説明

高/低温負荷シール性が良好なフッ素ゴム系シール材

【課題】軽油(ディーゼル燃料)を用いた場合でも、高/低温負荷シール性に優れ、−40℃以下でシール可能なフッ素ゴム系シール材を提供すること。
【解決手段】フッ素を64〜69重量%含有し、含臭素化合物および/または含ヨウ素化合物に由来する架橋部位を有し、過酸化物により架橋され得る含フッ素共重合体と、該含フッ素共重合体100重量部に対して、有機過酸化物を0.5〜6重量部と、多官能性モノマーを1〜10重量部とを含有するフッ素ゴム系シール材用組成物を架橋してなるフッ素ゴム系シール材であって、上記フッ素ゴム系シール材用組成物中の含フッ素共重合体が、下記(a)〜(e):(a)ビニリデンフルオライド(VDF):30〜70モル%、(b)テトラフルオロエチレン(TFE):10〜30モル%、(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE):10〜20モル%、(d)パーフルオロ(メトキシメチルビニルエーテル)(FMMVE):5〜30モル%、および(e)臭素化および/またはヨウ素化不飽和フルオロ炭化水素:成分(a)〜成分(d)の合計((a)+(b)+(c)+(d)=)100モル%に対して少量、を共重合して得られるフッ素ゴムポリマーであることを特徴とするフッ素ゴム系シール材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ゴム系シール材に関する。さらに詳しくは、本発明は、自動車燃料タンクのシール用部品等に好適な、高/低温負荷圧縮永久歪みに優れたフッ素ゴム系シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクなどの、自動車燃料と接触する部位のシールに使用されるシール材としては、燃料タンク等からの燃料油漏れを完璧に防止し得る「耐燃料油性」が求められており、フッ素ゴムを中心に使用されている。
【0003】
近年の傾向として、自動車供給のグローバル化(世界共通仕様)が求められており、北米のような冬季寒冷地での耐燃料油性、具体的には−40℃以下でのシール性を要求されている。また、環境問題から、欧州を中心にディーゼル燃料の採用が拡大している。
【0004】
これらの要求に対して、当該出願人は−40℃以下でもシール可能なフッ素ゴム組成物を提案しており、またこれを用いたシール部材を提案している(特許文献1)。
しかしながら、近年、特許文献1にて開示した材料を用いたシール部品でも、使用条件等によっては、シール性の点でさらなる改良の余地があった。具体的には燃料を、従来の擬似ガソリンもしくはガソリンから、軽油(ディーゼル燃料)に変更した場合、使用条件によっては、エンジン評価で漏れが発生している。
【0005】
さらに具体的には、上記漏れは極低温地区での自動車での使用を想定した温度負荷試験で発生している。温度負荷試験とは、シール部材を使用個所に取り付けた後、一度、温度を高温に、具体的には120℃前後に放置し、その後、シール評価を実施したい温度まで充分に冷却した後にシール特性を評価するものである。
【0006】
上記試験においては、従来、TR−10が代用指標とされていたが、軽油を燃料として用いた場合には、これが適用できないことが判明した。
【特許文献1】特開2004−217892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、軽油(ディーゼル燃料)を用いた場合でも、高/低温負荷シール性に優れ、−40℃以下でシール可能なフッ素ゴム系シール材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、新たに代用指標となる評価方法の検索を実施した。
具体的には従来のTR−10や低温圧縮永久歪みといった方法ではなく、実機評価に近い方法を採用した。これはOリングを所定の圧縮率で圧縮した後、一度高温:具体的には120〜150℃に所定時間放置し、その後、シール性が要求される温度に急冷させた。この後、充分にOリングが低温となった後に低温下で開放し、このときの圧縮永久歪みの測定を実施した。
【0009】
この結果、この低温下での圧縮永久歪みの値が、従来、高温でのシール限界とされている80%以上となるとシールできなくなることが判明した。シール特性として、80%未満の圧縮永久歪み率が必要であることを見出した。
【0010】
また、上記評価方法で−40℃にて80%以下の圧縮永久歪みを有するには、特許文献1で発明したフッ素ゴムポリマーでは達成することができず、新たな組成を持つフッ素ゴムポリマーが必要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下に記載した事項により特定される。
