高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法
【課題】従来のN−メチル−2−ピロリドンの製造方法では、品質が不安定で、工業化の連続性生産に適応できなかった。
【解決手段】本発明は工業用N−メチル−2−ピロリドンを原料とし、事前処理、4A分子篩で吸着・脱水を行い、それぞれβ−シクロデキストリン複合膜、18−クラウン−6複合膜を通して2回の膜ろ過を行い、ろ液を減圧精留し、収集された留分を凝縮させて微多孔膜を通して3パス膜ろ過を行うことによって所望の生成物を得る。本発明の方法により得られる高純度N−メチル−2−ピロリドンの純度が99.8%以上で、水分含有量が0.03%より小さく、単一金属イオン含有量が1ppbより小さく、国際半導体設備及び材料組織により設定された化学材料部分8級(SEMI C8)標準に適合する。
【解決手段】本発明は工業用N−メチル−2−ピロリドンを原料とし、事前処理、4A分子篩で吸着・脱水を行い、それぞれβ−シクロデキストリン複合膜、18−クラウン−6複合膜を通して2回の膜ろ過を行い、ろ液を減圧精留し、収集された留分を凝縮させて微多孔膜を通して3パス膜ろ過を行うことによって所望の生成物を得る。本発明の方法により得られる高純度N−メチル−2−ピロリドンの純度が99.8%以上で、水分含有量が0.03%より小さく、単一金属イオン含有量が1ppbより小さく、国際半導体設備及び材料組織により設定された化学材料部分8級(SEMI C8)標準に適合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法に係り、具体的にSEMI C8標準に適合する高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
N−メチル−2−ピロリドン(N−methylpyrrolidone、NMPと略称する)は含窒素複素環化合物に属し、重要な工業用化学材料であり、石油化工、農薬、医薬、電子材料などの分野に広範に応用されており、そのうち、電子工業用N−メチル−2−ピロリドンはマイクロ電子工業、半導体業界において、精密機器または配線板の洗浄剤、フォトレジスト剥離液、LCD液晶材料生産用溶剤、及びリチウム電池の電極補助材料などに用いられることができ、その純度及び清浄度が電子製品の製品率、電気性能及び信頼性に対してともに重要な影響を与える。近年来、IT産業の急速な発展にともない、特に集積回路のサイズがコンパクトになり、処理速度が高速化され、高純度N−メチル−2−ピロリドンなどの電子工業用化学品の純度に対する要求が高まっている。
【0003】
従来技術において、N−メチル−2−ピロリドンはγ−ブチロラクトンを原料としてメチルアミンとアミノリシス反応を行い、N−メチル−4−ヒドロキシブチルアミドを生成し、昇温・加圧・脱水プロセスを通して得る。これはN−メチル−2−ピロリドンの現在唯一の工業製造方法であり、米国GAF、ドイツBASF及び日本三菱化成などの会社の量産にはともに該方法を採用している。次の精製プロセスにおいて、NMPの沸点と原料γ−ブチロラクトンの沸点との差がわずか2℃であるため、精留の方法によって2つを分離するのは非常に難しく、通常に多段精留の方法を用いて高純度の電子工業用試薬を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許US4965370
【特許文献2】欧州特許EP346086A2
【特許文献3】日本特許JP06−279401A
【特許文献4】日本特許JP08−109167A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国特許US4965370、欧州特許EP346086A2の方法はNMP(反応体系)にアルカリ金属またはアルカリ金属塩を加えて不純金属イオンを除去し、さらにステップごとに精留を行うことによって高純度NMPを得る。日本特許JP06−279401A及びJP08−109167Aはともに複数回の精留のプロセスによって高純度NMPを得るが、これらの方法はコストが高く、エネルギーの消耗が大きく、プロセスの制御が難しく、危険性が高いため、量産には相応しくない。
【0006】
本発明が解決する技術課題は、高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法を提供することによって、従来技術方法における複雑な製造プロセスやプロセス制御が困難であるなどの欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術構想は、
