説明

(メタ)アクリレート化合物およびその製造方法

【課題】ポリシロキサン部位を有さない従来公知の多官能アクリレートとの相溶性に優れた新規な(メタ)アクリレート化合物およびその製造方法の提供。
【解決手段】1分子中にポリシロキサン部位と12個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な(メタ)アクリレート化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面硬化性、耐擦傷性、表面平滑性等をプラスチック等へ付与するために使用するハードコート用樹脂組成物として活性エネルギー線硬化性組成物が知られており、例えば、特許文献1〜3には、その組成として、複数の(メタ)アクリロイルオキシ基とともにポリシロキサン部位を有する多官能アクリレートを用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−136078号公報
【特許文献2】特開平6−192356号公報
【特許文献3】特開2008−248069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本願発明者は、特許文献1〜3に記載されている多官能アクリレートについて検討したところ、コスト削減等の観点からポリシロキサン部位を有さない従来公知の多官能アクリレートとの併用系を検討したところ、(メタ)アクリロイルオキシ基の官能基数によっては、ポリシロキサン部位を有さない従来公知の多官能アクリレートとの相溶性が悪い場合があり、その結果、表面硬化性、耐擦傷性、表面平滑性等の物性改善効果が十分に図れない場合があることを見出した。
【0005】
そこで、本発明は、ポリシロキサン部位を有さない従来公知の多官能アクリレートとの相溶性に優れた新規な(メタ)アクリレート化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、1分子中にポリシロキサン部位と12個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート化合物が、ポリシロキサン部位を有さない従来公知の多官能アクリレートとの相溶性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記(1)〜(5)を提供する。
【0007】
(1)1分子中にポリシロキサン部位と12個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート化合物。
【0008】
(2)イソシアヌレート環を有する上記(1)に記載の(メタ)アクリレート化合物。
【0009】
(3)下記式(I)で表される上記(1)または(2)に記載の(メタ)アクリレート化合物。
【化1】

【0010】
式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜15の2価の炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜10のポリオール残基を表す。R6は水素原子またはメチル基を表し、R7は炭素数1〜15の2価の炭化水素基を表す。R9はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、R10はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。複数のR1〜R12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。kは0または1を表す。m1は1〜5の整数を表し、全てのm1の合計は12以上である。m2は0または1を表し、全てのm2の合計は1以上である。m3およびm4はそれぞれ独立に0または1を表す。nは5〜100の整数を表す。X1は硫黄原子、窒素原子またはリン原子を表し、X2は酸素原子または硫黄原子を表す。
【0011】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の(メタ)アクリレート化合物を製造する(メタ)アクリレート化合物の製造方法であって、少なくとも、
1分子中に13個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と、メルカプト基と水酸基とを有する化合物、アミノ基と水酸基とを有する化合物およびヒドロキシホスホノイル基(−PO(OH)H)を有する化合物からなる群から選択されるいずれかの化合物と、を反応させる第1反応工程と、
上記第1反応工程により得られた化合物と、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物とを反応させる第2反応工程と、
上記第2反応工程により得られた化合物と、水酸基またはメルカプト基を有するポリシロキサンとを反応させて、1分子中にポリシロキサン部位と12個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート化合物を得る第3反応工程とを有する(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【0012】
(5)上記第2反応工程および上記第3反応工程に代えて、上記第1反応工程により得られた化合物と、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物および水酸基またはメルカプト基を有するポリシロキサンを予め反応させて得られるイソシアネート基を1個有するポリシロキサン骨格イソシアネートと、を反応させて、1分子中にポリシロキサン部位と12個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート化合物を得る第4反応工程を有する上記(4)に記載の(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
以下に説明するように、本発明によれば、ポリシロキサン部位を有さない従来公知の多官能アクリレートとの相溶性に優れた新規な(メタ)アクリレート化合物およびその製造方法を提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、簡便な合成方法により(メタ)アクリロイルオキシ基の官能基数およびポリシロキサン部位の導入数を変更することができるため、硬化樹脂に対する機能の付与や性能の向上を図ることが容易となるため、非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の(メタ)アクリレート化合物は、1分子中にポリシロキサン部位と12個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート化合物である。
ここで、「ポリシロキサン部位」とは、シロキサン結合による繰り返し単位構造を意味し、直鎖構造および分岐構造のいずれであってもよい。
また、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を意味する。
【0015】
本発明においては、本発明の(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイルオキシ基の個数は、ポリシロキサン部位を有さない従来公知の多官能アクリレートとの相溶性がより良好となり、また、これを含有する硬化性組成物(硬化物)の表面硬化性、耐擦傷性、表面平滑性等の物性改善効果がより向上する理由から、14個以上であるのが好ましい。
【0016】
また、本発明においては、本発明の(メタ)アクリレート化合物は、これを含有する硬化物の硬度を保持する理由から、イソシアヌレート環を有しているのが好ましく、例えば、下記式(I)で表される化合物がより好ましい。
【化2】

