説明

1チップ半導体記憶デバイス

【課題】NANDメモリーインターフェースを有する上位装置において、ECCなどNANDフラッシュメモリーに対応するための特有の負荷を必要としない1チップ半導体記憶デバイスを提供すること。
【解決手段】所定のオペレーティングシステム、ファイルシステム、メモリーインターフェース制御部、及びNANDメモリーインターフェースを具備するホストシステムで使用可能な半導体記憶デバイスであって、当該半導体記憶デバイスは、NAND型フラッシュメモリーからなり少なくとも所定容量の記憶領域を有する記憶部と、ECCを含み前記ホストシステムから発行されるコマンドを解読して前記記憶部を統括的に制御する制御部とから構成され、前記記憶部に記憶されたデータは消去不可に構成可能にされてなることを特徴とする1チップ半導体記憶デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NANDメモリーインターフェースを具備するホストシステムで使用される1チップ半導体記憶デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年フラッシュメモリーといわれる不揮発性メモリーが普及している。とりわけNAND型フラッシュメモリーは、書き込み速度が速く、近年益々大容量化が進んでいる。このNANDフラッシュメモリーをCPUで直接駆動するには、CPUを含むホスト(本願では上位装置という)側にNANDメモリーインターフェースを具備する必要がある。この場合上位装置でNANDフラッシュメモリーを直付けして駆動する場合には、上位装置側にECC(エラーチェックコード)などNANDフラッシュメモリーを駆動するための特別な構成を設ける必要があり、上位装置側の設計上の負担が大きくなるという問題がある。
【0003】
また、従来、再生専用の半導体記憶デバイスとしてマスクROMが知られている。このマスクROMは製造時にデータ(コンピュータープログラム、そのデータ、画像データ、音声データなどを含む。本願ではコンテンツという)が既に書き込まれているものであり、そのコンテンツはライトプロテクトされる半面、その後このメモリーに新たなデータを書き込むことはできない。
【0004】
またOTP(One
Time Programable ROM)と呼ばれている半導体記憶デバイスが存在する。OTPは、ユーザがその記憶容量が一杯になるまで追記的にデータを記憶させることができるものである。OTPは安価ではあるが、マスクROM同様に書き込まれたコンテンツはライトプロテクトされる反面、書き込み済みデータを消去してデータを書き直すことはできない。
【0005】
以上のように、マスクROM、OTPともに、一旦書き込んだデータを誤って消去したり、故意に改竄できないようになっている点でコンテンツデータを有効に保護することができるものの、EEPROMのようにデータを消去してさらにあらたなデータを書き込むことはできない点で使用目的が限定される。また、数ギガバイト程度の大容量のメモリーを構成しにくいといった問題もある。例えば近年メモリーの大容量化が進んでいるが、マスクROMや、OTPの場合、せいぜい百メガバイト程度であり、数ギガバイト(GB)の記憶容量のものは未だ存在しない。
【0006】
また、CDやDVDの場合は、再生専用型、ライトワンス型、書き換え型など異なる特性を持ったものが提供されている。再生専用型(CD−ROM、DVD−ROM)は、販売時点で既に所定のコンテンツが書き込まれているもので、コンテンツの保護のため、ユーザが斯かるデータを消去したり、新たなデータを書き込んだりすることはできない。ライトワンス型(CD−R、DVD−R、RはRecordableの略)は、物理ブロックのデータの書き換えを行うことなく、メモリー容量が一杯になるまでデータの追記を行うことができるものである。メモリーに一旦データが書き込まれると、コンテンツ保護のためライトプロテクトが架かり、既に書き込まれているデータを消去して新たなデータを書き込むことはできない。よって、データの記録・保存用のアーカイブメモリーとして使用されている。一方、書き替え型(CD−RW、DVD−RW、RWはReWritableの略)は、ユーザが所定回数までは何回でも記録したデータの書き換えを行えるものである。フラッシュメモリーの場合は、簡易な方法でこれら多様な種類のデバイスに対応できるシステムは提案されていない。
