説明

黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物、カラーフィルタ及び液晶表示装置

【課題】ブラックマトリクスの遮光性を向上させながらも、パターン形状の悪化がなく高精細化が可能な黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物と、それを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】(イ)カーボンブラック、(ロ)バインダー樹脂、(ハ)エチレン性不飽和結合を有する化合物、(ニ)光重合開始剤、(ホ)溶剤からなる黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物において、固形分中における(イ)カーボンブラック含有量aと(ロ)バインダー樹脂含有量bの割合が、b/a=0.50〜0.75の範囲となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル、及びカラービデオカメラ等に使用されるカラーフィルタに使用可能な黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物、それを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物は、紫外線あるいは電子線等を照射することにより重合硬化させることができるので、例えば光硬化性インキ、感光性印刷版、プリント配線板、各種フォトレジスト、及びカラーフィルタ等の用途に使用されている。
【0003】
カラーフィルタの微細パターンを形成する方法として、感光性樹脂組成物を用いることが知られている。感光性組樹脂成物を用いた微細パターン形成方法としては、感光性樹脂組成物をガラス基板などの支持体に塗布し、露光、現像し、パターン形成を行う方法が普及している。この場合、現像工程でパターンを形成させるため、現像液としては主にアルカリ性のものが多く、感光性樹脂組成物はアルカリ現像液などに可溶である必要がある。
【0004】
このような着色アルカリ現像型感光性樹脂組成物として、特許文献1には、モノマーおよび/または感光性樹脂と顔料と特定の顔料分散剤とを含有する、耐熱性および耐光性に優れ色純度の高いカラーフィルタ用感光性着色組成物が開示されている。また、特許文献2には、緑色画素部にハロゲン化金属フタロシアニンと黄色顔料を含有した、色純度と色濃度が高く透明性に優れたカラーフィルタ用顔料分散組成物が開示されている。
【0005】
近年、液晶表示装置において、さらなる軽量化、薄型化が求められており、カラーフィルタにおいては、十分な開口率で、十分な色純度及び高コントラストを維持しつつ、微細なパターンを有する着色層及びブラックマトリクスを精度良くパターン加工し得る感光性樹脂組成物が望まれている。また、液晶表示装置のバックライトの輝度が向上し、液晶表示装置の額縁部からバックライトの光が漏れるという課題がある。ブラックマトリクスとしては、そのような光漏れを防ぐべく、遮光性向上が求められている。
【0006】
ブラックマトリクスの遮光性を向上させて段差(厚み)を低くする目的で、組成物中に含まれるカーボンブラックなどの遮光成分の含有量を多くする試みがなされている。しかしながら、遮光成分の含有量を多くする方法においては、ガラス基板に対する密着性の低下および感度低下に加え、現像性、解像性、ブラックマトリクスのパターン形状および感光性樹脂組成物の安定性に問題があった。すなわち、経時での感度変化、現像性変化、解像性変化およびパターン形状変化など、特性が悪化する問題があった。
【0007】
また、遮光性向上の観点で、特許文献3には、互いにアグリゲート径の異なる2種以上のカーボンブラックを含有した、高い光学濃度(Optical Density=OD値)を与え、現像特性の優れたカーボンブラック含有樹脂組成物に用いるカラーフィルタ用カーボンブラック分散液が提案されている。更にまた、特許文献4には、薄膜でもOD値が高く、ニュートラルな透過光および反射光を有する樹脂ブラックマトリクスを与える、2種類以上の遮光材と1種類以上の樹脂を必須成分として含有する黒色被膜組成物が開示されている。しかしながら、これまで、高色純度化、高遮光性の検討では顔料種等の検討はされているが、組成物の観点での検討は少なかった。
【0008】
カラーフィルタの色純度及び遮光性向上は着色剤濃度を上げることで達成できるが、上記した、従来公知の着色感光性樹脂組成物では、着色剤の濃度を上げると、画素のパター
ン形状がオーバーハングと呼ばれる逆テーパー形状となり、形状が著しく悪化し、次工程での塗工ムラが発生し、その結果、品質や歩留まりの低下を招いていた。また着色剤濃度を上げずに膜厚を厚くすることによっても色純度及び遮光性を向上することは可能だが、赤(R)、緑(G)、青(B)のパターン形成後、研磨や保護膜等、平坦化工程が必要となり、コストアップの原因となっていた。
【特許文献1】特開平2001−51112号公報
【特許文献2】特開平2003−161828号公報
【特許文献3】特開2004−251946号公報
【特許文献4】特開2005−75965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
遮光性を向上させた黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物において、露光・現像工程を経てパターン形成させる場合に、パターン形状の悪化や高精細化が困難であるということがある。本発明は、上記した事情を鑑みてなされたもので、ブラックマトリクスの遮光性を向上させながらも、パターン形状の悪化がなく高精細化が可能な黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物と、それを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明らは、黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物のカーボンブラック及びバインダー樹脂の含有量に着目し、鋭意研究開発を行った。その結果、固形分中におけるカーボンブラック含有量とバインダー樹脂含有量の割合が一定の範囲内であれば、遮光性が高く、高精細かつ形状良好なパターンが形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、(イ)カーボンブラック、(ロ)バインダー樹脂、(ハ)エチレン性不飽和結合を有する化合物、(ニ)光重合開始剤、(ホ)溶剤からなる黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物において、固形分中における(イ)カーボンブラック含有量(質量%)aと(ロ)バインダー樹脂含有量(質量%)bの割合が、b/a=0.50〜0.75の範囲となることを特徴とする黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物である。
