説明

高安定度電源装置及びそれを用いた高電圧電子管装置

【課題】 インバータ回路の動作周波数を設定温度において高度に安定化させることにより、周囲温度の変化にかかわらず高安定化電源装置の直流出力高電圧の安定化を今まで以上に向上させること。
【構成】 インバータ回路の出力側に1次巻線が接続されたトランスと、そのトランスの2次巻線に接続された整流装置と、前記インバータ回路の駆動信号の周波数を決定する発振器とを備え、高安定度の直流電圧を出力する高安定度電源装置において、前記発振器とその発振器の周囲温度を制御する温度制御回路とが単一の恒温室ユニット内に収納され、前記恒温室ユニット内で前記温度制御回路の調整及び温度制御が行われることにより、前記発振器の発振周波数を安定化し、前記インバータ回路の前記駆動信号の周波数を高度に安定化することを特徴とする高安定度電源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲温度に影響されずに高安定度直流電圧、特に高安定度直流高電圧を出力するのに適した高安定度電源装置、及びその高安定度電源装置を用いて高安定の電子ビームあるいはX線などの電子線を照射する高電圧電子管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置に用いられる電子ビーム又はイオンビームなどのような荷電粒子ビームによる集積回路のマスク描画装置、電子顕微鏡装置などにあっては、高精度の荷電粒子ビームなどを照射する必要があり、このような場合には荷電粒子ビームなどの安定度に大きな影響を与える直流高電圧に対しても、非常に高い安定度が要求される。このような非常に高い安定度の出力高電圧を要求される直流高電圧電源装置にあっては、周囲温度などの条件が理想状態にある場合には、要求される安定度を満足する高安定度の直流高電圧を出力する機能を備えている。
【0003】
通常、半導体製造装置は室温が設定温度に対して±1℃程度の温度範囲で管理されているクリーンルーム内で使用され、これに伴い、半導体製造装置に用いられる高安定度の直流高電圧を出力する直流高電圧電源装置はクリーンルーム内で使用されるが、±1℃程度の室温の変動でも無視できない悪影響を受ける。この周囲温度の変化によって直流高電圧電源装置の出力電圧の安定度が低下する主な原因は、電圧検出抵抗器の抵抗値が温度ドリフトにより変化することと、基準電圧発生回路の出力である基準電圧が温度ドリフトにより変動することにあると考えられていた。したがって、従来の一般的な高安定化電源装置では、温度ドリフトの小さい電子部品を選定して回路を構成し、また、出力電圧検出抵抗器の温度特性を補償して周囲温度が変化しても温度特性がほとんど変化しないようにするなどの対策がとられていた。
【0004】
しかし、最近、集積回路のマスクなどの高密度化に伴って荷電粒子ビームをよりいっそう高精度で制御する必要が生じ、このためには荷電粒子ビーム装置から荷電粒子ビームを引き出す加速電圧の更なる高安定度化の要求がある。前述のように温度ドリフトの小さい電子部品を選定して回路を構成し、出力電圧検出抵抗器の温度特性を補償することにより周囲温度が変化しても温度特性がほとんど変化しないようにするなどの対策を行ってもこのような高安定度化の要求に応えることができないことが分かった。この問題点を解決するために、出力電圧検出抵抗器及び基準電圧発生回路など高安定化電源装置の出力高電圧の安定性に影響を与える一部分の回路だけを恒温室に収納し、温度制御することによって、電子部品の発熱や周囲温度の変化による特性変化の小さい、安定度に優れた直流高電圧電源などを得ることが既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−284323公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、集積回路のマスクなどの高密度化に伴って荷電粒子ビームをより高精度で制御するためには、荷電粒子ビーム装置から荷電粒子ビームを引き出す加速電圧の更に高い安定度が必要であり、そのためには従来のような高電圧抵抗器と電圧検出用抵抗器の温度安定化対策だけでは要求に応じられないことが分かった。本発明者等はこのような点に鑑みて種々の検討し、試験を行った結果、僅かな温度変化でもインバータ回路の動作周波数がやはり僅かに変化し、このことが高安定化電源装置の出力高電圧の安定化を低下させる主要因の一つであることをつきとめた。また、高安定化電源装置の中で他の回路部分からの電気的な影響、熱的な影響などによっても、インバータ回路の動作周波数を決定する発振器の出力発振周波数が僅かに変化し、この発振周波数の微小な変化も高安定化電源装置の出力高電圧の安定化を低下させる要因であることも分かった。
【0006】
したがって、本発明は、インバータ回路の動作周波数を決定する発振器の出力発振周波数がその周囲温度の変化による影響を受けず、あるいは他の回路部分からの電気的な影響、熱的な影響などを受けることなく、インバータ回路の動作周波数を設定温度において高度に安定化させ、高安定化電源装置の出力高電圧の安定化を今まで以上に向上させることを主目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、そのインバータ回路の出力側に1次巻線が接続されたトランスと、そのトランスの2次巻線に接続された整流装置と、前記インバータ回路の駆動信号の周波数を決定する発振器とを備え、高安定度の直流電圧を出力する高安定度電源装置において、前記発振器と該発振器の周囲温度を制御する温度制御回路とが単一の恒温室ユニット内に収納され、前記恒温室ユニット内で前記温度制御回路の調整及び温度制御が行われることにより、前記発振器の発振周波数を安定化し、前記インバータ回路の前記駆動信号の周波数を高度に安定化することを特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0008】
第2の発明は、前記第1の発明において、前記発振器を構成する電子部品が第1のプリント基板に搭載され、前記温度制御回路を構成する電子部品が第2のプリント基板に搭載されていることを特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0009】
第3の発明は、前記第2の発明において、前記第1のプリント基板と前記第2のプリント基板とに対してそれぞれ独立した電源から電力を供給するように構成したことを特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0010】
第4の発明は、前記第2又は第3の発明において、前記発振器と前記温度制御回路との間には静電遮蔽体が備えられていることを特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0011】
第5の発明は、前記第1ないし第4の発明のいずれかにおいて、前記恒温室ユニットの壁部を通して、前記発振器に直流電力を給電する第1の入力配線と、前記温度制御回路に直流電力を給電する第2の入力配線とが前記恒温室ユニット内に導入されると共に、前記発振器の高安定度発振信号を送信する出力配線が導出されていることを特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0012】
第6の発明は、前記第1ないし第5の発明のいずれかにおいて、前記発振器が出力する高安定度発振信号の周波数を調整する周波数調整用手段と、前記温度制御回路の温度を調整する温度調整用手段とを備え、前記恒温室ユニットの壁部にはスリットが形成されており、前記スリットから前記周波数調整用手段と前記温度調整用手段とを調整することを特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0013】
