説明

高眼圧症の制御および緑内障の治療のためのプレニルトランスフェラーゼ阻害剤

一実施形態において、本発明は、緑内障および高い眼内圧を治療する方法に関し、この方法は、少なくとも1つのプレニルトランスフェラーゼ阻害剤を含む薬学的有効量の組成物を投与することを含む。別の実施形態において、本発明は、高い眼内圧および緑内障を治療するための組成物に関し、この組成物は、薬学的有効量のプレニルトランスフェラーゼ阻害剤を含む。本発明の実施形態において、GGTaseおよび/またはFTase阻害剤は房水流出を変化させ、高眼圧症および緑内障の治療に有効であることが実証される場合があることが認識されている。好ましい実施形態において、これらの阻害剤の送達は、局所的な眼球、腔内、硝子体内、網膜下または経強膜的投与によって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、米国特許法§119の下、2006年3月31日に出願された米国仮特許出願第60/787,971号(この全体の内容は、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般的に、高眼圧症および緑内障の治療に関し、より具体的には、高眼圧症および緑内障の治療のためのプレニルトランスフェラーゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
緑内障と称される病状は、視神経への不可逆的な損傷による、永久的な視覚機能の喪失を特徴とする。いくつかの形態学的または機能的に異なる種類の緑内障は、本疾患の病理学的過程に因果的に関すると考えられる、高い眼内圧(IOP)を典型的な特徴とする。高眼圧症とは、眼圧が上昇するものの、視覚機能の明らかな喪失は生じない病態のことであり、このような患者は、緑内障に関連する視力喪失を最終的に発症する危険性が高いと考えられる。緑内障または高眼圧症を早期に発見し、眼圧の上昇を効果的に低下させる薬剤で速やかに治療すると、視覚機能の喪失または視覚機能の進行性低下を一般的に改善することができる。また、緑内障により視野を喪失した患者の中には、比較的眼圧の低い患者もいる。これらの、いわゆる正常眼圧または低眼圧緑内障患者には、IOPを低下させるおよび/または制御する薬剤も有効である。
【0004】
眼圧の低下に有効であることが実証されている薬物療法には、房水産生を減少させる薬剤、および房水流出率(outflow facility)を増加させる薬剤の両方が含まれる。このような療法は、一般的に、局所的(目に直接点眼)または経口的という2つの可能な経路のうちの1つにより投与される。しかし、薬学的な抗高眼圧アプローチ(ocular anti−hypertension)により、様々な望ましくない副作用が生じている。例えば、ピロカルピンなどの縮瞳薬により、霧視、頭痛、およびその他のマイナスの視覚的副作用が生じることがある。また、全身に投与した炭酸脱水酵素阻害剤により、悪心、消化不良、疲労、および代謝性アシドーシスが生じることもある。特定のプロスタグランジンにより、充血、眼のかゆみ、ならびにまつ毛および眼窩周囲の皮膚の黒ずみが生じる。このようなマイナスの副作用により、患者のコンプライアンスが低下するか、治療が中止され、正常な視力が低下し続ける場合がある。さらには、特定の現存の緑内障療法で治療した時に全く良好な応答を示さない個体も存在する。したがって、緑内障および高眼圧症を治療するための他の治療薬剤が必要とされている。
【0005】
プレニルトランスフェラーゼは、コレステロールの合成およびメバロン酸塩の生成を含むイソプレノイド生合成経路の一部である。ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)およびファルネシルピロリン酸(FPP)などのメバロン酸塩の下流代謝産物は、タンパク質の翻訳後プロセシングに使用される。このようなプロセシング中に、C末端アミノ酸モチーフCAAXにおいて、プレニルトランスフェラーゼFTaseおよびGGTaseは、ファルネシル(C15)またはゲラニルゲラニル(C20)脂質アンカーをタンパク質システイン残基に転移する。Ras、RabおよびRhoなどのプロセシングされたタンパク質は、細胞増殖、細胞シグナル伝達、およびアポトーシスに関与する場合がある(非特許文献1)。特に、Rhoに依存した細胞性アクチン細胞骨格の変化により、おそらくは眼組織を含む細胞の形状、収縮性および運動性が変化する場合がある(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。癌性の病状におけるプレニルトランスフェラーゼの役割については、現在当該技術分野で積極的に研究されている。
【0006】
小柱網細胞によって産生される結合組織増殖因子(CTGF)および1型プラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI−1)などの因子は、高IOPの状態の間に増加する場合がある(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。したがって、このような因子が緑内障の病原発生に寄与する場合がある。
【非特許文献1】Dollら、Curr Opin Drug Discov Devel.,2004,Vol.7(4):478−486
【非特許文献2】Raoら、IOVS,2001,Vol.42:1029
【非特許文献3】Raoら、Exp Eye Res,2005,Vol.80:197−206
【非特許文献4】Celliniら、Ophth Res,2005,Vol.37:43−49
