説明

高速スキャナーを備えた光トモグラフィーシステム

対象となる物体が、該対象となる物体内を通過する光を受け取るように配置された顕微鏡対物レンズ10の視野内で照明される。顕微鏡対物レンズ10を透過する光は、屈折力可変素子33に入射する。屈折力可変素子33は、顕微鏡対物レンズ10に対して駆動され、対象となる物体における複数の焦点面を通してスキャンする。屈折力可変素子33から伝達される光は、検知素子又はアレイ30によって検知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には光断層イメージングシステムに関し、特に、生体細胞等の微小物体を顕微鏡によって画像化する光投影トモグラフィー用の高速焦点面スキャナーに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、A. C. Nelsonによって発明された光トモグラフィーを使用して生体細胞を画像化することに関する進歩が、たとえば2003年2月18日に特許証が発行された、「Apparatus And Method For Imaging Small Objects In A Flow Stream Using Optical Tomography」と題する米国特許第6,522,775号に開示され、その開示内容はすべて参照により本明細書に援用される。本技術分野におけるさらなる進展は、Fauver他による、2003年11月18日に出願され、2004年4月22日に米国特許出願公開第2004/0076319号として公開された、「Method And Apparatus Of Shadowgram Formation For Optical Tomography」と題する米国特許出願第10/716,744号(Fauver‘744)と、Fauver他による、2006年9月18日に出願され、「Focal Plane Tracking For Optical Microtomography」と題する米国特許出願第11/532,648号(Fauver‘648)とにおいて教示されており、それらの開示内容はすべて参照により本明細書に援用される。
【0003】
こうした光トモグラフィーシステムにおける処理は、標本の調製から開始する。通常、患者から採取された標本は、病院又は診療所から受け取られ、非診断要素を除去するように処理され、固定され、次いで染色される。そして、染色された標本は、光学流体と混合され、マイクロキャピラリーチューブに挿入されて、標本内の細胞等の物体の画像が、光トモグラフィーシステムを用いて生成される。結果として得られる画像は、「疑似投影画像」と呼ばれる、異なる複数の視点からの拡大された被写界深度画像のセットを含む。疑似投影画像のセットを、逆投影技法及びフィルタリング技法を用いて再構成することにより、対象となる細胞の3次元再構成をもたらすことができる。
【0004】
そして、3次元再構成は、対象となる構造、分子又は分子プローブを定量化すると共にそれらの位置を確定することを可能にするために、分析に利用可能であるように維持される。生体細胞等の物体には、染色剤又は標識分子プローブによってラベル付けすることができ、このプローブの測定量及び位置が、限定されないが、肺癌、乳癌、前立腺癌、子宮頸癌及び卵巣癌等のさまざまな癌を含む、細胞の病態に関する重要な情報をもたらすことができる。
【0005】
Fauver‘744に記載されていると共にVisionGate, Inc.によって構築されているような光トモグラフィーシステムの1つのタイプでは、結像光学系の被写界深度が、標本を収容するキャピラリーチューブに対して対物レンズを横方向にスキャンすることによって拡大される。圧電変換器(PieZoelectric Transducer:PZT)アクチュエーターが、標本を通る一続きの焦点面をスキャンするために、対物レンズを正弦曲線状に1秒間当たり数回移動させる。PZTアクチュエーターを用いて対物レンズを移動させることにより、標本内を移動する焦点面は、その速度が、標本を通る光軸に沿って対物レンズを迅速に移動させることに固有の慣性によって制限される。対物レンズは、比較的重厚な組立体に収容されているため、スキャン速度は、通常約10Hzであり、理論上の上限はおよそ毎秒60サイクルである。各スキャン中に、画像センサーが少なくとも1つの疑似投影画像を取得する。回転及び対物レンズのスキャンが十分に同期すると、PZTアクチュエーターのダウンストロークと共にアップストロークで画像を取得することができ、毎秒最大120画像を取得することができる。これは有用な取得速度であるが、本明細書に開示する装置、システム及び方法を通して大幅に改善することができる。
【発明の概要】
【0006】
