高次成分を消去可能な光振幅変調システム
【課題】 本発明は,3次成分を抑圧できるDSB-SCシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の第1の側面に係るDSB-SC変調システム(1)は,3倍信号生成部(17)が,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成する。そして,位相調整部(18)が基本信号(fm)の位相と,基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する。信号強度調整部(19)が電気信号(3fm)の強度を調整する。そして,変調信号としてfmの信号を印加した際に発生する3次成分(f0±3fm)について,変調信号として3 fmの信号をその1次成分(f0±3fm)が3次成分と位相が逆で,強度が同程度となるように調整して印加するので,それらが抑圧しあって,高い消光比を有するDSB-SC変調を達成できる。
【解決手段】 本発明の第1の側面に係るDSB-SC変調システム(1)は,3倍信号生成部(17)が,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成する。そして,位相調整部(18)が基本信号(fm)の位相と,基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する。信号強度調整部(19)が電気信号(3fm)の強度を調整する。そして,変調信号としてfmの信号を印加した際に発生する3次成分(f0±3fm)について,変調信号として3 fmの信号をその1次成分(f0±3fm)が3次成分と位相が逆で,強度が同程度となるように調整して印加するので,それらが抑圧しあって,高い消光比を有するDSB-SC変調を達成できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,光振幅変調システムなどに関する。より詳しく説明すると,本発明は,DSB変調などの際に生じる高次成分を抑圧することで高い消光比変調を得ることができる光振幅変調システムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信において、光に信号を乗せるために光を変調する必要がある。光変調には、半導体レーザの駆動パワーを変調する直接変調と、半導体レーザからの光を光源以外の手段で変調する外部変調とがある。外部変調で使用される変調器を一般に光変調器とよぶ。光変調器では、変調器に信号に応じて物理的変化を起こして、光の強度、位相などを変調する。光変調器の技術課題として、駆動電圧の低減、変調効率向上のための高消光比、広帯域化、高速化および損失低減のための高光利用効率とがある。すなわち,高い消光比を持った光変調器の開発が望まれている。なお,消光比とは,光の強度が最も高い時の光強度と光の強度が最も弱くなる時の光強度の比を意味する。
【0003】
光信号の周波数をシフトして出力するものに光単側波帯変調器(光SSB(Single Slide-Band)変調器)がある(川西哲也,井筒雅之,"光SSB変調器を用いた光周波数シフター",信学技報,TECHNICAL REPORT OF IEICE, OCS2002-49, PS2002-33, OFT2002-30(2002-08)。
【0004】
また,光SSB変調器を改良した光FSK変調器も知られている(非特許文献1[T. Kawanishi and M. Izutsu, “Optical FSK modulator using an integrated light wave circuit consisting of four optical phase modulator”, CPT 2004 G-2, Tokyo, Japan, 14-16 Jan.2004],非特許文献2[川西哲也ら“FSK/IM同時変調の解析および応用”信学技法, Tech. Rep. of IEICE. EMD2004-47, CPM2004-73, OPE2004-130, LQE2004-45(2004-08), pp.41-46] 参照)。
【0005】
なお,光SSB変調器において,3次成分を除去するために,周波数を制御した信号を印加すると共に,3次成分と光信号が逆位相となるように制御した電気信号を印加する技術が知られている(下記特許文献1)。
【0006】
一方,キャリア信号を抑圧した,DSB−SC変調器も知られているが,この変調器においては,とくに奇数次の高次成分が生ずるものの,それらがそれほど問題となることはなかった。また,上記の光SSB変調器とDSB−SC変調器では,印加する電圧値や電圧のかけ方が大きく違うので,SSB変調器において用いられた3次成分の除去方法をそのまま利用することはできないという問題がある。
【特許文献1】特開2004−77835号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,新規な光振幅変調システムを提供することを目的とする。
【0008】
本発明は,3次成分などを抑圧でき,高い消光比が得られる光振幅変調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では,DSB-SC変調などの光変調を行う際に,変調信号としてfmの信号を印加した際に発生する3次成分(f0±3fm)について,変調信号として3 fmの信号を,その変調信号により発生する光信号の1次成分(f0±3fm)が先に説明した3次成分と位相が逆で,強度が同程度となるように調整したものを印加すれば,それらが抑圧しあうので高い消光比を有するDSB-SC変調などの光振幅変調を達成できるという知見に基づくものである。
【0010】
すなわち,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システム(1)は,光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号を伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12),及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;を具備し,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)は,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成するための3倍信号生成部(17)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する位相調整部(18)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)又は前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の強度を調整する信号強度調整部(19)とを具備する。
【0011】
本発明の第1の側面に係る光振幅変調システム(1)は,3倍信号生成部(17)が,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)である3倍信号を生成する。そして,位相調整部(18)が前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する。信号強度調整部(19)が電気信号(3fm)の強度を調整する。そして,変調信号などの基本信号としてfmの信号を印加した際に発生する3次成分(f0±3fm)について,基本信号の周波数成分の3倍周波数(3 fm)を有する3倍信号をその1次成分(f0±3fm)が先に説明した3次成分と位相が逆で,強度が同程度となるように調整して印加するので,それらが抑圧しあって,高い消光比を有するDSB-SC変調などの光振幅変調を達成できる。
【0012】
なお,本発明の光振幅変調では,周波数がfmの変調信号,周波数が3 fmの変調信号ともに電極Cに印加する。
【0013】
本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムは,好ましくは,前記第1の強度変調器(9)が,前記第1の電極(電極A)(11)を具備するマッハツェンダー導波路であり,前記第2の強度変調器(10)が,前記第2の電極(電極B)(12)を具備するマッハツェンダー導波路である。
【0014】
なお,3次成分以外の成分についても,消去したい光信号成分について,逆位相で大きさが同程度となるような光信号が得られるように調整した電気信号を電極Cに印加することで抑圧することは,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムの好ましい実施態様である。なお,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムは,好ましくは,DSB-SC変調器として利用される。
【0015】
本発明の第2の側面に係る光振幅変調システムは,前記第3の電極(電極C)(13)は,前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCA電極)(21)と,前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCB電極)(22)とを具備する請求項1に記載の光振幅変調システムである。
【0016】
このように,MZCA電極とMZCB電極とを具備するので(すなわちメインマッハツェンダー用電極(電極C)が2極電極であるので),抑圧したい成分(キャリア,2次,3次成分など)の位相を逆位相となるように制御して,効果的に抑圧したい成分を抑圧できることとなる。特に,DSB−SC変調システムでは,理想的には発生せず,実際にもそれほど強度がない,キャリア成分や2次成分などの偶数次成分をも効果的に消去できることとなる。
【0017】
本発明の第3の側面に係る光振幅変調システムは,前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(31),又は前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(32)のいずれか又は両方を具備する上記の光振幅変調システムに関する。
【0018】
このように光強度補正機構(たとえば,強度変調器)を具備するので,効果的に抑圧したい成分の大きさを同程度に調整するので,逆位相となるように調整された抑圧したい成分を効果的に抑圧できることとなる。なお,本発明の第3の側面に係る光振幅変調システムは,好ましくは,DSB-SC変調器として利用される。
【0019】
本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムは,光振幅変調器としての上記に記載の光振幅変調システムと,前記光振幅変調器の出力光または又は前記光変調器への入力光に変調を加えるための位相変調器又は強度変調器のいずれかまたは両方と,前記光振幅変調器の変調信号と前記位相変調器又は強度変調器の変調信号との変調時間を調整するための制御部と,を具備する光振幅変調システムである。
【0020】
本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムは,光振幅変調器と,光振幅変調器の出力光または又は前記光変調器への入力光に変調を加える位相・強度変調器(具体的には2電極MZ型変調器)とを具備する光振幅変調システムなどに関する。すなわち,光振幅変調の出力には,抑圧しきれないキャリア成分などが残留するので,消光比が高くできない。そこで,光振幅変調からの出力光に対し位相変調及び/又は強度変調を施すか,又は抑圧しきれない成分が打ち消されるように入力光に変調を施す。この際,サイト゛ハ゛ント゛由来のサイト゛ハ゛ント゛(キャリアまたは高次成分と周波数が一致する)をキャリア成分を打ち消すよう(又は高次成分を打ち消すよう)に,位相とタイミングとを調整する。このようにすれば,キャリア成分(又は高次成分)を抑圧できるので,高い消光比変調を得ることができる光振幅変調システムを得ることができる。
【0021】
本発明の第4の側面に係る光振幅変調の好ましい態様は,前記制御部は,前記光振幅変調器からの出力光の両側波帯信号のいずれか又は両方を前記位相変調器又は強度変調器が変調することにより生ずる両側波帯信号のいずれかが,前記光振幅変調器の出力光のうち光搬送波信号又は高次光信号の周波数と一致し,前記光搬送波信号又は高次光信号を打ち消すように制御するか,又は前記光変調器への入力光を前記位相変調器又は強度変調器が変調することにより両側波帯信号を生成し,それが光振幅変調器へと入力して,さらにそれぞれの光信号(USB信号及びLSB信号)ごとに両側波帯信号を生ずるので,そのようにして生ずる両側波帯信号(USB信号又はLSB信号)のいずれかが,前記光振幅変調器の出力光のうち光搬送波信号又は高次光信号の周波数と一致し,前記光搬送波信号又は高次光信号を打ち消すように制御する上記の光振幅変調システムである。なお,本発明の第4の側面に係る光振幅変調の好ましい実施態様は,DSB-SC変調システムとしての利用態様である。
【0022】
本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムは,前記合波部で合波された光信号が入力するサーキュレータと,前記サーキュレータからの出力光が入射するファイバグレーティングとを具備する,上記に記載の光振幅変調システムである。このような態様の光振幅変調システムは,ファイバグレーティングとサーキュレータとにより不要成分を取り除くと共に,取り除いた成分をフィードバック信号として利用しうるので好ましい。
【0023】
本発明の第6の側面に係る光振幅変調システムは,上記に記載の光振幅変調システムであって,マッハツェンダー導波路(8)からの出力信号の検出部と接続され,各電極に印加する電圧を制御する制御信号を信号源に出力する制御部であって,(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整し,(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整し,(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させ,(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する制御部を具備する,光振幅変調システムに関する。
【0024】
本発明の第6の側面に係る光振幅変調システムは,(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整する工程と,(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程と,(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させる工程と,(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程とを含む,バイアス調整方法により好適なバイアス電圧値を,好ましくは自動的に得ることができる。
【0025】
このように調整したバイアス電圧を用いれば,キャリア成分や高次成分が比較的少ない信号を用い,更に先に説明した方法によりこれらの成分を抑圧することとなるので,より効果的に抑圧したい成分を抑圧できることとなる。
【0026】
本発明の第7の側面に係る光変調システムは,光変調器と,前記光変調器の出力信号が入力するサーキュレータと,前記サーキュレータからの出力光が入射し,前記光変調器の所望の光信号成分が反射し,それ以外の光信号成分が透過するファイバグレーティングと,前記ファイバグレーティングを透過した光信号を検出する光検出器と,前記光検出器が検出した光信号に基づいて,前記光変調器に印加する信号源から出力される信号を制御する制御部とを具備する光変調システムである。このようなシステムでは,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムと同様にして,所定の光信号を効果的に抽出し,しかも不要な光信号成分を分離してその強度が弱くなるよう信号源系を制御するので,より効果的に不要な成分を軽減できることとなる。
【0027】
本発明の第7の側面に係る光変調システムは,好ましくは,前記光変調器は,光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;を具備する上記に記載の光変調システムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば,キャリア成分(f0)や高次成分(例えば2次成分(f0±2fm))などを抑圧でき,高い消光比を得られる光振幅変調システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下,図面にしたがって,本発明を説明する。図1は,本発明の光振幅変調システムの概略構成図である。図2は,本発明の光振幅変調システムの信号源部を示すブロック図である。図1,図2に示されるように,本発明の光振幅変調システム(1)は,光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅(強度)を制御する第1の強度変調器(9)と;前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅(強度)を制御する第2の強度変調器(10)と;前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;を具備し,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)は,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成するための3倍信号生成部(17)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する位相調整部(18)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)又は前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の強度を調整する信号強度調整部(19)とを具備する光振幅変調システム(1)に関する。なお,本発明の光振幅変調システムは,好ましくは光搬送波抑圧両側波帯(DSB-SC)変調システム(1)として利用される。
【0030】
本発明の第1の側面に係る光振幅変調(1)は,3倍信号生成部(17)が,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)である3倍信号を生成する。そして,位相調整部(18)が前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する。信号強度調整部(19)が電気信号(3fm)の強度を調整する。そして,変調信号などの基本信号としてfmの信号を印加した際に発生する3次成分(f0±3fm)について,周波数が3 fmの3倍信号を,光信号の1次成分(f0±3fm)が先に説明した光信号の3次成分と位相が逆で,強度が同程度となるように調整して,印加する。これにより,それらが抑圧しあって,高い消光比を有する光振幅変調を達成できる。
【0031】
なお,本発明の光振幅変調システムでは,好ましくは,周波数がfmの基本信号及び周波数が3 fmの3倍信号ともに電極Cに印加する。
【0032】
図3は,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムの好ましい実施態様を示す概略図である。図3に示されるように,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムの好ましい実施態様は,前記第1の強度変調器(9)が,前記第1の電極(電極A)(11)を具備するマッハツェンダー導波路であり,前記第2の強度変調器(10)が,前記第2の電極(電極B)(12)を具備するマッハツェンダー導波路である。