【0012】
また本発明の請求項2に係る発明は、(イ)カーボンブラックの含有量が、黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物中の全固形分質量に対して、35質量%〜55質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載する黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物である。
【0013】
また本発明の請求項3に係る発明は、(ハ)エチレン性不飽和結合を有する化合物1分子中の、エチレン性不飽和二重結合の数xが3〜6の範囲であることを特徴とする請求項1に記載する黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物である。
【0014】
また本発明の請求項4に係る発明は、(ニ)光重合開始剤が、オキシム系光重合開始剤、アセトケトン系光重合開始剤から選ばれる少なくとも一種の光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1に記載する黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物である。
【0015】
次に、本発明の請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載する黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を用いて、透明基板上にパターン形成して作製したブラッ
クマトリクスの膜厚1μm相当の光学濃度(OD値)が、3.3〜5.5の範囲であることを特徴とするカラーフィルタである。
【0016】
次に、本発明の請求項6に係る発明は、対向する一組の基板とそれに扶持される液晶層とを備えた液晶パネルを用いた液晶表示装置において、当該一組の基板の一方の基板が請求項5に記載するカラーフィルタであることを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物は、(イ)カーボンブラック含有量aと(ロ)バインダー樹脂含有量bの割合b/aが0.5〜0.75の範囲であり、(イ)カーボンブラックの含有量が黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物中の全固形分質量に対して、35質量%〜55質量%の範囲であることで、遮光性が高く、安定性およびガラス基板に対する密着性に優れる。また、エチレン性不飽和二重結合の数xが3〜6であることで、該黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を透明基板上に塗布、乾燥、露光、現像工程により形成するカラーフィルタ用ブラックマトリクスを、高い密着性で、かつ、良好な断面形状にて提供できる。さらに、光重合開始剤にオキシム系光重合開始剤、アセトケトン系光重合開始剤から選ばれる少なくとも一種を用いることにより、さらにパターン形状や直線性が良好化する。そのため、本発明の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を用いてパターン形成し作製することで、高い遮光性と、高い密着性・良好な断面形状を兼ね備えたブラックマトリクスを構成要素とするカラーフィルタとそれを用いた液晶表示装置を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物、及びこれを用いたカラーフィルタを、一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0019】
まず、黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を構成する材料から説明する。本発明の黒色感光性組成物は、主要な材料として(イ)カーボンブラック、(ロ)バインダー樹脂、(ハ)エチレン性不飽和結合を有する化合物、(ニ)光重合開始剤、(ホ)溶剤から構成される。
【0020】
ブラックマトリクスに遮光性を付与する色材としては、(イ)カーボンブラック顔料が最適である。カーボンブラックとしては具体的には、三菱化学社製のカーボンブラック#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、MCF88、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA220、IL30B、IL31B、IL7B、IL11B、IL52B、#4000、#4010、#55、#52、#50、#47、#45、#44、#40、#33、#32、#30、#20、#10、#5、CF9、#3050、#3150、#3250、#3750、#3950、ダイヤブラックA、ダイヤブラックN220M、ダイヤブラックN234、ダイヤブラックI、ダイヤブラックLI、ダイヤブラックII、ダイヤブラック339、ダイヤブラックSH、ダイヤブラックSHA、ダイヤブラックLH、ダイヤブラックH、ダイヤブラックHA、ダイヤブラックSF、ダイヤブラックN550M、ダイヤブラックE、ダイヤブラックG、ダイヤブラックR、ダイヤブラックN760M、ダイヤブラックLR。キャンカーブ社製のカーボンブラックサーマックスN990、N991、N907、N908、N990、N991、N908。旭カーボン社製のカーボンブラック旭#80、旭#70、旭#70L、旭F−200、旭#66、旭#66HN、旭#60H、旭#60U、旭#60、旭#55、旭#50H、旭#51、旭#50U、旭#50、旭#35、旭#15、アサヒサーマル、デグサ社製のカーボンブラックColorBlack Fw200、ColorBlack Fw2、ColorBlack Fw2V、ColorBlack Fw1、ColorBlack Fw18、ColorBlackS170、ColorBack S160、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、SpecialBlack4A、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140V等が挙げられる。
【0021】
