説明

高温型燃料電池を有するガスタービンコンバインド発電システムおよび高温型燃料電池を有するガスタービンコンバインド発電システムの運転方法

【課題】燃料電池の起動の際に高温型燃料電池を短時間で昇圧および昇温ができるコンバインド発電システムを提供する。
【解決手段】ガスタービンシステム5とともに用いられる高温型燃料電池3を備える。SOFC本体15と、SOFC本体15へ燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路L1と、SOFC本体15から排出された燃料ガスを燃焼器9へと導く燃料ガス排出流路L2と、燃料ガス排出流路L2内の燃料ガスを燃料ガス供給流路L1側に再循環させる燃料ガス再循環流路L3と、圧縮機7からの吐出空気をSOFC本体15へ供給する空気供給流路L4と、SOFC本体15から排出された空気を燃焼器9へと導く空気排出流路L5とを備え、燃料ガス排出流路L2には、圧縮機7からの吐出空気を供給可能とするように空気供給流路L4から分岐された連通空気流路L7が接続され、かつ、SOFC本体15を昇温するための燃料系統用触媒燃焼器30が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば固体酸化物形燃料電池とされた高温型燃料電池を有するガスタービンコンバインド発電システムおよび高温型燃料電池を有するガスタービンコンバインド発電システムの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば固体酸化物形燃料電池(SOFC)に代表される高温型燃料電池は、高効率な燃料電池として知られている。
このような高温型燃料電池は、イオン電導率を高めるために作動温度が高くされているので、ガスタービンシステムの圧縮機から吐出され、ガスタービンの排ガス熱を利用して高温とされた吐出空気を空気極側に供給する空気(酸化剤)として使用できる、また、高温型燃料電池で利用できなかった高温の燃料をガスタービンの燃焼器の燃料として使用することもできる。
このため、たとえば、特許文献1に示されるように、高効率を達成できる発電システムとして固体酸化物形燃料電池とガスタービンとを組み合わせたコンバインド発電システムが提案されている。
【0003】
一方、特許文献2には、高温型燃料電池とガスタービンシステムとを組み合わせたコンバインド発電システムの起動方法が開示されている。すなわち、同文献の図1に示されているように、燃料電池の空気極の昇圧は、ガスタービンシステムの空気圧縮機106から導かれる吐出空気によって行われ、燃料極の昇圧は、燃料フィード129からの加圧燃料の供給によって行われる([0024])。また、燃料極の昇温は、ガスタービンシステムのタービン104からの排ガスを用いた燃料プレヒータ122によって行われる。なお、燃料改質を行う燃料処理装置110を起動時に昇温するための起動燃焼器112が開示されている。起動燃焼器112としては、一例として触媒燃焼器が挙げられている([0026])。ただし、燃料電池は、起動燃焼器112からの燃焼排ガスから隔離されている([0031])。
【0004】
特許文献3にも、特許文献2と同様に、溶融炭酸塩形燃料電池とされた高温型燃料電池とガスタービンシステムとを組み合わせたコンバインド発電システムの起動方法が開示されている。同文献の図1に示されているように、起動時において改質反応に必要な熱を改質器10の改質室Refに供給するために、改質器10の燃焼室に接続された触媒燃焼器17が設けられている。触媒燃焼器17からの燃焼排ガス5は、改質器10を通過した後、リサイクルブロワ16を介して燃料電池11のカソード入口側に導かれるようになっている([0024])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−36872号公報
【特許文献2】特開2005−276836号公報
【特許文献3】特許第4212322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献2に示されているように、起動時の昇圧は、燃料極側の加圧燃料ガスによる昇圧と、空気極側の圧縮機からの吐出空気による昇圧とが同時に並行して行われる。この際に、燃料電池の健全性を保つために、燃料極側と空気極側との差圧を所定の管理値内に保持しながら昇圧を行う必要がある。この場合、差圧制御の追従する範囲内での昇圧速度となるので、その昇圧時間がかかるという問題がある。
