説明

高架橋有機ナノ粒子を含む成形材料

熱可塑成形材であって、A)10〜99.9質量%の熱可塑性ポリマー、B)少なくとも1つの分散剤、および供給プロセスによる少なくとも1つの遊離基開始剤の存在下で、エチレン性不飽和モノマーのフリーラジカル開始水性乳化重合によって得られる0.01〜10質量%のコポリマーであって、乳化重合に、70〜99.5質量%のα,β−モノエチレン性不飽和化合物[モノマーA]、0.5〜30質量%の少なくとも2つのフリーラジカル共重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物[モノマーB]、および場合により最高5質量%の3〜6個の炭素原子および/またはそのアミドを有する、α,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸[モノマー(C)]が使用され、モノマーA〜Cが合計100質量%(モノマーの全量)になり、60質量%以上のモノマーの合計量が、重合条件下で、計量されて、重合混合物に供給された後、60質量%以上のモノマーBの合計量が、重合条件下で重合混合物へ添加されるように、モノマー供給が達成されるコポリマー、C)成分A)〜C)の質量パーセントの合計が100%になる、0〜70質量%の追加の添加物、を含む熱可塑成形材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性成形材料であって、
A)熱可塑性ポリマー10〜99.9質量%と、
B)コポリマー0.01〜10質量%と、
C)追加の添加物0〜70質量%と
を含み、前記成分A)〜C)の質量パーセントの合計が100%になり、前記コポリマーが、少なくとも1つの分散剤、および少なくとも1つの遊離基開始剤の存在下で、エチレン性不飽和モノマーのフリーラジカル開始水性乳化重合を介して、供給プロセスにより得られ、その乳化重合のために、
α、β−モノエチレン性不飽和化合物[モノマーA]70〜99.5質量%、および
少なくとも2つのフリーラジカル共重合が可能なエチレン性不飽和基を有する化合物[モノマーB]0.5〜30質量%、ならびに場合により
3〜6個の炭素原子を有する、α,β−モノエチレン性不飽和モノ−またはジカルボン酸および/またはこれらのアミド[モノマーC]5質量%まで
が使用され、前記のモノマーA〜Cが合計100質量%(モノマーの全量)となり、そのモノマーの全量の60質量%以上が、重合条件下で、重合混合物に供給された後の時点で、モノマーBの全量の60質量%以上が、重合条件下で、重合混合物に供給されるようにモノマーの供給が行われる、熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
さらに本発明は、いずれかの種類の成形体を製造するための成形材料の使用、および上述のように得られる成形体に関する。
【0003】
熱可塑性プラスチック(PBT)中の無機ナノ粒子の例は、とりわけ高アスペクト比を有するフィロケイ酸塩(公開特許公報第03/62856号)である。
【0004】
球状粒子は、国際特許公開第2001/72881号により公知であり、例えば、前記形状の有機修飾粒子は、国際特許公開第2005/82994号により公知である。
【0005】
ナノ粒子の添加は、特に熱可塑性プラスチックの機械的性質の改善を意図している。
【0006】
より最近の特許出願、ドイツ特許公開第10 2006 020275.9号では、水性コポリマー分散液製造の新規方法が提案されており、これらは凝集物含量が低い。
【0007】
言及される使用は、接着剤、シール剤、ポリマー下塗り剤、紙塗工用組成物、繊維不織布、塗料の製造、およびコーティング組成物としての使用である。
【0008】
したがって、本発明の目的は機械的性質が改善された、熱可塑成形材(特にポリエステルおよびポリアミド)を提供することであった。
【0009】
したがって、導入部で定義される成形材料が発見された。
【0010】
好ましい実施形態が、サブクレームで定められている。
【0011】
原則として、いずれかの種類のプラスチックの有利な効果が明らかである。適切な熱可塑性プラスチックA)の一覧の例は、Kunststoff−Taschenbuch(Saechtling編),1989版から入手でき、これはさらに出典も言及している。これらの熱可塑性プラスチックの製造方法は、それ自体が当業者に周知である。いくつかの好ましい種類のポリマーは、下記でいくらかより詳細に説明され、ポリアミドおよびポリエステルが好ましい。
【0012】
1.ポリオキシメチレンホモポリマーまたはコポリマー
これらのポリマーは、それ自体が当業者に周知であり、文献に記載されている。
【0013】
これらのポリマーは、非常に一般的に、主ポリマー鎖中に少なくとも50mol%の−CH2O−繰り返し単位を有する。
【0014】
ホモポリマーは、ホルムアルデヒドまたはトリオキサンの重合により、好ましくは適切な触媒の存在下で一般的に製造される。
【0015】
本発明の目的のために、ポリオキシメチレンコポリマーが、成分Aとして好ましく、特に、−CH2O−繰り返し単位の近くのコポリマーは、さらに最高50mol%、好ましくは0.1〜20mol%、特に、0.3〜10mol%、非常に特に好ましくは2〜6mol%の繰り返し単位、
【化1】

[式中、R1〜R4は、互いに独立して、水素原子、1〜4個の炭素原子を有するC1−C4アルキル基、またはハロゲン置換アルキル基であり、R5は、−CH2−基もしくは−CH2O−基、あるいはC1−C4アルキル−もしくは−C1−C4−ハロアルキル置換メチレン基、または相当するオキシメチレン基であり、n値は、0〜3である]を有する。これらの基は、環状エーテルの開環を介してコポリマーに有利に導入することができる。好ましい環状エーテルは、以下の式、
【化2】

[式中、R1〜R5およびnは、上述の通りである]の環状エーテルである。単に環状エーテルの一例として、エチレンオキシド、プロピレン1,2−オキシド、ブチレン1,2−オキシド、ブチレン1,3−オキシド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、および1,3−ジオキセパン、ならびに、コモノマーとして、ポリジオキソランまたはポリジオキセパンなどの直鎖オリゴホルマールまたはポリホルマールも記載される場合がある。
【0016】
別の適切な成分A)は、一例として、第3モノマー、好ましくは以下の式、
【化3】

[式中、Zは、化学結合、−O−、−ORO−(R=C1−C8−アルキレンまたはC3−C5−シクロアルキレン)である]の二官能性化合物との、トリオキサン、および上述の環状エーテルの1つの反応を介して製造される、オキシメチレン三量体である。
【0017】
この種類の好ましいモノマーは、ほんのわずかな例を挙げると、エチレンジグリシド、ジグリシジルエーテル、およびモル比2:1のグリシジル化合物、およびホルムアルデヒド、ジオキサンまたはトリオキサンからなるジエーテル、さらに2〜8個の炭素原子を有する、グリシジル化合物2molおよび脂肪族ジオール1molからなるジエーテル(例えば、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−シクロブタンジオール、1,2−プロパンジオール、および1,4−シクロヘキサンジオール)である。
【0018】
上述のホモポリマーおよびコポリマーの製造方法は当業者に周知であり、文献に記載されており、本明細書でのいずれの追加情報も不用になる。
【0019】
好ましいポリオキシメチレンコポリマーの融点は、少なくとも150℃であり、これらの分子量(質量平均)Mwは、5000〜200000、好ましくは7000〜150000である。
【0020】
鎖末端が炭素−炭素結合を有する、末端基安定化ポリオキシメチレンポリマーが、特に好ましい。
【0021】
2.ポリカーボネートおよびポリエステル
適切なポリカーボネートは、それ自体公知である。これらは、一例として、界面重縮合によるドイツ特許第1 300 266号の方法によって、またはビフェニルカーボネートのビスフェノールとの反応によるドイツ特許公開第14 95 730号の方法によって得られる。好ましいビスフェノールは、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパンであり、一般的に、および以後ビスフェノールAと呼ぶ。
【0022】
ビスフェノールAの代わりに、その他の芳香族ジヒドロキシ化合物、特に、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル亜硫酸塩、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)エタンまたは4,4−ジヒドロキシ−ビフェニル、およびこれらの混合物も使用することができる。
【0023】
特に好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールA、または最高30mol%の上述の芳香族ジヒドロキシ化合物と併用したビスフェノールAを主成分とする。
【0024】
これらのポリカーボネートの相対粘度は、一般的に、0.5質量パーセント濃度のジクロロメタン溶液23℃中で測定される、1.1〜1.5、特に1.28〜1.4である。
【0025】
同様に、適切なポリエステルは、それ自体公知であり、文献に記載されている。これらは、主鎖中に、芳香族ジカルボン酸由来の芳香環を含む。この芳香環はまた、例えば、塩素および臭素などのハロゲン、またはメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、もしくはtert−ブチル基などのC1−C4アルキル基と置換することができる。
【0026】
このポリエステルは、それ自体公知である方法で、芳香族ジカルボン酸、これらのエステル、またはその他のエステルを形成する誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物との反応により製造してもよい。
【0027】
これらのポリアルキレンテレフタレートは、それ自体公知であり、文献に記載されている。これらの主鎖は、芳香族ジカルボン酸由来の芳香環を含む。この芳香環はまた、例えば、塩素および臭素などのハロゲン、またはメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチルもしくはtert−ブチル基などのC1−C4アルキル基と置換することができる。
【0028】
これらのポリアルキレンテレフタレートは、それ自体公知の方法で、芳香族ジカルボン酸、これらのエステル、またはその他のエステル形成誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物との反応により製造してもよい。
【0029】
好ましいジカルボン酸は、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸、またはこれらの混合物である。最高30mol%、好ましくは10mol%以下の芳香族ジカルボン酸は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族または脂環式ジカルボン酸で置換することができる。
【0030】
脂肪族ジヒドロキシ化合物の中で、2〜6個の炭素原子を有するジオール、特に1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、およびネオペンチルグリコール、またはこれらの混合物が好ましい。
【0031】
特に好ましいポリエステル(A)は、2〜6個の炭素原子を有するアルカンジオール由来のポリアルキレンテレフタレートである。これらの中で、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート、ならびにこれらの混合物が特に好ましく、さらに本明細書で、Aに対して、最高50質量%のポリエチレンテレフタレートを再生材料の形態で使用することが可能である。
【0032】
ポリエステル(A)の粘度数は、一般的に、0.5質量パーセント濃度のフェノールとo−ジクロロベンゼンの混合溶液25℃(質量比1:1)で測定される、60〜220、好ましくは100〜150mL/gである。
【0033】
カルボキシ末端基含有量が、最高100meq/kgのポリエステル、好ましくは最高50meq/kgのポリエステル、特に最高40meq/kgのポリエステルである、ポリエステルが特に好ましい。これらのポリエステルは、一例として、ドイツ特許公開第44 01 055号の方法によって製造することができる。カルボキシ末端基含有量は、通常、滴定法(例えば、電位差測定法)で測定される。
【0034】
言及される可能性のある別の基は、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジヒドロキシ化合物由来の全芳香族ポリエステル基である。
【0035】
適切な芳香族ジカルボン酸は、先にポリアルキレンテレフタレートと言及された化合物である。5〜100mol%のイソフタル酸および0〜95mol%のテレフタル酸、特に、約50〜約80%のテレフタル酸および20〜約50%のイソフタル酸からなる混合物の使用が好ましい。
【0036】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、好ましくは一般式
【化4】

