説明

2−(ピリジンー2−イルアミノ)−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン類の合成

【課題】細胞増殖性障害を治療するのに有用な置換2−(ピリジン−2−イルアミノ)−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン類又はその薬学的に許容可能な塩の製造方法の提供。
【解決手段】




上記一般式で表わされる2つの化合物とを遷移金属触媒、塩基、及び場合によりホスフィン物質の存在下で、反応させ、形成された化合物とイセチオン酸とで反応させる工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2006年9月8日に出願された米国仮出願第60/843,051号、及び2007年6月5日に出願された米国仮出願第60/942,104号の利益を主張するものであり、これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、置換2−(ピリジン−2−イルアミノ)−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン類及びそれらの中間体を製造するための新規な合成ルートに関する。
【0003】
背景技術
本発明は、次の式(以下、“式1”と称する)を有する置換2−(ピリジン−2−イルアミノ)−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン類:
【0004】
【化1】

【0005】
(式中、Rは水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル又はC−Cシクロアルキルであり;
は、水素、OH、−NH、アリール、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル又はC−C−へテロサイクリルであり;
は、−(CRNR−又は−(CRm−(N環原子を含む3〜10員のヘテロサイクル)であり、mは、0、1、2又は3であり;そして
及びRは、各々独立してH又はC−Cアルキルである)
又はその薬学的に許容可能な塩を製造するための新規な方法に関する。
【0006】
特に、本発明は、化合物6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン塩酸塩のイセチオン酸塩形態(“化合物1”とも称される):
【0007】
【化2】

【0008】
並びにその中間体を製造するための新規な方法に関する。化合物1は米国特許出願第6,936,612号中に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。この化合物は、プロテインキナーゼ阻害剤であり、細胞周期制御をモジュレートすることができる合成の小分子阻害剤を表す。
【0009】
化合物1を製造する方法は、米国特許出願第6,936,612号の実施例36として開示されている。イセチオン酸塩形態の化合物1を製造する方法は、WO2005/005426の実施例1〜13中に開示されている。これらの方法は、少量の塩形態の化合物1の合成のためのものであり、商業的スケールアップのためにデザインされていない。したがって、費用効率が高く、スケール変更可能で、生産力のある、CDK阻害剤6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン塩酸塩についての塩形態の製造が大いに望まれている。
【発明の開示】
【0010】
一つの態様において、及び矛盾しないあらゆる他の態様との組み合わせにおいて、本発明は、次の式(本明細書において“式1”と称する)を有する置換2−(ピリジン−2−イルアミノ)−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン類又はその薬学的に許容可能な塩:
【0011】
【化3】

【0012】
{式中、Rは、水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル又はC−Cシクロアルキルであり;
は、水素、OH、−NH、アリール、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル又はC−C−ヘテロサイクリルであり;
は、−(CRNR−又は−(CR−(N環原子を含む、3〜10員のヘテロサイクル)であり、mは、0、1、2又は3であり;そして
及びRは、各々独立してH又はC−Cアルキルである}を製造するための方法であって、
(a)式:
【0013】
【化4】

【0014】
の化合物と、式Id
【0015】
【化5】

【0016】
の化合物{式中、
は、水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル又はC−Cシクロアルキルであり;
は、Br又はIであり;
は、水素、OH、−NH、アリール、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル又はC−C−ヘテロサイクリルであり;
は、−(CR−N(PG)R及び−(CR−(PG保護N環原子を含む3〜10員のヘテロサイクル)からなる群から選択される−R−PGであり、PGは、酸不安定性アミン保護基であり;
、即ち当該PGを有さないRは、−(CRNR−又は−(CR−(N環原子を含む3〜10員のヘテロサイクル)であり、mは、0、1、2又は3であり;
は、C−Cアルキルであり;そして
及びRは、各々独立してH又はC−Cアルキルである}
とを、遷移金属触媒、塩基及び場合によりホスフィン物質の存在下で、適切な溶媒中で反応させて、式Ie又はIf
【0017】
【化6】

【0018】
の化合物を形成する工程;及び
(b1)式Ie又はIfの化合物のRを、PGを除去することにより脱保護する工程
を含む方法を提供する。
【0019】
別の態様において、及び矛盾しないあらゆる他の態様との組み合わせにおいて、本発明は、式Iの化合物:
【0020】
【化7】

【0021】
を製造する方法であって、
(a)式:
【0022】
【化8】

【0023】
の化合物と、式Id
【0024】
【化9】

【0025】
の化合物(式中、
は、水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル又はC−Cシクロアルキルであり;
は、Br又はIであり;
は、水素、OH、−NH、アリール、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル又はC−C−ヘテロサイクリルであり;
は、−(CR−N(PG)R及び−(CR−(PG保護N環原子を含む、3〜10員のヘテロサイクル)からなる群から選択される−R5−PGであり、PGは、酸不安定性アミン保護基であり;
、即ち当該PGを有さないRは、−(CRNR−又は−(CR−(N環原子を含む、3〜10員のヘテロサイクル)であり、mは、0、1、2又は3であり;
はC−Cアルキルであり;そして
及びRは、各々独立してH又はC−Cアルキルである}
とを、遷移金属触媒、塩基及び場合によりホスフィン物質の存在下で、適切な溶媒中で反応させて、式Ie又はIf
【0026】
【化10】

【0027】
の化合物を形成させる工程;及び
(b)続いて、式Ie若しくはIfの化合物、又はその混合物と、イセチオン酸とを、適切な溶媒中で反応させて式Iの化合物を生成させる工程
を含む方法を提供する。
【0028】
当該態様の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面において、RはC−Cアルキルである。
この態様の別の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、式Iの化合物は、化合物1:
【0029】
【化11】

【0030】
であり、PGはBocであり、Rはn−ブチルである。
当該態様の別の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、工程(a)における遷移金属触媒は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム [(Ph3P)4Pd]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム [Pd2(dba)3]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0) [(dba)2Pd]、酢酸パラジウム [Pd(OAc)2]、塩化パラジウム (PdCl2)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム [(C6H5CN)2PdCl2] 及び(ビス−(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド ジクロロメタンコンプレックス (Pd(dppf)2Cl2)からなる群から選択されるパラジウム化合物であり、工程(a)におけるホスフィン化合物は、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン (BINAP)、1,3 ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、トリフェニルホスフィン (Ph3P)、トリオルトトリルホスフィン [(o-CH3Ph)3P] 及びトリ−t−ブチルホスフィンから選択される。好ましくは、当該遷移金属触媒は、(ビス−(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド ジクロロメタンコンプレックス (Pd(dppf)2Cl2)である。
【0031】
当該態様の別の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、工程(a)における塩基は、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸リチウム、ジシクロヘキシルメチルアミン及びトリエチルアミンからなる群から選択される。好ましくは、工程(a)における塩基はジイソプロピルエチルアミンである。
【0032】
別の態様において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の態様との組み合わせにおいて、本発明は、式Id
【0033】
【化12】