【非特許文献5】Kirwanら、Glia.,2005 Dec,Vol.52(4):309−24
【非特許文献6】Litonら、J Cell Physiol.,2005 Dec.,Vol.205(3):364−71
【非特許文献7】Essonら、Invest Ophthalmol Vis Sci.,2004 Feb.,Vol.45(2):485−91
【非特許文献8】Danielsら、Am J Pathol.,2003 Nov.,Vol.163(5):2043−52
【非特許文献9】Liangら、J Biol Chem.,2003 Jul 18,Vol.278(29):27267−77
【非特許文献10】Hoら、Br.J.Ophthalmol.,2005,Vol.89:169−173
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プレニルトランスフェラーゼゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(GGTase)およびファルネシルトランスフェラーゼ(FTase)の阻害剤を使用した、緑内障および高眼圧症の治療に関する。本発明の実施形態において、GGTaseおよび/またはFTase阻害剤は房水流出を変化させ、高眼圧症および緑内障の治療に有効であることが実証される場合があることが認識されている。好ましい実施形態において、これらの阻害剤の送達は、局所的な眼球、腔内、硝子体内、網膜下または経強膜的投与によって行われる。
【0008】
本発明が企図する特定の化合物は、GGTaseおよびFTaseの両阻害活性を有する場合があり、また単独または組成物中で投与される場合がある。他の実施形態においては、個々のGGTaseおよびFTaseの阻害化合物を、同じ組成物中で一緒に、または単独で個別に、または異なる組成物中で投与される。
【0009】
本発明のさらなる特徴は、緑内障を治療または予防する方法であって、小柱網細胞による結合組織増殖因子(CTGF)および1型プラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI−1)の産生を大幅に減少させる方法を提供することである。
【0010】
前述の概要は、本発明の特定の実施形態の特徴および技術的利点を大まかに説明したものである。さらなる特徴および技術的な利点を、以下の本発明の詳細な説明に記載する。本発明の特徴であると考えられる新規の特徴は、本発明の詳細な説明において、添付図面と照らし合わせて考慮すると、よりよく理解されるであろう。しかし、本明細書で提供される図面は、本発明の説明を助けるか、または本発明の理解を深めるのを助けることを意図するものであって、本発明の適用範囲を定めることを意図するものではない。
【0011】
本発明および本発明の利点は、同じ参照番号が同じ特徴を示す添付の図面とともに以下の説明を参照することによって、より詳細に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
いくつかの実施形態において、本発明は、高眼圧症および緑内障の治療のためのGGTaseおよびFTase阻害剤に関する。他の実施形態は、このようなGGTaseおよびFTase阻害化合物を投与することにより高眼圧症および緑内障を治療する方法を含む。本発明の実施形態によるGGTase/FTase阻害剤の投与によって、阻害剤は小柱網などの適切な標的組織に治療レベルで到達し、それによって緑内障によるさらなる眼損傷を軽減かつ予防できる場合がある。
【0013】
本発明の実施形態で使用されるGGTase阻害剤は、特に、参考として本明細書で援用される、米国特許第6,693,123号、第6,627,610号、第6,210,095号、第6,221,865号、第6,204,293号、第5,965,539号、および第5,789,558号に列挙されるGGTase阻害化合物を含む。
【0014】
本発明の実施形態で使用されるFTase阻害剤は、特に、参考として本明細書で援用される、米国特許第6,693,123号、第6,627,610号、第6,310,095号、第6,221,865号、第6,218,375号、第6,204,293号、第6,083,985号、第6,083,917号、第6,011,175号、第5,856,310号、および第5,834,434号に列挙されるFTase阻害化合物を含む。本発明の実施形態で使用されるさらなるFTase阻害剤には、FTI−276、FTI−277、L−739,749、L−739,750、L−745,631、RPR−130401、BMS−193269、BMS−184878、SCH−66336、BZA−2B、BZA−5B、R−115777、B956、B1086、およびファルネシルメチルヒドロキシホスフィニルメチルホスホン酸がある(Sebtiら、Exp Opin Invest Drugs,2000,Vol.9(12):2767−2782; Sebti,The Oncologist,2003,Vol.8(Supp 3):30−38)。
【0015】
