説明

2−オキソ−4−メチルチオブタン酸、その塩及び誘導体の合成方法及び利用方法

【解決課題】
本発明は2−オキソ−4−メチルチオブタン酸(I)、その塩及び誘導体の調整方法に関する。
【化1】


(式中、RはCOOH、COOR’、CONH、CONHR’、CONR’R’’から選択される基を表し、またR’及びR’’は、1個から12個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルキルラジカル及び3個から12個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカルのグループから相互に独立に選択される。)
【解決手段】
本発明に係る方法によれば、ブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)が触媒の作用により選択的に酸化されて2−オキソブタ−3−エン酸(III)を生じ、メチルメルカプタンが選択的に2−オキソブター3−エン酸(III)と縮合される。2−オキソ−4−メチルチオブタン酸(I)とその塩又は誘導体は、食品又は食餌サプリメントとして、特に動物飼養において使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2−オキソ−4−メチルチオブタン酸(以下KMBと呼ぶ)、その塩及び誘導体、及び、特に動物の飼養におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
メチオニンは必須の含硫アミノ酸の一つであり、多数の代謝過程に関連している。その主なものは次の通りである。
タンパク質合成: メチオニンは他のアミノ酸と同様にタンパク質の構成要素であるばかりでなく、タンパク質合成過程を開始させるアミノ酸でもあるため、その必要性は一層高くなっている。
脂質代謝: メチオニンは血清リポタンパク質の成分の合成に関与し、従って血液中の脂質の運搬、それらの使用及び組織での付着に関与している。
【0003】
家禽類においては、メチオニンは必須のアミノ酸であり、飼料に添加する必要がある。
【0004】
乳牛においては、メチオニンはミルク生産に関する制限アミノ酸である。また、メチオニンは牛の繁殖性及び肝機能を向上させる作用がある。
【0005】
従って十分なミルク生産、より一般には牛の一般的状態の改善は、適切なメチオニン食が条件となる。ミルクの生産は食餌中のメチオニン含有量を増やすことによりさらに増加する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、遊離状態のメチオニンは牛の第一胃内の細菌叢によって急速に分解され、メチオニンのごくわずかの部分しか血液循環に加わらない。
【0007】
この不利益を克服するため、メチオニンを化学的に又は皮膜により保護された保護メチオニンで置き換えたり、血中におけるメチオニンの生体内可用性を高める修飾メチオニンで置き換える解決手段が提案されてきた。特に、出願人が製造販売している保護メチオニンSmartamine(登録商標)や、2種のメチオニン類似体、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸(HMB)及びHMBのイソプロピルエステルは、第一胃における分解からあまり影響を受けないことが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、ここに2-オキソー4−メチルチオブタン酸(KMB)が、メチオニンの生体内可用性を高めることにより、メチオニンを代替しうる好適な類似体を構成することを発見した。この類似体は、工業的規模で実施可能な単純な合成経路により生産することができる。
【0009】
K. Mosbach et al., Enzyme and Microbial Technology, (1982) 4, No.6, 409-413, 及び K.J.Clemetson et al., Toxicon, (2002) 40, 659-665 によれば、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸は、酵素的合成経路により実験室規模で調製される。しかしながらこの合成は、発酵過程に固有の欠点、例えば実行に必要なインフラの複雑性、微生物汚染のリスク、反応時間の長さ、選択される微生物のエナンチオ選択性に起因する収量ロス等を有するため,前記の酸の工業生産には適用できない。(H. Simon et al., Tetrahedron, (1990) 47, No.43, 9019-9034)
【0010】
H.Rapoport, J.Label. Compds. Radiopharm. (1994) Vol.36, No.5, p.431-437 は、塩化エチルオキサリルから6個の工程により行う2−オキソ−4−メチルチオブタン酸の合成を記述している。この合成においては、エチル4−クロロ−3−オキソ−3−ブテン酸の水素化の前又は後にメチルメルカプタンが添加される。
【0011】
著者等は、2個の工程からなり、反応速度の限定に加えて反応選択性の向上をも可能としうる特定条件下における上記の酸の調整方法を開発した。
【0012】
本発明の第一の対象物は、次の化学式(I)で表される2−オキソ−4−メチルチオブタン酸の調整方法であって、以下の工程を含むものである。(図中、Rはカルボキシル基及びその塩を表す。)
【化1】

【0013】
ブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)が、次の反応スキーム(i)により触媒的にまた選択的に酸化されて2−オキソブタ−3−エン酸(III)となる。
【化2】

