説明

高弾性率耐候性ポリエステルカーボネート物品

高弾性率繊維及びレゾルシノールポリエステル又はレゾルシノールポリエステルカーボネート樹脂を含んでなる熱可塑性樹脂組成物からなる物品は、高い強度及び剛性を示すと共に、屋外環境に暴露した場合にも意外に良好な光沢及び色の保持率を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い靭性と強度を有し、屋外暴露時に色と光沢の保持率の高い物品に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化熱可塑性樹脂は久しく広範な用途に使用されてきた。剛性繊維(特にガラス繊維)と熱可塑性ポリマーとの組合せは、リサイクル可能なプラスチックの成型及び成形の容易さと繊維の強度及び靭性とを併せもつ。
【0003】
しかし、この組合せの欠点の一つは、屋外用途に使用したときの繊維−樹脂組合せの耐候性が劣ることである。比較的短期間で、繊維充填熱可塑性樹脂物品の表面は浸食を受け始める。浸食プロセスで繊維が露出し、物品は不良な外観を呈して、所期の目的に役立たないことがある。例えば、座席用として設計された表面では、屋外暴露の結果としてガラス繊維が表面から突き出し始めるので座り心地が悪くなる。同様に、構造用途で荷重を支えるように設計された剛性部品では、熱可塑性樹脂が風化して混合物中のガラス繊維が露出するので、光沢の低下及び変色のため外観が変化することがある。光沢及び変色のため物品が所期の用途に適さなくなることが多い。
【0004】
繊維強化プラスチック(FRP)は、屋外環境に暴露されると、光沢の低下、変色及び強度の低下を示すことが多い。FRPの耐候性が劣っているのは主に以下の理由によると考えられる。第一に、繊維とポリマー樹脂の浸食速度が異なるので、屋外暴露はFRPの表面を粗面化し、光沢を低下させ、繊維を露出させる。第二に、UVによる樹脂表面の劣化によってひび割れ及び浸食が起こり、繊維を露出させる。表面に露出した繊維は複数の毛管作用部位を生じ、ポリマー樹脂−繊維混合物からなる物品の露出面の内部に水分が浸透する。吸収された水分は、樹脂マトリックスと個々の補強繊維との界面結合をさらに低下させて強度の低下をもたらす。第三に、光化学的に誘起される樹脂の劣化は、変色も引き起こすことが多い。浸食速度の差に起因する光沢の低下は、FRPの問題である。
【0005】
繊維充填熱可塑性樹脂から形成された屋外暴露物品の表面の浸食の問題に対処するための伝統的な方法は、皮膜又は保護層を設けることである。FRPの劣った耐候性に対処するため、米国特許第4369224号には、UV暴露による劣化に対する耐性を付与するためFRP製品の表面にゲルコートを施工することが教示されており、米国特許第4117185号には、耐候性を付与するためフッ素プラスチック材料のフィルム又は層を設けることが教示されている。
【0006】
このアプローチは有効であり、屋外用途に使用されるプラスチック部品の保護に塗料又は薄膜が常用されている。しかし、かかる皮膜の施工は物品の複雑さ及びコストを増加させる。加えて、繊維充填樹脂基材に対する皮膜密着性の問題にも対処しなければならない。当技術分野での多数の発明にもかかわらず、保護皮膜の喪失は依然よくみられる。
【特許文献1】米国特許第4369224号明細書
【特許文献2】米国特許第4117185号明細書
【発明の開示】
【0007】
本発明者らは、繊維と特定のレゾルシノール系ポリエステル樹脂との組合せから製造した物品が、曲げ強さ及び曲げ弾性率で表されるような高い強度及び靭性を有すると共に、屋外環境暴露時に色及び光沢の保持性に優れるという予想外の知見を得た。
【0008】
繊維とレゾルシノール系ポリエステル樹脂は異なる浸食速度を有するはずであるが、本発明の物品は予想される観察結果に反し、ポリカーボネート樹脂をベースとした同様な組成物に比べ、光沢保持率及び耐変色性の点で優れた耐候性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の組成物は、当該組成物の1〜60重量%の繊維を含有し得る。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維又はホイスカーのような任意の剛性繊維を使用できる。好ましい繊維は、ポリカーボネートエステル樹脂と配合しても色を生じない。本発明の一実施形態では、ガラス繊維が使用される。本発明の別の実施形態では、ホウケイ酸ガラス繊維が使用される。
【0010】
本発明の好ましい繊維は、1000000psi以上の弾性率を有する。繊維は細断したものでも連続したものでもよい。繊維は様々な横断面、例えば、円形、三日月形、二葉状、三葉状、長方形及び六角形の横断面を有し得る。
【0011】
好ましい繊維は5〜25ミクロンの直径を有し、6〜17ミクロンの直径が最も好ましい。若干の用途では、ポリエステルカーボネート樹脂に対する密着性を向上させるために繊維の表面を化学カップリング剤で処理するのが望ましい場合がある。有用なカップリング剤は、アルコキシシラン及びアルコキシジルコネートである。アミノ、エポキシ、アミド又はチオ官能性アルコキシシランが特に有用である。
【0012】
本発明の組成物は、さらに、混合物全体の99〜40重量%のレゾルシノール系ポリアリーレート樹脂を含む。樹脂は、レゾルシノール又は官能化レゾルシノールと、アリールジカルボン酸又はアリールエステル結合の形成に適したジカルボン酸誘導体(例えば、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル及びカルボン酸塩)との反応生成物から誘導される単位を30モル%以上含むべきである。
【0013】
レゾルシノール系ポリアリーレートは、さらに、ビスフェノールとカーボネート形成化学種(例えば、ホスゲン)との反応から誘導されるカーボネート結合を含んでいてもよい。本発明の別の実施形態では、レゾルシノールポリアリーレートカーボネートコポリマーは、イソフタル酸及びテレフタル酸、レゾルシノール、並びに適宜ビスフェノールA及びホスゲンの反応生成物からなる。レゾルシノールポリエステルカーボネートコポリマーは、例えば、レゾルシノール成分をジカルボン酸成分と予備反応させてポリエステルブロックを形成し、次いで前記ブロックをビスフェノール及びカーボネート成分と反応させてコポリマーのポリカーボネート部分を形成することで、ビスフェノールジカルボン酸エステル結合の数が最小になるようにして製造される。
【0014】
最も好ましい組成物は、60〜90%のレゾルシノール系ポリエステルと10〜40%のガラス繊維を有する。
【0015】
一態様では、本発明の物品はアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーからなる。前記連鎖部分は、1種以上の芳香族ジカルボン酸残基と共に1種以上のジフェノール残基を含んでいる。一実施形態では、ジフェノール残基は式Iに示されるような1,3−ジヒドロキシベンゼン成分から誘導されるが、これは本明細書全体を通じて一般にレゾルシノール又はレゾルシノール成分といわれる。本発明の文脈内で使用される場合、レゾルシノール又はレゾルシノール成分は、特記しない限り、非置換1,3−ジヒドロキシベンゼン及び置換1,3−ジヒドロキシベンゼンの両方を包含するものと理解すべきである。
【0016】
【化1】