第7の発明は、前記第6の発明において、前記周波数調整用手段と前記温度調整用手段との調整後に前記スリットを断熱シートで塞ぐことを特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0014】
第8の発明は、前記第6又は第7の発明のいずれかにおいて、前記温度制御回路は、前記恒温室ユニット内の温度に対応する電圧信号を出力する温度センサと、設定温度に対応する基準電圧信号を与える基準電圧源と、前記電圧信号と前記基準電圧信号との誤差増幅信号を出力する誤差増幅器と、該誤差増幅器からの前記誤差増幅信号により発熱が調整されるヒータ部材とを備え、前記温度調整用手段を調整することによって前記誤差増幅器の前記誤差増幅信号が調整され、前記恒温室ユニット内の温度が前記設定温度に保持されることを特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0015】
第9の発明は、前記第8の発明において、前記ヒータ部材は、起動用ヒータと微調整用ヒータとからなり、前記恒温室ユニット内の温度が前記設定温度よりも低い目標温度に達したときには、前記起動用ヒータをオフさせ、前記微調整用ヒータの発熱で前記恒温室ユニット内の温度を前記設定温度に維持すること特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0016】
第10の発明は、前記第1ないし第9の発明のいずれかにおいて、前記整流装置の出力には、高電圧抵抗器と電圧検出用抵抗器とを直列接続してなる出力電圧検出用手段が接続され、その出力電圧検出用手段は電気絶縁被覆材料でモールドされてモールド物品となっており、そのモールド物品の外面の2面以上を覆う導電性の良好な熱伝導材料手段と、その熱伝導材料手段の外面に設けられて、該熱伝導材料手段の温度を制御する温度制御手段と、その熱伝導材料手段の外面に設けられて、その熱伝導材料手段の温度を検出する温度検出手段とを備え、前記温度制御手段の温度を制御して、前記熱伝導材料手段の温度を一定に保つことを特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0017】
第11の発明は、前記第1ないし第10の発明のいずれかにおいて、前記温度制御手段は、初期加熱用ヒータとこれよりも電力容量の小さい温度調整用ヒータとからなり、予め設定した時間だけ前記初期加熱用ヒータを無制御で運転して、予め設定した電力量を供給することを特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0018】
第12の発明は、前記第11の発明において、前記予め設定した時間は、前記電気絶縁被覆材料をその飽和温度の予想値まで温度上昇又は降下させるのに必要な熱量に基づいて求められることを特徴とする高安定度電源装置を提供する。
【0019】
第13の発明は、前記第1ないし第12の発明のいずれかに記載された高安定度電源装置により駆動される高電圧電子管を備える高電圧電子管装置において、前記インバータ回路の交流出力電圧は前記トランスによって交流高電圧に昇圧され、その昇圧された交流高電圧は前記整流回路によって直流高電圧に変換され、前記高電圧電子管のアノードと、フィラメント及びグリッドからなるカソードとの間に印加されることを特徴とする高電圧電子管装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
前記第1の発明によれば、各装置の電子部品のバラツキによる影響を受けず、かつ周囲の温度変化にかかわらずインバータ装置の駆動周波数を設定温度において高度に安定化することができるので、周囲の温度変化に影響されない高安定度の直流高電圧出力を得ることができる。
【0021】
前記第2ないし第4の発明によれば、前記第1の発明が奏する効果の他に、インバータ装置の駆動周波数を決める発振器の周波数が温度制御回路のノイズなどの影響を受け難いので、より高安定度の直流高電圧出力が得られる。
【0022】
前記第5の発明によれば、前記第1の発明ないし前記第4の発明が奏する効果の他に、恒温室ユニットの壁を電源用の配線と発振信号用の配線とが導入、導出されているだけであり、かつ温度制御がすべて恒温室ユニット内で行われるので、他の装置部分のスイッチングノイズなどの影響を受けずに、より一層前記発振器の周波数を安定化することができ、更に高安定度の直流高電圧出力を得ることができる。
【0023】
前記第6の発明によれば、前記第1の発明ないし前記第5の発明が奏する効果の他に、恒温室ユニットの筐体壁に設けたスリットを通して恒温室ユニット内の温度を設定温度に調整できると同時に、その設定温度における発振器の発振周波数を設定周波数に設定できるので、電子部品の特性のバラツキに影響されずに高安定度の直流高電圧を出力する電源装置を提供することができる。
【0024】
前記第7の発明によれば、前記第6の発明が奏する効果の他に、温度調整、周波数調整の終了後に断熱シートで前記スリットを塞ぐので、恒温室ユニット内の温度が恒温室ユニット外の温度の影響を受け難く、恒温室ユニット内の温度を設定温度に維持することができる。
【0025】
前記第8の発明によれば、前記第6の発明又は前記第7の発明が奏する効果の他に、恒温室ユニット内における検出温度と基準温度との誤差増幅信号を温度調整用の手段で調整しているので、簡単な構成で容易にかつ高精度で温度調整を行うことができる。
【0026】
前記第9の発明によれば、前記第8の発明が奏する効果の他に、起動用ヒータと微調整用ヒータとで短い一定時間に恒温室ユニット内の温度を目標温度まで上昇させ、その後、微調整用ヒータの小さい発熱量で恒温室ユニット内の温度を設定温度まで上昇させると共に、設定温度に保持できる。
【0027】
前記第10の発明によれば、前記第1の発明ないし前記第9の発明が奏する効果の他に、出力電圧検出用手段の温度が安定かつ一定に保持されているので、より一層高安定度の直流高電圧を出力することができる。
【0028】
前記第11の発明によれば、前記第1の発明ないし前記第10の発明が奏する効果の他に、出力電圧検出用手段を短時間でその飽和温度近辺まで上昇させることができ、一定温度に維持することができる。また、スイッチングノイズなどの影響を受けず、より電子部品の特性を安定に保持できる。
【0029】
前記第12の発明によれば、前記第11の発明が奏する効果の他に、必要な熱量に基づいて飽和温度の予想値を算出し、実験から時間−熱量データを求めておくことによって、周囲温度の変化、放熱などの変化に対しても速やかに対応して、当該時間を容易に設定することが可能である。
【0030】
また、前記第13の発明によれば、高度に安定した電子線を照射する高電圧電子管装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
[実施形態1]
本発明を実施するための最良の形態である実施形態1の高安定度電源装置について説明する。本発明は、描画装置のような非常に精度の高い加速電圧などを必要とする装置に適用されるのに適しており、電子部品の特性のバラツキなどに関係なくそれぞれの電源装置におけるインバータ装置などの駆動周波数を設定周波数に安定かつ高い精度で保持し得る高安定度電源装置に有効である。図1ないし図6、図11及び図12により本発明の実施形態1について説明する。図1は本発明の実施形態1に係る高安定度電源装置に用いられる恒温室ユニット内の構成を示す図である。図2は実施形態1に係る高安定度電源装置の外観の概略を示す図である。図3は高安定度電源装置を構成する電子部品を搭載する主なプリント基板の配置を示す図である。図4はこの高安定度電源装置に用いられる恒温室ユニット内の回路構成を説明するための図である。図5は恒温室ユニットの一部分を説明するための図面である。図6は本発明と従来の電源装置におけるエミッション電流の安定度を比較するための図である。図11は本発明の実施形態1が適用される一般的な高安定度電源装置の回路構成を示す図である。図12は制御の一例の概略を説明するための図である。
