説明

高強度及び高Q値を有する低温焼成用誘電体セラミック組成物

本発明は、ガラスフリットまたは誘導体セラミック組成物が核形成剤を含むことで、特定の結晶構造をなし、低い誘電率、低い誘電損失、高いQ値と、高い強度を有する、ガラスフリット及び充填材が所定の成分比で含有される誘電体セラミック組成物に関する。本発明による高強度及び高Q値を有する低温焼成用誘電体セラミック組成物は、サイズを増大でき、低温焼成用多層基板の製造を向上でき、衝撃耐久性が優れた電子部品のモジュール化を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフリットと充填材を所定の成分比で含有した誘電体セラミック組成物に関する。特に、本発明は、ガラスフリットまたは誘電体セラミック組成物が核形成剤を含み、850〜950℃で焼結した時に、特定の結晶構造をなすことで、高強度及び高Q値を有する低温焼成用誘導体セラミック組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気通信産業の発展は、高速化、多機能化、無線化(モバイル化)へと進んでいる。このような要求に対応するため、電気通信関連部品の高性能化及び集積化の必要性が更に高まっている。重量と体積を一定に維持しながら、向上した機能性、信頼性及び集積度を確保するために、極限材料と成形技術を基盤とする厚膜積層技術が必要である。厚膜積層の集積度と複合度の向上は結果的に、製品のサイズを小さくさせ、費用を低減させ、部品とはんだ継手の数を減らすことで、信頼性を向上させることができる。また、受動素子の数を減少することで、寄生成分を低減させ、これを通して電気的特性を向上することができるという長所を持つ。
【0003】
このような厚膜積層を通して多機能性モジュールを具現する技術として、低温同時焼成セラミック(Low Temperature Co−fired Ceramic,LTCC)技術は注目されてきている。LTCC技術は、基板の集積化と受動素子のモジュール化を同時に具現することができ、極超短波に適用することができるため、多くの研究が行われており、様々なモジュール製品が開発されている。
【0004】
多機能性モジュールを具現する技術として、LTCC技術は次のような長所を持つ。まず、LTCC技術は、数十μm程度の線幅を維持しながら、数十層におよぶ積層が可能となる。従って、PCB系列のパッケージに比べて高い回路集積度を達成することができ、幅広い値を持つL、CまたはR受動素子を内装することができ、空洞法などを利用してモジュールに能動素子を搭載することで、多機能性モジュールを具現することができる。また、セラミックの高Q値に起因する60GHz以上の極超短波に適用される技術であるため、周波数帯域幅がミリメートル波まで上昇すると、特に有望な技術である。現在までLTCC技術はブルートゥースモジュール、デュープレクサーパッケージ(duplexer packages)、フロントエンドモジュール(front−end modules)、RF電力増幅モジュール(RF power amplification modules)などに適用されている。将来、RFフロントエンド・オールインワンモジュール(RF front−end all−in−one module)、アンテナ統合ブルートゥースモジュール(antenna integrated Bluetooth module)などのように更に複合化され、高機能化される方向に発展すると予想される。従って、LTCC基盤の複合多機能電気装置モジュールは、移動情報通信産業において革新的役割を果たすと確信している。
【0005】
LTCCの最も基本的なものは、低誘電率、低損失及び高Q値の特徴を有する配線基板を形成する低誘電率誘電体セラミック組成物である。一般的に、このような組成物は、ホウケイ酸塩系ガラス組成50〜90重量%及びAl23、SiO2などの充填材10〜50重量%を含んでいる。
【0006】
ここで、ガラスは700℃未満で軟化され、850℃前後で液状となり、LTCCの最適焼結温度である850〜950℃で緻密化をなす。そして、充填材は、焼結過程で基板の形状を維持し、焼結体の機械的強度を高める。特に、少量のアルカリ酸化物を含むホウケイ酸塩系ガラスがガラス組成物として頻繁に使用されるが、これは誘電損失が低いためである。
【0007】