【0017】
上記式(I)中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜15の2価の炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜10のポリオール残基を表す。R6は水素原子またはメチル基を表し、R7は炭素数1〜15の2価の炭化水素基を表す。R9はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、R10はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。複数のR1〜R12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。kは0または1を表す。m1は1〜5の整数を表し、全てのm1の合計は12以上である。m2は0または1を表し、全てのm2の合計は1以上である。m3およびm4はそれぞれ独立に0または1を表す。nは5〜100の整数を表す。X1は硫黄原子、窒素原子またはリン原子を表し、X2は酸素原子または硫黄原子を表す。
【0018】
ここで、上記式(I)中、R1の置換基を有していてもよい炭素数1〜15の2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜15の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜15の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜15の2価の芳香族炭化水素基およびこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0019】
上記脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキレン基であるのが好ましく、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル等が挙げられる。
【0020】
上記脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜6であるのが好ましく、具体的には、例えば、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、下記式(a)で表される1−メチル−3,3−ジメチルシクロヘキサン−1,5−ジイル基(式中、Xは上記式(I)中のイソシアヌレート環を構成する窒素原子を表し、Yは上記式(I)中のウレタン結合を構成するイミノ基を表す。)等が挙げられる。
【0021】
【化3】

【0022】
上記芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜12のアリール基であるのが好ましく、具体的には、例えば、フェニレン基、トルエン−3,5−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基等が挙げられる。
【0023】
一方、上記式(I)中、R1が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素数1〜4の1価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;アリル基;等が挙げられる。
【0024】
これらのうち、上記式(I)中のR1は、本発明の(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物の硬化時における着色が少なくなり、また、硬化物の硬度も高くなる理由から、上記脂肪族炭化水素基と上記脂環式炭化水素基とを組み合わせた基であるのが好ましく、具体的には、例えば、下記式(b)で表される基(式中、Xは上記式(I)中のイソシアヌレート環を構成する窒素原子を表し、Yは上記式(I)中のウレタン結合を構成するイミノ基を表す。)等が挙げられる。
【0025】
【化4】

