説明

高温電子監視システム用ハブユニット

【課題】ガスタービンエンジンのエンジン性能パラメータを監視する監視システムを提供する。
【解決手段】ハブユニット14は、ハウジングと、ハウジング内でセンサ20からアナログセンサ出力を受ける信号調整回路ボード24と、ハウジング内で信号調整ボード24に接続され且つアナログセンサ出力に対応するデジタルデータを生成する制御ボード22とを含む。制御ボード及び信号調整ボードは各々、アナログ信号処理経路を定め且つ精度及び精密特性を有する電気回路構成要素を含み、該精度及び精密特性は、構成要素の経年変化並びにハブユニットが受ける温度変化に応答してドリフトする。ハブユニットは、電気回路構成要素のドリフトにより生じるアナログ信号処理経路における誤差を決定及び除去する連続較正方式を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、電子装置に関し、より詳細には、ガスタービンエンジン上又は隣接した環境のような、高温環境内で動作可能な電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機ガスタービンエンジンは、これらの開発中、並びに製造及びその後の保守整備中に試験を受ける。エンジン性能を評価するために、通常は、種々の温度、圧力、流量、力、回転速度、その他などを含む、多数のエンジン性能パラメータが監視される。非限定的な実施例として、典型的には、エンジン入口、圧縮機、及び排出ガスの温度、ファン、圧縮機、及びタービンセクション内の圧力、燃料及び空気流量、圧縮機及びファンロータ速度、ブレード先端クリアランス、機械的応力、並びに部品振動を監視することが望ましい。開発及び飛行試験の航空機エンジンは、対象の種々のパラメータを監視するために何千ものセンサを有することが必要となる場合がある。
【0003】
エンジン試験は通常、屋外に置かれることが多い固定の試験台上で行われる。このような試験台100の非限定的な実施例が図1に概略的に示されている。試験台100は、地中の支持基盤104に装着された垂直支柱102と、支柱102上に装着され且つ試験のため航空機エンジン108が装着されるヘッド(スラスト)フレーム106とを含むように表されている。ヘッドフレーム106は、パイロン112と共にエンジン108が取り付けられる取り付け部材110を含み、該パイロンは、特定のエンジン108に合わせて適切に構成される。
【0004】
エンジン試験中、エンジン180及びその直ぐ周囲の環境は極めて高温に達する可能性がある。例えば、温度は、エンジンカウル(ナセル)114の直ぐ下のエンジンコア周り、並びにヘッドフレーム106及びその取り付け部材110上で260℃近く又はこれを超える可能性がある。エンジン108を監視するのに使用されるセンサは、これらの温度に耐えるように開発されているが、センサデータを処理するのに使用される電子機器ははるかに低い温度に制限されている。例えば、典型的な民生用電子構成部品は、多くの場合、約85℃に制限され、軍用規格の構成部品でさえ通常は125℃を超えない定格である。このため、各センサは通常、その出力信号を遠隔のデータ収集システムに搬送するために別個の連続した配線又は管体を必要とし、遠隔データ収集システムは、制御環境を備えた密閉施設内に配置されることが多い。この施設は、例えば、50メートルから300メートルを超えるなど、エンジン試験台から相当な距離にある可能性がある。多数(場合によっては数千)のデータ配線及び管体を配線、管理、及び維持するには、相当な作業が必要とされる。そのため、配線又は管体の長さ及び数を低減できることが有用であり有利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,739,216号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明は、固定試験台上での作動中、又は機体搭載状態の飛行試験中並びに通常の航空機運転中のガスタービンエンジンのエンジン性能パラメータを監視するよう適応された監視システムで、特に、エンジン性能パラメータを検知してデジタルセンサ出力を生成するためエンジン上に装着されたセンサを含む監視システムで使用するよう適応されたハブユニットを提供する。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、ハブユニットは、ハウジングと、該ハウジング内でセンサからアナログセンサ出力を受けるように適応された少なくとも1つの信号調整回路ボードと、ハウジング内で信号調整回路ボードに接続され且つアナログセンサ出力に対応するデジタルデータを生成するよう適応された制御回路ボードとを含む。制御回路ボード及び信号調整回路ボードは各々、アナログ信号処理経路を定め且つ精度及び精密特性を有する電気回路構成要素を含み、該精度及び精密特性は、構成要素の経年変化並びにハブユニットが受ける温度変化に応答してドリフトする。