説明

(メタ)アクリル系共重合体粉体、及びこれを含有する塩化ビニル系樹脂組成物

【課題】 効率良く溶融、混練が行え、高表面光沢の成形体となる塩化ビニル系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体は、ラテックスの体積平均粒子径が1000Å〜5000Åであり、比粘度が0.80〜2.00であって、メタクリル酸メチル80〜95重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル5〜20重量%、及びこれらと共重合可能な他の単量体0〜5重量%よりなる単量体の混合物(A)70〜95重量部を乳化重合し、その存在下に、メタクリル酸メチル30〜65重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル35〜70重量%、及びこれらと共重合可能な他の単量体0〜5重量%よりなる単量体の混合物(B)5〜30重量部を乳化重合した(メタ)アクリル系共重合体を噴霧乾燥して得られ、乳化重合する際の乳化剤が、アルキルベンゼンスルホン酸塩等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系共重合体粉体およびこれを含有する塩化ビニル系樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂はその特性を活かして成形材料等に広く用いられているが、熱分解温度が加工温度に近い、流動性に乏しいなど種々の加工に関する問題を有している。これらの欠点を克服するためにメタクリル酸メチルを主成分とする(メタ)アクリル系重合体を加工性改良剤として配合し、塩化ビニル系樹脂の成形加工時におけるゲル化を促進したり、成形体の外観を向上させることが提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。この方法によれば、塩化ビニル系樹脂が有する特性を低下させることなく、ゲル化の程度の高い塩化ビニル系樹脂成形体が得られ、成形体の機械的性質、透明性を保持したまま、加工性を改良することが可能である。さらに、高温での破断伸びが向上することにより、深絞り成形が可能になるばかりでなく、真空成形、異型押出成形、ブロー成形、カレンダー成形にも適用可能となることが知られている。
【0003】
しかしながら、上記(メタ)アクリル系重合体は、通常は、塩析凝固、熱処理、ろ過、乾燥の工程を経て粉体の回収が行なわれており、微粉を減少させるためには比較的高い温度での熱処理を要するため、粒子同士の融着が進行し易い傾向がある。そのため、塩化ビニル樹脂中に均一に分散させることが難しく、配合条件、成形条件等によっては、更なる上記特性の向上が求められる場合があった。中でも、例えば、異型押出成形によって塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に、塩化ビニル系樹脂のゲル化の程度を高くすることで機械的性質を向上させることができるものの、表面光沢が不充分で、成形体の商品価値が低いという問題があった。また、カレンダー成形等によって塩化ビニル系樹脂組成物をシート状に成形する際に、シート表面に生じるフローマークを抑えながら、表面光沢を高めることは困難なため、成形品の商品価値が低下するという問題があった。
【0004】
以上の如く、塩化ビニル系樹脂組成物に対し、更なる加工性改良等の物性向上が望まれているのが現状である。
【特許文献1】特公昭52−1746号公報
【特許文献2】特開平10−17626号公報
【特許文献3】特許第2515014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塩化ビニル系樹脂組成物の溶融、混練を効率良く行ない、異型押出成形体、カレンダー成形体、およびブロー成形体等の表面光沢を高くすることで、優れた成形外観を提供できる塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定の(メタ)アクリル系共重合体粉体、およびそれを含有する塩化ビニル系樹脂組成物が上記課題を解決する上で特異的に効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体は、メタクリル酸メチル80〜95重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル5〜20重量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜5重量%よりなる単量体の混合物(A)70〜95重量部を乳化重合し、
その生成重合体ラテックスの存在下に、メタクリル酸メチル30〜65重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル35〜70重量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜5重量%よりなる単量体の混合物(B)5〜30重量部を乳化重合しすることで(メタ)アクリル系共重合体を得て、
さらに、前記(メタ)アクリル系共重合体のラテックスを噴霧乾燥して得られる(メタ)アクリル系共重合体粉体であって、
前記乳化重合する際に使用する乳化剤が、アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びアルカノイルサルコシン塩から選ばれる一種以上であり、前記(メタ)アクリル系共重合体ラテックスの体積平均粒子径が1000Å〜5000Åのであり、かつ、100ccのトルエン中に0.4gの前記(メタ)アクリル系共重合体粉末を溶解させ、この溶液を30℃で測定することにより求めた該前記(メタ)アクリル系共重合体の比粘度が0.80以上、2.00以下である(メタ)アクリル系共重合体粉体である。
【0008】
また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部、及び前記(メタ)アクリル系共重合体粉体0.1〜20重量部を含有することを特徴とする、塩化ビニル系樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体を用いた塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂が本来有する優れた物理的特性を低下させることなく、成形加工時のゲル化特性等を改善することが可能である。また、異型押出成形体、カレンダー成形体、およびブロー成形体等の表面光沢を高くすることで、優れた成形外観を有する、塩化ビニル系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において(メタ)アクリルとは、特に断らない限り、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0011】