【0014】
またメチルメルカプタンが、次の反応スキーム(ii)により選択的に2−オキソブタ−3−エン酸と縮合される。
【化3】

【0015】
この過程はまた、次の化学式(I)で表される2−オキソ−4−メチルチオブタン酸の誘導体、及びこれらの誘導体の塩の調製を可能とする。
【化1】

(RはCOOR’、CONH、CONHR’、CONR’R’’から選択される基を表し、またR’及びR’’は直鎖状アルキルラジカル例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル及びn−ペンチルラジカル、分枝状アルキルラジカル例えばイソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル及びイソヘキシルラジカル(これらのアルキルラジカルは1個から12個の炭素原子を有する)及びシクロアルキルラジカル(3個から12個の炭素原子を有する)のグループから、相互に独立に選択されるものである。)上記の過程によれば、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸(I)の調製はエステル化又はアミド化工程により補完されるが、この工程は当業者が一般的知識に基づいて行うことができる。
【0016】
本発明において「2−オキソ−4−メチルチオブタン酸の塩及びその誘導体の塩」の語は、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、マンガン又は亜鉛等の塩を意味するものと理解される。
【0017】
本発明の方法の他の好適な形式及び実施形態は下記に示される。本発明の文脈において、発明の特徴は単独で又は組合せにおいて理解することができる。
【0018】
ブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)の触媒的酸化工程により2−オキソブタ−3−エン酸(III)を生じるためには、触媒は次の特徴を有することが好ましい。
【0019】
前記触媒は、パラジウム、プラチナ、ルテニウム、イリジウム、ロジウム及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の貴金属を含む。この貴金属系触媒はビスマス、鉛、アンチモン、スズ、ニオブ、テルル、インジウム、ガリウム、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、金、銀、タングステン、モリブデン、レニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の助触媒を含む。
【0020】
前記貴金属の含有量は、触媒担体に対して0.1ないし10重量%であり、好ましくは0.5ないし5重量%である。
【0021】
前記触媒はまた、アルミナ、シリカ、活性炭、グラファイト、酸化チタン、ジルコニア、炭化ケイ素、ジルコニウム系及びセリウム系混合酸化物、又はアセチレンブラックから選択される不活性担体を含む。
【0022】
前記助触媒の含有量は、貴金属の重量に対して0.005ないし500重量%、好ましくは0.005ないし100重量%であり、及び/又は触媒の重量に対して100重量%に達することができる。貴金属系触媒上への助触媒の沈着は、この助触媒を触媒担体上に含浸させることにより有利に実行される。
【0023】
好適な触媒は、パラジウム、プラチナ及びそれらの混合物から選択された貴金属と、ビスマス、鉛及びそれらの混合物から選択された助触媒と、活性炭及びグラファイトから選択された担体とを含む。
【0024】
酸化反応の条件は次のものが有利である:反応は、アルカリ性又は中性反応場において、pHを4ないし11、好適には5.5ないし7.5の間に維持して行う。そのために水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸亜鉛、炭酸マンガン及びそれらの混合物が添加される。反応は、10ないし95℃、好適には20ないし95℃、さらに好適には25ないし70℃の温度で行われる。反応の継続時間は一般的に20分ないし15時間である。
【0025】
酸化工程は、酸素を含む混合気体、例えば空気を流すことにより開始させることができる。
【0026】
メチルメルカプタンと2−オキソブタ−3−エン酸との縮合反応の条件は次のものが有利である:メチルメルカプタンは、気体又は液体の形で使用する。反応は塩基触媒の存在下で実行される。触媒は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン等の脂肪族アミン、アニリン又はピリジン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルジフェニルアミン、N−エチル−3、3’−ジフェニルジプロピルアミン等の芳香族アミン、又はN−メチルモルホリン等のN−アルキルモルホリン、又はtritonBから選択される。これらの有機アミンは、代替的に又は有利に、有機酸又は無機酸と結合される。有機酸はギ酸、酢酸、プロパン酸及びブタン酸から好適に選択され、無機酸はリン酸及び硫酸から有利に選択される。
【0027】
本発明の別の対象物は、2−オキソブタ−3−エン酸(III)及びその塩を、特に2−オキソ−4−メチルチオブタン酸の合成における中間化合物として調整する方法であって、上記条件のいずれか(単独又は組合せ)の下で、反応スキーム(i)に従って、ブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)を触媒的及び選択的に酸化するものである。
【0028】
上で述べたように、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸及びその塩は、牛又は家禽類において高い生体内可用性を有するメチオニン類似体を構成する。従って本発明のさらに別の対象物は、次の化学式(I)で表される化合物及び/又はその塩からなる食品又は食餌サプリメントである。
【化1】

【0029】
上図においてRはCOOR’,CONH,CONHR’又はCONR’R’’から選択される基を表し、R’及びR’’は直鎖状アルキルラジカル例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル及びn−ペンチルラジカル、分枝状アルキルラジカル例えばイソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル及びイソヘキシルラジカル(これらのアルキルラジカルは1個から12個の炭素原子を有する)並びにシクロアルキルラジカル(3個から12個の炭素原子を有する)のグループから、相互に独立に選択されるものである。)好適には、本発明のサプリメントは2−オキソ−4−メチルチオブタン酸、及び/又はその塩からなる。
【0030】
本発明はまた穀物部分と、濃厚飼料部分と、上に記載されたサプリメントとを含む食料又は飼料に関する。
【0031】
本発明の別の対象物は、生体内利用可能なメチオニンを牛に投与する方法である。この方法は上記サプリメントのいずれかを牛に投与することと、次の化学式(I)で表される化合物及び/又はその塩を、動物の飼養のためのサプリメントとして使用することを含む。
【化1】

【0032】
上図において、RはCOOR’,CONH,CONHR’又はCONR’R’’から選択される基を表し、R’及びR’’は直鎖状アルキルラジカル例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル及びn−ペンチルラジカル、分枝状アルキルラジカル例えばイソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル及びイソヘキシルラジカル(これらのアルキルラジカルは1個から12個の炭素原子を有する)並びにシクロアルキルラジカル(3個から12個の炭素原子を有する)のグループから、相互に独立に選択されるものである。)
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は以下により詳細に記述され、続いて発明の効果を実証するための実施例が示される。
1)酸化工程(i)
1.a) ブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)の調製
【0034】
ジオール(II)は、ブタジエン(IV)より得られる。すなわちブタジエンをモノエポキシ化して3、4−エポキシ−1−ブテン(V)とし、これをエポキシド官能基の化学的開環によりジオール(II)に転換する。この調製工程は下記の反応スキーム(iii)及び(iV)により例示される。
【化4】

