説明

高性能構造物用のエンジニアードウッド建築システム

建物は、建物のエンジニアードウッド耐荷重要素、例えば柱、梁又は耐荷重パネルと建物の別の領域力要素又は基礎との間の連結部を有する。少なくとも1つの緊張材が、少なくとも1つの耐荷重要素と基礎を互いに結束する。耐荷重要素と基礎との間に交換可能に連結された1又は2以上のエネルギー消散具が、加重事象により連結部の相対運動が生じた場合にエネルギーを吸収する。特別設計木製要素は、例えば、積層ベニヤ木材要素、平行ストランド木材要素又は接着積層材木要素であるのが良い。代表的には、建物の耐荷重要素は全て、特別設計木製要素である。建物は、平屋であっても良く高層であっても良い。このような建築システムにより、極めて大きな加重後に交換可能なエネルギー消散具を備えた軽量且つ安価な建物が得られる。このような建物を前もって製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて大きな加重事象、例えば地震又は建物に加わる強風による加重又は例外的な重力による加重に対して保護を提供する予備応力が加えられているエンジニアードウッド建物建築システムに関する。
【背景技術】
【0002】
過去ほぼ10年間にわたり、地震被災地域のために高層のコンクリート製及び鋼鉄製の建物用の建築システムの設計及び開発に対する取り組みが増大しており、このような建築システムは、建物の壊滅的な被害を阻止すると共に生命を守るだけでなく、建物の修理及び(又は)再建の経済的費用を減少させると共に地震後の業務の中断(稼働停止時間)を最小限に抑えるために建物が構造的損傷を生じないで地震に耐えることができるようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
或る場合には、サイクロンを含む極めて強い風により、建物が動いたり構造的な損傷を生じたりする場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、地震及び(又は)風による加重事象に続く建物に対する構造的損傷を回避し又は最小限にする目的で地震及び(又は)風による加重事象に対する少なくとも或る程度の保護を提供する建物用の改良型又は少なくとも別方式としての建築システムを提供する。
【0005】
概略的には、本発明の要旨は、一態様では、建物であって、
建物のエンジニアードウッド耐荷重要素と建物の別の耐荷重要素又は基礎との間の連結部と、
少なくとも1つの耐荷重要素と基礎を結束する少なくとも1つの緊張材と、
少なくとも1つの耐荷重要素と基礎との間に交換可能に連結された1又は2以上のエネルギー消散具とを有し、エネルギー消散具は、連結部の相対運動を生じさせる加重事象に起因して生じたエネルギーを吸収することを特徴とする建物にある。
【0006】
一形態では、建物は、2階建て又は3階建て以上である。別の形態では、建物は、平屋である。
【0007】
好ましい形態では、エネルギー消散具は、以下に説明するように、複数又は1つの耐荷重要素と基礎との間に連結される。
【0008】
代表的には、1又は複数の耐荷重要素は、建物の1又は2以上の構造要素、例えば梁、柱又は壁である。変形例として、耐荷重要素は、これ又荷重を支持する床パネルであっても良い。床パネルは、梁及び(又は)柱及び(又は)壁によって支持されていても良く、そうでなくても良い。横方向荷重抵抗システムは、フレーム(互いに固定された梁及び柱のフレーム、柱は、基礎に固定されている)、壁(基礎に固定された壁)又はフレームと壁の組み合わせから成る。床は、壁又はフレームを互いに結束し又は結び付け、このようなフロアは、梁及び(又は)柱及び(又は)壁上に支持される。
【0009】
連結部は、梁と柱の連結部であるのが良く、例えば、1本の梁と1本の柱との間に位置する梁と柱の連結部、柱と柱の2つの互いに反対側の(又はそれ以上の)側部に設けられた梁との間に位置する梁と柱の連結部、又は柱に連結されていて、柱から互いに異なる方向に延びる2本の梁との間に位置する隅の梁と柱の連結部である。「梁」という用語は、本明細書においては、水平であるにせよ水平に対して角度をなしているにせよ、いずれにせよ、屋根を支持する耐荷重要素、例えばルーフトラスと通称されている屋根支持構造要素を含むものであると理解されるべきである。変形例として、連結部は、柱と基礎の連結部、若しくは隣り合う壁要素、例えば耐荷重要素である壁パネル相互間の連結部、又は例えば壁相互間の梁を有する別個の壁組立体における壁と梁の連結部、或いは床パネルと梁、柱又は壁との連結部であって良い。