[式中、Zは、最高8個の炭素原子を有する、アルキレンもしくはシクロアルキレン基、最高12個の炭素原子を有するアリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素もしくは硫黄原子、または化学結合であり、mは、0〜2である]を有する。この化合物のフェニレン基はまた、C1−C6−アルキルまたは−アルコキシ基、およびフッ素、塩素または臭素で置換されてもよい。
【0037】
これらの化合物の親化合物の例は、
ジヒドロキシビフェニル、
ジ(ヒドロキシフェニル)アルカン、
ジ(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、
ジ(ヒドロキシフェニル)硫化物、
ジ(ヒドロキシフェニル)エーテル、
ジ(ヒドロキシフェニル)ケトン、
ジ(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、
α,α’−ジ(ヒドロキシフェニル)ジアルキルベンゼン、
ジ(ヒドロキシフェニル)スルホン、ジ(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、
レゾルシノール、および
ヒドロキノン、
さらに、これらの環アルキル化および環ハロゲン化誘導体である。
【0038】
これらの中で、
4,4’−ジヒドロキシビフェニル、
2,4−ジ(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、
α,α’−ジ(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、
2,2−ジ(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、および
2,2−ジ(3’−クロロ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、
特に、
2,2−ジ(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン
2,2−ジ(3’,5−ジクロロジヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ジ(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
3,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン
および2,2−ジ(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ならびにこれらの混合物が好ましい。
【0039】
また、ポリアルキレンテレフタレートと全芳香族ポリエステルの混合物を使用することも当然可能である。これらは、一般的に、20〜98質量%のポリアルキレンテレフタレートおよび2〜80質量%の全芳香族ポリエステルを含む。
【0040】
また、コポリエーテル−エステルなどのポリエステルブロックコポリマーを使用することも当然可能である。この種類の製品は、それ自体公知であり、例えば、米国特許第3 651 014号などの文献に記載されている。類似製品、例えば、Hytrel(登録商標)(DuPont)も市販されている。
【0041】
言及される可能性のある好ましいジカルボン酸は、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸、ならびにこれらの混合物である。最高10mol%の芳香族ジカルボン酸は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族または脂環式ジカルボン酸で置換することができる。
【0042】
脂肪族ジヒドロキシ化合物の中で、2〜6個の炭素原子を有するジオール、特に、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、およびネオペンチルグリコール、ならびにこれらの混合物が好ましい。
【0043】
言及される可能性のある特に好ましいポリエステルは、2〜6個の炭素原子を有するアルカンジオール由来のポリアルキレンテレフタレートである。これらの中で、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0044】
ポリエステルの粘度数は、一般的に、0.5質量パーセント濃度のフェノール/o−ジクロロベンゼンの混合溶液23℃(質量比1:1)中で測定される、60〜200mL/gである。
【0045】
3.ポリオレフィン
適切な場合、より高級なα−オレフィンとともに、ポリエチレンおよびポリプロピレン、さらにエチレンまたはプロピレンを主成分とするコポリマーが、本明細書で非常に一般的に言及される。類似製品が、BASELLから、商標Lupolen(登録商標)またはHostalen(登録商標)/Moplen(登録商標)として入手できる。
【0046】
4.ポリメタクリレート
これらの中で、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、さらに最高40質量%のさらに共重合可能なモノマーと併用したメチルメタクリレートを主成分とするコポリマー(例えば、Plexiglas(登録商標)として入手できる材料)が特に言及される。
【0047】
5.ポリアミド
本発明の成形材料であるポリアミドは、一般的に、ISO307に従って、96質量パーセント濃度の硫酸中の0.5質量パーセント濃度の溶液25℃中で測定される、粘度数90〜350mL/g、好ましくは110〜240mL/gを有する。
【0048】
例えば、米国特許第2 071 250号,同第2 071 251号,同第2 130 523号,同第2 130 948号,同第2 241 322号,同第2 312 966号,同第2 512 606号、および同第3 393 210号に記載の通り、少なくとも5000の分子量(質量平均)を有する、半結晶性または非晶質性樹脂が好ましい。
【0049】
これらの例は、7〜13員環を有するラクタム由来のポリアミド(ポリカプロラクタム、ポリカプリルラクタムおよびポリラウリンラクタムなど)、およびジカルボン酸をジアミンと反応させることにより得られるポリアミドである。
【0050】
使用される可能性のあるジカルボン酸は、6〜12個、特に6〜10個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸、および芳香族ジカルボン酸である。本明細書で言及される可能性のある酸のほんの一部が、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ならびにテレフタル酸および/またはイソフタル酸である。
【0051】
特に適切なジアミンは、6〜12個、特に6〜8個の炭素原子を有するアルカンジアミン、およびm−キシリレンジアミン、ジ(4−アミノフェニル)メタン、ジ(4−(アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、または2,2−ジ(4−アミノシクロヘキシル)プロパンである。
【0052】
好ましいポリアミドは、特に、5〜95質量%の割合のカプロラクタム単位を有する、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリカプロラクタム、およびコポリアミド6/66である。
【0053】
その他のポリアミドの例は、例えば、1,4−ジアミノブタンをアジピン酸(ナイロン−4,6)を用いて高温で濃縮することによって得られるポリアミドである。この構造のポリアミドの製造方法は、例えば、欧州特許公開第38 094号、同第38 582号、および同第39 524号に記載されている。
【0054】
2つ以上の上述のモノマー、およびいずれかの所望の混合比の多数のポリアミドの混合物を共重合することによって得られるポリアミドも適している。
【0055】
さらに、これらのトリアミン含有量が、0.5質量%未満、好ましくは0.3質量%未満である場合、PA6/6TおよびPA66/6Tなどの半芳香族コポリアミドが特に有利であることが分かった(欧州特許公開第299 444号を参照)。
【0056】
好ましい低トリアミン含有量の半芳香族コポリアミドは、欧州特許公開第129 195号、および同第129 196号に記載の方法に従って、製造することができる。
【0057】
また、これらのポリマーの混合物(ブレンド)を使用することも当然可能である。
【0058】
6.ビニル芳香族ポリマー
それ自体公知であり、市販されている、これらのポリマーの分子量は、一般的に1500〜2000000、好ましくは70000〜1000000である。
【0059】
単に本明細書で例として言及される可能性のあるビニル芳香族ポリマーは、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、およびp−メチルスチレンから製造されるポリマーであり;(メタ)アクリロニトリルまたは(メタ)アクリレートなどのコモノマーもまた下位の割合(好ましくは20質量%以下、特に8質量%以下)でこの構造に含まれてもよい。特に好ましいビニル芳香族ポリマーは、ポリスチレン、および耐衝撃性ポリスチレンである。これらの混合物も当然使用されてもよい。これらは、欧州特許公開第302 485号に記載される方法によって、好ましくは製造される。
【0060】
好ましいASAポリマーは、
1(50〜90質量%のグラフト基剤であって、
11(95〜99.9質量%のC2−C10アルキルアクリレート)、および
12(2個の非共役オレフィン二重結合を有する0.1〜5質量%の二官能性モノマー)、
を主成分とするグラフト基剤)、ならびに
2(10〜50質量%のグラフトであって、
21(20〜50質量%の一般式Iのスチレンもしくは置換スチレン、またはこれらの混合物)、および
22(10〜80質量%のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリレートもしくはメタクリレート、またはこれらの混合物)からなるグラフト)
からなり、
31(50〜90質量%、好ましくは55〜90質量%、特に65〜85質量%の一般式Iのスチレンおよび/または置換スチレン)、ならびに
32(10〜50質量%、好ましくは10〜45質量%、特に15〜35質量%のアクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル)、
のSANコポリマーA3)を主成分とする硬質マトリックスと混合される
軟質相またはゴム相から構成される。
【0061】
成分A1)は、ガラス転移温度が−20℃未満、特に−30℃未満のエラストマーである。
【0062】
エラストマー製造に使用される主なモノマーA11)は、2〜10個の炭素原子、特に4〜8個の炭素原子を有するアクリレートである。本明細書で特に好ましいモノマーの例は、tert−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートであり、これらの中で、最後の2つが特に好ましい。
【0063】
これらのアクリレートに加えて、全質量A11+A12に対して、0.1〜5質量%、特に1〜4質量%の少なくとも2個の非共役オレフィン二重結合を有する多官能性モノマーが使用される。これらの化合物の中で、二官能性化合物(すなわち、2個の非共役二重結合を有する化合物)が好ましい。例は、ジビニルベンゼン、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリシクロデセニルアクリレート、およびジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレートであり、これらの中で、最後の2つが特に好ましい。
【0064】
グラフト基剤A1を製造する方法は、それ自体公知であり、例えば、ドイツ特許第1 260 135号に記載されている。類似製品も市販されている。
【0065】
乳化重合による製造は、いくつかの場合に、特に有利であることが分かった。
【0066】
重合の正確な条件(特に種類、供給方法、および乳剤の量など)は、好ましくは、少なくとも部分的に架橋したアクリレートラテックスが約200〜700nm、特に250〜600nmの平均粒径(質量平均d50)を有するように選択される。このラテックスは、好ましくは狭い粒度分布、すなわち、以下の指数
【数1】

は、好ましくは0.5未満、特に0.35未満を有する。
【0067】
グラフトポリマーA1+A2中のグラフト基剤A1の割合は、A1+A2の全質量に対して、50〜90質量%、好ましくは55〜85質量%、特に60〜80質量%である。
【0068】
グラフトシェルA2は、グラフト基剤A1にグラフト化され、グラフトシェルA2は、以下:
21 20〜90質量%、好ましくは30〜90質量%、特に30〜80質量%の一般式
【化5】

[式中、Rは、1〜8個の炭素原子、水素原子、またはハロゲン原子を有するアルキル基であり、R1は、1〜8個の炭素原子またはハロゲン原子を有するアルキル基であり、n値は、0、1、2、または3である]のスチレンまたは置換スチレンおよび
22 10〜80質量%、好ましくは10〜70質量%、特に20〜70の量%のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリレートもしくはメタクリレート、またはこれらの混合物の共重合によって得られる。
【0069】
置換スチレンの例は、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、およびp−クロロ−α−メチルスチレンであり、これらのスチレンの中で、α−メチルスチレンが好ましい。
【0070】
好ましいアクリレートおよび/またはメタクリレートは、ホモポリマーおよび/またはコポリマーが20℃を超えるガラス転移温度を有する成分A22)のその他のモノマーを有するものである。しかし、原則として、その他のアクリレートもまた、好ましくは成分A2が、20℃を超える全体的ガラス転移温度Tgを生じる量で使用してもよい。
【0071】
アクリル酸グリシジルおよび/またはメタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基を含む、C1−C8アルコールおよびエステルを有する、アクリル酸またはメタクリル酸から形成されるエステルが特に好ましい。特に非常に好ましい化合物の例は、メチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、メタクリル酸グリシジル、およびn−ブチルアクリレートであり、最後に挙げた化合物は、その非常に低いTgを有するポリマーを形成する特性により、好ましくは過度に高い割合で使用されない。
【0072】
グラフトシェルA2)は、一つのプロセス手順、または複数のプロセス手順(例えば、2または3)で製造し、したがって、配合物全体が影響を受けないままであることができる。
【0073】
このグラフトシェルは、例えば、ドイツ特許第12 60 135号、ドイツ特許公開第32 27 555号、同第31 49 357号、および同第34 14 118号に記載される通り、乳剤中で好ましくは製造される。
【0074】
選択される条件に応じて、グラフト共重合は、特定の割合のスチレンおよび/または置換スチレン誘導体、ならびに(メタ)アクリロニトリルおよび/または(メタ)アクリレートのフリーコポリマーを生じる。
【0075】
このグラフトコポリマーA1+A2は、一般的に、100〜1000nm、特に200〜700nm(d50質量平均)の平均粒径を有する。したがって、エラストマーA1)の製造およびグラフトのための条件は、好ましくはこの範囲の粒径になるように選択される。このための手段は既知であり、例えば、ドイツ特許第1 260 135号およびドイツ特許公開第28 26 925号、ならびにJournal of Applied Polymer Science,第9巻(1965),2929頁〜2938頁に記載されている。エラストマーラテックスの粒径の増加は、例えば、凝集によって発生させることが可能である。
【0076】
本発明の目的のために、成分A2)を製造するグラフト共重合時に生じる、フリー、非グラフト化ホモポリマーおよびコポリマーは、グラフトポリマー(A1+A2)の一部として計数される。
【0077】
いくつかの好ましいグラフトポリマーが、以下に列挙されている:
1:60質量%のグラフト基剤A1であって、
11(98質量%のn−ブチルアクリレート)、ならびに
12(2質量%のジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、および
21(75質量%のスチレン)、および
22(25質量%のアクリロニトリル)
から構成される40質量%のグラフトシェルA2
から構成されるグラフト基剤A1
2:1と同様のグラフト基剤であって、
5質量%のスチレンの第一グラフトシェル、ならびに
21(75質量%のスチレン)、および
22(25質量%のアクリトニトリル)
から構成される35質量%の第2グラフト
を有するグラフト基剤、
3:1と同様のグラフト基剤であって、
13質量%のスチレンの第一グラフト、ならびに3:1の質量比でスチレンとアクリロニトリルから構成される27質量%の第2グラフトを有するグラフト基剤。
【0078】
成分A3)として存在する製品は、例えば、ドイツ特許第10 01 001号および同第10 03 436号に記載される方法によって製造することができる。さらに、これらのコポリマーは市販されている。光散乱によって測定される分子量の質量平均は、好ましくは50000〜500000、特に100000〜250000である。
【0079】
(A1+A2):A3の質量比は、1:2.5〜2.5:1、好ましくは1:2〜2:1、特に1:1.5〜1.5:1である。
【0080】
成分A)として適切なSANポリマーは上述されている(A31およびA32を参照)。
【0081】
DIN53 727に従って、0.5質量パーセント濃度のジメチルホルムアミド溶液23℃として測定される、SANポリマーの粘度数は、一般的に、40〜100mL/g、好ましくは50〜80mL/gである。
【0082】
本発明の多相ポリマー混合物中のポリマー(A)として存在するABSポリマーは、ASAポリマーの上述の構造と同じ構造を有している。ASAポリマーのグラフト基剤のアクリレートゴムA1)の代わりに、通常、共役ジエンが使用され、好ましくは以下
41(70〜100質量%の共役ジエン)、および
42(2個の非共役オレフィン二重結合を有する0〜30質量%の二官能性モノマーのグラフト基剤A4)の配合物を生じる。
【0083】
この配合物中で、グラフトA2およびSANコポリマーA3)の硬質マトリックスは変化しないままである。これらの製品は市販されており、この製造方法は当業者に周知であり、したがって、本明細書のさらなる詳細は不要となるであろう。
【0084】
(A4+A2):A3の質量比は、3:1〜1:3、好ましくは2:1〜1:2である。
【0085】
熱可塑成形材の特に好ましい配合物は、成分A)として、以下
1)10〜90質量%のポリブチレンテレフタレート、
2)0〜40質量%のポリエチレンテレフタレート、
3)1〜40質量%のASAもしくはABSポリマー、またはこれらの混合物の混合物を含む。
【0086】
この種類の製品は、BASF AGから商標Ultradur(登録商標)S(以前はUltrablend(登録商標) S)として入手できる。
【0087】
成分A)のその他の好ましい配合物は、以下
1)10〜90質量%のポリカーボネート、
2)0〜40質量%のポリエステル、好ましくはポリブチレンテレフタレート、
3)1〜40質量%のASAもしくはABSポリマー、またはこれらの混合物を含んでいる。
【0088】
この種類の製品は、BASF AGから商標Terblend(登録商標)として入手できる。
7.ポリアリーレンエーテル
好ましいポリアリーレンエーテルA)は、それ自体がポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンエーテルスルフィド、ポリアリーレンエーテルスルホン、またはポリアリーレンエーテルケトンのいずれかである。これらのアリーレン基は、同一または異なることができ、互いに独立しており、6〜18個の炭素原子を有する芳香族基である。適切なアリレン基の例は、フェニレン、ビスフェニレン、ターフェニレン、1,5−ナフチレン、1,6−ナフチレン、1,5−アントリレン、9,10−アントリレン、または2、6−アントリレンである。これらの中で、1,4−フェニレン、および4、4’−ビフェニレンが好ましい。これらの芳香族基は、好ましくは非置換基である。しかし、これらは1つ以上の置換基を有することができる。適切な置換基の例は、アルキル、アリールアルキル、アリール、ニトロ、シアノ、またはアルコキシ基、およびさらにピリジンおよびハロゲン原子などの複素芳香族である。好ましい置換基の中には、最高10個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル)、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、アリール基などの最高20個の炭素原子を有するC1−C10アルコキシ基(例えば、フェニルまたはナフチル、さらにフッ素および塩素)がある。これらは、−O−を介してだけではなく、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−N=N−、−COO−、アルキレン基、または化学結合を介しても互いに結合することができる。ポリアリーレンエーテル(B)中のアリーレン基はまた、異なる置換基により互いに結合することができる。
【0089】
好ましいポリアリーレンエーテルの中には、一般式I
【化6】

