説明

(メタ)アクリル系樹脂水性分散液

【課題】ホルムアルデヒド等の有害物質を放散せず、かつ、十分な強度、凹み発生を抑制する硬度や、接着強度、耐熱性等を多孔質系の基材や、硬質の基材の積層体に付与することを課題とする。
【解決手段】(メタ)アクリル系樹脂エマルジョン、フィラー、デンプン類、及びデンプン類以外の水溶性高分子を含有する混合分散体に、硬化剤としてポリイソシアネート化合物を配合した(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の基材の表面硬度を向上させ、荷重がかかった時や、その後の凹みの発生を低減できる(メタ)アクリル系樹脂水性分散液、及びこれを用いた表面処理剤並びに接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
中密度繊維板(MDF)、合板等の木質材料や、ケイ酸カルシウム板、セメント板等の多孔質系の無機系基材等の基材は、住宅、店舗、公共施設、ビル等の建築物の壁装材、床材等の内装用壁面に用いられる。このような基材を、例えば、床材に用いた場合、重量物を長い間載置した場合や、椅子等で繰り返し荷重をかけた場合、床材の表面が凹んでしまい、その痕が残って、美観を損なうことがある。
【0003】
また、硬質の基材にシート等を積層した床材等の場合、その上に重量物を長い間載置したときや、椅子等で繰り返し荷重をかけたときに、床材等の表面が凹んで痕が残ったり、表面のシートの剥離が生じたりする場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような問題を解決するため、多孔質系の基材の表面硬度向上を目的として、フェノール樹脂やメラミン樹脂を基材に塗布・含浸する方法が広く用いられている。しかしながら、これらの方法では、場合により、処理された基材からホルムアルデヒド等の有害物質が放散することがあった。
【0005】
そこでこの発明は、ホルムアルデヒド等の有害物質を放散せず、かつ、十分な強度、凹み発生を抑制する硬度や、接着強度、耐熱性等を多孔質系の基材や、硬質の基材の積層体に付与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、(メタ)アクリル系樹脂水性分散液として、(a)(メタ)アクリル系樹脂エマルジョン、(b)フィラー、(c)デンプン類及び(d)デンプン類以外の水溶性高分子を含有する混合分散体に、(e)硬化剤としてポリイソシアネート化合物を配合したものを用いることにより、上記課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0007】
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含有する混合分散体に(e)成分を配合した(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を用いるので、ホルムアルデヒドを使用する必要がない。また、この(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を基材の表面に塗工することにより、基材表面を目止めや、表面に細孔を有する基材と化粧紙等との接着工程を簡易化することができ、かつ、基材表面に十分な強度や表面強度を付与することができる。さらに、この(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を接着剤として使用することにより、十分な接着強度及び耐熱性を発揮すると共に、この接着剤からなる接着層によって、基材に十分な強度や強度を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂水性分散液は、(a)(メタ)アクリル系樹脂エマルジョン(「(a)成分」と称する。)、(b)フィラー(「(b)成分」と称する。)、(c)デンプン類(「(c)成分」と称する。)及び(d)デンプン類以外の水溶性高分子(「(d)成分」と称する。)を含有する混合分散体に、(e)硬化剤(「(e)成分」と称する。)としてポリイソシアネート化合物を配合した水性分散液である。
【0009】
[(a)成分]
上記の(a)成分である(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンは、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体の単独重合体又は共重合体を含有するエマルジョンをいう。このような(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体、アミド基含有(メタ)アクリル系単量体、メチロール基含有(メタ)アクリル系単量体、アルコキシメチル基含有(メタ)アクリル系単量体、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体、多官能性(メタ)アクリル系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル等があげられる。
【0010】
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル等があげられる。
【0011】
