費が停止している時の圧油の微小な漏れによりピストンが超微速度で移動してデッドポイントに入ってしまい、作動しなくなる状態が起こる問題があったが、かかる問題は特許文献3に記載の技術によって解決された。
【0003】
特許文献3に記載の装置においては、例えば図6に示すように、本体302に設けたシリンダ304内にピストン306が設けられている。ピストン306の下側に復帰バネ308が設けられ、ピストン306の上側のシリンダ304が圧力室310とされている。圧力室310に給排気弁312を介して圧縮空気を給排することによってピストン306が上下動し、プランジャ式ポンプ(図示せず)が駆動される。給排気弁312は、給気路314と、排気路316と、給排気路318と、給排弁体320とを、本体302内のシリンダ304の上方に有している。給気路314は、圧縮空気源(図示せず)に接続され、排気路316は外界に連通している。給排気路318は、圧力室310に連通している。
【0004】
給排弁体320は、ピストン306の移動方向に沿って移動可能であって、第1弁部322と、第2弁部324とを有し、給気位置と排気位置との2つの切換位置に切り換えられる。給気位置では、第1弁部322が給排気路318を給気路314に接続し、第2弁部324が給排気路318を排気路316と遮断している。排気位置では、第1弁部322が給排気路318を給気路314と遮断し、第2弁部324が給排気路318を排気路316と接続している。給排弁体320の移動方向の上端に第1パイロット室326が設けられている。給排弁体320の移動方向の下端に第2パイロット室328が設けられ、第2パイロット室328は給気路314に連通している。給排弁体320の中心部には内孔330が形成されている。この内孔330は、給排弁体320を上下方向に貫通し、第1パイロット室326及び第2パイロット室328に達している。
【0005】
ピストン306と同軸的に且つ一体にパイロットロッド332が形成されている。このパイロットロッド332は内孔330内を摺動可能である。第2パイロット室328と内孔330との間を開閉するように、パイロットロッド332の先端部には、図7に示すように給気弁部334が設けられている。パイロットロッド332の先端によって押圧可能にパイロット排気弁336が第1パイロット室326の上方に設けられている。パイロット排気弁336は、パイロットロッド332の先端によって押圧されたとき、開弁して第1パイロット室326を排気路316に接続する。パイロット排気弁336は、パイロットロッド332の先端によって押圧されていないとき、閉弁し第1パイロット室326を排気路316から遮断する。給排弁体320の第1パイロット室326側のパイロット圧受圧面積は、第2パイロット室328側のパイロット圧受圧面積よりも大きく形成されている。
【0006】
パイロットロッド332の給気弁部334は、図7に拡大して示すように、Oリングによって形成されている。パイロットロッド332の先端側にOリング溝が設けられている。このOリング溝は、その溝底が先端側に拡大した角度θ3を有するテーパ状溝底338を有し、しかもOリング334の線径よりも充分に広い溝幅を有している。このOリング溝に装着されているOリング334は、Oリング溝の大径側溝底径よりも小さい内径を有し、内孔330内に侵入したとき、給気圧力によって溝底大径側に移動して、内孔330を気密に封鎖可能な大きさに形成されている。
【特許文献1】特開昭63−130904号公報
【特許文献2】特開平3−229004号公報
【特許文献3】特許第3342929号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献3に記載の装置であっても、ピストンロッドがプランジャ式ポンプ側と大気側とを往復運動する際に、微小量ではあるが油がシリンダ内に混入してしまうという問題がある。即ち、上記ピストンロッドのうちのプランジャ式ポンプ側に位置する部分には、接触した油が表面張力等によって上記ピストンロッドの表面に油膜を形成する。そして、上記ピストンロッドがシリンダ側に移動した後に再度プランジャ式ポンプ側に移動する際、図示しないが、前記シリンダ内において前記ピストンロッドが前記本体に貫入する面のエッジ部分において、上記油膜だけがシリンダ内に残されてしまう。
【0008】
