説明

高性能リグノセルロース繊維複合材料の製造方法

本発明は、熱可塑性マトリックスに分散したリグノセルロース繊維を有し、一方、一般的に平均繊維長が0.2mm未満にならないよう維持する複合材料の製造方法に関する。方法は、繊維を分離し、微小繊維を生成する為の、攪拌機を使用した繊維の分解温度未満の温度でのリグノセルロース繊維の脱繊維、次に成形可能な熱可塑性物質複合体を得る為に繊維を機械的混合により熱可塑性マトリックス内へ分散させ、続いて、前記複合体の射出、圧縮、押出、又は圧縮押出成形を含む。当該方法は少なくとも約55MPaの引っ張り強度、少なくとも80MPaの曲げ強度、少なくとも約2GPaの剛性、少なくとも約20J/mのノッチ付き衝撃強度、少なくとも約100J/mのノッチ無し衝撃強度を有する高性能の複合材料を生産する。本発明の複合材料は、自動車の、航空宇宙の、電子工学の、家具、スポーツ用品、室内装飾材料及び他の構造的適用に非常に適している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は一般にリグノセルロース繊維/熱可塑性物質複合体に関する。本発明はより詳しくは、改良された材料特性を有するリグノセルロース繊維/熱可塑性物質複合体の製造方法に関する。
【0002】
(背景技術)
リグノセルロース繊維複合体は、自動車、電気工学、航空宇宙、建物及び構造物、家具、運動用具等を含む、非構造的適用と同様に広い範囲の構造材において広く使用されている。これは従来の無機充填材と比較した、天然繊維により示される以下の利点によるものである。
・植物繊維は無機充填材と比較して比較的低い密度を有する。
・植物繊維は結果として処理装置の磨耗を減少させる。
・植物繊維は健康及び環境に関連した利点を有する。
・植物繊維は再生可能資源であり、それらの有用性は事実上無制限である
・植物繊維で強化された複合体はCO2ニュートラルである。
・植物繊維複合体は再生可能で、処分が容易である。
・生体高分子と組み合わせて使用すれば、植物繊維から完全に生体分解性の複合体生成物を製造することが出来る。
【0003】
リグノセルロース繊維複合材料の分野には多くの従来技術が存在する。特に、Zehnerは米国特許第6,780,359 (2004)でセルロース材料をポリマーと混合し、複合体の顆粒を形成し、顆粒を複合体の中に成形し、供給原料として熱可塑性樹脂、セルロース、添加物及び無機充填剤の選択を利用し、セルロースをプラスチックマトリックスでコートするために、好ましくは木材繊維として木粉を特定することを含むコンポーネントの製造方法を記載している。
【0004】
Hutchisonらは米国特許第6,632,863号(2003)において、セルロース繊維ペレットの製造、前記ペレットをさらにポリマーと混和して最終組成物を形成し、前記ペレットを製品に成形することを教示した。
【0005】
Snijderらは、米国特許第6,565,348号(2003)においてポリマーを融解し、繊維を融解物に供給し混合物を作成し、前記混合物を押出し、造粒することを含むマルチゾーンプロセス(multi- zone process)を記載している。
【0006】
Searsらは、米国特許第6,270,883(2001)号においてポリマー並びに添加物及び繊維顆粒若しくはペレットを混合する、2軸スクリュー押し出し機の使用を記載している。
【0007】
Medoffらは米国特許第6,258,876号(2001)においてテクスチャライズした繊維を形成するためにリグノセルロース繊維を剪断し、それらを樹脂と組み合わせることを含む複合体の製造方法を教示している。Medoffらは米国特許第5,973,035号(1999)において同様のセルロース複合体を教示している。
【0008】
リグノセルロース繊維充填ポリマー複合体の機械的特性は一般的に、(i)複合体の中の繊維長、(ii)ポリマーマトリックス内の繊維の分散、(iii)繊維とポリマーマトリックス間の界面相互作用及び(iv)繊維の化学的特性によって決定される。従来のリグノセルロース繊維複合体においては、構造的材料の生成において妨げとなる繊維の凝集が観察される。
【0009】
短リグノセルロース充填熱可塑性材料からの高性能構造材料の製造方法の開発に関する挑戦には、ストレスの繊維への転換を促進する良好な繊維マトリックス界面付着に加え、要求されるマトリックスから繊維への効果的なストレス転換に必要な繊維長を保持すること及びストレスが集中する凝集塊を避ける為にマトリックス内へ繊維を十分に分散させることを含む。
【0010】
リグノセルロース繊維は一般的に水酸基が豊富であり、これらの水酸基間の強い水素結合のためにこれらの繊維を一般的な疎水性の熱可塑性マトリックス中に均一に分散することは難しい。親水性のセルロース繊維は一般に、疎水性である熱可塑性のマトリックスと不適合であり、このことが繊維のぬれ及び分散の不良に通じる。適切な界面修飾剤を使用することにより、ある程度ぬれと分散を改善し、複合体の性能を改善させることができる。
【0011】
分散及び界面付着を改善し、それ故リグノセルロース複合体の特性を改善することに関するいくつかの開発がなされてきた。例えば、:
・米国特許第4,250,064号(1981)において、Chandlerはポリマーマトリックス内における繊維の分散性を改善する為に植物繊維をCaCO3のような無機充填材と組み合わせて使用することについて記載している。
・水中でスラリー化することによるセルロース繊維の前処理及びセルロース繊維の希HCl又は希H2SO4による加水分解性前処理のような方法は、Coranら及びKubatらにより米国特許第4,414,267号(1983)及び第4,559,376 号(1985)にそれぞれ記載されている。
・分散を改善する為にセルロース繊維を潤滑剤で前処理すること及びポリマーマトリックス中の繊維の結合はHamedによって米国特許第3,943,079号(1976)に開示されている。
・分散及び繊維とマトリックスの付着を改善する為の機能的ポリマー及びセルロース繊維のシランによるグラフトの使用はWoodhamsにより米国特許第4,442,243号(1984)内に及びBeshayにより米国特許第4,717,742(1988)内にそれぞれ開示されている。
・Rajらは米国特許第5,120,776号(1992)においてポリマーマトリックス内での繊維の分散性及び結合性を改善する為に不連続セルロース繊維をマレイン酸無水物で化学的処理する方法を教示している。
