説明

高機能造粒炭及びその製造方法

【課題】 優れた機能を発揮する高機能造粒炭とその製造方法を提供すること。
【解決手段】 粉末活性炭と機能性固体粉末と結合剤を混練、造粒、硬化してなる造粒炭であって、該固体粉末が水不溶性の固体粉末であり、該結合剤が0〜200℃かつ機能性固体粉末の融解温度未満で硬化する結合剤であることを特徴とする高機能造粒炭とその製造方法によって上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高機能造粒炭及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、粉末活性炭と機能性固体粉末と結合剤を混練、造粒、硬化してなる造粒炭であって、該固体粉末が水不溶性の固体粉末であり、該結合剤が0〜200℃かつ機能性固体粉末の融解温度未満で硬化する結合剤である高機能造粒炭とその製造方法に関する。
【0002】
本発明の高機能造粒炭は、活性炭単味では成し得ない高機能を発揮することができるので、酸性ガス、アルデヒドガス、塩基性ガス、硫黄系の中性ガス、これらの混合ガス除去用など排ガス処理分野の他、抗菌・抗ウイルス用など各種の分野で有用である。
【背景技術】
【0003】
近年、活性炭に求められる機能は多様化の一途を辿っており、活性炭に特有な細孔を活用した有機化合物の吸着除去機能をベ−スとしながらも、無機性の酸性ガス、塩基性ガス及び硫黄系の中性ガスの除去機能、シックハウス対応等のアルデヒド除去機能、タバコの煙を含む空気浄化機能、抗菌、抗ウイルス機能など多岐に亘る機能を並行して満たすべく、多機能を含め、高機能化が強く求められているが、未だ十分なものは見出されていない。
【0004】
活性炭の高機能化を実現する有力な手法の一つとして、従来から、各種化合物を活性炭に添着する技術が知られている。この技術は、各種機能を有する薬剤を水溶液又は有機溶媒に溶解した溶液を活性炭に振り掛け、含浸させることによって活性炭に機能を付与するものであり、このようにして得られた添着炭は高機能を発揮することが知られている。
【0005】
しかしながら、添着炭には以下のような幾多の課題が存在し、高機能化要求への対応策としては未だ満足なものとは言い難い。
(1)薬剤により活性炭の細孔が閉塞され、活性炭が本来有する有機化合物の吸着性能が低下する。
(2)薬剤は、水又は有機溶媒に可溶なものに限定される。
(3)活性炭に薬剤を含浸させた後、水又は有機溶媒を除去する必要があり、工程が煩雑で溶媒除去用のユーティリティー使用量も大きい。また、有機溶媒を使用する場合は大気汚染防止を考慮した溶媒回収設備が必要となる。
(4)薬剤により活性炭の細孔が閉塞されるので、薬剤の添着量が制限される。
(5)溶液状態で不安定な薬剤や相互に反応する薬剤は使用できない。
【0006】
一方、添着技術に依らずに高機能を発揮するものとして、造粒炭が知られている。造粒炭は、結合剤を用いて活性炭と各種薬剤などを混練し、硬化させて造粒されるので、上記のような添着炭の問題を生ずることなく高機能化できることが期待される。
【0007】
造粒炭に関しては、例えば、活性炭粉末に、ナフタレンスルホン酸ソ−ダのホルマリン縮合物の水溶液、アスファルトのスルホン化物の水溶液、樹脂状炭化水素のスルホン化物の水溶液を混合、成型、加熱、焼成して成型活性炭を製造する方法が知られており、得られた成型活性炭は、吸着力の低下が少なく、高強度であるとされている(特許文献1)。
【0008】
また、造粒炭の別の例として、粒径が150μm以下の粉末炭と、平均粒径が粉末炭の平均粒径の1/5〜1/20で、10μm以下の熱的及び化学的に安定な固体粉末と結合剤からなる造粒活性炭が提案されており、活性炭の吸着性能を大きく低下させることなく、機械的強度を適度に調節可能であることが記載されている(特許文献2)。
【0009】
また、造粒炭の別の例として、賦活した微細活性炭と、イオン交換体のイオン交換基に銀イオンをイオン交換させた抗菌剤に、バインダを加えて得た均一混合物を粒状に焼結した抗菌能の持続性に優れた抗菌活性炭が開示されている(特許文献3)。
【0010】
さらに、造粒炭の別の例として、粒子径が50μm以下の銀又は銀化合物を0.03〜3.0重量%含有する抗菌活性炭も開示されている(特許文献4)。
【0011】
しかしながら、これらのいずれにおいても、造粒炭を製造するのに、硬化温度の高い結合剤が用いられており、造粒後の硬化工程において高温で処理される。その際、共存する機能性固体の劣化、分解、飛散等を伴い、機能性の低下、活性炭の細孔閉塞等が併発し製造された造粒炭は、高機能性という点で劣るものとなる。
【0012】
一方、硬化温度の低い結合剤を用いた造粒炭も知られており、粉末活性炭に、結合剤としてアクリル系などの結合剤とカルボキシメチルセルロース系などの2種の混合剤を用いて造粒された造粒炭が開示されている(特許文献5)。しかしながら、この造粒炭は、活性炭と結合剤のみから構成されており、高機能性という点で満足なものではない。
【0013】
最近、硫酸鉄、消石灰及び活性炭を含む固形組成物が開示され、脱臭効果に優れることが報告されている(特許文献6)。また、さらに腐植質土壌を含む固形脱臭組成物も開示されている(特許文献7)。これらの文献には、バインダーとして、ポリビニルアルコール、ウレタン樹脂及び生分解性樹脂が具体的に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭62−52116号公報
【特許文献2】特開平5−262511号公報
【特許文献3】特開平5−84439号公報
【特許文献4】特開平11−278823号公報
【特許文献5】特開2004−10434公報
【特許文献6】特開2008−194619公報
【特許文献7】特開2008−272225公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上述べたように、上記した特許文献1〜5の造粒炭では、高機能化という点で不十分であり、無機性の酸性ガス、塩基性ガス、アルデヒドガス、硫黄系の中性ガスなど各種の有害ガス除去機能に優れ、また混合ガスの処理など多機能に優れた高機能造粒炭の要求は満足されない。
【0016】
特許文献6及び7においては機能性固体に相当する消石灰が用いられているが、機能性固体粉末と結合剤とが特定の関係を満足するように調製して高機能造粒炭を得ることは具体的に記載されておらず、示唆されてもいない。