このようにシリンダ304内に油が混入すると、本来は空気や圧縮空気のみが存在する部分に油が存在することになり、例えば本体302内のシリンダ304の上方に位置する給排気弁312、給気路314、排気路316、給排気路318及び給排弁体320の部分から、油が外部に飛散して周囲環境を汚染してしまうという問題がある。また、シリンダ304内も油で汚染されてしまうことから、給排弁体320の移動が妨げられて圧縮空気を形成しにくくなり、高圧流体発生装置としての機能が低下するおそれがある。そのため、比較的頻繁に定期的に装置を分解してシリンダ304内を清浄化する必要があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ピストンロッドがプランジャ式ポンプ側と大気側とを往復運動する際に油がシリンダ内に混入したとしてもこれを効率的に回収することによって、シリンダ内が油によって過度に汚染されることを防止し、分解清浄化の頻度が少なく、かつ外部を油で汚染することのない高圧流体発生装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決すべく、本発明は、
ピストンロッドを備えたピストンをシリンダ内に設け、前記シリンダ内における前記ピストンの一方の側に復帰バネを設け、他方の側を圧力室として、圧縮空気を給排気弁を介して前記圧力室に給排することによって前記ピストンが往復動作し、その往復動作によってプランジャ式ポンプを駆動して、高圧流体を発生する装置であって、
前記給排気弁が、前記シリンダが設けられている本体内に、圧縮空気源に接続される給気路と、外界に連通する排気路と、前記圧力室に連通する給排気路と、前記ピストンの移動方向に沿って移動可能である給排弁体とを、有し、
前記給排弁体は、第1弁部及び第2弁部を有し、前記給排気路と前記給気路とを前記第2弁部で接続し、かつ前記給排気路と前記排気路とを第1弁部で遮断した給気位置と、前記給排気路と前記給気路とを第2弁部で遮断し、かつ前記給排気路と前記排気路とを第1弁部で接続した排気位置とに、切換可能であり、
前記給排弁体の移動方向の一端に第1パイロット室を設け、他端に前記給気路に連通した第2パイロット室を設け、
第1パイロット室及び第2パイロット室を連通する内孔が、前記給排弁体内を前記ピストンの移動方向に貫通し、
前記ピストンと連動するように前記本体内に設けられたパイロットロッドを、前記内孔に挿通し、第2パイロット室と前記内孔との間を開閉するように前記パイロットロッドに給気弁部を形成し、
前記パイロットロッドの先端による押圧によって開弁されて、第1パイロット室を前記排気路に接続するパイロット排気弁を設け、
前記給排弁体の第1パイロット室側のパイロット圧受圧面積を第2パイロット室側のパイロット圧受圧面積よりも大きく形成した高圧流体発生装置において、
前記シリンダ内から外界に接続された油回収用経路と、前記油回収用経路に設けられた油回収用逆止弁と、を前記本体に設ける。
【0011】
このような構成によれば、表面に油膜を有するピストンロッドがシリンダ側に移動した後に再度プランジャ式ポンプ側に移動する際、前記シリンダ内において前記ピストンロッドが前記本体に貫入する面のエッジ部分において、上記油膜だけがシリンダ内に残されても、即ち、一旦油がシリンダ内に混入したとしても、油回収用経路及び油回収用逆止弁によって当該油のみを効率よくシリンダの内部から外部に追い出し回収することができる。
【0012】
また、本発明の高圧流体発生装置においては、
前記油回収用経路の油回収用入口が、前記シリンダ内において前記ピストンロッドが前記本体に貫入する面に設けられており、
前記油回収用経路の油回収用出口が前記プランジャ式ポンプ側に設けられている、
ことが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、一旦シリンダ内に混入した油が、シリンダ内全体に拡散する前に効率よく回収することができ、かつ油圧ポンプにおいて再利用することができることから好ましい。
【0014】
また、本発明の高圧流体発生装置においては、
前記シリンダ内において前記油回収用入口が設けられている面が、前記ピストンロッド側に傾斜していることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、ピストンロッドがプランジャ式ポンプ側に移動する際に、前記ピストンロッドが前記本体に貫入する面の端部において油膜がシリンダ内に残されて混入すると同時に、当該油が上記油回収用経路内に導かれることから、より確実にシリンダ内全体に拡散する前に効率よく回収することができ、かつ油圧ポンプにおいて再利用することができることから好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ピストンロッドがプランジャ式ポンプ側と大気側とを往復運動する際に油がシリンダ内に混入したとしてもこれを効率的に回収することによって、シリンダ内が油によって過度に汚染されることを防止し、分解清浄化の頻度が少なく、かつ外部を油で汚染することのない高圧流体発生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0018】