・Beshayは米国特許第5,153,241号(1992)において、セルロース繊維とポリマーの結合及び分散を改善する為のチタンカップリング剤の使用を記載している。
・Hornは米国特許第5,288,772号(1994)において前処理した高含水セルロース材料の複合体製造の為の使用を開示している。
・水を柔軟剤として使用した摂氏160〜200℃における繊維の加水分解性処理はPottらによってカナダ特許第2,235,531号(1997)に請求されている。
・Searsらは米国特許第6,270,883号(2001)及び欧州特許第1121244号(2001)に記載されているように、高度に融解した熱可塑性物質マトリックス、好ましくはナイロンに分散したセルロースパルプ繊維を含む特性を改善した強化複合材料を開示している
【0012】
なぜならより長い不連続繊維は一般的により大きい応力への許容性を有し、それゆえ同様の性質を有するより短い繊維よりより大きい引張り特性を有するので、またより短い繊維よりも、より長い繊維のほうが破壊される前にさらに多くの圧力を吸収できるので、不連続繊維充填複合体の性能は繊維長にも依存するJacobsenは米国特許第6,610,232(2003)において、長不連続リグノセルロース繊維を熱可塑性物質複合体に使用することを開示している。
【0013】
リグノセルロース繊維の分散を改良する別の方法はプラスチックとの繊維の溶融混合の間、高速剪断を使用することである。繊維は崩壊する傾向にあるので、高速剪断の結果得られた化合物中にはマトリックスから負荷量を運ぶために効果的でない、小さい繊維が得られる。言い換えると、高速剪断により、繊維長は重要な繊維長未満に減少されてしまう。これは特に無機ガラス繊維を有機繊維と組み合わせて使用した場合に顕著である。ガラス繊維は容易に崩壊し、短い長さになり、これは逆に複合材料の最大限の可能性の活用を妨げる。リグノセルロース性の熱可塑性物質複合体から、高性能材料を得る為には、従って重要な意味を持つ繊維長を保ちながら、マトリックス中に繊維を十分に分散させることが重要である。本発明の発明者の先行特許出願、すなわち米国公開第20050225009号及び2004年12月6日に出願した出願番号第11/005,520号はセルロース繊維の分散を改良した高性能セルロース性ガラス充填熱可塑性物質複合体を得る方法を開示している。
【0014】
先行技術は異なる熱可塑性物質、カップリング剤及び繊維の処理を組み合わせた異なるリグノセルロース充填材を含む熱可塑性物質複合体の加工を示しているが、それらは一般に、本発明で達成する高強度の性能のセルロース充填熱可塑性物質複合材料の製造を示していない。本発明は、有機繊維が効果的な繊維長を有し、よく分散及び熱可塑性マトリックス材料と結合している高性能構造複合材料を達成することが出来る。また、特定の適用においては、ガラス繊維を含まない、リグノセルロース繊維を含む熱可塑性物質複合体の必要性がある。望ましい熱抵抗特性を有する前記熱可塑性物質複合体を生産するさらなる必要性がある。
【0015】
(発明の概要)
本発明の一つの態様において、高性能リグノセルロース繊維充填熱可塑性構造複合体の製造方法が提供される。製造方法には、攪拌機を用いたリグノセルロース繊維の熱可塑性マトリックスへの脱繊維及び分散が含まれる。
【0016】
本発明のより特定の態様において、リグノセルロース繊維充填構造ポリマー複合材料が、以下の材料特性が一般的に、好ましく達成される構造複合生成物へと射出、圧縮、押出、又は圧縮射出成形された後に生産することが出来る方法が提供される。前記材料特性には、少なくとも約55MPaの引っ張り強度、少なくとも80MPaの曲げ強度、少なくとも約2GPaの剛性、少なくとも約20J/mのノッチ付き衝撃強度、少なくとも約100J/mのノッチ無し衝撃強度が挙げられる。方法は繊維間の水素結合の分離及び微小繊維の産生を達成するために操作可能な時間、リグノセルロース繊維を熱運動的高剪断攪拌機(thermokinetic high shear mixer)内で脱繊維し、続いて熱可塑性物質の融点より高く、かつリグノセルロース繊維の分解温度より低い温度で、熱可塑性物質全体にわたってリグノセルロース繊維の分散又は混合を達成するために操作可能な時間リグノセルロース繊維を熱可塑性マトリックス内へ機械的混合することにより分散、又は「捏和」した。複合体生成物の得られた特性はリグノセルロース繊維の機械的もつれ及び繊維と熱可塑性物質の間の界面付着を有し、一般的に自動車の、航空宇宙の、電子工学の、家具及び他の産業を含む構造的適用に非常に適している高い強さ特性を有する材料をもたらす。
【0017】
本発明の使用に適した熱可塑性マトリックス材料はポリオレフィン及びポリプロピレンを含み、実施例として同様に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレン-ポリプロピレン コポリマー、塩化ポリビニル、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルコネート及びポリエチレンテレフタラートのような他の熱可塑性材料が挙げられる。
【0018】
表面改質剤は、例えば、熱可塑性物質の化学的特性に依存して複合体内で使用される界面活性剤であり、例えばプロピレンがマトリックス材として使用されている、マレイン化ポリプロピレンである。本発明の使用の為の、他の適切な活性剤としては、マレイン化ポリエチレン(maleated polyethylene)、マレイン化ポリスチレン(maleated polystyrene)、マレイン化ポリ乳酸(maleated polylactides)、マレイン化ヒドロキシ酪酸(maleated hydroxybutyrates)及びマレイン化テレフタレート(maleated terephthalates)をそれぞれポリエチレン、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルコネート及びポリエチレンテレフタラートと組み合わせたものが挙げられる。
【0019】
本発明で使用されるリグノセルロース繊維は針葉樹又は広葉樹を含む木材資源と同様に、非木材繊維、しばしば農作物繊維パルプと称されるものの両方から得ることが出来る。繊維は共通化学的、機械的又は化学-機械的パルプ化工方法を使用して、公知の方法で調製することができる。