【0010】
代表的には、特別設計の木製梁、柱又はパネルは、積層ベニヤ木材(LVL)のものである。積層ベニヤ木材要素という用語は、厚さが最高約10ミリメートルまでであり、少なくとも大部分の木目が全体として梁、柱又はパネルの長手方向に延びる木製ベニヤ又は層を互いに結合することによって作られた梁、柱又はパネルを意味している。変形例として、特別設計木製要素は、平行ストランド木材要素であっても良い。平行ストランド木材要素という用語は、少なくとも大部分が平行に並んでいて、木材要素を形成するよう互いに結合された長尺のベニヤストランドから成る要素を意味している。
【0011】
変形例として、木材要素は、接着積層材木要素であっても良く、この接着積層材木要素は、厚さが代表的には約10〜約50mmであり、木製要素を形成するよう互いに積層された長尺物を作るよう互いに突き付け接ぎされた個々の木材片から成る要素を意味している。
【0012】
1又は複数の連結部は、1又は2以上の緊張材によって互いに結合されている。好ましくは、緊張材は、要素に要素の長さに沿って結合されておらず(固定されておらず)、間隔を置いて要素に固定されることにより部分的に結合されるのが良い。緊張材は、真っ直ぐであっても良く、要素に沿って方向を変えても良い。代表的には、緊張材は、要素及び接合部に予備応力を加える。
【0013】
1又は2以上の消散具が、連結部のところの要素相互間に交換可能に連結されており、引張り状態、圧縮状態又は曲げ状態になる犠牲消散具又はその機能部品を例えば地震又は極めて強い風による加重事象後に交換することができる。好ましくは、エネルギー消散具は、以下に説明するように要素の外部に固定されるが、変形例として、エネルギー消散具をこのような消散具又はその主要な機能部品を取り外して交換することができるような仕方で互いに連結されている木製要素相互間の内側に設けられたボア又は空所内に設けられても良い。
【0014】
十分に大きな地震又は極めて強い風が生じている間、制御された揺動が、連結部のところで生じる。例えば、本発明に従って土台基礎に連結された柱又は垂直の耐荷重壁パネルが、揺動する場合があり、又は、揺動は、梁と柱の連結部のところで生じる場合がある。揺動中、エネルギーは、交換可能なエネルギー消散具の変形によって消散され、他方、緊張材は、連結部を互いに保持して連結状態の要素を動きの終了時に互いに対するこれらの元の位置に自動調心し又は戻す。次に、特別設計木製耐荷重要素の交換を必要としないで、エネルギー消散具を交換することができる。
【0015】
一形態では、1又は複数の消散具は各々、2つの互いに連結された耐荷重要素の隣接の面の各々にそれぞれ固定された2枚のプレート、少なくとも1枚のプレートに固定された1つのブラケット又は各プレートにそれぞれ固定され若しくは各プレートに固定されると共にこれを介して耐荷重要素に固定された複数のブラケットを有し、ブラケットは、プレートの面の領域よりも小さなプレートの面上にフットプリントを有し、1又は複数の消散具は各々、地震による運動中、変形してエネルギーを吸収する1又は複数のブラケットを介して耐荷重要素相互間に連結された機能部品を更に有する。好ましい形態では、機能部品は、各端部がブラケットに取り外し可能に固定された長手方向に延びる要素を有する。変形例として、消散具は、曲げ要素又は多数個の締結具、例えば釘であっても良い。
【0016】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる「を有する」という用語は、「少なくとも一部が〜から成る」を意味し、即ち、その用語を含む独立形式の請求項を解釈する際、各請求項のその用語で始まる特徴は、存在することが必要であるが、他の特徴も又、存在する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】耐荷重パネルの壁を示す図である。
【図2】耐荷重パネルの壁を示す図である。
【図3a】隣り合う壁パネル相互間に用いられるエネルギー消散具の一形態を示す図である。
【図3b】隣り合う壁パネル相互間に用いられるエネルギー消散具の一形態を示す図である。
【図3c】隣り合う壁パネル相互間に用いられるエネルギー消散具の一形態を示す図である。
【図3d】隣り合う壁パネル相互間に用いられるエネルギー消散具の一形態を示す図である。
【図4a】隣り合う壁パネル相互間に用いられる消散具の変形形態を示す図である。
【図4b】隣り合う壁パネル相互間に用いられる消散具の変形形態を示す図である。
【図4c】隣り合う壁パネル相互間に用いられる消散具の変形形態を示す図である。