の繰り返し単位を有するものがある。
【0090】
さらに、これらの環置換誘導体を使用することも可能である。使用することができる好ましい置換基は、メチル、エチルまたは、tert−ブチルなどのC1−C6アルキル、メトキシ、エトキシ、またはアリール、特にフェニル、または塩素もしくはフッ素などのC1−C6アルコキシである。変数Xは、−SO2−、−SO−、−S−、−O−、CO、−N=N−、−RC=CRa−、−CRbc−、または化学結合であることができる。変数Zは、−SO2−、−SO−、−CO−、−O−、−N=N−、または−RC=CRaであることができる。本明細書のRおよびRaはそれぞれ、メトキシ、エトキシもしくはブトキシ、またはアリール、特にフェニルを含む、水素およびC1−C6アルキル(例えば、メチル、n−プロピル、n−ヘキシル、C1−C6アルコキシ)である。基RbおよびRcはそれぞれ、水素またはC1−C6アルキル基(特にメチル)であることができる。しかし、これらは、互いに結合し、C4−C10シクロアルキル環、好ましくはシクロペンチルまたはシクロヘキシル環を形成することができ、これらは、同様に、1つ以上のアルキル基、好ましくはメチルによって置換することができる。これと同時に、RbとRcは、C1−C6アルコキシ基(例えば、メトキシもしくはエトキシ、またはアリール基、特にフェニル)であることもできる。上述の置換基はそれぞれ、同様に塩素またはフッ素によって置換することができる。
【0091】
好ましい繰り返し単位のいくつかを以下に記載する。
【0092】
【化7】

【0093】
【化8】

【0094】
【化9】

【0095】
(l1)、(l2)、(l24)、または(l25)を繰り返し単位として含むポリアリーレンエーテルが、非常に特に好ましい。これらの中には、例えば、0〜100mol%、好ましくは5〜95mol%の構造単位(l1)、および0〜100mol%、好ましくは5〜95mol%の構造単位(l2)を有するポリアリーレンエーテルスルホンがある。
【0096】
ポリアリーレンエーテルはまた、コポリマーまたはブロックコポリマーであることができ、これらのそれぞれに、ポリアミド、ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリシロキサン、ポリイミド、またはポリエーテルイミドなどの、ポリアリーレンエーテルセグメント、およびその他の熱可塑性ポリマーのセグメントが存在する。コポリマー中のブロックまたはグラフトアームのモル質量は、一般的に、1000〜30000g/molである。異なる構造ブロックは、交互配列またはランダム配列を有することができる。コポリマーまたはブロックコポリマー中のポリアリーレンエーテルセグメントの質量割合は、一般的に、少なくとも3質量%、好ましくは少なくとも10質量%である。ポリアリーレンエーテルスルホンまたはポリアリーレンエーテルケトンの質量割合は、最高97質量%であることができる。ポリアリーレンエーテルセグメントの質量割合が最高90質量%であるコポリマーまたはブロックコポリマーが好ましい。20〜80質量%のポリアリーレンエーテルセグメントを有するコポリマーまたはブロックコポリマーが特に好ましい。
【0097】
ポリアリーレンエーテルの平均モル質量Mn(数平均)は、一般的に10 000〜60 000g/molであり、これらの粘度数は30〜150mL/gである。粘度数は、それぞれの場合に20℃、またはそれぞれ25℃で、1質量パーセント濃度のN−メチルピロリドン溶液もしくはフェノールとo−ジクロロベンゼンからなる混合物、または96質量パーセント濃度の硫酸のいずれかにおいて、ポリアリーレンエーテル(A)または(B)の可溶性に応じて測定される。
【0098】
ポリアリーレンエーテルは、それ自体公知であるか、またはそれ自体公知の方法で製造できる。
【0099】
例えば、ポリフェニレンエーテルは、フェノールの酸化結合によって製造することができる。ポリアリーレンエーテルスルホンまたはポリアリーレンエーテルケトンは、例えば、芳香族ビスハロゲン化合物および芳香族ビスフェノールのアルカリ金属複塩の縮合により製造される。さらに、これらは、一例として、触媒の存在下での芳香族ハロフェノールのアルカリ金属塩の自動縮合により製造できる。
【0100】
このモノマーは、好ましくは、溶解中または不活性高沸点溶媒中で重合される。これらの中には、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、およびトリクロロベンゼンがある。これらと併用して使用することができるその他の化合物は、スルホンまたはスルホキシドであり、これらの中に、特にジメチルスルホン、ジエチルスルホン、1,1−ジオキソテトラヒドロチオフェン(スルホラン)、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキシド、またはジエチルスルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシドがある。好ましい溶媒の中には、N−アルキルピロリドン、特にN−メチルピロリドンもある。N、N−ジメチルホルムアミド、またはN,N−ジメチルアセトアミドなどのN−置換アミドを使用することも可能である。異なる溶媒の混合物を使用することも可能である。
【0101】
ポリアリーレンエーテルスルホンまたはポリアリーレンエーテルケトンの合成のための好ましいプロセス条件は、一例として欧州特許公開第113 112号および同第135 130号に記載されている。
【0102】
好ましいポリアリーレンエーテルの融点はそれぞれ、一般的に、少なくとも320℃(ポリアリーレンエーテルスルホン)、少なくとも370℃(ポリアリーレンエーテルケトン)である。
【0103】
本発明によれば、成形材料は、ポリアリーレンエーテルスルホンまたはポリアリーレンエーテルケトンと、反応性化合物との反応により得られる、ポリアリーレンエーテルスルホンまたはポリアリーレンエーテルケトンを含むことができる。この反応性化合物は、炭素−炭素の二重結合または炭素−炭素の三重結合とともに、1つ以上のカルボニル、カルボン酸、カルボキシレート、無水物、イミド、カルボン酸エステル、アミノ、ヒドロキシ、エポキシ、オキサゾリン、ウレタン、ウレア、ラクタム、またはハロベンジル基を含む。
【0104】
適切な化合物の典型的な例は、マレイン酸、メチルマレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、無水物およびそのイミド、フマル酸、これらの酸のモノおよびジエステル(例えば、C1−C18アルカノール)、N−フェニルマレイミドなどのこれらの酸のモノ−またはジアミド、ならびにマレイン酸ヒドラジドである。
α,β−不飽和ジカルボン酸またはそれらの無水物、および以下の一般構造IVおよびV
【化10】

