説明

(亜)硝酸性窒素低減剤の製造方法及び該製造方法で得られた(亜)硝酸性窒素低減剤による水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減方法

【課題】水溶性のカチオン性高分子化合物と高分子材料から成る剤に、従来の(亜)硝酸性窒素濃度の低減方法に比べてより簡便な方法で、しかも短時間で効率良く水中の(亜)硝酸性窒素の濃度を低減することが可能な機能を付与する、(亜)硝酸性窒素低減剤の製造方法と、該製造方法により得られた(亜)硝酸性窒素低減剤を使用した、水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減方法を提供する。
【解決手段】水溶性のカチオン性高分子化合物をアルカリ及び還元剤存在下でウールに固着させることを特徴とする(亜)硝酸性窒素低減剤の製造方法及び、該(亜)硝酸性窒素低減剤を(亜)硝酸性窒素含有水中に添加し、攪拌混合して(亜)硝酸性窒素を該低減剤に吸着させた後、アニオン系高分子凝集剤又は無機凝集剤を添加し、攪拌混合後、(亜)硝酸性窒素を吸着した該低減剤を沈降させ、固液分離することを特徴とする水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸性窒素及び/又は亜硝酸性窒素(以下、これらを「(亜)硝酸性窒素」と称す。)含有水から(亜)硝酸性窒素の濃度を効率的に低減することができる(亜)硝酸性窒素低減剤の製造方法及び、該製造方法により得られた(亜)硝酸性窒素低減剤を用いて水中の(亜)硝酸性窒素の濃度を効率的に低減する(亜)硝酸性窒素濃度の低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属加工品製造工場や半導体工場等から排出される廃水には(亜)硝酸性窒素が含まれているものがあり、該廃水が十分処理されることなく閉鎖系海域、湖沼、河川等に放流されると富栄養化による赤潮等の問題を引き起こす可能性がある。環境省が平成13年に策定した第5次水質総量規制では窒素成分も規制の対象となっており、したがって該廃水を閉鎖系海域、湖沼、河川等へ排出する前に廃水中の(亜)硝酸性窒素濃度を十分に低減することが課題となっている。
【背景技術】
【0003】
水中の(亜)硝酸性窒素濃度を低減する方法としては、触媒脱窒法、イオン交換法、逆浸透膜法、電気透析法、微生物を用いた生物処理法等が知られている。触媒脱窒法は水素供与体を用い、触媒存在下で硝酸性窒素を窒素ガスにまで還元する方法であるが(特許文献1参照)、触媒に貴金属を用いるのでコスト高となる問題がある。イオン交換法は強塩基性陰イオン交換樹脂を用いて陰イオンである(亜)硝酸イオンを分離除去する方法であるが(特許文献2参照)、廃水中の(亜)硝酸性窒素の濃度を低減することはできるが、使用済みのイオン交換樹脂の再生が必要であり、樹脂再生時に高濃度の(亜)硝酸性窒素を含む再生廃液が発生し、この再生廃液の処理が必要となるという問題がある。逆浸透膜法は半透膜の片側の被処理水に機械的な圧力を加えることによって、不純物を含まない水を半透膜の反対側に得る方法であり(特許文献3参照)、電気透析法は陰イオン交換膜を介して陰イオンを電気的に移動させ、陰イオンである硝酸イオンを分解除去する方法であるが(特許文献4参照)、これらを利用した方法は高濃度の(亜)硝酸性窒素を処理できないという問題がある。生物処理法は従属栄養性脱窒法と独立栄養性脱窒法とがあり、前者は従属栄養脱窒菌を処理槽内に保持すると共に、有機物を水素供与体として与え、脱窒菌の還元作用によって硝酸性窒素を窒素ガスに還元する方法であり(特許文献5参照)、後者は独立栄養細菌である硫黄脱窒素細菌により硝酸性窒素を窒素ガスに還元する方法である(特許文献6参照)。しかしながら、微生物処理法は処理時間が長く、処理水質のコントロールが難しく、また、大量の水を処理するには、生物反応槽、沈殿池等の設備が非常に大きなものになるという問題がある。従って従来技術では簡便に、しかも短時間で効率良く水中の(亜)硝酸性窒素の濃度を低減することが困難な現状にある。
【0004】
【特許文献1】特許第2780222号公報
【特許文献2】特開昭55−142586号公報
【特許文献3】特開平6−142693号公報
【特許文献4】特開2002−066555号公報
【特許文献5】特開2000−325989号公報
【特許文献6】特許第1451119号公報
【0005】
また、水溶性のカチオン性高分子化合物を高分子材料に固着させた剤としては、着色廃水の脱色剤として提案されている(特許文献7参照)。該脱色剤はカチオン性の水不溶性物質であるためアニオン性物質を吸着する。しかしながらアニオン性物質であっても、水中の有機性染料に対する吸着性は確かに認められるものの、水中の無機性の(亜)硝酸性窒素濃度の低減効果はほとんど認められず、(亜)硝酸性窒素低減剤としての実用性は十分とは言い難い。
【0006】
【特許文献7】特許第3627063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水溶性のカチオン性高分子化合物と高分子材料から成る剤に、従来の(亜)硝酸性窒素濃度の低減方法に比べてより簡便な方法で、しかも短時間で効率良く水中の(亜)硝酸性窒素の濃度を低減することが可能な機能を付与する、(亜)硝酸性窒素低減剤の製造方法と、該製造方法により得られた(亜)硝酸性窒素低減剤を使用した、水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく(亜)硝酸性窒素低減剤の新規な製造方法及び該製造方法により得られた(亜)硝酸性窒素低減剤を用いた水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減方法について鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、ウールと水溶性のカチオン性高分子化合物から成る(亜)硝酸性窒素低減剤の製造方法及び該製造方法により得られた(亜)硝酸性窒素低減剤を(亜)硝酸性窒素含有水中に添加し、該低減剤に(亜)硝酸性窒素を吸着させた後、固液分離して水中の(亜)硝酸性窒素濃度を低減する方法に関するものである。
【0010】
本発明によれば、下記一般式(1)で表される水溶性のカチオン性高分子化合物、
【0011】
【化13】