【0032】
先ず、本発明の実施形態1を説明する前に、図11及び図12によって本発明が適用される高電圧電子管用の電源装置の回路構成の一例について説明する。加速電圧供給部には、商用交流電源101の交流電圧を所定の直流電圧に変換する第1のコンバータ102の直流低電圧を設定周波数の高周波交流電圧に変換するインバータ回路103が備えられている。インバータ回路103の高周波交流電圧は第1の高電圧トランス104により昇圧され、高電圧トランス104の2次巻線に接続されているコッククロフト・ウォルトン回路のような直流高電圧発生回路105は高電圧電子管EEの加速電圧となる負極性の直流高電圧を出力する。この直流出力高電圧は高電圧抵抗器R1と電圧検出用抵抗器R2とを直列接続してなる出力電圧検出手段106により検出され、第1の制御回路107に送られる。制御回路107は前記直流出力高電圧が一定になるようにインバータ回路103を後述する振幅制御(ドロッパ制御)を行う。なお、高電圧電子管EEはアノードA、フィラメントF及びグリッドGからなるカソードを有する一般的なものである。
【0033】
電子管EEのフィラメントFに電力を供給するフィラメント給電部は、商用交流電源101の交流電圧を所定の直流電圧に変換する第2のコンバータ108と、その出力である直流低電圧を所定の周波数の高周波交流電圧に変換する第2のインバータ回路109と、1次側と2次側とを絶縁する高電圧絶縁トランス110と、高電圧絶縁トランス110の2次巻線に接続された整流回路111と、インバータ回路109を振幅制御する第2の制御回路112とを備える。制御回路112は制御回路107と同様な回路構成である。整流回路111の出力の一端には直流高電圧発生回路105の負極性の直流出力電圧が印加され、整流回路111の出力電圧は高電圧電子管EEのフィラメントFに電流を流す。
【0034】
高電圧電子管EEのグリッドGにバイアス電圧を印加するグリッドバイアス部は、フィラメント給電部と同様に、商用交流電源101の交流電圧を所定の直流電圧に変換する第3のコンバータ113と、その出力である直流低電圧を所定の周波数の高周波交流電圧に変換する第3のインバータ回路114と、高電圧トランス115と、高電圧整流回路116と、インバータ回路114を振幅制御する第3の制御回路117とを備える。制御回路117は制御回路107、112と同様な回路構成である。高電圧整流回路116の直流出力電圧が高電圧電子管EEのグリッドGに印加される。
【0035】
制御回路107、112、117及びインバータ回路103、109、114はほぼ同じ回路構成であり、その概略は図12に示すような構成になっている。図12(A)では、制御回路107及びインバータ回路103についてのみ説明する。制御回路107は、主に基準の周波数信号を発生する発振器120と、制御信号を生成する制御信号生成回路121とで構成されている。発振器120からの基準の周波数信号と制御信号生成回路121からの制御信号とがインバータ回路103の駆動回路122に入力されると、駆動回路122は、それらの信号によって周波数及び振幅が定められた駆動信号によって、スイッチング素子Q1を制御する。スイッチング素子Q1は、前記駆動信号の振幅によってその出力電圧の振幅を制御するドロッパの動作とスイッチングの動作を兼ねている。
【0036】
図12(B)及び図12(C)に示すように、制御信号生成回路121の制御信号の振幅を変化させることで、スイッチング素子Q1のベース電流を変化、つまりスイッチング素子Q1のインピーダンスを変化させることにより、スイッチング素子Q1が負う電圧の大きさX1、X2を制御してトランス104の1次巻線N1の電圧Vの振幅及び電流Iの振幅を制御している。これによって出力電圧及び出力電流を制御している。スイッチング素子Q1としては、トランジスタが好ましい。また、スイッチング素子Q1の損失による発熱を小さくするために、スイッチング素子Q1とは別にドロッパ回路を設け、スイッチング制御とは別に、そのドロッパ回路の電圧降下の大きさを制御して出力電圧の振幅制御を行っても良い。この場合には、スイッチング素子Q1は、トランジスタに限らず、電界効果トランジスタ、IGBT、その他のスッチング半導体素子でも構わない。また、図12(A)のインバータ回路103では、スイッチング素子Q1を1石によって構成しているが、2石用いてプッシュプル構成としてもよく、あるいは周知のフルブリッジ構成、ハーフブリッジ構成などでも勿論構わない。
【0037】
このような制御回路において、発振器120として水晶発振器を用いれば少なくとも±1℃程度の温度変化に対しては安定な周波数特性を有しているので、インバータ回路の駆動周波数が変化するという問題は無い。しかしながら、それぞれの高安定度電源装置に用いられる電子部品には特性に微小のバラツキが存在し、そのバラツキに起因して電源装置毎の共振周波数が微妙に異なるために、極めて安定度の高い出力電圧を得るにはインバータ回路の駆動信号の最適な周波数に初期設定する必要がある。このためには水晶発振器は周波数が固定であるので、周波数を分周するなどのステップ的な調整になるが、周波数の調整を行うにはCR発振器のようなアナログ発振器、又は原子発振器など周波数調整部分を有する発振器を用いなければならない。例えば、CR発振器の場合にはボリュームのような調整手段でCR時定数を調整することによって、容易に周波数を任意の設定周波数に調整することができる。しかしながら、発振周波数を調整できる発振器はCR発振器に限らず周波数調整機能を有しているために、特にそのCR部分など周波数調整部分が周囲の僅かな温度変化によって変化する結果、発振周波数を変化させてしまうという問題がある。
【0038】
このような構成の電源装置において、温度変化によってインバータ回路103、109、114を駆動する周波数が変化すると、前記加速電圧供給部の直流高電圧発生回路105の出力電圧である直流高電圧が変化するばかりでなく、前記フィラメント給電部の整流回路111の直流出力電流、前記グリッドバイアス部の高電圧整流回路116の直流出力電圧も変化する。特に、前記加速電圧供給部の高電圧出力電圧が変化すると、加速電圧のゆらぎが大きくなり、エミッション電流の安定度、つまり電子線放出の安定度が図6(B)に示すように悪化する。したがって、電子管用の高安定度電源装置にあっては、少なくとも前記加速電圧供給部のインバータ回路103の駆動周波数を温度変化に無関係に一定になるように配慮することが大切である。好ましくは、前記フィラメント給電部のインバータ回路109、前記グリッドバイアス部のインバータ回路114の駆動周波数も温度変化に無関係に一定になるようにした方が良い。更にまた、高電圧抵抗器R1と電圧検出用抵抗器R2とを直列接続してなる出力電圧検出手段106の抵抗値が周囲温度に影響されないこと、及び加速電圧となる直流高電圧の検出値と比較される基準電圧も周囲温度に影響されないことも、高安定度電源装置にとって大切である。実施形態1では、主に前記加速電圧供給部のインバータ回路103の駆動周波数を温度変化に無関係に一定になるような構成について述べる。
【0039】
したがって、この実施形態1ではインバータ回路103、109、114の駆動周波数を温度変化に無関係に一定にするため、図1に示しているように、アルミニウムなど熱伝導の良好な金属材料からなるケース1とその外面を囲むようにその外面に貼り付けられている断熱シート2とからなる恒温室ユニット3を備え、インバータ回路103、109、114の駆動周波数をそれぞれ決定する発振器を構成する電子部品4を第1のプリント基板5に搭載してなる発振器6、及び恒温室ユニット3内の温度制御を行うヒータや種々の温度制御部を構成する電子部品7を第2のプリント基板8に搭載してなる温度制御回路9などを恒温室ユニット3内に収納している。ここで、発振器6は図12の発振器120に相当するものである。恒温室ユニット3、発振器6、及び温度制御回路9などについて詳しく説明する前に、この高安定度電源装置の構造の概略について図2、図3により説明する。