【特許文献1】特開2004-005699
【特許文献2】特開2004-062913
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、斯かる従来の半導体記憶デバイスの問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、NANDメモリーインターフェースを有する上位装置にECCなどNANDフラッシュメモリー特有の負荷を必要としない1チップ半導体記憶デバイスを提供することにある。
【0008】
第2の目的は、OTP同様に、ユーザが一旦データを記憶させた後は、自動的にライトプロテクトが架かる、安全性の高い1チップ半導体記憶デバイスを提供することにある。
【0009】
第3の目的は、比較的簡易な方法で、再生専用型、ライトプロテクト型、書き換え型など異なる特性を持った1チップ半導体記憶デバイスを提供することにある。
【0010】
第4の目的は、比較的安価で大容量のニーズに対応できるライトプロテクト型の1チップ半導体記憶デバイスを提供することにある。
【0011】
第5の目的は、ライトプロテクト型であって、メモリー容量が一杯になるまで書き込まれても、初期化により予め設定された回数だけデータの再書き込みができる、より利便性の高い1チップ半導体記憶デバイス(ライトプロテクト機能付きの再利用型)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(解決手段1)
前記目的を達成するために、本発明では、所定のオペレーティングシステム、ファイルシステム、メモリーインターフェース制御部、及びNANDメモリーインターフェースを具備するホストシステムで使用可能な半導体記憶デバイスであって、当該半導体記憶デバイスは、NAND型フラッシュメモリーからなる少なくとも所定容量の記憶領域を有する記憶部と、ECCを含み前記ホストシステムから発行されるコマンドを解読して前記記憶部を統括的に制御する制御部とから構成され、前記記憶部に記憶されたデータは消去不可に構成されてなる1チップ半導体記憶デバイスを提供する。
【0013】
(作用)
従来NANDメモリーインターフェースを具備する上位装置側でNANDフラッシュメモリーを制御する場合、NANDフラッシュを直付けする場合は上位装置側にECCなどNAND特有の回路を設ける必要があった。上記構成によれば、ECC回路を含むNAND特有の制御部とNANDフラッシュメモリーを一体として一つのICで構成したことにより、上位装置側に斯かるNAND特有の回路を設ける必要がなく、上位装置側の負荷(構成・処理)を軽減することができる。また、記憶部に記憶されたコンテンツは消去不能にプロテクトが自動的に架かるため、消去・改竄されたくないコンテンツの有効な保護が図られる。消去不可の仕組みとしては、前記制御部若しくは記憶部の管理領域に、消去不可の情報を記憶し、制御部が上位装置から発行される消去コマンド(初期化コマンドを含む)を拒否するようにするようにすればよい。
【0014】
(解決手段2)
所定のオペレーティングシステム、ファイルシステム、メモリーインターフェース制御部、及びNANDメモリーインターフェースを具備するホストシステムで使用可能な半導体記憶デバイスであって、当該半導体記憶デバイスは、NAND型フラッシュメモリーからなる少なくとも所定容量の記憶領域を有する記憶部と、ECCを含み前記ホストシステムから発行されるコマンドを解読して前記記憶部を統括的に制御する制御部とから構成され、再生専用型(Read Only)、ライトプロテクト型など少なくとも当該デバイスの種別を表す情報を当該半導体記憶デバイスの特性情報の一つとして前記制御部若しくは記憶部の管理領域に記憶してなり、前記制御部は、上位装置から発行される書き込みコマンドに対し、前記記憶されているデバイス特性情報を解釈し、これに基づき前記コマンドの実行の是非を判断する1チップ半導体記憶デバイスを提供する。
【0015】
(作用)