【0026】
また、上記式(I)中、R2の炭素数1〜10のポリオール残基としては、具体的には、例えば、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタグリセロールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート等から水酸基およびアクリロイルオキシ基(R3に相当)を除いた残基が挙げられる。
これらのうち、多官能のアクリレート化合物が容易に合成できる理由から、ジペンタエリスリトールテトラアクリレートから水酸基およびアクリロイルオキシ基(5個のR3に相当)を除いた残基であるのが好ましい。
【0027】
また、上記式(I)中、R7の炭素数1〜15の2価の炭化水素基としては、R1と同様のものが挙げられる。
これらのうち、合成における経済的観点から、炭素数1〜15の2価の脂肪族炭化水素基であるのが好ましく、炭素数2〜10のアルキレン基であるのがより好ましい。
【0028】
また、上記式(I)中、R9のヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、例えば、酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイルなどの炭素数1〜6のアルキレン基;ジメチレンエーテル基(−CH2OCH2−)、ジエチレンエーテル基(−CH2CH2OCH2CH2−)、プロピレンエチレンエーテル基(−CH2CH2CH2OCH2CH2−)など炭素数2〜20のアルキレンエーテル基;等が挙げられる。
これらのうち、合成等の際に使用する溶媒に対する溶解性が高い理由から、アルキレンエーテル基であるのが好ましい。
【0029】
また、上記式(I)中、R10のヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基は、R11を有していない場合(m4が0の場合)は1価の炭化水素基となり、具体的には、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)、アリル基等が挙げられる。
一方、上記式(I)中、R11を有している場合(m4が1の場合)のR10は、R9と同義である。
【0030】
上記式(I)で表される(メタ)アクリレート化合物としては、具体的には、例えば、下記式(1)で表される化合物((メタ)アクリロイルオキシ基:14個)、下記式(2)で表される化合物((メタ)アクリロイルオキシ基:18個)、下記式(3)で表される化合物((メタ)アクリロイルオキシ基:14個)、下記式(4)で表される化合物((メタ)アクリロイルオキシ基:36個)等が挙げられる。
【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
【化8】

【0035】
本発明の(メタ)アクリレート化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の第1反応工程〜第3反応工程を有する方法、第1反応工程および第4反応工程を有する方法等が好ましい。
【0036】
〔第1反応工程〕
第1反応工程は、1分子中に13個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と、メルカプト基と水酸基とを有する化合物、アミノ基と水酸基とを有する化合物およびヒドロキシホスホノイル基(−PO(OH)H)を有する化合物からなる群から選択されるいずれかの化合物と、を反応させる工程である。
【0037】
<(メタ)アクリレート化合物>
上記第1反応工程に用いられる1分子中に13個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物と1分子中に水酸基および(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアクリレートとの反応により合成することができる。
【0038】
(ポリイソシアネート化合物)
上記ポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート体;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、本発明の(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化物の硬度を保持する理由から、イソシアヌレート体であるのが好ましく、着色を抑制する観点から脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体および脂環式ポリイソシアネートのイソシアヌレート体であるのがより好ましく、強度の観点から脂環式ポリイソシアネート、特に、IPDIのイソシアヌレート体であるのが更に好ましい。
【0039】
(1分子中に水酸基および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート)
上記(メタ)アクリレートは、1分子中に水酸基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有するアクリレートである。
ここで、上記アクリレートは、反応後の(メタ)アクリレート化合物(第1反応工程における出発物質)が13個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有しているため、上記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の数にもよるが、その具体例としては、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0040】
このような原料を用いて合成される1分子中に13個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、具体的には、例えば、下記式(5)および(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
<メルカプト基と水酸基とを有する化合物等>
上記第1反応工程に用いられるメルカプト基と水酸基とを有する化合物、アミノ基と水酸基とを有する化合物およびヒドロキシホスホノイル基(−PO(OH)H)を有する化合物からなる群から選択されるいずれかの化合物は、上述した1分子中に13個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイルオキシ基と反応して水酸基を導入する化合物である。
メルカプト基と水酸基とを有する化合物としては、具体的には、例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパノール、4−メルカプトブタノール、5−メルカプトペンタノール、6−メルカプトヘキサノール、7−メルカプトヘプタノール、8−メルカプトオクタノール、5−メルカプト−3−チアペンタノール等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アミノ基と水酸基とを有する化合物としては、具体的には、例えば、アミノエタノ−ル、1−アミノプロパノ−ル、2−アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ヒドロキシホスホノイル基(−PO(OH)H)を有する化合物としては、例えば、ホスフィン酸類が挙げられ、具体的には、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、2−ヒドロキシエチルホスフィン酸、3−ヒドロキシプロピルホスフィン酸、4−ヒドロキシメチルフェニルホスフィン酸等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、より温和な条件で定量的に反応が進行する理由から、メルカプト基と水酸基とを有する化合物であるのが好ましく、2−メルカプトエタノールであるのがより好ましい。
【0044】
第1反応工程で生成される反応生成物としては、具体的には、例えば、下記式(7)〜(10)で表される化合物等が挙げられる。
【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
〔第2反応工程〕
第2反応工程は、上記第1反応工程により得られた化合物と、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物とを反応させる工程である。
ここで、上記ポリイソシアネート化合物としては、上記第1反応工程で例示したものが挙げられ、なかでも、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートであるのが好ましい。
第2反応工程で生成される反応生成物としては、具体的には、例えば、下記式(11)〜(14)で表される化合物等が挙げられる。
【0050】
【化15】

