説明

高温超伝導体装置のための極低温冷却方法および装置

特に高圧電力アプリケーションに用いるHTS装置(24)に極低温冷却を提供する方法および装置である。該方法は、液体寒剤(46、48)を1大気圧以上に加圧して、その絶縁耐力を改善し、また前記装置のHTS要素(24)の性能を改善するため前記液体寒剤をその飽和温度より下にサブ冷却することを含む。加圧されたガス状寒剤領域(44)およびサブ冷却された液体寒剤槽を備える容器からなるこのような冷却方法と、寒剤の圧力を液体寒剤の最適な絶縁耐力に対応する範囲の値に維持する、ガス状寒剤放出機構(30)を組み合わされた液体寒剤加熱(52)と、および液体寒剤(46、48)を、その沸点以下の温度で維持して該装置(10)に用いられるHTS素材(24)を改善する冷却システムとを、用いる装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国で2003年7月19日に早く提出された国内出願10/465,089を優先権主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般に、高温超伝導体(HTS)装置のための極低温冷却システムおよび、より特定的には、高圧電力応用を持つHTS装置のための極低温冷却システムに関する。
【0003】
液体窒素の性質を用いて極低温冷却を達成するHTS冷却システムが存在する。通常、液体窒素は、動作温度(沸点)が77ケルビンの1大気圧(0.1MPa)で用いられる。しかしながら、HTS素材の臨界電流密度が77K以下の温度で著しく改善するので、前記液体窒素の温度を、その動作環境を操作することで下げるための方法が開発されている。図1は、p、Tおよび典型的な物質の三相(固体、液体および気体/ガス)間の関係を示す、p(圧力)−T(温度)図である。窒素の三重点は、12.53kPaで約63.15Kである。これは、液体窒素の圧力を下げることで、その沸点温度は固体窒素が形成する約63K以下まで下げることができることを示す。このような低い動作温度に到達する液体窒素の特性を一つの例は、米国特許5,477,693に提供されている。それは、液体およびガス状の窒素をどちらも含む低温格納容器(低温保持装置)内のガス状窒素領域を吸い上げる真空ポンプを用いる方法を記述している。ポンピングは、液体窒素槽の圧力を下げ、これにより、その温度(沸点)を77K以下まで下げる。前記超伝導体の性能は、即ちその臨界電流レベルは、そこで著しく改善される。
【0004】
先行技術は、液体窒素の沸騰温度を、その圧力を下げて低下することによりHTS素材の性能を増大するが、液体窒素の絶縁耐力を著しく低下させ、結果として、このような冷却システムは高圧HTSアプリケーションに適さない。一般的に、高圧HTSデバイスのための、液体寒剤に基づく冷却システムは、主な電気絶縁媒体として、液体寒剤の誘電特性に大きく依存する。液体窒素の誘電特性に影響する2つの主な要因がある。一つは、液体窒素の圧力に依存する固有の絶縁耐力である。図2は、圧力の機能として液体窒素の絶縁耐力を示す。その耐力は、最適値は0.3MPaから0.5MPaの範囲に在るが、圧力が1大気圧(0.1MPa)以下になると、急速に減少する。もう一方の主な要因は、液体窒素中で発生する気泡である。気泡、特に大きな気泡は、液体窒素の絶縁耐力を減少させる傾向がある。気泡は、液体窒素に浸した対象物が液体窒素の上記沸騰温度まで熱されると、発生する。液体窒素の低められた沸点は、このように気泡発生を容易にする。従って、圧力を下げて液体窒素の温度を下げる方法は、液体窒素の絶縁耐力を支配する二つの要因に悪影響を及ぼす。従って、これに基づく或いは同様のアプローチに基づく冷却システムは、高圧HTSアプリケーションには適していない。
【特許文献1】米国特許6,629,426号明細書
【特許文献2】米国特許5,150,578号明細書
【特許文献3】米国特許5,220,800号明細書
【特許文献4】米国特許3,374,641号明細書
【特許文献5】米国特許6,501,970号明細書
【発明の開示】
【0005】