【0033】
図3に示されるようにこの態様の光振幅変調システムは,光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;を具備し,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)は,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成するための3倍信号生成部(17)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する位相調整部(18)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)又は前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の強度を調整する信号強度調整部(19)とを具備する光振幅変調システムであって,前記第1の強度変調器(9)が,前記第1の電極(電極A)(11)を具備するマッハツェンダー導波路であり,前記第2の強度変調器(10)が,前記第2の電極(電極B)(12)を具備するマッハツェンダー導波路である光振幅変調システム(1)に関する。
【0034】
この光振幅変調システムでは,マッハツェンダー導波路の各アームに設けられる強度変調器がそれぞれマッハツェンダー導波路として構成されるので,全体をメインマッハツェンダー導波路(MZC),各アームに設けられるマッハツェンダー導波路をサブマッハツェンダー導波路(MZA,及びMZB)などともよぶ。MZA,MZB及びMZCに設けられる電極をそれぞれ電極A,電極B及び電極Cなどとよぶ。MZA,MZB及びMZCにバイアス電圧を印加するための電極をDCA電極,DCB電極及びDCC電極などとよぶ。また,光振幅変調システムでは,変調信号を電極Cに印加する。この変調信号(通常は,ラジオ周波数信号)が印加される電極Cのうち,MZA,MZB及びMZCを伝播する光信号に変調を加えるものを,概念的にRFA電極,RFB電極及びRFC電極などとよぶ。
【0035】
この実施態様に係る光振幅変調システムでは,電極AがDCA電極として機能し,電極BがDCB電極として機能し,電極CがDCC電極,RFA電極,RFB電極及びRFC電極として機能する。
【0036】
以下,この実施態様に係る光振幅変調システムの各要素について説明する。マッハツェンダー導波路(8)は,図1に示されるものと同様であり,さらに図3に示されるように光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号を伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含む。
【0037】
マッハツェンダー導波路は,例えば,略六角形状の導波路(これが2つのアームを構成する)を具備し,並列する2つの位相変調器を具備するようにして構成される。位相変調器は,導波路に沿った電極により達成できる。
【0038】
通常,マッハツェンダー導波路や電極は基板上に設けられる。基板及び各導波路は,光を伝播することができるものであれば,特に限定されない。例えば,LN基板上に,Ti拡散のニオブ酸リチウム導波路を形成しても良いし,シリコン(Si)基板上に二酸化シリコン(SiO2)導波路を形成しても良い。また,InPやGaAs基板上にInGaAsP,GaAlAs導波路を形成した光半導体導波路を用いても良い。基板として,XカットZ軸伝搬となるように切り出されたニオブ酸リチウム (LiNbO3:LN)が好ましい。これは大きな電気光学効果を利用できるため低電力駆動が可能であり,かつ優れた応答速度が得られるためである。この基板のXカット面(YZ面)の表面に光導波路が形成され,導波光はZ軸(光学軸)に沿って伝搬することとなる。Xカット以外のニオブ酸リチウム基板を用いても良い。また,基板として,電気光学効果を有する三方晶系,六方晶系といった一軸性結晶,又は結晶の点群がC3V,C3,D3,C3h,D3hである材料を用いることができる。これらの材料は,電界の印加によって屈折率変化が伝搬光のモードによって異符号となるような屈折率調整機能を有する。具体例としては,ニオブ酸リチウムの他に,タンタル酸リチウム (LiTO3:LT),β−BaB2O4(略称BBO),LiIO3等を用いることができる。
【0039】
基板の大きさは,所定の導波路を形成できる大きさであれば,特に限定されない。各導波路の幅,長さ,及び深さも本発明のモジュールがその機能を発揮しうる程度のものであれば特に限定されない。各導波路の幅としては,たとえば1〜20マイクロメートル程度,好ましくは5〜10マイクロメートル程度があげられる。また,導波路の深さ(厚さ)として,10nm〜1マイクロメートルがあげられ,好ましくは50nm〜200nmである。
【0040】
第1の強度変調器(9)は,前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御するものであり,第2の強度変調器(10) 前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御するものである。図1に示されるとおり,第1の強度変調器(9)及び第2の強度変調器(10)としては,前記第1の強度変調器(9)が,前記第1の電極(電極A)(11)を具備するマッハツェンダー導波路であり,前記第2の強度変調器(10)が,前記第2の電極(電極B)(12)を具備するマッハツェンダー導波路があげられる。
【0041】
強度変調器は,基本的にその入力信号の中心周波数をf0,変調周波数をfmとすると,その主な出力信号の周波数が,f0,f0±fm(f0+fmとf0−fm)などとなるものである。なお,これらのうち周波数f0の光信号の強度がもっとも強いものでもよいが,f0±fmのいずれか又は両方の光強度がf0の光強度の1/10〜1/1の強度を持つものが好ましい。
【0042】
第3の電極(電極C)(13)は,前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加される電極である。
【0043】
第1のバイアス調整電極(DCA電極)は,MZAを構成する2つのアーム(Path1及びPath3)間のバイアス電圧を制御することにより,MZAの2つのアームを伝播する光の位相を制御するための電極である。一方,第2のバイアス調整電極(DCB電極)は,MZBを構成する2つのアーム(Path2及びPath4)間のバイアス電圧を制御することにより,MZBの2つのアームを伝播する光の位相を制御するための電極である。DCA電極,及びDCB電極は,好ましくは通常直流または低周波信号が印加される。ここで低周波信号における「低周波」とは,例えば,0Hz〜500MHzの周波数を意味する。なお,この低周波信号の信号源の出力には電気信号の位相を調整する位相変調器が設けられ,出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。
【0044】
第1の変調電極(RFA電極)は,MZAを構成する2つのアームを伝播した光信号にラジオ周波数(RF)信号を印加するための電極である。一方,第2の変調電極(RFB電極)は,MZBを構成する2つのアームを伝播した光信号にRF信号を印加するための電極である。RFA電極,及びRFB電極としては,進行波型電極または共振型電極が挙げられ,好ましくは共振型電極である。
【0045】
先に説明したとおり,DCC電極とRFC電極などは,別々の電極とされてもよいし,一つの電極がそれらの機能を果たしてもよい。後者の場合は,一つの電極にバイアス電圧とラジオ周波数信号とが印加されることとなる。
【0046】
RFA電極,及びRFB電極は,好ましくは高周波電気信号源と接続される。高周波電気信号源は,RFA電極及びRFB電極へ伝達される信号を制御するためのデバイスであり,公知の高周波電気信号源を採用できる。RFA電極,及びRFB電極に入力される高周波信号の周波数(fm)として,例えば1GHz〜100GHzがあげられる。高周波電気信号源の出力としては,一定の周波数を有する正弦波があげられる。なお,この高周波電気信号源の出力には位相変調器が設けられ,出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。
【0047】
RFA電極,及びRFB電極は,たとえば金,白金などによって構成される。RFA電極,及びRFB電極の幅としては,1μm〜10μmが挙げられ,具体的には5μmが挙げられる。RFA電極,及びRFB電極の長さとしては,変調信号の波長の(fm)の0.1倍〜0.9倍が挙げられ,0.18〜0.22倍,又は0.67倍〜0.70倍が挙げられ,より好ましくは,変調信号の共振点より20〜25%短いものである。このような長さとすることで,スタブ電極との合成インピーダンスが適度な領域に留まるからである。より具体的なRFA電極,及びRFB電極の長さとしては,3250μmがあげられる。以下では,共振型電極と,進行波型電極について説明する。
【0048】
共振型光電極(共振型光変調器)は,変調信号の共振を用いて変調を行う電極である。共振型電極としては公知のものを採用でき,例えば特開2002-268025号公報,「川西哲也,及川哲,井筒雅之,"平面構造共振型光変調器",信学技報,TECHNICAL REPORT OF IEICE, IQE2001-3(2001-05)」に記載のものを採用できる。
【0049】
進行波型電極(進行波型光変調器)は,光波と電気信号を同方向に導波させ導波している間に光を変調する電極(変調器)である(例えば,西原浩,春名正光,栖原敏明著,「光集積回路」(改訂増補版)オーム社,119頁〜120頁)。進行波型電極は公知のものを採用でき,例えば,特開平11−295674号公報,特開平11−295674号公報,特開2002−169133号公報,特開2002-40381号公報,特開2000-267056号公報,特開2000-471159号公報,特開平10-133159号公報などに開示されたものを用いることができる。
【0050】
進行波型電極として,好ましくは,いわゆる対称型の接地電極配置(進行波型の信号電極の両側に,少なくとも一対の接地電極が設けられているもの)を採用するものである。このように,信号電極を挟んで接地電極を対称に配置することによって,信号電極から出力される高周波は,信号電極の左右に配置された接地電極に印加されやすくなるので,高周波の基板側への放射を,抑圧できる。
【0051】
RF電極が,RF信号用の電極と,DC信号用の電極とを兼ねたものでもよい。すなわち,RFA電極及びRFB電極のいずれか又は両方は,DC信号とRF信号とを混合して供給する給電回路(バイアス回路)と連結されている。この態様の光SSB変調器は,RF電極が給電回路(バイアス回路)と連結されているので,RF電極にRF信号(ラジオ周波数信号)とDC信号(直流信号:バイアス電圧に関する信号)を入力できる。
【0052】
なお,メインマッハツェンダー導波路(MZC)に含まれる分岐部は,光信号が前記第1のサブマッハツェンダー導波路(MZA)と前記第2のサブマッハツェンダー導波路(MZB)とへ分岐するようにされた部位であり,導波路がY字型に分岐した構成をとるものがあげられる。また,合波部は,前記第1のサブマッハツェンダー導波路(MZA)と前記第2のサブマッハツェンダー導波路(MZB)から出力される光信号が合波される部位であり,導波路がY字型に形成されたものがあげられる。上記のY字型は対象であっても,非対称であってもよい。なお,分岐部又は合波部として方向性結合器(カプラ)を用いてもよい。
【0053】
第1のメインマッハツェンダー用電極(MZCA電極)は,メインマッハツェンダー導波路(MZC)のうち,前記第1のサブマッハツェンダー導波路(MZA)の出力部と前記合波部との間の導波路の少なくとも一部に沿うように設けられた電極である。そして,少なくとも一部とは,出力信号の位相を調整できる程度の長さであればよい。この電極としては,サブマッハツェンダー導波路における電極と同様のものを設ければよい。
【0054】
第2のメインマッハツェンダー用電極(MZCB電極)は,メインマッハツェンダー導波路(MZC)のうち,前記第2のサブマッハツェンダー導波路(MZB)の出力部と前記合波部との間の導波路の少なくとも一部に沿うように設けられた電極であり,これについてはMZCA電極(11)と同様である。なお,第1のメインマッハツェンダー用電極(MZCA電極)及び前記第2のメインマッハツェンダー用電極(MZCB電極)は,それぞれが設けられる導波路部分を光位相変調器として機能させるものであってもよい。
【0055】
なお,本発明の光変調システムにおいては,各電極に印加される信号のタイミングや位相を適切に制御するため,各電極の信号源と電気的に(又は光信号により)接続された制御部が設けられることが好ましい。そのような制御部は,RFA電極,RFB電極及びRFC電極に印加される信号,すなわちRFA信号,RFB信号及びRFC信号の変調時間を調整するように機能する。すなわち,各電極による変調が,ある特定の信号に対して行われるように,光の伝播時間を考慮して調整する。この調整時間は,各電極間の距離などによって適切な値とすればよい。
【0056】
信号源部(16)は,前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)に前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,及び前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含むものがあげられる。バイアス電圧は,調整部(20)により,その強度,遅延(位相),印加タイミングなどが適宜調整されてもよい。
【0057】
前記第2の信号源(高周波信号源)(15)は,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成するための3倍信号生成部(17)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する位相調整部(18)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)又は前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の強度を調整する信号強度調整部(19)とを具備するものがあげられる。
【0058】
また,制御部(PC)は,前記第1のサブマッハツェンダー導波路(MZA)とからの出力信号と前記第2のサブマッハツェンダー導波路(MZB)とからの出力信号に含まれる光搬送波信号又は特定の高次光信号の位相が180°ずれるように電極Cに印加される電圧を調整するものがあげられる。このような制御部としては,各電極の信号源と接続された処理プログラムを格納したコンピュータがあげられる。そして,コンピュータは,キーボードなどの入力装置から制御情報の入力を受けると,CPUは,たとえばメインプログラムに格納された処理プログラムを読み出し,よりプログラムの指令に従って,各種メモリから必要な情報を読み出して,適宜メモリに格納される情報を書き換え,信号源へ信号源から出力される光信号のタイミングと位相差を制御するような指令を外部出力装置から出力すればよい。なお,そのような処理プログラムとしては,コンピュータを,各サブマッハツェンダー導波路における特定の成分の位相を把握する手段と,前記手段が把握した特性の成分の位相情報を用いて,それらの位相が逆位相となるように電極Cに印加される変調信号を調整する指令を作製する手段とを具備するものとして機能させるようなものであればよい。なお,特に本発明の光振幅変調器が,DSB-SC変調器として機能する際などでは,単に電気信号の段階で3次成分などが打ち消されるように調整しても必ずしもうまく打ち消されないので,上記のような制御部により3次成分などが打ち消されるように調整することが好ましい。
【0059】
光変調システムの動作を以下に説明する。MZcの電極によって,マッハツェンダー導波路の第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)を伝播する光信号の位相差が制御される。この両アームを伝播する光信号の位相差をg(t)とする。nを整数として,g(t)が2nπであるとき,光変調システムはON状態となる。一方,g(t)が(2n+1)πであるとき,光変調システムはOFF状態となる。すなわち,この場合は,高次の放射モード光に変換され,出力まで伝播しないで放射される。このように変調システムの電極に印加される電圧を調整することでONとOFFを切り換えて,信号を出力する。
【0060】
すなわち,出力信号の強度は,|cos(g(t))/2|に比例することとなる。これが,マッハツェンダー導波路が強度変調器とよばれるゆえんである。なお,理想的なOFF状態の強度が0なので,理想的にはON状態とOFF状態の強度比が無限大となる。一方,現実にはキャリア成分や高次成分などが残留するので,OFF状態であっても強度がゼロにならない。ON状態とOFF状態の強度比である消光比は,マッハツェンダー導波路の特性を評価するうえで重要な値である。
【0061】
電極Cによるバイアス電圧によりもたらされる両アームの光信号の位相差をφBとし,電極Cに印加される変調信号の周波数を(fm)とし,g(t)が正弦波2ARFsin2πfmt+φBとすると,理想的には,1次成分(USB又はLSB)の光強度(D1)と2次成分の光強度(D2)は以下の式で表される値となる。
【0062】
【数1】
【0063】
上記の式から,φBがπとなるようにバイアス電源を調整すれば,キャリア成分を含む2次成分など偶数次の成分は0となり,平均強度はほぼ2|ARF|となる。3次以上の成分は,それほど強く残らないので,結局1次の成分(USB及びLSB)が残留することとなり,これによりDSB−SC変調が達成される。
【0064】
ただし,実際のDSB-SC変調システムなどの光振幅変調システムでは,キャリアや高次成分(特に3次成分)が残留し,その結果消光比が無限大とならない。そこで,本発明の第1の側面に係る光振幅変調(1)は,3倍信号生成部(17)が,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成する。そして,位相調整部(18)が前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する。信号強度調整部(19)が電気信号(3fm)の強度を調整する。そして,変調信号としてfmの信号を印加した際に発生する3次成分(f0±3fm)について,変調信号として3 fmの信号をその1次成分(f0±3fm)が先に説明した3次成分と位相が逆で,強度が同程度となるように調整する。このような調整は,マッハツェンダー導波路からの出力をモニタしながら,手動によって行ってもよい。また,マッハツェンダー導波路からの出力をモニタしながら,制御部が信号源部から出力される信号の位相やタイミングなどを適宜調整して,好適な信号を電極(特に電極C)に印加できるようにしてもよい。この光振幅変調システムでは,周波数がfmの変調信号,周波数が3 fmの変調信号ともに電極Cに印加する。
【0065】
図4は,DSB−SC変調システムにおける光信号の強度と位相の状況を説明するための概念図である。図4(a)は,第1のアームにおける光信号スペクトルを示す概念図である。図4(b)は,第2のアームにおける光信号スペクトルを示す概念図である。図4(c)は,第1のアームにおける光信号スペクトルに位相変化+90度が加えられた状態を示す概念図である。図4(d)は,第2のアームにおける光信号スペクトルに位相変化−90度が加えられた状態を示す概念図である。図4(e)は,第1のアーム及び第2のアームからの光信号が合波点で干渉した結果である出力信号のスペクトルを示す概念図である。図4(f)は,3fm信号が印加され,3次信号成分が打ち消される状態を示す概念図である。
【0066】
