説明

鼻炎の治療方法及び組成物

双性イオン性セチリジンと、極性脂質リポソームと、薬剤的に許容可能な水性担体を含有する、例えば、経鼻又は経眼投与による鼻炎の治療のための医薬組成物が提供される。該組成物は、好ましくはそれらの性質において均質である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
この発明は、鼻炎の治療方法と、対応する医薬組成物に関する。
【0002】
(背景及び従来技術)
アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎は、人口の約30%が発症している一般的な疾患である。鼻炎は、生活の質にかなりの影響を持つ。実際、鼻炎は、例えば喘息よりも、生活の質に影響を及ぼすと考えられる。
花粉症や通年性アレルギー性鼻炎は、くしゃみ、鼻漏、鼻詰まり、掻痒、結膜炎、及び咽頭炎により特徴付けられる。通年性鼻炎の場合、慢性鼻詰まりがしばしば顕著で、耳管閉塞にまで広がるおそれがある。
鼻炎に対して、経口又は局所の抗ヒスタミン剤が一次治療であり、鼻用ステロイド剤が二次治療である。殆どの患者において、局所用コルチコステロイド類及び長時間作用する抗ヒスタミン剤は症状を有意に軽減する。また、抗ヒスタミン剤は、非免疫(非IgE)媒介性の超過敏反応、例えば非アレルギー性鼻炎、運動誘発性喘息、寒冷蕁麻疹、及び非特異的気管支過敏性にも作用する可能性がある。
【0003】
セチリジン二塩酸塩、[2-{4-[(4-クロロフェニル)-フェニルメチル]-1-ピペラジニル}エトキシ]酢酸は、経口的及び局所的に活性があり、強力で長時間作用する末梢ヒスタミンHレセプターアンタゴニストである。セチリジンは、鼻結膜炎及び蕁麻疹の治療に最も広く使用されている第二世代抗ヒスタミン剤の一つである。それは、毎日10mgの用量で経口的に使用される場合、効果的で、良好な耐容性及び安全性がある。しかしながら、経口治療患者では、副作用として鎮静や口渇が生じていた。またセチリジンは、鼻炎治療用として子供に対しても承認されている。
抗ヒスタミン剤の主たる臨床的影響には、くしゃみ及び鼻漏の低減が含まれる。しかしながら、鼻詰まりの低減には反応性が少ないと思われる。
【0004】
抗ヒスタミン剤(例えばアゼラスチン及びレボカバスチン)の局所投与には、薬の作用の発現が早く、副作用が少ないことを含む利点がある。しかしながら、現在は、二塩酸セチリジンは、局所投与用の承認医薬ではない(但し、臨床試験ではそのようにして投与されている)。
【0005】
一つの治験(Francillon C, Pecoud A. Effect of nasal spray of cetirizine in a nasal provocation test with allergen. J Allergy Clin. Immunol. 1993:91, Suppl. 2:258(abstract))では、セチリジンの点鼻薬(スプレー)が症状を低減させ、アレルゲン暴露後の鼻のピーク流量を増加させることが知見された。さらに、運動誘発性喘息では、ネブライザーを用いてセチリジンミストを肺に投与した場合、良好な保護効果が見られた(Ghosh SK, De Vos C, McIlroy I, Patel KR. Effect of cetirizine on exercise induced asthma, Thorax 1991年4月;46(4), 242-4)。
【0006】
通年性アレルギー性鼻炎を患っている患者に(おそらくは二塩酸塩として)セチリジンを点鼻薬として与えた場合、症状にいくらかの効果が見られた。0.625、1.25及び2.5mg/mL濃度のセチリジンを、2週間、毎日3回スプレーした(Clement P, Roovers MH, Francillon C, Dodion P. Dose-ranging, placebo-controlled study of cetirizine nasal spray in adults with perennial allergic rhinitis, Allergy 1994年9月;49(8), 668-72)。最も一般的な副作用は鼻での現象に関連していたが、プラシーボとセチリジン治療群との間の発生率に差異はなかった。しかしながら、この文献の著者は、局所刺激が治療効果に悪影響を生じさせると推測している。
【0007】
実際、セチリジンは鼻粘膜を刺激するため、経鼻投与では、その直接の暴露を低減させることが必要であることが見出されている。欧州特許第605203B1号では、シクロデキストリンを含む組成物の形態でセチリジンを提供することにより、このことが達成可能であると報告されている。
【0008】
リポソーム(脂質小胞としても知られている)は、天然源又は化学合成のいずれかに由来する極性脂質分子から調製されるコロイド状粒子である。湾曲した脂質二重層からなるこのような球形の密閉構造体は、典型的には、毒性を低減させ、及び/又は効果を増大させるために、多くの場合は細胞傷害性である薬剤を捕捉するために使用される。リポソーム捕捉薬剤調製物は、しばしば乾燥(例えば凍結乾燥)形態で提供され、これはついで投与直前に水溶液で再構成される。これは、水溶液中に例えば細胞傷害剤が漏洩し、よってリポソーム捕捉効果を低減させるおそれを最小にするためになされる。
【0009】
また、リポソームは、アジュバントとして、又は生物学的利用能を改善するため、経鼻デリバリー用に様々な薬剤化合物を封入するためにも使用されている。挙げることのできる薬剤には、破傷風トキソイドワクチン、インシュリン、デスモプレッシン及び塩酸ジフェンヒドラミン(Turkerら, Review Article:Nasal Route and Drug Delivery Systems, Pharm. World Sci., 2004;26, 137-142、及びそこに列挙されている文献)、並びにシプロフロキサシン、CM3、及びサルブタモール(Desaiら, A Facile Method of Delivery of Liposomes by Nebulization, J. Contol. Release, 2002;84, 69-78)が含まれる。
【0010】
リポソーム捕捉セチリジンは、ウサギモデルにおける末梢抗ヒスタミン活性及び体内吸収性を評価するためにまた局所投与されている(Elzainyら, Cetirizine from Topical Phosphatidylcholine-Hydrogenated Liposomes, The AAPS Journal, 2004;6, 1-7。また、Drug Development and Industrial Pharmacy, 2005;31, 281-291も参照)。
【0011】