簡潔にすると、本発明によれば、HTS材料の臨界電流密度を改善する液体寒剤の低くされた動作温度の特徴を持つHTSデバイスの液体寒剤に基づく極低温冷却システムを設計する、また同時に液体寒剤の絶縁耐力を実質的に増大し、このような極低温冷却システムを高圧アプリケーションに適したものとする方法が提供される。このような方法は、液体およびガス状の該寒剤の領域をどちらも含む寒剤格納容器内に、加圧された寒剤を保持するステップを備える。さらに、該液体寒剤の一部或いは全ての温度を、その沸騰温度以下に、および冷凍冷却手段を用いたサブ冷却温度範囲内に維持するステップを含む。
【0006】
このような方法論を適用して、本発明の実施形態によれば、内部容器、少なくとも一つのHTS要素、および外部容器を持つ極低温冷却システムが提供される。外部および内部容器の間の空間は真空の下に維持され、多層断熱(MLI)素材は該内部容器を取り囲むのに用いられて、内部容器に放射熱負荷に対する熱遮断を提供する。前記内部容器は、前記外部容器内部に収納され、液体寒剤を格納する。上記液体寒剤領域にはガス状の寒剤領域があり、1絶対大気圧以上に加圧されている。液体加熱およびガス抜き手段は、前記内部容器内の圧力を制御し、維持する。この極低温冷却システムの高圧遮断問題に対応して、誘電体からなるバケット或いは同様の形状は前記HTSを取り囲んで、低温保持装置中に用いられ、適切な高圧遮断を確実にする。さらに、細かい網目のあるスクリーンは、液体寒剤領域中に配置され、装置動作中に発生する大きな気泡を破壊する。この極低温冷却システムの別の特徴は、外周の内部容器内に置かれて、前記液体寒剤を2つの領域に分ける熱輸送板である。前記板より下の領域は、HTSの性能が改善する温度までサブ冷却される。前記板より上の領域はバッファ領域であり、温度推移が前記液体およびガス領域の境界とバッファ領域およびサブ冷却された液体領域の境界との間で生じる。また、前記熱輸送板は、バッファ領域およびサブ冷却領域の両温度推移から熱を極低温冷蔵庫(冷凍冷却器)などの冷却手段に結合する。前記冷凍冷却器は、前記板より下の領域の温度を、圧力時の沸騰温度から液体寒剤の三重点温度までの、前記サブ冷却液体温度幅の範囲内に維持するのに用いられる。
本発明のこれらおよびその他の特徴、側面、および利点は、以下の詳細な明細書が、図面中の同様の部分は同様の符号で示される添付の図面を参照して読まれるとよりよく理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、他の一般的な目的を持つHTSデバイスにも適用できるが、一般に、高圧アプリケーションを持つHTSデバイスの極低温冷却システムに関する。このような極低温冷却システムを提供する方法は、液体およびガス状の領域を備える加圧された寒剤領域を、1絶対大気圧より上に維持することを含む。該方法はさらに、一部或いは全ての前記液体寒剤領域の温度を、極低温冷蔵庫(冷凍冷却器)などの冷却手段を用いて、その沸騰温度以下(サブ冷却されている)に維持することを含む。
【0008】
簡潔にすると、本発明によれば、HTS材料の臨界電流密度を改善する液体寒剤の低くされた動作温度の特徴を持つHTSデバイスの液体寒剤に基づく極低温冷却システムを設計する、また同時に液体寒剤の絶縁耐力を実質的に増大し、このような極低温冷却システムを高圧アプリケーションに適したものとする方法が提供される。このような方法は、液体およびガス状の寒剤の両方を含む前記寒剤格納容器内で加圧された寒剤を維持するステップを備える。さらに、一部の或いは全ての液体寒剤の温度を、冷凍冷却手段を用いて、その沸騰温度以下およびそのサブ冷却された温度範囲内に維持するステップを含む。
【0009】
このような方法論を適用して、本発明の一つの実施形態によれば、少なくとも一つのHTS要素の内部容器および外部容器を有する極低温冷却システムが提供される。前記外部および内部容器間の空間は、真空および多層断熱(MLI)により維持され、前記素材は、前記内部容器を取り囲むのに用いられて、その容器に放射熱負荷に対する断熱材を提供する。前記内部容器は前記外部容器の内側に収納され、液体寒剤を保存する。上記液体寒剤領域で、寒剤のガス状領域があり、それは1絶対大気圧以上に加圧される。液体加熱およびガス放出の手段は、前記内部容器内の圧力を制御して維持する。加熱により液体寒剤は沸騰してガス状空間に蒸発し、よって圧力を増大する。放出によりガス状の寒剤を外部の大気に放ち、よって前記容器内の圧力を減らす。