【0035】
モノエポキシ化反応は、例えば米国特許第5138077号に開示されるように、不均一系触媒と、それに担持されアルカリ金属例えばカリウム、セシウム及びルビジウムから選択される助触媒により活性化された銀系触媒により行われるか、又は米国特許第5138077号に開示されるように、タリウムにより活性化された銀系触媒により行われる。これらの触媒は、含浸や共沈のような常法により調整される。
【0036】
上記条件下において、本反応の3、4−エポキシ−1−ブテン(V)選択性は95%を超えることもあり、(iii)の転換収率は12ないし15%の範囲で振動する。量産段階では、転換されないブタジエン(IV)の少なくとも一部分は再利用できる。
【0037】
下に図示されるエポキシド官能基の化学的開環は、常法により、水溶液中で行われる。
【化5】

【0038】
この開環は、酸性触媒により有利に行われ、例えば、特に国際特許公開91/15471号又は国際特許公開00/24702号に開示された条件に従って酸性樹脂の存在下で行うことができる。
【0039】
1.b) ブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)の酸化工程:
【0040】
ジオール(II)は液体の形式で、精製状態、非精製状態又は粗水溶液の形式、すなわち上記工程1.a.から得られるような低精製の状態で提供される。いずれの形式であれ、ジオールを直接に使用した触媒的酸化反応によりα−ケト酸(III)を得ることができる。エポキシド(V)の開環により生じた水溶液をジオール(II)の酸化工程において直接使用することが有利である。
【0041】
ジオール酸化反応(II)の触媒は、パラジウム、プラチナ、ルテニウム、イリジウム、ロジウム及びそれらの混合物から選択された少なくとも1種の貴金属を含む。この1種又は数種の貴金属の含有量は、触媒担体に対して0.1ないし10重量%、好ましくは0.5ないし5重量%の範囲にある。
【0042】
触媒担体は、アルミナ、シリカ、活性炭、グラファイト、酸化チタン、ジルコニア、炭化ケイ素、ジルコニウム系及びセリウム系混合酸化物、又はアセチレンブラックから選択される。
【0043】
ジオール酸化反応の前記貴金属系触媒は、ビスマス、鉛、アンチモン、スズ、ニオブ、テルル、インジウム、ガリウム、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、金、銀、タングステン、モリブデン、レニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄及びそれらの混合物から選択された、少なくとも一種の助触媒を含む。助触媒の含有量は貴金属の重量に対して0.005ないし500重量%、好適には0.005ないし100重量%である。触媒担体上での助触媒の沈着は、含浸により有利に実行される。
【0044】
好適な触媒は、パラジウム、プラチナ及びそれらの混合物から選択された1種又は数種の貴金属を含み、活性炭又はグラファイト上に担持されたビスマス及び/又は鉛により活性化される。
【0045】
前記触媒は、触媒担体と貴金属を含む溶液との混合物を継続的に攪拌しながら少なくとも数秒間から数時間、一般的には15分ないし2時間の間含浸させることによって調製される。次に貴金属系の触媒は乾燥され、助触媒溶液で含浸される。この操作の後、次の型の化学的還元剤を使用して、20ないし400℃の温度下で触媒の還元工程を行う:ホルムアルデヒド、ギ酸ナトリウム、水酸化ホウ素ナトリウム、水素、次亜リン酸、ヒドラジン、グルコース又は他の還元糖。
【0046】
触媒の調製のための別の方法は、助触媒による第一の含浸工程と、一種又は数種の貴金属による第二の含浸工程を実行することである。触媒は次に還元される。
【0047】
触媒の調製のための他の方法は、1種又は数種の貴金属と助触媒による単一の含浸工程を実行することである。触媒はその後で還元される。
【0048】
本発明に係る酸化工程の手順のを下に詳細に記述し、また実施例において示す。
・好適な濃度が1ないし70重量%であるジオール(II)の水溶液が、攪拌装置を備えた反応容器に導入される。ジオール濃度の下限はプロセスの収益性を考慮して決定され、上限は当該溶媒中の酸素の溶解度と、反応中に形成される酸(III)の塩の結晶化のリスクを考慮して決定される。
・上記のようにして担持され活性化された触媒の一定量が、溶液中に分散される。
・酸化反応は、空気等の酸素含有気体を流すのと同時に開始される。反応場のpHはアルカリ剤の添加により調節され、反応温度は通常10℃ないし95℃の間、好適には20℃ないし95℃の間、さらに好適には25℃ないし70℃の間にある。反応時間は20分ないし15時間の範囲にある。
【0049】
使用されるアルカリ剤は、目的に合わせて、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸亜鉛、炭酸マンガン及びそれらの混合物から選択されることが有利である。また炭酸亜鉛、炭酸マンガン等の亜鉛若しくはマンガンの塩を使用することが考えられる。水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ剤を添加することにより、対応する水酸化物をin situで得ることができる。このアルカリ剤はまた、生産された酸(III)を中和して一定の触媒活性を維持する目的も有する。アルカリ剤は、実際には形成された酸(III)の脱離を確保するのに十分なpH値を維持する必要がある。この予防措置により、例えばジオールの過剰な酸化等から生じる、望ましくない副産物の形成を避けることもできる。
【0050】
実際には、pHの値は4ないし11、好適には5.5ないし7.5の範囲に維持される。本発明に係る方法では、90%を越える非常に有利な選択性を得ることができる。これらの性能は、本発明で使用された酸化触媒の高い再利用及び/又は再活性化回数によっても劣化しない。その理由は、使用された触媒が相応の寿命を有するとともに、助触媒の新しい電荷の付着と不活性化された触媒のin situでの還元により、容易にin situで再活性化されるためである。
【0051】
第一の酸化工程は水溶液中で行うことが有利である。有機溶剤又は数種の有機溶剤の混合物を採用することもできる。水/有機溶媒系もまた有望である。ジオール(II)の酸化反応が行われる反応場を構成する有機溶剤は、使用環境下では不活性である該ジオール(II)の少なくとも一部可溶な溶剤の中から選択される。この溶剤は脂肪族、脂環式若しくは芳香族炭化水素、脂肪族カルボン酸のアルキル若しくはアルケニルエステル、脂肪族、芳香族若しくは環式エーテル、脂肪族、脂環式若しくは芳香族ニトリル、又は脂肪族、脂環式若しくは芳香族ケトンから選択される。非限定的な実施例として、次のものを挙げることができる。
【0052】
・n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、ベンゼン、スチレン、エチルベンゼン、トルエン、メタキシレン、イソプロピルベンゼン、シクロヘキサン又は4−メチルペンタ−2−エン等の炭化水素。
・ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸アリル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、イソブタン酸メチル、ブタン酸メチル等のエステル。
・cis−1−エトキシブタ−1−エン、trans−1−エトキシブタ−1−エン、ジブチルエーテル、1−イソプロポキシブタン、1,1−ジメトキシエタン、1,1−ジエトキシエタン、1,1−ジメトキシプロパン、1−エトキシブタン、ジイソプロピルエーテル、1−エトキシヘキサン、2−エトキシプロパン、1−メトキシブタ−1,3−ジエン、ブチルビニルエーテル、フラン又は2,5−ジメチルフラン等のエーテル。
・ブチロニトリル、アセトニトリル、アクリロニトリル,プロピオニトリル又はテトラヒドロベンゾニトリル等のニトリル。
・シクロペンタノン、ジプロピルケトン、ヘプタノン、メチルイソプロピルケトン、5−メチルヘキサン−2−オン、2−ペンタノン又は4−メチルペンタ−3−エン−2−オン等のケトン。
【0053】
酸化反応を開始させるのに使用する酸素としては、分子状酸素、空気、酸素富化空気または酸素欠乏空気、又はその他の酸素と不活性ガスの混合物を用いることができる。
【0054】
反応が実行される環境の全圧は、大気圧よりも大きい、大気圧と等しい、大気圧よりも小さい、のいずれでもよいが、一般的には0.5ないし5バールの範囲にある。酸素の分圧は好適には0.05ないし2バールである。ジオール(II)の酸化によるα−ケト酸(III)の生産は、一定の圧力を維持する、反応が実行される装置の中に酸素又は酸素含有気体を循環させる、又は反応混合物の中に酸素又は酸素含有気体を通気させる、のいずれかの方法で行える。
【0055】
もちろん本発明に係る方法を実行する器具は、当該方法に固有のものでなくてもよい。
【0056】
2)縮合工程(ii)
本工程によれば、気体又は液体の状態のメチルメルカプタン(MeSH)1モルと、上記で調製されたα−ケト酸(III)1モルとが、次の反応スキーム(ii)に従って縮合される。
【化3】