【0020】
最初のほうで記述したように、本発明の複合体生成物は多くの構造的適用、特に自動車の、航空宇宙の、電子工学及び/又は家具産業において非常に適しており、費用、重量の軽減、燃料効率及び再利用を含むさまざまな厳しい要求に合わせることが出来る。
【0021】
本発明は公知の技術と比較して性能特性を最大化する能力に関して有利である。本発明の複合生成物は現存のガラス繊維充填複合体と競合することが出来、リグノセルロース繊維の使用は複合体の中で使用されるプラスチック及び合成繊維の量を減少させ、その結果ポリオレフィン及びガラス繊維の減少によりエネルギーの節約になり、このことは一般的に天然繊維の生産と比較してよりエネルギー集約的である。
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明の天然繊維複合体生成物は、特に少なくとも約55MPaの引っ張り強度、少なくとも80MPaの曲げ強度、少なくとも約2GPaの剛性、少なくとも約20J/mのノッチ付き衝撃強度、少なくとも約100J/mのノッチ無し衝撃強度の増強された特性を有する。
【0023】
図9は本発明の繊維/熱可塑性物質複合体の特性を図示する。複合体の試料については、時間の関数としてそれらの曲げ負荷の30%の積荷に耐えるようにすることによって、クリープ抵抗の特性を試験した。時間の関数としてのサンプルの偏向が測定され、クリープにより定義されるように図9に示される。クリープが高くなるほど、荷重支持能力が低くなる。非常に低いクリープ値は、複合体が良好な荷重支持特性を有することを示す。
【0024】
本発明は高性能で、成形可能であり、再生可能なリグノセルロース繊維充填熱可塑性物質複合体及び熱可塑性材料のマトリックスにグノセルロース繊維が分散したものを含む構造複合生成物の生産方法を提供する。好ましくは、繊維/熱可塑性物質複合体は60質量%以下のセルロース繊維を含み、前記リグノセルロース繊維は10質量%以下の、好ましくは2質量%以下の含水量を有する。複合体の開発に使用する熱可塑性物質の化学的構成に依存して、表面改質剤、例えば界面活性剤をセルロース及び無機繊維とマトリックスとの相互作用を改善する為及びセルロース繊維のマトリックスの至る場所への分散を助ける為に含んでも良い。
【0025】
リグノセルロース繊維の脱繊維は、好ましくは熱運動的高剪断攪拌機の中で、効果的な脱繊維を提供するように、すなわち水素結合している繊維を分離し及び微小繊維を生産するように操作可能な時間、混合することによって達成される。この時間は一般的に少なくとも10秒である。脱繊維により微小繊維を生成するのに必要な時間は攪拌機の最初の温度及び攪拌機の中で起こる剪断力に依存し、攪拌機の中で起こる剪断力は混合チャンバーの体積、繊維の体積、スクリュー速度又は攪拌機スクリューの先端速度、攪拌機スクリューの配置を含む多数の要素に依存する。例えば、微小繊維の生成に必要な時間は40mmスクリュー/ローター直径の2500-3500rpmに対応する20-30m/sの先端速度、最初の温度に依存して20秒から2分の間のどれでもよい。前述のパラメーターが必須でないことが理解されるべきであり、しかしながら、それらは生産時間が減少することが望ましい本発明の工業稼動可能性を例証する。多くの試験において、およそ30秒の回転が良好な平均操作可能脱繊維時間であることが明らかとなった。
【0026】
脱繊維は、繊維の分解温度未満の温度で行うべきであり、本発明の一態様においては摂氏100-140℃の範囲である。この摂氏100-140℃の範囲は必須でなく、本発明はこの範囲の外では実行できないということはないが、多くの適用においてこの範囲(本明細書で記載する様々なパラメーターに依存する)が良い結果(本明細書で特定するように)をもたらす温度範囲であることを理解すべきである。
【0027】
既に繊維の大部分が分離され、または「開いて」いることにより、上記より少ない回転しか必要でない、又は実際脱繊維が必要でない場合もあることを理解すべきである。これは典型的な場合ではないが、費用に依存して「開いて」いる繊維を利用しても良い。この場合、本発明のもう一つの側面に従い、脱繊維が以下で議論する繊維長のパラメーターを達成するのに関係する。
【0028】
本開示で使用される「微小繊維」という語は、図に示すように個々のリグノセルロース繊維の表面に成長し、高剪断混合の間、繊維の表面に接着したまま又は部分的若しくは全体的に切り離されているいずれの状態にある繊維を意味する。微小繊維は、典型的には脱繊維前の繊維の直径に関して比較的小さい直径を有する。微小繊維の生成は、繊維の表面積を増加させ、機械的もつれを起こし、さらには結果として繊維及び熱可塑性マトリックス及び繊維それ自体の間の界面付着を起こし、結果として相互浸透ネットワーク構造を構築し、それにより複合体の強度の全体的な増加が起こる。さらに、繊維の強度は繊維径が減少するとともに繊維欠陥(fibre defect)の数が減少するので、微小繊維の生成により強化される。
【0029】
本発明の特定の態様において、脱繊維は熱運動的高剪断攪拌機内でのプロセスにおいて発生する高剪断力により繊維の表面に微小繊維を生成する。非分離微小繊維は典型的には比較的小さい直径を有し、10を超える平均アスペクト比(繊維表面の細小繊維の接着点から遊離末端まで測定された長さ)を有する。この微小繊維生成は、繊維の表面で伝えられた剪断の時間と強度に依存し、熱運動的攪拌機の中の動的温度プロフィールにも依存する。脱繊維は一般的に微小繊維の直径を有意に減少させ、上記のアスペクト比を達成する。また、微小繊維の生成は次に、以下に記載される溶融混合ステップの間に微小繊維強化プラスチックインタフェースを形成する溶融プラスチックマトリックスに浸透する、繊維の表面におけるアンカーの形成をもたらす。重ねて、このことは機械的もつれを増加し、マトリックス内の相互浸透繊維ネットワーク構造を提供し、以下の特異的な効果により複合体の強度を大幅に増加させる;(i)微小繊維の増加した表面積により溶融プラスチックと繊維との相互作用の総合的な表面積を増加させる。(ii)繊維のものと比較して増強された微小繊維の強度は、複合体の機械的性能と他の知られている性能属性を向上させるのを助ける。(ii)に従って増強された強度は、それほど異種性でない繊維組成物、より少ない量の繊維損傷、残留リグニン及び/又はヘミセルロースなどのより少ない不純物に起因する、それらのより高い均一性から生じる。より大きい直径を有する異種性の繊維組成物は一緒に物理的又は化学的に接着する複数の微小繊維から生じる。微小繊維のこれらの束は、複数のインターフェースを有する。微小繊維のインターフェースの数が増加するにつれて、欠損又は構造的な障害(例えば、摩擦又は繊維の固有の性質によるもの)の可能性はより高くなる。欠損の発生が多くなるにつれ、繊維はより弱くなる。本発明の脱繊維は、より均一な微小繊維を発生させることにより繊維束内のインターフェースの数を減少し、それ故結果物の欠損又は障害の数を減少させる。