対象となる物体を画像化する光投影トモグラフィーシステム及び方法。対象となる物体は、対象となる物体内を通過する光を受け取るように配置された顕微鏡対物レンズの視野内で照明される。顕微鏡対物レンズを透過する光は、屈折力可変素子に入射する。屈折力可変素子は、対象となる物体における複数の焦点面を通してスキャンするように駆動される。屈折力可変素子から伝達される光は、検知素子又はアレイによって検知される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】高速スキャンのための屈折力可変素子を備えた光トモグラフィー画像取得システム用の設計の一例を概略的に示す図である。
【図2】屈折力可変素子及び結像光学系用の設計のより詳細な一例を概略的に示す図である。
【図3】高速スキャンのための屈折力可変素子を備えた光トモグラフィー画像取得システム用の設計の別の例を概略的に示す図である。
【図4】屈折力可変素子用の設計の別の例を概略的に示す図である。
【図5】屈折力可変素子及び光学リレーを備えた光トモグラフィー画像取得システム用の設計の別の例を概略的に示す図である。
【図6】液体レンズ屈折力可変素子を備えた光トモグラフィー画像取得システム用の設計の代替例を概略的に示す図である。
【図7】四分の一波長板を組み込んだ光トモグラフィー画像取得システム用の設計の別の例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面において、同一の参照番号は、同様の要素又は構成要素を識別する。図面における要素のサイズ及び相対位置は、必ずしも比例尺では描かれていない。たとえば、さまざまな要素の形状及び角度は比例尺では描かれておらず、これらの要素のいくつかは、図面の視認性を向上させるために任意に拡大されかつ配置されている。さらに、図示する要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関するいかなる情報も伝えるようには意図されておらず、図面を容易に認識するためにのみ選択されている。
【0009】
以下の開示は、対象となる物体を画像化するいくつかの実施形態及びシステムについて述べる。本発明の実施形態例による方法及びシステムのいくつかの特徴を図に示し説明する。本発明の他の実施形態例による方法及びシステムは、図に示すものと異なる追加の手続き又は特徴を有することができることが理解されよう。本明細書では、実施形態例を、生体細胞に関して説明する。しかしながら、これらの例は、本発明の原理を説明する目的のためのものであり、本発明はそのように限定されないことが理解されよう。
【0010】
さらに、本発明のいくつかの実施形態例による方法及びシステムは、これらの図に示す特徴のすべてを含まなくてもよい。図を通して、同様の参照番号は、同様の又は同一の構成要素又は手続きを指す。
【0011】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、明細書及び続く特許請求の範囲を通して、「具備する、備える、含む(comprise)」という単語、並びに「具備する、備える、含む(comprises)」及び「具備している、備えている、含んでいる(comprising)」等のその変形は、「含むが限定されない」のように開放された包括的な意味で解釈されるべきである。
【0012】
本明細書を通して、「一例」又は「実施形態例」、「1つの実施形態」、「一実施形態」又はこれらの用語のさまざまな組合せを言及する場合、それは、その実施形態に関連して述べる特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通してさまざまな箇所に「1つの実施形態において」又は「一実施形態において」という句が現れるが、それは必ずしもすべて同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造又は特性を、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0013】
定義
概して、本明細書では、以下の用語は、光顕微鏡プロセスの文脈で使用する場合以下の意味を有する。以下の定義は、開示の理解を促すために提供するものであり、限定するものとみなされるべきではない。
「キャピラリーチューブ」は、その一般的に受け入れられている意味を有し、内径が概して500ミクロン以下の透明なマイクロキャピラリーチューブ及び等価な物品を含むように意図されている。
「被写界深度」は、指定された特徴に対して許容できない画像ぼけが生成される前に焦点面をシフトさせることができる範囲である、光軸に沿った長さである。
「物体」は、個々の細胞、粒子、物品、もの又は他の実体を意味する。
「疑似投影」は、光学系の固有の被写界深度より広い範囲の抽出された容積を表す単一画像を含む。疑似投影の1つの概念はFauver‘744に教示されている。