[式中、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素あるいはC1−C18アルキル基であることができる]のジエステルおよびモノエステルを使用することが好ましい。
【0105】
特に適切な化合物は、無水マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸である。
【0106】
このポリマーおよび反応性化合物は、例えば、芳香族溶媒中で互いに反応することができる。クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、およびN−メチル−ピロリドンが特に適切な溶媒であることが分かった。一般的に、従来の遊離基開始剤が本明細書で使用される。この反応は一般的に75〜150℃で行われる。反応生成物は、低分子量のアルコールおよびケトンなどの従来の沈殿剤での沈殿、または溶媒の除去(例えば、ベント式押出機または薄膜蒸発装置)を介して得られる。
【0107】
しかし、一例として、この反応物は、連続式またはバッチ式に作動させる混合アセンブリ(例えば、単軸もしくは二軸押出機またはニーダー)内の溶解物中で270〜350℃の温度で、反応することができる。
【0108】
本明細書の反応性化合物は、好ましくは、液体の形態で、特に混合アセンブリの混練ゾーン内でこのポリマーの溶解物に供給される。
【0109】
修飾ポリアリーレンエーテルスルホンまたは修飾ポリアリーレンエーテルケトンを使用することが好ましく、これらのそれぞれは、80〜99.9質量%、特に90〜99質量%の非修飾ポリアリーレンエーテルスルホンまたは非修飾ポリアリーレンエーテルケトンと、0.1〜20質量%、特に1〜10質量%の反応性化合物との反応を介して得られる。
【0110】
特に、0.1〜1.5質量%の無水マレイン酸でグラフト化されるポリアリーレンエーテルスルホンが成分として好ましい。本明細書において、5〜95mol%単位のI1および5〜95mol%単位のI2を含む、ポリアリーレンエーテルスルホンが好ましい。
【0111】
特に、80〜95mol%、好ましくは85〜95mol%単位の式I2およびI1、同様に5〜20mol%、好ましくは5〜15mol%単位の式I1、および式I2をそれぞれ有する、ポリアリーレンエーテルスルホンが本明細書で言及される。
【0112】
使用される遊離基開始剤は、一般的に、技術文献(例えばJ.K.Kochi,"Free Radicals",J.Wiley,New York,1973)に記載される化合物を含むことができる。
【0113】
通常使用される遊離基開始剤の量は、使用されるポリアリーレンエーテルスルホンまたはポリアリーレンエーテルケトンに対して、約0.01〜約1質量%である。異なる遊離基開始剤の混合物も当然使用することができる。
【0114】
適切に修飾されたポリフェニレンエーテルは、国際特許公開第87/00540号によりとりわけ公知であり、これらは特にポリアミドを有する混合物中で使用することができる。
【0115】
熱可塑性プラスチックの質量割合は、一般的に、10〜99.9質量%、好ましくは20〜99.9質量%、特に50〜98質量%である。
【0116】
本発明の成形材料は、導入部で定義される通り、0.01〜10質量%、好ましくは0.03〜8質量%、特に0.1〜5質量%の量のコポリマーB)を成分B)として含む。
【0117】
本明細書でのコポリマーB)の製造方法は、重合器内で半連続的に生じ、本明細書の重合器は、水性乳化重合が行うことができる、いずれかの容器を意味するように意図される。本明細書の重合器は、一例として、特にガラス製反応器、琺瑯鋼反応器、またはステンレススチール反応器を含んでおり、そのサイズは0.5I〜100m3であることができる。
【0118】
とりわけ使用することができるモノマーAは、特に、フリーラジカル重合を容易に行うことができるエチレン性不飽和モノマーであり、その例は、エチレン、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン、またはビニルトルエン)、1〜18個の炭素原子を有する、ビニルアルコールおよびモノカルボン酸からなるエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、およびステアリン酸ビニル)、好ましくは3〜6個の炭素原子を有する、α,β−モノエチレン性不飽和のモノカルボン酸およびジカルボン酸からなるエステルであり、特定例は、一般的に、1〜12個、好ましくは1〜8個、特に1〜4個の炭素原子を有するアルカノール(例えば、特に、メチル、エチル、n−ブチル、イソブチル、ならびに2−エチルヘキシルアクリレートおよび相当するメタクリレート)とともに、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のマレイン酸ジメチル、マレイン酸−n−ジブチル、またはニトリル(例えば、アクリロニトリル、ならびにさらにC48共役ジエン(例えば、1,3−ブタジエンおよびイソプレン)である。言及されるモノマーは、一般的に、主なモノマーを形成し、これらの混合される割合は、本発明の方法によって重合されるモノマーAの全量に対して、50質量%以上、80質量%以上、または90質量%以上である。非常に一般的に、これらのモノマーは、標準条件下[20℃、1atm=1.013bar(絶対値)]では適度〜低い水可溶性しか有さない。
【0119】
通常、被膜ポリマーマトリックスの内部強度を増加させるその他のモノマーAは、通常、少なくとも1つのヒドロキシ、N−メチロール、またはカルボニル基を有する。この関係で特に重要なものは、C1−C8−ヒドロキシアルキルアクリレートおよび相当するメタクリレート(例えば、n−ヒドロキシエチル、n−ヒドロキシプロピル、またはn−ヒドロキシブチルアクリレートおよび相当するメタクリレート)、さらにジアセトンアクリルアミド、ならびにアセチルアセトキシエチルアクリレートおよび相当するメタクリレートなどの化合物である。本発明によれば、上述のモノマーの重合方法に使用される量は、重合されるモノマーAの全量に対して、5質量%以下、しばしば0.1以上〜3質量%以下、頻繁に0.2以上〜2質量%以下である。
【0120】
使用することができるその他のモノマーAは、シロキサン基を含むエチレン性不飽和モノマー(例えば、ビニルトリメトキシシランなどのビニルトリアルコキシシラン、アルキルビニルジアルコキシシラン、アクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、またはメタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、例えば、アクリルオキシエチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、またはメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)である。使用されるこれらのモノマーの全量は、それぞれの場合に、モノマーAの全量に対して、5質量%以下、頻繁に0.01以上〜3質量%以下、しばしば0.05以上〜1質量%以下である。
【0121】
これらに加えて、使用することができるその他のモノマーAは、少なくとも1つの酸性基および/またはその相当する陰イオンを含むエチレン性不飽和モノマーAS、または少なくとも1つのアミノ、アミド、ウレイドもしくはN−複素環基および/またはそのN−プロトン化もしくはN−アルキル化アンモニウム誘導体を含むエチレン性不飽和モノマーAKである。モノマーASおよびモノマーAKの量はそれぞれ、重合されるモノマーAの全量に対して、10質量%以下、しばしば0.1以上〜7質量%以下、および頻繁に0.2以上〜5質量%以下である。
【0122】
使用されるモノマーASは、少なくとも1つの酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーである。本明細書の酸性基は、一例として、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、および/またはホスホン酸基であることができる。これらのモノマーASの例は、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸、およびビニルホスホン酸、さらにn−ヒドロキシアルキルアクリレートおよびn−ヒドロキシアルキルメタクリレートのリン酸モノエステルであり、例は、ヒドロキシエチルアクリレートのリン酸モノエステル、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはn−ヒドロキシブチルメタクリレートである。しかし、本発明によれば、少なくとも1つの酸性基を有する、上述のエチレン性不飽和モノマーのアンモニウムおよびアルカリ金属塩を使用することも可能である。ナトリウムおよびカリウムは、アルカリ金属として特に好ましい。本明細書の例は、4−スチレンスルホン酸のアンモニウム、ナトリウムおよびカリウム塩、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸、ならびにビニルホスホン酸、さらにヒドロキシエチルアクリレートのリン酸モノエステルのモノおよびジアンモニウム−ナトリウム−および−カリウム塩、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはn−ヒドロキシブチルメタクリレートである。
【0123】
4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸、およびビニルホスホン酸をモノマーASとして使用することが好ましい。
【0124】
使用されるモノマーAKは、少なくとも1つのアミノ、アミド、ウレイド、もしくはN−複素環基、および/またはN−プロトン化もしくはそのN−アルキル化アンモニウム誘導体を含むエチレン性不飽和モノマーを含んでいる。
【0125】
少なくとも1つのアミノ基を含むモノマーAKの例は、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルアクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、4−アミノ−n−ブチルアクリレート、4−アミノ−n−ブチルメタクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート(一例としてElf AtochemからNorsocryl(登録商標)TBAEMAの形態で市販されている)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート(一例としてElf AtochemからNorsocryl(登録商標)ADAMEの形態で市販されている)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(一例としてElf AtochemからのNorsocryl(登録商標)MADAMEの形態で市販されている)、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジイソプロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−エチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−エチル−アミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−tert−ブチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−tert−ブチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジイソプロピルアミノ)プロピルアクリレート、および3−(N,N−ジイソプロピルアミノ)プロピルメタクリレートである。
【0126】
少なくとも1つのアミド基を含むモノマーAKの例は、N−メチル−アクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルメタクリルアミド、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−(ジフェニルメチル)アクリルアミド、N−シクロ−ヘキシルアクリルアミド、ならびにさらにN−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムである。
【0127】
少なくとも1つのウレイド基を含むモノマーAKの例は、N,N’−ジビニルエチレンウレア、および2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリレート(一例としてElf AtochemからNorsocryl(登録商標)100の形態で市販されている)である。
【0128】
少なくとも1つのN−複素環基を含むモノマーAKの例は、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、およびN−ビニルカルバゾールである。
【0129】
モノマーAKとしての以下:2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N、N―(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N、N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N、N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N、N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、および2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリレートの化合物を使用することが好ましい。
【0130】
水性反応媒体のpH値に応じて、窒素を含む上述のモノマーAKの一部または全量が、N−プロトン化第4級アンモニウムの形態で存在することができる。
【0131】
窒素の第4級アルキルアンモニウム構造を有する、モノマーAKを言及する可能性のある例は、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチル塩化アクリレート(一例としてElf AtochemからNorsocryl(登録商標)ADAMQUAT MC 80の形態で市販されている)、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチル塩化メタクリレート(一例としてのElf AtochemからNorsocryl(登録商標)MADQUAT MC 75の形態で市販されている)、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチル塩化アクリレート、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチル塩化メタクリレート、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチル塩化アクリレート、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリレート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチル塩化アクリレート(一例としてElf AtochemからNorsocryl(登録商標)ADAMQUAT BZ 80の形態で市販されている)、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチル塩化メタクリレート(一例としてElf AtochemからNorsocryl(登録商標)MADQUAT BZ 75の形態で市販されている)、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチル塩化アクリレート、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチル塩化メタクリレート、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチル塩化アクリレート、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチル塩化メタクリレート、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピル塩化アクリレート、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピル塩化メタクリレート、3(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピル塩化アクリレート、3−(N−メチル−N、N−ジエチルアンモニウム)のプロピル塩化メタクリレート、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピル塩化アクリレート、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピル塩化メタクリレート、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピル塩化アクリレート、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピル塩化メタクリレート、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピル塩化アクリレート、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピル塩化メタクリレート、3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピル塩化アクリレート、および3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピル塩化メタクリレートである。上述の塩化物の代わりに、相当する臭化物および硫酸塩も当然使用することができる。
【0132】
2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチル塩化アクリレート、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチル塩化メタクリレート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチル塩化アクリレート、および2−(N−ベンジル−N、N−ジメチルアンモニウム)エチル塩化メタクリレートを使用することが好ましい。
【0133】
上述のエチレン性不飽和モノマーAの混合物も当然使用することができる。
【0134】
モノマーAの全量は、それぞれの場合にモノマー量の全量に対して、70〜99.5質量%、有利に80〜99質量%、特に有利に90〜98質量%である。
【0135】
本発明によれば、適切な場合、重合器内で初期充填として、モノマーAの一部を使用し、適切な場合、重合条件下で、複数部分中でバッチ式に、または一定流量もしくは変化流量で連続的に、全量または残存量のモノマーAを重合器に供給することが可能である。重合器内で初期充填として、30質量%以下、特に10質量%以下のモノマーAを使用し、全量または残存量のモノマーAを、一定流量または変化流量で連続的に重合器に供給することが特に有利である。
【0136】
使用されるモノマーBは、フリーラジカル共重合が可能な少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する化合物を含む。本明細書の例は、少なくとも2つのビニル基を有するモノマー、少なくとも2つのビニリデン基を有するモノマー、さらに少なくとも2つのアルケニル基を有するモノマーである。特に本明細書で有利なものは、α,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸を有する二価アルコールのジエステルであり、その中で、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有するこれらのモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリレートおよび相当するジメタクリレート(例えば、エチレングリコールジアクリレート、プロピレン1,2−グリコールジアクリレート、プロピレン1,3−グリコールジアクリレート、ブチレン1,3−グリコールジアクリレート、ブチレン1,4−グリコールジアクリレート、およびエチレングリコールジメタクリレート)、プロピレン1,2−グリコールジメタクリレート、プロピレン1,3−グリコールジメタクリレート、ブチレン1,3−グリコールジメタクリレート、ブチレン1,4−グリコールジメタクリレート、さらにo−、m−、もしくはp−ジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリレート、トリアリルシアヌレート、またはトリアリルイソシアヌレートである。
【0137】
上述のモノマーBの混合物を使用することも当然可能である。
【0138】
o−/m−/p−ジビニルベンゼン、ブチレン1,4−グリコールジアクリレート、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、アリルアクリレート、および/またはアリルメタクリレートをモノマーBとして使用することが有利である。
【0139】
モノマーBの全量は、それぞれの場合にモノマーの全量に対して、0.5〜30質量%、有利に1〜20質量%、特に有利に2〜10質量%である。
【0140】
本発明によれば、適切な場合、モノマーBの一部を重合器内で初期充填として使用することが可能であり、適切な場合、全量または残存量のモノマーBが、重合条件下で、複数部分中でバッチ式に、または一定流量もしくは変化流量で連続的に重合器に供給される。重合器内で初期充填として、10質量%以下、特に5質量%以下のモノマーBを使用し、全量または残存量のモノマーBを重合器に供給することが有利である。
【0141】
使用されるモノマーCは、3〜6個の炭素原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸および/またはこれらのアミドを含む。本明細書の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、さらにこれらの相当するアミドである。しかし、本発明によれば、上述のエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸のアンモニウムおよびアルカリ金属塩を使用することも可能である。ナトリウムおよびカリウムは、特に好ましいアルカリ金属である。本明細書の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびクロトン酸のアンモニウム、ナトリウム、およびカリウム塩である。
【0142】
上述のモノマーCの混合物を使用することも当然可能である。
【0143】
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを、モノマーCとして使用することが有利である。
【0144】
モノマーCの全量は、それぞれの場合にモノマーの全量に対して、一般的に、5質量%以下、しばしば0.1以上〜3質量%以下、頻繁に0.2以上〜2質量%以下である。
【0145】
本発明によれば、適切な場合、重合器内で初期充填として、モノマーCの一部を使用し、適切な場合、重合条件下で、複数部分中でバッチ式に、または一定流量もしくは変化流量で連続的に、全量または残存量のモノマーCを重合器に供給することが可能である。重合器内で初期充填として、30質量%以下、特に10質量%以下のモノマーCを使用し、全量または残存量のモノマーCを、一定流量または変化流量で連続的に重合器に供給することが有利である。
【0146】
モノマーA〜Cの選択は、特に有利に、20℃および1atm(絶対値)での、95質量%以上、特に有利に97質量%以上のすべてのモノマーの脱イオン水中での可溶性が、10質量%以下、特に5質量%以下である程度である。
【0147】
モノマーAおよびモノマーCの性質および量の選択は、有利に、これらのモノマーのみからなるコポリマーのガラス転移温度が、40℃以上、有利に70℃以上、特に有利に90℃以上である程度であるであろう。
【0148】
ガラス転移温度は、通常、DIN53 765(示差走査熱量測定、20K/分、融点測定)に従って決定される。
【0149】
Fox(T.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc.1956[Ser.II]1,page 123,およびUllmann’s Encyclopaedie der technischen Chemie,第19巻,第18頁,第4版,出版Chemie,Weinheim,1980)によれば、最も弱い架橋を有するコポリマーのガラス転移温度Tgに大変近い近似値は、以下の式
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+…xn/Tgn
[式中、x1、x2....xnは、モノマー1、2....nの質量分率であり、Tg 1、Tg 2....Tg nは、モノマー1、2....nの1つのみからなるそれぞれのポリマーのケルビン度でのガラス転移温度である]によって得られる。ほとんどのモノマーのホモポリマーのTg値は公知であり、一例としてUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版第A21巻,第169頁,出版Chemie,Weinheim,1992に記載されている。ホモポリマーのガラス転移温度のさらなるソースの例は、J.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook,初版,J.Wiley,New York,1966;第2版.J.Wiley,New York,1975および第3版.J.Wiley,New York,1989である。
【0150】
本発明の方法は、水、好ましくは飲料水、特に好ましくは脱イオン水を使用しており、その全量は、それぞれの場合に、本発明の方法によって得られる水性コポリマー分散液に対して、30〜90質量%、有利に50〜80質量%であるように判断される。
【0151】
本発明は、適切な場合、重合器内で初期充填として、一部または全量の水を使用することを可能にする。しかし、適切な場合、全量または残存量の水を、特に水性モノマー乳剤の形態で、モノマーA、Bおよび/またはCとともに供給することも可能である。重合器内で初期充填として、少量の水を使用すること、および重合条件下で水性モノマー乳剤の形態で、比較的大部分の水を供給することが有利である。
【0152】
本発明の方法の目的のために、分散剤の併用が行われ、この分散剤は、モノマーの液滴だけでなくコポリマー粒子が、水相内の分散液中に形成される状態に保ち、したがって、生成される水性コポリマー分散液を確実に安定させる。これらは、通常、フリーラジカル水性乳化重合の実施に使用される保護コロイド、あるいは乳剤のいずれかであることができる。
【0153】
適切な保護コロイドの例は、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、またはビニルピロリドンを含むコポリマーである。Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,XIV/1巻,Makromolekulare Stoffe,第411頁〜第420頁,Georg−Thieme−出版,シュトゥットガルト,1961は、さらに適切な保護コロイドの詳細な説明を提供している。
【0154】
乳剤および/または保護コロイドからなる混合物を使用することも当然可能である。頻繁に使用される分散剤は乳剤のみを含み、これらの相対的モル質量は、保護コロイドとは異なり、通常1000g/mol未満である。これらは、アニオン、カチオン、またはノニオンのいずれかであることができる。界面活性物質の混合物が使用される場合、個々の成分は、当然、互いに適合しなければならず、これに疑いがある場合には、少数の予備試験によって調査できる。アニオン系乳剤は、一般的に、互いにおよびノニオン系乳剤に適合する。同じことが、カチオン系乳剤にも当てはまるのに対して、アニオンおよびカチオン系乳剤は、ほとんどが互いに適合しない。
【0155】
よく知られる乳剤の例は、エトキシ化モノ−、ジ−、およびトリアルキルフェノール(EO数;3〜50個;アルキル基:C4〜C12)、エトキシ化脂肪族アルコール(EO数:3〜50個;アルキル基:C8〜C36)、さらにアルキル硫酸塩(アルキル基:C8〜C12)、エトキシ化アルカノールの硫酸ハーフエステル(EO数:4〜30個;アルキル基:C12〜C18)、およびエトキシ化アルキルフェノール(EO数:3〜50個;アルキル基:C4〜C12)、スルホン酸アルキル(アルキル基:C12〜C18)、および亜硫酸アルキルアリール(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属およびアンモニウム塩である。Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,XIV/1巻,Makromolekulare Stoffe,第192頁〜第208頁,Georg−Thieme出版,シュトゥットガルト,1961は、さらに適切な乳剤を提供している。
【0156】
式Iの化合物は、さらに界面活性物質として適していることが分かった。
【0157】
【化11】

