説明

高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤

【課題】カルシウム拮抗剤単独投与で見られる反射性頻脈などの副作用を解消し、しかも降圧作用に優れた高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤を提供する。
【解決手段】カルシウム拮抗剤に、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オン(一般名:プラトサルタン)、そのプロドラッグ及びその薬理上許容される塩から選ばれたアンジオテンシンII受容体拮抗剤を組み合わせてなる高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤である。これは、カルシウム拮抗剤と上記のアンジオテンシンII受容体拮抗剤とを配合して組成物にしたものでもよいし、それぞれを容器に収納し単一包装してキットの形態にしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム拮抗剤の副作用を軽減させるべく、カルシウム拮抗剤に、特定のアンジオテンシンII受容体拮抗剤を組み合わせた高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウム拮抗剤は、血管を拡張させることにより降圧作用を示し、降圧剤に用いられている。また、アンジオテンシンII受容体拮抗剤は、内因性昇圧作用物質であるアンジオテンシンIIと受容体レベルで拮抗することにより降圧作用を示し、高血圧症の予防又は治療に用いられている。そして、高血圧症の予防又は治療に、アンジオテンシンII受容体拮抗剤とカルシウム拮抗剤とを併用して投与することが提案されている(特許文献1〜3)。また、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オン(一般名、プラトサルタン)は、アンジオテンシンII受容体拮抗作用を有することが知られている(特許文献4)。しかしながら、このプラトサルタンとカルシウム拮抗剤とを併用することは知られていない。
【特許文献1】特開平3−27362号公報
【特許文献2】特開平5−132465号公報
【特許文献3】特開平7−53373号公報
【特許文献4】特許第2707390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、カルシウム拮抗剤投与に見られる反射性頻脈(血圧低下に伴う心拍数増加)の副作用を解消し、しかも降圧作用に優れた高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
カルシウム拮抗剤は降圧作用が優れているが、反射性頻脈の副作用を有する。本発明者等は、高血圧症、心血管系疾患等の予防と治療の重要性に鑑みて、種々研究を重ねた結果、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オン及びそのプロドラッグ及びその薬理上許容される塩から選ばれたアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、驚くべきことに、カルシウム拮抗剤の上記の副作用を軽減する作用を有すること、しかもこの組み合わせが優れた血圧降下作用を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、カルシウム拮抗剤に、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オン、そのプロドラッグ及びその薬理上許容される塩から選ばれたアンジオテンシンII受容体拮抗剤を組み合わせてなる高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤である。
【0006】
また、本発明は、カルシウム拮抗剤に、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オン、そのプロドラッグ及びその薬理上許容される塩から選ばれたアンジオテンシンII受容体拮抗剤を配合してなる高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤である。
【0007】
また、本発明は、カルシウム拮抗剤を収納した容器と、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オン、そのプロドラッグ及びその薬理上許容される塩から選ばれたアンジオテンシンII受容体拮抗剤を収納した容器とを単一包装してキットの形態にしてなる高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤である。
【0008】