ハブユニットは更に、標準電圧及びゼロ電圧を信号調整回路ボードに周期的に印加して、制御回路ボード及び信号調整回路ボードの電気回路構成要素のドリフトにより生じるアナログ信号処理経路における誤差を決定及び除去することによる連続較正方式を実施する手段を含む。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、上記の特定の態様に加えて、ハブユニットは更に、信号調整回路ボード上で、センサによって発生する複数のアナログセンサ出力を多重化して、個々の多重アナログ出力を生成する手段と、個々の多重アナログ出力のアナログセンサ出力をスケール調整し、対応するデジタルデータが生成される個々の調整済み多重アナログ出力を生成するための調整可能ゲインを備えた少なくとも1つの増幅器と、を含むことができる。増幅器及び調整可能ゲインは、制御回路ボードにより制御される。
【0009】
本発明の技術的作用は、例えば、デジタルデータを処理するのに従来使用されているタイプのより温度に敏感なハードウェアで実施可能な温度よりも高い温度である、高温でハブユニットが動作できることである。従って、データ処理は、監視されている高温環境から遠隔の位置にて実施することができる。他方、ハブユニット及び特にその制御ボード及び信号調整回路ボードは、好ましくは能動冷却を使用することなく、高温作動に特に適応させることができる。更に、連続較正方式は、制御回路ボード及び信号調整回路ボードの電気回路構成要素の精度及び精密特性がハブユニットの構成要素経年変化及び高温環境に起因してドリフトする傾向がある結果として、他の場合にはアナログ信号処理経路内に存在していた誤差を除去する。本発明の第2の態様によれば、多重化機能が、データを遠隔に位置するディストリビュータユニットに伝送するのに必要な配線又はケーブルの数を低減することができる。
【0010】
本発明の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ガスタービンエンジンの試験第の概略図。
【図2】図1に示されるタイプのような試験台上に装着される間に作動するガスタービンエンジンの性能パラメータを監視するよう適応された監視システムの段階的ユニットを表すブロック図。
【図3】監視システムのプロセッサ制御ボードの詳細を含めた、図2の監視システムの特定の構成要素を表すブロック図。
【図4】図2の監視システムのアナログ信号調整ボードを表すブロック図。
【図5】図2の監視システムのコレクタコンピュータと共に使用する電圧標準装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2は、エンジンが固定試験台(例えば、図1に示す試験台100)上に装着されて作動している間、ガスタービンエンジンの性能パラメータを監視するよう適応された監視システム10の種々のユニットを表すブロック図である。システム10はまた、機体搭載状態の飛行試験中並びに通常の航空機運転中にエンジンを監視するのに用いることができる。監視システム10は、ガスタービンエンジンの監視に特に好適であり、便宜上、図1に示されるエンジン108及びその試験台を参照して説明するが、システム10の利用はこのような用途に限定されない。むしろ、システム10は、高温に曝される環境において動作する装置の性能パラメータを監視する要求又は必要性がある多様な状況に広く適用することができる。
【0013】
図2において表されるように、システム10は、全体的に、ガスタービンエンジン108に関する4つの環境34、36、38、及び40に配置されるユニット12、14、16、及び18として識別される。第1のユニット12は、エンジン性能を評価する目的でエンジン108の性能パラメータを監視するためにエンジン108内又はその周りに適切に配置されたセンサ20のアレイを含む。あらゆる数のセンサ20がシステム10により利用することができ、センサ20は、図1に関して上記で検討したように、例えば、エンジン108の温度、圧力、流量、力、回転速度、その他を監視する種々のタイプのものとすることができる。特定のタイプのセンサ20は、通常、熱電対、抵抗温度検出器(RTD)、及び圧力トランスデューサを含む、エンジン運転の監視中に複数で利用される。センサ20は、対象のパラメータを直接検出するよう配置されるので、センサ20のユニット(アレイ)12は、「高温エンジン環境」34内に配置されるように図2に示されており、この高温エンジン環境では、200℃を超える最大温度にシステム10が遭遇することが多く、260℃又はそれ以上に達する場合もある。システム10において使用するのに好適なセンサ20は、一般に入手可能であり、ガスタービンエンジンパラメータを監視するために一般的に使用されており、従って、ここでは詳細には検討しないことにする。センサ20により生成される特定の出力信号は、使用されるセンサ20のタイプによって決まるが、ほとんどの場合ではこの信号はアナログ信号であり、コンピュータ処理装置によりデータを使用してエンジン性能を評価するためにはデジタル化しなくてはならない
