説明

高温超伝導体を製造するための湿式化学的方法

キャリアー上のHTSLを湿式化学的に製造する方法において、HTSL−前駆体の熱処理時に、HTSL−前駆体溶液の残存する物質が少なくとも部分的な溶融物を形成する温度であってかつREBaCuOが形成する温度よりも低い温度Tに該HTSL−前駆体を加熱し、それが包晶の形成のもとで液層から堆積される場合に、トリフルオロ酢酸なしにHTSL−前駆体溶液を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にテープ状のキャリアー上の組織化(Texturierten)された高温超伝導体(HTSL)を湿式化学的に製造する方法に関する。そのために、先ず、RE塩、Ba塩、及びCu塩の溶解によってHTSL−前駆体溶液が製造される。REは、希土類の元素記号、例えばY(=イットリウム)を示している。引き続き、HTSL−前駆体溶液は、特に組織化されたキャリアー上に塗布され、そして好ましくは、少なくとも表面乾燥を行う。乾燥時、上記の塩類からなるアモルファス層が生じる。引き続く熱処理の際、該塩類は組織化されたクプレート(Cuprat)−超伝導体へと転化する。
【0002】
キャリアー上の組織化されたHTSLは、薄層−HTSLとも称され、これは、薄層−HTSLの超伝導横断面が明らかにより小さいという点で、慣用の“パウダー・イン・チューブ(Powder in Tube)”法に従って製造されたマルチフィラメントHTSLや、HTSL−粉末の予備圧縮及び引き続く焼結によって製造されたHTSLと異なる。それ故に、薄層−HTSLにとっては、キャリアー上のHTSL−層が可能な限り高い臨界電流密度を有することが重要である。臨界電流密度は、キャリア上のHTSL、すなわちHTSL層が可能な限りそり等を有さないものであり、そしてそれ故に可能な限り均一な組織(テクスチャー)を有する、つまり組織化されていることに本質的に大きく依存する。HTSL−層の組織は、例えば、X線回折法を用いて測定することができる。
【0003】
それ故に、薄層−HTSLの湿式化学的製造の際には、HTSL−層は、可能な限り組織化された状態でキャリアー上に堆積されなければならない。これは、中でも、前駆体溶液の組成の影響を受ける。そのために、HTSL−前駆体溶液の製造時には、少なくとも一種の有機塩及び/又は一種の有機溶媒及び/又は一種の有機錯化剤の他に、一般的にはトリフルオロ酢酸(TFA)が使用される。HTSL−前駆体溶液にトリフルオロ酢酸(TFA)を加えない場合には、後の熱処理の際に炭酸バリウムが生じる。炭酸バリウムは化学的に非常に安定である。それ故に、炭酸塩として結合されたバリウムは、REBaCu−超伝導体の形成に使用することはできず、そして、粒界における電流輸送を妨げる。しかしながら、トリフルオロ酢酸を有する溶媒を塩に使用する場合、炭酸バリウムの代わりに、熱処理の間に水蒸気と反応して酸化バリウムとフッ化水素酸となるフッ化バリウムが発生する。したがって、最初にHTSL−前駆体層中へ水蒸気が拡散し、そして再びフッ化水素酸を層から外へ拡散させなければならないということが問題である。それ故に、比較的薄い層しか成長させることができない。それに加えて、拡散によってHTSL層中に孔が生じる。TFAを使用する際のさらなる不利点とは、発生したフッ化水素酸が非常に有毒であり、また、希釈状態においてもなお腐食性である、ということである。
【0004】
ドイツ国特許出願公開第102004041053B4号(特許文献1)によれば、フッ化水素酸の問題点は、複数回のコーティングによって減少させることができ、その際、最初にフッ素を含まない前駆体溶液が、そして最上層としてのフッ素含有の、つまりTFAベースの前駆体溶液がキャリアー上へ塗布される。最上層中に含まれるフッ素が十分であるため、その下にあるフッ素を含まない層中には、熱処理の間に炭酸バリウムはそれほど発生しない。
【0005】
TFAが使用されていないHTSL粉体の製造方法は、確かに、例えば、Grader等の論文(Physica C 290 (1997)、70−88)(非特許文献1)から知られているが、この“TFAフリー”の方法のいずれを用いても、キャリアー上に組織化されたHTSL層を堆積させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第102004041053B4号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Grader等の論文(Physica C 290 (1997)、70−88)
