説明

高温固体電解質燃料電池用インターコネクタ

【課題】セラミック構成要素と一致する熱膨張率、高い寸法安定性、還元媒体と酸化媒体との両方における高い耐食性、アノードおよびカソードに対してコンタクト面領域における高い電気伝導性、およびガスに対する高い不浸透性を有し、かつ安価に製造可能なインターコネクタ、及びインターコネクタを製造する方法、並びに上記インターコネクタを備える高温固体電解質燃料電池を提供する。
【解決手段】焼結孔を有し、かつ90重量%を超えるCrと、3〜8重量%のFeと、選択的に0.001〜2重量%の希土類金属の群の少なくとも1つの元素とを含有する焼結クロム合金から構成される高温固体電解質燃料電池用インターコネクタであって、クロム合金は、0.1〜2重量%のAlを含有し、前記焼結孔がAlとCrを含む酸化化合物により少なくとも部分的に充填されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結孔を有し、かつ90重量%を超えるCrと、3〜8重量%のFeと、選択的に0.001〜2重量%の希土類金属の群の少なくとも1つの元素とを含有する焼結クロム合金から構成される高温固体電解質燃料電池用インターコネクタに関する。本発明は、さらにインターコネクタ、およびインターコネクタを有する高温固体電解質燃料電池を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属インターコネクタ(バイポーラ板または電流コレクタ)は、高温固体電解質燃料電池(固体酸化物燃料電池(SOFC)または高温燃料電池としても知られている)に不可欠の構成要素である。通常、高温固体電解質燃料電池は、650℃〜1000℃の動作温度で動作する。電解質は、酸素イオンを伝導可能であるが電子には絶縁体の機能を果たす固体セラミック材料から構成される。非特許文献1には、電解質材料としてイットリウム、スカンジウム、またはカルシウムをドープしたジルコニウム酸化物(YSZ、SSZ、またはCSZ)、ドープランタン酸化物、およびドープセリウム酸化物が記載されている。カソードおよびアノードは、イオンおよび電子を伝導するセラミックから構成される。例えば、カソードについては、ストロンチウムをドープしたランタンマンガン酸塩(LSM)、アノードについては、ニッケル−YSZ(またはSSZ、CSZ)サーメットから構成される。
【0003】
インターコネクタは、選択的にコンタクト層が存在するセルとセルの間に配置されており、インターコネクタは積み重ねられてスタックを形成する。インターコネクタは、セルを直列に接続することにより、セルに発生する電気を収集する。さらに、インターコネクタは、セルを機械的に支持して、かつアノード側およびカソード側での反応ガスを分離搬送する働きをする。インターコネクタは、高温で酸化媒体および還元媒体の両方に曝される。このため、高い耐食性が要求される。
【0004】
また、室温から最高使用温度までのインターコネクタの熱膨張係数は、電解質材料、アノード材料、およびカソード材料の熱膨張係数と良好に一致する必要がある。さらに、ガスに対する不浸透性、高い一定の電子伝導率、および使用温度での非常に高い熱伝導率も要求される。
【0005】
一般に、場合によりある割合のシリコンを含むアルミニウム酸化物およびクロム酸化物を形成する合金は、その良好な高温耐食性のため、主に種々の高温での用途に用いられている。Al23およびSiO2の低電子伝導率のため、クロム酸化物を形成する合金が、高温固体電解質燃料電池のインターコネクタ用に好適に提案されている。高い耐食性とともに非常に良好に一致する熱膨張挙動を示すのは、クロム−鉄合金である。耐食性は、イットリウムの添加によりさらに向上する。特許文献1には、5〜50重量%のFeと、1〜10μmの粒子径を有するY、La、Ce、およびNdから成る群の希土類金属の酸化物とから構成されるクロム合金が開示されている。特許文献2には、とりわけ、0.1μm以下の粒子径を有する、微細に分離された形状の0.2〜2重量%のY23から構成される酸化物分散強化耐熱焼結材料が記載されている。ここで、マトリックス材料は、とりわけ、0〜20重量%のFeと、0〜10重量%のAl、Mo、W、Nb、Ta、Hf、およびAl−Tiから成る群からの選択される元素と、を含有するクロム系材料から構成することも可能である。Feを添加して易焼結性を向上させる。Alは、マトリックス中に析出金属間相の形で存在して強度を増加させる。この材料は、機械的合金化法により製造される。緻密化処理としては圧力援用焼結方法、すなわち、熱間成形、熱間静水圧プレス成形、および熱間粉末押出のみが挙げられている。