【0012】
(式中Aは、
【0013】
【化14】

【0014】
を表し、Rは水素原子又はC〜Cの低級アルキル基を示す。
【0015】
A′は、
【0016】
【化15】

【0017】
を表し、Rは前記に同じ。Xは陰イオンを表す。
【0018】
Bは、
【0019】
【化16】

【0020】
を表し、Rは、水素原子又はメチル基を、R及びRは、同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基を示す。Zは、COO(CH、CONH(CH、COを示す。また、nは、1〜3の整数を示す。
【0021】
B′は、
【0022】
【化17】

【0023】
を表し、Z、R、R及びRは、前記に同じ。Xは陰イオンを表す。
【0024】
Cは、
【0025】
【化18】

【0026】
を表し、
【0027】
C′は、
【0028】
【化19】

【0029】
を表し、Xは陰イオンを表す。
【0030】
Dは、
【0031】
【化20】

【0032】
を表し、
【0033】
D′は、
【0034】
【化21】

【0035】
を表し、Xは陰イオンを表す。
【0036】
Eは、
【0037】
【化22】

【0038】
を表し、
【0039】
E′は、
【0040】
【化23】

【0041】
を表し、
【0042】
E′′は、
【0043】
【化24】

【0044】
を表し、X及びXは陰イオンを表す。また、10<a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′+e′′<30,000であり、a′、b′、c′、d′、e′、e′′が、全て0になる場合を除く。また、(a′+b′+c′+d′+e′+e′′)/(a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′+e′′)は、0.05<(a′+b′+c′+d′+e′+e′′)/(a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′+e′′)≦1である。)
をアルカリ及び還元剤存在下でウールに固着させることを特徴とする(亜)硝酸性窒素低減剤の製造方法に関する。
【0045】
また、本発明は、該(亜)硝酸性窒素低減剤を(亜)硝酸性窒素含有水中に添加し、攪拌混合して(亜)硝酸性窒素を該低減剤に吸着させた後、アニオン系高分子凝集剤又は無機凝集剤を添加し、攪拌混合後、(亜)硝酸性窒素を吸着した該低減剤を沈降させ、固液分離することを特徴とする水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減方法に関する。
【発明の効果】
【0046】
本発明の(亜)硝酸性窒素低減剤の製造方法は、(亜)硝酸性窒素含有水から簡便に、しかも短時間で効率良く(亜)硝酸性窒素の濃度を低減することが可能な剤を提供することができ、さらには本発明の水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減方法は(亜)硝酸性窒素濃度の低減効果をより向上させることができる。従って、大量の水処理に際して有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0048】
上記一般式(1)中、A′或いはA及びA′を繰返し単位とする重合体は、ジアリルアミン又はアルキルジアリルアミンとエピハロヒドリンの反応生成物の塩の重合(A′のポリマーの相当)、或いはジアリルアミン又はアルキルジアリルアミンのホモポリマー(Aのポリマーに相当)とエピハロヒドリンの反応によって得ることができる。
【0049】
ジアリルアミン又はアルキルジアリルアミンとエピハロヒドリンの反応は、周知の方法に従って行う。
【0050】
で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基等の直鎖又は分岐を有するアルキル基を挙げることが出来るが、特にメチル基が好ましい。
【0051】
ジアリルアミン又はアルキルジアリルアミンと反応させるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピヨードヒドリン、エピブロモヒドリン等を挙げる事が出来、特にエピクロルヒドリンが好ましい。
【0052】
エピハロヒドリンは、ジアリルアミン又はアルキルジアリルアミン1モルに対して0.5〜2.5モル、特に1〜1.5モル使用される事が好ましい。
【0053】
ジアリルアミン又はアルキルジアリルアミンとエピクロルヒドリンの反応物の塩を、水などの水性溶媒中、60〜90℃の反応温度で、重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロ二トリル、アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩等の存在下に重合させれば良い。
【0054】
このようにして得られる重合体の分子量は、1,000〜500,000程度となるが、ウール固着させるのに好適なものは3,000〜200,000程度の分子量のものである。分子量が1,000未満では、ウールに固着させる際の、アルカリによるウール繊維の分解により、固着処理後の濾過、脱水工程において分解したウール繊維の流出及び濾材の目詰まりを起こすため、ウールの流出に伴う本発明重合体の損失、収量の低下、濾材の目詰まりによる脱水不良を引き起こし、効果的な固着処理ができない。分子量が500,000を超えると、ウールに固着させる際に、ウール繊維の凝集を引き起こし、ウール繊維の表面上へ均一に固着されないため、固着効率が低下し、水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減効果が低下する。
【0055】
上記B′或いはB及びB′を繰り返し単位とする重合体は、例えばN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのモノマーとエピハロヒドリンの反応物の塩の重合又はそれらのモノマーのホモポリマーとエピハロヒドリンの反応によって得ることができる。これらの重合体の製造条件は、上記A及びA′重合体の製造条件に準ずる。
【0056】
このようにして得られる重合体の分子量は、1,000〜3,000,000程度となるが、ウールに固着させるのに好適なものは3,000〜2,000,000程度の分子量のものである。分子量が1,000未満では、ウールに固着させる際の、アルカリによるウール繊維の分解により、固着処理後の濾過、脱水工程において分解したウール繊維の流出及び濾材の目詰まりを起こすため、ウールの流出に伴う重合体の損失、収量の低下、濾材の目詰まりによる脱水不良を引き起こし、効果的な固着処理ができない。分子量が3,000,000を超えると、ウールに固着させる際に、ウール繊維の凝集を引き起こし、ウール繊維の表面上へ均一に固着されないため、固着効率が低下し、水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減効果が低下する。