【図4d】隣り合う壁パネル相互間に用いられる消散具の変形形態を示す図である。
【図4e】隣り合う壁パネル相互間に用いられる消散具の変形形態を示す図である。
【図5】隣り合う壁パネル相互間の消散具の別の形態を示す図である。
【図6】高層建物用のフレームを示す図である。
【図7】高層建物用のフレームを示す図である。
【図8】耐荷重壁パネル相互間に結合された梁を有する建物壁の一部を示す図である。
【図9a】消散具の一形態を詳細に示す図である。
【図9b】消散具の一形態を詳細に示す図である。
【図10】梁と柱又は柱又は壁パネルと基礎の連結部相互間の消散具の別の形態を示す図である。
【図11】梁と柱又は柱又は壁パネルと基礎の連結部相互間の消散具の別の形態を示す図である。
【図12】梁と柱又は柱又は壁パネルと基礎の連結部相互間の消散具の別の形態を示す図である。
【図13】梁と柱又は柱又は壁パネルと基礎の連結部相互間の消散具の別の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の種々の実施形態を例示的に且つ本発明を限定する意図無く示す添付の図面を参照して本発明を更に説明する。
【0019】
図1は、特別設計された木材、例えばLVLで形成された2枚の耐荷重壁パネルPを示している。図2は、4枚のこのような壁パネルを示している。壁パネルPは、基礎F上に立っている。壁パネルは、緊張材Tにより基礎に結束されている。代表的には、緊張材Tは、ロッド若しくはバー若しくはワイヤ若しくはこれらの群、鋼若しくは合金若しくは炭素繊維のケーブル又は他の高張力材料から成る。緊張材Tは、壁パネルPを貫通して形成された長手方向に延びる空所を通過する。緊張材Tは、基礎F内に又はこれに、繋留装置5に繋留されることにより壁パネルPの頂部のところで固定されている。例えば、各緊張材のねじ山付き端部は、プレートを貫通し、他方の側に設けられたボルトで固定されるのが良い。また、これにより、緊張材により加えられる予備応力を調節することができ、しかも緊張材の予備応力を建物の寿命中、増大させたり間隔を置いて調節したりすることができる。他の形態をした繋留装置を利用することができ、このような繋留装置は又、好ましくは、緊張材により加えられる予備応力の調節を行うことができる。他の点では、緊張材Tは、パネルPにこれらの長さに沿って結合されない(固定されない)。変形実施形態では、緊張材は、パネルPに間隔を置いて又は連続して緊張材Tの長さに沿って固定されることにより部分的に結合されても良い。
【0020】
エネルギー消散装置又は消散具Dが、隣り合う壁パネルPの長手方向縁部相互間に設けられている。エネルギー消散装置Dは、壁パネルの少なくとも一方の側から接近可能であり、従って、パネルの取り外し又は交換を必要としないで、エネルギー消散装置を地震又は他の加重事象後に交換することができるようになっている。エネルギー消散具E(図1には示されているが、図2には示されていない)も又、壁パネルPの底縁部と基礎Fとの間に設けられるのが良い。消散具Eも又、例えば図13を参照して以下において説明するように、加重事象後にこれらを交換できるよう接近可能である。通常、壁パネルPは、基礎F上に心出しされた状態で立っている。地震又は他の加重事象中、パネルは、図1及び図2に示されているように自由に揺動することができ、図1及び図2は、壁パネルPが矢印Zの方向における力の影響を受けて片側に揺動している状態を示している。
【0021】
このような揺動運動中、エネルギー消散具D及びもし設けられていれば消散具Eは、典型的には消散具又はその機能部品の変形によってエネルギーを吸収する。消散具は、耐荷重要素相互間の運動を抑制する。消散具は、典型的には例えば曲がることによる消散具又はその機能コンポーネントの撓みによりエネルギーを吸収する任意の形態のものであって良い。変形例として、消散具は、消散具の2つの部品相互間の摩擦摺動又は粘性減衰作用によりエネルギーを吸収しても良い。緊張材Tは、耐荷重パネルPを定位置で結束するが、十分な大きさの加重事象中、揺動運動が生じるようにすることができる。加重事象後、パネルPの取り外し又は交換を必要としないで必要ならば消散具を交換することができる。代表的には、消散具は、パネルの外部から接近可能であり(例示については後で説明する)、消散具を外して取り外し、そして交換用消散具を定位置に容易に固定することができる。変形例として、消散具は、消散具又はその主要な機能部品に接近して取り外し、そして加重事象後に交換することができるような仕方で連結状態の耐荷重要素相互間の空所内に、例えば、隣り合うパネルPの縁部相互間の空所内に設けられても良い。緊張材Tが例えば揺動運動中に伸びた場合、緊張材Tを必要ならば再び引っ張るのが良く、或いは、緊張材が破損した場合緊張材を交換するのが良い。
