説明

(メタ)アクリル酸エステル化合物およびその用途

一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物、


(式中、R11は二価の芳香族基を表し、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13はアリール基を表し、R14は水素原子またはメチル基を表し、X11は酸素原子または硫黄原子を表す)
および該化合物を含有する歯科用材料。
本発明の一般式(1)で表される化合物を含有する歯科用材料および歯科用組成物は、硬化性に優れ、歯科用材料に求められる諸物性(例えば、曲げ強度など)を満たしながら、透明性、X線造影性ならびに低重合収縮性を兼ね備えており、有用である。
また、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する重合性組成物は、光重合により短時間で重合、成形加工ができ、かつ、透明性、光学特性(屈折率、アッベ数)、耐熱性、機械的特性などが良好な樹脂硬化物を与える重合性組成物、ならびに、該重合性組成物を重合して得られる光学部品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は歯科用材料、光学部品などに有用な(メタ)アクリル酸エステル化合物、該(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する重合性組成物、ならびに、それらを用いた歯科用材料、光学部品等の用途に関する。
さらに詳しくは、本発明は、組成物自体の硬化性(特に、光硬化性)が良好であって、高い透明性およびX線造影性を有し、かつ、重合収縮の小さい歯科用材料ならびに歯科用組成物に関する。
【背景技術】
(メタ)アクリル酸エステル化合物などの重合性化合物を含有する歯科用材料は操作性、審美性、強度に優れるなどの利点から、歯科治療分野において広く使用されている。特に、可視光線重合型の歯科用組成物は生体に対して安全な可視光線を用いることができ、かつ、前述の利点を有していることから特に多く使用されている(特許文献1)。
従来から、機械的強度を付与するとともにレジンマトリックスの諸物性を向上させる目的で、コンポジットレジン、硬質レジンあるいは人工歯等の歯科用組成物に含有される充填材として、シリカ、ガラスなどの粉末状無機成分が添加されている。
歯科治療時にはX線撮影によってその治療状態を確認することが多いことから、これら歯科用組成物に含有される粉末状無機成分として、歯科治療時にX線撮影が可能となるように、X線造影性を有するバリウム、ジルコニウム、ストロンチウム等の重金属元素を含有したガラスを粉砕した粉末(粉砕ガラス粉末)が使用されている。かかる粉砕ガラス粉末は、例えば、上記のようなガラスを粉砕することにより製造されているのが一般的であるが、従来のガラス粉砕技術では、ガラスを微小に粉砕することが難しく、通常は数十μm(20ないし30μm)〜10μm前後のガラス粉末が使用されてきた。しかしながら、このような粒子径の大きなガラス粉末を配合した歯科用組成物を用いた場合、臨床的に天然歯と同様な艶のある仕上がり面を形成することが非常に困難であった。
かかるガラス粉末を含有することに付随する上記の問題を解決するために、近年、平均粒径が2μm以下に微粉砕されたガラス粉末を主に使用したコンポジットレジン等が開発されている。すなわち、例えば、平均粒径が0.1〜5μmの粉砕ガラス粉末および/または平均粒径が0.01〜0.04μmのシリカ微粒子等の無機化合物を使用することが開示されている(特許文献2)。
該微粉砕ガラス粉末を使用したコンポジットレジンでは、従来の比較的粒径の大きな粉砕ガラス粉末を用いたコンポジットレジンの欠点とされてきた表面艶は向上するものの、こうした微粉砕ガラス粉末を含有する歯科用組成物には、透明性、光硬化性およびX線造影性等のバランスに関して改善すべき点が残されている。すなわち、例えば、平均粒径2μm以下という微粉砕充填材を均一に充填した歯科用組成物においては充填材とレジンマトリックス(樹脂硬化物)との境界面の面積が飛躍的に増大するため、その透明性を確保するためには、充填材とレジンマトリックスとの屈折率を近似させる必要がある。高いX線造影性を確保するために充填材中の重金属元素の含有量を増やしてゆくと充填材の屈折率は高くなる。従来、歯科用途に使用されてきた2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称、ビスフェノールA)から誘導されるエポキシメタクリレート(以下、Bis−GMAと略する)等のレジンマトリックスの屈折率は最大で1.55程度であり、使用する充填材の屈折率をその値に近似させることで歯科用組成物の透明性を確保しているが、前述したような高いX線造影性を有する充填材と適合する屈折率の高い樹脂硬化物を与える重合性化合物が要望されており、いくつかの提案がなされている(特許文献3〜特許文献4)。
このように、歯牙における透明性に関して、前歯切端部などに使用されるコンポジットレジンあるいは硬質レジンでは外観上非常に高い透明度が要求されることが多い。多くの場合、このような部位では、歯科用光照射器の照射波長である480nmの光線透過率が5%以上であることが要求される。他方、象牙質などの部位では、こうした外観上の問題がないので、歯科用レジンあるいは硬質レジンは比較的透明度は低くてもよく、透明度が1%以下であっても使用することは可能である。しかしながら、こうした象牙質であっても歯牙の色調を調整するために酸化チタン、ベンガラなどの顔料を配合することから、着色の自由度を高くするためには、透明度は高いことが好ましい。また、透明度が高いと光重合タイプの歯科材料の場合、硬化深度が大きくなり、また重合率が高くなるので機械物性が向上するとの利点もある。
顔料を含まない歯科用組成物において、上記の光線透過率は0.05%以上であることが好ましく、さらに1%以上であることがさらに好ましく、実用的には5%以上であることが特に望ましい。このような現在市販されている材料では、X線造影性は対アルミニウムで最大で200〜300%程度になり、X線による歯牙エナメル質(X線造影性は対アルミニウムで180%程度)との区別は通常の充填治療などでは可能であるが、少量、あるいは薄く充填する場合は、エナメル質との明瞭な区別は難しくなる。
また、歯科材料について臨床上大きな問題である重合収縮を小さくする方法として、無機充填材を予め重合性化合物と混合し硬化させて得られた硬化物を粉砕した複合充填材を歯科用組成物に混合して使用する方法が知られている。このような歯科用組成物では重合収縮は低減されるが、上記複合充填材の場合には透明性を確保するためにさらに無機充填材と複合充填材中のレジンマトリックス、および歯科組成物中のレジンマトリックスの屈折率を細かく適合させる必要がある。
このような状況において、最近では、高いX線造影性と透明性を有し、かつ、重合収縮が少なく、さらに歯科用材料として必要な諸物性(例えば、機械的強度、吸水性など)を満足する歯科用材料、歯科用組成物が要望されており、かかる材料を実現し得る新規な重合性化合物が望まれている。
【特許文献1】特開昭48−49875号公報
【特許文献2】特開平5−194135号公報
【特許文献3】特開平8−157320号公報
【特許文献4】特開平8−208417号公報
一方、無機ガラスは透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性光学材料として広い分野で使用されている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、加工して光学部品などを製造する際に生産性が悪い等の短所があり、無機ガラスに代わる素材として透明性有機高分子材料(光学用樹脂)の開発が盛んに行われている。近年では光学用樹脂の高機能化、高品質化が進展し、かかる光学用樹脂を成形加工して得られる光学部品は、例えば、視力矯正用眼鏡レンズ、CD、DVDなどの光情報記録機器用のピックアップレンズ、デジタルカメラなどの撮影機器用プラスチックレンズ、液晶プロジェクターやプロジェクターテレビ用のフレネルレンズなどの分野、用途で普及を見せている。
光学用樹脂として最も重要な基本的特性の一つは透明性である。現在までに透明性の良好な光学用樹脂として、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(BPA−PC)、ポリスチレン(PS)、メチルメタクリレート−スチレン共重合ポリマー(MS)、スチレン−アクリロニトリル共重合ポリマー(SAN)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)(TPX)、ポリシクロオレフィン(COP)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体(DAC)、ポリチオウレタン(PTU)などが知られている。
これら光学用樹脂の中でもポリメチルメタクリレート(PMMA)は透明性に優れ、光学異方性が小さく(低複屈折率)、かつ、成形性、耐候性などが良好である等々の特性を有し、代表的な光学用樹脂の一つとして広く用いられている。しかしながら、屈折率(nd)が1.49と低く、吸水率が高い等の欠点を有している。
同様に代表的な光学用樹脂の一つであるポリカーボネート(BPA−PC)は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、通称のビスフェノールAと記す)とカーボネート化合物(例えば、塩化カルボニル、ジフェニルカーボネート等)の縮重合反応により得られ、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、比較的高屈折率(nd=1.59)である等の特性を有し、情報記録用光ディスク基板をはじめとする光学用途において広く用いられている。しかしながら、色収差(屈折率分散)、複屈折率が比較的高く、また溶融粘度が高いため成形性にやや劣る等の欠点を有しており、さらなる性能、特性の改良が続けられている。
ジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体(DAC)はモノマーであるジエチレングリコールビスアリルカーボネートを注型ラジカル重合して得られる架橋高分子構造の熱硬化性樹脂であり、透明性、耐熱性が良好で、色収差が低いといった特徴を有しており、汎用の視力矯正用プラスチック眼鏡レンズ用途において最も多く使用されている。しかしながら、屈折率が低く(nd=1.50)、耐衝撃性にやや劣るという欠点を有する。
ポリチオウレタン(PTU)はジイソシアネート化合物とポリチオール化合物との反応で得られる架橋高分子構造の熱硬化性樹脂であり、透明性、耐衝撃性に優れ、高屈折率(nd≧1.6)で、かつ、色収差も比較的低いなどの特徴を有する極めて優れた光学用樹脂である。薄厚、軽量の高品質な視力矯正用プラスチック眼鏡レンズの用途で現在、最も多く使用されているが、唯一、眼鏡レンズを製造する工程において熱重合成形時間に長時間(1〜3日)を要する生産性面での改良の余地を残している。
かかる問題点を解決して光学レンズなどの光学部品を高い生産性で製造する目的で、紫外線などの光を照射することによってラジカル重合を開始する化合物(光重合開始剤)の存在下、ラジカル重合性を有する化合物(重合性化合物)を重合、成形して短時間で目的の成形品を得る方法が提案または示唆されている(特許文献5〜8など)。
かかる光重合に用いられる重合性化合物として、代表的には、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物が使用されるが、より高い屈折率およびアッベ数を得る目的で、臭素原子あるいは硫黄原子を含有する特定構造の(メタ)アクリル酸エステル化合物または(メタ)アクリル酸(チオ)エステル化合物などが提案されている。しかしながら、これらの方法によると短時間での重合が可能となるものの、得られる硬化物(樹脂)は透明性、光学特性(例えば、屈折率、アッベ数など)、熱的特性(例えば、熱変形温度など)、機械的特性(例えば、耐衝撃性、曲げ強度など)等の諸物性面のバランスを考慮すると光学部品として十分に満足なものであるとは言い難かった。
以上のように、従来知られている光学用樹脂は優れた特徴を有しているものの、それぞれに克服すべき欠点を有しているのが現状である。このような状況下にあって、光重合により短時間で重合、成形加工を行なうことができ、かつ、得られる硬化物または光学部品の透明性、光学特性が優れ(高屈折率、アッベ数)、かつ、熱的特性、機械的特性などが良好な光学用樹脂の開発が望まれている。
【特許文献5】特開平4−180911号公報
【特許文献6】特開昭63−248811号公報
【特許文献7】特開昭63−207632号公報
【特許文献8】特開昭61−194401号公報
本発明は、歯科用材料および歯科用組成物における上記課題を解決しようとするものである。すなわち、本発明は、歯科用材料、歯科用組成物に求められる要件を満たしながら、硬化性に優れ、かつ、両立しにくい特性である透明性とX線造影性がともにバランス良く優れ、しかも重合時の縮合の小さい歯科用材料および歯科用組成物、ならびに、これら歯科用材料や歯科用組成物を実現することができる重合性化合物を提供することを目的としている。
また、本発明の別の目的は、光学部品に用いられる光学用樹脂に関する上記問題点を解決しうる光学用樹脂を提供することであって、より具体的には、光重合により短時間で重合、成形加工ができ、かつ、透明性、光学特性(屈折率、アッベ数)、耐熱性、機械的特性、耐候性などが良好な樹脂硬化物を与える重合性組成物、ならびに、該重合性組成物を重合して得られる光学部品を提供することである。
【発明の開示】
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、一般式(1)で表される化合物を含有する歯科用材料および歯科用組成物は硬化性に優れ、歯科用材料に求められる諸物性(例えば、曲げ強度など)を満たしながら、透明性、X線造影性ならびに低重合収縮性を兼ね備えていることを見出した。また、一般式(1)で表される化合物を含有する重合性組成物は、光重合により短時間で重合、成形加工ができ、かつ、透明性、光学特性(屈折率、アッベ数)、耐熱性、機械的特性、耐候性などが良好な樹脂硬化物を与えることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1.一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物、

(式中、R11は二価の芳香族基を表し、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13はアリール基を表し、R14は水素原子またはメチル基を表し、X11は酸素原子または硫黄原子を表す)
2.一般式(1)におけるR11基が、式(2)〜(4)のいずれかで表される基である前記(メタ)アクリル酸エステル化合物、

[式(2)中、R21、R22、R23およびR24はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはニトロ基を表す]