【0034】
の化合物を製造する方法であって:
(c)式Ic
【0035】
【化13】

【0036】
の化合物を、ハロゲン化条件の下でハロゲン化して、式Ic1
【0037】
【化14】

【0038】
の化合物(Xは、ハロゲン、スルフィド、スルホキシド又はスルホンである)を生成させる工程;及びその後の
(d)当該式Ic1の化合物と、式Ic3
【0039】
【化15】

【0040】
の化合物とをリチウム塩基の存在下で適切な溶媒中で反応させて、式Idの化合物を生成させる工程
を含む方法を提供する。
【0041】
当該態様の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、工程(c)におけるハロゲン化条件は、酢酸、酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの存在下での(Rである。
【0042】
当該態様の別の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、当該リチウム塩基は、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドである。
【0043】
当該態様の別の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、XはClである。
別の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の態様との組み合わせにおいて、本発明は、式Id
【0044】
【化16】

【0045】
の化合物を製造する別の方法であって:
(e)式Ic
【0046】
【化17】

【0047】
の化合物と、式Ic3
【0048】
【化18】

【0049】
の化合物とを、リチウム塩基の存在下で適切な溶媒中で反応させて、Ic2
【0050】
【化19】

【0051】
の化合物を生成させる工程;及び
(f)式Ic2の化合物を、ハロゲン化条件下でハロゲン化して、式Idの化合物を生成させる工程;
を含む方法を提供する。
【0052】
当該態様の一つの特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、工程(f)におけるハロゲン化条件は酢酸、酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの存在下での(Rである。
【0053】
当該態様の別の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、工程(e)におけるリチウム塩基は、リチウム(トリメチルシリル)アミドである。
【0054】
当該態様の別の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、XはClである。
別の態様において、及び矛盾しないあらゆる他の態様との組み合わせにおいて、本発明は、式 Ic
【0055】
【化20】

【0056】
の化合物を製造する方法であって:
(g)式Ib
【0057】
【化21】

【0058】
の化合物と、式:
【0059】
【化22】

【0060】
(Rは、H、C−Cアルキル及び−C(O)−C−Cアルキルから選択される)の化合物とを
、塩基、遷移金属触媒及び場合によりホスフィン物質の存在下で、適切な溶媒中で反応させる工程;及び
(h)工程(g)で生じた生成物を分子内環化反応させて式Icの化合物を生成させる工程を含む方法を提供する。
【0061】
この態様の特定の一つの側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、工程(g)における遷移金属触媒は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム [(Ph3P)4Pd]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム [Pd2(dba)3]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0) [(dba)2Pd]、酢酸パラジウム [Pd(OAc)2]、塩化パラジウム (PdCl2)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム [(C6H5CN)2PdCl2] 及び(ビス−(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド ジクロロメタンコンプレックス (Pd(dppf)2Cl2)、からなる群から選択されるパラジウム化合物であり、そして、当該ホスフィン化合物は、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン (BINAP)、1,3 ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、トリフェニルホスフィン (Ph3P)、トリオルトトリルホスフィン [(o-CH3Ph)3P] 及びトリ−t−ブチルホスフィンから選択される。好ましくは、工程(g)における遷移金属触媒は、パラジウムジクロリドジベンゾニトリルであり、工程(g)は、トリオルトトリルホスフィンの存在下で行われる。
【0062】
この態様の別の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、工程(g)における塩基は、ジイソプロピルエチルアミンであり、そして工程(g)における遷移金属触媒は、パラジウムジクロリドジベンゾニトリルであり、工程(g)は、トリオルトトリルホスフィンの存在下で行われる。
【0063】
この態様の別の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、RはHであり、工程(h)における分子内環化は、カップリング剤の存在下で行われる。典型的なそのようなカップリング剤は、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジ−tert−ブチルカルボジイミド及びN,N’−ジイソプロピルカルボジイミドのようなカルボジイミド類;1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、1,1’−カルボニル−ジ−(1,2,4−トリアゾール)及び1,1’−チオカルボニルジイミダゾールのようなカルボニルジイミダゾール誘導体;N−ヒドロキシスクシンイミド、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート及び2−チアゾリン−2−チオールのような活性エステル生成試薬;及び1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、無水酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物及び酢酸クロリドのような他の試薬であってよい。
【0064】
この態様の別の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、RはHであり、工程(h)における分子内環化は、無水酢酸又は酢酸クロリドの存在下で行われる。
【0065】
この態様の別の特定の側面において、及び矛盾しないあらゆる他の特定の側面との組み合わせにおいて、工程(g)の溶媒は、トルエン及びTHFから選択される。
別の態様において、そして矛盾しないあらゆる他の態様との組み合わせにおいて、本発明は、式Ib
【0066】
【化23】