例えば、特許文献1には、LTCC配線基板用組成物を開示している。75〜85重量%のSiO2及び15〜25重量%のB23を主成分として含みながら、5重量%以下のアルカリ酸化物が含まれるガラス組成物が使用され、アルミナ、ムライトなどが充填材として使用される。充填材のガラス組成物に対する成分比は20〜50重量%である。ガラス組成物に含まれるアルカリ酸化物は、Na2O、K2Oなどである。製造された基板は、誘電率 が約5.0、誘電損失が約0.2%であることを特徴とする。低誘電率を持つ類似する配線基板が、特許文献2〜6に開示されている。
【0008】
前述した特許を見てみると、ファイネックス社製のガラス組成のように、主組成がケイ素であり、高融点を持つホウケイ酸塩ガラス組成で製造された誘電体セラミック組成物は一般的に、優れた誘電特性と化学的耐久性を有する。しかし、アルミナやその他の充填材の量に比べて、組成物内のガラスフリットの量が非常に多いため、大部分の組成物は強度が200MPa以下と低い(強度は基板のモジュール化と大面積化において重要な要因である)。
【0009】
最近、配線基板用低誘電体セラミック組成物の高強度の必要性が高まっているため、京セラなどの企業では、アルミナの強度に相当する高強度LTCC基板材料をモジュール用に開発している。高強度配線基板はサイズを大きくすることができるため、多量の電子部品を実装することができ、最終的に、多機能SIP(system in package)に適用することができる。一般に、結晶性ガラス組成物が使用される。代表的な例として、特許文献7〜11がある。
【0010】
このような高強度結晶性ガラスは、大部分のガラスフリットが焼結過程で結晶化されるため、微細な結晶が析出されて、外的衝撃により起きる割れの伝播を妨げることにより、強度が大きく向上される。広く使用されるガラス組成には、結晶化を促進するために、少量のB23と、主成分として20重量%以上のSiO2、Al23及びLi2OとMgOのようなアルカリまたはアルカリ土類酸化物が含まれる。しかし、アルカリまたはアルカリ土類酸化物は、従来の高融点を持つホウケイ酸塩ガラス組成物と比較して、製造された誘電体セラミック組成物の化学的耐久性を弱めるという問題がある。更に、析出されたガラス結晶の粒度を任意に調節することが困難であるため、900℃以下の焼結温度で最適な緻密化をなすことが難しい。
【特許文献1】米国特許第5,902,758号
【特許文献2】米国特許第6,835,682号
【特許文献3】米国特許第5,242,867号
【特許文献4】米国特許第5,825,632号
【特許文献5】米国特許第4,959,330号
【特許文献6】米国特許第5,821,181号
【特許文献7】米国特許第6,953,756号
【特許文献8】米国特許第6,897,172号
【特許文献9】特開第2003−165766号
【特許文献10】特開第2004−284937号
【特許文献11】特開第2005−15239号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、低誘電率と低誘電損失を有する低温焼成用誘電体セラミック組成物に高Q値及び高強度を付与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一形態において、本発明は、1)SiO2、B23、Al23、ZnO、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ金属酸化物を含有し、ウォラストナイト(CaSiO3)、ランキナイト(Ca3Si27)、ラマイト(Ca2SiO4)、Ca2SiO5、ダイオプサイド(CaMgSi26)、アノーサイト(CaAl2Si28)、コーディエライト(5SiO2−2Al23−2MgO)、MgSiO3、MgB24、SrSiO3、SrAl2Si28及びSrB24の中から選択される少なくとも1種の結晶性ガラスフリット35〜60重量%と、2)充填材40〜65重量%、及び3)ガラスフリットを基準として核形成剤0.3〜3モル%または誘電体セラミック組成物を基準として核形成剤0.5〜15重量%を含有する低温焼成用誘電体セラミック組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