[式(3)中、R31およびR32はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基またはニトロ基を表し、
31は単結合、−C(R33−基、−O−基、−S−基、−SO−基、式(3−a)で示される基または式(3−b)で示される基を表し、

前記基中、R33はそれぞれ独立に、水素原子アルキル基またはアリール基を表し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1〜4の整数を表す]

[式(4)中、R41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す]
3.1又は2記載の一般式(1)で表される化合物を含有する重合性組成物、
4.3記載の重合性組成物を重合して得られる硬化物、
5.一般式(1)で表される化合物を含有する歯科用材料、

(式中、R11は二価の芳香族基を表し、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13はアリール基を表し、R14は水素原子またはメチル基を表し、X11は酸素原子または硫黄原子を表す)
6.一般式(1)で表される化合物におけるR11基が、式(2)〜(4)のいずれかで表される基である請求項5記載の歯科用材料。


[式(2)中、R21、R22、R23およびR24はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはニトロ基を表す]

[式(3)中、R31およびR32はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基またはニトロ基を表し、
31は単結合、−C(R33−基、−O−基、−S−基、−SO−基、式(3−a)で示される基または式(3−b)で示される基を表し、

前記基中、R33はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1〜4の整数を表す]

[式(4)中、R41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す]
7.(A)重合性化合物および(B)重合開始剤を含有する歯科用組成物であって、重合性化合物が前記5又は6記載の一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする歯科用組成物、
8.さらに(C)充填材を含有することを特徴とする前記7記載の歯科用組成物、
9.さらに一般式(1)で表される化合物以外の他の重合性化合物を含有することを特徴とする前記7又は8記載の歯科用組成物、
10.重合後の硬化物の屈折率が1.55以上である、前記7乃至9のいずれかに記載の歯科用組成物、
11.4記載の硬化物からなる光学部品、
12.一般式(5)で表されるヒドロキシ化合物、

(式中、R11は二価の芳香族基を表し、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13はアリール基を表し、X11は酸素原子または硫黄原子を表す)
13.一般式(5)で表される化合物におけるR11基が、上記式(2)〜(4)のいずれかで表される基である前記12記載のヒドロキシ化合物、
14.一般式(6)で表されるエステル化合物、

(式中、R11は二価の芳香族基を表し、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13はアリール基を表し、R14は水素原子またはメチル基を表し、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、X12はハロゲン原子を表す)
15.一般式(6)で表される化合物におけるR11基が上記式(2)〜(4)のいずれかで表される基である前記14記載のエステル化合物、
に関する。
本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物は重合性化合物として、重合開始剤、充填材等と共に歯科用材料および歯科用組成物に広く利用される。
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物、重合開始剤、ならびに、必要に応じて充填材を含有する本発明の歯科用組成物は、歯科用組成物に求められる機械的強度、耐磨耗性、耐水性などの要件を満たした上で、X線造影性、透明性および硬化性(特に、光硬化性)に優れていて、かつ、重合収縮の少ない硬化物を提供する。
本発明の歯科用組成物は、従来の製品より優れたX線造影性を有するためにその使用部位を確認しながら歯科治療をすることができる。
また、本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する重合性組成物は、光重合により短時間で重合硬化、成形が可能であり、重合、成形工程の生産性が高い。
本発明の硬化物および光学部品は透明性、光学特性に優れ(高屈折率)、かつ、熱的特性、機械的特性、耐候性を兼ね備えている。
【図面の簡単な説明】
図1は、歯科用組成物の重合収縮を測定する方法を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
以下、まず本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物について説明する。
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物は、分子内にベンゼン環、ビフェニル環またはナフタレン環などの芳香環構造を部分構造として複数有することを特徴とする新規(メタ)アクリル酸エステル化合物である。

(式中、R11は二価の芳香族基を表し、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13はアリール基を表し、R14は水素原子またはメチル基を表し、X11は酸素原子または硫黄原子を表す)
一般式(1)で表される化合物において、R11は二価の芳香族基を表す。
該R11基としては、二価の芳香族基であれば良く、特に制限はないが、好ましくは、無置換または置換基を有していてもよい炭素数5〜30の二価の芳香族基を表し、
より好ましくは、無置換または置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフタチレン基、もしくは、ビスフェノール化合物から誘導される二価のビスフェノール残基を表す。
かかるR11基として、さらに好ましくは、式(2)〜(4)で表される基である。


[式(2)中、R21、R22、R23およびR24はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはニトロ基を表す]

[式(3)中、R31およびR32はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基またはニトロ基を表し、
31は単結合、−C(R33−基、−O−基、−S−基、−SO−基、式(3−a)で示される基または式(3−b)で示される基を表し、

前記基中、R33はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1〜4の整数を表す]

[式(4)中、R41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す]
該R11基としての式(2)における、R21、R22、R23およびR24はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはニトロ基を表す。
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であり、好ましくは置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基である。
上記アルコキシ基は、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のアルコキシ基であり、好ましくは、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のアルコキシ基である。
式(2)におけるR21、R22、R23およびR24として、好ましくは、水素原子、無置換の直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜10のアルキル基、無置換の直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜10のアルコキシ基またはニトロ基であり、
より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基またはニトロ基であり、
さらに好ましくは、水素原子、メチル基またはメトキシ基である。
該置換基R21、R22、R23およびR24として、水素原子は特に好ましい。
一般式(1)で表される化合物において、R11が式(2)で表される基である場合、ベンゼン環に結合する2個のX11基の結合位置として、互いにパラ、メタまたはオルト位の位置関係にある3つの態様が存在するが、好ましくはパラまたはメタ位、より好ましくはメタ位の位置関係で結合している構造の化合物が望ましい。
該R11基としての式(3)における、R31およびR32はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基またはニトロ基を表す。
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であり、好ましくは置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基である。
上記アルケニル基は、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基であり、好ましくは置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数2〜20のアルケニル基である。
上記アラルキル基は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアラルキル基であり、好ましくは、炭素数6〜12のアラルキル基である。
上記アリール基は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基であり、好ましくは、炭素数6〜10のアリール基である。
上記アルコキシ基は、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のアルコキシ基であり、好ましくは、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のアルコキシ基である。
式(3)におけるR31およびR32として、好ましくは、水素原子、無置換の直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜10のアルキル基、無置換の直鎖状または分岐状の炭素数2〜10のアルケニル基、無置換の炭素数6〜12のアラルキル基、無置換の炭素数6〜10のアリール、無置換の直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜10のアルコキシ基またはニトロ基であり、
より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−アリル基、ベンジル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基またはニトロ基であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基またはメトキシ基である。
該置換基R31およびR32として、水素原子は特に好ましい。
該R11基としての式(3)における、Y31は単結合、−C(R33−基、−O−基、−S−基、−SO−基、式(3−a)で示される基または式(3−b)で示される基を表す。

これらの基におけるR33はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、より好ましくは、メチル基、フェニル基である。
該Y31として、好ましくは、単結合、−C(CH−基、−SO−基、式(3−a)で示される基または式(3−b)で示される基であり、
より好ましくは、単結合、−C(CH−基、−SO−基、式(3−a−1)で示される基または式(3−b)で示される基である。

該R11基としての式(3)における、mおよびnはそれぞれ独立に0または1〜4の整数を表し、好ましくは、0〜2の整数であり、より好ましくは、整数0である。
一般式(1)で表される化合物において、R11が式(3)で表される基である場合、2つの芳香環におけるX11基とY31基の結合位置として、それぞれ独立にパラ位、メタ位またはオルソ位の位置関係にある3つの態様が存在するが、
好ましくは、パラ位またはオルソ位であり、より好ましくは、パラ位の位置関係にある構造の化合物が望ましい。
該R11基としての式(4)における、R41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であり、好ましくは置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基である。
式(4)におけるR41およびR42として、好ましくは、水素原子あるいは無置換の直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜10のアルキル基であり、
より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基またはtert−ブチル基であり、
さらに好ましくは、水素原子またはメチル基である。
該置換基R41およびR42として、水素原子は特に好ましい。
一般式(1)で表される化合物において、R11が式(4)で表される基である場合、ナフタレン環に結合する2個のX11基の結合位置として、1,4−位、1,5−位、1,8−位、2,6−位または2,7−位の位置関係にある態様が存在するが、好ましくは、1,5−位、2,6−位または2,7−位であり、
より好ましくは、2,6−位または2,7−位の位置関係にある構造の化合物が望ましい。
一般式(1)で表される化合物において、R12は水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)で表される化合物において、R13はアリール基を表す。
該R13基として、好ましくは、炭素数5〜20のアリール基であり、より好ましくは、炭素数5〜20のアリール基である。
13基中の芳香環は、置換基を有していてもよいが、所望の効果を最大限に得るためには芳香環構造のみからなることが好ましく、該置換基としては、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基など芳香環構造を有する置換基であることが好ましい。
かかる置換基R13としては、具体的には、例えば、
フェニル基、4−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、2−フェニルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−フェノキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基などが挙げられる。
一般式(1)における該R13基として、フェニル基、4−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、2−フェニルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基は、特に好ましい。
一般式(1)で表される化合物において、R14は水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)で表される化合物において、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、好ましくは、酸素原子である。
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物において、好ましい態様としては、下記の一般式(1−A)〜一般式(1−I)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物が示される。



[上記一般式(1−A)〜一般式(1−H)中、R13、R14、R31、R32およびR33は前記に同じを表す]
本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、例えば、
1,2−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,2−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,2−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,2−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,2−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,2−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,2−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,2−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,2−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,2−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン
1,3−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,3−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,3−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,3−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,3−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,3−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,3−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,3−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,3−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,3−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,3−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,4−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,4−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,4−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,4−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,4−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,4−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,4−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,4−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,4−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,4−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ベンゼン、
1,2−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]−3−メチルベンゼン、
1,2−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]−4−メチルベンゼン、
1,2−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]−3−メトキシベンゼン、
1,2−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]−4−メトキシベンゼン、
1,2−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]−4−クロロベンゼン、
1,2−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]−4−ブロモベンゼン、
1,3−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]−2−メチルベンゼン、
1,3−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]−5−メチルベンゼン、
1,3−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]−5−メトキシベンゼン、
1,3−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]−4−クロロベンゼン、
1,4−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]−2,6−ジメチルベンゼン
4,4’−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
4,4’−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
4,4’−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
4,4’−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
4,4’−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
4,4’−ビス[3−(4−フェノキシフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
4,4’−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
4,4’−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
4,4’−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
4,4’−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
4,4’−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
4,4’−ビス[3−(4−フェノキシフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシ−プロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシ−プロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシ−プロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシ−プロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(4−フェノキシフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[3−(4−フェノキシフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(4−フェノキシフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,4’−ビス[3−(4−フェノキシフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(4−フェノキシフェニルオキシ)−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(4−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(3−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(2−フェニルフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(1−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(2−ナフチルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル、
2,2’−ビス[3−(4−フェノキシフェニルオキシ)−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ]ビフェニル
4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)ビフェニル、
4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)ジフェニルスルフィド、
4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)ジフェニルスルホン、
1,1−ビス(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシフェニル)−1−フェニルエタン、
9,9’−ビス[4−(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、
9,9’−ビス[4−(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、
4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルチオ)ジフェニルスルフィド、
4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルチオ)ジフェニルスルホン、
4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ)ビフェニル、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ)ビフェニル、
4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ)ジフェニルスルフィド、
4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ)ジフェニルスルホン、
1,1−ビス(3−フェニルオキシ−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシフェニル)−1−フェニルエタン、
9,9’−ビス[4−(3−フェニルオキシ−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、
9,9’−ビス[4−(3−フェニルオキシ−2−メタアクリロイルオキシプロピルオキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン
4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−メタアクリロイルオキシプロピルチオ)ジフェニルスルフィド、
4,4’−ビス(3−フェニルオキシ−2−メタアクリロイルオキシプロピルチオ)ジフェニルスルホン
などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物は新規化合物であるが、製造方法それ自体は公知の合成反応を用いて製造される。
すなわち、代表的な方法では、下記[スキームI]で表される合成経路によって好適に製造される。