【0057】
上記C′或いはC及びC′を繰り返し単位とする重合体は、例えば、ビニルピリジン等のモノマーとエピハロヒドリンの反応物の塩の重合、もしくはそれらのモノマーのホモポリマーとエピハロヒドリンの反応によって得る事が出来る。これらの重合体の製造条件は、上記A及びA′重合体の製造条件に準ずる。
【0058】
上記D′或いはD及びD′を繰り返し単位とする重合体は、例えば、アリルアミン等のモノマーとエピハロヒドリンの反応物の塩の重合、もしくはそれらのモノマーのホモポリマーとエピハロヒドリンの反応によって得る事が出来る。これらの重合体の製造条件は、上記A及びA′重合体の製造条件に準ずる。
【0059】
上記E′或いはE及びE′を繰り返し単位とする重合体は、例えば、ビニルイミダゾール等のモノマーとエピハロヒドリンの反応物の塩の重合、もしくはそれらのモノマーのホモポリマーとエピハロヒドリンの反応によって得る事が出来る。これらの重合体の製造条件は、上記A及びA′重合体の製造条件に準ずる。
【0060】
このようにして得られる重合体の分子量は、1,000〜1,000,000程度となるが、ウールに固着させるのに好適なものは3,000〜200,000程度の分子量のものである。分子量が1,000未満では、ウールに固着させる際の、アルカリによるウール繊維の分解により、固着処理後の濾過、脱水工程において分解したウール繊維の流出及び濾材の目詰まりを起こすため、ウールの流出に伴う重合体の損失、収量の低下、濾材の目詰まりによる脱水不良を引き起こし、効果的な固着処理ができない。分子量が1,000,000を超えると、ウールに固着させる際に、ウール繊維の凝集を引き起こし、ウール繊維の表面上へ均一に固着されないため、固着効率が低下し、水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減効果が低下する。
【0061】
上記一般式(1)に示されるポリマーでは、上記A、A′、B、B′、C、C′、D、D′、E及びE′で表される重合性構成単位の順序は、どのような組合せでもよく、例えば、AAA′B′B′DD′等の組合わせでもよく、BEE′B′C′EE′AEE′等の組合わせでもよい。
【0062】
これらA〜E′で組合わせた重合体も、上記A及びA′重合体の製造条件に準ずる。
【0063】
a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′の数は、10<a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′<30,000であり、好ましくは、30<a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′<2,000であり、a+b+c+d+e<a′+b′+c′+d′+e′が好ましい。a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′の数が10以下ではウールに固着させる際の、アルカリによるウール繊維の分解により、固着処理後の濾過、脱水工程において分解したウール繊維の流出及び濾材の目詰まりを起こすため、ウールの流出に伴う重合体の損失、収量の低下、濾材の目詰まりによる脱水不良を引き起こし、効果的な固着処理ができない。a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′の数が30,000以上では、ウールに固着させる際に、ウール繊維の凝集を引き起こし、ウール繊維の表面上へ均一に固着されないため、固着効率が低下し、水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減効果が低下する。また、a+b+c+d+e>a′+b′+c′+d′+e′では重合体が含有するウールへの反応基が少ないため、固着効率が低下し、水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減効果が低下する。
【0064】
また、(a′+b′+c′+d′+e′)/(a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′)の範囲としては、0.05<(a′+b′+c′+d′+e′)/(a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′)≦1であり、好ましくは、0.3<(a′+b′+c′+d′+e′)/(a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′)≦1である。0.05以下では重合体が含有するウールへの反応基が少ないため、固着効率が低下し、水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減効果が低下する。
【0065】
上記一般式(2)に示されるポリマーは、ジアリルアミン又はアルキルジアリルアミンとエピハロヒドリンの反応生成物の塩の重合、或いはジアリルアミン又はアルキルジアリルアミンのホモポリマーとエピハロヒドリンの反応によって得ることができる。
【0066】
ジアリルアミン又はアルキルジアリルアミンとエピハロヒドリンの反応は、周知の方法に従って行う。
【0067】
及びRで表されるアルキル基は、異なっても、同一でも良く、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基等の直鎖又は分岐を有するアルキル基を挙げることが出来るが、特にメチル基が好ましい。
【0068】
ジアリルアミン又はアルキルジアリルアミンと反応させるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピヨードヒドリン、エピブロモヒドリン等を挙げる事が出来、特にエピクロルヒドリンが好ましい。
【0069】
エピハロヒドリンは、ジアリルアミン又はアルキルジアリルアミン1モルに対して0.5〜2.5モル、特に1〜1.5モル使用される事が好ましい。
【0070】
ジアリルアミン又はアルキルジアリルアミンとエピクロルヒドリンの反応物の塩を、水などの水性溶媒中、60〜90℃の反応温度で、重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロ二トリル、アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩等の存在下に重合させれば良い。
【0071】
