説明

1−ブテン系共重合体及び該共重合体からなる成形体

【課題】べたつきが少なく、軟質性及び透明性に優れた成形体を与える1−ブテン系共重合体、該共重合体からなる成形体及び樹脂改質剤を提供する。
【解決手段】1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)との共重合体であって、下記の(1)〜(4)を満たす1−ブテン系共重合体及び該共重合体からなる成形体である。
(1)融点が、観測されないか又は0〜100℃の結晶性樹脂
(2)立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
(4)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−ブテン系重合体、及び該重合体からなる成形体並びに樹脂改質剤に関し、さらに詳しくは、べたつきが少なく、軟質性及び透明性に優れた成形体を与える1−ブテン系重合体、及び該重合体からなる成形体並びに樹脂改質剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軟質樹脂として塩化ビニル樹脂が広く用いられているが、塩化ビニル樹脂は、その燃焼過程において有害な物質を発生させることが知られており、代替品の開発が強く望まれている。ところで、これまで、マグネシウム担持型チタン触媒により1−ブテン重合体が製造されているが(特許文献1参照)組成が不均一でべたつきの発生や透明性の低下など物性に悪影響を与えていた。この点に関しては、近年、メタロセン触媒により組成の均一な1−ブテン重合体が得られている(特許文献2〜6参照)。しかし、これらの先行技術に開示された単独重合体は立体規則性が高く、柔軟性に欠けていた。そこで、柔軟性を高めるため、1−ブテンと他のαーオレフィンとの共重合体が提案されている。しかしながら、メタロセン触媒を用いる場合であっても、単なる1−ブテン系共重合体である場合、組成分布が広がる場合もあり、べたつきの発生や透明性の低下を効果的に防ぐことができなかった。
また、一般に1−ブテン系重合体は、X線回折分析により、I型結晶及びII型結晶と呼ばれている異なった結晶状態を示すことが知られている。従来の1−ブテン系重合体は、II型結晶状態から徐々にI型結晶状態への転移が生じ、成形品の収縮が生じる等の、製品としての不都合な面を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−145205号公報
【特許文献2】特開昭62−119214公報
【特許文献3】特開昭62−121708公報
【特許文献4】特開昭62−121707公報
【特許文献5】特開昭62−119213公報
【特許文献6】特開平8−225605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、べたつきが少なく、軟質性及び透明性に優れた成形体を与える1−ブテン系重合体、結晶変体による物性の経時変化がない1−ブテン系重合体及び該重合体からなる成形体並びに樹脂改質剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、(1)融点、(2)立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}、(3)分子量分布(Mw/Mn)、(4)重量平均分子量(Mw)が特定の範囲にある1−ブテン系重合体が、べたつき成分の量と弾性率の低さと透明性のバランスに優れていることを見出し、また、(5)1−ブテンに由来する構造単位、(6)II型結晶分率(CII)が特定の範囲にある1−ブテン系重合体が、結晶変体による物性の経時変化がないことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の1−ブテン系重合体、及び該重合体からなる成形体並びに樹脂改質剤を提供するものである。
1.1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)との共重合体であって、下記の(1)〜(4)を満たす1−ブテン系共重合体
(1)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜100℃の結晶性樹脂
(2)立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
(4)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000
2.1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)との共重合体であって、下記の(1')〜(4')を満たす1−ブテン系共重合体。
(1')示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下220℃で3分間溶融した後、10℃/分で−40℃まで降温し、−40℃で3分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピークトップとして定義される融点(Tm)が、観測されないか又は0〜100℃の結晶性樹脂
(2')立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下
(3')ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
(4')GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000
3.1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)との共重合体であって、下記の(1'')〜(4'')を満たす1−ブテン系共重合体。
(1'')示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下190℃で5分間溶融した後、5℃/分で−10℃まで降温し、−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−P)が、観測されないか又は0〜100℃の結晶性樹脂
(2'')立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下
(3'')ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
(4'')GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が100,000〜1,000,000
4.1−ブテンに由来する構造単位が90モル%以上である上記1〜3のいずれかに記載の1−ブテン系共重合体。
5.α−オレフィン連鎖より得られる下記ランダム性指数Rが1以下である上記4に記載の1−ブテン系共重合体。
R=4[αα][BB]/[αB]2
([αα]はα−オレフィン連鎖分率、[BB]はブテン連鎖分率、[αB]はα−オレフィン−ブテン連鎖分率を表す。)
6.1−ブテンに由来する構造単位が95モル%以上である上記5に記載の1−ブテン系共重合体
7.下記の(5)及び(6)を満たす1−ブテン系共重合体。
(5)1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)との共重合体であって、1−ブテンに由来する構造単位が90モル%以上
(6)190℃にて5分間融解させ、氷水にて急冷固化した後、室温にて1時間放置した後に、X線回折により分析して得られたII型結晶分率(CII)が50%以下
8.さらに、下記の(7)を満たす上記7に記載の1−ブテン系共重合体。
(7)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000
9.(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物、及び(B)(B−1)該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(B−2)アルミノキサンから選ばれる少なくとも一種類の成分を含有する重合用触媒の存在下、1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)を共重合させることにより得られる上記1〜8のいずれかに記載の1−ブテン系共重合体。
【0006】
【化1】

【0007】
〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイドの金属元素を示し、E1 及びE2 はそれぞれ置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基,ホスフィド基,炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A1 及びA2 を介して架橋構造を形成しており、またそれらはたがいに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1 、E2 又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY、E1 、E2 又はXと架橋していてもよく、A1 及びA2 は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2 −、−Se−、−NR1 −、−PR1 −、−P(O)R1 −、−BR1 −又は−Al1 −を示し、R1 は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
10.上記1〜9のいずれかに記載の1−ブテン系共重合体を成形してなる成形体。
11.上記1〜9のいずれかに記載の1−ブテン系共重合体からなる1−ブテン系樹脂改質剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1−ブテン系共重合体及び該重合体からなる成形体は、べたつきが少なく、軟質性及び透明性に優れ、あるいは結晶変体による物性の経時変化がなく、収縮が生じない成形品を与える。また、本発明の1−ブテン系樹脂改質剤は、軟質性があり、べとつきが少なくポリオレフィン樹脂との相溶性に優れた成形体を与える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、1−ブテン系重合体[1]、その製造方法[2]、1−ブテン系樹脂組成物[3]、成形体[4]及び1−ブテン系樹脂改質剤[5]について詳しく説明する。
[1]1−ブテン系重合体
本発明の1−ブテン系重合体は、下記の(1)〜(4)、(1')〜(4')、(1'')〜(4'')又は(5)及び(6)を要件とする重合体である〔以下、これらを1−ブテン系重合体(I)、1−ブテン系重合体(II)、1−ブテン系重合体(III)、1−ブテン系重合体(IV)ということがある。〕。
(1)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜100℃の結晶性樹脂
(2)立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
(4)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000
(1')示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下220℃で3分間溶融した後、10℃/分で−40℃まで降温し、−40℃で3分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピークトップとして定義される融点(Tm)が、観測されないか又は0〜100℃の結晶性樹脂
(2')立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下
(3')ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
(4')GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000
【0010】
(1'')示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下190℃で5分間溶融した後、5℃/分で−10℃まで降温し、−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−P)が、観測されないか又は0〜100℃の結晶性樹脂
(2'')立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下
(3'')ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
(4'')GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が100,000〜1,000,000
(5)1−ブテンとエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)との共重合体であって、1−ブテンに由来する構造単位が90モル%以上
(6)190℃にて5分間融解させ、氷水にて急冷固化した後、室温にて1時間放置した後に、X線回折により分析して得られたII型結晶分率(CII)が50%以下
【0011】
本発明において、融点(Tm)及び融点(Tm−P)が示差走査熱量計(DSC)で観測されないとは、DSC測定において結晶化速度が極めて遅いため結晶融解ピークを実質的に観測できないことをいう。本発明において、結晶性樹脂とは、上記Tm、Tm−P、Tm−Dのうちの少なくともいずれかのピークが観測される樹脂のことをいう。
本発明の1−ブテン系重合体(I)、(II) 又は(III)は、上記の(1)〜(4)、(1')〜(4')又は(1'')〜(4'')関係を満たすことにより、得られる成形体等のべたつき成分の量と弾性率の低さと透明性のバランスが優れる。すなわち、弾性率が低く軟質性(柔軟性とも言う)に優れ、べたつき成分が少なく表面特性(例えば、ブリードや他の製品へのべたつき成分の移行が少ない等に代表される)にも優れ、かつ透明性にも優れるという利点がある。また、本発明の1−ブテン系重合体(IV)は、上記の(5)及び(6)を満たすことにより、結晶変体による物性の経時変化がなく、成形品に収縮が生じないという利点がある。
【0012】
本発明において、メソペンタッド分率(mmmm)及び異常挿入含有量(1,4挿入分率)は、朝倉らにより報告された「Polymer Journal,16,717(1984)」、J.Randallらにより報告された「Macromol.Chem.Phys.,C29,201(1989)」及びV.Busicoらにより報告された「Macromol.Chem.Phys.,198,1257(1997)」で提案された方法に準拠して求めた。