【0040】
この高安定度電源装置おいては、図11に示した各インバータ回路103、109、114及び制御回路107、112、117など低電圧部を構成する電子部品及び配線などが、図2に示すように上側に位置する第1の筐体21内に納められ、各トランスの2次巻線、直流高電圧発生回路105、整流回路111、高電圧整流回路116など高電圧部を構成するモールドされた電子部品、配線などが下側に位置する第2の筐体22に納められている。第1の筐体21は第2の筐体22の上に積み重ねられ、2段重ねとなっている。筐体21の天板21Aの内面には、前述の恒温室ユニット3が取付けられている。上側の筐体21内には、図3に示すように、恒温室ユニット3の他に、筐体21の底板であるシャーシ21B上に入力電源用基板31、加熱用電源基板32、制御用基板33、インバータ用基板34、及び制御電源用基板35が搭載されている。ブレーカ、フィルタ用基板、インターフェイス用基板などについては図示するのを省略している。
【0041】
入力電源用基板31は、図11におけるコンバータ102、108、113をそれぞれ構成する不図示の電子部品が搭載されているプリント基板である。加熱用電源基板32は温度制御回路9における不図示の抵抗器のようなヒータに電力を供給する電源を構成する不図示の電子部品を搭載してなるプリント基板である。制御用基板33は、図11における制御回路107、112、117をそれぞれ構成する不図示の電子部品が搭載されているプリント基板である。インバータ用基板34は、図11におけるインバータ回路103、109、114をそれぞれ構成する不図示の電子部品が搭載されているプリント基板であり、単一又は複数枚のプリント基板からなる。制御電源用基板35は、発振器を駆動するための直流入力電圧を与える発振器用電源を構成する不図示の電子部品、及び図11における制御回路107、112、117に電力を供給する制御電源を構成する不図示の電子部品が搭載されているプリント基板である。制御電源用基板35に搭載されている電源は好ましくは2種類以上の直流低電圧を出力する。
【0042】
図1及び図4によって恒温室ユニット3内に収納されている発振器6及び温度制御回路9などについて更に詳しく説明する。温度制御回路9のプリント基板8は二つ以上のネジ端子10、11でケース1の一面に固定されている。発振器6のプリント基板5は支柱部材12によってプリント基板8上に支承されている。発振器6の不図示の電子部品はプリント基板5の一面に搭載されており、その反対面、つまりプリント基板8側の面にはほぼ前面に金属膜13が形成され、その金属膜13は不図示の接地ラインに接続されている。金属膜13は、温度制御回路9が生じるスイッチングノイズを静電的にシールドして、そのノイズが発振器6に対して悪影響を与えない静電遮蔽部材として働く。
【0043】
プリント基板5の上端には、発振器6の発振周波数を調整するための調整用ボリュームのような周波数調整用手段14が備えられている。また、温度制御回路9のプリント基板8の上端には、恒温室ユニット3内の温度が設定温度に保持されるように調整するための調整用ボリュームのような温度調整用手段15が備えられている。恒温室ユニット3のケース1の天板21Aには、周波数調整用手段14と温度調整用手段15とを恒温室ユニット3の外側から調整可能にするための開口である第1、第2のスリット16、17を備える。第1、第2のスリット16、17から周波数調整用手段14と温度調整用手段15とを調整した後に、第1、第2のスリット16、17を塞ぐと共に、ケース1の天板21Aの外面を覆うように断熱シート18を貼り付ける。
【0044】
図4に示すように、恒温室ユニット3の側壁3Aを通して第1の入力配線41が恒温室ユニット3内に導入されている。第1の入力配線41は図3に示した加熱用電源基板32に搭載された加熱用の電源回路の直流出力端子に接続されており、直流電圧V1を第1の電源電圧として恒温室ユニット3内に導入する。図1に示した温度制御回路9のプリント基板8上には、直流電圧V1をこれよりも低い直流電圧V2に変換して第2の電源電圧とする市販の3端子レギュレータ42が搭載されている。さらにプリント基板8上には、直流電圧V2で動作する温度センサ43、直流電圧V2で動作する基準電圧源44、直流電圧V2で動作する第1、第2の誤差増幅器45、46、直流電圧V1で動作する起動用ヒータ47、微調整用ヒータ48が搭載される他に、第1、第2の温度調整用手段15Aと15Bとが搭載され、これらが図3に示した温度制御回路9を構成している。また、恒温室ユニット3の側壁3Aを通して第2の入力配線49が恒温室ユニット3内に導入されている。第2の入力配線49は、図3に示した制御電源用基板35に搭載された発振器用の電源回路の直流出力端子に接続されており、直流電圧V1、V2よりも低い直流電圧V3を第3の電源電圧として恒温室ユニット3内に導入する。前述したように、温度制御回路9のプリント基板8から静電遮蔽されている発振器6のプリント基板5上には、直流電圧V3で動作する第1の発振器50と第2の発振器51、及び第1の発振器50の発振周波数を調整する周波数調整用手段14とが搭載されている。ここで、図1で示した温度調整用手段15は図4では第1、第2の温度調整用手段15Aと15Bに相当する。また、図1に示した発振器6は図4では第1の発振器50、又は第1の発振器50と第2の発振器51とに相当する。
【0045】
次に、恒温室ユニット3内の発振器6及び温度制御回路9の動作について説明する。起動用ヒータ47と微調整用ヒータ48とは、不図示の電源スイッチがオンするときに同時にオンし、直流電圧V1によって起動ヒータ47と微調整用ヒータ48とを電流が流れ、加熱が開始される。ただし、発振周波数の初期調整の場合には、恒温室ユニット3内の温度制御回路9、第1の発振器50と第2の発振器51だけを動作させる。温度センサ43は恒温室ユニット3内の温度を検出し、検出温度に比例する電圧信号を温度信号として第1、第2の誤差増幅器45、46の一方の入力端子に入力する。第1、第2の誤差増幅器45、46の他方の入力端子には、基準電圧源44からの基準電圧を第1の温度調整手段15Aと第1の演算増幅器15a、第2の温度調整手段15Bと第2の演算増幅器15bとによってそれぞれ調整された第1、第2の基準電圧信号E1、E2が入力される。ここで、温度調整手段15Aは演算増幅器15aの帰還量を調整し、第2の温度調整手段15Bは第2の演算増幅器15bの帰還量を調整することによって、第1、第2の誤差増幅器45、46に入力される基準電圧信号E1、E2を調整している。第1、第2の誤差増幅器45、46は前記温度信号と基準電圧信号E1、E2とを比較し、それらの誤差信号を出力する。ここで、基準電圧信号E1は基準電圧信号E2よりも低い目標温度に設定されている。例えば、恒温室ユニット3内の設定温度が50度のとき、目標温度はそれよりも2〜3度程度低い温度(例えば48度)であり、基準電圧信号E1は前記目標温度に相当し、基準電圧信号E2は前記設定温度に相当する。第1、第2の誤差増幅器45、46は、前記温度信号が基準電圧信号E1、E2よりも低いときには、起動用ヒータ47、微調整用ヒータ48の加熱動作を続行させる。
【0046】