[式中、R1およびR2は、C4−C24アルキルであることができ、基R1またはR2の1つは、水素であることもでき、AおよびBは、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンであることができる]。一般式I中のR1およびR2は、好ましくは、6〜18個の炭素原子を有し、特に6、12、または16個の炭素原子または水素原子を有する、直鎖または分岐アルキル基であるが、R1およびR2は同時に水素原子ではない。AおよびBは、好ましくは、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムイオンであり、特に好ましくは、ナトリウムイオンである。特に有利な化合物Iは、AおよびBが、ナトリウムイオンであり、R1は、12個の炭素原子を有する分岐アルキル基であり、R2は、水素原子またはR1である化合物である。50〜90質量%の割合のモノアルキル化製品を有する、工業的混合物、例えば、Dowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Companyの商標)がしばしば使用される。化合物Iは、例えば、米国特許第4 269 749号により公知であり、市販されている。
【0158】
本発明の方法は、好ましくは、ノニオン系および/またはアニオン系乳剤を使用している。しかし、カチオン系乳剤を使用することも可能である。アルキルアリルスルホン酸、アルキル硫酸塩、エトキシ化アルカノールの硫酸ハーフエステル、および/またはこれらの適切なアルカリ金属塩などのアニオン系乳剤を使用することが特に好ましい。
【0159】
使用される分散剤の量は、一般的に、それぞれの場合に、モノマーの全量に対して、0.1以上〜15質量%以下、好ましくは0.5以上〜5質量%以下である。
【0160】
本発明によれば、適切な場合、分散剤の一部または全量を重合器内で初期充填として使用することが可能である。しかし、適切な場合、特に水性モノマー乳剤の形態で、重合条件下で、モノマーA、Bおよび/またはCとともに、全量または残存量の分散剤を供給することも可能である、
フリーラジカル開始水性乳化重合は、フリーラジカル重合開始剤(遊離基開始剤)によって開始される。原則として、これは、過酸化物あるいはアゾ化合物のいずれかであることができる。レドックス開始剤系を使用することも当然可能である。使用される過酸化物は、原則として、過酸化水素、またはペルオキソ二硫酸塩、例えば、ペルオキソ二硫酸のモノもしくはジ(アルカリ金属)もしくはアンモニウム塩(例えば、そのモノ、およびジナトリウム−カリウム、もしくはアンモニウム塩)などの無機過酸化物、またはアルキルヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物(例えば、tert−ブチル、p−メチル、またはクミルヒドロペルオキシド、あるいは過酸化ジアルキルまたはジアリールペルオキシド(例えば、過酸化ジ−tert−ブチルまたはジクミルペルオキシド)であることができる。実質的に使用されるアゾ化合物には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、および2、2’−アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩が含まれる(Wako ChemicalsのV−50に相当するAIBA)。レドックス開始剤系に使用できる酸化剤は、実質的に上述の過酸化物である。使用される相当する還元剤は、低酸化状態の硫黄化合物(例えば、亜硫酸カリウムおよび/または亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸アルカリ金属塩、亜硫酸水素カリウムおよび/または亜硫酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸カリウムおよび/またはメタ重亜硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属メタ重亜硫酸塩、カリウムノルムアルデヒドスルホキシレートおよび/またはナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどのホルムアルデヒドスルホキシレート、特に脂肪族スルフィン酸のカリウムおよび/またはナトリウム塩などのアルカリ金属塩、硫化水素カリウムおよび/または硫化水素ナトリウムなどのアルカリ金属硫化水素、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、リン酸第一鉄などの多価金属塩、ジヒドロキシマレイン酸、ベンゾインおよび/またはアスコルビン酸などのエンジオール、あるいはソルボース、グルコース、フルクトースおよび/またはジヒドロキシアセトンなどの還元性糖質を含むことができる。使用される遊離基開始剤の量は、一般的に、モノマーの全量に対して、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%、特に好ましくは0.2〜1.5質量%である。
【0161】
本発明によれば、適切な場合、重合器内で初期充填として、一部または全量の遊離基開始剤を使用することが可能である。しかし、適切な場合、重合条件下で、全量または残存量の遊離基開始剤を重合器に供給することも可能である。
【0162】
本発明によれば、場合により、当業者に公知のその他の助剤を使用することも可能であり、例は、増粘剤、消泡剤、中和剤、防腐剤、フリーラジカル連鎖移動化合物、および/または錯化剤として既知の助剤である。
【0163】
増粘剤またはレオロジー添加剤として公知の物質は、製造、取扱、保存、および適用時に、本発明で得られる水性コポリマー分散液のレオロジーを最適化するために、しばしば配合物の成分として使用される。種々の増粘剤が当業者に周知であり、例は、キサンタン増粘剤、グアー増粘剤(多糖)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース(セルロース誘導体)、アルカリ膨潤性分散液(アクリレート増粘剤)、または疎水修飾ポリエーテル系ポリウレタン(ポリウレタン増粘剤)などの有機増粘剤、またはベントナイト、ヘクトライト、スメクタイト、アタパルジャイト(ベントン)、あるいはチタン酸塩またはジルコン酸塩(金属オルガニル化合物)などの無機増粘剤である。
【0164】
本発明で得られる水性コポリマー分散液の製造、取扱、保存および適用時に発泡しないようにするために、消泡剤として公知の物質が使用される。消泡剤は、当業者に周知である。これらは、実質的に、鉱油消泡剤およびシリコーン油消泡剤である。消泡剤、特にシリコーンからなる高活性消泡剤の選択および添加は、これらがコーティング中に表面欠陥(クレーター、窪みなど)を引き起こす可能性があるために、一般的に十分な注意が必要である。重要因子は、消泡剤作用のさらなる増加が、疎水性シリカまたはワックス粒子などの非常に微細な疎水性粒子の消泡剤液への添加を介して達成することができることである。
【0165】
中和剤として当業者に周知の酸または塩基は、必要に応じて、本発明で得られる水性ポリマー分散液のpHを調整するのに使用することができる。
【0166】
当業者に周知の防腐剤または殺生物剤は、製造、取扱、保存および適用時の、細菌、(カビ)菌類、または酵母菌などの微生物による、本発明で得られる水性コポリマー分散液の発生を回避するために、頻繁に使用される。開裂して、ホルムアルデヒドを発生させる、ホルムアルデヒドまたは薬剤は、しばしば本明細書で使用され、メチル−およびクロロイソチアゾリノンまたはベンゾイソチアゾリノンからなる有効成分の組み合わせもまた使用される。
【0167】
重合反応を介して、本発明の水性コポリマー分散液の製造方法での上述の成分とともに得られるコポリマーの分子量を減少または制御するために、場合によりフリーラジカル連鎖移動化合物も使用することができる。本明細書で使用される物質は、実質的に、塩化n−ブチル、臭化n−ブチル、ヨウ化n−ブチル、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、ブロモホルム、ブロモトリクロロメタン、ジブロモジクロロメタン、四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル、臭化ベンジルなどの脂肪族および/または芳香族脂肪族ハロゲン化合物、第一、第二、または第三脂肪族チオールなどの有機チオ化合物(例えば、エタンチオール、n−プロパンチオール、2−プロパンチオール、n−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、n−ペンタンチオール、2−ペンタンチオール、3−ペンタンチオール、2−メチル−2−ブタンチオール、3−メチル−2−ブタンチオール、n−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、3−ヘキサンチオール、2−メチル−2−ペンタンチオール、3−メチル−2−ペンタンチオール、4−メチル−2−ペンタンチオール、2−メチル−3−ペンタンチオール、3−メチル−3−ペンタンチオール、2−エチルブタンチオール、2−エチル−2−ブタンチオール、n−ヘプタンチオールおよびその異性体化合物、n−オクタンチオールおよびその異性体化合物、n−ノナンチオールおよびその異性体化合物、n−デカンチオールおよびその異性体化合物、n−ウンデカンチオールおよびその異性体化合物、n−ドデカンチオールおよびその異性体化合物、n−トリデカンチオールおよびその異性体化合物、2−ヒドロキシエタンチオールなどの置換チオール、ベンゼンチオール、オルト−、メタ−、またはパラ−メチルベンゼンチオールなどの芳香族チオール、さらにPolymer Handbook 第3版,1989,J.Brandrup and E.H.Immergut,John Wiley & Sons,第II節,第133頁〜第141頁に記載される、いずれかの硫黄化合物、あるいはアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドおよび/もしくはベンズアルデヒドなどの脂肪族ならびに/または芳香族アルデヒド、オレイン酸などの不飽和脂肪酸、ジビニルメタンまたはビニルシクロヘキサンなどの非共役二重結合を有するジエン、またはトルエンなどの容易に抽出できる水素酸を有する炭化水素である。tert−ドデシルメルカプタン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、あるいはテルピノールを使用することが有利である(例えば、ドイツ特許公開第10046930号および同第10148511号を参照)。
【0168】
追加の任意の助剤の全量は、モノマーの全量に対して、一般に10質量%以下、5質量%以下、しばしば3質量%以下、および頻繁に2質量%以下である。
【0169】
本発明によれば、適切な場合、一部または全量の追加の任意の助剤を重合器内で初期充填として使用することが可能である。しかし、重合条件下で、全量、または適切な場合、残存量の追加の任意の助剤を、適切な場合、モノマー混合物またはこの混合物を含む水性モノマー乳剤の成分の形態で供給することも可能である。
【0170】
本発明のフリーラジカル開始水性乳化重合はまた、ポリマー種の存在下で、例えば、それぞれの場合にモノマーの全量に対して、0.01〜10質量%、頻繁に0.01〜5質量%、およびしばしば0.04〜3.5質量%のポリマー種の存在下で、場合により実施することができる。
【0171】
特に水性フリーラジカル乳化重合によって製造されるポリマー粒子サイズが制御されて設定される場合に、ポリマー種が使用される(これに関連して、一例として米国特許第2,520,959号および同第3,397,165号を参照)。
【0172】
使用される特定のポリマー種粒子は、狭い粒度分布および質量平均直径Dw100nm以下、頻繁に5nm以上〜50nm以下、およびしばしば15nm以上〜35nm以下を有する。質量平均粒子直径を測定する方法は、当業者に周知であり、一例として、分析用超遠心器法を使用する。本明細書では、質量平均粒子直径とは、分析用超遠心器法によって測定される質量平均Dw50値を意味する(これに関連して、S.E.Harding他著,Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science,Royal Society of Chemistry,Cambridge,Great Britain 1992,第10章,Analysis of Polymer Dispersions with an Eight−Cell−AUC−Multiplexer:High Resolution Particle Size Distribution and Density Gradient Techniques,W.Maechtle,147−175頁を参照)。
【0173】
本明細書の目的のために、狭い粒度分布は、質量平均粒子直径DW50の数平均粒子直径DN50に対する比[DW50/DN50]が分析用超遠心器法によって測定される、2.0以下、好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下または1.1以下であることを意味する。
【0174】
ポリマー種が使用される形態は、通常、水性ポリマー分散液の形態である。この場合、上述の量的データは、水性ポリマー分散液のポリマー固形分に基づいている。したがって、これらは、モノマーの全量に基づいて、ポリマー種固体の質量部の点で記載される。
【0175】
ポリマー種が使用される場合、異質ポリマー種を使用することが有利である。反応器内での実際の乳化重合の開始前に製造され、そのモノマー構造が後のフリーラジカル開始水性乳化重合を介して製造されるポリマーの構造と同じである、in situポリマー種として既知のポリマー種とは異なり、異質ポリマー種は、個別の反応手順で製造され、そのモノマーの構造が、フリーラジカル開始水性乳化重合を介して製造されるポリマーの構造と異なる、ポリマー種である。このことは単に、異なる構造を有する、異なるモノマーまたはモノマー混合物が、異質ポリマー種の製造、および水性ポリマー分散液の製造に使用されることを意味する。異質ポリマー種の製造は、当業者に周知であり、通常、比較的少量のモノマーおよび比較的大量の乳剤を反応器内で初期充填として使用し、反応温度で十分な量の重合開始剤を添加することによって進行する。
【0176】
本発明によれば、ガラス転移温度が、50℃以上、頻繁に60℃以上または70℃以上、およびしばしば80℃以上または90℃以上である、異質ポリマー種を使用することが好ましい。ポリスチレンポリマー種またはポリメチルメタクリレートポリマー種が特に好ましい。
【0177】
本発明によれば、適切な場合、重合器内で初期充填として、一部または全量の異質ポリマー種を場合により追加の助剤として使用することが可能である。しかし、全量または、適切な場合、残存量の異質ポリマー種を重合条件下で供給することも可能である。
【0178】
重合条件は、フリーラジカル開始水性乳化重合が十分な重合速度で進行する温度および圧力である。しかし、これは特に、使用される遊離基開始剤によって異なる。重合温度および重合圧力、遊離基開始剤の性質および量の選択は、好ましくは、遊離基開始剤の半減寿命が、3時間以下、特に有利に1時間以下、および非常に特に有利に30分以下である程度である。
【0179】
選択される遊離基開始剤に応じて、本発明のフリーラジカル水性乳化重合の反応温度は、0〜170℃の全範囲であることができる。一般的に、50〜150℃、特に60〜130℃、有利に70〜120℃の温度が本明細書で使用される。本発明のフリーラジカル水性乳化重合は、1atmより小さいか、等しいか、または大きい圧力で実行することができ、したがって、重合温度は100℃を超えることができ、最高170℃であることができる。エチレン、ブタジエン、または塩化ビニルなどの揮発性モノマーの存在下で、高圧力で重合することが好ましい。本明細書での圧力は、1.2、1.5、2、5、10、または15bar(絶対値)か、またはより高い圧力であることができる。乳化重合反応が減圧で実行される場合、圧力設定は、950mbar、頻繁に900mbar、およびしばしば850mbar(絶対値)である。本発明のフリーラジカル水性乳化重合は、高圧、かつ窒素またはアルゴンなどの不活性ガス下で、有利に実行される。
【0180】
本発明の方法のための方法は、一般的に、20〜25℃(室温)、かつ不活性ガス下で、脱イオン水、分散剤の一部、さらに適切な場合、モノマーA、Bおよび/またはC、ならびに遊離基開始剤の一部が重合器内で初期充填として使用され、初期充填混合物が攪拌によって適切な重合温度に加熱された後、残存量の脱イオン水および分散剤、ならびにさらに全量、または適切な場合、残存量のモノマーA、B、および/またはC、さらに遊離基開始剤が供給されるものである。モノマーA、Bおよび/またはCの添加、および遊離基開始剤、さらに本明細書のその他の成分の添加は、複数部分でバッチ式に、あるいは一定流量または変化流量で連続的に行うことができる。
【0181】
別の好ましい実施形態において、モノマーA〜Cは、2つのモノマー乳剤の形態で添加され、ここで第一のモノマー乳剤(モノマー乳剤1)は、モノマーの全量の60質量%以上を含むが、モノマーの全量Bの40質量%以下を含むのに対して、第二のモノマー乳剤(モノマー乳剤2)は、モノマーの全量の40質量%以下を含むが、モノマーBの全量の60質量%以上を含む。本発明の方法のための方法は、重合条件下で、第一のモノマー乳剤1、次いで、モノマー乳剤2が重合器へ導入されるものである。本発明によれば、適切な場合、モノマー乳剤1の一部が、重合器内で初期充填として使用され、全量、または適切な場合、残存量のモノマー乳剤1が、重合条件下で、複数部分でバッチ式に、または一定流量もしくは変化流量で連続的に重合器に添加されることが本明細書で可能である。その後、モノマー乳剤2は、重合条件下で、複数部分でバッチ式に、または一定流量もしくは変化流量で連続的に、重合器内へ供給される。モノマー乳剤1および2の添加は、好ましくは、一定流量で連続的に行われる。
【0182】
反応条件の選択および反応の実施は、有利に、フリーラジカル開始重合反応開始後に、各時点でのモノマー転化率が、この時点で重合混合物へ導入されるモノマーの全量に対して、80質量%以上、有利に90質量%以上、特に有利に95質量%以上であるように、モノマーA〜Cおよび遊離基開始剤が、重合器内の重合混合物へ導入され、これは、当業者に周知の反応−熱量測定を介して容易に検査することができるものである。
【0183】
原則として、少量(水全量に対して10質量%以下)の水溶性有機溶媒が本発明の方法で使用されることも可能であり、例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、さらにアセトンなどである。しかし、本発明の方法が、このような溶媒の非存在下で行なわれることが好ましい。
本発明の方法の反応の実施は、有利に、70質量%以上、好ましくは75質量%以上、および特に好ましくは80質量%以上のモノマーの全量が、重合条件下で重合混合物に供給された後で、60質量%以上〜95質量%以下、好ましくは60質量%以上〜90質量%以下、および特に好ましくは以上70質量%〜90質量%以下のモノマーBの全量が、重合条件下で重合混合物に供給されるものである。
【0184】
本発明の方法によって得られる水性コポリマー分散液のコポリマー固形分は、通常、それぞれの場合に水性コポリマー分散液に対して、10以上〜70質量%以下、頻繁に20以上〜65質量%以下、しばしば40以上〜60質量%以下である。準弾性光散乱(ISO標準13 321)によって測定される数平均粒子直径(キュムラントz平均)は、一般的に、10〜2000nm、頻繁に20〜300nm、およびしばしば30〜200nmである。
【0185】
本発明で得られる水性コポリマー分散液において、当業者に周知の化学および/または物理的方法[例えば、欧州特許公開第771328号,ドイツ特許公開第19624299号,同第19621027号,同第19741184号,同第19741187号,同第19805122号,同第19828183号,同第19839199号,同第19840586号,および同第19847115号を参照]を介して、無変換のモノマーA〜C、およびその他の低沸点化合物の残存物の含有量を減少させることも当然可能である。
【0186】
相当するコポリマー粉末を、さらに、本発明の水性コポリマー分散液(例えば凍結乾燥または噴霧乾燥によって)から容易に得ることができる。本発明の水性ポリマー分散は、本明細書では特に噴霧乾燥に適しており、固化する傾向はほとんどなく、さらに追加の噴霧補助なしでも、高い粉末収率を示す。
【0187】
本発明の成形材料は、追加成分として、0〜70質量%、好ましくは最高50質量%、特に最高40質量%の追加の添加物(C)を含むことができる。
【0188】
好ましい繊維強化材は、最高35質量%、好ましくは15〜35質量%の量の炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、アラミド繊維、および好ましくはガラス繊維である。ガラス繊維が使用される場合、これらは、サイズ、および例えば、熱可塑性ポリアミド(A)との適合性をさらに改善するためのカップリング剤を装えていた可能性がある。使用されるガラス繊維の直径は、一般的に6〜20μmである。
【0189】
これらのガラス繊維が組み込まれる形態は、短いガラス繊維の形態、あるいは、連続したフィラメントストランド(ロービング)の形態のいずれかであることができる。完成した射出成形でのガラス繊維の平均の長さは、好ましくは0.08〜0.5mmである。
【0190】
適切な粒子状充填剤は、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム(チョーク)、カオリン(特に焼成カオリン)、粉末状の石英、雲母、タルク、長石、特に珪灰石などのケイ酸カルシウムである。
【0191】
充填剤の好ましい組み合わせの例は、20質量%のガラス繊維と10〜15質量%の珪灰石、および15質量%のガラス繊維と15質量%の珪灰石である。
【0192】
一例として、その他の添加物C)は、最高30質量%、好ましくは1〜40質量%、特に10〜15質量%の量のエラストマー性ポリマー(しばしば、耐衝撃性改質剤、エラストマー、またはゴムとも呼ばれる)である。
【0193】
これらは、非常に一般的に、好ましくは少なくとも以下の2つのモノマー:アルコール成分中に1〜18個の炭素原子を有する、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、ならびにアクリレートおよび/またはメタクリレートからなるコポリマーである。
【0194】
この種類のコポリマーは、例えば、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,第14/1巻(Georg−Thieme出版,シュトゥットガルト,ドイツ,1961),392−406頁,及びC.B.Bucknallによるモノグラフ,"Toughened Plastics"(Applied Science Publishers,London,UK,1977)に記載される。
【0195】
いくつかの好ましいこのようなエラストマーの種類は、以下に記載される。
【0196】
このようなエラストマーの好ましい種類は、エチレンプロピレン(EPM)およびエチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴムとして知られているエラストマーである。
【0197】
一般的に、EPMゴムは、実際に残留二重結合を有していないのに対して、EPDMゴムは、炭素原子100個当たり1〜20個の二重結合を有する場合がある。
【0198】
EPDMゴム用のジエンモノマーを言及する可能性のある例は、イソプレンおよびブタジエンなどの共役ジエン、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、および1,4−オクタジエンなどの5〜25個の炭素原子を有する非共役ジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびジシクロペンタジエンなどの環状ジエン、さらに5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、および2−イソプロペニル−5−ノルボルネンなどのアルケニルノルボルネン、ならびに3−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]−3,8−デカジエン、ならびにこれらの混合物などのトリシクロジエンである。1,5−ヘキサジエン、5−エチリデンノルボルネン、およびジシクロペンタジエンが好ましい。EPDMゴムのジエン含有量は、ゴムの全質量に対して、好ましくは0.5〜50質量%、特に1〜8質量%である。
【0199】
EPMおよびEPDMゴムは、好ましくは反応性カルボン酸またはこれらの誘導体でグラフト化されてもよい。言及される可能性のあるこれらの例は、アクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、およびさらに無水マレイン酸である。
【0200】
アクリル酸および/もしくはメタクリル酸、ならびに/またはこれらの酸のエステルを有するエチレンのコポリマーは、別の群の好ましいゴムである。このゴムには、マレイン酸およびフマル酸、またはこれらの酸の誘導体などのジカルボン酸(例えば、エステルおよび無水物、ならびに/またはエポキシ基を含むモノマー)が含まれてもよい。ジカルボン酸誘導体を含むか、またはエポキシ基を含むこれらのモノマーは、ジカルボン酸基および/またはエポキシ基を含むモノマー混合モノマーに添加することによって、好ましくはゴムに組み込まれ、一般式I、II、IIIまたはIVを有する。
【0201】
【化12】