すなわち、13C核磁気共鳴スペクトルを用いてメチレン基、メチン基のシグナルを測定し、ポリ(1−ブテン) 分子中のメソペンタッド分率及び異常挿入含有量を求めた。13C核磁気共鳴スペクトルの測定は、下記の装置及び条件にて行った。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:230mg/ミリリットル
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)
混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
本発明において、立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}は、上記方法により、(mmmm)、(mmmr)及び(rmmr)を測定した値から算出した。また、ラセミトリアッド分率(rr)も上記方法により算出した
【0013】
[a]1−ブテン単独重合体
本発明の1−ブテン単独重合体(I)、(II) 又は(III)は、立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下であり、好ましくは18以下、さらに好ましくは15以下である。立体規則性指数が20を超えると、柔軟性の低下、低温ヒートシール性の低下、ホットタック性の低下が生じる。
本発明の1−ブテン単独重合体(I)、(II) 又は(III)は、上記の要件の他にGPC法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4以下であり、好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.0以下である。分子量分布(Mw/Mn)が4を超えるとべたつきが発生することがある。
本発明の1−ブテン単独重合体(I)、(II) 又は(III)は、上記の要件の他にGPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜1,000,000、さらに好ましくは、100,000〜500,000である。Mwが10,000未満では、べたつきが発生することがある。また1,000,000を超えると、流動性が低下するため成形性が不良となることがある。
本発明の1−ブテン単独重合体(I)、(II) 又は(III)は、上記の要件の他に、25℃のヘキサンに溶出する成分量(H25)が0〜80重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜60重量%、最も好ましくは0〜50重量%である。H25は、べたつき、透明性低下等の原因となるいわゆるべたつき成分の量が多いか少ないかを表す指標であり、この値が高いほどべたつき成分の量が多いことを意味する。H25が80重量%を超えると、べたつき成分の量が多いため、ブロッキングが起こり、食品用途や医療品用途には使えないことがある。
H25は、1−ブテン単独重合体の重量(W0 )(0.9〜1.1g) とこの重合体を200ミリリットルのヘキサン中に、25℃、4日以上静置後、乾燥した後の重量(W1 )を測定し、次式により算出した重量減少率である。
H25=〔(W0 −W1 )/W0 〕×100(%)
【0014】
なお、上記Mw/Mnは、GPC法により、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算の質量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnより算出した値である。
GPC測定装置
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
測定条件
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ミリリットル/分
試料濃度 :2.2mg/ミリリットル
注入量 :160マイクロリットル
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
【0015】
本発明の1−ブテン単独重合体(I)は、前記Tm及びTm−Pが観測されなかったときに、融点(Tm−D)が軟質性の点から示差走査熱量計(DSC)で0〜100℃の結晶性樹脂であることを必要とするものであり、好ましくは0〜80℃である。なお、Tm−Dは、DSC測定により求める。すなわち、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製, DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップが融点:Tm−Dである。
本発明の上記(1)〜(4)の構成を有する1−ブテン単独重合体(I)は、上記の要件の他に、DSC測定による融解吸熱量ΔH−Dが50J/g以下であると柔軟性が優れ好ましく、10J/g以下であるとさらに好ましい。ΔH−Dは、軟質であるかないかを表す指標でこの値が大きくなると弾性率が高く、軟質性が低下していることを意味する。なお、ΔH−Dは後述する方法により求める。
また、本発明の1−ブテン単独重合体(II) は、融点(Tm)が軟質性の点から示差走査熱量計(DSC)で観測されないか、又は0〜100℃の結晶性樹脂であることが必要であり、好ましくは0〜80℃である。なお、Tmは、DSC測定により求める。すなわち、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製, DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下220℃で3分間溶融した後、10℃/分で−40℃まで降温する。さらに、−40℃で3分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップが融点:Tmである。
本発明の上記(1')〜(4')の構成を有する1−ブテン単独重合体(II)は、上記の要件の他に、DSC測定による融解吸熱量ΔHが50J/g以下であると柔軟性が優れ好ましく、10J/g以下であるとさらに好ましい。ΔHは、軟質であるかないかを表す指標でこの値が大きくなると弾性率が高く、軟質性が低下していることを意味する。なお、ΔHは後述する方法により求める。
さらに、本発明の1−ブテン単独重合体(III)は、融点(Tm−P)が軟質性の点から示差走査熱量計(DSC)で観測されないか、又は0〜100℃の結晶性樹脂であることが必要であり、好ましくは0〜80℃である。なお、Tm−Pは、DSC測定により求める。すなわち、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製, DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下190℃で5分間溶融した後、5℃/分で−10℃まで降温する。さらに、−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップが融点:Tm−Pである。
本発明の上記(1'')〜(4'')の構成を有する1−ブテン単独重合体(III)は、上記の要件の他に、DSC測定による融解吸熱量ΔH−Pが50J/g以下であると柔軟性が優れ好ましく、10J/g以下であるとさらに好ましい。ΔH−Pは、軟質であるかないかを表す指標でこの値が大きくなると弾性率が高く、軟質性が低下していることを意味する。なお、ΔH−Pは後述する方法により求める。
【0016】
本発明の1−ブテン単独重合体(I)、(II) 又は(III)は、メソペンタッド分率(mmmm)が20〜90%であることが好ましく、30〜85%であるとさらに好ましく、30〜80%であると最も好ましい。メソペンタッド分率が20%未満の場合、成形体表面のべたつきや透明性の低下が生じる可能性がある。一方、90%を超えると、柔軟性の低下、低温ヒートシール性の低下、ホットタック性の低下が生じる場合がある。
また、本発明の1−ブテン単独重合体(I)、(II) 又は(III)は、(mmmm)≦90−2×(rr)の関係を満たしていることが好ましく、(mmmm)≦87−2×(rr)の関係を満たしているとさらに好ましい。この関係を満たさない場合には、成形体表面のべたつきや透明性の低下が生じる可能性がある。また、本発明の1−ブテン単独重合体(I)、(II) 又は(III)は、1,4挿入部分が5%以下であることが好ましい。5%を超えると、重合体の組成分布が広がるため、物性に悪影響を与える可能性があるからである。
本発明の1−ブテン単独重合体(IV)は、190℃にて5分間融解させ、氷水にて急冷固化した後、室温にて1時間放置した後に、X線回折により分析して得られたII型結晶分率(CII)が50%以下であることを要し、好ましくは20%以下、より好ましくは0%である。
本発明において、II型結晶分率(CII)は、A.Turner Jonesらにより報告された「Polymer,7,23(1966)」で提案された方法に準拠して求めた。すなわち、X線回折分析によりI型結晶状態のピーク及びII型結晶状態のピークを測定し、1−ブテン単独重合体の結晶中のII型結晶分率(CII)を求めた。X線回折分析(WAXD)は、理学電気(株)製の対陰極型ロータフレックスRU−200を用い、下記の条件にて行った。
試料状態:190℃にて5分間融解させ、氷水にて急冷固化した後、室温にて1時間放置
出力:30kV,200mA
検出器:PSPC(位置敏感比例計数管)
積算時間:200秒
本発明の1−ブテン単独重合体(IV)は、上記の要件の他に要件(7)として、GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000であることが好ましい。より好ましくは100,000〜1,000,000、さらに好ましくは、100,000〜500,000である。Mwが10,000未満では、べたつきが発生することがある。また1,000,000を超えると、流動性が低下するため成形性が不良となることがある。なお、上記Mw/Mn及びMwの測定方法は前記と同様である。
本発明の1−ブテン単独重合体(I)、(II) ,(III)又は(IV)は、JISK−7113に準拠した引張試験により測定した引張弾性率が500MPa以下であることが好ましく、300MPa以下であることがさらに好ましい。500MPaを超えると十分な軟質性が得られない場合があるからである。
【0017】
[a']1−ブテン系共重合体
本発明の1−ブテン系共重合体は、上記の(1)〜(4)、(1')〜(4')、(1'')〜(4'')又は(5)及び(6)を要件とする1−ブテンとエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテンを除く)の共重合体であり〔以下、これらを1−ブテン系共重合体(I)、1−ブテン系共重合体(II)、1−ブテン系共重合体(III)、1−ブテン系共重合体(IV)ということがある。〕、1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合体であることが好ましい。
【0018】
本発明の1−ブテン共重合体(I)、(II) 又は(III)としては、ランダム共重合体が好ましい。また、1−ブテンから得られる構造単位は90%モル以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上である。1−ブテンに由来する構造単位が90モル%未満の場合には、成形体表面のべたつきや透明性の低下が生じる可能性がある。
また、1−ブテン連鎖部の(mmmm)分率及び(mmrr+rmmr)分率から得られる立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が、20以下であることが必要であり、好ましくは18以下、さらに好ましくは15以下である。立体規則性指数が20を超えると、柔軟性の低下、低温ヒートシール性の低下、ホットタック性の低下が生じる。
本発明の1−ブテン系共重合体(I)、(II) 又は(III)は、ゲルパーミエイション(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下、好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.0以下である。分子量分布(Mw/Mn)が4を超えると、べたつきが発生することがある。
本発明の1−ブテン系共重合体(I)、(II) 又は(III)は、GPC法により測定した重量平均分子量Mwが10,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜1,000,000、さらに好ましくは、100,000〜500,000である。重量平均分子量が10,000未満では、べたつきが発生したり、また1,000,000を超えると、流動性が低下するため成形性が不良となることがある。なお、上記Mw/Mn及びMwの測定方法は前記と同様である。
本発明の1−ブテン系共重合体(I)、(II) 又は(III)は、25℃のヘキサンに溶出する成分量(H25)が0〜80重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜60重量%、最も好ましくは0〜50重量%である。H25は、べたつき、透明性低下等の原因となるいわゆるべたつき成分の量が多いか少ないかを表す指標であり、この値が高いほどべたつき成分の量が多いことを意味する。H25が80重量%を超えると、べたつき成分の量が多いため、ブロッキングが起こり、食品用途や医療品用途に使えないことがある。なお、上記H25の測定方法は前記と同様である。
【0019】
本発明の1−ブテン系共重合体(II) 又は(III)は、融点(Tm)又は(Tm−P)が示差走査熱量計(DSC)で観測されないか、又は軟質性の点から0〜100℃であることが必要であり、好ましくは0〜80℃である。また、融点(Tm)及び(Tm−P)が観測されない場合〔1−ブテン系共重合体(I)〕には、融点(Tm−D)が、0〜100℃であることが必要であり、好ましくは0〜80℃である。なお、Tm、Tm−P及びTm−Dは上記したDSC測定により求める。
本発明の1−ブテン系共重合体(I)、(II) 又は(III)は、α−オレフィン連鎖より得られる下記ランダム性指数Rが1以下であると好ましい。
R=4[αα][BB]/[αB]2
([αα]はα−オレフィン連鎖分率、[BB]はブテン連鎖分率、[αB]はα−オレフィン−ブテン連鎖分率を表す。)
Rは、ランダム性を表す指標であって、Rが小さいほどα−オレフィン(コモノマー)の孤立性が高く、組成が均一になる。Rは0.5以下が好ましく、0.2以下がさらに好ましい。Rが0のときαα連鎖はなくなり、α−オレフィン連鎖は完全に孤立連鎖のみになる。
前記1−ブテン系重合体(I)、(II) 又は(III)がエチレン・ブテン共重合体であった場合のブテン含有量、R及び立体規則性指標は以下のようにして測定した。