このようにして得られる重合体の分子量は、1,000〜500,000程度となるが、ウールに固着させるのに好適なものは3,000〜200,000程度の分子量のものである。分子量が1,000未満では、ウールに固着させる際の、アルカリによるウール繊維の分解により、固着処理後の濾過、脱水工程において分解したウール繊維の流出及び濾材の目詰まりを起こすため、ウールの流出に伴う重合体の損失、収量の低下、濾材の目詰まりによる脱水不良を引き起こし、効果的な固着処理ができない。分子量が500,000を超えると、ウールに固着させる際に、ウール繊維の凝集を引き起こし、ウール繊維の表面上へ均一に固着されないため、固着効率が低下し、水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減効果が低下する。
【0072】
本発明は上記水溶性のカチオン性高分子化合物をウールに固着することから成るが、紙、綿布、レーヨン等のセルロース、デンプンあるいはシルク等に対してはウールと比較して反応性が劣るため、水溶性のカチオン性高分子化合物の固着効率が低い。
【0073】
本発明に供されるウール繊維の形態としては、不織布、ワタ、糸、粉末等が使用され、ウール繊維の形態は問わず、着色されていても、着色されていなくても良い。
【0074】
本発明において、上記水溶性のカチオン性高分子化合物をウールに固着させるには、アルカリと還元剤を併用する。アルカリのみではウールに対する水溶性のカチオン性高分子化合物の固着効率が低く、還元剤のみではウールに対して水溶性のカチオン性高分子化合物は殆ど固着しない。
【0075】
アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、又は、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の沸点80℃以上の有機アミン或いはトリクロロ酢酸ナトリウム等のようなアルカリ発生剤等を挙げることが出来るが、特に限定されない。
【0076】
還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、二酸化チオ尿素、亜二チオン酸ナトリウム等を挙げる事が出来、これらの還元剤の一種類又は二種類以上組み合わせても良いが、特に限定されない。
【0077】
ウール、水溶性のカチオン性高分子化合物、アルカリ及び還元剤の重量比としては、ウール:カチオン性の水溶性高分子化合物:アルカリ:還元剤=1:0.001〜5:0.001〜5:0.0001〜1が用いられ、好ましくは、1:0.01〜2:0.01〜2:0.001〜0.5である。
【0078】
処理温度は、0〜100℃、処理時間は2分〜40時間が用いられる。処理温度が低い場合は処理時間を長くし、処理温度が高い場合は、処理時間を短くすれば良い。
【0079】
処理後、水溶性のカチオン性高分子化合物が固着したウールは、濾過、脱水することにより含水率10%〜60%の(亜)硝酸性窒素低減剤として得られる。
【0080】
次に、本発明の製造方法により得られた(亜)硝酸性窒素低減剤を用いた(亜)硝酸性窒素含有水中の(亜)硝酸性窒素の濃度を低減する方法としては、(亜)硝酸性窒素含有水中に直接、該低減剤を添加し、攪拌混合して該低減剤を十分分散させ、(亜)硝酸性窒素を該低減剤に吸着させた後に、アニオン系高分子凝集剤又は無機系凝集剤を添加し、さらに攪拌混合後、(亜)硝酸性窒素を吸着した該低減剤を沈降させ、固液分離すれば良い。
【0081】
アニオン系高分子凝集剤としては、例えば、アクリルアミド−アクリル酸塩の共重合物、ポリアクリルアミド部分加水分解物、ポリアクリル酸塩等が挙げられるが、これらの高分子化合物の一種類又は二種類以上組み合わせても良い。
【0082】
アクリルアミド−アクリル酸塩の共重合物としては、例えば、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウムの共重合物、アクリルアミド−アクリル酸カリウムの共重合物、アクリルアミド−アクリル酸アンモニウムの共重合物等が挙げられる。ポリアクリル酸塩としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム等が挙げられる。
【0083】
アニオン系高分子凝集剤としては、アクリルアミド−アクリル酸塩の共重合物が好ましく、分子量は100万〜3000万程度であり、好ましくは、200万〜2000万程度の分子量のものである。
【0084】
無機系凝集剤としては、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、塩化第二鉄等が挙げられるが、これらの無機凝集剤の一種類又は二種類以上組み合わせても良いが、特に限定されない。
【0085】
処理温度としては、0〜100℃、好ましくは10〜40℃、処理pHは特に限定されないが、好ましくは6〜12である。
【0086】
(亜)硝酸性窒素を吸着し、沈降した(亜)硝酸性窒素低減剤は、一般的な脱水機で脱水することができる。脱水機としては、例えば、真空脱水機、ベルトプレス機、スクリュープレス機、遠心脱水機等が挙げられるが、特に限定されない。
【0087】
分別除去された(亜)硝酸性窒素を吸着した(亜)硝酸性窒素低減剤は、焼却処理することができる。
【作用】
【0088】
ウールは、本発明に供される水溶性のカチオン性高分子化合物が含有するグリシジル基と反応する反応基を有しているが、ウールを還元処理することにより、ウールが有する該反応基が増加すると考えられる。そのため、ウールに対する水溶性のカチオン性高分子化合物の固着効率が向上し、効率良く(亜)硝酸イオンを吸着することができると考えられる。
【0089】
(亜)硝酸イオンを吸着した(亜)硝酸性窒素低減剤は、アニオン系高分子凝集剤又は無機系凝集剤を添加せずとも沈降するが、アニオン系高分子凝集剤又は無機系凝集剤を添加することにより、(亜)硝酸イオンを保持した微細繊維を効率良く凝集させることができ、分別除去時の(亜)硝酸イオンを保持した微細繊維の流出を防止し、水中の(亜)硝酸イオン濃度の低減効果を高める。
【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例を挙げる事により本発明の特徴をより一層明確なものとするが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の部、%は特に断らない限り重量部、重量%とする。
【合成例1】
【0091】
ジアリルアミン−エピクロルヒドリン付加物の合成