【0051】
【化16】

【0052】
【化17】

【0053】
【化18】

【0054】
〔第3反応工程〕
第3反応工程は、上記第2反応工程により得られた化合物と、水酸基またはメルカプト基を有するポリシロキサンとを反応させて、本発明の(メタ)アクリレート化合物を得る工程である。
ここで、上記ポリシロキサンは、主鎖がシロキサン結合で構成され、片末端または両末端に水酸基またはメルカプト基を有する直鎖状または分岐状の重合体であり、例えば、下記式(15)で表される重合体が挙げられる。
【0055】
【化19】

【0056】
式中、R9はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、R13は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表す。複数のR9およびR13はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは5〜100の整数を表し、rは0または1を表す。X2は酸素原子または硫黄原子を表す。
【0057】
上記式(15)中、R9は、上記式(I)のR9と同義である。
また、上記式(15)中、R13としては、具体的には、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)、アリル基等が挙げられる。
【0058】
上記式(15)で表されるポリシロキサンとしては、具体的には、例えば、−C240C36OH、−C24O(C24O)nH、−C24(O(C=O)C510nOHなどの水酸基を含有する有機基や、−C24OC36SH、−CH2SH、−C36SH、−C1122SHなどのメルカプト基を含有する有機基で変性されたジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0059】
上記第3反応工程により、例えば、上記式(1)〜(4)で表される化合物を生成することができる。
なお、上記式(2)および(4)で表される化合物は、それぞれ、上記式(12)および(14)で表される各化合物の一方のイソシアネート基を水酸基を有するポリシロキサンと反応させ、他方のイソシアネート基をジペンタエリスリトールテトラアクリレートと反応させて得られる化合物である。
【0060】
〔第4反応工程〕
第4反応工程は、上記第2反応工程および上記第3反応工程に代えて、上記第1反応工程により得られた化合物と、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物および水酸基またはメルカプト基を有するポリシロキサンを予め反応させて得られるイソシアネート基を1個有するポリシロキサン骨格イソシアネートと、を反応させて、本発明の(メタ)アクリレート化合物を得る工程である。
ここで、上記ポリイソシアネート化合物としては、上記第2反応工程と同様、上記第1反応工程で例示したものが挙げられ、なかでも、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートであるのが好ましい。
また、上記ポリシロキサンは、上記第3反応工程と同様、主鎖がシロキサン結合で構成され、片末端または両末端に水酸基またはメルカプト基を有する重合体であり、例えば、上記式(15)で表される重合体が挙げられる。
また、上記ポリイソシアネート化合物と上記ポリシロキサンとの反応は、上記第1反応工程により得られた化合物との反応部位としてのイソシアネート基が1個残存するように、当量比(NCO/OH)を調整して行われる。
【0061】
上記第4反応工程により、例えば、上記式(1)〜(4)で表される化合物を生成することができる。
なお、上記式(2)および(4)で表される化合物は、上記第1反応工程により得られた化合物に対して、上記ポリイソシアネート化合物および上記ポリシロキサンとともにジペンタエリスリトールテトラアクリレートを予め反応させて得られた化合物(ポリシロキサン骨格イソシアネート)を反応させて得られる化合物である。
【0062】
本発明の(メタ)アクリレート化合物の他の製造方法としては、例えば、1分子中に13個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と、メルカプト基を有するポリシロキサンとを反応させて、1分子中にポリシロキサン部位と12個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート化合物を得る方法も挙げられる。
ここで、上記(メタ)アクリレート化合物としては、上記第1反応工程で例示したものが挙げられる。
また、上記ポリシロキサンは、上記第3反応工程と同様、主鎖がシロキサン結合で構成され、片末端または両末端にメルカプト基を有する重合体であり、例えば、上記式(15)のうちX2が硫黄原子で表される重合体が挙げられる。
上記反応により、上記式(I)のR4中のkが0となる化合物、例えば、下記式(16)で表される化合物((メタ)アクリロイルオキシ基:14個)を生成することができる。
【0063】
【化20】