ブテン含有量及びRは、日本電子社製のJNM−EX400型NMR装置を用い、以下の条件で13C−NMRスペクトルを測定し、以下の方法により算出した。
試料濃度:220mg/NMR溶液 3ミリリットル
NMR溶液:1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6(90/10 vol%)
測定温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:10秒
積算回数:4000回
上記条件で、EE、EB、BB連鎖は、E.T.Hsieh and J.C.Randall,Macromolecules,1982,15,353−336で提案された方法に準拠し、13C核磁気共鳴スペクトルのSαα炭素のシグナルを測定し、共重合体分子鎖中のEE、EB、BBダイアッド連鎖分率を求めた。得られた各ダイアット連鎖分率(モル%)より、以下の式よりブテン含有量及びランダム性指数Rを求めた。
ブテン含有量(mol%)=[BB]+[EB]/2
ランダム性指数R=4[PP][BB]/[EB]2
([PP]はエチレン連鎖分率、[BB]はブテン連鎖分率、[EB]はエチレン−ブテン連鎖分率を表す。)
また、立体規則性指標は上記した方法により測定した。特に、エチレン・ブテン共重合体は、rmmr+mmrrのピークにBEE連鎖由来の側鎖メチレン炭素が重なり合うため、rmmr+mmrrのピーク強度は、37.5〜37.2のTαδ炭素のピークの成分値をrmmr+mmrrのピークとBEE連鎖由来の側鎖メチレン炭素ピークの重なり合いの強度から差し引くことにより補正した。
前記1−ブテン系重合体(I)、(II) 又は(III)がプロピレン・ブテン共重合体であった場合のブテン含有量及びRは以下のようにして測定した。
ブテン含有量及びRは、日本電子社製のJNM−EX400型NMR装置を用い、以下の条件で13C−NMRスペクトルを測定し、以下の方法により算出した。
試料濃度:220mg/NMR溶液 3ミリリットル
NMR溶液:1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6(90/10 vol%)
測定温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:10秒
積算回数:4000回
上記条件で、PP、PB、BB連鎖は、J.C.Randall,Macromolecules,1978,11,592で提案された方法に準拠し、13C核磁気共鳴スペクトルのSαα炭素のシグナルを測定し、共重合体分子鎖中のPP、PB、BBダイアッド連鎖分率を求めた。得られた各ダイアット連鎖分率(モル%)より、以下の式よりブテン含有量及びランダム性指数Rを求めた。
ブテン含有量(mol%)=[BB]+[PB]/2
ランダム性指数R=4[PP][BB]/[PB]2
([PP]はプロピレン連鎖分率、[BB]はブテン連鎖分率、[PB]はプロピレン−ブテン連鎖分率を表す。)
前記1−ブテン系重合体(I)、(II) 又は(III)がオクテン・ブテン共重合体であった場合のブテン含有量及びRは以下のようにして測定した。
ブテン含有量及びRは、日本電子社製のJNM−EX400型NMR装置を用い、以下の条件で13C−NMRスペクトルを測定し、以下の方法により算出した。
試料濃度:220mg/NMR溶液 3ミリリットル
NMR溶液:1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6(90/10 vol%)
測定温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:10秒
積算回数:4000回
上記条件で、13C核磁気共鳴スペクトルのSαα炭素のシグナルを測定し、40.8〜40.0ppmに観測されるBB連鎖、41.3〜40.8ppmに観測されるOB連鎖、42.5〜41.3ppmに観測されるOO連鎖由来のピーク強度から共重合体分子鎖中のOO、OB、BBダイアッド連鎖分率を求めた。
得られた各ダイアット連鎖分率(モル%)より、以下の式よりブテン含有量及びランダム性指数Rを求めた。
ブテン含有量(mol%)=[BB]+[OB]/2
ランダム性指数R=4[OO][BB]/[OB]2
([OO]はオクテン連鎖分率、[BB]はブテン連鎖分率、[OB]はオクテン−ブテン連鎖分率を表す。)
【0020】
本発明の1−ブテン系共重合体(IV)は、1−ブテンに由来する構造単位が90モル%以上であることが必要であり、好ましくは95モル%以上である〔1−ブテン系重合体(IV)としては、単独重合体が好ましい。〕。
本発明の1−ブテン系共重合体(IV)は、190℃にて5分間融解させ、氷水にて急冷固化した後、室温にて1時間放置した後に、X線回折により分析して得られたII型結晶分率(CII)が50%以下であることを要し、好ましくは20%以下、より好ましくは0%である。なお、II型結晶分率(CII)の測定方法は前記と同様である。
本発明の1−ブテン共重合体(IV)は、上記の要件の他に要件(7)として、GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000であることが好ましい。この重量平均分子量は、より好ましくは100,000〜1,000,000、さらに好ましくは、100,000〜500,000である。Mwが10,000未満では、べたつきが発生することがある。また1,000,000を超えると、流動性が低下するため成形性が不良となることがある。なお、上記Mw/Mn及びMwの測定方法は前記と同様である。本発明における1−ブテン系共重合体に関し、炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン,1−ペンテン,4−メチル−1−ペンテン,1−ヘキセン,1−オクテン,1−デセン,1−ドデセン,1−テトラデセン,1−ヘキサデセン,1−オクタデセン,1−エイコセンなどが挙げられ、本発明においては、これらのうち一種又は二種以上を用いることができる。
さらに、本発明の1−ブテン系共重合体は、JIS K−7113に準拠した引張試験により測定した引張弾性率が500MPa以下であることが好ましく、300MPa以下であることがさらに好ましい。500MPaを超えると十分な軟質性が得られない場合があるからである
【0021】
[2]1−ブテン単独重合体(a)及び1−ブテン系共重合体(a')の製造方法
本発明における1−ブテン単独重合体(a)及び1−ブテン系共重合体(a')の製造方法としては、メタロセン触媒と呼ばれる触媒系を用いて1−ブテンを単独重合する方法又は1−ブテンとエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテンを除く)を共重合する方法が挙げられる。メタロセン系触媒としては、特開昭58−19309号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−300887号公報、特開平4−211694号公報、特表平1−502036号公報等に記載されるようなシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基等を1又は2個配位子とする遷移金属化合物、及び該配位子が幾何学的に制御された遷移金属化合物と助触媒を組み合わせて得られる触媒が挙げられる。
【0022】
本発明においては、メタロセン触媒のなかでも、配位子が架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物からなる場合が好ましく、なかでも、2個の架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物と助触媒を組み合わせて得られるメタロセン触媒を用いて1−ブテンを単独重合する方法又は1−ブテンとエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテンを除く)を共重合する方法がさらに好ましい。具体的に例示すれば、(A)一般式(I)
【0023】
【化2】

【0024】
〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイドの金属元素を示し、E1 及びE2 はそれぞれ置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基,ホスフィド基,炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A1 及びA2 を介して架橋構造を形成しており、またそれらはたがいに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1 、E2 又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY、E1 、E2 又はXと架橋していてもよく、A1 及びA2 は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2 −、−Se−、−NR1 −、−PR1 −、−P(O)R1 −、−BR1 −又は−Al1 −を示し、R1 は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
で表される遷移金属化合物、及び(B)(B−1)該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(B−2)アルミノキサンから選ばれる成分を含有する重合用触媒の存在下、1−ブテンを単独重合させる方法、又は1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテンを除く)を共重合させる方法が挙げられる。
【0025】
上記一般式(I)において、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、具体例としてはチタン,ジルコニウム,ハフニウム,イットリウム,バナジウム,クロム,マンガン,ニッケル,コバルト,パラジウム及びランタノイド系金属などが挙げられるが、これらの中ではオレフィン重合活性などの点からチタン,ジルコニウム及びハフニウムが好適である。E1 及びE2 はそれぞれ、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基(−N<),ホスフィン基(−P<),炭化水素基〔>CR−,>C<〕及び珪素含有基〔>SiR−,>Si<〕(但し、Rは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基あるいはヘテロ原子含有基である)の中から選ばれた配位子を示し、A1 及びA2 を介して架橋構造を形成している。また、E1 及びE2 はたがいに同一でも異なっていてもよい。このE1 及びE2 としては、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基及び置換インデニル基が好ましい。
【0026】
また、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1 ,E2 又はYと架橋していてもよい。該Xの具体例としては、ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数1〜20のアミド基,炭素数1〜20の珪素含有基,炭素数1〜20のホスフィド基,炭素数1〜20のスルフィド基,炭素数1〜20のアシル基などが挙げられる。一方、Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のYやE1 ,E2 又はXと架橋していてもよい。該Yのルイス塩基の具体例としては、アミン類,エーテル類,ホスフィン類,チオエーテル類などを挙げることができる
【0027】
次に、A1 及びA2 は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2 −、−Se−、−NR1 −、−PR1 −、−P(O)R1 −、−BR1 −又は−AlR1 −を示し、R1 は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。このような架橋基としては、例えば一般式
【0028】
【化3】

【0029】
(Dは炭素、ケイ素又はスズ、R2 及びR3 はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基で、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、またたがいに結合して環構造を形成していてもよい。eは1〜4の整数を示す。)
で表されるものが挙げられ、その具体例としては、メチレン基,エチレン基,エチリデン基,プロピリデン基,イソプロピリデン基,シクロヘキシリデン基,1,2−シクロヘキシレン基,ビニリデン基(CH2 =C=),ジメチルシリレン基,ジフェニルシリレン基,メチルフェニルシリレン基,ジメチルゲルミレン基,ジメチルスタニレン基,テトラメチルジシリレン基,ジフェニルジシリレン基などを挙げることができる。これらの中で、エチレン基,イソプロピリデン基及びジメチルシリレン基が好適である。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。
このような一般式(I)で表される遷移金属化合物の中では、一般式(II)
【0030】
【化4】

【0031】
で表される二重架橋型ビスシクロペンタジエニル誘導体を配位子とする遷移金属化合物が好ましい。上記一般式(II)において、M,A1 ,A2 ,q及びrは上記と同じである。X1はσ結合性の配位子を示し、X1が複数ある場合、複数のX1は同じでも異なっていてもよく、他のX1又はY1と架橋していてもよい。このX1の具体例としては、一般式(I)のXの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。Y1はルイス塩基を示し、Y1が複数ある場合、複数のY1は同じでも異なっていてもよく、他のY1又はX1と架橋していてもよい。このY1の具体例としては、一般式(I)のYの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。R4 〜R9 はそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基,珪素含有基又はヘテロ原子含有基を示すが、その少なくとも一つは水素原子でないことが必要である。また、R4 〜R9はたがいに同一でも異なっていてもよく、隣接する基同士がたがいに結合して環を形成していてもよい。なかでも、R6 とR7 は環を形成していること及びR8 とR9 は環を形成していることが好ましい。R4 及びR5 としては、酸素、ハロゲン、珪素等のヘテロ原子を含有する基が重合活性が高くなり好ましい。