(単量体混合物(A))
本発明の(メタ)アクリル系共重合体の重合に用いられる単量体混合物(A)は、メタクリル酸メチル80〜95重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル5〜20重量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜5重量%より構成される。
【0012】
前記単量体混合物(A)中のメタクリル酸メチルの割合は80〜95重量%であることが好ましく、80〜90重量%であることがより好ましい。単量体混合物(A)中のメタクリル酸メチルの割合が80重量%未満であると、本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体を配合して得られる塩化ビニル系樹脂成形体の光沢改良効果が十分でなかったり、塩化ビニル系樹脂が本来有している透明性が損われる場合がある。逆に単量体混合物(A)中のメタクリル酸メチルの割合が95重量%を超えると、本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体を塩化ビニル系樹脂に配合した場合のゲル化速度が遅くなったり、フィッシュアイ(以下、F.E.ともいう)と呼ばれる未溶融物が発生する傾向がある。
【0013】
単量体混合物(A)中の構成成分であるメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルについては、適度な水溶性があり乳化重合に適している点から、メタクリル酸メチルを除いたアルキル基の炭素数が2〜8のメタクリル酸エステルおよび/またはアルキル基の炭素数1〜8のアクリル酸エステルであることが好ましい。なお、上記アルキル基の炭素数が2〜8のメタクリル酸エステルおよび/またはアルキル基の炭素数1〜8のアクリル酸エステルとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル等のアクリル酸アルキルエステルが例示される。さらに、前記以外のその他の(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル等の炭素数9以上のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸トリデシル等の炭素数9以上のアクリル
酸アルキルエステル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどが例示されうる。これらは単独でまたは二種以上組み合わせて適宜用いることができる。中でも、工業的に入手しやすい観点から、特に好ましいのはメタクリル酸ブチルおよびアクリル酸ブチルである。
【0014】
単量体混合物(A)中のメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの割合は、5〜20重量%であることが好ましく、10〜20重量%であることがより好ましい。単量体混合物(A)中のメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの割合が5重量%未満であると、本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体を塩化ビニル系樹脂に配合した場合のゲル化速度が遅くなったり、F.E.が発生する傾向がある。逆に単量体混合物(A)中のメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの割合が20重量%を超えると、塩化ビニル系樹脂成形体の光沢改良効果が十分に得られなかったり、塩化ビニル系樹脂が本来有している透明性が損われる場合がある。
【0015】
前記単量体混合物(A)中の共重合可能な他の単量体の割合は0〜5重量%であることが好ましく、0〜2重量%であることがより好ましい。なお、上記単量体混合物(A)中の任意の構成成分である共重合可能な他の単量体としては、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体であれば特に制限されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルスチレン、および核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物等が例示されうる。これらは、本発明の(メタ)アクリル系重合体を加工性改良剤として用いた場合に、ゲル化促進効果、光沢、透明性、F.E.に関して、実用的な問題を発生しない程度に単独で又は二種以上組み合わせて適宜用いることができる。
【0016】
(単量体混合物(B))
本発明における(メタ)アクリル共系重合体の重合に用いられる単量体混合物(B)は、メタクリル酸メチル30〜65重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル35〜70重量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜5重量%より構成されうる。
【0017】
単量体混合物(B)中のメタクリル酸メチルの割合は30〜65重量%であることが好ましく、40〜60重量%であることがより好ましい。単量体混合物(B)中のメタクリル酸メチルの割合が30重量%未満であると、本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体を配合して得られる塩化ビニル系樹脂成形体の光沢改良効果が十分でなかったり、塩化ビニル系樹脂が本来有している透明性が損われる場合がある。逆に単量体混合物(B)中のメタクリル酸メチルの割合が65重量%を超えると、本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体を塩化ビニル系樹脂に配合した場合のゲル化速度が遅くなったり、F.E.と呼ばれる未溶融物が発生する傾向がある。
【0018】
単量体混合物(B)中の構成成分であるメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルについては、適度な水溶性があり乳化重合に適している点から、メタクリル酸メチルを除いたアルキル基の炭素数が2〜8のメタクリル酸エステルおよび/またはアルキル基の炭素数が1〜8のアクリル酸エステルであることが好ましい。なお、上記アルキル基の炭素数が2〜8のメタクリル酸エステルおよび/またはアルキル基の炭素数1〜8のアクリル酸エステルとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル等のアクリル酸アルキルエステルが例示されうる。さらに、前記以外のその他の(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル等の炭素数9以上のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸トリデシル等の炭素数9以上のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどが例示されうる。これらは単独でまたは二種以上組み合わせて適宜用いることができる。中でも、工業的に入手しやすい観点から、特に好ましいのはメタクリル酸ブチルおよびアクリル酸ブチルである。