【実施例】
【0064】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
【0065】
<実施例1:上記式(1)で表される化合物の合成>
(合成1:メルカプトエタノールの付加反応)
まず、ジペンタエリスリトールアクリレートとイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体とを反応させて得られる上記式(5)で表される15官能アクリレート30.2gと、トリエチルアミン0.20gと、を酢酸ブチル15mL中で混合した溶液を調製した。
次いで、調製した混合溶液に、メルカプトエタノール1.14gを室温で滴下し、室温で15時間撹拌した。
撹拌終了後、1H−NMR分析により、上記式(7)で表される化合物の生成を確認した。ケミカルシフトは以下の通りである。
1H−NMR(400MHz、重クロロホルム、20℃)δ(ppm):6.4(m),6.1(m),5.8(m),4.4−4.0(m),3.7(br),3.6(br),2.8−2.5(m),1.2(m)
【0066】
(合成2:ジイソシアネートの付加反応)
まず、合成1で生成した上記式(7)で表される化合物15.6gを酢酸ブチル20mLに溶解させた溶液を調製した。
次いで、調製した溶液にイソホロンジイソシアネート1.52gを添加し、50℃で6時間撹拌した。
撹拌終了後、IR分析により、イソシアネート基とウレタン結合の存在を確認し、上記式(11)で表される化合物の生成を確認した。
【0067】
(合成3:シロキサン部位の導入)
合成2でイソホロンジイソシアネートを反応させた後の溶液に、片末端水酸基変性シリコーン(X−22−170BX、信越化学工業社製)18.5gのメチルエチルケトン(5mL)溶液を添加し、70℃で5時間撹拌した。
撹拌終了後、IR分析により、イソシアネート基の消失を確認し、1H−NMR分析により、上記式(1)で表される化合物の生成を確認した。ケミカルシフトは以下の通りである。
1H−NMR(400MHz、重クロロホルム、20℃)δ(ppm):6.4(m),6.1(m),5.8(m),5.2−5.0(m),4.4−4.0(m),3.7(br),3.6(br),3.5−3.4(br),2.8−2.5(m),1.2(m),0.9(m),0.5(m),0.1(m)
【0068】
<実施例2:上記式(2)で表される化合物の合成>
(合成4:メルカプトエタノールの付加)
まず、ジペンタエリスリトールアクリレートとイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体とを反応させて得られる上記式(5)で表される15官能アクリレート66.5gと、トリエチルアミン0.38gと、を酢酸ブチル60mL中で混合した溶液を調製した。
次いで、調製した混合溶液に、メルカプトエタノール3.92gを室温で滴下し、室温で15時間撹拌した。
撹拌終了後、1H−NMR分析により、上記式(8)で表される化合物の生成を確認した。ケミカルシフトは以下の通りである。
1H−NMR(400MHz、重クロロホルム、20℃)δ(ppm):6.4(m),6.1(m),5.8(m),4.5−4.0(m),3.7(br),3.6(br),2.9−2.4(m),1.2(m)