【非特許文献2】Handbook of Chemistry and Physics, 60. Ed., Chemical Rubber Company, 1980
【0008】
本発明は、フッ素含有の溶媒を使用せずに、キャリアー上に組織化されたHTSLを湿式化学的に製造する方法を提供するという課題に基づくものである。
【0009】
上記の課題は請求項1に記載の方法によって解決される。前駆体層を熱処理する際、最初に塩のアニオンが分解される。その際に炭酸バリウム、銅酸化物、及び使用された希土類元素の酸化物、例えば酸化イットリウム(Y)が生じる。引き続き、この前駆体は、前駆体の層が少なくとも部分的に溶融しかつ超伝導REBaCuO(例えば、YBaCuO)が生成されない温度を下回る範囲の温度Tまで加熱される。つまり、炭酸バリウム及び銅酸化物からの二元反応において、少なくとも部分的な溶融物が生じる。とりわけ、温度Tは、炭酸バリウム/銅酸化物の完全な溶融物が生じるように選択される。この温度Tは、使用される炉中の雰囲気、特に、その酸素含有量、使用される希土類金属、及び溶融物中の金属の化学量論に依存する。炉中が、例えば窒素雰囲気であり、希土類金属としてイットリウムが使用され(RE=Y)、そしてY:Ba:Cuの比が1:2:3のような場合、Tはとりわけ約780℃となる(約620℃から部分的溶融、約825℃からYBaCuOの形成となるため、おおよそ620℃≦T≦825℃となる)。例えば、炉中が空気である場合(RE=Y、Y:Ba:Cuが1:2:3)、Tは好ましくは約900℃となる(おおよそ780℃≦T≦915℃であり得る)。例えば、炉中が純粋な酸素である場合(RE=Y、Y:Ba:Cuが1:2:3)、Tは好ましくは約926℃となる(約810℃≦T≦938℃であり得る)。
【0010】
希土類金属としてネオジムを使用する場合、すなわち、RE=Ndの場合、少し高めの温度を選択しなければならない。
【0011】
前述の温度選択によって、HTSL−前駆体溶液の製造時にTFA及びその他のフッ素含有添加物を使用しないで済ませることができる。つまり、CuOの存在下では溶融物中のBaCOは不安定であり、そして酸化バリウム(BaO)と二酸化炭素(CO)とに分解されることから、HTSL−前駆体溶液は、TFAを含まないものであることができる。これは驚くべきことである。なぜなら、従来、専門家らは、1450℃で初めてBaCOは分解すると考えていたからである(Handbook of Chemistry and Physics, 60. Ed., Chemical Rubber Company, 1980)(非特許文献2)を参照)。
【0012】
BaCOの分解によって生じたCOのガスが発生し、そして、後に残されたBaOは、CuO及び希土類の酸化物(例えば、Y)と反応して、REBaCu(例えば、YBaCu、YBCOとも称される)となる。REBaCu(例えば、YBCO)はキャリアー上で晶出し、その際、組織が、キャリアーの最上(バッファー)層からREBaCu−層上へと転写される。
【0013】
HTSL−前駆体溶液を製造するための溶媒としては、とりわけ水が使用される。水は酢酸で酸性化することができる。
【0014】
好ましくは、HTSL−前駆体溶液に、トリエタノールアミン(TEA)及び/又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が添加される。TEA及びEDTAは、HTSL−前駆体溶液の表面乾燥時に錯化剤としてHTSL−前駆体溶液中のイオンを安定させる。
【0015】
HTSL−前駆体溶液製造の際の塩としては、特に硝酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩及び/又は好ましくは酢酸塩を使用することができる。これらは容易に取り扱うことができ、そしてこれらの塩のアニオンは熱を利用することによって分解させることができる。
【0016】
HTSL−前駆体溶液製造の際、RE:Ba:Cuが1:1.5〜2.5:2.5〜4、好ましくは1:1.5〜2:3〜3.5となるように塩を計量添加することが好ましい。
【0017】
HTSL−前駆体溶液に、酸化物系ナノ粒子が添加される場合、これらは、後のHTSLにおいて、磁束管(Flussschlaeuche)のための所謂ピン止めセンターを形成する。それによって、臨界電流密度を高めることができる。同様の効果は、別の金属塩の添加によっても達成することができる。
【0018】
前駆体溶液は、とりわけ、3〜9のpH値、特にほぼpH=6.75を有する。
【0019】
HTSL−前駆体溶液をキャリアー上に塗布した後、その粘度を好ましくは約1mPas〜約30mPas、特に好ましくは約10mPasに調整する。