本発明は工業用N−メチル−2−ピロリドンを原料とし、事前処理、4A分子篩で吸着・脱水を行った後、それぞれ孔径0.1〜0.2μmの錯化剤複合膜によって2回の膜ろ過を行い、ろ液を減圧精留し、得られた留分を凝縮させた後錯化剤複合微多孔膜によって3パス膜ろ過を行い、所望の生成物を得る。
そのうち、前記錯化剤は金属イオンと錯体イオンを形成できる化合物を指す。
【0008】
本発明の技術案は、
メチルアミンガスを工業用N−メチル−2−ピロリドンに注入し、20〜40℃下で0.5〜1.5h反応させ、5〜7L/minの流速で4A分子篩吸着塔を通して脱水を行い、ろ過して得られた事前処理液を孔径0.1〜0.2μmの複合膜によって2回の膜ろ過を行い、得られたろ液を20〜80KPa下で減圧精留を行い、精留塔の塔頂から80〜120℃の留分を収集し、得られた留分を凝縮させた後微多孔膜によって3パス膜ろ過を行うことによって所望の生成物を得る。
【0009】
本発明において、メチルアミンと工業用N−メチル−2−ピロリドンとの質量比が2〜8:1で、好ましくは3〜7:1で、脱水プロセスの温度が20〜40℃に制御される。
【0010】
本発明における前記精留プロセスは、精留塔の2/3処の軽質留分排出口において、3〜5L/minの流量で軽質留分を排出し、精留塔の塔頂から80〜120℃のN−メチル−2−ピロリドン留分を収集し、留分を冷却して所望の生成物を得る。
【0011】
本発明において、前記の、事前処理液に対して2回の膜ろ過を行うことに採用されるのは錯化剤複合膜で、好ましくは、1回目の膜ろ過にはβ−シクロデキストリン複合膜が採用され、2回目の膜ろ過には18−クラウン−6複合膜が採用される。
【0012】
本発明において、前記3パス膜ろ過は18−クラウン−6複合膜を用いて膜ろ過を行う。
【0013】
前記β−シクロデキストリン複合膜または18−クラウン−6複合膜などの錯化剤複合膜が以下の方法によって製造されることができる。
【0014】
固相担体カオリンを200〜300メッシュの微粒子に研磨し、粘着剤ポリビニルアルコールと均一に混合し、低温乾燥を行い、800〜900℃の温度下で焼結し、室温まで冷却させ、錯化剤β−シクロデキストリンまたは18−クラウン−6によって浸漬・吸着し、錯化剤と固相担体カオリンとの孔径0.1〜0.2μmの複合膜、すなわちβ−シクロデキストリン複合膜または18−クラウン−6複合膜を得る。
【0015】
本発明において、原料と接触する、前記高純度N−メチル−2−ピロリドンを製造するプロセスにおける反応装置、及び各プロセス工程の原料搬送パイプはともに高純度石英からなり、使用される貯蔵タンクは高純度パーフロ材料からなる。
【0016】
そのうち、前記パーフロ材料は炭素原子と連接する水素原子が全てフッ素原子によって置換された高分子材料を指し、例えば四フッ化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化エチレン共重合体などが挙げられる。
【0017】
本発明の方法により得られた高純度N−メチル−2−ピロリドンの純度が99.8%以上で、水分含有量が0.02%より小さく、0.5μm以上の粉塵粒子が10個/mlより少なく、単一金属イオン含有量が1ppbより小さく、国際半導体設備及び材料組織により設定された化学材料部分8級(SEMI C8)標準に適合する。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比べると、本発明の高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法は以下の利点を有する。
【0019】
1.本発明はN−メチル−2−ピロリドンに対して事前処理を行うことによって、原料に混在されていたγ−ブチロラクトン不純物を有効に除去でき、製品の品質が不安定で、生産コストが高いなどの問題を防止した。
【0020】
2.本発明はβ−シクロデキストリン複合膜、18−クラウン−6複合膜を用いて膜ろ過を行うことによって、不純金属イオンを有効に除去でき、操作が簡単で、効果がよく、工業化連続生産に適応する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法のプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
(一)N−メチル−2−ピロリドン事前処理液の製造
加熱装置、撹拌装置、温度計及びガス分配装置を有する500Lの純石英反応装置1に工業用N−メチル−2−ピロリドン350kgを加え、温度を30±5℃に制御し、且つ撹拌条件下でガス分配装置を介してメチルアミンガスを5L/minの速度で工業用N−メチル−2−ピロリドンに連続的に注入し(仕入れ比としては、メチルアミンガス:工業用NMP=4:1、質量比)、且つ該温度を維持しながら1h反応させ、得られたN−メチル−2−ピロリドンをろ過装置2に注入してろ過を行い、その後30〜40℃下で、6L/minの流速でФ400×600mmの4A分子篩吸着装置3を通過させて脱水を行い、N−メチル−2−ピロリドン事前処理液を得る。