【0019】
単量体混合物(B)中のメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの割合は、35〜70重量%であることが好ましく、40〜60重量%であることがより好ましい。単量体混合物(B)中のメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの割合が35重量%未満であると、本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体を塩化ビニル系樹脂に配合した場合のゲル化速度が遅くなったり、F.E.が発生する傾向がある。逆に単量体混合物(B)中のメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの割合が65重量%を超えると、本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体を配合して得た塩化ビニル系樹脂成形体の光沢改良効果が十分に得られなかったり、塩化ビニル系樹脂が本来有している透明性が損われる場合がある。
【0020】
前記単量体混合物(B)中の共重合可能な他の単量体の割合は0〜5重量%であることが好ましく、0〜2重量%であることがより好ましい。なお、上記単量体混合物(B)の構成成分である共重合可能な他の単量体としては、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体であれば特に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルスチレン、および核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物等が例示されうる。共重合可能な他の単量体の割合が上記範囲を逸脱すると、本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体を塩化ビニル系樹脂に配合した場合のゲル化促進効果が十分に得られなかったり、塩化ビニル系樹脂が本来有している透明性が損われる場合がある。
【0021】
((A)と(B)との組成比率)
本発明における(メタ)アクリル系共重合体は、単量体混合物(A)70〜95重量部を重合してなる重合体、並びに単量体混合物(B)5〜30重量部(ただし、単量体混合物(A)および単量体混合物(B)の合計は100重量部)を重合してなる重合体を含有することに特徴を有する。本発明の(メタ)アクリル系共重合体の製造に用いられる単量体混合物(A)は、好ましくは75〜90重量部、より好ましくは80〜90重量部である。(メタ)アクリル系共重合体の製造に用いる単量体混合物(A)の割合が70重量部未満である場合には、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の成形体における光沢の低下や、塩化ビニル系樹脂が本来有している透明性が損われる場合がある。逆に単量体混合物(A)の割合が95重量部を越える場合には、本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体を塩化ビニル系樹脂に配合した場合のゲル化速度が遅くなる場合や、F.E.が発生する傾向がある。一方、(メタ)アクリル系共重合体の製造に用いられる単量体混合物(B)は、好ましくは10〜25重量部、より好ましくは10〜20重量部である。(メタ)アクリル系共重合体の製造に用いる単量体混合物(B)の割合が5重量部未満である場合には、本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉体を塩化ビニル系樹脂に配合した場合のゲル化速度が遅くなったり、F.E.が発生する傾向がある。逆に30重量部を越える場合には、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の成形体における光沢の低下や、塩化ビニル系樹脂が本来有している透明性が損われる場合がある。
【0022】
(比粘度)
本発明における(メタ)アクリル系共重合体は、当該共重合体を特定条件下において溶媒に溶解させた際の比粘度が特定の範囲となるように、調製することが必要である。なお、本発明において、比粘度は、100ccのトルエン中に0.4gの(メタ)アクリル系共重合体粉体を溶解させ、この溶液を30℃で測定することにより求めた値を意味するものとする。
【0023】
本発明における(メタ)アクリル系共重合体の比粘度は、0.80以上、2.00以下の範囲で設定することが好ましく、さらには0.90以上、1.40以下の範囲で設定することがより好ましい。本発明における(メタ)アクリル系共重合体の比粘度が2.00を越える場合は、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を用いて成形した場合に成形体の透明性の低下やF.E.が発生する傾向がある。逆に(メタ)アクリル系共重合体の比粘度が0.80未満の場合は、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の成形体における光沢が低下する場合がある。ここで、前記比粘度の測定条件において、比粘度が0.80以上、2.00以下の範囲にある(メタ)アクリル系共重合体は、そのポリスチレン換算の重量平均分子量が概ね80万〜200万の範囲であると推測される。
【0024】
上記の(メタ)アクリル系共重合体の比粘度は、例えば、(メタ)アクリル系共重合体の製造における重合条件などにより適宜調整することができる。具体的には、重合する際の重合開始剤(触媒)量の調整、重合に使用する連鎖移動剤量の調整、若しくは重合温度の調整などを例示することができる。より具体的には、重合開始剤(触媒)量を減少させる、連鎖移動剤量を減少させる、若しくは重合温度を下げることにより、(メタ)アクリル系共重合体の比粘度を上げることが可能である。逆に、重合開始剤(触媒)量を増量する、連鎖移動剤を増量する、または重合温度を上げることで(メタ)アクリル系共重合体の比粘度を下げることが可能である。
【0025】
(重合方法)