このような加熱および放出手段は、自動モニタリングおよびフィードバックシステムによって制御される。先に議論したように、気泡、特に大きいサイズの気泡は液体寒剤の絶縁耐力を低下させる傾向にある。気泡は、液体寒剤に浸した対象物がその沸騰温度以上に加熱されるときに発生する。加圧は、前記液体寒剤の沸騰温度を上昇させる。上昇した沸点は、気泡の発生をより困難なものにし、よって前記液体寒剤の誘電特性を改善する。この極低温冷却システムの高圧遮断問題にさらに対応して、誘電体素材からなるバケット或いは同様の形状がHTSの周囲および低温保持装置中に使用され、適切な高圧遮断を確保する。さらに、細かい網目のあるスクリーンは液体寒剤中に配置され、大きい気泡が装置作動中に発生しても破壊する。この極低温冷却システムの別の特徴は、外周の内部容器内部に配置され、液体寒剤を2つの領域に分ける熱転写板である。前記板より下の領域は、温度推移が液体領域とガス領域の境界とバッファ領域とサブ冷却された液体領域の境界との間で生じるバッファ領域である。前記熱転写板は又、前記バッファ領域および前記サブ冷却領域の両温度推移から熱を極低温冷蔵庫(冷凍冷却器)などの冷却手段に結合する。前記冷凍冷却器は、前記板より下の領域の温度を前記サブ冷却された液体の温度範囲内の、圧力時の沸騰温度から液体寒剤の三重点温度までに維持するために用いられる。前記液体寒剤がその三重点温度以下までサブ冷却されると、望まれる結果となるかどうか分からない固体寒剤が形成し始める。サブ冷却が冷凍冷却器の使用を通して達成されるときに、前記三重点音頭或いはそれ以下でこのような実行は望まれな場合、固体寒剤が冷凍冷却器へのインターフェースの周りに形成し、前記冷凍冷却器の冷却性能を著しく低下させる。
【0010】
図3には、本発明の装置の一つの実施形態が図示される。本発明の極低温冷却システム10は、外部格納容器12と、前記外部容器12内部に格納されるのに適応した内部格納容器18と、前記内部容器に空気的に結合される放出口30と、内部容器18に電気的および機械的に結合される高圧ブッシング14と、前記内部用器と熱的および機械的に結合される冷凍冷却器20とを備える。前記高圧ブッシング14は、HTS24に電流を供給するのに用いられ、電力網などの外部の高圧電源に接続される。HTS24は、HTSサポート32に結合され、HTSサポート32は交代で熱輸送媒体26と結合する。銅リング36は内部容器の周囲に沿って裁置され、熱輸送媒体26にしっかりと添えられている。内部容器サポート34は、前記内部容器18と結合する。HTS24はまた、本発明の代理人に任命され、ここに引例で組み込まれる米国特許出願2003/0020174A1に記述されているように、マトリクス漏電制御器(MFCL)のHTSアセンブリであってもよい。
【0011】
前記外部容器12と内部容器18間の空間は、真空に維持され、また多層断熱(MLI)素材22が内部容器18を囲んで用いられ、それに放射熱負荷に対する熱遮断を提供している。
【0012】
内部容器放出口30は、内部容器18にガス放出手段を提供して内部容器18のガス圧力を減らす。また、補助ガス蒸発ヒータ52を、寒剤を加熱して沸騰させ、前記内部容器18の圧力を増加させるのに用いてもよい。低温保持装置のこれらの2側面は、ここでさらに記述されているように内部容器18の最適な圧力レベルを達成することにおいて、本発明の圧力制御メカニズムの基礎を形成する。
【0013】
前記内部容器18の大きさは、適切な冷却能力を提供して前記HTS24の冷却要求を満たすよう決定され得る。
【0014】
前記内部容器18は、液体およびガス状領域を有する寒剤を収納する。模範となる実施形態において、前記寒剤は窒素であり、図2で液体窒素の適切な絶縁耐力を達成するために、0.3MPaで加圧されている。気泡、特に液体窒素の大きい気泡はその絶縁耐力を低下させる。HTS24で発生した熱が、その温度を、HTSを浸す前記液体窒素の沸騰温度以上にする際に、気泡が発生する。低温保持装置の圧力を増大することは、前記液体窒素の沸騰温度を増大させる。窒素圧力が0.3MPaで維持されると、液体窒素の沸騰温度は、1MPaで77Kであるのに比べて、88Kまで上昇する。これは、気泡発生をより困難にし、従って前記液体寒剤の電気絶縁特性を改善する。さらに、HTS24と前記内部容器18との間での電気絶縁破壊を防ぐために、HTS24は、電気絶縁バリアの役割をする誘電体媒質38によって囲まれる。