説明

高電圧発生装置

【課題】 各構成要素全体として省スペース化が可能な高電圧発生装置を提供する。
【解決手段】 高電圧タンク8内の上下一方の側に高電圧変圧器2と高電圧整流回路4a,4bと高電圧コネクタ9a,9bを配置し、またその反対側には高電圧スイッチ回路6a,6bと高電圧放電回路5a,5bを配置する。高電圧変圧器2を巻線の中心軸を垂直方向に向けて下段に、高電圧整流回路4a,4bを中段に、高電圧コネクタ9a,9bを上段に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルスX線透視撮影を行うX線装置に電力を供給する高電圧発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2極型X線管には波尾遮断回路と呼ばれる回路がX線管に並列接続されている。波尾遮断回路は、X線管への電力が停止されたとき、直ちにX線管を電位零にして被検体への無効被曝を防ぐものである。この波尾遮断回路は多段の直列スイッチで構成されており、それらの直列スイッチの収容に様々な工夫がなされている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2001-284097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、高電圧発生装置はX線高電圧装置としてX線制御装置と高電圧発生装置が一体になっており、波尾切断回路を含めた高電圧発生装置全体として省スペース化するニーズが高まってきた。
【0004】
本発明の目的は、各構成要素全体として省スペース化が可能な高電圧発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、商用電源を直流に整流しその整流された直流をさらに 高周波交流電源に変換するインバータと、このインバータの出力を低圧から高圧へ昇圧する高電圧変圧器と、この高電圧変圧器によって昇圧された高圧高周波交流を整流する高電圧整流回路と、この高電圧整流回路の正極及び負極をX線管に接続するための高電圧ケーブル及び高電圧コネクタと、前記X線管と並列接続され高電圧スイッチ回路と放電回路からなり前記X線管の電源供給停止時に前記高電圧コネクタに接続される高電圧ケーブルの浮遊容量に残った電荷を放電する波尾遮断回路と、を備えた高電圧発生装置において、前記高電圧変圧器、高電圧整流回路及び高電圧コネクタを一端に配置し、前記波尾切断回路を他端に配置する一の筐体を備えたことで達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、各構成要素全体として省スペース化が可能な高電圧発生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。図1に本発明の波尾遮断回路を利用する高電圧発生装置の全体構成図を示す。図1のように高周波電圧を作り出すインバータ回路1、インバータ回路1に接続される一次巻線及び高電圧整流回路側に接続される二次巻線から構成される高電圧変圧器2、高電圧変圧器2から昇圧された高周波電圧を直流に変換する為の高電圧整流回路4a,4b、高電圧整流回路4a,4bに接続された高電圧放電回路5a,5bおよび高電圧スイッチング回路6a,6bから構成される波尾遮断回路、波尾遮断回路から接続されるX線管装置7により管電圧の立ち下がりを高速にできるパルス透視撮影が構成される。波尾遮断回路は、パルス透視撮影における立ち下がりに同期した制御信号を高電圧スイッチ回路に送信することにより、高電圧ケーブルの浮遊容量とX線管装置の負荷抵抗から成る時定数から高電圧スイッチ回路内のコンデンサと放電回路の抵抗分から成るより短い時定数に瞬時に切り替わり、管電圧の立ち下がりを高速にし、波尾の少ないパルス透視撮影を行うことが出来る。高電圧変圧器2、加熱変圧器3、高電圧整流回路(カソード側)4a、高電圧整流回路(アノード側)4b、放電回路(カソード側)5a、高電圧放電回路(アノード側)5b、高電圧スイッチ回路(カソード側)6a、高電圧スイッチ回路(アノード側)6bは絶縁油が封入された高電圧タンク8内に実装される。
【0008】
本発明を利用する高電圧スイッチ回路および高電圧放電回路から構成される波尾遮断 回路の実装形式を図2に示す。高電圧スイッチ回路は電力用半導体スイッチング素子を複数直列接続した状態で実装された高電圧スイッチ基板6cを管電圧に対して電気的絶縁を確保する為に複数枚、素子が直列接続になるように接続線17などで接続する。高電圧スイッチ基板6cは図2に示すように収納用固定具10に入れる。収納用固定具10は絶縁材料で出来ており、積み重ねられる構造となっている。積み重ねることにより、収納されている高電圧スイッチ基板6c上下に一定間隔で絶縁距離15を設けることが出来る。また、収納用固定具10に仕切り板のようなものが3枚備わっており、積み重ねたときに高電圧放電回路5a,5bを収納出来るスペース16が備わり、高電圧放電回路5a,5bを固定、外部との絶縁機能が備わる。またこのスペース16の容積は放電回路5a,5bを実装しても、波尾遮断回路駆動時における高電圧放電回路5a,5bの発熱に対しても充分に熱が自然対流し冷却し易い大きさとする。この収納用固定具10よって、別々に回路を実装する必要がなくなり、作業工数を低減できる。