【0024】
(二)N−メチル−2−ピロリドンの製造方法
0.5MPaの圧力でN−メチル−2−ピロリドン事前処理液を1パス膜ろ過装置4及び2パス膜ろ過装置5に順に注入し、0.1μm孔径のβ−シクロデキストリン複合膜によって1パス膜ろ過を行い、及び0.1μm孔径の18−クラウン−6複合膜によって2パス膜ろ過を行うことによって、不純金属イオン及び固体粒子を除去する。得られたろ液を精留塔6(塔釜500L、塔径300mm、塔高5000mm)内に圧力を加えて注入し、80KPa、塔頂温度120℃の条件で精留を行う。精留プロセスにおいて、精留塔の2/3処の軽質留分排出口において、3〜5L/minの流量で軽質留分を収集し、軽質留分を収集タンク8に保存し(リサイクルする)、精留塔の塔頂から収集したNMP留分を凝縮させて製品留分収集タンク7内に保存し、且つ高純度石英パイプによって3パス膜ろ過装置9に搬送し、0.5MPa圧力で3パス膜ろ過を行い、高純度のN−メチル−2−ピロリドン製品を得、且つ高純度パーフロ貯蔵タンク10内に貯蔵する。
【0025】
製品に対して純度測定を行い、そのうち、色度はPt−Co標準液を標準液として目視比色法で分析を行い、NMP含量は気相クロマトグラフ法によって分析を行い、水分含量はカールフィッシャー法によって分析し、蒸発残留物は重量法によって分析し、カチオンは誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)によって分析し、アニオンはイオン交換クロマトグラフィーによって分析する。測定機器の名称及び規格番号は表2を参照し、その純度測定結果は表1に示す。
【実施例2】
【0026】
(一)N−メチル−2−ピロリドン事前処理液の製造
加熱装置、撹拌装置、温度計及びガス分配装置を有する純石英反応装置に工業用N−メチル−2−ピロリドン350kgを加え、温度を35±5℃に制御し、撹拌条件下でガス分配装置を介してメチルアミンガスを6L/minの速度で工業用N−メチル−2−ピロリドンに連続的に注入し(仕入れ比としては、メチルアミンガス:工業用NMP=6:1、質量比)、且つ該温度を維持しながら1h反応させ、その後20〜30℃下で、6L/minの流量でФ400×600mmの4A分子篩吸着装置3を通過させて脱水を行い、ろ過してN−メチル−2−ピロリドン事前処理液を得る。
【0027】
(二)N−メチル−2−ピロリドンの製造方法
0.5MPaの圧力でN−メチル−2−ピロリドン事前処理液を0.1μm孔径のβ−シクロデキストリン複合膜を通過させて1回目の膜ろ過を行い、同一な圧力下で0.2μm孔径の18−クラウン−6複合膜を通過させて2回目の膜ろ過を行い、ろ液を精留塔(塔釜500L、塔径300mm、塔高5000mm)内に圧力を加えて注入し、40KPa、塔頂温度80℃の条件で精留を行い、精留プロセスにおいて、精留塔の2/3処の軽質留分排出口において、3〜6L/minの流量で軽質留分を収集し(リサイクルする)、精留塔の塔頂から収集したNMP留分を凝縮させた後、0.5MPaの圧力で18−クラウン−6複合膜によって3パス膜ろ過を行い、ろ液を収集して所望の生成物を得、且つ純度分析測定を行う。
【0028】
実施例1の方法で製品純度を測定し、測定結果は下記表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1から分かるように、本発明の方法により得られたN−メチル−2−ピロリドンの純度が99.8%以上で、水分含有量が0.02%より小さく、0.5μm以上の粉塵粒子が10個/mlより少なく、単一金属イオン含有量が1ppbより小さく、国際半導体設備及び材料組織により設定された化学材料部分8級(SEMI C8)標準に適合する。
【0032】
認識すべきは、前記実施例は本発明の好適な実施例として挙げられたのみであり、本発明はそれらに限定されるではなく、本願技術分野の当業者が実施できる様々な簡単な改善は本発明の保護範囲内に属すべきである。
【符号の説明】
【0033】
1 高純度石英反応装置
2 ろ過装置
3 4A分子篩吸着装置
4 1パス膜ろ過装置
5 2パス膜ろ過装置
6 精留塔
7 製品留分収集タンク
8 軽質留分収集タンク
9 3パス膜ろ過装置
10 製品タンク
【技術分野】
【0001】
本発明は高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法に係り、具体的にSEMI C8標準に適合する高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