【0057】
本発明の属する技術分野は、最終生成物又は中間生成物としての酸(I)の製造である。チオール類の反応性は多くの面でアルコールのそれと類似している。それらは、使用された触媒の条件に応じて、α,β−不飽和アルデヒド、α,β−不飽和ケトン及びα,β−不飽和酸を1,2位に付加してモノヘミチオアセタールを生じるか、又は1,4位に付加して3−アルキルチオプロピオンアルデヒドを生じる。構造上の類似性から、酸(III)は活性化オレフィンの範疇に完全に含まれる。
【0058】
従来、選択的かつ効率的に4位においてα,β−不飽和カルボニル誘導体にチオールを付加するための2つの触媒経路が推奨されている。第一の経路は、塩基により触媒されるイオン付加反応である。第二の経路は、アゾ化合物及び過酸化化合物により開始されるラジカル付加反応である。しかし、この開始方法は通常好ましくないポリマーを一般的に生成する。
【0059】
従来技術は、1,2位又は1,4位における付加の位置選択性の操作を可能にする各種の触媒を詳細に開示している。しかし、依然として、チオールのα,β−不飽和ケトンの1,4−マイケル型付加反応が最も一般的である。
【0060】
塩を形成した酸、又は遊離の酸(III)を含んでいる未精製の原料は、随意に、ジオール(II)の酸化中に副産物として生成した不純物を除去するための第一の処理に付せられる。この粗生産物はまた脱気処理に付することもできる。未反応ジオールに対応する過剰のジオール(II)は、例えば蒸留又は抽出により、酸化工程において有利に再利用できる。酸(III)の水溶液は、気体又は液体のメチルメルカプタンと接触させられる前に随意に濃縮される。この酸(III)の水溶液は次に気体又は液体のメチルメルカプタンと接触させられて酸(I)を生じる。
【0061】
この工程は、随意に、一種類又は数種類の塩基触媒の存在下において実行される。適当な塩基触媒は、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、イソプロピルアミン等の脂肪族アミン、アニリン、ベンジルアミン又はピリジン等の芳香族アミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルジフェニルアミン、N−エチル−3、3’−ジフェニルジプロピルアミン、N−メチルモルホリン等のN−アルキルモルホリン、又はtriton Bである。これらのアミンは、代替的に有機酸又は無機酸と結合される。酸は好適にはギ酸、酢酸、プロパン酸及びブタン酸、リン酸及び硫酸から選択される。
【0062】
メチルメルカプタンのα−ケト酸(III)への付加工程は、酸/塩基触媒により行われることが有利であり、例えば有機酸又は無機酸と有機塩基又は無機塩基の組合せからなる触媒が使用される。好適には酢酸が使用される。
【0063】
工業的な規模においては、液体又は気体のメチルメルカプタンが、予め濃縮された又は未濃縮の、かつ脱気された又は未脱気の酸(III)の水溶液を含む反応容器内へ運搬される。
【0064】
酸(III)とメチルメルカプタンの縮合工程は、バッチ処理又は連続処理により行うことができる。酸(III)及びメチルメルカプタンは、化学量論的な比率を監視しながら、同時に又は交互に導入される。しかし、行う反応によっては、メチルメルカプタンの不足又は過剰の状態で運転することも考えられる。
【0065】
反応は、酸(III)の水溶液と、メチルメルカプタンガスとを気体/液体反応容器に連続的に導入することにより実行することができる。この場合、メチルメルカプタンは流れと並行又は対向するように加えられる。代替的には、この反応を、酸(III)の水溶液とメチルメルカプタンの水溶液とをバッチ式反応容器又は押出し流れ式反応容器へ連続的に導入することにより実行することもできる。反応温度は80℃を超えてはならない。
【0066】
一般的に、酸(III)とメチルメルカプタンの縮合反応の触媒は、次の数個の基準に従って選択される:
・酸(I)の転換収率
・反応速度
・選択性と望ましくない不純物を副産物として生成する傾向。この不純物は、通常は合成の間に副次的な重合反応から生じる分子重量の大きい物質であり、目的生成物の貯蔵中に生じることもある。
・長期貯蔵中に生成物を安定化させる属性
【0067】
本発明に係るプロセスを実施するための設備は、このプロセスに固有のものではない。
【0068】
次に実施例を示すが、その目的は発明の例示にあり、発明の範囲を限定するものではない。実施例1−7は発明に係る化合物の合成方法を示し、実施例8及び9は本発明に係る化合物の飼養上の効果を示す。また、実施例9の試験における投与の作用としてのdl−メチオニン及びKMBの有効性の値を表した図を添付する。
【実施例1】
【0069】
実施例1:アルミナ担体上の触媒(A):1%Bi/5%Ptの調製