【0017】
式Iにおいて、RはC1−12アルキル、C〜C24アリール、アルキルアリール又はハロゲンの1種以上であり、nは0〜3である。
【0018】
好適なジカルボン酸残基には、単環式成分から誘導される芳香族ジカルボン酸残基が含まれる。様々な実施形態で、好適なジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸、又はイソフタル酸及びテレフタル酸の混合物から誘導されるものを含む。好適なジカルボン酸残基には、多環式成分から誘導されるものも含まれる。かかる多環式成分の具体例には、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸及びナフタレンジカルボン酸(特に、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸)がある。幾つかの実施形態では、芳香族ジカルボン酸残基は式IIで代表的に示されるようなイソフタル酸及び/又はテレフタル酸の混合物から誘導される。
【0019】
【化2】

【0020】
したがって、一実施形態で本発明は、式III(式中、R及びnは上記で定義した通りである。)で代表的に示されるようなレゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分からなる熱安定性ポリマーを提供する。
【0021】
【化3】

【0022】
一態様では、本発明は、無水物結合を実質的に含まないレゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分からなるポリマーを製造する界面重合法を用いて製造された樹脂からなる物品を提供する。前記方法は、水と実質的に非混和性の1種以上の有機溶媒と水との混液中で1種以上のレゾルシノール成分と1種以上の触媒を混合する第一の段階を含む。好適なレゾルシノール成分は、式Vの単位を含む。
【0023】
【化4】

【0024】
式中、RはC1−12アルキル、C〜C24アリール、アルキルアリール又はハロゲンの1種以上であり、nは0〜3である。アルキル基(存在する場合)は、通例は直鎖、枝分れ又は環状アルキル基であり、大抵は両酸素原子に対してオルト位にあるが、他の環内位置も考えられる。好適なC1−12アルキル基には、特に限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ノニル、デシル、及びベンジルを始めとするアリール置換アルキルがある。特定の実施形態では、アルキル基はメチルである。好適なハロゲン基は、ブロモ、クロロ及びフルオロである。様々な実施形態でのn値は0〜3であり、幾つかの実施形態では0〜2であり、さらに別の実施形態では0〜1である。一実施形態では、レゾルシノール成分は2−メチルレゾルシノールである。別の実施形態では、レゾルシノール成分はnが0である非置換レゾルシノール成分である。本方法はさらに、1種以上の触媒を反応生成物と混合することを含む。前記触媒は、様々な実施形態では酸塩化物基の総モル量を基準にして0.1〜10モル%の合計レベルで存在し、幾つかの実施形態では0.2〜6モル%の合計レベルで存在し得る。好適な触媒には、第三アミン、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、ヘキサアルキルグアニジニウム塩及びこれらの混合物がある。好適な第三アミンには、トリエチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及びこれらの混合物がある。考えられる他の第三アミンには、N−エチルピロリジンのようなN−C〜Cアルキル−ピロリジン、N−エチルピペリジンやN−メチルピペリジンやN−イソプロピルピペリジンのようなN−C〜C−ピペリジン、N−エチルモルホリンやN−イソプロピルモルホリンのようなN−C〜C−モルホリン、N−C〜C−ジヒドロインドール、N−C〜C−ジヒドロイソインドール、N−C〜C−テトラヒドロキノリン、N−C〜C−テトラヒドロイソキノリン、N−C〜C−ベンゾモルホリン、1−アザビシクロ[3.3.0]オクタン、キヌクリジン、N−C〜Cアルキル−2−アザビシクロ[2.2.1]オクタン、N−C〜Cアルキル−2−アザビシクロ[3.3.1]ノナン、N−C〜Cアルキル−3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン、及びN,N,N’,N’−テトラエチル−1,6−ヘキサンジアミンを始めとするN,N,N’,N’−テトラアルキルアルキレンジアミンがある。様々な実施形態で、第三アミンはトリエチルアミン及びN−エチルピペリジンである。
【0025】
好適なジカルボン酸二ハロゲン化物は、単環式成分から誘導される芳香族ジカルボン酸二塩化物を含んでいてもよい。その具体例には、二塩化イソフタロイル、二塩化テレフタロイル、及び二塩化イソフタロイルと二塩化テレフタロイルの混合物がある。好適なジカルボン酸二ハロゲン化物は、多環式成分から誘導される芳香族ジカルボン酸二塩化物を含んでいてもよい。その具体例には、ジフェニルジカルボン酸二塩化物、ジフェニルエーテルジカルボン酸二塩化物及びナフタレンジカルボン酸二塩化物(特に、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸二塩化物)がある。また、好適なジカルボン酸二ハロゲン化物は、単環式及び多環式芳香族ジカルボン酸二塩化物の混合物を含んでいてもよい。一実施形態では、ジカルボン酸二塩化物は、式VIに代表的に示されるような二塩化イソフタロイル及び/又は二塩化テレフタロイルの混合物からなる。
【0026】
【化5】