【0069】
(合成5:ジイソシアネートの付加)
まず、合成4で生成した上記式(8)で表される化合物31.04gを酢酸ブチル15mLに溶解させた溶液を調製した。
次いで、調製した溶液にイソホロンジイソシアネート6.16gを添加し、50℃で6時間撹拌した。
撹拌終了後、IR分析により、イソシナネート基とウレタン結合の存在を確認し、上記式(12)で表される化合物の生成を確認した。
【0070】
(合成6:シロキサン部位および(メタ)アクリロイルオキシ基の導入)
合成5でイソホロンジイソシアネートを反応させた後の溶液に、片末端水酸基変性シリコーン(X−22−170BX、信越化学工業社製)35.92gのメチルエチルケトン(30mL)溶液とジペンタエリスリトールアクリレート7.26gとを添加し、70℃で5時間撹拌した。
撹拌終了後、IR分析により、イソシアナート基の消失を確認し、1H−NMR分析により、上記式(2)で表される化合物の生成を確認した。ケミカルシフトは以下の通りである。
1H−NMR(400MHz、重クロロホルム、20℃)δ(ppm):6.4(m),6.2(m),5.8(m),5.3−5.0(m),4.4−4.0(m),3.7(br),3.6(br),3.5−3.4(br),2.8−2.5(m),1.2(m),0.9(m),0.5(m),0.1(m).
なお、合成4で生成した上記式(8)で表される化合物に対して、合成5で用いたイソホロンジイソシアネートならびに合成6で用いた片末端水酸基変性シリコーンおよびジペンタエリスリトールアクリレートを予め反応させた付加体を反応させても同様の化合物の生成が確認できた。
【0071】
<実施例3:上記式(3)で表される化合物の合成>
実施例1の合成3において添加した変性シリコーンを両末端水酸基変性シリコーン(KF6001、信越化学工業社製)に変更し、その添加量を0.5当量とした以外は、実施例1と同様の方法により合成を行った。
合成後、IR分析により、イソシアネート基の消失を確認し、1H−NMR分析により、上記式(3)で表される化合物の生成を確認した。ケミカルシフトは以下の通りである。
1H−NMR(400MHz、重クロロホルム、20℃)δ(ppm):6.4(m),6.1(m),5.8(m),5.3−5.0(m),4.4−3.9(m),3.7(br),3.6(br),3.5−3.3(br),2.8−2.4(m),1.2(m),0.9(m),0.5(m),0.1(m)
【0072】
<比較例1:下記式(17)で表される化合物の合成>
イソホロンジイソシアナート4.20gのメチルエチルケトン(40mL)溶液に、ジペンタエリスリトールアクリレート10.47gと片末端水酸基変性シリコーン(X−22−170BX、信越化学工業社製)24.6gとを加えて、70℃で14時間撹拌した。
撹拌終了後、1H−NMR分析により、下記式(17)で表される化合物の生成を確認した。
1H−NMR(400MHz、重クロロホルム、20℃)δ(ppm):6.3(m),6.2(m),5.7(m),5.3−5.0(m),4.4−3.9(m),3.7(br),3.5−3.4(br),1.2(m),0.9(m),0.5(m),0.1(m)
【0073】
【化21】

