説明

高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法

【課題】半導体の動作機能を保証するために障害となる不純物を低減させた高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を、安全かつ安価に得ることのできる高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法を提供する。
【解決手段】ジルコニウム若しくはハフニウム原料を電子ビーム溶解して高純度化した後インゴットに鋳造する工程、得られた高純度ジルコニウム若しくはハフニウムインゴット又は切粉等を水素雰囲気中で500°C以上に加熱して水素化する工程、該インゴットを冷却し水素化ジルコニウム若しくはハフニウム粉をインゴットから剥落させて水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を得る工程、及び水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の水素を除去する工程からなることを特徴とする高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不純物の少ない、特にNa、Kなどのアルカリ金属元素、U、Thなどの放射性元素、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Mo,Ta、Vなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素、さらにはC、O等のガス成分の含有量を極めて低減させた高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を安価に、かつ安全に得ることのできる高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスにおけるゲート酸化膜としてシリコン(SiO)膜使用されているが、半導体デバイスの最近の傾向として薄膜化小型化傾向が著しく、特にこのようなゲート酸化膜を薄膜化していくと、絶縁耐性、ボロンの突き抜け、ゲートリーク、ゲート空乏化等の問題が発生してくる。
このため、従来のシリコンでは役に立たず、シリコンよりも誘電率の高い材料を用いなければならないが、このような材料として20前後の高い誘電率を持ち、Siと混ざりにくいZrO及びHfO使用が考えられる。
しかし、ZrO及びHfOは酸化剤を通過させ易いこと、また成膜時やその後のアニールにおいて誘電率の小さい界面層を形成させてしまう欠点があるので、ZrO及びHfOに替えてZrSi及びHfSiの使用も考えられる。
このようなゲート酸化膜又はシリサイド膜として使用する場合には、Zr若しくはHfターゲット又はこれらのシリサイドターゲットをアルゴン等の不活性ガス雰囲気中又は反応性ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成することが考えられるが、いずれの場合もZr及びHfが中心原料となる。
【0003】
一方、半導体デバイスに使用される材料として、信頼性のある半導体としての動作性能を保証するためには、スパッタリング後に形成される上記のような材料中に半導体デバイスに対して有害である不純物を極力低減させることが重要である。
すなわち、
(1) Na、K等のアルカリ金属元素
(2) U、Th等の放射性元素
(3) Fe、Ni、Co、Cr、Cu等の遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素
(4) C、O、N、H等のガス成分元素
を極力減少させ、4Nすなわち99.99%(重量)以上の純度をもつことが必要である。なお、本明細書中で使用する%、ppm、ppbは全て重量%、重量ppm、重量ppbを示す。
上記半導体デバイス中に存在する不純物であるNa、K等のアルカリ金属は、ゲート絶縁膜中を容易に移動しMOS−LSI界面特性の劣化の原因となり、U、Th等の放射性元素は該元素より放出するα線によって素子のソフトエラーの原因となり、さらに不純物として含有されるFe、Ni、Co、Cr、Cu等の遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素は界面接合部のトラブルの原因となることが分かっている。
【0004】
一般に入手される3Nレベルの純度の原料ジルコニウムスポンジは表1に示すように、Co:10ppm、Cr:50ppm、Cu:10ppm、Fe:50ppm、Mn:25ppm、Nb:50ppm、Ni:35ppm、Ta:50ppm、C:2000ppm、O:5000ppm、N:200ppmなど大量の不純物が含有されている。
また、同様に一般に入手できる2Nレベルの純度のハフニウムスポンジについても表3に示すように、Cd:30ppm、Co:10ppm、Cr:150ppm、Cu:50ppm、Fe:300ppm、Mn:25ppm、Nb:30ppm、Ni:75ppm、Ta:100ppm、O:500ppm、N:60ppmなど大量の不純物が含有されている。
これらの不純物は、いずれも半導体としての動作機能を阻害するものばかりであり、このような半導体デバイスに対して有害である不純物を効率的に除去することが必要である。
しかし、従来はジルコニウム若しくはハフニウムを半導体デバイスにおけるゲート酸化膜として使用するという実績が少なく、またこれらの不純物を除去する精製技術が特殊でありコスト高になるために、考慮されずに放置されているに等しい状態であった。
【0005】
一般に、ジルコニウム若しくはハフニウムは電子ビーム溶解法によって、高純度化されるが、上記のように高純度化したジルコニウム若しくはハフニウムを原料とするスパッタリングターゲットを製造する場合、高純度化したジルコニウム若しくはハフニウムの粉末を製造する必要がある。