上記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等があげられる。なお、上記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体を単量体成分として用いると、得られる(メタ)アクリル系樹脂は、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系樹脂となり、ポリイソシアネート((e)成分)との反応性を有するので、表面硬度の向上に有効であり、好ましい。
【0012】
上記アミド基含有(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等があげられる。上記メチロール基含有(メタ)アクリル系単量体としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチロール(メタ)アクリルアミド等があげられる。
【0013】
上記アルコキシメチル基含有(メタ)アクリル系単量体としては、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等があげられる。上記エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、メチルグリシジル(メタ)アクリル酸等があげられる。
【0014】
上記多官能性(メタ)アクリル系単量体としては、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0015】
上記(メタ)アクリル系単量体を含む単量体としては、上記(メタ)アクリル系単量体以外に、この(メタ)アクリル系単量体と共重合可能なビニル系単量体を用いることができる。このビニル系単量体としては、芳香族ビニル系単量体や、上記(メタ)アクリル系単量体以外の不飽和カルボン酸又はそのエステル類、アミド基含有単量体、エポキシ基含有単量体、その他の多官能性単量体、シリル基含有単量体、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル又はジエステル、ビニルエステル等があげられる。
【0016】
上記芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、ビニルベンゼン、ビニルトルエン等があげられる。上記(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、又はモノアルキルイタコネート等の不飽和多価カルボン酸の酸性エステル等があげられる。上記アミド基含有(メタ)アクリル系単量体以外のアミド基含有単量体としては、マレイン酸アミド、N−置換又は無置換のマレイミド等があげられる。
【0017】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体以外のエポキシ基含有単量体としては、アリルグリシジルエーテル等があげられる。上記多官能性(メタ)アクリル系単量体以外の多官能性単量体としては、ジビニルベンゼン等があげられる。上記シリル基含有単量体としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−2−メトキシエトキシビニルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等があげられる。
【0018】
上記α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル又はジエステルとしては、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸モノオクチル、フマル酸ジオクチル等が挙げられる。上記ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等があげられる。
【0019】
これらの中でも、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル系樹脂は、強度及び表面強度の点で好ましい。このヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル系樹脂は、上記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体を単量体成分として含有する樹脂である。この樹脂を構成する全単量体中に対するヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体の含有割合は、0.5重量%以上がよく、1.0重量%以上が好ましい。0.5重量%より少ないと、イソシアネートとの架橋が不足し、十分な強度や表面硬度を得られなくなるおそれがある。一方、含有割合の上限は、10重量%がよく、5重量%が好ましい。10重量%より多いと、エマルジョンの重合性が悪化する傾向がある。
【0020】
また、芳香族ビニル系単量体としてスチレンを用い、これと上記(メタ)アクリル系単量体の一種又は複数種との共重合からなるスチレン−(メタ)アクリル系樹脂が、耐水性の点で好ましい。このスチレン−(メタ)アクリル系樹脂中のスチレンの含有量は、10〜70重量%が好ましく、20〜60重量%がより好ましい。10重量%より少ないと、耐水性が不足する傾向となる。一方、70重量%より多いと、ガラス転移温度が高くなり、造膜性が低下して、接着性が悪化することがある。
【0021】