図1は、本発明の高圧流体発生装置の好適な一実施の形態の構成において右半分と左半分とで異なる状態を示す概略断面図であり、図2は、図1における第1パイロット室97、第2パイロット室85及び圧力室87の付近を拡大した図である。また、図3は、図1における給排弁体91の付近を拡大した図である。さらに、図4及び図5は、図1においてPで示される部分を拡大した図である。
【0019】
本発明の高圧流体発生装置は、図1に示すように、本体81内に、空気圧動作用ピストン82、給排気弁83、油圧ポンプ119等が設けられおり、圧縮空気を給排気弁83を介して圧力室87に給排することによりピストン82を往復動作させ、その往復動作によってプランジャー式油圧ポンプ119を駆動して高圧流体を発生する装置である。給排気弁83と油圧ポンプ119とが、本体81においてピストン82を介して対向する位置に設けられている。
【0020】
ピストン82は、図1に示すように、シリンダ86内に上下に摺動可能に収容され、ピストン82の上側を圧力室87、下側をばね室88に形成され、ばね室88にはピストン82が上方端位置に復帰するための復帰ばね105が設けられている。また、ピストン82には、下方に伸延したピストンロッド89と、上方に伸延したパイロットロッド90とが設けられている。ピストン82は圧力室87に圧縮空気が供給されると下方へ前進し、圧力室87内の圧縮空気が排出されると復帰ばね105によって上方へ後退する。
【0021】
給排気弁83は、給気路103、排気路98、給排気路99、給排弁体91、第1パイロット室97、第2パイロット室85、パイロット給気弁106、パイロット排気弁111等を具備している。給気路103は圧縮空気源に接続される給気ポート104に接続する本体81内に形成された通路であり、排気路98は本体81内に形成された通路であり、図1における上部側に位置する外界に解放された排気口121に連通している。給排気路99は、それぞれ後述する第1弁部93及び第2弁部94の第1弁座101及び第2弁座102の間の空間100(図2参照)を圧力室87に連通している本体81内に形成された通路である。
【0022】
給排弁体91は、本体81内に収容され前記ピストン82の移動方向(図1における矢印Xの方向)に沿って上下に小寸法移動可能であり、第1弁部93及び第2弁部94を有し、これらの各弁部に対応して本体81に第1弁座101及び第2弁座102が設けられており、これらのいずれか一方に着座するようになっている。即ち、給排弁体91が上方へ移動したときは第1弁部93が第1弁座101に着座し、給排弁体91が下方へ移動したときは第2弁部94が第2弁座102に着座するような構成を有している。
【0023】
そして、第1弁部93と第1弁座101は給排気路99と排気路98の間に設けられており、第2弁部94と第2弁座102は給気路103と給排気路99の間に設けられている。これによって給排弁体91が上方へ移動したときは、圧力室87に対する給気位置であり、第1弁部93が離座して給排気路99と排気路98との間を連通し且つ第2弁部94が着座して給排気路99と給気路103との間を遮断する。給排弁体91が下方へ移動したときは、圧力室87に対する排気位置であり、第1弁部93が着座して給排気路99と排気路98との間を遮断し且つ第2弁部94が離座して給排気路99と給気路103との間を連通する。
【0024】
給排弁体91の移動方向の上端側には第1パイロット室97が設けられており、下端側に第2パイロット室85が設けられている。第1パイロット室97においては、給排弁体91の上端においてピストン状に形成された大径部92が、本体81に形成されたシリンダ状の部分に嵌合した構成を有している。この大径部92は第1弁座101の径よりも大きい径を有し、第2弁座102は第1弁座101の径よりも小さい径を有する。
【0025】
第2パイロット室85においては、給排弁体91の第2弁部94の径よりも小さい径を有する下端部が、本体81内に形成された空間によって包囲されており、当該空間は給気路103に連通している。給排弁体91の有効受圧面積は、第1パイロット室97側が第2パイロット室85側よりも十分に大きく、双方のパイロット室に同じ空気圧が作用したときは給排弁体91が下降動作する。
【0026】