本発明は、フッ素を64〜69重量%含有し、含臭素化合物および/または含ヨウ素化合物に由来する架橋部位を有し、過酸化物により架橋され得る含フッ素共重合体と、該含フッ素共重合体100重量部に対して、有機過酸化物を0.5〜6重量部と、多官能性モノマーを1〜10重量部とを含有することを特徴とするフッ素ゴム系シール材用組成物および該組成物を硬化してなることを特徴とするフッ素ゴム系シール材であって、上記フッ素ゴム系シール材用組成物中の含フッ素共重合体が、下記(a)〜(e):(a)ビニリデンフルオライド(VDF):30〜70モル%、(b)テトラフルオロエチレン(TFE):10〜30モル%、(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE):10〜20モル%、(d)パーフルオロ(メトキシメチルビニルエーテル)(FMMVE):5〜30モル%、および(e)臭素化および/またはヨウ素化不飽和フルオロ炭化水素:成分(a)〜成分(d)の合計((a)+(b)+(c)+(d)=)100モル%に対して少量、を共重合して得られるフッ素ゴムポリマーである。
【0012】
本発明のフッ素ゴム系シール材は、JIS K6261に規定される低温弾性回復試験(TR試験)におけるTR−10が、−42〜−35℃であることが好ましく、また高/低温負荷圧縮永久歪みが、80%未満であることが好ましい。
【0013】
本発明のフッ素ゴム系シール材用組成物の用途は、燃料油、潤滑油、作動油に代表される油類;芳香族炭化水素;脂肪族炭化水素;アルコール混合油、アルコール;およびそれらの気体からなる群から選択される少なくとも1つを収容した容器における、これら収容物と接触する部位に使用されるシール材形成用であることが好ましい。
【0014】
一方、本発明のフッ素ゴム系シール材の用途は、自動車の燃料タンク、燃料インジェクタ(燃料噴射装置)、燃料ポンプまたは燃料配管における、燃料油、潤滑油、作動油に代表される油類;芳香族炭化水素;脂肪族炭化水素;アルコール混合油およびアルコールのうちから選択される燃料あるいはその気体と接触する部位に使用されることが好ましい。
【0015】
本発明のフッ素ゴム系シール材を、室温20〜25℃で、燃料に168時間浸漬後の体積変化は、20%以下であることが好ましい。
上記燃料は、ガソリン、液化石油ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)、軽油、エタノール、バイオエタノールおよびメタノールからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、従来のシール材と同等の常態物性、圧縮永久歪、低温性(TR−10)、耐燃料油性(体積変化率)、低温シール性(−42℃で使用可能)を有し、しかも、従来のシール材より、さらに高/低温負荷圧縮永久歪に優れ、その結果、製品のO−リングなどとしても、高/低温負荷シール性に優れたフッ素ゴム系シール材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るフッ素ゴム系シール材用組成物およびフッ素ゴム系シール材について具体的に説明する。
<フッ素ゴム系シール材用組成物>
本発明に係るフッ素ゴム系シール材用組成物は、以下に詳述するフッ素ゴムポリマーと
、有機過酸化物と、多官能性モノマーとを含有している。
【0018】
本発明の好ましい態様においては、このシール材用組成物には、さらに、金属化合物(腐食防止剤、受酸剤)、瀝青質微粉末、偏平充填剤等が含まれていてもよい。
<フッ素ゴムポリマー>
本発明で用いられるフッ素ゴムポリマーは、測定・算出法:F19NMR法により求められるフッ素含有量が64〜69重量%、好ましくは64〜66重量%であり、含臭素化合物および/または含ヨウ素化合物に由来する架橋部位を有している。
【0019】
このようなフッ素ゴムポリマー(含フッ素共重合体)は、該共重合体中に
(a)ビニリデンフルオライド(VDF;フッ化ビニリデン)から誘導される成分単位(以下「VDF成分単位」、単に「成分単位」ともいう。他の成分についても同様である。)と、
(b)テトラフルオロエチレン(TFE;四フッ化エチレン)から誘導される成分単位と、
(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE)から誘導される成分単位と、(d)パーフルオロ(メトキシメチルビニルエーテル)(FMMVE)から誘導される成分単位と、
架橋部位用として、(e)臭素化および/またはヨウ素化不飽和フルオロ炭化水素から誘導される成分単位とを有している。
【0020】
このような架橋性のフッ素ゴムポリマー(含フッ素共重合体)を製造するには、
(a)ビニリデンフルオライド(VDF;フッ化ビニリデン)を30〜70モル%、好ましくは40〜65モル%、より好ましくは50〜64モル%の量で、
(b)テトラフルオロエチレン(TFE;四フッ化エチレン)を10〜30モル%、好ましくは12〜28モル%、より好ましくは15〜25モル%量で、
(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE)を10〜20モル%、好ましくは5〜15モル%、より好ましくは5〜10モル%量で、
(d)パーフルオロ(メトキシメチルビニルエーテル)(FMMVE)を5〜30モル%、好ましくは8〜25モル%、より好ましくは10〜20モル%の量で、
また、これらモノマー(a)〜(d)の合計:100モル%に対して、架橋部位用として(e)臭素化および/またはヨウ素化不飽和フルオロ炭化水素モノマーを少量で、例えば、0.01〜3モル%の量で共重合してなるフッ素ゴムポリマーである。
【0021】
