説明

高屈折率金属酸化物透明分散液及び透明樹脂複合体並びに光学レンズ

【課題】高い屈折率及び高い透明性を有する透明樹脂複合体を作製することが可能な高屈折率金属酸化物透明分散液、及び、高屈折率の金属酸化物微粒子と樹脂とを複合化することで高屈折率及び高透明性を兼ね備えた透明樹脂複合体、並びに、この透明樹脂複合体を用いた光学レンズを提供する。
【解決手段】本発明の高屈折率金属酸化物透明分散液は、表面が有機酸により修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下でありかつ屈折率が1.8以上の金属酸化物微粒子と、分散媒とを含有し、この金属酸化物微粒子の表面の修飾部分における有機酸の質量比を、この金属酸化物微粒子の5質量%以上かつ100重量%以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率金属酸化物透明分散液及び透明樹脂複合体並びに光学レンズに関し、更に詳しくは、高屈折率の金属酸化物微粒子からなるフィラー材を樹脂と複合化する際に用いて好適な高屈折率金属酸化物透明分散液、高屈折率の金属酸化物微粒子と樹脂とを複合化することで高屈折率及び高透明性を有する透明樹脂複合体、及び、この透明樹脂複合体により光透過領域を構成した光学レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリカ等の無機酸化物をフィラー材として樹脂と複合化することにより、樹脂の機械的特性等を向上させる試みがなされている。このフィラー材と樹脂とを複合化する方法としては、無機酸化物粒子を水および/または有機溶媒中に分散させた分散液と樹脂とを混合する方法が一般的であり、この分散液と樹脂を種々の方法により混合することにより、無機酸化物粒子が第2相として複合化された無機酸化物粒子複合化プラスチックを作製することができる。
【0003】
一方、カメラ、レンズ付フィルム等のフィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラ、CD、CD−ROM、MO、CD−R、CD−Video、DVD等の光ピックアップ、複写機、プリンター等のOA機器等の各種機器に用いられる光学素子には、高い光透過率、高い屈折率等の基本的な光学特性が必要とされ、さらには、高い熱安定性、高い硬度、低い吸水率、高い耐候性、耐溶剤性等、様々な特性が要求される。
これらの光学素子の1つに、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリカーボネート(PC)等の樹脂を用いた光学レンズがある(例えば、特許文献1参照)。特に、耐熱性および耐薬品性に優れた光学レンズとして、ポリエチレングリコールビスアリルカーボネートを用いたプラスチックレンズが提案されている。
【特許文献1】特開2001−89660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の樹脂製の光学レンズでは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリカーボネート(PC)等を用いているために、低い熱安定性、高い吸水性、環境、特に高温高湿の環境下で光学特性が変動する等の欠点を有しており、従来より要求されている高い熱安定性、低い吸水率、高い耐候性等を満足することが難しいという問題点があった。
また、耐熱性および耐薬品性に優れているとされたプラスチックレンズにおいても、高屈折率及び耐熱性の点で満足するには至っておらず、高い熱安定性、高屈折率等の要求に応えることは難しいものであった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、高い屈折率及び高い透明性を有する透明樹脂複合体を作製することが可能な高屈折率金属酸化物透明分散液、及び、高屈折率の金属酸化物微粒子と樹脂とを複合化することで高屈折率及び高透明性を兼ね備えた透明樹脂複合体、並びに、この透明樹脂複合体を用いた光学レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、無機フィラーを樹脂中に分散させた複合材料を作製する際に、無機フィラーとして屈折率が1.8以上の金属酸化物微粒子を用いると、この複合材料がマルテンサイト変態と称される体積膨張により高い靭性を示すことに着目し、そこで、従来より用いられている金属酸化物粒子の欠点である、一次粒径の大きさに係わらず凝集が激しく、樹脂中に分散させた際に数μmの径の粗大粒が存在し、複合材料の透明性が失われるという欠点を克服するために鋭意検討を重ねた結果、高屈折率金属酸化物微粒子として、表面が有機酸により修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下でありかつ屈折率が1.8以上の金属酸化物微粒子を用い、この金属酸化物微粒子を樹脂中に分散させて複合材料とすれば、高い屈折率及び高い透明性を有する透明樹脂複合体を容易に作製することが可能であり、よって、高屈折率及び高透明性を兼ね備えた樹脂製の光学レンズを得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の高屈折率金属酸化物透明分散液は、表面が有機酸により修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下でありかつ屈折率が1.8以上の金属酸化物微粒子と、分散媒とを含有し、前記金属酸化物微粒子の表面の修飾部分における有機酸の質量比は、この金属酸化物微粒子の5質量%以上かつ100重量%以下であることを特徴とする。
【0008】
前記有機酸は、脂肪酸、多価カルボン酸、芳香族カルボン酸の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
前記金属酸化物微粒子の含有率は、10重量%以上かつ80重量%以下であることが好ましい。
前記金属酸化物微粒子は、酸化ジルコニウムまたは酸化チタンであることが好ましい。
【0009】