上記のカルシウム拮抗剤としては、塩酸エホニジピン、塩酸ジルチアゼム、塩酸テロリジン、塩酸ニカルジピン、塩酸バルニジピン、塩酸フルナリジン、塩酸ベニジピン、塩酸ベラパミル、塩酸マニジピン、シルニジピン、シンナリジン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、フェロジピン、ニルジピン、ニモジピン、ベシル酸アムロジピン、ペニジピンからなる群から選ばれた少なくとも1種が用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤は、カルシウム拮抗剤に、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オン、そのプロドラッグ及びその薬理上許容される塩から選ばれたアンジオテンシンII受容体拮抗剤を組み合わせて投与することによって、カルシウム拮抗剤単独投与のとき発現する反射性頻脈の副作用を軽減することができる。またこの併用によって優れた血圧降下作用を発揮する。そのため、本発明の予防又は治療剤は、高血圧症又は心血管系疾患、すなわち心臓疾患(狭心症、心不全、心肥大)、血管障害(動脈硬化症、PTCA後再狭窄、末梢性循環障害)、脳疾患(脳溢血、脳梗塞)、腎臓疾患(糖尿病性腎症、糸球体腎炎、腎硬化症)の予防又は治療に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
カルシウム拮抗剤は、カルシウムが細胞の中に入るのを阻止して血管の収縮を防いで降圧作用をなす薬剤である。本発明は、このカルシウム拮抗剤単独投与のとき発現する反射性頻脈の副作用を軽減することを目的とする。本発明で対象となるカルシウム拮抗剤は、例えば、塩酸エホニジピン、塩酸ジルチアゼム、塩酸テロリジン、塩酸ニカルジピン、塩酸バルニジピン、塩酸フルナリジン、塩酸ベニジピン、塩酸ベラパミル、塩酸マニジピン、シルニジピン、シンナリジン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、フェロジピン、ニルジピン、ニモジピン、ベシル酸アムロジピン、ペニジピンが挙げられる。
【0011】
カルシウム拮抗剤は、前述したように、投与によって反射性頻脈を発症するという副作用を有する。本発明によれば、カルシウム拮抗剤に、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オン、そのプロドラッグ及びその薬理上許容される塩から選ばれたアンジオテンシンII受容体拮抗剤を組み合わせて投与することによって、カルシウム拮抗剤が有する上記の副作用を軽減できる。なお、後述の比較例1にみるように、この副作用の軽減は、上記以外のアンジオテンシンII受容体拮抗剤、例えばロサルタン、カンデサルタンでは認められない。
【0012】
本発明で用いる、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オンは、プラトサルタンという一般名で称され、アンジオテンシンII受容体拮抗作用を有する公知の物質(特許文献4)である。本発明においては、プラトサルタンのプロドラッグ、すなわち生体内において代謝されてプラトサルタンに変換される化合物もアンジオテンシンII受容体拮抗剤に用いられる。また、プラトサルタンの薬理上許容される塩もアンジオテンシンII受容体拮抗剤に用いられる。
【0013】
プラトサルタンのプロドラッグを形成する基としては、例えば、分岐してもよいアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基等)、分岐してもよいアルカノイル基(アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基等)、分岐してもよいアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基等)、メトキシメチル基、メトキシエトキシ基、(5−メチル−2−オキソ1,3−ジオキソール−4−イル)メチル基、メチルピバロエート基等がある。
【0014】
プラトサルタンの薬理上許容される塩としては、例えば、塩基付加塩は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ピペリジン、ピリジン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、トリス(ヒドロキシエチル)メチルアミン、リジン、アルギニン、コリン等が挙げられる。また酸付加塩は、塩酸、臭素水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、酒石酸、こはく酸、マンデル酸、リンゴ酸、パントテン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられえる。
【0015】
本発明の高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤は、カルシウム拮抗剤に、プラトサルタン、そのプロドラッグ及びその薬理上許容される塩から選ばれたアンジオテンシンII受容体拮抗剤を組み合わせたものである。投与にあたっては、カルシウム拮抗剤に上記のアンジオテンシンII受容体拮抗剤を配合し、この配合した状態で投与してもよい。またカルシウム拮抗剤を収納した容器と上記のアンジオテンシンII受容体拮抗剤を収納した容器とを単一包装してキットの形態にし、それぞれを同時に投与してもよい。また、それぞれを別々に時間を異にして投与してもよい。
【0016】
