説明

鼻孔保護具

【課題】鼻孔を介して患者に管状医療器具を挿入して長期間留置して医療行為を施行する際に、管状医療器具を良好に固定することができ鼻孔の潰瘍形成を予防だけでなく、管状医療器具を容易に挿通させて鼻孔の疼痛緩和を可能にする鼻孔保護具を提供する。
【解決手段】鼻孔内に装着され管状器具を挿通して長期間にわたって留置させるために用いる鼻孔保護具であって、硬質プラスチックまたはゴムからなる内周筒状部と、軟質プラスチックまたはゴムからなり前記内周筒状部の側面を包囲する外周筒状部とを含む二層構造を有し、かつ前記管状器具を固定するための固定部を有することを特徴とする鼻孔保護具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鼻孔を介する医療行為の際に用いられる鼻孔保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、鼻孔を介して患者に管状医療器具を挿入し長期間にわたって留置して施行する医療行為が行われている。このような医療行為としては、たとえば経鼻経腸栄養の投与のための胃管カテーテルの挿入、腸閉塞を治療するためのイレウス管の挿入などがある。
【0003】
経鼻胃管カテーテルやイレウス管は鼻孔を通して長期間留置される間に、鼻孔内で動いて鼻孔内壁に接触し、潰瘍を形成して患者に苦痛を与えていた。こうした鼻孔内での管状医療器具の動きを防止するために、テープで固定することが行われている。しかし、テープでは管状医療器具の固定が不十分であり、潰瘍の形成を予防することは極めて困難であった。
【0004】
また、これらの管状医療器具を鼻孔に挿入する際には、医療器具が鼻孔に接触することに伴って患者に疼痛を与える。このような疼痛は、鼻孔を介して患者に短時間だけ管状医療器具を挿入する医療行為、たとえば上部消化管検査における経鼻内視鏡の挿入や喀痰困難な患者に対する吸痰目的でのカテーテルの挿入の場合にも生じる。こうした疼痛を緩和する目的で表面麻酔剤を塗布しているが、この方法では疼痛を緩和することが困難であった。
【0005】
従来、経鼻内視鏡を挿入する際に用いられる着鼻保護具が知られている(特許文献1)。この着鼻保護具は、たとえばシリコーンゴムなどの軟質プラスチックで形成されている。しかし、この着鼻保護具は、鼻孔を介して患者に管状医療器具を挿入し長期間にわたって留置する目的は想定していない。このため、この着鼻保護具では管状医療器具の固定が不十分であり、経鼻胃管カテーテルやイレウス管を鼻孔内に長期間留置する際に生じる潰瘍の形成を防止することは困難である。
【特許文献1】特開2006−326063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、鼻孔を介して患者に管状医療器具を挿入して長期間留置して医療行為を施行する際に、管状医療器具を良好に固定することができ鼻孔の潰瘍形成を予防だけでなく、管状医療器具を容易に挿通させて鼻孔の疼痛緩和を可能にする鼻孔保護具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鼻孔保護具は、鼻孔内に装着され管状器具を挿通して長期間にわたって留置させるために用いる鼻孔保護具であって、硬質プラスチックまたはゴムからなる内周筒状部と、軟質プラスチックまたはゴムからなり前記内周筒状部の側面を包囲する外周筒状部とを含む二層構造を有し、かつ前記管状器具を固定するための固定部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の鼻孔保護具において、前記固定部は、鼻孔の外側へ向かって突出した長さ方向突出部でもよいし、内周筒状部および/または前記外周筒状部の一部に設けられ外周方向へ突出した径方向突出部でもよい。
【0009】
また、本発明の鼻孔保護具において、前記固定部は、内周筒状部および/または前記外周筒状部の一部に設けられ外周方向へ突出した径方向突出部と、前記径方向突出部に対応する位置に設けられ鼻孔の外側へ向かって突出した長さ方向突出部とを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鼻孔保護具は、管状器具を固定するための固定部を有するので、管状器具を長期間にわたって留置させても鼻孔の潰瘍形成の予防に有効であり、内周筒状部が硬質プラスチックまたはゴムからなるので管状器具の挿通がスムーズで鼻孔の疼痛緩和に有効であり、外周筒状部が軟質プラスチックまたはゴムからなるので、人体への負担も少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
【0012】
第1の実施形態1