本発明の透明樹脂複合体は、表面が有機酸により修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下でありかつ屈折率が1.8以上の金属酸化物微粒子と、透明性樹脂とを含有し、前記金属酸化物微粒子の表面の修飾部分における有機酸の質量比は、この金属酸化物微粒子の5質量%以上かつ100重量%以下であることを特徴とする。
【0010】
前記有機酸は、脂肪酸、多価カルボン酸、芳香族カルボン酸の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
前記金属酸化物微粒子の含有率は、10重量%以上かつ80重量%以下であることが好ましい。
前記金属酸化物微粒子は、酸化ジルコニウムまたは酸化チタンであることが好ましい。
前記透明性樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂の群から選択される1種または2種以上を含有してなることが好ましい。
【0011】
本発明の光学レンズは、少なくとも光透過領域が本発明の透明樹脂複合体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高屈折率金属酸化物透明分散液によれば、表面が有機酸により修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下でありかつ屈折率が1.8以上の金属酸化物微粒子を含有し、この金属酸化物微粒子の表面の修飾部分における有機酸の質量比を、この金属酸化物微粒子の5質量%以上かつ100重量%以下としたので、金属酸化物微粒子の透明性を維持することができ、屈折率を向上させることができる。
【0013】
本発明の透明樹脂複合体によれば、表面が有機酸により修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下でありかつ屈折率が1.8以上の金属酸化物微粒子と、透明性樹脂とを含有し、この金属酸化物微粒子の表面の修飾部分における有機酸の質量比を、この金属酸化物微粒子の5質量%以上かつ100重量%以下としたので、透明樹脂複合体の透明性を維持することができ、屈折率を向上させることができる。
【0014】
本発明の光学レンズによれば、少なくとも光透過領域を、本発明の透明樹脂複合体により構成したので、少なくとも光透過領域の透明性を維持することができ、屈折率を向上させることができる。
したがって、高い光透過率、高い屈折率、高い熱安定性、高い硬度、低い吸水率、高い耐候性、耐溶剤性等に優れた光学レンズを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の高屈折率金属酸化物透明分散液及び透明樹脂複合体並びに光学レンズを実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
「第1の実施形態」
本発明の第1の実施形態の高屈折率金属酸化物透明分散液及び透明樹脂複合体並びに光学レンズについて説明する。
【0017】
「高屈折率金属酸化物透明分散液」
本実施形態の高屈折率金属酸化物透明分散液は、金属酸化物微粒子と分散媒とを含有してなる分散液である。
この金属酸化物微粒子は、表面が有機酸により修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下でありかつ屈折率が1.8以上であり、この表面の修飾部分における有機酸の質量比は、この金属酸化物微粒子の5質量%以上かつ100重量%以下である。
【0018】
有機酸としては、脂肪酸(モノカルボン酸)、多価カルボン酸、芳香族カルボン酸の群から選択される1種または2種以上が好適に用いられる。
脂肪酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、エライジン酸等の不飽和脂肪酸等が好適に用いられる。
また、多価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸等の多価飽和カルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の多価不飽和カルボン酸等が好適に用いられる。
【0019】
また、芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、メリト酸、ピロメリト酸、ジフェン酸、トルイル酸、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、ジュリル酸、イソジュリル酸、クミン酸、ウビト酸、トルイル酸、アトロパ酸、ヒドロアトロパ酸、ケイヒ酸、ヒドロケイヒ酸、サリチル酸、アニス酸、ベラトルム酸、ヘミピン酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモベラトルム酸、ホモフタル酸、ホモイソフタル酸、ホモテレフタル酸、フタロン酸、イソフタロン酸、テレフタロン酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、トロパ酸、アダマンタンカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェルビナク等が好適に用いられる。
これらの有機酸は、単独で用いてもよく、複数種混合して用いてもよい。また、これらの有機酸は、塩またはエステルとして使用することも可能である。
【0020】
ここで、表面修飾剤を有機酸に限定した理由は、有機酸の有するカルボン酸が金属酸化物微粒子の表面の水酸基と水素結合して、金属酸化物微粒子の表面に吸着するからである。有機酸のみを表面修飾剤として用いることにより、金属酸化物微粒子の表面への吸着効率も高く、この表面を理想的に被覆し、この表面の修飾部分における有機酸の質量比を、この金属酸化物微粒子の5質量%以上かつ100重量%以下という修飾量とすることにより、樹脂と複合化した場合に樹脂との相溶が可能となるからである。
【0021】
この有機酸の、金属酸化物微粒子の表面の修飾部分における質量比は、この金属酸化物微粒子の5質量%以上かつ100重量%以下であることが好ましい。
ここで、表面修飾部分の有機酸量を質量比で5質量%以上かつ100質量%以下とした理由は、5質量%未満では、樹脂と複合化した場合に樹脂との十分な相溶効果が得られず、透明性が損なわれるからであり、一方、100質量%を越えると、金属酸化物微粒子の屈折率が表面修飾部分の屈折率に引きずられて、実質、金属酸化物微粒子の屈折率が低下してしまうからである。