850〜950℃の温度範囲で焼結した時、本発明による低温焼成用誘導体セラミック組成物は、6〜9(1MHz)の誘電率、0.05〜0.1%の誘電損失、1,000〜2,000の高Q値、及び250〜400MPaの強度を有する。従って、高強度及び高Q値を有する本発明による低温焼成用誘導体セラミック組成物は、サイズを大きくでき、低温焼結用多層基板の性能を向上でき、耐衝撃性が強い電子部品のモジュール化を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例3のアルミナ粒度別の低誘電率誘電体セラミック組成物の収縮率(@875℃)を示したものである。
【図2】実施例3のFESEMを通して観察したアルミナ粒度別の低誘電率誘電体セラミック組成物の緻密化度(@875℃)を示したものである。
【図3】室温及び950℃で5時間熱処理した製造例16のガラスフリットのXRD(X線回折)結晶化パターンを示したものである。
【図4】実施例23のガラス組成物に含まれる核形成剤TiO2により液化したガラスフリットのナノサイズで起きた局部的結晶化を表すTEMイメージである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、ガラスフリットと充填剤を所定の成分比で含有する低温焼成用誘電体セラミック組成物に関し、前記ガラスフリットまたは誘電体セラミック組成物は結晶をなすための核形成剤を含み、850〜950℃の低温で焼結することにより、誘電率、誘電損失、Q値及び強度を向上させることができる。
【0016】
本発明を更に詳しく説明すると次の通りである。
【0017】
本発明において、SiO2、B23、Al23、ZnO、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ金属酸化物を含むガラスフリットが35〜60重量%使用される。前記ガラスフリットは、SiO245〜70モル%、B2315〜30モル%、Al230.5〜5モル%、ZnO0.5〜2モル%、アルカリ土類金属酸化物4〜20モル%、及びアルカリ金属酸化物0.1〜13モル%を含有できることが好ましい。SiO2の含量が45モル%未満の場合、機械的、化学的及び物理的安定性が不十分な場合がある。70モル%を超過すると、1600℃以上の温度でもガラス固化が起きなくなる可能性がある。B23の含量が15モル%未満の場合、ガラス固化が起きない可能性がある。30モル%を超過すると、化学的及び物理的安定性が十分でなくなる虞がある。Al23の含量が0.5モル%未満の場合、化学的耐久性が向上されにくい場合がある。5モル%を超過する場合、ガラス固化温度が上昇し、ガラスの結晶化が過度に発生する可能性がある。ZnOの含量が0.5モル%未満の場合、ガラス固化が起きない虞がある。2モル%を超過すると、ガラスの電気的特性が低下してしまう虞がある。
【0018】
前記アルカリ土類金属酸化物は当関連分野で一般的に使用されるものでよく、特別に限定はしない。例えば、BaO、MgO、CaO及びSrOの中から選択される少なくとも1種の酸化物が使用され得る。このようなアルカリ土類金属酸化物は、LTCC組成物の焼結が行われる約900℃でガラスの結晶化を誘導するのに使用される。前記アルカリ土類金属酸化物の含量が4モル%未満の場合、結晶成長のための核の形成が不十分となる虞がある。そして、20モル%を超過すると、失透及び粘性の増加により、ガラスの結晶化または溶融に関する問題が発生する可能性がある。更に、誘電特性が低下され得る。また、前記アルカリ金属酸化物は当関連分野で一般的に使用されるものであり、特別に限定はしない。例えば、Li2O及びNa2Oの中から選択される少なくとも1種が使用され得る。このようなアルカリ金属酸化物は、ガラスの物理的特性の低下を最小化しながら、ガラス製造時に溶融温度を下げるために使用される。アルカリ金属酸化物の含量が0.1モル%未満の場合、その効果が不十分である。そして、13モル%を超過すると、水和反応が起き、耐熱衝撃性の増加を含むガラスの物理的/化学的特性が大幅に変化する虞がある。前述した成分の含量は、ガラスフリットが充填材と混合、焼結する過程で、液化された焼結物質の特性を保ちながら誘電損失を最小化し、強度を保ちながら約1600℃でガラス固化を確保することができるように決定された。前述した相対モル比を維持することが好ましい。ガラス転移温度(Tg)、軟化温度(Ts)及び電気的特性は、膨張法により測定された変曲点により測定される。