【0032】
この二重架橋型ビスシクロペンタジエニル誘導体を配位子とする遷移金属化合物は、配位子間の架橋基にケイ素を含むものが好ましい。
一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体例としては、(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−イソプロピリデン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(4,7−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(3−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(4,7−ジ−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1 ,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(3−メチル−4−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)−ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジフェニルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジフェニルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジフェニルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジフェニルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジフェニルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジフェニルシリレン)(2,1'−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−イソプロピリデン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−イソプロピリデン)(2,1'−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンジエニル)(3'−メチル−5'−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−フェニルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−エチルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル
−5'−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジメチルシリレン)(2,2'−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジフェニルシリレン)(2,2'−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジメチルシリレン)(2,2'−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジイソプロピルシリレン)(2,2'−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジメチルシリレン)(2,2'−ジイソプロピルシリレン)ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジメチルシリレンインデニル) (2,2'−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2'−ジフェニルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2'−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジメチルシリレンインデニル) (2,2'−ジフェニルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジイソプロピルシリレンインデニル) (2,2'−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジメチルシリレンインデニル) (2,2'−ジイソプロピルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジイソプロピルシリレンインデニル) (2,2'−ジイソプロピルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジメチルシリレンインデニル) (2,2'−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2'−ジフェニルシリレン−3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2'−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジメチルシリレンインデニル) (2,2'−ジフェニルシリレン−3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジイソプロピルシリレンインデニル) (2,2'−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジメチルシリレンインデニル) (2,2'−ジイソプロピルシリレン−3−トリメチルメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1'−ジイソプロピルシリレンインデニル) (2,2'−ジイソプロピルシリレン−3−トリメチルメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリドなど及びこれらの化合物におけるジルコニウムをチタン又はハフニウムに置換したものを挙げることができる。もちろんこれらに限定されるものではない。また、他の族又はランタノイド系列の金属元素の類似化合物であってもよい。また、上記化合物において、(1,1'−)(2,2'−)が(1,2'−)(2,1'−)であってもよく、(1,2'−)(2,1'−)が(1,1'−)(2,2'−)であってもよい。
【0033】
次に、(B)成分のうちの(B−1)成分としては、上記(A)成分の遷移金属化合物と反応して、イオン性の錯体を形成しうる化合物であれば、いずれのものでも使用できるが、次の一般式(III),(IV)
(〔L1 −R10k+a (〔Z〕-b ・・・(III)
(〔L2k+a (〔Z〕-b ・・・(IV)
(ただし、L2 はM2 、R11123 、R133 C又はR143 である。)〔(III),(IV)式中、L1 はルイス塩基、〔Z〕- は、非配位性アニオン〔Z1- 及び〔Z2- 、ここで〔Z1- は複数の基が元素に結合したアニオンすなわち〔M112 ・・・Gf 〕- (ここで、M1 は周期律表第5〜15族元素、好ましくは周期律表第13〜15族元素を示す。G1 〜Gf はそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数2〜40のジアルキルアミノ基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数7〜40のアルキルアリール基,炭素数7〜40のアリールアルキル基,炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,有機メタロイド基、又は炭素数2〜20のヘテロ原子含有炭化水素基を示す。G1 〜Gf のうち2つ以上が環を形成していてもよい。fは〔(中心金属M1 の原子価)+1〕の整数を示す。)、〔Z2 〕-は、酸解離定数の逆数の対数(pKa)が−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基、あるいは一般的に超強酸と定義される酸の共役塩基を示す。また、ルイス塩基が配位していてもよい。また、R10は水素原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、R11及びR12はそれぞれシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基又はフルオレニル基、R13は炭素数1〜20のアルキル基,アリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。R14はテトラフェニルポルフィリン,フタロシアニン等の大環状配位子を示す。kは〔L1 −R10〕,〔L2 〕のイオン価数で1〜3の整数、aは1以上の整数、b=(k×a)である。M2 は、周期律表第1〜3、11〜13、17族元素を含むものであり、M3 は、周期律表第7〜12族元素を示す。〕
で表されるものを好適に使用することができる。
【0034】
ここで、L1 の具体例としては、アンモニア,メチルアミン,アニリン,ジメチルアミン,ジエチルアミン,N−メチルアニリン,ジフェニルアミン,N,N−ジメチルアニリン,トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリ−n−ブチルアミン,メチルジフェニルアミン,ピリジン,p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン,p−ニトロ−N,N−ジメチルアニリンなどのアミン類、トリエチルホスフィン,トリフェニルホスフィン,ジフェニルホスフィンなどのホスフィン類、テトラヒドロチオフェンなどのチオエーテル類、安息香酸エチルなどのエステル類、アセトニトリル,ベンゾニトリルなどのニトリル類などを挙げることができる。
【0035】
10の具体例としては水素,メチル基,エチル基,ベンジル基,トリチル基などを挙げることができ、R11,R12の具体例としては、シクロペンタジエニル基,メチルシクロペンタジエニル基,エチルシクロペンタジエニル基,ペンタメチルシクロペンタジエニル基などを挙げることができる。R13の具体例としては、フェニル基,p−トリル基,p−メトキシフェニル基などを挙げることができ、R14の具体例としてはテトラフェニルポルフィン,フタロシアニン,アリル,メタリルなどを挙げることができる。また、M2 の具体例としては、Li,Na,K,Ag,Cu,Br,I,I3 などを挙げることができ、M3 の具体例としては、Mn,Fe,Co,Ni,Znなどを挙げることができる。
【0036】
また、〔Z1 〕- 、すなわち〔M1 G12 ・・・Gf 〕において、M1 の具体例としてはB,Al,Si ,P,As,Sbなど、好ましくはB及びAlが挙げられる。また、G1 ,G2 〜Gfの具体例としては、ジアルキルアミノ基としてジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基など、アルコキシ基若しくはアリールオキシ基としてメトキシ基,エトキシ基,n−ブトキシ基,フェノキシ基など、炭化水素基としてメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,n−オクチル基,n−エイコシル基,フェニル基,p−トリル基,ベンジル基,4−t−ブチルフェニル基,3,5−ジメチルフェニル基など、ハロゲン原子としてフッ素,塩素,臭素,ヨウ素,ヘテロ原子含有炭化水素基としてp−フルオロフェニル基,3,5−ジフルオロフェニル基,ペンタクロロフェニル基,3,4,5−トリフルオロフェニル基,ペンタフルオロフェニル基,3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基,ビス(トリメチルシリル)メチル基など、有機メタロイド基としてペンタメチルアンチモン基、トリメチルシリル基,トリメチルゲルミル基,ジフェニルアルシン基,ジシクロヘキシルアンチモン基,ジフェニル硼素などが挙げられる。
【0037】
また、非配位性のアニオンすなわちpKaが−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基〔Z2 〕- の具体例としてはトリフルオロメタンスルホン酸アニオン(CF3 SO3 )- ,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ベンジルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド,過塩素酸アニオン(ClO4 )- ,トリフルオロ酢酸アニオン(CF3 CO2 )-,ヘキサフルオロアンチモンアニオン(SbF6 )- ,フルオロスルホン酸アニオン(FSO3 )- ,クロロスルホン酸アニオン(ClSO3 )- ,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化アンチモン(FSO3 /SbF5 )- ,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化砒素(FSO3 /AsF5 )- ,トリフルオロメタンスルホン酸/5−フッ化アンチモン(CF3 SO3 /SbF5 )- などを挙げることができる。
【0038】
このような前記(A)成分の遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成するイオン性化合物、すなわち(B−1)成分化合物の具体例としては、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム,テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム,テトラフェニル硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(4−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム,テトラキス〔ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル〕硼酸ジメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸フェロセニウム,テトラフェニル硼酸銀,テトラフェニル硼酸トリチル,テトラフェニル硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1'−ジメチルフェロセニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テオラフェニルポルフィリンマンガン,テトラフルオロ硼酸銀,ヘキサフルオロ燐酸銀,ヘキサフルオロ砒素酸銀,過塩素酸銀,トリフルオロ酢酸銀,トリフルオロメタンスルホン酸銀などを挙げることができる。