このような第1のアーム及び第2のアームにおける光信号は,合波点で干渉しあう。その結果図4(e)に示されるように,理想的にはキャリア成分(f0)や2次成分(f0±2fm)が抑圧され,USB(f0+fm )及びLSB(f0−fm )成分が残留する。なお,3次成分など奇数次成分も残留するが,その強度は1次成分に比べると大きくない。
【0067】
ただし,3次成分が残留すると,消光比が高くならないので,本発明では,図4(f)に示されるように,周波数(fm )由来の3次成分と,周波数(3fm )由来の1次成分が互に抑圧しあうように,周波数(3fm )の3倍信号をも電極Cに印加する。これは,図4(f)に示されるように,周波数(fm )由来の3次成分と,周波数(3fm )由来の1次成分が位相が逆位相で,強度がほぼ同じとなるように信号源部の出力を調整することにより達成される。図4(f)に示されるように,周波数(fm )由来の3次成分と,周波数(3fm )由来の1次成分が位相が逆位相で,強度がほぼ同じとなるので,3次成分f0±3fm)が効果的に抑圧されることとなる。なお,5次,7次などさらに高次成分も残留するが,これらの強度は相対的にわずかであり,それほど問題とならない。ただし,本発明のシステムを応用すれば,たとえば変調信号として5fm,7fmなどの位相や強度(振幅)などを調整した高周波信号を電極Cに印加することで,効果的にそれらの成分を抑圧できる。
【0068】
なお,実際には,奇数次成分のみならず,光信号の搬送波(キャリア信号)又は偶数次の高次成分(例えば2次成分(f0±2fm))も含まれることとなる。別の側面に係る本発明の光変調システムでは,それらのうち少なくともひとつ以上を抑圧するように動作する。
【0069】
すなわち,各サブマッハツェンダー導波路から出力される光信号に含まれる光信号の搬送波(キャリア信号)又は高次成分(例えば2次成分(f0±2fm))の位相は,各サブマッハツェンダー導波路に印加する信号の位相やバイアス電圧によって求まるので,合波部で合波される前の,各サブマッハツェンダー導波路からの出力信号の位相を,抑圧したい成分(光信号の搬送波(キャリア信号)又は高次成分(例えば2次成分(f0±2fm)))の位相が逆位相となるように制御する。そのように制御するので,抑圧したい成分が効果的に抑圧されることとなる。
【0070】
本発明の光変調システムは,基板,基板上に設けられた導波路,電極,信号源,測定部,制御部などからなる。そして,光導波路の形成方法としては,チタン拡散法等の内拡散法やプロトン交換法など公知の形成方法を利用できる。すなわち,本発明の光変調システムは,例えば以下のようにして製造できる。まず,ニオブ酸リチウムのウエハー上に,フォトリソグラフィー法によって,チタンをパターニングし,熱拡散法によってチタンを拡散させ,光導波路を形成する。この際の条件は,チタンの厚さを100〜2000オングストロームとし,拡散温度を500〜2000℃とし,拡散時間を10〜40時間としすればよい。基板の主面に,二酸化珪素の絶縁バッファ層(厚さ0.5−2μm)を形成する。次いで,これらの上に厚さ15−30μmの金属メッキからなる電極を形成する。次いでウエハーを切断する。このようして,チタン拡散導波路が形成された光変調器が形成される。
【0071】
光変調システムは,たとえば以下のようにして製造できる。まず基板上に導波路を形成する。導波路は,ニオブ酸リチウム基板表面に,プロトン交換法やチタン熱拡散法を施すことにより設けることができる。例えば,フォトリソグラフィー技術によってLN基板上に数マイクロメートル程度のTi金属のストライプを,LN基板上に列をなした状態で作製する。その後,LN基板を1000℃近辺の高温にさらしてTi金属を当該基板内部に拡散させる。このようにすれば,LN基板上に導波路を形成できる。
【0072】
また,電極は上記と同様にして製造できる。例えば,電極を形成するため,光導波路 の形成と同様にフォトリソグラフィー技術によって,同一幅で形成した多数の導波路の両脇に対して電極間ギャップが1マイクロメートル〜50マイクロメートル程度になるように形成することができる。
【0073】
なお,シリコン基板を用いる場合は,たとえば以下のようにして製造できる。シリコン(Si)基板上に火炎堆積法によって二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする下部クラッド層を堆積し,次に,二酸化ゲルマニウム(GeO2)をドーパントとして添加した二酸化シリコン(SiO2)を主成分とするコア層を堆積する。その後,電気炉で透明ガラス化する。次に,エッチングして光導波路部分を作製し,再び二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする上部クラッド層を堆積する。そして,薄膜ヒータ型熱光学強度変調器及び薄膜ヒータ型熱光学位相変調器を上部クラッド層に形成する。
【0074】
図5は,本発明の第2の側面に係る光振幅変調システムの概略構成図である。図5に示されるように,本発明の第2の側面に係る光振幅変調システムは,前記第3の電極(電極C)(13)が,前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCA電極)(21)と,前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCB電極)(22)とを具備する請求項1に記載の光振幅変調システムである。
【0075】
このように,MZCA電極とMZCB電極とを具備するので(すなわちメインマッハツェンダー用電極(電極C)が2極電極であるので),抑圧したい成分(キャリア,2次,3次成分など)の位相を逆位相となるように制御して,効果的に抑圧したい成分を抑圧できることとなる。
本発明の第2の側面に係る光振幅変調システムの動作を以下に説明する。サブマッハツェンダー導波路の並列する4つの光位相変調器に,それぞれの位相差が90°となるようにバイアス電圧をDCA電極,DCB電極に印加する。これらの電気信号の位相差や光信号の位相差は,適宜調整すればよいが,基本的には90°の整数倍ずれるように調整する。
【0076】
理想的には,サブマッハツェンダー導波路から各RF信号の周波数分だけ周波数がシフトした光が出力される。しかし,実際には,これらの光信号には,光信号の搬送波(キャリア信号)又は高次成分(例えば2次成分(f0±2fm))が含まれることとなる。本発明の光変調システムでは,それらのうち少なくともひとつ以上を抑圧するように動作する。
【0077】
すなわち,各サブマッハツェンダー導波路から出力される光信号に含まれる光信号の搬送波(キャリア信号)又は高次成分(例えば2次成分(f0±2fm))の位相は,各サブマッハツェンダー導波路に印加する信号の位相やバイアス電圧によって求まるので,合波部で合波される前の,各サブマッハツェンダー導波路からの出力信号の位相を,抑圧したい成分(光信号の搬送波(キャリア信号)又は高次成分(例えば2次成分(f0±2fm)))の位相が逆位相となるように制御する。そのように制御するので,抑圧したい成分が効果的に抑圧されることとなる。
【0078】
図6は,本発明の第3の側面に係る光振幅変調システムの基本構成を示す概略図である。図6に示されるように,本発明の第3の側面に係る光振幅変調システムが,前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(31),又は前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(32)のいずれか又は両方を具備する上記の光振幅変調システムに関する。
【0079】
このように光強度補正機構(たとえば,強度変調器)を具備するので,効果的に抑圧したい成分の大きさを同程度に調整するので,逆位相となるように調整された抑圧したい成分を効果的に抑圧できることとなる。そして,位相制御については,先に説明した第2の側面に係る光振幅変調システムの構成を採用してもよい。
【0080】
図7は,本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムの基本構成を示す概略図である。図7に示されるように,本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムは,光振幅変調器としての上記に記載の光振幅変調システムと,前記光振幅変調器の出力光または入力光に変調を加えるための位相変調器又は強度変調器のいずれかまたは両方と,前記光振幅変調器の変調信号と前記位相変調器又は強度変調器の変調信号との変調時間を調整するための制御部と,を具備する光振幅変調システムである。図7においては,光振幅変調器の出力光に位相変調器又は強度変調器を置き,変調を加えるものを図示しているが,光振幅変調器の上流に位相変調器又は強度変調器をおいて,光振幅変調器の入力光を変調するものも同様に機能する。なお,図中PMは,位相変調器を示し,IMは強度変調器を示す。位相変調器は,たとえば導波路に電界を印加することにより変調する光信号の位相変調量を制御できるものがあげられる。具体的には,導波路と導波路に電界を印加できるようにされた電極とを具備するものがあげられる。
【0081】
本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムは,光振幅変調器と,光振幅変調器の出力光または光振幅変調器への入力光に変調を加える位相・強度変調器(具体的には2電極MZ型変調器)とを具備する光振幅変調システムなどに関する。すなわち,光DSB-SC変調器などの光振幅変調器の出力には,抑圧しきれないキャリア成分などが残留するので,消光比が高くできない。そこで,光振幅変調器からの出力光に対し位相変調及び/又は強度変調を施すか,又は抑圧しきれない成分が打ち消されるように入力光に変調を施す。この際,サイト゛ハ゛ント゛由来のサイト゛ハ゛ント゛(キャリアまたは高次成分と周波数が一致する)をキャリア成分を打ち消すよう(又は高次成分を打ち消すよう)に,位相とタイミングとを調整する。このようにすれば,キャリア成分(又は高次成分)を抑圧できるので,高い消光比変調を得ることができる光振幅変調システムを得ることができる。
【0082】
本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムの好ましい態様は,前記制御部は,前記光振幅変調器からの出力光の両側波帯信号のいずれか又は両方を前記位相変調器又は強度変調器が変調することにより生ずる両側波帯信号のいずれかが,前記光振幅変調器の出力光のうち光搬送波信号又は高次光信号の周波数と一致し,前記光搬送波信号又は高次光信号を打ち消すように制御するか,又は前記光変調器への入力光を前記位相変調器又は強度変調器が変調することにより両側波帯信号を生成し,それが光振幅変調器へと入力して,さらにそれぞれの光信号(USB信号及びLSB信号)ごとに両側波帯信号を生ずるので,そのようにして生ずる両側波帯信号(USB信号又はLSB信号)のいずれかが,前記光振幅変調器の出力光のうち光搬送波信号又は高次光信号の周波数と一致し,前記光搬送波信号又は高次光信号を打ち消すように制御する上記の光振幅変調システムである。
【0083】
以下,光変調器として,位相変調器(PM)及び強度変調器(IM)をこの順で接続した本発明の第4の側面に係る光変調システムにおける光信号のスペクトルについて説明する。図8は,第4の側面に係る光変調システムにおける位相変調器から出力される変調信号の例を示す概念図である。この例は,1次の側波帯信号(サイト゛ハ゛ント゛)の,サイト゛ハ゛ント゛を用いて,キャリア信号成分を打ち消すものの例を示すものである。図8に示されるとおり,位相変調器から出力される変調信号は,サイト゛ハ゛ント゛信号(+1次,-1次),キャリア信号,又は,図示しない高次成分信号のうちいずれか又は2つ以上の光位相が変調される。図では1次成分の位相が変調されている。具体的には,位相変調器は,打ち消したい光信号(キャリア信号又は高次成分信号)と,それを打ち消すために利用するサイト゛ハ゛ント゛信号の強度変調器による変調後の位相を把握し,位相変調器はそれらの信号の光変調器による変調後の位相が逆位相になるように制御する。すなわち,図8の例では,抑圧しきれず残留しているキャリア信号成分と,サイト゛ハ゛ント゛信号との位相がもともとπ/2ずれているので,位相変調器が,制御部の指令を受けて,サイト゛ハ゛ント゛信号の位相を更にπ/2ずらすように電極に印加する電圧を制御する。これにより,キャリア信号成分とサイト゛ハ゛ント゛信号との位相がπずれる(すなわち逆位相となる)こととなる。
【0084】
図9は,強度変調器から出力される変調信号を説明するための概念図である。図10は,強度変調器から出力される変調信号を示す概念図である。図9に示されるとおり,強度変調器から出力される変調信号は,打ち消したい光信号(キャリア信号又は高次成分信号)と,それを打ち消すためのサイト゛ハ゛ント゛信号との周波数が一致し,位相が逆位相となる。図9では,キャリア信号と,USB信号のLSB信号やLSB信号のUSB信号の位相が逆位相となる。よって,図10に示されるとおり,強度変調器から出力される変調信号は,打ち消したい信号の強度が弱められる(理想的には抑圧される)こととなる。
【0085】
図11は,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムを説明するための図である。図11(a)は,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムの好ましい実施態様を示し,図11(b)は別の実施態様を示す。図11に示されるように,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムは,前記合波部(6)で合波された光信号が入力するサーキュレータ(42)と,前記サーキュレータからの出力光が入射するファイバグレーティング(43)とを具備する,上記に記載の光振幅変調システムである。具体的には,光変調器としての上記の光振幅変調システムと,前記光変調器の出力信号が入力するサーキュレータと,前記サーキュレータからの出力光が入射し,前記光変調器の所望の光信号成分が反射し,それ以外の光信号成分が透過するファイバグレーティングと,前記ファイバグレーティングを透過した光信号を検出する光検出器と,前記光検出器が検出した光信号に基づいて,前記光変調器に印加する信号源から出力される信号を制御する制御部とを具備する光振幅変調システムである。このような態様の光振幅変調システムは,ファイバグレーティングとサーキュレータとにより不要成分を取り除くと共に,取り除いた成分をフィードバック信号として利用しうるので好ましい。
【0086】
具体的には,ファイバグレーティング(43)は,出力成分として欲しい成分のみを反射するように設定しておくものがあげられる。すると,サーキュレータ(42)からファイバグレーティング(43)に入射した光信号のうち,必要な成分(たとえば,(f0±fm)成分)がファイバグレーティングにより反射され,サーキュレータ(42)に入力される。そして,ファイバグレーティングを介してサーキュレータに入射した光信号は,合波部ではなく,出力部へと伝えられる。一方,ファイバグレーティングを透過した光信号は,必要な成分以外の成分である。よって,ファイバグレーティングにより不要成分が取り除かれるので,より理想的なスペクトルを有する光信号を得ることができることとなる。
【0087】
一方,ファイバグレーティングにより取り除かれた光信号を光検出器(44)が検出して,検出信号を制御部(23)へ伝え,必要な成分(たとえば,(f0±fm)成分)以外の成分が少なくなるように信号源系(16)の信号を制御するものは本発明の好ましい実施態様である。具体的には,本発明の第6の側面に係る光振幅変調システムと併用して,各種信号源に与える電圧値を調整することで,必要な成分以外の成分を軽減することができる。
【0088】
なお,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムは,好ましくはDSB-SC変調システムである。この態様の光振幅変調システムでは,たとえば,ファイバグレーティングにより反射される光周波数を(f0±fm)と設定すればよい。なお,(f0+fm)又は(f0−fm)が反射するように設定してもよい。この場合は,SSB変調システムとして利用しうる。
【0089】
また,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムは,図11(b)に示されるように必要な成分が,ファイバグレーティングを透過するように設定してもよい。その場合,出力信号から不必要な成分が反射されて軽減されることとなる。また,不必要な成分を,サーキュレータを介して検出することで,先に説明したと同様に不必要な成分を軽減するよう,制御部により信号源を制御することができることとなる。
【0090】
ファイバグレーティング(FBG)として,ユニフォームファイバグレーティング,チャープグレーティング,又はマルチセクショングレーティングを用いるものがあげられ,変調可能なファイバグレーティングであってもよい。以下,FBGについて説明する。FBGは,たとえば,位相マスクを介して紫外線を照射し,そのコアの屈折率を所定のピッチで変化させることにより得ることができる。
【0091】
ユニフォームFBGは,グレーティングの周期・屈折率などが均一なFBGである。グレーティングのピッチは,対象とする光の波長などに応じて適切な間隔のものを用いればよく,たとえば,100nm〜1000nmがあげられ,300nm〜800nmでもよい。また,グレーティングのコアに対する屈折率差として,1×10-6〜1×10-2があげられ,1×10-5〜5×10-3でもよく,1×10-4〜1×10-3でもよい。
【0092】
チャープグレーティングは,FBGの長手方向に屈折率周期やグレーティングの周期を変化させたチャープドFBGである。チャープグレーティングにより,入力信号の波長に応じて,反射する位置を異ならせることができる。チャープドFBGのグレーティングのピッチは,通常は,徐々に変化するが,対象とする光の波長などに応じて適切な間隔のものを用いればよく,たとえば,100nm〜1000nmがあげられ,300nm〜800nmでもよい。また,グレーティングのコアに対する屈折率差として,1×10-6〜1×10-2があげられ,1×10-5〜5×10-3でもよく,1×10-4〜1×10-3でもよい。
【0093】
マルチセクションFBGは,波長変化と反射点変化が離散的なFBGである。すなわち,ある範囲の波長成分の光信号は,ほぼ同じ反射点で反射するが,それと異なる範囲の波長成分は反射点が離散的に変化することとなる。マルチセクションFBGのグレーティングのピッチは,通常は,目的にあわせて調整するが,対象とする光の波長などに応じて適切な間隔のものを用いればよく,たとえば,100nm〜1000nmがあげられ,300nm〜800nmでもよい。また,グレーティングのコアに対する屈折率差として,1×10-6〜1×10-2があげられ,1×10-5〜5×10-3でもよく,1×10-4〜1×10-3でもよい。
【0094】
本発明の第6の側面に係る光振幅変調システムは,上記に記載の光振幅変調システムであって,マッハツェンダー導波路(8)からの出力信号の検出部と接続され,各電極に印加する電圧を制御する制御信号を信号源に出力する制御部であって,(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整し,(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整し,(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させ,(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する制御部を具備する,光振幅変調システムに関する。
【0095】