図5(A)、(B)に示すように、起動用ヒータ47には並列に電流制限用抵抗54と発光ダイオード55とが接続され、微調整用ヒータ48には並列に電流制限用抵抗56と発光ダイオード57とが接続されている。起動用ヒータ47に電流I1が流れているときには、発光ダイオード55にも電流が流れているので、発光ダイオード55は発光する。同様に、微調整用ヒータ48に電流I2が流れているときには、発光ダイオード57にも電流が流れているので、発光ダイオード57は発光する。したがって、起動用ヒータ47、微調整用ヒータ48が加熱動作を行っているかどうかは発光ダイオード55、57が発光しているか否かで一目瞭然に分かる。ここで発光ダイオード55は、第2のプリント基板8に搭載してなる温度制御回路9の電子部品7の一つであり、図1には示していないが、恒温室ユニット3の天板21Aに形成された第2のスリット17から見える位置に備えられている。また、発光ダイオード57は、第2のプリント基板8に搭載してなる温度制御回路9の電子部品7の一つであり、図1には示していないが、恒温室ユニット3の天板21Aに形成された第2のスリット17から見える位置に備えられている。
【0047】
先ず、恒温室ユニット3内の温度が目標温度(例えば48度)近辺に至るときには、作業者が不図示の温度計を観察しながら、実測で48度の温度に至ったときに発光ダイオード55の発光が止むように、第2のスリット17を通して第1の温度調整用手段15Aを調整する。つまり、電子部品の特性のバラツキがあっても、起動用ヒータ47は実測した目標温度で加熱動作を停止する。このとき当然に微調整用ヒータ48は加熱動作を続行しているので、恒温室ユニット3内の温度は今までよりは緩やかに上昇する。恒温室ユニット3内の温度が設定温度(例えば50度)近辺に至るときには、作業者は再度、不図示の温度計を観察しながら、実測で50度の温度に至ったときに発光ダイオード57の発光が止むように、第2のスリット17を通して第2の温度調整用手段15Bを調整する。
【0048】
つまり、微調整用ヒータ48は実測した設定温度に至るときに加熱動作を停止し、その設定温度を若干下がるときに再び加熱動作を行うので、電子部品の特性にバラツキがあっても、各電源装置の恒温室ユニット3内の温度は設定温度に保持される。この状態では、発光ダイオード55は発光せず、発光ダイオード57は恒温室ユニット3内の温度の僅かな変化(例えば±0.1℃)で点滅する。つまり、恒温室ユニット3内の温度は例えば50±0.1℃程度に保持される。具体的には図示していないが、第1の温度調整用手段15A及び演算増幅器15aで基準電圧信号E1を調整することによって、誤差増幅器45の出力である誤差信号を調整している。同様に、第2の温度調整用手段15B及び演算増幅器15bで基準電圧信号E2を調整することによって、誤差増幅器46の出力である誤差信号を調整している。この温度調整は、恒温室ユニット3の容積が極力小さくなるように恒温室ユニット3が作られているので、比較的短い時間で行われる。なお、この実施形態1では第1、第2の温度調整用手段15A、15Bの調整が同じ第2のスリット17を通して行われたが、もう一つスリットを設けて別々のスリットから温度調整を行っても勿論よい。
【0049】
前述のように温度調整が行われて、恒温室ユニット3内の温度が設定温度に達した状態で、不図示の周波数測定器を見ながら図1の第1のスリット16を通して周波数調整手段14で第1の発振器50の発振周波数を厳密に設定周波数に設定する。したがって、各電源装置に用いられる電子部品に特性上のバラツキがあっても、第1の発振器50は設定温度で精確な設定周波数の信号を出力することができる。第1の発振器50の発振出力信号は、図11に示した加速電圧用のインバータ回路103の駆動信号の周波数を決める信号g1として、また、フィラメント用のインバータ回路109の駆動信号の周波数を決める信号g2として、恒温室ユニット3内から第1の信号出力配線52を通して導出される。また、第2の発振器51は固定周波数の信号を出力すればよいので、この実施形態1では水晶発振器を用いている。
【0050】
したがって、第2の発振器51を必ずしも恒温室ユニット3内に配置する必要は無い。第2の発振器51の出力信号は、図11に示したグリッドバイアス用のインバータ回路114の駆動信号の周波数を決める信号g3として、恒温室ユニット3内から第2の信号出力配線53を通して導出される。前述したように周波数調整を完了したら、図1に示したように、断熱シート18を恒温室ユニット3のケース1の天板21Aを少なくとも覆うように貼り付ける。天板21Aに形成されているすべてのスリット16、17が断熱シート18で塞がれるのは勿論である。実施形態1によれば、恒温室ユニット3内の温度が実測した設定値で発振器50の発振周波数を適切な設定周波数に調整しているので、電子部品の特性のバラツキにかかわらず、それぞれの電源装置に最適な駆動周波数に設定することができ、図6(A)に示すように、安定したエミッション電流が得られる高安定な直流高電圧を出力する高安定電源装置を提供することができる。図6(A)に示すエミッション電流は、従来電源装置で得られる図6(B)に示したエミッション電流に比べてほぼ1/6程度小さくなっており、大幅に安定化されるのが分かる。また、図3に示すように、この電源装置にあっては各インバータ回路の入力電源用基板31に対して、温度制御回路9用の加熱用電源基板32を別にしているので、温度制御回路9は各インバータ回路側からのノイズの影響をほとんど受けることなく、恒温室ユニット3内の温度を正確に制御することができる。また、図1に示したように、温度制御回路9が搭載されたプリント基板8とは別のプリント基板5に発振器6を搭載しており、かつ別の制御電源用基板35を用い、さらに静電的に遮蔽もしているので、発振器6は温度制御回路9及びインバータ回路からのノイズの影響を受けることなく、安定した正確な周波数の信号を出力できる。
【0051】
[実施形態2]
この実施形態2に係る高安定化電源装置は、実施形態1に係る高安定化電源装置よりも更に高い安定度の直流高電圧を出力し得るものであり、インバータ回路の駆動信号の周波数の高安定化を図った上に、図11に示した高電圧抵抗器R1と電圧検出用抵抗器R2とを直列接続してなる出力電圧検出手段106の温度を一定に保持して、周囲温度の変化に影響されないようにするものである。インバータ回路の駆動信号の周波数の高安定化を図る構成など低電圧部については、実施形態1と同じであるので説明を省略する。図7〜図10を用いて実施形態2に係る高安定度電源装置について説明する。図7は実施形態2に係る高安定度電源装置の直流高電圧部のブロック図であり、図8はその直流高電圧部における出力電圧検出手段とそれの温度制御部の構造を示す図であって、図7のX−X’での断面図である。図9は直流高電圧部の温度制御装置を説明するための図である。図10は温度制御のフローチャートを示す図である。図7〜図10において、図1〜図5で用いた記号と同じ記号は同じ名称の部材を示すものとする。
【0052】
この実施形態2では、図7に示すように高安定度電源装置の直流高電圧部を第1、第2、第3の三つのブロックに分けて、それぞれを電気絶縁被覆材料でモールドしている。第1のブロックは、図11の出力電圧検出手段106などを電気絶縁樹脂でモールドしてなる直流出力電圧検出部60からなる。第2のブロックは、電子管のフィラメントを加熱するための電力を供給するフィラメント給電回路とグリッドのバイアス電圧を供給するグリッド給電回路との高電圧部分、つまり図11の破線で囲まれた部分FGを電気絶縁樹脂でモールドしてなるフィラメント・グリッド給電部70からなる。第3のブロックは、図11に示した高電圧トランス104の高電圧部分と直流高電圧発生回路105とを鎖線で囲んだ部分HVに相当する高電圧昇圧部80からなる。
【0053】