【0006】
特許文献3には、0.005〜5重量%の希土類金属の群の少なくとも1つの酸化物と、0.1〜32重量%のFe、Ni、およびCoから成る群から選択される少なくとも1つの金属と、最大で30重量%のAl、Ti、Zr、およびHfから成る群から選択される少なくとも1つの金属と、最大で10重量%のV、Nb、Mo、Ta、W、およびReから成る群から選択される少なくとも1つの金属と、最大で1重量%のC、N、B、およびSiから成る群から選択される少なくとも1つの元素と、から構成されるクロム合金が記載されている。粉末混合、型成形、焼結、焼結板の鋼シートへの包みこみ、および包み込んだ板の熱間圧延により、合金が製造される。
【0007】
燃料電池用にCr−Fe合金を使用することは、特許文献4に最初に開示された。Cr含有量は15〜85重量%である。この合金は、Y、Hf、Zr、またはThを選択的に含有することができる。特許文献5には、3〜10原子%のFeと0.5〜5原子%の希土類金属および/または希土類金属酸化物とを含有するクロム合金から構成される金属構成要素であって、YSZから構成されるセラミック固体電解質を備える高温固体電解質燃料電池用の金属構成要素が記載されている。
【0008】
特許文献6には、例えばCr−5Fe−lY23である、ガスチャネル領域にAl富化表面層を有する、クロム酸化物を形成する合金から構成されるバイポーラ板が記載されている。Al富化領域をアリタイジングにより生成して金属間相Cr5Al8またはCr4Al9を形成する。Al23の形成による伝導率の低下を防止するため、複雑な研削工程により電気的なコンタクト面領域においてAl富化領域を再び除去する。使用中、Al23はガスチャネルの壁に形成される。
【0009】
明確な流路を生成するために、インターコネクタは複雑な表面形状を有するので、後工程の機械加工なしに最終形状を生成する粉末冶金法が有利である。
【0010】
従って、特許文献7には、少なくとも20重量%のCr、Fe、および1つ以上の添加金属および/またはセラミック合金化構成要素を含む合金から構成される高密度成形体を製造する粉末冶金法が記載されている。ここで、元素のクロム粉末と、鉄と添加合金化構成要素とから成る予備合金化粉末と、から構成される粉末混合物を用いて、インターコネクタを、最終形状に近い形に型成形、焼結する。この方法で製造されるインターコネクタは、さらなる機械加工なしに、半田付けで結合してインターコネクタとして使用できる。そのような安価な製造方法は、一般に、高温固体電解質燃料電池のインターコネクタとして、クロム合金を幅広く採用するための重要な必要条件である。非常に純粋なクロム粉末(2N5)を用いる結果として、製造コストが高くなる。クロム酸化物層の導電率を低下させる元素に特に注目する。高純度を得るためには、高品位な鉱石や特別な精製工程が必要である。高温固体電解質燃料電池を産業用に用いるためにはシステムコストを下げる必要があり、かつインターコネクタが全コストのかなりの部分を占めるため、コストの安い粉末を用いることが有利である。
【0011】
特許文献8には、粉状の出発材料を最終形状に近い形に型成形、焼結することにより、傾斜した側面を経由して基体を通過する多数の節状および/または稜線状の隆起領域を有する円盤または板状の基体を備える成形部品、例えばインターコネクタを製造する方法が記載されている。ここで、部品の成形は、2段階の型成形工程で行われる。最終形状を有する構成要素をもたらす粉末冶金法は、焼結収縮が大きいと物理的な粉末特性の変動により十分な一定値に設定できないために、焼結収縮があまり多くない場合についてのみ可能である。また、焼結工程後の残留気孔率は、最終形状となる第2の型成形に有利である。
【0012】