本発明の特定の実施形態は、GGTaseおよびFTaseの両阻害活性を有する化合物を含み、一般的にはCAAXモチーフに基づくペプチド模倣阻害剤である。このような化合物の例には、C−V−I−M、C−V−L−L、FTI−276、FTI−277、GGTI−297、GGTI−298、FTI−2148、FTI−2153、GGTI−2154、GGTI−2166、R115777、SCH66336、HFPAが含まれるが、これらに限定されない(Sebtiら、Exp Opin Invest Drugs,2000,Vol.9(12):2767−2782); Sebti,The Oncologist,2003,Vol.8(Supp 3):30−38)。イミダゾールメチルジアリールエーテル構造の変更により、FTaseおよびGGTaseの2重阻害活性が発揮されることが明らかにされている(FTase IC50=2.9nM、GGTase IC50=7.1nM)。これらの化合物のいくつかには、GGTase特異的活性を有する化合物(GGTI−286およびGGTI−298)のほか、以下に示すものがある。
【0016】
【化1】

上述の市販される化合物には阻害定数があり、それを以下の表1に示す。これらの化合物はまた、当業者に既知の技法を使用して合成することもできる。
【0017】
【表1】

本明細書に開示される化合物は、1つ以上のキラル中心を含有することができることが認識されている。本発明は、本明細書に開示される化合物のすべてのエナンチオマー、ジアステレオマーおよび混合物を企図する。さらに、本発明の特定の実施形態は、開示化合物の薬学的に許容される塩を含む。薬学的に許容される塩には、アレルギー反応または毒性などの過度の望ましくない作用を及ぼすことなく疾患を治療するのに適した可溶性または分散性形態の化合物が含まれるが、これらに限定されない。代表的な薬学的に許容される塩には、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩またはリン酸塩などの酸付加塩、およびリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩またはアルミニウム塩などの塩基付加塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
指示された構造単位に組み込む場合に単独でまたは複数で置換基が存在する場合があることを認識することが重要である。例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する置換基ハロゲンは、ハロゲン置換基の結合する単位が、同じである場合もあれば異なる場合もある1つ以上のハロゲン原子で置換される場合があることを示すと思われる。
【0019】
送達方法
本発明のGGTaseおよびFTase阻害化合物は、送達のために、様々な種類の眼科用製剤に組み入れることができる。本化合物は、当業者に周知の技法を使用して、直接眼に送達する場合もあれば(例えば、局所的な点眼または軟膏;結膜円蓋に移植されるか、または強膜の隣接部位もしくは眼の内部に移植される薬学的薬剤送達スポンジなどの徐放装置;眼周囲、結膜、テノン嚢下、腔内、硝子体内または視神経管内注射)、あるいは全身に送達する場合もある(例えば、経口、静脈内、皮下または筋内注射;非経口的、皮膚または鼻送達)。さらに、本発明のGGTaseおよびFTase阻害化合物は、眼内挿入物または植え込み型器具内で処方される場合があることも企図される。
【0020】
本明細書に開示されるGGTaseおよびFTase阻害化合物は、眼への送達のために、局所的な眼科用製剤に組み入れるのが好ましい。本化合物は、眼科的に許容される防腐剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、緩衝剤、塩化ナトリウム、および水と混合して、水性滅菌眼科用懸濁液または溶液を生成する場合がある。眼科用溶液製剤は、生理学的に許容される等張水性緩衝剤中で化合物を溶解させることにより調製される場合がある。さらに、眼科用溶液は、本化合物の溶解を助けるために、眼科的に許容される界面活性剤を含む場合もある。さらに、眼科用溶液は、結膜嚢における製剤の保持を改善するために、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの増粘性薬剤を含有する場合もある。ジェランガムおよびキサンタンガムを含むがこれらに限定されないゲル化剤を使用することも可能である。滅菌眼科用軟膏製剤を調製するには、鉱油、液体ラノリンまたは白色ワセリンなどの適切なビヒクル中で、有効成分を防腐剤と混合する。滅菌眼科用ゲル製剤は、類似の眼科用製剤の公開された処方に従って、例えばcarbopol−974などの組み合わせから調製される親水性基剤中で化合物を懸濁することにより調製される場合があり、防腐剤および等張化剤(tonicity agent)を組み込むことができる。
【0021】
GGTaseおよびFTase阻害化合物は、pH約4〜8の局所的な眼科用懸濁液または溶液として処方するのが好ましい。本化合物は、緑内障患者の中で高IOPを経験するおよび/または正常なIOPレベルを維持する患者のIOPを低下させるのに十分な量にて、局所的な懸濁液または溶液中に含有される。このような量は、本明細書において「IOPを制御するのに有効な量」と、あるいはより簡単に「有効量」と称する。本化合物は通常、0.01〜5重量/体積パーセント(「w/v%」)の量にて、好ましくは0.25〜2w/v%の量にて、これらの製剤に含有される。したがって、局所的な提示のために、熟練した臨床医の判断により、これらの製剤が1〜2滴、眼の表面に1日1〜4回送達される。
【0022】
GGTaseおよびFTase阻害化合物はまた、rhoキナーゼ阻害剤、β遮断薬、プロスタグランジン類似体、炭酸脱水酵素阻害剤、α作動薬、縮瞳薬、および神経保護剤などがあるがこれらに限定されない他の高IOP治療薬または緑内障治療薬と併用することも可能である。
【0023】
生物活性の測定
in vitro生物活性アッセイ