従来NANDメモリーインターフェースを具備する上位装置側でNANDフラッシュメモリーを制御する場合、NANDフラッシュを直付けする場合は上位装置側にECCなどNAND特有の回路を設ける必要があった。上記構成によれば、ECC回路などNAND特有の構成をNAND型フラッシュメモリーと一体の制御部に設け、これら(記憶部と制御部)を一つのICで構成したことにより、上位装置側に斯かるNAND特有の回路を設ける必要がなく、上位装置側の構成・処理を簡易にすることができる。また、前記制御部若しくは記憶部に、当該デバイスの特性情報を記憶しており、さらに制御部は上位装置から発行される書き込みコマンドに対し、前記記憶されているデバイス特性情報を解釈して、これを実行すべきか否か判断可能に構成されているので、従来にないバラエティーに富んだ1チップ半導体記憶デバイスを提供できる。
【0016】
(解決手段3)
上記解決手段において、前記制御部若しくは記憶部の管理領域に、当該デバイスの種別を表す情報として再生専用型を表すデバイス特性情報を記憶しておき、前記制御部は、これを元に、仮に上位装置から書込み命令があった場合でも、一切の書き込み命令を拒否するように構成するとよい。
【0017】
(作用)
本発明では、上述の通り、デバイス特性情報を前記制御部若しくは記憶部の管理領域に記憶している。デバイスが、上位装置からの当該デバイス特性情報読出しコマンドに呼応するように構成すれば、上位装置はその読み出したデバイス特性情報が「再生専用型」であった場合、書き込みコマンド自体を受け付けないように構成することができる。仮に何らかの理由により書き込みコマンドが上位装置側から発行されても、デバイスの制御部自体がこれを受け付けない。記憶データについて読出しコマンドのみが実行され、ユーザは記憶されているコンテンツデータを誤って消去したりすることがなく、あたかも、マスクROMやCD−ROM、DVD−ROMのような再生専用型の半導体記憶デバイスを提供できる。尚データの消去は書き込み命令の一形態である(消去はオール1の書き込み命令)。
【0018】
(解決手段4)
また、前記制御部若しくは記憶部の管理領域に、当該デバイスの種別を表す情報としてライトプロテクト型を表すデバイス特性情報を記憶しておき、前記制御部は、これを元に、上位装置からの書き込み命令に対し、当該デバイスの記憶容量が一杯になるまでのコンテンツの書き込みを許容するように構成するとよい。
【0019】
(作用)
前記構成によれば、制御部はライトプロテクト型という特性情報を解釈し、上位装置からのコンテンツデータの書き込み指令をデバイスの記憶容量が一杯になるまで実行する。それ以降は、上位装置から書き込み命令があっても制御部自体がこれを実行しない。また、ライトプロテクト型であるから、上位装置は、データの消去命令自体を受け付ないが、仮に何らかの理由により上位装置から消去命令があっても制御部自体がこれを実行しない。よってユーザが書き込んだデータについてはプロテクトが自動的に掛かり、あたかも、OTPやCD−R、DVD−Rのようなユーザが書き込んだコンテンツを有効に保護することができる1チップ半導体記憶デバイスを提供することができる。
【0020】
(解決手段5)
また上述のライトプロテクト型において、前記ライトプロテクト型を表すデバイス特性情報の他に、さらに、初期化可能回数を記憶しておき、前記制御部はこれを元に、上位装置からの初期化コマンドを前記設定回数まで許容するように構成するとよい。
【0021】
(作用)
ライトプロテクト型は、記録・保存用のアーカイブメモリーであるから、記憶済みのデータを消去することとなる初期化コマンドは本来受け付けない。しかし、本解決手段は、ライトプロテクト型の場合でも、制御部が敢て所定回数の初期化コマンドを許容するよう特別な形態に構成した。これにより、初期化により、何回かの記憶データの総書き換えが可能な利便性の高い半導体記憶デバイスを提供できる。尚この場合も、制御部は、記憶容量が一杯になった後は、初期化を実行しない限り、書き込みコマンドを実行しない(ライトプロテクトが自動的に架かる)。よって、ユーザが誤って記憶済みのデータを消去したり改竄してしまう心配がない。
【0022】
(解決手段6)
また、ライトプロテクト型の場合、記憶容量を1ギガバイト以上で構成するとよい。
【0023】
(作用)
上記構成にすれば、制御部のファームウエアに構成的特長を持たせるだけで、従来のOTPでは実現が困難であった大容量のライトプロテクト型の半導体記憶デバイスを、極めて安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