【0019】
前述した成分に加えて、核形成剤0.3〜8モル%を更に使用してもよい。前記核形成剤は当関連分野で一般的に使用されるものでよく、特別に限定はしない。例えば、TiO2、ZrO2、P25、V25、Pt、Au、La23及びCeO2の中から選択される少なくとも1種が使用され得る。前記核形成剤がガラスフリット組成全体を基準として0.3モル%未満で使用される場合、核形成剤が異質粒子として結晶の形成及び成長を誘導するのに十分ではない可能性がある。そして、8モル%を超過する場合、ガラス固化が1600℃でも発生し得ない。また、製造されたガラスの誘電率は、核形成剤が多く含まれるほど高くなる。それ故、前述した範囲が好ましい。
【0020】
本発明によるガラスフリットは当関連分野で一般的に使用される方法により製造されればよく、特別に限定しない。例えば、次の方法が使用され得る。前述したガラスフリットの成分を称量して乾式混合した後、白金るつぼに入れて1400〜1600℃で溶融して、溶融液を製造する。前記溶融液を急冷した後、瑪瑙乳鉢で粗粉砕し、溶媒としてエタノールを使用してジルコニア球と共にポリエチレン椀で微粉砕した後、再び摩擦粉砕して、ガラスフリットを得る。
【0021】
製造されたガラスフリットは、図3で見られるように、熱処理後に典型的な非晶質XRDパターンと共に、ウォラストナイト(CaSiO3)、ランキナイト(Ca3Si27)、ラマイト(Ca2SiO4)、Ca2SiO5、ダイオプサイド(CaMgSi26)、アノーサイト(CaAl2Si28)、コーディエライト(5SiO2−2Al23−2MgO)、MgSiO3、MgB24、SrSiO3、SrAl2Si28及びSrB24のうち1種以上の結晶化度を持つことを特徴とする高融点ホウケイ酸塩ガラスフリットである。
【0022】
従来、結晶化度のないホウケイ酸塩ガラスフリット、再結晶性アルミノケイ酸塩系ガラスフリット、またはアルミナやマグネシウム酸化物を多量に含み、ホウ素(B23)が排除されたか最小量が含有されており、熱処理時に70vol%以上が結晶化が起きるその他のガラスフリットが報告されている。結晶度がなく、典型的な非結晶質XRDパターンを有するガラスフリットは、アルミナのような充填材を混合、焼結する時、誘電特性が良好であるが、強度が200MPa以下で低い。再結晶性ガラスフリットの場合は、焼結工程で大部分が結晶化され、セラミックに変化するため易焼結性が乏しく、緻密化が900℃前後で十分に起きない。そのため、前記結晶性ガラスフリットは一般的に、誘電率及び誘電損失が増加し、Q値が減少する。更に、緻密化が900℃前後で十分に起きないため、ナノサイズの結晶の存在にもかかわらず、強度の変化がないか、減少する。
【0023】
一方、本発明は、高融点を持つホウケイ酸塩ガラスからなるナノサイズの結晶性ガラスフリットを利用して、低誘電率、低誘電損失、高Q値及び高強度を得る。
【0024】
前記ガラスフリットは、誘電体セラミック組成物全体を基準として35〜60重量%で含まれる。前記ガラスフリットの含量が35重量%未満のとき、焼結時に緻密化が十分に起き得ない。そして、60重量%を超過すると、分離気孔が焼結体内で成長し、誘電特性と強度を低下させる結果を招く虞がある。従って、前記した範囲が好ましい。
【0025】
本発明において、高強度を有することで知られている充填材が使用される。例えば、従来の1200℃以上の焼結温度と比べて850〜950℃の低温焼結が可能でありながら、強度、誘電率、誘電損失、Q値などを向上させるために、Al23、MgAl24、コーディエライト(Cordierite)、ムライト、クオーツ(Quartz)、ZrSiO4、Mg2SiO4、MgTiO3及びZnAl24の中から選択される少なくとも1種が充填材として使用される。従来、SiO2のような単一化合物が充填材として使用されてきた。一方、本発明による充填材は、高強度、低誘電率及び低誘電損失を有し、配線基板が本発明による充填材を含む誘電体セラミック組成物から製造されると、強度、誘電率、誘電損失及びQ値を著しく向上させる。
【0026】
前記充填材は、誘電体セラミック組成物全体を基準として40〜65重量%が含まれる。前記充填材の含量が40重量%未満の場合、前記ガラスが焼結体の表面に露出される可能性がある。そして、65重量%を超過すると、焼結温度が上昇してしまう。それ故、前述した範囲が好ましい。