前記極低温冷却システムの高圧絶縁を改善するその他の手段は、バケット、チューブ、箱あるいは網目の構成でのスクリーンまたは誘電体からなるよく似た対象物を置くことを備え、気泡が装置作動中に発生しても気泡の大きさを破壊する。網目構造或いは開口のセル面積は十分に小さいものが選択され、前記スクリーンを通過する気泡は十分に小さくなり、液体窒素の絶縁耐力の実質的な低下を引起さず、HTS24およびその周りの環境内でボルテージ絶縁破壊を起こさない。模範的な実施形態において、スクリーンの開口は、5ミリまでの範囲の直径を有する。
【0015】
0.3MPa圧力で、前記液体およびガス状窒素境界42の表面温度は、88Kの沸騰液体窒素の沸騰(飽和)温度である。前記液体窒素領域はさらに、熱輸送媒体26によって2つの領域に分かれる。前記板26より下の領域はサブ冷却ゾーン48であり、前記板26より上の領域は熱バッファ領域46である。前記サブ冷却領域48の温度は、低温保持装置によって65Kに維持される。HTS24は、サブ冷却された液体寒剤領域に浸される。低下した動作温度(65K)のため、前記HTS24の性能、即ちその臨界電流密度レベルが著しく改善される。冷凍冷却器はGifford-McMahon冷蔵庫或いはパルスチューブ冷蔵庫、或いは両冷蔵庫システムの組み合わせを含むグループから選択される、密閉サイクル冷凍冷却器であってもよい。
【0016】
前記液体/ガス表面42の88Kから、前記熱輸送板26の65Kまで温度推移がある。前記HTS装置がその定常状態で動作し、低温保持装置に入力される熱と冷凍冷却器による冷却が平衡に達する場合、平衡状態が最終的に形成する前記液体/ガス境界42に沿って、同時に起こる液体蒸発およびガス凝結プロセスがある。領域46の液体窒素は、ほぼ停滞状態或いは、この領域に存在する熱負荷およびパターンによる乱流型である。従って、前記熱バッファ領域46は、サブ冷却された領域48を前記領域46内のイベントから孤立させる。
【0017】
この例では、前記熱輸送媒体26は、銅から作られており、銅は非常に良い熱伝導特性を有し、表面に沿って開口を有し(図示せず)、2つの液体窒素領域間の熱伝導およびこれらの2つの領域から前記冷凍冷却器20までの熱伝導を促進する。前記熱輸送板26は本発明に基づく極低温冷却システムを達成するのに必要ではないが、その存在はこのようなシステムの熱輸送特徴を著しく改善する。前記熱輸送媒体26は、プレート、リング、棒あるいは同様の形状でもよく、このような熱輸送媒体は寒剤領域から冷凍冷却器手段まで熱輸送を促進するために銅や同様の金属から作られる。
【0018】
要約すると、本発明は、高圧アプリケーションにより適していると同時に、HTS素材の性能を改善できるといういくつもの特徴を有する。寒剤の加圧は、その寒剤を最も最適な絶縁耐力にし、HTSが備わる前記液体寒剤領域をサブ冷却することは、前記HTS素材の臨界電流密度を増大させる。
【0019】
次に、本発明の極低温冷却システムの前記熱バッファ領域あるいは温度勾配レベル(TGL)46にある液体寒剤がほぼ停滞状態である場合を記述する。このような環境は、TGLへの全体的な熱漏れが比較的低く、この領域内で起こる対流熱輸送がほとんどない場合に、存在する。模範的な実施形態では、液体窒素を冷却媒体とし、絶対0.3MPaに加圧され(液体窒素の沸騰温度は約88Kであることに基づく)、サブ冷却された液体寒剤領域が、約65Kであることが想定される。再度、模範的システム構造の図3を参照する。液体表面42から熱輸送媒体26までの前記熱輸送メカニズムは以下に記述するとおりである。ガスエリア44に流入する熱は、もしそれがすぐにガス領域から輸送されない場合、前記ガスの温度を上昇させる。ガス/液体インターフェース42で、前記ガスは寒剤の表面で凝結される。凝縮の熱はその後、TGL46を通って、熱伝導によって冷凍冷却器20に維持されるサブ冷却された液体窒素領域48へ輸送される。銅リング36によって定義されるTGL46の厚さおよびその表面エリアは、上限温度(88度Kelvin)および低い温度(65度Kelvin)が効果的に設定されるので、層を通して輸送可能な熱の量を決定する。熱入力が、あるTGL46の厚さに設定された熱伝導値以上である場合、過度の熱は寒剤を蒸発させ、TGLの厚さを減少させ、よって、新しい均衡に到達するまで前記熱転送率を増大する。前記熱入力がTGL46を通した熱伝導値以下である場合、TGLの厚さを増大するネット凝結がある。その結果は、前記表面42から熱輸送媒体26までのある熱負荷に対して、最適な均衡TGLの厚さ(Lopt)が展開する。前記層の厚さ“L”展開の時間依存は、凝結によるTGLの増大から熱負荷“Q”による蒸発によるTGLの減少を引くことで求められ、数学的には以下のように表現される。