N−メチル−2−ピロリドン(N−methylpyrrolidone、NMPと略称する)は含窒素複素環化合物に属し、重要な工業用化学材料であり、石油化工、農薬、医薬、電子材料などの分野に広範に応用されており、そのうち、電子工業用N−メチル−2−ピロリドンはマイクロ電子工業、半導体業界において、精密機器または配線板の洗浄剤、フォトレジスト剥離液、LCD液晶材料生産用溶剤、及びリチウム電池の電極補助材料などに用いられることができ、その純度及び清浄度が電子製品の製品率、電気性能及び信頼性に対してともに重要な影響を与える。近年来、IT産業の急速な発展にともない、特に集積回路のサイズがコンパクトになり、処理速度が高速化され、高純度N−メチル−2−ピロリドンなどの電子工業用化学品の純度に対する要求が高まっている。
【0003】
従来技術において、N−メチル−2−ピロリドンはγ−ブチロラクトンを原料としてメチルアミンとアミノリシス反応を行い、N−メチル−4−ヒドロキシブチルアミドを生成し、昇温・加圧・脱水プロセスを通して得る。これはN−メチル−2−ピロリドンの現在唯一の工業製造方法であり、米国GAF、ドイツBASF及び日本三菱化成などの会社の量産にはともに該方法を採用している。次の精製プロセスにおいて、NMPの沸点と原料γ−ブチロラクトンの沸点との差がわずか2℃であるため、精留の方法によって2つを分離するのは非常に難しく、通常に多段精留の方法を用いて高純度の電子工業用試薬を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許US4965370
【特許文献2】欧州特許EP346086A2
【特許文献3】日本特許JP06−279401A
【特許文献4】日本特許JP08−109167A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国特許US4965370、欧州特許EP346086A2の方法はNMP(反応体系)にアルカリ金属またはアルカリ金属塩を加えて不純金属イオンを除去し、さらにステップごとに精留を行うことによって高純度NMPを得る。日本特許JP06−279401A及びJP08−109167Aはともに複数回の精留のプロセスによって高純度NMPを得るが、これらの方法はコストが高く、エネルギーの消耗が大きく、プロセスの制御が難しく、危険性が高いため、量産には相応しくない。
【0006】
本発明が解決する技術課題は、高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法を提供することによって、従来技術方法における複雑な製造プロセスやプロセス制御が困難であるなどの欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術構想は、
本発明は工業用N−メチル−2−ピロリドンを原料とし、事前処理、4A分子篩で吸着・脱水を行った後、それぞれ孔径0.1〜0.2μmの錯化剤複合膜によって2回の膜ろ過を行い、ろ液を減圧精留し、得られた留分を凝縮させた後錯化剤複合微多孔膜によって3パス膜ろ過を行い、所望の生成物を得る。
そのうち、前記錯化剤は金属イオンと錯体イオンを形成できる化合物を指す。
【0008】
本発明の技術案は、
メチルアミンガスを工業用N−メチル−2−ピロリドンに注入し、20〜40℃下で0.5〜1.5h反応させ、5〜7L/minの流速で4A分子篩吸着塔を通して脱水を行い、ろ過して得られた事前処理液を孔径0.1〜0.2μmの複合膜によって2回の膜ろ過を行い、得られたろ液を20〜80KPa下で減圧精留を行い、精留塔の塔頂から80〜120℃の留分を収集し、得られた留分を凝縮させた後微多孔膜によって3パス膜ろ過を行うことによって所望の生成物を得る。
【0009】
本発明において、メチルアミンと工業用N−メチル−2−ピロリドンとの質量比が2〜8:1で、好ましくは3〜7:1で、脱水プロセスの温度が20〜40℃に制御される。
【0010】
本発明における前記精留プロセスは、精留塔の2/3処の軽質留分排出口において、3〜5L/minの流量で軽質留分を排出し、精留塔の塔頂から80〜120℃のN−メチル−2−ピロリドン留分を収集し、留分を冷却して所望の生成物を得る。
【0011】
本発明において、前記の、事前処理液に対して2回の膜ろ過を行うことに採用されるのは錯化剤複合膜で、好ましくは、1回目の膜ろ過にはβ−シクロデキストリン複合膜が採用され、2回目の膜ろ過には18−クラウン−6複合膜が採用される。
【0012】
本発明において、前記3パス膜ろ過は18−クラウン−6複合膜を用いて膜ろ過を行う。
【0013】