【0027】
本発明による低温焼成用誘電体セラミック組成物は、当関連分野で一般的に使用される方法により製造されればよく、特別に限定はしない。例えば、次の方法が使用され得る。前記ガラスフリット35〜60重量%及び前記充填材40〜65重量%を称量、混合して誘電体混合物を得る。その後、このように製造された誘電体混合物を850〜950℃で焼結する。
【0028】
あるいは、低温焼成用誘電体セラミック組成物は、1)SiO245〜70モル%、B2315〜30モル%、Al230.5〜5モル%、ZnO0.5〜2モル%、アルカリ土類金属酸化物4〜20モル%及びアルカリ金属酸化物0.1〜13モル%を称量、混合し、1400〜1600℃で溶融して溶融液を得て、2)前記溶融液を急冷した後、粉砕し、ウォラストナイト(CaSiO3)、ランキナイト(Ca3Si27)、ラマイト(Ca2SiO4)、Ca3SiO5、ダイオプサイド(CaMgSi26)、アノーサイト(CaAl2Si28)、コーディエライト(5SiO2−2Al23−2MgO)、MgSiO3、MgB24、SrSiO3、SrAl2Si28及びSrB24の中から選択される少なくとも1種の結晶性ガラスフリットを得て、3)前記ガラスフリット35〜60重量%、充填材40〜65重量%及び核形成剤0.5〜15重量%称量、混合した後、誘電体混合物を製造し、4)前記誘導体混合物を850〜950℃で焼結する段階を含めてからなる製造方法により製造され得る。
【0029】
前記核形成剤は、低温焼成用誘電体セラミック組成物全体を基準として0.5〜15重量%の量で含まれる。前記核形成剤の顔料が0.5重量%未満の場合、結晶成長のための核の形成が困難となり得る。そして、15重量%を超過すると、誘電体セラミック組成物の強度が低下する虞がある。それ故、前述した範囲が好ましい。本発明による低温焼成用誘電体セラミック組成物は核形成剤を必ず含む。しかし、前記核形成剤はガラスフリット組成と誘導体セラミック組成のどちらに入れてもよい。
【0030】
結論として、本発明において、低誘電損失及び高Q値を有するために、ホウケイ酸塩系ガラスフリットが基本物質として使用され、優れた強度を持つことで知られている充填材が高強度を持つために使用され、核形成剤が添加されることで、熱処理過程で10〜300nmのサイズの局部的な結晶化が起きて強度が更に向上する。低誘電損失及び高Q値を有する従来のガラスフリットは、ガラスの典型的な非晶質パターンにより強度が脆弱となる問題が起きる。そして、従来のダイオプサイド(CaMgSi26)系またはアノーサイト(CaAl2Si28)系の高強度結晶性ガラスフリットは、70vol%以上のガラスが熱処理過程で結晶化されるため、焼結温度と誘電特性を調節することが困難となる問題を伴う。一方、本発明は、ガラスフリット内のアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物の含量を適切に調節することで、誘電損失及びQ値を向上させ、ガラスフリットのナノサイズ結晶化を促進するために核形成剤を使用することで、強度を向上させる低温焼成用誘導体セラミック組成物を提供する。
【0031】
本発明による特定のガラスフリット、充填材及び核形成剤を含有する低温焼成用誘電体セラミック組成物は、6〜9(1MHz)の誘電率、0.05〜0.1%の誘電損失、1,000〜2,000のQ値、250〜400MPaの強度、及び850〜950℃の焼結温度を有し、共振装置、フィルター部品、アンテナなどに効果的に適用することができ、多層セラミックパッケージを形成する。また、電子部品の複合モジュールを構成するのに効果的に適用することができる。
【0032】
本発明を下記実施例により更に詳しく説明するが、これに限定されるわけではない。
【0033】
製造例1〜19及び比較製造例1〜5
下記表1及び2に表された粉末形態のガラスフリット組成物を称量し、乾式混合した後、白金るつぼに入れて、1400〜1600℃で2時間維持した。得られた溶融液を冷却水槽で急冷した。製造されたガラスを瑪瑙乳鉢で粗粉砕し、溶媒としてエタノールを使用してジルコニア球と共にポリエチレン椀で24時間微粉砕した後、再び5時間摩擦粉砕して、ホウケイ酸塩ガラスフリットを得た。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