【0017】
したがって、本発明の目的は、優れた機能を発揮する高機能造粒炭とその製造方法を提供することにある。さらに具体的に述べると、活性炭に本来存在しない機能が付与された造粒炭、及び活性炭が本来有していてもその性能が目標を満足しない機能が強化された造粒炭とその製造法を提供するものである。本発明における高機能という意味は、多機能も含めた意味で使用される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、活性炭粉末に添加する機能性固体粉末と結合剤が特定の関係を満足するように調製して得られた造粒炭が上記目的に適うものであることを見出し本発明に至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
【0019】
[1] 粉末活性炭と機能性固体粉末と結合剤を混練、造粒、硬化してなる造粒炭において、該固体粉末が水不溶性の固体粉末であり、該結合剤が0〜200℃かつ機能性固体粉末の融解温度未満で硬化する結合剤であることを特徴とする機能性造粒炭。
[2] 該粉末活性炭の粒径が100μm以下である[1]記載の機能性造粒炭。
[3] 該粉末活性炭の比表面積が500〜2500m/gである[1]又は[2]記載の機能性造粒炭。
[4] 該固体粉末が、(A)周期表2A族若しくは2B族に属する金属の水酸化物又は炭酸塩、(B)高級脂肪酸、アルギン酸又はスルホン酸型イオン交換樹脂、(C)スルファニル酸、メタニル酸又はオルタニル酸、及び(D)周期表2A族若しくは2B族に属する金属の酸化物、ヨウ素又はキトサン、からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である[1]〜[3]いずれかに記載の多機能性造粒炭。
[5] 該固体粉末の粒径が、粉末活性炭の平均粒径と同等またはそれ以下である[1]〜[4]いずれかに記載の多機能性造粒炭。
[6] 該周期表2A族若しくは2B族に属する金属が、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛である[1]〜[5]いずれかに記載の高機能造粒炭。
[7] 該高級脂肪酸が、ステアリン酸又はパルミチン酸である[1]〜[6]いずれかに記載の高機能造粒炭。
[8] 該結合剤が、自己架橋型のアクリル酸エステル系共重合体水性エマルジョンである[1]〜[7]いずれかに記載の高機能造粒炭。
[9] 粉末活性炭100重量部に対して機能性固体粉末0.5〜200重量部を配合し、結合剤を加えて混練し、造粒した後、硬化させることを特徴とする高機能造粒炭の製造方法。
[10] 該粉末活性炭100重量部に対してさらに滑材を0.1〜10重量部配合して混練する[9]記載の高機能造粒炭の製造方法。
[11] 該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の水酸化物又は炭酸塩である[1]〜[8]いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス除去用高機能造粒炭。
[12] 該周期表2A族又は2B族に属する金属が、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛である[11]記載の高機能造粒炭。
[13] 該機能性固体粉末が、高級脂肪酸、アルギン酸又はスルホン酸型イオン交換樹脂である[1]〜[8]いずれかに記載の造粒炭でなる塩基性ガス除去用高機能造粒炭。
[14] 該高級脂肪酸が、ステアリン酸又はパルミチン酸である[13]記載の高機能造粒炭。
[15] 該機能性固体粉末が、スルファニル酸、メタニル酸又はオルタニル酸である[1]〜[8]いずれかに記載の造粒炭でなるアルデヒドガス除去用高機能造粒炭。
[16] 該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物である[1]〜[8]いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
[17] 該機能性固体粉末が、ヨウ素である[1]〜[8]いずれかに記載の造粒炭でなる硫黄系の中性ガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
[18] 該機能性固体粉末が、キトサンである[1]〜[8]いずれかに記載の造粒炭でなるアルデヒドガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
[19] 該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の水酸化物又は炭酸塩とスルファニル酸からなる[1]〜[8]いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス及びアルデヒドガス除去用高機能造粒炭。
[20] 該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とスルファニル酸からなる[1]〜[8]いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス、アルデヒドガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
[21] 該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とキトサンとアルギン酸からなる[1]〜[8]いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス、塩基性ガス、アルデヒドガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
[22] 該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とスルファニル酸とスルホン酸型イオン交換樹脂からなる[1]〜[8]いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス、アルデヒドガス、塩基性ガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