【0027】
二塩化イソフタロイル及び二塩化テレフタロイルのいずれか一方又は両方が存在し得る。幾つかの実施形態では、ジカルボン酸二塩化物はイソフタロイルとテレフタロイルとのモル比が約0.25〜4.0:1である二塩化イソフタロイル及び二塩化テレフタロイルの混合物である。他の実施形態では、モル比は約0.4〜2.5:1であり、さらに他の実施形態では、モル比は約0.67〜1.5:1である。
【0028】
ジカルボン酸ハロゲン化物は、本発明のポリマーを製造するための一方法を提供するにすぎない。例えば、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル(特に、活性エステル)或いはジカルボン酸塩又は部分塩を用いてレゾルシノールアリーレート結合を形成するための他の経路も考えられる。
【0029】
本発明の方法及び組成物中には、1種以上の連鎖停止剤(以下、封鎖剤ともいう)も存在し得る。1種以上の連鎖停止剤を添加する目的は、レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーの分子量を制限することで、制御された分子量及び好適な加工性を有するポリマーを得ることにある。通例、レゾルシノールアリーレート含有ポリマーが以後の用途のために反応性末端基を有する必要がない場合には、1種以上の連鎖停止剤が添加される。連鎖停止剤が存在しない場合、レゾルシノールアリーレート含有ポリマーは、レゾルシノールアリーレートポリエステルセグメント上での反応性末端基(通例はヒドロキシ)の存在を要求することがあるコポリマー生成のような以後の用途のため、溶液状態で使用することもできるし、或いは溶液から回収することもできる。連鎖停止剤は、モノフェノール化合物、モノカルボン酸塩化物及び/又はモノクロロホルメートの1種以上である。通例、1種以上の連鎖停止剤は、モノフェノール化合物の場合にはレゾルシノール成分を基準にして、モノカルボン酸塩化物及び/又はモノクロロホルメートの場合には酸二塩化物を基準にして、0.05〜10モル%の量で存在し得る。
【0030】
好適なモノフェノール化合物には、フェノール、C〜C22アルキル置換フェノール、p−クミルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、及びジフェノールのモノエーテル(例えば、p−メトキシフェノール)のような単環式フェノールがある。アルキル置換フェノールには、炭素原子数8〜9の枝分れアルキル置換基を有すると共に、好ましくは米国特許第4334053号に記載されているように約47〜89%の水素原子がメチル基の一部であるものが含まれる。幾つかの実施形態では、モノフェノール系連鎖停止剤はフェノール、p−クミルフェノール及びレゾルシノールモノベンゾエートである。
【0031】
好適なモノカルボン酸塩化物には、塩化ベンゾイル、C〜C22アルキル置換塩化ベンゾイル、塩化トルオイル、ハロゲン置換塩化ベンゾイル、塩化ブロモベンゾイル、塩化シンナモイル、塩化4−ナジミドベンゾイル及びこれらの混合物のような単環式モノカルボン酸塩化物、トリメリト酸無水物塩化物及び塩化ナフトイルのような多環式モノカルボン酸塩化物、並びに単環式及び多環式モノカルボン酸塩化物の混合物がある。22以下の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸の塩化物も好適である。塩化アクリロイル及び塩化メタクリロイルのような、脂肪族モノカルボン酸の官能化塩化物も好適である。好適なモノクロロホルメートには、フェニルクロロホルメート、アルキル置換フェニルクロロホルメート、p−クミルフェニルクロロホルメート、トルエンクロロホルメート及びこれらの混合物のような単環式モノクロロホルメートがある。
【0032】
連鎖停止剤はレゾルシノール成分と共に混合でき、ジカルボン酸二塩化物の溶液中に含めることができ、又は初期縮合物の生成後に反応混合物に添加できる。モノカルボン酸塩化物及び/又はモノクロロホルメートを連鎖停止剤として使用する場合には、これらはしばしばシカルボン酸二塩化物と共に導入される。これらの連鎖停止剤は、ジカルボン酸の塩化物が既に実質的に又は完全に反応した時点で反応混合物に添加することもできる。フェノール化合物を連鎖停止剤として使用する場合には、これらは一実施形態では反応中に反応混合物に添加でき、別の実施形態ではレゾルシノール成分と酸塩化物成分との反応の開始前に反応混合物に添加できる。ヒドロキシ末端停止レゾルシノールアリーレート含有初期縮合物又はオリゴマーを製造する場合には、オリゴマーの分子量の制御を助けるため、連鎖停止剤を存在させないか、又は少量だけ存在させればよい。
【0033】
別の実施形態では、本発明は三官能性又はさらに高い官能性のカルボン酸塩化物及び/又は三官能性又はさらに高い官能性のフェノール類のような1種以上の枝分れ剤を含める場合も包含し得る。かかる枝分れ剤(含める場合)は、通例、使用するジカルボン酸二塩化物又はレゾルシノール成分をそれぞれ基準にして0.005〜1モル%の量で使用できる。好適な枝分れ剤には、例えば、トリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸四塩化物又はピロメリト酸四塩化物のような三官能性又はさらに高い官能性のカルボン酸塩化物、及び4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)]フェノキシ)メタン、1,4−ビス[(4,4−ジヒドロキシトリフェニル)メチル]ベンゼンのような三官能性又はさらに高い官能性のフェノール類がある。フェノール系枝分れ剤は最初にレゾルシノール成分と共に導入できる一方、酸塩化物枝分れ剤は酸二塩化物と共に導入できる。
【0034】
一実施形態では、本発明は、本発明方法で製造されると共に、ポリエステル鎖の2以上の単量体単位を結合する無水物結合を実質的に含まない熱安定性レゾルシノールアリーレートポリエステルからなる。特定の実施形態では、前記ポリエステルは、下記の式VIIに示されるようなイソフタル酸及びテレフタル酸の混合物から誘導されるジカルボン酸残基を含む。
【0035】
【化6】