(式中、R11〜R14およびX11は前記に同じであり、Z11は塩素原子、臭素原子、OH基、炭素数1〜4のアルコキシ基またはフェノキシ基を表す)
すなわち、一般式(10)で表されるジグリシジル化合物に対して、一般式(11)のヒドロキシ化合物を反応させて、本発明の一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物を合成中間体として製造する。得られた一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物に対して、例えば、一般式(12)で示される(メタ)アクリル酸類を反応させて(メタ)アクリル酸エステル化する方法により、本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物は好適に製造される。
原料となる一般式(10)で表されるジグリシジル化合物は、代表的には、ビスフェノール化合物などのジヒドロキシ化合物またはジチオール化合物と、エピハロヒドリンとを原料として公知のエポキシ化反応(例えば、工業原料として入手可能な既存のエポキシ化合物の工業的製造方法など)に従って、好適に製造される。
以下、各段階の反応について、さらに詳しく説明する。
まず、反応経路として示した上記[スキームI]における、一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物の製造方法について詳しく説明する。
一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物は、化学量論的には一般式(10)で表されるジグリシジル化合物と一般式(11)のヒドロキシ化合物2分子とを反応させることにより好適に製造される。すなわち、一般式(11)の化合物のヒドロキシ基を、一般式(11)の化合物のグリシジル基に対して開環付加反応させる方法によって実施される。
該反応方法それ自体は公知であり、従来から知られている反応条件に従って実施され [例えば、Chemical Pharmaceutical Bulletin.,19巻(10),2003〜2008頁(1971年)など]、必要に応じて、適当な触媒(例えば、酸触媒、塩基触媒など)の存在下で好適に行われる。
かかる反応において、一般式(10)で表されるジグリシジル化合物と反応させる一般式(11)のヒドロキシ化合物の使用量は、特に限定するものではないが、通常、一般式(10)で表されるジグリシジル化合物1モルに対して、0.1〜10モルであり、好ましくは、0.5〜5モルであり、より好ましくは、0.8〜3モルである。
該反応は無溶媒で行なってもよく、あるいは溶媒中で行なってもよい。かかる溶媒としては反応に不活性な溶媒であれば、特に限定はなく、例えば、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエンまたはキシレン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンまたはパークレン等のハロゲン系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの極性溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は2種類以上を併用しても差し支えない。
反応温度は、特に制限するものではないが、通常、0℃〜200℃の範囲であり、好ましくは0〜150℃である。反応時間は反応温度等の条件により左右されるが、通常、数分から数十時間である。
次に、上記[スキームI]における一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物を製造する方法について詳しく説明する。
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物は、前述の通り、一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物に一般式(12)で表される(メタ)アクリル酸類を反応させることにより、製造される。

(式中、R14は前記に同じを表し、Z11は塩素原子、臭素原子、OH基、炭素数1〜4のアルコキシ基またはフェノキシ基を表す)
該方法としては、公知の方法、例えば、実験化学講座(日本化学会編)19巻,471〜482頁(1957年)、Journal of Organic Chemistry.,45,5364(1980年)、European Polymer Journal.,19,399(1983年)などに記載の方法と同様の方法を用いることができる。
すなわち、例えば、撹拌下、一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物に対して、一般式(12)で表される(メタ)アクリル酸ハロゲン化物(Z11=塩素原子、臭素原子)を滴下などの操作を行いながら反応させる方法、あるいは、一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物と一般式(12)で表される(メタ)アクリル酸(Z11=OH基)との脱水反応を行う方法などが例示される。
上記反応の際、一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物に対して反応させる一般式(12)で表される(メタ)アクリル酸類の使用量は特に制限するものではないが、通常、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、0.1〜10モルであり、好ましくは、0.5〜5モルであり、より好ましくは、1〜3モルである。
反応は、無溶媒で行なってもよく、あるいは反応に対して不活性溶媒中で行なってもよい。かかる溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、ベンゼンまたはトルエン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンまたはパークレン等のハロゲン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は2種類以上を併用しても差し支えない。
反応温度は特に制限はないが、原料の(メタ)アクリル酸類または反応生成物の(メタ)アクリル酸エステル化合物が重合しない温度であり、通常、−78〜150℃の範囲であり、好ましくは、−20〜100℃であり、より好ましくは、0〜80℃である。
反応時間は反応温度にも依存するが、通常、数分〜100時間であり、好ましくは、30分〜50時間であり、より好ましくは、1〜20時間である。また、公知の分析手段(例えば、液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、IRなど)により反応率を確認しながら、任意の反応率で反応を停止することも可能である。
一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物と一般式(12)で表される(メタ)アクリル酸類の酸ハロゲン化物との反応により、本発明のアクリル酸エステル化合物を製造する際には、ハロゲン化水素(例えば、塩化水素など)が副生するので、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)等の有機塩基、あるいは、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の無機塩基を脱塩化水素剤として使用してもよい。
かかる脱ハロゲン化水素剤の使用量としては、特に制限はないが、一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物1モルに対して、0.1〜10モルであり、好ましくは、0.5〜5モルであり、より好ましくは、1〜3モルである。
一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物と一般式(12)で表される(メタ)アクリル酸(Z11=OH基)との脱水反応により、本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を製造する際には、公知の各種エステル化触媒を用いることは好ましいことである。
該触媒としては、例えば、鉱酸(例えば、塩酸、硫酸)、有機酸(例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、ルイス酸(例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム)等を挙げることができる。
かかる触媒の使用量は、特に制限するものではないが、通常、反応原料混合物に対して、好ましくは、0.001〜50重量%、好ましくは、0.01〜30重量%である。
また反応の進行を促進するため、副生した水を系外に除去することは好ましいことであり、前記溶媒のうち水と共沸する溶媒(例えば、ベンゼン、トルエンなど)を用いる方法、モレキュラーシーブス等の脱水剤を用いる方法などが挙げられる。
一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物は、[スキームI]に示された方法以外に、例えば、下記[スキームII]に示されるように、一般式(13)で表されるジヒドロキシ化合物に対して、一般式(14)で表されるグリシジルエーテル化合物を作用させて反応を行なうことによっても製造される。かかる反応自体は上記[スキームI]で述べた反応と同様な方法によって実施される。

(式中、R11、R12、R13およびX11は前記に同じ)
該反応において、一般式(13)で表される化合物と反応させる一般式(14)のグリシジル化合物の使用量は、特に限定するものではないが、通常、一般式(13)で表されるジヒドロキシ化合物(またはジチオール化合物)1モルに対して、0.1〜10モルであり、好ましくは、0.5〜5モルであり、より好ましくは、0.8〜3モルである。
一般式(1)の(メタ)アクリル酸エステル化合物は、上記[スキームI]で示される方法以外に、例えば、下記[スキームIII]に示すように、一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物に対してハロプロピオン酸類を作用させて反応を行ない、一般式(6)で表されるハロプロピオン酸エステル化合物とした後、脱ハロゲン化水素して(メタ)アクリル酸エステル化合物とする方法などが挙げられる。かかる方法は、例えば、特開平10−67736号公報などに記載の方法と同様な方法を用いることができる。