フランス特許出願第FR−A−1449904号に開示された方法に従って、活性アルミナ集塊を酸の存在下でオートクレーブし、その後で乾燥・燬焼させることにより、γ−アルミナビーズ100グラムを調製した。これらのビーズは比表面積が100m/gであり、100nm以上の径を有するマクロ孔で構成された総空孔量が0.90cm/gであった。
【0070】
このビーズを、その後ビスマス1グラムを含む90cmの硝酸ビスマス溶液により含浸させた。30分間の接触の後、ビーズを150℃で乾燥させ600℃の空気中で3時間燬焼させた。
【0071】
これらを、次にプラチナ5グラムを含む90cmの塩化白金酸溶液により含浸させた。30分間の接触の後、ビーズを150℃で乾燥させ、300℃の水素ガスを200リットル毎時で3時間流すことにより活性化させた。
【0072】
このように調製された触媒(A)は、アルミナ担体に対して5重量%のプラチナと1重量%のビスマスを含んでいた。
【実施例2】
【0073】
実施例2:活性炭担体上の触媒(B):5%Bi/5%Ptの調製
Ceca社によりCeca3Sの名称で販売されている活性炭100グラムを、まず塩酸溶液で、次いで脱イオン水で続けて洗浄し、水溶性の不純物を除去した。この担体を次に120℃のオーブンで24時間乾燥させた。
【0074】
これらのペレットを、次にビスマス5gを含む硝酸ビスマス溶液により含浸させた。4時間の接触の後、このペレットを120℃で24時間乾燥させた。
【0075】
これらを、プラチナ5グラムを含む塩化白金酸溶液により含浸させた。4時間の接触の後、このペレットを120℃で乾燥させ、次いで300℃の水素ガスを200リットル毎時で3時間流すことにより活性化させた。
【0076】
このように調製された触媒(B)は、活性炭担体に対して5重量%のプラチナと5重量%のビスマスを含んでいた。
【実施例3】
【0077】
実施例3:活性炭担体上の触媒(C):5%Pt/5%Biの調製
Ceca社によりCeca3Sの名称で販売されている活性炭100グラムを、まず塩酸溶液で、次いで脱イオン水で続けて洗浄し、水溶性の不純物を除去した。この担体を次に120℃のオーブンで24時間乾燥させた。
【0078】
これらのペレットを、次にプラチナ5gを含む六塩化白金酸溶液により含浸させた。4時間の接触の後、このペレットを120℃で24時間乾燥させた。
【0079】
これらを、次にビスマス5グラムを含む硝酸ビスマス溶液により含浸させた。4時間の接触の後、このペレットを120℃で乾燥させ、次いで300℃の水素ガスを200リットル毎時で3時間流すことにより活性化させた。
【0080】
このように調製された触媒(C)は、活性炭担体に対して5重量%のプラチナと5重量%のビスマスを含んでいた。
【実施例4】
【0081】
実施例4:活性炭担体上の触媒(D):5%Bi/4%Pd/1%Ptの調製
Ceca社によりCeca3Sの名称で販売されている活性炭100グラムを、まず塩酸溶液で、次いで脱イオン水で続けて洗浄し、水溶性の不純物を除去した。この担体を次に120℃のオーブンで24時間乾燥させた。
【0082】
これらのペレットを、次にビスマス5gを含む硝酸ビスマス溶液により含浸させた。4時間の接触の後、このペレットを120℃で24時間乾燥させた。
【0083】
これらを、次にパラジウム4グラム及びプラチナ1グラムを含む硝酸パラジウム及び塩化白金酸溶液により含浸させた。4時間の接触の後、このペレットを120℃で乾燥させ、次いで300℃の水素ガスを200リットル毎時で3時間流すことにより活性化させた。
【0084】
このように調製された触媒(D)は、活性炭担体に対して4重量%のパラジウム、1重量%のプラチナと5重量%のビスマスを含んでいた。
【実施例5】
【0085】
実施例5:グラファイトカーボン担体上の触媒(E):1%Bi/5%Ptの調製
SN2A社によりY200(アセチレンブラック)の名称で販売されているグラファイトカーボン100グラムを触媒(E)の合成にそのまま使用した。担体は予め120℃のオーブンで24時間乾燥させた。
【0086】
この粉末担体を、次にビスマス1gを含む硝酸ビスマス溶液により含浸させた。4時間の接触の後、含浸された担体を120℃で24時間乾燥させた。
【0087】
この粉末触媒を、次にプラチナ5グラムを含む塩化白金酸溶液により含浸させた。4時間の接触の後、この触媒を120℃で乾燥させ、次いで300℃の水素ガスを20リットル毎時で3時間流すことにより活性化させた。
【0088】
このように調製された触媒(E)は、グラファイト担体に対して5重量%のプラチナと1重量%のビスマスを含んでいた。
【実施例6】
【0089】
実施例6:触媒(D)の存在下におけるブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)の酸化による2−オキソブタ−3−エン酸(III)の生成
【化6】