特定の化合物のGGTaseおよびFTaseを阻害する能力は、特定の実施形態においては、Burkeら、PNAS,1999,Vol.96:23:13062−13067、およびGoossensら、J.Pharm.Biomed.Analy.,2005,Vol.37:417−422に記載のin vitroでのプレニルトランスフェラーゼアッセイなどのin vitroアッセイにより評価される場合がある。簡潔に述べると、Goossens法を使用して、いずれかの酵素のためのダンシル化された(dansylated)ペプチド基質とともにGGTaseおよびFTaseを含む実験用および対照用調製物が作製された。この実験用調製物に試験化合物を添加して、反応を進行させる。この反応の後、各ペプチドの蛍光反応を測定する。対照に比べて測定された蛍光の減少は、試験化合物についてのより大きな阻害活性を表す。
【0024】
in vivo生物活性試験
特定のGGTaseおよびFTase阻害化合物の各酵素を安全に阻害する能力は、特定の実施形態においては、ニュージーランドアルビノウサギおよび/またはカニクイザルを使用したin vivoアッセイにより評価される場合がある。
【0025】
ニュージーランドアルビノウサギにおける眼の安全性評価
5羽のニュージーランドアルビノウサギの両眼に、ビヒクル中の試験化合物の1つの30μLアリコートを局所投与し、他の動物5羽にはビヒクルのみを投与する。これらの動物を、投与から0.5時間継続して監視した後、2時間まで0.5時間ごとに、または作用が認められなくなるまで継続して監視する。
【0026】
ニュージーランドアルビノウサギにおける急性IOP反応
0.1%のプロパラカインによる軽い角膜麻酔後に、Mentor Classic 30ニューマトノメーター(pneumatonometer)を使用して、眼内圧(IOP)を測定する。各測定後に、眼を1滴または2滴の生理食塩水ですすぐ。ベースラインにおけるIOPの測定後に、試験化合物の30μLアリコート1つを各動物の片眼または両眼に点眼するか、あるいは化合物を片眼に、ビヒクルを反対の眼に点眼する。その後、0.5、1、2、3、4および5時間後にIOPの測定を行う。
【0027】
カニクイザルにおける急性IOP反応
既述の通り(Sharifら、J.Ocular Pharmacol.Ther.,2001,Vol.17:305−317; Mayら、J.Pharmacol.Exp.Ther.,2003,Vol.306:301−309)、0.1%のプロパラカインによる軽い角膜麻酔後に、Alconのニューマトノメーターを使用して、眼内圧(IOP)を測定する。各測定後に、眼を1滴または2滴の生理食塩水ですすぐ。ベースラインにおけるIOPの測定後に、試験化合物の30μLアリコート1つ(300μg)または2つ(600μg)を、9匹のカニクイザルの選択された眼に点眼する。他の動物6匹の選択された眼にはビヒクルを点眼する。その後、1時間、3時間および6時間後にIOP測定を行う。すべての動物の右眼には、高眼圧症を誘発するために、レーザー線維柱帯形成術を行った。左眼はすべて正常であり、そのため正常のIOPを有している。
【実施例】
【0028】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明するために提供されるが、本発明の特許請求の範囲の限定を暗示するものとして解釈するべきではない。例えば、実施例4における「プレニルトランスフェラーゼ阻害剤」という語句は、記載の製剤が本明細書に開示されるいずれかのGGTaseおよびFTase阻害化合物に適すると考えられることを意味する。
【0029】
(実施例1)
RNAの単離および定量的RT−PCR
全RNAを、製造元(Qiagen)の説明書に従い、Qiagen RNeasy 96システムを使用して、TM細胞から単離した。
【0030】
CTGFおよびPAI−1の差異的発現を、基本的に既述の通り(Shepardら、IOVS,2001,Vol.42:3173)、ABI Prism(登録商標) 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems)を使用して、定量的リアルタイムRT−PCR(QRT−PCR)により検証した。CTGF増幅用のプライマーは、Genbank受入番号NM_001901.1(プローブ配列6FAM−AATCGACAGGATTCCGATTCCTGAACAGTG−TAMRAを有する、CAGCTCTGACATTCTGATTCGAA(ヌクレオチド1667〜1689)およびTGCCACAAGCTGTCCAGTCT(ヌクレオチド1723〜1742)の隣接するエクソンにアニーリングするために、Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して設計されており、76−bpの単位複製配列を生成する。PAI−1増幅用プライマーは、ABI(Hs00167155_ml)から購入したものであり、Genbank受入番号NM_000602.1に対応する。CTGFまたはPAI−1の増幅は、69−bpの単位複製配列を生成する18S rRNA遺伝子(プローブ配列6FAM−CTGCAAGCATATAATACA−MGBNFQを有する、GenBank受入番号X03205 GTCCCTGCCCTTTGTACACAC(ヌクレオチド1680〜1700)およびCGATCCGAGGGCCTCACTA(ヌクレオチド1730〜1749)に対して設計されたプライマーを使用して、18SリボソームRNAの発現に正規化した。