「標本」は、個々の患者からの単一の試験又は手続きから得られる完全な生成物(たとえば、分析用に提出された唾液、生検又は鼻腔スワブ)を意味する。標本は、1つ又は複数の物体で構成されている場合がある。標本診断の結果が症状診断の一部となる。
「試料」は、アリコート又は標本のすべて又は一部を含む、分析の準備ができている完成した細胞調製物を意味する。
【0014】
ここで図1を参照すると、高速スキャン用の屈折力可変素子を備えた光トモグラフィー画像取得システム用の設計の一例が概略的に示されている。光トモグラフィーシステム100は、光源15、支持体11、屈折力可変素子33及び顕微鏡対物レンズ組立体10を有している。光センサー30が結像レンズ23の焦点面に配置され、結像レンズ23は、屈折力可変素子33から伝達される光ビーム13を受け取るように配置されている。光トモグラフィーシステムでは、たとえば、光センサー30によって取得された画像信号は、コンピューター又は同様のデバイスに送信されて、格納され三次元再構成を含む画像処理が施される。
【0015】
一実施形態では、光源15は、支持体11の一部を照明するように配置されている。顕微鏡対物レンズ組立体10は、支持体11と支持体11に存在する物体とを通過する入射光5を受け取るように配置されている。支持体11を、参照矢印17によって示すように回転モーターに結合することができる。回転モーターの制御下で、支持体11を回転させ、顕微鏡対物レンズ組立体10に移送された物体のさまざまなビューを提示することができる。支持体11は、有利には、光学系の屈折特性に一致するように選択された光学流体で充填された光透過性キャピラリーチューブ又は等価物を備えることができる。屈折力可変素子33及び顕微鏡対物レンズ組立体10を、光路12に沿って位置合わせすることができる。対物レンズ10を透過する光21は、屈折力可変素子33に入射する。
【0016】
光センサー30は、有利には、フォトセンサーアレイ、CCDアレイ又は等価物を含むことができる。光源15は、可視光、近赤外、紫外、及び固定された又は生きた生体細胞及び等価物の光トモグラフィーに有用な他の光周波数を生成する照明源を含む、任意の適切な照明源又は複数の照明源の組合せを含むことができる。
【0017】
ここで図2を参照すると、屈折力可変素子及び結像光学系用の設計のより詳細な例が概略的に示されている。屈折力可変素子33は、ビームスプリッター18、スキャンレンズ16、及び反射面19を備えたスキャンミラー14を有している。光センサー30は結像レンズ23の焦点面に配置され、結像レンズ23は、ビームスプリッター18の1つの面から反射された光ビーム13を受け取るように配置されている。スキャンミラー14は、駆動機構114により、制御された方法で移動するように結合されている。
【0018】
ビームスプリッター18、スキャンレンズ16及びスキャンミラー14は、光路12に沿って位置合わせされている。ビームスプリッター18はまた、スキャンミラー14からの反射光13を、結像レンズ23を通るように仕向ける角度で傾斜しており、反射光13は、最終的にチューブの中身の画像を取得するように光センサー30上に伝達される。スキャンミラー14の操作には、ミラーの反射面19が光軸に対して実質的に垂直な関係を維持している間に、スキャンミラー14を光軸に沿って振動させることが含まれる。スキャンミラーが光軸12に沿って振動する際、支持体11(図1に示す)の複数の焦点面が横切られ、結果としての疑似投影は光センサー30上で画像化される。
【0019】
ここで図3を参照すると、高速スキャンのための屈折力可変素子を備えた光トモグラフィー画像取得システム用の設計の別の例が概略的に示されている。光源15、支持体11、屈折力可変素子33A及び顕微鏡対物レンズ組立体10が光路12に沿って位置合わせされ、そこでは、光路12を、顕微鏡対物レンズ組立体10の光軸とすることができる。顕微鏡対物レンズ組立体10は、射出瞳Eを有している。屈折力可変素子33Aは、第1のレンズ312及び第2のレンズ314を有している。第2のレンズ314は、有利には、駆動機構114Aにより光軸12に沿って駆動されるスキャンレンズを含むことができる。射出瞳E、第1のレンズ312及び第2のレンズ314は、各々、焦点距離fだけ分離されている。第2のレンズ314の移動は、第2のレンズをスキャン距離Δだけ並進させて、支持体11の焦点面をスキャンするように動作する。この例では、スキャン距離Δは、ここではf+Δとして表わされる、正の値と負の値との間で変動する。
【0020】