【0009】
図3に高電圧スイッチ基板6cを積層にした場合の基板同士の接続について示す。基板同士の接続は基板を上下交互に180°ずつ回転させて接続線が交差しないようにする。また基板の上下で絶縁距離15を設けなければならないが、前記収納用固定具10の積み重ね方向の幅で充分な距離を設けることが出来る。
【0010】
本発明における波尾遮断回路を接続した高電圧発生装置の実装形式を図4に示す。ここでは高電圧変圧器2、加熱変圧器3、高電圧整流回路(カソード側)4a、高電圧整流回路(アノード側)4b、放電回路(カソード側)5a、放電回路(アノード側)5b、高電圧スイッチ回路(カソード側)6a、高電圧スイッチ回路(アノード側)6b、高電圧コネクタ(カソード側)9a、高電圧コネクタ(アノード側)9bは絶縁油が封入された高電圧タンク8内に実装される。本実施例では手前側に下段から高電圧変圧器2、中段に高電圧整流回路(カソード側)4a、高電圧整流回路(アノード側)4b、上段に高電圧コネクタ(カソード側)9a、高電圧コネクタ(アノード側)9b及び、加熱変圧器3に接続・実装している。奥側には高電圧スイッチ回路(カソード側)6a、高電圧スイッチ回路(アノード側)6bを収納用固定具10に入れ、管電圧による電気的絶縁の確保のために多段に積み重ねることにより前記図2のようなタワー状に構成される。高電圧スイッチ回路(カソード側)6a、高電圧スイッチ回路(アノード側)6bの上段より高電圧コネクタ(カソード側)9a、高電圧コネクタ(アノード側)9bに接続することにより、図1の回路構成からなる波尾遮断回路を接続した高電圧発生装置を提供できる。電気的な絶縁設計に関しては高電圧変圧器2の一次巻線などのアース電位に近い電気部品は下段に配置し、上段に行くに従って電位の高い部品を配置する。また、高電圧スイッチ回路については積層された基板の最下段(高電圧タンク底面側)をアース電位として接続し、最上段をアノードあるいはカソードの高電位部分として高電圧コネクタ(カソード側)9a、高電圧コネクタ(アノード側)9bにそれぞれ接続することにより、手前側高電圧発生回路および奥側波尾遮断回路の等電位部分が隣接する配置となるので、絶縁部品追加による無駄な絶縁設計をせずに済む。アノード・カソード間電位(最大150kV)による絶縁距離13a及び、高電圧タンク8による対アース電位(最大75kV or −75kV)の絶縁距離13bに関しては絶縁油に対しては距離を充分に取る必要がある。絶縁距離13a,13bを取れば取るほど、絶縁設計が容易になり熱対流による冷却性は良くなるが、その分高電圧タンク8の容積が大きくなり高電圧発生装置自体が大型化する。
【0011】
図5は図4の配置と同様であるが、高電圧タンク8の小型化を目的とした実装の実施例である。前記で大型化してしまう主な原因は前記絶縁距離13a,13bである。絶縁距離13aは装置下段部分では低電圧あるいはアース電位に近い為、それほど距離を必要としないが、高電圧整流回路4a,4b、および高電圧スイッチ回路6a,6bの最上段部分のアノード・カソード間電位は最大で150kV掛かる為、それに応じた絶縁距離を設ける必要がある。また、高電位部分と高電圧タンク8による対アース電位に対する絶縁距離13bは絶縁距離13aのおよそ半分の距離で済むが、構成された電気部品の周囲に展開するため、さらにタンク容積を必要とする。そこで絶縁板11を図5のように配置することにより短い絶縁距離で電気的絶縁確保ができる。絶縁板11の面積は高電圧整流回路4a,4bより上部(高電圧スイッチ回路6a,6bも含む)の電気部品に対してカバーできるものとし、配線スペースを考慮して絶縁板よりある適当な絶縁距離をおいた位置に高電圧整流回路4a,4bおよび高電圧スイッチ回路6a,6b配置できるように絶縁材料の性能、厚みを選定する。これにより、小型化した高電圧発生装置を提供できる。
【0012】
図6は図5の配置と同様であるが、電気部品を囲うように絶縁体12を実装した実施例である。それにより対アース電位に対しての絶縁距離13bも縮めることができるため、電気部品周囲の容積も削減でき、図5よりさらに小型化を実現できる。
【0013】