【0090】
ブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)を0.1ないし50重量%含有する水溶液が、完全攪拌された容量500mlのジャケット付ガラス反応容器内で酸化された。選択的に焼結ガラスを備えたディップ管によって、この反応場に空気が導入された。pH計で制御されたポンプを使用して、希水酸化ナトリウム溶液を制御しながら添加することにより、pHが調節された。pH、水酸化ナトリウム消費量、温度(50℃)および気相の上部空間内の酸素分圧(酸素計による)が連続的に記録された。
【0091】
反応場のサンプルが定期的に抽出され、反応生産物が高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)及びガスクロマトグラフィー(GC)により解析された。
【0092】
予め還元された触媒と水とが反応容器に導入され、懸濁液が、窒素気流下で初期反応温度まで攪拌しつつ加熱され、溶存酸素が除去された。ブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)が導入され、タイムゼロにおいて窒素が空気に置き換えられ、pHが目的値に調節され、酸化が開始された。
【0093】
ブタ−3−エン−1、2−ジオールの転換の程度は、消費されたブタ−3−エン−1、2−ジオールの百分率により定義される。生産物の収率は、この生産物に転換されたブタ−3−エン−1、2−ジオールの百分率である。反応速度は、次の現象により監視できる:
・ブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)の消失
・酸(III)の形成により、pHを一定に保つのに必要となる水酸化ナトリウムの量
【0094】
本実施例は、実施例4で得られた触媒(D)の存在下において行われた。操作は酸素欠乏状態に管理された雰囲気中で12時間行われた。
【化7】