はじめに、本発明の1チップ半導体記憶デバイスの構造例について説明する。
1チップ半導体記憶デバイスは、メモリー(特許請求範囲の記憶部に相当)と、上位装置側からの指令を受けて前記メモリーを統括的に制御するコントローラ(特許請求範囲の制御部に相当)を基本構成としている。
【0025】
図1は半導体記憶デバイスの一構造例を示すもので、図1(A)に示すように、メモリー11とコントローラ12の各集積回路(ウエハー)が配線基板15上に並列に接続されたものが、同図(B)に示すような、その周辺に複数の端子を有するLSIパッケージに内蔵されて1チップ半導体メデバイス10として構成されている(平面図である)。メモリー11は、NAND型フラッシュメモリーで構成される。フラッシュメモリーはEEPROMの一種である。なお、ウエハーを並列に配置接続するのではなく同一ウエハー上に構成してもよい。また互いに上下方向に積層して接続しても良い。その場合はメモリー容量比を大きくすることができる。
【0026】
図2で本1チップ半導体記憶デバイスの構成を簡単に説明する。
このコントローラは、不図示のCPUの他、NANDフラッシュメモリー特有のBAD BLOCKに対応するためのECC121や上位装置2とメモリー11間で転送されるデータの緩衝を行うバッファメモリー122を基本構成として具備している。さらに、上位装置と通信を行うNANDメモリーインターフェース部123(上位装置側)、上位装置からのコマンドを受けNAND型フラッシュメモリーと通信を行うためのNANDメモリーインターフェース部124(メモリー側)を具備している。前記CPUは、NANDメモリーインターフェース123、124、ECC121、メモリーを統括的に制御し、上位装置2からのコマンドを解釈し、それを実行する。
【0027】
次に図3を用いて、本1チップ半導体記憶デバイスを駆動する上位装置について簡単に説明する。この1チップ半導体デバイス10は、NANDメモリーインターフェース24を有する上位装置2で使用される。上位装置2は、その他、所定のオペレーティングシステム(OS)21、所定のファイルシステム22、さらにメモリーインターフェース制御部23を有している。詳細な機能については後述する。
【0028】
次に本発明の1チップ半導体記憶デバイスの特徴について詳細に説明する。
(本発明の半導体記憶デバイスの特徴)
本発明の1チップ半導体記憶デバイスの特徴は、再生専用型、ライトプロテクト型、ライトプロテクト機能付き再利用型など、従来にはない各種デバイスとして設定が可能なことにある。
【0029】
フラッシュメモリーを用いた従来の半導体記憶デバイスは、書き換え型のみ存在し、マスクROMのような再生専用型や、OTPのようなライトプロテクト型、さらにライトプロテクト機能付きの再利用型は存在しない。以下、本発明の1チップ半導体デバイスのデバイス種別について説明する。
【0030】
(再生専用型)
再生専用型とは、販売時点で既にコンテンツが記録済みであり、この記憶済みのデータの読み出しのみ可能で、データの書き込み、初期化(フォーマット)などコンテンツの改変が一切禁止されるデバイスである。上位装置からデバイスへのデータ書き込みコマンドを受け取った時は、制御部は、後述する記憶部の管理領域に記憶されている「再生専用型」を現すデバイス特性情報を解釈し、コマンドステータスとしてエラーを返し、本再生専用型デバイスでは当該コマンドが実行できないことを上位装置に通知する。上位装置からデータの読み出しコマンドを受け取った時は、コマンドにより指定された論理ブロックアドレスのデータを、転送長で示される分読み出して上位装置へ転送する。
【0031】
(ライトプロテクト型)
本願においてライトプロテクト型とは、ユーザが書き込んだコンテンツに対してライトプロテクトが架かるように設定可能なものである。この機能は、制御部若しくは記憶部の管理領域に書き込まれている「ライトプロテクト型」というデバイス特性情報を制御部が解釈し、書き込み済みのコンテンツを改変するようなコマンドに対してはエラーを返すことにより実行される。書き込んだデータの読み出しは随時可能である。アーカイブ用、使い捨て用、コンテンツの改変を許容できない用途などに適している。
【0032】