遮光材料として、上記の無機顔料であるカーボンブラック顔料に、補助顔料として有機顔料を加えても良い。有機顔料は黒色顔料の補色を呈するものを適切に選択して加えることにより次の様な効果が得られる。例えば、ある種のカーボンブラックは赤みがかった黒色を呈する。したがって、このカーボンブラックに、補助顔料として赤色の補色である青色を呈する有機顔料を加えることにより、当該カーボンブラックの赤みが消え全体としてより好ましい黒色を呈する。最適な色味の黒を得るためには、青色だけでなく他の有機顔料も含めて配合することが可能である。
【0022】
有機顔料の具体例をカラーインデックス<C.I.>ナンバーで示す。
・Pigment Blue:
<C.I>1,1:2,1:x,9:x,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:5,15:6,16,24,24:x,56,60,61,62
・Pigment Green:
<C.I>1,1:x,2,2:x,4,7,10,36
・Pigment Orange
<C.I>2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,59,60,61,62,64
・Pigment Red
<C.I>1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:3,81:x,83,88,90,112,119,122,123,144,146,149,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,224,226,254
・Pigment Violet:
<C.I>1,1:x,3,3:3,3:x,5:1,19,23,27,32,42
・Pigment Yellow
<C.I>1,3,12,13,14,16,17,24,55,60,65,73,74,81,83,93,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,156,175
カーボンブラックを含め、これらの顔料はそのままの状態では顔料同士が凝集しているため、分散処理が必要である。顔料に分散剤及び溶剤を加えてミルベースをつくり、それをボールミル、サンドミル、ビーズミル、3本ロール、ペイントシェーカー、超音波、バブルホモジナイザーなどの方法により分散することができる。これらの処理方法は2つ以上組み合わせることも可能である。分散剤には樹脂あるいは公知の分散剤が使用可能である。
【0023】
本発明において適用される(ロ)バインダー樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ
(メタ)アクリレート等の通常の光重合可能な樹脂やカルド樹脂も使用できる。
【0024】
本発明において、黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物中の固形分中における(イ)カーボンブラック含有量aと(ロ)バインダー樹脂含有量量bの割合は、b/a=0.50〜0.75であることが好ましく、より好ましくはb/a=0.50〜0.65の範囲である。b/aが0.50未満の場合、樹脂量が少ないことにより現像密着性の低下、形状の悪化が起こりやすい。一方、b/aが0.75を超える場合には、顔料含有量に対する樹脂量が多く、密着性は高いものの、パターンの高精細化が難しい。
【0025】
本発明の(イ)カーボンブラックの含有量としては、黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物の全固形分中の35質量%〜55質量%の範囲で使用することが良い。含有量が33質量%未満では、ブラックマトリクスとしての光学濃度(OD値)が小さくなり、パネル化した際に光漏れなどが発生し、パネルコントラストを低減させる。また、55質量%を超えると、黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物中の(ロ)バインダー樹脂、(ハ)エチレン性不飽和結合を有する化合物、(ニ)光重合開始剤などの量が少なくなるため、感光性樹脂としての感光性機能が低下してしまう。
【0026】
本発明において適用される(ハ)エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類があげられる。多官能アクリレート及び/又は多官能メタクリレートを使用する場合は、単独でも、あるいは二種類以上を混合して使用しても良い。
【0027】
ここで、エチレン性不飽和結合を有する化合物1分子中のエチレン性不飽和二重結合の数xは、3〜6であることが好ましい。二重結合の数が3個より小さいと、化合物の分子量が小さくなり、現像密着性が低下する。一方、二重結合の数が6個を超えると、硬化性が向上することにより、残膜率が高くなり、見かけのOD値が低下する。さらに、現像性が低下することにより、パターンのエッジ部分の形状が悪化する。
【0028】
本発明において適用される(ニ)光重合開始剤としては、オキシム系光重合開始剤、アセトケトン系光重合開始剤から選ばれる少なくとも一種を用いることが望ましい。このことによって、さらにパターン形状や直線性が良好化することが確認できる。
【0029】
オキシム系化合物としては、例えば、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−ビシクロヘプチル−1−オンオキシム−0−アセタート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−アダマンチルメタン−1−オンオキシム−0−ベンゾアート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−アダマンチルメタン−1−オンオキシム−0−アセタート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−テトラヒドロフラニルメタン−1−オンオキシム−0−ベンゾアート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−テトラヒドロフラニルメタン−1−オンオキシム−0−アセタート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−チオフェニルメタン−1−オンオキシム−0−ベンゾアート、 