約1〜33.5mg/mLのリン脂質を含む緩衝された水性ホスファチジルコリンリポソーム系中でのセチリジンのカチオン性(アニオンが塩化物の場合)、双性イオン性及びアニオン性形態の親油性の挙動もまた研究されている(Plemper van Balen Gら, Lipophilicity behaviour of the zwitterionic antihistamine cetirizine in phosphatidylcholine liposomes/water systems, Pharm. Res. 2001;18, 694-701)。この研究の目的は、PBSで希釈された卵のホスファチジルコリンリポソームの別個の溶液を透析セルの別個の区画に注ぎ、リポソーム膜と、セチリジン及び他の薬剤の種々の電気種との相互作用のメカニズムを洞察する力を得ることである。約pH4〜約pH7、さらには約pH3〜約pH8の範囲のpHを占める、双性イオン性形態のセチリジンは、セチリジンの親油性折り畳み配座異性体の生成をより困難にさせることにより、リポソーム膜への挿入が防止されると、この文献の著者は考えている。この点で、セチリジンは、患者への薬剤のデリバリーのためのリポソーム膜には捕捉されなかった。
【0012】
本出願人の知る限りでは、双性イオン性セチリジンと、極性脂質リポソームと、薬剤的に許容可能な水性担体を含有する均質な医薬組成物は、従来、開示も示唆もされていない。
驚くべきことに、我々は、セチリジンの(例えば経鼻)投与に通常伴う刺激が、まさにこのような組成物を使用することによって低減できることを見出した。
本発明によれば、双性イオン性セチリジンと、極性脂質リポソームと、薬剤的に許容可能な水性担体を含有する、例えば経鼻又は経眼投与により、鼻炎の治療に適した医薬組成物が提供され、その組成物をここで「本発明の組成物」と称する。
【0013】
当業者であれば、双性イオン性セチリジンは、薬理学的に有効な量で本発明の組成物に使用されることを理解するであろう(下記参照)。「薬理学的に有効な量」なる用語は、単独で投与されようと又は他の活性成分と組合せて投与されようと、治療される患者に所望の治療効果を与えることができるセチリジンの量を意味する。このような効果は、客観的なもの(すなわち、所定の試験又はマーカーにより測定可能)又は主観的なもの(すなわち、被験者が、効果があることを示すか又は感じる)でありうる。
【0014】
「医薬組成物」には、哺乳動物、特にヒトに直接投与して使用するのに適した組成物が含まれる。この点に関し、本用語は、哺乳動物、特にヒト患者への投与に適していると当該分野で考えられている成分のみを含む製剤を包含することを意図している。本発明の文脈では、前記用語は、本発明の組成物が、リポソームから水性担体への薬剤の漏洩を避けるため、投与の少し前に再構成を必要とするリポソーム内部に薬剤が封入されている製剤ではなく、棚から直接の、使用準備が整った液体の形態であることも意味している。
【0015】
本発明の組成物は、好ましくは均質である。「均質」とは、本発明の組成物が、水性担体に均一に分散したリポソームを含有しているばかりでなく、さらに、媒体がリポソーム構造の内部にあろうと外部にあろうと、当該水性媒体中に活性成分が実質的に同様の濃度で全組成物中に分配されていることを含む。「実質的に同様の」とは、室温、大気圧で、濃度が、約±50%、例えば約±40%、好ましくは約±30%、より好ましくは約±20%、特に約±10%(リポソーム構造の内部及び外部の濃度と比較した場合)で変わり得ることを含む。薬剤の濃度特性は、当業者に知られている標準的技術、例えば31P-NMRによって測定することができる。例えば、標準的なインシトゥープロービング技術、又はフリーの水性媒体からのリポソームフラクションの分離、及び各フラクションに伴う薬剤の量/濃度の測定を含む技術を使用することができる。分離は、遠心分離、透析、限外濾過、又はゲル濾過により達成することができる。
【0016】
本発明の組成物は、約pH4(例えば4.0)〜約pH8(例えば8.0)、好ましくは約pH5(例えば5.0)〜約pH7(例えば7.0)のpHを提供可能な薬剤的に許容可能なバッファーを含有することが好ましい。適切なバッファーには、リポソームの形成を妨害しないであろうもの、例えばホスファート(例えば、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、又はリン酸プラス塩基)、シトラート(例えば、クエン酸ナトリウム、又はクエン酸プラス塩基)、又はアセテートバッファー(例えば、酢酸ナトリウム、又は酢酸プラス塩基)で、上で特定した範囲のpHを維持可能なものが含まれる。バッファーは、上述した効果を提供するのに適し、本発明での記載に頼ることなく、当業者に理解されるであろう量で、使用され得る。適切な量は、例えば約1mg/mL〜約30mg/mLの範囲である。
【0017】
セチリジンの任意の薬剤的に許容可能な塩、並びにその遊離塩基の形態が、本発明の組成物の製造に使用することができる。好ましい塩には、塩化物塩、塩酸(例えば二塩酸)塩、より詳細にはセチリジンの硝酸塩、最も好ましくは二硝酸セチリジンが含まれる。
【0018】
本発明の組成物の調製に使用することができるセチリジン又はその塩の量は、個々の患者にとって最も適切なものは何であるかによって、医者又は当業者により決定されるであろう。この量は、治療される病状の重症度、並びに治療される特定の患者の種、年齢、体重、性別、腎機能、肝機能及び反応によって変わる可能性がある。しかしながら、本発明の組成物は、双性イオン性形態で算出して、約1mg/mL〜約30(例えば約25、特に約23)mg/mLの量、好ましくは約5.5mg/mL〜約22mg/mLの量の、セチリジン又はその塩を含有することが好ましい。さらに好ましい範囲は、約6mg/mL〜約15mg/mL、例えば約8mg/mL〜約12mg/mLである。
【0019】
このような場合、存在し得る活性成分の全量は、約4mg〜約20mg、例えば約5mg〜約15mg、より好ましくは約7mg〜約12mg、最も好ましくは約8mg〜約10mgの範囲にある、単位用量当たりの薬剤の一日量を提供するのに十分な量とされる。当業者であれば、上述した一日量を提供するために、本発明の組成物は、一又は複数回の投与において、毎日一回又は複数回投与されうることを理解するであろう。
上述の用量は平均な症例の例である;もちろん、より多い又は低い用量範囲が好ましいとされる個々の症例もあり得、この場合も本発明の範囲内である。
【0020】
「リポソーム」なる用語は、水、又は水性のバッファー分画により分離された極性脂質二重層の一又は複数の同心球からなる構造体を含むと、当業者には理解されている。
リポソームは、例えばLiposome Drug Delivery Systems, Betageri G Vら, Technomic Publishing AG, Basel, Switzerland, 1993に記載されている、溶媒、減圧、2相系、凍結乾燥、超音波処理等を使用する種々の方法により調製することができ、その文献の関連開示を、出典明示によりここに援用する。
【0021】
「極性脂質」なる用語は、リポソームを形成可能な、極性の頭部基と2つの脂肪酸残基を持つ任意の脂質を含むことは、当業者にはよく理解されているであろう。
極性脂質、例えば以下に記載されるものは、天然及び/又は合成及び/又は半合成由来のものであってもよい。天然及び合成/半合成の極性脂質の混合物もまた本発明の組成物に使用され得る。
よって、本発明の組成物に使用され得る極性脂質は、例えばリン脂質、特にホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルセリン(PS)、又はそれらの混合物をベースにしたものでありうる。
【0022】
本発明の組成物に使用され得るリン脂質は、グリセロール等の、ヒドロキシル基を担持する骨格に極性又は無極性基が結合してなる。
また、リン脂質は、一般式I:

[上式中、R及びRは独立して、飽和又は不飽和(例えばアルケニル)で、分枝状又は直鎖状の、7〜23の炭素原子、好ましくは11〜19の炭素原子を有するアルキル基を表し;Rはアミド又はエステル結合基、例えば
-CH-CH(OH)-CHOH(ホスファチジルグリセロール)、
-CH-CH-N(CH)(ホスファチジルコリン)、
-CH-CH-NH(ホスファチジルエタノールアミン)、
-H(ホスファチジン酸)、又は
-CH-CH(NH)-COOH(ホスファチジルセリン)、
を表す]
によって表すことができる。
【0023】
リン脂質は天然由来であってもよい。天然のリン脂質は、好ましくは、植物(例えば、菜種、ヒマワリ等、好ましくは大豆)及び動物由来(例えば、卵黄、牛乳)の双方の種々の供給源から得られる膜脂質である。植物リン脂質の主たる供給源である大豆からのリン脂質は、脱ゴム(degumming)プロセスによる粗大豆油の精製中の副産物(例えばレシチン類)から通常は得られる。レシチン類はさらに加工され、他の物理的単位操作、例えば分別及び/又はクロマトグラフィーを使用して精製される。他のリン脂質は、例えば、種々の適切な種子及び粒子を圧し、続いて溶媒抽出し、ついで上述したようなさらなるプロセスにかけることにより得ることができる。挙げることのできる天然由来のリン脂質には、大豆に見出されるいくつかの異なるリン脂質の混合物であるリポイド(Lipoid)S75、リポイドS100、及びリポイドS75-3N(リポイドGmbH、独)の商品名で入手可能なものが含まれる。
【0024】
また、リン脂質は、合成又は半合成由来(すなわち、化学合成により調製される)のものであってもよい。例えば、多段工程の化学合成アプローチを、リン脂質の特徴であるグリセロール骨格を提供する(S)-1,2-イソプロピリデングリセロールから、鍵となるリン脂質中間体1,2-ジアシルグリセロールを得るために使用することができる。ついで、対応する極性頭部基が、1,2-ジアシルグリセロール中間体に化学合成を介して結合する場合に、1,2-ジアセチル化リン脂質が得られうる。しかしながら、一般的には、種々の工程で使用されるグリセロール及び脂肪酸の由来は、天然及び合成由来の双方であってよい。挙げることのできる合成及び/又は半合成のリン脂質には、ジラウリルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストールホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジラウリルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジミリストールホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、及びジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)が含まれる。
【0025】
極性脂質は、糖脂質を含むか又はより好ましくは糖脂質からなるものでありうる。本発明において、「糖脂質」なる用語は、アシルグリセロール、スフィンゴイド又はセラミド(N-アシルスフィンゴイド)等の、疎水性部分にグリコシド結合により結合した一又は複数の単糖類残基を含む化合物を指す。
糖脂質はグリセロ糖脂質であってもよい。本発明では、「グリセロ糖脂質」なる用語は、一又は複数のグリセロール残基を含む糖脂質を指す。本発明の好ましい態様では、グリセロ糖脂質は、ガラクトグリセロ脂質、より好ましくは次の一般式II:

[上式中、R及びRは上述した通りである]
のジガラクトシルジアシルグリセロールを含むか又はそれらからなる。
【0026】
あるいは、糖脂質はスフィンゴ糖脂質であってもよい。本発明において、「スフィンゴ糖脂質」なる用語は、少なくとも一の単糖類残基と、スフィンゴイド又はセラミドのいずれかを含む脂質を指す。例えば、本用語には、中性のスフィンゴ糖脂質、例えばモノ-及びオリゴグリコシルスフィンゴイド類、並びにオリゴ-、より好ましくはモノグリコシルセラミド類が含まれ得る。さらに前記用語には、酸性のスフィンゴ糖脂質、例えばシアロスフィンゴ糖脂質、ウロノスフィンゴ糖脂質(uronoglycosphingolipids)、スルホスフィンゴ糖脂質、ホスホスフィンゴ糖脂質、及びホスホノスフィンゴ糖脂質が含まれる。スフィンゴ糖脂質は、セラミド、モノヘキソシルセラミド、ジヘキソシルセラミド、スフィンゴミエリン、リソスフィンゴミエリン、スフィンゴシン、又はそれらの混合物であってもよい。好ましくは、スフィンゴ糖脂質はスフィンゴミエリン又はそこから誘導される生成物である。スフィンゴミエリンの含有量は、好ましくはクロマトグラフィー法により定められる。スフィンゴミエリンは、ミルク、好ましくは牛乳、脳、卵黄、又はヒツジ等の動物の血液の赤血球から抽出されうる。誤解を避けるために、合成及び半合成のスフィンゴ脂質は、本発明に含まれる。
【0027】
あるいは、糖脂質はグリコホスファチジルイノシトールであってもよい。本発明において、「グリコホスファチジルイノシトール」なる用語は、ホスファチジルイノシトール類のイノシトール部分にグリコシド結合した糖類を含む糖脂質を指す。
好ましい糖脂質には、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)が含まれる。
【0028】
好ましい極性脂質(例えばリン脂質)は、水中で測定可能な程度に膨潤するもの、及び/又は自然にリポソーム形成可能なものである。
極性(例えばリン-)脂質が水中で自然に膨張しない場合には、当業者ならば、より極性があり、膨潤可能な(例えばリン-)脂質、例えばアニオン性(例えばリン-)脂質(例えば、ホスファチジルグリセロール)を添加することで、リポソームを得ることができることが分かるであろう。
アシル鎖の相転移温度(鎖融解;ゲルから液晶)が水の氷点よりも低い場合、リポソームの形成は約0℃以上(例えば室温)で実施され得る。
【0029】
いずれの極性脂質物質(又はその組合せ)が使用されても、本発明の組成物の調製に使用され得る脂質(類)の適切な全量/濃度は、約10mg/mL〜約120mg/mLの範囲である。挙げることのできる本発明の組成物には、極性脂質がリン脂質(他の脂質又はそうではないものとの組合せであろうがなかろうが)を含む場合、組成物におけるリン脂質(類)の量が、約10(例えば約17、特に約20)mg/mL〜約120mg/mL、より好ましくは約25(例えば約35)mg〜約100(例えば約70、特に約50、さらには約40)mg/mLであるものが含まれる。
【0030】
本発明の組成物は、酸化防止剤、例えばα-トコフェロール、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、モノチオグリセロール、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、酒石酸又はビタミンEをまた含有しうる。
本発明によれば、リン脂質及び/又はセチリジンの金属イオンに触媒される酸化を低減させるために、キレート剤を使用してもよい。有用なキレート剤の例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン三酢酸及びジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)である。本発明の組成物、特にそれに存在しうる任意の不飽和脂肪酸残基を酸化から保護する他の薬剤を使用することもできる。
【0031】
本発明の組成物は一又は複数の保存料を含有しうる。液状の医薬組成物用の一般的な保存料の例は、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチルパラベン、クロルブタノール、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、又はフェニルエチルアルコールである。
本発明の組成物をその適用部位に保持するために、増粘剤、例えば親水性ポリマー、特にポリエチレングリコール、又は架橋ポリビニルピロリドン、及び/又はセルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースをさらに含有してもよい。増粘剤は、投与前に本発明の組成物を物理的に安定化させるための保護コロイドとしても機能する。
本発明の組成物は、香料(例えば、レモン、メントール又はペパーミントパウダー)、及び/又は甘味料(例えば、ネオヘスペリジン)をさらに含有してもよい。
また本発明の組成物は、浸透圧調節剤(tonicity-modifying agents)、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール、グルコース、デキストロース、スクロース、マンニトール等をさらに含有してよい。
【0032】
緩衝剤、保存料、増粘剤、酸化防止剤、浸透圧調節剤、及びキレート剤を含む任意の添加剤は、リポソームの安定性に対するそれらの悪影響を最小にすべきであるということを考慮して、それらの同一性及び使用される量について、選択されるべきである。薬剤が与えられると、これは、当業者の理解の範囲内にある簡単な実験により確定することができる。しかしながら、このような成分の適切な量は約0.01mg/mL〜約10mg/mLの範囲である。
【0033】
また、本発明の組成物の調製方法が提供される。我々は、驚くべきことに、通常は必要とされる荷電脂質及び/又は界面活性剤等の他の任意の賦形剤を添加することなく、水性媒体中で極性脂質を直接膨潤させることにより、リポソームを調製することができることを見出した。
本発明のさらなる態様によれば、本発明の組成物を調製するための方法が提供され、該方法は:
(a)水性媒体中で膨潤性である極性脂質又は極性脂質混合物を提供し;
(b)セチリジンの水溶液を提供し;
(c)水溶液に極性脂質又は混合物を攪拌しながら添加し、よってセチリジンのリポソーム調製物を形成させ;
(d)場合によっては、酸又は塩基(例えば、適切な濃度(例えば1M)の塩酸及び/又は水酸化ナトリウム)の添加により、約pH4(例えば4.0)〜約pH8(例えば8.0)、好ましくは約pH5(例えば5.0)〜約pH7(例えば7.0)の範囲内の所望値に調製物のpHを調節し;
(e)場合によっては、バッファー溶液、又はより好ましくは水又は食塩水をその調製物に添加して所望の最終バッチ容量を得;
(f)その調製物をホモジナイズして、前記医薬組成物を得る;
ことを含む。
【0034】
適切であるならば、上述の方法において適切な工程で、窒素又はアルゴンで溶液/液体をパージしてもよい。
本発明において、脂質は、水性媒体中で、そのような媒体に接触して配された場合に、測定可能な程度まで膨潤するならば、膨潤性であると言うことができる。
【0035】
バッファーは、好ましくは、脂質の添加前に薬剤の水溶液に添加されてもよい(及び/又は薬剤をバッファーの水溶液に添加してもよい)。それにもかかわらず、当業者であれば、双性イオン性セチリジンに固有の緩衝効果のことは承知しているであろう。
【0036】
本発明のリポソームの形成は、極性脂質を水中で自然に膨張させ、極性脂質の性質に応じて、約35重量%又はそれ以上の最大水分含有量を有するラメラ状の液晶相を形成させることにより、容易にすることができる。使用される脂質又は脂質混合物及び他の条件に依存して、過剰水がこのラメラ相に添加された場合に、リポソームの自然な形成が達成され得る。自然な形成が達成されない場合は、過剰水中におけるラメラ状液晶相の機械的分散工程(すなわち、上の方法のホモジナイズ工程(f))によって、リポソームの形成を達成することができる。
ホモジナイズ/分散方法には、例えばウルトラテュラックス(Ultra Turrax(登録商標))(Jankel & Kuhnke, 独)による、激しい機械的混合が含まれる。振盪、ボルテックス及びローリング処理も、上述の方法のホモジナイズ工程の一部として実施することができる。
【0037】
本発明のリポソームの均一なサイズ分布が望ましく、約100nmの孔径を有し、ポリカーボネート製のもののようなメンブランフィルターを通しての押出しにより得られる。メンブランフィルターはAvestin Inc.(カナダ)から購入することができる。
減少した平均リポソームサイズ及び狭いリポソームサイズの分布は、好ましくは、リポソーム分散液を適切なホモジナイザー(Rannie APV, 7.30型VH, Rannie AS, デンマーク)を用いて、高圧で、例えば約300bar〜約1000bar、特に約400bar〜約900bar、中でも約500〜800barで、約4〜約8(例えば7、特に6)回のサイクルでホモジナイズすると得られる。
【0038】
驚くべきことに、我々は、セチリジンが存在すると、リポソームサイズが減少する結果になることを見出した。より微細なリポソームは、表面積/容量の比が高く、物理的に安定しており、粘膜により容易に再吸収されるため、一般的に有利である。
本発明の組成物におけるリポソームの直径は、例えば以下に記載するようなレーザー回析又は動的光散乱により測定した場合、約200nm未満(例えば約40〜約100nm)であることが好ましい。
【0039】
さらに、本発明の組成物の調製のための上述の方法は、通常、有機溶媒、例えばクロロホルム又はジクロロメタンを用いた一般的な処理を必要としない。しかしながら、2又はそれ以上の膜脂質が使用される場合、水性溶媒の添加の前に、有機溶媒でそれらを処理することが適切であり及び/又は必要である場合がある。例えば、脂質は、揮発性溶媒又は溶媒混合物、例えばクロロホルム、又はクロロホルム/メタノールに溶解させることができる。次に、溶媒が減圧下でロータリーエバポレータにより除去された際に、溶液は丸底フラスコの表面に付着しうる。ついで、薬剤を含む過剰容量の水性バッファーが脂質の乾燥した薄層フィルムに添加され、該フィルムが膨張してリポソームが形成され得る。
【0040】
本発明の組成物は、鼻炎を含む、セチリジンが有効であることが知られている任意の症状の治療に有用である。「鼻炎」なる用語は、季節性鼻炎(例えば、花粉等の戸外の要因により引き起こされるもの;花粉症)、及び/又は通年性鼻炎(例えば、イエダニ、室内のカビ等により引き起こされるもの)、並びにその症状を含み、アレルギー性であるか非アレルギー性であるかにかかわらず、鼻のあらゆる刺激及び/又は炎症を含むものと理解されるであろう。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、鼻炎の治療方法であって、該疾患を患っているか、又は該疾患に罹患しやすいヒトへの、本発明の組成物の薬理学的に有効な量の(例えば経鼻)投与を含む方法が提供される。
誤解を避けるために、「治療」には、病状の治療的処置、並びに対症療法、予防、又は診断が含まれる。
本発明の組成物は、鼻用スプレー、点鼻薬及び/又は点眼薬により投与することができる。また、噴霧療法(ネブライザー)により、微細ミストとして本発明の組成物を肺に投与することもできる。経鼻投与には、水性リポソーム分散液のスプレーをつくるのに適した任意の従来の装置を使用することができる。
【0042】
「約」なる用語が、範囲(例えば、pH値、サイズ、温度、圧力等)及び量(例えば、組成物中の個々の構成物質又は組成物の成分の量、重量及び/又は濃度、リポソーム構造の内部/外部の薬剤の割合、活性成分の絶対用量)について使用される場合、それは、このような変数が近似値であり、例えば、ここで特定した数値から±10%、特に±5%、好ましくは±2%(例えば±1%)で変化し得ることが理解されるであろう。
【0043】
本発明の組成物、及びその調製に使用され得る上述した方法は、これまでに述べたような利点を有する。特に、本発明の組成物は、例えば経鼻投与されたセチリジン製剤で通常観察される不都合な副作用(特に刺激)の発生を低減することができる。
本発明の組成物は、製造が容易で、投与前の再構成の必要性を回避した、使用準備が整った形態であるリポソームベースの製剤の製造を可能とする。
また本発明の組成物は、確立された製薬加工方法を使用して調製することができ、食物、又は製薬、又は同様の規制状況で使用が承認されている物質を用いるという利点を有する。
さらに本発明の組成物には、それらが鼻炎の治療に使用されようと又は他の目的に使用されようと、従来技術で既知の医薬組成物よりも、より効果的であり、毒性が低く、長時間作用し、強力で、副作用が少なく、より容易に吸収され、及び/又はより良好な薬物動態特性を有し、及び/又は他の有用な薬理学的、物理的又は化学的特性を有するという利点がある。
【0044】
本発明を次の実施例によって例証する。
実施例1