(式中、R11〜R14、X11およびX12は前記に同じ)
なお、上記一般式(6)で表される化合物において、X12はハロゲン原子を表し、より好ましくは、塩素原子を表す。
本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物を製造する際に、反応中あるいは反応後において生成物の重合を防止するために、重合禁止剤を使用することは好ましいことである。かかる重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、フェノチアジン等の公知の各種化合物を例示することができる。重合禁止剤の使用量は特に制限はないが、反応系中の原料混合物あるいは反応生成物に対して、通常、0.01〜5重量%であり、好ましくは、0.05〜3重量%である。
本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物は上記反応終了後、公知の操作、処理方法(例えば、中和、溶媒抽出、水洗、分液、溶媒留去など)によって後処理されて単離される。さらに所望に応じて、(メタ)アクリル酸エステル化合物は公知の方法(例えば、クロマトグラフィー、活性炭や各種吸着剤による処理など)等により分離、精製されて、より高純度の化合物として単離される。
さらに、溶液時に濾過など不溶物、不溶性粒子、塵、粉塵、異物などの不純物の含有量が少なく高い透明性を有していることは好ましく、例えば、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物を、例えば、クリーンルームなどの施設内でフィルターを用いて濾過する方法により、前記不純物を除去することが可能である。
また必要に応じて、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物を製造する際に、製造中間体において前記操作、処理方法を行なうことにより純度を高めることもできる。
本発明に係る一般式(1)で表される化合物は、特にその状態に関して限定されるものではないが、歯科用材料として用いる場合に、好ましくは、常温で液体であり、より好ましくは、常温での粘度が100〜1000000cps(mPa.s)である。
常温で液体であって、前記の粘度を有する化合物は、重合させないで単量体のまま歯科用材料に好適に利用できる。これより低い粘度であると、所望の特性を有する重合性組成物を得ることが困難になる可能性がある。逆にこれより高い粘度を有すると、後記する充填材とくにガラス粉末などの無機充填材を硬化組成物中に充分な量を均等に含有することが困難となる傾向がある。また、他の成分との混合に時間を要するだけでなく、重合反応も短時間に終了しないこともある。一般式(1)で表される化合物の粘度は1000〜100000cps(mPa・s)の範囲であることが、特に好ましい。
常温で液体であることは、歯科用材料として、あるいは組成物の硬化物を調製する際に他の成分または添加剤を容易に溶解できるなど使いやすさの観点から好ましい。
しかしながら、歯科用組成物に使用される場合には、一般式(1)で表される化合物は、液体に限定されず、固体であっても他の液状の重合性化合物と併用することにより使用可能である。
本発明に係る一般式(1)で表される化合物は、室温での液体屈折率が1.53〜1.65であることが好ましく、より好ましくは、1.54〜1.65である。
また、一般式(1)で表される化合物において、その硬化物の屈折率は、室温で、1.55〜1.67であることが好ましく、より好ましくは、1.55〜1.66であり、さらに好ましくは、1.56〜1.65ある。後で詳しく述べるように、組成物中に共存する充填材などと屈折率を一致させ、組成物を硬化後に硬化物の透明性を確保するためである。
一般式(1)で表される化合物は、単独で用いてもよく、あるいは、一般式(1)で表される化合物であって互いに異なる複数(2種類以上)を、併用しても差し支えない。
次に、本発明の重合性組成物とその硬化物ならびに該硬化物からなる光学部品について詳述する。
本発明の重合性組成物は、必須成分として一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物、ならびに、重合開始剤を含有する。
この場合、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物として、上述したような化合物を単独で用いてもよく、あるいは、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物であって、かつ、異なる複数の化合物を併用しても差し支えない。
本発明の重合性組成物中に含まれる重合性化合物の総重量に占める、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物の含有量は、特に限定するものではないが、通常、10重量%以上であり、好ましくは、20重量%以上であり、より好ましくは、30重量%以上であり、さらに好ましくは、50重量%以上である。
本発明の重合性組成物に使用する重合開始剤としては、特に限定するものではなく、公知の、熱によって重合反応を開始する化合物(熱重合開始剤)、あるいは、紫外線、可視光線などの光によって重合を開始する化合物(光重合開始剤)を使用することができる。
光重合開始剤としては、例えば、
ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチルエステル、4−フェニルベンゾフェノン、4−(4−メチルフェニルチオ)ベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、
4−(1,3−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、
4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタナミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、
2−イソプロピルチオキサトン、4−イソプロピルチオキサトン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド、2−ベンゾイルメチレン−3−メチルナフト(1,2−d)チアゾリンなどのカルボニル化合物;
ベンジル、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジオン(通称、カンファーキノン)、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、α−オキソフェニル酢酸メチルエステルなどのジカルボニル化合物;
アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、
ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,1−ジクロロアセトフェノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、3,6−ビス(2−メチル−2−モルフォリノプロパノイル)−9−ブチルカルバゾールなどのアセトフェノン系化合物;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−(4−n−プロピルフェニル)ホスフィンオキシドなどのアリルホスフィンオキシド系化合物;
4−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4−ジメチルアミノ安息香酸−n−ブトキシエチルエステル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、安息香酸−2−ジメチルアミノエチルエステル、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2,5’−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,5’−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノンなどのアミノカルボニル化合物;
2,2,2−トリクロロ−1−(4’−tert−ブチルフェニル)エタン−1−オン、2,2−ジクロロ−1−(4−フェノキシフェニル)エタン−1−オン、α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)トリアジン、2,4−トリクロロメチル−6−(4−メトキシフェニル)トリアジン、2,4−トリクロロメチル−6−(4−メトキシスチリル)トリアジン、2,4−トリクロロメチル−6−ピペロニル−トリアジン 2,4−トリクロロメチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−6−(4−メトキシナフチル)トリアジン、2,4−トリクロロメチル−6−[2−フリールエチリデン]トリアジン、2,4−トリクロロメチル−6−[2−(5−メチルフリール−2−イル)エチリデン]トリアジンなどのハロゲン化合物;
9−フェニルアクリジン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、2,2−アゾビス(2−アミノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドなどの公知の化合物を例示することができる。これらは単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を併用してもよい。
該光重合開始剤の使用量は、重合性化合物100重量部に対して、0.001〜10重量部であり、好ましくは、0.001〜5重量部であり、より好ましくは、0.01〜2重量部である。
熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート、tert−ブチルパーオキシピバレート等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物などを例示することができる。
該熱重合開始剤の使用量は、重合性化合物100重量部に対して、通常、0.001〜10重量部であり、好ましくは、0.001〜5重量部であり、より好ましくは、0.01〜2重量部である。
本発明の重合性組成物に用いられる重合性化合物として、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物以外の公知の重合性化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N−n−ブチル−O−(メタ)アクリロイルオキシエチルカーバメート、アクリロイルモルホリン、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート トリブロモベンジル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
2,2−ビス(4−アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタアクリロイルオキシフェニル)プロパン、
ビス(4−アクリロイルオキシフェニル)メタン、ビス(4−メタアクリロイルオキシフェニル)メタン、4,4’−ビス(2−アクリロイルオキシ)フェニルスルフィド、4,4’−ビス(2−メタアクリロイルオキシ)フェニルスルフィド、
2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタアクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−メタアクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、
ビス(4−アクリロイルオキシエトキシフェニル)メタン、ビス(4−メタアクリロイルオキシエトキシフェニル)メタン、ビス[4−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]メタン、[4−(2−メタアクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]メタン、
4,4’−ビス(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニルスルフィド、4,4’−ビス(2−メタアクリロイルオキシエトキシ)フェニルスルフィド、
4,4’−ビス(2−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニルスルフィド、4,4’−ビス(2−メタアクリロイルオキシプロポキシ)フェニルスルフィド、4,4’−ビス(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニルスルフォン、4,4’−ビス(2−メタアクリロイルオキシエトキシ)フェニルスルフォン、
4,4’−ビス(2−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニルスルフォン、4,4’−ビス(2−メタアクリロイルオキシプロポキシ)フェニルスルフォン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、
4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィドのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリスイソシアヌレート、(メタ)アクリロキシプロピルトリス(メトキシ)シラン等の一官能または多官能(メタ)アクリレート類;
フェニルグリシジルエーテル、
エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(通称、ビスフェノールF)ジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称、ビスフェノールA)ジグリシジルエーテル、4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルフィドジグリシジルエーテル、4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホン(通称、ビスフェノールS)ジグリシジルエーテル、
4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなど1価または2価以上の公知の各種エポキシ化合物に対して、(メタ)アクリル酸化合物を作用させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート類;
フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールザイロック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂などの各種公知のエポキシ樹脂に対して(メタ)アクリル酸化合物を作用させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート類等;
ビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、イソプロペニルベンゼン、ジイソプロベニルベンゼン、トリイソプロペニルベンゼン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル化合物類;
エチレングリコールジアリルカーボネート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有化合物類など各種公知の重合性モノマー;
あるいは、ウレタン(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類、ポリエーテル(メタ)アクリレート類など各種公知の重合性オリゴマー等が例示される。
本発明の重合性組成物中に含まれる重合性化合物の総重量に占める、これら他の重合性化合物の含有量は、特に制限はないが、通常、90重量%以下であり、好ましくは、80重量%以下であり、より好ましくは、70重量%以下であり、さらに好ましくは、50重量%以下である。
本発明の重合性組成物の製造方法として、具体的には、本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物を用い、所望により上記の公知の各種重合性化合物を併用して、さらに上記重合開始剤を添加した後、混合・溶解させることにより得られる。該重合性組成物は、必要に応じて重合前に不溶物、異物などを濾過により除去して、さらに減圧下で十分に脱泡して重合、硬化に使用される。
また重合性組成物を製造する際には、本発明の効果を損なわない範囲内で所望に応じて、内部離型剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色顔料(例えば、シアニングリーン、シアニンブルー等)、染料、流動調節剤、無機充填剤(例えば、タルク、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、酸化マグネシウム等)、などの公知の各種添加剤を添加することも可能である。
本発明の硬化物ならびに該硬化物からなる光学部品は、上記重合性組成物を重合して得られるものである。これらの方法として、従来から公知の各種方法が採用され好適に実施されるが、代表的には、上述のように得られた重合性組成物をモールド中に注入し、熱または光によって開始されるラジカル反応によって注型重合を行う方法などが挙げられる。
使用されるモールドは、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等からなるガスケットを介した二枚の鋳型、あるいは、ポリエステル粘着テープ等で固定された二枚の鋳型により構成される。鋳型としては、ガラスとガラス、ガラスとプラスチック板、ガラスと金属板等の組み合わせの鋳型が挙げられ、鏡面研磨されているものが好ましい。また、かかる鋳型は離型処理など公知の各種処理方法が施されていてもよい。
ラジカル重合反応としては、前述したように、熱による重合反応(熱重合)、紫外線、可視光線などの光による重合反応(光重合)、ガンマ線などの活性エネルギー線による重合反応等を利用する方法、あるいは、これらの複数を組み合わせた方法などが例示される。
光による重合を行った場合、硬化終了後、鋳型を離型させて得られた硬化物または該硬化物からなる光学部品を、内部の応力、歪みを取り除くなどの目的でアニール処理してもよい。
これらの方法の中で、熱重合は数時間から数十時間を要するのに対して、紫外線などを利用した光重合は数秒〜数分で硬化が可能であり、本発明の光学部品を製造する際の生産性を考慮すると、好ましい方法である。
熱重合を行う場合、重合温度は重合開始剤の種類など重合条件によって影響されるので、特に限定されるものではないが、通常、25〜200℃、好ましくは、50〜170℃である。
本発明の光学部品の代表として、例えば、プラスチック光学レンズを得る成形方法としては、上述したように、例えば、光または/および熱による注型重合を行いレンズを得る方法が挙げられる(例えば、特開昭60−135901号公報、特開平10−67736号公報、特開平10−130250号公報など)。すなわち、前述の方法により製造された本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物を含む重合性組成物を、必要に応じて、適当な方法で脱泡を行った後、モールド中に注入し、通常、光照射して重合させる方法により、好適に実施される。また熱による重合では、低温から高温へ徐々に加熱して重合させる方法により、好適に実施される。
得られたプラスチックレンズに対して、硬化後、必要に応じて、アニール処理が施されてもよい。また必要に応じて、反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、防曇性付与あるいはファッション性付与の目的で、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理(例えば、フォトクロミックレンズ化処理など)など公知の各種物理的または化学的処理が施されてもよい。
本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する重合性組成物は、光重合などの方法によって重合(硬化)、成形に要する時間が数分から数時間程度であり、ポリジエチレングリコールジアリルカーボネートに代表される既存の熱硬化型の光学用樹脂と比較して短時間での重合が可能であり、高速成形できることが特徴の一つである。さらに本発明の硬化物および光学部品は、透明性に優れ、従来公知の光硬化性樹脂と比較して高屈折率であるという特徴を有しており、機械的特性、熱的特性も良好である。
本発明の光学部品としては、例えば、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器用レンズ、液晶プロジェクター用のフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、コンタクトレンズなどを代表とする各種プラスチックレンズ、発光ダイオード(LED)用封止材、光導波路、光学レンズや光導波路の接合に用いる光学用接着剤、光学レンズなどに用いる反射防止膜、液晶表示装置部材(基板、導光板、フィルム、シートなど)に用いる透明性コーティングまたは透明性基板などが例示される。
特に、本発明の硬化物または光学部品は、光重合によって短時間での成形が可能であり、且つ、高屈折率であって、光学特性(透明性、アッベ数)、熱的特性(加熱変形温度など)、機械的特性(耐衝撃性など)が良好であるという特性を鑑みると、好ましくは、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器用レンズ、液晶プロジェクター用フレネルレンズなどのプラスチックレンズ、光学用接着剤、発光ダイオード(LED)用封止材、透明性コーティングなど用途に使用される。
本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物または該化合物を含有する重合性組成物は、前述したような光学部品のほかにも、高屈折率透明性材料を与える光重合性材料としてホログラム記録などの用途にも使用される。
次に、本発明の歯科用材料および歯科用組成物について具体的に説明する。
歯科用材料とは、下記の歯科用組成物を含む広く歯科分野において使用される材料全般である。歯科用組成物とは、重合性化合物の他に、重合開始剤、充填材等を混合したものをいい、これには硬化前の重合性組成物と該重合性組成物を重合して得られる硬化物が包含される。
本発明の歯科用材料は、一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。該化合物は前述した通り、分子内に、ベンゼン環、ビフェニル環またはナフタレン環などの芳香環構造を部分構造として複数個有することを特徴とする新規(メタ)アクリル酸エステル化合物である。
本発明の歯科用組成物は、(A)重合性化合物および(B)重合開始剤を必須構成成分として含有してなる組成物において、該重合性化合物として、一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。該歯科用組成物は後述するように、所望に応じて、充填剤を含有してもよい。
本発明の歯科用組成物(または歯科用材料)における重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、公知の各種化合物(例えば、光重合開始剤、有機過酸化物、ジアゾ系化合物、レドックス系化合物など)が挙げられ、好適に使用される。
重合開始剤として、前記光重合型開始剤を使用する場合は、光増感剤単独または光増感剤と光重合促進剤との組み合わせが利用できる。
光増感剤としては、ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、p,p′−ジメトキシベンジル、ペンタジオン、1,4−フェナントレンキノン、ナフトキノン、トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどの可視光あるいは紫外光の照射で励起され重合を開始する公知のα−ジケトン化合物類およびリン原子含有化合物などが例示される。これらの化合物は単独で使用されてもよく、あるいは、2種類以上を混合して使用されても差し支えない。
これら化合物の中でも、カンファーキノンおよびトリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドは、好ましい化合物である。
光重合促進剤としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、p−N,N−ジメチルアミノベンゾニトリル、p−N,N−ジエチルアミノベンゾニトリル、p−N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第3級アミン類;前記第3級アミンとクエン酸、リンゴ酸、2−ヒドロキシプロパン酸との組み合わせ;5−ブチルアミノバビルツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバビルツール酸などのバビルツール酸類;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物などが例示される。これらの化合物は、単独で使用されてもよく、あるいは、2種類以上を混合して使用されても差し支えない。
これら化合物の中でも、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートなど芳香族に直接窒素原子が結合した第3級芳香族アミンもしくは重合性基を有する脂肪族第3級アミンは、好ましい化合物である。
硬化を速やかに終了させるためには、光増感剤と光重合促進剤との組み合わせて使用することは好ましく、カンファーキノンまたはトリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドと、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルもしくはp−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチルなど芳香族に直接窒素原子が結合した第3級芳香族アミンのエステル化合物との組み合わせて使用することは、好ましい。
重合開始剤として、有機過酸化物、ジアゾ系化合物を使用する場合において、公知の各種化合物が制限はなく、好適に使用される。
有機過酸化物として、例えば、ジアセチルパーオキサイド、ジイソブチルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルネオデカネート、クメンパーオキシネオデカネートなどのパーオキシエステル類;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシドなどの過酸化スルホネート類等が挙げられる。
また、ジアゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)などを挙げることができる。
重合を短時間で終了させたい場合には、80℃での分解半減期が10時間以下である化合物は好ましく、上記化合物の中でも、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルは好ましい化合物である。
重合開始剤としてレドックス開始剤系を使用する場合において、特に限定はなく、公知の各種開始剤が使用される。
前記の有機過酸化物と第3級アミンの組み合わせ;有機過酸化物/スルフィン酸もしくはそのアルカリ金属塩類/第3級アミンの組み合わせ;過硫酸カリウムなどの無機過酸化物と亜硫酸ナトリウム、無機過酸化物と亜硫酸水素ナトリウムのような無機過酸化物と無機還元剤の組み合わせなどを挙げることができる。中でも、ベンゾイルパーオキサイドとN,N−ジメチル−p−トルイジン、ベンゾイルパーオキサイドとN,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジンが好適に使用される。
これらの重合開始剤の使用量は、特に限定するものではないが、通常、重合性化合物100重量部に対して、0.001〜10重量%の範囲内であり、好ましくは0.001〜5重量%の範囲内である。
本発明の歯科用組成物において充填剤が含まれるが、かかる充填材は、機械的強度の確保、光透過性の向上、X線造影性の付与、重合収縮の低減などの目的で添加される。
本発明において使用される充填材としては、特に制限されるものではなく、通常、公知の無機または有機の充填材、もしくは、有機−無機複合の充填材が使用されるが、本発明においては無機化合物の充填材、特に以下に説明する無機化合物が好ましいものとして挙げられる。
本発明の充填材として使用される無機化合物は、通常、ガラス粉末で、平均粒子径2μm以下、好ましくは0.1〜1.5μmの粉末を使用する。この範囲内の粒径であれば充填材の比表面積が極めて増大することはないため、充填材の重合性化合物に対する相対的な割合を大幅に増大させることにより重合収縮の低減を効果的に図ることができる。このガラス粉末の屈折率は1.55以上であることが好ましく、さらに屈折率が1.57〜1.65の範囲内にあることが特に好ましい。
さらに、本発明で使用されるガラス粉末の屈折率と、このガラス粉末が配合される歯科用組成物中の、重合性化合物の硬化物(レジンマトリックス)の屈折率との差が0.05以下であるガラス粉末を使用することが好ましく、さらにこの屈折率の差が0.02以下であるガラス粉末を使用することが特に好ましい。すなわち、本発明で使用されるガラス粉末は、重合性化合物の硬化体と非常に近似した屈折率を有している。このようなガラス粉末を使用することにより、本発明に係る歯科用組成物の硬化体の光透過性が向上する。
一般に、臨床治療においては充填物の存在がX線写真で明瞭に確認できることが重要であるため、本発明において使用されるガラス粉末は、X線造影性を有することが好ましい。ガラス粉末にX線造影性を付与するためには、ガラス構成元素として、通常バリウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ビスマス、タングステン、ゲルマニウム、モリブデン、ランタニド等のX線造影性を有する元素(重金属元素)が添加される。
このようにガラス粉末にX線造影性を付与する目的で重金属元素を添加すると、その添加量が多くなるにつれガラス粉末の屈折率は高くなる傾向にある。従って、本発明の歯科用組成物におけるガラス粉末中の重金属元素は、ガラス粉末にX線造影性を付与する機能を有する一方で、ガラス粉末の屈折率を変化させる影響を有している。
前述した(メタ)アクリレートなどの重合性モノマーの硬化物とガラス粉末の屈折率の差が0.05より大きくなると、硬化組成物の透明性は低下し、光硬化性が低下する傾向にある。そのため、光硬化深度の低下や充分に硬化反応が進行しないため硬化物の物性が低下する可能性がある。また、ガラス粉末の屈折率を調整する場合、その屈折率を、硬化前の重合性モノマーの屈折率と該重合性モノマーの硬化物の屈折率の間に調整することが好ましい。これにより、硬化前(組成物)の透明性と硬化前後の組成物(硬化体)の透明性との間に変化が生じないという利点がある。さらにモノマー硬化物の屈折率をガラス粉末の屈折率に合わせると硬化後の組成物の透明性が最高になるという利点もある。これらの屈折率の調整方法は、臨床現場の要求により適宜、使い分けることができる。
通常、サブミクロン〜数μm程度の平均粒子径を有するX線造影性ガラス粉末を60重量%程度以上含有する本発明の歯科用組成物は、含有するガラス粉末の屈折率が1.50以上であれば硬化体が透明になるとともに、X線によってその存在が明瞭に確認できるようになる。このとき使用するガラス粉末は、単独のガラス粉末であっても、組成が異なる2種類以上のガラス粉末の混合物であってもよい。複数の異なる組成のガラス粉末を使用する場合には、使用するガラス粉末同士の屈折率をなるべく近似させることによって、本発明の歯科用組成物を硬化させた後の硬化体の透明性を高い状態で確保することができる。
このようなガラス粉末は、重合性化合物100重量部に対して、通常は5〜2000重量部、好ましくは、50〜1000重量部、より好ましくは、100〜700重量部を使用される。
本発明の歯科用組成物では、充填材として、複合充填材を用いることもできる。
本発明において使用される複合充填材は、例えば、重合性化合物と粉末ガラスと過酸化ベンゾイルなどのような熱重合開始剤とを混合して、加熱重合し、次いで、得られた重合物を粉砕することにより製造することができる。
このような複合充填材を使用することにより本発明の歯科用組成物は、硬化する際の重合収縮が効果的に低減することができる。また、こうした複合充填材は、光重合よりも重合率を上げることができる条件(例えば加熱重合)で重合性化合物を重合させることにより製造されるため、硬化体の機械的特性が光重合した硬化体よりも高く、従って、こうした複合充填材を配合することにより、本発明に係る歯科用組成物の硬化体の機械物性および耐摩耗性が向上する。さらに、この複合充填材に用いるガラス粉末と複合材を構成する重合性化合物硬化物の屈折率を前述した重合性化合物硬化物およびガラス粉末に一致させることにより高い透明性を得ることが可能となる。この複合充填材は、必要に応じて微粒子シリカ、金属酸化物などの粉末ガラス以外の充填材や顔料などを添加して製造しても良い。この複合充填材の平均粒径は、特に限定するものではないが、通常、1〜100μm、好ましくは5〜20μmである。
このような複合充填材の使用量は、重合性化合物100重量部に対して、通常、5〜2000重量部であり、好ましくは、50〜700重量部である。
また、本発明において、充填材としては、上述のガラス粉末の他に微粒子シリカを使用することもできる。
かかる微粒子シリカは、通常、気相法によって製造される高純度コロイダルシリカでありX線造影性は全く有していない。それにもかかわらずペーストの粘度やべとつきなどを調製する目的で添加されることもある。この微粒子シリカは、例えば気相法によって製造された高純度コロイダルシリカをそのまま使用することもでき、あるいは高純度コロイダルシリカをジメチルジクロルシランのようなシラン化合物で処理することにより疎水化して使用することもできる。また、メタクリロキシシラン処理やアミノシラン処理などによってレジンマトリックスとの親和性を向上させて使用することが好ましい。また、この微粒子シリカは屈折率が1.45と低く、屈折率が使用する充填材とかけ離れているが、平均粒径が0.05μm以下で、可視光線の波長である0.3〜0.7μmよりかなり小さく、透明性を大きく阻害しない。しかしながら、より小さい微粒子シリカの方が透明性をより高く保てるため、平均粒径0.01μm以下の微粒子シリカを使用することが高い透明性を維持する見地からは好ましい。
このような微粒子シリカは、本発明の歯科用組成物中の(メタ)アクリレートモノマー100重量部に対して、通常は5〜250重量部、好ましくは10〜200重量部以下、特に好ましくは、20〜150重量部の範囲内の量で使用される。
次に、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物に以外の他の重合性化合物について詳しく説明する。
かかる重合性化合物としては、特に限定されるものではなく、歯科用材料分野で使用されている各種既知の重合性化合物(重合性モノマーまたは重合性オリゴマーなど)が使用される。
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物と組み合わせて用いられる一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の他の重合性化合物としては、公知の各種重合性化合物(例えば、重合性モノマーまたは重合性オリゴマーなど)が挙げられ、重合性、硬化性などを考慮すると、通常、(メタ)アクリレート化合物、または(メタ)アクリルアミド化合物が好ましい。
この重合性化合物として、単官能モノマー、重合時に橋架け構造を形成して重合後の物理的物性(例えば、吸水率、曲げ強度、耐摩耗性などの機械的特性など)を向上させるために効果的な多官能モノマー、および、組成物に歯質などへの接着性を付与させることを目的に添加する酸性基含有モノマーなどがある。
本発明で使用される重合性化合物としては、特に限定されるものではなく、前述した通り、公知の各種重合性化合物が例示され、具体的には
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル化合物;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,2−または1,3−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル化合物;
ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート化合物;
エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)グリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート;
パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のフルオロアルキルエステル;
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シラン等の(メタ)アクリロキシアルキル基を有するシラン化合物;
β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−メタクリロイルオキシエチルマレエート等のカルボン酸含有(メタ)アクリレート化合物;
3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのハロゲン含有(メタ)アクリレート、ならびに、テトラフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート化合物;
また、多官能モノマーの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロープロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;
下記式で表わされる脂肪族、脂環族または芳香族の(メタ)アクリレート;