【0030】
また、微小繊維の生成により、質量単位あたりのより大きいネット表面積をもたらす。このより大きい表面積は、以下で議論するように繊維及びマトリックスの間の良好な分散により改良された界面付着をもたらし、優れた性能特性を有する複合材料を生産する。
【0031】
塊の形態で熱運動的攪拌機から得られた組成物はその後の加工ステップに顆粒化又は顆粒化せずに使用してもよい。言い換えると、熱運動的断攪拌機から得られる塊は、さらに顆粒化又はペレット化せずにその後の加工ステップで使用することができる。
【0032】
適切なリグノセルロース繊維は、機械的精製、化学的パルプ化又は両方の組み合わせで製造することができる。公知の化学的パルプ化プロセスは高温苛性ソーダ処理、アルカリ法パルプ化(クラフト蒸解プロセス)及び亜硫酸ナトリウム処理を含む。適切な繊維には市販の無漂白サーモメカニカルパルプ、漂白サーモメカニカルパルプ、無漂白ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)、クラフトパルプ及び漂白クラフトパルプ(BKP)が挙げられる。繊維は任意の新又は廃パルプ又は広葉樹、針葉樹若しくは農作物繊維パルプからの再生繊維から選択される。広葉樹パルプは広葉樹種、典型的にはハコヤナギ、カエデ、ユーカリ、カバ、ブナ、オーク、ポプラ又は適切な組み合わせから選択される。針葉樹パルプは針葉樹種、典型的にはエゾマツ、モミ、マツ又は適切な組み合わせから選択される。農作物繊維パルプには大麻、麻、ケナフ、トウモロコシ、アブラナ、小麦わら、および大豆、ジュートのような任意の種類の精製靭皮繊維繊維又はサイザル麻のような葉繊維が挙げられる。代わりに、繊維の選択には広葉樹及び針葉樹の適切な組み合わせ又は木材パルプと農作物繊維パルプの組み合わせが含まれる。
【0033】
パルプ繊維の初期の含水量は複合体の加工及び性能特性に影響を及ぼす。10%w/w未満の含水量が好ましい。より明確には、2%w/w 未満のパルプ含水量が好ましい。
【0034】
木の種類の性質に基づいて、本発明の複合体の性能は有意に変化する。例えば輝度の範囲が60ISO%(TAPPI(Technical Association of the Pulp and Paper Industry)標準により)を超えるカバのような広葉樹種は例えばカエデのものと比較して改善された機械的性能を示す。同様に、農作物繊維パルプ及び脱繊維が容易な他の繊維はより高い機械的性能を示す傾向にある。例えば、大麻及び麻から製造された化学的及び機械的パルプはトウモロコシ又は小麦茎パルプを主成分とする複合体のものと比較して改善された性能を提供する。これらのパルプ繊維の様々な特性及び前記特性に依存する適用に対するそれらの選択は当業者によく知られている。
【0035】
本発明の特定の繊維特性は以下のものを含む。繊維の平均長は一般的に約0.2〜約3.5mmであり、天然繊維の平均直径は約0.005mm〜約0.070mmである。このことは脱繊維前の繊維の平均直径に依存することを理解すべきである。繊維は一般的に20〜97ISO(TAPPI標準に従う)の範囲の輝度を有し、典型的には60〜85ISOである。繊維の他の重要な特性は繊維の緊密さ及び容積密度である。繊維は20g/cm3以上の密度又は少なくとも40CSF(CSFはカナダ標準形口水度:Canadian Standard Freenessを意味し、先行文献に記載されている)の口水度を有する、緩く保持された塊の形態で供給される。繊維は約0.6〜3.8cm3/g及び典型的には約0.7〜3.0cm3/gの相互的な容積密度を有する。平均繊維長は、「パルプ口水度」に関して、制御する必要がある。繊維の口水度は約50〜600CSF(TAPPI標準)であり、典型的には100〜450CSFである。さらに、繊維は典型的には100%リグニンフリーではなく、典型的には0.01%〜30%(w/w)のリグニンを含む。
【0036】
パルプの輝度は要求される性能に依存して変化するが、輝度の範囲は40ISO(TAPPI標準)より大きいことが好ましい。酸化及び/又は還元化学物質により漂白又は増白されたパルプは全体の機械的性能、繊維の脱繊維及び微小繊維の生成に影響を及ぼすことができる。一般的には、輝度が高くなるにつれて、熱運動的攪拌機内での微小繊維の生成が多くなる。60ISOを超える輝度が効果的な微小繊維の生成に適している。
【0037】
本発明で使用されるマトリックス材料は、当業者に知られているようなリグノセルロース繊維について定義される分解温度より低い融点を有するポリマー製熱可塑性材料を含む(前記リグノセルロースが処理されているか又は前記融点が固有のものかにかかわらない)。本発明の開示に記載された材料を使用した本発明の操作に基づき、本発明の一つの特定の実施態様において、ポリマー性熱可塑性材料は好ましくは摂氏230度未満の融点を有する。本発明の他の特定の態様において、ポリマー性熱可塑性材料は摂氏250度未満の融点を有する。よく知られているパラメーターに基づき、融点は熱可塑性材料によって異なり、分解温度も同様であることが理解されるべきである。
【0038】
適切なポリマー材料はポリオレフィン類、好ましくはポリプロピレン(例えば、0.90g/cm3の密度を有する汎用の射出成形又は押出グレード)、ポリエチレン、プロピレンと、エチレン、アルキル又はアリール無水物を含む他のモノマーとのコポリマー、アクリレート及びエチレンホモ又はコポリマー又はそれらの組み合わせを含む。さらなる材料にはポリスチレン、塩化ポリビニル、ナイロン、ポリ乳酸及びポリエチレンテレフタラートが含まれる。
【0039】