システム10の残りの主要なユニット14、16、及び18は、図2において、相対的に低温になる可能性が高い環境36、38、及び40内に配置されることが分かる。これらのユニットのうちの最初のユニットはハブユニット14と呼ばれ、センサ20は、使用される特定のタイプのセンサ20と共に一般的に利用されるあらゆる好適な配線、管体、又は他の適切なコネクタを通じてこのハブユニットと直接通信する。図2に示されるハブユニット14は、通常、センサ20の数並びに各ハブユニット14が管理できるセンサ20の数に応じてシステム10において使用できる幾つかのハブユニット14のうちの1つである。ハブユニット14は、例えば、エンジンカウル114の真下のエンジンコア環境のような、エンジン108の約3メートル内でエンジン108に近接して配置されるよう適応されるので、センサ20の環境34と同様に、ハブユニット14の環境36は「高温エンジン環境」34として識別される。エンジン108の真上及びカウル114の真下の位置に加え、他の位置は、試験台100のヘッドフレーム106又は取り付け部材110上の隣接位置を含むことができ、ここでは極めて高い温度にシステム10が遭遇する可能性が高い。例えば、カウル114の真下及びヘッドフレーム106又は取り付け部材110上の位置に隣接する温度は125℃を超えることが多く、例えば、200℃よりも高く、場合によっては260℃又はそれ以上のような、はるかに高い温度に達する可能性がある。そのため、ハブユニット14の電子構成部品は、従来の電子構成部品及び軍用規格の構成部品で可能であった温度よりも有意に高い温度に耐えることができなければならない。
【0014】
対照的に、コレクタユニット16及びディストリビュータユニット18と呼ばれる、システム10の残りの2つのユニット16及び18の環境38及び40は、「エンジン近傍環境」38及び「低温環境」40として識別される。前者は、コレクタユニット16がエンジン108に近接して配置されるよう適応されるが、ハブユニット14と同程度にはエンジンコアに近接していないのでこのように表される。例えば、コレクタユニット16は、エンジン108のコアから約3〜10メートルの距離にあるエンジンファンケース環境内又は試験台100上(ヘッド(スラスト)フレーム106など)に配置することができる。これらの位置では、温度は通常55℃を上回るが、260℃よりも有意に低く、通常は125℃未満である。そのため、コレクタユニット16の電子構成要素は、通常、高温に耐えることができなくてはならないが、ハブユニット14ほど高温ではない。ある場合には、最大定格125℃の軍用規格構成要素を用いることができ、場合によっては、最大定格85℃の従来の電子構成要素を用いることができる。
【0015】
他方、ディストリビュータユニット18の低温環境40は、85℃を超えない定格の従来の電子構成要素の使用が認められる。低温環境40は、ディストリビュータユニット18が、例えば試験台100付近にある密閉施設のような制御温度環境内に配置可能であり、またそのように配置することが好ましく、55℃未満の温度に維持するよう空気調整して安定化される点で「低温」として表される。機体搭載状態のエンジン運転では、環境40は航空機の内部とすることができる。ディストリビュータユニット18は、システム10のうちで最大の処理能力を有するのが好ましく、従って、典型的には1つ又はそれ以上のコンピュータサーバ、パーソナルコンピュータ、及び/又はデータ処理に適応された他の処理装置を備えており、総称して図2においてディストリビュータコンピュータ42で表される。以下で検討するリアルタイム較正機能に加えて、ディストリビュータコンピュータ42はまた、エンジニアリング単位換算の機能、システム構成、及びデータベース機能を提供することができる。ディストリビュータコンピュータ42に好適な機器は、比較的温度に敏感である可能性があり、従って、ほぼ室温で収容されるのが有利である。低温環境40は通常、例えば、15メートルを超えてエンジン試験台100から遠隔に配置される。
【0016】