本発明の(メタ)アクリル系共重合体を得るための重合方法としては、分子量、粒子構造の制御が容易であり、工業的生産に適し、多段重合法も適用しやすい観点等から、乳化重合法が好ましい。即ち、本発明の(メタ)アクリル系共重合体においては、前記単量体混合物(A)を乳化重合して得られる生成重合体ラテックスの存在下に、引き続き前記単量体混合物(B)を乳化重合して得られることが好ましい。
【0026】
乳化重合法により本発明の(メタ)アクリル系共重合体を調製する場合には、それぞれ目的の共重合体が得られるように、適宜、乳化剤、重合開始剤および連鎖移動剤などの種類および使用量を設定して重合を行うことができる。
【0027】
(乳化剤)
前記の乳化剤としては公知のものを用いることができる。たとえば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ジアル
キルスルホコハク酸塩、アルカノイルサルコシン塩などのアニオン性界面活性剤、またポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどのノニオン性界面活性剤、さらにアルキルアミン塩などのカチオン性界面活性剤を使用することができる。中でも、重合安定性、熱安定性、色調に優れる点から、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカノイルサルコシン塩が好ましく、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましい。
【0028】
アルキルベンゼンスルホン酸塩の具体例としては、例えば、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが例示されうる。
【0029】
また、アルカノイルサルコシン塩の具体例としては、例えば、オレオイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、パルミトイルサルコシンナトリウム、ステアロイルサルコシンナトリウムなどが例示されうる。
【0030】
(重合開始剤)
前記重合開始剤としては、水溶性や油溶性の重合開始剤、レドックス系の重合開始剤等の公知のものを使用することができる。たとえば、通常の過硫酸塩などに代表される無機塩系重合開始剤、有機過酸化物、アゾ化合物などが例示され、これらを単独で用いるか、または前記化合物と亜硫酸塩、亜硫酸水素、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどを組み合わせ、レドックス系重合開始剤として用いることもできる。重合開始剤として特に好ましい無機塩系重合開始剤としては、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが例示され、好ましい有機過酸化物としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどを例示することができる。
【0031】
(連鎖移動剤)
前記連鎖移動剤としては公知のものを用いることができ、たとえば、主鎖の炭素数が4〜12のアルキルメルカプタンを好適に例示できる。具体的には、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコールなどをあげることができる。
【0032】
(体積平均粒子径)
本発明における(メタ)アクリル系共重合体のラテックス中の共重合体粒子の体積平均粒子径は、1000Å〜5000Åであることが好ましく、1000Å〜2500Åであることがより好ましく、1100Å〜2500Åであることがさらに好ましい。(メタ)アクリル系共重合体ラテックス中の共重合体粒子の体積平均粒子径が1000Å未満の場合、噴霧乾燥により形成された粉体粒子の内部および表面が融着し易く、F.E.の発生や、(メタ)アクリル系共重合体が本来有するゲル化促進能力が失われる場合がある。なお、粉体粒子内部および表面の融着有無は、例えば、光学顕微鏡で観察することができる。例えば、融着していない場合には、粉体粒子全体が白色であるが、融着が進行するに従い透明になっていくことから観察できる。逆にラテックス中の共重合体粒子の体積平均粒子径が5000Åを超える場合には、本発明の(メタ)アクリル系共重合体粉末を配合した塩化ビニル系樹脂組成物を成形すると、(メタ)アクリル系共重合のラテックス中における体積平均粒子径が大きいために塩化ビニル系樹脂組成物中に(メタ)アクリル系共重合が均一に分子分散せず、成形体にF.E.が発生したり、(メタ)アクリル系共重合体が本来有するゲル化促進能力が失われる場合がある。なお、上記ラテックス中における体積平均粒子径は、例えば、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いることにより測定することができる。
【0033】
(回収方法)
従来、(メタ)アクリル系共重合体のラテックスからの粉体の回収方法としては、乳化重合法により得られた(メタ)アクリル系共重合体ラテックスに、硫酸、塩酸、リン酸等の酸、または塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の塩に代表される電解質を添加することにより、酸凝固もしくは塩析させた後、熱処理、洗浄、脱水、乾燥の各処理を行い、粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を回収する方法が一般的である。
【0034】
(噴霧乾燥回収)
しかしが、本発明においては、(メタ)アクリル系共重合体粉体を塩化ビニル系樹脂に配合、成形した際にゲル化速度を速くしたり、高い表面光沢を有する塩化ビニル系樹脂組成物を得る観点から、噴霧乾燥(スプレイドライ)して(メタ)アクリル系共重合体の粉末を得ることが必要である。前記噴霧乾燥の条件は特に制限されるものではないが、噴霧乾燥により形成された粒子の内部および表面が融着すると、前記の如くF.E.の発生や、(メタ)アクリル系共重合体が本来有する能力が失われるため、粒子内部および表面が融着しない条件で実施することが好ましい。
【0035】
本発明においては、前記の如く(メタ)アクリル系共重合体のラテックスを噴霧乾燥して粉体を得ることに特徴を有するが、この場合は当該粉体中に(メタ)アクリル系共重合体を乳化重合する際に使用する乳化剤、開始剤残渣等が残存するため、これらが本発明により得られる塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工する際の加工性や、得られる成形体の物性に影響を及ぼす場合がある。従って、(メタ)アクリル系共重合体の重合に使用する乳化剤は、熱安定性、色調の観点から、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカノイルサルコシン塩であることが好ましく、中でも直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が特に好ましい。