ここで図4を参照すると、屈折力可変素子用の設計の別の例が概略的に示されている。屈折力可変素子33Bは、可変焦点レンズ412を有している。一実施形態では、可変焦点レンズ412を、「Varioptic」技術に従って作製された2つの非混和性流体で充填された透明セルから構成することができる。こうしたVariopticレンズは、エレクトロウェッティング原理に基づき、可変電圧源114Vを用いて制御可能である。Variopticレンズは、Varioptic SA、Lyon、Franceから市販されている。こうしたレンズは、広い屈折力の変化を示すことができる。たとえば、5mm径Variopticレンズは、50ジオプトリーまで変化する逆焦点距離を有することができる。(たとえば、Gabay他著、「Dynamic Study of a Varioptic variable focal lens」(Current Developments in Lens Design and Optical Engineering III, Proceeding of SPIE Vol. 4767 (2002))を参照されたい。)
【0021】
ここで図5を参照すると、屈折力可変素子及び光学リレーを備えた光トモグラフィー画像取得システム用の設計の別の例が概略的に示されている。顕微鏡対物レンズ組立体10、光学リレー510及び屈折力可変素子33Cは光路に沿って位置合わせされている。顕微鏡対物レンズ組立体10は射出瞳Eを有している。一例では、屈折力可変素子33Cは、ビームスプリッター18及びスキャンレンズ16を有することができる。それら光学素子は、各々、焦点距離fだけ分離している。E’は、屈折力可変素子33Cの入射瞳と一致するスキャンレンズ16の入射瞳を表す。破線516は、入射瞳E’と一致するように射出瞳Eを焦点合わせするための光路を示す。光線521は、対物レンズ10を透過する光を表す。光線523は、光学リレー510によって中継される光を表す。
【0022】
ビームスプリッター18は、スキャンレンズ16及びスキャンミラー14からの反射光13を、結像レンズ23を通るように仕向けるように構成されており、反射光13は、最終的にチューブの中身の画像を取得するように光センサー30上に伝達される。光学リレー510は、第2のレンズ514に位置合わせされた第1の焦点レンズ512を有しており、第1のレンズ及び第2のレンズは、焦点距離の2倍、すなわち2fの距離だけ間隔が空けられている。
【0023】
実施形態例の構造について説明したが、実施形態例の動作の説明は、本開示の原理をさらに理解するのに役立つことが分かるはずである。スキャンミラー14を距離Δz’だけ並進させることにより、物体において2Δz’n/(n’m)に等しい焦点シフトΔzがもたらされ、ここでnは物体の空間屈折率であり、n’はスキャナーの空間屈折率であり、mは物体とスキャナーとの間の横方向倍率である。2という係数は、光路長がミラー並進の2倍だけ変化するという事実による。したがって、結像対物レンズとスキャン対物レンズとの有利な倍率比を選択することにより、物体に対して対物レンズを移動することによって必要であるよりも、スキャンミラーを用いることにより、著しく小さい動きで焦点を並進させることができる。たとえば、50倍対物レンズ10及び100倍スキャンレンズ16(すなわち、横方向倍率m=0.5)により、対物レンズ10を直接スキャンすることに比較して、疑似投影を生成するために必要なスキャン距離が8:1に低減する。この例を続けると、12ミクロンの疑似投影をもたらすために、ミラーを1.5ミクロンだけスキャンすればよい。
【0024】
スキャンミラーは、通常1mm未満であるスキャナー空間視野と同程度の大きさであればよい。したがって、像全体を反射するために1mm径のスキャンミラー14で十分である。こうしたミラーは、通常の対物レンズよりはるかに軽量であり、こうしたミラーをスキャンするためにかかる力及びエネルギーは、対物レンズをスキャンするよりはるかに小さい。必要な力が小さくなると共にスキャン距離が短くなることにより、スキャン周波数を、スキャン対物レンズで実現可能であるより何千倍も大きくすることができる。
【0025】
スキャンミラー14及び駆動機構114を、多種多様の利用可能な製造技術から作製することができる。一例は、圧電アクチュエーターに取り付けられた従来の表面鏡である。別の例は、反射コーティングが施されている微小電子機械システム(Micro-Electro-Mechanical-Systems:MEMS)屈曲部である。さらに別の例は、ソレノイドアクチュエーターを備える金属ミラーである。反射性弾性膜を駆動する音波発生器を使用することも可能である。当業者は、従来のアクチュエーター及び反射器の他の多くの組合せを用いることもできることを理解するであろう。
【0026】