したがって、上記の電子ビーム溶解法によって得た高純度のジルコニウム若しくはハフニウムをインゴットに鋳造した後、さらに粉末にする工程が必要となる。インゴットからの粉末化は通常、破砕によって行われるが、高純度のジルコニウム若しくはハフニウム粉は発火爆発の危険があり、インゴットからの粉末化は危険を伴うものである。このようなことから、インゴットからの粉末化の工程は十分な管理が必要であり、コスト高となる問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような半導体の動作性能を保証するために障害となる不純物を低減する、すなわち特にNa、Kなどのアルカリ金属元素、U、Thなどの放射性元素、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Ta、Vなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素の含有量を極めて低減させた高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を安価に、かつ安全に得ることのできる高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法であり、さらに酸素、炭素等のガス成分の発生を抑制してスパッタリング時のパーティクル発生を効果的に減少させることのできるガス成分の少ないジルコニウム若しくはハフニウムスパッタリングターゲットに有用である高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上から、本発明は、
1.ジルコニウム若しくはハフニウム原料を電子ビーム溶解し高純度化してインゴット化する工程、得られた高純度ジルコニウム若しくはハフニウムインゴット又は高純度ジルコニウム若しくはハフニウムインゴットを切削し、酸洗浄した切粉等を水素雰囲気中で500°C以上に加熱して水素化する工程、該インゴットを冷却し水素化ジルコニウム若しくはハフニウム粉をインゴットから剥落させて水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を得る工程、及び水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の水素を除去する工程からなることを特徴とする高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法
2.水素雰囲気中で700°C以上に加熱して水素化することを特徴とする上記1記載の高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法
3.冷却時にアルゴン等の不活性ガスを導入することを特徴とする上記1又は2記載の高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法
4.インゴット又は切粉等を500°C以下に冷却して水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を得ることを特徴とする上記1〜3のそれぞれに記載の高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法
5.インゴットから剥落した高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を、さらに粉砕することを特徴とする上記1〜4のそれぞれに記載の高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法
6.真空下又は不活性雰囲気中で加熱することにより水素を除去することを特徴とする上記1〜5のそれぞれに記載の高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法
7.ガス成分を除く不純物含有量が100ppm未満であることを特徴とする上記1〜6のそれぞれに記載の高純度ジルコニウム粉の製造方法
を提供する。
【0008】
また、本発明は
8.Na、Kなどのアルカリ金属元素の含有量が総計で1ppm以下、U、Thなどの放射性元素の含有量が総計で5ppb以下、Hfを除くFe、Ni、Co、Cr、Cuなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素が総計で50ppm以下、残部がジルコニウム及びその他の不可避不純物であることを特徴とする上記1〜7のそれぞれに記載の高純度ジルコニウム粉の製造方法
9.ジルコニウム及びガス成分を除く不純物含有量が100ppm未満であることを特徴とする上記1〜6のそれぞれに記載の高純度ハフニウム粉の製造方法
を提供する。
さらに、本発明は
10.Na、Kなどのアルカリ金属元素の含有量が総計で1ppm以下、U、Thなどの放射性元素の含有量が総計で5ppb以下、Zrを除くFe、Ni、Co、Cr、Cuなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素が総計で50ppm以下、残部がハフニウム及びその他の不可避不純物であることを特徴とする上記10記載の高純度ハフニウム粉の製造方法
11.Zr含有量が0.5%以下であることを特徴とする上記9又は10に記載の高純度ハフニウム粉の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