図2は、プロセッサ制御ボード22及び1つ又はそれ以上のアナログ信号調整回路ボード24を含むものとしてハブユニット14を概略的に示している。これらのボード22及び24は、図2に概略的に示されるように、ボード22及び24を完全に囲んで密閉するように、ハウジング44内に密閉されるのが好ましい。プロセッサ制御ボード22及びアナログ信号調整回路ボード24は、共に協働し、センサ20のアナログ出力信号をディストリビュータユニット18が処理できるデジタルデータに変換する。本発明の特定の好ましい態様によれば、プロセッサ制御ボード22及びアナログ信号調整回路ボード24はまた、アナログ−デジタル変換の前にセンサ20から受け取ったアナログ出力信号の完全性を確保する追加のプロセスを実施するよう組み合わされる。以下でより詳細に説明するように、1つのこのような追加のプロセスは、構成要素の経年変化及び温度変動(ハブユニット14が受ける過酷な温度変化など)から生じる可能性がある、アナログ信号調整回路ボード24及びプロセッサ制御ボード22の電子構成要素の精度及び精密特性のあらゆるドリフトを検出する連続較正機能を提供することである。較正機能は、較正データを生成し、ディストリビュータコンピュータ42がこれを使用して、コレクタユニット16及びより詳細にはユニット16のコレクタコンピュータ26を介してハブユニット14から収集されるデジタルデータのリアルタイム補正を実施する。別の好ましいプロセスは、複数のセンサ20のアナログ出力信号を多重化して多重アナログ出力にし、これにより、例えば、RS−485シリアル通信ケーブルのようなシリアルデータコネクタ上でデジタルデータをコレクタユニット16に伝送するのに必要な接続数が低減される。更に別の好ましいプロセスは、センサ20の1つのグループ(バンク)の多重アナログ出力をセンサ20の他のバンクの多重アナログ出力と交互配置(インターリーブ)し、多重アナログ出力の個々のアナログ出力信号が出力セットの間でより迅速に「整定」されるようにすることである。ハブユニット14のこれら及び他の態様は、以下でより詳細に検討する。
【0017】
コレクタユニット16は、コレクタコンピュータ26、電源28、及び以下でより詳細に説明されるように、システム電圧標準装置32を含む温度制御環境30を備えるものとして図2に概略的に示される。電源28の主要機能は、センサ20(必要であれば)及びハブユニット14に収容される電子構成要素を含む、システム10の電子構成要素に電力を供給することである。好ましい電源28は、スイッチングレギュレータフロントエンドと線形レギュレータバックエンドとを備えた二重トポロジー設計である。電源28は、システム耐障害性を高め、ノイズ結合を低減するために、各ハブユニット14に対して独立して調整される複数の電圧を生成するよう構成することができる。コレクタコンピュータ26は、ハブユニット14並びにシステム10に含まれるあらゆる追加のハブユニット14からデジタルデータを受け取った後、このデジタルデータをディストリビュータユニット18のディストリビュータコンピュータ42に転送する。コレクタコンピュータ26は、例えば、インターレンジインスツルメントグループ(IRIG)タイムコード又はネットワークタイムプロトコル(NTP)を利用して、ディストリビュータコンピュータ42へのデジタルデータの流れを同期させるためにロギング能力を有するよう構成される。より詳細には、コレクタコンピュータ26は、ハブユニット14から入来するデジタルデータの複数のストリームを正確にタイムスタンプし、データをフレームに圧縮し、次いで、例えば光ファイバーベースのEthernet(商標)接続によりデータをディストリビュータコンピュータ42に送信することにより、複数のハブユニット14からの入来するデジタルデータに対してインテリジェントスイッチとして動作するのが好ましい。複数データストリームをタイムスタンプして該データをフレームに圧縮するのに好適な構成要素は、当該技術分野で公知であり、従って、ここでは詳細には検討しない。コレクタコンピュータ26とディストリビュータコンピュータ42との間のデータ接続に光ファイバーケーブルを使用することは、軽量化に対する伝送の脆弱性を軽減する目的で好ましく、これは、伝送ケーブルが通常、試験台100と、ディストリビュータユニット18を収容する遠隔施設との間で配線される結果として戸外環境に曝されるので好ましいことである。コレクタコンピュータ26、電源28、及び制御環境30は全て、これらの構成要素が素子に直接曝されるのを防ぐ好適な保護ハウジング(図示せず)内に密閉することができる。
【0018】
特に、ハブユニット14のレベルでの多重化及びコレクタユニット16のレベルでの同期に起因して、デジタルデータは、単一のEthernet(登録商標)接続上でディストリビュータユニット18に供給することができ、これは、従来技術の遠隔データ収集システムにセンサ出力を送信するのにこれまで通常は必要とされた数千のケーブル及び管体とは著しく相違している点に留意されたい。
【0019】