実施例1〜32及び比較例1〜14
製造例で製造したガラスフリットは、下記表3に表される充填材と核形成剤を混合した後、850〜950℃で焼結して、誘電体セラミック組成物を得た。
【0037】
【表3】

【0038】
図1は、実施例3のアルミナ粒度別の低誘電率誘電体セラミック組成物の収縮率(@875℃)を示したものであり、図2は、実施例3のFESEMを通して観察したアルミナ粒度別の低誘電率誘電体セラミック組成物の緻密化度(@875℃)を示したものである。図によると、強度値は、核形成剤の添加量だけでなく、充填材であるアルミナの粒度によって変化することが分かる。これは、誘電体セラミック組成物の緻密化度がアルミナの粒度によって決まるためである。特に、最適な緻密化は、アルミナの粒度が1〜1.5μmの範囲の時に得られることを突き止めた。
【0039】
図3から分かるように、ウォラストナイト(CaSiO3)、ランキナイト(Ca3Si27)、ラマイト(Ca2SiO4)、Ca3SiO5、ダイオプサイド(CaMgSi26)、アノーサイト(CaAl2Si28)、コーディエライト(5SiO2−2Al23−2MgO)、MgSiO3、MgB24、SrSiO3、SrAl2Si28及びSrB24の中から選択される少なくとも1種の結晶性ガラスフリットは、低温で焼結することにより得られる。その結果、6〜9(1MHz)の低誘電率、0.05〜0.1%の低誘電損失、1,000〜2,000の高Q値、及び250〜400MPaの高強度を有する誘電体セラミック組成物が製造される。従来の誘電体セラミック組成物(比較例13)と比べたとき、誘電率、誘電損失、Q値及び強度の全てが改善された。
【0040】
以上、本発明を好ましい実施形態とともに詳細に説明してきた。しかし、この技術に精通した者なら、本発明の原則および精神、すなわち添付の請求項とその相当する記載に定義された範囲を逸脱することなく、これらの実施形態に変更を加えてもかまわないことを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)SiO2、B23、Al23、ZnO、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ金属酸化物を含有し、ウォラストナイト(CaSiO3)、ランキナイト(Ca3Si27)、ラマイト(Ca2SiO4)、Ca2SiO5、ダイオプサイド(CaMgSi26)、アノーサイト(CaAl2Si28)、コーディエライト(5SiO2−2Al23−2MgO)、MgSiO3、MgB24、SrSiO3、SrAl2Si28及びSrB24の中から選択される少なくとも1種の結晶性ガラスフリット35〜60重量%と、
2)充填材40〜65重量%と、
を含み、
3)ガラスフリットを基準として核形成剤0.3〜3モル%または誘電体セラミック組成物を基準として核形成剤0.5〜15重量%と、
を更に含有してからなる低温焼成用誘電体セラミック組成物。
【請求項2】
前記ガラスフリットは、SiO245〜70モル%、B2315〜30モル%、Al230.5〜5モル%、ZnO0.5〜2モル%、アルカリ土類金属酸化物4〜20モル%、及びアルカリ金属酸化物0.1〜13モル%を含有する、請求項1記載の低温焼成用誘電体セラミック組成物。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属酸化物は、BaO、MgO、CaO及びSrOの中から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の低温焼成用誘導体セラミック組成物。
【請求項4】
前記アルカリ金属酸化物は、Li2O及びNa2Oの中から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の低温焼成用誘導体セラミック組成物。
【請求項5】
前記充填材は、Al23、MgAl24、コーディエライト、ムライト、クオーツ、ZrSiO4、Mg2SiO4、MgTiO3及びZnAl24の中から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の低温焼成用誘導体セラミック組成物。
【請求項6】