記憶部の物理ブロックに対するデータの重ね書き換えを不要とするので、書き込み回数が極めて制限されるような安価なメモリーでも対応可能であり、デバイス自体を安価に提供できる利点がある。記憶容量(デジタルカメラの撮影可能枚数)や書き込み速度の異なる複数のメモリーを提供すれば、ユーザの選択度が一層広がる。
【0033】
(ライトプロテクト機能付き再利用型)
本発明で、ライトプロテクト機能付き再利用型とは、ライトプロテクト型の発展型で、所定回数初期化を可能にしたものである。即ち、残りフォーマット回数が0でない限り、ユーザデータ領域を初期化することにより、再度、ブランクに書き込みが可能なデバイスである。初期化可能回数は、フラッシュメモリーの物理ブロックの予定された書き換え回数より小さく設定するのが好ましい。書き込み可能回数を、当該デバイスの予定された書き換え回数より小さく設定することにより、データの書き込み、書き込まれたデータの保全を図るためである。
【0034】
ライトプロテクト機能付き再利用型の場合も、ライトプロテクト型同様、一旦書き込んだコンテンツに対しては、ライトプロテクトが自動的に架かるように設定できる。コンテンツの書き込みによりメモリー容量が一杯になっても、保存したコンテンツが不要になった場合、初期化により、記録済みの全データを消去した上で、再度新たなデータを記録することができる。このような処理を、デバイスに設定された初期化可能回数だけ実行できる。これにより、より利便性の高い1チップ半導体記憶デバイスを提供できる。
【0035】
(書き換え型)
書き換え型とは、ユーザデータ領域へ制限なくデータの書き込み、削除が可能なデバイスである。書き換え型デバイスが上位装置からデータ書き込みコマンドを受け取った時は、コマンドで指定された転送長分のデータを上位装置から受け取り、当該コマンドにより指定された論理ブロックアドレスへデータが書き込まれる。またメモリーからランダムにデータ読み出し可能なデバイスである。フラッシュメモリーを用いた場合、ユーザデータ領域の物理ブロックにおいて、所定範囲内(例えば1万回)でデータの書き換えが可能である。
【0036】
(特性情報)
本発明の半導体記憶デバイスの他の特徴は、デバイス毎にその固有の性質をデバイス特性情報として有していることにある。上述したデバイス種別と共に、特性情報として下記表1に示したものを使用できる。この特性情報は、デバイスの制御部、若しくは記憶部の管理領域に書き込まれる。この情報は、上位装置に接続した際や、電源が投入された際に読み出すことができる。
【0037】
【表1】

【0038】
以下、上記表1の各特性情報について説明する。
【0039】
「デバイス種別」は、デバイスに再生専用型、ライトプロテクト型、ライトプロテクト機能付き再利用型、書き換え型の4つのタイプが存在するので、デバイスがこのうちのいずれのタイプであるを、例えば工場出荷時に書き込むことができる。
【0040】
「デバイス種別の変更可否」は、デバイス種別がコマンドにより変更可能かどうかを決定するフラグ情報である。例えば、デバイスをライトプロテクト型として固定して提供したい場合は、「デバイス種別」をライトプロテクト型とするとともに「デバイス種別変更可否」を”否”に設定する。また、例えば、使用途中にユーザがライトプロテクト型を再利用型に変更したい場合は、適合するパスワードを入力し、「デバイス種別変更可否」を“可”に変更した上で、所定のコマンドで「デバイス種別」を再利用型に変更すればよい。
【0041】
「ライトプロテクト」は、当該デバイスに対する書き込みを禁止するか否かを決定するための情報である。「ライトプロテクト」が“有効”の時は、上位装置から書き込みコマンドが発行された場合、エラーを返すことで、記憶済みのコンテンツの保護が図られる。デバイス種別が、再生専用型の場合は定常的に“有効”に設定する。ライトプロテクト型、ライトプロテクト機能付き再利用型の場合は、コンテンツを書き込んでライトプロテクトを架けたいときに“有効”に設定する。コンテンツを一度で書き込むことが予定されている場合は、書き込み動作終了時点で、ヒューズ機能の設定、即ち、自動的にライトプロテクト“有効”に設定されるようにしてもよい。
【0042】
「デバイスフォーマット状態」は、デバイスが物理フォーマット済みであるか、即ち、デバイスに対して読み出し、書き込みなどのアクセスが可能な状態であるかを表すフラグ情報である。