カルシウム拮抗剤及び上記のアンジオテンシンII受容体拮抗剤は、適宜の薬理学的に許容される賦形剤や希釈剤などと混合し、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤又はシロップ剤等の経口剤的に、若しくは坐剤等の非経口的に投与することができる。これらのそれぞれの投与量は、症状、年齢、体重等により異なるが、経口投与の場合には、カルシウム拮抗剤は0.05〜1000mgであり、これに対してアンジオテンシンII受容体拮抗剤はプラトサルタンとして1〜500mgで、1日1回乃至数回症状に応じて投与される。カルシウム拮抗剤と上記のアンジオテンシンII受容体拮抗剤との投与量の比率は大幅に変わり得るが、質量比で1:500〜500:1の範囲内が適当である。
【実施例1】
【0017】
14週齢の雄性SHR(Spontaneously hypertensive rat、SPFグレード、生産元:(株)星野試験動物飼育所:高血圧自然発症ラット)を、1週間以上の検疫後、検体に用いた。16週齢からTail-cuff法による血圧測定の馴化を行ない、投与開始前日の収縮期血圧が均一になるように、検体を4つの群(各群6匹)に群分けした。第1群のコントロール群には、0.5%メチルセルロース(MC)溶液を投与した。第2群〜第4群には、被験物質を0.5%MC溶液に懸濁させた液を投与した。すなわち、ニフェジピン(カルシウム拮抗剤)は3mg/2mLの懸濁液となるように0.5%MC溶液を用いて調製し(第2群)、プラトサルタンは3mg/2mLの懸濁液となるように0.5%MC溶液を用いて調製し(第3群)、またニフェジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとの併用は(ニフェジピン3mg+プラトサルタン3mg)/2mLの懸濁液となるように0.5%MC溶液を用いて調製して(第4群:本発明品)投与した。
投与は、それぞれの液を2mL/kgの割合で1日1回づつ7日間経口で投与した。投与7日目の投与前及び投与2時間後及び5時間後に、Tail-cuff法により血圧及び心拍数を測定した。この群構成、被験物質及びその1日当りの投与量、収縮期血圧の測定値(平均値±標準誤差:mmHg)、心拍数の測定値(平均値±標準誤差:Beats/分)を、それぞれ表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
表1に見るように、ニフェジピン(カルシウム拮抗剤)の単剤投与(第2群)の場合、「投与7日目の投与前」は、収縮期血圧が219mmHgであるのに対し心拍数が371Beats/分、「投与7日目の投与2時間後」は、収縮期血圧が194mmHgであるのに対し心拍数が404Beats/分、「投与7日目の投与5時間後」は、収縮期血圧が201mmHgであるのに対し心拍数が374Beats/分と、投与によって収縮期血圧が下がると、心拍数もそれに応じて大きく増大した。
ところが、ニフェジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとを併用投与した併用群(第4群)の場合は、「投与7日目の投与前」は、収縮期血圧が207mmHgであるのに対し心拍数が370Beats/分、「投与7日目の投与2時間後」は、収縮期血圧が187mmHgであるのに対し心拍数が384Beats/分、「投与7日目の投与5時間後」は、収縮期血圧が183mmHgであるのに対し心拍数が378Beats/分と、併用投与によって、収縮期血圧がニフェジピン(カルシウム拮抗剤)単剤投与のときよりも著しく下がり、その下がった割合に比して、心拍数はニフェジピン(カルシウム拮抗剤)単剤投与のときよりも著しく少なかった。
このように、ニフェジピン(カルシウム拮抗剤)単剤投与による反射頻脈が、プラトサルタンと併用投与することによって著しく改善され、また降圧効果そのものも大きくなる。
【実施例2】
【0020】
19週齢の雄性SHR(Spontaneously hypertensive rat、SPFグレード、生産元:(株)星野試験動物飼育所:高血圧自然発症ラット)を、1週間以上の検疫後に、検体に用いた。20週齢でエーテル麻酔下に頚部及び頚背部を切開し、右頚動脈に内部をヘパリンで満たしたカテーテルを挿入した。カテーテルの他端は皮下を通して頚背部に導出し、切開部を縫合してプラスチック製の個別ケージ中で個別飼育した。翌日、検体を第1群〜第6群の6つの群(各群6匹)に群分けし、各検体について、頚背部に導出したカテーテルを圧トランスデューサーに接続し、ひずみ圧力アンプを介して血圧を測定してレコーダーに記録した。心拍数は、血圧脈派から心拍数計を用いて算出し、同様にレコーダーに記録した。
【0021】
第1群のコントロール群には、0.5%メチルセルロース(MC)溶液を投与した。第2群〜第6群には、被験物質を0.5%MC溶液に懸濁させた液を投与した。すなわち、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)、アムロジピン(カルシウム拮抗剤)及びプラトサルタンを、それぞれ3mg/2mLの懸濁液となるように0.5%MC溶液を用いて調製し投与した。ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとの併用(第5群:本発明品)は、(3mgニカルジピン+3mgプラトサルタン)/2mLの懸濁液となるように0.5%MC溶液を用いて調製して投与した。また、アムロジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとの併用(第6群:本発明品)は、(3mgアムロジピン+3mgプラトサルタン)/2mLの懸濁液となるように0.5%MC溶液を用いて調製して投与した。そして、投与1時間後及び投与4時間後のそれぞれの血圧及び心拍数を測定した。群構成、被験物質及び1日当りの投与量、血圧の測定値(平均値±標準誤差:mmHg)及び心拍数の測定値(平均値±標準誤差:Beats/分)をそれぞれ表2に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