図3は、プロセッサ制御ボード22、その接続部の一部、並びにアナログ信号調整ボード24及びコレクタユニット16への接続部を表したブロック図である。プロセッサ制御ボード22は、EEPROM(電気的消去可能ROM)などのROM48(read−only memory)内に記憶されたプログラムから実行するよう適応されたマイクロプロセッサ46を備えるように表され、RAM(ランダムアクセスメモリ)50を用いて、センサ20から生成されたデジタルデータ、並びに制御ボード22によって実行される計算において使用するあらゆる変数を記憶する。マイクロプロセッサ46は、好ましくは、アナログ信号調整ボード24に付随するゲイン設定機能(以下で検討する)を実施し、センサ20の個々の信号チャンネル又は信号チャンネルのブロックのどれが読み出されるか、データ収集のタイミング、エラー検知、アナログ−デジタル変換、あらゆる組み込み試験(BIT)モードの実行、センサ配置(センサ20のタイプに基づく)、並びにデジタルデータの収集、フォーマット、及びコレクタコンピュータ26への転送を制御/選択する。図3に示すように、ボード22の入力/出力(I/O)機能は、好ましくは、メモリマップトI/O操作の形態で指示される。また、図3で分かるように、プロセッサ制御ボード22はまた、ゼロ及びフルスケール制御出力をアナログ信号調整ボード24に送信し、並びにコレクタコンピュータ26と直接通信する。アナログ信号調整ボード24及び図4を参照しながら検討するように、プロセッサ制御ボード22により送信されるゼロ及びフルスケール制御出力は、連続較正方式の一部であり、該較正方式は、ゼロ電圧及び基準電圧を周期的に印加して、温度変動及び構成要素の経年変化により生じる、アナログ信号調整ボード24の電子構成要素の精度及び精密特性のあらゆるドリフトを検出し補正する。
【0020】
上述のように、ハブユニット14は、125℃よりも高く、好ましくは少なくとも200℃程度の温度で動作することを意図している。好ましい実施形態では、マイクロプロセッサ46、ROM48、RAM50、及びプロセッサ制御ボード22に取り付けられる受動的構成要素は、200℃を上回る温度で動作することができる。この能力を達成するために、マイクロプロセッサ46、ROM48、RAM50は、シリコンオンインシュレータ(SOI)基材及び処理技術を用いて実施されるのが好ましい。当該技術分野で公知のように、SOI基材は通常、絶縁体上に薄いエピタキシャル層を含む。基材は通常、ウェーハをボンディングする前に、半導体(例えば、シリコン)ウェーハのペアのボンディング面の片面又は両面を酸化することによって形成される。ほとんどの場合、単一の二酸化ケイ素の層は、シリコンウェーハ上に形成されたエピタキシャル層上に成長する。ウェーハをボンディングした後、絶縁体及びエピタキシャル層(及び任意選択的に、第2のウェーハのシリコン層)以外は全てエッチング除去され、二酸化ケイ素の層がエピタキシャル層を電気的に絶縁する絶縁体を形成する。SOI処理技術を用いてSOI基材上に実装される固体マイクロプロセッサの商業的実施例は、Honeywellから商業的に入手可能なHT83C51マイクロプロセッサである。SOI基材上に実装されるRAM構成要素の商業的実施例は、Honeywellから入手可能なHT6256 256Kビット SRAM構成要素であり、SOI基材上に実装されるROM構成要素の商業的実施例は、Twilight Technology Inc.によるROM構成要素を含む。
【0021】
プロセッサ制御ボード22の電子構成要素が取り付けられる基材はまた、少なくとも260℃の温度に耐えることができるのが好ましい。好ましい高温基材材料は、ガラス強化炭化水素/セラミック積層体であり、商品名RO4003CでRogers Corporationから商業的に入手可能である。更に、電子構成要素は、高融点はんだを用いて取り付けられるのが好ましく、その注目すべき非限定的な実施例は、92.5Pb−5Sn−2.5Agであり、約287℃から約296℃の溶融範囲を有する。ボードの熱膨張及び収縮により生じる熱応力を低減するために、ボード22上のマイクロプロセッサ46、ROM48、RAM50、及び他の構成要素は、1つ又はそれ以上の金属鉛(スティック)を有するスルーホール構成要素であるのが好ましく、これらは、基材内のスルーホール(通常はめっき済みスルーホール)に挿入され、次いで基材にはんだ付けされる。熱応力を低減する他の手法は、熱勾配を最小限にし、熱時定数を大きくし、振動を減衰させるために高温の熱伝導性の充填材料を用いること、並びにボードの層間剥離及び膨張/収縮に起因する破断を生じやすい金属バイアの数を制限することを含む。特に、スルーホール構成要素の金属鉛は、これらが配置されるバイアの構造的完全性を促進すると考えられる点に留意されたい。
【0022】
上述の高温能力に関しては、制御ボード22は、ハブユニットハウジング44内に含めることができ、ボード22の温度を従来の電子機器により要求されるような125℃未満に維持するために設けられる能動冷却システムを必要としないことが好ましい。本明細書で使用される用語「能動冷却」は、熱伝導、対流、及び/又は放熱によってボード22からの熱をハブユニットハウジング44の外に伝達するように特別に設計された冷却システムを意味する。