本発明の第6の側面に係る光振幅変調システムは,(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整する工程と,(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程と,(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させる工程と,(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程とを含む,バイアス調整方法により好適なバイアス電圧値を,好ましくは自動的に得ることができる。
【0096】
このように調整したバイアス電圧を用いれば,キャリア成分や高次成分が比較的少ない信号を用い,更に先に説明した方法によりこれらの成分を抑圧することとなるので,より効果的に抑圧したい成分を抑圧できることとなる。
【0097】
本発明の好ましい実施形態である消光比変調方法を説明する。本発明の調整方法は,基本的には以下の工程を含むものである。(i) メインMZ導波路からの出力が大きくなるように,メインMZ電極(電極C)のバイアス電圧及び2つのサブMZ電極のバイアス電圧を調整する工程と,(ii)メインMZ導波路からの出力が小さくなるように,電極Cのバイアス電圧を調整する工程と,(iii) メインMZ導波路からの出力が小さくなるように,いずれかのサブMZ電極のバイアス電圧を減少させる工程と,(iv)メインMZ導波路の出力が小さくなるように,電極Cのバイアス電圧を調整する工程とを含む。なお,上記(iii)と(iv)の工程を繰り返し行うことは,本発明の好ましい実施態様である。以下では,各工程について説明する。
【0098】
(i) メインMZ導波路からの出力が大きくなるように,電極Cのバイアス電圧及び2つのサブMZ電極のバイアス電圧を調整する工程
この工程は,メインMZ導波路からの出力が大きくなるように(好ましくはできるだけ大きくなるように,より好ましくは最大となるように),電極Cのバイアス電圧及び2つのサブMZ電極のバイアス電圧を調整する工程である。メインMZ導波路は,たとえば,測定系と連結されているので,測定系による出力値を観測しつつ,各MZ電極に印加するバイアス電圧を調整してもよい。
【0099】
また,測定系と,各バイアス電圧を供給する電源系とが制御装置により接続されており,測定系が測定した光強度が大きくなるように,各バイアス電圧の大きさを制御するようにしてもよい。制御装置は,情報を入力する入力部,情報を出力する出力部,情報を記憶する記憶部(メモリ,メインメモリを含む),各種演算を行うCPUなどの演算部とを具備する。測定系が測定した光強度に関する情報は,入力部により制御装置に入力され,メモリに記憶される。制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された光強度に関する情報を読み出す。また,制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,いずれか1つ又は2つ以上の電極に印加されるバイアス電圧を変化する信号を出力部から出力する。このようにすると,出力光の強度が変化する。この情報を読み出し,先の光強度と比較し,光強度が大きくなるようにバイアス電圧を変化させる指令を出力部から出力する。この出力信号を受けた電源は,その指令にしたがって,各電極に印加する電圧値を変化させるので,光出力が増大することとなる。
【0100】
(ii) メインMZ導波路からの出力が小さくなるように,電極Cのバイアス電圧を調整する工程
この工程は,メインMZ導波路からの出力光の強度が小さくなるように,メインMZ電極に印加されるバイアス電圧を調整するための工程である。メインMZ導波路は,図示しない測定系と連結されているので,測定系による出力値を観測しつつ,メインMZ電極に印加するバイアス電圧を調整してもよい。
【0101】
また,測定系とメインMZ電極へバイアス電圧を供給する電源系とが制御装置により接続されており,測定系が測定した光強度が小さくなるように,メインMZ電極のバイアス電圧の大きさを制御するようにしてもよい。測定系が測定した光強度に関する情報は,入力部により制御装置に入力され,メモリに記憶される。制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された光強度に関する情報を読み出す。また,制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メインMZ電極に印加されるバイアス電圧を変化する信号を出力部から出力する。このようにすると,出力光の強度が変化する。この情報を読み出し,先の光強度と比較し,光強度が小さくなるようにバイアス電圧を変化させる指令を出力部から出力する。この出力信号を受けた電源は,その指令にしたがって,メインMZ電極に印加する電圧値を変化させるので,光出力が減少することとなる。
【0102】
(iii) メインMZ導波路からの出力が小さくなるように,いずれかのサブMZ電極のバイアス電圧を減少させる工程
この工程では,メインMZ導波路からの出力が小さくなるように,いずれかのサブMZ電極のバイアス電圧を減少させる。この工程では,いずれか一方のサブMZ電極のバイアス電圧を減少させた場合に,メインMZ導波路からの出力が小さくなるので,そのメインMZ導波路からの出力が小さくなる方のサブMZ電極のバイアス電圧を小さくするように制御する。この工程で,減少又は増加する電圧値は,予め決めておいてもよい。このような変化電圧値として,0.01V〜0.5Vがあげられ,好ましくは0.05V〜0.1Vである。本工程によりメインMZ導波路からの出力強度が減少する。メインMZ導波路は,たとえば,図示しない測定系と連結されているので,測定系による出力値を観測しつつ,バイアス電圧を調整してもよい。
【0103】
また,測定系と電極A及び電極Bへバイアス電圧を供給する電源系とが制御装置により接続されており,電極A又は電極Bへ印加されるバイアス電圧の大きさを制御するようにしてもよい。この際,電圧値を変化させる電極に関する情報や,変化させる電圧値に関する情報は,メモリなどに記憶されていてもよい。制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された制御情報を読み出し,電極A又は電極Bに印加されるバイアス電圧を変化する信号を,出力部から出力する。このようにすると,電極A又は電極Bに印加されるバイアス電圧の値が,所定量だけ変化する。なお,電極A又は電極Bに印加されるバイアス電圧の値が,所定量だけ変化すると,メインMZからの出力光の強度が変化する。測定系が観測した光強度に関する情報は,入力部から入力され,メモリに記憶される。制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された光強度に関する情報を読み出し,メインMZ導波路からの光強度が小さくなるように,サブMZ電極へ印加するバイアス電圧を変化させる指令を出力部から出力する。この出力信号を受けた電源は,その指令にしたがって,電極に印加する電圧値を変化させるので,光出力が減少することとなる。
【0104】
(iv)メインMZ導波路の出力が小さくなるように,電極Cのバイアス電圧を調整する工程
この工程は,メインMZ導波路の出力が小さくなるように,電極Cのバイアス電圧を調整するための工程である。メインMZ導波路は,たとえば,図示しない測定系と連結されているので,測定系による出力値を観測しつつ,バイアス電圧を調整してもよい。なお,本工程,又は前記(iii)の工程と本工程とを,繰り返し行っても良い。
【0105】
また,測定系と電極Cへバイアス電圧を供給する電源系とが制御装置により接続されており,電極Cへ印加されるバイアス電圧の大きさを制御するようにしてもよい。制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された制御情報を読み出し,電極Cに印加されるバイアス電圧を変化する信号を,出力部から出力する。このようにすると,電極Cに印加されるバイアス電圧の値が,所定量だけ変化する。
【0106】
また,制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された制御情報や,出力光に関する情報を読み出し,バイアス電圧の調整を止めるという判断をしても良い。また,測定系からの出力光の強度情報をフィードバックし,バイアス電圧の調整をし続けても良い。
【0107】
本発明の第7の側面に係る光変調システムは,光変調器と,前記光変調器の出力信号が入力するサーキュレータ(42)と,前記サーキュレータからの出力光が入射し,前記光変調器の所望の光信号成分が反射し,それ以外の光信号成分が透過するファイバグレーティング(43)と,前記ファイバグレーティングを透過した光信号を検出する光検出器(44)と,前記光検出器が検出した光信号に基づいて,前記光変調器に印加する信号源(16)から出力される信号を制御する制御部(23)とを具備する光変調システムである。このようなシステムでは,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムと同様にして,所定の光信号を効果的に抽出し,しかも不要な光信号成分を分離してその強度が弱くなるよう信号源系を制御するので,より効果的に不要な成分を軽減できることとなる。
【0108】
本発明の第7の側面に係る光変調システムは,好ましくは,前記光変調器は,光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;を具備する上記に記載の光変調システムである。
【0109】
本発明の第7の側面に係る光変調システムの構成や動作は,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムにおいて説明したとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の光変調器の変調方法によれば,高い消光比を得ることができるので,光情報通信などの分野において好適に利用できる
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は,本発明の光変調システムの概略構成図である。
【図2】図2は,本発明の光変調システムの信号源部を示すブロック図である。
【図3】図3は,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムの好ましい実施態様を示す概略図である。
【図4】図4は,DSB−SC変調システムにおける光信号の強度と位相の状況を説明するための概念図である。図4(a)は,第1のアームにおける光信号スペクトルを示す概念図である。図4(b)は,第2のアームにおける光信号スペクトルを示す概念図である。図4(c)は,第1のアームにおける光信号スペクトルに位相変化+90度が加えられた状態を示す概念図である。図4(d)は,第2のアームにおける光信号スペクトルに位相変化−90度が加えられた状態を示す概念図である。図4(e)は,第1のアーム及び第2のアームからの光信号が合波点で干渉した結果である出力信号のスペクトルを示す概念図である。図4(f)は,3fm信号が印加され,3次信号成分が打ち消される状態を示す概念図である。
【図5】図5は,本発明の第2の側面に係る光振幅変調システムの概略構成図である。
【図6】図6は,本発明の第3の側面に係る光振幅変調システムの基本構成を示す概略図である。
【図7】図7は,本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムの基本構成を示す概略図である。
【図8】図8は,第4の側面に係る光変調システムにおける位相変調器から出力される変調信号の例を示す概念図である。
【図9】図9は,強度変調器から出力される変調信号を説明するための概念図である。
【図10】図10は,強度変調器から出力される変調信号を示す概念図である。
【図11】図11は,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムの基本構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0112】
1 光振幅変調システム
2 光信号の入力部
3 分岐部
4 第1のアーム
5 第2のアーム
6 合波部
7 光信号の出力部
8 マッハツェンダー導波路
9 第1の強度変調器
10 第2の強度変調器
11 第1の電極(電極A
12 第2の電極(電極B)
13 第3の電極(電極C)
14 第1の信号源
15 第2の信号源(高周波信号源)
16 信号源部
17 3倍信号生成部
18 位相調整部
19 信号強度調整部
【技術分野】
【0001】
本発明は,光振幅変調システムなどに関する。より詳しく説明すると,本発明は,DSB変調などの際に生じる高次成分を抑圧することで高い消光比変調を得ることができる光振幅変調システムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信において、光に信号を乗せるために光を変調する必要がある。光変調には、半導体レーザの駆動パワーを変調する直接変調と、半導体レーザからの光を光源以外の手段で変調する外部変調とがある。外部変調で使用される変調器を一般に光変調器とよぶ。光変調器では、変調器に信号に応じて物理的変化を起こして、光の強度、位相などを変調する。光変調器の技術課題として、駆動電圧の低減、変調効率向上のための高消光比、広帯域化、高速化および損失低減のための高光利用効率とがある。すなわち,高い消光比を持った光変調器の開発が望まれている。なお,消光比とは,光の強度が最も高い時の光強度と光の強度が最も弱くなる時の光強度の比を意味する。
【0003】
光信号の周波数をシフトして出力するものに光単側波帯変調器(光SSB(Single Slide-Band)変調器)がある(川西哲也,井筒雅之,"光SSB変調器を用いた光周波数シフター",信学技報,TECHNICAL REPORT OF IEICE, OCS2002-49, PS2002-33, OFT2002-30(2002-08)。
【0004】
また,光SSB変調器を改良した光FSK変調器も知られている(非特許文献1[T. Kawanishi and M. Izutsu, “Optical FSK modulator using an integrated light wave circuit consisting of four optical phase modulator”, CPT 2004 G-2, Tokyo, Japan, 14-16 Jan.2004],非特許文献2[川西哲也ら“FSK/IM同時変調の解析および応用”信学技法, Tech. Rep. of IEICE. EMD2004-47, CPM2004-73, OPE2004-130, LQE2004-45(2004-08), pp.41-46] 参照)。
【0005】
なお,光SSB変調器において,3次成分を除去するために,周波数を制御した信号を印加すると共に,3次成分と光信号が逆位相となるように制御した電気信号を印加する技術が知られている(下記特許文献1)。
【0006】
一方,キャリア信号を抑圧した,DSB−SC変調器も知られているが,この変調器においては,とくに奇数次の高次成分が生ずるものの,それらがそれほど問題となることはなかった。また,上記の光SSB変調器とDSB−SC変調器では,印加する電圧値や電圧のかけ方が大きく違うので,SSB変調器において用いられた3次成分の除去方法をそのまま利用することはできないという問題がある。
【特許文献1】特開2004−77835号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,新規な光振幅変調システムを提供することを目的とする。
【0008】
本発明は,3次成分などを抑圧でき,高い消光比が得られる光振幅変調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では,DSB-SC変調などの光変調を行う際に,変調信号としてfmの信号を印加した際に発生する3次成分(f0±3fm)について,変調信号として3 fmの信号を,その変調信号により発生する光信号の1次成分(f0±3fm)が先に説明した3次成分と位相が逆で,強度が同程度となるように調整したものを印加すれば,それらが抑圧しあうので高い消光比を有するDSB-SC変調などの光振幅変調を達成できるという知見に基づくものである。
【0010】
すなわち,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システム(1)は,光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号を伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12),及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;を具備し,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)は,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成するための3倍信号生成部(17)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する位相調整部(18)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)又は前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の強度を調整する信号強度調整部(19)とを具備する。
【0011】
本発明の第1の側面に係る光振幅変調システム(1)は,3倍信号生成部(17)が,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)である3倍信号を生成する。そして,位相調整部(18)が前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する。信号強度調整部(19)が電気信号(3fm)の強度を調整する。そして,変調信号などの基本信号としてfmの信号を印加した際に発生する3次成分(f0±3fm)について,基本信号の周波数成分の3倍周波数(3 fm)を有する3倍信号をその1次成分(f0±3fm)が先に説明した3次成分と位相が逆で,強度が同程度となるように調整して印加するので,それらが抑圧しあって,高い消光比を有するDSB-SC変調などの光振幅変調を達成できる。
【0012】
なお,本発明の光振幅変調では,周波数がfmの変調信号,周波数が3 fmの変調信号ともに電極Cに印加する。
【0013】
本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムは,好ましくは,前記第1の強度変調器(9)が,前記第1の電極(電極A)(11)を具備するマッハツェンダー導波路であり,前記第2の強度変調器(10)が,前記第2の電極(電極B)(12)を具備するマッハツェンダー導波路である。
【0014】
なお,3次成分以外の成分についても,消去したい光信号成分について,逆位相で大きさが同程度となるような光信号が得られるように調整した電気信号を電極Cに印加することで抑圧することは,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムの好ましい実施態様である。なお,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムは,好ましくは,DSB-SC変調器として利用される。
【0015】
本発明の第2の側面に係る光振幅変調システムは,前記第3の電極(電極C)(13)は,前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCA電極)(21)と,前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCB電極)(22)とを具備する請求項1に記載の光振幅変調システムである。