表2によれば、投与1時間後において、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)単独投与の場合(第2群)は、血圧が140mmHgに下がり、そのときの心拍数は400 Beats/分まで増大している。これに対し、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとの併用投与の場合(第5群:本発明品)は、血圧が133mmHgまで下がり、しかも心拍数は352 Beats/分と少なかった。また、投与4時間後において、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)単独投与の場合(第2群)は、血圧が151mmHgと投与1時間後の血圧より上昇し、心拍数も投与1時間後の400 Beats/分から356 Beats/分に下がっている。一方、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとの併用投与の場合(第5群:本発明品)は、血圧が130mmHgと投与1時間後の血圧より更に下がっており、心拍数も上がってはいるものの362 Beats/分にとどまっている。
【0024】
このように、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)単独投与の場合とニカルジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとの併用投与の場合を対比すると、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)単独投与の場合の最も血圧が下がったときの心拍数の増大を、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとの併用投与によって抑え得ることがわかる。また、この併用投与によって、更に血圧が下がっており、その最も血圧が下がったときの心拍数は、単独投与の場合の最も血圧が下がったときの心拍数より少ない。
【0025】
また、投与1時間後において、アムロジピン(カルシウム拮抗剤)単独投与の場合(第3群)は、血圧が150mmHgに下がり、そのときの心拍数は379 Beats/分まで増大している。これに対し、アムロジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとの併用投与の場合(第6群:本発明品)は、血圧が134mmHgまで下がり、しかも心拍数は327 Beats/分と少なかった。また、投与4時間後において、アムロジピン(カルシウム拮抗剤)単独投与の場合(第3群)は、血圧が138mmHgと投与1時間後の血圧より更により下がり、心拍数も投与1時間後の379 Beats/分から398 Beats/分に上昇した。一方、アムロジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとの併用投与の場合(第6群:本発明品)は、血圧が127mmHgと投与1時間後の血圧より更に下がっており、心拍数は361 Beats/分になった。
【0026】
このように、投与1時間後と投与4時間後のいずれの場合も、アムロジピン(カルシウム拮抗剤)単独投与の場合に比し、アムロジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとの併用投与の場合は、血圧がより下がり、また心拍数も低減した。また、この併用投与によって、単独投与の場合より更に血圧が下がっており、その最も血圧が下がったときの心拍数は、単独投与の場合の最も血圧が下がったときの心拍数より少ない。
【0027】
〔比較例〕
この比較例は、実施例2の第5群、すなわち、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)とプラトサルタンとの併用において、プラトサルタンに代えて、ロサルタン(アンジオテンシンII受容体拮抗剤)を用いたときの例である。この比較例は次のようにした。
19週齢の雄性SHR(Spontaneously hypertensive rat、SPFグレード、生産元:(株)星野試験動物飼育所:高血圧自然発症ラット)を、1週間以上の検疫後に、検体に用いた。20週齢でエーテル麻酔下に頚部及び頚背部を切開し、右頚動脈に内部をヘパリンで満たしたカテーテルを挿入した。カテーテルの他端は皮下を通して頚背部に導出し、切開部を縫合してプラスチック製の個別ケージ中で個別飼育した。
翌日、検体を第1群〜第6群の6つの群(各群6匹)に群分けし、各検体について、頚背部に導出したカテーテルを圧トランスデューサーに接続し、ひずみ圧力アンプを介して血圧を測定してレコーダーに記録した。心拍数は、血圧脈派から心拍数計を用いて算出し、同様にレコーダーに記録した。
【0028】