【0043】
「残りデバイスフォーマット回数」は、フォーマットコマンドにより、デバイスの初期化が可能な回数(N)を示す。N=0の場合はフォーマット不可能なことを示す。例えば、デバイス種別が、再生専用型、ライトプロテクト型の場合は、残りデバイスフォーマット回数を「0」に初期設定(自動設定)する。デバイス種別がライトプロテクト付き再利用型の場合は、「残りデバイスフォーマット回数」を適宜の値、例えば「2」と初期設定する。この場合、記憶容量が一杯になるまでデータの書き込みができ、容量が一杯になると、ライトプロテクトが自動的に架かるが、デバイスの初期化を行って再度記憶容量が一杯になるまでデータの書き込みを2回まで実行できることとなる。フォーマットするごとにNは「1」だけ自動的に減少し、「0」になった場合は以降のフォーマットは実行できない。書き換え型の場合は、フォーマット回数に制限のないデバイスであるから、残りデバイスフォーマット回数は使用しない。
【0044】
(上位装置での使用例)
以下、本発明の半導体記憶デバイスが上位装置で使用される例について、図3を用いて説明する。
【0045】
上位装置2には、所定のオペレーティングシステム(OS)21、FATファイルシステム22、メモリーインターフェース制御部23、及びNANDメモリーインターフェース24が具備されている。本例の場合は、上位装置2の具備するFATファイルシステム52がメモリーインターフェース制御部23にコマンドを発行し、これを受けてメモリーインターフェース制御部23はデバイスの制御部にコマンドを発行してデバイスのファイルを管理するものである。上位装置と本1チップ半導体デバイスとの間で、NANDメモリーインターフェース24で電気的及び機械的な接続がなされる。
【0046】
上位装置2としては、例えば、各種産業機械、その他各種のものが考えられる。上位装置としては、コンテンツを専ら読み出してこれを使用するものと、専らコンテンツの書き込みを行うものとが別個に存在しても構わない。
【0047】
上位装置2にデバイスが装着されたら、メモリーインターフェース制御部23はデバイス情報取得コマンドを発行して、インストールされているデバイス種別(再生専用型、ライトプロテクト型、ライトプロテクト機能付き再利用型、書き換え型の別)やデバイスの総論理ブロック数、論理ブロックサイズを取得する。
【0048】
その後、OS51がファイルシステム22を起動して、デバイスにボリュームのマウントを行う。デバイスに予定された以外のファイルシステムが書かれていた場合はエラーを通知する。未フォーマットデバイスの場合は、デバイスの論理フォーマット処理が必要であることをユーザへ通知する。
【0049】
ボリュームがマウントされていることが確認された場合、その後、ユーザの指示に従って、OSやアプリケーションがファイルの生成、削除、ファイルのリード、ライト、ディレクトリエントリリードなどの要求を、ファイルシステム22に対してコマンドとして要求する。またファイルシステム22は、OS21からのコマンドを受け付け、コマンド単位で論理データから物理デバイスデータへの変換、または物理デバイスデータから論理データへの変換を実行する。物理デバイスデータは、ファイルシステム22からメモリーインターフェース制御部23に対して読出し又は書き込み要求するデータに該当する。
【0050】
この物理デバイスデータは、デバイスの論理ブロックアドレスとそれに対応した書き込まれるべきデータもしくは読み出されるべきデバイスの論理ブロックアドレスに相当する。デバイスの制御部は、この論理ブロックアドレスを、当該制御部が有する”論理ブロックアドレス及び物理ブロックアドレス管理テーブル”を参照して物理ブロックアドレスに変換し、しかるべき記憶領域にデータを書き込んだり、しかるべき記憶領域からデータを読み出す。
【0051】
メモリーインターフェース制御部23は、ファイルシステム22からの書き込み、読出し要求をメモリーコマンドに変換し、1チップ半導体デバイス1に対して読出しコマンド、または書き込みコマンドを発行する。
【0052】
(制御部の処理)
以下、再生専用型、ライトプロテクト型、ライトプロテクト機能付き再利用型、書き換え型の各半導体記憶デバイスが、上位装置から読出しコマンド、書き込みコマンド、フォーマットコマンドが発行された時にデバイスの制御部が実行するそれぞれの処理について、図面を用いて説明する。
