説明

高水分折り込み用油脂組成物及びその製造法及びこれを使用した層状食品

【課題】 作業性が損なわれず、浮きが良くて食感に優れ、油っぽくないパイ、デニッシュが得られる高水分のシート状若しくはブロック状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物、及び、これを使用したパイ、デニッシュなどの多層状食品を提供すること。
【解決手段】 合成乳化剤を含まない折り込み用油中水型乳化油脂組成物であって、水分含量が、折り込み用油中水型乳化油脂組成物全体中17重量%以上、且つ、50重量%未満であり、油相中に卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンを含有することを特徴とするシート状若しくはブロック状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物を用いて、パイ、デニッシュなどの多層状食品を作製すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食感に優れたパン・菓子類が得られる展延性のあるシート状若しくはブロック状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物及びこれを使用したパン、菓子類に関する。
【背景技術】
【0002】
パイ、デニッシュは、生地を薄く延ばし、これにシート状若しくはブロック状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物を乗せて折りたたみ、更に薄く延ばしたり折りたたんだりしながら、幾多の層を形成した後、適当な大きさにカットし、更に丸めたり、ジャム、餡等の他の食品を包み込んだ後、焼成することにより独特の形状、食感が得られる食品である。このように、折りたたみ工程を伴う食品を得るために、展延性に優れた油脂組成物が使用されている。
【0003】
従来より、マーガリンに代表される油中水型乳化油脂組成物の製造には、乳化剤は必須とされており、通常、レシチン等の天然乳化剤、モノグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の合成乳化剤が単独又は混合して用いられている。また、安定した乳化状態を得るために、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナン、タマリンドシードガム、アラビアガム等の増粘多糖類、及び、デキストリン、澱粉等の糖質類、及び、乳蛋白等も使用されることがある。
【0004】
特に近年、油っぽくないデニッシュが消費者に望まれており、油っぽさを軽減するためには、高水分の折り込み用油中水型乳化油脂組成物が必須である。パイ、デニッシュ等の生地に折り込まれる油中水型乳化油脂組成物は、物理的な性質として展延性に加えて、生地が薄膜状に油脂が延ばされて生地と層構造を作る性質が必要であり、この特性を得るためには合成乳化剤の添加が必須である。
【0005】
一般には、この様に合成乳化剤を用いた場合には、合成乳化剤に起因する異味、異臭の問題があると共に、近年の消費者の健康志向からも乳化剤無添加の要望が高まっているのが実情である。しかしながら、合成乳化剤を用いずに高水分のシート状若しくはブロック状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物を製造することは、これまで困難とされてきた。その理由は、折り込み用油中水型乳化油脂組成物中の水分量が高くなると、水相分離が発生し、均一な組織状態を維持する事が出来ず、展延性が劣る結果となるからです。公知としては、水相部16重量%未満が限界であり、油っぽさを軽減するためには不十分であった。
【0006】
折り込み用油中水型乳化油脂組成物は、製品形態がシート状・ブロック状である場合が多く、成型するためには、油中水型乳化油脂組成物製造工程の乳化工程から得られる乳化液を急冷捏和する工程(I)と専用の結晶安定化させる休止管、及び、成型機にてシート化する工程(II)が必要である。
【0007】
工程(I)では油脂の結晶化に伴い合一、或いは、破壊され、結果として水分離状態になり易くなる。さらに工程(II)が必要であり、休止管内部で油脂結晶の均質化目的に使用されるフィルター、絞り、および、成型機において油脂へのストレスがかかり、乳化状態が変化するため、乳化剤を添加することで、乳化組成物の安定化を図り、物性の変化が起こりにくくしている。
【0008】