[23] 該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とキトサンと高級脂肪酸とヨウ素からなる[1]〜[8]いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス、アルデヒドガス、塩基性ガス、硫黄系の中性ガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
[24] 該周期表2A族又は2B族に属する金属が、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛である[19]〜[23]いずれかに記載の高機能造粒炭。
[25] 該高級脂肪酸が、ステアリン酸又はパルミチン酸である[23]記載の高機能造粒炭。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、粉末活性炭と、水不溶性の固体粉末と、0〜200℃かつ該固体粉末の融解温度未満で硬化する結合剤を混練、造粒、硬化してなる造粒炭とその製造方法を提供することができる。本発明の造粒炭は、活性炭単味では成し得ない多機能を含めた高機能という点で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】硫化水素ガスの平衡濃度と吸着量から作成した吸着等温線である。
【図2】アセトアルデヒドガスの平衡濃度と吸着量から作成した吸着等温線である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の造粒炭は、粉末活性炭と、機能性固体粉末と、結合剤を混練、造粒、硬化させることによって得ることができる。本発明で用いる粉末活性炭としては特に限定されず、炭素質材料を充分に炭化した後、ガス賦活、薬剤賦活などの方法で賦活して得られる活性炭を使用することができる。活性炭を製造するための原材料である炭素質材料はとくに制限されず、鉱物系材料、植物系材料、合成系材料などが用いられる。
【0023】
鉱物系材料としては、石炭、ピッチ、コ−クスなどの石炭・石油材料が挙げられる。植物系材料としては、木材、木炭、ヤシ殻などの果実殻及び各種繊維が挙げられる。
【0024】
合成系材料としては、各種合成樹脂が挙げられる。具体的には、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ビニロンなどのポリビニルアルコ−ル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノ−ル系樹脂、塩化ビニル樹脂などを例示することができる。
【0025】
各種繊維としては、木綿、麻などの天然繊維、レ−ヨン、ビスコ−スレ−ヨンなどの再生繊維、及びアセテ−ト、トリアセテ−トなどの半合成繊維を挙げることができる。各種繊維から製造される活性炭は適宜粉砕されて粉末状で使用される。
【0026】
炭素質材料のうち、鉱物系材料、植物系材料及び合成系材料が好ましく、なかでも、石炭、ヤシ殻、フェノ−ル系樹脂が好ましく使用される。炭素質材料は2種以上を混合して使用してもよい。炭素質材料の形状は、特に限定されず、粒状、粉末状、繊維状、シ−ト状など種々の形状の材料を使用することができる。粒状の材料は破砕状または造粒品でもよい。繊維状及びシ−ト状の炭素質材料としては織布,不織布、フィルム、フェルト、紙、成形板などのシ−ト加工品が挙げられるが、いずれも粉砕されて粉末状で使用される。
【0027】
活性炭は、炭素質材料を炭化し、賦活することによって製造することができる。炭化する条件は特に限定されないが、例えば、粒状の炭素質材料の場合は、回分式ロ−タリ−キルンに少量の不活性ガスを流しながら300℃以上の温度で処理するなどの条件を採用することができる。
【0028】
炭素質材料を炭化した後、炭化された炭素質材料を賦活することによって活性炭を得ることができるが、賦活方法は、ガス賦活、薬剤賦活などいずれの方法を採用してもよい。機械的強度が高く、上記所定の細孔径を有する活性炭を得るという点においては、ガス賦活法が好ましい。ガス賦活法において使用されるガスとしては、水蒸気、炭酸ガス、酸素、LPG燃焼排ガス、またはこれらの混合ガスなどを挙げることができる。安全性及び反応性を考慮すると、水蒸気を10〜50容量%含有する水蒸気含有ガスが好ましい。
【0029】
賦活温度は700℃〜1100℃、好ましくは800℃〜1000℃である。しかし、賦活時間、昇温速度は特に限定されず、選択する炭素質材料の種類、形状、サイズ、所望の細孔径分布などにより異なる。賦活して得られた活性炭は、そのまま使用してもよいが、酸洗浄、水洗浄などにより、付着成分を除去して使用することが好ましい。
【0030】
このようにして得られた活性炭は、上記炭素質材料の形状に応じて、粒子状、シ−ト状などの形状となるため、これを粉砕して使用する。粉末活性炭の粒径は100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。粉砕手段としては特に限定されず、ボールミル、各種クラッシャー、ロールミルなど公知の粉砕手段を使用することができる。
【0031】
本発明に用いる粉末活性炭の比表面積は、500〜2500m/gが好ましく、700〜2000m/gの範囲にあるものがより好ましい。活性炭の比表面積がこの範囲より小さいと、活性炭が有する本来の有機化合物の吸着除去機能が充分に機能しないことがある。一方、活性炭の比表面積がこの範囲より大きいと、造粒、硬化の工程で共存する結合剤による細孔閉塞を生起し、有機化合物の吸着除去に悪影響を及ぼすことがあり、また、活性炭の製造が難しく、高コストの活性炭となるので好ましくない。
【0032】
本発明で用いる機能性固体粉末は高機能化を付与するために必要な成分であり、水不溶性の有機、無機の機能性固体粉末が用いられる。本発明における水不溶性の有機、無機の機能性固体粉末には、水に全く溶解しないものだけでなく、わずかに水に溶解するが、実質上水不溶性と見なされるものも含まれる。機能性固体粉末が水不溶性の性質を有することにより、造粒炭が高湿度環境下で使用される場合でも、吸水による装置の圧損上昇などの装置トラブルを回避することができる。
【0033】