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器中に、ジアリルアミン230gと水7gを入れ、攪拌して均一に溶解させた後、過熱して温度を28℃まで上昇させた。この混合物に、滴下ロートからエピクロルヒドリン222gを約30分かけて滴下した。滴下終了後、28〜30℃にて10時間保った。反応終了後、水223gと塩酸(35%)250gを加え、ジアリルアミン−エピクロルヒドリン付加物(以下DAA−ECHと略す)の塩酸塩水溶液を得た。また、得られた付加物の元素分析を行い、窒素と酸素の比率から、全窒素中の反応したアンモニウム塩型の比率は、90%であった。
【合成例2】
【0092】
DAA−ECH/ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物の合成
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器中に、合成例1で得たDAA−ECH塩酸塩水溶液200gと、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下DADMACと略す)水溶液(60%)100gと水150gを入れ、内温70℃まで昇温した。攪拌下で滴下ロートを用いて、過硫酸アンモニウム水溶液(25%)20gを2時間にわたり滴下した。滴下終了後、3時間反応を続け、粘ちょうな淡黄色液状物を得た。得られた反応混合物50gに、過剰のアセトンを加え、沈殿物を濾別後、真空乾燥して、淡黄色粉末15gを得た。収率は88%であった。得られた重合物のGPC(高速液体クロマトグラフ分析)より求めた分子量は3.5万であった。また、得られた重合物の元素分析を行い、窒素と酸素の比率から、全窒素中の反応したアンモニウム塩型の比率は95%であった。
【合成例3】
【0093】
DAA−ECH/ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物の合成
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器中に、合成例1で得たDAA−ECH塩酸塩水溶液250gと、DADMAC水溶液(60%)50gと水150gを入れ、内温70℃まで昇温した。攪拌下で滴下ロートを用いて、過硫酸アンモニウム水溶液(25%)20gを2時間にわたり滴下した。滴下終了後、3時間反応を続け、粘ちょうな淡黄色液状物を得た。得られた反応混合物50gに、過剰のアセトンを加え、沈殿物を濾別後、真空乾燥して、淡黄色粉末14gを得た。収率は85%であった。得られた重合物のGPCより求めた分子量は3.6万であった。また、得られた重合物の元素分析を行い、窒素と酸素の比率から、全窒素中の反応したアンモニウム塩型の比率は97%であった。
【合成例4】
【0094】
ポリ(ジアリルアミン−エピクロルヒドリン付加物)の合成
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器中に、合成例1で得たDAA−ECH塩酸塩水溶液300gと、水150gを入れ、内温70℃まで昇温した。攪拌下で滴下ロートを用いて、過硫酸アンモニウム水溶液(25%)20gを2時間にわたり滴下した。滴下終了後、3時間反応を続け、粘ちょうな淡黄色液状物を得た。得られた反応混合物50gに、過剰のアセトンを加え、沈殿物を濾別後、真空乾燥して、淡黄色粉末13gを得た。収率は82%であった。得られた重合物のGPCより求めた分子量は3.8万であった。また、得られた重合物の元素分析を行い、窒素と酸素の比率から、全窒素中の反応したアンモニウム塩型の比率は90%であった。
【合成例5】
【0095】
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート−エピクロルヒドリン付加物
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器中に、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート157gと水157gを入れ、攪拌して均一に溶解させた後、内温を30℃以下に保ちながら、氷酢酸60gを約30分かけて滴下した。滴下終了後、内温を40℃に保ちながら、滴下ロートを用いて、エピクロロヒドリン92.5gを約30分かけて滴下した。滴下終了後、3時間反応を続け、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート−エピクロルヒドリン付加物(以下DMA−ECHと略す)の酢酸塩水溶液を得た。得られた付加物の元素分析を行い、窒素と酸素の比率から、全窒素中の反応したアンモニウム塩型の比率は90%であった。
【合成例6】
【0096】
ポリ(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート−エピクロルヒドリン付加物)の合成
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、合成例5で得たDMA−ECH酢酸塩水溶液30gと水269.1gを入れ、内温45度まで昇温した。攪拌下で滴下ロートを用いて、2,2′−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジハイドロクロライド水溶液(10%)0.9gを滴下した。滴下終了後、3時間反応を続け、透明液状物を得た。得られた反応混合物50gに、過剰のアセトンを加え、沈殿物を濾別後、真空乾燥して、黄色粉末3gを得た。収率は90%であった。得られた重合物のGPCより求めた分子量は170万であった。また、得られた重合物の元素分析を行い、窒素と酸素の比率から、全窒素中の反応したアンモニウム塩型の比率は90%であった。
【合成例7】
【0097】
ポリ(N−メチルジアリルアミン)−エピクロルヒドリン付加物の合成
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器中に、N−メチルジアリルアミン92.5gと水128.9gを入れ、内温を30℃以下に保ちながら、塩酸(35%)86.9gを滴下した。その後、内温を80℃に保ちながら、過硫酸アンモニウム水溶液(25%)30gを5時間にわたり滴下した。滴下終了後、3時間反応を続けた後、水565.2gと水酸化ナトリウム水溶液(30%)19.5gを投入した。投入終了後、内温を40℃に保ちながら、滴下ロートを用いて、エピクロルヒドリン77gを約30分にわたり滴下した。滴下終了後、2時間反応を続けた後、塩酸(35%)20gを投入し、淡褐色液状物を得た。得られた反応混合物50gに、過剰のアセトンを加え、沈殿物を濾別後、真空乾燥して、褐色粉末8.3gを得た。収率は85%であった。得られた重合物のGPCより求めた分子量は3.4万であった。また、得られた重合物の元素分析を行い、窒素と酸素の比率から、全窒素中の反応したアンモニウム塩型の比率は90%であった。
【合成例8】