【0022】
図3a〜図3dは、図1及び図2に詳細に示されているような隣り合う壁パネル相互間に用いられる一形態としてのエネルギー消散具Dを示している。各消散具は、各壁パネルに繋留された曲げ鋼プレートのU字形コンポーネント20から成っている。U字形部品20は、消散具の主要な機能コンポーネントである。図示の実施形態では、この機能コンポーネント20の各端部は、パネル縁部相互間で1枚又は2枚以上のL字形取り付けプレート21に繋留されている。各取り付けプレート21の他方のアームは、パネルPの外面の上に位置し、この他方のアームは、消散具をパネルPの各側にボルト止めするための穴を有している。図3aは、間隔を置いた場所で2枚の隣り合うパネルP相互間に設けられたこのような2つの消散具を示している。図3bは、パネルP相互間で各場所に設けられた2つの消散具を示している。
【0023】
図3c及び図3dは、図3a及び図3bの消散具がどのように機能するかを概略的に示している。図3cは、荷重が加わっていない又は通常の条件下にある消散具を概略的に示している。図3dは、パネル相互間の一方向への揺動中の消散具を示している。パネルが揺動し、一方のパネルが他方のパネルに対して動くと、消散具の金属機能部品20は、撓み又は変形し、そうする際に、エネルギーを吸収して揺動運動を抑制する。パネルが後戻りして逆方向に揺動すると、消散具は、逆方向に撓むことになる。パネルがこれらの通常の位置に戻って基礎上に心出しされると、消散具は、図3に示すその通常の位置に変形して戻る。加重事象後、消散具を点検し、必要ならば交換するのが良い。この形態の消散具は、パネルPが地震による運動中に揺動しているときに、その長さに沿って徐々に曲がることによりエネルギーを消散させる。
【0024】
図1及び図2の消散具Eは、パネルPの底縁部と基礎Fとの間に固定されており、このような消散具は、例えば、引張りの際に、好ましくは引張りと圧縮の際に、パネルの揺動運動中撓み、次にこれらの元の状態に戻る金属コンポーネントであるのが良い。この場合も又、消散具Eは、これらを点検し、必要ならば加重事象後に交換することができるよう接近可能である。
【0025】
変形例として、消散具D,Eは、例えば、粘性ダンパ又は鉛押出ダンパであって良い。
【0026】
図4a〜図4eは、隣り合うパネル相互間に用いられる消散具の5つの別の形態を示している。これらの図は、2枚の隣り合うパネルPの左側部分及び右側部分を示しており、いずれの場合においても、パネルの側部を突き合わせた状態で見ている。いずれの場合においても、消散具は、一方の側にプレート状部分40aを有すると共に他方の側に同様な形状の右側のプレート状部分40bを有し、これらの部分は、例えば、パネル中にねじ止め又はボルト止めされると共に(或いは)図示のようにパネル表面に設けられた斜めのスロット内に接着剤により取り付けられた鉄筋アンカ41によって左及び右パネルPに固定されている。図4aの消散具は、消散具の部分40a,40bにこれらの間に溶接された切欠き付き剪断プレート42を有している。図4bの消散具は、同様にプレート部分40a,40b相互間に溶接されたスロット付き撓みプレート43を有している。図4cの消散具は、図示のように角度をなしてプレート部分40a,40bを横切って溶接された傾斜バー要素44を有し、この傾斜バー44は、その端部がプレート部分40a,40bに溶接されている。図4dの消散具では、ピン止め引張りストラット45が、消散具部分40a,40b相互間に延びていて、その一端が部分40aにボルト止めされ、その他端が部分40bにボルト止めされている。図4eの消散具では、プレート46が、一方の消散具部分40aに溶接されると共に右側の消散具部分40bにボルト止めされている。ボルトを挿通させるプレート46の穴は、細長いスロットであり、従って、極端に大きな加重を受けると、プレート46は、消散具部分40bに対して摺動することができ、その結果消散具は、垂直摩擦継手又は接合を構成するようになっている。
【0027】