【0020】
熱処理の際、酸化バリウム及び銅酸化物が溶融物を形成するが、RE2BaCuOは生じない温度を、好ましくは、少なくとも25分間保持する。引き続き、HTSLは、約380℃〜約550℃、好ましくは約400℃の温度Tまで冷却させることができる。この温度は、好ましくは少なくとも20分間、ほぼ一定に保持される。
【0021】
温度TでHTSL−前駆体が反応してREBaCuになる間、使用される炉中の雰囲気は、好ましくは20%未満、特に好ましくは5%未満の酸素含有量を有する。特に、HTSLは、これが冷えた時に初めて、例えば、炉が温度Tまで冷却された場合に、酸素を取り込むために、少なくとも50%、とりわけ100%酸素からなる雰囲気に曝される。
【0022】
キャリアーとしては、通常、少なくとも一つのセラミックのバッファー層、例えばジルコニウム酸ランタン、セロオキシド(Ceroxide)又はチタン酸ストロンチウムからなるバッファー層を有する金属テープ、あるいはまた純粋なセラミック製キャリアー、例えば、チタン酸ストロンチウム又はアルミン酸ランタンからなるセラミック製キャリアーが使用される。好ましくは、キャリアーは組織化されている、すなわち、HTSLがその上に堆積される、組織化された表面を有しており、その際、キャリアーのテクスチャーはHTSL上に転写される。
【0023】
当然ながら、キャリアー上に複数のHTSL−前駆体層を設けて、それから熱処理することができる。同様に、HTSL−層上に別のHTSL−層を設けることもできる。
【0024】
以下の例及び唯一の図面に基づいて、本発明を再度説明する。
【実施例】
【0025】
例1:
還流下に沸騰させることによって、Y−、Ba−及びCu−酢酸塩(Y:Ba:Cuは1:2:3)を、酢酸と混合した水中に溶解した。そのようにして製造されたHTSL−前駆体溶液に、錯化剤としてトリエタノールアミン(TEA)を加えた。全金属(Y、Ba、Cu)とTEAとの比は、1:2.5であった。アンモニアの添加(約25重量%)によって、pH値を約6.75に調節した。このHTSL−前駆体溶液は、透明でかつ青色であった。該溶液を、約60℃で約9mPasの粘度にまで蒸発濃縮し、そしてその後、研磨された(100)SrTiOからなる洗浄及び脱脂したキャリアーを上記のHTSL−前駆体溶液中に浸漬することによってその溶液を該キャリアー上に塗布した(引き抜き速度は約50mm/分)。そのHTSL−前駆体溶液を塗布したキャリアーを60℃で約1時間y表面乾燥した。その後、そのHTSL−前駆体溶液はゲル状であった。引き続く熱処理を炉中で行った。HTSL−前駆体試料を入れた炉を10℃/分で室温からT=815℃(800℃〜835℃で可能)まで加熱した。炉中で、N−雰囲気は約200ppmのO濃度を有していた。約150分後、炉温度を約525℃に調節し、そして炉の雰囲気をOと交換した。炉を約400℃まで冷却し、そしてその温度を約30分間保持した。約5時間後に炉を消し、そして室温に冷却後、HTSL−試料を取り出した。試料の特徴は、T=92K、ΔT=5K及びJ=1.87MA/cmであった。
【0026】
例2:
例1に従って、HTSL−前駆体溶液を製造し、キャリアー上に塗布し、そして表面乾燥させた。引き続く熱処理もまた同じように行ったが、HTSL−前駆体を入れた炉中のN−雰囲気は1000ppmのO濃度を有していた。炉を10℃/分で室温からT=835℃(約810℃〜約890℃で可能)まで加熱した。T到達約150分後、炉温度を約525℃まで低下させ、そして炉の雰囲気をOと交換した。炉を約400℃まで冷却し、そしてその温度を約5時間保持した。その後炉を消し、そして室温に冷却後にHTSL−試料を取り出した。試料の特徴は、T=92K、ΔT=2K及びJ=1.28MA/cmであった。
【0027】
例3:
還流下で沸騰させることによって(1時間、90℃)、Y−、Ba−及びCu−酢酸塩(Y:B:Cuは1:2:3)を、酢酸15体積%を有する水中に溶解した。引き続き、アンモニア約25重量%を添加することによってHTSL−前駆体溶液のpH値を6に調整した。金属錯化剤としてTEAを加え、その際、全金属イオン(Y、Ba、Cu)とTEAとの比は1:0.5であった。HTSL−前駆体溶液は、透明、青色であり、かつpH6.2であった。それから、研磨した(100)SrTiOからなる脱脂したキャリアーを上記のHTSL−前駆体溶液中に浸漬することによってこの溶液をキャリアー上に塗布した(引き抜き速度は約50mm/分)。このキャリアー上のHTSL−前駆体溶液を、60℃で約1時間表面乾燥した。引き続く熱処理を、N−雰囲気及びO200ppmの炉中で行った。炉を試料と共に、約10℃/分で815℃に加熱した。この最終温度を約150分保持した。引き続き、炉を525℃の温度に冷却し、そして雰囲気をOと交換した。炉を約400℃まで冷却してその温度を約5時間維持した。その後、炉を消し、そして室温まで冷却後、HTSL−試料を取り出した。試料の特徴は、T=92K、ΔT=4K及びJ=0.89MA/cmであった。