図7は図5のタンク容積を変えずに高電圧コネクタ(カソード側)9a、高電圧コネクタ(アノード側)9b及び加熱変圧器3を横に、高電圧変圧器2を巻線の中心軸を垂直方向に向きを変えて実装した実施例である。パルス透視撮影に限らず長時間の曝射動作において、高電圧トランス内部の高電圧変圧器2より熱が発生する。そのため絶縁油を充分に対流させる工夫が必要となる。そこで、図5のように縦に配置していた高電圧コネクタ(カソード側)9a、高電圧コネクタ(アノード側)9b及び加熱変圧器3を横にして、高電圧発生装置の蓋に対して電気的絶縁を考慮した絶縁距離15まで上げて、その分余裕の出来た空間に対して高電圧整流回路4a,4bも同様に高電圧コネクタ(カソード側)9a、高電圧コネクタ(アノード側)9bと干渉しないように上部に移動する。残った下部の空間に高電圧変圧器2を巻線の中心軸を垂直方向に向きを変える。それにより一次巻線用のコイルと鉄心との上下に貫通した隙間17より発生した熱が上下方向に対流し易くなる。それにより図5に比べて高電圧変圧器2の冷却効率が向上されると共にタンク内部での対流が促進され、タンク内部の局所的な温度上昇を防ぐことができる。
【0014】
図8は図7の実装状態で、高電圧放電回路とその周辺の絶縁油を絶縁材料で囲うように実装した実施例である。視点は図7の反対方向である。高電圧放電回路の周辺を絶縁壁18で囲う。絶縁壁内部の面積は、図8の波尾遮断回路からはみ出ない広さとし、高さは図9のように収納用固定具10の仕切り板の根元から向かいのタンクの壁面まで接触する距離とする。それにより高電圧放電回路により熱せられた絶縁油を絶縁壁18の外に出さない閉鎖された空間19を設けることができる。熱せられた空間19内の絶縁油は図9のように空間19の向い側の壁面に放熱フィン20を設置することにより、放熱フィンの温度を高くして周囲環境温度との温度差を大きくできるため、タンク容積を増やすことなく効率的に冷却できる。また発熱による他の電気部品のダメージを軽減でき、装置の高信頼性にも繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を利用する高電圧発生装置の全体回路を示す図。
【図2】本発明を利用する波尾遮断回路の実装を示す図。
【図3】本発明を利用する高電圧スイッチ回路の接続を示す図。
【図4】本実施形態の波尾遮断機能を有した高電圧発生装置における実施例1を示す図。
【図5】本実施形態の波尾遮断機能を有した高電圧発生装置における実施例2を示す図。
【図6】本実施形態の波尾遮断機能を有した高電圧発生装置における実施例3を示す図。
【図7】本実施形態の波尾遮断機能を有した高電圧発生装置における実施例4を示す図。
【図8】本実施形態の波尾遮断機能を有した高電圧発生装置における実施例5を示す図。
【図9】図8で実施した構造の平面図。
【符号の説明】
【0016】
1 インバータ回路、2 高電圧変圧器、3 加熱変圧器、4a,4b 高電圧整流回路、5a,5b 高電圧放電回路、6a,6b 高電圧スイッチ回路、6c 高電圧スイッチ基板、7 X線管装置、8 高電圧タンク 9a,9b 高電圧コネクタ、10 収納用固定具 11 絶縁板、12 絶縁体、13a,13b,15 絶縁距離、14 一次巻線用コイルと鉄心間の隙間、16 スペース、17 接続線、18 絶縁壁、19 閉鎖された空間、20 放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を直流に整流しその整流された直流をさらに高周波交流電源に変換するインバータと、
このインバータの出力を低圧から高圧へ昇圧する高電圧変圧器と、
この高電圧変圧器によって昇圧された高圧高周波交流を整流する高電圧整流回路と、
この高電圧整流回路の正極及び負極をX線管に接続するための高電圧ケーブル及び高電圧コネクタと、
前記X線管と並列接続され高電圧スイッチ回路と放電回路からなり前記X線管の電源供給停止時に前記高電圧コネクタに接続される高電圧ケーブルの浮遊容量に残った電荷を放電する波尾遮断回路と、を備えた高電圧発生装置において、
前記高電圧変圧器、高電圧整流回路及び高電圧コネクタを一端に配置し、前記波尾切断回路を他端に配置する一の筐体を備えたことを特徴とした高電圧発生装置。
【請求項2】
前記一端への配置は、前記筐体の壁面から前記高電圧変圧器、前記高電圧整流回路、高電圧コネクタの順に配置されたことを特徴とした請求項1に記載の高電圧発生装置。
【請求項3】
前記高電圧変圧器の巻線の中心軸が前記筐体に対して垂直方向に配置されることを特徴とする請求項1に記載の高電圧発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−98072(P2008−98072A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280986(P2006−280986)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】