また、上記各特許文献には記載されていないが、燃料極に酸素が存在すると、燃料極が再酸化されるおそれがあるため、起動前に燃料極側を不活性ガスでパージする工程を設けることが知られている。しかし、不活性ガスによるパージを実施すると起動時間が長くなってしまい、また、窒素等の不活性ガスを供給する設備が別途必要となるという課題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、燃料電池の起動の際に短時間で昇圧および昇温ができる高温型燃料電池を有するガスタービンコンバインド発電システムおよび高温型燃料電池を有するガスタービンコンバインド発電システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の高温型燃料電池を有するガスタービンコンバインド発電システムおよび高温型燃料電池を有するガスタービンコンバインド発電システムの運転方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる高温型燃料電池を有するガスタービンコンバインド発電システムは、圧縮機、燃焼器、ガスタービン、及び発電機を備えたガスタービンシステムとともに用いられる高温型燃料電池において、燃料ガスおよび空気が供給されて発電する高温型燃料電池本体と、燃料ガス源から前記高温型燃料電池本体へ燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、前記高温型燃料電池本体から排出された燃料ガスを前記燃焼器へと導く燃料ガス排出流路と、該燃料ガス排出流路と前記燃料ガス供給流路との間に設けられ、該燃料ガス排出流路から分岐して該燃料ガス供給流路へ接続するように設ける燃料ガス再循環流路と、前記圧縮機からの吐出空気を前記高温型燃料電池本体へ供給する空気供給流路と、前記高温型燃料電池本体から排出された空気を前記燃焼器へと導く空気排出流路とを備え、前記燃料ガス供給流路、前記燃料ガス再循環流路との接続部よりも上流側の前記燃料ガス排出流路、および前記燃料ガス再循環流路の少なくともいずれか1つには、前記圧縮機からの吐出空気を供給可能とするように前記空気供給流路から分岐された連通空気流路が接続され、かつ、前記高温型燃料電池本体を昇温するための昇温用燃焼器が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、連通空気流路によって、圧縮機からの吐出空気を、燃料ガス供給流路、燃料ガス再循環流路との接続部よりも上流側の燃料ガス排出流路、および燃料ガス再循環流路の少なくともいずれか1つに供給することとした。これにより、高温型燃料電池本体に対して燃料ガスを供給しかつ排出する燃料系統を、圧縮機からの吐出空気によって昇圧することが可能となる。この昇圧の際には、連通空気流路が空気供給流路から分岐されているので、高温型燃料電池本体に対して空気を供給しかつ排出する空気系統とともに均圧化して昇圧を行うことができる。
さらに、本発明では、燃料ガス供給流路、燃料ガス再循環流路との接続部よりも上流側の燃料ガス排出流路、および燃料ガス再循環流路の少なくともいずれか1つに、昇温用燃焼器を設けることとした。これにより、燃料系統に残存する空気中の酸素を用いて燃料ガスを燃焼させることができ、高温型燃料電池本体の昇温に用いることができる。
また、燃料系統中に残存する空気中の酸素を昇温用燃焼器によって消費することができるので、燃料極側に残存する空気をパージするために窒素等の置換ガスを供給する設備を省略することができる。
なお、高温型燃料電池としては、典型的には、固体酸化物形燃料電池(SOFC)や溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)が挙げられる。
また、昇温用燃焼器としては、比較的低い温度でかつ低酸素濃度で安定燃焼できるものが好ましく、例えば触媒燃焼器が好適である。
【0010】
また、本発明にかかる高温型燃料電池を有するガスタービンコンバインド発電システムの運転方法は、圧縮機、燃焼器、ガスタービン、及び発電機を備えたガスタービンシステムと、該ガスタービンシステムともに用いられる高温型燃料電池を有するガスタービンコンバインド発電システムの運転方法において、前記高温型燃料電池は、燃料ガスおよび空気が供給されて発電する高温型燃料電池本体と、前記高温型燃料電池本体へ燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、前記高温型燃料電池本体から排出された燃料ガスを前記燃焼器へと導く燃料ガス排出流路と、該燃料ガス排出流路と前記燃料ガス供給流路との間に設けられ、該燃料ガス排出流路内の燃料ガスを該