上記(a)成分は、上記の各単量体を、必要に応じて混合物とした上で、乳化重合することにより製造することができる。乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、水等の水性媒体中で、上記の単量体、連鎖移動剤、界面活性剤、ラジカル重合開始剤及び、必要に応じて用いられる他の添加剤成分を基本組成成分とする分散系で、単量体を重合することにより得ることができる。そして、重合に際しては、供給する単量体混合物の組成を全重合過程で一定にする方法や重合過程で逐次、あるいは連続的に変化させることによって生成する粒子に組成変化を与える方法等所望に応じてさまざまな方法が利用できる。
【0022】
上記界面活性剤とは、一分子中に少なくとも一つ以上の親水基と一つ以上の親油基を有する物を指す。この界面活性剤としては、例えば、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらのほかに、親水基と親油基を有する界面活性剤の化学構造式の中にエチレン性二重結合を導入した、いわゆる反応性界面活性剤を用いてもよい。
【0023】
上記界面活性剤の使用方法は、特に限定されず、例えば乳化重合開始時に全量使用しても、また、乳化重合中及び/又は乳化重合後にさらに必要量を添加してもよい。
【0024】
上記重合開始剤としては、熱又は還元性物質によりラジカルを発生して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤および有機系開始剤のいずれも使用できる。このようなものとしては、水溶性、油溶性の重合開始剤が使用できる。水溶性の重合開始剤としては、例えばペルオキソ二硫酸塩、各種の過酸化物やパーオキシエステル類、水溶性のアゾビス化合物、過酸化物−還元剤のレドックス系等が挙げられる。
【0025】
上記ペルオキソ二硫酸塩としては例えばペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(NPS)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)等が挙げられる。また、上記過酸化物としては例えば過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t―ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキシド、過酸化ベンゾイル等が、また、パーオキシエスエル類としては、t−ブチルパーオキシヒバレート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−クミルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。
【0026】
さらに、上記水溶性アゾビス化合物としては、例えば2,2−アゾビス(N−ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩化水素、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等が挙げられる。さらにまた、上記過酸化物−還元剤のレドックス系としては、例えば先の過酸化物にナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、およびその塩、第一銅塩、第一鉄塩等の還元剤を重合開始剤に組み合わせたものが挙げられる。
【0027】
この乳化重合における重合温度は、通常60〜100℃の範囲から選ばれるが、上記レドックス重合法等により、より低い温度で重合を行ってもよい。また、例えば2段階重合を用いる場合は、第1段での重合温度と第2段での重合温度は同じでも異なっていてもよい。
【0028】
上記(a)成分の平均粒子径は100〜400nmであることが好ましい。平均粒子径が100nm以上とすることでポットライフに問題がなく、また粘度を低くすることができる。さらに、400nm以下とすることで、初期接着性を維持することができる。好ましくは平均粒子径が200〜350nmである。
【0029】
上記(a)成分に含まれる樹脂成分である(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、10万〜80万が好ましく、30万〜60万がより好ましい。10万より小さいと、生成被膜が軟らかくなり、例えば、表面処理後に研磨が行われたり、摩擦を受ける条件下で使用されたりすると、剥離することがある。一方、80万より大きいと、造膜性が悪化することがある。
【0030】
上記(a)成分に含まれる樹脂成分である(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、0〜60℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。0℃より低いと、生成被膜が軟らかくなり、例えば、表面処理後に研磨が行われたり、摩擦を受ける条件下で使用されたりすると、剥離することがある。一方、60℃より高いと、造膜性が悪化することがある。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いる、JIS K7121−1989(プラスチックの転移温度測定法)により測定することができる。
【0031】
[(b)成分]