従来技術では、合成乳化剤を添加せずにシート状若しくはブロック状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物を製造するには、一般的に水相部16重量%未満の制限を守ることが必要である。但し、製造したとしても、油脂への水相の分散状態が悪く、水相粒子は大きいままで存在していて、保存中不安定な状態であり、水相が分離してしまうなど不安定な製品しか得ることは出来ない。また、このような折り込み用油中水型乳化油脂組成物で作ったパイ、デニッシュは、展延性が悪いため層構造が出来にくくなり、浮きが悪く、食感、ボリュームが著しく劣っている。
【0009】
合成乳化剤が添加されていない油中水型乳化油脂組成物として、微細結晶によって水滴を保護し、乳化状態を安定化した特許文献1や、HLB10〜18の乳蛋白により乳化状態を安定化した特許文献2や、酵素処理卵黄を含有することにより安定な乳化状態を保つ特許文献3の技術が提案されてきた。しかし、特許文献1、2、3は、水分17重量%未満のマーガリンに関する記載しかなく、水相部が17重量%以上の折り込み用油脂組成物に応用した場合、シート状若しくはブロック状に成型する工程で水相が分離してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開平10−295271号公報
【特許文献2】特開平2000−279090号公報
【特許文献3】特開平2001−112413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
合成乳化剤を使用しなくても、作業性が損なわれず、浮きが良くて食感に優れ、油っぽくないパイ、デニッシュが得られる高水分のシート状若しくはブロック状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物及びこれを使用したパン、菓子類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために各種油脂の挙動に関して鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有する油脂が目的の機能を有することを見出した。製造時に特定の圧力をかけることで、結晶成長をコントロールするとより好ましい事も見出した。連続相である油相に結晶が粗大化せずに微細結晶のままとなるような油脂を用いれば、結晶安定化工程での油脂結晶のパッキングを遅延させ、油脂へのストレスを軽減させることにより、結晶安定化工程のフィルター、絞り、成型機での水分離を防ぎ、合成乳化剤を使用しなくても、高含水の折り込み用油中水型乳化油脂組成物を製造することが可能となった。これは展延性に優れ、浮きが良く、食感、ボリュームに優れ、油っぽくないパイ、デニッシュが得られるという知見を得、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の第一は、合成乳化剤を含まない折り込み用油中水型乳化油脂組成物であって、水分含量が、折り込み用油中水型乳化油脂組成物全体中17重量%以上、且つ、50重量%未満であり、油相中に卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンを含有することを特徴とするシート状若しくはブロック状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物に関する。好ましい実施態様は、卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンの含有量が、油相全体中0.05〜2.0重量%であることを特徴とする上記記載の折り込み用油中水型乳化油脂組成物に関する。より好ましくは、構成脂肪酸全体中2〜40mol%が炭素数20〜24の飽和脂肪酸であり、且つ、5〜50mol%が炭素数8〜14の飽和脂肪酸であるエステル交換油を、油相全体中に5重量%〜80重量%含有することを特徴とする上記記載の折り込み用油中水型乳化油脂組成物に関する。
【0013】
本発明の第二は、シート状又はブロック状に成型される工程入口での圧力が1MPa以上、且つ2MPa未満であることを特徴とする上記記載の折り込み用油中水型乳化油脂組成物の製造方法に関する。
【0014】
本発明の第三は、生地に上記記載の折り込み用油中水型乳化油脂組成物を用いたことを特徴とする多層状食品に関する。
【発明の効果】
【0015】