【0036】
式中、RはC1−12アルキル、C〜C24アリール、アルキルアリール又はハロゲンであり、nは0〜3であり、mは約8以上である。様々な実施形態では、nは0であり、mは約10〜約300である。イソフタレートとテレフタレートとのモル比は、一実施形態では約0.25〜4.0:1であり、別の実施形態では約0.4〜2.5:1であり、さらに別の実施形態では約0.67〜1.5:1である。「無水物結合を実質的に含まない」とは、前記ポリマーを約280〜290℃の温度で5分間加熱した場合、前記ポリエステルが一実施形態では30%未満の分子量減少を示し、別の実施形態では10%未満の分子量減少を示すことを意味する。
【0037】
本発明の技術的範囲内には、本発明と同じ所有権者の米国特許第5916997号に開示されているようなソフトブロックセグメントを含むレゾルシノールアリーレートコポリエステルも含まれる。本明細書中で使用される「ソフトブロック」という用語は、ポリマーの一部のセグメントが非芳香族モノマー単位から作られていることを表す。かかる非芳香族モノマー単位は一般に脂肪族であり、ソフトブロック含有ポリマーに柔軟性を付与することが知られている。かかるコポリマーは、下記の式I、式VIII及び式IXの構造単位からなるものを含む。
【0038】
【化7】

【0039】
式中、R及びnは上記で定義した通りであり、Zは二価芳香族基であり、RはC3−20直鎖アルキレン、C3−10枝分れアルキレン或いはC4−10シクロ又はビシクロアルキレン基であり、R及びRは各々独立に下記の基を表す。
【0040】
【化8】

【0041】
ここで、式IXはポリエステルのエステル結合の約1〜約45モル%をなす。本発明の追加の実施形態では、式IXが様々な実施形態ではポリエステルのエステル結合の約5〜約40モル%をなし、他の実施形態ではポリエステルのエステル結合の約5〜約20モル%をなす組成物を提供する。別の実施形態は、Rが一実施形態ではC3−14直鎖アルキレン又はC5−6シクロアルキレンを表し、別の実施形態ではC3−10直鎖アルキレン又はCシクロアルキレンを表す組成物を提供する。式VIIIは芳香族ジカルボン酸残基を表す。式VIII中の二価芳香族基Zは、様々な実施形態では上記に定義したような好適なジカルボン酸残基の1種以上から導くことができ、幾つかの実施形態では1,3−フェニレン、1,4−フェニレン又は2,6−ナフチレンの1種以上である。様々な実施形態で、Zは約40モル%以上の1,3−フェニレンからなる。ソフトブロック連鎖部分を含むコポリエステルの様々な実施形態では、式I中のnは0である。
【0042】
様々な実施形態では、レゾルシノールアリーレート連鎖部分を含むコポリエステルは、約1〜約45モル%のセバケート又はシクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート単位を含むものである。特定の実施形態では、レゾルシノールアリーレート連鎖部分を含むコポリエステルは、レゾルシノールイソフタレート単位及びレゾルシノールセバケート単位を8.5:1.5〜9.5:0.5のモル比で含むものである。一実施形態では、前記コポリエステルは、塩化セバコイルを二塩化イソフタロイルと共に用いて製造される。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、レゾルシノールアリーレート含有ブロックセグメントを有機カーボネートブロックセグメントと共に含むブロックコポリエステルカーボネートからなる。かかるコポリマー中でレゾルシノールアリーレート連鎖部分からなるセグメントは、無水物結合を実質的に含まない。「無水物結合を実質的に含まない」とは、前記コポリエステルカーボネートを約280〜290℃の温度で5分間加熱した場合、コポリエステルカーボネートが一実施形態では10%未満の分子量減少を示し、別の実施形態では5%未満の分子量減少を示すことを意味する。ブロックコポリエステルカーボネートは、式Xに代表的に示すような、交互に配置されたアリーレートブロック及び有機カーボネートブロックからなるものを含む。式中、R及びnは上記で定義した通りであり、Rは1種以上の二価有機基である。
【0044】
【化9】