【0067】
の化合物を製造する方法であって:
(i)式Ia
【0068】
【化24】

【0069】
の化合物と式R−NHの化合物とを、塩基の存在下で適切な溶媒中で反応させて、式Ibの化合物を生成させる工程を含む方法を提供する。
本発明は、2−(2’−ピリジル)ピリド[2,3−d]ピリミジノン類を、非制御(uncontrolled)細胞増殖性疾患を治療するために有用である化合物として特定しており、当該疾患には、ガン、再狭窄及びリウマチ様関節炎のような増殖性疾患が含まれるが、これらに限定されない。さらに、これら化合物は、炎症及び炎症性疾患を治療するために有用である。さらに、これら化合物は、抗感染症剤としての有用性も有する。その上、これら化合物は、正常な非形質転換細胞の細胞周期の進行を阻害するそれらの能力による化学的保護剤(chemoprotective atent)としての有用性も有する。本発明の化合物の多くは、セリン/トレオニンキナーゼであるサイクリン依存性キナーゼ4及びサイクリン依存性キナーゼ6についての選択性において予測できない向上を示す。それら化合物は既に合成されており、種々の方法によって患者に投与することができる。
【0070】
式Iの化合物は、キラル中心を有し得、したがって異なるエナンチオマー及びジアステレオマー形態で存在し得る。本発明は、式Iの化合物の、ラセミ混合物として、個々のエナンチオマー及びジアステレオマーとして及びそれらの混合物としての、全ての光学異性体及び全ての立体異性体に関し、そしてそれらを含有するか又は用いる、上記で定義した全ての医薬組成物及び治療方法に関する。
【0071】
本発明の式Iの化合物は少なくとも2つの非対称中心を有しうるため、それらは、種々の立体異性体又は配置を発生し得る。したがって、それら化合物は、別々の(+)−及び(−)−の光学的に活性な形態で、並びにそれらの混合物の形態で存在し得る。本発明は、そのような全ての形態をその範囲に含む。個々の異性体は、最終物質又は中間体の調製における光学分割、光学的選択的反応又はクロマトグラフィー分離のような公知の方法により得ることができる。
【0072】
本発明の化合物は、非溶媒和形態並びに水和形態を含む溶媒和形態で存在することができる。一般に、水和形態を含む溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲に包含されることが意図される。
【0073】
本発明には、天然に通常見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって1以上の原子が置換されているという事実を除いて式Iに記載される化合物と同一である同位体標識化合物も含まれる。本発明の化合物中に組み込まれ得る同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位体、例えばそれぞれH、H、13C、11C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clが含まれる。上記同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物、そのプロドラッグ、及び当該化合物又は前記プロドラッグの薬学的に許容可能な塩は、本発明の範囲内である。本発明の一定の同位体標識化合物、例えばH及び14Cのような放射性同位体が組み込まれている化合物は、薬物及び/又は物質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化同位体、即ちH、及びカーボン−14同位体、即ち14Cは、その製造及び検出性の容易性のために特に好ましい。さらに、重水素、即ちHのようなより重い同位体を用いる置換は、より大きな代謝安定性からもたらされる一定の治療的利点、例えば、増大されたin vivo半減期又は減少された投与量要件を生じ得、したがっていくつかの状況において好まれ得る。本発明の式Iの同位体標識化合物及びそのプロドラッグは、一般に、非同位体標識試薬を容易に入手可能な同位体標識試薬に置き換えて、以下のスキーム、及び/又は実施例及び製造例中に開示されている手順を行うことにより調製され得る。
【0074】
式Iの化合物は、薬学的に許容可能な製剤をさらに形成することができ、その製剤には、式Iの化合物の酸付加塩及び/又は塩基塩を含むがそれらに限られない塩、溶媒和物及びN−オキシドが含まれる。
【0075】
本発明は、治療的に有効な量の式Iの化合物又は薬学的に許容可能なその塩、及びそのための薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬製剤も提供する。これら形態は全て本発明の範囲内である。
【0076】
本発明においては、「アルキル」との用語により、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の炭化水素基が意味され、それには、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル等が含まれる。
【0077】
「アルケニル」は、2〜8個の炭素原子と少なくとも一つの二重結合を有する直鎖又は分岐の炭化水素基を意味し、それには、例えば、エテニル、3−ブテン−1−イル、2−エテニルブチル、3−ヘキセン−1−イルなどが含まれるが、これらに限定されない。用語「アルケニル」には、シクロアルケニル、及びO、S、N又は置換された窒素から選択される1〜3個のヘテロ原子が炭素原子を置換していてよいヘテロアルケニルが含まれる。
【0078】
「アルキニル」は、2〜8個の炭素原子及び少なくとも1つの三重結合を有する直鎖又は分岐の炭化水素基を意味し、それには、エチニル、3−ブチン−1−イル、プロピニル、2−ブチン−1−イル、3−ペンチン−1−イル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
「シクロアルキル」は、3〜8個の炭素原子を有する単環又はポリ環式のヒドロカルビル基、例えば、シクロプロピル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロブチル、アダマンチル、ノルピナニル(norpinanyl)、デカリニル、ノルボルニル、シクロヘキシル及びシクロペンチルを意味する。そのような基は、ヒドロキシ、ケト、アミノ、アルキル及びジアルキルアミノ等のような基で置換され得る。やはり含まれるものは、1〜3個のヘテロ原子が炭素を置換した環である。そのような基は、「ヘテロサイクリル」と称され、O、S、N又は置換窒素から選択される少なくとも1つのへテロ原子をも有するシクロアルキル基を意味する。そのような基の例には、オキシラニル、ピロリジニル、ピペリジル、テトラヒドロピラン及びモルホリンが含まれるが、それらに限定されない。
【0080】
「アルコキシ」により、1〜10個の炭素原子を有し、酸素を通じて連結された直鎖又は分岐鎖のアルキル基が意味される。そのような基の例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、2−ペンチルオキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ及び3−メチルペントキシが含まれるが、これらに限定されない。更に、アルコキシとは、−O−(CH−O−CH等のようなポリエーテルのことをいう。
【0081】
「アシル」は、カルボニル基を通じて結合した1〜10個の炭素原子を有するアルキル又はアリール(Ar)基、即ち、R−C(O)−を意味する。例えば、アシルには、アルキル部分がNR又はカルボキシル基又はヘテロサイクル基によって置換されていてもよい置換アルカノイルを包含するC−Cアルカノイルが含まれるが、これらに限定されない。典型的なアシル基には、アセチル、ベンゾイル等が含まれる。同様に、用語「アセチル」は、式−C(O)CHのことをいう。
【0082】
上記されたアルキル、アルケニル、アルコキシ及びアルキニル基は、好ましくは、NR、フェニル、置換フェニル、チオC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、C−Cアルコキシカルボニル、ハロ、ニトリル、シクロアルキル及び5−又は6−員の炭素環又は窒素、置換窒素、酸素又は窒素から選択される1又は2個のヘテロ原子を有する5−又は6−員のヘテロサイクル環から選択される1〜3個の基により置換されていてもよい。「置換窒素」とは、C−Cアルキル又は(CHPh(pは1、2又は3である)を有する窒素を意味する。ペルハロ及びポリハロ置換も含まれる。
【0083】
置換アルキル基の例には、2−アミノエチル、2−ヒドロキシエチル、ペンタクロロエチル、トリフルオロメチル、2−ジエチルアミノエチル、2−ジメチルアミノプロピル、エトキシカルボニルメチル、3−フェニルブチル、メタニルスルファニルメチル、メトキシメチル、3−ヒドロキシペンチル、2−カルボキシブチル、4−クロロブチル、3−シクロプロピルプロピル、ペンタフルオロエチル、3−モルホリノプロピル、ピペラジニルメチル及び2−(4−メチルピペラジニル)エチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
置換アルキニル基の例には、2−メトキシエチニル、2−エチルスルファニルエチニル、4−(1−ピペラジニル)−3−(ブチニル)、3−フェニル−5−ヘキシニル、3−ジエチルアミノ−3−ブチニル、4−クロロ−3−ブチニル、4−シクロブチル−4−ヘキセニル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
典型的な置換アルコキシ基にはアミノメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−ジエチルアミノエトキシ、2−エトキシカルボニルエトキシ、3−ヒドロキシプロポキシ、6−カルボキシヘキシルオキシ等が含まれる。
【0086】