第1群のコントロール群には、0.5%メチルセルロース(MC)溶液を投与した。第2群〜第4群には、被験物質を0.5%MC溶液に懸濁させた液を投与した。すなわち、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)及びロサルタン(アンジオテンシンII受容体拮抗剤)は、それぞれ3mg/2mLの懸濁液となるように0.5%MC溶液を用いて調製して投与した。ニカルジピンとロサルタンとの併用は(3mgロサルタン+3mgニカルジピン)/2mLの懸濁液となるように0.5%MC溶液を用いて調製して投与した。
そして、投与1時間後及び投与4時間後のそれぞれの血圧及び心拍数を測定した。群構成、被験物質及び1日当りの投与量、血圧の測定値(平均値±標準誤差:mmHg)及び心拍数の測定値(平均値±標準誤差:Beats/分)を、それぞれ表3に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
表3によると、投与1時間後において、投与1時間後において、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)単独投与の場合(第2群)は、血圧が140mmHgに下がり、そのときの心拍数は400 Beats/分まで増大している。これに対し、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)とロサルタン(アンジオテンシン受容体拮抗剤)との併用投与の場合(第4群)は、血圧が137mmHgまで下がったが、心拍数は414 Beats/分と増大している。また、投与4時間後において、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)単独投与の場合(第2群)は、血圧が151mmHgと投与1時間後の血圧より上昇し、心拍数も投与1時間後の400 Beats/分から356 Beats/分に下がっている。これに比し、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)とロサルタン(アンジオテンシン受容体拮抗剤)との併用投与の場合(第4群)は、血圧が投与1時間後の血圧より上昇して138mmHgになり、心拍数は305 Beats/分に減少した。
【0031】
このように、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)とロサルタン(アンジオテンシン受容体拮抗剤)との併用投与の場合は、ニカルジピン(カルシウム拮抗剤)単独投与の場合より更に血圧が下がっている。しかし、併用投与の場合の最も血圧が下がったときの心拍数(414 Beats/分)は、単独投与の場合の最も血圧が下がったときの心拍数(400 Beats/分)より多い。すなわち、血圧に関しては併用効果があるが、心拍数については併用効果が認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム拮抗剤に、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オン、そのプロドラッグ及びその薬理上許容される塩から選ばれたアンジオテンシンII受容体拮抗剤を組み合わせてなる高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤。
【請求項2】
カルシウム拮抗剤に、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オン、そのプロドラッグ及びその薬理上許容される塩から選ばれたアンジオテンシンII受容体拮抗剤を配合してなる高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤。
【請求項3】
カルシウム拮抗剤を収納した容器と、2−プロピル−3−{[2‘−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプトイミダゾール−4(3H)−オン、そのプロドラッグ及びその薬理上許容される塩から選ばれたアンジオテンシンII受容体拮抗剤を収納した容器とを単一包装してキットの形態にしてなる高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤。
【請求項4】
カルシウム拮抗剤が、塩酸エホニジピン、塩酸ジルチアゼム、塩酸テロリジン、塩酸ニカルジピン、塩酸バルニジピン、塩酸フルナリジン、塩酸ベニジピン、塩酸ベラパミル、塩酸マニジピン、シルニジピン、シンナリジン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、フェロジピン、ニルジピン、ニモジピン、ベシル酸アムロジピン、ペニジピンからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の高血圧症又は心血管系疾患の予防又は治療剤。

【公開番号】特開2008−88108(P2008−88108A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270501(P2006−270501)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(592086318)壽製薬株式会社 (24)
【Fターム(参考)】