[式中、R1〜R9は、1〜6個の炭素原子を有する、水素またはアルキル基であり、mは、0〜20までの整数であり、gは、0〜10までの整数であり、pは、0〜5までの整数である]。
【0202】
基R1〜R9は、好ましくは水素であり、mが0または1、およびgが1である。相当する化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテル、およびビニルグリシジルエーテルである。
【0203】
式I、IIおよびIVの好ましい化合物は、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレート、ならびにtert−ブチルアクリレートなどの第3級アルコールを有するエステルなどのエポキシ基を含む、マレイン酸、無水マレイン酸、および(メタ)アクリレートである。後者は、フリーカルボキシ基を有さないが、これらの性質は遊離酸の性質に近く、したがって、これらは、潜在化カルボキシ基を有するモノマーと呼ばれる。
【0204】
コポリマーは、有利に、50〜98質量%のエチレン、0.1〜20質量%のエポキシ基および/またはメタクリル酸を含むモノマー、および/または無水物基を含むモノマーからなり、残存量は、(メタ)アクリレートである。
【0205】
50〜98質量%、特に55〜95質量%のエチレン、
1〜40質量%、特に0.3〜20質量%のグリシジルアクリレート、および/またはグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸および/または無水マレイン酸、ならびに
1〜45質量%、特に5〜40質量%のn−ブチルアクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレートからなるコポリマーが特に好ましい。
【0206】
その他の好ましい(メタ)アクリレートは、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、およびtert−ブチルエステルである。
【0207】
これらに加えて、使用される可能性のあるコモノマーは、ビニルエステルおよびビニルエーテルである。
【0208】
この上述のエチレンコポリマーは、それ自体公知の方法によって、好ましくは高圧および高温でのランダム共重合によって製造されてもよい。適切な方法は周知である。
【0209】
その他の好ましいエラストマーは、乳化ポリマーであり、その製造が、例えば、Blackleyのモノグラフ「乳化重合」に記載されている。使用することができる乳剤および触媒は、それ自体公知である。
【0210】
原則として、均質構造のエラストマー、あるいはシェル構造を有するエラストマーを使用することが可能である。シェル型構造が、個々のモノマーの連続添加によって決定され、ポリマーの形態もこの連続添加による影響を受ける。
【0211】
エラストマーのゴム分の製造用に、本明細書で単に代表として言及される可能性のあるモノマーは、n−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリレート、相当するメタクリレート、ブタジエンおよびイソプレン、ならびにさらにこれらの混合物である。これらのモノマーは、スチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテルなどのその他のモノマー、およびメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、またはプロピルアクリレートなどのその他のアクリレートもしくはメタクリレートと共重合化されてもよい。
【0212】
エラストマーの軟質相またはゴム相(0℃未満のガラス転移温度を有する)は、コア、外部シェル、または中間シェルであってもよい(構造が2つ以上のシェルを有するエラストマーの場合)。1つ以上のシェルを有するエラストマーは、ゴム相からなる2つ以上のシェルも有してもよい。
【0213】
エラストマー構造中に、ゴム相に加えて、1つ以上の硬成分(20℃を超えるガラス転移温度を有する)が含まる場合、これらは、一般的に、重合によって製造され、主なモノマーとして、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、またはメチルアクリレート、エチルアクリレートもしくはメチルメタクリレートなどのアクリレートもしくはメタクリレートがある。これらに加えて、比較的少ない割合のその他のコモノマーを使用することも可能である。
【0214】
いくつかの場合に、表面に反応基を有する乳化ポリマーを使用することが有利であることが分かった。この種類の基の例は、一般式のモノマーの併用によって導入される可能性のある、エポキシ、カルボキシ、潜在化カルボキシ、アミノおよびアミド基、ならびにさらに以下の一般式
【化13】