更に、置換アルキル、アルケニル及びアルキニル基の例には、ジメチルアミノメチル、カルボキシメチル、4−ジメチルアミノ−3−ブテン−1−イル、5−エチルメチルアミノ−3−ペンチン−1−イル、4−モルホリノブチル、4−テトラヒドロピリニジルブチル、3−イミダゾリン−1−イルプロピル、4−テトラヒドロチアゾール−3−イル−ブチル、フェニルメチル、3−クロロフェニルメチルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
「アニオン」との用語は、クロリド、ブロミド、トリフルオロアセテート及びトリエチルアンモニウムのような負に荷電した対イオンを意味する。
本発明における「ハロゲン」との用語は、フッ素、臭素、塩素及びヨウ素を意味する。
【0088】
「ヘテロアリール」により、窒素、酸素又は硫黄から選択される少なくとも1個のそして4個までのヘテロ原子を含有する5−、6−、7−員環の1以上の芳香環系が意味される。そのようなヘテロアリール基には、例えば、チエニル、フラニル、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、(イソ)オキサゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、オキサチアジアゾリル、チアトリアゾリル、ピリミジニル、(イソ)キノリニル、ナフチリジニル、フタルイミジル、ベンズイミダゾリル及びベンゾオキサゾリルが含まれる。好ましいヘテロアリールはピリジンである。
【0089】
「アリール」により、芳香族炭素環基であって、単一の環(例えばフェニル)、複数環(例えばビフェニル)又は複数の縮合環を有し、少なくともそれらの一つが芳香族性である(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ナフチル、アンスリル(anthryl)又はフェナントリル)芳香族炭素環基が意味され、それは、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、トリフルオロメチル、低級アシルオキシ、アリール、ヘテロアリール及びヒドロキシでモノ−、ジ−又はトリ−置換されていてもよい。好ましいアリールはフェニルである。
【0090】
「スルフィド」との用語は、式−S−Rの部分をいう。「スルホキシド」との用語は、式−S(O)−Rの部分をいう。「スルホン」との用語は、式−S(O)−Rの部分をいう。この定義におけるRは、典型的には低級アルキルC−Cアルキルである。
【0091】
さらに、実施例を通じて用いられる次の略語を定義する:「Et」はエチルを意味し、「Bu」はブチルを意味し、「Boc」はtert−ブチルオキシカルボニルを意味し、「AcOH」は酢酸ナトリウムを意味し、「AcOK」は酢酸カリウムを意味し、「PD」はパラジウムを意味し、「IPA」はイソピロパノールを意味し、「THF」はテトラヒドロフランを意味し、「MTBE」は、メチルtert−ブチルエーテルを意味し、「NBS」は、N−ブロモスクシンイミドを意味し、「DBU」は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデサ−7−エンを意味し、「DBN」は1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンを意味し、「LHMDS」はリチウムビス(トリメチルシリル)アミドを意味する。
【0092】
「癌」との用語には、次の癌:乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、前立腺癌、精巣癌、食道癌、胃癌、皮膚癌、肺癌、骨癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、胆汁路(biliary passages)癌、口腔前庭及び咽頭(口腔)の癌、唇癌、舌癌、口(mouth)癌、咽頭癌、小腸癌、結腸直腸癌、大腸癌、直腸癌、脳及び中枢神経形の癌、グリア芽腫、神経芽腫、角化棘細胞腫、類表皮癌、大細胞癌、腺癌、腺癌、腺腫、腺癌、濾胞状癌、未分化腫、乳頭状癌、セミノーマ、黒色腫、肉腫、膀胱癌腫、肝臓癌腫、腎臓癌腫、骨髄障害、リンパ球障害、ホジキン病、ヘアリーセル及び白血病が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
本明細書において用いられる「治療する」との用語には、そのような用語が適用される障害又は状態の進行を逆転、軽減、阻害するか、又はそのような障害又は状態を予防すること、或いはそのような障害又は状態の1以上の症状を予防することを意味する。本明細書において用いられる「治療」との用語は、直前部分において定義されている「治療する」との用語として定義されている治療する行為のことをいう。
【0094】
本明細書において用いられる「薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド及びプロドラッグ」との用語は、信頼できる医療判断の範囲内で過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴うことなく、道理に合った利益/リスク比率と釣り合って患者の組織に接触させて用いるのに適切であり、それらの意図された用途に効力を有する本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミド及びプロドラッグ、並びに可能であれば本願発明の両性イオン形態のことをいう。
【0095】
「塩」との用語は、本発明の化合物の、相対的に非毒性の、無機及び有機酸付加塩のことをいう。これら塩は、化合物の最終的な単離及び精製の間に、精製された化合物の遊離塩基形態と適切な有機又は無機酸とを別々に反応させてこのようにして生成された塩を単離することによって in situ で調製することができる。本発明の式Iの化合物が塩基性化合物である限りは、それらは全て、種々の無機酸及び有機酸と広範な異なる塩を形成することができる。そのような塩は、動物への投与の為には薬学的に許容可能でなければならないが、実際には、最初に反応混合物から塩基化合物を薬学的に許容可能でない塩として単離してから、単純にアルカリ性試薬で処理することによって遊離塩基化合物に変換し、その後に当該遊離塩基を薬学的に許容可能な酸付加塩に変換することがしばしば望ましい。塩基性化合物の酸付加塩は、慣用的なやり方で遊離塩基形態を十分な量の所望の酸と接触させて塩を形成させることにより調製される。遊離塩基形態は、慣用的なやり方で塩形態を塩基と接触させて遊離塩基を単離することによって再生成されうる。遊離塩基形態は、それらの対応する塩形態とは、極性溶媒中での溶解性のような一定の物理学的特性においていくらか異なるが、その他の点では、塩は、本発明の目的について、それぞれの対応する遊離塩基と等価である。
【0096】
薬学的に許容可能な塩基付加塩は、水酸化アルカリ及びアルカリ土類金属又は有機アミンのような金属またはアミンで形成される。カチオンとして用いられる金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグニシウム、カルシウム等である。適切なアミンの例は、N、N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン及びプロカインである;例えば、Berge et al、上掲を参照のこと。
【0097】
酸性化合物の塩基付加塩は、慣用的なやり方で遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させて、塩を生成させることによって調製される。遊離酸形態は、慣用的なやり方で、その塩形態を酸と接触させて遊離酸を単離することによって再生成されうる。遊離酸形態は、それらの対応する塩形態とは、極性溶媒中での溶解性のような一定の物理学的特性においていくらか異なるが、その他の点では、それら塩は、本発明の目的について、対応する遊離酸と等価である。
【0098】
塩は、無機酸であるスルフェート、ピロスルフェート、ビスルフェート、スルファイト、ビスルファイト、ナイトレート、ホスフェート、モノヒドロジェンホスフェート、ジヒドロジェンホスフェート、メタホスフェート、ピロホスフェート、塩酸のようなクロリド、ブロミド、ヨージド、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等から調製され得る。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、スルフェート、ビスルフェート、ナイトレート、アセテート、オキサレート、バレレート、オレエート、パルミテート、ステアレート、ラウレート、ボレート、ベンゾエート、ラクテート、ホスフェート、トシレート、シトレート、マレエート、フマレート、スクシネート、タータレート、ナフチレート、メシレート、グルコへプトネート、ラクトビオネート、ラウリルスルホネート、及びイセチオネート塩などが含まれる。塩は、脂肪族モノ−及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等のような有機酸からも調製され得る。代用的な塩には、アセテート、プロピオネート、カプリレート、イソブチレート、オキサレート、マロネート、スクシネート、スベレート、セバセート、フマレート、マレエート、マンデレート、ベンゾエート、クロロベンゾエート、メチルベンゾエート、ジニトロベンゾエート、フタレート、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、フェニルアセテート、シトレート、ラクテート、マレエート、タータレート、メタンスルホネート等が含まれる。薬学的に許容可能な塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのようなアルカリ及びアルカリ土類金属に基づくカチオン、並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチエルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチエルアミン、エチルアミンなどを包含するがこれらに限定されない非毒性アンモニウム、四級アンモニウム、及びアミンカチオンが含まれ得る。やはり包含されるものは、アルギネート、グルコネート、ガラクツロネートなどのようなアミノ酸の塩である(例えば参照により本明細書に組み込まれる、Berge S.M. et al., “Pharmaceutical Salts,” J. Pharm. Sci.、1977;66:1-19 を参照のこと)。