電子ビーム溶解法により、半導体の動作機能を保証するために障害となる不純物、すなわちNa、Kなどのアルカリ金属元素、U、Thなどの放射性元素、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Mo,Ta、Vなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素を極めて低減させた高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を、発火や爆発等の危険を防止し、かつ安価に製造することができるという優れた効果を有する。
また、酸素、炭素等のガス成分の発生を抑制してスパッタリング時のパーティクル発生を効果的に減少させることのできるガス成分の少ないジルコニウム若しくはハフニウムスパッタリングターゲットを得ることができ、半導体デバイスにおけるゲート酸化膜等の製造に有用である高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を得ることができる著しい特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、電子ビーム溶解する原料として一般に市販されている2N〜3Nレベルのジルコニウム若しくはハフニウムスポンジ原料を使用する。これらの表面には有機物(不純物Cの増加となる)や無機物等の多量の汚染物質が付着しているが、これを強力な洗浄効果を持つ弗硝酸により除去する。
スポンジの表面を清浄にした後電子ビーム溶解ができるように、通常は該スポンジ原料をプレスにより圧縮してコンパクトにするが、この場合ジルコニウム若しくはハフニウムスポンジ原料が非常に脆いためにぼろぼろと崩れてしまう問題がある。
このため、Al、Zn、Cu、Mg等の揮発性元素の箔で包んでコンパクト材とする。このコンパクト材を電子ビーム溶解炉に投入しつつ電子ビーム溶解するのが望ましい。
上記コンパクト材は、電子ビーム溶解は真空中で実施するため、前記揮発性金属元素は溶解直後に、ガス成分や溶湯またはそこに浮上しているその他の不純物と共に揮発除去されるので、汚染物質とはならない。
【0011】
この電子ビーム溶解による精製によって、酸素、炭素などのガス成分を除く不純物含有量が100ppm未満である高純度ジルコニウム若しくはZr及びガス成分を除く不純物含有量が100ppm未満である高純度ハフニウムを得ることができる。すなわち、4N(99.99%)の高純度ジルコニウム及び高純度ハフニウムを製造することができる。
なお、ジルコニウムにはハフニウムが、ハフニウムにはジルコニウムが相互にかなりの量で含有されており、これらの間の分離精製が難しいということがあるが、それぞれの材料の使用目的からして害とならないもので無視し得る。
【0012】
以上により、高純度ジルコニウムにおいては、半導体材料の機能を低下させる不純物、すなわちNa、Kなどのアルカリ金属元素の含有量が総計で1ppm以下、U、Thなどの放射性元素の含有量が総計で5ppb以下、Hfを除くFe、Ni、Co、Cr、Cuなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素が総計で50ppm以下となり、問題となるレベル以下に低減することができる。
【0013】
また、高純度ハフニウムについても同様に、不純物となるNa、Kなどのアルカリ金属元素の含有量が総計で1ppm以下、U、Thなどの放射性元素の含有量が総計で5ppb以下、Zrを除くFe、Ni、Co、Cr、Cuなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素が総計で50ppm以下、残部がハフニウム及びその他の不可避不純物である高純度ハフニウムを得ることができる。
【0014】
上記電子ビーム溶解し高純度化したジルコニウム若しくはハフニウムはインゴットに鋳造する。次に、この高純度ジルコニウム若しくはハフニウムインゴット又は切粉にし表面積を大きくして酸洗浄したものを、水素雰囲気中で500°C以上に加熱して水素化する。この工程がジルコニウム若しくはハフニウムの微細な粉末を得る上で重要な工程である。
水素化に際しては、上記のようにインゴット又は切粉を水素雰囲気又は気流中の炉に入れ、500°C以上に加熱する。ジルコニウム若しくはハフニウムインゴットは約500°Cから水素化し始め、700°Cに至ると急速に水素化の進行が速くなる。この炉中温度で10分以上保持するとかなりの量が水素化する。
【0015】
これを500°C以下の温度に冷却していくと、水素化したジルコニウム若しくはハフニウムがインゴットに表面から剥落(剥離)する。冷却炉中の雰囲気はアルゴン等の不活性ガス雰囲気とするのが望ましい。水素化が十分でない場合には、上記の操作を繰返し行うことによって、容易に水素化が可能である。
剥落した材料はその状態でも粉末化しているものもあるが、薄片状のものは、必要に応じてこれを粉砕し微細な水素化ジルコニウム若しくはハフニウム粉を得ることができる。
このようにして得た微細な水素化ジルコニウム若しくはハフニウム粉は、単独のジルコニウム若しくはハフニウム粉とは異なり、発火爆発の虞が無く、安定して容易に製造できるという著しい効果を有する。さらに、還元性(水素)雰囲気中での粉末化工程なので、インゴットの酸化や粉末の酸化が防止できる利点がある。
また、水素化ジルコニウム若しくはハフニウム粉は、用途に応じてこのままの水素化粉末を使用できるが、脱水素が必要な場合には、真空下又は不活性雰囲気下で加熱することによって、水素を容易に除去することができる。これによって、外部からの汚染及び酸化が防止でき、高純度のジルコニウム若しくはハフニウム粉を容易に得ることができるという優れた特徴を有する。
【実施例】
【0016】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。実施例は発明を容易に理解するためのものであり、これによって本発明を制限されるものではない。すなわち、本発明は本発明の技術思想に基づく他の実施例及び変形を包含するものである。
(実施例1)