図8に示すように、直流出力電圧検出部60は図11に示した出力電圧検出手段106を構成する高電圧抵抗器R1と電圧検出用抵抗器R2とをエポキシ樹脂のような電気絶縁被覆材料Mでモールドしてなるモールド物品61を備える。モールド物品61は直方体の形状をしており、モールド物品61の六つの外面は、図示しない高電圧接続部を除いて一般的な導電塗料などを塗布、又は金属を蒸着することによって形成された導電膜62で覆われている。導電膜62の上には金属板63が備えられている。導電膜62と金属板63との間の熱的結合を高めるためのコンパウンド層64が形成されている。なお、高電圧抵抗器R1には不図示の電圧均等化用コンデンサが並列接続されていてもよく、また、電圧検出用抵抗器R2には不図示の高周波除去用コンデンサが並列接続されていても勿論よい。電圧検出用抵抗器R2は必ずしもモールド物品61内でなくともよい。
【0054】
モールド物品61を覆う金属ジャケットを形成する金属板63は、モールド物品61の6面を覆う銅板のような熱伝導の良好な熱伝導材料手段からなり、その厚みは熱伝導、熱容量などの面から、好ましくは厚い方がよいが、重量、コスト、大きさなどを考慮して決められる。導電膜62は、モールド物品61の外面と金属板63との間の電位差をゼロにして、これらの間に放電が発生するのを防ぐ働きを行うものである。これら導電膜62とコンパウンド層64と金属板63とは、モールド物品61の6面を覆う熱伝導材料手段を形成する。コンパウンド層64は、金属板63を導電膜62に密接させることができれば、必要ではない。
【0055】
対向する一対の金属板63それぞれに、温度制御手段として温度調整用ヒータ65、66を設ける。温度調整用ヒータ65、66については、具体的な構造を図示しないが、例えば、適切な抵抗値を有する多数の抵抗器を直列接続したものを熱収縮チューブ内に納め、それを角型に配列して熱伝導の良好なシート間に挟んでなる簡便なシート状のヒータである。このようなヒータが金属板63に固着されている。温度調整用ヒータ65、66の動作、働きなどについては後で詳述するが、モールド物品61の温度が飽和予想値で安定したら、その温度を安定に維持する働きを行う。ここで、温度調整用ヒータ65、66は金属板63の2面だけに備えられているが、金属板63は熱伝導がよいことと、その保持される温度が周囲温度に比較的近い温度であるので、すべての金属板63がほぼ一様な温度に保持される。なお、温度調整用ヒータ65を金属板63の1面のみに設け、温度調整用ヒータ66は省略しても良い。又は金属板63の3面に設けても良い。
【0056】
また、温度調整用ヒータ65、66が設けられた金属板63にほぼ直交する面の金属板63には別の温度制御手段として初期加熱用ヒータ67が取付けられている。初期加熱用ヒータ67も、例えば、前述したような構造のシート状のヒータであり、温度調整用ヒータ65、66に比べて数倍から十数倍程度の電力容量、つまり発熱容量を有する。この初期加熱用ヒータ67の動作、働きなどについても後で詳述するが、モールド物品61は前述のように熱時定数が大きく、したがって、モールドされている高電圧抵抗器R1が発生する熱と、温度調整用ヒータ65、66が発生する熱だけでは飽和温度に達するまでに長時間かかるので、初期加熱用ヒータ67は起動初期にモールド物品61を飽和温度の予想値近辺まで短時間で上昇させる働きを行う。温度調整用ヒータ65、66は、市販のセラミックヒータ、あるいはペルチエ素子でも構わない。そして、これら温度調整用ヒータ65、66、初期加熱用ヒータ67、及びこれらが設けられていない金属板63部分を断熱材料層68で覆う。断熱材料層68は市販されている一般的なもので良い。
【0057】
図7には示していないが、モールド物品61の表面温度を測定する温度センサが、温度調整用ヒータ65、66が設けられた金属板63の表面に接着される。モールド物品61の表面温度と金属板63の表面温度とは実質的に等しい。また、図7には示していないが、モールド物品61の内部温度を測定する温度センサも備えている。これら温度に関するデータは後述する温度制御装置に送られる。
【0058】
次に、フィラメント・グリッド給電部70は、図7に示すように、フィラメント・グリッドモールド体71と、このフィラメント・グリッドモールド体71の一面に取付けられたフィラメント・グリッド用ヒータ72とからなる。必要に応じてこのフィラメント・グリッド用ヒータ72が取付けられている面と対向する面に同様な別のフィラメント・グリッド用ヒータを取付けても勿論よい。図7には示していないが、フィラメント・グリッドモールド体71にもその表面の温度、内部の温度をそれぞれ測定する温度センサを備える。なお、高電圧昇圧部80については、その周囲温度が変化してもこの部分の電子部品や回路は出力高電圧の安定性に実質的に影響を与えないので、いかなるヒータも設けていない。
【0059】
次に、図9によって温度制御装置90及び関連する構成について説明する。この温度制御装置90はマイコンなどを備え、モールド物品61用の温度調整用ヒータ65、66の電力制御、初期加熱用ヒータ67の駆動、フィラメント・グリッド用ヒータ72の駆動を行う。温度制御装置90は、直流入力端子91、91′から、例えば、DC24Vの直流電圧を受けて動作する。そして、温度制御装置90は、必要な種々の設定が行われた状態で、信号端子92、92′から直流高電圧電源装置の運転オン信号をI/O入力端子93に受信すると、I/O出力端子94から信号を出力して、第1のリレーコイル95A、第2のリレーコイル95Bを付勢する。第1、第2のリレーコイル95A、95Bが付勢されると、その第1のリレー接点95′A、第2のリレー接点95′Bが閉じ、これに伴い、第1のリレー接点95′Aに直列接続されている初期加熱用ヒータ67、第2のリレー接点95′Bに直列接続されているフィラメント・グリッド用ヒータ72に、入力端子91、91′から電流が流れ始め、前述した直流出力電圧検出部60、フィラメント・グリッド給電部70をそれぞれ加熱し始める。
【0060】
また、温度制御装置90は、信号端子92、92′から高安定度電源装置の運転オン信号をI/O入力端子93に受信すると、D/A出力端子96から前述の温度調整用ヒータ65、66に電流を流す。このとき温度調整用ヒータ65、66に供給される電流は、その最大の供給電流を100%とすると、その半分である50%の電流値に制御される。ただし、この時点で必ずしも温度調整用ヒータ65、66に電力が供給される必要はなく、直流出力電圧検出部60が飽和温度の予想値でほぼ安定する時点以前の任意の時点で、電力供給が開始されて、温度調整用ヒータ65、66が加熱動作を開始しても良い。
【0061】
A/D入力端子97には、直流出力電圧検出部60の周囲の温度を検出する温度センサS1、S2、直流出力電圧検出部60の内部の温度を検出する温度センサS3、直流出力電圧検出部60の表面温度、つまり前述の金属板63の温度を測定する温度センサS4、S5、フィラメント・グリッド給電部70の内部の温度を検出する温度センサS6、フィラメント・グリッド給電部70の表面の温度を検出する温度センサS7からの温度検出値が入力される。これらの温度検出値は温度データとして温度制御装置90に入力される。なお、予備の温度センサS8も備えられている。ここで、直流出力電圧検出部60の内部の温度とはモールド体の比較的中心部に近い箇所の温度を言い、好ましくは図11に示した高電圧抵抗器R1の近傍の温度がよい。
【0062】
次に、図10を用いて前述した直流出力電圧検出部60、及びこれを用いた高安定度電源装置の温度制御について説明する。先ず、各温度センサS1〜S7からのアナログ温度データがA/D入力端子97に入力され(ステップ1、以下ではステップをStで表す。)、それらはディジタル温度データに変換される。ここで、温度センサS1、S2の温度検出値は平均化され、その平均値が周囲温度Taとされる。また、金属板63の温度を測定する温度センサS4、S5の温度検出値は平均化され、その平均値が直流出力電圧検出部60の表面温度とされる。以後、同じである。
【0063】