燃料ガス供給流路側に再循環させる燃料ガス再循環流路と、前記圧縮機からの吐出空気を前記高温型燃料電池本体へ供給する空気供給流路と、前記高温型燃料電池本体から排出された空気を前記燃焼器へと導く空気排出流路とを備え、前記燃料ガス供給流路、前記燃料ガス再循環流路との接続部よりも上流側の前記燃料ガス排出流路、および前記燃料ガス再循環流路の少なくともいずれか1つには、前記連通空気流路が接続され、かつ、昇温用燃焼器が設けられ、前記圧縮機からの吐出空気を前記空気供給流路へ供給するとともに、前記連通空気流路へ供給することによって、前記高温型燃料電池本体の空気極側の空気系統および燃料極側の燃料系統をともに均圧化して昇圧する昇圧工程と、前記昇温用燃焼器によって、前記高温型燃料電池本体の燃料極側に供給された空気を用いて燃料ガスを燃焼させて該高温型燃料電池本体を昇温させる昇温工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、連通空気流路によって、高温型燃料電池本体の空気極側の空気系統および燃料極側の燃料系統をともに均圧化して昇圧することとしたので、短時間に昇圧することができる。
さらに、本発明では、昇温用燃焼器によって、高温型燃料電池本体の燃料極側に供給された空気を用いて燃料ガスを燃焼させて高温型燃料電池本体を昇温させるとともに、燃料極側に残存する空気を消費することとしたので、燃料系統を短時間に昇温できることに加え、燃料極側に残存する空気をパージするために置換ガスを供給する工程を省略することができる。
【0012】
さらに、本発明の運転方法によれば、前記昇温用燃焼器は触媒燃焼器とされ、前記昇温工程は、高温型燃料電池本体の温度が500℃以下の温度領域で実施することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、低温燃料系統に残存する空気中の酸素を消費しながら燃焼させることで燃料電池本体の所望温度である500℃以下の温度領域までの昇温を実現することが可能であることから、置換ガスを供給する工程を省略することができ、さらに、燃料系統に残存する空気中の酸素による燃料極等の再酸化を防ぎながら昇温することが可能である。
【0014】
さらに、本発明の運転方法によれば、前記昇温工程の後に、燃料電池本体に対して、燃料ガス供給流路より燃料ガスを供給し、空気供給流路より空気を供給し、高温型燃料電池本体の発電による自己発熱により燃料電池本体を昇温する昇温工程を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、燃料系統に残存する空気を消費する昇温工程の後に、燃料電池本体の発電による自己発熱を利用する昇温工程を実施することで、昇圧設備、昇温設備、パージするための工程を省略できることから、効率的かつ短時間で燃料電池本体を定常運転状態の温度領域まで昇温させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧縮機からの吐出空気を分岐させて高温型燃料電池の燃料系統に導く連通空気流路によって燃料系統を昇圧するとともに、圧縮機からの吐出空気によって空気系統を同時に昇圧することとしたので、燃料系統および空気系統を均圧化しつつ短時間にて昇圧を行うことができる。
さらに、昇温用燃焼器により、燃料系統に残存する空気中の酸素を用いて燃料ガスを燃焼させて高温型燃料電池本体を昇温させることとしたので、温度制御することが可能であり燃料電池本体を再酸化させることなく、短時間に昇温することが可能となる。
また、燃料系統中に残存する空気中の酸素を昇温用燃焼器によって消費することができるので、燃料極側に残存する空気をパージするために窒素等の置換ガスを供給する設備や工程を要することなく短時間の起動が実現できる。
さらに、昇温用燃焼器による昇温工程後に、燃料電池本体の自己発熱による昇温工程を開始することで、各工程間でガスを置換するロスがなく効率的かつに短時間に昇温を完了させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の高温型燃料電池ガスタービンコンバインド発電システムの一実施形態を示した概略構成図である。
【図2】図1の高温型燃料電池ガスタービンコンバインド発電システムの昇圧工程を示した概略構成図である。
【図3】図1の高温型燃料電池ガスタービンコンバインド発電システムの昇温工程を示した概略構成図である。
【図4】図1の高温型燃料電池ガスタービンコンバインド発電システムの昇温完了工程を示した概略構成図である。