表1に示す純度(3Nレベル)の原料ジルコニウムスポンジを弗硝酸で洗浄し、表面に付着している不純物を除去した後、これをZn箔で包んでコンパクトとした。なお、表1に示す原料ジルコニウムスポンジは主な不純物のみを表示した。
次に、このコンパクトを電子ビーム溶解炉に導入し電子ビーム溶解を実施した。電子ビーム溶解の条件は次の通りである。
真空度: 2×10−4Torr
電流: 1.25A
鋳造速度: 20kg/hr
電力源単位: 4kwh/kg
【0017】
【表1】

【0018】
電子ビーム溶解後、鋳造し高純度ジルコニウムインゴットとした。電子ビーム溶解の際、Zn箔は電子ビーム溶解時に揮発し、ジルコニウムに含有される量は0.1ppm未満であり、不純物としては問題とならない混入量であった。
なお、このようなZn等の箔で包まずプレスによりジルコニウムスポンジだけで押し固めコンパクトにしようとしたが、プレスの作業の途中でボロボロと崩れてしまい、コンパトとすることができなかった。したがって、Al、Zn、Cu、Mg等の揮発性元素の箔で包んでコンパクトにすることは、上記高純度ジルコニウムを製造するための望ましい条件である。
【0019】
次に、高純度ジルコニウムインゴットから1kgを取り、これを水素雰囲気炉に入れ、水素気流中で800°C30分間保持し、その後冷却した。冷却により400°Cに達した時点で水素をアルゴンに置換え、室温まで冷却した後、インゴットを取出した。
この結果、インゴットの30%、すなわち300gが水素化したジルコニウム粉が得られた。この後、水素化しなかったジルコニウムについて、再度同じ操作を実施したところ、残り全て水素化したジルコニウム粉が得られた。粉体になっていないものは、粉砕処理により容易に粉とすることができた。
また、この水素化したジルコニウム粉の製造工程中、発火や爆発の虞がなく、安全に操業できた。さらに、水素化したジルコニウム粉を真空下又はアルゴンガス等の不活性雰囲気下で加熱することによって、容易にジルコニウム粉が得られた。
これによって得た高純度ジルコニウム粉の分析結果を表2に示す。
【0020】
【表2】

【0021】
これにより、酸素、炭素などのガス成分を除く不純物含有量が100ppm未満となり、4N(99.99%)レベルの高純度ジルコニウム粉が得られた。
特に、Na、Kなどのアルカリ金属元素の含有量が総計で1ppm以下、U、Thなどの放射性元素の含有量が総計で5ppb以下、Hfを除くFe、Ni、Cr、Zrなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素が総計で50ppm以下、残部がジルコニウム及びその他の不可避不純物である高純度ジルコニウム粉が得られた。
表2に表示する通り、上記以外のその他の不純物については、そられの殆どが0.1ppm未満であった。
【0022】
(実施例2)
表3に示す純度(2Nレベル)のハフニウムスポンジを実施例1と同様に弗硝酸で洗い、表面に付着している不純物を除去した後、これをZn箔で包んでコンパクトとした。
次に、このコンパクトを電子ビーム溶解炉に導入し、電子ビーム溶解を実施した。この時の電子ビーム溶解の条件は実施例1と同様で、次の通りである。
真空度: 2×10−4Torr
電流: 1.25A
鋳造速度: 20kg/hr
電力源単位: 4kwh/kg
【0023】
【表3】

【0024】
電子ビーム溶解後、鋳造し高純度ハフニウムインゴットとした。電子ビーム溶解の際、Zn箔は実施例1と同様に電子ビーム溶解時に揮発し、ハフニウムに含有される量は0.1ppm未満であり、不純物としては問題とならない混入量であった。
次に、高純度ハフニウムインゴットから1kgを取り、これを水素雰囲気炉に入れ、水素気流中で800°C30分間保持し、その後冷却した。冷却により400°Cに達した時点で水素をアルゴンに置換え、室温まで冷却した後、インゴットを取出した。
この結果、インゴットの30%、すなわち300gが水素化したハフニウム粉が得られた。この後、水素化しなかったハフニウムについて、再度同じ操作を実施したところ、残り全て水素化したハフニウム粉が得られた。粉体になっていないものは、粉砕処理により容易に粉とすることができた。
また、この水素化したハフニウム粉の製造工程中、発火や爆発の虞は全くなく、安全に操業できた。さらに、水素化したハフニウム粉を真空下又はアルゴンガス等の不活性雰囲気下で加熱することによって、容易にハフニウム粉が得られた。
これによって得た高純度ハフニウム粉の分析結果を表4に示す。
【0025】
【表4】

【0026】
なお、この分析結果は、不純物の主なものをピックアップして示したものである。その他の不純物については、ジルコニウムと殆ど同様の含有量となった。
表4に示すように、表3に示す純度(2Nレベル)のハフニウムスポンジが、弗硝酸による洗浄と電子ビーム溶解により、ジルコニウム及び酸素、炭素などのガス成分を除く不純物含有量が100ppm未満となり、ジルコニウム及び酸素、炭素などのガス成分を除き4N(99.99%)レベルの高純度ハフニウムが得られた。
特に、Na、Kなどのアルカリ金属元素の含有量が総計で1ppm以下、U、Thなどの放射性元素の含有量が総計で5ppb以下、Hfを除くFe、Ni、Cr、Zrなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素が総計で50ppm以下、残部がハフニウム及びその他の不可避不純物である高純度ハフニウムが得られた。表5に表示していないその他の不純物については、そられの殆どが0.1ppm未満であった。
【0027】
(実施例3)
実施例1と同様にして製造したジルコニウムインゴットを旋盤で切粉にし弗硝酸洗浄後、同様の条件で水素化を実施した。これにより容易に粉にすることができた。分析結果は、表2とほぼ同様であった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