図5は、隣り合う壁パネルP相互間に用いられる別の形態の消散具を示している。図5では、パネルP、基礎F及び緊張材Tは、上記のように示されている。シート状の材料25が、金属締結具がパネルP中に各側で入り込むことにより隣り合うパネルPの隣り合う長手方向縁部を横切って固定されている。例えば、パネル25は、合板シートであるのが良く、金属締結具は、釘であるのが良く、合板シートは、多くの釘によって、例えば、各側で少なくとも20本、好ましくは50本又はそれ以上の釘によりエンジニアードウッドパネルPに各側で釘止めされている。揺動運動中、釘は、曲げられてエネルギーを吸収する。加重事象後、シート25をパネルPから引き取り、そして再び定位置に釘止めして戻すことにより容易に交換することができる。釘に代わる手段として、金属締結具は、加重事象中に撓むねじ又はボルトであっても良く、パネル25は、例えば金属プレートであって良い。図5は、パネルPの高さの大部分にわたって延びる1本の材料を示しているが、変形実施形態では、多数の小さなパネル又はプレート25をパネルの高さ全体にわたって間隔を置いたところでパネルP相互間に釘止めし又は固定しても良い。
【0028】
図6は、本発明に従って互いに連結された特別設計の木材の梁B及び柱Cを有する建物用の高層フレームを示している。緊張材Tが、梁Bを水平に貫通して延びる空所を通り、柱Cの反対側の面に固定されて梁を柱に結束している。2つのエネルギー消散具Dが、各垂直側で各梁Bと各柱Cとの間の連結部を横切って固定されている。場合によっては、建物の各階のところでは、柱の2つの互いに反対の(又は3つ以上の)側部で柱と梁との間に位置する梁と柱の連結部が設けられる。隅の柱の場合、建物の各階のところでは、柱に連結されると共にこの柱から別々の方向に延びる2本の梁相互間の連結部が設けられる。消散具は、このような各結合部のところで梁と柱との間に連結されている。柱が、例えば図13を参照して説明するように消散具を介して基礎に連結されるのが良く、或いは変形例として、柱は、基礎に設けられた受け口又は凹部内に着座しても良い。
【0029】
図6及び図7は、高層建物を示しているが、建物は、別の形態では、1階建ての建物の柱と屋根を支持する梁(ルーフトラスと通称されている)との間の柱−梁結合部を有する1階建ての建物であっても良い。変形形態では、この場合も又、接続部は、図1及び図2を参照して説明したような耐荷重パネルを有する1階の壁と壁パネルの上縁部の上に着座する水平又は斜めの屋根梁との間に位置しても良い。
【0030】
図7は、図6のフレームに類似した建物用の別の3階建て用フレームであって、特別設計された木材の梁B及び柱Cを有する3階建て用フレームを示しており、この場合、緊張材Tは又、柱Cの各々を貫通して設けられた垂直空所、例えばボアを貫通し、これらの一端が基礎Fに固定されると共にこれらの他端が柱Cの上端部のところに繋留されている。
【0031】
図8は、分離された耐荷重壁パネルP相互間に結合されている梁Bを示している。図1及び図2を参照して説明したように、緊張材Tは、パネルPの空所を垂直方向に貫通し、パネルを基礎Fに結束している。1又は2以上の緊張材Tは又、梁B及び全てのパネルPを水平に貫通し、梁及びパネルを互いに結束している。エネルギー消散具Dが、梁と梁の各端部のところに位置するパネルとの間の連結部を横切って設けられている。エネルギー消散具Dも又、図1及び図2を参照して上述したように隣り合うパネル相互間に設けられている。エネルギー消散具(図示せず)も又、図1及び図2を参照して説明したようにパネルの下縁部と基礎Fとの間に設けられるのが良い。
【0032】
図9a及び図9bは、梁Bと柱Cとの間の接合部又は接合部のところに用いられる消散具の一形態を詳細に示している。消散具は、加重事象中、撓んでエネルギーを吸収する鋼又は他の材料のロッド又はバー10を有し、このロッド又はバーは、この実施形態では、中央領域(図9b参照)がくびれた(直径が減少した)状態で示されており、ロッド10は、この中央領域のところで撓むようになっている。図示の特定の実施形態では、ロッドのこの中央領域は、管11で覆われており、この管は、例えばエポキシによりロッド10に結合されてロッド10のくびれ部分を座屈しないよう拘束している。変形実施形態では、ロッド10は、一定直径又は漸変直径のものであっても良い。座屈防止コンポーネント11は、必要不可欠ではなく、例えば、ロッド10に代えて圧縮荷重を受けても座屈に抵抗する断面形状、例えば十字の形の断面形状を有するバー又は要素を用いても良い。ロッド10は、その各端部が高強度金属ブラケット12,13に固定され、これら金属ブラケットは、多数のボルト又はねじ14がエンジニアードウッド梁及び柱中にねじ込まれることにより梁B及び柱Cの側面にボルト止めされたプレート15に溶接されている。ロッド10の端部には、例えば、ねじ山が設けられているのが良い。鋼製消散ロッドのねじ山付き端部に取り付けられたナット16が、ロッドをブラケット12,13相互間で固定し、ロッド10に張力を加えるのに十分これらナットを締め付けることができ、その結果、ロッドは、地震事象中、引張りの際及び(又は)圧縮の際に変形するようになる。2つ又は3つ以上のこのような消散具は、梁と柱の接合部の一方の側を横切って互いに隣接して固定されるのが良い。1つ又は2つ若しくは3つ以上のこのような消散具を接合部の反対側の面にも設けるのが良い。消散具は、接合部を横切って木製耐荷重要素に切断形成された凹部内に面一をなして設けられるのが良い。