【0036】
(塩化ビニル系樹脂)
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる塩化ビニル系樹脂には特に限定はなく、従来から使用されている塩化ビニル系樹脂を特に制限無く使用できる。具体的には、ポリ塩化ビニル、好ましくは80重量%以上の塩化ビニルとこれと共重合可能な単量体20重量%以下からなる塩化ビニル系共重合体、あるいは後塩素化ポリ塩化ビニルなどを例示することができる。前記の塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、例えば、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、スチレン、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどを例示することができる。これらは単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
【0037】
(配合割合)
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物における、塩化ビニル系樹脂および(メタ)アクリル系共重合体粉末の配合割合は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、(メタ)アクリル系共重合体粉末が0.1〜20重量部であることが好ましく、更には0.1〜10重量部であることがより好ましく、特には0.1〜5重量部であることが最も好ましい。(メタ)アクリル系重合体粉末の配合量が、0.1重量部未満の場合には塩化ビニル系樹脂組成物から得られる成形体の光沢改良効果が十分でなかったり、塩化ビニル系樹脂に(メタ)アクリル系共重合体粉体を配合した場合のゲル化促進効果が得られない場合がある。逆に20重量部を超えた場合には塩化ビニル系樹脂が本来有している透明性が損われたり、さらに溶融粘度が著しく増加することで加工機のモーターに大きな負荷を与える場合がある。
【0038】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限り、安定剤、滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、着色剤、充填剤、発泡剤などの公知の添加剤を適宜加えてもよい。
【実施例】
【0039】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
水140重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05重量部、硫酸ナトリウム0.1重量部を混合し、70℃で窒素置換した後に過硫酸カリウム0.09重量部、次いで攪拌しながらメタクリル酸メチル(以下、MMAともいう)68重量部、アクリル酸ブチル(以下、BAともいう)12重量部からなる単量体混合物(A)を190分間を要して連続添加し、また単量体混合物(A)の追加開始から45分、90分目にそれぞれドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3重量部を添加した。更に単量体混合物(A)の添加終了後、1時間攪拌して重合を行った。この重合体にMMA10重量部、BA10重量部からなる単量体混合物(B)を48分間を要して連続添加した。更に1時間攪拌して重合を行ない、反応を終了させて(メタ)アクリル系共重合体ラテックスを得た。ラテックス中の(メタ)アクリル系共重合体粒子の体積平均粒子径は1530Åであった。このラテックスを冷却し、大川原化工機株式会社、L−12型スプレードライヤーにて、入り口温度120℃および出口温度50℃で噴霧乾燥を行ない、粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、これを以下の試験に供した。得られた結果は表1に示した。
【0041】
(i)共重合体の比粘度(ηsp)測定
得られた(メタ)アクリル系共重合体粉体0.4gを精秤し、100ccのトルエンに溶解させ、30℃の水浴中で一定温度に保ったユーベロード型粘度計を用いて比粘度を測定した。
【0042】
(ii)光沢評価試験
光沢の評価は、60度の光沢計(micro−TRI−gloss、Gardner社製)を使用して行った。評価用の試料は、65mmパラレル押出機(Battenfeld社製)を用いて、成形条件C1/C2/C3/C4/AD/D1/D2/D3/D4:195/195/193/190/190/198/200/198/197(℃)、スクリュー回転数17rpm、吐出量85kg/時間にて、異型窓枠成形を実施し、得られた窓枠成形体を用い、この窓枠成形体表面の光沢を測定した。
【0043】
なお、前記光沢の評価は、平均重合度1000のポリ塩化ビニル樹脂(カネビニールS-1008、株式会社カネカ製)100重量部にメチル錫メルカプト系安定剤(TM−181FSJ、勝田化工社製)1.5重量部、パラフィンワックス(Rheolub165、Rheochem社製)1.0重量部、ステアリン酸カルシウム(SC−100、堺化学社製)1.2重量部、酸化ポリエチレンワックス(ACPE−629A、アライドシグナル社製)0.1重量部、炭酸カルシウム5重量部、酸化チタン(R−62N、堺化学社製)10重量部、耐衝撃強化剤(カネエースFM−40、株式会社カネカ製)5重量部をヘンシェルミキサーを用いて樹脂温度が105℃になるまで混合し、その後室温まで冷却したものに、得られた粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を1.5重量部配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いた。
【0044】
(iii)フィッシュアイ(F.E.)評価試験
F.E.の評価は、シートの目視によって行った。評価用の試料は、関西ロール株式会社製8インチラボテストロールを用い、ロール温度200℃、回転数が前ロール17rpm、後ロール16rpmで3分間樹脂組成物を混練して得たロールシート(シート厚0.5mm、巾35cm)を用いた。シート表面の一定面積中におけるF.E.の個数を目視で判断し、F.E.が見られないものを◎、F.E.は見られるが実用上問題ないものを○、F.E.が目立ち実用上問題あるものを△、F.E.が非常に多く実用的ではないものを×とし4段階で評価した。なお、F.E.とは、シート状成形体中に入っている小球状の固まりで、未溶融物をいう。
【0045】