また、給排弁体91の中心部には、ピストン82の移動方向において貫通し、第1パイロット室97及び第2パイロット室85に達する内孔96が穿設されている(図3参照)。本体81内には、ピストン82と同軸的に且つ一体的に上方へ伸延形成されたパイロットロッド90が、本体81内のシリンダ端壁を摺動可能に貫通させて設けられており、ピストン82の往復動作により第2パイロット室85を通り内孔96に出入りして前記第2パイロット室85と内孔96の間を開閉するように、パイロットロッド90の先端部110には給気弁部を形成するパイロット給気弁106が設けられている。内孔96と内孔96内に進入したパイロットロッド90との間には空気圧が導入される程度の小さな間隙109が存在する。
【0027】
パイロット給気弁106は、図3に示すように、給気弁部がOリングで形成されており、パイロットロッド90の先端部110にOリング溝が設けられ、当該Oリング溝の溝底は先端側に拡大した角θ1を有するテーパ状溝底108とその小径側に続くストレート部107で形成され、その溝幅はOリングの線径よりも十分に広い溝幅に形成されている。Oリングは、Oリング溝のテーパ状溝底108の大径側溝底径よりも小さく略ストレート部107の外径に一致するか若しくは小さい内径を有し、Oリングの線径はOリングがストレート部107にあるときその外周が内孔96の内周面から僅かに離れる程度のものである。
【0028】
これにより、弁部であるOリングが内孔96に進入した状態で第2パイロット室85側に供給空気圧が作用し第1パイロット室97側が大気圧になると、給気圧力によりテーパ状溝底108の大径側へ移動して内孔96とパイロットロッド90との間隙109を気密に封鎖する。このテーパ状溝底108の大径側へ移動した状態では、Oリングは周長が弾性的に引き伸ばされている。Oリングは内孔96から出ている状態では周方向の収縮力によってストレート部107側に移動している。給排弁体91の内孔96の下端縁95は図示のように丸みを有する面取りをしてある。
【0029】
第1パイロット室97には、パイロットロッド90の先端110(図3における上端部分)で押されて開弁し、第1パイロット室97を排気路112に接続するパイロット排気弁111が設けられている。また、図2に示すように、パイロット排気弁111の閉弁方向作用ばね113、及び弁座114が設けられており、排気通路112は排気口121に連通している。なお、図1及び図2に示すように、本発明の高圧流体発生装置は、大径部92に設けられたOリング115、油吸い込みポート116、逆止弁117、圧油出力ポート118、及びばね室の空気出入りのための通路120を有する。
【0030】
このように構成された高圧流体発生装置は、給気路103に圧縮空気が供給さた初期の状態は、図1〜図3の右半分に示すように、ピストン82が復帰ばね105で上昇して復帰した復帰位置にあり、従ってパイロットロッド90も上昇していてパイロット給気弁106が内孔96内にあって閉弁状態であり、パイロットロッド90の先端110でパイロット排気弁111が開弁していて第1パイロット室97が大気圧であり、第2パイロット室85の空気圧力で給排弁体91が上昇した給気位置にある状態である。この状態では第2弁部94が第2弁座102から離座して給排気路99が給気路103に接続され、そして第1弁部93が第1弁座101に着座して排気路98が遮断された状態であるから、ピストン82の圧力室87に圧縮空気が供給され、ピストン82が復帰ばね105に抗して下方へ前進移動する。
【0031】
ピストン82が少し前進したときパイロットロッド90も共に下方へ前進するからその先端110がパイロット排気弁111から離れてこれを閉弁させる。そしてピストン82が前進端近くに達するとパイロット給気弁106が開弁する。すなわち、給気弁部のOリングがそれまでは給気圧に押圧されてOリング溝底のテーパ状溝底108の大径側に移動し周長が大きくなって給排弁体91の内孔96内面に密着していた状態が内孔96の下端縁95から外れて開弁状態となる。この時内孔96の下端縁95からOリングが一旦外れるとOリングの周長が収縮しようとし、テーパ状溝底108を小径側のストレート部107に移動する。
【0032】
パイロット給気弁106の開弁によって第2パイロット室85が内孔96を介して第1パイロット室97に連通し、圧縮空気が第1パイロット室97に供給され、これによって給排弁体91が下降して排気位置に切り換わる。この給排弁体91の移動は内孔96の下端縁95が給気弁部のOリング側に近寄る移動であるが、Oリングは既にテーパ溝底108の小径側へ移動しており閉弁することはない。
【0033】