なお、含フッ素共重合体中においても、用いられた原料モノマーのモル比で、各成分単位に含まれて存在している。
このフッ素ゴムを形成する際に用いられるフッ素ゴム系シール材用組成物中あるいはフッ素ゴムポリマー中のフッ素含有量が上記範囲にあると、得られるフッ素ゴム系シール材は、耐寒性と耐燃料油性とのバランスが良好となる傾向があり、フッ素ゴム系シール材用組成物中あるいはフッ素ゴムポリマー中のフッ素含有量が上記範囲を下まわるとフッ素ゴム系シール材の耐寒性は良好になるが、耐燃料油性が悪化する傾向があり、また上記範囲を上回るとフッ素ゴム系シール材の耐燃料油性は良好になるが、耐寒性が悪化する傾向がある。また、上記含フッ素共重合体中の各成分単位がそれぞれ、上記量で用いられると、得られるフッ素ゴム系シール材はゴム的な柔軟性を示し、また、充分な耐寒特性、耐燃料油性等にバランス良く優れる傾向があり、特に自動車燃料用フッ素ゴム系シール材などとして好適に使用できる。
【0022】
特に、フッ素ゴムを形成する際に用いられるフッ素ゴム系シール材用組成物中あるいはフッ素ゴムポリマー中のVDF成分単位含量が上記範囲を下まわると得られるフッ素ゴム系シール材は耐寒性、燃料油性とも悪化する傾向があり、また上回ると機械強度が低下す
る傾向があり、また、TFE成分単位含量が上記範囲を上回ると得られるフッ素ゴム系シール材は耐燃料油性が悪化する傾向があり、また下まわると耐寒性が悪化する傾向がある。
【0023】
また、フッ素ゴム系シール材を形成する際に用いられるフッ素ゴム系シール材用組成物中あるいはフッ素ゴムポリマー中のFMVE成分単位含量が上記範囲を上回ると耐寒性が悪化する傾向があり、また下まわると耐燃料油性が悪化する傾向があり、また、FMMVE成分単位含量が特に上記範囲を上回るとフッ素ゴム系シール材の耐寒性が悪化する傾向がある。
【0024】
さらに、架橋部位用として臭素化および/またはヨウ素化不飽和フルオロ炭化水素成分単位は、上記量で用いれば、架橋されることにより適度の架橋度となり、充分な耐寒特性、耐燃料油性等にバランス良く優れるフッ素ゴム(加硫・硬化物)となる傾向がある。
【0025】
上記した臭素化および/またはヨウ素化不飽和フルオロ炭化水素成分単位形成用のモノマーとしては、1−ブロモ−2−ヨード−パーフロロエタン、1−ブロモ−3−ヨード−パーフロロプロパンなどが挙げられる。
【0026】
このフッ素ゴムポリマー中においては、用いられた各モノマーは、その炭素・炭素2重結合部位で2重結合が開裂して単結合のモノマーユニット(重合単位、成分単位などともいう。)となり、隣接するモノマーユニットと互いに結合(連結)しているものと考えられる。そして、得られたフッ素ゴムポリマーでは、用いられた含フッ素単量体由来の含フッ素成分単位が、ランダムあるいは規則的に配列しており、固体または液体状であり、その分子量は、含フッ素共重合体の成形加工性や機械的諸特性等を考慮して適宜決定可能であるが、分子量の指標としての極限粘度[η](測定法:ウベローデ粘度計での35℃における落下時間から求めたもの。)が通常、0.2〜5.0dl/g、好ましくは、0.4〜3.0dl/gであることが成形加工性の点から望ましい。
【0027】
このようなフッ素ゴムポリマーは、常法に準じて製造される。具体的には、特開2006−45566号公報に開示されている製造法を用いることができる。
このようなフッ素ゴムポリマー(未加硫ゴム、未架橋の含フッ素共重合体などともいう。)のムーニー粘度(JIS K6300準拠、ML1+10,121℃)はゴム加工上10〜120、好ましくは20〜80であることが望ましいが、特に制限はない。
【0028】
<有機過酸化物>
有機過酸化物としては、一般にゴムに使用可能なものであれば特に制限なく使用でき、フッ素ゴムポリマー(FKM)100重量部に対して、通常0.5〜6重量部、好ましくは1〜5重量部の量で用いられる。
【0029】
有機過酸化物の配合量が、特に0.5重量部未満では、充分な架橋密度が得られず、また特に6重量部を超えると、発泡により架橋成形物が得られず、得られてもゴム弾性、伸びが低下する傾向がある。
【0030】
有機過酸化物としては、例えば、第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ(第3ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n−ブチル−4,4−ジ(第3ブチルパーオキシ)バレ
レート等が挙げられる。また、市販のものも用いることができ、具体的には、「パーヘキサ25B40」(日本油脂(株)製)等が挙げられる。
【0031】
これら有機過酸化物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
<多官能性モノマー>
多官能性モノマーとしては、一般にゴムに使用可能なものであれば、特に制限なく使用でき、フッ素ゴムポリマー(FKM)100重量部に対して、通常1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部の量で用いられる。
【0032】
多官能性モノマーの配合量がフッ素ゴムポリマー(FKM)100重量部に対して、特に1重量部未満では、充分な架橋密度が得られず、また、特に10重量部を超える量で用いても、発泡により、架橋成形物が得られず、得られても弾性、伸びが低下する傾向がある。