このため、特許文献8に記載されるように製造された構成要素は、残留気孔率を有する。マトリックス材料の酸化物を形成して焼結孔を充填することが公知である。この方法は、焼結鋼から成る製品の場合には、ブロンジングと呼ばれている。ここで、焼結孔をFe23で充填することにより、焼結構成要素は、蒸気中において高温で処理される。クロム合金の場合にも、相当する酸化物で焼結孔を充填することができる。しかし、焼結孔の充填が外側から内側に進行し、その結果として、インターコネクタ内部への酸素の浸透性、ひいては中心付近の気孔の均一な充填が妨げられ工程時間が増加することは不利である。また、インターコネクタは、典型的に表面に節状および/または稜線状の構造を有している結果、局所の壁厚さが異なっている。このためにも、安価で信頼性のある製造方法の確立が困難になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平02−258946号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0510495号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0570072号明細書
【特許文献4】米国特許第3,516,865号明細書
【特許文献5】欧州特許EP−A−0578855
【特許文献6】国際公開第95/026576号パンフレット
【特許文献7】国際公開第02/055747号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2004/012885号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】K.Wincewicz,J.Cooper,“Taxonomies of SOFC material and manufacturing alternatives”, Journal of Power Sources(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、セラミック構成要素と一致する熱膨張率、高い寸法安定性、還元媒体と酸化媒体との両方における高い耐食性、アノードおよびカソードに対してコンタクト面領域における高い電気伝導性、およびガスに対する高い不浸透性を有し、かつ安価に製造可能なインターコネクタ、およびインターコネクタを製造する方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、安定化ジルコニウム酸化物から構成されるセラミック固体電解質と、上記特性を有するインターコネクタと、を備える高温固体電解質燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、請求項1に記載のインターコネクタと、請求項11に記載の高温固体電解質燃料電池と、および請求項12に記載のインターコネクタを製造する方法と、により達成される。
即ち、「焼結孔を有し、かつ90重量%を超えるCrと、3〜8重量%のFeと、選択的に0.001〜2重量%の希土類金属の群の少なくとも1つの元素とを含有する焼結クロム合金から構成される高温固体電解質燃料電池用インターコネクタであって、前記クロム合金は、0.1〜2重量%のAlを含有し、前記焼結孔がAlとCrを含む酸化化合物により少なくとも部分的に充填されていることを特徴とするインターコネクタ(請求項1)。」と、「安定化ジルコニウム酸化物から構成されるセラミック固体電解質と、前記請求項1〜10に記載のインターコネクタと、を備える高温固体電解質燃料電池。(請求項11)」と、「請求項1〜10のいずれかに記載のインターコネクタを製造する方法であって、混合し部分的に予備合金化したおよび/または完全に予備合金化した粉末を用いて粉末混合物を生成する工程、500<p<1000MPaのプレス圧力pで型加圧により成形する工程、選択的に、還元雰囲気中において700℃<T<1200℃の温度Tで予備焼結する工程、および選択的に、500<p<1000MPaのプレス圧力pで型加圧により較正成形する工程、還元雰囲気において1200℃<T<固相線温度の温度Tで焼結する工程、700℃<T<1200℃の温度Tで酸化処理を好適に行う工程、および選択的にサンドブラストを行う工程、から成るインターコネクタ製造方法。(請求項12)」と、により達成される。