【0028】
例4:
TEAの代わりにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を加えた以外は、例3に従ってHTSL−前駆体溶液を製造した。その際、全金属イオン(Y、Ba、Cu)とEDTAとの比は1:0.5であった。この前駆体溶液を、例3における場合と同じように、SrTiO−キャリアー上に塗布し、そして熱処理した。試料の特徴は、T=92K、ΔT=4K及びJ=1.07MA/cmであった。
【0029】
例5:
総濃度0.6Mを有するNd−、Ba−、及びCu−硝酸塩(Nd:Ba:Cuは1:2:3)の水溶液に、希釈した水性のクエン酸(1.8M)を空気雰囲気で撹拌下で加える。後続の工程の間に金属水酸化物が沈殿すること、及び再結晶化することを阻止するために、アンモニウム水溶液でpHを6に調整した。研磨して(100)脱脂したSrTiO−キャリアーの浸漬によって、このHTSL−前駆体溶液を該キャリアー上に塗布した(引き抜き速度は約170mm/分)。このキャリアー上のHTSL−前駆体溶液を、HTSL−前駆体溶液もしくは−層のコンシステンシーがゲル状になるまで、ダストフリーの炉中で数時間以上にわたって60℃の温度に曝した。引き続き熱処理を行ってHTSLを生産した。それに加えて、炉中のキャリアーを、最初に1℃/分で500℃まで、次に5℃/分で940℃まで加熱した。炉中のアルゴン(Ar)雰囲気はO1%を有していた。引き続き、生成されたNdBaCu−層を、450℃で5時間、O−雰囲気中で焼きなまし、それによって酸素を取り込んだ。試料の特徴は、T=89K、ΔT=10K及びJ=0.3MA/cmであった。原子間力顕微鏡(AFM)を用いたこのHTSL−層の検査によって、層厚は約1μmであることがわかった。このHTSL−前駆体層に裂け目が生じないよう、最初に500℃まで、次いで940℃まで比較的ゆっくりと加熱することが必要であった。
【0030】
例6:
例1と同様にHTSL−前駆体溶液を製造し、塗布し、表面乾燥し、そして熱処理した。しかしながら、試料は850℃まで加熱した。この実験では、YBCOは生じず、超伝導性ではないYBaCuOが生じ、走査型電子顕微鏡を用いてその特性に基づく針状構造を確認した。
【0031】
例7:
例1と同様にHTSL−前駆体溶液を製造し、キャリアー上に塗布し、表面乾燥し、そして熱処理した。しかしながら、炉中のN−雰囲気はO1000ppmを有しており、試料は880℃まで加熱した。この実験では、YBCOは生じず、超伝導性ではないYBaCuOが生じ、走査型電子顕微鏡を用いてその特性に基づく針状構造を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】唯一の図中に、熱処理の際に試験系列の試料をそれぞれの最大温度へ加熱した時の炉雰囲気の酸素含有量を、対応する最大温度に対してプロットした。全ての試料が十字に対応する。試料のキャリアーは、例1に従って、HTSL−前駆体溶液でコーティングした。HTSL−前駆体溶液の乾燥後、N−雰囲気を有する炉中で熱処理を行った。その雰囲気中の酸素含有量は試料毎に変えた。炉は、試料とともに、約10℃/分でそれぞれの最高温度まで加熱した。その温度を約150分維持した。試料の冷却と、試料への酸素の取り込みは例1に従って行った。斜線で陰影をつけた範囲内に十字がプロットされた試料だけが高温超電導体である。斜線で陰影をつけた範囲の左側にはYBaCuOが生じた。斜線で陰影をつけた範囲の右側には、溶融物形成下でのBaCOとCuOとの二元反応は生じなかった。炭酸バリウムは分解しており、それ故YBaCu3xの形成に使用されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) RE−塩、Ba−塩及びCu−塩を溶解することによってHTSL−前駆体溶液を製造する工程であり、その際、REは少なくとも希土類元素の一種である、上記工程、
b) 前記HTSL−前駆体溶液を、HTSL−前駆体層としてキャリアー上に塗布する工程、
c) 熱処理する工程、
を含む、キャリアー上に組織化されたHTSL−層を湿式化学的に製造する方法であって、