【0099】
本発明の化合物の薬学的に許容可能な被毒性エステルの例には、アルキル基が直鎖又は分岐鎖であるC−Cアルキルエステルが含まれる。許容可能なエステルには、C−Cシクロアルキルエステル並びにベンジルのようなアリールアルキルエステルも含まれるが、これに限定されない。C1−アルキルエステルが好ましい。本発明の化合物のエステルは、慣用的な方法である“March's Advanced Organic Chemistry、5th Edition”. M. B. Smith & J. March、John Wiley & Sons、2001” に従って調製され得る。
【0100】
本発明の化合物の薬学的に許容可能な非毒性アミドの例には、アンモニア、第一級C−Cアルキルアミン及第二級C−Cジアルキルアミン(それらアルキル基は、直鎖又は分岐鎖である)から誘導されるアミドが含まれる。第二級アミンの場合には、アミンは、1個の窒素原子を含有する5−又は6−員ヘテロサイクルの形態であってもよい。アンモニア、C−Cアルキル第一級アミン、及びC−Cジアルキル第二級アミンから誘導されるアミドが好ましい。本発明の化合物のアミドは、“March's Advanced Organic Chemistry、5th Edition”. M. B. Smith & J. March、John Wiley & Sons、2001 のような慣用的な方法に従って調製され得る。
【0101】
「プロドラッグ」との用語は、例えば血中での加水分解によって in vivo で迅速に変換されて上記式の親化合物を生成させる化合物のことをいう。詳細な説明が以下の文献中に提供されている: T. Higuchi and V. Stella、“Pro-drugs as Novel Delivery Systems,” Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series、及び Bioreversible Carriers in Drug Design、ed. Edward B. Roche、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987。両方とも、参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
本発明は、癌、アテローム性動脈硬化に関連した血管平滑筋増殖、手術後血管狭窄、再狭窄及び子宮内膜症のような細胞増殖性障害;ウイルス感染症、例えばヘルペスのようなDNAウイルス及びHIVのようなRNAウイルス及び真菌感染症を包含する感染症;乾癬、リウマチ様関節炎のような炎症、狼瘡、I型糖尿病、糖尿病性ネフロパシー、多発性硬化症及び糸球体腎炎、ヒトを含む哺乳動物における宿主対移植片疾患を包含する組織移植拒絶反応のような自己免疫性疾患からなる群から選択される障害又は状態を治療する方法であって、そのような障害又は状態を治療するのに有効な量の式Iの化合物又は薬学的に許容可能なその塩を前記哺乳動物へ投与することを含む方法を提供する。
【0103】
本発明は、さらに、癌の様な異常な細胞増殖を治療するために有用な式1の化合物を提供する。本発明は、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、前立腺癌、精巣癌、食道癌、胃癌、皮膚癌、肺癌、骨癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、胆汁路(biliary passages)癌、口腔前庭及び咽頭(口腔)の癌、唇癌、舌癌、口(mouth)癌、咽頭癌、小腸癌、結腸直腸癌、大腸癌、直腸癌、脳及び中枢神経形の癌、グリア芽腫、神経芽腫、角化棘細胞腫、類表皮癌、大細胞癌、腺癌、腺癌、腺腫、腺癌、濾胞状癌、未分化腫、乳頭状癌、セミノーマ、黒色腫、肉腫、膀胱癌腫、肝臓癌腫、腎臓癌腫、骨髄障害、リンパ球障害、ホジキン病、ヘアリーセル及び白血病からなる群からなる群から選択される癌のような異常細胞増殖性障害を治療する方法であって、治療的に有効な量の式Iの化合物又はその薬学的に許容可能な塩をそのような治療を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0104】
本発明のさらなる態様は、血管平滑筋細胞増殖により生じる疾患を患っている対象を治療する方法である。本発明の範囲内の化合物は、血管平滑筋細胞増殖及び遊走を効果的に阻害する。当該方法は、治療を必要としている対象に、血管平滑筋増殖及び/又は遊走を阻害するのに十分な量の式Iの化合物又は薬学的に許容可能なその塩を投与することを含む。
【0105】
本発明は、さらに、通風を患っている対象を治療する方法であって、治療と必要としている対象に、当該状態を治療するのに十分な量の式Iの化合物又は薬学的に許容可能なその塩を投与することを含む方法を提供する。
【0106】
本発明は、さらに、腎嚢胞のような腎臓疾患を患っている対象を治療する方法であって、治療を必要としている対象に、当該状態を治療するのに十分な量の式Iの化合物又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む方法を提供する。
【0107】
cdk及び他のキナーゼに対するそれらの阻害活性のため、本発明の化合物は、in vitoro 及び in vivo の両方において、それらキナーゼの作用機序を研究するためのリサーチツールとしても有用である。
【0108】
上記で特定した治療方法は、好ましくは、治療的に有効な量の式Iの化合物(下記に示す)を治療を必要とする対象に投与することにより行われる。本発明の化合物は、置換2−アミノピリジン類であり、これらはサイクリン依存性キナーゼ4(cdk4)の強力な阻害剤である。これら化合物は容易に合成され、経口及び非経口の様々なルートにより投与され得、そして毒性を殆ど有さないか又は有さない。本発明の化合物は、式Iの化合物のクラスのメンバーである。
【0109】
本発明は、治療的に有効な量の式Iの化合物又はその薬学的に許容可能な塩及びそのための薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
本発明の化合物の多くは、サイクリン依存性キナーゼであるcdk4の選択的な阻害剤である。即ち、それらは、cdk2の様な他のサイクリン依存性キナーゼを包含するチロシンキナーゼ及び他のセリン−トレオニンキナーゼを阻害するよりも強力にcdk4を阻害する。cdk4阻害についてのそれらの選択性にも関わらず、本発明の化合物は、cdk4を阻害する濃度よりも高い濃度においてではあるが他のキナーゼも阻害しうる。しかしながら、本発明の化合物は、cdk4の阻害に必要な濃度と類似する濃度においてCdk6も阻害し得る。なぜなら、cdk6は、cdk4と構造的に類似しており、それと類似した機能を発揮するからである。
【0110】
本発明の好ましい態様は、cdk2を阻害するよりも少なくとも約100倍強くcdk4を阻害する式Iの化合物である。
本発明の好ましい態様は、cdk2を阻害するのに必要な投与量よりも低い投与量においてcdk4を阻害する方法であって、式Iの好ましい化合物をcdk2に勝ってcdk4を選択的に阻害する量で投与することを含む方法を提供する。
【0111】
本発明の式Iの化合物は、有用な薬学的及び医薬的特性を有する。本発明の式Iの化合物の多くは、有意に選択的なcdk4阻害活性を示し、従って、cdk4キナーゼが異常に高まっているか若しくは活性化されている、又は通常の量及び活性で存在するが細胞増殖性障害を治療するためにcdkの阻害が望まれる、広範な臨床的状態の治療において価値を有する。そのような障害には、上の複数の段落中に列挙されたものが含まれるが、それらに限定されない。
【0112】
本発明の化合物は、癌(例えば、白血病及び肺癌、乳癌、前立腺癌及び黒色種のような皮膚癌)、及び乾癬、HSV、HIV、再狭窄およびアテローム性動脈硬化を包含するがそれらに限定されない他の増殖性疾患を治療するために有用である。本発明の化合物を利用して癌を治療するためには、そのような治療を必要とする患者、例えば癌又は他の増殖性疾患を有する患者は、治療的に有効な量の、本発明の化合物を少なくとも一つ含む薬学的に許容可能な組成物を投与される。
【0113】
本発明の化合物は、cdk4の選択的な阻害剤である。即ち、それらは、cdk2のような他のサイクリン依存性キナーゼを包含するチロシンキナーゼ及び他のセリン−トレオニンキナーゼを阻害するよりも強力にcdk4を阻害する。cdk4阻害についてのそれらの選択性にも関わらず、本発明の化合物はcdk4を阻害する濃度よりも高い濃度ではあるが他のキナーゼを阻害しうる。しかしながら、本発明の化合物は、cdk4を阻害するのに必要な濃度と類似する濃度でcdk6も阻害し得る。なぜなら、cdk6はcdk4と構造的に類似しており、そしてそれと類似した機能を発揮するからである。
【0114】
発明の詳しい説明
本発明の化合物の製造の例示がスキーム1〜2中に示される。
本発明の化合物は、一般的なスキームIに従って製造され得る。他の方法で指定しない限り、R、R、R、R、R、R、X、R及びRは上で定義した通りのものである。
【0115】
【化25】