【0045】
アリーレートブロックは、mで表される重合度(DP)を有する。この重合度は、一実施形態では約4以上であり、別の実施形態では約10以上であり、別の実施形態では約20以上であり、さらに別の実施形態では約30〜150である。pで表される有機カーボネートブロックのDPは、一実施形態では一般に約10以上であり、別の実施形態では約20以上であり、さらに別の実施形態では約50〜200である。ブロックの分布は、カーボネートブロックに対して任意所望の重量比率のアリーレートブロックを有するコポリマーを与えるようなものがある。一般に、アリーレートブロックの含有量は一実施形態では約10〜95重量%であり、別の実施形態では約50〜95重量%である。
【0046】
式Xにはイソフタレート及びテレフタレートの混合物を示すが、アリーレートブロック中のジカルボン酸残基は、脂肪族二酸二塩化物から誘導されるもの(いわゆる「ソフトブロック」セグメント)を含め、上記に定義したような任意の好適なジカルボン酸残基又は好適なジカルボン酸残基の混合物から導くことができる。様々な実施形態では、nは0であり、アリーレートブロックはイソフタル酸及びテレフタル酸残基の混合物から誘導されるジカルボン酸残基からなる。この場合、イソフタレートとテレフタレートとのモル比は、一実施形態では約0.25〜4.0:1であり、別の実施形態では約0.4〜2.5:1であり、さらに別の実施形態では約0.67〜1.5:1である。
【0047】
有機カーボネートブロック中では、各Rは独立に二価有機基である。様々な実施形態では、前記基は1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素からなり、ポリマー中のR基の総数の約60%以上は芳香族有機基であり、残部は脂肪族基、脂環式基又は芳香族基である。好適なR基には、m−フェニレン、p−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、4,4’−ビ(3,5−ジフェニル)フェニレン、2,2−ビス(4−フェニレン)プロパン、6,6’−(3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ[1H−インダン]、及び米国特許第4217438号に名称又は式(一般式又は特定式)で開示されているジヒドロキシ置換芳香族炭化水素に対応するもののような類似の基がある。
【0048】
幾つかの実施形態では、各Rは芳香族有機基であり、他の実施形態では下記の式XIの基である。
【0049】
【化10】

【0050】
式中、A及びAの各々は単環式二価アリール基であり、Yは1又は2の炭素原子がA及びAを隔てる橋かけ基である。式XI中の自由原子価結合は、通常はYに対してA及びAののメタ位又はパラ位にある。Rが式XIを有する化合物はビスフェノールであり、簡潔のため、本明細書中ではジヒドロキシ置換芳香族炭化水素を表すのに「ビスフェノール」という用語を使用することがある。しかし、ビスフェノールでないこの種の化合物も適宜に使用し得ることを理解すべきである。
【0051】
式XI中で、A及びAは通例は非置換フェニレン又はその置換誘導体を表し、例示的な置換基(1以上)はアルキル、アルケニル及びハロゲン(特に臭素)である。一実施形態では、非置換フェニレン基が好ましい。A及びAは大抵は共にp−フェニレンであるが、両方がo−又はm−フェニレンであってもよいし、或いは一方がo−又はm−フェニレンであり、他方がp−フェニレンであってもよい。
【0052】
橋かけ基Yは、1又は2の原子がAをAから隔てるものである。特定の実施形態では、1つの原子がAをAから隔てている。この種の例示的な基は、−O−、−S−、−SO−、−SO−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチル、メチレン、エチレン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデン及び類似の基である。
【0053】
幾つかの実施形態では、(一般に「アルキリデン」として知られる)gem−アルキレン基が好ましい。しかし、不飽和基も含まれる。幾つかの実施形態では、好ましいビスフェノールは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA又はBPA)であり、この場合にはYがイソプロピリデンであり、A及びAが各々p−フェニレンである。反応混合物中に存在するレゾルシノール成分のモル過剰量に応じ、カーボネートブロック中のRは少なくとも部分的にレゾルシノール成分からなり得る。換言すれば、本発明の幾つかの実施形態では、式Xのカーボネートブロックは1種以上の他のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素と共にレゾルシノール成分を含んでいてもよい。
【0054】
本発明には、ジブロック、トリブロック及びマルチブロックのコポリエステルカーボネートが包含される。レゾルシノールアリーレート連鎖部分を構成するブロックと、有機カーボネート連鎖部分を構成するブロックとの間の化学結合は、(a)例えば下記の式XII(式中、Rは上記で定義した通りである。)に代表的に示されるような、アリーレート部分の適当なジカルボン酸残基と有機カーボネート部分の−O−R−O−部分との間のエステル結合、及び(b)下記の式XIII(式中、R及びnは上記で定義した通りである。)に示されるような、レゾルシノールアリーレート部分のジフェノール残基と有機カーボネート部分の−(C=O)−O−部分との間のカーボネート結合の1以上からなり得る。
【0055】
【化11】