【図5】図1の高温型燃料電池ガスタービンコンバインド発電システムの起動完了工程を示した概略構成図である。
【図6】図1の高温型燃料電池ガスタービンコンバインド発電システムの変形例を示した概略構成図である。
【図7】図1の高温型燃料電池ガスタービンコンバインド発電システムの変形例を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本実施形態の高温型燃料電池ガスタービンコンバインド発電システム1が示されている。高温型燃料電池ガスタービンコンバインド発電システム1は、高温型燃料電池である固体酸化物形燃料電池(以下「SOFC」という。)3と、ガスタービンシステム5とを備えている。
【0019】
ガスタービンシステム5は、空気を圧縮する圧縮機7と、圧縮機7によって圧縮された空気によって燃料を燃焼する燃焼器9と、燃焼器9から排出された燃焼ガスによって回転駆動されるガスタービン11と、ガスタービン11の回転力を得て発電する発電機13とを備えている。
燃焼器9には、ガスタービン用燃料ガス源9aからメタンを主成分とする都市ガス等が供給されるようになっている。また、燃焼器9には、燃料ガス排出流路L2を介して、SOFC本体15から導かれる燃料排出ガスも導かれるようになっている。さらに、燃焼器9には、空気排出流路L5を介して、SOFC本体15から導かれる排出空気が導かれるようになっている。
発電機13にて発電された電力は、図示しない電力線を介して外部の電力系統へと導かれるようになっている。
圧縮機7及びガスタービン11の下流側には、ガス−ガス熱交換を行う再生熱交換器17が設けられている。この再生熱交換器17によってガスタービン11から排出される排ガスから排熱を回収することで、圧縮機7から吐出される吐出空気が加熱されるようになっている。
再生熱交換器17によって加熱された吐出空気は、空気供給流路L4を通り、SOFC本体15の空気極へと導かれるようになっている。
【0020】
SOFC3は、SOFC本体15と、SOFC本体15の燃料極側に接続された燃料系統20と、SOFC本体15の空気極側に接続された空気系統21とを主要構成としている。
【0021】
SOFC本体15は、特に限定されるものではないが、例えば複数の円筒形とされたセラミック製の燃料電池セル管(以下、単に「セル管」という。)を備えている。セル管は、基体管の外表面に複数のセルが軸線方向に並べられて形成された構成とされている。セルは、燃料極膜、電解質膜及び空気極膜から構成される。そして、各セル間には、インターコネクタが設けられている。
【0022】
セルは、水素又は一酸化炭素を含む燃料ガスを燃料極膜(アノード電極)に供給し、かつ酸素を含む酸化剤ガスを空気極膜(カソード電極)に供給することにより、水又は二酸化炭素の合成反応を生じさせることによって電解質膜の両端で起電力を発生するものである。
燃料極膜は、例えば、ニッケル/イットリア安定化ジルコニアで形成されている。電解質膜は、例えば、イットリア安定化ジルコニアで形成されている。空気極膜は、例えば、ランタンマンガネートで形成されている。インターコネクタ膜は、隣り合うセル同士を電気的に接続し、例えば、ランタンクロマイトで形成されている。
【0023】
燃料系統20は、燃料電池用燃料ガス源22からSOFC本体15の燃料極側へメタンを主成分とする都市ガス等の燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路L1と、SOFC本体15の燃料極側から排出された燃料ガスを燃焼器9へと導く燃料ガス排出流路L2とを備えている。また、燃料系統20は、燃料ガス排出流路L2の中途位置の分岐点23から分岐して、燃料ガス供給流路L1の合流点24へと接続される燃料ガス再循環流路L3を備えている。ここで、燃料ガス源のメタンを主成分とする都市ガス等は燃料供給経路L1又はSOFC本体15で図示しない改質手段により、水素や一酸化炭素を含む燃料ガスに改質されていることが望ましい。
【0024】
燃料ガス供給流路L1には、燃料電池用燃料ガス源22からの燃料ガスの送出及び停止を制御する供給燃料ガス開閉弁26と、SOFC本体15へ供給する燃料ガスの流量を調整する供給燃料ガス流量調整弁27が設けられている。これら弁26,27は、図示しない制御部によって制御されるようになっている。また、後述する各弁についても同様である。
なお、燃料電池用燃料ガス源22からの燃料ガスは、図示しない所定の昇圧手段によって、SOFC本体15の通常運転時に必要とされる圧力以上に昇圧されている。
【0025】