【0098】
ポリジアリルアミン−エピクロルヒドリン付加物の合成
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、ジアリルアミン塩酸塩(60%)500gと水15gを入れて、窒素ガスを流入させながら、内温を80℃に昇温した。攪拌下で滴下ロートを用いて、過硫酸アンモニウム水溶液(25%)30gを4時間にわたり滴下した。滴下終了後、1時間反応を続けた後、水1010gを投入した。投入後、内温を40℃に保ちながら、滴下ロートを用いて、エピクルロヒドリン105gを約30分にわたり滴下した。滴下終了後、3時間反応を続けて淡黄色液状物を得た。得られた反応混合物50gに、過剰のアセトンを加え、沈殿物を濾別後、真空乾燥して、褐色粉末7.3gを得た。収率は60%であった。得られた重合物のGPCより求めた分子量は2.5万であった。また、得られた重合物の元素分析を行い、窒素と酸素の比率から、全窒素中の反応したアンモニウム塩型の比率は45%であった。
【合成例9】
【0099】
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−ジアリルアミン)−エピクロルヒドリン付加物の合成
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、ジアリルアミン塩酸塩(64.8%)250gとジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液(60%)294g及び水83.6gを入れ、窒素ガスを流入させながら、内温80℃に昇温した。攪拌下で滴下ロートを用いて、過硫酸アンモニウム水溶液(25%)24gを4時間にわたり滴下した。滴下終了後、1時間反応を続けた後、水2580.5gを投入した。投入終了後、内温を40℃に保ちながら、滴下ロートを用いて、エピクロルヒドリン109gを約30分にわたり滴下した。滴下終了後、3時間反応を続けて淡黄色液状物を得た。得られた反応混合物50gに、過剰のアセトンを加え、沈殿物を濾別後、真空乾燥して、褐色粉末4.1gを得た。収率は60%であった。得られた重合物のGPCより求めた分子量は8.2万であった。また、得られた重合物の元素分析を行い、窒素と酸素の比率から、全窒素中の反応したアンモニウム塩型の比率は95%であった。
【合成例10】
【0100】
ポリビニルピリジン−エピクロルヒドリン付加物の合成
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、ビニルピリジン塩酸塩(50.0%)283gを入れ、窒素ガスを流入させながら、内温80℃に昇温した。攪拌下で滴下ロートを用いて、過硫酸アンモニウム水溶液(25%)30gを4時間にわたり滴下した。滴下終了後、1時間反応を続けた後、水424gを投入した。投入後、内温を40℃に保ちながら、滴下ロートを用いて、エピクロルヒドリン46gを約30分にわたり滴下した。滴下終了後、3時間反応を続けて黄色液状物を得た。得られた反応混合物50gに、過剰のアセトンを加え、沈殿物を濾別後、真空乾燥して、褐色粉末11.0gを得た。収率は67%であった。得られた重合物のGPCより求めた分子量は5.1万であった。また、得られた重合物の元素分析を行い、窒素と酸素の比率から、全窒素中の反応したアンモニウム塩型の比率は45%であった。
【処理剤1】
【0101】
合成例2ポリマーを固着処理した処理剤
ウール5gに水200mLを加え、ミキサーで5分間攪拌した後、攪拌装置、還流冷却機及び温度計を備えた反応容器中に入れ、亜二チオン酸ナトリウム0.2gを添加後、内温を60℃に昇温した。合成例2のポリマー3.5gを添加した後、水酸化ナトリウム2.5gを添加し、30分間攪拌した。その後、過剰のアルカリを塩酸で中和し、未反応の合成例2のポリマーを水洗除去し、吸引濾過して(亜)硝酸性窒素低減剤24.1g(含水率74.7%)を得た。得られた(亜)硝酸性窒素低減剤のカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化ウールの乾燥重量)は57.8%であった。
【処理剤2】
【0102】
合成例3ポリマーを固着処理した処理剤
合成例3のポリマーを用いた以外は処理剤1と同様にし、(亜)硝酸性窒素低減剤22.5g(含水率76.9%)を得た。得られた(亜)硝酸性窒素低減剤のカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化ウールの乾燥重量)は59.6%であった。
【処理剤3】
【0103】
合成例4ポリマーを固着処理した処理剤
合成例4のポリマーを用いた以外は処理剤1と同様にし、(亜)硝酸性窒素低減剤20.5g(含水率73.7%)を得た。得られた(亜)硝酸性窒素低減剤のカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化パルプの乾燥重量)は60.8%であった。
【処理剤4】
【0104】
合成例6ポリマーを固着処理した処理剤
合成例6のポリマーを用いた以外は処理剤1と同様にし、(亜)硝酸性窒素低減剤21.4g(含水率75.2%)を得た。得られた(亜)硝酸性窒素低減剤のカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化ウールの乾燥重量)は60.1%であった。
【処理剤5】
【0105】
合成例7ポリマーを固着処理した処理剤
合成例7のポリマーを用いた以外は処理剤1と同様にし、(亜)硝酸性窒素低減剤21.5g(含水率74.9%)を得た。得られた(亜)硝酸性窒素低減剤のカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化ウールの乾燥重量)は61.2%であった。
【処理剤6】
【0106】
合成例8ポリマーを固着処理した処理剤
合成例8のポリマーを用いた以外は処理剤1と同様にし、(亜)硝酸性窒素低減剤23.3g(含水率76.8%)を得た。得られた(亜)硝酸性窒素低減剤のカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化ウールの乾燥重量)は60.8%であった。
【処理剤7】
【0107】
合成例9ポリマーを固着処理した処理剤
合成例9のポリマーを用いた以外は処理剤1と同様にし、(亜)硝酸性窒素低減剤22.2g(含水率76.1%)を得た。得られた(亜)硝酸性窒素低減剤のカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化ウールの乾燥重量)は58.2%であった。
【処理剤8】
【0108】
合成例10ポリマーを固着処理した処理剤