合成乳化剤を使用しなくても、作業性が損なわれない高水分のシート状若しくはブロック状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物を提供することができると共に、この組成物を使用することに合成乳化剤を使用しなくても浮きが良く食感に優れ、油っぽくないパイ、デニッシュなどの多層状食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の折り込み用油中水型乳化油脂組成物は水分含量が折り込み用油中水型乳化油脂組成物全体中17重量%以上、且つ、50重量%未満であることが好ましく、30〜40重量%がより好ましい。17重量%より少ないと、油っぽさを軽減したパイ、デニッシュを提供することは困難な場合がある。50重量%より多いと安定的に製造することは困難となる場合がある。
【0017】
本発明の折り込み用油中水型乳化油脂組成物の油相は、エステル交換油の構成脂肪酸全体中2〜40mol%が炭素数20〜24の飽和脂肪酸であり、且つ、エステル交換油の構成脂肪酸全体中5〜50mol%が炭素数8〜14の飽和脂肪酸である食用エステル交換油が主成分であり、該エステル交換油は油相全体中に5重量%〜80重量%含まれることが好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。5重量%未満であると安定的に目的とするを製造することが難しい場合があり、また80重量%を超えると折り込み用油中水型乳化油脂組成物を用いたパイ、デニッシュの口溶けが悪くなるという問題が生じる場合がある。構成脂肪酸組成比は、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積比より求めた。
【0018】
また、本発明の折り込み用油中水型乳化油脂組成物は、別途前記食用エステル交換油以外の食用油脂を油相全体中95〜20重量%含有している。前記食用エステル交換油以外の食用油脂は、食用であれば特に限定はなく、植物油脂(コーン油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油、パーム油等)、魚油、牛油、豚油及びそれらの硬化油・エステル交換油が少なくとも1種任意に用いられる。(高糖分に合わせました) 前記エステル交換油を得る方法としては、ハイエルシンナタネ油や魚油等の炭素数20〜24の不飽和脂肪酸を多量に含む油脂の極度硬化油や、ベヘン酸トリグリセリド、及び、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を多量に含む油脂よりなる群から選択される少なくとも1種と、ヤシ油、カボック油、パームカーネル油及びそれらの硬化油等、炭素数8〜14の飽和脂肪酸を多量に含む油脂、及び、その他の炭素数16〜18の飽和脂肪酸を含む油脂を混合し、その後アルカリ触媒あるいは酵素(リパーゼ)によるエステル交換反応させることで得られる。
【0019】
得られたエステル交換油は、油中水型乳化油脂組成物を作る際の油相部に加える油脂としてそのまま使用することができるが、必要により高融点、低融点成分を分別分取し、炭素数20〜24の飽和脂肪酸と炭素数8〜14の飽和脂肪酸を同一分子内に含有する混酸基トリグリセリドを濃縮してから、油相部に添加し使用することもできる。
【0020】
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、卵黄レシチン及び/又は大豆レシチン以外に、乳化効果のある乳化剤及び増粘安定剤を実質的な量で含有しない。本発明に用いられる卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンの含有量は、折り込み用油中水型乳化油脂組成物全体中、0.05〜2.0重量%であることが好ましい。0.05重量%より少ないと安定的に製造することは困難となる場合があり、また逆に2重量%より多いと異味、異臭の問題が生じる場合がある。ここで用いる卵黄レシチンは、主に卵黄油として添加されるが、該卵黄油は卵黄より分別分取した油であり、「ヨークオイルL−301」(太陽化学株式会社製)が例示できる。この他必要に応じて香料、着色料等を用いることができる。
【0021】