1−1[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−チオフェニルメタン−1−オンオキシム−0−アセタート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−モロフォニルメタン−1−オンオキシム−0−ベンゾアート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−モロフォニルメタン−1−オンオキシム−0−アセタート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−0−ビシクロヘプタンカルボキシレート、1−[9エチル−6(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−0−トリシクロデカンカルボシキレート、1−[9エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−0−アダマンタンカルボシキレート、1,2−オクタンジエン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(0−ベンゾイルオキシム)](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 製品名イルガキュアOXE01)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 製品名イルガキュアOXE02)などが挙げられる。
【0030】
アセトケトン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オンのオリゴマーなどが挙げられる。特に2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、チバスペシャリティケミカルズ(株)社製:製品名イルガキュア369を用いることが望ましい。
【0031】
(ニ)光重合開始剤としては、上述のオキシム系、アセトケトン系化合物のうち少なくとも1種類の光重合開始剤を使用するのが良いが、エチレン性不飽和結合を有し付加重合可能な化合物の重合を開始させうる化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、トリアジン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0032】
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、1−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(ピプロニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。また、ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4‘−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4‘−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0033】
本発明の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物は、(ニ)光重合開始剤として上述の少なくとも一種もしくは二種の化合物を含有することで、極めてわずかな照射量の光によって効率的に活性化することができる。これは、電子バンドスペクトルの異なる化合物が共存することで、光重合開始剤が高い感度を有する光の正味の波長領域を広げるか、もしくは少なくとも二種の化合物が相互作用することによる。こうして黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物の感度や現像マージンをさらに高めることで、ブラックマトリクスのパターンを、直線性が高く、ハガレや残さのない良好な形態にすることがさらに容易となる。
【0034】
(ホ)溶剤としては、メタノール、エタノール、エチルセロソルブ、エチルセロソルプアセテート、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ジグライム、シクロヘキサノン、エチルベンゼン、キシレン、酢酸イソアミル、酢酸nアミル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール、トリエチリングリコールモノメチルエーテル、トリエチリングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、液体ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エステル、及びエチルエトキシプロピオネートなどが挙げられ、これらを単独で、あるいは二種以上混合して使用することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種の添加剤等を配合することができる。
【0035】
以下に、フォトリソグラフィー法を用いて、本発明の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物をブラックマトリクスに適用したカラーフィルタの製造方法の一例を説明する。
【0036】
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を断面で説明する概略図である。基本的に、例えばガラス等の透明基板1上に、画素領域と画素領域の境界に位置する画素間部位にはブラックマトリクス2が設けられ、画素領域のそれぞれには、通常光の三原色に相当する赤色(R)3,緑色(G)4,青色(B)5の三色の着色画素を配列している。
【0037】
透明基板としてはアルミノホウケイ酸ガラス等ガラス基板が好ましく使用されるが、その他の基板としては、シリコン基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、芳香族ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板等の、可視光線の透過性があり、表面が平坦な基板などを用いてもよい。
【0038】
まず、色材にカーボンブラックを用いた黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製し、例えば、スピンコート法等で透明基板上に塗布した後、減圧乾燥して溶剤などの揮発成分を除去し、必要に応じて加熱、たとえば100℃で3分間加熱して(プリベーク)、ブラックマトリクス層を形成する。次いで、冷却後、このブラックマトリクス層に所定のパターンのフォトマスクを介して、光源として例えば超高圧水銀ランプを用いて活性エネルギー線を照射し露光する。その後、未露光部を、アルカリ現像液、例えば、2.5%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、よく水洗し、更に水洗乾燥する。現像後、例えば230℃で60分間加熱処理を行い、本硬化(ポストベーク)する。