【0023】
図4は、2つのアナログ信号調整ボード24と、図3のプロセッサ制御ボード22への接続部とを表すブロック図である。アナログ信号調整ボード24は、ハブユニット14のハウジング44内でアナログ信号調整ボード24と組み合わされ、従って、同様に、エンジン108の過酷な環境の高温で作動する必要がある。ハブユニット14及びその調整ボード24の高温作動により、熱電対、RTD、及び圧力トランスデューサを含むセンサ20をエンジン108上に直接終端させ、プロセッサ制御ボード22により実施されるA/D(アナログ−デジタル)変換の前にこれらセンサの出力を調整できるようになる。更に、調整ボード24のハードウェアは、上述の連続較正、多重化、及びインターリーブ機能を組み込むのが好ましい。
【0024】
上述のように、調整ボード24上で実施される連続較正方式は、ハブユニット14から収集されたデジタルデータのリアルタイム補正を実施するためディストリビュータコンピュータ42が用いることができる較正データを生成する。連続較正方式は、調整ボード24及びプロセッサ制御ボード22上の全ての受動的及び能動的構成要素について補正するのが好ましく、信号精度に大きな影響を及ぼす可能性がある。システムレベルでは、例えば約−55℃から約200℃など、ハブユニット14の予測可能な動作範囲にわたってドリフトを示さないディスクリートの構成要素は現在利用可能ではないので、この連続較正機能が必要となっている。本発明の好ましい実施形態では、連続較正方式は、連続的に収集されることになるゼロ及びフルスケールデータを提供すると共に、時間及び温度にわたり収集されたデータのあらゆるドリフトが自動的に補正される。
【0025】
連続較正機能は、ハブユニット14から遠隔のコレクタユニット16の制御環境30内に配置されるように図2に示された、システム電圧標準装置32に部分的には依存する。コレクタユニット16を有する位置が好ましいと考えられるが、他の位置もまたシステム電圧標準装置32にとって好適と考えられることは予期される。制御環境30は、ハウジング52内に密閉された電圧標準装置32を備えるように図5においてより詳細に概略図で示されており、該ハウジング52は更に、加熱素子54、銅プレート56、及び熱RTV充填材料58を含み、これらにより電圧標準装置32の均一な加熱が達成される。標準装置32の温度は、例えば、約55℃から約125℃など、あらゆる好適なレベルに調整することができる。標準装置32は、高精度のゼロ及びフルスケール標準電圧を生成し、次いで、専用の異なるリンクを介して調整ボード24に伝送される。
【0026】
調整ボード24の電気回路構成要素の精度及び精密度の温度誘起によるドリフトは、A/D変換中にセンサ20のアナログ出力信号と共に取り込まれて記録される。アナログ出力信号がセンサ20から読み込まれる各サイクル中、プロセッサ制御ボード22は、標準装置32の高精度のゼロ電圧及び標準電圧信号を各調整ボード24の電子構成要素によって定められる全てのアナログ信号処理経路(チャンネル)を通じて伝送させる。次いで、ゼロ電圧及び標準電圧信号は、以前の較正読み取り値からの出力信号のあらゆる変化がボードレベルの構成要素ドリフトに起因しており、ディストリビュータコンピュータ42に較正データとして伝送されて、更にデータが使用される前にデジタルセンサデータをデジタル補正するという点で、デジタルセンサデータを補正するのに使用される。実際には、ゼロ及びフルスケール標準信号は、1秒あたりに複数回適用することができる。約∀20ppm(parts per million:100万分の1)及びそれ未満の程度の精度に匹敵する時間、温度、及び距離に関する精度が、上述の連続較正機能を用いてアナログ信号処理経路にて達成される。
【0027】
較正方式の一部として、調整ボード24はまた、センサ20からの複数の信号チャンネルの多重化を可能にし、これにより各調整ボード24は、より少数の回路経路(例えば、図4に示すように2つ)を通じて複数のセンサ信号を調整できるようになる。複数のセンサ20からの信号は、図4において、マルチプレクサ60を通過して多重アナログ出力を生成し、これによりシリアルデータコネクタを介してデジタルデータをコレクタユニット16に伝送するのに必要な接続数が低減されるように示されている。各回路経路内では、多重アナログ出力は、計測用演算増幅器62を用いて調整される。各増幅器62は、図4において、プロセッサ制御ボード22により制御されるアクティブゲイン変更部64を組み込むように示されており、これにより各調整ボード24を用いて、A/D変換の前に、異なる電圧出力を有する多くの異なるセンサタイプを設定出力電圧にスケール調整することができる。
【0028】