【0116】
【化26】

【0117】
工程A:アミノ化
【0118】
【化27】

【0119】
化合物Ibの組立ては、一般に、約0℃〜約45℃における少なくとも約0.5時間の期間のエタノールのような適切な溶媒中での5−ブロモ−2,4−ジハロピリミジンIaへの置換アミンの付加によって始まる。エタノールの代替溶媒には、アセトニトリル、トルエン、THF又はMTBE及びそれらの組み合わせが含まれる。下記の実施例3においては、置換アミンがシクロペンチルアミンであり、反応は約25℃で約2時間で進行する。この付加は部位選択的であり、所望の異性体の非所望異性体に対する比率は9:1より大きくなる。次いで、結晶化を行って非所望の異性体を生成物から除去することができる。Ib中間体は、余り高価でない2,4−ジクロロピリミジンから始める2工程法においても製造され得る。この反応も、程度は低いものの部位特異的であり、所望の異性体の非所望の異性体に対する比率は3:1である。所望の異性体は、酸性抽出によって非所望の異性体から分離され得、そして正しい異性体は高収率で臭素化されて所望の生成物Ib、即ち5−ブロモ−2−クロロ−4−シクロペンチルアミノピリミジンを生成する。
【0120】
工程B:Heckカップリング及びその後の環化
【0121】
【化28】

【0122】
化合物Icを形成するためのHeckカップリング及びその後の環化は、一般に、遷移金属触媒、通常はパラジウム(0)又はパラジウム(II)触媒、塩基の存在下、そして場合によってホスフィン物質の存在下での、化合物Ibと置換オレフィンとの混合により進行する。典型的なパラジウム(0)触媒には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム [(Ph3P)4Pd]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム [Pd2(dba)3] 及びビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0) [(dba)2Pd] が含まれる。典型的なパラジウム(II)化合物には、酢酸パラジウム [Pd(OAc)2]、塩化パラジウム (PdCl2)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム [(C6H5CN)2PdCl2] 及び(ビス−(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド ジクロロメタンコンプレックス (Pd(dppf)2Cl2)が含まれる。Heckカップリングにおいて用いられる典型的なホスフィン化合物には、単座ホスフィン物質、例えば、トリフェニルホスフィン (Ph3P)、トリオルトトリルホスフィン [(o-CH3Ph)3P]、トリ−t−ブチルホスフィン及び二座ホスフィン物質、例えば、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィン)−1,1’−ビナフチル (BINAP)及び1,3 ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンが含まれる。本発明の好ましい条件は、パラジウムジクロリドジベンゾニトリルを、トリオルトトリルホスフィンと組み合わせて用いることである。Heck反応において用いられ得る典型的な塩基には、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリエチルアミン(TEA)、炭酸リチウム及びジシクロヘキシルメチルアミンが含まれる。好ましいアミンはDIEAである。Heck反応は、約60℃〜約90℃で少なくとも10時間行われる。実施例3においては、用いられる溶媒はTHFであり、塩基はジイソプロピルエチルアミンであり、当該溶媒は約70℃に少なくとも16時間加熱された。代替的な溶媒には、トルエン、THF及びそれらの組み合わせが含まれる。このようにして形成される中間体エステル又は酸は、加熱により、リチウム、ナトリウム若しくはカリウムエトキシドのようなアルコキシド塩基、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデサ−7エン(DBU)若しくは1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)のような強アミン塩基を用いる処理により、又は好ましくはRがHである場合には、無水酢酸、アセチルクロリド若しくはオキシ塩化リンのような脱水剤の添加により環化される。
【0123】
上記反応におけるRは、HであってもC−Cアルキルであってもよく、典型的にはIc 中に繰り越される。しかしながら、本発明の好ましい化合物については、RはHである。
【0124】
工程C:アミノ−ピリジニルカップリング
化合物Idへの進行は2つの工程を含む。
【0125】
【化29】

【0126】
化合物Ic又はIc2のハロゲン化は、多くのハロゲン化条件の下で行われ得る。好ましくは、その反応は、適切な溶媒中へのBr又はI及び塩基の添加及び約40℃〜約60℃への加熱及び少なくとも16時間の撹拌によって行われ得る。下記の実施例4aにおいては、当該塩基は酢酸ナトリウムであり、溶媒は酢酸であり、そして溶液は約50℃に加熱され、約35時間撹拌された。代替的な塩基には酢酸カリウムが含まれ、代替的な溶媒にはメタノール及びジクロロメタン及びそれらの組み合わせが含まれる。好ましいハロゲン化剤には、臭素、NBS又はジブロモヒダントインが含まれる。
【0127】
【化30】

【0128】
アミノピリジル側鎖Ic3の中間体Ic又はIc1への結合は、アミノピリジル側鎖Ic3をリチウム塩基及びトルエンと共に適切な溶媒中に添加することにより進行する。アミノピリジル側鎖Ic3は、好ましくは、適切な溶媒中で最初にトルエン及びリチウム塩基と混合されることにより単独で準備される。化合物Ic又はIc1は、好ましくはトルエン中で単独でスラリー化されてから、アミンIc3混合物と合わせる。反応は、0〜30℃で少なくとも15分進められてから、クエンチングする。好ましい温度は20℃で少なくとも30分であり、その後にクエンチングする。下記の実施例4においては、リチウム塩基はビス(トリメチルシリル)アミドであったが、代替物として任意のリチウム塩基を用いることができる。他の適切な溶媒にはMTBEが含まれ、やや好ましくはTHFが含まれる。
【0129】
上記において定義したように、RはR−PGであり、PGはアミン保護基である。下記の実施例4においてはRはBocであるが、Rは、ヘキサジエニルオキシカルボニル(Hdoc)、トリチル及びトリチル誘導体、例えば9−(9−フェニルフルオレニル)又はメトキシトリチル及びジメトキシトリチルのような他の酸不安定性アミン保護基でもよい。
【0130】
工程D:部位選択的Heckカップリング
【0131】
【化31】