【0033】
図10〜図13は、消散具の更に別の且つ簡単な形態を示している。
【0034】
図10〜図12は、1つの梁Bが柱Cに取り付けられた梁と柱の接合部を示している。変形例として、梁を柱の2つ又は3つ以上の面に取り付けても良い。図10では、消散具は、金属プレート8、例えば鋼プレート又は変形例として合板プレートを有し、このようなプレートは、多数本の釘(図示せず)がプレート8を貫通して梁及び柱の外面中に延びることにより梁の端部及び柱に釘止めされている。変形例として、多数本のねじ又はボルトをプレート中に通して梁又は柱中に螺入しても良い。図11に示す鋼プレート8は、同じ仕方で梁の端部及び柱に固定されるが、図示のように符号8aのところで切欠きされ又は幅が減少している。合わせプレート18を接合部の反対の側にそれぞれ設けるのが良い。プレートは、材木表面上に直接着座しても良く、或いは、面一をなして着座するよう木材表面中に引っ込められても良い。これらプレートは、変形例として、プレートを貫通して材木中に延びる結合状態の鋼プラグにより又は埋め込み状態若しくは結合状態のロッド若しくはボルトによって固定されても良い。図11〜図13に示す接合部では、エネルギーは、プレートと木材との間の釘止め又はねじ止め連結部の撓みによって吸収可能である。変形例として、エネルギーは、プレート8が金属で作られている場合、これらプレートの撓みによって吸収されても良い。エネルギーがプレートの撓みによって吸収されることが意図されている場合、プレートは、好ましくは例えば図11に示す切欠き8aによって形成された2つの互いに連結された耐荷重要素相互間のインタフェースと整列した幅の狭い寸法部を有するよう形成されるのが良い。
【0035】
図12は、2枚の別々のプレートが梁Bと柱Cとの間の連結部を横切って固定された実施形態を示している。
【0036】
図13は、柱C又は壁パネルと基礎Fとの間に消散具として固定された鋼プレート8を示している。プレート8は、2つの部分、即ち、例えば露出端部を備えた状態でコンクリート製基礎中に注型された下方部分及びこの露出端部にボルト止めされ又は違ったやり方で固定されると共に柱に釘止めされ若しくはねじ止めされ若しくはボルト止めされた交換可能な上方部分で構成されるのが良い。プレートは、柱端部の多数の側で基礎中に設けられるのが良い。柱C又は壁パネルの揺動を生じさせる加重事象中、鋼プレートは、変形して運動を抑制すると共にエネルギーを吸収する。上述した実施形態の幾つかでは、消散具は、構造要素に固定され又は構造要素に固定された鋼プレートに固定された鋼ブラケットにボルト止めされている鋼ロッドを有する。鋼ロッドは、座屈防止拘束状態で引張り及び圧縮の際に撓む。これら鋼ロッドは、撓み中にエネルギーを吸収する。他の実施形態では、消散具は、加重事象中に撓む鋼プレートを有する。しかしながら、変形形態では、消散具は、構造要素に固定された押出装置を含む粘性減衰装置を有しても良い。消散具は、鋼プレート相互間の摩擦装置、例えばスロット付きボルト止め連結部を更に有するのが良い。これら形式全ての消散具は、鋼又は合金若しくは他の材料で作られるのが良い。別の実施形態では、エネルギー消散具は、構造要素の穴の中に接着剤により固定され又は構造要素に取り付けられた木材ブロックの穴の中に接着剤により固定された鋼ロッドであるのが良い。この場合、鋼ロッドは、ねじ山付き鋼ロッド又は変形状態の補強バーである。
【0037】
代表的には、建物の耐荷重要素の全ては、エンジニアードウッド要素である。しかしながら、耐荷重要素の幾つかを他の材料で形成することを排除するものではない。連結部は、例えば、特別設計された木材柱と鋼梁との間に位置しても良く又は鋼柱とエンジニアードウッド梁との間に位置しても良い。好ましい形態では、建物の耐荷重要素の全ては、特別設計された木材で作られる。別の形態では、例えば、耐荷重要素の幾つかは、特別設計された木材で作られ、他の幾つかの要素は、中実木材又は鋼で作られる。建物の基礎Fは、代表的には、コンクリート製のパッドである。本発明の建築システムにより、極めて大きな加重後に交換可能なエネルギー消散具を備えた軽量且つ安価な建物の建築が可能である。