前記F.E.の評価には、平均重合度800のポリ塩化ビニル樹脂(カネビニールS−1008、株式会社カネカ製)100重量部にオクチルスズ系安定剤(17MOK−N、共同薬品製)1.3重量部、複合高分子エステル(Loxiol G-78、コグニスジャパン製)0.6重量部、ポリオールエステル(Loxiol GH4、コグニスジャパン製)0.6重量部、衝撃強化剤(カネエースB-51、株式会社カネカ製)10重量部をヘンシェルミキサーを用いて樹脂温度が110℃になるまで混合し、その後室温まで冷却したものに、得られた粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を2重量部配合して塩化ビニル系樹脂組成物として用いた。
【0046】
(iv)透明性評価試験
透明性の評価は、日本電色工業株式会社製Σ80 COLOR MESURING SYSTEMを使用して行なった。評価用の試料は、関西ロール株式会社製8インチラボテストロールを用い、ロール温度160℃、回転数が前ロール20rpm、後ロール18rpmで5分間樹脂組成物を混練して得たロールシート(シート厚1.0mm、幅35cm)を5〜6枚重ねて、プレス温度170℃で15分間プレスした5mm厚の透明板を用いた。
【0047】
前記透明性の評価には、平均重合度700のポリ塩化ビニル樹脂(カネビニールS−1007、株式会社カネカ製)100重量部にメチル錫メルカプト系安定剤(TM−181FSJ、勝田化工社製)1.8重量部、グリセライド(Loxiol G-15、コグニスジャパン製)1.0重量部、二塩基酸エステル(Loxiol G-60、コグニスジャパン製)1.5重量部、加工性改良剤(カネエースPA−101、株式会社カネカ製)0.5重量部をヘンシェルミキサーを用いて樹脂温度が110℃になるまで混合し、その後室温まで冷却したものに、得られた粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を10重量部配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いた。
【0048】
(v)ゲル化評価試験
ゲル化評価試験は、株式会社東洋精機製作所製、LaboPlastomillを使用して行なった。評価は温度150℃、回転数30rpm、充填量73gで混練した時の最大トルクに到達するまでの時間(以下、ゲル化時間ともいう。)を測定した。このゲル化時間が短いほどゲル化速度が早いことを表す。なお、表1中では、例えば2分32秒を2:32と記載している。
【0049】
前記ゲル化試験には、平均重合度1000のポリ塩化ビニル樹脂(カネビニールS−1008、株式会社カネカ製)100重量部にメチル錫メルカプト系安定剤(TM−181FSJ、勝田化工社製)1.5重量部、パラフィンワックス(Rheolub165、Rheochem社製)1.0重量部、ステアリン酸カルシウム(SC−100、堺化学社製)1.2重量部、酸化ポリエチレンワックス(ACPE−629A、アライドシグナル社製)0.1重量部、炭酸カルシウム5重量部、酸化チタン(R−62N、堺化学社製)10重量部、耐衝撃強化剤(カネエースFM−40、株式会社カネカ製)5重量部をヘンシェルミキサーを用いて樹脂温度が105℃になるまで混合し、その後室温まで冷却したものに、得られた粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を5重量部配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いた。
【0050】
(vi)熱安定性試験
熱安定性試験は、サタケ熱風循環恒温乾燥機(型式41−SG5)を使用して、行なった。評価は、1.5cm×1.5cm×0.5mmのサンプル8点を温度180℃のオーブンに入れ、15分毎にサンプル1つを取り出して、120分間、比較例12に対する色調の差を目視で判断して評価を行なった。いずれの時間においても比較例12に対する色調の差が見られず、実用上問題ないものを◎、特定の時間で比較した時に比較例12に対する色調の悪化は見られるが、その15分後の比較例12の色調程悪化しておらず実用上問題ないものを○、特定の時間で比較した時に比較例12に対する色調の悪化がみられ、その15分後の比較例12の色調と同等で実用上問題のあるものを△、特定の時間で比較した時に比較例12に対する色調の悪化がみられ、その15分後の比較例12の色調より
も悪化しており、実用的ではないものを×として評価を行なった。なお、前記熱安定性試験には、F.E.評価で使用した塩化ビニル系樹脂組成物を使用した。
【0051】
(実施例2)
実施例1における過硫酸カリウムを0.05重量部、単量体混合物(A)をMMA73.6重量部、BA6.4重量部とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0052】
(実施例3)
実施例1における過硫酸カリウムを0.07重量部、単量体混合物(B)をMMA7重量部、BA13重量部とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0053】
(実施例4)
実施例1における過硫酸カリウムを0.05重量部、単量体混合物(A)をMMA78.2重量部、BA13.8重量部、単量体混合物(A)の追加時間を220分、単量体混合物(B)をMMA4重量部、BA4重量部、単量体混合物(B)の追加時間を19分とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0054】
(実施例5)
実施例1における過硫酸カリウムを0.06重量部、単量体混合物(A)をMMA59.5重量部、BA10.5重量部、単量体混合物(A)の追加時間を168分、単量体混合物(B)をMMA15重量部、BA15重量部、単量体混合物(B)の追加時間を72分とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0055】
(実施例6)
実施例1における過硫酸カリウムを0.025重量部とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重 BR>≡フを得て、実施例1と同様の試験に供した。
結果は表1に示した。
【0056】
(実施例7)
実施例1における過硫酸カリウムを0.14重量部とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0057】
(実施例8)
実施例1におけるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.008重量部、単量体混合物(A)の追加開始から15分、30分、60分、90分目にそれぞれドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2重量部を追加した以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。 (実施例9)