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る鼻孔保護具の断面図、図1(b)はこの鼻孔保護具を外側から見た平面図、図1(c)はこの鼻孔保護具の斜視図である。
【0013】
この鼻孔保護具10は、硬質プラスチックである硬質ポリウレタンからなる内周筒状部11と、内周筒状部11の側面を包囲する人体への侵襲が少ない軟質ゴムであるシリコーンゴムからなる外周筒状部12とを含む二層構造を有する。内周筒状部11の内周には潤滑コーティングを施してもよいし、潤滑剤を塗布してもよい。これらの内周筒状部11および外周筒状部12は、鼻孔内に挿入される内側端面の径が小さく、鼻孔から出る外側端面の径が大きくなっている。内周筒状部11および外周筒状部12は鼻孔内に確実に装着することができればよく、これらの形状は特に限定されない。また、外周筒状部12の外側端面にはフランジ部が形成され、鼻孔保護具が鼻孔内に押し込まれるのを防止するようになっている。外周筒状部12の外側端面のフランジ部のうち、患者の口唇側に接触する部分には切り欠き部が形成されて直線状の接触部が形成されている。
【0014】
図1においては、管状医療器具を固定するための固定部として内周筒状部11および外周筒状部12の一部を外周方向へ突出させた径方向突出部13が形成されている。内周筒状部11の径方向突出部13内周の曲率半径は、挿入される管状医療器具の半径に見合う大きさに設計されており、管状医療器具を固定するのに役立つ。
【0015】
図1の鼻孔保護具によれば、管状医療器具を固定するための固定部として径方向突出部13を設けているので、径方向突出部13の内周で管状医療器具を確実に固定でき、鼻孔の潰瘍形成を有効に予防できる。また、内周筒状部11が硬質プラスチックからなるので管状医療器具の挿通がスムーズで鼻孔の疼痛緩和に有効であり、外周筒状部12が軟質ゴムからなるので鼻孔への負担が少ない。
【0016】
図1における各部の寸法の一例を示す。これらの寸法は一例であり、様々に設計変更できることは勿論である。
【0017】
内周筒状部11の内側端面の内径D1:6mm、
外周筒状部12の内側端面の外径D2:7mm、
内周筒状部11の外側端面の外径D3:8mm、
外周筒状部12の外側端面の上下間の径D4:19mm、
外周筒状部12の外側端面の中心から上部までの距離L1:11mm、
外周筒状部12の外側端面の中心から下部までの距離L2:8mm、
外周筒状部12の奥行きH:10mm、
外周筒状部12のフランジ部の厚さT:2mm、
内周筒状部11の径方向突出部13の内周部の幅W:5.6mm。
【0018】
なお、内周筒状部11の外側端面を外周筒状部12の外側端面よりも内側へ後退させてもよい。この場合、外周筒状部12の外側端面から内周筒状部11の外側端面に達するまでの外周筒状部12の一部にのみ管状医療器具を固定するための径方向突出部を設けてもよい。このような鼻孔保護具では、挿通される管状医療器具の固定は、主として軟質シリコーンゴムからなる外周筒状部12の一部にのみ設けられた径方向突出部でなされ、管状医療器具に対するシリコーンゴムの追従性が良好なので、管状医療器具を固定する効果が高い。
【0019】
第2の実施形態
図2(a)は本発明の第2の実施形態に係る鼻孔保護具の斜視図、図2(b)はこの鼻孔保護具を外側から見た平面図、図2(c)はこの鼻孔保護具の断面図である。
【0020】
この鼻孔保護具20は、硬質プラスチックである硬質ポリウレタンからなる内周筒状部21と、内周筒状部21の側面を包囲する人体への侵襲が少ない軟質ゴムであるシリコーンゴムからなる外周筒状部22とを含む二層構造を有する。内周筒状部11および外周筒状部12は鼻孔内に挿入される内側端面に向かうにつれて径が小さくなっている。図2においても、鼻孔内部に挿入される内周筒状部21および外周筒状部22の一部を外周方向へ突出させた径方向突出部23が形成されている。内周筒状部21および外周筒状部22の径方向突出部23の位置に対応して、内周筒状部21および外周筒状部22の外側端面から鼻孔の外側へ向かって突出した長さ方向突出部24が形成されている。長さ方向突出部24の部分も含めて、内周筒状部21の径方向突出部23の内周の曲率半径は、挿入される管状医療器具の半径に見合う大きさに設計されている。また、外周筒状部22の外側端面のフランジ部は横方向に拡張され、この拡張フランジ部の両端に取付け穴25、25が設けられている。この取付け穴25、25にたとえば耳掛け用のゴムバンドを取り付け、ゴムバンドを耳に掛けて鼻孔保護具20を装着することができる。
【0021】