【0056】
【化12】

【0057】
タイプ(a)のエステル結合が相当な比率で存在すれば、コポリエステルカーボネート中に望ましくない発色を生じることがある。本発明は理論によって制限されないが、例えば、式XII中のRがビスフェノールAであり、式XIIの部分が以後の加工及び/又は露光中にフリース転位を受ける場合に色が発生し得ると考えられる。一実施形態では、コポリエステルカーボネートは、レゾルシノールアリーレートブロックと有機カーボネートブロックとの間にカーボネート結合を有するジブロックコポリマーから実質的になる。別の実施形態では、コポリエステルカーボネートは、レゾルシノールアリーレートブロックと有機カーボネート末端ブロックとの間にカーボネート結合を有するトリブロックのカーボネート−エステル−カーボネートコポリマーから実質的になる。
【0058】
熱安定性レゾルシノールアリーレートブロックと有機カーボネートブロックとの間に1以上のカーボネート結合を有するコポリエステルカーボネートは、通例、本発明の様々な実施形態で製造され、一実施形態では1以上のヒドロキシ末端部位を有し、別の実施形態では2以上のヒドロキシ末端部位を有するレゾルシノールアリーレート含有オリゴマーから製造される。前記オリゴマーは、通例、一実施形態では約10000〜約40000、別の実施形態では約15000〜約30000の重量平均分子量を有する。熱安定性コポリエステルカーボネートは、第三アミンのような触媒の存在下で前記レゾルシノールアリーレート含有オリゴマーをホスゲン、1種以上の連鎖停止剤及び1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素と反応させることで製造できる。
【0059】
上述のようなレゾルシノール系ポリエステル−繊維組成物は、様々な条件(例えば、フロリダ又はアリゾナにおける高い湿度及び低い湿度を有する自然屋外暴露)下で向上した耐候性を示す。試験を容易にするため、屋外暴露は様々な促進試験条件(例えば、ASTM G26、ASTM G155又はSAE J1960)下でシミュレートされることが多い。
【0060】
本発明の一実施形態では、CIRAガラス内部フィルター及びソーダ石灰ガラス外部フィルターを備えたAtlas Ci4000キセノンアークウェザロメーターを用いて、340ナノメートルで0.77ワット/平方メートルの放射束密度で試料に耐候試験を施した。暴露条件は、黒色パネル55℃、乾球温度35℃、湿度30%の下での連続照明であった。露光量は、340ナノメートルで受けるエネルギーをキロジュール/平方メートル(KJ/m)単位で測定した。1週に1回、試料に雨状の水スプレーをかけ、スポンジでぬぐった。光は連続点灯状態に保った。これらの老化条件下では、約1時間の暴露が2.7KJ/mに等しい。即ち、1000時間は約2700KJ/mに等しく、3000時間は約8100KJ/mに等しく、5000時間は約13500KJ/mに等しい。
【0061】
CIRAは、Atlas Electric Devices Co.製のIR反射石英フィルターである。CIRAは「被覆赤外線吸収」石英を表す。このフィルターとソーダ石灰ガラス外部フィルターとの組合せにより、マイアミの直射日光に非常によく似た短波長UVカットオフが得られる。また、試料に対する熱負荷がわずかに低減することにより、IR皮膜がない場合よりも高い放射束密度で温度制御が可能となる。
【0062】
色シフトについては、L、a及びb値を用いるCieLAB系で測定を行い、耐候試験を施さない対照品と比較して色シフト値(ΔE)を計算できる。GretagMacbeth(商標)Color−Eye 7000A比色計を用いて試料の色を評価し、結果をΔE((ΔE=ΔL+Δa+Δb)1/2)として報告した。
【0063】
耐候試験を施さない初期試料と比較した場合の、耐候試験を施した試料の変色を、ASTM D1925に従い、黄色度指数(YI)の変化で測定した。
【0064】
ASTM D523に従って60°光沢値としてしばしば測定される表面光沢を通常の屋外暴露下又は促進耐候試験装置(「ウェザロメーター」)内での暴露時間の関数として監視することで、上述の条件下での光老化に原因する特性の低下に対する材料の耐性を測定できる。光沢は、黒色ガラス標準に対して較正したBykGardner microTrigloss meterを用いて、耐候試験の終わった試料に関して60°の角度で測定した。
【0065】
(例えば、50°を超える)高い初期光沢を有する試料は、低い初期光沢を有する試料より容易に反射率の変化を示す。
【0066】
本発明の物品は、成形したままで高い光沢(即ち、70%以上の60°光沢、最も好ましくは80%以上の光沢)を有し、上述の促進光老化試験条件下で1000KJ/mでの促進耐候試験後に前記初期光沢の50%以上の保持率を示す。本発明の好ましい組成物は、3000KJ/mでの促進耐候試験後に初期光沢の約50%の保持率を示す。本発明の最も好ましい組成物は、5000KJ/mでの促進耐候試験後に初期光沢の約50%以上の保持率を示す。KJ/m単位で測定される全露光エネルギーが高くなるほど、試験は苛酷になり、物品がその光沢、色又は他の特性を保持するのは困難になる。
【0067】
本発明の組成物は、無機充填材(例えば、タルク、クレー、雲母、バライト、ウォラストナイト、ミルドガラス及びガラスフレーク)のような他の成分と混合することもできる。二酸化チタンや硫化亜鉛やカーボンブラックのような着色剤、ヒンダードフェノールやアリールホスフェートやアリールホスフィネートやチオエステルのような安定剤、並びに離型剤、潤滑剤、難燃剤、煤煙抑制剤、紫外線吸収剤や他のUV安定剤、及び滴下防止剤(例えば、フルオロポリマーに基づくもの)も、有効量で組成物に添加することができる。
【0068】
本発明の幾つかの実施形態では、ガラス繊維と平らな板状充填材(例えば、雲母又はフレークガラス)との組合せは向上した性質を与えることができる。この場合、平らな板状充填材はその厚さより10倍以上大きい長さ及び幅を有しており、厚さは1〜1000ミクロンである。
【0069】
剛性繊維充填材と平らな板状充填材との組合せは、成形品のゆがみを低減させることができる。好ましい離型剤は、アルキルカルボン酸エステル、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート、グリセリントリステアレート及びエチレングリコールジステアレートである。離型剤は、通例、組成物の0.05〜0.5重量%で組成物中に存在する。好ましい離型剤は、溶融加工中に溶融ポリマー−繊維混合物から離型剤が失われるのを防止するため、通例は約300を超える高い分子量を有する。
【0070】
好ましい難燃添加剤には、ハロゲン化化合物(特に、芳香族塩素又は臭素含有化合物)及びスルホン酸塩(例えば、スルホンスルホン酸カリウムやペルフルオロブチルスルホン酸ナトリウム)がある。アリールホスフェート難燃剤(例えば、トリフェニルホスフェート及びビスフェノールA又はレゾルシノールのホスフェートエステル)も有用な難燃剤である。難燃剤組成物は、燃焼中の滴下を抑制するため、フッ素化オレフィンモノマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)から誘導されるポリマーを含んでいてもよい。
【0071】
本発明の物品は多数の方法で製造できる。好ましい方法には、例えば、射出成形、圧縮成形、異形押出し、シート又はフィルム押出し、ガス支援成形、構造用フォーム成形及び熱成形がある。物品がある種の樹脂からなる内部コア及びレゾルシノール系ポリエステルからなる外部被覆を有する射出成形も、物品製造手段として考えられる。かかる多成分成形は、しばしば共射出成形といわれる。
【0072】
本発明の有用な物品には、例えば、ベンチ、座席、ドア、窓枠、屋外照明器具、輸送装置、建物の構造部材や装飾部材、温室、壁板材料、建築用ハードウェア、郵便受け、ポスト、垣根、囲い及び通信装置がある。
【0073】