有機、無機の機能性固体粉末としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどの金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛などの金属水酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ドロマイト、カキ殻、ホタテ貝殻などの金属炭酸塩、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの高級脂肪酸、アルギン酸、キトサンなどの多糖類、スルホン酸型イオン交換樹脂、塩化銀、銀イオン交換ゼオライトなどの金属塩、ヨウ素などのハロゲン化物、無水リン酸、シリカ、シリカアルミナなどの有機、無機の固体酸、スルファニル酸、メタニル酸、オルタニル酸、m−アミノ安息香酸、P-トルイジン、ベンジジン、ジフェニルアミン、メチル尿素、ヒダントイン、パラバン酸、尿酸などの固体アミン、尿素類、複素環式化合物類、チタノシリケ−トなどの特定細孔を保持する鉱物類の粉末を例示することができる。これらは、結合剤と特定の関係を満足するように適宜組み合わされて使用される。
【0034】
機能性固体粉末を得るための粉砕手段としては特に限定されず、前述した公知の粉砕手段を使用することができる。機能性固体粉末の粒径は、粉末活性炭の平均粒径と同等またはそれ以下であるのが好ましい。
【0035】
機能性固体粉末としては、(A)周期表2A族若しくは2B族に属する金属の水酸化物又は炭酸塩、(B)高級脂肪酸、アルギン酸又はスルホン酸型イオン交換樹脂、(C)スルファニル酸、メタニル酸又はオルタニル酸、及び(D)周期表2A族若しくは2B族に属する金属の酸化物、ヨウ素又はキトサン、からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いるのが好ましい。
【0036】
周期表2A族若しくは2B族に属する金属としては、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛が好ましく、これらは混合して使用してもよい。高級脂肪酸としては、ステアリン酸又はパルミチン酸が好ましく、これらは混合して使用してもよい。
【0037】
本発明で用いる結合剤としては、0〜200℃、好ましくは0〜150℃、より好ましくは0〜120℃かつ機能性固体粉末の融解温度未満で硬化する結合剤を用いる必要がある。このような結合剤としては、自己架橋型のアクリル酸エステル系共重合体水性エマルジョン、フェノール樹脂系水性エマルジョンなどを挙げることができるが、なかでも、自己架橋型アクリル酸エステル系共重合体水性エマルジョンが好ましい。
【0038】
自己架橋型アクリル酸エステル系共重合体水性エマルジョンの具体例としては、日本カ−バイド工業株式会社製の商品名「ニカゾ−ル」や日本ゼオン株式会社製の商品名「Nipol」等を例示することができる。アクリル酸エステル系共重合体水性エマルジョンとしては、一般に50%前後の固形分含有品が好ましく用いられる。
【0039】
本発明の高機能性造粒炭は、粉末活性炭100重量部に対して、機能性固体粉末0.5〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは3〜100重量部を配合し、結合剤10〜50重量部、好ましくは15〜40重量部の割合で加えて混練し、造粒した後、硬化させることによって製造することができる。
【0040】
機能性固体粉末の配合量が0.5重量部よりも少ないと、効果の発現が少なく、200重量部を超えると活性炭本来の吸着能や硬化後の製品強度が低下する傾向になるので、好ましくない。また、結合剤の配合量が10重量部未満では最終の造粒、硬化後の製品の強度が充分でないことがあり、配合量が50重量部を超えると粉末活性炭の吸着能に悪影響が及ぶことがあり好ましくない。
【0041】
混練する際に、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、高級脂肪酸及びその塩などの滑材0.5〜5重量部を添加して混錬すると流動性が向上し、加工性の点で好ましい。更に得られた混練物に水100〜200重量部を添加して均一に混合し、該混合物をリングダイスや油圧押出しにより造粒する。この造粒物を加熱処理して硬化することによって本発明の多機能性造粒炭を製造することができる。硬化処理の時間は硬化温度及び各種成分の配合割合などにより一概に決めることはできないが1〜12時間程度を目安として設定することができる。
【0042】
機能性固体粉末として、周期表2A族若しくは2B族に属する金属の水酸化物又は炭酸塩を用いて造粒された造粒炭は、塩酸、硝酸、硫化水素、メルカプタン、短鎖カルボン酸等を含有する酸性ガスの除去に有効である。周期表2A族又は2B族に属する金属としては、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛が好ましい。周期表2A族若しくは2B族に属する金属の水酸化物又は炭酸塩は混合して使用してもよい。
【0043】
また、機能性固体粉末として、高級脂肪酸、アルギン酸又はスルホン酸型イオン交換樹脂を用いて造粒された造粒炭は、アンモニアや各種アミンなどを含有する塩基性ガスの除去に有効である。高級脂肪酸としては、ステアリン酸又はパルミチン酸が好ましく、これらは混合して使用してもよい。
【0044】
また、機能性固体粉末として、スルファニル酸、メタニル酸又はオルタニル酸を用いて造粒された造粒炭は、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドに代表されるアルデヒド類を含有するガスの除去に有効である。
【0045】
また、機能性固体粉末として、周期表2A族若しくは2B族に属する金属の酸化物、ヨウ素又はキトサンを用いて造粒された造粒炭は、抗菌・抗ウイルス用として有効である。周期表2A族又は2B族に属する金属としては、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛が好ましい。周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物は混合して使用してもよい。
【0046】
機能性固体粉末として、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物、ヨウ素又はキトサンを用いて造粒された造粒炭は、抗菌・抗ウイルス用として有効であるので、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物を用いて造粒された造粒炭は、酸性ガスの除去用及び抗菌・抗ウイルス用に好適である。周期表2A族又は2B族に属する金属としては、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛が好ましい。周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物は混合して使用してもよい。