合成例10のポリマーを用いた以外は処理剤1と同様にし、(亜)硝酸性窒素低減剤19.2g(含水率73.1%)を得た。得られた(亜)硝酸性窒素低減剤のカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化ウールの乾燥重量)は60.5%であった。
【比較処理剤1】
【0109】
亜二チオン酸ナトリウムを添加しないこと、及び合成例7のポリマーを用いたこと以外は処理剤1と同様にし、カチオン化されたウール22.6g(含水率75.4%)を得た。得られたカチオン化ウールのカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化ウールの乾燥重量)は33.4%であった。
【比較処理剤2】
【0110】
水酸化ナトリウムを添加しないこと、及び合成例7のポリマーを用いたこと以外は処理剤1と同様にし、カチオン化されたウール21.1g(含水率78.4%)を得た。得られたカチオン化ウールのカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化ウールの乾燥重量)は9.1%であった。
【比較処理剤3】
【0111】
ウールの替わりにデンプンを用いたこと、及び合成例7のポリマーを用いたこと以外は処理剤1と同様にし、カチオン化されたデンプン22.1g(含水率76.5%)を得た。得られたカチオン化デンプンのカチオン性高分子化合物含有率(デンプンに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化デンプンの乾燥重量)は10.2%であった。
【比較処理剤4】
【0112】
ウールの替わりにパルプを用いたこと、及び合成例7のポリマーを用いたこと以外は処理剤1と同様にし、カチオン化されたパルプ20.9g(含水率74.2%)を得た。得られたカチオン化パルプのカチオン性高分子化合物含有率(パルプに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化パルプの乾燥重量)は13.8%であった。
【比較処理剤5】
【0113】
ウールの替わりにシルクを用いたこと、及び合成例7のポリマーを用いたこと以外は処理剤1と同様にし、カチオン化されたシルク19.5g(含水率72.8%)を得た。得られたカチオン化シルクのカチオン性高分子化合物含有率(シルクに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化シルクの乾燥重量)は22.8%であった。
【比較処理剤6】
【0114】
合成例ポリマーを用いない以外は処理剤1と同様にして、アルカリ処理をしたウール28.7g(含水率82.9%)得た。
【比較処理剤7】
【0115】
合成例ポリマーの替わりに3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを用いた以外は処理剤1と同様にして、カチオン化されたウール18.4g(含水率79.4%)を得た。得られたカチオン化ウールのカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化ウールの乾燥重量)は1.3%であった。
【比較処理剤8】
【0116】
合成例ポリマーの替わりにポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(MW2万)を用いた以外は処理剤1と同様にして、カチオン化されたウール20.3g(含水率79.8%)を得た。得られたカチオン化ウールのカチオン性高分子化合物含有率(ウールに固定されたカチオン性高分子の重量/カチオン化ウールの乾燥重量)は0.8%であった。
【実施例1】
【0117】
処理剤1〜8を固形分換算で0.1g、それぞれ硝酸ナトリウム50mg/Lの溶液100ml中に添加し、室温で5分間マグネティックスターラーで攪拌した後、アニオン系高分子凝集剤を硝酸ナトリウム水溶液に対して10mg/L(固形分換算)添加し、さらに1分間攪拌した。次にろ過し、硝酸ナトリウム水溶液中の硝酸イオン濃度を亜鉛還元−ナフチルエチレン吸光光度法により測定した。
【0118】
なお、アニオン系高分子凝集剤はセンカ株式会社製「センカフロックS2520A」を0.1重量%濃度に溶解し、溶解液を添加した。
【実施例2】
【0119】
アニオン系高分子凝集剤の替わりにポリ塩化アルミニウムを用いたこと以外は、実施例1と同様に処理を行い、硝酸ナトリウム水溶液中の硝酸イオン濃度を測定した。
【実施例3】
【0120】
処理剤5を固形分換算で0.1g、硝酸ナトリウム50mg/L、100mg/L、500mg/L及び1000mg/Lのそれぞれの溶液100ml中に添加し、室温で5分間マグネティックスターラーで攪拌した後、アニオン系高分子凝集剤を硝酸ナトリウム水溶液に対して10mg/L添加し、さらに1分間攪拌した。次にろ過し、硝酸ナトリウム水溶液中の硝酸イオン濃度を亜鉛還元−ナフチルエチレン吸光光度法により測定した。
【比較例1】
【0121】
比較処理剤1〜8、及び合成例7のポリマーを用いた以外は、実施例1と同様にした。
【比較例2】
【0122】
比較処理剤1〜8、及び合成例7のポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にした。
【比較例3】
【0123】
処理剤1〜8を固形分換算で0.1g、硝酸ナトリウム50mg/Lの溶液100ml中に添加し、室温で、5分間マグネティックスターラーで攪拌した後にろ過し、硝酸ナトリウム水溶液中の硝酸イオン濃度を亜鉛還元−ナフチルエチレン吸光光度法により測定した。
【比較例4】
【0124】
比較処理剤1〜8、及び合成例7のポリマーを用いた以外は、実施例3と同様にした。
【結果1】
【0125】
実施例1〜2及び比較例1〜3の結果を表1に示す。
【0126】
本発明の製造方法により得られた(亜)硝酸性窒素低減剤にアニオン系高分子凝集剤又は無機系凝集剤を併用して処理することにより、短時間で、容易に水中の硝酸イオン濃度を低減することが可能であった。
【0127】
一方、比較例1〜3による方法では、ほとんど水中の硝酸イオン濃度を低減することができなかった。
【結果2】
【0128】
実施例3及び比較例4の結果を図1に示す。
【0129】
本発明の製造方法により得られた(亜)硝酸性窒素低減剤は、水中の硝酸イオン濃度が高いほど、硝酸イオンの除去量が増加した。
【0130】
一方、比較例3による方法では、水中の硝酸イオン濃度が高くなっても、硝酸イオンの除去量は増加しなかった。
【0131】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、水中の硝酸イオン濃度と硝酸イオン除去量との関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される水溶性のカチオン性高分子化合物、
【化1】