【0045】
一般的手順。 重量と容量については上の表1を参照のこと。バッファー溶液を、2000mL容量フラスコ中で1600mLの水(全バッチ容量の80%)にリン酸二ナトリウム二水和物(NaHPO・2HO)及びリン酸二水素カリウム(KHPO)の緩衝剤を溶解させて調製した。計量した量の活性剤をバッファー溶液に添加し、磁気撹拌器で撹拌して溶解させた後、100mLの1M水酸化ナトリウム水溶液を添加した。リン脂質を別に計量し、セチリジン溶液に添加した。十分に分散した懸濁液が形成されるまで撹拌を継続し、1.0MのNaOH又は1.0MのHClでそのpHをpH7.0±0.1に調整した。ついで調合物の容量を2000mLの最終バッチ容量にした。その調合物を、ウルトラテュラックス(Ultra Turrax(登録商標))T25ホモジナイザー(Jankel & Kuehnke, 独)を備えた5Lのガラス容器に移した。ホモジナイズは、10分の静置時間を介在させて3×2分の間、22000rpmで実施した。このようにして得られた組成物の10mLの分割量を、撹拌された分散液から取り除き、上にスプレーヘッド(VP7又はVP7D;Valois S.A., 仏)が充填後に圧着されたか螺合により取付けられたガラスバイアルに移した。バイアル中の撹拌された組成物並びに組成物分割量は光から保護した。
超音波処理は平均粒径を更に減少させることが知見された。この方法では、ホモジナイズした組成物を含むバイアルを超音波処理浴に配し、2×10分、超音波処理したが、その直後に、試料は、ウルトラテュラックス(Ultra Turrax(登録商標))でのホモジナイズによって得られた不透明の組成物と比較して、ほぼ透明な外観であった。
【0046】
上述の粒径微細化法を表2で比較する。粒径分布はレーザー回折(マスターサイザー2000, Malvern Instrument, 英)によって測定した。フラウンホーファー理論に基づく方法を使用して、高速ホモジナイズ試料の粒径を算定する一方、更に超音波処理にかけた試料の粒径の計算にはMIE(2.50/0.001)理論に基づく方法を使用した。