電子ビーム溶解法により、半導体の動作機能を保証するために障害となる不純物、すなわちNa、Kなどのアルカリ金属元素、U、Thなどの放射性元素、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Mo,Ta、Vなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素を極めて低減させた高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を、発火や爆発等の危険を防止し、かつ安価に製造することができるという優れた効果を有する。また、酸素、炭素等のガス成分の発生を抑制してスパッタリング時のパーティクル発生を効果的に減少させることのできるガス成分の少ないジルコニウム若しくはハフニウムスパッタリングターゲットを得ることができ、半導体デバイスにおけるゲート酸化膜等の製造に有用である高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を得ることができる著しい特徴を有している。
したがって、酸素、炭素等のガス成分の発生を抑制してスパッタリング時のパーティクル発生を効果的に減少させることのできるガス成分の少ないジルコニウム若しくはハフニウムスパッタリングターゲットの製造に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム若しくはハフニウム原料を電子ビーム溶解し高純度化してインゴット化する工程、得られた高純度ジルコニウム若しくはハフニウムインゴット又は高純度ジルコニウム若しくはハフニウムインゴットを切削し、酸洗浄した切粉等を水素雰囲気中で500°C以上に加熱して水素化する工程、該インゴットを冷却し水素化ジルコニウム若しくはハフニウム粉をインゴットから剥落させて水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を得る工程、及び水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の水素を除去する工程からなることを特徴とする高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法。
【請求項2】
水素雰囲気中で700°C以上に加熱して水素化することを特徴とする請求項1記載の高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法。
【請求項3】
冷却時にアルゴン等の不活性ガスを導入することを特徴とする請求項1又は2記載の高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法。
【請求項4】
インゴット又は切粉等を500°C以下に冷却して水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を得ることを特徴とする請求項1〜3のそれぞれに記載の高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法。
【請求項5】
インゴットから剥落した高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を、さらに粉砕することを特徴とする請求項1〜4のそれぞれに記載の高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法。
【請求項6】
真空下又は不活性雰囲気中で加熱することにより水素を除去することを特徴とする請求項1〜5のそれぞれに記載の高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法。
【請求項7】
ガス成分を除く不純物含有量が100ppm未満であることを特徴とする請求項1〜6のそれぞれに記載の高純度ジルコニウム粉の製造方法。
【請求項8】
Na、Kなどのアルカリ金属元素の含有量が総計で1ppm以下、U、Thなどの放射性元素の含有量が総計で5ppb以下、Hfを除くFe、Ni、Co、Cr、Cuなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素が総計で50ppm以下、残部がジルコニウム及びその他の不可避不純物であることを特徴とする請求項1〜7のそれぞれに記載の高純度ジルコニウム粉の製造方法。
【請求項9】
ジルコニウム及びガス成分を除く不純物含有量が100ppm未満であることを特徴とする請求項1〜6のそれぞれに記載の高純度ハフニウム粉の製造方法。
【請求項10】
Na、Kなどのアルカリ金属元素の含有量が総計で1ppm以下、U、Thなどの放射性元素の含有量が総計で5ppb以下、Zrを除くFe、Ni、Co、Cr、Cuなどの遷移金属若しくは重金属又は高融点金属元素が総計で50ppm以下、残部がハフニウム及びその他の不可避不純物であることを特徴とする請求項9記載の高純度ハフニウム粉の製造方法。
【請求項11】
ジルコニウム含有量が0.5%以下であることを特徴とする請求項9又は10に記載の高純度ハフニウム粉の製造方法。

【公開番号】特開2009−57634(P2009−57634A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240746(P2008−240746)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【分割の表示】特願2001−59769(P2001−59769)の分割
【原出願日】平成13年3月5日(2001.3.5)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】