給排気弁83が排気位置になると、シリンダの圧力室87の圧縮空気が給排気路99とこれに接続された排気路98を通って外界に排出されるから、ピストン82が復帰ばねによって後退して復帰する。ピストン82の後退の終わり付近でパイロットロッド90の先端110がパイロット排気弁111を開弁させ、第1パイロット室97を大気圧とし、これによってパイロット給気弁106が確実に閉じて、第2パイロット室85の圧力で給排弁体91が上昇する。この状態は給気路103に圧縮空気を供給した初期の状態と同じであり、以下は上述した過程を繰り返すことになる。従って、ピストン82は往復動作を繰り返すから、プランジャー式油圧ポンプ119が駆動されて高圧流体を発生する。
【0034】
高圧流体の出力側が所定の高圧となりそのままで停止状態となっているとき、出力側に流体漏れが生じて圧力が少しずつ低下してくると、その圧力の低下を補うように高圧流体発生装置が動作する。この時前記流体漏れが極めて微小であれば、前述の超微速度でピストンが往動作し、通常速度で復動作することになる。超微速度でピストン82が往動作してその前進端に近づいたとき第2パイロット室85と内孔96との間を閉じていたパイロット給気弁106が開く。パイロット給気弁106が開く状態は、前述した場合と同様に一旦開弁するとOリングの周長が収縮してテーパ状溝底108を小径側へ移動するから、完全に開弁してしまうので、第1パイロット室97へ圧縮空気が供給され、給排気弁83が確実に排気位置に切り換わる。これによって、給排弁体91がデッドポイントに入ることはない。
【0035】
ここで、図1においてYで示される部分の拡大図を図4及び図5に示す。本発明の高圧流体発生装置においては、ピストン82がシリンダ86内を油圧ポンプ119側(即ち、矢印Xで示される方向における下方)に移動した際に、油圧ポンプ119側から伝って来た油200によって形成されたピストンロッド89の表面の油膜が、図4に示すように、シリンダ86内においてピストンロッド89が本体に貫入する面206の端部(図4においてZで示される部分)よってシリンダ86内に残される。
【0036】
しかしながら、この一旦シリンダ86内に混入した油200は、油回収用経路202及び油回収用逆止弁204によって効率よくシリンダ86の内部から外部に追い出される。より具体的には、シリンダ86内に入った油200は、油回収用入口202aから油回収用経路202に入り込み、下方に移動したピストン82によって上昇した圧力室87(特にばね室88)の圧力、又は重力により、下方に流れて油回収用逆止弁204の部分に到達する。このとき、油回収用経路202の一部を構成する弁体収容路202dの上端部(矢印Xの方向において油回収用逆止弁204と対向する部分)には、孔202cが設けられており、これによって油が油回収用経路202内を下方に移動することを促進させる。
【0037】
また、図4においては、略球状の弁体204aが弁座204bで油回収用出口202bを塞ぐ位置にあるが、ピストン82が上方に移動した際には、図5に示すように、上方に移動したピストン82によって下降した圧力室87(特にばね室88)の圧力により(若しくは更にピストン82の上下運動による高圧流体発生装置の振動により)、弁体204aは弁座204bから矢印Xの方向において上方に浮き上がって油回収用出口202bが開放され、弁体204aと油回収用経路202との間隙を通過して油200が排出される。更には、本実施の形態の高圧発生流体装置を連続して運転すると、ピストン82の上下運動に伴う圧力室87内の圧力変化が連続して起こり、弁体204aが油回収用経路202を連続して上下し、一旦シリンダ86内に混入した油200が連続して排出される。
【0038】
したがって、ピストンロッド89が油圧ポンプ119側とシリンダ86内とを往復運動する際に油200がシリンダ86内に混入したとしても、これを効率的に回収することによってシリンダ86内が油200によって過度に汚染されることを防止することができ、高圧流体発生装置を分解して清浄化する頻度を低減させることができる。加えて、シリンダ86の上方に位置する給排気弁83、給気路103、排気路98、給排気路99及び給排弁体91の部分から、油200が外部に飛散して周囲環境を汚染してしまうことをより確実に防止することができる。
【0039】
本実施の形態においては、図4に示すように、油回収用経路202の油回収用入口202aが設けられている面206が、ピストンロッド89側に傾斜しており、面206とピストンロッド89とが角θ1をなしており、ピストンロッド89が油圧ポンプ119側に移動する際に面206の端部Zによって油膜がシリンダ86内に混入すると同時に、当該油200が油回収用経路202内に導かれることから、シリンダ86内全体に拡散する前に油200を効率よく回収することができる。角θ1の大きさは特に限定されるものではなく、高圧流体発生装置のスペック等に応じて適宜選択すればよいが、例えば45°付近であるのが好ましい。
【0040】