(B−1)は一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
一方、(B−2)成分のアルミノキサンとしては、一般式(V)
【化5】

(式中、R15は炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基,アルケニル基,アリール基,アリールアルキル基などの炭化水素基あるいはハロゲン原子を示し、wは平均重合度を示し、通常2〜50、好ましくは2〜40の整数である。なお、各R15は同じでも異なっていてもよい。)
で示される鎖状アルミノキサン、及び一般式(VI)
【0040】
【化6】

(式中、R15及びwは前記一般式(V) におけるものと同じである。)
で示される環状アルミノキサンを挙げることができる。
【0041】
前記アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水などの縮合剤とを接触させる方法が挙げられるが、その手段については特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。例えば、(i)有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させる方法、(ii)重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、(iii)金属塩などに含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、(iv)テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、さらに水を反応させる方法などがある。なお、アルミノキサンとしては、トルエン不溶性のものであってもよい。
【0042】
これらのアルミノキサンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)触媒成分と(B)触媒成分との使用割合は、(B)触媒成分として(B−1)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは10:1〜1:100、より好ましくは2:1〜1:10の範囲が望ましく、上記範囲を逸脱する場合は、単位質量ポリマーあたりの触媒コストが高くなり、実用的でない。また(B−2)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは1:1〜1:1000000、より好ましくは1:10〜1:10000の範囲が望ましい。この範囲を逸脱する場合は単位質量ポリマーあたりの触媒コストが高くなり、実用的でない。また、触媒成分(B)としては(B−1),(B−2)を単独又は二種以上組み合わせて用いることもできる。
【0043】
本発明の製造方法における重合用触媒は、上記(A)成分及び(B)成分に加えて(C)成分として有機アルミニウム化合物を用いることができる。ここで、(C)成分の有機アルミニウム化合物としては、一般式(VII)
16v AlJ3-v ・・・(VII)
〔式中、R16は炭素数1〜10のアルキル基、Jは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1〜3の整数である〕
で示される化合物が用いられる。
前記一般式(VII)で示される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,ジメチルアルミニウムクロリド,ジエチルアルミニウムクロリド,メチルアルミニウムジクロリド,エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムヒドリド,ジエチルアルミニウムヒドリド,エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。
【0044】
これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
本発明の製造方法においては、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分を用いて予備接触を行なうこともできる。予備接触は、(A)成分に、例えば、(B)成分を接触させることにより行なうことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。これら予備接触により触媒活性の向上や、助触媒である(B)成分の使用割合の低減など、触媒コストの低減に効果的である。また、さらに、(A)成分と(B−2)成分を接触させることにより、上記効果と共に、分子量向上効果も見られる。また、予備接触温度は、通常−20℃〜200℃、好ましくは−10℃〜150℃、より好ましくは、0℃〜80℃である。予備接触においては、溶媒の不活性炭化水素として、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などを用いることができる。これらの中で特に好ましいものは、脂肪族炭化水素である。
【0045】
前記(A)触媒成分と(C)触媒成分との使用割合は、モル比で好ましくは1:1〜1:10000、より好ましくは1:5〜1:2000、さらに好ましくは1:10ないし1:1000の範囲が望ましい。該(C)触媒成分を用いることにより、遷移金属当たりの重合活性を向上させることができるが、あまり多いと有機アルミニウム化合物が無駄になるとともに、重合体中に多量に残存し、好ましくない。
本発明においては、触媒成分の少なくとも一種を適当な担体に担持して用いることができる。該担体の種類については特に制限はなく、無機酸化物担体、それ以外の無機担体及び有機担体のいずれも用いることができるが、特に無機酸化物担体あるいはそれ以外の無機担体が好ましい。
【0046】
無機酸化物担体としては、具体的には、SiO2 ,Al23 ,MgO,ZrO2 ,TiO2 ,Fe23 ,B23 ,CaO,ZnO,BaO,ThO2 やこれらの混合物、例えばシリカアルミナ,ゼオライト,フェライト,グラスファイバーなどが挙げられる。これらの中では、特にSiO2 ,Al23 が好ましい。なお、上記無機酸化物担体は、少量の炭酸塩,硝酸塩,硫酸塩などを含有してもよい。
【0047】
一方、上記以外の担体として、MgCl2 ,Mg(OC25 ) 2 などで代表される一般式MgR17X1 y で表されるマグネシウム化合物やその錯塩などを挙げることができる。ここで、R17は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基、X1 はハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、xは0〜2、yは0〜2であり、かつx+y=2である。各R17及び各X1はそれぞれ同一でもよく、また異なってもいてもよい。また、有機担体としては、ポリスチレン,スチレン−ジビニルベンゼン共重合体,ポリエチレン,ポリ1−ブテン,置換ポリスチレン,ポリアリレートなどの重合体やスターチ,カーボンなどを挙げることができる。
【0048】
本発明において用いられる担体としては、MgCl2 ,MgCl(OC2 5),Mg(OC2 52 ,SiO2 ,Al2 3 などが好ましい。また担体の性状は、その種類及び製法により異なるが、平均粒径は通常1〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmである。
粒径が小さいと重合体中の微粉が増大し、粒径が大きいと重合体中の粗大粒子が増大し嵩密度の低下やホッパーの詰まりの原因になる。また、担体の比表面積は、通常1〜1000m2 /g、好ましくは50〜500m2 /g、細孔容積は通常0.1〜5cm3 /g、好ましくは0.3〜3cm3 /gである。
【0049】
比表面積又は細孔容積のいずれかが上記範囲を逸脱すると、触媒活性が低下することがある。なお、比表面積及び細孔容積は、例えばBET法に従って吸着された窒素ガスの体積から求めることができる。
さらに、上記担体が無機酸化物担体である場合には、通常150〜1000℃、好ましくは200〜800℃で焼成して用いることが望ましい。
触媒成分の少なくとも一種を前記担体に担持させる場合、(A)触媒成分及び(B)触媒成分の少なくとも一方を、好ましくは(A)触媒成分及び(B)触媒成分の両方を担持させるのが望ましい。
【0050】
該担体に、(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方を担持させる方法については、特に制限されないが、例えば(i)(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方と担体とを混合する方法、(ii)担体を有機アルミニウム化合物又はハロゲン含有ケイ素化合物で処理したのち、不活性溶媒中で(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方と混合する方法、(iii)担体と(A)成分及び/又は(B)成分と有機アルミニウム化合物又はハロゲン含有ケイ素化合物とを反応させる方法、(iv)(A)成分又は(B)成分を担体に担持させたのち、(B)成分又は(A)成分と混合する方法、(v)(A)成分と(B)成分との接触反応物を担体と混合する方法、(vi)(A)成分と(B)成分との接触反応に際して、担体を共存させる方法などを用いることができる。
【0051】
なお、上記(iv)、(v)及び(vi)の反応において、(C)成分の有機アルミニウム化合物を添加することもできる。
本発明においては、前記(A),(B),(C)を接触させる際に、弾性波を照射させて触媒を調製してもよい。弾性波としては、通常音波、特に好ましくは超音波が挙げられる。具体的には、周波数が1〜1000kHzの超音波、好ましくは10〜500kHzの超音波が挙げられる。
【0052】
このようにして得られた触媒は、いったん溶媒留去を行って固体として取り出してから重合に用いてもよいし、そのまま重合に用いてもよい。
また、本発明においては、(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方の担体への担持操作を重合系内で行うことにより触媒を生成させることができる。例えば(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方と担体とさらに必要により前記(C)成分の有機アルミニウム化合物を加え、エチレンなどのオレフィンを常圧〜2MPa(gauge)加えて、−20〜200℃で1分〜2時間程度予備重合を行い触媒粒子を生成させる方法を用いることができる。
【0053】
本発明においては、(B−1)成分と担体との使用割合は、質量比で好ましくは1:5〜1:10000、より好ましくは1:10〜1:500とするのが望ましく、(B−2)成分と担体との使用割合は、質量比で好ましくは1:0.5〜1:1000、より好ましくは1:1〜1:50とするのが望ましい。(B)成分として二種以上を混合して用いる場合は、各(B)成分と担体との使用割合が質量比で上記範囲内にあることが望ましい。また、(A)成分と担体との使用割合は、質量比で、好ましくは1:5〜1:10000、より好ましくは1:10〜1:500とするのが望ましい。
【0054】
(B)成分〔(B−1)成分又は(B−2)成分〕と担体との使用割合、又は(A)成分と担体との使用割合が上記範囲を逸脱すると、活性が低下することがある。このようにして調製された本発明の重合用触媒の平均粒径は、通常2〜200μm、好ましくは10〜150μm、特に好ましくは20〜100μmであり、比表面積は、通常20〜1000m2 /g、好ましくは50〜500m2 /gである。平均粒径が2μm未満であると重合体中の微粉が増大することがあり、200μmを超えると重合体中の粗大粒子が増大することがある。比表面積が20m2 /g未満であると活性が低下することがあり、1000m2 /gを超えると重合体の嵩密度が低下することがある。また、本発明の触媒において、担体100g中の遷移金属量は、通常0.05〜10g、特に0.1〜2gであることが好ましい。遷移金属量が上記範囲外であると、活性が低くなることがある。
【0055】
このように担体に担持することによって工業的に有利な高い嵩密度と優れた粒径分布を有する重合体を得ることができる。
本発明で用いる1−ブテン系重合体は、上述した重合用触媒を用いて、1−ブテンを単独重合、又は1−ブテン並びにエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテンを除く)とを共重合させることにより製造される。
この場合、重合方法は特に制限されず、スラリー重合法,気相重合法,塊状重合法,溶液重合法,懸濁重合法などのいずれの方法を用いてもよいが、スラリー重合法,気相重合法が特に好ましい。
【0056】
重合条件については、重合温度は通常−100〜250℃、好ましくは−50〜200℃、より好ましくは0〜130℃である。また、反応原料に対する触媒の使用割合は、原料モノマー/上記(A)成分(モル比)が好ましくは1〜108 、特に100〜105 となることが好ましい。さらに、重合時間は通常5分〜10時間、反応圧力は好ましくは常圧〜20MPa(gauge)さらに好ましくは常圧〜10MPa(gauge)である。
【0057】
重合体の分子量の調節方法としては、各触媒成分の種類,使用量,重合温度の選択、さらには水素存在下での重合などがある。
重合溶媒を用いる場合、例えば、ベンゼン,トルエン,キシレン,エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロペンタン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,オクタンなどの脂肪族炭化水素、クロロホルム,ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素などを用いることができる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせてもよい。また、α−オレフィンなどのモノマーを溶媒として用いてもよい。なお、重合方法によっては無溶媒で行うことができる。
【0058】
重合に際しては、前記重合用触媒を用いて予備重合を行うことができる。予備重合は、固体触媒成分に、例えば、少量のオレフィンを接触させることにより行うことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。予備重合に用いるオレフィンについては特に制限はなく、前記に例示したものと同様のもの、例えばエチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、あるいはこれらの混合物などを挙げることができるが、該重合において用いるオレフィンと同じオレフィンを用いることが有利である。