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、通常の油中水型乳化油脂組成物と同様に密閉型の急冷・捏和機、休止管、成型機を用いて製造される。密閉型の急冷・捏和機とは、熱処理された乳化物もしくは油脂組成物を密封状態で連続的に急冷すると同時に捏和し均一な組成物を得る工程(I)に用いられる装置をいい、急冷可塑化を行うAユニットから構成される。急冷・捏和機の種類としてはたとえば「ボテーター[ガードラー社(米国)の登録商標]」、「パーフェクター[ゲルステンベルク社(ドイツ)の登録商標]」、「コンビネーター[シュレーダー社(ドイツ)の登録商標]」、「オンレーター[櫻製作所(日本)の登録商標]」などがあり(中澤君敏、「マーガリン、ショートニング ラード」、昭和54年、光琳)、いずれも好適に用いることができる。次に、油脂結晶を安定化させる専用の休止管、及び、成型機により、シート状・ブロック状に成型する工程(II)が必要である。休止管内部には油脂結晶の均質化目的に使用されるフィルター、絞りが必要である。
【0022】
次に、前記工程を経る本発明の製造方法について説明する。先ず、本発明の油相と水相を準備する。この油相には、必要により油溶性の副原料を添加し60℃に維持する。水相は、必要により水溶性の副原料を添加し、80℃で30分以上加熱殺菌後、冷却し60℃まで冷却され維持される。そしてこの油相に水相を滴下していき60℃で20分以上乳化する。ここで、得られた乳化物を工程(I)に従い急冷捏和する。次に工程(II)に従って、その捏和物を休止管に導入し、休止管の出口に備えた成型機により、シート状・ブロック状に成型する。本発明の油中水型乳化油脂組成物は、この工程(II)におけるフィルター、絞り、成型機での油脂組成物へのストレスを軽減し、水分離を防ぐ目的で、休止管入口での圧力が1MPa〜2MPaであることを特徴とする。1MPa未満であると充填工程において製品が変形する場合があり、逆に2MPaを超えると水分離が発生し、乳化が不安定になりやすいという問題を生じる場合がある。
【実施例】
【0023】
以下に実施例、比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において、「%」又は「部」とあるのは、特に断らない限り「重量%」、「重量部」を意味する。
【0024】
<デニッシュ作製時の作業性評価>
折り込み作業時の作業性について評価した。評価基準は以下の通りである。○:油脂の伸び良好、×:油脂がもろく、油切れを起こす。
【0025】
<デニッシュの食感評価>
実施例及び比較例で作製した折り込み用油中水型乳化油脂組成物を用いて作製したデニッシュを10人からなるパネルテストを行い、以下の基準で評価した。◎:10人中8人以上がしっとり口溶けが良いと評価、○:10人中6〜7人がしっとり口溶けが良いと評価、△:10人中4〜5人がしっとり口溶けが良いと評価、×:10人中0〜3人がしっとり口溶けが良いと評価。
【0026】
<デニッシュの味評価>
実施例及び比較例で作製した折り込み用油中水型乳化油脂組成物を用いて作製したデニッシュを10人からなるパネラーに官能テストをしてもらい、以下の基準で評価した。◎:10人中8人以上が異味異臭がなく、甘いと評価、○:10人中6〜7人が異味異臭がなく、甘いと評価、△:10人中4〜5人が異味異臭がなく、甘いと評価、×:10人中0〜3人が異味異臭がなく、甘いと評価。
【0027】
(製造例1) 原料油脂の作製
ハイエルシン菜種極度硬化油50部、ヤシ油50部をナトリウムメチラート(対油0.4%)を触媒として80℃で30分間エステル交換反応を行った。その後、定法に従って精製し本発明に係わる油脂を得た。この油脂の融点は46.1℃、また、その脂肪酸組成、総炭素数、及び固体脂含量は表1の通りであった。
【0028】
【表1】

【0029】
(製造例2) 原料油脂の作製
ハイエルシン菜種極度硬化油20部、ヤシ油20部、ナタネ硬化油(融点34℃)60部をナトリウムメチラート(対油0.4%)を触媒として80℃、30分間エステル交換反応を行った。その後、定法に従って精製し本発明に係わる油脂を得た。この油脂の融点は37.5℃、また、その脂肪酸組成、総炭素数、及び固体脂含量は表2の通りであった。
【0030】
【表2】

【0031】
(実施例1〜4)
表3に示す配合で、油相部と水相部を乳化した後、急冷捏和機「コンビネーター[シュレーダー社(ドイツ)の登録商標]」のAユニット3本に乳化液を流量50kg/時間で送り込み、最終Aユニットの出口温度が14℃になる様に冷却を行う。次にフィルター、絞りを有する20L容量の休止管に乳化液を導入し油脂結晶を均質化した後、出口幅230mm、高さ10mの成型機を通してシート状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物を得た。この時の休止管入口圧力と得られた折り込み用油中水型乳化油脂組成物の水分離の有無を表3にまとめた。
【0032】
【表3】

【0033】
(比較例1〜4)