上記(b)成分であるフィラーは、基材の目止めと硬さを付与するために用いられる。このフィラーとしては、無機フィラーや有機フィラー等があげられる。上記無機フィラーとしては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、鉛等の各種金属酸化物、水酸化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩又は珪酸化合物等があげられる。この具体例としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、石膏、バライト粉、アルミナホワイト、サチンホワイト等があげられる。また、上記有機フィラーとしては、固体高分子微粉末等が挙げられ、具体例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等の微粉末があげられる。
【0032】
上記(b)成分の平均粒子径は、1μm以上がよく、2μm以上が好ましい。1μmより小さいと、この発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂水性分散液の粘度が高くなり、作業性が悪化する傾向がある。一方、平均粒子径の上限は、40μmがよく、30μmが好ましい。40μmより大きいと、目止めの後の表面が粗くなり、外観が劣る傾向となる。この平均粒子径は、例えばレーザー回折法により測定することができる。
【0033】
上記(b)成分の含有量は、上記(a)成分の固形分100重量部に対して、70重量部以上がよく、100重量部以上が好ましい。70重量部より少ないと、生成される被膜の硬度が不足することがある。一方、上限は、200重量部がよく、180重量部が好ましい。200重量部より多いと、造膜性が悪化することがある。
【0034】
[(c)成分]
上記(c)成分であるデンプン類は、この発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂水性分散液からなる表面処理剤や接着剤に、保湿性を与え、イソシアネートの硬化反応を効率的に進めるために使用される。このデンプン類としては、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)等があげられる。
【0035】
上記(c)成分の含有量は、上記(a)成分の固形分100重量部に対して、20重量部以上がよく、30重量部以上が好ましい。20重量部より少ないと、硬化が遅くなることがある。一方、上限は、100重量部がよく、80重量部が好ましい。100重量部より多いと、接着性や硬度が不足することがある。
【0036】
[(d)成分]
上記(d)成分であるデンプン類以外の水溶性高分子は、(c)成分と同様に、(メタ)アクリル系樹脂水性分散液からなる表面処理剤や接着剤に保湿性を与え、イソシアネートの硬化反応を効率的に行うために使用される。このような水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール類、セルロース系樹脂、キチン、キトサン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、シクロデキストリン類等のヒドロキシル基を含有する水溶性高分子、ゼラチン、カゼイン類等のアミノ基を含有する水溶性高分子、ポリビニルエーテル、水性硝化綿等をあげることができる。
【0037】
上記ポリビニルアルコール類としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン性ポリビニルアルコール(EVOH)、シラノール変性ポリビニルアルコール等があげられる。このポリビニルアルコール(PVA)は、完全ケン化されたもの、部分ケン化されたものの、いずれでもよい。また、上記セルロース系樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等があげられる。
【0038】
上記(d)成分の含有量は、上記(a)成分の固形分100重量部に対して、10重量部以上がよく、15重量部以上が好ましい。10重量部より少ないと、硬化反応が遅くなり、硬度が低下する傾向がある。一方、上限は、50重量部がよく、40重量部が好ましい。50重量部より多いと、耐水性が低下する傾向がある。
【0039】
[(e)成分]
上記の(a)成分〜(d)成分を混合した混合分散体には、(e)成分である硬化剤が配合され、本発明の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液が形成される。(e)成分を上記混合分散体に配合することにより、(メタ)アクリル系樹脂水性分散液が塗工後に架橋され、高硬度の皮膜が形成される。
【0040】
この(e)成分としては、ポリイソシアネート化合物が用いられる。このポリイソシアネート化合物は、一分子中にイソシアネート基を2個以上含むものであり、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート又はこれらの誘導体等が使用できる。
【0041】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアネート,HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプトロエート、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアネートオクタン、1,6,11−トリイソシアネートウンデカン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタン等があげられる。
【0042】