【0017】
前記インターコネクタは、90重量%を超えるCrと、3〜8重量%のFeと、選択的に0.001〜2重量%の希土類金属の群の少なくとも1つの元素とを含有する焼結クロム合金から構成される。クロム合金は0.1〜2重量%のAlを含有し、該Alの80%より多く、好適には90%より多く、特に好適には99%より多くが、Crも含有する酸化化合物の形で存在する。残りのAlは、存在する場合には、非酸化化合物の形で、または金属間相の形で、溶解して存在する。溶解Alの含有量は、好適には200μg/g未満であり、好適に100μg/g未満であり、特に好適に50μg/g未満である。
【0018】
Al含有量を決定する際に、その結合形態に関わらず、インターコネクタの合計のAl含有量を考慮する。クロム合金のAl含有量が0.1重量%未満であると、AlとCrを含む酸化化合物中でのAl含有量が不十分である。Al含有量が2重量%を超えると、Alを含む酸化析出物の形成が、粒界および粒内で増加する。クロム合金の好適なアルミニウム含有量は、0.15〜0.5重量%である。
【0019】
また、焼結クロム合金は、好適には2〜20体積%,より好適には4〜15体積%の焼結孔を含み、これらの焼結孔は、AlとCrを含む酸化化合物により少なくとも部分的に充填されている。単に焼結収縮を高くすることにより、気孔率を下げることができる。焼結収縮が高いと、厳格な寸法公差の設定がより困難になる。厳格な寸法公差が達成できないと、コストの高いその後の加工が必要となる。20体積%よりも大きな残留気孔率を有するインターコネクタは、構成要素の強度および安定性が十分でない。さらに、AlとCrを含む酸化要素で焼結孔を充填することにより、ガスに対する十分に高い不浸透性を達成することができない。
【0020】
AlとCrを含む酸化化合物で焼結孔を充填することは、焼結構成要素の酸化処理により達成される。酸化処理は、別の工程段階として実行するか、焼結工程と一体化できる。焼結孔の充填は均一に起きるため、工程の観点からは単純で信頼性のある方法である。ここで、アルミニウム含有酸化物およびクロム含有酸化物は、主に焼結孔の領域で形成されて、粒界および粒内ではわずかな程度しか形成されない。インターコネクタの外側表面に形成される酸化物層は、好適に少なくとも90重量%のクロム酸化物を含有する。外側の酸化物層は、特に好適に少なくとも95重量%のクロム酸化物を含有する。外側の酸化物層のAl含有量は、好適に従来の分析方法の検出限界よりも低い(0.1〜1重量%)。クロム酸化物は、Cr23として好適に存在する。したがって、非常に良好な導電率を有する酸化物層は、表面に形成される。これは、製造過程での酸化処理により形成される酸化物層と長期間の使用で形成される酸化物層との両方に適用される。このため、原理的には製造過程での酸化処理により形成される酸化物層を除去する必要がない。清浄な金属表面が所望の場合には、例えば、ブラスト工程により酸化物層を除去することができる。
【0021】
焼結孔中のAlとCrを含む酸化化合物の割合は(AlとCrを含む酸化化合物の全体の含有量に基づいて)好適に65体積%より大きく、粒界での割合は好適に20体積%であり、粒内での割合は好適に15体積%未満である。特に好適に、焼結孔中のAlとCrを含む酸化化合物の割合は(AlとCrを含む酸化化合物の全体の含有量に基づいて)好適に85体積%より大きく、粒界での割合は好適に10体積%未満であり、粒内での割合は好適に5体積%未満である。
【0022】
AlとCrを含む酸化化合物は、有利に1よりも大きい平均Al/Cr比(いずれの場合の含有量も、原子%)を有する。好適な平均Al/Cr比は2よりも大きく、特に好適な平均Al/Cr比は5よりも大きい。実施例に示すように、8.6までのAl/Cr比を測定できた。
【0023】
構成要素の酸化処理は、有利に700℃<T<1200℃の温度Tで実行される。700℃より低温では、反応速度は低い。1200℃より高温では、かなりの六価クロム酸化物が形成される。
【0024】
AlとCrを含む酸化化合物の形成により、インターコネクタの全断面にわたって気孔が均一に充填されることが確実になる。これにより、高温固体電解質燃料電池の動作中に、インターコネクタのさらなる内部酸化および膨張を回避する。このため、高温固体電解質燃料電池の動作中に、スタック内のセラミックセル構成要素の破損、例えば破砕が発生しないことが確実になる。