水140重量部、ラウロイルサルコシンナトリウム0.04重量部、硫酸ナトリウム0.1重量部を混合し、70℃で窒素置換した後に過硫酸カリウム0.09重量部、次いで攪拌しながらMMA68重量部、BA12重量部の単量体混合物(A)を190分間で連続添加し、また単量体混合物(A)の追加開始から45分、90分目にそれぞれラウロイルサルコシンナトリウム0.30重量部を添加した。更に単量体混合物(A)の添加終了後、1時間攪拌して重合を行った。この重合体にMMA10重量部、BA10重量部の単量体混合物(B)を48分間で連続添加した。更に1時間攪拌して重合を行い、反応を終了させて(メタ)アクリル系共重合体ラテックスを得た。実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0058】
(比較例1)
実施例1における過硫酸カリウムを0.08重量部、単量体混合物(A)をMMA79.2重量部、BA0.8重量部とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0059】
(比較例2)
実施例1における過硫酸カリウムを0.05重量部、単量体混合物(A)をMMA56重量部、BA24重量部とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0060】
(比較例3)
実施例1における過硫酸カリウムを0.06重量部、単量体混合物(B)をMMA2重量部、BA18重量部とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0061】
(比較例4)
実施例1における過硫酸カリウムを0.07重量部、単量体混合物(B)をMMA18重量部、BA2重量部とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0062】
(比較例5)
実施例1における過硫酸カリウムを0.05重量部、単量体混合物(A)をMMA85重量部、BA15重量部、単量体混合物(A)の追加時間を240分、単量体混合物(B)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0063】
(比較例6)
実施例1における過硫酸カリウムを0.05重量部、単量体混合物(A)をMMA42.5重量部、BA7.5重量部、単量体混合物(A)の追加時間を120分、単量体混合物(B)をMMA25重量部、BA25重量部、単量体混合物(B)の追加時間を120分とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0064】
(比較例7)
実施例1における過硫酸カリウムを0.01重量部とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0065】
(比較例8)
実施例1における過硫酸カリウムを0.3重量部とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0066】
(比較例9)
実施例1におけるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.6重量部とした以外は、実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0067】
(比較例10)
実施例1に記載の塩化ビニル系樹脂配合に実施例1で得られた粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を0.005重量部添加し、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0068】
(比較例11)
実施例1に記載の塩化ビニル系樹脂配合に実施例1で得られた粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を30重量部添加し、実施例1と同様の試験に供した。結果は表4に示した。
【0069】
(比較例12)
実施例1記載の(メタ)アクリル系共重合体ラテックスを、塩化カルシウムで塩析、熱処理、脱水、洗浄することで粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。得られた結果は表1に示した。 (比較例13)
水140重量部、ジ−2エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.04重量部、硫酸ナトリウム0.1重量部を混合し、70℃で窒素置換した後に過硫酸カリウム0.09重量部、次いで攪拌しながらMMA68重量部、BA12重量部からなる単量体混合物(A)を190分間を要して連続添加し、また単量体混合物(A)の追加開始から45分、90分目にそれぞれジ−2エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.3重量部を添加した。更に単量体混合物(A)の添加終了後、1時間攪拌して重合を行った。この重合体にMMA10重量部、BA10重量部からなる単量体混合物(B)を48分間を要して連続添加した。更に1時間攪拌して重合を行ない、反応を終了させて(メタ)アクリル系共重合体ラテックスを得た。得られた(メタ)アクリル系共重合体ラテックスを実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0070】
(比較例14)

水140重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.06重量部、硫酸ナトリウム0.1重量部を混合し、70℃で窒素置換した後に過硫酸カリウム0.09重量部、次いで攪拌しながらMMA68重量部、BA12重量部の単量体混合物(A)を190分間で連続添加し、また単量体混合物(A)の追加開始から45分、90分目にそれぞれラウリル硫酸ナトリウム0.3重量部を添加した。更に単量体混合物(A)の添加終了後、1時間攪拌して重合を行った。この重合体にMMA10重量部、BA10重量部の単量体混合物(B)を48分間で連続添加した。更に1時間攪拌して重合を行い、反応を終了させて(メタ)アクリル系共重合体ラテックスを得た。実施例1と同様にして粉末状の(メタ)アクリル系共重合体を得て、実施例1と同様の試験に供した。結果は表1に示した。
【0071】
【表1】

表1の結果より、実施例1〜8では、光沢、ゲル化時間、透明性、F.E.、熱安定性に優れた成形品を得られることがわかる。
【0072】