【0039】
形成されたブラックマトリクスの光学濃度(OD値)は3.3〜5.5の範囲で使用することが好ましい。3.3未満では、液晶ディスプレイのブラックマトリックスに用いた場合に、十分な表示コントラストを得ることができず、バックライトの光が漏れる。また5.5を超えると十分な遮光性は得られるが、顔料濃度が高くなり微細パターンを形成する際のマージンが狭くなる問題がある。
【0040】
また、カラーフィルタの平坦性を良好化させる手段として、形成されたブラックマトリクスと着色層との重畳された部分の段差を低減させることが必要である。ブラックマトリクスの形状としては、パターン形状の傾斜部の形状がテーパー状になることが最適である。具体的には、テーパー角度が40〜85°になることが好ましい。
【0041】
次いで、色材に各着色画素に対応した有機顔料を用いた着色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製する。まず、予めブラックマトリクスパターン2が形成された透明基板1上に、赤色感光性樹脂を、スピンコート法等で塗布した後、減圧乾燥して溶剤などの揮発成分を除去し、必要に応じて加熱、たとえば100℃で3分間加熱して(プリベーク)、赤色感光性樹脂層を形成する。次いで、冷却後、この赤色感光性樹脂層に所定のパターンのフォトマスクを介して、光源として例えば超高圧水銀ランプを用いて活性エネルギー線を照射し露光する。
【0042】
その後、未露光部を、アルカリ現像液、例えば、2.5%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、よく水洗し、更に水洗乾燥する。現像後、例えば230℃で60分間加熱処理を行い、本硬化(ポストベーク)する。このようにして、ブラックマトリクスパターン2が形成された透明基板1上に、赤色(R)着色層3を得る。これを所望の色数の画素部が形成されるまで繰り返して着色層のパターン加工を行うことにより、例えば緑色感光性樹脂組成物を用いてパターン加工された緑色(G)着色層4を、青色感光性樹脂組成物を用いてパターン加工された青色(B)着色層5を得る。このようにして、本発明のカラーフィルタを得ることができる。
【0043】
ここで、ブラックマトリクスと着色層との重畳幅が2.0〜6.0μmの範囲内であることが望ましい。2.0μm未満の重畳幅であると、露光機のアライメント精度からブラックマトリクスと着色層の重畳するところがない、即ちブラックマトリクスと着色層の間に白抜けが発生する可能性がある。また、6.0μmを超えると、ブラックマトリクスと着色層の重畳で生じる段差が高くなり、カラーフィルタとしての平坦性を維持することができなくなる。
【0044】
ここで、着色及び/又は黒色アルカリ現像型感光性組成物の塗布方法としては、例えばスプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、及びカーテンコート法等の公知の方法を使用することができる。
【0045】
露光に用いられる活性光の光源としては、紫外線電子線等波長300〜450nmの光を用いることができ、例えば、超高圧水銀、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアーク等から照射される光を用いることができる。
【0046】
アルカリ現像液のアルカリ成分としては、例えば水酸化ナトリウム、及び炭酸ナトリウム等を使用することができる。また、この現像液には必要に応じて、消泡剤や界面活性剤を添加することができる。
【0047】
以下に、本発明の具体的実施例、および比較例について説明する。
【実施例1】
【0048】
フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度:55.4質量%、新日鐵化学(株)社製 V259 ME)3.2gに対し、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(x=6)1.0g、光重合開始剤として、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−、1−(O−アセチルオキシム)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア OXE02)1.4g、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア Irg369)1.1g、溶剤として、シクロヘキサノン35.5g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート29.3g、添加剤にアデカポリエーテルG−400(商品名、(株)ADEKA社製)を0.7g加え、感光性樹脂組成物を得た。さらに、遮光剤としてカーボンブラック分散液(御国色素社製 TPBK−234C)27.6gを加えてよく撹拌し、顔料濃度48質量%である黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物100gを得た。
【0049】
得られた黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物について、以下の手順で評価を行った。0.6mm厚のガラス基板上に、上記黒色アルカリ現像性感光性樹脂組成物をスピンコート(500r.p.m、50秒間)し減圧乾燥させた。100℃で3分間プリベークを行った後冷却し、所定のマスクを用い、光源として超高圧水銀ランプを用いて露光後、2.5質量%炭酸ナトリウム溶液に25℃で30秒間浸漬して現像し、良く水洗した。水洗乾燥後、230℃で1時間ベークしてブラックマトリクス(線幅30μm、厚み1.1μm)を形成した。
【0050】
得られたブラックマトリクスパターンについて、以下のOD値、感度、現像密着性、断面形状の評価を行った。その結果を表1に示す。なお、後述する実施例2〜4及び比較例1〜3で得られた黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物についても、全て同じ手順で評価を行った。また、その結果を表1にあわせて示す。
【0051】
<OD値>
本発明のブラックマトリクスの遮光性の指標となる光学濃度(OD値)については、マクベスD―200IIを用いて測定を行った。得られたOD値を、加熱処理後の塗膜の厚み(上記実施例1では1.1μm)で割り、1μmあたりのOD値を算出した。表1に示した光学濃度は、この1μm膜厚相当の光学濃度(OD値)である。