前記β−シクロデキストリン複合膜または18−クラウン−6複合膜などの錯化剤複合膜が以下の方法によって製造されることができる。
【0014】
固相担体カオリンを200〜300メッシュの微粒子に研磨し、粘着剤ポリビニルアルコールと均一に混合し、低温乾燥を行い、800〜900℃の温度下で焼結し、室温まで冷却させ、錯化剤β−シクロデキストリンまたは18−クラウン−6によって浸漬・吸着し、錯化剤と固相担体カオリンとの孔径0.1〜0.2μmの複合膜、すなわちβ−シクロデキストリン複合膜または18−クラウン−6複合膜を得る。
【0015】
本発明において、原料と接触する、前記高純度N−メチル−2−ピロリドンを製造するプロセスにおける反応装置、及び各プロセス工程の原料搬送パイプはともに高純度石英からなり、使用される貯蔵タンクは高純度パーフロ材料からなる。
【0016】
そのうち、前記パーフロ材料は炭素原子と連接する水素原子が全てフッ素原子によって置換された高分子材料を指し、例えば四フッ化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化エチレン共重合体などが挙げられる。
【0017】
本発明の方法により得られた高純度N−メチル−2−ピロリドンの純度が99.8%以上で、水分含有量が0.02%より小さく、0.5μm以上の粉塵粒子が10個/mlより少なく、単一金属イオン含有量が1ppbより小さく、国際半導体設備及び材料組織により設定された化学材料部分8級(SEMI C8)標準に適合する。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比べると、本発明の高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法は以下の利点を有する。
【0019】
1.本発明はN−メチル−2−ピロリドンに対して事前処理を行うことによって、原料に混在されていたγ−ブチロラクトン不純物を有効に除去でき、製品の品質が不安定で、生産コストが高いなどの問題を防止した。
【0020】
2.本発明はβ−シクロデキストリン複合膜、18−クラウン−6複合膜を用いて膜ろ過を行うことによって、不純金属イオンを有効に除去でき、操作が簡単で、効果がよく、工業化連続生産に適応する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法のプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
(一)N−メチル−2−ピロリドン事前処理液の製造
加熱装置、撹拌装置、温度計及びガス分配装置を有する500Lの純石英反応装置1に工業用N−メチル−2−ピロリドン350kgを加え、温度を30±5℃に制御し、且つ撹拌条件下でガス分配装置を介してメチルアミンガスを5L/minの速度で工業用N−メチル−2−ピロリドンに連続的に注入し(仕入れ比としては、メチルアミンガス:工業用NMP=4:1、質量比)、且つ該温度を維持しながら1h反応させ、得られたN−メチル−2−ピロリドンをろ過装置2に注入してろ過を行い、その後30〜40℃下で、6L/minの流速でФ400×600mmの4A分子篩吸着装置3を通過させて脱水を行い、N−メチル−2−ピロリドン事前処理液を得る。
【0024】
(二)N−メチル−2−ピロリドンの製造方法
0.5MPaの圧力でN−メチル−2−ピロリドン事前処理液を1パス膜ろ過装置4及び2パス膜ろ過装置5に順に注入し、0.1μm孔径のβ−シクロデキストリン複合膜によって1パス膜ろ過を行い、及び0.1μm孔径の18−クラウン−6複合膜によって2パス膜ろ過を行うことによって、不純金属イオン及び固体粒子を除去する。得られたろ液を精留塔6(塔釜500L、塔径300mm、塔高5000mm)内に圧力を加えて注入し、80KPa、塔頂温度120℃の条件で精留を行う。精留プロセスにおいて、精留塔の2/3処の軽質留分排出口において、3〜5L/minの流量で軽質留分を収集し、軽質留分を収集タンク8に保存し(リサイクルする)、精留塔の塔頂から収集したNMP留分を凝縮させて製品留分収集タンク7内に保存し、且つ高純度石英パイプによって3パス膜ろ過装置9に搬送し、0.5MPa圧力で3パス膜ろ過を行い、高純度のN−メチル−2−ピロリドン製品を得、且つ高純度パーフロ貯蔵タンク10内に貯蔵する。
【0025】
製品に対して純度測定を行い、そのうち、色度はPt−Co標準液を標準液として目視比色法で分析を行い、NMP含量は気相クロマトグラフ法によって分析を行い、水分含量はカールフィッシャー法によって分析し、蒸発残留物は重量法によって分析し、カチオンは誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)によって分析し、アニオンはイオン交換クロマトグラフィーによって分析する。測定機器の名称及び規格番号は表2を参照し、その純度測定結果は表1に示す。