【0020】
dL/dt=kx(S/L)xΔTx1/(Sα)−Q/(Sα)、であり、k=液体寒剤の熱伝導率(液体窒素として、k=1.5m Watt/cm/Kelvin);
【0021】
S= TGLの表面エリア(表面42の径が100cmの場合 π/4x1002cm2);
【0022】
ΔT=TGLの上限および下限境界間の温度差異(88K−65K=23Kelvin);
【0023】
α=ガス/液体寒剤の潜熱或いは凝縮熱(窒素として、α=162Joule/cm3)
【0024】
TGLの最適な厚さは、dL/dt=0のとき、およびLopt=kxSx(ΔT)/Qで求めるLoptの値を求めて分かる。
【0025】
図5のグラフは、種々の熱負荷に対するTGLの平衡厚さに到達する時間の関係において算出されたデータを示す。図5は、蒸発および凝結の2つのプロットの一致点に示されるLoptを有する3つの異なる熱負荷に対する時間依存“L”のプロット60を図示する。図6に示されるグラフ62、Lopt対“Q” のプロットにおいて、LoptはTGLの最適な厚さであり、“Q”は前記熱負荷である。これらの計算では、付加的な蒸発ヒーターは含まれていない。
【0026】
結果としてのプロセスは、集束する自己帰還システムである。しかしながら、予想される動作条件として、時間依存は非常に遅く、鈍い応答システムである。これは、温度、圧力および寒剤レベルなどのパラメータ制御が、時間を通じての変化に敏感でないことを意味する。この分析からの一つ重要な結果は、100−Wattのケースとして、最適なTGLの厚さはたった数センチであることである。熱負荷に伴って減少したTGLの厚さの傾向は、増加した熱負荷を伴うという結果を導き、前記TGLは動作パラメータにおける変化に対しより敏感になり、システムを安定感の少ない動作形態へ移す。
【0027】
前に記述した本発明の実施形態には、加圧された寒剤ガス状領域およびサブ冷却された液体領域、圧力を維持するための過熱および排出機構、気泡サイズ制御メカニズム、および寒剤をサブ冷却された温度範囲内のその沸点以下の温度で維持する冷却手段とを含む多くの特徴がある。これらの特徴の特性および効果は、本発明の極低温冷却システムを、高圧HTSアプリケーションに用いるのにより有益なものにする。
【0028】
本発明の限られた特徴がここで図示され記述されたが、多くの修正および変更が当業者に起こるだろう。従って、添付のクレームは本発明の真実の精神に落ちるそのような修正および変更全てをカバーすることを目的とすると理解される。さらに、本発明を記述する際、液体およびガス状の相の窒素が、極低温媒体として記述された。本発明の極低温冷却システムにおいて、他の寒剤が窒素のかわりに用いることができることもまた理解される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】種々の圧力および温度条件に基づく物質の相変化を示す一般的なp−T図。
【図2】液体窒素の絶縁耐力と下にある絶対圧力との関係。
【図3】本発明の極低温冷却システムの一つの実施形態の図。
【図4】本発明の極低温冷却システムの一つの実施形態に用いられる寒剤の状態の概略図。
【図5】液体窒素がほぼ停滞状態である場合の、熱入力負荷に基づく液体窒素温度勾配層(TGL)の厚さを示すグラフ。
【図6】液体窒素がほぼ停滞状態である場合の、液体窒素TGL厚さ対気相およびTGL領域内の種々の熱負荷の関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒剤を液体状態(46、48)およびガス状態(44)で保存する寒剤格納容器(18)を持ち、少なくとも一つの超伝導体を持つ極低温冷却システム(10)の極低温冷却に到達し、維持する方法であって、前記方法は、