【0016】
このように,MZCA電極とMZCB電極とを具備するので(すなわちメインマッハツェンダー用電極(電極C)が2極電極であるので),抑圧したい成分(キャリア,2次,3次成分など)の位相を逆位相となるように制御して,効果的に抑圧したい成分を抑圧できることとなる。特に,DSB−SC変調システムでは,理想的には発生せず,実際にもそれほど強度がない,キャリア成分や2次成分などの偶数次成分をも効果的に消去できることとなる。
【0017】
本発明の第3の側面に係る光振幅変調システムは,前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(31),又は前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(32)のいずれか又は両方を具備する上記の光振幅変調システムに関する。
【0018】
このように光強度補正機構(たとえば,強度変調器)を具備するので,効果的に抑圧したい成分の大きさを同程度に調整するので,逆位相となるように調整された抑圧したい成分を効果的に抑圧できることとなる。なお,本発明の第3の側面に係る光振幅変調システムは,好ましくは,DSB-SC変調器として利用される。
【0019】
本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムは,光振幅変調器としての上記に記載の光振幅変調システムと,前記光振幅変調器の出力光または又は前記光変調器への入力光に変調を加えるための位相変調器又は強度変調器のいずれかまたは両方と,前記光振幅変調器の変調信号と前記位相変調器又は強度変調器の変調信号との変調時間を調整するための制御部と,を具備する光振幅変調システムである。
【0020】
本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムは,光振幅変調器と,光振幅変調器の出力光または又は前記光変調器への入力光に変調を加える位相・強度変調器(具体的には2電極MZ型変調器)とを具備する光振幅変調システムなどに関する。すなわち,光振幅変調の出力には,抑圧しきれないキャリア成分などが残留するので,消光比が高くできない。そこで,光振幅変調からの出力光に対し位相変調及び/又は強度変調を施すか,又は抑圧しきれない成分が打ち消されるように入力光に変調を施す。この際,サイト゛ハ゛ント゛由来のサイト゛ハ゛ント゛(キャリアまたは高次成分と周波数が一致する)をキャリア成分を打ち消すよう(又は高次成分を打ち消すよう)に,位相とタイミングとを調整する。このようにすれば,キャリア成分(又は高次成分)を抑圧できるので,高い消光比変調を得ることができる光振幅変調システムを得ることができる。
【0021】
本発明の第4の側面に係る光振幅変調の好ましい態様は,前記制御部は,前記光振幅変調器からの出力光の両側波帯信号のいずれか又は両方を前記位相変調器又は強度変調器が変調することにより生ずる両側波帯信号のいずれかが,前記光振幅変調器の出力光のうち光搬送波信号又は高次光信号の周波数と一致し,前記光搬送波信号又は高次光信号を打ち消すように制御するか,又は前記光変調器への入力光を前記位相変調器又は強度変調器が変調することにより両側波帯信号を生成し,それが光振幅変調器へと入力して,さらにそれぞれの光信号(USB信号及びLSB信号)ごとに両側波帯信号を生ずるので,そのようにして生ずる両側波帯信号(USB信号又はLSB信号)のいずれかが,前記光振幅変調器の出力光のうち光搬送波信号又は高次光信号の周波数と一致し,前記光搬送波信号又は高次光信号を打ち消すように制御する上記の光振幅変調システムである。なお,本発明の第4の側面に係る光振幅変調の好ましい実施態様は,DSB-SC変調システムとしての利用態様である。
【0022】
本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムは,前記合波部で合波された光信号が入力するサーキュレータと,前記サーキュレータからの出力光が入射するファイバグレーティングとを具備する,上記に記載の光振幅変調システムである。このような態様の光振幅変調システムは,ファイバグレーティングとサーキュレータとにより不要成分を取り除くと共に,取り除いた成分をフィードバック信号として利用しうるので好ましい。
【0023】
本発明の第6の側面に係る光振幅変調システムは,上記に記載の光振幅変調システムであって,マッハツェンダー導波路(8)からの出力信号の検出部と接続され,各電極に印加する電圧を制御する制御信号を信号源に出力する制御部であって,(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整し,(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整し,(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させ,(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する制御部を具備する,光振幅変調システムに関する。
【0024】
本発明の第6の側面に係る光振幅変調システムは,(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整する工程と,(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程と,(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させる工程と,(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程とを含む,バイアス調整方法により好適なバイアス電圧値を,好ましくは自動的に得ることができる。
【0025】
このように調整したバイアス電圧を用いれば,キャリア成分や高次成分が比較的少ない信号を用い,更に先に説明した方法によりこれらの成分を抑圧することとなるので,より効果的に抑圧したい成分を抑圧できることとなる。
【0026】
本発明の第7の側面に係る光変調システムは,光変調器と,前記光変調器の出力信号が入力するサーキュレータと,前記サーキュレータからの出力光が入射し,前記光変調器の所望の光信号成分が反射し,それ以外の光信号成分が透過するファイバグレーティングと,前記ファイバグレーティングを透過した光信号を検出する光検出器と,前記光検出器が検出した光信号に基づいて,前記光変調器に印加する信号源から出力される信号を制御する制御部とを具備する光変調システムである。このようなシステムでは,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムと同様にして,所定の光信号を効果的に抽出し,しかも不要な光信号成分を分離してその強度が弱くなるよう信号源系を制御するので,より効果的に不要な成分を軽減できることとなる。
【0027】
本発明の第7の側面に係る光変調システムは,好ましくは,前記光変調器は,光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;を具備する上記に記載の光変調システムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば,キャリア成分(f0)や高次成分(例えば2次成分(f0±2fm))などを抑圧でき,高い消光比を得られる光振幅変調システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下,図面にしたがって,本発明を説明する。図1は,本発明の光振幅変調システムの概略構成図である。図2は,本発明の光振幅変調システムの信号源部を示すブロック図である。図1,図2に示されるように,本発明の光振幅変調システム(1)は,光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅(強度)を制御する第1の強度変調器(9)と;前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅(強度)を制御する第2の強度変調器(10)と;前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;を具備し,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)は,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成するための3倍信号生成部(17)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する位相調整部(18)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)又は前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の強度を調整する信号強度調整部(19)とを具備する光振幅変調システム(1)に関する。なお,本発明の光振幅変調システムは,好ましくは光搬送波抑圧両側波帯(DSB-SC)変調システム(1)として利用される。
【0030】
本発明の第1の側面に係る光振幅変調(1)は,3倍信号生成部(17)が,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)である3倍信号を生成する。そして,位相調整部(18)が前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する。信号強度調整部(19)が電気信号(3fm)の強度を調整する。そして,変調信号などの基本信号としてfmの信号を印加した際に発生する3次成分(f0±3fm)について,周波数が3 fmの3倍信号を,光信号の1次成分(f0±3fm)が先に説明した光信号の3次成分と位相が逆で,強度が同程度となるように調整して,印加する。これにより,それらが抑圧しあって,高い消光比を有する光振幅変調を達成できる。
【0031】
なお,本発明の光振幅変調システムでは,好ましくは,周波数がfmの基本信号及び周波数が3 fmの3倍信号ともに電極Cに印加する。
【0032】
図3は,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムの好ましい実施態様を示す概略図である。図3に示されるように,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムの好ましい実施態様は,前記第1の強度変調器(9)が,前記第1の電極(電極A)(11)を具備するマッハツェンダー導波路であり,前記第2の強度変調器(10)が,前記第2の電極(電極B)(12)を具備するマッハツェンダー導波路である。
【0033】
図3に示されるようにこの態様の光振幅変調システムは,光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;を具備し,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)は,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成するための3倍信号生成部(17)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する位相調整部(18)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)又は前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の強度を調整する信号強度調整部(19)とを具備する光振幅変調システムであって,前記第1の強度変調器(9)が,前記第1の電極(電極A)(11)を具備するマッハツェンダー導波路であり,前記第2の強度変調器(10)が,前記第2の電極(電極B)(12)を具備するマッハツェンダー導波路である光振幅変調システム(1)に関する。
【0034】
この光振幅変調システムでは,マッハツェンダー導波路の各アームに設けられる強度変調器がそれぞれマッハツェンダー導波路として構成されるので,全体をメインマッハツェンダー導波路(MZC),各アームに設けられるマッハツェンダー導波路をサブマッハツェンダー導波路(MZA,及びMZB)などともよぶ。MZA,MZB及びMZCに設けられる電極をそれぞれ電極A,電極B及び電極Cなどとよぶ。MZA,MZB及びMZCにバイアス電圧を印加するための電極をDCA電極,DCB電極及びDCC電極などとよぶ。また,光振幅変調システムでは,変調信号を電極Cに印加する。この変調信号(通常は,ラジオ周波数信号)が印加される電極Cのうち,MZA,MZB及びMZCを伝播する光信号に変調を加えるものを,概念的にRFA電極,RFB電極及びRFC電極などとよぶ。
【0035】
この実施態様に係る光振幅変調システムでは,電極AがDCA電極として機能し,電極BがDCB電極として機能し,電極CがDCC電極,RFA電極,RFB電極及びRFC電極として機能する。
【0036】
以下,この実施態様に係る光振幅変調システムの各要素について説明する。マッハツェンダー導波路(8)は,図1に示されるものと同様であり,さらに図3に示されるように光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号を伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含む。
【0037】
マッハツェンダー導波路は,例えば,略六角形状の導波路(これが2つのアームを構成する)を具備し,並列する2つの位相変調器を具備するようにして構成される。位相変調器は,導波路に沿った電極により達成できる。
【0038】
通常,マッハツェンダー導波路や電極は基板上に設けられる。基板及び各導波路は,光を伝播することができるものであれば,特に限定されない。例えば,LN基板上に,Ti拡散のニオブ酸リチウム導波路を形成しても良いし,シリコン(Si)基板上に二酸化シリコン(SiO2)導波路を形成しても良い。また,InPやGaAs基板上にInGaAsP,GaAlAs導波路を形成した光半導体導波路を用いても良い。基板として,XカットZ軸伝搬となるように切り出されたニオブ酸リチウム (LiNbO3:LN)が好ましい。これは大きな電気光学効果を利用できるため低電力駆動が可能であり,かつ優れた応答速度が得られるためである。この基板のXカット面(YZ面)の表面に光導波路が形成され,導波光はZ軸(光学軸)に沿って伝搬することとなる。Xカット以外のニオブ酸リチウム基板を用いても良い。また,基板として,電気光学効果を有する三方晶系,六方晶系といった一軸性結晶,又は結晶の点群がC3V,C3,D3,C3h,D3hである材料を用いることができる。これらの材料は,電界の印加によって屈折率変化が伝搬光のモードによって異符号となるような屈折率調整機能を有する。具体例としては,ニオブ酸リチウムの他に,タンタル酸リチウム (LiTO3:LT),β−BaB2O4(略称BBO),LiIO3等を用いることができる。
【0039】
基板の大きさは,所定の導波路を形成できる大きさであれば,特に限定されない。各導波路の幅,長さ,及び深さも本発明のモジュールがその機能を発揮しうる程度のものであれば特に限定されない。各導波路の幅としては,たとえば1〜20マイクロメートル程度,好ましくは5〜10マイクロメートル程度があげられる。また,導波路の深さ(厚さ)として,10nm〜1マイクロメートルがあげられ,好ましくは50nm〜200nmである。
【0040】
第1の強度変調器(9)は,前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御するものであり,第2の強度変調器(10) 前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御するものである。図1に示されるとおり,第1の強度変調器(9)及び第2の強度変調器(10)としては,前記第1の強度変調器(9)が,前記第1の電極(電極A)(11)を具備するマッハツェンダー導波路であり,前記第2の強度変調器(10)が,前記第2の電極(電極B)(12)を具備するマッハツェンダー導波路があげられる。
【0041】
強度変調器は,基本的にその入力信号の中心周波数をf0,変調周波数をfmとすると,その主な出力信号の周波数が,f0,f0±fm(f0+fmとf0−fm)などとなるものである。なお,これらのうち周波数f0の光信号の強度がもっとも強いものでもよいが,f0±fmのいずれか又は両方の光強度がf0の光強度の1/10〜1/1の強度を持つものが好ましい。
【0042】
第3の電極(電極C)(13)は,前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加される電極である。
【0043】
第1のバイアス調整電極(DCA電極)は,MZAを構成する2つのアーム(Path1及びPath3)間のバイアス電圧を制御することにより,MZAの2つのアームを伝播する光の位相を制御するための電極である。一方,第2のバイアス調整電極(DCB電極)は,MZBを構成する2つのアーム(Path2及びPath4)間のバイアス電圧を制御することにより,MZBの2つのアームを伝播する光の位相を制御するための電極である。DCA電極,及びDCB電極は,好ましくは通常直流または低周波信号が印加される。ここで低周波信号における「低周波」とは,例えば,0Hz〜500MHzの周波数を意味する。なお,この低周波信号の信号源の出力には電気信号の位相を調整する位相変調器が設けられ,出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。
【0044】
第1の変調電極(RFA電極)は,MZAを構成する2つのアームを伝播した光信号にラジオ周波数(RF)信号を印加するための電極である。一方,第2の変調電極(RFB電極)は,MZBを構成する2つのアームを伝播した光信号にRF信号を印加するための電極である。RFA電極,及びRFB電極としては,進行波型電極または共振型電極が挙げられ,好ましくは共振型電極である。
【0045】
先に説明したとおり,DCC電極とRFC電極などは,別々の電極とされてもよいし,一つの電極がそれらの機能を果たしてもよい。後者の場合は,一つの電極にバイアス電圧とラジオ周波数信号とが印加されることとなる。
【0046】
RFA電極,及びRFB電極は,好ましくは高周波電気信号源と接続される。高周波電気信号源は,RFA電極及びRFB電極へ伝達される信号を制御するためのデバイスであり,公知の高周波電気信号源を採用できる。RFA電極,及びRFB電極に入力される高周波信号の周波数(fm)として,例えば1GHz〜100GHzがあげられる。高周波電気信号源の出力としては,一定の周波数を有する正弦波があげられる。なお,この高周波電気信号源の出力には位相変調器が設けられ,出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。
【0047】
RFA電極,及びRFB電極は,たとえば金,白金などによって構成される。RFA電極,及びRFB電極の幅としては,1μm〜10μmが挙げられ,具体的には5μmが挙げられる。RFA電極,及びRFB電極の長さとしては,変調信号の波長の(fm)の0.1倍〜0.9倍が挙げられ,0.18〜0.22倍,又は0.67倍〜0.70倍が挙げられ,より好ましくは,変調信号の共振点より20〜25%短いものである。このような長さとすることで,スタブ電極との合成インピーダンスが適度な領域に留まるからである。より具体的なRFA電極,及びRFB電極の長さとしては,3250μmがあげられる。以下では,共振型電極と,進行波型電極について説明する。
【0048】
共振型光電極(共振型光変調器)は,変調信号の共振を用いて変調を行う電極である。共振型電極としては公知のものを採用でき,例えば特開2002-268025号公報,「川西哲也,及川哲,井筒雅之,"平面構造共振型光変調器",信学技報,TECHNICAL REPORT OF IEICE, IQE2001-3(2001-05)」に記載のものを採用できる。