燃料ガス排出流路L2には、分岐点23の上流側に位置する燃料系統用触媒燃焼器(昇温用燃焼器)30と、分岐点23の下流側に位置するとともに燃焼器9へ供給する排出燃料ガスの流量を調整する排出燃料ガス流量調整弁32とが設けられている。
燃料系統用触媒燃焼器30には、例えばプラチナやパラジウムを主成分とする燃焼触媒が充填されており、比較的低い温度でかつ低酸素濃度で安定燃焼できる特性を有している。
燃料系統用触媒燃焼器30の下流には、温度センサ31が設けられている。この温度センサ31によって、燃料系統用触媒燃焼器30の直後のガス温度が検出されるようになっており、これにより、燃料系統用触媒燃焼器30における燃焼の有無が確認できるようになっている。
【0026】
燃料ガス再循環流路L3には、燃料ガス排出流路L2から分岐した燃料ガスを燃料ガス供給流路L1へ押し込むための燃料ガス再循環ブロワ34が設けられている。燃料ガス再循環流路L3により、未利用の燃料を再循環させることで燃料利用率を向上させると共に、SOFC本体15の発電反応で得られた水蒸気を燃料系統L1に投入することで、改質反応に必要な水蒸気を確保することができる。
【0027】
空気系統21は、圧縮機7から吐出空気をSOFC本体15へと導く空気供給流路L4と、SOFC本体15の空気極側から排出された空気を燃焼器9へと導く空気排出流路L5とを備えている。
【0028】
空気供給流路L4の中途位置には、空気系統用触媒燃焼器36が設けられている。なお、この空気系統用触媒燃焼器36は省略可能である。この空気系統用触媒燃焼器36には、空気系統用燃料ガス源38から空気系統用燃料ガス供給流路L6を介して、メタンを主成分とする都市ガス等の燃料ガスが供給されるようになっている。空気系統用燃料ガス供給流路L6には、空気系統用燃料ガス源38からの燃料ガスの送出及び停止を制御する空気系統用燃料ガス開閉弁40と、空気系統用触媒燃焼器36へ供給する燃料ガスの流量を調整する空気系統用燃料ガス流量調整弁41が設けられている。なお、空気系統用燃料ガス源38からの燃料ガスは、図示しない所定の昇圧手段によって、SOFC本体15の通常運転時に必要とされる圧力以上に昇圧されている。
【0029】
空気供給流路L4には、分岐点43にて空気供給流路L4から分岐する連通空気流路L7が設けられている。連通空気流路L7の下流端は、燃料ガス排出流路L2の燃料系統用触媒燃焼器30の上流側の合流点44にて接続されている。連通空気流路L7の中途位置には、空気供給流路L4からの吐出空気の送出及び停止を制御する連通空気用開閉弁45と、燃料ガス排出流路L2へ供給する吐出空気の流量を調整する連通空気用流量調整弁46が設けられている。
空気排出流路L5には、排出空気の送出および停止を行う排出空気開閉弁48が設けられている。
【0030】
次に、上記構成の高温型燃料電池ガスタービンコンバインド発電システム1の運転方法について、図2乃至図5を用いて説明する。
図2には、起動開始時に行う昇圧工程が示されている。この昇圧工程は、先ずガスタービンシステム5を先に起動し、圧縮機7の吐出空気を用いて空気系統21だけでなく燃料系統22も昇圧するものである。
同図において、弁が全開放の時あるいは流量調整時には弁が白抜きで表示され、弁が全閉鎖の時には弁が黒塗りで表示されている(図3乃至図5も同様)。また、流体が流れる流路は太線で示され、流体が流れない流路は細線で示されている(図3乃至図5も同様)。
同図に示されているように、連通空気流路L7の連通空気用開閉弁45及び連通空気用流量調整弁46は開いている。これにより、圧縮機7からの吐出空気が連通空気流路L7を介して燃料系統20へと導かれる。すなわち、連通空気流路L7から合流点44へと導かれた吐出空気は、燃料系統用触媒燃焼器30を通り分岐点23にて燃料ガス再循環流路L3へと分岐した後、燃料ガス再循環ブロワ34によって燃料ガス供給流路L1へと導かれ、合流点24にて合流する。燃料ガス供給流路L1に合流した吐出空気は、SOFC本体15の燃料極側へと流れ、次いで燃料ガス排出流路L2へと流れる。これにより、圧縮機7からの吐出空気による燃料ガス系統20の昇圧が行われる。
燃料系統20への燃料ガスの供給は行わないので、供給燃料ガス開閉弁26及び供給燃料ガス流量調整弁27は閉鎖されている。同様に、空気系統21への燃料ガスの供給は行わないので、空気系統用燃料ガス開閉弁40及び空気系統用燃料ガス流量調整弁41は閉鎖されている。
燃料ガス排出流路L2の分岐点23にて分岐せずに燃焼器9へと導かれた吐出空気は、ガスタービン用燃料ガス源9aから供給される燃料ガスの燃焼用空気として用いられる。
