説明

高速で低温基板上の薄膜を硬化させるための方法および装置

高速で低温基板上の薄膜を熱的に処理するための硬化装置が開示される。硬化装置は、ストローブヘッドと、ストローブ制御モジュールと、コンベヤー制御モジュールとを含む。ストローブ制御モジュールは、ストローブヘッド上のフラッシュランプによって生成される一組のパルスのパワー、持続期間および繰返しレートを制御する。速度情報に従って、コンベヤー制御モジュールは、ストローブ制御モジュールと共に、一組のパルスの繰返しレートと、基板がストローブヘッドの下で動かされる速度との間にリアルタイムの同期を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は、35 U.S.C.§119(e)(1)の下で、2008年7月9日出願の米国仮出願第61/079,339号に対する優先権を主張し、上記米国仮出願の内容が本明細書において参照により援用される。
【0002】
(発明の背景)
(1.技術分野)
本発明は、概して硬化システムに、とりわけ、低温で基板上の薄膜を硬化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の説明)
印刷された電子部品は、半導体工業と印刷工業の集積である。読み物を印刷する代わりに電子回路を印刷することの概念は、印刷業者が印刷業者の設備に対して大きな変更をなすことなく「高値」の印刷業を行う可能性を理解し得るので、印刷業者にとって魅力的である。同様に、電子回路を印刷することは、電子回路製造業者が電子回路を比較的低コストで大量に製造することを可能にするので、電子回路製造業者は、電子回路を印刷することの概念を同じく魅力的にとらえる。
【0004】
電子回路の製造期間中において、ほとんどの薄膜コーティングは、熱的に処理されることが必要であり、ほとんどの熱硬化処理の有効性は、温度と時間の積に関係する。例えば、薄膜を硬化するための典型的なアプローチは、基板の最高使用温度に設定されたオーブンの中に薄膜を設置することであり、そのような基板の上に薄膜が配置され、薄膜がある適度な時間の量の範囲内で硬化されることを可能にする。
【0005】
印刷される電子回路は、典型的に大量かつ低コストに関連付けられるので、印刷される電子回路用の基板は、シリコン、石英、ガラス、セラミック、FR4、その他などの伝統的な基板材料の代わりに、紙またはポリマーなどの比較的安価な材料で作製されることが必要である。しかしながら、紙またはポリマーは、シリコン、石英、ガラス、セラミック、FR4、その他よりもかなり低い分解の温度を有し、このかなり低い温度は、より長い薄膜の硬化時間を必要とする。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)の最高使用温度は150℃であり、この温度における銀ベースの伝導性膜に対する典型的な硬化時間は、分のオーダーである。このような長い硬化時間は、紙またはポリマー上に電子回路を印刷することの提案を経済上かなり非魅力的にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、比較的高速で低温基板上の薄膜を熱的に処理するための方法および装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい実施形態に従って、硬化装置は、ストローブヘッドと、センサと、ストローブ制御モジュールと、コンベヤー制御モジュールとを含む。ストローブ制御モジュールは、ストローブヘッド上のフラッシュランプによって生成される一組のパルスのパワー、持続期間および繰返しレートを制御する。センサは、基板がストローブヘッドの下で動かされる速度を感知する。センサによって得られる速度情報に従って、コンベヤー制御モジュールは、ストローブ制御モジュールと共に、一組のパルスの繰返しレートと、基板がストローブヘッドの下で動かされる速度との間にリアルタイムの同期を提供する。
【0008】
本発明のすべての特徴および利点は、以下の詳述された説明において明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
発明の好ましい使用の様式、さらなる目的、および利点のみならず、発明自体は、添付の図面と共に読まれる場合、以下の例示的実施形態の詳細な説明への参照によって最もよく理解される。
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態に従った、硬化装置の略図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい実施形態に従った、低温基板上の熱バリア層の略図である。