【0033】
多官能性モノマーとしては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N'−m−フェニレンビスマレイミドなどが挙げられる。
【0034】
これら多官能性モノマーは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
<金属化合物>
金属化合物は、腐食防止剤と受酸剤としての機能を有し、該金属化合物としては、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム等が挙げられる。本発明では、これらの金属化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
このような金属化合物は、ゴム系シール材と当接する金属製部材の腐食防止効果などを有しているが、上記した種々の機能・効果を考慮すると、過酸化物架橋可能な(未架橋)フッ素ゴム100重量部に対して、通常2重量部以上、好ましくは5〜15重量部の量で用いられる。
【0036】
このような金属化合物として、上市されているものとしては、例えば、近江化学工業社製の「カルディック」(水酸化カルシウム)、堺化学工業社製の亜鉛華(酸化亜鉛)、協和化学工業社製の「DHTシリーズ」(ハイドロタルサイト)等が挙げられる。
【0037】
<瀝青質微粉末>
瀝青質微粉末としては、石炭を粉砕し、平均粒径φ10μm以下(通常φ1〜10μm)、好ましくは3〜8μmに微粉末化したものを使用でき、必要によりこの瀝青質微粉末を用いる場合には、フッ素ゴムポリマー(FKM)100重量部に対して、通常2〜40重量部、好ましくは5〜30重量部の量で用いられる。この瀝青質微粉末の平均粒径φが上記範囲を超え、特に10μmを超えると、ゴムの破断強度(TB)または破断伸び(EB)が小さく実用レベルの補強性がみられない。
【0038】
また、瀝青質微粉末の配合量が、フッ素ゴムポリマー(FKM)100重量部に対して、特に2重量部未満では、添加効果すなわち瀝青質微粉末を添加することで、シール材の耐熱性が向上し、長寿命化が可能になる効果が乏しく、一方、特に40重量部を超える量で添加すると、得られる配合物(組成物)の粘度が高すぎて、混練や成形に支障をきたす傾向がある。
【0039】
瀝青質微粉末として上市されているものとしては、例えば、「平均粒径6μm、Keystone Filler & Mfg製、Mineral Black 325BA」等が挙げられる。
【0040】
<偏平状充填剤>
偏平状充填剤は、自動車燃料用フッ素ゴム系シール材中にあって、シール材料の燃料遮蔽性の向上に寄与し、燃料の蒸散を一層抑制することが可能になる。
【0041】
偏平充填剤としては、例えば、クレー、マイカ、グラファイト、二硫化モリブデン等が挙げられ、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
これらの偏平充填剤は、平均粒子径φが0.5〜50μm、好ましくは5〜30μmで、アスペクト比が3以上、好ましくは5〜30のものが用いられる。平均粒子径またはアスペクト比が3未満のものを用いると、燃料遮蔽性の向上が見られない。一方、30以上の平均粒子径のものを用いると、実用レベルの補強性が得られない(具体的には、ゴムの破断強度または破断伸びが小さい。)。
【0042】
このような偏平状充填剤は、必要により、上記フッ素ゴム(FKM)100重量部あたり通常、2〜40重量部、好ましくは5〜30重量部の量で用いられる。この偏平状充填剤の配合量が特に2重量部に未満では添加効果である燃料の遮蔽性の向上が見られず、また、特に40重量部を超える量で添加すると、得られるシール材形成用組成物の粘度が上昇し混練できなくなる傾向があり、また、加硫してなるシール材は、非常に硬くなる傾向がある。
【0043】
<その他の配合成分>
ゴム組成物中には、以上の必須成分以外に、ゴムの配合剤として、カーボンブラック、ホワイトカーボンなどの補強剤;上記形状(平均粒径、アスペクト比)の偏平充填剤以外のタルク、クレー、グラファイト、珪酸カルシウム等の充填剤;ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス等の加工助剤;老化防止剤;可塑剤など、ゴム工業で一般的に使用されている配合剤が、必要に応じて適宜添加されて用いられる。これらのうち、カーボンブラックが好ましく、市販のものであってもよい。具体的には、「サーマルカーボンブラックN990(MTカーボン)」(米国Engineered Carbons Inc.製)等が挙げられる。
【0044】
このような配合組成の架橋性含フッ素共重合体組成物を得るには、上記成分を配合し、該組成物が加硫(架橋)されないような温度、圧力条件、例えば、常温、常圧下に、必要により攪拌、混練等すればよい。なお、この攪拌・混練の際には、インターミックス、ニーダ、バンバリーミキサー等の混練機またはオープンロールなどを使用することができる。
【0045】
<架橋(加硫)>