図4から更に明らかにされるように、スイッチ68を用いて、ボード24上の1つの回路経路に沿ったセンサ20の1つのバンク(グループ)の多重アナログ出力を、同じボード24の別の回路経路上のセンサ20の別のバンクの多重アナログ出力とインターリーブし、システムスループットを高めることができる。センサ20の1つのバンクからの一連の多重アナログ出力が、プロセッサ制御ボード22のA/Dコンバータに出力されると、センサ20の他のバンク上のセンサ出力は種々の整定段階にある。センサ20の第1のバンクからの一連の多重アナログ出力がA/Dコンバータにより読み込まれると、第1のバンクの信号が異なるセンサ20上で整定されている間に次のバンクを選定することができる。この機能により、プロセッサ制御ボード22及び調整ボード24の比較的低速であるが高温で動作可能な回路構成要素を用いてより高いシステムレベルのスループットを実施することができる。
【0029】
図4に示す調整ボード24は更に、各演算増幅器62の増幅器出力に対して動的な二重時間定数フィルタ処理部66を組み込むように示され、プロセッサ制御ボード22により制御される。この機能により、エンジン試験環境に存在するセンサ出力信号の電気的ノイズを低減するために高レベルのローパスフィルタ処理を依然として提供しながら、多重アナログ出力が伝送される回路経路をスイッチングする際に迅速な整定が更に可能となる。動的フィルタ処理は、例えば、RC回路から抵抗を外して、1つのチャンネル電圧から別のチャンネル電圧への迅速な出力変更を可能にし、次いで、抵抗を回路に戻すよう切替えてセンサノイズ及びリップルを最小限にし、A/Dコンバータ(ADC)に提示されるアナログデータ品質を改善することにより達成することができる。
【0030】
特に、各調整ボード24は、例えば、センサ20が負電圧を出力することができる熱電対及び圧力トランスデューサを含む場合には、正負両方の入力電圧に対応できることが好ましい。加えて、調整ボード24は、ハブユニット14の高温環境内に配置される理由から、センサ20間の熱電対は、調整ボード24によって測定される熱電対のワイヤ−基準接点よりも低温になる可能性があるので、熱電対ボード上で従来実施されていた「冷接点」補償は、「高温接点」補償となる場合がある。この理由から、計測用演算増幅器62は、差動電圧を可能にし、これらの∀電圧をA/D変換に必要な正のみの電圧範囲にスケール調整するのが好ましい。
【0031】
プロセッサ制御ボード22と同様に、アナログ信号調整ボード24の回路構成要素の少なくとも一部は、SOI技術を用いて実装されて、少なくとも200℃の温度でのボード24の作動を可能にし、これによりハブユニット114全体がこのような高温で作動可能になるのが好ましい。結果として、ハブユニット14並びにその制御及び調整ボード22及び24は、各個々のセンサ出力が試験中のエンジンからかなりの距離がある遠隔位置まで配線又は管体により伝送される必要があったデータ収集システムの従来の制限を解消している。このような制約は、エンジンからデータ収集システムまで配線される長い配線及び管体をもたらし、追加費用の発生、付加的な誤差原因の取り込み、及び設置及びデバッグに必要となる相当な工数をもたらす結果となる。対照的に、ハブユニット14は、ヘッドフレーム106又は取り付け部材110上に直接配置され、或いは、エンジン108の上、例えばカウル114の下にでも直接配置することができ、センサ20とハブユニット14上のその終端部との間が比較的短い距離(例えば、3メートル未満)となる。
【0032】
種々の特定の実施形態について本発明を説明してきたが、当業者であれば他の形態を適合させることができる点は理解される。例えば、ユニット12、14、16、及び18並びに構成要素の物理的な構成は、図示されたものとは異なることができ、記載されたもの以外の材料及びプロセスを用いることができる。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【符号の説明】
【0033】
100 試験台
102 支柱
104 支持基盤
106 フレーム
110 取り付け部材
112 パイロン
114 ナセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転中のガスタービンエンジン(108)のエンジン性能パラメータを監視するため監視システム(10)において使用するよう適応されたハブユニット(14)であって、前記監視システム(10)が、前記エンジン性能パラメータを検知してアナログセンサ出力を生成するため前記エンジン(108)上に装着されるセンサ(20)を含むハブユニット(14)において、
ハウジング(44)と、
前記ハウジング(44)内の制御回路ボード(22)及び少なくとも1つの信号調整回路ボード(24)と、