【0049】
進行波型電極(進行波型光変調器)は,光波と電気信号を同方向に導波させ導波している間に光を変調する電極(変調器)である(例えば,西原浩,春名正光,栖原敏明著,「光集積回路」(改訂増補版)オーム社,119頁〜120頁)。進行波型電極は公知のものを採用でき,例えば,特開平11−295674号公報,特開平11−295674号公報,特開2002−169133号公報,特開2002-40381号公報,特開2000-267056号公報,特開2000-471159号公報,特開平10-133159号公報などに開示されたものを用いることができる。
【0050】
進行波型電極として,好ましくは,いわゆる対称型の接地電極配置(進行波型の信号電極の両側に,少なくとも一対の接地電極が設けられているもの)を採用するものである。このように,信号電極を挟んで接地電極を対称に配置することによって,信号電極から出力される高周波は,信号電極の左右に配置された接地電極に印加されやすくなるので,高周波の基板側への放射を,抑圧できる。
【0051】
RF電極が,RF信号用の電極と,DC信号用の電極とを兼ねたものでもよい。すなわち,RFA電極及びRFB電極のいずれか又は両方は,DC信号とRF信号とを混合して供給する給電回路(バイアス回路)と連結されている。この態様の光SSB変調器は,RF電極が給電回路(バイアス回路)と連結されているので,RF電極にRF信号(ラジオ周波数信号)とDC信号(直流信号:バイアス電圧に関する信号)を入力できる。
【0052】
なお,メインマッハツェンダー導波路(MZC)に含まれる分岐部は,光信号が前記第1のサブマッハツェンダー導波路(MZA)と前記第2のサブマッハツェンダー導波路(MZB)とへ分岐するようにされた部位であり,導波路がY字型に分岐した構成をとるものがあげられる。また,合波部は,前記第1のサブマッハツェンダー導波路(MZA)と前記第2のサブマッハツェンダー導波路(MZB)から出力される光信号が合波される部位であり,導波路がY字型に形成されたものがあげられる。上記のY字型は対象であっても,非対称であってもよい。なお,分岐部又は合波部として方向性結合器(カプラ)を用いてもよい。
【0053】
第1のメインマッハツェンダー用電極(MZCA電極)は,メインマッハツェンダー導波路(MZC)のうち,前記第1のサブマッハツェンダー導波路(MZA)の出力部と前記合波部との間の導波路の少なくとも一部に沿うように設けられた電極である。そして,少なくとも一部とは,出力信号の位相を調整できる程度の長さであればよい。この電極としては,サブマッハツェンダー導波路における電極と同様のものを設ければよい。
【0054】
第2のメインマッハツェンダー用電極(MZCB電極)は,メインマッハツェンダー導波路(MZC)のうち,前記第2のサブマッハツェンダー導波路(MZB)の出力部と前記合波部との間の導波路の少なくとも一部に沿うように設けられた電極であり,これについてはMZCA電極(11)と同様である。なお,第1のメインマッハツェンダー用電極(MZCA電極)及び前記第2のメインマッハツェンダー用電極(MZCB電極)は,それぞれが設けられる導波路部分を光位相変調器として機能させるものであってもよい。
【0055】
なお,本発明の光変調システムにおいては,各電極に印加される信号のタイミングや位相を適切に制御するため,各電極の信号源と電気的に(又は光信号により)接続された制御部が設けられることが好ましい。そのような制御部は,RFA電極,RFB電極及びRFC電極に印加される信号,すなわちRFA信号,RFB信号及びRFC信号の変調時間を調整するように機能する。すなわち,各電極による変調が,ある特定の信号に対して行われるように,光の伝播時間を考慮して調整する。この調整時間は,各電極間の距離などによって適切な値とすればよい。
【0056】
信号源部(16)は,前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)に前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,及び前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含むものがあげられる。バイアス電圧は,調整部(20)により,その強度,遅延(位相),印加タイミングなどが適宜調整されてもよい。
【0057】
前記第2の信号源(高周波信号源)(15)は,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成するための3倍信号生成部(17)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する位相調整部(18)と,前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)又は前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の強度を調整する信号強度調整部(19)とを具備するものがあげられる。
【0058】
また,制御部(PC)は,前記第1のサブマッハツェンダー導波路(MZA)とからの出力信号と前記第2のサブマッハツェンダー導波路(MZB)とからの出力信号に含まれる光搬送波信号又は特定の高次光信号の位相が180°ずれるように電極Cに印加される電圧を調整するものがあげられる。このような制御部としては,各電極の信号源と接続された処理プログラムを格納したコンピュータがあげられる。そして,コンピュータは,キーボードなどの入力装置から制御情報の入力を受けると,CPUは,たとえばメインプログラムに格納された処理プログラムを読み出し,よりプログラムの指令に従って,各種メモリから必要な情報を読み出して,適宜メモリに格納される情報を書き換え,信号源へ信号源から出力される光信号のタイミングと位相差を制御するような指令を外部出力装置から出力すればよい。なお,そのような処理プログラムとしては,コンピュータを,各サブマッハツェンダー導波路における特定の成分の位相を把握する手段と,前記手段が把握した特性の成分の位相情報を用いて,それらの位相が逆位相となるように電極Cに印加される変調信号を調整する指令を作製する手段とを具備するものとして機能させるようなものであればよい。なお,特に本発明の光振幅変調器が,DSB-SC変調器として機能する際などでは,単に電気信号の段階で3次成分などが打ち消されるように調整しても必ずしもうまく打ち消されないので,上記のような制御部により3次成分などが打ち消されるように調整することが好ましい。
【0059】
光変調システムの動作を以下に説明する。MZcの電極によって,マッハツェンダー導波路の第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)を伝播する光信号の位相差が制御される。この両アームを伝播する光信号の位相差をg(t)とする。nを整数として,g(t)が2nπであるとき,光変調システムはON状態となる。一方,g(t)が(2n+1)πであるとき,光変調システムはOFF状態となる。すなわち,この場合は,高次の放射モード光に変換され,出力まで伝播しないで放射される。このように変調システムの電極に印加される電圧を調整することでONとOFFを切り換えて,信号を出力する。
【0060】
すなわち,出力信号の強度は,|cos(g(t))/2|に比例することとなる。これが,マッハツェンダー導波路が強度変調器とよばれるゆえんである。なお,理想的なOFF状態の強度が0なので,理想的にはON状態とOFF状態の強度比が無限大となる。一方,現実にはキャリア成分や高次成分などが残留するので,OFF状態であっても強度がゼロにならない。ON状態とOFF状態の強度比である消光比は,マッハツェンダー導波路の特性を評価するうえで重要な値である。
【0061】
電極Cによるバイアス電圧によりもたらされる両アームの光信号の位相差をφBとし,電極Cに印加される変調信号の周波数を(fm)とし,g(t)が正弦波2ARFsin2πfmt+φBとすると,理想的には,1次成分(USB又はLSB)の光強度(D1)と2次成分の光強度(D2)は以下の式で表される値となる。
【0062】
【数1】
【0063】
上記の式から,φBがπとなるようにバイアス電源を調整すれば,キャリア成分を含む2次成分など偶数次の成分は0となり,平均強度はほぼ2|ARF|となる。3次以上の成分は,それほど強く残らないので,結局1次の成分(USB及びLSB)が残留することとなり,これによりDSB−SC変調が達成される。
【0064】
ただし,実際のDSB-SC変調システムなどの光振幅変調システムでは,キャリアや高次成分(特に3次成分)が残留し,その結果消光比が無限大とならない。そこで,本発明の第1の側面に係る光振幅変調(1)は,3倍信号生成部(17)が,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成する。そして,位相調整部(18)が前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する。信号強度調整部(19)が電気信号(3fm)の強度を調整する。そして,変調信号としてfmの信号を印加した際に発生する3次成分(f0±3fm)について,変調信号として3 fmの信号をその1次成分(f0±3fm)が先に説明した3次成分と位相が逆で,強度が同程度となるように調整する。このような調整は,マッハツェンダー導波路からの出力をモニタしながら,手動によって行ってもよい。また,マッハツェンダー導波路からの出力をモニタしながら,制御部が信号源部から出力される信号の位相やタイミングなどを適宜調整して,好適な信号を電極(特に電極C)に印加できるようにしてもよい。この光振幅変調システムでは,周波数がfmの変調信号,周波数が3 fmの変調信号ともに電極Cに印加する。
【0065】
図4は,DSB−SC変調システムにおける光信号の強度と位相の状況を説明するための概念図である。図4(a)は,第1のアームにおける光信号スペクトルを示す概念図である。図4(b)は,第2のアームにおける光信号スペクトルを示す概念図である。図4(c)は,第1のアームにおける光信号スペクトルに位相変化+90度が加えられた状態を示す概念図である。図4(d)は,第2のアームにおける光信号スペクトルに位相変化−90度が加えられた状態を示す概念図である。図4(e)は,第1のアーム及び第2のアームからの光信号が合波点で干渉した結果である出力信号のスペクトルを示す概念図である。図4(f)は,3fm信号が印加され,3次信号成分が打ち消される状態を示す概念図である。
【0066】
このような第1のアーム及び第2のアームにおける光信号は,合波点で干渉しあう。その結果図4(e)に示されるように,理想的にはキャリア成分(f0)や2次成分(f0±2fm)が抑圧され,USB(f0+fm )及びLSB(f0−fm )成分が残留する。なお,3次成分など奇数次成分も残留するが,その強度は1次成分に比べると大きくない。
【0067】
ただし,3次成分が残留すると,消光比が高くならないので,本発明では,図4(f)に示されるように,周波数(fm )由来の3次成分と,周波数(3fm )由来の1次成分が互に抑圧しあうように,周波数(3fm )の3倍信号をも電極Cに印加する。これは,図4(f)に示されるように,周波数(fm )由来の3次成分と,周波数(3fm )由来の1次成分が位相が逆位相で,強度がほぼ同じとなるように信号源部の出力を調整することにより達成される。図4(f)に示されるように,周波数(fm )由来の3次成分と,周波数(3fm )由来の1次成分が位相が逆位相で,強度がほぼ同じとなるので,3次成分f0±3fm)が効果的に抑圧されることとなる。なお,5次,7次などさらに高次成分も残留するが,これらの強度は相対的にわずかであり,それほど問題とならない。ただし,本発明のシステムを応用すれば,たとえば変調信号として5fm,7fmなどの位相や強度(振幅)などを調整した高周波信号を電極Cに印加することで,効果的にそれらの成分を抑圧できる。
【0068】
なお,実際には,奇数次成分のみならず,光信号の搬送波(キャリア信号)又は偶数次の高次成分(例えば2次成分(f0±2fm))も含まれることとなる。別の側面に係る本発明の光変調システムでは,それらのうち少なくともひとつ以上を抑圧するように動作する。
【0069】
すなわち,各サブマッハツェンダー導波路から出力される光信号に含まれる光信号の搬送波(キャリア信号)又は高次成分(例えば2次成分(f0±2fm))の位相は,各サブマッハツェンダー導波路に印加する信号の位相やバイアス電圧によって求まるので,合波部で合波される前の,各サブマッハツェンダー導波路からの出力信号の位相を,抑圧したい成分(光信号の搬送波(キャリア信号)又は高次成分(例えば2次成分(f0±2fm)))の位相が逆位相となるように制御する。そのように制御するので,抑圧したい成分が効果的に抑圧されることとなる。
【0070】
本発明の光変調システムは,基板,基板上に設けられた導波路,電極,信号源,測定部,制御部などからなる。そして,光導波路の形成方法としては,チタン拡散法等の内拡散法やプロトン交換法など公知の形成方法を利用できる。すなわち,本発明の光変調システムは,例えば以下のようにして製造できる。まず,ニオブ酸リチウムのウエハー上に,フォトリソグラフィー法によって,チタンをパターニングし,熱拡散法によってチタンを拡散させ,光導波路を形成する。この際の条件は,チタンの厚さを100〜2000オングストロームとし,拡散温度を500〜2000℃とし,拡散時間を10〜40時間としすればよい。基板の主面に,二酸化珪素の絶縁バッファ層(厚さ0.5−2μm)を形成する。次いで,これらの上に厚さ15−30μmの金属メッキからなる電極を形成する。次いでウエハーを切断する。このようして,チタン拡散導波路が形成された光変調器が形成される。
【0071】
光変調システムは,たとえば以下のようにして製造できる。まず基板上に導波路を形成する。導波路は,ニオブ酸リチウム基板表面に,プロトン交換法やチタン熱拡散法を施すことにより設けることができる。例えば,フォトリソグラフィー技術によってLN基板上に数マイクロメートル程度のTi金属のストライプを,LN基板上に列をなした状態で作製する。その後,LN基板を1000℃近辺の高温にさらしてTi金属を当該基板内部に拡散させる。このようにすれば,LN基板上に導波路を形成できる。
【0072】
また,電極は上記と同様にして製造できる。例えば,電極を形成するため,光導波路 の形成と同様にフォトリソグラフィー技術によって,同一幅で形成した多数の導波路の両脇に対して電極間ギャップが1マイクロメートル〜50マイクロメートル程度になるように形成することができる。
【0073】
なお,シリコン基板を用いる場合は,たとえば以下のようにして製造できる。シリコン(Si)基板上に火炎堆積法によって二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする下部クラッド層を堆積し,次に,二酸化ゲルマニウム(GeO2)をドーパントとして添加した二酸化シリコン(SiO2)を主成分とするコア層を堆積する。その後,電気炉で透明ガラス化する。次に,エッチングして光導波路部分を作製し,再び二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする上部クラッド層を堆積する。そして,薄膜ヒータ型熱光学強度変調器及び薄膜ヒータ型熱光学位相変調器を上部クラッド層に形成する。
【0074】
図5は,本発明の第2の側面に係る光振幅変調システムの概略構成図である。図5に示されるように,本発明の第2の側面に係る光振幅変調システムは,前記第3の電極(電極C)(13)が,前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCA電極)(21)と,前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCB電極)(22)とを具備する請求項1に記載の光振幅変調システムである。
【0075】
このように,MZCA電極とMZCB電極とを具備するので(すなわちメインマッハツェンダー用電極(電極C)が2極電極であるので),抑圧したい成分(キャリア,2次,3次成分など)の位相を逆位相となるように制御して,効果的に抑圧したい成分を抑圧できることとなる。
本発明の第2の側面に係る光振幅変調システムの動作を以下に説明する。サブマッハツェンダー導波路の並列する4つの光位相変調器に,それぞれの位相差が90°となるようにバイアス電圧をDCA電極,DCB電極に印加する。これらの電気信号の位相差や光信号の位相差は,適宜調整すればよいが,基本的には90°の整数倍ずれるように調整する。
【0076】
理想的には,サブマッハツェンダー導波路から各RF信号の周波数分だけ周波数がシフトした光が出力される。しかし,実際には,これらの光信号には,光信号の搬送波(キャリア信号)又は高次成分(例えば2次成分(f0±2fm))が含まれることとなる。本発明の光変調システムでは,それらのうち少なくともひとつ以上を抑圧するように動作する。
【0077】
すなわち,各サブマッハツェンダー導波路から出力される光信号に含まれる光信号の搬送波(キャリア信号)又は高次成分(例えば2次成分(f0±2fm))の位相は,各サブマッハツェンダー導波路に印加する信号の位相やバイアス電圧によって求まるので,合波部で合波される前の,各サブマッハツェンダー導波路からの出力信号の位相を,抑圧したい成分(光信号の搬送波(キャリア信号)又は高次成分(例えば2次成分(f0±2fm)))の位相が逆位相となるように制御する。そのように制御するので,抑圧したい成分が効果的に抑圧されることとなる。
【0078】
図6は,本発明の第3の側面に係る光振幅変調システムの基本構成を示す概略図である。図6に示されるように,本発明の第3の側面に係る光振幅変調システムが,前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(31),又は前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(32)のいずれか又は両方を具備する上記の光振幅変調システムに関する。
【0079】
このように光強度補正機構(たとえば,強度変調器)を具備するので,効果的に抑圧したい成分の大きさを同程度に調整するので,逆位相となるように調整された抑圧したい成分を効果的に抑圧できることとなる。そして,位相制御については,先に説明した第2の側面に係る光振幅変調システムの構成を採用してもよい。
【0080】
図7は,本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムの基本構成を示す概略図である。図7に示されるように,本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムは,光振幅変調器としての上記に記載の光振幅変調システムと,前記光振幅変調器の出力光または入力光に変調を加えるための位相変調器又は強度変調器のいずれかまたは両方と,前記光振幅変調器の変調信号と前記位相変調器又は強度変調器の変調信号との変調時間を調整するための制御部と,を具備する光振幅変調システムである。図7においては,光振幅変調器の出力光に位相変調器又は強度変調器を置き,変調を加えるものを図示しているが,光振幅変調器の上流に位相変調器又は強度変調器をおいて,光振幅変調器の入力光を変調するものも同様に機能する。なお,図中PMは,位相変調器を示し,IMは強度変調器を示す。位相変調器は,たとえば導波路に電界を印加することにより変調する光信号の位相変調量を制御できるものがあげられる。具体的には,導波路と導波路に電界を印加できるようにされた電極とを具備するものがあげられる。
【0081】