技術分野の当業者が容易に理解できるように、本発明で使用される界面活性剤は熱可塑性物質の化学的組成に依存する。適切な界面活性剤類には機能的ポリマー、好ましくはマレイン酸無水物グラフトポリオレフィン類、プロピレン、エチレン、アルキル又はアリール無水物とアルキル又はアリールアクリレートのターポリマー、マレイン化ポリプロピレン、アクリレートマレイン化ポリプロピレン又はマレイン化ポリエチレン、それらのアクリレートターポリマー、又はポリプロピレン及びポリエチレンマトリックス材料と共に使用するため任意の適切な組み合わせが含まれる。
【0040】
他の有用なカップリング剤にはポリスチレン及びポリ乳酸マトリックス材料と組み合わせたマレイン化ポリスチレン及びマレイン化ポリ乳酸が含まれる。好ましくは、界面活性剤(類)は複合体の全組成の2質量%を超える量で存在し、より好ましくは15質量%未満で存在し、より好ましくは10質量%以下で存在する。
【0041】
脱繊維の後、繊維は例えば同じ熱運動的高剪断攪拌機内でその場で機械的混合することによりマトリックスと融解混合又は「捏和」する。融解混合時間は混合又は捏和が設定温度の上限で止まるので、攪拌機の温度、攪拌機内で精製する剪断力に依存する。例えば、攪拌機の開始温度が低ければ、設定温度に達するのに必要な時間は、より高い開始温度と比較してより長くなる。
【0042】
高剪断攪拌機内の全滞留時間、すなわち脱繊維及び捏和にかかる全時間は、例えば1〜4分のように使用条件に依存して変化する。繊維の脱繊維及びそのポリマーマトリックス内での分散は滞留時間に依存するのでこのことは重要であることを理解すべきである。前述したように、本発明の改良した性能は、上記1以上の界面活性剤のような機能的添加剤の存在下、微小繊維の構造及び前記構造と熱可塑性マトリックスの間に形成された界面付着によって開発された物理的及び物理的/化学的もつれの複合効果である。
【0043】
凝塊形成の度合いは、付着していない微小繊維と同様に熱可塑性のマトリックス中における繊維の分散に関する良い基準である。本質的には、完全な分散は、合成物から形成された薄いフィルムにはいかなる可視性の凝塊もないことを意味する。典型的には前記複合体内の可視性の凝塊は約250マイクロメータ以上の範囲である。イメージアナライザーで測定される凝塊形成の度合いは、複合体フィルムの表面積単位あたりの、最終的な組成物内に存在する凝塊の数及びサイズである。本発明で教示される複合体内の良好な分散は薄いフィルムの平方インチあたり250マイクロメータ以上のサイズの1個未満の可視性の凝塊を含む複合材料をもたらす。
【0044】
脱繊維と分散ステージにおける重要な要素は滞留時間である。高剪断下の滞留時間が長いほど、微小繊維の生成はより多くなる。また、分散ステージの間の、より長い滞留時間は、より良好な分散を示す。本発明は、長時間温度が分解温度に達しないように維持しながら、脱繊維及び分散ステージの滞留時間を最大化することに関する。分解温度は攪拌機内の上限温度を提供するが、本発明においては摂氏約230度が、多くの繊維がこの温度で分解を開始するので適切な上限と定義されており、このことは一般的には分解温度はそれほど離れていないことを意味している。
【0045】
従って、摂氏230度は本発明の特定の態様において、選択された繊維に依存する脱繊維のための温度の上限と定義される。攪拌機内の温度の上限に関しては、センサー温度よりむしろ材料のバルク温度について言及することが理解されるべきである。設定制限温度は脱繊維温度ではなく、溶融物内の局所温度を測定するセンサー温度であり、異常に長い滞留時間(通常4分以上)が溶融混合の終わりまで費やされない場合、繊維のバルク温度が摂氏230度を超えないかもしれないので、材料を分解すること無しに実施の攪拌機センサーの上限温度をそれ以上高く(摂氏320度あたりまで)設定することは可能である。温度はいったん混合を開始すると比較的急激に上昇するので、典型的には、融解組成物は設定したセンサー温度にはほんの数秒留まるのみである。このプロセスはフラクシング(fluxing)と呼ばれ、技術分野では公知である。設定温度は攪拌機の先端速度及び攪拌機の最初の温度にも依存する。
【0046】
同様に、繊維、熱可塑性物質及び添加剤の熱運動的攪拌機への添加の順序も重要である。典型的には、繊維が添加され、1分間の滞留時間の間脱繊維することで、十分な微小繊維の産生及び繊維の分散を提供する。この時間の間、混合ゾーンの温度は上昇する。いったん十分な滞留時間を達成し、ポリマーと添加剤(適用可能であれば)を添加する。これらのパラメーターは当業者に公知である。
【0047】
それぞれの繊維の脱繊維及び分散が上述の高剪断混合プロセスによって形成されると、これらの繊維及び微小繊維の分散はさらに、複合体混合物を、繊維の破壊を減少するように設計された押出機による押出、射出、圧縮射出プロセスのような低剪断熱運動的機械的プロセスにおいてさらに分散させる追加のステップを加えることにより改良される。圧縮射出プロセスにおける高圧下の融解混合物の圧縮及びそれに続く分散は、最初の段階で形成した複合体が加熱融解され、続いて非常に高い圧力下、空洞内に射出されるプロセスとして従来技術に記載されている。
【0048】
1つの特定の実施例によると、不連続なリグノセルロースパルプ繊維は4分間をこえない高剪断熱運動的攪拌機の中で脱繊維し、熱可塑性材料に繊維を分散するために界面活性剤(もし適用可能であれば)の存在下、熱運動的高剪断攪拌機の中で融解混合した。
【0049】
他の実施態様は、本発明の繊維/熱可塑性物質複合体の顆粒若しくはペレット又は顆粒もペレットも形成せずに高速攪拌機から得た塊の形態で使用した射出又は圧縮又は圧縮射出成形複合体生成物の製造方法に関する。好ましくは、当該方法は含水量を5質量%未満まで減少させた、あらかじめ乾燥した顆粒又はペレットの射出成形を含む。射出圧縮成形のプロセスにおいて200トンの最小圧力が推奨される。本発明において、繊維のポリマーマトリックス内での分散は、さらに多くの適用において、本明細書に記載したパラメーターに基づき、融解温度を摂氏230度より高く上げずに射出圧力を1200トンまで増加させることにより改良することができる。
【0050】
本発明の1つの態様において、漂白パルプ充填熱可塑性物質を含む複合体は充填していない熱可塑性マトリックス材料のものと比較して大きい引っ張り及び曲げ強度を有し、充填していない熱可塑性マトリックス材料のものと比較して大きい引っ張り及び曲げ係数を有する。より好ましくは、複合体は熱可塑性マトリックス材料のものより大きい引っ張り並びに曲げ強度及び引っ張り並びに曲げ係数を有する。
【0051】