また、本実施の形態においては、弁体204aが略球状であるため、油回収用経路202(弁体収容路202dを含む。)の断面が略円状であり、これにより油200が油回収用経路202の内面をより滑らかに下方に移動させることができる。なお、油圧ポンプ119の下方の油吸い込みポート116の下方には油用タンク(図示せず)が配置されることから、油回収用経路202の油回収用出口202bから排出される油200は再利用することができ好ましい。
【0041】
上記の略球状の弁体204aを構成する材料としては、油によって膨潤しない材料であれば特に制限なく用いることができ、例えばポリアセタール、ウレタン又はゴム等を用いることができる。ポリアセタールとしては、例えばDu Pont社製のデルリン(商品名)やポリプラスチックス社製のジュラコン等が挙げられ、より具体的には、例えば佐藤鉄工株式会社製のジュラコン球等を好適に用いることができる。また、軽量であれば金属を用いることも可能である。
【0042】
また、本実施の形態においては、油回収用逆止弁204において弁座204bを構成する面(フランジ面)が、弁体収容路202dの長さ方向(矢印Xの方向)に対して角θ3をもつテーパ状の形状を有する構成となっている。角θ3の大きさは適宜選択することができるが、よりスムースに弁体204aを回転及び移動させて油200の排出をより確実にするという観点からは、例えば約120°であるのが好ましい。
【0043】
略円状の弁体204aの寸法及び油回収用経路202(弁体収容路202dを含む。)の寸法は、適宜選択することができるが、弁体204aが弁座204bから矢印Xの方向において上方に浮き上がって油200が油回収用出口202bにより確実に達するように、略球状の弁体204aの外径は、油回収用経路202(弁体収容路202dを含む。)の内径よりも若干小さいのが好ましい。
【0044】
油回収用入口202aの寸法(径)については、油200が効率よく油回収用経路202内に入ることができる範囲であれば特に制限はない。油回収用出口202bの寸法(径)については、弁体202aが油回収用経路202又は弁体収容路202d外に出てしまわず、かつ油200を確実に排出できる範囲であれば特に制限はない。本実施の形態においては、弁体収容路202dに延長部202eが設けられており、弁体202aが油回収用入口202aから油回収用経路202(更には弁体収容路202d)から外に出てしまわないような構成を有している。
【0045】
なお、孔202cの寸法は、弁体202aが油回収用入口202aから油回収用経路202(更には弁体収容路202d)から外に出てしまわず、かつ空気を油回収用経路202(更には弁体収容路202d)に取り込むことができる範囲で適宜設計することができる。
【0046】
上記の実施の形態においては、油圧ポンプを駆動して高圧の油圧を発生するようにしたが、空気圧ポンプを駆動して高圧の圧縮空気を発生させるようにしてもよい。また、上記実施の形態においては面206に単一の油回収用経路202を設けた態様について説明したが、例えばピストンロッド89を中心にして矢印Xの方向からみた場合に互いに点対称となる位置に、複数の油回収用経路202及び油回収用逆止弁204を設けてもよい。
【0047】
ピストン82の上下運動によって圧力室87内の圧力を確実に上昇させて高圧流体発生装置の機能を低下させないという観点からは、油回収用経路202及び油回収用逆止弁204の数は増加させ過ぎないことが好ましいが、ピストンロッド89を中心にして矢印Xの方向からみた場合に互いに点対称となる位置に、少なくとも2つの油回収用経路202及び油回収用逆止弁204を設けるのが好ましい。
【0048】
また、上記実施の形態においては、油回収用経路202の断面が略円状で、弁体204aの形状が略球状である場合について説明したが、これらについても適宜設計変更が可能である。油回収用経路の断面は、例えば三角柱及び四角柱等の多角注状であっても構わない。また、油回収用経路の断面形状に合わせて、弁体の形状は角柱状であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、ピストンロッドが油圧ポンプ側とシリンダ側とを往復運動する際に油がシリンダ内に混入したとしてもこれを効率的に回収することによって、シリンダ内が油によって過度に汚染されることを防止し、分解清浄化の頻度が少なく、かつ外部を油で汚染することのない高圧流体発生装置を提供することができる。かかる本発明の高圧流体発生装置は、各種成型装置において金型を固定するために用いるクランプ機構の一部として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の高圧流体発生装置の好適な一実施の形態の構成において右半分と左半分とで異なる状態を示す概略断面図である。