スキャン倍率Δz/Δz’は、対物レンズ10又はスキャンレンズ16のいずれの開口数(Numerical Aperture:NA)とも無関係であるが、2つのレンズのNAは、間接的にスキャン倍率に関係している。特に、スキャンレンズ16の射出瞳E’は、視野全体にわたる対物レンズ10の分解能を実現するために、ケラレを回避するように十分大きくなければならない。この条件の結果、光学不変量から以下のように、スキャンレンズ16のNAは、対物レンズ10のNAを横方向倍率mで割った値に等しいか又はそれより大きくなる。係数mはNAをスキャン倍率Δz/Δz’に関連付ける。対物レンズ10の射出瞳E又はその像がスキャンレンズ16の入射瞳E’と一致する場合は、等しいことで十分であり、そうでない場合、スキャンレンズ16のNAの方が大きくなければならない。
【0027】
光学リレーを用いて、スキャンレンズ16の入射瞳E’上に対物レンズ10の射出瞳Eを結像することができる。これは、最も高性能の高倍率顕微鏡対物レンズの場合と同様に、レンズ瞳が仮想瞳である場合に必要である。さらに、1未満のリレー倍率mを用いて、対物レンズ10の射出瞳の像のサイズを、スキャンレンズ16の入射瞳と同じサイズである点まで低減することもできる。この技術を用いることにより、スキャン倍率もまたmだけ低減するという副次的作用がある。
【0028】
像倍率は、優れた疑似投影画像を取得するようにスキャンしている間、一定のままでなければならない。これは、スキャナー空間において光学系をテレセントリックにすることによって達成される。スキャンレンズ16がテレセントリックレンズであり、その射出瞳がその前側焦点面にある場合、対物レンズ10の射出瞳又はその像がその入射瞳と一致する場合にのみ、スキャナー空間において光学系はテレセントリックになる。スキャンレンズ16がテレセントリックでない場合、対物レンズ10の射出瞳又はその像をスキャンレンズ16の前側焦点面に配置することにより、対物レンズ10の射出瞳に対しスキャンレンズ16によってケラレが生じない限り、スキャナー空間において光学系がテレセントリックになる。この場合もまた、以前の段落で述べたように、リレー系を用いて、瞳のいずれかが仮想瞳である場合に、スキャン中に倍率を一定に維持することができる。
【0029】
より大きい物体がより低い対物レンズ10の倍率でスキャンされる場合、スキャンレンズ又は並進距離Δz’を変更する必要はない。たとえば、別の用途で20倍レンズが使用される場合、対物倍率比は5:1(すなわち横方向倍率m=0.2)であり、50:1スキャン比となる。したがって、スキャンミラーの位置が1ミクロン並進することにより、20倍レンズの下での像の焦点位置は50ミクロンシフトすることになる。これにより、ミクロン又はサブミクロンの動きで広い範囲をスキャンすることができる。これは、非常に精密な圧電デバイスに対して理想的である。約4nm/ボルトの動きという動き特性を有するが、移動が約10ミクロンに制限されているこうした精密な圧電デバイスは市販されている。
【0030】
説明した原理を想定し、対物レンズ10及びスキャンレンズ16に対して、仮想瞳を備えた高性能顕微鏡対物レンズが用いられるとすると、1つの有利な実施形態は以下を含む。
(1)可能な限りNAが高いスキャンレンズ、
(2)スキャンレンズの入射瞳の上に対物レンズの射出瞳を結像するリレー系、及び
(3)NAが、スキャンレンズNAを横方向倍率mで割った値に一致する対物レンズ。
【0031】
図6を参照すると、液体レンズ屈折力可変素子を備えた光トモグラフィー画像取得システム用の設計の代替例が概略的に示されている。顕微鏡対物レンズ組立体10、屈折力可変素子33Bは光路に沿って位置合わせされている。屈折力可変素子33Bは、図4に関して上述したように、可変焦点レンズ412、たとえばVariopticレンズ又は等価物を有している。顕微鏡対物レンズ組立体10と屈折力可変素子33Bとの間の光路に、中間レンズ611が配置されている。結像レンズ23が、屈折力可変素子33Bから伝達される光ビーム13を受け取り、それを光センサー30に伝達するように配置されている。一例では、可変焦点レンズ412を、中間レンズ611から距離2fに配置することができる。中間レンズ611を、有利には、顕微鏡対物レンズ組立体10から距離2fに配置することができる。
【0032】
ここで図7を参照すると、1/4波長板と共に用いられるスキャンミラーを採用する高速の機械的スキャンミラーを備えた光トモグラフィーシステム用の代替設計の一例が概略的に示されている。代替的な高速スキャンミラー設計200は、実質的に円偏光された光を伝達するように、1/4波長板220に光学位置合わせされた偏光ビームスプリッター218を採用する。そして、スキャンミラーからの反射光13Pは、逆の旋光性で実質的に円偏光される。1/4波長板220は、これを、入射光5に対して実質的に直交する直線偏光13P’に変換する。ビームスプリッター218は、スキャンミラー14からの直線偏光13P’を、結像レンズ23を通るように向けるように構成されており、直線偏光13P’は、最終的にチューブの中身の像を取得するように光センサー30上に伝達される。他の素子は、図1に関して上述したものとタイプ、構成及び構造が類似している。