【0132】
Idの化合物が、ビニルエーテル及び塩基と、n−ブタノールのような適切な溶媒中で混合される。次いで、パラジウム触媒が加えられ、その混合物は少なくとも約10時間約75℃〜約105℃の範囲に加熱される。下記の実施例5においては、当該混合物は95℃で20時間n−ブタノール中で撹拌された。好ましい触媒には、本セクションの工程B中に挙げられたものが含まれる。より好ましい触媒は、二座配位子を有するパラジウム触媒であり、最も好ましい触媒はビス−(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド ジクロロメタンコンプレックス [Pd(dppf)2Cl2]である。代替的なパラジウム触媒上の二座配位子には、Binap及び1,3 ビス(ジフェニルホスフィノ)が含まれ、代替的な溶媒には、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)及びDMI(N,N−ジメチルイミダゾリジノン)が含まれる。好ましい塩基はジイソプロピルエチルアミン(DIEA)である。代替的な塩基には、炭酸リチウム(炭酸リチウムの存在は、反応の選択性を上昇させる)、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリエチルアミンが含まれる。好ましいビニルエーテルはn−ブチルビニルエーテル及びエチルビニルエーテルである。
【0133】
工程E:脱保護及びイセチオン酸の添加
【0134】
【化32】

【0135】
イセチオン酸塩への最終工程には、WO2005005426中に示された通りの方法を用いて、化合物Ie又はIfを約55〜60℃に加熱し、イセチオン酸を加えることを含む。反応は少なくとも1.5時間に渡って、より好ましくは3時間に渡って起きる。
【0136】
スキームIの式Ic3のアミノピリジニル化合物は、商業的に入手可能な5−ブロモ−2−ニトロピリジンから、塩基又はパラジウムにより促進されるアルコール又は第一級若しくは第二級アミンのような求核試薬による臭素の置換と、それに続くニトロ基の還元により製造され得る。この方法の代表例は下記のスキームIII中に示されており、具体的な例は下記の実施例2中に開示されている。この反応のために用いられ得る塩基の例には、KCO又はNaCOが含まれる。これら塩基は、BuNIのような相間移動触媒の存在下で用いられ得る。パラジウムにより促進される反応は、典型的には、Pd(OAc)(酢酸パラジウム(II))、Pd2(dba)3、Pd(dba)2(ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム)又はPd(PPh34(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム)等のような触媒を用いて、DMSO、トリエチルアミン、DMF、IPA/HO、ブタノール/HO、DMI、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン又はアセトニトリルのような非極性有機溶媒中で、25〜110℃の温度で行われる。これら触媒は、典型的には適切な配位子、例えばBINAP(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン)、Xantphos(商標)(Strem Chemicals Inc.)又は関連したホスフィン−ベース Pd配位子と共に用いられる。ニトロ基の還元は典型的にはラネーニッケルを用いて行われるが、パラジウム担持活性炭又はFe/HClを含む他の還元剤も用いられ得る。.
【0137】
【化33】

【0138】
スキームIの更なる置換ピリジン誘導体Ic3は、当業者に知られている方法により製造され得る。代表的な手順の例は、Comprehensive Heterocyclic Chemistry, Eds. A. R. Katritzky, C. W. Rees, 1984、Pergamon、NY; Volume 2、Chapter 2.08、Pyridines and their Benzoderivatives: Synthesis、Gurnos Jones中に見出すことができる。また、Comprehensive Heterocyclic Chemistry II, Eds. A. R. Katritzky, C. W. Rees., E. Scriven, 1996, Pergamon, NY; Volume 25, Chapter 5.05, Pyridines and their Benzoderivatives: Synthesis、Gurnos Jonesも参照されたい。代表的な例は、下記のスキームIV中に記載される。
【0139】
【化34】