【図2】図1における第1パイロット室97、第2パイロット室85及び圧力室87の付近を拡大した図である。
【図3】図1における給排弁体91の付近を拡大した図である。
【図4】図1においてPで示される部分を拡大した図である。
【図5】図1においてPで示される部分を拡大した別の図である。
【図6】従来の装置の要部を拡大した図である。
【図7】従来の装置の要部をさらに拡大した図である。
【符号の説明】
【0051】
81・・・本体、82・・・ピストン、83・・・給排気弁、85・・・第2パイロット室、86・・・シリンダ、87・・・圧力室、90・・・パイロットロッド、91・・・給排弁体、93・・・第1弁部、94・・・第2弁部、96・・・内孔、97・・・第1パイロット室、98・・・排気路、99・・・給排気路、101・・・第1弁座、102・・・第2弁座、103・・・給気路、105・・・復帰ばね、106・・・パイロット給気弁、107・・・ストレート部、108・・・テーパ状溝底、111・・・パイロット排気弁、112・・・排気通路、119・・・油圧ポンプ、200・・・油、202・・・油回収用経路、202a・・・油回収用入口、202b・・・油回収用出口、202c・・・孔、202d・・・弁体収容路、204・・・油回収用逆止弁、204a・・・弁体、204b・・・弁座、206・・・面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドを備えたピストンをシリンダ内に設け、前記シリンダ内における前記ピストンの一方の側に復帰バネを設け、他方の側を圧力室として、圧縮空気を給排気弁を介して前記圧力室に給排することによって前記ピストンが往復動作し、その往復動作によってプランジャ式ポンプを駆動して、高圧流体を発生する装置であって、
前記給排気弁が、前記シリンダが設けられている本体内に、圧縮空気源に接続される給気路と、外界に連通する排気路と、前記圧力室に連通する給排気路と、前記ピストンの移動方向に沿って移動可能である給排弁体とを、有し、
前記給排弁体は、第1弁部及び第2弁部を有し、前記給排気路と前記給気路とを前記第2弁部で接続し、かつ前記給排気路と前記排気路とを第1弁部で遮断した給気位置と、前記給排気路と前記給気路とを第2弁部で遮断し、かつ前記給排気路と前記排気路とを第1弁部で接続した排気位置とに、切換可能であり、
前記給排弁体の移動方向の一端に第1パイロット室を設け、他端に前記給気路に連通した第2パイロット室を設け、
第1パイロット室及び第2パイロット室を連通する内孔が、前記給排弁体内を前記ピストンの移動方向に貫通し、
前記ピストンと連動するように前記本体内に設けられたパイロットロッドを、前記内孔に挿通し、第2パイロット室と前記内孔との間を開閉するように前記パイロットロッドに給気弁部を形成し、
前記パイロットロッドの先端による押圧によって開弁されて、第1パイロット室を前記排気路に接続するパイロット排気弁を設け、
前記給排弁体の第1パイロット室側のパイロット圧受圧面積を第2パイロット室側のパイロット圧受圧面積よりも大きく形成した高圧流体発生装置において、
前記シリンダ内から外界に接続された油回収用経路と、前記油回収用経路に設けられた油回収用逆止弁と、を前記本体に具備することを特徴とする高圧流体発生装置。
【請求項2】
前記油回収用経路の油回収用入口が、前記シリンダ内において前記ピストンロッドが前記本体に貫入する面に設けられており、
前記油回収用経路の油回収用出口が前記プランジャ式ポンプ側に設けられている、
請求項1に記載の高圧流体発生装置。
【請求項3】
前記油回収用入口が設けられている面が、前記ピストンロッド側に傾斜している請求項2に記載の高圧流体発生装置。
【請求項4】
前記給排気弁と前記プランジャ式ポンプとが、前記本体において前記ピストンを介して対向する位置に設けられている、
請求項1〜3のうちのいずれかに記載の高圧流体発生装置。
【請求項5】
前記油回収用経路の断面が略円状であり、前記逆止弁が略球状の弁体を含む、
請求項1〜4のうちのいずれかに記載の高圧流体発生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−267223(P2008−267223A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109513(P2007−109513)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000102452)エスアールエンジニアリング株式会社 (17)
【Fターム(参考)】