本発明のさらに別の有用な例には、以下の用途で使用するために製造される物品がある。かかる用途とは、航空機、自動車、トラック、水上乗物又はオートバイの外部又は内部部材、屋外乗物又は屋外装置用の囲い、ハウジング、パネル又は部品、電気装置又は電気通信装置用の囲い、屋外用家具、ボート又は船舶設備(装備品、囲い及びハウジング)用の物品、船外発動機ハウジング、測深機ハウジング、個人用船舶、ジェットスキー、プール、温泉、ホットタブ、階段、階段の覆い、建築又は建設用途(ガラス窓、屋根、窓、床、装飾用の窓装備品又は処理材)、展示用品、壁パネル又はドア、屋外用及び屋内用看板、自動金銭出納機(ATM)用の部品、トラクター又は農業設備(灌漑装置、芝刈り機、又は芝生用や園芸用の道具)用の囲い、ハウジング、パネル又は部品、スポーツ用具又は玩具、スノーモービル用の囲い、ハウジング、パネル又は部品、レクリエーション用乗物のパネル又は部材、遊び場の用具、プラスチックと木材の組合せで製造された物品、ゴルフコースマーカー、ユーティリティピットカバー、コンピューターハウジング、コンピューターハウジング、ポータブルコンピューターハウジング、ラップトップコンピューターハウジング、パームヘルドコンピューターハウジング、モニターハウジング、キーボード、電話機ハウジング、携帯電話ハウジング、ラジオ送信機ハウジング、ラジオ受信機ハウジング、照明器具、照明装置、ネットワークインターフェース装置ハウジング、変圧器ハウジング、空気調和機ハウジング、公共輸送機関、列車、地下鉄又はバス用の座席、メーターハウジング、アンテナハウジング、衛星放送アンテナ用加工品、ヘルメット又は他の人体防護用具がある。
【実施例】
【0074】
実施例1〜6
表1は、本発明の実施例1〜6並びに対照例A及びBを示している。各配合物の成分を混合し、真空ベント式2.5インチ一軸押出機を用いて約575°F及び約80rpmで溶融ブレンドすることでブレンドを得、これをストランド状に押し出し、冷却し、細断してペレットにした。続いて、ペレットを乾燥し、厚さ1/8インチの試験片に射出成形した。表1中に示す試験は以下のようにして実施した。即ち、曲げ特性はASTM D790に従って試験し、アイゾット衝撃強さはASTM D256に従って試験し、熱変形温度(HDT)はASTM D648に従って試験した。
【0075】
光沢は、ASTM D523の方法に従い、黒色ガラス標準に対して較正したBykGardner microTrigloss meterを用いて、耐候試験の終わった試料に関して60°で測定した。
【0076】
黄色度指数(YI)は、ASTM D1926の方法に従い、同じ試料に関して測定した。
【0077】
R−PECは、レゾルシノールとイソフタル酸及びテレフタル酸塩化物の混合物との反応に基づく単位90モル%と、ホスゲンとビスフェノールAとの反応に基づく単位約10モル%とからなるレゾルシノール系ポリエステルカーボネートである。Mwは約25000ダルトンに等しい。
【0078】
BPA−PCは、ビスフェノールAとホスゲンとの反応に基づくポリカーボネートである。Mwは約30000ダルトンに等しい。これはGeneral Electric Plastics社からLEXAN樹脂として市販されている。
【0079】
GF−1は、脂肪族ポリウレタン及びアミノシランからなる表面処理剤を有する細断ホウケイ酸ガラス繊維である。繊維の直径は約14ミクロンである。これはOwens Corning Co.からOC473Aとして市販されている。
【0080】
GF−2は、ポリエポキシ及びアミノシランからなる表面処理剤を有する同様な細断ホウケイ酸ガラス繊維である。これはOwens Corning Co.からOC473Aとして市販されている。
【0081】
両ガラス繊維は、約10500000psiの引張弾性率及び約500000psiの引張強さを有する。
【0082】
CIRAガラス内部フィルター及びソーダ石灰ガラス外部フィルターを備えたAtlas Ci4000キセノンアークウェザロメーターを用いて、実施例1〜6及び対照例A&Bの射出成形円板試験片に340ナノメートルで0.77ワット/平方メートルの放射束密度で耐候試験を施した。光源としてキセノンアーク電球を使用した。暴露条件は、黒色パネル55℃、乾球温度35℃、湿度30%の下での連続照明であった。露光量は、340ナノメートルで受けるエネルギーをキロジュール/平方メートル(KJ/m)単位で測定した。これらの老化条件下では、約1時間の暴露が2.7KJ/mに等しい。即ち、1000時間は約2700KJ/mに等しく、3000時間は約8100KJ/mに等しく、5000時間は約13500KJ/mに等しい。1週に1回、試料に雨状の水スプレーをかけ、スポンジでぬぐった。光は連続点灯状態に保った。
【0083】
CIRAは、Atlas Electric Devices Co.製のIR反射石英フィルターである。CIRAは「被覆赤外線吸収」石英を表す。このフィルターとソーダ石灰ガラス外部フィルターとの組合せにより、マイアミの直射日光に非常によく似た短波長UVカットオフが得られる。また、試料に対する熱負荷がわずかに低減することにより、IR皮膜がない場合よりも高い放射束密度で温度制御が可能となる。
【0084】
色シフトについては、L、a及びb値を用いるCieLAB系で測定を行い、耐候試験を施さない対照品と比較して色シフト値(ΔE)を計算できる。GretagMacbeth(商標)Color−Eye 7000A比色計を用いて試料の色を評価し、結果をΔE((ΔE=ΔL+Δa+Δb)1/2)として報告した。
【0085】
耐候試験を施さない初期試料と比較した場合の、耐候試験を施した試料の変色を、ASTM D1925に従い、黄色度指数(YI)の変化で測定した。
【0086】
ASTM D523に従って60°光沢値として測定される表面光沢を促進耐候試験装置内での暴露時間の関数として監視することで、上述の条件下での老化に原因する光沢の低下に対する材料の耐性を測定した。光沢は、黒色ガラス標準に対して較正したBykGardner microTrigloss meterを用いて、耐候試験の終わった試料に関して60°の角度で測定した。
【0087】
本発明の実施例1〜6は、20000psiを超える高い曲げ強さ及び400000psiを超える高い曲げ弾性率を示すことに注意されたい。
【0088】
本発明の実施例は、高い初期60°光沢を示すと共に、3000KJ/mを超える照射後にも初期光沢の高い保持率を示している。対照例A及びBは、同じ耐候試験条件の下で低い初期光沢及び急速な光沢の低下を示している。
【0089】
同様に、実施例1〜6の黄色度指数(YI)は促進耐候試験後に極めてわずかな変化しか示さないのに対し、対照例(A及びB)は初期黄色度の2倍を超える値を示している。
【0090】
また、実施例1〜6では、小さいΔE値は促進耐候試験中におけるわずかな変色を表していることに注意されたい。対照例A及びBは大きいΔEによって大きい変色を示している。
【0091】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
40〜99%のレゾルシノール系ポリエステルと1〜60%の繊維を含んでなる高い曲げ弾性率、高い光沢保持率及び向上した耐候性を有する成形品であって、当該組成物がASTM D790で測定して約300000psi以上の曲げ弾性率を有し、当該組成物がASTM D523で測定して70%以上の初期60°光沢値を有し、当該組成物が3000KJ/mの促進キセノンアーク耐候試験後に上記初期光沢の50%以上の保持率を有する、成形品。
【請求項2】
前記繊維が約1000000psi以上の弾性率を有する、請求項1記載の成形品。
【請求項3】
前記繊維が直径5〜20ミクロンのガラス繊維である、請求項1記載の成形品。
【請求項4】
レゾルシノール系ポリエステル含有量が組成物全体の60〜90%であり、繊維含有量が10〜40%である、請求項1記載の成形品。
【請求項5】
レゾルシノール系ポリエステルが以下の構造を有する、請求項1記載の成形品。
【化1】