架橋(加硫)成形体であり、特に、自動車燃料と接触する部位でのシールに使用されるフッ素ゴム系シール材に代表される用途に好適に使用されるフッ素ゴム系シール材(単に、シール材ともいう。)を調製するには、圧縮成型、移送成型、射出成型、押出成型、カレンダー成型等の一般のゴム成型法を適宜利用できる。
【0046】
例えば、上記フッ素ゴム系シール材用組成物を、射出成形機、圧縮成形機、加硫プレス等を用いて、通常、150〜200℃で3〜60分間程度加熱(一次加硫)する。さらに、必要に応じて、加熱オーブンなどを用いて、通常、150〜250℃程度で1〜24時間程度加熱(二次加硫)してもよい。なお、上記加硫は、必要により、加圧下に行ってもよく、また上記組成物を、所定の型内に充填して行ってもよい。
【0047】
このような架橋反応においては、架橋性含フッ素共重合体中より臭素またはヨウ素が有機過酸化物により脱離され、その脱離部分に多官能性モノマーが反応・結合して架橋構造が形成されているものと考えられる。
【0048】
フッ素ゴム系シール材用組成物を、厚さ2mmのシート状に成形した場合、このような架橋成形体は、下記(a)〜(c)の常態物性を有していることが望ましい。
(a)JIS K6253に規定のデュロメータ硬さ(試験タイプA)のHs硬度は、好ましくは50〜90、より好ましくは60〜80である。
【0049】
(b)JIS K6251に規定の引張応力は、好ましくは10MPa以上、より好ましくは12MPa以上である。
(c)切断時伸びは,好ましくは100%以上、より好ましくは150%以上である。
【0050】
<フッ素ゴム系シール材>
本発明のフッ素ゴム系シール材は、上述のフッ素ゴム系シール材用組成物を、所定の金型を用いて、160〜180℃にて10〜20分間加熱圧縮することによって架橋・成形させ、さらに、空気循環型オーブンにて230℃で15時間、追加熱処理して得られるものである。
【0051】
このようにして得られるシール材は、架橋成形体であり、耐燃料油性と耐寒性にバランス良く優れ、耐熱性等にも優れているため、その好適な用途としては、燃料インジェクタ(燃料噴射装置、特に電磁弁型燃料噴射装置)、燃料ポンプ、燃料タンク、燃料配管等における、燃料あるいはその気体と接触する部位に使用されるスクィーズパッキン(例:Oリング、Xリング、Dリング、角リング等)その他のパッキン(例:Uパッキン、Vパッ
キン、Lパッキン、Jパッキン等のリップパッキン)、ダイヤフラム、ライニング、ロー
ル、オイルシールなどが挙げられる。
【0052】
シール対象としては、自動車燃料油に限定されず、潤滑油、作動油等の油類の他、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール(例:メタノール、エタノール等)、またはこれらの混合物(例:燃料油Cとアルコールとの任意量比の混合物等)なども包含される。
【0053】
上記フッ素ゴム系シール材は、下記(a)〜(d)の物性を有することが望ましい。
(a)圧縮永久歪み
P−24 Oリング(内径:約23.7mm×線径:3.5mm)状に成形したフッ素ゴム系シール材ついて、JIS K6262に準拠して175℃×70時間経過後の圧縮永久歪みを測定する場合、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。
【0054】
(b)低温弾性回復試験
耐低温性すなわち耐寒性の評価基準である、JIS K6261に規定の低温弾性回復試験(TR試験)において、TR−10が、好ましくは−42〜−35℃、より好ましくは−42〜−40℃ある。
【0055】
(c)高/低温負荷圧縮永久歪み
P−24 Oリング(内径:約23.7mm×線径:3.5mm)を25%圧縮、120〜150℃×10〜20時間放置後、すぐに−40℃または−30℃×2時間冷却し、この後、同温度下で圧縮を開放し30分間経過した後のヘタリ量を測定した場合、高/低温負荷圧縮永久歪みは、冷却温度が−30℃の場合、好ましくは70%未満であり、冷却温度が−40℃の場合、好ましくは80%未満である。
【0056】
(d)耐燃料油性試験
耐燃料油性の評価基準である、JIS K6258(加硫ゴムの浸漬試験方法)に規定された、25℃×168時間燃料中に浸漬した場合におけるシール材の膨潤が、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。なお、該燃料は、ガソリン、液化石油ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)、軽油、エタノール、バイオエタノールおよびメタノールからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0057】
また、上記フッ素ゴム系シール材を、内径:約23.7mm×線径:3.5mmであるP−24 Oリングに成形し、図1に示すシール性試験装置に組み込み、そのシール性能について下記(e)および(f)の試験する場合、漏れがないことが好ましい。
【0058】
なお、下記(e)および(f)の試験において、シール媒体としては、安全性を考慮し、軽油等の燃料油の代わりに窒素ガスを使用した。窒素ガスをシールできれば、燃料油も確実にシールできると考えられる。
【0059】
図1に示す低温シール性試験装置の構造、作用などは、以下のとおりである。