前記寒剤格納容器(18)内に加圧された寒剤領域(44)を保持し、
前記液体寒剤(48)の温度を、サブ冷却手段(20)を用いて、その沸騰温度およびそれ以下に維持するステップを備える。
【請求項2】
前記寒剤の絶縁耐力を改善するために、前記寒剤の圧力を1絶対大気圧以上に維持するステップをさらに備える、請求項1に記載の極低温冷却方法。
【請求項3】
前記液体寒剤を加熱して沸騰させ、前記ガス状の寒剤領域(44)の圧力を増大するステップをさらに備える、請求項1に記載の極低温冷却方法。
【請求項4】
前記液体寒剤を加熱して沸騰させるステップは、さらに前記液体寒剤を前記液体寒剤領域(46)で加熱するステップを備える、請求項3に記載の極低温冷却方法。
【請求項5】
ガス状の寒剤を放出して前記ガス状の寒剤領域(44)の圧力を下げるステップをさらに備える、請求項1に記載の極低温冷却方法。
【請求項6】
ガス状の寒剤を放出する前記ステップは、さらに前記寒剤格納容器(18)上で放出口(30)の使用を備える、請求項5に記載の極低温冷却方法。
【請求項7】
前記寒剤格納容器(18)は、真空を維持するのに適応する外部容器(12)に収納されている、請求項1に記載の極低温冷却方法。
【請求項8】
前記外部容器(12)は、サブ冷却手段(20)を前記内部容器(18)に含まれる液体寒剤に提供する飽和液体寒剤を含む、請求項7に記載の極低温冷却方法。
【請求項9】
前記サブ冷却手段(20)は密閉サイクル冷凍冷却器である、請求項1に記載の極低温冷却方法。
【請求項10】
前記密閉サイクル冷凍冷却器はGifford-McMahon冷蔵庫である、請求項9に記載の極低温冷却方法。
【請求項11】
前記密閉冷凍冷却器はパルスチューブ冷蔵庫である、請求項9に記載の極低温冷却方法。
【請求項12】
前記サブ冷却手段(20)は、前記内部容器(18)に含まれる液体寒剤をサブ冷却する飽和液体寒剤を含む外部容器(12)である、請求項1に記載の極低温冷却システム。
【請求項13】
前記寒剤の圧力を維持して該寒剤の沸点を上昇させ、よって前記寒剤が気泡を生成するより下の温度に上昇させるステップをさらに備える、請求項1に記載の極低温冷却方法。
【請求項14】
停滞した液体寒剤の場合、温度勾配層(TGL)(46)の最適な厚さを維持するステップをさらに備え、このようなTGL(46)の前記最適な厚さは、“S”はTGL(46)の表面であり、“ΔT”は前記TGL領域(46)全域の温度差であり、“k”は前記TGL(46)中の寒剤の熱伝導率であり、“Q”は、前記TGL(46)と前記ガス状領域(44)との間の境界面を通って前記TGL(46)に入力される熱である、方程式kxSx(ΔT)/Qで表わされる、請求項1に記載の極低温冷却方法。
【請求項15】
少なくとも一つの高圧超伝導体(24)の内部容器(18)と、外部容器(12)と、前記外部容器(12)の内側に格納されるよう適応し、液体状態(46、48)およびガス状態(44)の加圧された寒剤を保存するよう適応した前記内部容器(18)を有する極低温冷却システム(10)であって、前記冷却システムは、
前記ガス状の領域(44)で圧力を増大するために液体寒剤を煮沸する液体加熱手段(52)と、
前記ガス状の領域(44)で圧力を減らすためにガスを放出するガス放出手段(30)と、
前記液体寒剤(48)の部分を、その沸騰温度でおよびそれ以下であるサブ冷却された温度範囲内で維持する極低温冷却手段(20)とを、備える。
【請求項16】
前記外部容器(12)は真空容器である、請求項15に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項17】
前記外部容器(12)は、サブ冷却手段を内圧容器(18)に格納される液体寒剤溶液に提供する飽和液体寒剤を格納する、請求項15に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項18】
前記冷却手段(20)は密閉サイクル冷凍冷却器である、請求項15に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項19】
前記密閉サイクル冷凍冷却器は、Gifford-McMahon冷蔵庫およびパルスチューブ冷蔵庫を含むグループより選択される、請求項18に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項20】