本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムは,光振幅変調器と,光振幅変調器の出力光または光振幅変調器への入力光に変調を加える位相・強度変調器(具体的には2電極MZ型変調器)とを具備する光振幅変調システムなどに関する。すなわち,光DSB-SC変調器などの光振幅変調器の出力には,抑圧しきれないキャリア成分などが残留するので,消光比が高くできない。そこで,光振幅変調器からの出力光に対し位相変調及び/又は強度変調を施すか,又は抑圧しきれない成分が打ち消されるように入力光に変調を施す。この際,サイト゛ハ゛ント゛由来のサイト゛ハ゛ント゛(キャリアまたは高次成分と周波数が一致する)をキャリア成分を打ち消すよう(又は高次成分を打ち消すよう)に,位相とタイミングとを調整する。このようにすれば,キャリア成分(又は高次成分)を抑圧できるので,高い消光比変調を得ることができる光振幅変調システムを得ることができる。
【0082】
本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムの好ましい態様は,前記制御部は,前記光振幅変調器からの出力光の両側波帯信号のいずれか又は両方を前記位相変調器又は強度変調器が変調することにより生ずる両側波帯信号のいずれかが,前記光振幅変調器の出力光のうち光搬送波信号又は高次光信号の周波数と一致し,前記光搬送波信号又は高次光信号を打ち消すように制御するか,又は前記光変調器への入力光を前記位相変調器又は強度変調器が変調することにより両側波帯信号を生成し,それが光振幅変調器へと入力して,さらにそれぞれの光信号(USB信号及びLSB信号)ごとに両側波帯信号を生ずるので,そのようにして生ずる両側波帯信号(USB信号又はLSB信号)のいずれかが,前記光振幅変調器の出力光のうち光搬送波信号又は高次光信号の周波数と一致し,前記光搬送波信号又は高次光信号を打ち消すように制御する上記の光振幅変調システムである。
【0083】
以下,光変調器として,位相変調器(PM)及び強度変調器(IM)をこの順で接続した本発明の第4の側面に係る光変調システムにおける光信号のスペクトルについて説明する。図8は,第4の側面に係る光変調システムにおける位相変調器から出力される変調信号の例を示す概念図である。この例は,1次の側波帯信号(サイト゛ハ゛ント゛)の,サイト゛ハ゛ント゛を用いて,キャリア信号成分を打ち消すものの例を示すものである。図8に示されるとおり,位相変調器から出力される変調信号は,サイト゛ハ゛ント゛信号(+1次,-1次),キャリア信号,又は,図示しない高次成分信号のうちいずれか又は2つ以上の光位相が変調される。図では1次成分の位相が変調されている。具体的には,位相変調器は,打ち消したい光信号(キャリア信号又は高次成分信号)と,それを打ち消すために利用するサイト゛ハ゛ント゛信号の強度変調器による変調後の位相を把握し,位相変調器はそれらの信号の光変調器による変調後の位相が逆位相になるように制御する。すなわち,図8の例では,抑圧しきれず残留しているキャリア信号成分と,サイト゛ハ゛ント゛信号との位相がもともとπ/2ずれているので,位相変調器が,制御部の指令を受けて,サイト゛ハ゛ント゛信号の位相を更にπ/2ずらすように電極に印加する電圧を制御する。これにより,キャリア信号成分とサイト゛ハ゛ント゛信号との位相がπずれる(すなわち逆位相となる)こととなる。
【0084】
図9は,強度変調器から出力される変調信号を説明するための概念図である。図10は,強度変調器から出力される変調信号を示す概念図である。図9に示されるとおり,強度変調器から出力される変調信号は,打ち消したい光信号(キャリア信号又は高次成分信号)と,それを打ち消すためのサイト゛ハ゛ント゛信号との周波数が一致し,位相が逆位相となる。図9では,キャリア信号と,USB信号のLSB信号やLSB信号のUSB信号の位相が逆位相となる。よって,図10に示されるとおり,強度変調器から出力される変調信号は,打ち消したい信号の強度が弱められる(理想的には抑圧される)こととなる。
【0085】
図11は,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムを説明するための図である。図11(a)は,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムの好ましい実施態様を示し,図11(b)は別の実施態様を示す。図11に示されるように,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムは,前記合波部(6)で合波された光信号が入力するサーキュレータ(42)と,前記サーキュレータからの出力光が入射するファイバグレーティング(43)とを具備する,上記に記載の光振幅変調システムである。具体的には,光変調器としての上記の光振幅変調システムと,前記光変調器の出力信号が入力するサーキュレータと,前記サーキュレータからの出力光が入射し,前記光変調器の所望の光信号成分が反射し,それ以外の光信号成分が透過するファイバグレーティングと,前記ファイバグレーティングを透過した光信号を検出する光検出器と,前記光検出器が検出した光信号に基づいて,前記光変調器に印加する信号源から出力される信号を制御する制御部とを具備する光振幅変調システムである。このような態様の光振幅変調システムは,ファイバグレーティングとサーキュレータとにより不要成分を取り除くと共に,取り除いた成分をフィードバック信号として利用しうるので好ましい。
【0086】
具体的には,ファイバグレーティング(43)は,出力成分として欲しい成分のみを反射するように設定しておくものがあげられる。すると,サーキュレータ(42)からファイバグレーティング(43)に入射した光信号のうち,必要な成分(たとえば,(f0±fm)成分)がファイバグレーティングにより反射され,サーキュレータ(42)に入力される。そして,ファイバグレーティングを介してサーキュレータに入射した光信号は,合波部ではなく,出力部へと伝えられる。一方,ファイバグレーティングを透過した光信号は,必要な成分以外の成分である。よって,ファイバグレーティングにより不要成分が取り除かれるので,より理想的なスペクトルを有する光信号を得ることができることとなる。
【0087】
一方,ファイバグレーティングにより取り除かれた光信号を光検出器(44)が検出して,検出信号を制御部(23)へ伝え,必要な成分(たとえば,(f0±fm)成分)以外の成分が少なくなるように信号源系(16)の信号を制御するものは本発明の好ましい実施態様である。具体的には,本発明の第6の側面に係る光振幅変調システムと併用して,各種信号源に与える電圧値を調整することで,必要な成分以外の成分を軽減することができる。
【0088】
なお,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムは,好ましくはDSB-SC変調システムである。この態様の光振幅変調システムでは,たとえば,ファイバグレーティングにより反射される光周波数を(f0±fm)と設定すればよい。なお,(f0+fm)又は(f0−fm)が反射するように設定してもよい。この場合は,SSB変調システムとして利用しうる。
【0089】
また,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムは,図11(b)に示されるように必要な成分が,ファイバグレーティングを透過するように設定してもよい。その場合,出力信号から不必要な成分が反射されて軽減されることとなる。また,不必要な成分を,サーキュレータを介して検出することで,先に説明したと同様に不必要な成分を軽減するよう,制御部により信号源を制御することができることとなる。
【0090】
ファイバグレーティング(FBG)として,ユニフォームファイバグレーティング,チャープグレーティング,又はマルチセクショングレーティングを用いるものがあげられ,変調可能なファイバグレーティングであってもよい。以下,FBGについて説明する。FBGは,たとえば,位相マスクを介して紫外線を照射し,そのコアの屈折率を所定のピッチで変化させることにより得ることができる。
【0091】
ユニフォームFBGは,グレーティングの周期・屈折率などが均一なFBGである。グレーティングのピッチは,対象とする光の波長などに応じて適切な間隔のものを用いればよく,たとえば,100nm〜1000nmがあげられ,300nm〜800nmでもよい。また,グレーティングのコアに対する屈折率差として,1×10-6〜1×10-2があげられ,1×10-5〜5×10-3でもよく,1×10-4〜1×10-3でもよい。
【0092】
チャープグレーティングは,FBGの長手方向に屈折率周期やグレーティングの周期を変化させたチャープドFBGである。チャープグレーティングにより,入力信号の波長に応じて,反射する位置を異ならせることができる。チャープドFBGのグレーティングのピッチは,通常は,徐々に変化するが,対象とする光の波長などに応じて適切な間隔のものを用いればよく,たとえば,100nm〜1000nmがあげられ,300nm〜800nmでもよい。また,グレーティングのコアに対する屈折率差として,1×10-6〜1×10-2があげられ,1×10-5〜5×10-3でもよく,1×10-4〜1×10-3でもよい。
【0093】
マルチセクションFBGは,波長変化と反射点変化が離散的なFBGである。すなわち,ある範囲の波長成分の光信号は,ほぼ同じ反射点で反射するが,それと異なる範囲の波長成分は反射点が離散的に変化することとなる。マルチセクションFBGのグレーティングのピッチは,通常は,目的にあわせて調整するが,対象とする光の波長などに応じて適切な間隔のものを用いればよく,たとえば,100nm〜1000nmがあげられ,300nm〜800nmでもよい。また,グレーティングのコアに対する屈折率差として,1×10-6〜1×10-2があげられ,1×10-5〜5×10-3でもよく,1×10-4〜1×10-3でもよい。
【0094】
本発明の第6の側面に係る光振幅変調システムは,上記に記載の光振幅変調システムであって,マッハツェンダー導波路(8)からの出力信号の検出部と接続され,各電極に印加する電圧を制御する制御信号を信号源に出力する制御部であって,(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整し,(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整し,(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させ,(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する制御部を具備する,光振幅変調システムに関する。
【0095】
本発明の第6の側面に係る光振幅変調システムは,(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整する工程と,(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程と,(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させる工程と,(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程とを含む,バイアス調整方法により好適なバイアス電圧値を,好ましくは自動的に得ることができる。
【0096】
このように調整したバイアス電圧を用いれば,キャリア成分や高次成分が比較的少ない信号を用い,更に先に説明した方法によりこれらの成分を抑圧することとなるので,より効果的に抑圧したい成分を抑圧できることとなる。
【0097】
本発明の好ましい実施形態である消光比変調方法を説明する。本発明の調整方法は,基本的には以下の工程を含むものである。(i) メインMZ導波路からの出力が大きくなるように,メインMZ電極(電極C)のバイアス電圧及び2つのサブMZ電極のバイアス電圧を調整する工程と,(ii)メインMZ導波路からの出力が小さくなるように,電極Cのバイアス電圧を調整する工程と,(iii) メインMZ導波路からの出力が小さくなるように,いずれかのサブMZ電極のバイアス電圧を減少させる工程と,(iv)メインMZ導波路の出力が小さくなるように,電極Cのバイアス電圧を調整する工程とを含む。なお,上記(iii)と(iv)の工程を繰り返し行うことは,本発明の好ましい実施態様である。以下では,各工程について説明する。
【0098】
(i) メインMZ導波路からの出力が大きくなるように,電極Cのバイアス電圧及び2つのサブMZ電極のバイアス電圧を調整する工程
この工程は,メインMZ導波路からの出力が大きくなるように(好ましくはできるだけ大きくなるように,より好ましくは最大となるように),電極Cのバイアス電圧及び2つのサブMZ電極のバイアス電圧を調整する工程である。メインMZ導波路は,たとえば,測定系と連結されているので,測定系による出力値を観測しつつ,各MZ電極に印加するバイアス電圧を調整してもよい。
【0099】
また,測定系と,各バイアス電圧を供給する電源系とが制御装置により接続されており,測定系が測定した光強度が大きくなるように,各バイアス電圧の大きさを制御するようにしてもよい。制御装置は,情報を入力する入力部,情報を出力する出力部,情報を記憶する記憶部(メモリ,メインメモリを含む),各種演算を行うCPUなどの演算部とを具備する。測定系が測定した光強度に関する情報は,入力部により制御装置に入力され,メモリに記憶される。制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された光強度に関する情報を読み出す。また,制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,いずれか1つ又は2つ以上の電極に印加されるバイアス電圧を変化する信号を出力部から出力する。このようにすると,出力光の強度が変化する。この情報を読み出し,先の光強度と比較し,光強度が大きくなるようにバイアス電圧を変化させる指令を出力部から出力する。この出力信号を受けた電源は,その指令にしたがって,各電極に印加する電圧値を変化させるので,光出力が増大することとなる。
【0100】
(ii) メインMZ導波路からの出力が小さくなるように,電極Cのバイアス電圧を調整する工程
この工程は,メインMZ導波路からの出力光の強度が小さくなるように,メインMZ電極に印加されるバイアス電圧を調整するための工程である。メインMZ導波路は,図示しない測定系と連結されているので,測定系による出力値を観測しつつ,メインMZ電極に印加するバイアス電圧を調整してもよい。
【0101】
また,測定系とメインMZ電極へバイアス電圧を供給する電源系とが制御装置により接続されており,測定系が測定した光強度が小さくなるように,メインMZ電極のバイアス電圧の大きさを制御するようにしてもよい。測定系が測定した光強度に関する情報は,入力部により制御装置に入力され,メモリに記憶される。制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された光強度に関する情報を読み出す。また,制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メインMZ電極に印加されるバイアス電圧を変化する信号を出力部から出力する。このようにすると,出力光の強度が変化する。この情報を読み出し,先の光強度と比較し,光強度が小さくなるようにバイアス電圧を変化させる指令を出力部から出力する。この出力信号を受けた電源は,その指令にしたがって,メインMZ電極に印加する電圧値を変化させるので,光出力が減少することとなる。
【0102】
(iii) メインMZ導波路からの出力が小さくなるように,いずれかのサブMZ電極のバイアス電圧を減少させる工程
この工程では,メインMZ導波路からの出力が小さくなるように,いずれかのサブMZ電極のバイアス電圧を減少させる。この工程では,いずれか一方のサブMZ電極のバイアス電圧を減少させた場合に,メインMZ導波路からの出力が小さくなるので,そのメインMZ導波路からの出力が小さくなる方のサブMZ電極のバイアス電圧を小さくするように制御する。この工程で,減少又は増加する電圧値は,予め決めておいてもよい。このような変化電圧値として,0.01V〜0.5Vがあげられ,好ましくは0.05V〜0.1Vである。本工程によりメインMZ導波路からの出力強度が減少する。メインMZ導波路は,たとえば,図示しない測定系と連結されているので,測定系による出力値を観測しつつ,バイアス電圧を調整してもよい。
【0103】
また,測定系と電極A及び電極Bへバイアス電圧を供給する電源系とが制御装置により接続されており,電極A又は電極Bへ印加されるバイアス電圧の大きさを制御するようにしてもよい。この際,電圧値を変化させる電極に関する情報や,変化させる電圧値に関する情報は,メモリなどに記憶されていてもよい。制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された制御情報を読み出し,電極A又は電極Bに印加されるバイアス電圧を変化する信号を,出力部から出力する。このようにすると,電極A又は電極Bに印加されるバイアス電圧の値が,所定量だけ変化する。なお,電極A又は電極Bに印加されるバイアス電圧の値が,所定量だけ変化すると,メインMZからの出力光の強度が変化する。測定系が観測した光強度に関する情報は,入力部から入力され,メモリに記憶される。制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された光強度に関する情報を読み出し,メインMZ導波路からの光強度が小さくなるように,サブMZ電極へ印加するバイアス電圧を変化させる指令を出力部から出力する。この出力信号を受けた電源は,その指令にしたがって,電極に印加する電圧値を変化させるので,光出力が減少することとなる。
【0104】
(iv)メインMZ導波路の出力が小さくなるように,電極Cのバイアス電圧を調整する工程
この工程は,メインMZ導波路の出力が小さくなるように,電極Cのバイアス電圧を調整するための工程である。メインMZ導波路は,たとえば,図示しない測定系と連結されているので,測定系による出力値を観測しつつ,バイアス電圧を調整してもよい。なお,本工程,又は前記(iii)の工程と本工程とを,繰り返し行っても良い。
【0105】
また,測定系と電極Cへバイアス電圧を供給する電源系とが制御装置により接続されており,電極Cへ印加されるバイアス電圧の大きさを制御するようにしてもよい。制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された制御情報を読み出し,電極Cに印加されるバイアス電圧を変化する信号を,出力部から出力する。このようにすると,電極Cに印加されるバイアス電圧の値が,所定量だけ変化する。
【0106】
また,制御装置のCPUは,メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け,メモリに記憶された制御情報や,出力光に関する情報を読み出し,バイアス電圧の調整を止めるという判断をしても良い。また,測定系からの出力光の強度情報をフィードバックし,バイアス電圧の調整をし続けても良い。
【0107】
本発明の第7の側面に係る光変調システムは,光変調器と,前記光変調器の出力信号が入力するサーキュレータ(42)と,前記サーキュレータからの出力光が入射し,前記光変調器の所望の光信号成分が反射し,それ以外の光信号成分が透過するファイバグレーティング(43)と,前記ファイバグレーティングを透過した光信号を検出する光検出器(44)と,前記光検出器が検出した光信号に基づいて,前記光変調器に印加する信号源(16)から出力される信号を制御する制御部(23)とを具備する光変調システムである。このようなシステムでは,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムと同様にして,所定の光信号を効果的に抽出し,しかも不要な光信号成分を分離してその強度が弱くなるよう信号源系を制御するので,より効果的に不要な成分を軽減できることとなる。
【0108】
本発明の第7の側面に係る光変調システムは,好ましくは,前記光変調器は,光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;を具備する上記に記載の光変調システムである。