式中、RはC1−12アルキル、C〜C24アリール、アルキルアリール又はハロゲンの1種以上であり、nは0〜3であり、mは約8以上である。
【請求項6】
レゾルシノール系ポリエステル樹脂がカーボネート結合を含むコポリマーである、請求項1記載の成形品。
【請求項7】
レゾルシノール系ポリエステル樹脂が以下の構造を有するカーボネート結合含有コポリマーである、請求項6記載の成形品。
【化2】

式中、RはC1−12アルキル、C〜C24アリール、アルキルアリール又はハロゲンの1種以上であり、nは0〜3であり、Rは1種以上の二価有機基であり、mは約4〜150であり、pは約10〜200である。
【請求項8】
がビスフェノール化合物から誘導される、請求項7記載の成形品。
【請求項9】
70%以上の初期光沢を有し、3000KJ/mの促進耐候試験後に初期光沢の50%以上の保持率を有する、請求項1記載のレゾルシノール系ポリエステル組成物からなる耐候性物品。
【請求項10】
70%以上の初期光沢を有し、5000KJ/mの促進耐候試験後に初期光沢の50%以上の保持率を有する、請求項1記載のレゾルシノール系ポリエステル組成物からなる耐候性物品。
【請求項11】
3000KJ/mの促進耐候試験後の変色が約10ΔE単位以下である、請求項1記載のレゾルシノール系ポリエステル組成物からなる耐候性物品。
【請求項12】
さらに、長さと幅が厚さの10倍以上であり、厚さが1〜1000ミクロンである平らな板状充填材を含む、請求項1記載のレゾルシノール系ポリエステル組成物からなる耐候性物品。
【請求項13】
前記充填材がガラスフレーク及び雲母からなる群から選択される、請求項12記載のレゾルシノール系ポリエステル組成物からなる耐候性物品。
【請求項14】
さらに、分子量約300以上のエステル系離型剤を含む、請求項1記載のレゾルシノール系ポリエステル組成物からなる耐候性物品。
【請求項15】
さらに、臭素又は塩素含有化合物、スルホン酸塩、有機リン酸エステル、フッ素化ポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される難燃剤を含む、請求項1記載のレゾルシノール系ポリエステル組成物からなる耐候性物品。
【請求項16】
40〜99%のレゾルシノール系ポリエステルカーボネートと1〜60%の繊維を含んでなる耐候性の高弾性率レゾルシノール系ポリエステル組成物であって、ASTM D790で測定して約300000psi以上の曲げ弾性率を有し、ASTM D523で測定して70%以上の初期60°光沢値を有し、3000KJ/mの促進耐候試験後に上記初期光沢の50%以上の保持率を有するレゾルシノール系ポリエステル組成物。

【公表番号】特表2006−513305(P2006−513305A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567465(P2004−567465)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/041827
【国際公開番号】WO2004/067621
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】