【0047】
機能性固体粉末として、ヨウ素を用いて造粒された造粒炭は、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチルなど硫黄系の中性ガスの除去用及び抗菌・抗ウイルス用に好適である。
【0048】
機能性固体粉末として、キトサンを用いて造粒された造粒炭は、アルデヒドガスの除去用及び抗菌・抗ウイルス用に好適である。
【0049】
本発明の造粒炭は高機能を有するが、機能性固体粉末として、周期表2A族又は2B族に属する金属の水酸化物とスルファニル酸を用いて造粒した造粒炭は、酸性ガス及びアルデヒドガス除去用として好ましく使用される。
【0050】
また、機能性固体粉末として、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とスルファニル酸を用いて造粒した造粒炭は、酸性ガス、アルデヒドガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用として好ましく使用される。
【0051】
また、機能性固体粉末として、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とキトサンとアルギン酸を用いて造粒した造粒炭は、酸性ガス、塩基性ガス、アルデヒドガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用として好ましく使用される。
【0052】
また、機能性固体粉末として、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とスルファニル酸とスルホン酸型イオン交換樹脂を用いて造粒した造粒炭は、酸性ガス、アルデヒドガス、塩基性ガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用として好ましく使用される。
【0053】
また、機能性固体粉末として、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とキトサンとステアリン酸とヨウ素を用いて造粒した造粒炭は、酸性ガス、アルデヒドガス、硫黄系の中性ガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用として好ましく使用される。以上述べた周期表2A族又は2B族に属する金属としては、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛が好ましい。以上述べた周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物は混合して使用してもよい。
【0054】
酸性ガス、塩基性ガス、アルデヒドガス及び硫黄系の中性ガスの吸着効果は、各々硫化水素ガス、アンモニアガス、アセトアルデヒドガス及び硫化メチルガスを用いて確認し、抗菌効果は、大腸菌液を用いて確認した。また、抗ウイルス効果は、インフルエンザウイルスを用いて確認した。以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
実施例1
無煙炭を原料とした石炭系活性炭(比表面積1500m/g、ベンゼン吸着能50重量%)をボールミルにて粉砕した。株式会社島津製作所製の回折式粒度分布計で粉砕物の粒子径を測定したところ、D50=52μmであった。なお、D50とは、粒子径分布において、ある粒子径より大きい個数又は質量が全粒子のそれの50%を占めるときの粒子径である。
【0056】
この粉砕した活性炭100重量部に対して、D50=40μmの水酸化カルシウム30重量部及びCMC4重量部を添加し混合した。この混合物に結合剤として、日本カーバイド株式会社製ニカゾールFX6074(固形分50重量%)26重量部と水140重量部を添加し混合した。混合物を油圧押出し成型機で直径2mm、長さ4mmのペレットに成型し、静置式恒温乾燥機を用いて120℃で5時間乾燥し、造粒炭を製造した(造粒炭1)。
【0057】
実施例2
実施例1と同じ粉末活性炭を用い、機能性固体粉末、結合剤、水及び滑剤の種類及び配合量を表1のように変え、実施例1と同様にして造粒炭を製造した(造粒炭2)。
【0058】
実施例3〜11
ヤシ殻を原料とする活性炭として、クラレケミカル株式会社製GW-H(比表面積1700m/g、ベンゼン吸着能53重量%)をボールミル粉砕した100μm以下のものを用い、滑剤として、株式会社クラレ製PVA−117(重合度:1700)を用いて、粉末活性炭、機能性固体粉末、結合剤、水及び滑剤の種類及び配合量を表1のように変え、実施例1と同様にして造粒炭を製造した(造粒炭3〜11)。
【0059】
比較例1
機能性固体粉末を使用せずに実施例1と同様にして造粒炭を製造した(比較炭1)。
【0060】
比較例2
実施例1で粉末活性炭として用いた無煙炭のみを造粒せずそのまま使用した(比較炭2)。
【0061】
比較例3〜6
結合剤にタール(25部)を用いる以外は実施例1、4、7、11と同様にして混合物をペレット成型し、800℃で不活性ガス雰囲気下高温熱処理を3時間実施し造粒炭を製造した(各々比較炭3〜6)。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例12〜17
粉末活性炭、機能性固体粉末、結合剤、水及び滑剤を表2のようにし、実施例1と同様にして造粒炭を製造した(造粒炭12〜17)。
【0064】
比較例7〜11
結合剤にタール(25部)を用いる以外は実施例13〜17と同様にして混合物をペレット成型し、800℃で不活性ガス雰囲気下高温熱処理を3時間実施し造粒炭を製造した(各々比較炭7〜11)。
【0065】
【表2】

【0066】
得られた造粒炭1〜17及び比較炭1〜6について、酸性ガスとして硫化水素ガス、塩基性ガスとしてアンモニアガス、アルデヒドガスとしてアセトアルデヒドガス、硫黄系ガスとして硫化メチルガスを用い、下記(1)〜(5)に従って静的吸着試験により吸着効果を調べた。また、抗菌効果は、(6)に従って、大腸菌液を造粒炭に接触させた後の菌数で抗菌活性を調べることによって行い、抗ウイルス効果は、(7)に従って、インフルエンザウイルスを含む試験液を密閉状態で造粒炭に接触させた後のウイルス液による細胞への感染力を調べることによって行った。