また、上記脂環族ポリイソシアネートとしては、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン(イソホロジイソシアネート,IPDI)、4,4′−2,4′−又は2,2′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)又はその混合物(水添MDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン又はその混合物(水添XDI)、1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,6−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等があげられる。
【0043】
さらに、ポリイソシアネート化合物の誘導体としては、上記ポリイソシアネートの多量体(2量体、3量体(イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート)、5量体、7量体等)、
ビウレット基含有ポリイソシアネート(上記ポリイソシアネート化合物と水との反応により生成するビウレット変性ポリイソシアネート等)、ウレタン基含有ポリイソシアネート(上記ポリイソシアネート化合物又は多量体におけるイソシアネート基の一部をモノオールやポリオールで変性又は反応したウレタン変性ポリイソシアネート等)、ウレア基含有ポリイソシアネート(上記ポリイソシアネート化合物とジアミンとの反応により生成するウレア変性ポリイソシアネート等)、オキサジアジントリオン基含有ポリイソシアネート(上記ポリイソシアネート化合物と炭酸ガス等との反応により生成するオキサジアジントリオン変性ポリイソシアネート等)等があげられる。
【0044】
これらのポリイソシアネート化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。例えば、ポリイソシアネート誘導体と脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートとを組み合わせて使用してもよい。
【0045】
上記(e)成分の使用量は上記の(a)成分の固形分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計量に対して、2重量%以上がよく、5重量%以上が好ましい。2重量%より少ないと、硬度が不足することがある。一方、上限は、30重量%がよく、20重量%が好ましい。30重量%より多いと、ポットライフが短くなる傾向がある。
【0046】
なお、(a)成分の(メタ)アクリル系樹脂がカルボキシル基を有している場合は、さらに、ポリオキサゾリン化合物や、ポリカルボジイミド化合物等を併用すると、より硬度の高い被膜が形成されるのでより好ましい。
【0047】
[その他の添加物]
この発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂水性分散液には、上記の各成分の他に、この発明の目的を阻害しない範囲内で、上記成分以外の水溶性樹脂、溶剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、着色剤、耐水化剤、潤滑剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、多価金属化合物等を配合してもよい。
【0048】
[用途]
この発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を含有させた表面処理剤は、各種基材の表面に塗工することにより、例えば、「鉛筆硬度」(JIS法)で評価した場合、硬度「H」の基材の硬度を、「2H」〜「4H」とするように、上記基材の表面硬度を向上することができる。
【0049】
また、上記(メタ)アクリル系樹脂水性分散液は、接着性を有するので、この(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を含有させた剤を、接着剤として用いることができる。すなわち、図1(a)に示すように、基材1と化粧紙等のシート3とを、この接着剤を用いて貼り合わせることにより、この接着剤からなる層(接着剤層)2を介して、基材1とシート3とが積層された積層体を得ることができる。さらに、図1(b)に示すように、必要に応じて、上記接着剤層2とシート3との間に、他の接着剤層4を介在させて積層体を製造してもよい。
【0050】
図1(a)や図1(b)に記載のような積層体は、中間層として、接着剤層2を有するので、接着剤層2の硬度が高くなり、その表面に積層された層の凹みが生じにくくなるため、積層体全体として、凹みが生じにくくなる傾向が生じる。
【0051】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を適用できる基材としては、その表面に細孔を多数有する多孔質基材として、中密度繊維板(MDF)、合板等の木質基材、ケイ酸カルシウム板、セメント板等の無機系基材等を例示できる。また、硬質の基材としては、ガラス等を例示できる。
【0052】
さらに、この(メタ)アクリル系樹脂水性分散液の基材への塗工方法としては、塗布、浸漬、噴霧等の方法を採用することができる。さらに、上記化粧紙等のシートをさらに積層する場合は、このシートに意匠、エンボス等が施されていてもよい。このようなシートの材質としては、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の樹脂類や紙等の任意の基材を用いることができる。