図2においては、管状医療器具を固定するための固定部として、内周筒状部21および外周筒状部22の一部を外周方向へ突出させた径方向突出部23と、鼻孔の外側へ向かって突出した長さ方向突出部24とを設けている。この鼻孔保護具20を鼻孔に装着し、その貫通孔にカテーテルなどの管状医療器具を挿通し、長さ方向突出部24の位置で管状医療器具をテープなどで固定することができる。したがって、管状医療器具を鼻孔中に長期間留置する場合でも、管状医療器具が鼻孔内で動くのを確実に防止でき、鼻孔内壁への管状医療器具の接触による潰瘍の形成をより有効に防止できる。内周筒状部21が硬質プラスチックからなるので管状医療器具の挿通がスムーズで鼻孔の疼痛緩和に有効であり、外周筒状部22が軟質ゴムからなるので鼻孔への負担が少ない点は図1の場合と同様である。
【0022】
図2における各部の寸法の一例を示す。これらの寸法は一例であり、様々に設計変更できることは勿論である。
【0023】
内周筒状部21の内側端面の内径D1:10mm、
外周筒状部22の内側端面の外径D2:12mm、
内周筒状部21の外側端面の外径D3:14mm、
外周筒状部22の外側端面の横方向の最大径D5:25mm、
外周筒状部22の奥行きH:5mm、
外周筒状部22のフランジ部の厚さT:5mm、
内周筒状部21の径方向突出部の内周部の幅W:5.5mm、
長さ方向突出部24の高さP:5mm。
【0024】
なお、図2では長さ方向突出部24を内周筒状部21および外周筒状部22の二層構造としているが、外周筒状部22のみで形成してもよいし、内周筒状部21のみで形成してもよい。また、図2では管状医療器具を固定するための固定部として径方向突出部23および長さ方向突出部24を設けているが、長さ方向突出部24を設けさえすれば長さ方向突出部24の位置におけるテープなどで管状医療器具を確実に固定できるので、必ずしも径方向突出部23を設ける必要はない。
【0025】
以上の実施形態では、内周筒状部に硬質ポリウレタン、外周筒状部にシリコーンゴムを用いた例を説明したが、内周筒状部および外周筒状部の材料はこれらに限定されない。内周筒状部を構成する硬質プラスチックまたはゴムとしては、硬質ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、エンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。外周筒状部を構成する軟質プラスチックまたはゴムとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、軟質ポリエチレン、ポリブテンなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る鼻孔保護具の断面図、外側から見た平面図、および斜視図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る鼻孔保護具の斜視図、外側から見た平面図、および断面図。
【符号の説明】
【0027】
10…鼻孔保護具、11…内周筒状部、12…外周筒状部、13…径方向突出部、
20…鼻孔保護具、21…内周筒状部、22…外周筒状部、23…径方向突出部、24…長さ方向突出部、25…取付け穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻孔内に装着され管状器具を挿通して長期間にわたって留置させるために用いる鼻孔保護具であって、硬質プラスチックまたはゴムからなる内周筒状部と、軟質プラスチックまたはゴムからなり前記内周筒状部の側面を包囲する外周筒状部とを含む二層構造を有し、かつ前記管状器具を固定するための固定部を有することを特徴とする鼻孔保護具。
【請求項2】
前記固定部は、鼻孔の外側へ向かって突出した長さ方向突出部であることを特徴とする請求項1に記載の鼻孔保護具。
【請求項3】
前記固定部は、内周筒状部および/または前記外周筒状部の一部に設けられ外周方向へ突出した径方向突出部であることを特徴とする請求項1に記載の鼻孔保護具。
【請求項4】
前記固定部は、内周筒状部および/または前記外周筒状部の一部に設けられ外周方向へ突出した径方向突出部と、前記径方向突出部に対応する位置に設けられ鼻孔の外側へ向かって突出した長さ方向突出部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の鼻孔保護具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−125254(P2009−125254A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302570(P2007−302570)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(307044507)
【Fターム(参考)】