(ただし、上記式において、Rは水素原子またはメチル基を示し、mおよびnは0または正の数を示す。また、Rは、以下に記載する二価の連結基である。);

下記式で表される脂環族または芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート;

(上記式において、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは0または正の数を示し、Rは、−(CH−、−(CH−、−(CH−または以下に記載する二価の連結基である。)

さらに、下記式で表される分子内にウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げることができる。

上記式において、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは、−(CH−、−(CH−、−(CH−、または下記を表す。)

また、本発明で使用される酸性基含有の重合性モノマーの例としては、以下のものが挙げられる。1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有するモノマーとしては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはこれらの誘導体を挙げることができる。例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、p−ビニル安息香酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MAC−10)、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]ブチルトリメリット酸およびその無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、N−o−ジ(メタ)アクリロイルオキシチロシン、o−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル4−アミノサリチル酸、2または3または4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物の付加生成物(PMDM)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水マレイン酸または3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)または3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の付加反応物、2−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、N−フェニルグリシンまたはN−トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3または4−[N−メチル−N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸などを挙げることができる。
また、1分子中に少なくとも1個のリン酸基を有するモノマーとしては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2および3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシドホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホスフェート 6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルアシドホスフェート、ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシドホスフェート、ビス{2または3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル}アシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルp−メトキシフェニルアシドホスフェートなどを挙げることができる。これらの化合物におけるリン酸基は、チオリン酸基に置き換えることができる。
また、1分子中に少なくとも1個のスルホン酸基を有するモノマーとして、例えば2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2または1−スルホ−1または2−プロピル(メタ)アクリレート、1または3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
以上に例示した中で、低毒性で重合が速やかに達成され、加水分解を受けにくく製造も容易である(メタ)アクリル酸エステル類が特に好ましい。単官能の重合性(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート(屈折率;1.42)、エチルメタアクリレート(屈折率;1.42)のようなアルキルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(屈折率;1.45)のような水酸基含有(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(屈折率;1.44)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(屈折率;1.45)のような分子内にエチレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート等が特に好ましく用いられる。
また、多官能性の重合性(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジメタクリレート(屈折率;1.45)、トリエチレングリコールジメタクリレート(屈折率;1.46)のような分子内にエチレングリコール鎖を有するジ(メタ)アクリレート、

(ただし、上記式において、Rはメチル基を表し、m+nは平均2.6である)

(ただし、上記式において、Rはメチル基を表す)

(ただし、上記式において、Rはメチル基を表す;屈折率;1.48)
等で表わされる化合物等が特に好ましく用いられる。
また、酸性基含有モノマーとしては、11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、N−メタクリロイル5−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、2−メチル−2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸等が特に好ましく用いられる。
このような一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の他の重合性化合物は、本発明の歯科用組成物中の全ての重合性化合物100質量部中、通常、5〜80質量%の範囲で使用され、好ましくは、5〜70質量%、より好ましくは、5〜50質量%部、さらに好ましくは、10〜40質量%の範囲内の量で使用される。
また、このような酸性基含有モノマーは、本発明の歯科用材料または歯科用組成物中の重合性化合物100質量部に対して、通常は0.01〜100質量部の範囲で使用され、好ましくは、0.1〜50質量部、より好ましくは、0.5〜20質量部、さらに好ましくは、1〜10質量部の範囲内の量で使用される。
本発明の歯科用組成物においては、これらの(メタ)アクリレートモノマーと一般式(1)で表される重合性化合物混合物の硬化体の屈折率と充填材として配合されるガラス粉末の屈折率との差が、0.05以下になるモノマーを選択して使用することが好ましく、さらにこの差が0〜0.02の範囲内になるようにモノマーを選択して使用することが特に好ましい。
通常、(メタ)アクリレートモノマーは重合することによりモノマーの屈折率よりも硬化体の屈折率が0.02〜0.03程度高くなる。さらに、(メタ)アクリレートモノマーの屈折率は、通常は、水酸基やカルボン酸基のような極性基、芳香族環、あるいはハロゲン原子などの重元素を含有させることによってこうした基あるいは元素を有しないモノマーの屈折率よりも高くなる傾向があり、基または重元素を含有するモノマーの屈折率は、通常は1.48〜1.54の範囲内になる。これに対して、アルキル基のみを骨格として持つモノマーやフッ素化アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの屈折率は、これらの基を有していないモノマーの屈折率よりも低くなる傾向があり、こうした(メタ)アクリル系モノマーの屈折率は、通常は1.40〜1.48の範囲内になる。
本発明の歯科用組成物中において、重合性化合物の含有率は、5〜50重量%の範囲内にあることが好ましく、さらに10〜30重量%の範囲内にあることが特に好ましい。
本発明の歯科用組成物は、一般式(1)で表される重合性化合物および重合開始剤を少なくとも含有し、必要に応じ充填材を含有しているが、所望の効果を損なわない限りにおいて、その他に顔料、染料、安定剤、ポリマー粉末、紫外線吸収剤などが必要に応じ配合されていてもよい。
本発明の組成物の製造方法として、具体的には、一般式(1)で表される重合性化合物(A)のほか、重合開始剤(B)、充填材(C)、さらに所望する場合には(A)以外の重合性化合物(D)を溶解・混合させて重合反応を行わせる。該重合性組成物は、不溶物または異物が混入しないようにする必要があり、その場合重合前にろ過などにより除去してもよい。さらに好ましくは該組成物を減圧下で充分に脱泡して重合、硬化を行わせると硬化物中への気泡などの混入が防止できる。
本発明の歯科用組成物は、従来の光重合性材料と同様に、紫外線または可視光線などの活性光線の照射により重合反応を達成することができる。このための光源として、蛍光灯、各種水銀灯、キセノンランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプまたは太陽光などを使用することができる。また光照射時間は、1秒〜5分である。光重合の際の好適温度は通常0〜100℃、好ましくは5〜60℃の範囲にある。重合硬化は、歯科治療の都合および患者の負担など使用状況の特殊性を考慮して常温でなるべく短時間で完了するのが好ましく、特に1〜30分間で終了させるように組成を調整してもよい。
本発明の歯科用組成物は、機械的強度、耐磨耗性、耐水性、硬化性などの歯科用の材料あるいは組成物に求められる要件を充足するとともに、両立しにくい特性である透明性とX線造影性にもバランス良く優れているが、組成物の硬化物としての光線透過率(透明性)が1%以上である組成物が好ましく、5%以上がより好ましい。また組成物のX線造影性については、100〜1000(%アルミニウム)である組成物が好ましく、200〜800(%アルミニウム)がより好ましい。また、本発明は上述の特性と併せて、重合収縮の少ない特性も有している。このため欠損部の修復および穿設した穿孔内に充填して使用することができるほか、前歯などの歯質の接合あるいは接着、仮歯の製造、ブリッジのポンティック、前装冠など幅広く使用することができる。
またさらに、本発明の歯科用材料は、一般式(1)で表される重合性化合物(A)そのものを、単独であるいは、種類の異なる複数の重合性化合物とともに使用することもできる。この場合、該重合性化合物は常温で液体であることが好ましく、さらに常温でのその粘度が、100〜1,000,000cps、好ましくは1,000〜100,000cpsであることが望ましい。かかる単量体はレジン接着材を適用する際の下処理用として使用するプライマーなどに利用される。これらには殺菌剤、消毒剤、安定化剤、保存剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない量であれば必要に応じて含めても良い。
また上記重合性化合物とともに、硬化させるために重合開始剤を伴うものも本発明に含まれ、このような歯科用の材料は、例えばボンディング剤、レジン系接着剤、仮着材として利用できる。重合開始剤は、上記硬化性組成物の場合と同様の物質を使用でき、100重量部に対して、特に限定するものではないが、通常、0.001〜10重量%の範囲内であり、好ましくは0.001〜5重量%の範囲で使用される。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物の製造>
製造例1[式(5−1)で表される化合物の製造]
4−フェニルフェノール68.1g(0.40モル)、96%NaOH0.53g(後記のレゾルシンジグリシジルエーテルに対して1.2重量%)およびN,N−ジメチルアセトアミド40gを秤取して、25℃で溶解させた。
得られた混合物に対して、式(10−1)で表される化合物が主成分のレゾルシンジグリシジルエーテル44.4g(0.20モル)をN,N−ジメチルアセトアミド 40gに溶解させた溶液を25℃で1時間要して滴下した。
滴下終了後、100℃で6時間、攪拌した後、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLC分析と記す)で原料の消失を確認した上で、反応溶液をメタノール/水の混合溶媒(重量比率=50/50)200gで希釈した。析出した結晶を濾過して集めた後、前記と同じ比率のメタノール/水混合溶媒でスラッジ精製を行なった。濾過して結晶を集めた後、乾燥して無色粉末状結晶の式(5−1)で表されるジヒドロキシ化合物108.9gを得た。
収率97%、 純度(HPLC分析)≧95%
FD−MS(m/z): 562(M+)