【0022】
この金属酸化物微粒子の平均分散粒径を1nm以上かつ20nm以下と限定した理由は、平均分散粒径が1nm未満であると、結晶性が乏しくなり、屈折率等の粒子特性を発現することが難しくなるからであり、一方、平均分散粒径が20nmを超えると、分散液や透明複合体とした場合に透明性が低下するからである。
【0023】
この金属酸化物微粒子としては、可視光線に対して透明性に優れかつ屈折率が1.8以上のものであればよく、特に、高い光透過率、高い熱安定性、高い硬度、低い吸水率、高い耐候性、耐溶剤性等を考慮すると、酸化ジルコニウム(ZrO)または酸化チタン(TiO)であることが好ましい。
ここで、金属酸化物微粒子の屈折率を1.8以上と限定した理由は、屈折率が1.8未満では、樹脂と複合体化した場合に樹脂との屈折率差が小さくなり、樹脂との相溶時に十分な高屈折率効果が得られなくなるからである。
【0024】
この金属酸化物微粒子は、有機酸により表面が修飾され、しかもナノサイズの微粒子であるから、透明性樹脂と複合化した場合においても、光散乱が小さく、透明樹脂複合体の透明性を損なうことなく高屈折率化を達成することが可能である。
【0025】
一方、分散媒は、基本的には、水、有機溶媒、液状の樹脂モノマー、液状の樹脂オリゴマーのうち1種または2種以上を含有したものである。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0026】
上記の液状の樹脂モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系またはメタクリル系のモノマー、エポキシ系モノマー等が好適に用いられる。
また、上記の液状の樹脂オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリレート系オリゴマー等が好適に用いられる。
【0027】
この高屈折率金属酸化物透明分散液における金属酸化物微粒子の含有率は、10重量%以上かつ80重量%以下が好ましく、より好ましくは50重量%以上かつ80重量%以下である。
ここで、金属酸化物微粒子の含有率を10重量%以上かつ80重量%以下と限定した理由は、この範囲が金属酸化物微粒子が良好な分散状態を取りうる範囲であり、含有率が10重量%未満であると、金属酸化物微粒子としての効果が低下し、また、80重量%を超えると、ゲル化や凝集沈澱が生じ易くなり、分散液としての特徴を消失するからである。
【0028】
この高屈折率金属酸化物透明分散液における可視光線透過率は、例えば、金属酸化物微粒子として酸化ジルコニウム(ZrO)微粒子を用い、この酸化ジルコニウム微粒子の含有率を30質量%とした場合、光路長を10mmとしたときの可視光線透過率が90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上である。
この可視光線透過率は、酸化ジルコニウム微粒子の含有率により異なり、酸化ジルコニウム微粒子の含有率が10質量%では、95%以上、酸化ジルコニウム微粒子の含有率が40質量%では、90%以上である。
【0029】
この高屈折率金属酸化物透明分散液は、上述した酸化ジルコニウム(ZrO)または酸化チタン(TiO)以外に、その特性を損なわない範囲において、他の無機酸化物粒子、分散剤、分散助剤、カップリング剤、樹脂モノマー等を含有していてもよい。
他の無機酸化物粒子としては、酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム(CeO)、酸化スズ(SnO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、スズ添加酸化インジウム(ITO)等が挙げられる。
【0030】
「透明樹脂複合体」
本実施形態の透明樹脂複合体は、上述した本実施形態の金属酸化物微粒子と、透明性樹脂とを含有してなる複合体である。
透明性樹脂としては、可視光線、あるいは近赤外線、近紫外線等の所定の波長帯域の光に対して透明性を有する樹脂であればよく、熱可塑性、熱硬化性、可視光線や紫外線や赤外線等による光(電磁波)硬化性、電子線照射による電子線硬化性等の硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0031】
この透明性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリシクロヘキシルメタクリレート等のアクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、フェノール−ホルムアルデヒド(フェノール樹脂)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクレート・スチレン共重合体(MS樹脂)、ポリ−4−メチルペンテン、ノルボルネン系ポリマー、ポリウレタン、エポキシ、シリコーン等が挙げられ、特に、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂の群から選択される1種または2種以上を含有してなることが好ましい。
【0032】
ここで、上記の透明性樹脂のうちアクリレート樹脂及びエポキシ樹脂について詳細に説明する。
「アクリレート樹脂」
アクリレート樹脂としては、単官能アクリレートおよび/または多官能アクリレートが用いられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
単官能アクリレート及び多官能アクリレートそれぞれの具体例について次に挙げる。
【0033】
(a)脂肪族単官能(メタ)アクリレートとしては、
ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート
メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート
(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−置換アクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