【0038】
建物は、耐荷重要素、例えば梁及び(又は)柱及び(又は)壁パネルを現場外で所定サイズにあらかじめ形成することにより建築場所への運搬に先立って、あらかじめ製作できる。あらかじめ製作された建物のコンポーネントは、現場に運搬され、柱、梁及び(又は)パネルは、平屋又は高層建物のフレームを形成するよう定位置に置かれ、建物の屋根が構築される。このような実施形態では、本発明は、加重事象、例えば地震や極めて強い風の衝撃に対する保護手段を備えた予備応力が加えられた非コンクリート製の建物を形成する安価なモジュール式の予備製作建築システムを提供する。本発明により、このような保護手段を有する平屋及び特に高層建物を、費用を考慮するとプレストレストコンクリート構造物の建築ができない場合のある状況において建てることができる。
【0039】
上記は、本発明をその実施形態を含めて説明している。当業者には明らかな変形例及び改造例は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物であって、
前記建物のエンジニアードウッド耐荷重要素と前記建物の別の耐荷重要素又は基礎との間の連結部と、
少なくとも1つの前記耐荷重要素と前記基礎を結束する少なくとも1つの緊張材と、
少なくとも1つの前記耐荷重要素と前記基礎との間に交換可能に連結された1又は2以上のエネルギー消散具とを有し、前記エネルギー消散具は、前記連結部の相対運動を生じさせる加重事象に起因して生じたエネルギーを吸収する、建物。
【請求項2】
前記連結部は、前記建物の特別設計木製耐荷重要素と前記建物の別の特別設計木製耐荷重要素との間に位置している、請求項1記載の建物。
【請求項3】
前記耐荷重要素は、前記建物の構造要素である、請求項1又は2記載の建物。
【請求項4】
前記耐荷重要素の1又は2以上は、梁である、請求項3記載の建物。
【請求項5】
前記耐荷重要素の1又は2以上は、柱である、請求項3記載の建物。
【請求項6】
前記耐荷重要素の1又は2以上は、耐荷重壁パネルである、請求項3記載の建物。
【請求項7】
前記連結部は、梁と梁の連結部である、請求項3記載の建物。
【請求項8】
前記連結部は、梁と柱の連結部である、請求項3記載の建物。
【請求項9】
前記連結部は、隣り合う耐荷重壁パネル相互間に位置している、請求項3記載の建物。
【請求項10】
前記連結部は、耐荷重壁パネルと梁との間に位置している、請求項3記載の建物。
【請求項11】
前記梁は、屋根を支持する梁である、請求項8又は10記載の建物。
【請求項12】
前記連結部は、耐荷重壁パネルと柱との間に位置している、請求項3記載の建物。
【請求項13】
前記建物は、柱と前記柱の2つ又は3つ以上の側部に設けられた梁との間に位置する梁と柱の連結部を有する、請求項3記載の建物。
【請求項14】
前記建物は、隅の柱と該柱から互いに異なる方向に延びる2本の梁との間に位置する梁と柱の連結部を有する、請求項3記載の建物。
【請求項15】
前記緊張材は、前記耐荷重要素にその長さに沿って結合されてはいない(固定されてはいない)、請求項1〜14のいずれか1項に記載の建物。
【請求項16】
前記緊張材は、前記耐荷重要素に該耐荷重要素の長さに沿って間隔を置いて固定されることにより前記耐荷重要素に部分的に結合されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の建物。
【請求項17】
前記緊張材は、前記連結部に予備応力を加えるよう引張り状態にある、請求項1〜16のいずれか1項に記載の建物。
【請求項18】
前記緊張材は、前記予備応力の大きさを調節することができるよう繋留されている、請求項17記載の建物。
【請求項19】
1又は2以上の前記消散具は、前記耐荷重要素相互間に固定されていて、加重事象の間、エネルギーを吸収するよう変形する主要な機能部品を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の建物。
【請求項20】
前記主要な機能部品は、各端部が取り外し可能に固定される長手方向に延びる要素を有する、請求項19記載の建物。
【請求項21】
前記主要な機能部品は、各端部が取り外し可能に固定される弓形の要素を有する、請求項20記載の建物。
【請求項22】
前記エネルギー消散具は、前記耐荷重要素の外部に交換可能に固定されている、請求項1〜21のいずれか1項に記載の建物。