そして、これら温度検出信号が図示しないマイコンに読み込まれ(St2)、直流高電圧電源装置が前述のようにして起動され、運転オン信号がI/O入力端子93に入力される(St3)と、直流出力電圧検出部60(モールド物品61)、フィラメント・グリッド給電体71の飽和温度の予想値を不図示のマイコンに設定する(St4)。直流出力電圧検出部60の飽和温度の予想値は、周囲温度を目安として実験から予め求め、確認されている飽和温度データから、温度センサS1とS2によって検出された周囲温度Taの検出値に基づいて求められる。
【0064】
次に、タイマ機能を働かせ、初期加熱用ヒータ67とフィラメント・グリッド用ヒータ72とをオンさせると共に、温度調整用ヒータ65、66をオンさせて、加熱動作を開始させる(St5)。このタイマ機能によって、I/O出力端子94は、オン時間が経過するまで初期加熱用ヒータ67へ電力の供給を行わせる信号を出力する。また、タイマ機能によって、I/O出力端子94は、そのオン時間が経過するまでフィラメント・グリッド用ヒータ72へ電力の供給を行わせる信号を出力する。フィラメント・グリッド用ヒータ72の加熱によってフィラメント・グリッド給電部70の表面温度は急激に上昇し、フィラメント・グリッド用ヒータ72のオフによってその表面温度は急激に下降を始め、従来に比べて短い時間で飽和温度に向かって減少する。
【0065】
つまり、初期加熱用ヒータ67、フィラメント・グリッド用ヒータ72は無制御で100%出力の状態でそれぞれ予め設定された時間だけ加熱を行い(St6)、タイマを停止させ、初期加熱用ヒータ67、フィラメント・グリッド用ヒータ72を順次オフにする(St7)。初期加熱用ヒータ67、フィラメント・グリッド用ヒータ72それぞれの発熱によって、直流出力電圧検出部60、フィラメント・グリッド給電部70それぞれの表面温度は短時間で上昇し、その熱が熱伝導によって電気絶縁被覆材料の内部まで伝わり、それによりモールドされている抵抗器、電子回路の発する熱の働きなどもあって、短い期間にそれぞれの飽和温度に近い予想値で安定する。そして、直流出力電圧検出部60、フィラメント・グリッド給電部70それぞれの内部温度も、表面温度と同様に短時間で上昇すると共に、従来に比べて短い時間で温度安定領域に近づく。
【0066】
D/A出力端子96は、ほぼ50%の出力で温度調整用ヒータ65、66を動作させる(St7)。温度調整用ヒータ65、66の加熱動作は、初期加熱用ヒータ67のオンと同時に開始する。前記設定時間の経過により、初期加熱用ヒータ67がオフして加熱動作を停止しても、温度調整用ヒータ65、66はそのまま50%出力で加熱動作を行う。ここで、温度調整用ヒータ65、66は必ずしも初期加熱用ヒータ67と同時にオンすることはなく、初期加熱用ヒータ67がオフするまでに、加熱動作に入っていればよい。そのときには、50%出力まで徐々に増大するソフトスタート起動であってもよい。
【0067】
そして、直流出力電圧検出部60の表面温度がその飽和温度の予想値付近で安定すると(St8)、温度制御装置90はその安定した値を制御目標値として、温度調整用ヒータ65、66をフィードバック制御し(St9)、検出温度が前記制御目標値よりも低ければ(St10)、温度調整用ヒータ65、66への出力電力を大きくし(St11)、検出温度が前記制御目標値よりも高ければ(St10)、温度調整用ヒータ65、66への出力電力を小さくして(St12)、直流出力電圧検出部60を飽和温度の前記予想値で安定させる。したがって、周囲温度の変化にかかわらず、温度調整用ヒータ65、66が直流出力電圧検出部60の表面の温度を一定に保持し、このことが直流出力電圧検出部60の内部をその飽和温度に保持する。つまり、図11の出力電圧検出手段106の温度を高い精度で一定に維持するので、抵抗器R1、R2の抵抗値が高い精度で一定に保持される。
【0068】
実施形態2の高安定度電源装置によれば、インバータ回路の駆動信号の周波数を決定する信号の周波数が周囲温度変化に対して安定であると同時に、出力電圧検出手段の抵抗値が周囲温度の変化に対してやはり極めて安定である。したがって、インバータ回路の駆動信号の周波数が温度変化に対して極めて安定であり、かつ出力電圧検出信号が温度変化に影響されない精度の高い検出値を呈するので、前記駆動信号は周囲の温度変化に影響されずに高安定となり、より一層高安定度の高電圧直流電圧を出力することができる。実施形態1、2では高電圧電子管用の高安定度電源装置について述べたが、本発明はインバータ回路の駆動周波数を決定する信号を出力する手段を有する低電圧電源装置又は高電圧電源装置の全てに適用できるのは勿論である。なお、図12に示した発振器120に相当する発振器6を恒温室ユニット3内へ収納する例を述べたが、必要に応じて図12における鋸歯状波発生器121、更にはコンパレータ122をも恒温室ユニット3内へ収納しても構わない。なお、以上の実施形態ではインバータ回路が発生するスイッチングノイズを極力小さくするために、インバータ回路を振幅制御してドロッパ作用をさせたが、通常のインバータ回路のようにスイッチング素子をオフ状態と飽和領域とでパルス幅制御動作をさせるパルス幅制御などのスイッチング制御でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態1に係る高安定度電源装置の恒温室ユニット部分を示す図面である。
【図2】実施形態1に係る高安定度電源装置の外観の概略を示す図面である。
【図3】実施形態1に係る高安定度電源装置における低電圧部のプリント基板の配置の概要を示すブロック図である。
【図4】恒温室ユニット部分を説明するための図面である。
【図5】恒温室ユニット部分の一部分を説明するための図面である。
【図6】本発明と従来例とのエミッション電流安定度を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る高安定度電源装置の高電圧部分を説明するための図である。
【図8】実施形態2に係る高安定度電源装置における出力電圧検出部を破断線X−X’で切断した断面図である。
【図9】実施形態2に係る高安定度電源装置における出力電圧検出部のなどの温度制御を説明するための図である。
【図10】実施形態2に係る高安定度電源装置の温度制御を説明するためのフローチャートである。
【図11】実施形態1に適用される高安定度電源装置の回路構成の一例を示す図である。
【図12】実施形態1の高安定度電源装置に用いられる電力制御の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・ケース
2・・・断熱シート
3・・・恒温室ユニット
3A・・・恒温室ユニット3の側壁
4、7・・・電子部品
5、8・・・プリント基板
6・・・発振器
9・・・温度制御回路
10、11・・・ネジ端子
12・・・支柱部材
13・・・金属膜
14・・・周波数調整用手段
15・・・温度調整用手段
15A、15B・・・第1、第2の温度調整手段
15a、15b・・・第1、第2の演算増幅器
16、17・・・スリット
18・・・断熱シート
21・・・第1の筐体
21A・・・筐体21の天板
21B・・・筐体21の底板であるシャーシ
22・・・第2の筐体
31・・・入力電源用基板
32・・・加熱用電源基板
33・・・制御用基板
34・・・インバータ用基板
35・・・制御電源用基板
41・・・第1の入力配線
42・・・3端子レギュレータ
43・・・温度センサ
44・・・基準電圧源
45、46・・・第1、第2の誤差増幅器
47・・・起動用ヒータ
48・・・微調整用ヒータ
49・・・第2の入力配線
50、51・・・第1、第2の発振器
52、53・・・第1、第2の出力信号配線
54、56・・・電流制限用抵抗
55、57・・・発光ダイオード
60・・・直流出力電圧検出部
61・・・モールド物品
62・・・導電膜
63・・・金属板