【0053】
1. 読出しコマンド受け取った時
デバイスが読み出しコマンドを受け取った時の制御部の処理について、図4を用いて説明する。
【0054】
まず、デバイスがフォーマット済であるかを確認し、未フォーマットであれば(ST101でNOの場合)エラーを返す。ST101でYESであれば、読み出しを実行する(ST102)。
【0055】
ここで、各デバイス種別とも、読出しコマンドを受け取ったら、指定された論理ブロックから指定された論理ブロック数のデータを、記憶部からNANDメモリーインターフェースを介して上位装置に転送する。読み出しが正常に終了しなかった場合(ST103でNO)はエラー終了し、そうでない場合は正常終了する(ST104)。
【0056】
2. 書き込みコマンドを受け取ったとき
デバイスが書き込みコマンドを受け取った時の制御部の処理について、図5を用いて説明する。
【0057】
まず、デバイスがフォーマット済であるかを確認し(ST201)、未フォーマットであれば(NOの場合)エラー終了する。ST201でYESであれば、ライトプロテクトが”有効”に設定されているかを判断し(ST202)、YESであればエラー終了する。ライトプロテクトが”無効”に設定されている場合(ST202でNO)は、デバイスに空容量があるか否かを判断し(ST203)、書き込むだけの容量がない場合は、エラーを通知する。書き込むだけの空容量があれば、書き込みを実行する(ST204)。そして書き込みが正常に行われたか否かを判断し(ST205)、YESであれば、正常終了する(ST206)。
【0058】
3.フォーマットコマンドを受け取った時
デバイスがフォーマットコマンドを受け取った時の制御部の処理について、図6を用いて説明する。
【0059】
デバイスにライトプロテクトが”有効”に設定されているか否かを判断し(ST301)、YESであればエラー終了する。NOであれば、次にデバイス種別が、再生専用型若しくはライトプロテクト型であるか否かを判断し(ST302)、YESであればエラー終了する。NOであれば(ライトプロテクト機能付き再利用型の場合)、残りフォーマット回数がN=0であるか否かを判断し(ST303)、YESであればエラー終了する。NOであれば、フォーマット状態フラグを”未フォーマット”に設定する(ST304:既に設定されている場合はそのまま)。これを終えるとフォーマットを実行する(ST305)。この際、残りフォーマット回数を設定値から1だけ減らして再設定する(ST306)。次にフォーマットが正常に行われたか否かを判断し(ST307)、NOであればエラー終了する。YESであれば、フォーマット状態フラグを”フォーマット済”に設定し(ST308)、これを終えてフォーマットコマンドが完了する。
【0060】
なお、ST305でフォーマットを実行する前段階でフォーマット状態フラグを”未フォーマット”に設定する(ST304)のは、ST305において、フォーマット中に何等かの理由でフォーマット動作が正常に終了せずエラー終了した場合(ST307でNOの場合)、再度ファーマットを可能にするためである。
【0061】
以上、ライトプロテクト機能付き再利用型、書き込み型のいずれもフォーマットコマンドを受け取った場合であって、フォーマット可と設定されていた場合はデバイスを初期化(記憶されている全データを消去)する。フォーマットコマンドを実行した場合、再度ブランクデバイスとして全論理ブロックアドレスへ書き込みができる状態になる。残りフォーマット回数が「0」になるとフォーマット不可能となり、全記憶領域にデータが書き込まれた時点及びファイナライズされた時点で以降の書き込みが不可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】(A)1チップ半導体記憶デバイスの一構造例を示す図である。(B)1チップ半導体記憶デバイスの概観図である。
【図2】1チップ半導体記憶デバイスのブロック図である。
【図3】1チップ半導体記憶デバイスの上位装置のブロック図である。
【図4】上位装置から読出しコマンドが発行された時にデバイスの制御部が実行する処理の流れである。
【図5】上位装置から書き込みコマンドが発行された時にデバイスの制御部が実行する処理の流れである。