【0095】
次の反応物が、機械式スターラ、温度プローブ及びpHプローブを備え、予め窒素により不活性にされた500mlのジャケット付反応容器に充填された。

【0096】
反応場は50℃に管理された。空気流量は2.6l/hにセットされ、窒素流量は8l/hにセットされた。酸素計により測定された酸素百分率は約5体積%を示していた。攪拌速度は毎分300回転にセットされた。反応場のpHは希水酸化ナトリウム水溶液(0.15重量%)の添加により6−7の範囲に調節された。ブタ−3−エン−1、2−ジオールの消失速度はガスクロマトグラフィーにより測定され、α−ケト酸(III)の生成速度は高圧液体クロマトグラフィーにより決定された。その結果は次の通りであった:
・転換率(ジオールII)=38%(6時間後)
・転換率(ジオールII)=64%(12時間後)
【実施例7】
【0097】
実施例7:触媒(D)の存在下におけるブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)の酸化による2−オキソブタ−3−エン酸(III)の生成
本実施例は、実施例4で得られた触媒(D)の存在下において行われた。反応はpH=7.5の空気の存在下で4時間行われた。
【化8】

【0098】
次の反応物が、機械式スターラ、温度プローブ及びpHプローブを備え、予め窒素により不活性にされた500mlのジャケット付反応容器に充填された。
触媒(D): 0.5g
ジオール(II): 0.5g
【0099】
反応場は30℃に維持された。空気流量は12l/hにセットされ、窒素流量は9l/hにセットされた。攪拌速度は毎分1300回転にセットされた。反応場のpHは希水酸化ナトリウム水溶液(0.5重量%)の添加により7.5に調節された。ブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)の消失速度はガスクロマトグラフィーにより測定され、2−オキソブタ−3−エン酸(III)の生成速度は高圧液体クロマトグラフィーにより決定された。
【0100】
測定された効果は次の通りであった:
・ 転換率(ジオールII)=75%(1時間後)
・ 転換率(ジオールII)=99%(4.5時間後)
・ 2−オキソブタ−3−エン酸(III)の収率>85%
【実施例8】
【0101】
実施例8:ニワトリにおけるメチオニン源としての2−オキソ−4−メチルチオブタン酸(KMB)の栄養価の実例
【0102】
8.1)実験原理:
「用量−反応」実験モデルが使用された。出発原料はメチオニンの欠乏したフードベースであり、反応を観察しようとする栄養素はメチオニンである。この欠乏栄養素は、次いでシステムR2においては2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸(出願人によってRhodimetAT88の名称で生産されている)の形式で導入され、システムR3においては2−オキソ−4−メチルチオブタン酸(KMB)の形式で同じ用量だけ導入された。次に各システムにおいて得られた効果が、メチオニンを導入しないシステムR1と比較された。
【0103】
8.2)実験スキーム
ケージあたり4羽のニワトリが試験された。R1(メチオニンの添加なし)、R2(+Rhodimet(登録商標)AT88)、及びR3(+KMB)の三つの処理が実行され、下記表1に従ってそれぞれ9回ずつ繰り返された。
【表1】

【0104】
下記表2は7−21日の期間において得られた結果を示している。
【表2】

【0105】
注:a又はbの文字で示された値は、閾値5%から有意に異なる。
【0106】
所与の期間における消費率は、同じ期間において摂取された食餌の、体重増加に対する比率であり、体重増加1kgを得るために必要な食餌の量に相当する。
【0107】
KMB(R3)の形式でのメチオニンの導入により同期間における体重増加量の約90g増大が可能になった。これは、メチオニンのヒドロキシ類似体(Rhodimet(登録商標)AT88、R2)で得られた結果と有意に異ならない。従って、KMBはメチオニンのヒドロキシ類似体と同等の栄養価を有する。
【実施例9】
【0108】
実施例9:ニワトリにおけるメチオニン源としての2−オキソ−4−メチルチオブタン酸(KMB)の栄養価の他の実例
【0109】
9.1)実験原理:
出発原料はメチオニンの欠乏したフードベースであり、反応を観察しようとする栄養素はメチオニンである。この欠乏栄養素は、次に参照形式及び試験形式において導入され、次いで各システムの結果が、メチオニンを導入しないシステムR1と比較された。ケージあたり2羽のニワトリが、偶然による制御されたランダム化のもとで試験された。
【0110】
次の七つの処理が実行された。
R1: メチオニンの添加なし
R2及びR3: +Rhodimet(登録商標)NP99(出願人が販売するD、L−メチオニン粉末)の2つの異なる用量
R4及びR5: +Rhodimet(登録商標)AT88の2つの異なる用量
R6及びR7: +KMBの2つの異なる用量
これらが下記表3に従ってそれぞれ14回ずつ繰り返された。
【表3】

【0111】
得られた結果が表4に示されている。この結果は、NP99の形式における0.1%のメチオニンの添加が体重増加を有意に増大させ(+90g)、消費率を有意に減少させた(−11%)ことを示している。用量補充の効果が見られないことは、メチオニンの必要量が0.1%の用量でカバーされたことを示唆している。
【0112】
AT88又はKMBの添加から得られた結果は類似しており、DL−メチオニン(NP99)から得られた結果と有意に異ならない。従ってKMBは、AT88と同様に、DL−メチオニンと同等の栄養価を有することが示された。
【0113】
【表4】

KMBの生物価の計算:
表4のように得られた結果はまた、KMBの生物価の「近似的な」計算を可能にする。用量−反応曲線は2個の点のみに基づいているから、この価を確定的なものと考えることはできないが、KMBの生物価に関して、仮定の価を使用しないより定量的なアプローチを可能にする。
【0114】
2個の生産物を比較するために、メチオニン転換の効率が計算された。すなわち、栄養欠乏状態の対照群との比較において追加の1グラムの体重増加を得るために必要な活性物質(メチオニン又はKMB、mg)の平均量が決定された。図に示されるように、1グラムの体重増加を得るのに必要なグラム数が小さいほど、生産物の効率は大きい。
【0115】
使用された2つの用量について計算された転換効率の価の比を計算することにより、DL−メチオニンの効率に対するKMBの効率の比率が計算された。この相対的な効率性の価から、KMBがDL−メチオニンよりも優れた効率性を有することが示された(用量0.1%及び0.2%に対してそれぞれ118.5及び111.5%)
【0116】
結論として、実施例8及び9により、食餌に導入されたKMBが腸において動物に同化されたこと、成長に関して、少なくともDL−メチオニンと同等のメチオニン源として使用されることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】異なる物質における転換効率の価