製造例2 [式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物の製造]
製造例1で製造した式(5−1)で表される化合物56.27g(0.10モル)を、N,N−ジメチルアセトアミド60gに溶解して得られた溶液に対して、3−クロロプロピオン酸クロリド45.70g(0.36モル)を60℃で1時間要して滴下した。滴下終了後、60℃で4時間攪拌した後、HPLC分析で原料の消失を確認した。25℃に冷却した後、反応液を氷水に排出した。トルエン250gを用いて反応生成物を抽出して、3%NaHCO水で洗浄後、有機層が中性になるまで水洗を繰り返した。その後、分液して有機層を取り出し、トルエンを減圧下に40℃で留去して、無色透明粘稠な液体の式(6−1)で表される化合物76.60gを得た。
収率95%、 純度(HPLC分析)92.2%
EI−MS(m/z): 742(M+)


製造例3[式(5−2)で表される化合物の製造]
製造例1において、4−フェニルフェノールの代わりに1−ナフトールを使用する以外は、製造例1に記載の方法と同様にして行ない、式(5−2)で表されるジヒドロキシ化合物を得た。
EI−MS(m/z): 510(M+)

製造例4[式(6−2)で表される化合物の製造]
製造例2において、式(5−1)で表されるジヒドロキシ化合物を用いる代わりに、製造例3で製造した式(5−2)で表されるジヒドロキシ化合物を使用する以外は、製造例2に記載の方法と同様にして行ない、式(6−2)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を得た。
EI−MS(m/z): 690(M+)

製造例5 [式(5−3)で表される化合物の製造]
製造例1において、4−フェニルフェノールの代わりに2−ナフトールを使用する以外は、製造例1に記載の方法と同様にして行ない、式(5−3)で表されるジヒドロキシ化合物を得た。
EI−MS(m/z): 510(M+)

製造例6 [式(6−3)で表される化合物の製造]
製造例2において、式(5−1)で表されるジヒドロキシ化合物を用いる代わりに、製造例5で製造した式(5−3)で表されるジヒドロキシ化合物を使用する以外は、製造例2に記載の方法と同様にして行ない、式(6−3)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を得た。
EI−MS(m/z): 690(M+)

製造例7 [式(5−4)で表される化合物の製造]
製造例1において、4−フェニルフェノールの代わりに2−フェニルフェノールを使用する以外は、製造例1に記載の方法と同様にして行ない、式(5−4)で表されるジヒドロキシ化合物を得た。
EI−MS(m/z): 562(M+)

製造例8 [式(6−4)で表される化合物の製造]
製造例2において、式(5−1)で表されるジヒドロキシ化合物を用いる代わりに、製造例5で製造した式(5−4)で表されるジヒドロキシ化合物を使用する以外は、製造例2に記載の方法と同様にして行ない、式(6−4)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を得た。
EI−MS(m/z): 742(M+)

製造例9 [式(5−5)で表される化合物の製造]
製造例1において、4−フェニルフェノールの代わりに4−フェノキシフェノールを使用する以外は、製造例1に記載の方法と同様にして行ない、式(5−5)で表されるジヒドロキシ化合物を得た。
FD−MS(m/z): 594(M+)

製造例10 [式(6−5)で表される化合物の製造]
製造例2において、式(5−1)で表されるジヒドロキシ化合物を用いる代わりに、製造例5で製造した式(5−5)で表されるジヒドロキシ化合物を使用する以外は、製造例2に記載の方法と同様にして行ない、式(6−5)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を得た。
FD−MS(m/z): 774(M+)

製造例11 [式(5−6)で表される化合物の製造]
製造例1において、式(10−1)で表される化合物を使用する代わりに式(10−2)で表される化合物を使用する以外は、製造例1に記載の方法と同様にして行ない、式(5−6)で表されるジヒドロキシ化合物を得た。
FD−MS(m/z): 694(M+)

製造例12 [式(6−6)で表される化合物の製造]
製造例2において、式(5−1)で表されるジヒドロキシ化合物を用いる代わりに式(5−6)で表されるジヒドロキシ化合物を使用する以外は、製造例2に記載の方法と同様にして行ない、式(6−6)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を得た。
FD−MS(m/z): 874(M+)

製造例13 [式(5−7)で表される化合物の製造]
製造例11において、4−フェニルフェノールの代わりに2−フェニルフェノールを使用する以外は、製造例11に記載の方法と同様にして行ない、式(5−7)で表されるジヒドロキシ化合物を得た。
FD−MS(m/z): 694(M+)

製造例14 [式(6−7)で表される化合物の製造]
製造例12において、式(5−6)で表されるジヒドロキシ化合物を用いる代わりに、製造例13で製造した式(5−7)で表されるジヒドロキシ化合物を使用する以外は、製造例12に記載の方法と同様にして行ない、式(6−7)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を得た。
FD−MS(m/z): 874(M+)

製造例15 [本発明の式(5−8)で表される化合物の製造]
4,4’−ビフェノール50.00g(0.27モル)、96%NaOH 0.97gならびにN,N−ジメチルアセトアミド100gを秤取・混合して25℃で溶解させた。得られた混合物を100℃に昇温した後、フェニルグリシジルエーテル80.80g(0.54モル)を30分要して滴下した。滴下終了後、100℃で6時間攪拌して反応させた後、HPLC分析で原料の消失を確認した上で反応溶液を水300gに加えて析出した結晶を濾過して集めた。その後、水300gでスラッジした後、さらにメタノール300gでスラッジして精製後、濾過して結晶を集めた。80℃で10時間乾燥して、微黄色粉末状結晶の式(5−8)で表されるジヒドロキシ化合物116.40gを得た。
純度(HPLC面積百分率法)96.7%、収率(純度換算)85%
融点128.5〜130℃
FD−MS(m/z): 486(M+)

製造例16 [式(6−8)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物の製造]
製造例15で製造した式(5−8)で表される化合物60.37g(0.12モル;純度96.7%として換算)をN,N−ジメチルアセトアミド60gに溶解させた。得られた溶液に対して、3−クロロプロピオン酸クロリド37.84g(0.30モル)を60℃で1時間要して滴下した。滴下終了後、60℃で3時間攪拌した後、HPLC分析で原料の消失を確認した。25℃に冷却した後、反応液に対してトルエン150gおよび水150gを加えて、攪拌した後、抽出分液してトルエン溶液層を得た。さらに3%NaHCO3水 150gで10分間攪拌した後、分液して取り出した。さらに水層が中性になるまで水洗を繰り返した。その後、分液して有機層を取り出して、トルエンを減圧下にて40℃で留去して、無色透明粘稠な液体の式(6−8)で表される化合物82.74gを得た。
純度(HPLC分析)94.7%、収率97.8%
FD−MS(m/z): 666(M+)

製造例17 [式(5−9)で表されるジヒドロキシ化合物の製造]
製造例15において、4,4’−ビフェノールを使用する代わりに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドを使用する以外は、製造例15と同様な方法に従って行った。微黄色透明液体の式(5−9)で表されるジヒドロキシ化合物を得た。
FD−MS(m/z): 518(M+)

製造例18 [式(6−9)で表されるクロルプロピオン酸エステル化合物の製造]
製造例16において、式(5−8)で表されるジヒドロキシ化合物の代わりに、式(5−9)で表されるジヒドロキシ化合物を使用する以外は、製造例16と同様な方法に従って行った。無色透明液体の式(6−9)で表されるクロルプロピオン酸エステル化合物を得た。
FD−MS(m/z): 698(M+)

製造例19 [式(5−10)で表されるジヒドロキシ化合物の製造]
製造例15において、4,4’−ビフェノールを使用する代わりに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを使用する以外は、製造例15と同様な方法に従って行った。微黄色透明液体の式(5−10)で表されるジヒドロキシ化合物を得た。
FD−MS(m/z): 550(M+)

製造例20 [式(6−10)で表されるクロルプロピオン酸エステル化合物の製造]
製造例16において、式(5−8)で表されるジヒドロキシ化合物の代わりに、式(5−10)で表されるジヒドロキシ化合物を使用する以外は、製造例16と同様な方法に従って行った。無色透明液体の式(6−10)で表されるクロルプロピオン酸エステル化合物を得た。
FD−MS(m/z): 730(M+)

製造例21 [式(5−11)で表されるジヒドロキシ化合物の製造]
製造例15において、4,4’−ビフェノールを使用する代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタンを使用する以外は、製造例15と同様な方法に従って行った。無色透明液体の式(5−11)で表されるジヒドロキシ化合物を得た。
FD−MS(m/z): 590(M+)

製造例22 [式(6−11)で表されるクロルプロピオン酸エステル化合物の製造]
製造例16において、式(5−8)で表されるジヒドロキシ化合物の代わりに、式(5−11)で表されるジヒドロキシ化合物を使用する以外は、製造例16と同様な方法に従って行った。無色透明液体として式(6−11)で表されるクロルプロピオン酸エステル化合物を得た。
FD−MS(m/z): 770(M+)

製造例23 [式(5−12)で表されるジヒドロキシ化合物の製造]
製造例15において、4,4’−ビフェノールを使用する代わりに、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを使用する以外は、製造例15と同様な方法に従って行った。無色透明液体の式(5−12)で表されるジヒドロキシ化合物を得た。
FD−MS(m/z): 650(M+)

製造例24 [式(6−12)で表されるクロルプロピオン酸エステル化合物の製造]
製造例16において、式(5−8)で表されるジヒドロキシ化合物の代わりに、式(5−12)で表されるジヒドロキシ化合物を使用する以外は、製造例16と同様な方法に従って行った。無色透明液体として式(6−12)で表されるクロルプロピオン酸エステル化合物を得た。
FD−MS(m/z): 830(M+)


実施例1[式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物の製造]
製造例2で製造した式(6−1)で表される化合物80.70g(純度換算して、0.10モル)をアセトン100gに溶解させて得られた溶液に対して、5℃でトリエチルアミン36.40g(0.36モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、5℃で、さらに2時間攪拌して反応させた後、HPLCで原料が残存していないことを確認した上で室温(25℃)に戻した。反応混合物に対して、トルエン200gおよび純水200gを加えて、生成物を抽出した。有機層のトルエン溶液に室温で5%塩酸を加えた後、塩素イオンが検出されなくなるまで水洗、分液を繰り返して、その後分液して有機層を取り出した。重合禁止剤の4−メトキシフェノール62mgを添加した後、トルエンを減圧下、35℃で留去、濃縮して無色透明液体状の粗生成物を得た。該粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒トルエン)により精製して無色透明液体の式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物55.7gを得た。
収率=80%、純度(HPLC分析)≧95%
H−NMR(500MHz) δ(CDCl); 4.20〜4.30(m,8H)、5.50〜5.60(m,2H)、5.85(d,2H)、6.10〜6.20(m,2H)、6.45(d,2H)、6.50〜6.60(m,3H)、6.90〜7.60(m,19H)
FD−MS(m/z); 670(M+)

【実施例2】
実施例1において、式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する代わりに、式(6−2)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する以外は実施例1に記載の方法と同様にして行ない、式(1−2)のアクリル酸エステル化合物を製造した。

H−NMR(400MHz) δ(CDCl); 4.40(dd,4H)、5.70〜5.80(m,2H)、5.85(d,2H)、6.10〜6.30(dd,2H)、6.45(d,2H)、6.50〜6.60(m,3H)、6.80〜6.90(m,2H)、7.10〜7.50(m,10H)、7.60〜7.80(m,6H)
IR ; 1726cm−1(エステル基の−CO−伸縮)
EI−MS(m/z); 618(M+)
【実施例3】
実施例1において、式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する代わりに、式(6−3)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する以外は実施例1に記載の方法と同様にして行ない、式(1−3)のアクリル酸エステル化合物を製造した。
H−NMR(400MHz) δ(CDCl); 4.35(dd,4H)、5.50〜5.70(m,2H)、5.85(d,2H)、6.10〜6.20(dd,2H)、6.45(d,2H)、6.50〜6.60(m,3H)、6.80〜6.90(m,2H)、7.15〜7.25(m,1H)、7.30〜7.50(m,6H)、7.70〜7.90(m,2H)、8.20〜8.30(m,2H)
IR ; 1630cm−1(アクリル基のC=C伸縮)、1725cm−1(エステル基の−CO−伸縮)
EI−MS(m/z); 618(M+)