【図3】図3は、本発明の好ましい実施形態に従った、図1の硬化装置内におけるエアナイフの略図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施形態に従った、図1の硬化装置内における冷却ローラーの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明に対して、硬化は熱工程として規定され、熱工程は、乾燥(溶剤の取り出し)、粒子焼結、緻密化、化学反応開始、相変態、結晶粒成長、アニーリング、熱処理、その他を含む。薄膜(薄膜は100ミクロン厚未満の材料の層として規定される)はしばしば、基板の分解温度に近いか、むしろ超える温度で処理されることが必要であるので、ポリマーまたは紙などの低温基板上の材料を硬化する場合、良好な硬化を達成する際の一制限要因は、基板の分解である。さらには、たとえ薄膜が低温で硬化され得る場合においても、基板の低分解温度は、基板上の材料を熱的に硬化するための時間の量を増大させる。上記の問題は、本発明の硬化装置によって克服され得る。
【0011】
ここで、図面および特に図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態に従って、硬化装置の描写された略図がある。示されているように、硬化装置100は、コンベヤーベルトシステム110、ストローブヘッド120、リレーラック130および巻き返し(reel−to−reel)供給システム140を含む。硬化装置100は、低温基板103上に搭載された薄膜102を硬化することが可能であり、低温基板103は、比較的高速でコンベヤーベルトをわたって動かされている、ウェブまたは個別のシート上に据えられる。コンベヤーベルトシステム110は、基板103を動かすために、例えば、毎分2〜1000フィートの速度で動作し得る。硬化装置100は、6インチずつの増分において、任意の幅のウェブに適応し得る。薄膜102は、既存の技術のうちの1つまたは組合せによって基板103上に付加され得、このような既存の技術は、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア、レーザー印刷、ゼログラフィ、パッド印刷、塗装、つけペン、シリンジ、エアブラシ、フレキソ、化学気相成長(CVD)、PECVD、蒸着、スパッタリング、その他などである。
【0012】
好ましくは水冷されるストローブヘッド120は、基板103上に位置する薄膜102を硬化するために、高輝度パルス状キセノンフラッシュランプ121を含む。パルス状キセノンフラッシュランプ121は、異なる輝度、パルス長およびパルス繰返し周波数の光パルスを提供し得る。例えば、パルス状キセノンフラッシュランプ121は、3”×6”幅のビームパターンを有する10μsから10msのパルスを1kHzまでのパルス繰返しレートで提供し得る。パルス状キセノンフラッシュランプ121からの放射のスペクトル成分は、200nmから2,500nmの範囲に及ぶ。スペクトルは、350nm未満の大部分の放射を除去するために、石英ランプをセリウムがドープされた石英ランプに置換えることによって調節され得る。石英ランプはまた、約140nmから約4,500nmまでの放射を拡張するために、サファイアランプで置換えられ得る。フィルタもまた、スペクトルの他の部分を除去するために付加され得る。フラッシュランプ121はまた、しばしばDirected Plasma Arc(DPA)アークランプといわれる水冷壁フラッシュランプであり得る。
【0013】
リレーラック130は、調節可能な電源131と、コンベヤー制御モジュール132と、ストローブ制御モジュール134とを含む。調節可能な電源131は、毎パルス4キロジュールまでのエネルギーを有するパルスを生成し得る。調節可能な電源131はパルス状キセノンフラッシュランプ121に接続され、パルス状キセノンフラッシュランプ121からの放射の輝度は、パルス状キセノンフラッシュランプ121を通して流れる電流の量を制御することによって変化され得る。
【0014】
調節可能な電源131は、パルス状キセノンフラッシュランプ121の放射輝度を制御する。薄膜102および基板103の光学的特性、熱的特性および幾何学的特性に依存して、パルス状キセノンフラッシュランプ121からの放射のパワー、パルス持続期間およびパルス繰返し周波数は、ウェブの速度に対して電子的に調節および同期され、これにより、基板103を損傷することなく薄膜102の最適な硬化を可能にする。
【0015】
硬化の動作期間中において、薄膜102のみならず基板103もコンベヤーベルトシステム110上に動かされている。コンベヤーベルトシステム110は、薄膜102をストローブヘッド120の下に動かし、この場所において、薄膜102は、パルス状キセノンフラッシュランプ121からの敏捷なパルスによって硬化される。パルス状キセノンフラッシュランプ121からの放射のパワー、持続期間および繰返しレートは、ストローブ制御モジュール134によって制御され、基板103がストローブヘッド120を通過して動かされている速度は、コンベヤー制御モジュール132によって決定される。
【0016】