空気供給流路L4の分岐点43にて分岐せずにSOFC本体15の空気極へと導かれた吐出空気は、空気排出流路L5を通り燃焼器9へと導かれる。これにより、空気系統21の昇圧も同時に行われる。
このように、連通空気流路L7を用いて燃料系統20及び空気系統21を同時に吐出空気によって昇圧することができるので、均圧化した状態での昇圧が可能となる。
【0031】
図3には、次に行われる昇温工程が示されている。同図に示されているように、燃料系統の連通空気流量調整弁46を閉鎖した後で、燃料ガス供給流路L1の供給燃料ガス開閉弁26及び供給燃料ガス流量調整弁27を開いて、燃料電池用燃料ガス源22から燃料ガスを燃料系統20へと供給する。燃料ガスは、燃料ガス供給流路L1を通ってSOFC本体15の燃料極へと導かれ、燃料ガス排出流路L2へと流れる。燃料ガス排出流路L2へと導かれた燃料ガスは、燃料系統用触媒燃焼器30へと流れ込み、燃料ガス系統20内に残存する吐出空気によって燃焼される。
燃料系統用触媒燃焼器30では、触媒の作用により、比較的低温でかつ低酸素濃度であっても安定した燃焼が維持される。燃料系統用触媒燃焼器30により燃焼が開始されると、ガス温度が上昇し、温度センサ31によって昇温が確認される。燃料系統用触媒燃焼器30から排出された燃焼ガスは、分岐点23にて一部が分岐され、燃料ガス再循環流路L3を通って燃料ガス供給流路L1へと導かれ、再びSOFC本体15の燃料極へと流れ込む。このような燃焼ガスの循環を行うことにより、燃料系統20の昇温が行われる。
昇温の際には、温度センサ31によって温度をモニタしながら、爆発下限界を考慮して所望の温度となるように、燃料電池用燃料ガス源22から導かれる燃料流量を、供給燃料ガス流量調整弁27の開度を制御することによって調整する。さらに、燃料系統における空気中の酸素を消費した状態でSOFC本体が所望の温度となるようなシステムであることが望ましい。
なお、燃料系統の酸素が消費された状態で温度が所望の温度に到達していない場合に、連通空気流量調整弁46を開くことで燃料系統に空気を追加供給することで触媒燃焼による昇温を調整しても良い。その場合、SOFC本体15の燃料極が再酸化される温度(500℃)を下回るように、温度センサ31をモニタして空気量を調整することが好ましい。
【0032】
ここで、空気系統21についても同様に、所望の温度となるように、かつ爆発下限界を考慮しながら、空気系統用燃料ガス源38から燃料ガスを供給して空気系統に配置された触媒燃焼器36によって触媒燃焼を行わせ、これにより、空気系統21の昇温も同時に行っても良い。
【0033】
図4に示すように、燃料系統用触媒燃焼器30では燃料系統20内に残存する空気中の酸素を消費しながら最終的に燃焼が終了する。この燃焼の終了については、温度センサ31による温度低下によって検出することができる。このように、燃料系統20に残存する空気中の酸素を殆ど消費した後に触媒燃焼が停止することになる。なお、燃料系統20には、後に続くSOFCの発電運転に備えて、燃料電池用燃料ガス源22からの燃料ガス供給は継続したままである。したがって、供給燃料ガス開閉弁26及び供給燃料ガス流量調整弁27は開放されたままである。
【0034】
昇温工程により残存空気が消費され燃焼が終了することで燃料系統用触媒燃焼器による燃焼が終了したら、SOFC本体を起動して負荷をかけることで、燃料電池本体の自己発熱による昇温を開始する。この場合、燃料系統用触媒燃焼器による昇温工程によりSOFC本体の温度は500℃まで昇温されており、さらに、定常発電が可能な温度である850℃〜1000℃まで昇温させる為に、SOFC本体に負荷をかけることによる自己発熱によってSOFC本体を昇温させる。このSOFC本体の自己発熱による昇温工程を得ることでSOFC本体が発電運転状態の温度まで昇温される。
上述のように燃料系統20および空気系統21の昇圧および昇温が完了すると、起動工程が完了し、SOFCの発電運転が開始する。具体的には、図5に示すように、連通空気開閉弁45を全閉鎖として燃料系統20への吐出空気の供給を遮断して、燃料系統20では燃料ガスを供給し循環させ、空気系統21では圧縮機7からの吐出空気を供給し、発電運転状態である850℃〜1000℃まで昇温させる。
【0035】
以上の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
連通空気流路L7によって、圧縮機7からの吐出空気を、燃料ガス再循環流路L3への分岐点23よりも上流側の燃料ガス排出流路L2に供給することとしたので、SOFC本体15の燃料極に対して燃料ガスを供給しかつ排出する燃料系統20を、圧縮機7からの吐出空気によって昇圧することができる。この昇圧の際に用いる吐出空気は、空気供給流路L4から分岐された連通空気流路L7から導かれるので、SOFC本体15の空気極に対して空気を供給しかつ排出する空気系統21とともに燃料系統20を均圧化して昇圧を行うことができる。