【0033】
特許法に準拠するために、かつ、本発明の新規の原理を適用し、こうした例示的で専用の構成要素を必要に応じて構成し使用するために必要な情報を、当業者に提供するために、本明細書では本発明について非常に詳細に説明した。しかしながら、本発明を、明確に異なる機器及び装置で実施してもよく、機器の詳細及び動作手続きの両方に関するさまざまな変更を、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく達成することができるということが理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる物体を画像化する光投影トモグラフィーシステムであって、
光源(15)と、
前記対象となる物体を保持する支持体(11)であって、その一部は前記光源(15)によって照明される領域に配置され、前記対象となる物体は、該支持体(11)内に対象となる少なくとも1つの特徴を有する、支持体(11)と、
前記支持体(11)を通過する光を受け取るように配置された顕微鏡対物レンズ(10)であって、光路(12)上に配置される、顕微鏡対物レンズ(10)と、
前記光路(12)に沿って配置された屈折力可変素子(33)と、
前記屈折力可変素子(33)から放射される光を受け取り伝達する第2のレンズと、
光学素子から伝達される光を受け取るように配置された光センサー(30)と、
を具備する、システム。
【請求項2】
前記屈折力可変素子(33)は、
ビームスプリッター(18)と、
スキャンレンズ(16)と、
前記スキャンレンズ(16)を透過した光を受け取る、反射面を有するスキャンミラー(14)であって、前記顕微鏡対物レンズ組立体、前記ビームスプリッター(18)、前記スキャンレンズ(16)及び前記スキャンミラー(14)は前記光路(12)に沿って位置合わせされる、スキャンミラー(14)と、
前記反射面が前記光路(12)に対して垂直なままであるように、前記光路(12)に沿って前記スキャンミラー(14)を振動させるように結合され、それにより、前記振動するスキャンミラー(14)が前記支持体(11)の複数の焦点面を通してスキャンする、駆動機構(114)と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2のレンズは結像レンズを含み、前記ビームスプリッター(18)はまた、前記スキャンミラー(14)から反射光を、前記結像レンズを通るように仕向けるようにも配置される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記スキャンレンズ(16)は開口数(NA)値及び入射瞳を有し、前記顕微鏡対物レンズ(10)は射出瞳を有し、前記システムは、
前記顕微鏡対物レンズの射出瞳を前記スキャンレンズの入射瞳の上に結像するように位置決めされた光学リレー(510)
をさらに具備し、
前記顕微鏡対物レンズ(10)は、前記スキャンレンズのNA値を、前記物体と前記スキャンミラー(14)との間の横方向倍率値(mT)によって割った値に一致するNA値を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記駆動機構(114)は圧電変換器を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記スキャンミラー(14)は少なくとも500Hzの周波数で振動する、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記スキャンミラー(14)は少なくとも1000Hzの周波数で振動する、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記スキャンミラー(14)の横方向移動により、結果として、前記光センサー(30)によって検知される疑似投影画像の深さの広がりが比例して長くなる、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記屈折力可変素子(33)(VPE)は、第1のVPEレンズ及び第2のVPEレンズを備え、前記第2のVPEレンズは駆動機構に接続されたスキャンレンズを有し、前記第2のVPEレンズの移動は、該第2のVPEレンズをスキャン距離Δだけ並進させることにより前記支持体(11)における焦点面をスキャンするように動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記屈折力可変素子(33)(VPE)は可変焦点レンズを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記可変焦点レンズは、少なくとも