【0109】
本発明の第7の側面に係る光変調システムの構成や動作は,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムにおいて説明したとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の光変調器の変調方法によれば,高い消光比を得ることができるので,光情報通信などの分野において好適に利用できる
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は,本発明の光変調システムの概略構成図である。
【図2】図2は,本発明の光変調システムの信号源部を示すブロック図である。
【図3】図3は,本発明の第1の側面に係る光振幅変調システムの好ましい実施態様を示す概略図である。
【図4】図4は,DSB−SC変調システムにおける光信号の強度と位相の状況を説明するための概念図である。図4(a)は,第1のアームにおける光信号スペクトルを示す概念図である。図4(b)は,第2のアームにおける光信号スペクトルを示す概念図である。図4(c)は,第1のアームにおける光信号スペクトルに位相変化+90度が加えられた状態を示す概念図である。図4(d)は,第2のアームにおける光信号スペクトルに位相変化−90度が加えられた状態を示す概念図である。図4(e)は,第1のアーム及び第2のアームからの光信号が合波点で干渉した結果である出力信号のスペクトルを示す概念図である。図4(f)は,3fm信号が印加され,3次信号成分が打ち消される状態を示す概念図である。
【図5】図5は,本発明の第2の側面に係る光振幅変調システムの概略構成図である。
【図6】図6は,本発明の第3の側面に係る光振幅変調システムの基本構成を示す概略図である。
【図7】図7は,本発明の第4の側面に係る光振幅変調システムの基本構成を示す概略図である。
【図8】図8は,第4の側面に係る光変調システムにおける位相変調器から出力される変調信号の例を示す概念図である。
【図9】図9は,強度変調器から出力される変調信号を説明するための概念図である。
【図10】図10は,強度変調器から出力される変調信号を示す概念図である。
【図11】図11は,本発明の第5の側面に係る光振幅変調システムの基本構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0112】
1 光振幅変調システム
2 光信号の入力部
3 分岐部
4 第1のアーム
5 第2のアーム
6 合波部
7 光信号の出力部
8 マッハツェンダー導波路
9 第1の強度変調器
10 第2の強度変調器
11 第1の電極(電極A
12 第2の電極(電極B)
13 第3の電極(電極C)
14 第1の信号源
15 第2の信号源(高周波信号源)
16 信号源部
17 3倍信号生成部
18 位相調整部
19 信号強度調整部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;
前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;
前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;
前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;
前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;
前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;
前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;
を具備し,
前記第2の信号源(高周波信号源)(15)は,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成するための3倍信号生成部(17)と,
前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する位相調整部(18)と,
前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)又は前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の強度を調整する信号強度調整部(19)とを具備する
光振幅変調システム(1)。
【請求項2】
前記第1の強度変調器(9)が,前記第1の電極(電極A)(11)を具備するマッハツェンダー導波路であり,
前記第2の強度変調器(10)が,前記第2の電極(電極B)(12)を具備するマッハツェンダー導波路である
請求項1に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項3】
前記第3の電極(電極C)(13)は,
前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCA電極)(21)と,
前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCB電極)(22)とを具備する
請求項1に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項4】
前記第1のアーム(4)からの出力信号と前記第2のアーム(5)からの出力信号に含まれる光搬送波信号又は2次の光信号の位相が180°ずれるように前記MZCA電極(21)及びMZCB電極(22)に印加される電圧を調整する制御部(23)を含む請求項3に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項5】
前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(31),又は
前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(32)のいずれか又は両方を具備する
請求項1又は請求項2に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項6】
光振幅変調器としての請求項1に記載の光振幅変調システムと,
前記光振幅変調器の出力光または前記光変調器への入力光に変調を加えるための位相変調器又は強度変調器のいずれかまたは両方と,
前記光振幅変調器の変調信号と前記位相変調器又は強度変調器の変調信号との変調時間を調整するための制御部と,
を具備する光振幅変調システム。
【請求項7】
前記制御部は,
前記光振幅変調器からの出力光の両側波帯信号のいずれか又は両方,又は前記光変調器への入力光を前記位相変調器又は強度変調器が変調することにより,前記光振幅変調器から出力光される両側波帯信号のいずれかが,前記光振幅変調器の出力光のうち光搬送波信号又は高次光信号の周波数と一致し,前記光搬送波信号又は高次光信号を打ち消すように制御する,
請求項6に記載の光振幅変調システム。
【請求項8】
前記合波部で合波された光信号が入力するサーキュレータと,前記サーキュレータからの出力光が入射するファイバグレーティングとを具備する,請求項1に記載の光振幅変調システム。
【請求項9】
光搬送波抑圧両側波帯(DSB-SC)変調システムである請求項1,請求項2,請求項6又は請求項8に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項10】
請求項1,請求項2又は請求項6に記載の光振幅変調システムであって,
マッハツェンダー導波路(8)からの出力信号の検出部と接続され,各電極に印加する電圧を制御する制御信号を信号源に出力する制御部であって,
(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整し,
(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整し,
(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させ,
(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する制御部を具備する,
光振幅変調システム。
【請求項11】
光搬送波抑圧両側波帯(DSB-SC)変調システムである請求項10に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項12】
請求項1,請求項2又は請求項6に記載の光振幅変調システムのバイアス調整方法であって,
(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整する工程と,
(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程と,
(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させる工程と,
(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程とを含む,
バイアス調整方法。
【請求項13】
光変調器と,前記光変調器の出力信号が入力するサーキュレータと,
前記サーキュレータからの出力光が入射し,前記光変調器の所望の光信号成分が反射し,それ以外の光信号成分が透過するファイバグレーティングと,
前記ファイバグレーティングを透過した光信号を検出する光検出器と,
前記光検出器が検出した光信号に基づいて,前記光変調器に印加する信号源から出力される信号を制御する制御部とを具備する光変調システム。
【請求項14】
前記光変調器は,
光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;
前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;
前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;
前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;
前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;
前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;
前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;
を具備する請求項13に記載の光変調システム。
【請求項1】
光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;
前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;
前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;
前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;
前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;
前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;
前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;
を具備し,
前記第2の信号源(高周波信号源)(15)は,基本信号(fm)の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)を生成するための3倍信号生成部(17)と,
前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)の位相と,前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の位相差を調整する位相調整部(18)と,
前記第2の信号源(高周波信号源)(15)から出力される基本信号(fm)又は前記3倍信号生成部(17)から生成される基本信号の3倍の周波数を有する電気信号(3fm)の強度を調整する信号強度調整部(19)とを具備する
光振幅変調システム(1)。
【請求項2】
前記第1の強度変調器(9)が,前記第1の電極(電極A)(11)を具備するマッハツェンダー導波路であり,
前記第2の強度変調器(10)が,前記第2の電極(電極B)(12)を具備するマッハツェンダー導波路である
請求項1に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項3】
前記第3の電極(電極C)(13)は,
前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCA電極)(21)と,
前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた電極(MZCB電極)(22)とを具備する
請求項1に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項4】
前記第1のアーム(4)からの出力信号と前記第2のアーム(5)からの出力信号に含まれる光搬送波信号又は2次の光信号の位相が180°ずれるように前記MZCA電極(21)及びMZCB電極(22)に印加される電圧を調整する制御部(23)を含む請求項3に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項5】
前記第1のアーム(4)に沿って設けられ,前記第1のアーム(4)のうち前記第1の強度変調器(9)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(31),又は
前記第2のアーム(5)に沿って設けられ,前記第2のアーム(5)のうち前記第2の強度変調器(10)と前記合波部(6)との間に設けられた光強度補正機構(32)のいずれか又は両方を具備する
請求項1又は請求項2に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項6】
光振幅変調器としての請求項1に記載の光振幅変調システムと,
前記光振幅変調器の出力光または前記光変調器への入力光に変調を加えるための位相変調器又は強度変調器のいずれかまたは両方と,
前記光振幅変調器の変調信号と前記位相変調器又は強度変調器の変調信号との変調時間を調整するための制御部と,
を具備する光振幅変調システム。
【請求項7】
前記制御部は,
前記光振幅変調器からの出力光の両側波帯信号のいずれか又は両方,又は前記光変調器への入力光を前記位相変調器又は強度変調器が変調することにより,前記光振幅変調器から出力光される両側波帯信号のいずれかが,前記光振幅変調器の出力光のうち光搬送波信号又は高次光信号の周波数と一致し,前記光搬送波信号又は高次光信号を打ち消すように制御する,
請求項6に記載の光振幅変調システム。
【請求項8】
前記合波部で合波された光信号が入力するサーキュレータと,前記サーキュレータからの出力光が入射するファイバグレーティングとを具備する,請求項1に記載の光振幅変調システム。
【請求項9】
光搬送波抑圧両側波帯(DSB-SC)変調システムである請求項1,請求項2,請求項6又は請求項8に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項10】
請求項1,請求項2又は請求項6に記載の光振幅変調システムであって,
マッハツェンダー導波路(8)からの出力信号の検出部と接続され,各電極に印加する電圧を制御する制御信号を信号源に出力する制御部であって,
(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整し,
(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整し,
(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させ,
(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する制御部を具備する,
光振幅変調システム。
【請求項11】
光搬送波抑圧両側波帯(DSB-SC)変調システムである請求項10に記載の光振幅変調システム(1)。
【請求項12】
請求項1,請求項2又は請求項6に記載の光振幅変調システムのバイアス調整方法であって,
(i)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が大きくなるように,第1の電極(電極A)(11),第2の電極(電極B)(12)及び第3の電極(電極C)(13)に印加する電圧を調整する工程と,
(ii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程と,
(iii)マッハツェンダー導波路(8)からの出力が小さくなるように,いずれかのサブマッハツェンダー電極のバイアス電圧を減少させる工程と,
(iv)マッハツェンダー導波路(8)の出力が小さくなるように,第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を調整する工程とを含む,
バイアス調整方法。
【請求項13】
光変調器と,前記光変調器の出力信号が入力するサーキュレータと,
前記サーキュレータからの出力光が入射し,前記光変調器の所望の光信号成分が反射し,それ以外の光信号成分が透過するファイバグレーティングと,
前記ファイバグレーティングを透過した光信号を検出する光検出器と,
前記光検出器が検出した光信号に基づいて,前記光変調器に印加する信号源から出力される信号を制御する制御部とを具備する光変調システム。
【請求項14】
前記光変調器は,
光信号の入力部(2)と,前記光信号が分岐する分岐部(3)と,前記分岐部(3)から分岐した光信号が伝播する導波路である第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)と,前記第1のアーム(4)及び第2のアーム(5)から出力される光信号が合波される合波部(6)と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部(7)とを含むマッハツェンダー導波路(8)と;
前記第1のアーム(4)に設けられ,前記第1のアーム(4)を伝播する光信号の振幅を制御する第1の強度変調器(9)と;
前記第2のアーム(5)に設けられ,前記第2のアーム(5)を伝播する光信号の振幅を制御する第2の強度変調器(10)と;
前記第1の強度変調器(9)の第1の電極(電極A)(11)と;
前記第2の強度変調器(10)の第2の電極(電極B)(12)と;
前記第1のアーム(4)を伝播する光信号と前記第2のアーム(5)を伝播する光信号との位相差を制御すると共に,変調信号が印加されるマッハツェンダー導波路(8)の第3の電極(電極C)(13)と;
前記第1の電極(電極A)(11),前記第2の電極(電極B)(12)及び前記第3の電極(電極C)(13)に印加するバイアス電圧を供給するための第1の信号源(14)と,前記第3の電極(電極C)(13)にラジオ周波数信号を供給するための第2の信号源(高周波信号源)(15)とを含む信号源部(16)と;
を具備する請求項13に記載の光変調システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−67876(P2007−67876A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251832(P2005−251832)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
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