表3に示す配合で油相部と水相部とし、この油相部と水相部を乳化し急冷捏和機、休止管、成型機を通してシート状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物を得た。この時の休止管入口圧力と得られた折り込み用油中水型乳化油脂組成物の水分離の有無を表3にまとめた。
【0034】
製造例1、2で得た油脂を用いた実施例1〜4の折り込み用油脂組成物は、休止管入口圧力が1MPa以上、2MPa未満であり、製造直後、乳化安定性に優れており、保存性にも優れていた。製造例1、2で得た油脂を使用しない比較例1〜4は、休止管入口圧力が2MPa以上でないと結晶化が進まず、また合成乳化剤を用いた比較例1、3は乳化が安定であるのに対し、合成乳化剤を用いていない比較例2、4は、製造直後乳化が不安定となり水分離した。
【0035】
(実施例5〜8、比較例5〜8)
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた折り込み用油中水型乳化油脂組成物
を用いて、表4の配合にしたがって製パン試験を実施した。
【0036】
【表4】

【0037】
まず、20コートのミキサーボールにショートニング及び折り込み用油脂組成物以外の材料を入れ、フックを用いて低速4分、中速4分ミキシングした。これにショートニングを加え低速3分、中速3分ミキシングした。生地の捏ね上げ温度は25℃であった。フロアータイムを30分とった後、0℃の恒温槽に生地を入れ、5時間リタードを取った。折り込み用油脂組成物を加えて、三つ折りを2回行い、0℃恒温槽で一晩寝かせて中間リタードを取った。中間リタード後、3つ折りを一回行い、シーターで伸ばしてカットし成型した。そして35℃のホイロに60分間入れた後、200℃のオーブンで14分間焼成しデニッシュを得た。
【0038】
得られたデニッシュについて、デニッシュ製造時の作業性と食感と味の評価した結果は表5の通りである。
【0039】
【表5】

【0040】
実施例1〜4の高糖分折り込み用油脂組成物の折り込み作業は、乳化剤を用いた比較例1、3の折り込み作業の場合と同等の作業性を有していたが、比較例2、4の折り込み作業の場合は、油脂もろく、油切れを起こした。実施例1〜4の高水分折り込み用油脂組成物を用いたデニッシュは、しっとり口溶けが良く、異味異臭がなく、油っぽくなかったが、比較例1〜4の高水分折り込み用油脂組成物を用いたデニッシュは、口溶け悪く、特に比較例3の高水分折り込み用油脂組成物を用いたデニッシュは異味が感じられる結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成乳化剤を含まない折り込み用油中水型乳化油脂組成物であって、水分含量が、折り込み用油中水型乳化油脂組成物全体中17重量%以上、且つ、50重量%未満であり、油相中に卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンを含有することを特徴とするシート状若しくはブロック状の折り込み用油中水型乳化油脂組成物。
【請求項2】
卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンの含有量が、油相全体中0.05〜2.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の折り込み用油中水型乳化油脂組成物。
【請求項3】
構成脂肪酸全体中2〜40mol%が炭素数20〜24の飽和脂肪酸であり、且つ、5〜50mol%が炭素数8〜14の飽和脂肪酸であるエステル交換油を、油相全体中に5重量%〜80重量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の折り込み用油中水型乳化油脂組成物。
【請求項4】
シート状又はブロック状に成型される工程入口での圧力が1MPa以上、且つ2MPa未満であることを特徴とする請求項1〜3記載の折り込み用油中水型乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項5】
生地に請求項1〜3何れかに記載の折り込み用油中水型乳化油脂組成物を用いたことを特徴とする多層状食品。

【公開番号】特開2006−325502(P2006−325502A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155147(P2005−155147)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】