他の実施態様において、熱機械パルプ(TMP)充填熱可塑性物質を含む複合体は充填していない熱可塑性マトリックス材料のものと比較して大きい引っ張り及び曲げ強度を有し、充填していない熱可塑性マトリックス材料のものと比較して大きい引っ張り及び曲げ係数を有する。より好ましくは、複合体は熱可塑性マトリックス材料のものより大きい引っ張り並びに曲げ強度及び引っ張り並びに曲げ係数を有する。
【0052】
他の実施態様において、無漂白クラフト繊維充填熱可塑性物質を含む複合体は充填していない熱可塑性マトリックス材料のものと比較して大きい引っ張り及び曲げ強度を有し、充填していない熱可塑性マトリックス材料のものと比較して大きい引っ張り及び曲げ係数を有する。より好ましくは、複合体は熱可塑性マトリックス材料のものより大きい引っ張り並びに曲げ強度及び引っ張り並びに曲げ係数を有する。
【0053】
他の実施態様において、ケミサーモメカニカル木材繊維充填熱可塑性物質を含む複合体は充填していない熱可塑性マトリックス材料のものと比較して大きい引っ張り及び曲げ強度を有し、充填していない熱可塑性マトリックス材料のものと比較して大きい引っ張り及び曲げ係数を有する。より好ましくは、複合体は熱可塑性マトリックス材料のものより大きい引っ張り並びに曲げ強度及び引っ張り並びに曲げ係数を有する。
【0054】
他の実施態様においてリグノセルロース繊維の脱繊維及びその融解熱可塑性物質内における分散は高剪断混合プロセスの単一のステージで行われ、熱可塑性マトリックス内での分散の前に微小繊維の産生が起こる。
【0055】
さらに他の実施態様において、導入可能な天然繊維の量は複合体の全質量に対して60%までである。天然繊維の含有量の好ましい範囲は複合体の全質量に対して30パーセントから複合体の全質量に対して50パーセントである。
【0056】
実施例
以下の実施例は本発明の範囲内における形成可能な熱可塑性組成物、リグノセルロース繊維を含む複合体製品、およびそれらの製造方法のいくつかを例証する。これらは例証可能な実施例に過ぎず、発明に関し、当業者により発明の範囲と離れずに変更及び修正することが可能である。
【0057】
ポリプロピレンの性能特性
比較の目的で、ポリプロピレンの性能特性を表1に示す。

表1.ポリオレフィンの特性
【0058】
熱可塑性物質の組成
成形可能な熱可塑性組成物の組成の実施例を図2に示す。パルプ繊維は高剪断密閉型攪拌機(internal mixer)の中で少なくとも30秒脱繊維し、同じ攪拌機内で摂氏190℃を超えない温度で熱可塑性物質及び界面活性剤と融解混合する。密閉型攪拌機から得た融解組成物は造粒してリグノセルロース複合体顆粒を調製する。

表2.リグノセルロース複合体の組成
【0059】
リグノセルロース複合体の性能特性 (試料A及びB)を表3にまとめた。複合体試料は62及び72MPaの引っ張り強度を示し、95及び116MPaの曲げ強度を示す。前記複合体の曲げ合成はそれぞれ3.8及び5GPaである。これらの複合体生成物は高い強度と剛性を要求される適用に十分である。

表3.リグノセルロース複合体の特性
【0060】
以下の表4は本発明の2つの異なる添加物、すなわち添加物Aはアクリレートマレイン化ポリプロピレンを用いた界面修飾剤を含み、添加剤Bはマレイン化ポリプロピレンによる界面修飾剤を含む複合体の性能を図示する。

表4.2つの異なる添加剤系を含むTMP複合体の特性
【0061】
以下の表5はさらに添加剤、すなわちマレイン化ポリプロピレンによる界面修飾剤を含む添加剤Bを含む複合体の性能を図示する。

表5.複合体の特性
【0062】
プラスチック相に分散する前に必要な繊維の脱繊維の範囲はさらに、木材繊維の製造に使用する種、農作物繊維のわらの種類のような繊維の特性、従来技術で述べられているような化学的、機械的、化学機械的、熱機械的及び化学熱機械的のような繊維の製造方法、繊維の漂白及び増白の程度、繊維の生成及び増白中の温度および使用される化学物質などに依存する。例えば、同じ脱分解時間下、本発明に従って調製された複合体の機械的特性は異なる繊維を用いた複合体で異なり、このことは異なる種類の繊維に必要とされる脱繊維の程度は異なり、繊維の調製方法のような繊維の特性、例えば機械パルプ又は化学的に処理されたパルプ又は漂白パルプ等に依存する化学的パルプ化により調製された繊維は、機械的手段により調製された繊維と比較して一般的により少ないリグニンを含み、一般的に脱繊維が容易であり、高い機械的性能を有する。
【0063】
繊維の種類の特性に対する影響
表6は本発明に従い、一定の脱繊維時間を使用することで調製した合成物複合体の性能特性のさらなる実施例を示す。BCTMP繊維が80%ISOを超えるパルプ輝度(pulp brightness:白色度)を有することに留意されたい。
【0064】

表6.複合体の特性
【0065】
本明細書で議論するように、関心のあるパルプ繊維には、農作物繊維、針葉樹又は広葉樹由来のメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、クラフトパルプ、クラフトパルプ、亜硝酸パルプ、漂白パルプ繊維全ての種類の市販のパルプ繊維が含まれる。
【0066】
脱繊維時間の繊維特性への影響。
以下の実施例は、脱繊維時間の異なる種類のパルプ繊維への影響を示し、例えば、サーモメカニカルパルプ(TMP)及びケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)は高収量パルプとしても従来技術において知られている。パルプ繊維は比較的脱遷移しやすく。すなわち例えばケミサーモメカニカルパルプは熱運動的混合プロセスにおいて所望の特性を達成する為により少ない範囲の脱繊維が必要であり、脱繊維時間の増加は実際、複合体の最終製品のより低い機械的特性を導例えば、熱機械パルプのような脱繊維が容易でないパルプ繊維は、熱運動的混合工程においてより多くの脱繊維を必要とし、脱繊維時間の増加は、複合体最終製品の更なる機械的特性の増強を導く。表7は以下、本発明に従って異なる脱繊維時間(カッコ内に記載)で高速熱運動的混合プロセスで調製した異なるパルプ繊維複合体(TMP及びBCTMP)の特性を示す。適切な種類のパルプ繊維を選択することが熱運動的攪拌機内で脱繊維時間を最小化させるために必要であり、工業化の立場から特に興味深い。
【0067】

表7.脱繊維時間の複合体特性への影響
【0068】