実施例1、2および比較例1、2の結果より、(メタ)アクリル系共重合体における重合体混合物(A)中のメタクリル酸メチルの含有量が95重量%を超える場合、およびメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの含有量が5重量%未満である場合、ゲル化特性、F.E.が劣ることがわかる。また(メタ)アクリル系共重合体における重合体混合物(A)中のメタクリル酸メチルの含有量が80重量%未満である場合、およびメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの含有量が20重量%を超える場合は、光沢、透明性に劣ることがわかる。これに対し、(メタ)アクリル系共重合体における重合体混合物(A)中のメタクリル酸メチル、およびメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの含有量が、本願発明で規定する範囲内である場合は、光沢、透明性、ゲル化特性、F.E.に優れることがわかる。
【0073】
実施例1、3および比較例3、4の結果より、(メタ)アクリル系共重合体における重合体混合物(B)中のメタクリル酸メチルの含有量が65重量%を超える場合、およびメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの含有量が35重量%未満である場合、ゲル化特性、F.E.が劣ることがわかる。また(メタ)アクリル系共重合体における重合体混合物(B)中のメタクリル酸メチルの含有量が30重量%未満である場合、およびメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの含有量が70重量%を超える場合、光沢、透明性に劣ることがわかる。これに対し、(メタ)アクリル系共重合体における重合体混合物(A)中のメタクリル酸メチル、およびメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの含有量が、本願発明で規定する範囲内である場合は、光沢、透明性、ゲル化特性、F.E.に優れることがわかる。
【0074】
実施例1、4、5および比較例5、6の結果より、(メタ)アクリル系共重合体の重合に用いる重合体混合物(A)の含有量が95重量部を超える場合、および(メタ)アクリル系共重合体における重合体混合物(B)の含有量が5重量部未満の場合は、F.E.、ゲル化特性が劣ることがわかる。また(メタ)アクリル系共重合体における重合体混合物(A)の含有量が70重量部未満の場合、および(メタ)アクリル系重合体における重合体混合物(B)の含有量が30重量部を超える場合、透明性、光沢が劣ることがわかる。これに対し、(メタ)アクリル系共重合体の重合に用いる重合体混合物(A)または(B)の重量部数が本願発明で規定する範囲内であるものは、光沢、透明性、ゲル化特性、F.E.に優れることがわかる。
【0075】
実施例1、6、7および比較例7,8の結果より、(メタ)アクリル系共重合体の比粘度が0.8未満の場合は、光沢が劣ることがわかる。さらに、(メタ)アクリル系共重合体の比粘度が2.0を超える場合、透明性、F.E.が劣ることがわかる。一方で、(メタ)アクリル系共重合体の比粘度が本願発明で規定する範囲のものは、光沢、F.E.、透明性に優れることがわかる。
【0076】
実施例1、8および比較例9の結果より、(メタ)アクリル系共重合体のラテックスの体積平均粒子径が1000Å以下の場合には、光沢、透明性、F.E.が劣ることがわかる。一方で(メタ)アクリル系共重合体のラテックスの体積平均粒子径が本願発明で規定する範囲のものは、光沢、透明性、F.E.に優れることがわかる。
【0077】
実施例1および比較例10、11の結果より、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して配合される(メタ)アクリル系共重合体の重量部数が20重量部を超える場合は、透明性が劣ることがわかる。逆に、塩化ビニル系樹脂に配合されうる(メタ)アクリル系共重合体の重量部数が0.1重量部未満の場合は、光沢、ゲル化効果に劣ることがわかる。一方で、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して配合されうる(メタ)アクリル系共重合体の重量部数が本願発明で規定する範囲のものは、光沢、透明性、ゲル化効果に優れることがわかる。
【0078】
実施例1および比較例12の結果より、(メタ)アクリル系共重合体の粉体の回収方法として噴霧乾燥法を使用した場合は、塩析・熱処理・脱水等の方法により粉体を回収した場合と比較して、光沢、透明性に優れることがわかる。
【0079】
実施例1、9および比較例13、14の結果より、(メタ)アクリル系共重合体の重合時の乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウムを使用したものは熱安定性試験に優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチル80〜95重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル5〜20重量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜5重量%よりなる単量体の混合物(A)70〜95重量部を乳化重合し、
その生成重合体ラテックスの存在下に、メタクリル酸メチル30〜65重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル35〜70重量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜5重量%よりなる単量体の混合物(B)5〜30重量部を乳化重合することで(メタ)アクリル系共重合体を得て、
さらに、該(メタ)アクリル系共重合体のラテックスを噴霧乾燥して得られる(メタ)アクリル系共重合体粉体であって、
該乳化重合する際に使用する乳化剤が、アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びアルカノイルサルコシン塩から選ばれる一種以上であり、該(メタ)アクリル系共重合体ラテックスの体積平均粒子径が1000Å〜5000Åのであり、かつ、100ccのトルエン中に0.4gの該(メタ)アクリル系共重合体粉末を溶解させ、この溶液を30℃で測定することにより求めた該(メタ)アクリル系共重合体の比粘度が0.80以上、2.00以下である(メタ)アクリル系共重合体粉体。
【請求項2】
塩化ビニル系樹脂100重量部、及び請求項1に記載の(メタ)アクリル系共重合体粉体0.1〜20重量部を含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−277529(P2007−277529A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58745(P2007−58745)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】