さらに、燃料ガス再循環流路L3への分岐点23よりも上流側の燃料ガス排出流路L2に、燃料系統用触媒燃焼器30を設けることとした。これにより、燃料系統20に残存する空気中の酸素を用いて燃料ガスを燃焼させることができ、高温型燃料電池本体の所望温度までの昇温に用いることができる。
また、燃料系統20中に残存する空気中の酸素を燃料系統用燃焼器30によって消費することができるので、燃料極側に残存する空気をパージするために窒素等の置換ガスを供給する設備や工程を省略することができる。
【0036】
図6及び図7には、本実施形態の変形例が示されている。これらの変形例は、図1に示した構成に対して、燃料系統用触媒燃焼器30の設置位置と、空気供給流路L4から分岐した連通空気流路L7の燃料系統20側の接続先が異なる。それ以外の構成は図1と同様なので、同一符号を付してその説明を省略する。なお、図6及び図7では、図1に示した空気系統用触媒燃焼器36が省略されているが、もちろん図1と同様に空気系統用触媒燃焼器36を設けても良い。
【0037】
図6に示されているように、燃料系統用触媒燃焼器30は、燃料ガス供給流路L1に設けても良い。この場合、燃料系統用触媒燃焼器30は、燃料ガス再循環流路L3の合流点24よりも下流側に位置させる必要がある。これは、燃料ガスが再循環する位置に設けて、燃料系統20中に残存した空気中の酸素を消費するためである。
また、空気供給流路L4から分岐した連通空気流路L7の燃料系統20側の接続先は、燃料ガス供給流路L1に設けても良い。この場合、連通空気流路L7の燃料系統20側の接続先は、燃料系統用触媒燃焼器30よりも上流側に設ける。これは、燃料系統用触媒燃焼器30に燃焼用の空気を供給するためである。
【0038】
また、図7に示すように、燃料系統用触媒燃焼器30を燃料ガス再循環流路L3に設けても良い。また、空気供給流路L4から分岐した連通空気流路L7の燃料系統20側の接続先を燃料ガス再循環流路L3に設けても良い。この場合、連通空気流路L7の燃料系統20側の接続先は、燃料系統用触媒燃焼器30よりも上流側に設けられている。
【0039】
このように、燃料系統用触媒燃焼器30の設置位置と、空気供給流路L4から分岐した連通空気流路L7の燃料系統20側の接続先は、それぞれ、燃料ガス供給流路L1、燃料ガス再循環流路L3との分岐点23よりも上流側の燃料ガス排出流路L2、および燃料ガス再循環流路L3の少なくともいずれか1つであればよく、またそれぞれを複数箇所に設けても良い。
【0040】
なお、上述した実施形態では、高温型燃料電池の一例として固体酸化物形燃料電池(SOFC)を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といったように500℃以上で動作する他の高温型燃料電池であってもよい。
また、昇温用燃焼器として、触媒燃焼器30,36を一例に挙げて説明したが、触媒燃焼器と同様に比較的低い温度でかつ低酸素濃度で安定燃焼できるものであれば、他の燃焼器であってもよい。
また、触媒燃焼器30,36は、上述した実施形態のように起動時のみに用いるだけでなく、SOFCの通常運転時に用いても良い。例えば、SOFCの通常運転時にSOFC本体15の温度が低下したときは、燃料系統20に連通空気流路L7を介して空気を供給して燃料系統用触媒燃焼器30を作動させ、空気系統用燃料ガス源38から燃料ガスを供給して空気系統用触媒燃焼器36を作動させても良い。なお、この場合、燃料系統用触媒燃焼器30に供給する空気は、連通空気流路L7を用いずに、別途設置した専用の空気流路を用いて供給してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 高温型燃料電池ガスタービンコンバインド発電システム
3 固体酸化物形燃料電池(高温型燃料電池)
5 ガスタービンシステム
7 圧縮機
9 燃焼器
11 ガスタービン
13 発電機
15 SOFC本体(高温型燃料電池本体)
17 再生熱交換器
20 燃料系統
21 空気系統
22 燃料電池用燃料ガス源
23 分岐点
24 合流点
26 供給燃料ガス開閉弁
27 供給燃料ガス流量調整弁
30 燃料系統用触媒燃焼器(昇温用燃焼器)
31 温度センサ
32 排出燃料ガス流量調整弁
34 燃料ガス再循環ブロワ
36 空気系統用触媒燃焼器