【0053】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を上記基材1に塗工して、その表面に他の接着剤層4を介在してシート3を積層して積層体を製造した場合、基材1とシート3との接着強度は、本発明の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を上記基材1に塗工しない場合に比べて、1.2〜1.5倍に向上する。また、耐熱クリープも向上する傾向がある。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を用いて、この発明をより具体的に説明するが、この発明は以下の実施例によって限定されるものではない。まず、評価方法について説明する。
【0055】
(評価方法)
<粘度>
BH型粘度計を用いて、25℃、10rpmの条件下で測定した。
【0056】
<固形分量測定>
JIS K6833に記載の方法にしたがって測定した。
【0057】
<ガラス転移温度(Tg)>
JIS K7121−1989にしたがって、示差走査熱量計(DSC)により測定した。
【0058】
<混合分散体のポットライフ>
(メタ)アクリル系樹脂水性分散液((e)成分を含む)を配合後、25℃で静置した条件で、その粘度が2倍になる迄の時間を測定し、下記の基準で評価した。
○:2時間超
△:30分以上2時間以下
×:30分未満
【0059】
<試験片の作成>
下記の各評価を行うため、まず、試験片を作成した。
[作製方法1(多孔質材料を基材としたとき)]
作製雰囲気として、下記の2種類の条件下で行った。
(1)23℃、50%RH
(2)5℃、50%RH
また、基材としては、合板(オオクラウッド(株)製:普通合板、F☆☆☆☆タイプ)又は中密度繊維板(MDF)(ホクシン(株)製、F☆☆☆☆タイプ)を用い、被着体としては、厚さ0.15mmのポリプロピレンフィルム(接着面プライマー処理)を用いた。
まず、下記の実施例及び比較例で製造した水性分散液を、ロールコータで基材に約80g/m(8.0g/尺)塗布した。次いで、上記の水性分散液を塗布した基材上に被着体(ポリオレフィンシート(凸版印刷(株)製:エコシート(商品名)、厚さ0.16mm、濡れ指数:34mN/m))をラミネータを用いて脱気後、貼り合せ、0.2MPa、30分間、コールドプレスした。23℃、50%の雰囲気下で、3日間養生した後、得られたものを25mm幅に切断し、試験片とした。
なお、必要において、水性分散液からなる層(接着剤層)の表面に、他の接着剤(中央理化工業(株)製:BA−10Lを硬化剤として、中央理化工業(株)製:BA−11B(ポリイソシアネート)を2.5重量%配合したもの))を約72g/m(7.2g/尺)塗布した後に、被着体を上記条件で積層した。
【0060】
[作製方法2(硬質材料を基材としたとき)]
ガラス板上に、下記の実施例及び比較例で製造した水性分散液を、0.1mm厚となるようにアプリケーターで塗布した。そして、予備乾燥(23℃×10分)後、80℃×24時間処理して試験片とした。
【0061】
<表面処理評価試験>
[表面硬度1(鉛筆硬度)]
JIS 5600−5−4(引っかき硬度(鉛筆法))に準拠して試験を行った。なお、測定対象の試験片は、作製方法2で製造したものを用いた。
そして、軟らかい鉛筆から試験を行い、初めて傷の付いた鉛筆の硬度を結果として示した。
【0062】
[表面硬度2(JISハードナーテスター測定)]
作製方法2で作製した試験片を用い、JIS K6301のスプリング式硬さ試験に従い、(株)島津製作所製のJIS HARDNESS TESTERを用いて測定した。
【0063】
<簡易くぼみ試験>
作製方法1で得られた試験片上に、500gの分銅を逆さまにして載せ、約7.3kg/cmの荷重をかけた。23℃で2日間経過後のくぼみを観察し、くぼんだ形の直径を測定した。
【0064】
<接着性能評価試験>
[接着強度]
(常態強度)
試験片として、作製方法1の(1)の作製雰囲気下で作製した試験片を使用し、この試験片の剥離強度を測定した。すなわち、23℃、50%RHの雰囲気下で、被着体の180度角引っ張り接着力を東洋ボールドウィン引っ張り試験機:テンシロン・レオメータを用いて、引っ張り速度200mm/分で測定し、剥離強度を求めた。
【0065】
(耐熱クリープ)
試験片として、作製方法1の(1)の作製雰囲気下で作製した試験片を使用した。この試験片を一部剥離させ、その剥離面に90度角方向に4.9Nの静荷重をかけ、70℃に設定した熱風循環式乾燥機中で24時間静置した。24時間経過後の被着体の剥離の長さを測定した。
【0066】
(JAS1類浸漬剥離試験)
試験片として、作製方法1の(1)の作製雰囲気下で作製した試験片であって、75mm×75mmに切り出した試験片を使用した。この試験片を沸騰水中に4時間浸漬した。その後、60℃±3℃で20時間乾燥した。次いで、沸騰水中に再度、4時間浸漬した後、60℃±3℃で3時間乾燥した。処理後の試験片を下記の基準にしたがって目視で評価した。
○:剥離していない部分の長さが、全ての側面で、50mm以上
×:剥離していない部分の長さが、いずれかの側面で、50mm未満
【0067】
(耐寒接着性)