上記実施例において20秒を超える脱繊維時間の増加と共に観察されたBCTMPの機械的特性の減少は、おそらく低い強度をもたらす繊維長の減少の結果である。一方、TMPについては20行を越える滞留時間の増加は微小繊維の生成を増加させ、それ故プラスチック中の分散を促進し、結果としてよりよい機械的特性を得た。従って、複合体の最終製品の性能は最終的な繊維長及び脱繊維の程度の間の妥協であることを理解すべきである。
【0069】
異なる攪拌機を使用した複合体の特性
脱繊維及び繊維の熱可塑性マトリックス中における分散は又攪拌機内で産生した剪断力にも依存する。剪断力の発生は例えば運動的攪拌機又は二軸押出機のような攪拌機の種類、攪拌機の先端速度又はスクリュー速度、混合チャンバーの容積、攪拌機内の材料の量等に依存しする。例えば、実験室規模の、先端半径132mmのスクリュー先端を有し22m/sの先端速度を有する容積1Lの熱運動的密閉型攪拌機は、繊維の脱繊維及び熱可塑性マトリックス中における分散に十分な剪断力を精製する為に比較的高いローター又はスクリューのrpm を必要とする。同じ先端速度を有する容積25Lの攪拌機は、実験室規模の攪拌機と等しい、繊維の脱繊維及び熱可塑性マトリックス中における分散のための剪断力を産生するにはより少ないrpmを必要とする。表8は同じ先端速度であるが異なるスクリューrpmで実験室規模の攪拌機及び試験的規模の攪拌機を使用して調製した複合体の特性を示す。
【0070】

表8.異なる攪拌機を用いて調製した複合体の特性
【0071】
運動的攪拌機において短い脱繊維時間で調製された複合体の特性
以下の実施例は本発明の工業的関心を示す。繊維の脱繊維は熱運動的攪拌機において5秒未満で達成され、その熱可塑性物質内での分散は60秒を越えない時間で達成される。攪拌機内における脱繊維及び分散時間の短縮は、工業的生産者にとって大きな関心のエネルギー消費及び処理コストを有意に減少させる。繊維および加工条件の適切な選択により、より短い時間での脱繊維及び分散が可能となり、より良好な機械的性能をもたらす。一実施例として、カバ種由来の漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)の複合体の性能特性を表9に示すが、これにより繊維の脱繊維が5秒以内で達成された。
【0072】

表9.短い脱繊維時間で調製した複合体の特性。
【0073】
複合体の特性への繊維負荷の影響
本発明の方法は、繊維成分を変えることにより特定の適用への決定的な特性要件に依存した異なる特性を有する複合体の開発に使用することができる。本発明の方法により異なる繊維を用いて、同じ加工添加物及び加工条件で製造した複合体の特性を要約している。
【0074】

表10.繊維負荷の複合体の特性に対する影響
【0075】
混合層の内部で発生する剪断速度の効果は、最終的に最終製品の性能に影響を及ぼす脱繊維時間及び繊維の熱可塑性マトリックス内での分散に影響を及ぼす。表11は本発明によりさまざまな16.7m/s〜32m/sのスクリュー/ローターの先端速度(先端速度は括弧内に記載されている。先端速度が早くなるほど、より大きい剪断力を意味する。) で調製された複合体の特性を示す。スクリュー又はローターの速度は脱繊維及び分散において精製する剪断力に比例する。与えられた範囲/剪断におけるチップ速度の増加は衝撃強度に影響するが、引っ張り及び曲げ特性には有意な効果はない。先端速度の増加により脱繊維及び分散時間を短縮することができるが、これは本発明を工業的に使用するものにとって非常に興味があるところである。剪断力又は先端速度を16.7から22.8に増加させることにより滞留時間は50%をこえて減少するように見える。
【0076】

表11.末端速度の複合体の特性への影響
【0077】
運動的攪拌機に供給される前の繊維の容積密度は混合層への繊維の円滑で一貫した供給に影響を及ぼし、一般的に容積密度が高いほど供給しやすくなる。しかしながら、より高い容積密度はまた、脱繊維の範囲を減少させ、プラスチックマトリックスの中における繊維の不良な分散をもたらし、及び、そのことが不十分な複合体性能をもたらす場合がある。
【0078】
攪拌機に繊維を入れる前に慎重に繊維バールのバール密度とカットサイズ及び形状を制御することによって供給する繊維の容積密度を制御することができる(バールは輸送及びさらなる使用が容易なように使用される大量の繊維の圧縮した形態である。)。例えば、商業的な(市販の)BCTMPカバパルプは典型的に0.7g/ccのバール密度を有しており攪拌機に供給しやすいが、工業規模で実行可能な生産時間内に所望の脱繊維及び分散を達成することが難しい。一方、他方では、カバ種由来の0.5g/ccのバルブ密度BCTMPのそれほど圧縮されていないバルブは比較的短い工業規模で実行可能な時間内に、改善された脱繊維及び分散と同様、動的な攪拌機への良好な供給を提供する。
【0079】
好ましい実施態様の詳細な説明は本明細書の以下に例としてのみ及び以下の図に関して提供される。
【0080】
図において、本発明の好ましい実施態様は実施例として図示される。記載及び図面が図示の目的及び理解への援助のためのみであって、発明の制限の定義として意図するものでないことが明白に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明における脱繊維の過程の間の微小繊維の成長、倍率70倍を図示する。
【図2】本発明における脱繊維の過程における微小繊維の成長、倍率80倍を図示する。
【図3】本発明における脱繊維の過程における初期段階の繊維の開裂を倍率500倍で図示する。
【図4】本発明の脱繊維の過程における微小繊維の成長、またその別の視点から倍率500倍で図示する。分離した微小繊維は顕微鏡写真の下部に10ミクロン未満の繊維径で視認できる。
【図5】本発明の脱繊維の過程における繊維径の減少を倍率1000倍で図示する。
【図6】本発明の脱繊維の過程における繊維表面上の微小繊維の成長、またその別の視点から倍率1000倍で図示する。
【図7】本発明の脱繊維前の平均繊維径を倍率5000倍で図示する。
【図8】本発明の脱繊維の過程における直径10μ以下の微小繊維の成長およびその別の視点から、倍率5000倍で図示する。
【図9】周囲状況における曲げ負荷下の40質量%のTMP充填ポリプロピレン複合体のクリープ挙動を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース繊維/熱可塑性物質複合体の製造方法であって、以下の工程