2つの非混和性流体を含む透明セルを備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記可変焦点レンズは、電圧源制御に応じて屈折力を変化させる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記顕微鏡対物レンズ(10)は射出瞳Eを有し、前記屈折力可変素子(33)(VPE)は、VPE入射瞳E’を有し、且つビームスプリッター、スキャンミラー(14)、及び前記VPE入射瞳と一致する入射瞳を有するスキャンレンズ(16)を備え、前記射出瞳Eは前記入射瞳E’と一致するように焦点合わせされ、前記ビームスプリッター、前記スキャンミラー(14)及び前記スキャンレンズ(16)は、光路(12)に沿って前記顕微鏡対物レンズ(10)と位置合わせされ、前記スキャンミラー(14)は駆動機構によって制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記顕微鏡対物レンズ(10)と前記屈折力可変素子(33)との間に光学リレー(510)をさらに具備する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記スキャンミラー(14)を距離Δz’だけ並進させることにより、前記物体において2Δz’n/(n’m)に等しい焦点シフトΔzがもたらされ、ここでnは前記物体の空間屈折率であり、n’は前記スキャナーの空間屈折率であり、mは物体と前記スキャンミラー(14)との間の横方向倍率である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記駆動機構(114)は圧電変換器アクチュエーターを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項17】
前記スキャンミラー(14)及び前記駆動機構は、反射コーティングが施されている微小電子機械システム屈曲部を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項18】
前記スキャンミラー(14)及び前記駆動機構(114)はソレノイドアクチュエーターを備えた金属ミラーを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項19】
反射性弾性膜を駆動する音波発生器を使用することも可能である。
【請求項20】
前記スキャンレンズ(16)は、前記顕微鏡対物レンズ(10)のNAを、前記物体と前記スキャンミラー(14)との間の前記横方向倍率mで割った値に少なくとも等しいNAを有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項21】
前記スキャンレンズ(16)はテレセントリックレンズを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記支持体(11)は光透過性キャピラリーチューブを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記支持体(11)は回転ミラーに結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記物体は、前記光センサー(30)に対して移動され、各ビューにおいて前記対象となる少なくとも1つの特徴の少なくとも1つの像をもたらす複数のビューを提示する、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
前記対象となる物体は生体細胞を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記光センサー(30)は、電荷結合装置、相補型金属酸化物半導体素子、固体イメージセンサー及び固体イメージセンサー検出器アレイからなる群から選択された検出器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記支持体(11)は、直径が少なくとも50ミクロンである物体収容チューブを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
前記駆動機構(114)は圧電変換器を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項29】
前記スキャンミラー(14)は少なくとも500Hzの周波数で振動する、請求項2に記載のシステム。
【請求項30】
前記スキャンミラー(14)は少なくとも1000Hzの周波数で振動する、請求項2に記載のシステム。
【請求項31】
前記スキャンミラー(14)の横方向移動により、結果として、前記光センサー(30)によって検知される疑似投影画像の深さの広がりが比例して長くなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項32】