【0025】
AlとCrを含む酸化化合物は、好適にAl、Cr、O、および残分が典型的な不純物から構成される。AlとCrを含む酸化化合物は、混合酸化物として存在することが有利である。これに関連して、混合酸化物は、個々の構成要素が互いに完全に溶解する酸化物であるばかりでなく、高解像度の分析方法、例えば分析TEMにより構成要素を個々に分解できない酸化物でもある。好適な酸化化合物は、xAl23・yCr23である。好適な化学量論的係数xとyは、上記のAl/Crの値から導出される。高温固体電解質燃料電池の全動作時間におけるインターコネクタのガスに対する不浸透性および寸法安定性を十分に確保するために、クロム合金の全体の内部気孔体積の少なくとも50%が、AlとCrを含む酸化化合物により充填されていることが有利である。50体積%は平均値である。より低い体積含有量の酸化化合物で、それにより構成要素の機能が損なわれることなく、個々の気孔を充填することができる。充填の程度が比較的低い気孔は、特に、表面への接続する開口を持たない気孔である。しかし、これらの気孔は、長期の使用にも安定したままであるので、ガスに対する不浸透性および寸法安定性に問題が発生しない。AlとCrを含む酸化化合物で充填される全体の焼結孔の体積は、好適に75%より大きく、特に好適に90%より大きい。
【0026】
クロム合金中の存在するアルミニウムの、80%より多く、好適には90%より多く、特に好適には99%より多くが、酸化処理により酸化化合物に変換されることが好適である。ここで、粉末混合物中に存在するAlの形態は問題ではない。例えば、Al23として、金属Alとして、または金属AlとAl23としてAlが存在するクロム粉末を処理することが可能である。
【0027】
クロム合金の腐食挙動に関する限り、この合金は、0.001〜2重量%の希土類金属の群から少なくとも1つの元素を含有することが有利である。希土類金属は、溶解あるいは結合した形、好適には酸化物の形で存在できる。合金が0.005〜0.5重量%のイットリウムを含有するときに、最良の結果が実現される。イットリウムは、溶解金属の形、および/またはイットリウム酸化物の形、および/またはイットリウム混合酸化物の形で存在できる。好適なイットリウム混合酸化物として、Al−Yおよび/またはAl−Cr−Y系のものが挙げられる。イットリウムはクロム合金の易焼結性を低下させるため、イットリウムの添加は、厳格な寸法公差を順守することにも有利である。これは、大した焼結収縮なしに高温での焼結が可能になるので、重要である。焼結収縮が高いとインターコネクタのガスに対する不浸透性および耐食性の観点からは有利であるが、最終形状に近い形状を有する構成要素を製造する能力には悪影響を及ぼす。クロム合金の高い均一化は、高い焼結温度で達成される。粒界拡散率および転位の横すべりによる空孔の発生の両方は、Y含有析出物により低下させることができると考えられる。
【0028】
さらに、前記クロム合金は、使用特性が受け入れがたいほど機能が低下することなく、3重量%までのクロム合金に不溶性の別の構成要素、および1重量%までのクロム合金に可溶性の別の構成要素を含有することができる。別の不溶性の構成要素の含有量は好適に1重量%より少なく、別の可溶性の構成要素の含有量は好適に0.1重量%より少ない。不溶性の構成要素の例はSiである。
【0029】
それゆえ、クロム合金は好適に以下の組成を有する。
・90重量%を超えるCr、
・3〜8重量%のFe、
・0.1〜2重量%のAl、
・選択的に0.001〜2重量%の希土類金属の群の少なくとも1つの元素、
・選択的に3重量%までのクロム合金に不溶性の少なくとも1つの別の構成要素、
・選択的にクロム合金に可溶性の少なくとも1つの別の1重量%までの構成要素、
・残分は酸素と不純物
【0030】
クロム合金は好適に以下の組成を有する。
・90重量%を超えるCr、
・3〜8重量%のFe、
・0.1〜2重量%のAl、
・選択的に0.001〜2重量%の希土類金属の群の少なくとも1つの元素、
・選択的に1重量%までのクロム合金に不溶性の少なくとも1つの別の構成要素、