【0067】
(1)酸性ガスの吸着試験:
容量3リットルのガロン瓶5個を準備し、各ガロン瓶に造粒炭0.05gを投入し、真空脱気した後、約0.1、1、10、100、1000ppmになるように窒素ガスで希釈した硫化水素ガスを導入する。各ガロン瓶を25℃の恒温槽に24時間静置し、株式会社ガステック製検知管を用いてガロン瓶内の硫化水素ガスの濃度を測定し、これを平衡濃度とする。
【0068】
造粒炭を投入せず、希釈した硫化水素ガスのみを導入したガロン瓶内の硫化水素ガスの濃度を初濃度とし、平衡濃度とガロン瓶に投入した造粒炭量とガロン瓶の容量から硫化水素ガスの吸着量を求め、硫化水素ガスの平衡濃度と吸着量から吸着等温線を作成する。
【0069】
(2)塩基性ガスの吸着試験:
硫化水素ガスに代えてアンモニアガスを用いる以外は酸性ガスの吸着試験と同様にして、吸着等温線を作成する。
【0070】
(3)アルデヒドガスの吸着試験:
硫化水素ガスに代えて、約1、10、100、1000ppmの希釈アセトアルデヒドガスを用いる以外は酸性ガスの吸着試験と同様にして、吸着等温線を作成する。
【0071】
(4)硫黄系中性ガスの吸着試験:
アセトアルデヒドガスに代えて硫化メチルガスを用いる以外はアセトアルデヒドガスの吸着試験と同様にして、吸着等温線を作成する。
【0072】
(5)混合ガスの吸着試験:
上記(1)〜(4)を組み合わせた混合ガスを用いて同様に吸着等温線を作成する。
【0073】
(6)抗菌活性:
10個/mlレベルの大腸菌液を37℃で造粒炭に接触させ、10時間後の菌数を柴田科学株式会社製の大腸菌群試験紙を用いて調べる。
【0074】
(7)抗ウイルス活性:
10個/mlレベルのインフルエンザウイルスを含む試験液を密閉状態で造粒炭に接触させ、密閉状態で6時間保管した後、ウイルス液を回収し、ウイルスの細胞への感染力を測定する。
【0075】
実施例1で得た造粒炭1と比較例1で得た比較炭1について、硫化水素ガスの静的吸着試験を行った結果を図1に示す。図1の結果から、本発明の造粒炭が静的吸着効果に優れていることは明らかである。
【0076】
実施例7で得た造粒炭7と比較例1で得た比較炭1について、アセトアルデヒドガスの静的吸着試験を行った結果を図2に示す。図2の結果から、本発明の造粒炭が静的吸着効果に優れていることは明らかである。
【0077】
表1及び表2で得られた各造粒炭と比較炭1〜6について、酸性ガス、塩基性ガス、アセトアルデヒドガス、硫黄系中性ガス及び混合ガスの静的吸着試験、並びに抗菌活性及び抗ウイルス活性を調べた結果を一括して表3に示す。表3において、硫化水素0.3ppm、3ppm、アンモニア0.3ppm、3ppm、アセトアルデヒド3ppm、30ppm及び硫化メチル3ppm、30ppmは各ガスの平衡濃度を示す。表3の結果から、本発明の造粒炭が静的吸着効果並びに抗菌活性及び抗ウイルス活性に優れていることは明らかである。
【0078】
【表3】

【0079】
造粒炭1、4、7、13〜17及び比較炭1〜5、7〜11について、酸性ガスとして硫化水素ガス、塩基性ガスとしてアンモニアガス、アルデヒドガスとしてアセトアルデヒドガス、硫黄系ガスとして硫化メチルガスを用い、流通系で動的吸着試験を行うことにより動的吸着効果を調べた。入口及び出口のガス濃度は株式会社ガステック製検知管を用いて測定した。
【0080】
実施例18
実施例1で得た造粒炭(造粒炭1)10ml(ベンゼン吸着能は対原料比で82%を保持、MS硬度は85%)をアップフロ−型排ガス処理カラム(底面1cm×高さ30cm)に充填し、温度23℃、相対湿度50%で、硫化水素ガス10ppmを含むモデル排ガス(他の成分は窒素ガス)をSV=4000Hr−1で通流させた。通流を開始した後、カラム出口側のガス濃度を経時的に測定したところ、処理開始30分後において、出口ガス中に硫化水素は検出されず、排ガスは良好に処理されていることが確認された。
【0081】
なお、MS硬度(マイクロストレングス硬度)とは、H.E.Blaydenなどによって提案されているもので〔H.E.Blayden,W.Noble,H.L.Riley;J.Iron.Steel Inst.,Vol.136,47−62(1937)〕、2本のステンレス管に試料と鋼球を入れて一定の回転数で所定の回転を行うことにより硬度を調べるものであり、コークス関係の評価指数として当該分野において一般に用いられている測定法であるが、本発明では、造粒炭の測定精度を上げるために、試料2gを5gとし、鉄製容器の回転数800回転を1000回転とし、鋼球12個を10個として実施した。
【0082】
比較例4〜6
比較例1〜3で得た比較炭1〜3を実施例18で用いたと同じ排ガス処理カラムに充填し、実施例18と同じ条件で通流したところ(各々比較例4〜6)、30分後の出口ガス中に表4のように硫化水素が検出された。
【0083】
実施例19
実施例4で得た造粒炭(造粒炭4)10ml(ベンゼン吸着能は対原料比で79%を保持、MS硬度は81%)を実施例18で使用したアップフロ−型排ガス処理カラムに充填し、温度23℃、相対湿度50%で、アンモニアガス10ppmを含むモデル排ガス(他の成分は窒素ガス)をSV=3000Hr−1で通流させた。通流を開始した後、カラム出口側のガス濃度を経時的に測定したところ、処理開始30分後において、出口ガス中にアンモニアは検出されず、排ガスは良好に処理されていることが確認された。
【0084】
比較例7〜9
比較例1、2、4で得た比較炭1、2、4を実施例19で用いたと同じ排ガス処理カラムに充填し、実施例19と同じ条件で通流したところ(各々比較例7〜9)、30分後の出口ガス中に表4のようにアンモニアが検出された。
【0085】
実施例20
実施例7で得た造粒炭(造粒炭7)10ml(ベンゼン吸着能は対原料比で81%を保持、MS硬度は80%)を実施例19で使用したアップフロ−型排ガス処理カラムに充填し、温度23℃、相対湿度50%で、アセトアルデヒドガス10ppmを含むモデル排ガス(他の成分は窒素ガス)をSV=2000Hr−1で通流させた。通流を開始した後、カラム出口側のガス濃度を経時的に測定したところ、処理開始30分後において、出口ガス中にアセトアルデヒドは検出されず、排ガスは良好に処理されていることが確認された。