(a)リグノセルロース繊維の分解温度より低い温度での攪拌機内におけるリグノセルロース繊維の脱繊維工程であって、
(i)リグノセルロース繊維間に存在する水素結合の分離及び
(ii)リグノセルロース繊維上への微小繊維の生成
を達成するために操作可能な時間行う前記工程、
(b)融解熱可塑性物質へのリグノセルロース繊維をくまなく分散させる工程、
それにより熱可塑性物質中に分散されたリグノセルロース繊維及び微小繊維が熱可塑性物質との界面付着を実現する工程、
を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項2】
攪拌機が熱運動的高剪断攪拌機である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
脱繊維が摂氏100〜140度の温度で達成される請求項1記載の方法。
【請求項4】
熱可塑性物質の融点より高い温度で機械的に攪拌することにより分散を達成する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
微小繊維がリグノセルロース繊維の表面に付着又は分離している請求項1記載の方法。
【請求項6】
分離した微小繊維がさらに熱可塑性物質との界面付着に貢献している、請求項5記載の方法。
【請求項7】
リグノセルロース繊維がパルプから選択され、複合体の75質量%を超えない、請求項1記載の方法。
【請求項8】
パルプが広葉樹パルプ、針葉樹パルプ又は農作物繊維パルプから選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
木材パルプが機械的精製又は化学的パルプ化又はそれらの組み合わせによって製造される請求項7記載の方法。
【請求項10】
リグノセルロース繊維が10質量%未満の水分含有量を有する、請求項7記載の方法。
【請求項11】
リグノセルロース繊維の平均長が約0.2mm〜3.5mmである請求項1記載の方法。
【請求項12】
リグノセルロース繊維の平均径が約0.005mm〜0.070mmである請求項1記載の方法。
【請求項13】
リグノセルロース繊維が約0.7〜3.0cm3/gの容積密度を有する請求項1記載の方法
【請求項14】
さらに、熱可塑性物質内におけるリグノセルロース繊維の分散を改善するために少なくとも一つの表面改質剤をリグノセルロース繊維に適用する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項15】
表面改質剤が界面活性剤であり、及び複合体の約2〜15質量%を構成する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
表面改質剤がマレイン化ポリエチレン、マレイン化ポリプロポレン、アクリレート及びマレエートを含むポリプロピレンのコポリマー及びターポリマー、マレイン酸無水物グラフトポリスチレン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルコネート又はポリフェニレンテレフタラート又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される機能的ポリマーである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
分散が少なくとも10秒間起こる請求項1記載の方法。
【請求項18】
熱可塑性物質が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、塩化ポリビニル、ポリ乳酸、ポリフェニレンテレフタレート又はポリヒドロキシアルコネート又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
さらに、リグノセルロース繊維/熱可塑性物質複合体を造粒することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
熱可塑性物質が摂氏250度未満の融点を有する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
成形繊維/熱可塑性物質複合体製品の製造方法であって、以下の工程、
(a)リグノセルロース繊維の塊を、攪拌機内で脱繊維することにより、水素結合の分離を達成し、微小繊維を生成する工程、
(b)リグノセルロース繊維を融解混合により熱可塑性樹脂中に分散させ、成形可能な繊維/熱可塑性物質複合体を生産する工程及び、
(c)成形可能な繊維/熱可塑性物質複合体を射出、圧縮、押出又は圧縮-射出成形し、成形繊維/熱可塑性物質複合体製品を成形する工程
を特徴とする前記方法。
【請求項22】
繊維/熱可塑性物質複合体であって、
(a)少なくとも0.2 mmの長さを有し、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ又は農作物繊維パルプを含む木材パルプから選択され、機械的精製、化学的パルプ化又はそれらの組み合わせにより製造されるリグノセルロース繊維及び
(b)リグノセルロース繊維を攪拌機内で脱繊維し、水素結合を切り離し及び微小繊維を作成することを特徴とする熱可塑性物質
を含み、
リグノセルロース繊維が熱可塑性物質内に分散し、熱可塑性物質と界面付着を達成している前記複合体。
【請求項23】
請求項22記載の繊維/熱可塑性物質複合体を含む製品。
【請求項24】
繊維/熱可塑性物質複合体が自動車の、航空宇宙の、電子工学の、家具及び他の構造的適用に使用される請求項23記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−516032(P2009−516032A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540411(P2008−540411)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001482
【国際公開番号】WO2007/056839
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(508149881)
【出願人】(508149892)
【出願人】(508149906)
【Fターム(参考)】