(b)脂肪族多官能(メタ)アクリレートとしては、
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1.4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート
ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート
ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレート等のペンタ(メタ)アクリレート
等が挙げられる。
【0035】
(c)脂環式(メタ)アクリレートのうち、単官能型としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が、また、多官能型としては、ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(d)芳香族(メタ)アクリレートのうち、単官能型としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が、また、多官能型としては、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジアクリレート類、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
(e)ポリウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリウレタンエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(f)エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0037】
ラジカル重合開始剤としては、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等の過酸化物系重合開始剤、あるいは2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤が挙げられる。
【0038】
「エポキシ樹脂」
エポキシ樹脂としては、
(a)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、
(b)フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、
(c)テトラグリシジルジアミニジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、トルイジン型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂
等が挙げられる。
【0039】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、重付加型、触媒型、縮合型のいずれのタイプのものでも使用可能であり、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリアミド、ジシアンジアミド、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
これらの樹脂に対しては、その特性を損なわない範囲において、酸化防止剤、離型剤、カップリング剤、無機充填剤等を添加してもよい。
【0040】
この透明複合体における金属酸化物微粒子の含有率は、10重量%以上かつ80重量%以下が好ましく、より好ましくは、30重量%以上かつ80重量%以下である。
ここで、金属酸化物微粒子の含有率を10重量%以上かつ80重量%以下と限定した理由は、下限値の10重量%は有効な屈折率の向上が認められる添加率の最小値であるからであり、一方、上限値の80重量%は樹脂自体の特性(柔軟性、比重)を維持することができる添加率の最大値であるからである。
【0041】
この透明樹脂複合体では、例えば、酸化ジルコニウム微粒子を含有した場合、光路長を1mmとしたときの可視光線透過率は90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上である。
この可視光線透過率は、透明樹脂複合体における酸化ジルコニウム微粒子の含有率により異なり、酸化ジルコニウム微粒子の含有率が10重量%では、95%以上、酸化ジルコニウム微粒子の含有率が40重量%では、90%以上である。
【0042】
酸化ジルコニウム微粒子自体の屈折率は2.15であるから、この酸化ジルコニウム微粒子を透明性樹脂中に分散させることにより、アクリレート樹脂の屈折率1.4程度、エポキシ樹脂の屈折率1.5程度と比べて、透明性樹脂の屈折率をそれ以上に向上させることが可能である。
この酸化ジルコニウム微粒子はナノサイズの粒子であるから、光散乱が小さく、透明複合体の透明性を維持することが可能である。
【0043】
「光学レンズ」
本実施形態の光学レンズは、少なくとも光透過領域を、上述した本実施形態の透明樹脂複合体により構成してなる光学レンズである。
図1は、本実施形態の光学レンズを示す断面図であり、図において、1は平板状の透明樹脂複合体からなる透明基材、2は透明基材1の表面(一方の面)に形成された略半球状の微小な凸レンズ部であり、透明基材1および凸レンズ部2全体が光透過領域とされている。
【0044】
この光学レンズでは、平板状の透明基材1及び凸レンズ部2を、上述した透明樹脂複合体により構成したので、透明性が維持されるとともに、屈折率も向上している。
【0045】
次に、この光学レンズの製造方法について説明する。
上述した高屈折率金属酸化物透明分散液と、上述した透明性樹脂のモノマーやオリゴマーを、ミキサー等を用いて混合し、流動し易い状態の樹脂組成物とする。
次いで、この樹脂組成物を金型を用いて所定の形状に成形し、平板状の樹脂組成物からなる基材の表面(一方の面)に微小な凸レンズ部が形成された成形体を作製する。
次いで、この成形体に、加熱、あるいは可視光線、紫外線、赤外線、電子線等の照射を施し、この成形体を硬化させ、光学レンズとする。