(式中Aは、
【化2】

を表し、Rは水素原子又はC〜Cの低級アルキル基を示す。
A′は、
【化3】

を表し、Rは前記に同じ。Xは陰イオンを表す。
Bは、
【化4】

を表し、Rは、水素原子又はメチル基を、R及びRは、同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基を示す。Zは、COO(CH、CONH(CH、COを示す。また、nは、1〜3の整数を示す。
B′は、
【化5】

を表し、Z、R、R及びRは、前記に同じ。Xは陰イオンを表す。
Cは、
【化6】

を表し、
C′は、
【化7】

を表し、Xは陰イオンを表す。
Dは、
【化8】

を表し、
D′は、
【化9】

を表し、Xは陰イオンを表す。
Eは、
【化10】

を表し、
E′は、
【化11】

を表し、
E′′は、
【化12】

を表し、X及びXは陰イオンを表す。また、10<a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′+e′′<30,000であり、a′、b′、c′、d′、e′、e′′が、全て0になる場合を除く。また、(a′+b′+c′+d′+e′+e′′)/(a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′+e′′)は、0.05<(a′+b′+c′+d′+e′+e′′)/(a+a′+b+b′+c+c′+d+d′+e+e′+e′′)≦1である。)
をアルカリ及び還元剤存在下でウールに固着させることを特徴とする(亜)硝酸性窒素低減剤の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法により得られた(亜)硝酸性窒素低減剤を(亜)硝酸性窒素含有水中に添加し、攪拌混合して(亜)硝酸性窒素を該低減剤に吸着させた後、アニオン系高分子凝集剤又は無機凝集剤を添加し、攪拌混合後、(亜)硝酸性窒素を吸着した該低減剤を沈降させ、固液分離することを特徴とする水中の(亜)硝酸性窒素濃度の低減方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−260004(P2008−260004A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129834(P2007−129834)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(391003473)センカ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】