【実施例4】
実施例1において、式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する代わりに、式(6−4)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する以外は実施例1に記載の方法と同様にして行ない、式(1−4)のアクリル酸エステル化合物を製造した。
H−NMR(500MHz) δ(CDCl); 4.05〜4.10(m,4H)、4.20〜4.30(m,4H)、5.40〜5.50(m,2H)、6.05〜6.15(dd,2H)、6.35(d,2H)、6.40〜6.45(m,3H)、6.95〜7.50(m,19H)
IR; 1630cm−1(アクリル基C=C伸縮)、1725cm−1(エステル−CO−基伸縮)
FD−MS(m/z); 670(M+)

【実施例5】
実施例1において、式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する代わりに、式(6−5)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する以外は実施例1に記載の方法と同様にして行ない、式(1−5)のアクリル酸エステル化合物を製造した。
H−NMR(500MHz) δ(CDCl); 4.20〜4.30(m,8H)、5.50〜5.60(m,2H)、5.86(d,2H)、6.10〜6.20(dd,2H)、6.45(dd,2H)、6.50〜6.60(m,3H)、6.80〜7.30(m,19H)
IR; 1630cm−1(アクリル基のC=C伸縮)、1725cm−1(エステル基の−CO−伸縮)
FD−MS(m/z); 702(M+)

【実施例6】
実施例1において、式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する代わりに、式(6−6)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する以外は実施例1に記載の方法と同様にして行ない、式(1−6)のアクリル酸エステル化合物を製造した。
H−NMR(500MHz) δ(CDCl); 2.30(s,12H)、4.10〜4.20(m,4H)、4.35〜4.45(m,4H)、5.555.60(m,2H)、5.90(d,2H)、6.20(dd,2H)、6.50(d,2H)、7.02(d、4H)、7.15(s,4H)、7.257.30(m,2H)、7.357.45(m,4H)、7.50〜7.55(m,8H)
FD−MS(m/z); 802(M+)

【実施例7】
実施例1において、式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する代わりに、式(6−7)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する以外は実施例1に記載の方法と同様にして行ない、式(1−7)のアクリル酸エステル化合物を製造した。
H−NMR(500MHz) δ(CDCl); 2.16(s,12H)、3.90〜3.95(m,4H)、4.30〜4.35(m,4H)、5.455.50(m,2H)、5.87(d,2H)、6.15(dd,2H)、6.43(d,2H)、7.00〜7.15(d、8H)、7.20〜7.35(m,10H)、7.50(d,4H)
FD−MS(m/z); 802(M+)

【実施例8】
実施例1において、式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する代わりに、式(6−8)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する以外は、実施例1と同様な方法に従って行った。無色透明液体の式(1−8)で表されるアクリル酸エステル化合物を得た。
H−NMR(400MHz) δ(CDCl); 4.30〜4.40(m,8H)、5.55〜5.65(m,2H)、5.88(d,2H)、6.10(dd,2H),6.45(d,2H)、6.90〜7.05(m,10H),7.25〜7.35(m,14H)、7.45〜7.50(m,4H)
FD−MS(m/z); 594(M+)

【実施例9】
実施例1において、式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する代わりに、式(6−9)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する以外は、実施例1と同様な方法に従って行った。無色透明液体の式(1−9)で表されるアクリル酸エステル化合物を得た。
H−NMR(500MHz) δ(CDCl); 4.20〜4.30(m,8H)、5.50〜5.55(m,2H)、5.85(d,2H)、6.14(dd,2H),6.41(d,2H)、6.80〜6.96(m,10H),7.20〜7.28(m,8H)
FD−MS(m/z); 626(M+)


【実施例10】
実施例1において、式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する代わりに、式(6−10)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する以外は、実施例1と同様な方法に従って行った。無色透明液体の式(1−10)で表されるアクリル酸エステル化合物を得た。
H−NMR(400MHz) δ(CDCl); 4.25(dd,8H)、5.50〜5.55(m,2H)、5.85(d,2H)、6.15(dd,2H),6.45(d,2H)、6.85〜7.00(m,10H),7.25〜7.30(m,4H)、7.75〜7.90(m,4H)
FD−MS(m/z); 658(M+)

【実施例11】
実施例1において、式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する代わりに、式(6−11)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する以外は、実施例1と同様な方法に従って行った。無色透明液体として式(1−11)で表されるアクリル酸エステル化合物を得た。
H−NMR(400MHz) δ(CDCl); 2.15(s,3H)、4.25〜4.35(m,8H)、5.55〜5.60(m,2H)、5.85(d,2H)、6.17(dd,2H)、6.45(d,2H)、6.80〜6.90(m,4H)、6.95〜7.05(m,10H)、7.08〜7.12(m,4H)、7.18〜7.23(m,7H)
FD−MS(m/z); 698(M+)

【実施例12】
実施例1において、式(6−1)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する代わりに、式(6−12)で表されるクロロプロピオン酸エステル化合物を使用する以外は、実施例1と同様な方法に従って行った。無色透明液体として式(1−12)で表されるアクリル酸エステル化合物を得た。
H−NMR(400MHz) δ(CDCl); 4.15〜4.25(m,8H)、5.45〜5.55(m,2H)、5.80(d,2H)、6.10(dd,2H)、6.40(d,2H)、6.70〜6.80(m,4H)、6.85〜6.95(m,6H)、7.00〜7.10(m,4H)、7.20〜7.40(m,10H)、7.70(d,2H)
FD−MS(m/z); 759(M+)

<本発明の歯科材料および歯科用組成物の製造>
以下に、本発明を実施例および比較例を示してさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例で使用する材料の一覧および略号を以下に記す。
・モノマー
MNA−80: 式(1−1)で表される化合物
MNA−81: 式(1−2)で表される化合物
MNA−82: 式(1−5)で表される化合物
MNA−83: 式(1−4)で表される化合物
MNA−85: 式(1−3)で表される化合物
MNA−92: 式(1−6)で表される化合物
MNA−94: 式(1−7)で表される化合物
MNA−104: 式(1−8)で表される化合物
MNA−105: 式(1−11)で表される化合物
MNA−106: 式(1−9)で表される化合物
MNA−107: 式(1−10)で表される化合物
Bis−GMA: 2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(屈折率:1.54、高粘度液体)
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート(屈折率:1.46)
UDMA: 1,6−ビス(メタクリロキシエチルオキシカルボニルアミノ)−2,2,4−(または−2,4,4−)トリメチルヘキサン(屈折率:1.48)
Bis−MPEPP: 2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン(屈折率1.54)
・ガラス粉末
Aガラス: 2酸化珪素40重量%、酸化バリウム40重量%、酸化硼素10重量%、酸化アルミニウム10重量%を含有するガラス(屈折率1.60、平均粒径5μm)を常法により、1重量%の〔3−(メタクリロイルオキシ)プロピル〕トリメトキシシランで処理したもの。
Bガラス: 2酸化珪素40重量%、酸化バリウム40重量%、酸化硼素10重量%、酸化アルミニウム10重量%を含有するガラス(屈折率1.60、平均粒径1μm)を常法により、3重量%の〔3−(メタクリロイルオキシ)プロピル〕トリメトキシシランで処理したもの。
Cガラス: 2酸化珪素50重量%、酸化バリウム30重量%、酸化硼素10重量%、酸化アルミニウム10重量%を含有するガラス(屈折率1.55、平均粒径1μm)を常法により、3重量%の〔3−(メタクリロイルオキシ)プロピル〕トリメトキシシランで処理したもの。
・微粒子シリカ
R−812: 平均粒径0.007μmのコロイダルシリカをジメチルジクロルシラン処理して疎水化したもの(粒径0.01μm以上の粒子の割合が約10%:日本アエロジル(株)製)。
サンプルの調製および諸物性の測定法
・屈折率の測定法
アッベ屈折計((株)アタゴ製:型式1T)を用い、定法に従って20℃で測定した。
・組成物の硬化法
試作した歯科用組成物(コンポジットレジン)は所定の形状のモールドに填入した上で、可視光線照射器(クラレ社製 LIGHTEL)を用いて60秒間可視光線を照射して硬化させた。
・曲げ強さおよびX線造影性
ISO−4049(2000)の7.11(曲げ強さ)および7.14(X線造影性)に準じて試験を行った。
曲げ強さは、島津製作所(株)製オートグラフAGS−2000Gを用いてクロスヘッドスピード1mm/min.で測定した。また、X線造影性は厚さ2.0mmの円形状の硬化物をX線制御装置(PCX−100、朝日レントゲン工業(株)製)にてX線撮影した後、デンシトメーター(PDA15、コニカ(株)製)にて同じ高さのAl板の撮像の濃さを基準(100%)としてAl当量(%)として算定した。
・光線透過率(透明性)
横10mm×縦25mmの長方形の穴があいた厚さ1mmのテフロン製モールドに歯科用組成物(コンポジットレジン)を充填し、両面をポリエステルフィルムおよびガラス板で挟み可視光線照射器(クラレ社製 LIGHTEL)を用いて一カ所につき60秒間可視光線を照射して硬化させた。可視光の照射方法に関しては、ISO4049(2000)の7.12.3.3の記述などを参考にして、サンプルのすべてに均等、かつ充分に光が照射できるようにした。このサンプルについて紫外可視分光光度計(島津製作所(株)製UV−160A)を用いて480nmでの光線透過率を測定した。
・組成物の重合収縮の評価
図1に示すように、内径6mm、高さ5mmのアルミナセラミックス製チューブに歯科用組成物(コンポジットレジン)を充填させた。この際、重合後の歯科用組成物(コンポジットレジン)が収縮によりチューブから外れることを防ぐために、チューブの一方の端からはみ出してチューブを覆うように充分に充填させた。チューブに充填した歯科用組成物(コンポジットレジン)に可視光線照射器(クラレ社製 LIGHTEL)を用いて、歯科用組成物(コンポジットレジン)を充填したチューブの上面から180秒間光照射し、チューブ内の歯科用組成物(コンポジットレジン)を硬化させた後、さらに工業用可視光線照射器((株)モリタ製作所製、α−ライトII)にいれ、チューブの周りから300秒間可視光線を照射してチューブ内外の歯科用組成物(コンポジットレジン)を完全に硬化させた。
硬化後、アルミナチューブ最上部から2mmのところで切断した。切断面を鏡面研磨し、さらに超音波洗浄機で洗浄後、硬化体とチューブ間に生じる間隙を8カ所測定し、対峙する2つの測定点のギャップ幅の合計を重合収縮によるギャップ幅とした。
【実施例13】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−80,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例14】
(複合充填材の調製)
MNA−80,75重量部およびTEGDMA,25重量部とを混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にベンゾイルパーオキサイド,0.5重量部を溶解した。これとBガラス,400重量部とを良く混合し均一なペーストとした。このペーストを圧縮成型器を用いて圧力をかけつつ120℃で15分加熱してペーストを硬化した。このペーストをボールミルを用いて粉砕し篩い分けすることによって平均粒径約20μmの複合充填材Aを調製した。
(コンポジットレジンの調製)
MNA−80,75重量部およびTEGDMA,25重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,350重量部、複合充填材A,50重量部およびR−812,30重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例15】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−81,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例16】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−82,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例17】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−83,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例18】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−84,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例19】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−85,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例20】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−92,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例21】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−94,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例22】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−104,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例23】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−105,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例24】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−106,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
【実施例25】
(コンポジットレジンの調製)
MNA−107,70重量部およびBis−MPEPP,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.58)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物硬化体の重合収縮は表1にギャップ幅として示すように極めて小さかった。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.60であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
比較例1
(コンポジットレジンの調製)
Bis−GMA,70重量部およびTEGDMA,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.52)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,25重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この組成物の重合収縮をギャップ幅として表1に示す。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.54であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
比較例2
(コンポジットレジンの調製)
Bis−GMA,70重量部およびTEGDMA,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.52)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにCガラス,350重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この組成物の重合収縮をギャップ幅として表1に示す。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.55であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
比較例3
(コンポジットレジンの調製)
Bis−GMA,35重量部、Bis−MPEPP,35重量部およびTEGDMA,30重量部を混合したモノマー混合物(屈折率1.52)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部、およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この組成物の重合収縮をギャップ幅として表1に示す。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.54であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
比較例4
(コンポジットレジンの調製)
Bis−GMA,35重量部、Bis−MPEPP,35重量部、TEGDMA,15重量部とUDMA,15重量部とを混合したモノマー混合物(屈折率1.52)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.54であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
比較例5
(コンポジットレジンの調製)
Bis−MPEPP,100重量部(屈折率1.54)にカンファーキノン,0.5重量部とN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル,0.5重量部とを溶解した。このモノマーにAガラス,400重量部およびR−812,20重量部を混合して均一なペーストとして歯科用組成物を得た。この歯科用組成物の硬化体の屈折率は1.56であった。
この歯科用組成物の硬化体の曲げ強さ、光線透過率ならびにX線造影性を表1に示す。
比較例6
(コンポジットレジンの調製)
Bis−GMA(屈折率1.54)にAガラスを混合しようとしたが、Bis−GMAの粘度が高すぎて混合できなかった。