38 空気系統用燃料ガス源
40 空気系統用燃料ガス開閉弁
41 空気系統用燃料ガス流量調整弁
43 分岐点
44 合流点
45 連通空気用開閉弁
46 連通空気用流量調整弁
48 排出空気開閉弁
L1 燃料ガス供給流路
L2 燃料ガス排出流路
L3 燃料ガス再循環流路
L4 空気供給流路
L5 空気排出流路
L6 空気系統用燃料ガス供給流路
L7 連通空気流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、燃焼器、ガスタービン、及び発電機を備えるガスタービンシステムと高温型燃料電池を有するコンバインド発電システムにおいて、
燃料ガスおよび空気が供給されて発電する高温型燃料電池本体と、
燃料ガス源から前記高温型燃料電池本体へ燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、
前記高温型燃料電池本体から排出された燃料ガスを前記燃焼器へと導く燃料ガス排出流路と、
該燃料ガス排出流路から分岐して燃料ガス供給流路へ接続するように設けられる燃料ガス再循環流路と、
前記圧縮機からの吐出空気を前記高温型燃料電池本体へ供給する空気供給流路と、
前記高温型燃料電池本体から排出された空気を前記燃焼器へと導く空気排出流路と、を備え、
前記燃料ガス供給流路、前記燃料ガス再循環流路との接続部よりも上流側の前記燃料ガス排出流路、および前記燃料ガス再循環流路の少なくともいずれか1つには、前記圧縮機からの吐出空気を供給可能とするように前記空気供給流路から分岐された連通空気流路が接続され、かつ、前記高温型燃料電池本体を昇温するための昇温用燃焼器が設けられていることを特徴とするコンバインド発電システム。
【請求項2】
圧縮機、燃焼器、ガスタービン、及び発電機を備えたガスタービンシステムと、該ガスタービンシステムと高温型燃料電池とを備えたコンバインド発電システムの運転方法において、
前記高温型燃料電池は、
燃料ガスおよび空気が供給されて発電する高温型燃料電池本体と、
前記高温型燃料電池本体へ燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、
前記高温型燃料電池本体から排出された燃料ガスを前記燃焼器へと導く燃料ガス排出流路と、
該燃料ガス排出流路から分岐して燃料ガス供給流路へ接続するように設けられる燃料ガス再循環流路と、
前記圧縮機からの吐出空気を前記高温型燃料電池本体へ供給する空気供給流路と、
前記高温型燃料電池本体から排出された空気を前記燃焼器へと導く空気排出流路と、を備え、
前記燃料ガス供給流路、前記燃料ガス再循環流路との接続部よりも上流側の前記燃料ガス排出流路、および前記燃料ガス再循環流路の少なくともいずれか1つには、前記連通空気流路が接続され、かつ、昇温用燃焼器が設けられ、
前記圧縮機からの吐出空気を前記空気供給流路へ供給するとともに、前記連通空気流路へ供給することによって、前記高温型燃料電池本体の空気極側の空気系統および燃料極側の燃料系統をともに均圧化して昇圧する昇圧工程と、
前記昇温用燃焼器によって、前記高温型燃料電池本体の燃料系統に供給された空気を用いて燃料ガスを燃焼させて該高温型燃料電池本体を昇温させる昇温工程と、を含むことを特徴とするコンバインド発電システムの運転方法。
【請求項3】
前記昇温用燃焼器は、触媒燃焼器とされ、
前記昇温工程は、前記高温型燃料電池本体の温度が500℃以下の温度領域で実施することを特徴とする請求項2記載のコンインド発電システムの運転方法。
【請求項4】
前記昇温工程の後に、前記燃料ガス供給量路より燃料ガスを供給し、前記空気供給流路より空気を供給し、前記高温型燃料電池本体の発電による発熱により燃料電池本体を昇温する昇温工程を含むことを特徴とする請求項2または3記載のコンバインド発電システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−80677(P2013−80677A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221259(P2011−221259)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度〜平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物形燃料電池システム要素技術開発 実用性向上のための技術開発 超効率運転のための高圧運転技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】