・選択的にクロム合金に可溶性の少なくとも1つの別の0.1重量%までの構成要素、および
・残分は酸素と不純物
【0031】
クロム合金は特に好適に以下の組成を有する。
・90重量%を超えるCr、
・3〜8重量%のFe、
・0.1〜2重量%のAl、
・0.005〜0.5重量%のY、および
・残分は酸素と不純物
【0032】
本発明のインターコネクタは、安定化ジルコニウム酸化物から構成される固体電解質を有する高温固体電解質燃料電池において有利に使用することができる。ジルコニウム酸化物は、従来技術で公知の方法により、イットリウム、カルシウム、またはスカンジウムを用いて安定化させることができる。カソードについては、従来のセラミックカソード材料、例えばストロンチウムをドープしたランタンマンガン酸塩を使用可能である。アノードの場合も、実績のある材料、例えばニッケルと安定化ジルコニウム酸化物から構成されるサーメット材料を用いることができる。
【0033】
インターコネクタの製造においては、とりわけ、粉末冶金法や特許文献7および/または特許文献8に記載される個々の製造過程を利用することが可能である。
【0034】
好適なCr粉末は、特に、レーザ光散乱で測定した粒子径が200μmより小さい、好適には160μmより小さい粉末である。Cr粉末は、好適に金属の形の、およびAl23として結合されたAlを含有する。Al含有量(金属および結合Alの合計)は好適に2000〜10000μg/gであり、Si含有量は700μg/g未満である。元素のFe粉末またはFe−Y予備合金化粉末を使用することが好まれる。Fe−Y予備合金化粉末は、好適に噴霧法工程により製造される。また、Cr−FeまたはCr−Fe−Y予備合金化粉末を用いることもできる。個々の粉末構成要素を、または従来の加圧補助剤を加えて、機械的または拡散ミキサー中で混合する。混合した粉末混合物を、加圧型中に導入し、500<p<1000MPaのプレス圧力pで圧縮成形する。加圧後、還元雰囲気中において1200℃<T<固相線温度の温度Tで、焼結工程を行う。ここで、焼結工程の一体化された一部として、あるいは別の工程段階として、未焼結体(green body)からバインダーを除去する。
【0035】
別法として、還元雰囲気において、好適に700℃<T<1200℃の温度Tで、加圧後の未焼結体を予備焼結することができる。ここで、焼結工程の一体化された一部として、あるいは別の工程段階として、未焼結体からバインダーを除去する。予備焼結した部品を、500<p<1000MPaのプレス圧力pで、後加圧成形する。後加圧成形は、較正加圧成形として行われ、インターコネクタの最終形状を生成する。予備焼結工程によりクロム合金の強度が低下するので、後加圧成形手順によりさらなる緻密化が達成される。後加圧成形の後、還元雰囲気中において1200℃<T<固相線温度の温度Tで、焼結工程を行う。特許文献8に開示された工程による2段階加圧手順を実行することが好まれる。
【0036】
次の工程において、構成要素を、好適に700℃<T<1200℃の温度Tで、酸化処理にかける。酸化処理は、例えば空気または酸素中で行うことができる。重量測定で、各温度において85%を超える重量増加が24時間の酸化時間で達成されるように、処理時間を好適に選択する。さらなる工程段階において、表面に存在する酸化物を除去するために、酸化した構成要素をサンドブラスト工程にかけることができる。
【0037】
これにより、好適な製造方法は以下のように要約される。
・混合し部分的に予備合金化したおよび/または完全に予備合金化した粉末を用いて粉末混合物を生成する工程、
・500<p<1000MPaのプレス圧力pで型加圧により成形する工程、
・選択的に,還元雰囲気中において700℃<T<1200℃の温度Tで予備焼結、および選択的に,500<p<1000MPaのプレス圧力pで型加圧により較正成形する工程、
・還元雰囲気において1200℃<T<固相線温度の温度Tで焼結する工程、
・700℃<T<1200℃の温度Tで酸化処理を好適に行う工程、および
・選択的にサンドブラストを行う工程
【0038】