前記核形成剤は、TiO2、ZrO2、P25、V25、Pt、Au、La23及びCeO2の中から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の低温焼成用誘導体セラミック組成物。
【請求項7】
6〜9(1MHz)の誘電率、0.05〜0.1%の誘電損失、1,000〜2,000のQ値、250〜400MPaの強度、及び850〜950℃の焼成温度を有する、請求項1乃至6のいずれか一項の低温焼成用誘導体セラミック組成物。
【請求項8】
1)SiO245〜70モル%、B2315〜30モル%、Al230.5〜5モル%、ZnO0.5〜2モル%、アルカリ土類金属酸化物4〜20モル%、アルカリ金属酸化物0.1〜13モル%及び核形成剤0.3〜3モル%を称量し、混合した後、1400〜1600℃で溶融して溶融液を得る工程と、
2)前記溶融液を急冷した後、粉砕して、ウォラストナイト(CaSiO3)、ランキナイト(Ca3Si27)、ラマイト(Ca2SiO4)、Ca2SiO5、ダイオプサイド(CaMgSi26)、アノーサイト(CaAl2Si28)、コーディエライト(5SiO2−2Al23−2MgO)、MgSiO3、MgB24、SrSiO3、SrAl2Si28及びSrB24の中から選択される少なくとも1種の結晶性ガラスフリットを得る工程と、
3)前記ガラスフリット35〜60重量%及び充填材40〜65重量%を称量、混合した後、誘電体混合物を得る工程と、
4)前記誘導体混合物を850〜950℃で焼成する工程と、
からなる低温焼成用誘導体セラミック組成物の製造方法。
【請求項9】
1)SiO245〜70モル%、B2315〜30モル%、Al230.5〜5モル%、ZnO0.5〜2モル%、アルカリ土類金属酸化物4〜20モル%及びアルカリ金属酸化物0.1〜13モル%を称量し、混合した後、1400〜1600℃で溶融して溶融液を得る段階と、
2)前記溶融液を急冷した後、粉砕して、ウォラストナイト(CaSiO3)、ランキナイト(Ca3Si27)、ラマイト(Ca2SiO4)、Ca3SiO5、ダイオプサイド(CaMgSi26)、アノーサイト(CaAl2Si28)、コーディエライト(5SiO2−2Al232MgO)、MgSiO3、MgB24、SrSiO3、SrAl2Si28及びSrB24の中から選択される少なくとも1種の結晶性ガラスフリットを得る段階と、
3)前記ガラスフリット35〜60重量%、充填材40〜65重量%及び核形成剤0.5〜15重量%を称量し、混合した後、誘電体混合物を得る段階と、
4)前記誘導体混合物を850〜950℃で焼成する段階と、
からなる低温焼成用誘導体セラミック組成物の製造方法。
【請求項10】
前記アルカリ土類金属酸化物は、BaO、MgO、CaO及びSrOの中から選択される少なくとも1種である、請求項8または9記載の低温焼成用誘導体セラミック組成物の製造方法。
【請求項11】
前記アルカリ金属酸化物は、Li2O及びNa2Oの中から選択される少なくとも1種である、請求項8または9記載の低温焼成用誘導体セラミック組成物の製造方法。
【請求項12】
前記充填材は、Al23、MgAl24、コーディエライト、ムライト、クオーツ、ZrSiO4、Mg2SiO4、MgTiO3及びZnAl24の中から選択される少なくとも1種である、請求項8または9記載の低温焼成用誘導体セラミック組成物の製造方法。
【請求項13】
前記核形成剤は、TiO2、ZrO2、P25、V25、Pt、Au、La23及びCeO2の中から選択される少なくとも1種である、請求項8または9記載の低温焼成用誘導体セラミック組成物の製造方法。


【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−531287(P2010−531287A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548176(P2009−548176)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003695
【国際公開番号】WO2009/057878
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(399101854)コリア インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (68)
【Fターム(参考)】