Oリング64とバックアップリング63を、首の細くくびれた胴部円柱状の被シール部材65の首部65Aと頭部66Aの間、および首部65Bと頭部66Bの間にそれぞれ組み込む。組込み時にはエンジンオイルをOリング64の表面に塗布し上部構造部61の孔部72に組付ける。次いで、保持部材67A、67Bおよびその下部に位置する下部構造部69にて、被シール部材65を押さえ、下部構造部69と上部構造部61をボルト62で組付ける。
【0060】
(e)低温シール試験
この状態において、シール媒体をPよりOリング64まで充填させる。図1に示す低温シール性測定用治具80に、バックアップリング63および試験用Oリング64を組み込み、下記試験条件(温度、圧力)で3分間加圧後、常圧に戻し、試験時と同じ温度で1時間放置した後に、媒体の漏れ(シール媒体に外部より所定圧力を掛けた際に、漏れが発生した時には孔部72を介して隙間68へ漏れが生じる。)を目視により確認する。なお、Oリング64組み込み時に、エンジンオイルを、試料の表面に塗布した。
【0061】
試験条件:
(a)試験用Oリング:内径7.5mm×線径5.5mm。
(b)温度:−42℃。
【0062】
(c)圧力:2.0MPa。
(d)圧力媒体:Fuel−C(燃料油C)。
(e)圧縮率:18%。
【0063】
(f)高/低温負荷シール試験
図1に示す低温シール性測定用治具80に、バックアップリング63および試験用Oリング64を組み込み、120℃×70時間の後、−40℃×2時間で放置した。該治具80を常温に戻し、下記試験条件(温度、圧力)で3分間加圧後、試験時と同じ温度で1時間放置した後に、媒体の漏れ(シール媒体に外部より所定圧力を掛けた際に、漏れが発生した時には孔部72を介して隙間68へ漏れが生じる。)を目視により確認する。なお、Oリング64組み込み時に、エンジンオイルを、試料の表面に塗布した。
【0064】
試験条件:
(a)試験用Oリング:内径7.5mm×線径5.5mm。
(b)温度:−38℃、−40℃および−42℃。
【0065】
(c)圧力:2.0MPa。
(d)圧力媒体:Fuel−C(燃料油C)。
(e)圧縮率:18%。
【実施例】
【0066】
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、フッ素ゴム系シール材用組成物を硬化した、種々の形状を有する架橋成形体の材料としての物性、およびP−24 Oリング(内径:約23.7mm×線径:3.5mm)の形状を有する製品としての物性を以下のように評価した。
【0067】
<材料物性評価>
(1)常態物性
2mmシート状の架橋成形体について、Hs硬度(JIS K6253に規定のデュロメータ硬さ、試験タイプA)、JIS K6251に規定の引張応力(MPa)および切断時伸び(%)を測定する。
【0068】
(2)圧縮永久歪み
P−24 Oリング(内径:約23.7mm×線径:3.5mm)状の架橋成形体について、JIS K6262に準拠して175℃において70時間経過後の圧縮永久歪み(%)を測定する。
【0069】
(3)低温弾性回復試験
P−24 Oリング(内径:約23.7mm×線径:3.5mm)状の架橋成形体について、JIS K6261に規定のTR試験におけるTR−10(℃)を測定する。
【0070】
(4)高/低温負荷圧縮永久歪み
JIS K6262に準拠して、P−24 Oリング(内径:約23.7mm×線径:3.5mm)状の架橋成型体を25%圧縮し、120℃で15時間放置後、すぐに−30℃または−40℃で2時間冷却する。この後、同温度下で開放、30分間放置後のP−24 Oリングを測定し、圧縮永久歪み(%)を算出する。
【0071】
(5)耐燃料油性試験
JIS K6258(加硫ゴムの浸漬試験方法)に準拠し、市販のレギュラーガソリン(A)または市販のディーゼル燃料(軽油)(B)に常温(20〜25℃)で浸漬した状態で168時間経過後の体積を測定し、体積変化率(%)を算出する。
【0072】
<製品評価>
下記実施例および比較例で得られたOリングについて、図1に示すシール性試験装置に組み込み、そのシール性能を試験した。シール媒体としては、安全性を考慮し、軽油等の燃料油の代わりに窒素ガスを使用した。窒素ガスをシールできれば、燃料油も確実にシールできると考えられる。
【0073】
図1に示す低温シール性試験装置の構造、作用などは、以下のとおりである。
Oリング64とバックアップリング63を、首の細くくびれた胴部円柱状の被シール部材65の首部65Aと頭部66Aの間、および首部65Bと頭部66Bの間にそれぞれ組み込んだ。組込み時にはエンジンオイルをOリング64の表面に塗布し上部構造部61の孔部72に組付けた。次いで、保持部材67A、67Bおよびその下部に位置する下部構造部69にて、被シール部材65を押さえ、下部構造部69と上部構造部61をボルト62で組付けた。
【0074】
(1)低温シール試験
この状態において、シール媒体をPよりOリング64まで充填させた。図1に示す低温シール性測定用治具80に、バックアップリング63および試験用Oリング64を組み込み、下記試験条件(温度、圧力)で3分間加圧後、常圧に戻し、試験時と同じ温度で1時間放置した後に、媒体の漏れ(シール媒体に外部より所定圧力を掛けた際に、漏れが発生した時には孔部72を介して隙間68へ漏れが生じる。)を目視により確認する。なお、Oリング64組み込み時に、エンジンオイルを、試料の表面に塗布した。