インターコネクタの成形は、他の好適な工程、例えば金属粉末射出成形により行うこともできる。粉末鋳造および粉末押出とその後のスタンピング工程も、好適な製造工程である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】製造実施例の焼結酸化インターコネクタであり、中央部から採取した標本、TEM(透過型電子顕微鏡)明視野像、AlおよびCr含有酸化物により充填された焼結孔、EDX分析点をラベル表示してある。
【図2】製造実施例通りの焼結酸化インターコネクタであり、表面から採取した標本、TEM明視野像、外側の酸化物層、EDX分析点をラベル表示してある。
【図3】図1(焼結孔中のAlおよびCr含有酸化物)の分析点“Base(1)”に対するEDXスペクトルである。
【図4】マトリックス材料、中央部から採取した標本に対するEDXスペクトルである。
【図5】図2(外側の酸化物層)の分析点“Base(8)”に対するEDXスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明を製造実施例により例示する。
【実施例】
【0041】
直径120mm、合計の厚さ2.5mm、中心穴の直径8.8mmであり、基部の片側が約0.5mmの高さと5mmの幅とを有する稜線状の隆起領域と、反対側に配置された約0.7mmの高さと5mmの幅とを有する稜線状の隆起領域と、一列に一定間隔で配置された節状隆起領域とを有する円盤状のインターコネクタを、最終形状として製造した。このために、0.181重量%のAl含有量を有する95重量%のクロム粉末と、型加工補助用の1重量%のマイクロワックスを添加した、0.05重量%のイットリウムを含有する鉄で構成される5重量%の予備合金化粉末と、から構成される粉末混合物を、最初に作った。用いた粉末は、粒子径が36〜160pmの範囲であった。粉末混合物を、800MPaで型加圧により圧縮成形した。その後、未焼結体を、水素中において1000℃で3時間、予備焼結した。予備焼結した構成要素の較正加圧を第2の加圧ツール中で実施した。ここで、第2の加圧工程後にインターコネクタが最終形状となるように、型の大きさを決めた。
【0042】
特許文献8に記載されるように、加圧ツールを構成した。その後、水素中において1450℃で2時間、構成要素を焼結した。空気中において950℃で18時間実施する予備酸化に、構成要素をかけた。
【0043】
このようにして製造したインターコネクタは、6.61g/cm3(15標本の平均)の平均密度を有していた。分析TEM(フィリップスCM−20)の検査用に、エッジに近い中央部から採取した標本(インターコネクタの断面に基づいて)および表面から採取した標本を、収束イオンビーム(FIB)により準備した。分析は、エネルギー分散型X線分析(EDX)により行った。走査型電子顕微鏡により形態的な検査行った結果、気孔が酸化物により均一に充填されているという結果が得られた。
【0044】
透過型電子顕微鏡(TEM)による検査およびEDX分析の結果を以下に要約する。図1は酸化物が充填された焼結孔を示す。互いに結合した個々の酸化物粒子が存在する。図2は表面領域の酸化物層を示す。酸化物層の厚さは約6μmである。図3は焼結孔に形成された酸化物粒子のEDXスペクトルである。酸化物は、Al、Cr、およびOにより構成される。Cのピークは測定ノイズによるものである。元素マッピングは、AlとCrを個々に分解しない。それゆえ、上記に与えられた定義によれば、これはAl−Cr混合酸化物である。計算されたAl/Cr(原子%/原子%)比は6.9である。それぞれの場合における焼結孔中の酸化物粒子のさらなる検査から、最も低いAl/Cr(原子%/原子%)値が4.7で、最も高いAl/Cr(原子%/原子%)の値が8.6である、AlリッチなAl−Cr混合酸化物が明らかになった。散乱酸化物は、粒界および粒内でも同様に高Al/Cr比としてAlおよびCrを含むものとして検出できた。図4にマトリックス材料の領域における測定点に対するEDXスペクトルを示す。
【0045】
酸化処理の結果として、マトリックス材料のAl含有量は検出限界以下である。マトリックス材料は、合金組成に対応するCrとFeのみを含有する。Cのピークは測定ノイズによるものである。
図5は、外側の酸化物層のEDXスペクトルを示す。酸化物層はAlを含有していない。CrとOを別にすれば、Siのみが検出可能である。使用したCr粉末のSi含有量は、0.052重量%であった。Si含有量は、長期の挙動に悪影響を与えない。CuとCのピークは測定ノイズによるものである。