【請求項23】
1又は2以上のエネルギー消散具が、前記消散具又はその主要な機能部品を加重事象後に取り外して交換することができるよう前記耐荷重要素相互間の内側に設けられた空所内に設けられている、請求項1〜22のいずれか1項に記載の建物。
【請求項24】
前記特別設計木製要素は、積層ベニヤ木材要素である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の建物。
【請求項25】
前記特別設計木製要素は、平行ストランド木材要素である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の建物。
【請求項26】
前記特別設計木製要素は、接着積層材木要素である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の建物。
【請求項27】
前記建物の前記耐荷重要素相互間の前記連結部の全て又は実質的に全ては、前記耐荷重要素を互いに結束する少なくとも1つの緊張材と、前記耐荷重要素相互間に交換可能に連結された1又は2以上のエネルギー消散具とを有する、請求項1〜26のいずれか1項に記載の建物。
【請求項28】
2階又は3階建て以上である、請求項1〜27のいずれか1項に記載の建物。
【請求項29】
建物であって、
前記建物のエンジニアードウッド耐荷重柱と梁との間に位置する多数の連結部と、
前記連結部を互いに結束すると共に前記連結部に予備応力を加えるよう引張り状態にある緊張材と、
前記連結部を横切って交換可能に連結された1又は2以上のエネルギー消散具とを有し、前記エネルギー消散具は、前記連結部の相対運動を生じさせる加重事象に起因して生じたエネルギーを吸収する、建物。
【請求項30】
前記柱又は前記梁は、積層ベニヤ木材柱又は梁を含む、請求項29記載の建物。
【請求項31】
前記柱又は前記梁は、平行ストランド木材柱又は梁を含む、請求項29記載の建物。
【請求項32】
前記柱又は前記梁は、接着積層材木柱又は梁を含む、請求項29記載の建物。
【請求項33】
前記建物の前記柱と前記梁との間の連結部の全て又は実質的に全ては、前記柱及び前記梁を互いに結束する少なくとも1つの緊張材と、前記柱と前記梁との間に交換可能に連結された1又は2以上のエネルギー消散具とを有する、請求項29〜33のいずれか1項に記載の建物。
【請求項34】
前記建物の前記柱と基礎との間の連結部の全て又は実質的に全ては、前記柱を前記基礎に結束する少なくとも1つの緊張材と、前記柱と前記基礎との間に交換可能に連結された1又は2以上のエネルギー消散具とを有する、請求項29〜33のいずれか1項に記載の建物。
【請求項35】
前記建物の前記柱と基礎との間の連結部の全て又は実質的に全ては、少なくとも1つのエネルギー消散具を有する、請求項29〜34のいずれか1項に記載の建物。
【請求項36】
2階建て又は3階建て以上である、請求項29〜33のいずれか1項に記載の建物。
【請求項37】
建物であって、
前記建物のエンジニアードウッド耐荷重壁パネル相互間の多数の連結部と、
前記連結部を互いに結束すると共に前記連結部に予備応力を加えるよう引張り状態にある緊張材と、
前記連結部を横切って交換可能に連結された1又は2以上のエネルギー消散具とを有し、前記エネルギー消散具は、前記連結部の相対運動を生じさせる加重事象に起因して生じたエネルギーを吸収する、建物。
【請求項38】
前記建物の前記耐荷重壁パネルと基礎との間の連結部は、前記壁パネルを前記基礎に結束する緊張材を有する、請求項37記載の建物。
【請求項39】
前記建物の前記耐荷重壁パネルと基礎との間の連結部は、エネルギー消散具を有する、請求項37又は38記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−500493(P2010−500493A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523741(P2009−523741)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/NZ2007/000206
【国際公開番号】WO2008/018803
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(509039183)プレストレスト ティンバー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】