【0074】
<比較例2:下記式(18)で表される化合物の合成>
イソホロンジイソシアナートのイソシアヌレート化合物1.21gのメチルエチルケトン(5mL)溶液に、ジペンタエリスリトールアクリレート3.82gと片末端水酸基変性シリコーン(X−22−170BX、信越化学工業社製)4.71gとを加えて、70℃で14時間撹拌した。
撹拌終了後、1H−NMR分析により、下記式(18)で表される化合物の生成を確認した。
1H−NMR(400MHz、重クロロホルム、20℃)δ(ppm):6.3(m),6.2(m),5.7(m),5.3−5.0(m),4.4−4.0(m),3.7(br),3.5−3.4(br),1.2(m),0.9(m),0.5(m),0.1(m)
【0075】
【化22】

【0076】
<比較例3:下記式(19)で表される化合物の合成>
イソホロンジイソシアナートのイソシアヌレート化合物1.86gのメチルエチルケトン(5mL)溶液に、ジペンタエリスリトールアクリレート2.02gと片末端水酸基変性シリコーン(X−22−170BX、信越化学工業社製)9.67gとを加えて、70℃で14時間撹拌した。
撹拌終了後、1H−NMR分析により、下記式(19)で表される化合物の生成を確認した。
1H−NMR(400MHz、重クロロホルム、20℃)δ(ppm):6.3(m),6.2(m),5.7(m),5.3−5.0(m),4.4−4.0(m),3.7(br),3.5−3.4(br),1.2(m),0.9(m),0.5(m),0.1(m).
【0077】
【化23】

【0078】
得られた上記式(1)および(3)ならびに上記式(17)〜(19)で表される各化合物について、ポリシロキサン部位を有しない上記式(5)で表される15官能アクリレートとの相溶性を以下の方法により評価した。
【0079】
(相溶性)
得られた各(メタ)アクリレート化合物と上記式(5)で表される15官能アクリレートとを下記第1表に示すグラム数で混合し、白濁の有無を目視により確認した。白濁がないものを相溶性に優れるものとして「○」と評価し、白濁があるものを相溶性に劣るものとして「×」と評価した。その結果を下記第1表に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
第1表に示す結果から、1分子中にポリシロキサン部位と12個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート化合物に該当する上記式(1)および(3)で表される化合物はいずれも相溶性に優れることが分かり、上記式(17)〜(19)で表される化合物は相溶性に劣ることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中にポリシロキサン部位と12個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート化合物。
【請求項2】
イソシアヌレート環を有する請求項1に記載の(メタ)アクリレート化合物。
【請求項3】
下記式(I)で表される請求項1または2に記載の(メタ)アクリレート化合物。
【化1】

(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜15の2価の炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜10のポリオール残基を表す。R6は水素原子またはメチル基を表し、R7は炭素数1〜15の2価の炭化水素基を表す。R9はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、R10はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。複数のR1〜R12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。kは0または1を表す。m1は1〜5の整数を表し、全てのm1の合計は12以上である。m2は0または1を表し、全てのm2の合計は1以上である。m3およびm4はそれぞれ独立に0または1を表す。nは5〜100の整数を表す。X1は硫黄原子、窒素原子またはリン原子を表し、X2は酸素原子または硫黄原子を表す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の(メタ)アクリレート化合物を製造する(メタ)アクリレート化合物の製造方法であって、少なくとも、
1分子中に13個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と、メルカプト基と水酸基とを有する化合物、アミノ基と水酸基とを有する化合物およびヒドロキシホスホノイル基(−PO(OH)H)を有する化合物からなる群から選択されるいずれかの化合物と、を反応させる第1反応工程と、
前記第1反応工程により得られた化合物と、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物とを反応させる第2反応工程と、
前記第2反応工程により得られた化合物と、水酸基またはメルカプト基を有するポリシロキサンとを反応させて、1分子中にポリシロキサン部位と12個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート化合物を得る第3反応工程とを有する(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【請求項5】
前記第2反応工程および前記第3反応工程に代えて、前記第1反応工程により得られた化合物と、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物および水酸基またはメルカプト基を有するポリシロキサンを予め反応させて得られるイソシアネート基を1個有するポリシロキサン骨格イソシアネートと、を反応させて、1分子中にポリシロキサン部位と12個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート化合物を得る第4反応工程を有する請求項4に記載の(メタ)アクリレート化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−102284(P2012−102284A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253772(P2010−253772)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】