センサ150(センサ150は、機械的センサ、電気的センサまたは光学的センサであり得る)は、コンベヤーベルトシステム110のコンベヤーベルトの速度を感知するために利用される。例えば、コンベヤーベルトシステム110のコンベヤーベルト速度は、シャフトエンコーダからの信号を検出することによって感知され得、シャフトエンコーダは、動くコンベヤーベルトに接触したホイールに接続される。次に、パルス繰返しレートは、コンベヤーベルトシステム110のコンベヤーベルト速度に適宜同期され得る。ストローブパルスレートfの同期は、
【0017】
【数1】

によって与えられ、ここで、
f=ストローブパルスレート[Hz]
S=ウェブ速度[ft/分]
O=オーバーラップ因数(つまり、基板によって受取られるストローブパルスの平均数)
W=硬化ヘッド幅[in]
である。
【0018】
例えば、200ft/分のウェブ速度、5のオーバーラップ因数、および2.75インチの硬化ヘッド幅で、ストローブランプのパルスレートは72.7Hzである。
【0019】
敏捷なパルス列を動く基板103と組合わせることによって、薄膜102の各部位が複数のパルスに晒されるので、任意の大きなエリアに対して一様な硬化が達成され得、このことは、オーブンなどの連続的な硬化システムに近似する。
【0020】
薄膜102が基板103と直接接触する場合、その薄膜102の加熱は、薄膜102の境界面における基板103の分解温度によって制限される。薄膜102と基板103との間に基板103よりも高い分解の温度を有する熱バリア材料の層を設置することによって、この影響が軽減され得、より良好な硬化が達成され得る。
【0021】
ここで図2を参照すると、本発明の好ましい実施形態に従って、低温基板上に付加された熱バリア層の描写された略図がある。示されているように、熱バリア層201は、薄膜102と基板103との間に挿入される。熱バリア層201は、熱的にもろい基板103の上の薄膜102をより深く硬化するために、より高いパワーの輻射パルスを可能にする。熱バリア層201の使用は、より高いパワーの照射と、より僅かに高いトータルのエネルギーを可能にし、このことは、より短いパルス長を有するパルスに帰結する。複数の敏捷なパルスが使用される場合、硬化の時間スケールは、硬化処理の期間中に熱が基板103から除去されることを許すレベルにまで増大する。
【0022】
熱バリア層201は、好ましくは、基板103よりも高い高温材料であり、さらに、基板103よりも低い熱伝導率を有する。熱バリア層201は、例えば、二酸化ケイ素(SiO)の層で作製され得る。他の材料は、シリカ粒子またはセラミック粒子を含む。シラン誘導体は、これらの粒子に対して優れた高温結合剤をなす。とりわけ利便的なバリア層は、スピンオンガラス(SOG)であり、SOGが標準的なコーティング技術で広いエリアに簡便に適用され得るので、SOGは、半導体工業においてウェハ平坦化のために幅広く使用される。SOGは、熱バリア層201が巻き返し処理において高い処理レートで直列式に適用されることを可能にする。
【0023】
ここで図3を参照すると、本発明の好ましい実施形態に従って、図1の硬化装置100内におけるエアナイフの描写された略図がある。示されているように、エアナイフ301は、薄膜102の硬化前、硬化する間、および/または硬化後において、基板103を冷却するために利用される。エアナイフ301は、基板103の上部または底部から適用される。上部から適用される場合、エアナイフ301はまた、硬化処理期間中に薄膜102から余分な溶剤を除去することを助け得る。単一のパルス(約1ms)の期間中に僅かな対流的冷却があり得るが、この技術は、100msを超え得る敏捷なパルス列の期間中において、実質的な冷却を提供し得る。
【0024】
ここで図4を参照すると、本発明の好ましい実施形態に従って、図1の硬化装置100内における冷却ローラーの描写された略図がある。示されているように、冷却ローラー401は、基板103を冷却するために利用される。基板103は、硬化処理前、硬化処理の期間中、または硬化処理後において、ローラー401の上で引かれる。ローラー401は、硬化処理後に基板103から伝導を介して熱を除去するように機能する。ローラー401を一定温度に維持するために、能動的冷却がローラー401に対して適用され得る。基板103を予冷することを除いて、単一のパルス(約1ms)の期間中に僅かな外部の伝導性冷却があり得るが、この技術は、100msを超え得る敏捷なパルス列の期間中において、さらに実質的な冷却を提供し得る。
【0025】
記載されたように、本発明は、比較的高速で低温基板上の薄膜を熱的に処理するための硬化装置および硬化方法を提供する。
【0026】