【0059】
また、予備重合温度は、通常−20〜200℃、好ましくは−10〜130℃、より好ましくは0〜80℃である。予備重合においては、溶媒として、脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素,モノマーなどを用いることができる。これらの中で特に好ましいのは脂肪族炭化水素である。また、予備重合は無溶媒で行ってもよい。
予備重合においては、予備重合生成物の極限粘度[η](135℃デカリン中で測定)が0.2デシリットル/g以上、特に0.5デシリットル/g以上、触媒中の遷移金属成分1ミリモル当たりに対する予備重合生成物の量が1〜10000g、特に10〜1000gとなるように条件を調整することが望ましい。
【0060】
[3]1−ブテン系樹脂組成物
1−ブテン系樹脂組成物は、前記1−ブテン系重合体[1]、前記1−ブテン単独重合体[a]又は前記1−ブテン系共重合体[a']に造核剤を添加してなる樹脂組成物である。一般に、1−ブテン系重合体の結晶化は、結晶核生成過程と結晶成長過程の2過程からなり、結晶核生成過程では、結晶化温度との温度差や分子鎖の配向等の状態がその結晶核生成速度に影響を与えると言われている。特に分子鎖の吸着等を経て分子鎖配向を助長する効果のある物質が存在すると結晶核生成速度は著しく増大することが知られている。上記造核剤としては、結晶核生成過程の進行速度を向上させる効果があるものであればよい。結晶核生成過程の進行速度を向上させる効果があるものとしては、重合体の分子鎖の吸着過程を経て分子鎖配向を助長する効果のある物質が挙げられる。
【0061】
上記造核剤の具体例としては、高融点ポリマー、有機カルボン酸若しくはその金属塩、芳香族スルホン酸塩若しくはその金属塩、有機リン酸化合物若しくはその金属塩、ジベンジリデンソルビトール若しくはその誘導体、ロジン酸部分金属塩、無機微粒子、イミド類、アミド類、キナクリドン類、キノン類又はこれらの混合物が挙げられる。
高融点ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリビニルシクロペンタン等のポリビニルシクロアルカン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリ3−メチルペンテン−1、ポリ3−メチルブテン−1、ポリアルケニルシラン等が挙げられる。
金属塩としては、安息香酸アルミニウム塩、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム、チオフェネカルボン酸ナトリウム、ピローレカルボン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0062】
ジベンジリデンソルビトール又はその誘導体としては、ジベンジリデンソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−2,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−クロロベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。また、具体的には、新日本理化(製)のゲルオールMDやゲルオールMD−R(商品名)等も挙げられる。ロジン酸部分金属塩としては、荒川化学工業(製)のパインクリスタルKM1600、パインクリスタルKM1500、パインクリスタルKM1300(商品名)等が挙げられる。
【0063】
無機微粒子としては、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファィト、アルミニウム粉末、アルミナ、シリカ、ケイ藻土、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉末、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、硫化モリブデン等が挙げられる。
アミド化合物としては、アジピン酸ジアニリド、スペリン酸ジアニリド等が挙げられる。
これらの造核剤は、一種類を用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。上記1−ブテン系樹脂組成物としては、造核剤として下記一般式で示される有機リン酸金属塩及び/又はタルク等の無機微粒子を用いることが臭いの発生が少なく好ましい。この1−ブテン系樹脂組成物は食品向けの用途に好適である。
【0064】
【化7】

(式中、R18は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R19及びR20はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム及び亜鉛のうちのいずれかを示し、Mがアルカリ金属のときmは0を、nは1を示し、Mがアルカリ土類金属又は亜鉛のときnは1又は2を示し、nが1のときmは1を、nが2のときmは0を示し、Mがアルミニウムのときmは1を、nは2を示す。)
有機リン酸金属塩の具体例としては、アデカスタブNA−11やアデカスタブNA−21(旭電化株式会社(製))が挙げられる。
【0065】
さらに、上記1−ブテン系樹脂組成物としては、造核剤として前記のタルク等の無機微粒子を用いると、フィルムに成形した場合、スリップ性にも優れ、印刷特性などの特性が向上するので好ましい。さらには、造核剤として前記のジベンジリデンソルビトール又はその誘導体を用いると、透明性に優れるので好ましい。さらには、造核剤として前記のアミド化合物を用いると、剛性に優れるので好ましい。
【0066】
上記1−ブテン系樹脂組成物は、1−ブテン系重合体[1]、前記1−ブテン単独重合体[a]又は前記1−ブテン系共重合体[a']と造核剤、及び所望に応じて用いられる各種添加剤とをヘンシェルミキサー等を用いてドライブレンドしたものであってもよい。又は、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて、溶融混練したものであってもよい。或いは、造核剤として高融点ポリマーを用いる場合は、1−ブテン系重合体製造時に、リアクター内で高融点ポリマーを同時又は逐次的に添加して製造したものであってもよい。所望に応じて用いられる各種添加剤としては、酸化防止剤、中和剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、又は帯電防止剤等が挙げられる。
【0067】
上記造核剤の添加量は通常、1−ブテン系重合体[1]、前記1−ブテン単独重合体[a]又は前記1−ブテン系共重合体[a']に対して10ppm以上であり、好ましくは10〜10000ppmの範囲であり、より好ましくは10〜5000ppmの範囲であり、さらに好ましくは10〜2500ppmである。10ppm未満では成形性の改善がみられず、一方、10000ppmを超える量を添加しても好ましい効果が増大しないことがある。
【0068】
[4]成形体
本発明の成形体は、前記の1−ブテン系重合体[1]、前記1−ブテン単独重合体[a]又は前記1−ブテン系共重合体[a']を成形して得られる成形体である。本発明の成形体は、軟質性(柔軟性とも言う)があり、弾性率が低いわりにはべたつきが少なくかつ透明性に優れているという特徴がある。
本発明の成形体としては、フィルム、シート、容器、自動車内装材、架電製品のハウジング材等が挙げられる。フィルムとしては、食品包装用フィルムや農業用フィルム(ビニールハウスの例)等が挙げられる。容器としては、透明性に優れているので、透明ケース、透明ボックス、化粧箱等が挙げられる。
本発明の成形体がフィルム、シート等の包装材料である場合、低温ヒートシール性に優れ、ヒートシール温度域が広く、優れたホットタック性を有する。さらには、ポリ塩化ビニル製フィルムと類似する引張特性を有する。
【0069】
成形体の成形方法としては、射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、押し出し成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
成形条件については、樹脂が溶融流動する温度条件であれば特に制限はなく、通常、樹脂温度50℃〜300℃、金型温度60℃以下で行うことができる。
本発明の成形体として、フィルムを製膜する場合は、一般的な圧縮成形法、押し出し成形法、ブロー成形法、キャスト成形法等により行うことができる。
また、フィルムは延伸してもよくしなくともよい。延伸する場合は、2軸延伸が好ましい。2軸延伸の条件としては、下記のような条件が挙げられる。
(i)シート成形時の成形条件
樹脂温度50〜200℃、チルロール温度50℃以下
(ii)縦延伸条件
延伸倍率3〜7倍、延伸温度50〜100℃
(iii)横延伸条件
延伸倍率6〜12倍、延伸温度50〜100℃
また、フィルムは必要に応じてその表面を処理し、表面エネルギーを大きくしたり、表面を極性にしたりしてもよい。例えば処理方法としては、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾンや紫外線照射処理等が挙げられる。表面の凹凸化方法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0070】
フィルムには、常用される酸化防止剤、中和剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、又は帯電防止剤等を必要に応じて配合することができる。さらに、タルク等の無機微粒子を含むフィルムは、スリップ性にも優れるため、製袋、印刷等の二次加工性が向上し、各種自動充填包装ラミネート等の高速製造装置でのあらゆる汎用包装フィルムに好適である。
造核剤として前記のジベンジリデンソルビトール又はその誘導体を含む1−ブテン系樹脂組成物を成形してなるフィルムは、特に透明性に優れディスプレー効果が大きいため、玩具、文具等の包装に好適である。
造核剤として前記のアミド化合物を含む1−ブテン系樹脂組成物を成形してなるフィルムは、高速製袋における巻き皺等の問題が起こりにくいため、高速製袋機でのあらゆる汎用包装フィルムとして好適である。
本発明の1−ブテン系重合体、1−ブテン単独重合体、1−ブテン系共重合体は、ポリプロビレンとの相溶性に優れる。このため、本発明の重合体とポリプロピレンをブレンドすることにより、低温ヒートシール性PPフィルム等を製造可能である。また、本発明の重合体は、ポリエチレンやEVA樹脂とブレンドすることができ、このブレンドにより、フィルムやシート等の強度を制御することができる。
【0071】
[5]1−ブテン系樹脂改質剤
本発明の1−ブテン系樹脂改質剤は、前記の1−ブテン系重合体[1]、前記1−ブテン単独重合体[a]又は前記1−ブテン系共重合体[a']からなる樹脂改質剤である。本発明の1−ブテン系樹脂改質剤は、低融点で軟質性があり、べとつきが少なくポリレフィン樹脂との相溶性に優れた成形体を与えることができるという特徴がある。すなわち、本発明の1−ブテン系樹脂改質剤は、前記したように1−ブテン単独重合体、1−ブテン系共重合体が特定のものであり、特にポリ1−ブテン連鎖部分に結晶性の部分が若干存在するので、従来の改質剤である軟質ポリオレフィン樹脂に比較してべとつきが少なく、相溶性に優れる。さらに、本発明の1−ブテン系樹脂改質剤はポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン系樹脂との相溶性に優れる。その結果、従来の改質剤であるエチレン系ゴム等を用いる場合に比べ、表面特性(べとつき等)の低下が少なく、透明性が高い。以上のような特徴があり、本発明の1−ブテン系樹脂改質剤は、柔軟性、透明性の物性改良剤として好適に使用することができる。さらに、ヒートシール性及びホットタック性の改良剤として好適に使用することができる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
まず、本発明の重合体の樹脂特性及び物性の評価方法について説明する。
(1)メソペンタッド分率、ラセミトリアッド分率、異常挿入量及び立体規則性指数の測定
明細書本文中に記載した方法により測定した。
【0073】
(2)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定
明細書本文中に記載した方法により測定した。
(3)コモノマーの含量及びランダム性指数Rの測定
明細書本文中に記載した方法により測定した。
(4)H25の測定
明細書本文中に記載した方法により測定した。
(5)DSC測定(融点:Tmの測定)
明細書本文中に記載した方法により測定した。すなわち、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製, DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下220℃で3分間溶融した後、10℃/分で−40℃まで降温後、さらに、−40℃で3分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られる融解吸熱量をΔHとした。また、このときに得られる融解吸熱カーブの最大ピークのピークトップを融点:Tmとした。
(6)DSC測定(融点:Tm−P及びTm−Dの測定)
明細書本文中に記載した方法により測定した。すなわち、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製, DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下190℃で5分間溶融した後、5℃/分で−10℃まで降温後、さらに、−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られる融解吸熱量をΔH−Pとした。また、このときに得られる融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップを融点:Tm−Pとした。
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製, DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下、−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られる融解吸熱量をΔH−Dとした。また、このときに得られる融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップを融点:Tm−Dとした。
(7)引張弾性率の測定