【0047】
実施例2

一般的手順。 重量と容量については表3を参照のこと。バッファー溶液を、200mL容量フラスコ中で160mLの水(全バッチ容量の80%)に無水クエン酸及び固形水酸化ナトリウムを溶解させて調製した。計量した量の活性剤を添加し、磁気撹拌器で撹拌して溶解させた。リン脂質を別に計量し、セチリジン溶液に添加した。十分に分散した懸濁液が形成されるまで撹拌を継続し、1.0MのNaOH及び/又は1.0MのHClでそのpHをpH5.0±0.1に調整した。ついで調合物の容量を200mLの最終バッチ容量にした。その調合物を、高圧ホモジナイザー(Rannie APV, 7.30VH型, Rannie AS, デンマーク)に移し、500−800barで5サイクル、ホモジナイズした。このようにして得られた組成物の分割量を収集容器から取り除き、ガラスバイアルに移した。
【0048】
実施例3
表4では、実施例2に記載した高圧ホモジナイズ粒径微細化法を、実施例1に記載した高速ホモジナイズ法(ウルトラテュラックス(登録商標)T25ホモジナイザー;Jankel & Kuehnke, 独)と比較する。用いた組成物は実施例1のものである。粒径分布は動的光散乱(ゼータサイザー4, Malvern Instruments, 英)によって、ZET5104サイジングセル及びauto:CONTIN分析モードを使用して角度90°、室温にて測定した。

これらの例示的なバッチ組成物の調製に使用した方法を、次の更なる実施例を調製するために適合化させた。
【0049】
実施例4

【0050】
実施例5

【0051】
実施例6

【0052】
実施例7

【0053】
実施例8

【0054】
実施例9

【0055】
実施例10
イヌモデルでの鼻の刺激性試験
二硝酸セチリジン(実施例1、4及び5の組成物中、それぞれ5.6、11.1及び22.2mg/mL;高速又は高圧ホモジナイズではなく振盪)を、グループ当り4匹の雄のビーグル犬(5−6月齢、体重10.1−14.2kg)に14日間、毎日二回、投与した。臨床徴候と体重を実験の間中、モニターした。検視を実施し、鼻腔を集め、処理した(固定し、脱灰し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した)。扁平上皮、繊毛呼吸器、及び嗅上皮をカバーして、鼻腔からの4つの切片を顕微鏡で評価した。処置に関連する臨床徴候は投与期間中には観察されなかった。投与期間での平均体重増加は顕著ではなかった。鼻腔及び鼻粘膜調製物の肉眼及び顕微鏡での検査では、粘膜刺激の如何なる徴候も他の変化も明らかにならなかった。
【0056】
実施例11
ウサギモデルでの眼球刺激性試験
本発明の組成物の潜在的な刺激性を、2.8から3.4kgの体重の処置当り3匹の雌の白(アルビノ)ニュージーランドウサギで眼刺激性試験においてまた評価した。調べた濃度は実施例1の組成物において5.6、11.1及び22.2mg/mLであった。0.1mLの組成物を各ウサギの左眼に配した。右眼は未処置のコントロールとした。処置前と処置後1、24、48及び72時間で検査した。処置に対する眼球反応を、主観的数値採点法に従って等級分けした。結膜の刺激の徴候(発赤)が、22.2mg/mLの二硝酸セチリジンを含む組成物を投与されたグループの2匹のウサギで観察された。最初のウサギでは、0から3の等級分けスケールでスコア2(広範性、深紅色、個々の血管が容易には識別できない)が処置の1時間後に認められた。第二のウサギでは、4の等級スケールでスコア1(幾らかの充血した血管)が24時間で認められた。双方の場合、発赤は続く観察では存在せず、よって症状は改善可能と考えられた。眼球刺激の他の徴候は何れの動物にも観察されなかった。
【0057】
実施例12
鼻の刺激性試験
二硝酸セチリジン(11.1mg/mL)の単一用量(各鼻孔に110μL)を5名の健常な志願者に、各セッションにおいて4製剤(I−IV;詳細は表5参照)の一つで4セッション、投与した。製剤I、II及びIIIは上の実施例の製剤であり、参照製剤IVは本発明の製剤ではない。この試験を実施して、単純なバッファー溶液と比較したリポソーム製剤による刺激の低減を調べた。また粒径とリン脂質対セチリジンの比の影響を調べた。