【0086】
比較例10〜12
比較例1、2、5で得た比較炭1、2、5を実施例20で用いたと同じ排ガス処理カラムに充填し、実施例20と同じ条件で通流したところ(各々比較例10〜12)、30分後の出口ガス中に表4のようにアセトアルデヒドが検出された。
【0087】
【表4】

【0088】
実施例21
実施例13で得た造粒炭(造粒炭13)10ml(ベンゼン吸着能は対原料比で80%を保持、MS硬度は82%)を実施例18で用いたカラムに充填し、温度23℃、相対湿度50%で、硫化水素ガス10ppm及びアセトアルデヒドガス10ppmを含むモデル排ガス(他の成分は窒素ガス)をSV=4000Hr−1で通流させた。通流を開始した後、カラム出口側のガス濃度を経時的に確認したところ、処理開始30分後において、出口ガス中に硫化水素及びアセトアルデヒドは検出されず、排ガスは良好に処理されていることを確認した。
【0089】
比較例13〜15
比較例1、2、7で得た比較炭1、2、7を実施例21で用いたと同じ排ガス処理カラムに充填し、実施例21と同じ条件で通流したところ(各々比較例13〜15)、30分後の出口ガス中に表5のように硫化水素及びアセトアルデヒドが検出された。
【0090】
実施例22
実施例14で得た造粒炭(造粒炭14)10ml(ベンゼン吸着能は対原料比で78%を保持、MS硬度は79%)を実施例21で用いたカラムに充填し、温度23℃、相対湿度50%で、硫化水素ガス10ppm、アンモニアガス10ppm及びアセトアルデヒドガス10ppmを含むモデル排ガス(他の成分は窒素ガス)をSV=3000Hr−1で通流させた。通流を開始した後、カラム出口側のガス濃度を経時的に確認したところ、処理開始30分後において、出口ガス中に硫化水素、アンモニア及びアセトアルデヒドは検出されず、排ガスは良好に処理されていることを確認した。
【0091】
比較例16〜18
比較例1、2、8で得た比較炭1、2、8を実施例22で用いたと同じ排ガス処理カラムに充填し、実施例22と同じ条件で通流したところ(各々比較例16〜18)、30分後の出口ガス中に表5のように硫化水素、アンモニア及びアセトアルデヒドが検出された。
【0092】
実施例23
実施例15で得た造粒炭(造粒炭15)10ml(ベンゼン吸着能は対原料比で79%を保持、MS硬度は80%)を実施例22で用いたカラムに充填し、温度23℃、相対湿度50%で、硫化水素ガス10ppm、アンモニアガス10ppm及びアセトアルデヒドガス10ppmを含むモデル排ガス(他の成分は窒素ガス)をSV=3000Hr−1で通流させた。通流を開始した後、カラム出口側のガス濃度を経時的に確認したところ、処理開始30分後において、出口ガス中に硫化水素、アンモニア及びアセトアルデヒドは検出されず、排ガスは良好に処理されていることを確認した。
【0093】
比較例19〜21
比較例1、2、9で得た比較炭1、2、9を実施例23で用いたと同じ排ガス処理カラムに充填し、実施例23と同じ条件で通流したところ(各々比較例19〜21)、30分後の出口ガス中に表5のように硫化水素、アンモニア及びアセトアルデヒドが検出された。
【0094】
実施例24
実施例16で得た造粒炭(造粒炭16)10ml(ベンゼン吸着能は対原料比で75%を保持、MS硬度は78%)を実施例23で用いたカラムに充填し、温度23℃、相対湿度50%で、硫化水素ガス10ppm、アンモニアガス10ppm、アセトアルデヒドガス10ppm及び硫化メチルガス10ppmを含むモデル排ガス(他の成分は窒素ガス)をSV=2000Hr−1で通流させた。通流を開始した後、カラム出口側のガス濃度を経時的に確認したところ、処理開始30分後において、出口ガス中に硫化水素、アンモニア、アセトアルデヒド及び硫化メチルは検出されず、排ガスは良好に処理されていることを確認した。
【0095】
比較例22〜24
比較例1、2、10で得た比較炭1、2、10を実施例24で用いたと同じ排ガス処理カラムに充填し、実施例24と同じ条件で通流したところ(各々比較例22〜24)、30分後の出口ガス中に表5のように硫化水素、アンモニア、アセトアルデヒド及び硫化メチルが検出された。
【0096】
実施例25
実施例17で得た造粒炭(造粒炭17)10ml(ベンゼン吸着能は対原料比で78%を保持、MS硬度は80%)を実施例24で用いたカラムに充填し、温度23℃、相対湿度50%で、硫化水素ガス10ppm、アセトアルデヒドガス10ppm及び硫化メチルガス10ppmを含むモデル排ガス(他の成分は窒素ガス)をSV=2000Hr−1で通流させた。通流を開始した後、カラム出口側のガス濃度を経時的に確認したところ、処理開始30分後において、出口ガス中に硫化水素、アセトアルデヒド及び硫化メチルは検出されず、排ガスは良好に処理されていることを確認した。
【0097】
比較例25〜27
比較例1、2、11で得た比較炭1、2、11を実施例25で用いたと同じ排ガス処理カラムに充填し、実施例25と同じ条件で通流したところ(各々比較例25〜27)、30分後の出口ガス中に表5のように硫化水素、アセトアルデヒド及び硫化メチルが検出された。以上の結果から、本発明の造粒炭は動的吸着に優れていることが明らかである。
【0098】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の造粒炭は、活性炭単味では成し得ない多機能を含めた高機能という点で優れているので、酸性ガス、塩基性ガス、アルデヒドガス、硫黄系の中性ガスの除去に好適であり、これらを含む排ガス処理の分野の他、下水道などから発生する悪臭ガスの脱臭に有用であり、抗菌・抗ウイルスにも有効であるので、産業上の有用性が大きい。
【符号の説明】
【0100】
1 実施例1で得た造粒炭1に係る硫化水素の吸着等温線
2 比較例1で得た比較炭1に係る硫化水素の吸着等温線
3 実施例7で得た造粒炭7に係るアセトアルデヒドの吸着等温線
4 比較例1で得た比較炭1に係るアセトアルデヒドの吸着等温線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末活性炭と機能性固体粉末と結合剤を混練、造粒、硬化してなる造粒炭であって、該固体粉末が水不溶性の固体粉末であり、該結合剤が0〜200℃かつ機能性固体粉末の融解温度未満で硬化する結合剤であることを特徴とする高機能造粒炭。
【請求項2】
該粉末活性炭の粒径が100μm以下である請求項1記載の高機能造粒炭。