【図6】上位装置からフォーマットコマンドが発行された時にデバイスの制御部が実行する処理の流れである。
【符号の説明】
【0063】
10:1チップ半導体記憶デバイス、11:メモリー、12:コントローラ、15:基板、121:ECC、122:バッファメモリー、123:NANDメモリーインターフェース(上位装置側)、124:NANDメモリーインターフェース(メモリー側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のオペレーティングシステム、ファイルシステム、メモリーインターフェース制御部、及びNANDメモリーインターフェースを具備するホストシステムで使用可能な半導体記憶デバイスであって、当該半導体記憶デバイスは、NAND型フラッシュメモリーからなる少なくとも所定容量の記憶領域を有する記憶部と、ECCを含み前記ホストシステムから発行されるコマンドを解読して前記記憶部を統括的に制御する制御部とから構成され、前記記憶部に記憶されたデータは消去不可に構成されてなることを特徴とする1チップ半導体記憶デバイス。
【請求項2】
所定のオペレーティングシステム、ファイルシステム、メモリーインターフェース制御部、及びNANDメモリーインターフェースを具備するホストシステムで使用可能な半導体記憶デバイスであって、当該半導体記憶デバイスは、NAND型フラッシュメモリーからなる少なくとも所定容量の記憶領域を有する記憶部と、ECCを含み前記ホストシステムから発行されるコマンドを解読して前記記憶部を統括的に制御する制御部とから構成され、再生専用型(Read Only)、ライトプロテクト型など少なくとも当該デバイスの種別を表す情報を当該半導体記憶デバイスの特性情報の一つとして前記制御部若しくは記憶部の管理領域に記憶してなり、前記制御部は、上位装置から発行される書き込みコマンドに対し、前記記憶されているデバイス特性情報を解釈し、これに基づき前記コマンドの実行の是非を判断可能に構成されてなることを特徴とする1チップ半導体記憶デバイス。
【請求項3】
前記制御部若しくは記憶部の管理領域に、当該デバイスの種別を表す情報として再生専用型を表すデバイス特性情報を記憶しておき、前記制御部は、これを元に、仮に上位装置から書込み命令があった場合でも、一切の書き込み命令を拒否するように構成されてなることを特徴とする請求項2記載の再生専用型1チップ半導体記憶デバイス。
【請求項4】
前記制御部若しくは記憶部の管理領域に、当該デバイスの種別を表す情報としてライトプロテクト型を表すデバイス特性情報を記憶しておき、前記制御部は、これを元に、記憶容量一杯までのユーザによるデータ書き込み後は、ライトプロテクトが自動的に実行されるように構成されてなることを特徴とする請求項2に記載のライトプロテクト型1チップ半導体記憶デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の1チップ半導体記憶デバイスにおいて、前記ライトプロテクト型を表すデバイス特性情報の他に、さらに、初期化可能回数を記憶しておき、前記制御部はこれを元に、上位装置からの初期化コマンドを前記設定回数まで許容するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のライトプロテクト機能付き再利用型1チップ半導体記憶デバイス。
【請求項6】
記憶容量が1ギガバイト以上で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の1チップ半導体記憶デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−309687(P2006−309687A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216569(P2005−216569)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【分割の表示】特願2005−128801(P2005−128801)の分割
【原出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(594096966)株式会社ハギワラシスコム (32)
【Fターム(参考)】