CTGFまたはPAI−1のQRT−PCRを、18Sプライマー/プローブセットを使用して、40nMの18S、900nMのCTGF、またはPAI−1プライマー;100nMの18Sプローブ、100nMのCTGF、または250nMのPAI−1プローブ;5μLのRNA;1×のMultiscribeおよびRNase Inhibitor Mix(ABI);ならびに1×のTaqMan(登録商標) Universal Mix(ABI)からなる最終容量50μL中で、多重(multiplex)で行った。熱サイクル条件は、48℃にて30分、95℃にて10分の後、95℃にて15秒、60℃にて1分の40サイクルで構成した。データ分析は、SDSソフトウェアVer.1.9.1(Applied Biosystems)およびMS Excel 2002(Microsoft)を使用して行った。相対的なRNA濃度の定量化を、PE Biosystems User Bulletin #2に記載のデルタデルタCt法を使用して行った。増幅産物のレベルは、QRT−PCR 4重アッセイの平均±SEMとして表した。データ分析は、SDSソフトウェアVer.1.9.1(Applied Biosystems)およびMS Excel 97(Microsoft)を使用して行った。
【0031】
(実施例2)
TGFβ刺激されたCTGFおよびPAI−1遺伝子発現の阻害
本実施例では、培養したヒト小柱網細胞におけるCTGF遺伝子の発現に対するGGTaseおよびFTase阻害剤の効果を試験した。結果を図1および図2に要約する。本試験では、実施例1のプロトコルに従い、QRT−PCRによってCTGF/18S cDNAレベルを測定および比較した。
【0032】
図1の結果の要約からも分かる通り、GGTase阻害剤であるGGTI−2133を、種々のTM細胞培養物中のCTGFレベルに対する効果を測定するために試験した。図1に示す通り、TGFβ2がビヒクル中に存在した場合には、ビヒクルのみの場合に比べて、測定したCTGFレベルが高かった。CTGFおよびGGTI−2133の両方で処理した細胞培養物では、測定したCTGFレベルが、ビヒクルのみの場合よりも低く、TGFβ2で処置した細胞に比べるとCTGFレベルが劇的に低かった。
【0033】
図2に示す結果では、FTase FTI−277もまた、TGFβ2のみで処置した細胞株とTGFβ2およびFTI−277の両方で処置した細胞株とを比べると、測定したCTGFレベルの低下を生じることが示されている。
【0034】
図3では、GGTI−2133とFTI−277がいずれも、TGFβ2のみで処置した細胞株とTGFβ2およびGGTI−2133またはFTI−277の両方で処置した細胞株とを比べると、測定したPAI−1レベルの低下を生じ得ることが示されている。
【0035】
(実施例3)
図4は、試験化合物による処置後に、培養培地への乳酸脱水素酵素(LDH)の放出を測定するCytoTox−ONE Homogenous Membrane Integrity Assay(Promega)を使用して、GGTI−2133およびFTI−277の細胞毒性作用を表すグラフを示している。いずれの化合物も、試験したすべての濃度において、ビヒクルのみの場合の測定値と似たLDH放出測定値を有していた。したがって、いずれの化合物も細胞毒性が比較的低いと考えられる。
【0036】
(実施例4)
【0037】
【表2】

(実施例5)
【0038】
【表3】

(実施例6)
【0039】
【表4】

(実施例7)
【0040】
【表5】

以上において本発明およびその実施形態を詳細に説明してきた。しかし、本発明の適用範囲は、本明細書に記載のいずれかのプロセス、製造物、組成物、化合物、手段、方法および/または手順の特定の実施形態に限定されることを意図していない。本発明の趣旨および/または本質的な特徴から逸脱することなく、開示する材料の種々の改変、代用および変更を行うことができる。したがって、本明細書に記載の実施形態と本質的に同じ機能を果たすか、本質的に同じ結果を達成する、後の改変、代用および/または変更が、本発明のこのような関連する実施形態に従って利用される場合があることを、当業者であれば本開示内容から容易に理解するであろう。そのため、以下の特許請求の範囲は、本明細書に開示されるプロセス、製造物、組成物、化合物、手段、方法および/または手順の改変、代用および変更をその範囲内に包含することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】TM細胞株における、基底におけるおよびTGFβ2誘導性のCTGF遺伝子発現に対するゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ阻害剤の効果を示すグラフである。
【図2】TM細胞株における、基底におけるおよびTGFβ2誘導性のCTGF遺伝子発現に対するファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の効果を示すグラフである。
【図3】TM細胞株における、基底におけるおよびTGFβ2誘導性のPAI−1遺伝子発現に対するゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ阻害剤およびファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の効果を示すグラフである。