【0046】
ここで、樹脂のモノマーやオリゴマーが、反応性を有する炭素二重結合(C=C)を有する場合、単に混合するだけでも、重合・樹脂化させることができる。
特に、アクリル樹脂等の紫外線(UV)硬化性樹脂を含む樹脂組成物を硬化させる方法としては、様々な方法があるが、代表的には、加熱または光照射により開始されるラジカル重合反応を用いたモールド成形法、トランスファー成形法等が挙げられる。このラジカル重合反応としては、熱による重合反応(熱重合)、紫外線等の光による重合反応(光重合)、ガンマ線による重合反応、あるいは、これらの複数を組み合わせた方法等が挙げられる。
以上により、図1に示す本実施形態の光学レンズを作製することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の光学レンズによれば、平板状の透明基材1及び凸レンズ部2を、本実施形態の透明樹脂複合体により構成したので、光透過領域の透明性を維持することができ、屈折率を向上させることができる。
したがって、光透過率を維持しつつ屈折率を向上せしめた光学レンズを提供することができる。
【0048】
「第2の実施形態」
図2は、本発明の第2の実施形態のマイクロレンズアレイを示す断面図である。
このマイクロレンズアレイは、凸レンズ部2が透明基材1の表面(一方の面)にマトリックス状に複数個形成された構成である。
このマイクロレンズアレイにおいても第1の実施形態の光学用レンズと全く同様の効果を奏することができる。
しかも、このマイクロレンズアレイは、高光透過率及び高屈折率に優れたものであるから、高解像度及び高信頼性が要求される複写機、プリンター等のOA機器等に好適である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0050】
「実施例1」
(酸化ジルコニウム透明分散液の作製)
酸化ジルコニウム微粒子として、酸化ジルコニウム微粒子を40質量%含むナノジルコニア水分散液 NZD−8007(住友大阪セメント製)を用い、このナノジルコニア水分散液500質量部にフタル酸100質量部を加えて酸化ジルコニウム微粒子の表面を修飾し、次いでトルエン置換を行い、酸化ジルコニウム微粒子を20質量%含む酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z1)を得た。
【0051】
次いで、この酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z1)中の酸化ジルコニウム微粒子の平均分散粒径を測定した。
この平均分散粒径は、酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z1)中の酸化ジルコニウム微粒子の含有率を1質量%に調製した試料の粒度分布を、動的光散乱式粒径分布測定装置(Malvern社製)を用いて測定し、この測定結果から平均分散粒径を求めた。
この測定結果を表1に示す。
【0052】
(光学レンズの作製)
上記の酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z1)50gに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5g、ペンタエリスリトールトリアクリレート2.5g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート2g、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5gを加え、樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を光学レンズ用金型に流し込み、60℃にて5時間、続いて120℃にて2時間加熱して硬化させ、実施例1の光学レンズを作製した。この光学レンズにおける酸化ジルコニウムの含有率は50質量%であった。
【0053】
「実施例2」
(酸化チタン透明分散液の作製)
酸化チタン微粒子として、ルチル型の酸化チタン微粒子を10質量%含むルチル型ナノチタニア水分散液(住友大阪セメント製)を用い、このルチル型ナノチタニア水分散液500質量部にフタル酸25質量部を加えて酸化チタン微粒子の表面を修飾し、次いで、トルエン置換を行い、酸化チタン微粒子を20質量%含む酸化チタントルエン分散液(T1)を得た。
次いで、この酸化チタントルエン分散液(T1)中の酸化チタン微粒子の平均分散粒径を、実施例1に準じて測定した。この測定結果を表1に示す。
【0054】
(光学レンズの作製)
上記の酸化チタントルエン分散液(T1)50gに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5g、ペンタエリスリトールトリアクリレート2.5g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート2g、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5gを加え、樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を実施例1に準じて処理し、実施例2の光学レンズを作製した。この光学レンズにおける酸化チタンの含有率は50質量%であった。
【0055】
「実施例3」
(酸化ジルコニウム透明分散液の作製)
酸化ジルコニウム微粒子として、酸化ジルコニウム微粒子を40質量%含むナノジルコニア水分散液 NZD−8007(住友大阪セメント製)を用い、このナノジルコニア水分散液500質量部にプロピオン酸50質量部を加えて酸化ジルコニウム微粒子の表面を修飾し、次いでトルエン置換を行い、酸化ジルコニウム微粒子を20質量%含む酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z2)を得た。
次いで、この酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z2)中の酸化ジルコニウム微粒子の平均分散粒径を実施例1に準じて測定した。この測定結果を表1に示す。
【0056】
(光学レンズの作製)