表1からわかるように、曲げ強さで表されるコンポジットレジンの機械的強度は、各実施例とも比較例と大きな差異はなく同等の充分な強度を有している。これに対して、透明性を表す光線透過率およびX線造影性については、各実施例のコンポジットレジンは、いずれも優れた結果を示しており、各実施例のコンポジットレジンは、バランス良く両特性を両立させている。ところが比較例2において、光線透過率は良好な値を示すが、X線造影性に関しては実施例および他の比較例に比べて劣っていた。他の比較例のコンポジットレジンは、X線造影性が実施例に比べていずれも遜色がないものの、その光線透過率は実施例のコンポジットレジンの場合よりはるかに低い値を示した。
◇本発明の重合性組成物の調製と硬化による光学部品の製造
以下の実施例または比較例において製造した硬化物または光学部品(レンズ)の物性評価を下記の方法により行った。
・外観: 目視および顕微鏡観察により色味、透明性、光学的な歪み、脈理の有無を確認した。
・屈折率、アッベ数: プルフリッヒ屈折計を用いて20℃で測定した。
・比重: DENSIMETER D−1(東洋精機製作所製)を用いて測定した。
・耐熱性: 熱機械分析法(TMA法)を用いた針浸入法により硬化物のTMA曲線の変位点からガラス転移温度(Tg)を測定した。
<本発明の重合性組成物の調製>
【実施例26】
実施例1で製造した式(1−1)で表される化合物100.0gに対して、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.20g(重合性化合物の総重量に対して0.20重量%)を加えて混合、攪拌して溶解させた。次いで室温で減圧下にゆっくりと攪拌しながら発泡が認められなくなるまで十分脱気させた後、テフロン製フィルターを使用して加圧濾過して無色透明液体状の重合性組成物100.0gを得た。
上記製造例または実施例において使用した、原料化合物、重合性化合物および光重合開始剤は、以下に示すものを入手して用いた。
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン;Darocure−1173(チバスペシャルティケミカルズ製)
実施例27(本発明の重合性組成物の光重合による硬化物の作製)
実施例26で調製した重合性組成物を、鏡面仕上げしたガラス板2枚の間にシリコンゴムをスペーサーとして用いて作成した鋳型の中に注入した。メタルハライドランプ(120W/cm)を使用して該ガラス製鋳型の上下両面から紫外線を180秒間照射して重合を行った。重合終了後、徐々に冷却して硬化物をモールドから取り出した。該硬化物を120℃で1時間熱処理(アニール)した後、得られた硬化物を観察したところ、無色透明であり、光学的な歪み、脈理は認められなかった。また得られた硬化物の耐衝撃性、耐候性は良好であり、実用上問題なかった。
硬化物の物性は、屈折率(nd)1.617、アッベ数(νd)25.7、比重1.22、ガラス転移温度(Tg)89℃であった。またモノマーの比重と硬化物の比重から求めた重合収縮率は6.0%であった。
【実施例28】
実施例26において、式(1−1)で表される化合物を用いる代わりに、実施例6で製造した式(1−6)で表される化合物を使用する以外は、実施例26に記載の方法と同様にして行い、無色透明液体状の重合性組成物100.0gを得た。
【実施例29】
実施例27において、実施例26で調製した重合性組成物を用いる代わりに、実施例28で調製した重合性組成物を使用する以外は、実施例27に記載の方法と同様にして行い、硬化物を得た。得られた硬化物を観察したところ、無色透明であり、光学的な歪み、脈理は認められなかった。また得られた硬化物の耐衝撃性、耐候性は良好であり、実用上問題なかった。
硬化物の物性は、屈折率(nd)1.616、アッベ数(νd)24.9、比重1.19、ガラス転移温度(Tg)79℃であった。またモノマーの比重と硬化物の比重から求めた重合収縮率は3.0%以下であった。
【実施例30】
実施例26において、式(1−1)で表される化合物を用いる代わりに、実施例8で製造した式(1−8)で表される化合物を使用する以外は、実施例26に記載の方法と同様にして行い、無色透明液体状の重合性組成物100.0gを得た。
【実施例31】
実施例27において、実施例26で調製した重合性組成物を用いる代わりに、実施例30で調製した重合性組成物を使用する以外は、実施例27に記載の方法と同様にして行い、硬化物を得た。得られた硬化物を観察したところ、無色透明であり、光学的な歪み、脈理は認められなかった。また得られた硬化物の耐衝撃性、耐候性は良好であり、実用上問題なかった。
硬化物の物性は、屈折率(nd)1.598、アッベ数(νd)27.4、比重1.23、ガラス転移温度(Tg)93.5℃であった。またモノマーの比重と硬化物の比重から求めた重合収縮率は6.8%以下であった。
【実施例32】
実施例26において、式(1−1)で表される化合物を用いる代わりに、実施例10で製造した式(1−10)で表される化合物を使用する以外は、実施例26に記載の方法と同様にして行い、無色透明液体状の重合性組成物100.0gを得た。
【実施例33】
実施例27において、実施例26で調製した重合性組成物を用いる代わりに、実施例32で調製した重合性組成物を使用する以外は、実施例27に記載の方法と同様にして行い、硬化物を得た。得られた硬化物を観察したところ、無色透明であり、光学的な歪み、脈理は認められなかった。また得られた硬化物の耐衝撃性、耐候性は良好であり、実用上問題なかった。
硬化物の物性は、屈折率(nd)1.592、アッベ数(νd)29.4、比重1.30、ガラス転移温度(Tg)116℃であった。またモノマーの比重と硬化物の比重から求めた重合収縮率は5.8%であった。
【実施例34】
実施例26において、式(1−1)で表される化合物を用いる代わりに、実施例11で製造した式(1−11)で表される化合物を使用する以外は、実施例26に記載の方法と同様にして行い、無色透明液体状の重合性組成物100.0gを得た。
【実施例35】
実施例27において、実施例26で調製した重合性組成物を用いる代わりに、実施例34で調製した重合性組成物を使用する以外は、実施例27に記載の方法と同様にして行い、硬化物を得た。得られた硬化物を観察したところ、無色透明であり、光学的な歪み、脈理は認められなかった。また得られた硬化物の耐衝撃性、耐候性は良好であり、実用上問題なかった。
硬化物の物性は、屈折率(nd)1.596、アッベ数(νd)32.7、比重1.24、ガラス転移温度(Tg)101℃であった。またモノマーの比重と硬化物の比重から求めた重合収縮率は4.6%であった。
【実施例36】
実施例26において、式(1−1)で表される化合物を用いる代わりに、実施例12で製造した式(1−12)で表される化合物を使用する以外は、実施例26に記載の方法と同様にして行い、無色透明液体状の重合性組成物100.0gを得た。
【実施例37】
実施例27において、実施例26で調製した重合性組成物を用いる代わりに、実施例36で調製した重合性組成物を使用する以外は、実施例27に記載の方法と同様にして行い、硬化物を得た。得られた硬化物を観察したところ、無色透明であり、光学的な歪み、脈理は認められなかった。また得られた硬化物の耐衝撃性、耐候性は良好であり、実用上問題なかった。
硬化物の物性は、屈折率(nd)1.622、アッベ数(νd)26.3、比重1.22、ガラス転移温度(Tg)94℃であった。またモノマーの比重と硬化物の比重から求めた重合収縮率は3.0%以下であった。
実施例38(レンズの作製)
実施例30で調製した重合性組成物を減圧下で十分に脱泡した後、ガラスモールドとテープよりなるモールド型(マイナスレンズ形状に調整)に注入した。メタルハライドランプ(120W/cm)を用いて紫外線をモールド型の上下両面から60秒間、照射した後、70℃で3時間加熱してアニール処理を行った。重合終了後、室温まで放冷して、直径30mm、中心厚1.3mmの無色透明マイナスレンズを得た。得られたレンズは無色透明であり、光学的な歪み、脈理などは観察されず、光学的に均質であった。
また得られた本発明のレンズの耐熱性(加熱変形温度)、耐衝撃性、耐候性は良好であり、実用上問題なかった。
以上、実施例の結果から判るように、本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する重合性組成物は、光重合により短時間で重合硬化、成形が可能である。得られた本発明の硬化物および光学部品は透明性、光学特性に優れ(高屈折率)、かつ、熱的特性、機械的特性、耐候性を兼ね備えている。
【産業上の利用可能性】
本発明の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する重合性組成物は、光重合により短時間で重合硬化、成形が可能であり、得られる硬化物は透明性、光学特性に優れ(高屈折率)、かつ、熱的特性、機械的特性、耐候性を兼ね備えており、歯科用材料または各種光学部品用材料として有用である。特に、本発明の一般式(1)で表される化合物を含有する歯科用材料および歯科用組成物は、硬化性に優れ、歯科用材料に求められる諸物性(例えば、曲げ強度など)を満たしながら、透明性、X線造影性ならびに低重合収縮性を兼ね備えており、当該材料及び組成物として極めて有用である。
また、本発明により得られる硬化物および光学部品は透明性、光学特性に優れ(高屈折率)、かつ、熱的特性、機械的特性、耐候性を兼ね備えている。これら特徴から、例えば、視力矯正用眼鏡レンズ、液晶プロジェクターやプロジェクションテレビ用のフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、コンタクトレンズなどを代表とする各種プラスチックレンズ、発光ダイオード(LED)用封止材、光導波路、光学レンズや光導波路の接合に用いる光学用接着剤、光学レンズなどに用いる反射防止膜、液晶表示装置関連部材(基板、導光板、フィルム、シートなど)に用いる透明性コーティングまたは透明性基板などに使用される。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物。

(式中、R11は二価の芳香族基を表し、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13はアリール基を表し、R14は水素原子またはメチル基を表し、X11は酸素原子または硫黄原子を表す)
【請求項2】
一般式(1)で表される化合物におけるR11基が、式(2)〜(4)のいずれかで表される基である請求の範囲1記載の(メタ)アクリル酸エステル化合物。

[式(2)中、R21、R22、R23およびR24はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはニトロ基を表す]

[式(3)中、R31およびR32はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基またはニトロ基を表し、
31は単結合、−C(R33−基、−O−基、−S−基、−SO−基、式(3−a)で示される基または式(3−b)で示される基を表し、

前記基中、R33はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1〜4の整数を表す]

[式(4)中、R41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す]
【請求項3】
請求の範囲1又は2記載の一般式(1)で表される化合物を含有する重合性組成物。
【請求項4】
請求の範囲3記載の重合性組成物を重合して得られる硬化物。
【請求項5】
一般式(1)で表される化合物を含有する歯科用材料。

(式中、R11は二価の芳香族基を表し、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13はアリール基を表し、R14は水素原子またはメチル基を表し、X11は酸素原子または硫黄原子を表す)
【請求項6】
請求の範囲5記載の一般式(1)で表される化合物におけるR11基が、式(2)〜(4)のいずれかで表される基である請求の範囲5記載の歯科用材料。

[式(2)中、R21、R22、R23およびR24はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはニトロ基を表す]

[式(3)中、R31およびR32はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基またはニトロ基を表し、
31は単結合、−C(R33−基、−O−基、−S−基、−SO−基、式(3−a)で示される基または式(3−b)で示される基を表し、

前記基中、R33はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1〜4の整数を表す]

[式(4)中、R41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す]
【請求項7】
(A)重合性化合物および(B)重合開始剤を含有する歯科用組成物であって、該重合性化合物が請求の範囲5又は6記載の一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする歯科用組成物。
【請求項8】
請求の範囲7記載の歯科用組成物において、さらに(C)充填材を含有することを特徴とする請求の範囲7記載の歯科用組成物。
【請求項9】
請求の範囲7記載の歯科用組成物において、さらに一般式(1)で表される化合物以外の他の重合性化合物を含有することを特徴とする請求の範囲7又は8記載の歯科用組成物。
【請求項10】
重合後の硬化物の屈折率が1.55以上である、請求の範囲7乃至9のいずれかに記載の歯科用組成物。
【請求項11】
請求の範囲4記載の硬化物からなる光学部品。
【請求項12】
一般式(5)で表されるヒドロキシ化合物。

(式中、R11は二価の芳香族基を表し、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13はアリール基を表し、X11は酸素原子または硫黄原子を表す)
【請求項13】
一般式(5)で表される化合物におけるR11基が、請求の範囲2記載の式(2)〜(4)のいずれかで表される基である請求の範囲12記載のヒドロキシ化合物。
【請求項14】
一般式(6)で表されるエステル化合物。

(式中、R11は二価の芳香族基を表し、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13はアリール基を表し、R14は水素原子またはメチル基を表し、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、X12はハロゲン原子を表す)
【請求項15】
一般式(6)で表される化合物におけるR11基が、請求の範囲2記載の式(2)〜(4)のいずれかで表される基である請求の範囲14記載のエステル化合物。

【国際公開番号】WO2004/103949
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506425(P2005−506425)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007327
【国際出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】