【0052】
<感度>
露光時に、露光量が100mJ/cm2で十分だったものをc、100mJ/cm2では不十分で、200mJ/cm2で露光したものをdとした。
【0053】
<現像密着性>
加熱処理後の塗膜を2.5質量%炭酸ナトリウム溶液に25℃で浸漬して現像し、浸漬後の外観を光学顕微鏡により評価した。現像は過剰に行い、塗膜が現像され始める時間から、40秒長い時間で評価した。外観変化もなくレジストの剥離も全くなかったものを○、レジストの浮きが見られ、また、レジストの剥離が認められたものを×とした。
【0054】
<断面形状>
形成したブラックマトリクスパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製S−4500)を用いて観察した。ブラックマトリクスのテーパー角度を計測し、40〜80°となるものを順テーパー形状で○、85°以上となるものを垂直ないし逆テーパー
形状で×として評価した。
【実施例2】
【0055】
フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度:55.4質量%、新日鐵化学(株)社製 V259 ME)3.7gに対し、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、トリメチロールプロパントリメタアクリレート(x=3)0.8g、光重合開始剤として、イルガキュア OXE02を1.4g、イルガキュアIRG369を1.1g、溶剤として、シクロヘキサノン35.5g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート29.1g、添加剤にアデカポリエーテルG−400(商品名、(株)ADEKA社製)を0.7g加え、感光性樹脂組成物を得た。さらに、遮光剤としてカーボンブラック分散液(御国色素社製 TPBK−234C)27.6gを加えてよく撹拌し、顔料濃度48質量%である黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物100gを得た。
【実施例3】
【0056】
フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度:55.4質量%、新日鐵化学(株)社製 V259 ME)3.1gに対し、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(x=3)1.6g、光重合開始剤として、イルガキュア OXE02を2.3g、溶剤として、シクロヘキサノン35.5g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート30.2g、添加剤にアデカポリエーテルG−400(商品名、(株)ADEKA社製)を0.7g加え、感光性樹脂組成物を得た。さらに、遮光剤としてカーボンブラック分散液(御国色素社製 EX−2806)26.5gを加えてよく撹拌し、顔料濃度46質量%である黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物100gを得た。
【実施例4】
【0057】
フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度:55.4質量%、新日鐵化学(株)社製 V259 ME)3.8gに対し、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(x=6)0.77g、光重合開始剤として、イルガキュア OXE02を1.4g、イルガキュアIRG369を0.2g、シクロヘキサノン35.6g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート27.0g、添加剤にアデカポリエーテルG−400(商品名、(株)ADEKA社製)を0.7g加え、感光性樹脂組成物を得た。さらに、遮光剤としてカーボンブラック分散液(御国色素社製 EX−2806)30.5gを加えてよく撹拌し、顔料濃度53質量%である黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物100gを得た。
【0058】
<比較例1>
フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度:55.4質量%、新日鐵化学(株)社製 V259 ME)1.7gに対し、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、ジジペンタエリスリトールテトラメタアクリレート(x=4)1.1g、光重合開始剤としてイルガキュア OXE02を1.1g、溶剤として、シクロヘキサノン35.5g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート27.0g、添加剤にアデカポリエーテルG−400(商品名、(株)ADEKA社製)を0.7g加え、感光性樹脂組成物を得た。さらに、遮光剤としてカーボンブラック分散液(御国色素社製
EX−2806)32.3gを加えてよく撹拌し、顔料濃度56質量%である黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物100gを得た。
【0059】
<比較例2>
フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度:55.4質量%、新日鐵化学(株)社製 V259 ME)3.9gに対し、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(x=2)1.4g、光重合開始剤として、イルガキュア OXE02を1.1g、溶剤として、シクロヘキサノン35.6g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート28.2g、添加剤にアデカポリエーテルG−400(商品名、(株)ADEKA社製)を1.0g加え、感光性樹脂組成物を得た。さらに、遮光剤としてカーボンブラック分散液(御国色素社製 TPBK−234C)28.8gを加えてよく撹拌し、顔料濃度50質量%である黒色アルカリ現像型感光性組成物100gを得た。
【0060】
<比較例3>
フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度:55.4質量%、新日鐵化学(株)社製 V259 ME)8.9gに対し、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(x=6)1.1g、光重合開始剤として、イルガキュア OXE02を1.1g、溶剤として、シクロヘキサノン35.8g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート30.5g、添加剤にアデカポリエーテルG−400(商品名、(株)ADEKA社製)を1.0g加え、感光性樹脂組成物を得た。さらに、遮光剤としてカーボンブラック分散液(御国色素社製 TPBK−234C)21.9gを加えてよく撹拌し、顔料濃度38%である着色アルカリ現像型感光性組成物100gを得た。
【0061】
【表1】

<比較結果>
実施例1〜4の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物から形成されたブラックマトリクスは、表1に示した結果から、高感度で現像密着性に優れ、テーパー角度が40〜85°の範囲となる順テーパー形状となるものであった。また、得られた塗膜は、基板との密着性、耐アルカリ性に優れるものであった。それに対して、比較例1、2では、(イ)カーボンブラック量aと(ロ)バインダー樹脂量bの割合がそれぞれb/a=0.43、b/a=0.48であり、感度の低下、また、樹脂量が少ないことによる現像密着性の低下、形状の悪化が起こった。比較例3では、断面形状観察の結果、テーパー角度は85°となった。しかし、比較例3では、(イ)カーボンブラック量aと(ロ)バインダー樹脂量bの割合b/a=1.09であるために、顔料濃度に対する樹脂量が多く、テーパー形状は良好であるが、パターンの高精細化が難しい結果となった。すなわち、本発明の実施例1〜4で得られた黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物は、高い遮光性、高いガラスへの密着性、良好なパターン形状いずれをも両立するという点で、比較例1〜3で得られた黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物よりも優れていることが明らかとなった。
【0062】
[着色樹脂組成物の作製]
次に、下記の要領でカラーフィルタ作製に用いる着色樹脂組成物を調整した。
【0063】
<赤色顔料分散体作製>
赤色顔料として、C.I. Pigment Red 254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガーフォーレッド B−CF」)18gとC.I. Pigment Red 177(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「クロモフタールレッド A2B」)2g、分散剤(味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」)2g、変性エポキシ樹脂溶液(A−1)108gの混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mm
のガラスビースを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して赤色顔料の分散体を作製した。
【0064】
<赤色着色樹脂組成物作製>
その後、上記赤色顔料分散体130g、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学(株)製「NKエステルATMPT」)13g、光開始剤(チバガイギー社製「イルガキュアー907」)3g、増感剤(保土ヶ谷化学工業(株)製「EAB―F」)1g、溶剤としてシクロヘキサノン253gの混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過して赤色着色樹脂組成物を得た。
【0065】
<緑色顔料分散体作製>
緑色顔料として、C.I. Pigment Green 36(東洋インキ製造(株)製「リオノールグリーン 6YK」)16g、黄色顔料C.I. Pigment Yellow 150(バイエル社製「ファンチョンファーストイエロー Y−5688」)8g、分散剤(ビックケミー社製「Disperbyk−163」)2g、変性エポキシ樹脂溶液(A−1)100部の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して緑色顔料の分散体を作製した。
【0066】
<緑色着色樹脂組成物作製>
その後、上記緑色顔料分散体128g、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学(株)製「NKエステルATMPT」)14部 、光開始剤(チバガイギー社製「イルガキュアー907」)4g、増感剤(保土ヶ谷化学工業(株)製「EAB―F」)2g、シクロヘキサノン257gの混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過して緑色着色樹脂組成物を得た。
【0067】
<青色顔料分散体作製>
青色顔料として、C.I. Pigment Blue 15(東洋インキ製造(株)製「リオノールブルーES」)50g、紫色顔料としてC.I. Pigment Violet 23(BASF社製「パリオゲンバイオレット 5890」)2g、分散剤(ゼネカ社製「ソルスバーズ20000」)6g、変性エポキシ樹脂溶液(A−1)200gの混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して青色顔料の分散体を作製した。
【0068】
<青色着色樹脂組成物作製>
上記青色顔料分散体268g、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学(株)製「NKエステルATMPT」)19g、光開始剤(チバガイギー社製「イルガキュアー907」)4g、増感剤(保土ヶ谷化学工業(株)製「EAB−F」)2g、溶剤として、シクロヘキサノン214の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過して青色着色樹脂組成物を得た。
【0069】
[カラーフィルタの作製]
次に、前述した実施例および比較例の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物から形成されたブラックマトリクスパターンを有するガラス基板に、上記の赤色着色樹脂組成物、緑色着色樹脂組成物及び青色着色樹脂組成物を用いて、下記の要領でカラーフィルタを作製した。実施例1の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物から形成されたブラックマトリクを用いた場合のカラーフィルタを実施例5〜6、比較例1の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物から形成されたブラックマトリクスを用いた場合のカラーフィルタを比較例4〜5とした。