試験片として、作製方法1の(1)の作製雰囲気下で作製した試験片を使用した。この試験片を−20℃で24時間放置し、その後、−20℃の雰囲気下で、手で被着体を瞬間的に剥離させた。そのとき、剥離部分の破壊状態を目視観察し、次の3段階で評価した。
○:基材が材料破壊をおこしていた。
△:凝集破壊をおこしていた。
×:界面破壊をおこしていた。
【0068】
(低温接着性)
試験片として、作製方法1の(2)の作製雰囲気下で作製した試験片を使用した。この試験片を5℃の雰囲気下で、手で被着体を瞬間的に剥離させた。そのとき、剥離部分の破壊状態を目視観察し、次の3段階で評価した。
○:基材が材料破壊をおこしていた。
△:凝集破壊をおこしていた。
×:界面破壊をおこしていた。
【0069】
(原材料)
[(a)成分]
1)単量体
・アクリル酸ブチル…和光純薬工業(株)製:特級(以下、「BA」と略する。)
・メタクリル酸ヒドロキシエチル…和光純薬工業(株)製:1級(以下、「HEMA」と略する。)
・アクリル酸…和光純薬工業(株)製:特級(以下、「AA」と略する。)
・メタクリル酸…和光純薬工業(株)製:特級(以下、「MAA」と略する。)
・アクリルアミド…和光純薬工業(株)製:1級(以下、「AAm」と略する。)
・スチレンモノマー…和光純薬工業(株)製:特級(以下、「SM」と略する。)
・アクリル酸2−エチルヘキシル…和光純薬工業(株)製:1級(以下、「2EHA」と略する。)
・酢酸ビニル…和光純薬工業(株)製:特級(以下、「VAc」と略する。)
【0070】
1’)重合体
・エチレン−酢酸ビニル重合体…住友化学工業(株)製:スミカフレックスS−305(以下、「EVA」と略する。)
【0071】
2)乳化剤
・エレミノールES−70…三洋化成工業(株)製(以下、「ES70」と略する。)
・ポリビニルアルコール(PVA)…日本合成化学(株)製:ゴーセノールGH−17(商品名)(以下、「GH−17」と略する。)
・エマルゲン1118S−70…花王(株)製(以下、「S70」と略する。)
【0072】
3)重合開始剤
・過硫酸カリウム…東海電化(株)製:KPS(以下、「KPS」と略する。)
・無水重亜硫酸ナトリウム…(有)戸川化学工業所(株)製:SBS(以下、「SBS」と略する。)
【0073】
[(b)成分]
・炭酸カルシウム…日東粉化工業(株)製:NS−100(以下、「NS100」と略する。)
【0074】
[(c)成分]
・デンプン…J−オイルミルズ(株)製:コーンスターチY(以下、「コーンスターチ」と略する。)
【0075】
[(d)成分]
・ポリビニルアルコール…(株)クラレ製:クラレポバールPVA217(商品名)(以下、「PVA217」と略する。)
【0076】
[(e)成分]
・ポリイソシアネート…日本ポリウレタン工業(株)製:ミリオネートMR−400(以下、「MR400」と略する。)
【0077】
[多孔質基材]
・MDF…ホクシン(株)製:スターウッドSTLI(規格:F☆☆☆☆、以下、「MDF」と略する。)
・合板…オオクラウッド(株)製:JAS1類合板(規格:F☆☆☆☆、以下、「合板」と略する。)
【0078】
(実施例1〜7、比較例1)
[樹脂エマルジョンの製造]
表1の(a)成分の欄に示す各モノマー成分、乳化剤、水を、表1に示す割合で混合し、プレエマルジョンを作製した。
撹拌後、還流冷却器、温度計及び滴下漏斗を備えた反応容器に、表1に示す量のイオン交換水及びES70を入れて、75℃に加熱した。表1に示す量の重合開始剤であるKPS及びSBSをそれぞれイオン交換水に溶解させ、反応容器に添加した。次いで、上記プレエマルジョンを3時間かけて連続滴下し、重合反応を行った。さらに、滴下終了後に、80℃まで昇温後、KPS0.5重量部を水に溶解させたものを添加し、3時間熟成させた。熟成終了後、冷却して、樹脂エマルジョン(EM1又はEM2)を得た。
【0079】
[水性分散液の製造、評価]
表2に示す(a)成分〜(e)成分を、同表に示す量ずつ混合し、水性分散液を製造し、表2に記載の作製方法にしたがって、試験片を作製し、上記各評価を行った。その結果を表2に示す。なお、ポットライフ試験は、(e)成分を含む水性分散液について行った。
【0080】
(比較例2、3)
水性分散液を用いず、合板及びMDFのみを用いて上記各評価を行った。その結果を表2に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
(実施例8〜12、比較例4〜6)
[樹脂エマルジョン(EM3、EM4)の製造]
表3に示す各モノマー成分、乳化剤、水を、表3に示す割合で混合し、プレエマルジョンを作製した。
撹拌後、還流冷却器、温度計及び滴下漏斗を備えた反応容器に、表3に示す量のイオン交換水及びES70を入れて、75℃に加熱した。表3に示す量の重合開始剤であるKPS及びSBSをそれぞれイオン交換水に溶解させ、反応容器に添加した。次いで、上記プレエマルジョンを3時間かけて連続滴下し、重合反応を行った。さらに、滴下終了後に、80℃まで昇温後、KPS0.5重量部を水に溶解させたものを添加し、3時間熟成させた。熟成終了後、冷却して、樹脂エマルジョン(EM3、EM4)を得た。
【0084】
[樹脂エマルジョン(EM5)の製造]
表3に示す各モノマー成分、乳化剤、水を、表3に示す割合で混合し、プレエマルジョンを作製した。
撹拌後、還流冷却器、温度計及び滴下漏斗を備えた反応容器に、表3に示す量のGH−17、S70、及びイオン交換水を入れて、70℃に加熱した。表3に示す量の重合開始剤であるKPSをイオン交換水に溶解させ、反応容器に添加した。次いで、上記プレエマルジョンを3時間かけて連続滴下し、重合反応を行った。さらに、滴下終了後に、80℃まで昇温後、KPS0.5重量部を水に溶解させたものを添加し、3時間熟成させた。熟成終了後、冷却して、樹脂エマルジョン(EM5)を得た。