[式中、
10は、水素またはC1−C4−アルキル基であり、
11は、水素またはC1−C8−アルキル基またはアリール基、特にフェニル基であり、
12は、水素、C1−C10−アルキル基、C6−C12−アリール基、または−OR13であり、
13は、場合によりO−またはN−含有基によって置換される、C1−C8−アルキル基、またはC6−C12−アリール基であり、
Xは、化学結合、C1−C10−アルキレン基もしくはC6−C12−アリーレン基、または
【化14】

であり、
Yは、O−Z、またはNH−Zであり、
Zは、C1−C10−アルキレンまたはC6−C12−アリーレン基である]
のモノマーの併用によって導入されてもよい官能基である。
【0215】
欧州特許公開第208 187号に記載されるグラフトモノマーはまた、その表面で反応基を導入するのに適している。
【0216】
言及される可能性のあるその他の例は、(N−tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)メチルアクリレートおよび(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレートなどの、アクリルアミド、メタクリルアミドおよび置換アクリレートまたはメタクリレートである。
【0217】
また、ゴム相の粒子は架橋された可能性がある。架橋モノマーの例は、1,3−ブタジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートおよびジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、さらに欧州特許公開第50 265号に記載される化合物である。
【0218】
グラフト結合モノマーとして公知のモノマー、すなわち重合時に異なる速度で反応する、2つ以上の重合可能な二重結合を有するモノマーを使用することも可能である。少なくとも1つの反応基が、その他のモノマーとほぼ同じ速度で重合するのに対して、例えば、その他の反応基(または反応基)が、極めてゆっくりと重合する種類の化合物の使用が好ましい。異なる重合速度により、このゴム中で特定の割合の二重結合不飽和が発生する。その後、別の相が、この種類のゴムにグラフト化される場合、ゴム中に存在する少なくともいくつかの二重結合は、グラフトモノマーと反応して、化学結合を形成する、すなわち、グラフト化された相は、グラフト基剤に対して少なくともいくつかのある程度の化学結合を有する。
【0219】
この種類のグラフト結合モノマーの例は、アリル基、特にエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル(例えば、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレートおよびジアリルイタコネート、ならびにこれらのジカルボン酸の相当するモノアリル化合物)を含むモノマーである。これらに加えて、種々のその他の適切なグラフト結合モノマーがある。さらなる詳細に関しては、例えば、米国特許第4 148 846号が参照される。
【0220】
耐衝撃性改質ポリマーにおけるこれらの架橋モノマーの割合は、一般的に、耐衝撃性改質ポリマーに対して、最高5質量%、好ましくは3質量%以下である。
【0221】
いくつかの好ましい乳化ポリマーは、以下に記載されている。コアおよび少なくとも1つの外部シェルを有し、以下の構造を有する、グラフトポリマーを最初に本明細書で言及してもよい:
【表1】

【0222】
構造が1つ以上のシェルを有するグラフトポリマーの代わりに、また、均質の、すなわち、1,3−ブタジエン、イソプレンおよびn−ブチルアクリレート、またはこれらのコポリマーからなる単一シェル、エラストマーを使用することも可能である。これらの製品もまた、架橋モノマーまたは反応基を有するモノマーの併用によって製造されてもよい。
【0223】
好ましい乳化ポリマーの例は、n−ブチルアクリレート−(メタ)アクリル酸コポリマー、n−ブチル−アクリレート−グリシジルアクリレート、またはn−ブチル−アクリレート−グリシジルメタクリレートコポリマー、n−ブチルアクリレートからなるか、またはブタジエンを主成分とする内部コア、および上述のコポリマーからなる外部シェルを有するグラフトポリマー、ならびに反応基を提供するコモノマーを有するエチレンのコポリマーである。
【0224】
記載されるエラストマーはまた、その他の従来の方法、例えば、懸濁重合によって製造されてもよい。
【0225】
ドイツ特許公開第37 25 576号、欧州特許公開第235 690号、ドイツ特許公開第38 00 603号、および欧州特許公開第319 290号に記載されるシリコーンゴムも好ましい。
【0226】
上述の種類のゴムの混合物を使用することも当然可能である。
【0227】
従来のさらなる添加物C)の例は、安定剤および酸化抑制剤、熱による分解および紫外線による分解を妨げる薬剤、潤滑剤および離型剤、染料、色素、ならびに可塑剤である。
【0228】
一般的に、色素および染料からなる量は、最高4質量%、好ましくは0.5〜3.5質量%、および特に0.5〜3質量%である。
【0229】
熱可塑性プラスチックの着色用の色素は、公知である(例えば、R.Gaechter and H.Mueller,Taschenbuch der Kunststoffadditive,Carl Hanser出版,1983,第494頁〜第510頁を参照)。色素の最初の好ましい群は、酸化亜鉛、硫化亜鉛、白鉛(2PbCO3.Pb(OH)2)、リトポン、アンチモン白、および二酸化チタンなどの白色顔料群である。最も一般的に遭遇する二酸化チタンの2つの結晶形(ルチルおよびアナターゼ)の中で、特に、本発明の成形材料の白着色に使用されるのは、ルチル形である。
【0230】
本発明によって使用することができる黒色顔料は、黒色酸化鉄(Fe3O4)、黒色スピネル(Cu(Cr,Fe)2O4)、黒色マンガン(二酸化マンガン、二酸化ケイ素、および酸化鉄からなる混合物)、黒色コバルト、および黒色アンチモン、さらに特に好ましくは、ほとんどの場合ファーネスブラックまたはガスブラックの形態で使用されるカーボンブラック(これに関連して、G.Benzing,Pigmente fuer Anstrichmittel,Expert出版(1988),第78頁以降を参照)である。
【0231】
本発明によれば、緑色酸化クロムなどの無機有彩顔料、またはアゾ顔料またはフタロシアニン顔料などの有機有彩顔料を使用することによって、特定の色合いを達成することが当然可能である。この種類の色素は、広く市販されている。
【0232】
さらに、結果は一般的に、熱可塑性物質での色彩のより容易な分散液であることから、例えば、カーボンブラックと銅フタロシアニン顔料などの混合物として言及される、色素または染料を使用することは、有利であることができる。
【0233】
本発明に従って、熱可塑性材料に添加してもよい、酸化抑制剤および熱安定剤の例は、例えば、適切な場合、ハロゲン化銅(例えば、塩化物、臭化物、およびヨウ化物)との組み合わせによる、ハロゲン化物ナトリウム、ハロゲン化物カリウム、およびハロゲン化物リチウムなどの元素周期表の群Iの金属のハロゲン化物である。特に、銅のハロゲン化物は、さらに電子が豊富なp−リガンドを含むことができる。例えば、トリフェニルホスフィンとのCuハロゲン化物複合体は、これらの銅複合体の例として言及されてもよい。さらに、フッ化亜鉛および塩化亜鉛を使用することも可能である。さらに、適切な場合、混合物の質量に対して、好ましくは最高1質量%の濃度で、リン含有酸またはこれらの塩と、これらの化合物の混合物とが組み合わされた、立体障害性フェノール、ヒドロキノン、この群の代表的な置換基、第二級芳香族アミンを使用することも可能である。
【0234】
紫外線安定剤の例は、種々の置換レゾルシノール、サリチル酸塩、ベンゾトリアゾール、およびベンゾフェノンであり、一般的に使用される量は、最高2質量%である。
【0235】
最高1質量%の量の熱可塑性材料で一般的に使用される潤滑剤および離型剤は、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸アルキル、およびステアリン酸アミド、さらに長鎖脂肪酸を有するペンタエリスリトールのエステルである。さらに、カルシウム、亜鉛、またはアルミニウム、あるいはジステアリルケトンなどのジアルキルケトンなどのステアリン酸を使用することも可能である。
【0236】
添加物の中には、湿気および大気中の酸素の存在下で、赤リンの分解を阻害する安定剤もある。言及される可能性のある例は、カドミウム、亜鉛、アルミニウム、スズ、マグネシウム、マンガン、およびチタンの化合物である。特に適切な化合物の例は、言及される金属の酸化物、さらにカーボネートまたはオキシカーボネート、水酸化物、あるいは有機または無機酸の塩(例えば酢酸塩もしくはリン酸塩、またはリン酸水素塩)である。
【0237】
本明細書で言及されると考えられる唯一の難燃剤は、赤リン、およびポリマーとしてそれ自体公知のその他の難燃剤である。
【0238】
成分B)〜D)が存在する場合、本発明の熱可塑成形材は、スクリュー押出機、ブラベンダーミキサー、またはバンバリミキサーなどの従来の混合装置内で開始成分を混合することによって、それ自体公知の方法によって製造した後で、これらを押し出すことができる。本明細書の成分B)は、水性乳剤分散液の形態、またはコポリマー粉末の形態で、事前に混合するかまたは供給することができる。この押出物は、冷却および粉砕される。
【0239】
本発明の成形材料は、十分な耐衝撃性、および破損時の高引張ひずみなどの、改善された機械的性質を特徴とする。特に、これらは、問題のない熱可塑的加工性を有し、したがって繊維、シート、ならびに成形体の製造に適している。繊維強化成形材料は、非常に優れた表面を有しており、これらを車両建築での応用、および電気的および電子工学的応用に特に適切なものにしている。
【0240】
比較的高いエネルギー吸収が可能であることから、その他の好ましい応用分野は、衝突関連(自動車分野)への応用である。
【0241】
実施例
以下の成分を使用した:
成分A/1:
フェノールとo−ジクロロベンゼン1:1からなる混合物中の0.5質量パーセント濃度の溶液25℃において、DIN53728またはISO1628に従って測定される、粘度数VNが130mL/gであり、カルボキシ末端基含有量は34meq/kgである、ポリブチレンテレフタレート(PBT)。BASF製の市販の製品Ultradur(登録商標)B 4520を使用した。このPBTは、成分C1として、100質量%の成分Aに対して、0.65質量%の量のテトラステアリン酸ペンタエリスリトールを含む。
【0242】
成分A/2:
ナイロン−6,6、例えば、(ISO307に従って、0.5質量パーセント濃度の硫酸25℃中で測定された)150mL/gの粘度数を特徴とする、成分C/2として、A)に対して、Ciba製の0.2質量%のIrganox(登録商標)1098酸化防止剤を含むUltramid(登録商標)A3。
【0243】
【化15】