上記の酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z2)50gに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5g、ペンタエリスリトールトリアクリレート2.5g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート2g、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5gを加え、樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を実施例1に準じて処理し、実施例3の光学レンズを作製した。この光学レンズにおける酸化ジルコニウムの含有率は50質量%であった。
【0057】
「実施例4」
実施例3の酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z2)50gに、エポキシレジン:エピコート828を7gおよび硬化剤としてエピキュア3080を3g(いずれもジャパンエポキシレジン(株)社製)を加え、真空乾燥により溶媒を除去し、樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を光学レンズ用金型に流し込み、80℃にて30分間加熱して硬化させ、実施例4の光学レンズを作製した。この光学レンズ中の酸化ジルコニウムの含有率は50質量%であった。
【0058】
「実施例5」
実施例3の酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z2)41gに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5g、ペンタエリスリトールトリアクリレート2.5g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート2g、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5gを加え、樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を実施例1に準じて処理し、実施例5の光学レンズを作製した。この光学レンズにおける酸化ジルコニウムの含有率は45質量%であった。
【0059】
「比較例1」
(酸化ジルコニウム透明分散液の作製)
酸化ジルコニウム微粒子として、酸化ジルコニウム微粒子を40質量%含むナノジルコニア水分散液 NZD−8007(住友大阪セメント製)を用い、このナノジルコニア水分散液500質量部にチタネートカップリング剤 KR−138S(味の素ファインテクノ社製)170質量部を加えて酸化ジルコニウム微粒子の表面を修飾し、次いで、トルエン置換を行い、酸化ジルコニウム微粒子を20質量%含む酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z3)を得た。この酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z3)中の酸化ジルコニウム微粒子の平均分散粒径を実施例1に準じて測定した。この測定結果を表1に示す。
【0060】
(光学レンズの作製)
上記の酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z3)50gに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5g、ペンタエリスリトールトリアクリレート2.5g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート2g、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5gを加え、樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を実施例1に準じて処理し、比較例1の光学レンズを作製した。この光学レンズにおける酸化ジルコニウムの含有率は50質量%であった。
【0061】
「比較例2」
(酸化ジルコニウム透明分散液の作製)
酸化ジルコニウム微粒子として、酸化ジルコニウム微粒子を30質量%含むナノジルコニアトルエン分散液 ZRT−406(住友大阪セメント製)を用い、酸化ジルコニウム微粒子を20質量%含む酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z4)を作製した。この酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z4)中の酸化ジルコニウム微粒子の平均分散粒径を実施例1に準じて測定した。この測定結果を表1に示す。
【0062】
(光学レンズの作製)
上記の酸化ジルコニウムトルエン分散液(Z4)50gに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5g、ペンタエリスリトールトリアクリレート2.5g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート2g、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5gを加え、樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を実施例1に準じて処理し、比較例2の光学レンズを作製した。この光学レンズにおける酸化ジルコニウムの含有率は50質量%であった。
【0063】
「比較例3」
(酸化ケイ素透明分散液の作製)
酸化ケイ素微粒子として、オルガノシリカゾル MEK−ST(含有率:30質量%、日産化学社製)を用い、酸化ケイ素微粒子を20質量%含む酸化ケイ素トルエン分散液(S1)を作製した。この酸化ケイ素トルエン分散液(S1)中の酸化ケイ素微粒子の平均分散粒径を実施例1に準じて測定した。この測定結果を表1に示す。
【0064】
(光学レンズの作製)