前記熱処理の間、炭酸バリウム及び銅酸化物を生成するために、最初に前記塩のアニオンの分解温度より高い温度T超に前記HTSL−前駆体層を加熱し、そして、引き続き、前記HTSL−前駆体層を、二元反応において該炭酸バリウム及び銅酸化物が少なくとも部分的な溶融物を形成する温度であってかつREBaCuOxが形成する温度よりも低い温度Tまで加熱することを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
前記HTSL−前駆体溶液の製造時に、溶媒として水を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HTSL−前駆体溶液に、アミン類、とりわけトリエタノールアミン又はエチレンジアミン四酢酸を加えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記の塩として、硝酸塩、酒石酸塩、又はクエン酸塩、とりわけ酢酸塩を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記HTSL−前駆体溶液がフッ素を含まないことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記HTSL−前駆体溶液中のRE:Ba:Cuの比が、1:1.5〜2.5:2.5〜4、とりわけ1:1.5〜2:3〜3.5であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記HTSL−前駆体溶液に、酸化物系ナノ粒子又は別の金属塩を添加することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記HTSL−前駆体層の熱処理のために、該層を、
d) 少なくとも25分、前記温度Tに曝し、それから、
e) 約380℃〜550℃、とりわけ約400℃の温度Tまで冷却し、そしてその温度T±20°を少なくとも20分一定に保持する、
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記HTSL−前駆体層が、前記温度Tに曝されている間、酸素含有量<20%の雰囲気中にあることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記HTSL−前駆体層が、前記温度Tに曝されている間、少なくとも50%の酸素含有量を有する雰囲気中、あるいはとりわけ酸素からなる雰囲気中にあることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記HTSL−前駆体溶液のpH−値を、3〜9までの間、特に約pH=6.75に調整することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記HTSL−前駆体溶液を、前記キャリアー上に塗布した後に、約1mPas〜約30mPas、とりわけ約10mPasの粘度に調整することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記キャリアー上に前記HTSL−前駆体溶液の2つ又はより多くの層を塗布することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記HTSL−前駆体層を、前記温度Tに加熱する前に少なくとも表面乾燥させることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記HTSL−前駆体溶液を製造するのに、塩の分解によって炭酸バリウム及び銅酸化物を形成させるために、少なくとも有機塩の一種及び/又は有機溶媒の一種及び/又は有機錯化剤の一種を使用し、これらを前記炭酸バリウム及び銅酸化物から少なくとも部分的な溶融物が生じる温度Tに加熱し、その溶融物中で、炭酸バリウムは酸化バリウムと二酸化炭素とに分解されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−510171(P2011−510171A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542580(P2010−542580)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000214
【国際公開番号】WO2009/090062
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(507037068)ゼナジー・パワー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (10)
【Fターム(参考)】