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)に対応する2−オキソ−4−メチルチオブタン酸及びその塩の調整方法において、
【化1】

(式中、Rはカルボキシル基及びその塩を表す)
次の各工程
・ 次の反応スキーム(i)に従ってブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)が触媒作用により選択的に酸化されて2−オキソブタ−3−エン酸(III)を生じる工程と、
【化2】

・ 次の反応スキーム(ii)に従ってメチルメルカプタンが2−オキソブタ−3−エン酸(III)と選択的に縮合される工程
【化3】

を有することを特徴とする上記物質の調整方法。
【請求項2】
次の式に対応する化合物を調整する方法において、
【化1】

(式中、RはCOOR’、CONH、CONHR’、CONR’R’’から選択される基を表し、またR’及びR’’は、1個から12個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルキルラジカル及び3個から12個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカルからなるグループから、相互に独立に選択される。)
請求項1記載の方法によって2−オキソ−4−メチルチオブタン酸(I)を得て、エステル化又はアミド化工程を施すことを特徴とする上記化合物の調製方法。
【請求項3】
前記触媒が、パラジウム、プラチナ、ルテニウム、イリジウム、ロジウム及びそれらの混合物から選択された少なくとも1種の貴金属を有することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が、ビスマス、鉛、アンチモン、スズ、ニオブ、テルル、インジウム、ガリウム、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、金、銀、タングステン、モリブデン、レニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄及びそれらの混合物から選択された少なくとも1種の助触媒を有することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が、アルミナ、シリカ、活性炭、グラファイト、酸化チタン、ジルコニア、炭化ケイ素、ジルコニウム及びセリウム系混合酸化物、又はアセチレンブラックから選択される不活性担体を有することを特徴とする請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
前記助触媒が、含浸法により担体に付着させられることを特徴とする請求項4及び5記載の方法。
【請求項7】
前記触媒がパラジウム、プラチナ及びそれらの混合物から選択された貴金属と、ビスマス、鉛及びそれらの混合物から選択された助触媒と、活性炭及びグラファイトから選択された担体とを有することを特徴とする前記請求項3から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記一種又は数種の貴金属の含有量が前記触媒担体に対して0.1ないし10重量%の範囲にあり、好適には0.5ないし5重量%の範囲にあることを特徴とする請求項3から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記助触媒の含有量が前記一種又は数種の貴金属の重量に対して0.005ないし500%の範囲にあり、好適には0.005ないし100重量%の範囲にあることを特徴とする請求項4から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記助触媒の含有量が前記触媒の重量に対して10%に達し得ることを特徴とする請求項4から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記酸化工程がpHが4ないし11、好適には5.5ないし7.5の範囲に維持された中性又はアルカリ性反応場において実行されることを特徴とする請求項4から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸亜鉛、炭酸マンガン及びそれらの混合物から選択されたアルカリ剤が添加されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記酸化工程が、酸素を含有する気体、例えば空気を流し始めることにより開始されることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記酸化工程が、温度10ないし95℃、好適には20ないし95℃、さらに好適には25ないし70℃の範囲で行われることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記酸化工程が、20分ないし15時間にわたって行われることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
メチルメルカプタンを2−オキソブタ−3−エン酸と縮合させるためにメチルメルカプタンが気体または液体の形で使用されることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記縮合が塩基性触媒の存在下で行われることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン等の脂肪族アミン、アニリン又はピリジン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルジフェニルアミン、N−エチル−3、3’−ジフェニルジプロピルアミン等の芳香族アミン、又はN−メチルモルホリン等のN−アルキルモルホリン、又はtritonBから選択されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記触媒がN−メチルモルホリン等のN−アルキルモルホリンであり、ギ酸、酢酸、プロパン酸及びブタン酸から選択された有機酸と組み合わされていることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
ブタ−3−エン−1、2−ジオール(II)が、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法で触媒作用により選択的に酸化されることを特徴とする2−オキソブタ−3−エン酸(III)の調整方法。
【請求項21】
次の式(I)に対応する化合物及び/又はその塩からなる食品又は食餌サプリメント。
【化1】

(式中、RはCOOH、COOR’、CONH、CONHR’、CONR’R’’から選択される基を表し、またR’及びR’’は、1個から12個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルキルラジカル及び3個から12個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカルからなるグループから、相互に独立に選択される。)
【請求項22】
2−オキソ−4−メチルチオブタン酸及び/又はその塩からなる請求項21記載のサプリメント。
【請求項23】
穀物部分と、濃厚飼料部分と、請求項21又は22記載のサプリメントとを含む食料又は飼料。
【請求項24】
請求項21又は22記載のサプリメントを牛に投与することを含む、生体内利用可能なメチオニンの牛への投与方法。
【請求項25】
次の式(I)に対応する化合物及びその塩の、動物の飼養のための食餌サプリメントとしての使用。
【化1】

(式中、RはCOOH、COOR’、CONH、CONHR’、CONR’R’’から選択される基を表し、またR’及びR’’は、1個から12個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルキルラジカル及び3個から12個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカルからなるグループから、相互に独立に選択される。)

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−526720(P2008−526720A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548869(P2007−548869)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003300
【国際公開番号】WO2006/072711
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(507212171)アディセオ・アイルランド・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】