重合体をプレス成形して試験片を作成し、JIS K−7113に準拠した引張試験により以下の条件で測定した。
・クロスヘッド速度:50mm/min
(8)内部ヘイズ重合体をプレス成形して15cm×15cm×1mmの試験片を作成し、JIS K−7105に準拠した試験により測定した。
(9)II型結晶分率(CII)の測定
明細書本文中に記載した方法により測定した。
【0074】
参考例1
(i)触媒調製
(1)2−クロロジメチルシリルインデンの製造
窒素気流下、1リットルの三つ口フラスコにTHF(テトラヒドロフラン)50ミリリットルとマグネシウム2.5g(41ミリモル)を加え、ここに1,2−ジブロモエタン0.1ミリリットルを加えて30分間攪拌し、マグネシウムを活性化した。攪拌後、溶媒を抜き出し、新たにTHF50ミリリットルを添加した。ここに2−ブロモインデン5.0g(25.6ミリモル)のTHF(200ミリリットル)溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温において2時間攪拌した後、−78℃に冷却し、ジクロロジメチルシラン3.1ミリリットル(25.6ミリモル)のTHF(100ミリリットル)溶液を1時間かけて滴下し、15時間攪拌した後、溶媒を留去した。残渣をヘキサン200ミリリットルで抽出した後、溶媒を留去することにより、2−クロロジメチルシリルインデン6.6g(24.2ミリリモル)を得た(収率94%)。
(2)(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)の製造
窒素気流下、1リットルの三つ口フラスコにTHF400ミリリットルと2−クロロジメチルシリルインデン8gを加え、−78℃に冷却した。この溶液へ、LiN(SiMe32 のTHF溶液(1.0モル/リットル)を38.5ミリリットル(38.5ミリモル)滴下した。室温において15時間攪拌した後、溶媒を留去し、ヘキサン300ミリリットルで抽出した。溶媒を留去することにより、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)を2.0g(6.4ミリモル)得た(収率33.4%)。
(3)(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドの製造
シュレンク瓶に(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)を2.2g(6.4ミリモル),エーテル100ミリリットルを入れ、−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(ヘキサン溶液:1.6モル/リットル)を9.6ミリリットル(15.4ミリモル)加えた後、室温において12時間攪拌した。溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン20ミリリットルで洗浄することにより、リチウム塩を得た。得られたリチウム塩をトルエン100ミリリットルに溶解し、また、上記とは別のシュレンク瓶に四塩化ジルコニウム1.5g(6.4ミリモル)とトルエン100ミリリットルを加えた。500ミリリットルの三つ口フラスコにトルエン100ミリリットルを加え、0℃に冷却し、攪拌しながら、ここに上記リチウム塩及び四塩化ジルコニウムの等量を、キャヌラーを用いて1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温において一晩攪拌した。溶液をろ過し、ろ液の溶媒を留去した。得られた固体をジクロロメタンにより再結晶することにより、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドを1.2g(2.4ミリモル)得た(収率37%)。
このものの 1H−NMRを求めたところ、次の結果が得られた。
1H−NMR(CDCl3 ):0.85,1.08(6H,s),7.11(2H,s),7.2−7.7(8H,m)
【0075】
(ii)重合
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、1−ブテン200ミリリットル、メチルアルミノキサン5ミリモルを加え、さらに水素0.1MPa導入した。撹絆しながら温度を65℃にした後、(i)で得られた(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドを5マイクロモル加え15分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、1−ブテン単独重合体を65g得た。
得られた1−ブテン単独重合体について、上記方法によりメソペンタッド分率(mmmm)、立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}、ラセミトリアッド分率(rr)、異常挿入量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、融点(Tm)及び融解吸熱量(ΔH)を測定した。その結果を表1に示す。
【0076】
参考例2
(i)触媒調製
(1)(1,2'−SiMe2 )(2,1'−SiMe2 )(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムクロライドの製造
窒素気流下、200ミリリットルのシュレンク瓶にエーテル50ミリリットルと(1,2'−SiMe2 )(2,1'−SiMe2 )ビス(インデン)3.5g(10.2mmol)を加える。ここに、−78℃でn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液(1.60M、12.8ミリリットル)を滴下する。室温で8時間接拝した後溶媒を留去し、得られた固体を減圧乾燥することにより白色固体5.0gを得た。この固体をTHF50ミリリットルに溶解させ、ここへヨードメチルトリメチルシラン1.4ミリリットルを室温で滴下する。水10ミリリットルを加え、有機相をエーテル50ミリリットルで抽出する。有機相を乾燥し溶媒を留去する。ここヘエーテル50ミリリットルを加え、−78℃でn−BuLiのヘキサン溶液(1.60M、12.4ミリリットル)を滴下する。室温に上げ3時間撹拌後、エーテルを留去する。得られた固体をヘキサン30ミリリットルで洗浄した後減圧乾燥する。この白色固体5.11gをトルエン50ミリリットルに混濁させ、別のシュレンク中でトルエン10ミリリットルに懸濁した四塩化ジルコニウム2.0g(8.6mmol)を添加する。室温で12時間撹拌後溶媒を留去し、残さをヘキサン50ミリリットルで洗浄する。残さをジクロロメタン30ミリリットルから再結晶化させることにより黄色微結晶1.2gを得た(収率25%)。
1H−NMR(90MHz、CDCl3 ):δ−0.09(s、−SiMe3 、9H);0.89、0.86、1.03、1.06(s、−Me2 Si−、12H);2.20、2.65(d、−CH2 −、2H);6.99(s、CH、1H);7.0−7.8(m、ArH、8H)
(ii)重合
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、1−ブテン200ミリリットル、メチルアルミノキサン5ミリモルを加え、さらに水素0.1MPa導入した。撹絆しながら温度を55℃にした後、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライドを5マイクロモル加え30分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、1−ブテン単独重合体を43g得た。
得られた1−ブテン単独重合体について、上記方法によりメソペンタッド分率(mmmm)、立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}、ラセミトリアッド分率(rr)、異常挿入量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、融点(Tm)及び融解吸熱量(ΔH)を測定した。その結果を表1に示す。
【0077】
比較例1
(i)マグネシウム化合物の調製
内容積約6リットルのかきまぜ機付きガラス反応器を窒素ガスで十分に置換したのち、これにエタノール約2430g、ヨウ素16g及び金属マグネシウム160gを仕込み、かきまぜながら加熱して、還流条件下で系内からの水素ガスの発生がなくなるまで反応させ、固体状応生成物を得た。この固体状生成物を含む反応液を減圧下で乾燥させることにより、マグネシウム化合物を得た。
(ii)固体触媒成分(A)の調製
窒素ガスで十分置換した内容積5リットルのガラス製反応器に、上記(i)で得られたマグネシウム化合物(粉砕していないもの)160g、精製ヘプタン80ミリリットル、四塩化ケイ素24ミリリットル及びフタル酸ジエチル23ミリリットルを仕込み、系内を80℃に保ち、かきまぜながら四塩化チタン770ミリリットルを加えて110℃で2時間反応させたのち、固体成分を分離して90℃の精製ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化チタン1220ミリリットルを加え、110℃で2時間反応させたのち、精製ヘプタンで十分に洗浄して固体触媒成分(A)を得た
【0078】
(iii)重合
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、1−ブテン200ミリリットル、トリエチルアルミニウム2ミリモル、シネオール0.25ミリモルを加え、さらに水素0.1MPa導入した。撹絆しながら温度を70℃にした後、固体触媒成分(A)をTi濃度で5マイクロモル加え60分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、1−ブテン系共重合体を27g得た。
得られた1−ブテン単独重合体について、上記方法によりメソペンタッド分率(mmmm)、立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}、ラセミトリアッド分率(rr)、異常挿入量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、融点(Tm・Tm−P)、融解吸熱量(ΔH・ΔH−P)、引張弾性率及び内部ヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0079】
参考例3
(i)触媒調製
参考例1と同様にして、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドを製造した。
(ii)重合
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、1−ブテン200ミリリットル、メチルアルミノキサン10ミリモルを加え、撹絆しながら温度を50℃にした後、(i)で得られた(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドを10マイクロモル加え60分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、1−ブテン単独重合体を7g得た。
得られた1−ブテン単独重合体について、上記方法によりメソペンタッド分率(mmmm)、立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}、ラセミトリアッド分率(rr)、異常挿入量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、融点(Tm・Tm−P)、融解吸熱量(ΔH・ΔH−P)、引張弾性率及び内部ヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0080】
参考例4
(i)触媒調製
参考例1と同様にして、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドを製造した。
(ii)重合
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、1−ブテン200ミリリットル、メチルアルミノキサン10ミリモルを加え、さらに水素0.1MPa及びエチレン0.1MPa導入した。撹絆しながら温度を50℃にした後、(i)で得られた(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドを10マイクロモル加え60分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、1−ブテン系共重合体を20g得た。
得られた1−ブテン系共重合体について、上記方法により立体規則性指数、エチレン単位含有量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、融点(Tm)及び融解吸熱量(ΔH)を測定した。その結果を表1に示す。
【0081】
参考例5
(i)触媒調製
(1)(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロライドの製造
シュレンク瓶に(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(インデン)のリチウム塩の3.0g(6.97mmol)をTHF50ミリリットルに溶解し−78℃に冷却する。ヨードメチルトリメチルシラン2.1ミリリットル(14.2mmol)をゆっくりと滴下し室温で12時間撹拌する。溶媒を留去しエーテル50ミリリットルを加えて飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄する。分液後、有機相を乾燥し溶媒を除去して(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン) を3.04g(5.88mmol)を得た(収率84%)。
次に、窒素気流下においてシュレンク瓶に前記で得られた(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン) を3.04g(5.88mmol)とエーテル50ミリリットルを入れる。−78℃に冷却しn−BuLiのヘキサン溶液(1.54M、7.6ミリリットル(1.7mmol))を滴下する。室温に上げ12時間撹拌後、エーテルを留去する。得られた固体をヘキサン40ミリリットルで洗浄することによりリチウム塩をエーテル付加体として3.06g(5.07mmol)を得た(収率73%)。