【0070】
予め、実施例1及び比較例1の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物から形成されたブラックマトリクを用いてストライプ状のブラックマトリクスを形成したガラス基板を準備した。そのガラス基板に、まず、赤色着色樹脂組成物をスピンコートにより塗布膜厚2μmとなるように塗布した。乾燥の後、露光機にてストライプ状のパターン露光をし、アルカリ現像液として2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液にて90秒間現像後よく水洗した。続いて210℃のオーブンで30分間ポストベークを行い、ストライプ状の着色層である赤色画素を透明基板上に形成した。次に、緑色着色樹脂組成物も同様にスピンコートにて膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥後、露光機にてストライプ状の着色層を前述の赤色画素とはずらした場所に露光し現像後ポストベークすることで、前述赤色画素と隣接した緑色画素を形成した。さらに、赤色、緑色と全く同様にして、青色着色樹脂組成物についても膜厚2μmで赤色画素、緑色画素と隣接した青色画素を形成した。これで、透明基板上に赤、緑、青の3色のストライプ状の画素を持つカラーフィルタが得られた。
【0071】
ここで、ブラックマトリクスの材料が実施例1の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物で、ブラックマトリクスと各着色層との重畳幅が3.0μmのものを実施例5、重畳幅が2.7μmのものを実施例6とした。同様に、ブラックマトリクスの材料が比較例1の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物で、ブラックマトリクスと各着色層との重畳幅が1.8μmのものを比較例4、重畳幅が6.5μmのものを比較例5とした。
【0072】
実施例5〜6、および比較例4〜5のカラーフィルタについて、ブラックマトリクスと着色層との重畳された部分の段差(ツノ段差)、白抜けの評価結果を表2に示した。ツノ段差は、1μm以下となった場合を○、1μm以上となった場合を×とした。また、白抜けは、カラーフィルタの背面からバックライトを当てたとき、ブラックマトリクスと着色層の間に光漏れ及び白抜けが確認できなかった場合を○、確認された場合を×とした。
【0073】
【表2】

表2の結果に示すとおり、本発明のカラーフィルタの実施例5および実施例6では、ブラックマトリクスの形状が安定しているため、ツノ段差が低く、また、ブラックマトリクスと着色層の間に光漏れ及び白抜けがなく良好であった。それに対して、比較例4では、ツノ段差は良好であったが、ブラックマトリクスのOD値が高いにもかかわらず、ブラックマトリクスの断面形状が悪いため、ブラックマトリクスと着色層との重畳幅が1.8μmと小さくなると光漏れが発生した。また、比較例5では、重畳幅を6.5μmと大きくしたため光漏れや白抜けは無いが、ツノ段差が大きくなった。
【0074】
本発明の実施例5、6のカラーフィルタを用いた液晶表示装置は、額縁部、画素部から光漏れのない、コントラストの高い良好なものとなった。一方、比較例4、5のカラーフィルタを用いた液晶表示装置は、光漏れが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を断面で説明する概略図。
【符号の説明】
【0076】
1・・・透明基板 2・・・ブラックマトリクス
3・・・赤色着色層(赤色画素) 4・・・緑色着色層(緑色画素)
5・・・青色着色層(青色画素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)カーボンブラック、(ロ)バインダー樹脂、(ハ)エチレン性不飽和結合を有する化合物、(ニ)光重合開始剤、(ホ)溶剤からなる黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物において、
固形分中における(イ)カーボンブラック含有量(質量%)aと(ロ)バインダー樹脂含有量(質量%)bの割合が、b/a=0.50〜0.75の範囲となることを特徴とする黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(イ)カーボンブラックの含有量が、黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物中の全固形分質量に対して、35質量%〜55質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載する黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(ハ)エチレン性不飽和結合を有する化合物1分子中の、エチレン性不飽和二重結合の数xが3〜6の範囲であることを特徴とする請求項1に記載する黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(ニ)光重合開始剤が、オキシム系光重合開始剤、アセトケトン系光重合開始剤から選ばれる少なくとも一種の光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1に記載する黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載する黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を用いて、透明基板上にパターン形成して作製したブラックマトリクスの膜厚1μm相当の光学濃度(OD値)が、3.3〜5.5の範囲であることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項6】
対向する一組の基板とそれに挟持される液晶層とを備えた液晶パネルを用いた液晶表示装置において、当該一組の基板の一方の基板が請求項5に記載するカラーフィルタであることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−145459(P2010−145459A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319331(P2008−319331)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】