上記の酸化ケイ素トルエン分散液(S1)50gに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5g、ペンタエリスリトールトリアクリレート2.5g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート2g、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5gを加え、樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を実施例1に準じて処理し、比較例3の光学レンズを作製した。この光学レンズにおける酸化ケイ素の含有率は50質量%であった。
【0065】
【表1】

【0066】
「光学レンズの評価」
実施例1〜5及び比較例1〜3それぞれの光学レンズについて、可視光線透過率及び屈折率の評価を、下記の装置または方法により行った。
【0067】
(1)可視光線透過率
分光光度計(日本分光社製)を用いて可視光線の透過率を測定した。
ここでは、測定用試料を100×100×1mmの大きさのバルク体とし、透過率が90%以上を「○」、90%未満を「△」とした。
(2)屈折率
日本工業規格:JIS K 7142「プラスチックの屈折率測定方法」に準拠し、アッベ屈折計により測定した。
ここでは、酸化ジルコニウムやシリカを添加していない樹脂を基準として、屈折率が0.06以上向上した場合を「◎」、屈折率が0.04〜0.06向上した場合を「○」、屈折率が0.04未満しか向上しなかった場合を「△」とした。
以上の評価結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
これらの評価結果によれば、実施例1〜5では、可視光線透過率、屈折率共に良好であることが分かった。
一方、比較例1〜3では、可視光線透過率、屈折率のうちいずれか一方の特性が実施例1〜5と比べて劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の高屈折率金属酸化物透明分散液は、表面が有機酸により修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下でありかつ屈折率が1.8以上の金属酸化物微粒子と、分散媒とを含有し、この金属酸化物微粒子の表面の修飾部分における有機酸の質量比を、この金属酸化物微粒子の5質量%以上かつ100重量%以下としたことにより、この高屈折率金属酸化物透明分散液を用いて高い屈折率及び高い透明性を有する光学レンズを作製することができたものであるから、各種カメラ、光ピックアップ、OA機器等の各種機器はもちろんのこと、この光学レンズを適用した様々な工業分野においても、その効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態の光学レンズを示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態のマイクロレンズアレイを示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 透明基材
2 凸レンズ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が有機酸により修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下でありかつ屈折率が1.8以上の金属酸化物微粒子と、分散媒とを含有し、
前記金属酸化物微粒子の表面の修飾部分における有機酸の質量比は、この金属酸化物微粒子の5質量%以上かつ100重量%以下であることを特徴とする高屈折率金属酸化物透明分散液。
【請求項2】
前記有機酸は、脂肪酸、多価カルボン酸、芳香族カルボン酸の群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1記載の高屈折率金属酸化物透明分散液。
【請求項3】
前記金属酸化物微粒子の含有率は、10重量%以上かつ80重量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の高屈折率金属酸化物透明分散液。
【請求項4】
前記金属酸化物微粒子は、酸化ジルコニウムまたは酸化チタンであることを特徴とする請求項1、2または3記載の高屈折率金属酸化物透明分散液。
【請求項5】
表面が有機酸により修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下でありかつ屈折率が1.8以上の金属酸化物微粒子と、透明性樹脂とを含有し、
前記金属酸化物微粒子の表面の修飾部分における有機酸の質量比は、この金属酸化物微粒子の5質量%以上かつ100重量%以下であることを特徴とする透明樹脂複合体。
【請求項6】
前記有機酸は、脂肪酸、多価カルボン酸、芳香族カルボン酸の群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項5記載の透明樹脂複合体。
【請求項7】
前記金属酸化物微粒子の含有率は、10重量%以上かつ80重量%以下であることを特徴とする請求項5または6記載の透明樹脂複合体。
【請求項8】
前記金属酸化物微粒子は、酸化ジルコニウムまたは酸化チタンであることを特徴とする請求項5、6または7記載の透明樹脂複合体。
【請求項9】
前記透明性樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂の群から選択される1種または2種以上を含有してなることを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項記載の透明樹脂複合体。
【請求項10】
少なくとも光透過領域が、請求項5ないし9のいずれか1項記載の透明樹脂複合体からなることを特徴とする光学レンズ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−191167(P2009−191167A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33323(P2008−33323)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】