以下は、シート供給式コンベヤーを有する本発明の硬化装置を使用した硬化の一例である。Novacentrix Corporationから商業的に利用可能である銀ナノ粒子の水溶性ベースのインクがインクジェットカートリッジ内へ装填され、約300nm厚で写真用紙の上に印刷された。印刷後において、インク層は、約20,000オーム/□のシート抵抗を有した。写真用紙(つまり基板)は、27℃に維持された1/4”厚のアルミニウムプレート上に留められ、毎分100フィートで動くコンベヤーベルト上に設置された。硬化ランプの硬化領域は、ウェブのコンベヤー搬送方向において2.75”幅であり、ウェブのコンベヤー搬送方向に対して垂直に6”幅であり、結果として106cmのビームエリアになった。ストローブランプは、14.6Hzの周波数で450マイクロ秒のパルス幅を有する複数のパルスを提供するために作動され、毎パルス1.0J/cmと、2.2KW/cmの平均輻射パワーを放出した。基板の各部分は、2つのオーバーラップするパルスを受取り、トータルで2.0J/cmのトータルエネルギーであった。硬化のトータル時間は約0.15秒であった。硬化後において、インク層のシート抵抗は0.25オーム/□に低減した。これは、8マイクロオーム・cmの抵抗率またはバルク銀の抵抗率の5倍に相当する。インク層のエリアは硬化ヘッドよりも大きかったが、敏捷なパルス作用と動く基板との組合わせに起因するオーバーラップするパルスは、任意の長さのパターンに対して一様な硬化を可能にした。対照として、従来のオーブン硬化では、同一の膜/基板がオーブン内に(基板の最高使用温度である)100℃で設置され得る。硬化の30分後において、結果として生じたシート抵抗は、1.8オーム/□にしか到達しなかった。
【0027】
本発明は、好ましい実施形態を参照して詳細に示され、および説明されたが、本発明の意図および範囲を逸脱することなく、当業者によって、形態および詳細における様々な変更が好ましい実施形態においてなされ得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化装置であって、
フラッシュランプを有するストローブヘッドと、
該フラッシュランプによって生成される複数のパルスのパワー、持続期間および繰返しレートを制御するためのストローブ制御モジュールと、
該ストローブ制御モジュールと連携するコンベヤー制御モジュールであって、該複数のパルスの該繰返しレートを、基板が該ストローブヘッドの下で動かされる速度にリアルタイムに同期させるコンベヤー制御モジュールと
を備えている、硬化装置。
【請求項2】
前記フラッシュランプはキセノンフラッシュランプである、請求項1に記載の硬化装置。
【請求項3】
前記キセノンフラッシュランプは、10μsから10msのパルスを1kHzまでのパルス繰返しレートで生成することが可能である、請求項2に記載の硬化装置。
【請求項4】
前記キセノンフラッシュランプのスペクトル成分は、200nmから2,500nmの範囲に及ぶ、請求項2に記載の硬化装置。
【請求項5】
前記硬化装置は、前記基板を冷却するためにエアナイフをさらに含む、請求項1に記載の硬化装置。
【請求項6】
前記硬化装置は、前記基板から伝導を介して熱を除去するためにローラーをさらに含む、請求項1に記載の硬化装置。
【請求項7】
前記フラッシュランプは、Directed Plasma Arcランプである、請求項1に記載の硬化装置。
【請求項8】
前記硬化装置は、前記ストローブヘッドの下で前記基板を搬送するためにコンベヤーシステムをさらに含む、請求項1に記載の硬化装置。
【請求項9】
前記硬化装置は、前記基板を前記コンベヤーシステムに供給するために供給装置をさらに含む、請求項8に記載の硬化装置。
【請求項10】
前記硬化装置は、基板が前記ストローブヘッドの下で動かされる速度を感知するためのセンサをさらに含む、請求項1に記載の硬化装置。
【請求項11】
低温基板上で薄膜を硬化させる方法であって、該方法は、
フラッシュランプを介して所定のパワー、持続期間および繰返しレートで複数のパルスを生成することと、
該フラッシュランプの下で基板の層を搬送することによって、該基板の層上に位置する膜が該フラッシュランプからの該複数のパルスによって硬化されることと
を包含し、該基板の層は、該複数のパルスの該繰返しレートと同期される速度で動かされ、該膜は、該複数のパルスから複数回の照射を受ける、方法。
【請求項12】
前記基板の層は、巻き返しシステムによってコンベヤーで搬送される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、前記膜と前記基板の層との間に熱バリア層を挿入することをさらに含む、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−527831(P2011−527831A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517435(P2011−517435)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/039174
【国際公開番号】WO2010/005609
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511009710)エヌシーシー ナノ, エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】