【図4】ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ阻害剤およびファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の細胞毒性作用を表すグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑内障または高い眼内圧を治療する方法であって、少なくとも1つのプレニルトランスフェラーゼ阻害剤を含む薬学的有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプレニルトランスフェラーゼ阻害剤が、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ阻害剤またはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与が、少なくとも1つのゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ阻害剤および少なくとも1つのファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤を含む組成物を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、眼科的に許容される防腐剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、ゲル化剤、疎水性基剤、ビヒクル、緩衝剤、塩化ナトリウム、および水からなる群から選択される化合物もさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物の一部、または別個の投与のいずれかとして、β遮断薬、プロスタグランジン類似体、炭酸脱水酵素阻害剤、α作動薬、縮瞳薬、神経保護剤、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される化合物を投与することもさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、約0.01重量/体積パーセント〜約5重量/体積パーセントの前記少なくとも1つのプレニルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、約0.25重量/体積パーセント〜約2重量/体積パーセントの前記プレニルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
高い眼内圧および緑内障の治療のための組成物であって、薬学的有効量のプレニルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、組成物。
【請求項9】
前記プレニルトランスフェラーゼ阻害剤が、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ阻害剤またはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
眼科的に許容される防腐剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、ゲル化剤、疎水性基剤、ビヒクル、緩衝剤、塩化ナトリウム、および水からなる群から選択される化合物もさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、約0.01重量/体積パーセント〜約5重量/体積パーセントの前記プレニルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、約0.25重量/体積パーセント〜約2重量/体積パーセントの前記プレニルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、β遮断薬、プロスタグランジン類似体、炭酸脱水酵素阻害剤、α作動薬、縮瞳薬、神経保護剤、rhoキナーゼ阻害剤、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される化合物もさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記プレニルトランスフェラーゼ阻害剤が、GGTI−286、GGTI−287、GGTI−297、GGTI−298、GGTI−2133、GGTI−2147、FTI−276、FTI−277、FTI−2148、FTI−2153、R115777、これらの組み合わせ、およびこれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
緑内障または高い眼内圧を治療する方法であって、GGTI−286、GGTI−287、GGTI−297、GGTI−298、GGTI−2133、GGTI−2147、FTI−276、FTI−277、FTI−2148、FTI−2153、R115777、これらの組み合わせ、およびこれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される治療有効量の化合物を、ヒトまたはその他の哺乳動物に投与することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−532377(P2009−532377A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503235(P2009−503235)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/065334
【国際公開番号】WO2007/118009
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】