64・・・コンパウンド層
65、66・・・温度調整用ヒータ
67・・・初期加熱用ヒータ
68・・・断熱材料層
70・・・フィラメント・グリッド給電部
71・・・フィラメント・グリッドモールド体
72・・・フィラメント・グリッド用ヒータ
80・・・高電圧昇圧部
90・・・温度制御装置
91、91′・・・直流入力端子
92、92′・・・信号端子
93・・・I/O入力端子
94・・・I/O出力端子
95A、95B・・・第1、第2のリレーコイル
95′A、95′B・・・第1、第2のリレー接点
96・・・D/A出力端子
97・・・D/A入力端子
101・・・商用交流電源
102・・・第1のコンバータ
103・・・第1のインバータ回路
104・・・高電圧トランス
105・・・直流高電圧発生回路
106・・・出力電圧検出手段
107・・・第1の制御回路
108・・・第2のコンバータ
109・・・第2のインバータ回路
110・・・高電圧絶縁トランス
111・・・整流回路
112・・・第2の制御回路
113・・・第3のコンバータ
114・・・第3のインバータ回路
115・・・高電圧トランス
116・・・高電圧整流回路
117・・・第3の制御回路
120・・・発振器
121・・・制御信号生成回路
122・・・駆動回路
R1・・・高電圧抵抗器
R2・・・電圧検出用抵抗器
EE・・・電子管
S1〜S8・・・温度センサ
g1〜g3・・・信号
V1〜V3・・・直流電圧
E1、E2・・・基準電圧信号
I1、I2・・・電流
M・・・電気絶縁被覆材料
F・・・フィラメント
G・・・グリッド
A・・・アノード
HV・・・高電圧昇圧部モールド
FG・・・フィラメント・グリッド給電部モールド
Q1・・・スイッチング素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、該インバータ回路の出力側に1次巻線が接続されたトランスと、該トランスの2次巻線に接続された整流装置と、前記インバータ回路の駆動信号の周波数を決定する発振器とを備え、高安定度の直流電圧を出力する高安定度電源装置において、
前記発振器と該発振器の周囲温度を制御する温度制御回路とが単一の恒温室ユニット内に収納され、
前記恒温室ユニット内で前記温度制御回路の調整及び温度制御が行われることにより、前記発振器の発振周波数を安定化し、前記インバータ回路の前記駆動信号の周波数を高度に安定化することを特徴とする高安定度電源装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記発振器を構成する電子部品が第1のプリント基板に搭載され、
前記温度制御回路を構成する電子部品が第2のプリント基板に搭載されていることを特徴とする高安定度電源装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1のプリント基板と前記第2のプリント基板とに対してそれぞれ独立した電源から電力を供給するように構成したことを特徴とする高安定度電源装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3において、
前記発振器と前記温度制御回路との間には静電遮蔽体が備えられていることを特徴とする高安定度電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、
前記恒温室ユニットの壁部を通して、前記発振器に直流電力を給電する第1の入力配線と、前記温度制御回路に直流電力を給電する第2の入力配線とが前記恒温室ユニット内に導入されると共に、前記発振器の高安定度発振信号を送信する出力配線が導出されていることを特徴とする高安定度電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかにおいて、
前記発振器が出力する高安定度発振信号の周波数を調整する周波数調整用手段と、前記温度制御回路の温度を調整する温度調整用手段とを備え、
前記恒温室ユニットの壁部にはスリットが形成されており、
前記スリットから前記周波数調整用手段と前記温度調整用手段とを調整することを特徴とする高安定度電源装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記周波数調整用手段と前記温度調整用手段との調整後に前記スリットを断熱シートで塞ぐことを特徴とする高安定度電源装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7において、
前記温度制御回路は、前記恒温室ユニット内の温度に対応する電圧信号を出力する温度センサと、設定温度に対応する基準電圧信号を与える基準電圧源と、前記電圧信号と前記基準電圧信号との誤差増幅信号を出力する誤差増幅器と、該誤差増幅器からの前記誤差増幅信号により発熱が調整されるヒータ部材とを備え、
前記温度調整用手段を調整することによって前記誤差増幅器の前記誤差増幅信号が調整され、前記恒温室ユニット内の温度が前記設定温度に保持されることを特徴とする高安定度電源装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記ヒータ部材は、起動用ヒータと微調整用ヒータとからなり、前記恒温室ユニット内の温度が前記設定温度よりも低い目標温度に達したときには、前記起動用ヒータをオフさせ、前記微調整用ヒータの発熱で前記恒温室ユニット内の温度を前記設定温度に維持すること特徴とする高安定度電源装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかにおいて、
前記整流装置の出力には、高電圧抵抗器と電圧検出用抵抗器とを直列接続してなる出力電圧検出用手段が接続され、
該出力電圧検出用手段は電気絶縁被覆材料でモールドされてモールド物品となっており、
該モールド物品の外面の2面以上を覆う導電性の良好な熱伝導材料手段と、該熱伝導材料手段の外面に設けられて、該熱伝導材料手段の温度を制御する温度制御手段と、該熱伝導材料手段の外面に設けられて、該熱伝導材料手段の温度を検出する温度検出手段とを備え、
前記温度制御手段の温度を制御して、前記熱伝導材料手段の温度を一定に保つことを特徴とする高安定度電源装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかにおいて、
前記温度制御手段は、初期加熱用ヒータとこれよりも電力容量の小さい温度調整用ヒータとからなり、予め設定した時間だけ前記初期加熱用ヒータを無制御で運転して、予め設定した電力量を供給することを特徴とする高安定度電源装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記予め設定した時間は、前記電気絶縁被覆材料をその飽和温度の予想値まで温度上昇又は降下させるのに必要な熱量に基づいて求められることを特徴とする高安定度電源装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれかに記載された高安定度電源装置により駆動される高電圧電子管を備える高電圧電子管装置において、
前記インバータ回路の交流出力電圧は前記トランスによって交流高電圧に昇圧され、その昇圧された交流高電圧は前記整流回路によって直流高電圧に変換され、前記高電圧電子管のアノードと、フィラメント及びグリッドからなるカソードとの間に印加されることを特徴とする高電圧電子管装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−288907(P2007−288907A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112642(P2006−112642)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】