【実施例2】
【0026】
(一)N−メチル−2−ピロリドン事前処理液の製造
加熱装置、撹拌装置、温度計及びガス分配装置を有する純石英反応装置に工業用N−メチル−2−ピロリドン350kgを加え、温度を35±5℃に制御し、撹拌条件下でガス分配装置を介してメチルアミンガスを6L/minの速度で工業用N−メチル−2−ピロリドンに連続的に注入し(仕入れ比としては、メチルアミンガス:工業用NMP=6:1、質量比)、且つ該温度を維持しながら1h反応させ、その後20〜30℃下で、6L/minの流量でФ400×600mmの4A分子篩吸着装置3を通過させて脱水を行い、ろ過してN−メチル−2−ピロリドン事前処理液を得る。
【0027】
(二)N−メチル−2−ピロリドンの製造方法
0.5MPaの圧力でN−メチル−2−ピロリドン事前処理液を0.1μm孔径のβ−シクロデキストリン複合膜を通過させて1回目の膜ろ過を行い、同一な圧力下で0.2μm孔径の18−クラウン−6複合膜を通過させて2回目の膜ろ過を行い、ろ液を精留塔(塔釜500L、塔径300mm、塔高5000mm)内に圧力を加えて注入し、40KPa、塔頂温度80℃の条件で精留を行い、精留プロセスにおいて、精留塔の2/3処の軽質留分排出口において、3〜6L/minの流量で軽質留分を収集し(リサイクルする)、精留塔の塔頂から収集したNMP留分を凝縮させた後、0.5MPaの圧力で18−クラウン−6複合膜によって3パス膜ろ過を行い、ろ液を収集して所望の生成物を得、且つ純度分析測定を行う。
【0028】
実施例1の方法で製品純度を測定し、測定結果は下記表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1から分かるように、本発明の方法により得られたN−メチル−2−ピロリドンの純度が99.8%以上で、水分含有量が0.02%より小さく、0.5μm以上の粉塵粒子が10個/mlより少なく、単一金属イオン含有量が1ppbより小さく、国際半導体設備及び材料組織により設定された化学材料部分8級(SEMI C8)標準に適合する。
【0032】
認識すべきは、前記実施例は本発明の好適な実施例として挙げられたのみであり、本発明はそれらに限定されるではなく、本願技術分野の当業者が実施できる様々な簡単な改善は本発明の保護範囲内に属すべきである。
【符号の説明】
【0033】
1 高純度石英反応装置
2 ろ過装置
3 4A分子篩吸着装置
4 1パス膜ろ過装置
5 2パス膜ろ過装置
6 精留塔
7 製品留分収集タンク
8 軽質留分収集タンク
9 3パス膜ろ過装置
10 製品タンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法において、
メチルアミンガスを工業用N−メチル−2−ピロリドンに注入し、20〜40℃下で0.5〜1.5h反応させ、5〜7L/minの流速で4A分子篩を通して吸着・脱水を行い、得られた事前処理液を孔径0.1〜0.2μmの複合膜によって2回の膜ろ過を行い、得られたろ液を20〜80KPa下で減圧精留を行い、精留塔の塔頂から80〜120℃の留分を収集し、凝縮させた後微多孔膜によって3パス膜ろ過を行うことによって所望の生成物を得るステップを含むことを特徴とする高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法。
【請求項2】
メチルアミンと工業用N−メチル−2−ピロリドンとの質量比が2〜8:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メチルアミンと工業用N−メチル−2−ピロリドンとの質量比が3〜7:1であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
精留塔の2/3処の軽質留分排出口において、3〜5L/minの流量で軽質留分を排出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脱水プロセスの温度が20〜40℃に制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記の、事前処理液に対して2回の膜ろ過を行うことに採用される複合膜は錯化剤複合膜であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記の、事前処理液に対して2回の膜ろ過を行うことにおいて、1回目の膜ろ過にはβ−シクロデキストリン複合膜が採用され、2回目の膜ろ過には18−クラウン−6複合膜が採用されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記3パス膜ろ過は18−クラウン−6複合膜を用いて膜ろ過を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