【0075】
下記表2中、「○」は「漏れなし」を示し、表中の圧力は、燃料油が漏れ始めたときの圧力(MPa)を示す。
試験条件:
(a)試験用Oリング:内径7.5mm×線径5.5mm。
【0076】
(b)温度:−42℃。
(c)圧力:2.0MPa。
(d)圧力媒体:Fuel−C(燃料油C)。
【0077】
(e)圧縮率:18%。
(2)高/低温負荷シール試験
図1に示す低温シール性測定用治具80に、バックアップリング63および試験用Oリング64を組み込み、120℃×70時間の後、−40℃×2時間で放置した。該治具80を常温に戻し、下記試験条件(温度、圧力)で3分間加圧後、試験時と同じ温度で1時間放置した後に、媒体の漏れ(シール媒体に外部より所定圧力を掛けた際に、漏れが発生した時には孔部72を介して隙間68へ漏れが生じる。)を目視により確認する。なお、Oリング64組み込み時に、エンジンオイルを、試料の表面に塗布した。
【0078】
下記表2中、「○」は「漏れなし」を示し、表中の圧力は、燃料油が漏れ始めたときの圧力(MPa)を示す。
試験条件:
(a)試験用Oリング:内径7.5mm×線径5.5mm。
【0079】
(b)温度:−38℃、−40℃および−42℃。
(c)圧力:2.0MPa。
(d)圧力媒体:Fuel−C(燃料油C)。
【0080】
(e)圧縮率:18%。
[実施例1]
フッ素ゴムポリマーとして、TR−10が−35℃以下であり、過酸化物によって架橋され得る「FKM−1」を用いた。
【0081】
「FKM−1」の製造時の供給原料モル比は、(a)ビニリデンフルオライド(VDF):31.4モル%、(b)テトラフルオロエチレン(TFE):27.3モル%、(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE):14.1モル%および(d)パー
フルオロ(メトキシメチルビニルエーテル)(FMMVE):27.2モル%であり、(e)架橋部位用としてヨウ素化不飽和フロロ炭化水素を約0.5モル%の量で共重合して得られる含フッ素共重合体(未架橋フッ素ゴム)(ムーニー粘度:JIS K6300準拠ML1+4120℃:45)である。
【0082】
FKM−1を100重量部、充填剤としてカーボンブラック(米国Engineere
d Carbons Inc.製「サーマルカーボンブラックN990(MTカーボン)」)を10重量部、有機過酸化物として「パーヘキサ25B40」(日本油脂(株)製)を3重量部および多官能性モノマーとしてトリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製「タイクM60」)を3重量部それぞれニーダに投入し20分間混練した後、オープンロールにてまとめた。架橋成形体は2mmシートまたは所定のOリング形状の金型を用い、160〜180℃にて10〜20分間加熱圧縮することで成形した。さらに、空気循環型オーブンにて230℃で15時間、追加熱処理した。
【0083】
フッ素ゴム系シール材用組成物の組成を表1に示す。
また、架橋成形体およびフッ素ゴム系シール材の各物性値をまとめて表2に示す。
[実施例2]
実施例1において、充填剤としてのカーボンブラックを40重量部に変更した以外は、実施例1と同様に架橋成形体およびフッ素ゴム系シール材を製造した。
【0084】
フッ素ゴム系シール材用組成物の組成を表1に示す。
また、架橋成形体およびフッ素ゴム系シール材の各物性値をまとめて表2に示す。
[比較例1]
実施例1において、含フッ素共重合体としてFKM−1の代わりに、ダイオネン(株)製「LTFE6400X」を用いた以外は、実施例1と同様に架橋成形体を製造した。
【0085】
組成物の組成を表1に示す。
なお、「LTFE6400X」は、TR−10が−40℃を有し、共重合体成分単位として、VDF単位、TFE単位およびパーフルオロ(エトキシエトキシメチルエーテル)単位を含有するものである。
【0086】
また、架橋成形体の各物性値をまとめて表2に示す。
[比較例2]
比較例1において、充填剤としてのカーボンブラックを45重量部に変更した以外は、比較例1と同様に架橋成形体を製造した。
【0087】
組成物の組成を表1に示す。
また、架橋成形体の各物性値をまとめて表2に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

従来用いていた低温シール試験では、実施例と比較例とでは有意差を見出せなかった。しかしながら、高低温負荷シール試験においては、実施例のシール特性が従来のものに比べて優れており、高/低温負荷圧縮永久歪み試験の結果と相関が取れていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上詳述したことから明らかなように、本発明のフッ素ゴム系シール材は、耐熱性、耐寒性、耐燃料油性に優れ、自動車燃料と接触するような部位で用いられるシール材として好適である。また本発明によれば、このようなフッ素ゴム系シール材が得られるようなフッ素ゴム系シール材用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る自動車燃料用フッ素ゴム系シール材などをインジェクタ用Oリングとして用いた低温シール試験の説明図である。