【0046】
本発明によるインターコネクタは、優れた寸法安定性および3×30-4Pa未満の通気性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結孔を有し、かつ90重量%を超えるCrと、3〜8重量%のFeと、選択的に0.001〜2重量%の希土類金属の群の少なくとも1つの元素とを含有する焼結クロム合金から構成される高温固体電解質燃料電池用インターコネクタであって、
前記クロム合金は、0.1〜2重量%のAlを含有し、前記焼結孔がAlとCrを含む酸化化合物により少なくとも部分的に充填されていることを特徴とするインターコネクタ。
【請求項2】
AlとCrを含む酸化化合物のAl/Cr(原子%/原子%)比は、1より大きいことを特徴とする請求項1に記載のインターコネクタ。
【請求項3】
AlとCrを含む酸化化合物のAl/Cr(原子%/原子%)比は、2より大きいことを特徴とする請求項2に記載のインターコネクタ。
【請求項4】
AlとCrを含む酸化化合物は、Al−Cr混合酸化物であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインターコネクタ。
【請求項5】
AlとCrを含む酸化化合物は、xAl23・yCr23であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインターコネクタ。
【請求項6】
クロム合金は、2〜20体積%の焼結孔を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインターコネクタ。
【請求項7】
クロム合金の合計の焼結孔体積の少なくとも50体積%が、AlとCrを含む酸化化合物により充填されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインターコネクタ。
【請求項8】
0.05重量%未満のAlが、クロム合金のマトリックス中に溶解および/または金属間相として存在することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインターコネクタ。
【請求項9】
クロム合金は、0.005〜0.5重量%のYを含有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のインターコネクタ。
【請求項10】
外側表面は、酸化物がない、または少なくとも90重量%のクロム酸化物を含有する酸化物層を有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のインターコネクタ。
【請求項11】
安定化ジルコニウム酸化物から構成されるセラミック固体電解質と、請求項1〜10に記載のインターコネクタと、を備える高温固体電解質燃料電池。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のインターコネクタを製造する方法であって、
混合し部分的に予備合金化したおよび/または完全に予備合金化した粉末を用いて粉末混合物を生成する工程、
500<p<1000MPaのプレス圧力pで型加圧により成形する工程、
選択的に、還元雰囲気中において700℃<T<1200℃の温度Tで予備焼結する工程、および選択的に、500<p<1000MPaのプレス圧力pで型加圧により較正成形する工程、
還元雰囲気において1200℃<T<固相線温度の温度Tで焼結する工程、
700℃<T<1200℃の温度Tで酸化処理を好適に行う工程、および
選択的にサンドブラストを行う工程、
から成るインターコネクタ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−219045(P2010−219045A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54956(P2010−54956)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(390040486)プランゼー エスエー (25)
【Fターム(参考)】