【0085】
[樹脂エマルジョン(EM6)]
樹脂エマルジョン(EM6)として、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン(EVA)(住友化学工業(株)製:スミカフレックスS−305(商品名))を用いた。
【0086】
[樹脂エマルジョン(EM7)の製造]
エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(住友化学工業(株)製:スミカフレックスS−455HQ(商品名))を100重量部用い、これにポリウレタンエマルジョン(住友バイエルウレタン(株)製:デスコパールU−53(商品名))を30重量部、及び(e)成分であるMR400を5重量部混合、分散して、樹脂エマルジョン(EM7)を得た。
【0087】
[水性分散液の製造、評価]
表4に示す(a)成分〜(e)成分を、同表に示す量ずつ混合し、水性分散液を製造し、表4に記載の作製方法にしたがって、試験片を作製し、上記各評価を行った。その結果を表4に示す。なお、ポットライフ試験は、(e)成分を含む水性分散液について行った。
【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】(a)(b)この発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を用いた積層体の例を示した断面図
【符号の説明】
【0091】
1 基材
2 接着剤層
3 シート
4 他の接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(メタ)アクリル系樹脂エマルジョン、(b)フィラー、(c)デンプン類及び(d)デンプン類以外の水溶性高分子を含有する混合分散体に、(e)硬化剤としてポリイソシアネート化合物を配合した(メタ)アクリル系樹脂水性分散液。
【請求項2】
上記(a)(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンに含まれる(メタ)アクリル系樹脂が、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂である請求項1に記載の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液。
【請求項3】
上記(a)(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンに含まれる(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、0〜60℃である請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液。
【請求項4】
上記(a)(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンに含まれる(メタ)アクリル系樹脂は、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系樹脂である請求項1乃至3のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液。
【請求項5】
上記(b)フィラーは、無機フィラー及び有機フィラーから選ばれる少なくとも1種類である請求項1乃至4のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液。
【請求項6】
上記(d)デンプン類以外の水溶性高分子は、ヒドロキシル基を有する水溶性高分子である請求項1乃至5のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液。
【請求項7】
上記(a)成分の固形分100重量部に対し、上記(b)成分を70〜200重量部、上記(c)成分を20〜100重量部、上記(d)成分を10〜50重量部含有する請求項1乃至6のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液。
【請求項8】
上記の(a)成分の固形分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計量に対し、(e)成分を2〜30重量%含有する請求項7に記載の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を含有してなる表面処理剤。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂水性分散液を含有してなる接着剤。
【請求項11】
基材とシートとを、請求項10に記載の接着剤を用いて貼り合わせた積層体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−262386(P2007−262386A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38010(P2007−38010)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000211020)中央理化工業株式会社 (65)
【Fターム(参考)】