【0244】
成分A/3:
ナイロン−6、例えば、粘度数150mL/gを特徴とする、0.2質量%の成分C/2を含む、Ultramid(登録商標)B3。
【0245】
成分A/4:
ナイロン−6、例えば、粘度数150mL/gを特徴とする、Ultramid(登録商標)B3。
【0246】
成分C/3:
平均直径が10μmであるガラス繊維。
【0247】
成分C/4:
モンタン酸カルシウム。
【0248】
水性コポリマー分散液の製造
1)PBTコンパウンド用
コポリマー分散液B1(「TCON 134」)
脱イオン水1297g、および20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液50g(Cognis製のDisponil LDBS 20)を、MIC撹拌器および4供給装置を装えた、圧力5Lの反応器内で初期充填として、窒素下において室温で使用した。次いで、反応器の内容物を攪拌により80℃に加熱し、80℃に達した時点で、7質量パーセント濃度の水性過硫酸ナトリウム溶液101gを添加した。次いで、供給物1A全量を80分以内に、時間的推移および開始30分後に、供給物2を65分以内に、それぞれの場合に一定流量で連続的に供給した。供給物1Aの終了直後に、供給物1Bを開始し、15分以内に一定流量で連続的に供給した。次いで、反応器の内容物を、さらに80℃で5時間反応させ続けた。次いで、反応器の内容物を室温に冷却し、圧力器を大気圧に減圧させた。篩(メッシュ幅100マイクロメートル)経由でのろ過を介して、分散液から粗粒分を除去した。
【0249】
供給物1A
300gの脱イオン水
135gの20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液(Cognis製、Disponil LDBS 20)
45gのアクリロニトリル
817.5gのスチレン
37.5gのジビニルベンゼン(Merck製、65%の活性物質)
からなる均質乳剤。
【0250】
供給物1B
65gの脱イオン水、
15gの20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液(Cognis製、Disponil LDBS 20)、
20gのアクリロニトリル、
60gのスチレン、
20gのジビニルベンゼン(Aldrich製、65%の活性物質)
からなる均質乳剤。
【0251】
供給物2
57gの7質量パーセント濃度の水性過硫酸ナトリウム溶液。
【0252】
結果として生じた水性コポリマー分散液B1の固形分は、水性分散液全質量に対して、34.5質量%であった。ガラス転移温度を114℃と決定し、粒径を57nmと決定した。
【0253】
コポリマー分散液B2(「TCON 147」)
脱イオン水1297g、および20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液50g(Cognis製、Disponil LDBS 20)を、MIC撹拌器および4供給装置を備えた、5Lの圧力反応器内で初期充填として、窒素下において室温で使用した。次いで、攪拌により反応器の内容物を80℃に加熱し、80℃に達した時点で、0.75質量パーセント濃度の水性過硫酸ナトリウム溶液95gを添加した。次いで、供給物1A全量を80分以内に、時間的推移および開始30分後に、供給物2を65分以内に、それぞれの場合に一定流量で連続的に供給した。供給物1Aの終了直後に、供給物1Bを開始し、一定流量で連続的に15分以内に供給した。次いで、反応器の内容物を、80℃でさらに5時間反応させ続けた。次いで、反応器の内容物を室温に冷却し、圧力器を大気圧に減圧した。篩(メッシュ幅100マイクロメートル)経由でのろ過を介して、粗粒分を分散液から除去した。
【0254】
供給物1A
300gの脱イオン水
135gの20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液(Cognis製、Disponil LDBS 20)
862.5gのスチレン
37.5gのジビニルベンゼン(Merck製、65%の活性物質)
からなる均質乳剤。
【0255】
供給物1B
65gの脱イオン水
15gの20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液(Cognis製、Disponil LDBS 20)
20gのメチルメタクリレート
60gのスチレン
20gのジビニルベンゼン(Aldrich製、65%の活性物質)
からなる均質乳剤。
【0256】
供給物2
53gの0.95質量パーセント濃度の水性過硫酸ナトリウム溶液。
【0257】
結果として生じた水性コポリマー分散液B2の固形分は、水性分散液全質量に対して、34.2質量%であった。ガラス転移温度を120℃と決定し、粒径を77nmと決定した。
【0258】
コポリマー分散液B3(「TCON 150」)
脱イオン水1297g、および20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液(Cognis製、Disponil LDBS 20)50gを、MIC撹拌器および4供給装置を備えた、5Lの圧力反応器内で初期充填として、窒素下において室温で使用した。次いで、反応器の内容物を、攪拌により80℃に加熱し、80℃に達した時点で、7質量パーセント濃度の水性過硫酸ナトリウム溶液101gを添加した。次いで、供給物1A全量を70分以内に、時間的推移および開始30分後に、供給物2を70分以内に、それぞれの場合に一定流量で連続的に供給した。供給物1Aの終了直後に、供給物1Bを開始し、30分以内に一定流量で連続的に供給した。次いで、反応器の内容物を、80℃でさらに5時間反応させ続けた。次いで、反応器の内容物を室温に冷却し、圧力器を大気圧に減圧した。篩(メッシュ幅100マイクロメートル)経由でのろ過を介して、粗粒分を分散液から除去した。
【0259】
供給物1A
235gの脱イオン水
120gの20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液(Cognis製、Disponil LDBS 20)
760gのスチレン
40gのジビニルベンゼン(Merck製、65%の活性物質)
からなる均質乳剤。
【0260】
供給物1B
130gの脱イオン水
30gの20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液(Cognis製、Disponil LDBS 20)
40gのメチルメタクリレート
120gのスチレン
40gのジビニルベンゼン(Aldrich製、65%の活性物質)
からなる均質乳剤。
【0261】
供給物2
57gの7質量パーセント濃度の水性過硫酸ナトリウム溶液。
【0262】
結果として生じた水性コポリマー分散液B3の固形分は、水性分散液全質量に対して34.6質量%であった。ガラス転移温度を122℃と決定し、粒径を85nmと決定した。
【0263】
2)PAコンパウンド用
コポリマー分散液B4(「TCON 102」)
脱イオン水1297g、および20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液(Cognis製、Disponil LDBS 20)50gを、MIC撹拌器および4供給装置を備えた、5Lの圧力反応器内で初期充填として、窒素下において室温で使用した。次いで、反応器の内容物を、攪拌により80℃に加熱し、80℃に達した時点で、7質量パーセント濃度の水性過硫酸ナトリウム溶液101gを添加した。次いで、供給物1の全量を、90分以内に、時間的推移および開始30分後に、供給物2を、60分以内に、それぞれの場合に一定流量で連続的に供給した。次いで、反応器の内容物を、80℃でさらに5時間反応させ続けた。次いで、反応器の内容物を室温に冷却し、圧力器を大気圧に減圧した。篩(メッシュ幅100マイクロメートル)経由でのろ過を介して、粗粒分を分散液から除去した。
【0264】
供給物1
350gの脱イオン水
150gの20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液(Cognis製、Disponil LDBS 20)
950gのスチレン
50gのジビニルベンゼン(Merck製、65%の活性物質)
からなる均質乳剤。
【0265】
供給物2
57gの7質量パーセント濃度の水性過硫酸ナトリウム溶液。
【0266】
結果として生じた水性コポリマー分散液B4の固形分は、水性分散液全質量に対して33.3質量%であった。ガラス転移温度を119℃と決定し、粒径を52nmと決定した。
【0267】
コポリマー分散液B5(「TCON 177+178」)
供給物1A、1Bおよび2に、以下の構造を選択した点以外は、コポリマー分散液Daaの製造と同様に、コポリマー分散液Dxyを製造した。
【0268】
供給物1A
300gの脱イオン水
135gの20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液(Cognis製、Disponil LDBS 20)
862.5gのスチレン
37.5gジビニルベンゼン(Merck製、65%の活性物質)
からなる均質乳剤。
【0269】
供給物1B
65gの脱イオン水
15gの20質量パーセント濃度の水性アルキルアリルスルホン酸溶液(Cognis製、Disponil LDBS 20)
20gのグリシジルメタクリレート
60gのスチレン
20gのジビニルベンゼン(Aldrich製、65%の活性物質)
からなる均質乳剤。
【0270】
供給物2
57gの7質量パーセント濃度の水性過硫酸ナトリウム溶液。
【0271】
結果として生じた水性コポリマー分散液B5の固形分は、水性分散液全質量に対して35.1質量%であった。ガラス転移温度を119℃と決定し、粒径を80nmと決定した。
【0272】
固形分を、一般的に、それぞれの定義された量の水性コポリマー分散液(約5g)を、乾燥キャビネット内で140℃で一定質量に乾燥させることによって測定した。2つの独立した測定を実行した。実施例に記載される値は、これらの2つの試験結果の平均である。
【0273】
ガラス転移温度を、DIN53765に従って、Mettler−Toledo Int.Inc.製、DSC820装置、シリーズTA8000で決定した。
【0274】
ポリマー粒子の平均直径を、英国、Malvern lnstruments製、Autosizer IICによって、23℃、0.005〜0.01質量パーセント濃度の水性ポリマー分散液上の動的光散乱を介して測定した。記載される値は、測定される自己相関関数(ISO標準13321)からの累積評価(累積率z平均)の平均直径である。
【0275】
噴霧乾燥ポリマー粉末の製造
噴霧乾燥を、二流体ノズル噴霧および繊維性フィルター内の粉末堆積を有する、GEA Wiegand GmbH(Niro部門)からのマイナー実験室乾燥機内で行った。塔への入り口での窒素の温度は130℃であり、出口温度は60℃であった。1時間当たり2kgの噴霧供給を供給した。
【0276】
使用される噴霧供給には、分散液B1、B2、B3、B4、およびB5が含まれており、これは脱イオン水を使用して、25質量%の固形分に事前に調整したものであった。
【0277】
噴霧供給と同時に、噴霧供給の固形分に対して、0.4質量%の疎水性ブロッキング防止剤Sipernate(登録商標)D 17を、質量を制御された二軸経由で、噴霧塔の先端に連続的に供給した。
【0278】
Degussaからの疎水性ブロッキング防止剤Sipernat(登録商標)D 17は、比表面積(Annex DのISO5794−1に基づく)が100m2/gであり、7マイクロメートルの平均粒径(ASTM C690−1992に基づく)および150g/Lのかさ密度(ISO787−11に基づく)を有する沈降シリカであり、その表面を、特定のクロロシランでの処理を介して疎水化した。
【0279】
噴霧乾燥によって、以下の収率:B1:91%、B2:92%、B3:92%、B4:79%、およびB5:92%の相当する分散粉末が生じた。
【0280】
成形材料の製造
成分B)を、
a)PBTおよびPA6に関しては260℃、
b)ナイロン−6,6に関しては280℃
の温度で、二軸押出機(ZSK 30)で調合した。
【0281】
以下の機械的試験を行った。
ISO 527−2 引張試験
ISO 179−2/1 23℃、相対湿度50%でのeU屈曲衝撃試験
ISO 179−2 −30℃での屈曲衝撃試験、
ISO 179−2/1 23℃、相対湿度50%でのeA(S)屈曲衝撃試験
成形材料の構造および試験結果を以下の表に示す。
【0282】
第1表:ポリエステル成形材料
【表2】

【0283】
第2表:ポリアミド
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性成形材料であって、
A)熱可塑性ポリマー10〜99.9質量%と、
B)コポリマー0.01〜10質量%と、
C)追加の添加物0〜70質量%と
を含み、前記成分A)〜C)の質量パーセントの合計が100%になり、前記コポリマーが、少なくとも1つの分散剤、および少なくとも1つの遊離基開始剤の存在下で、エチレン性不飽和モノマーのフリーラジカル開始水性乳化重合を介して、供給プロセスにより得られ、その乳化重合のために、
α、β−モノエチレン性不飽和化合物[モノマーA]70〜99.5質量%、および
少なくとも2つのフリーラジカル共重合が可能なエチレン性不飽和基を有する化合物[モノマーB]0.5〜30質量%、ならびに場合により
3〜6個の炭素原子を有する、α,β−モノエチレン性不飽和モノ−またはジカルボン酸および/またはこれらのアミド[モノマーC]5質量%まで
が使用され、前記のモノマーA〜Cが合計100質量%(モノマーの全量)となり、そのモノマーの全量の60質量%以上が、重合条件下で、重合混合物に供給された後の時点で、モノマーBの全量の60質量%以上が、重合条件下で、重合混合物に供給されるようにモノマーの供給が行われる、熱可塑性成形材料。
【請求項2】
1〜20質量%のモノマーBが、成分B)の製造に使用される、請求項1に記載の成形材料。
【請求項3】
2〜10質量%のモノマーBが、成分B)の製造に使用される、請求項1または2に記載の成形材料。
【請求項4】
モノマーBの全量の60質量%以上で95質量%以下が、成分B)の製造に供給される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の成形材料。
【請求項5】
Bの製造時に、モノマーの全量の70質量%以上が、重合条件下で、重合混合物に供給された後の時点で、前記モノマーBが供給される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の成形材料。
【請求項6】
前記モノマーAおよび前記モノマーCの性質および量が、これらのモノマーのみからなるコポリマーB)のガラス転移温度が40℃以上であるように選択される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の成形材料。
【請求項7】
成分A)〜C)の配合時に、成分B)が、水性分散液形態または粉末形態で添加される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の成形材料。
【請求項8】
いずれかの種類の成形体、繊維、ならびにシートを製造するための、請求項1から7までのいずれか1項に記載の成形材料の使用。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料から得られる成形体。

【公表番号】特表2010−506020(P2010−506020A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531808(P2009−531808)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060419
【国際公開番号】WO2008/043683
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】