1H−NMR(90MHz、THF−d8 )による測定の結果は、δ 0.04(s、18H、トリメチルシリル);0.48(s、12H、ジメチルシリレン);1.10(t、6H、メチル);2.59(s、4H、メチレン);3.38(q、4H、メチレン)、6.2−7.7(m,8H,Ar−H)であった。窒素気流下で得られたリチウム塩をトルエン50ミリリットルに溶解する。−78℃に冷却し、ここへ予め−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム1.2g(5.1mmol)のトルエン(20ミリリットル)懸濁液を滴下する。滴下後、室温で6時間撹拌する。その反応溶液の溶媒を留去する。得られた残さをジクロロメタンにより再結晶化することにより、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを0.9g(1.33mmol)を得た(収率26%) 。
1H−NMR(90MHz、CDCl3 )による測定の結果は、δ 0.0(s、18H、トリメチルシリル);1.02,1.12(s、12H、ジメチルシリレン);2.51(dd、4H、メチレン);7.1−7.6(m,8H,Ar−H)であった。
(ii)重合
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、1−ブテン200ミリリットル、メチルアルミノキサン1ミリモルを加え、さらに水素0.03MPa導入した。撹絆しながら温度を50℃にした後、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロライドを1マイクロモル加え20分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、1−ブテン系共重合体を21g得た。得られた1−ブテン系共重合体について、上記方法によりメソペンタッド分率(mmmm)、立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}、ラセミトリアッド分率(rr)、異常挿入量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、融点(Tm・Tm−P)、融解吸熱量(ΔH・ΔH−P)、引張弾性率及び内部ヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0082】
参考例6
参考例1で得られた1−ブテン単独重合体20重量部及び出光石油化学社製ポリプロピレン樹脂(J2000GP)90重量部を単軸押出機(塚田樹機制作所製:TLC35−20型)にて押出造粒し、ペレットを得た。
得られたペレットについて、上記方法により引張弾性率及び内部ヘイズを測定した。その結果を表1に示す。表1に示したように、後述する比較例2と比べて引張弾性率が低下しており、柔軟性の改質剤としての効果が示されている。
【0083】
比較例2
出光石油化学社製ポリプロピレン樹脂(J2000GP)について、上記方法により引張弾性率及び内部ヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0084】
参考例7
(i)触媒調製
参考例1と同様にして、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロライドを製造した。
(ii)重合
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、ヘプタン200ミリリットル、1−ブテン200ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモルを加え、さらに水素0.03MPa導入した。撹絆しながら温度を60℃にした後、メチルアルモノキサン0.5ミリモル加え、さらに(i)で得られた(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロライドを0.5マイクロモル加え30分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、1−ブテン系重合体を36g得た。
得られた1−ブテン系重合体について、上記方法によりメソペンタッド分率(mmmm)、立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}、ラセミトリアッド分率(rr)、異常挿入量、R値、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、融点(Tm・Tm−D・Tm−P)、融解吸熱量(ΔH・ΔH−D・ΔH−P)、引張弾性率及び内部ヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0085】
実施例1
(i)触媒調製
参考例1と同様にして、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロライドを製造した。
(ii)重合
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、ヘプタン200ミリリットル、1−ブテン200ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモルを加え、さらに水素0.03MPa導入した。撹絆しながら温度を60℃にし、プロピレンを導入し、全圧0.2MPaで連続的に供給した。次に、メチルアルモノキサン0.5ミリモル加え、さらに、(i)で得られた(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロライドを0.5マイクロモル加え30分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、1−ブテン系共重合体を21g得た。
得られた1−ブテン系共重合体について、上記方法により、コモノマーの含量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、融点(Tm・Tm−D・Tm−P)、融解吸熱量(ΔH・ΔH−D・ΔH−P)、引張弾性率及び内部ヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0086】
実施例2
(i)触媒調製
参考例1と同様にして、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロライドを製造した。
(ii)重合
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、ヘプタン300ミリリットル、1−オクテン20ミリリットル、1−ブテン100ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモルを加え、さらに水素0.03MPa導入した。撹絆しながら温度を60℃にし、1−オクタンを導入し、全圧0.2MPaで連続的に供給した。次に、メチルアルモノキサン0.5ミリモル加え、さらに、(i)で得られた(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン) −ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロライドを0.5マイクロモル加え30分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、1−ブテン系共重合体を13g得た。
得られた1−ブテン系共重合体について、上記方法により、コモノマーの含量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、融点(Tm・Tm−D・Tm−P)、融解吸熱量(ΔH・ΔH−D・ΔH−P)、引張弾性率及び内部ヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の1−ブテン系共重合体及び該重合体からなる成形体は、べたつきが少なく、軟質性及び透明性に優れ、あるいは結晶変体による物性の経時変化がなく、成形品に収縮が生じないものであり、フィルム、シート、容器、自動車内装材、家電製品のハウジング材等として好適である。フィルムとしては、食品包装用フィルムや農業用フィルム、容器としては、透明ケース、透明ボックス、化粧箱等が挙げられる。また、軟質塩化ビニル樹脂代替樹脂として好適に使用できる。
また、本発明の1−ブテン系樹脂改質剤は、軟質性があり、べとつきが少なくポリオレフィン樹脂との相溶性に優れた成形体を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)との共重合体であって、下記の(1)〜(4)を満たす1−ブテン系共重合体。
(1)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜100℃の結晶性樹脂
(2)立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
(4)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000
【請求項2】
1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)との共重合体であって、下記の(1')〜(4')を満たす1−ブテン系共重合体。
(1')示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下220℃で3分間溶融した後、10℃/分で−40℃まで降温し、−40℃で3分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピークトップとして定義される融点(Tm)が、観測されないか又は0〜100℃の結晶性樹脂
(2')立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下
(3')ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
(4')GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000
【請求項3】
1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)との共重合体であって、下記の(1'')〜(4'')を満たす1−ブテン系共重合体。
(1'')示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下190℃で5分間溶融した後、5℃/分で−10℃まで降温し、−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−P)が、観測されないか又は0〜100℃の結晶性樹脂
(2'')立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下
(3'')ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
(4'')GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が100,000〜1,000,000
【請求項4】
1−ブテンに由来する構造単位が90モル%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の1−ブテン系共重合体。
【請求項5】
α−オレフィン連鎖より得られる下記ランダム性指数Rが1以下である請求項4に記載の1−ブテン系共重合体。
R=4[αα][BB]/[αB]2
([αα]はα−オレフィン連鎖分率、[BB]はブテン連鎖分率、[αB]はα−オレフィン−ブテン連鎖分率を表す。)
【請求項6】
1−ブテンに由来する構造単位が95モル%以上である請求項5に記載の1−ブテン系共重合体。
【請求項7】
下記の(5)及び(6)を満たす1−ブテン系共重合体。
(5)1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)との共重合体であって、1−ブテンに由来する構造単位が90モル%以上
(6)190℃にて5分間融解させ、氷水にて急冷固化した後、室温にて1時間放置した後に、X線回折により分析して得られたII型結晶分率(CII)が50%以下
【請求項8】
さらに、下記の(7)を満たす請求項7に記載の1−ブテン系共重合体。
(7)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000
【請求項9】
(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物、及び(B)(B−1)該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(B−2)アルミノキサンから選ばれる少なくとも一種類の成分を含有する重合用触媒の存在下、1−ブテンと炭素数3〜20のα−オレフィン(ただし、1−ブテン除く)を共重合させることにより得られる請求項1〜8のいずれかに記載の1−ブテン系共重合体。
【化1】

〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイドの金属元素を示し、E1 及びE2 はそれぞれ置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基,ホスフィド基,炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A1 及びA2 を介して架橋構造を形成しており、またそれらはたがいに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1 、E2 又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY、E1 、E2 又はXと架橋していてもよく、A1 及びA2 は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2 −、−Se−、−NR1 −、−PR1 −、−P(O)R1 −、−BR1 −又は−Al1 −を示し、R1 は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の1−ブテン系共重合体を成形してなる成形体。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の1−ブテン系共重合体からなる1−ブテン系樹脂改質剤。

【公開番号】特開2012−36411(P2012−36411A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257621(P2011−257621)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【分割の表示】特願2001−155643(P2001−155643)の分割
【原出願日】平成13年5月24日(2001.5.24)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】