を備え、前記信号調整回路ボード(24)が前記センサ(20)からアナログセンサ出力を受けるように適応され、前記制御回路ボード(22)が、前記信号調整回路ボード(24)に接続され且つ前記アナログセンサ出力に対応するデジタルデータを生成するよう適応されており、前記制御回路ボード(22)及び前記信号調整回路ボード(24)が、アナログ信号処理経路を定め且つ精度及び精密特性を有する電気回路構成要素(46、48、50)を備え、前記精度及び精密特性は、前記構成要素の経年変化並びに前記ハブユニット(14)が受ける温度変化に応答してドリフトし、
前記ハブユニット(14)が更に、
標準電圧及びゼロ電圧を前記信号調整回路ボード(24)に周期的に印加して、前記制御回路ボード(22)及び前記信号調整回路ボード(24)の電気回路構成要素(46、48、50)のドリフトにより生じる前記アナログ信号処理経路における誤差を決定及び除去することによる連続較正方式を実施する手段(22)を備える、ハブユニット(14)。
【請求項2】
前記ハブユニット(14)が、前記エンジン(18)上又は該エンジン(18)を支持する試験第(100)上に装着される、ことを特徴とする請求項1に記載のハブユニット(14)。
【請求項3】
前記ハブユニット(14)が、125℃を超えて最大で少なくとも200℃までの範囲の温度に曝される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハブユニット(14)。
【請求項4】
前記制御回路ボード(22)及び前記信号調整回路ボード(24)の電気回路構成要素(46、48、50)の少なくとも一部が、シリコンオンインシュレータ基材上に実装される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハブユニット(14)。
【請求項5】
前記ハブユニット(14)は、前記ハブユニット(14)を能動冷却する手段が無い、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のハブユニット(14)。
【請求項6】
前記連続較正方式を実施する手段(22)は、前記標準電圧及びゼロ電圧を印加することによって発生した出力を前記標準電圧及びゼロ電圧の値と比較し、次いで当該比較に基づいて後続のデジタルデータを補正することにより前記アナログ信号処理経路における誤差を決定する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のハブユニット(14)。
【請求項7】
前記連続較正方式を実施する手段(22)は、アナログセンサ出力が収集される毎に前記連続較正方式を完了する、ことを特徴とする請求項6に記載のハブユニット(14)。
【請求項8】
前記信号調整回路ボード(24)上で、前記センサ(20)によって発生する複数の前記アナログセンサ出力を多重化して、個々の多重アナログ出力を生成する手段(60、62、64)と、
前記個々の多重アナログ出力のアナログセンサ出力をスケール調整し、対応するデジタルデータが生成される個々の調整済み多重アナログ出力を生成するため、調整可能ゲイン(64)を備えた少なくとも1つの増幅器(62)と、
を更に備え、前記増幅器(62)及び調整可能ゲイン(64)が、前記制御回路ボード(22)により制御される、請求項1から7のいずれかに記載のハブユニット(14)。
【請求項9】
前記多重化手段(60、62、64)により生成される個々の多重アナログ出力が、前記多重化手段(60、62、64)により生成され且つ前記少なくとも1つの増幅器(62)によりスケール調整されて複数の個々の調整済み多重アナログ出力を生成することにより生成される複数の個々の多重アナログ出力の1つであり、前記個々の多重アナログ出力の各々が、前記センサ(20)が発生する前記アナログセンサ出力の対応するセットから生成され、前記信号調整回路ボード(24)が更に、前記個々の調整済み多重アナログ出力をインターリーブする手段(66、68)を更に含み、して前記アナログセンサ出力のセット間の整定時間を短縮し前記制御回路ボード(22)に対するスループットを改善する、ことを特徴とする請求項8に記載のハブユニット(14)。
【請求項10】
前記インターリーブ手段(66、68)が、受動的RC構成要素を前記多重化手段(60、62、64)を含む回路経路の内外に切替える動的フィルタ(66)を含む、ことを特徴とする請求項9に記載のハブユニット(14)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132916(P2012−132916A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−278139(P2011−278139)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】