【請求項3】
該粉末活性炭の比表面積が500〜2500m/gである請求項1又は2記載の高機能造粒炭。
【請求項4】
該固体粉末が、(A)周期表2A族若しくは2B族に属する金属の水酸化物又は炭酸塩、(B)高級脂肪酸、アルギン酸又はスルホン酸型イオン交換樹脂、(C)スルファニル酸、メタニル酸又はオルタニル酸、及び(D)周期表2A族若しくは2B族に属する金属の酸化物、ヨウ素又はキトサンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1〜3いずれかに記載の高機能造粒炭。
【請求項5】
該固体粉末の粒径が、粉末活性炭の平均粒径と同等またはそれ以下である請求項1〜4いずれかに記載の高機能造粒炭。
【請求項6】
該周期表2A族若しくは2B族に属する金属が、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛である請求項1〜5いずれかに記載の高機能造粒炭。
【請求項7】
該高級脂肪酸が、ステアリン酸又はパルミチン酸である請求項1〜6いずれかに記載の高機能造粒炭。
【請求項8】
該結合剤が、自己架橋型のアクリル酸エステル系共重合体水性エマルジョンである請求項1〜7いずれかに記載の高機能造粒炭。
【請求項9】
粉末活性炭100重量部に対して機能性固体粉末0.5〜200重量部を配合し、結合剤を加えて混練し、造粒した後、硬化させることを特徴とする高機能造粒炭の製造方法。
【請求項10】
該粉末活性炭100重量部に対してさらに滑材を0.1〜10重量部配合して混練する請求項9記載の高機能造粒炭の製造方法。
【請求項11】
該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の水酸化物又は炭酸塩である請求項1〜8いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス除去用高機能造粒炭。
【請求項12】
該周期表2A族又は2B族に属する金属が、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛である請求項11記載の高機能造粒炭。
【請求項13】
該機能性固体粉末が、高級脂肪酸、アルギン酸又はスルホン酸型イオン交換樹脂である請求項1〜8いずれかに記載の造粒炭でなる塩基性ガス除去用高機能造粒炭。
【請求項14】
該高級脂肪酸が、ステアリン酸又はパルミチン酸である請求項13記載の高機能造粒炭。
【請求項15】
該機能性固体粉末が、スルファニル酸、メタニル酸又はオルタニル酸である請求項1〜8いずれかに記載の造粒炭でなるアルデヒドガス除去用高機能造粒炭。
【請求項16】
該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物である請求項1〜8いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
【請求項17】
該機能性固体粉末が、ヨウ素である請求項1〜8いずれかに記載の造粒炭でなる硫黄系の中性ガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
【請求項18】
該機能性固体粉末が、キトサンである請求項1〜8いずれかに記載の造粒炭でなるアルデヒドガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
【請求項19】
該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の水酸化物又は炭酸塩とスルファニル酸からなる請求項1〜8いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス及びアルデヒドガス除去用高機能造粒炭。
【請求項20】
該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とスルファニル酸からなる請求項1〜8いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス、アルデヒドガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
【請求項21】
該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とキトサンとアルギン酸からなる請求項1〜8いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス、塩基性ガス、アルデヒドガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
【請求項22】
該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とスルファニル酸とスルホン酸型イオン交換樹脂からなる請求項1〜8いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス、アルデヒドガス、塩基性ガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
【請求項23】
該機能性固体粉末が、周期表2A族又は2B族に属する金属の酸化物とキトサンと高級脂肪酸とヨウ素からなる請求項1〜8いずれかに記載の造粒炭でなる酸性ガス、アルデヒドガス、塩基性ガス、硫黄系の中性ガス除去用及び抗菌・抗ウイルス用高機能造粒炭。
【請求項24】
該周期表2A族又は2B族に属する金属が、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛である請求項19〜23いずれかに記載の高機能造粒炭。
【請求項25】
該高級脂肪酸が、ステアリン酸又はパルミチン酸である請求項23記載の高機能造粒炭。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−222163(P2010−222163A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69921(P2009−69921)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(390001177)クラレケミカル株式会社 (30)
【Fターム(参考)】