【符号の説明】
【0092】
61・・・上部構造部
62・・・ボルト
63・・・バックアップリング
64・・・Oリング
65・・・被シール部材
65A・・被シール部材の首部
65B・・被シール部材の首部
66A・・被シール部材の頭部
66B・・被シール部材の頭部
67A・・保持部材
67B・・保持部材
68・・・隙間
69・・・下部構造部
72・・・孔部
80・・・低温シール性測定用治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素を64〜69重量%含有し、含臭素化合物および/または含ヨウ素化合物に由来する架橋部位を有し、過酸化物により架橋され得る含フッ素共重合体と、
該含フッ素共重合体100重量部に対して、
有機過酸化物を0.5〜6重量部と、
多官能性モノマーを1〜10重量部とを含有するフッ素ゴム系シール材用組成物
を架橋してなるフッ素ゴム系シール材であって、
上記フッ素ゴム系シール材用組成物中の含フッ素共重合体が、下記(a)〜(e):
(a)ビニリデンフルオライド(VDF):30〜70モル%、
(b)テトラフルオロエチレン(TFE):10〜30モル%、
(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE):10〜20モル%、
(d)パーフルオロ(メトキシメチルビニルエーテル)(FMMVE):5〜30モル%、および
(e)臭素化および/またはヨウ素化不飽和フルオロ炭化水素:成分(a)〜成分(d)の合計((a)+(b)+(c)+(d)=)100モル%に対して少量、
を共重合して得られるフッ素ゴムポリマーであることを特徴とするフッ素ゴム系シール材。
【請求項2】
フッ素を64〜69重量%含有し、含臭素化合物および/または含ヨウ素化合物に由来する架橋部位を有し、過酸化物により架橋され得る含フッ素共重合体と、
該含フッ素共重合体100重量部に対して、
有機過酸化物を0.5〜6重量部と、
多官能性モノマーを1〜10重量部とを含有するフッ素ゴム系シール材用組成物であって、
上記フッ素ゴム系シール材用組成物中の含フッ素共重合体が、下記(a)〜(e):
(a)ビニリデンフルオライド(VDF):30〜70モル%、
(b)テトラフルオロエチレン(TFE):10〜30モル%、
(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE):10〜20モル%、
(d)パーフルオロ(メトキシメチルビニルエーテル)(FMMVE):5〜30モル%、および
(e)臭素化および/またはヨウ素化不飽和フルオロ炭化水素:成分(a)〜成分(d)の合計((a)+(b)+(c)+(d)=)100モル%に対して少量
を含有することを特徴とするフッ素ゴム系シール材用組成物。
【請求項3】
JIS K6261に規定される低温弾性回復試験(TR試験)におけるTR−10が、−42℃〜−35℃であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素ゴム系シール材。
【請求項4】
高/低温負荷圧縮永久歪みが、80%未満であることを特徴とする請求項1または3に記載のフッ素ゴム系シール材。
【請求項5】
上記フッ素ゴム系シール材用組成物の用途が、燃料油、潤滑油、作動油に代表される油類;芳香族炭化水素;脂肪族炭化水素;アルコール混合油、アルコール;およびそれらの気体からなる群から選択される少なくとも1つを収容した容器における、これら収容物と接触する部位に使用されるシール材形成用であることを特徴とする請求項2に記載のフッ素ゴム系シール材用組成物。
【請求項6】
上記フッ素ゴム系シール材の用途が、自動車の燃料タンク、燃料インジェクタ(燃料噴射装置)、燃料ポンプまたは燃料配管における、燃料油、潤滑油、作動油に代表される油類;芳香族炭化水素;脂肪族炭化水素;アルコール混合油およびアルコールのうちから選
択される燃料あるいはその気体と接触する部位に使用される請求項1、3および4のいずれかに記載のフッ素ゴム系シール材。
【請求項7】
上記フッ素ゴム系シール材を、室温20〜25℃で、燃料に168時間浸漬後の体積変化が、20%以下であることを特徴とする請求項1、3、4および6のいずれかに記載のフッ素ゴム系シール材。
【請求項8】
上記燃料が、ガソリン、液化石油ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)、軽油、エタノール、バイオエタノールおよびメタノールからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項7に記載のフッ素ゴム系シール材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−256418(P2009−256418A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104810(P2008−104810)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】