原料と接触する、前記高純度N−メチル−2−ピロリドンを製造する各プロセスにおける反応装置、及び各プロセス工程間の原料搬送パイプはともに高純度石英からなり、使用される生成物貯蔵タンクはともに高純度パーフロ材料からなる貯蔵タンクであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項1】
高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法において、
メチルアミンガスを工業用N−メチル−2−ピロリドンに注入し、20〜40℃下で0.5〜1.5h反応させ、5〜7L/minの流速で4A分子篩を通して吸着・脱水を行い、得られた事前処理液を孔径0.1〜0.2μmの複合膜によって2回の膜ろ過を行い、得られたろ液を20〜80KPa下で減圧精留を行い、精留塔の塔頂から80〜120℃の留分を収集し、凝縮させた後微多孔膜によって3パス膜ろ過を行うことによって所望の生成物を得るステップを含むことを特徴とする高純度N−メチル−2−ピロリドンの製造方法。
【請求項2】
メチルアミンと工業用N−メチル−2−ピロリドンとの質量比が2〜8:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メチルアミンと工業用N−メチル−2−ピロリドンとの質量比が3〜7:1であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
精留塔の2/3処の軽質留分排出口において、3〜5L/minの流量で軽質留分を排出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脱水プロセスの温度が20〜40℃に制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記の、事前処理液に対して2回の膜ろ過を行うことに採用される複合膜は錯化剤複合膜であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記の、事前処理液に対して2回の膜ろ過を行うことにおいて、1回目の膜ろ過にはβ−シクロデキストリン複合膜が採用され、2回目の膜ろ過には18−クラウン−6複合膜が採用されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記3パス膜ろ過は18−クラウン−6複合膜を用いて膜ろ過を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
原料と接触する、前記高純度N−メチル−2−ピロリドンを製造する各プロセスにおける反応装置、及び各プロセス工程間の原料搬送パイプはともに高純度石英からなり、使用される生成物貯蔵タンクはともに高純度パーフロ材料からなる貯蔵タンクであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【図1】
【公開番号】特開2012−62301(P2012−62301A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255166(P2010−255166)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(510302320)上海化学試剤研究所 (3)
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Chemical Reagent Research Institute
【住所又は居所原語表記】No.401 Zhenbei Road,Putuo Shanghai 200333,People’s Republic of China
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(510302320)上海化学試剤研究所 (3)
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Chemical Reagent Research Institute
【住所又は居所原語表記】No.401 Zhenbei Road,Putuo Shanghai 200333,People’s Republic of China
【Fターム(参考)】
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