投与後1、10、30分で鼻の症候スコアを評価した。鼻の症候スコアには次の変数を含めた:鼻のうっ血、鼻漏、掻痒/くしゃみ、灼熱/痛み、及び味覚。これらの症候は、なし−軽い−中程度−重症(0−3)の症候スケールに従って被験者が分類分けした。その結果を、全5名の被験者のスコアを加えて、合計スコアとしてまとめた(最大スコア15)。
リン脂質製剤は単純なバッファー溶液よりもよく耐えられた。より微細なリポソームが、ある程度の利点を有していると思われる。1分で全被験者によって報告された軽い不快感は、超音波処理によって粒径を減少させた二種の製剤(II及びIII)では10分で実質的になくなった。これに対して、製剤Iに対して報告された初期の軽い不快感は10分でも持続した。セチリジンに対するリン脂質の比を増大させても製剤の性能が更に改善することはなかった。

【0058】
実施例13
鼻の刺激性試験
二硝酸セチリジン(11.1mg/mL)の単一用量(各鼻孔に110μL)を4名の健常な志願者に、各セッションにおいて4製剤(I−IV;詳細は表7参照)の一つで4セッション、投与した。この試験を実施して、天然及び合成由来の異なった膜脂質を含む製剤の刺激性を調べた。

投与後1、10、30分で鼻の症候スコアを評価した。鼻の症候スコアには次の変数を含めた:鼻のうっ血、鼻漏、掻痒/くしゃみ、灼熱/痛み、及び味覚。これらの症候は、なし−軽い−中程度−重症(0−3)の症候スケールに従って被験者が分類分けした。その結果を、全4名の被験者のスコアを加えて、合計スコアとしてまとめた(最大スコア12)。
【0059】
DOPC及びDOPGを含む製剤は非常に良好に耐えられ、1分では如何なる種類の報告も実質的になかった。10分では、天然由来の膜脂質と比較してこれらの二種の製剤には尚も良好な耐容性の傾向があった。

次の実施例をまたこれまでに記載した手順と同様の手順に従って調製した。
【0060】
実施例14

【0061】
実施例15

【0062】
実施例16

【0063】
実施例17

【0064】
実施例18

【0065】
実施例19

【0066】
実施例20

【0067】
実施例21

【0068】
実施例22

【0069】
実施例23

【0070】
実施例24

【0071】
実施例25

【0072】
実施例26

【0073】
実施例27

【0074】
実施例28

【0075】
実施例29

【0076】
実施例30

【0077】
実施例31

【0078】
実施例32

【0079】
実施例33

【0080】
実施例34

【0081】
実施例35


【特許請求の範囲】
【請求項1】
双性イオン性セチリジンと、極性脂質リポソームと、薬剤的に許容可能な水性担体を含有する、経鼻又は経眼投与による鼻炎治療用医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の均質な組成物。
【請求項3】
約pH4〜約pH8のpHを提供可能な薬剤的に許容可能なバッファーをさらに含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
pHの範囲が約pH5〜約pH7である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
バッファーが、ホスファート、シトラート又はアセテートバッファーである請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
バッファーが、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸と塩基、クエン酸ナトリウム、クエン酸と塩基、酢酸ナトリウム、又は酢酸と塩基である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
バッファーの量が約1mg/mL〜約30mg/mLの範囲である請求項3ないし6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
セチリジンが塩の形態で提供される請求項1ないし7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
塩が、塩化物塩、塩酸塩又は硝酸塩である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
塩が二硝酸セチリジンである請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
組成物の調製に用いられるセチリジン又は塩の量が、双性イオン性形態で算出して約1mg/mL〜約30mg/mLである請求項1ないし10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記量が約5.5mg/mL〜約22mg/mLである請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
極性脂質が天然由来であり、合成/半合成由来であり、又は該二種の混合物を含む請求項1ないし12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
極性脂質が、リン脂質又はリン脂質混合物を含有するか又はそれらからなる請求項1ないし13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン又はそれらの混合物をベースにしたものを含む請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
リン脂質が、一般式I:

[上式中、R及びRは独立して、7〜23の炭素原子を有する飽和又は不飽和で分枝状又は直鎖状のアルキル基を表し;Rはアミド又はエステル結合基を表す]
によって表されるものを含む請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
アミド又はエステル結合基が、-CH-CH(OH)-CHOH、-CH-CH-N(CH)、-CH-CH-NH、-H又は-CH-CH(NH)-COOHである請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
リン脂質が、大豆由来の膜脂質を含む請求項14ないし17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
リン脂質が、リポイドS75、リポイドS100及び/又はリポイドS75-3Nを含む請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
リン脂質が、ジラウリルホスファチジルコリン、ジミリストールホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジラウリルホスファチジルグリセロール、ジミリストールホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルコリン、又はジオレオイルホスファチジルグリセロールを含む請求項14ないし19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
極性脂質が、糖脂質又は糖脂質混合物を含むか又はそれらからなる請求項1ないし13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
糖脂質がグリセロ糖脂質を含む請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
グリセロ糖脂質がガラクトグリセロ脂質を含む請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
グリセロ糖脂質が、一般式II:

[上式中、R及びRは請求項16に記載の通りである]
のジガラクトシルジアシルグリセロールを含む請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
糖脂質がジガラクトシルジアシルグリセロールを含む請求項21ないし24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
糖脂質がスフィンゴ糖脂質を含む請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
スフィンゴ糖脂質が、モノグリコシルスフィンゴイド、オリゴグリコシルスフィンゴイド、オリゴグリコシルセラミド、モノグリコシルセラミド、シアロスフィンゴ糖脂質、ウロノスフィンゴ糖脂質、スルホスフィンゴ糖脂質、ホスホスフィンゴ糖脂質、ホスホノスフィンゴ糖脂質、セラミド、モノヘキソシルセラミド、ジヘキソシルセラミド、スフィンゴミエリン、リソスフィンゴミエリン、スフィンゴシン又はそれらの混合物を含む請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
スフィンゴ糖脂質が、スフィンゴミエリン又はそれから誘導された生成物を含む請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
糖脂質がグリコホスファチジルイノシトールを含む請求項21に記載の組成物。
【請求項30】
使用される極性脂質物質の量が、約10mg/mL〜約120mg/mLの範囲である請求項1ないし29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
組成物中のリン脂質の量が、約17mg/mL〜約70mg/mLである請求項1ないし20又は30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記量が約20mg/mL〜約40mg/mLである請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
酸化防止剤をさらに含有する請求項1ないし32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
酸化防止剤が、α-トコフェロール、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、モノチオグリセロール、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、酒石酸及び/又はビタミンEである請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
キレート剤をさらに含有する請求項1ないし34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン三酢酸及び/又はジエチレントリアミン五酢酸である請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
保存料をさらに含有する請求項1ないし36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
保存料が、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチルパラベン、クロルブタノール、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール及び/又はフェニルエチルアルコールである請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
増粘剤をさらに含有する請求項1ないし38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
増粘剤が、ポリエチレングリコール、架橋ポリビニルピロリドン及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
リポソームの直径が約200nm未満である請求項1ないし40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記直径が約40nm〜約100nmである請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
請求項1ないし42のいずれか一項に記載の組成物の調製方法であって、
(a)水性媒体中で膨潤性である極性脂質又は極性脂質混合物をセチリジンの水溶液に攪拌しながら添加し;
(b)その調製物をホモジナイズする;
ことを含む方法。
【請求項44】
ホモジナイズ工程の前に、酸又は塩基の添加によりpHを所望値に調節する請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ホモジナイズ工程の前に、水、食塩水又はバッファー溶液を調製物に添加して、所望の最終バッチ容量を得る請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
水、食塩水又はバッファーの添加が、pH調節工程の後になされる(請求項44に従属する)請求項45に記載の方法。
【請求項47】
溶液/液体の少なくとも一が、窒素及び/又はアルゴンでパージされる請求項43ないし46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記セチリジンの水溶液を、脂質の添加前に、セチリジン又はその塩の水溶液にバッファーを添加するか、又はバッファー水溶液にセチリジン又はその塩を添加することにより、生成する請求項43ないし47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
極性脂質混合物を使用する場合、有機溶媒で前処理する請求項43ないし48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
ホモジナイズ工程(b)が、激しい機械的攪拌、高速ホモジナイズ処理、振盪、ボルテックス処理及び/又はローリング処理を含む請求項43ないし49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
付加的なリポソーム微細化工程を含む請求項43ないし50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記微細化工程が、メンブランフィルターを通す押出しを含む請求項51に記載の方法。
【請求項53】
ホモジナイズ工程及び/又は微細化工程が、高圧ホモジナイズ処理を含む請求項43ないし49、51又は52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
(a)水性媒体中で膨潤性である極性脂質又は極性脂質混合物をセチリジンの水溶液に攪拌しながら添加し;
(b)その調製物をホモジナイズする;
ことを含む方法により得られうる医薬組成物。
【請求項55】
前記方法において、ホモジナイズ工程の前に、酸又は塩基の添加により、pHが所望値に調節される請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記方法において、ホモジナイズ工程の前に、水、食塩水又はバッファー溶液を調製物に添加して、所望の最終バッチ容量を得る請求項54又は55に記載の組成物。
【請求項57】
水、食塩水又はバッファーの添加が、pH調節工程の後になされる(請求項55に従属する)請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
前記方法において、溶液/液体の少なくとも一が窒素及び/又はアルゴンでパージされる請求項54ないし57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
前記方法において、セチリジンの水溶液が、脂質の添加前に、バッファー水溶液にセチリジン又はその塩を添加することにより、又はセチリジン又はその塩の水溶液にバッファーを添加することにより形成される、請求項54ないし58のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項60】
前記方法において、極性脂質混合物が使用される場合、有機溶媒で前処理される請求項54ないし59のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
前記方法において、ホモジナイズ工程(b)が、激しい機械的攪拌、高速ホモジナイズ処理、振盪、ボルテックス処理及び/又はローリング処理を含む請求項54ないし60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
前記方法において、付加的なリポソーム微細化工程を含む請求項54ないし61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
微細化工程が、メンブランフィルターを通す押出しを含む請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記方法において、ホモジナイズ工程及び/又は微細化工程が、高圧ホモジナイズを含む請求項54ないし60、62又は63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
医薬における使用のための請求項1ないし42又は54ないし64のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項66】
鼻炎の治療方法において、該疾患を患っているか又は該疾患に罹患しやすいヒトに、請求項1ないし42又は54ないし64のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項67】
鼻炎の治療のための医薬の製造における請求項1ないし42又は54ないし64のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、該治療が、該疾患を患っているか又は該疾患に罹患しやすいヒトへの該組成物の投与を含む使用。
【請求項68】
投与が鼻内投与である請求項66に記載の方法、又は請求項67に記載の使用。
【請求項69】
投与が眼内投与である請求項66に記載の方法、又は請求項67に記載の使用。
【請求項70】
投与が肺になされる請求項66に記載の方法、又は請求項67に記載の使用。

【公表番号】特表2007−537220(P2007−537220A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512327(P2007−512327)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001758
【国際公開番号】WO2005/107711
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(505347558)バイオリポックス エービー (26)
【Fターム(参考)】