対象となる物体を画像化する光投影トモグラフィー方法であって、
前記対象となる物体内を通過する光を受け取るように配置された顕微鏡対物レンズ(10)の視野内で、前記対象となる物体の少なくとも一部を照明するステップ、
光を前記顕微鏡対物レンズ(10)に透過させて、屈折力可変素子(33)に入射させるステップ、
前記屈折力可変素子(33)を前記顕微鏡対物レンズ(10)に対して駆動させ、前記対象となる物体における複数の焦点面を通してスキャンするステップ、及び
前記屈折力可変素子(33)から伝達される光を検知するステップ、
を含む、方法。
【請求項33】
前記屈折力可変素子(33)を駆動するステップは、前記反射面が光路(12)に対して垂直なままであるように、スキャンミラー(14)を前記光路(12)に沿って振動させ、それにより前記支持体(11)における複数の焦点面を通してスキャンするステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記光を透過させるステップは、スキャンレンズ(16)の入射瞳の上に顕微鏡対物レンズの射出瞳を結像するステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記スキャンミラー(14)は少なくとも500Hzの周波数で振動する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記スキャンミラー(14)は少なくとも1000Hzの周波数で振動する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記屈折力可変素子(33)を駆動するステップは、
レンズをスキャン距離Δだけ並進させて、前記対象となる物体における焦点面をスキャンするステップ
を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記屈折力可変素子(33)を駆動するステップは、該屈折力可変素子(33)に可変電圧を印加するステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記屈折力可変素子(33)を駆動するステップは、前記スキャンミラー(14)を距離Δz’だけ並進させることによって、前記物体において2Δz’n/(n’m)に等しい焦点シフトΔzをもたらすステップを含み、ここでnは前記物体の空間屈折率であり、n’は前記スキャナーの空間屈折率であり、mは前記対象となる物体と前記スキャンミラー(14)との間の横方向倍率である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
支持体(11)において前記対象となる物体を保持するステップ及び、前記支持体(11)を回転させるステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記対象となる物体を前記光センサ(30)に対して移動させて、複数の像を提示するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記対象となる物体は生体細胞を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
対象となる物体を画像化する光投影トモグラフィーシステムであって、
前記対象となる物体内を通過する光を受け取るように配置された顕微鏡対物レンズ(10)の視野内で、前記対象となる物体の少なくとも一部を照明する手段と、
光を前記顕微鏡対物レンズ(10)に透過させて、屈折力可変素子(33)に入射させる手段と、
前記屈折力可変素子(33)を前記顕微鏡対物レンズ(10)に対して駆動させて、前記対象となる物体における複数の焦点面を通してスキャンする手段と、
前記屈折力可変素子(33)から伝達される光を検知する手段と、
を備える、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−518794(P2012−518794A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551280(P2011−551280)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/024959
【国際公開番号】WO2010/096786
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511205390)ヴィジョンゲイト,インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】