前記密閉サイクル冷凍冷却器は、密閉サイクル冷蔵庫および外部容器(12)に収納されるサブ冷却された液体寒剤(48)とを含む、請求項15に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項21】
プレート、リング、或いは棒の形状の熱輸送媒体(36)をさらに備え、このような熱輸送媒体は、前記寒剤領域から前記冷凍冷却手段(20)への熱輸送を促進するため、銅および銅合金からなる、請求項15に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項22】
誘電体媒体をさらに備え、前記誘電体媒体は高圧超伝導体(24)を封入する、請求項15に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項23】
前記誘電体媒体は金網(38)であり、前記網目(38)は5ミリ以下の開口を持って前記液体寒剤領域(46、48)中の気泡の微粉化を促進する、請求項22に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項24】
少なくとも一つの高圧超伝導体(24)の内部容器(18)と、外部容器(12)と、前記外部容器(12)内部に格納されるよう適応され、液体状態(46、48)およびガス状態(44)の加圧された寒剤を保存するよう適応される内部容器(18)を有する、極低温冷却システム(10)。
【請求項25】
熱ヒートを前記液体寒剤領域(46、48)内で連結するための、前記内部容器(18)の内部に配置される熱転写板(26)をさらに備える、請求項4に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項26】
前記液体寒剤(46,48)の部分を、その沸点以下で維持する冷凍冷却手段(20)をさらに備える、請求項24に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項27】
前記液体寒剤領域(46)内の前記内部容器(18)内部に配置されるガス蒸発ヒータをさらに備える、請求項24に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項28】
前記誘電体バケットは、金網(38)であり、前記金網(38)は5ミリ以下の開口を持って前記液体寒剤領域(46、48)中の気泡の微粉化を促進する、請求項24に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項29】
前記内部容器(18)への放射熱漏れを削減するため、前記内部容器(18)の周囲に多層断熱体(22)をさらに備える、請求項24に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項30】
前記冷凍冷却手段(20)への熱輸送を促進するため、前記熱転写板(26)に結合される二元金属インターフェースをさらに備える、請求項24に記載の極低温冷却システム(10)。
【請求項31】
真空空間および前記真空空間を維持するための対応する手段を、前記内部容器(18)と、前記外部容器(12)の真空空間と前記真空空間を維持するための対応する手段から独立する前記冷凍冷却手段(20)との間のインターフェースについて、さらに備えた、請求項24に記載の極低温冷却システム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−526625(P2007−526625A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517530(P2006−517530)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/019964
【国際公開番号】WO2005/001348
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505448796)スーパーパワー インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】