【0140】
本発明の化合物は、製剤化されて、経皮及び経直腸投与を含む広範な経口及び非経口投与形態で投与され得る。次の投与形態が活性成分として式Iの化合物又は対応する薬学的に許容可能な塩又は式Iの化合物の溶媒和物を含み得ることは、当業者に理解されるであろう。
【0141】
本発明には、治療的に有効な量の式Iの化合物と共にそのための薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬製剤も含まれる。本発明の化合物を有する医薬組成物の製造のためには、薬学的に許容可能な担体は、固体であっても液体であってもよい。固体形態の製剤には、散剤、錠剤、丸剤、カプセル、カシェ剤、坐剤及び分配可能な(dispensable)顆粒剤が含まれる。固体担体は、希釈剤、着香剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤又はカプセル化材料としても作用し得る1以上の物質であってよい。
【0142】
散剤中では、担体は、細かく分割された活性成分との混合物であるタルク又はデンプンのような細かく分割された固体である。錠剤においては、活性成分は必要な結合特性を有する担体と適切な比率で混合され、そして望まれる形態及びサイズに成形される。
【0143】
本発明の製剤は、好ましくは約5%〜約70%又はそれより多い活性化合物を含有する。適切な担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂等が含まれる。経口使用のための好ましい形態はカプセルであり、それには、カプセルを提供する担体としてのカプセル化材料を有する活性化合物の製剤であって、担体に活性成分が他の担体と共に又は他の担体を伴うことなく囲まれ、従ってそれに関連するものが含まれる。同様に、カシェ剤及びロゼンジも含まれる。錠剤、散剤、カプセル、丸剤、カシェ剤、及びロゼンジは、経口投与に適する固体投与形態として用いられ得る。
【0144】
坐剤を調製するためには、先ず、脂肪酸グリセリドの混合物又はカカオ脂のような低融点ワックスが融解され、活性成分が撹拌によってその中に均質に分散される。次いで、その融解均質混合物が都合のよいサイズの型中に注がれ、冷却され、それによって凝固する。
【0145】
液体形態製剤には、水又は水/プロピレングリコール溶液剤のような溶液剤、懸濁液剤及びエマルションが含まれる。非経口注射剤のためには、液体製剤は、水性ポリエチレングリコール溶液、等張性生理食塩水、5%グルコース水等中の溶液剤に製剤化されてもよい。経口使用のために適する水溶液剤は、活性成分を水中に溶解させ、適する着色剤、着香剤、安定化剤及び増粘剤を所望により添加することにより調製され得る。経口使用に適する水性懸濁液剤は、細かく分割された活性成分を水中に分散し、天然又は合成のガムのような粘性の材料、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又は他の周知の懸濁化剤と混合することにより調製され得る。
【0146】
やはり含まれるものは、使用直前に経口投与のための液形態製剤に変換されることが意図されている固体形態製剤である。そのような液体形態には、溶液剤、懸濁液剤及びエマルションが含まれる。これら製剤は、活性成分に加えて、着色剤、着香剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然の甘味料、分散剤、増粘剤、安定化剤等を含有し得る。ワックス、ポリマー、微粒子などが、持続放出投与形態を調製するために利用され得る。また、活性化合物を長期間に渡って一様に送達するために浸透圧ポンプも用いられ得る。
【0147】
本発明の医薬製剤は、好ましくは単位投与形態である。そのような形態で、製剤は適切な量の活性成分を含有する単位剤形に小分けされる。単位投与形態は包装された製剤であってよく、その包装は、バイアル又はアンプル中にパケット化(packeted)された錠剤、カプセル剤及び散剤のような別々の量の製剤を含有する。また、単位投与形態はカプセル、錠剤、カシェ剤又はロゼンジそれ自体であってよく、また、それは、適切な数のこれらのいずれかが包装された形態のものであってもよい。
【0148】
式Iの化合物の治療的に有効な量は、1日当たりおよそ0.01mg/kg体重〜およそ100mg/kg体重で変動する。典型的な大人投与量は、1日当たりおよそ0.1mg〜およそ3000mgである。単位投与製剤中の活性成分の量は、特定の適用及び活性成分の強度によって、およそ0.1mg〜およそ500mg、好ましくは約0.6mg〜100mgで変動又は調整されうる。組成物は、望まれる場合には、他の適合可能な治療剤も含有し得る。式Iの化合物を用いて治療することを必要とする対象は、1日当たり約0.6〜約500mgの投与量を、24時間にわたって単回又は多数回の投与で投与される。このような治療は、必要である限り逐次的な間隔で繰り返されてもよい。
【0149】
本発明は、癌、アテローム性動脈硬化に関連した血管平滑筋増殖、手術後血管狭窄、再狭窄及び子宮内膜症のような細胞増殖性障害;ウイルス感染症、例えばヘルペスのようなDNAウイルス及びHIVのようなRNAウイルス及び真菌感染症を包含する感染症;乾癬、リウマチ様関節炎のような炎症、狼瘡、I型糖尿病、糖尿病性ネフロパシー、多発性硬化症及び糸球体腎炎、宿主対移植片疾患を包含する組織移植拒絶反応のような自己免疫性疾患からなる群から選択される障害又は状態を治療するための医薬組成物を提供する。
【0150】
下記に提示される実施例は、本発明の特定の態様を例示することを意図するものであり、決して本明細書又は特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
当業者は、次の実施例によって実証されている様に、出発物質を変動させ、追加の工程を用いて本発明により包含される化合物を製造できることを理解するであろう。次の実施例は、例証的目的だけのためのものであり、本発明を限定するものと意図するものでもなければいかなる方法によってもそのように解釈されるべきものでもない。当業者は、本発明の精神及び範囲に違反することなく変動及び修飾を行うことができることを理解するであろう。
【0151】
本発明及びそれを製造及び使用するやり方及び方法は、関連する技術分野の当業者が本願発明を製造し使用できるように、完全で、明確で、簡潔でそして正確な用語で記載されている。上記の記載は本発明の好ましい態様を説明するものであること、及び特許請求の範囲に示されている通りの本発明の精神又は範囲を逸脱することなく修飾を行うことができることが理解されるべきである。本発明とみなされる主題を詳しく示し、そしてはっきりと請求するために、特許請求の範囲が本明細書を完結させる。
【0152】
比較例1:当初のルート
【0153】
【化35】

【0154】
比較例1A:4−[6−(6−フロモ−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ)−ピリジン−3−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステルの製造
6−ブロモ−8−シクロペンチル−2−メタンスルフィニル−5−メチル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(10.00g、0.027mol、参照により本明細書中に組み込まれるWO01/707041の実施例6における様に製造されたもの)及び10.37g(0.0373mol)の4−(6−アミノ−ピリジン−3−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルのトルエン(100mL)中懸濁液が、窒素下で油浴中で7時間加熱された。薄層クロマトグラフィー(SiO2、10%MeOH/DCM)が、両方の出発物質の存在を示した。その懸濁液を還流下で更に18時間加熱した。生じた懸濁液を室温に冷却し、濾過して4−[6−(6−ブロモ-8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ)−ピリジン−3−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.93g、38%)を得た。融点>250℃。MS(APCI) M+ +1: 計算値584.2、実測値584.2
比較例1B:4−{6−[8−シクロペンチル−6−(1−エトキシ−ビニル)−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ-ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの製造
4−[6−(6−ブロモ−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ)−ピリジン−3−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.93g、0.010mol、比較例1Aにおける様に製造されたもの)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.40g、0.00121mol)、及びトリブチル(1−エトキシビニル)スズ(5.32mL、0.0157mol)のトルエン(30mL)中懸濁液が、還流下で3.5時間加熱された。この混合物を冷却し,濾過して固体を得た。この固体を15分にわたる5%-66%の酢酸エチル/ヘキサンのグラジェントを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、4−{6−[8−シクロペンチル−6−(1−エトキシ−ビニル)−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルを黄色フォームとして得た(4.50g、78 %)。MS (APCI) M++1: 計算値576.2、実測値576.3
比較例1C:6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン塩酸塩の製造
塩化水素ガスを氷浴冷却した4−{6−[8−シクロペンチル−6−(1−エトキシ−ビニル)−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ-ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(4.50g、0.00783mol、2005−0059670A1における様にして製造された)のDCM(100mL)溶液中へバブリングした。生じた懸濁液に栓をして室温で一晩撹拌し、次いでジエチルエーテル(200mL)で希釈した。この固体をろ取により集め、ジエチルエーテルで洗浄し、そして乾燥させて、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの塩酸塩を黄色固体として得た(4.01g、92%)。融点200℃。HPLC, C18逆相、22分間で0.1%TFA/H2O中10%-95%グラジェントの0.1%TFA/CH3CN:11.04分において99.0%。MS (APCI) M+ +1:計算値448.2、実測値448.3。元素分析C24H29N7O2・2.4 H2O・1.85 HClの計算値: C、51.64; H、6.44; N、17.56、Cl(トータル)、11.75。実測値:C、51.31; H、6.41; N、17.20; Cl(トータル)、12.11。
【0155】
実施例2:4−(6−ニトロ−ピリジン−3イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの製造
【0156】
【化36】

【0157】
実施例2A:4−(6-ニトロ−ピリジン−3イル)-ピペラジン-1-カルボン酸tert−ブチルエステルの製造
1.0kg(5mol)5−ブロモ−2−ニトロピリジンに、1.2kg(6.4mol)のBocピペラジン(tert−ブチル ピペラジン−1−カルボキシレート)を、2.6LのDMSO及び0.5kgのトリエチルアミン中で窒素下で加えた。混合物を65−70℃に加熱し、30時間維持した後、固体がいくらか析出した。水を加え、反応液を25℃に2時間に渡って冷却した。生じたスラリーをろ過し、洗浄し、45℃で乾燥して1.2kg(79%粗収率)のカナリアイエローの固体中間体(2A)を得た。これは、更に生成することなく続く工程において用いられた。
【0158】
実施例2:4−(6−ニトロ−ピリジン−3イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(2)の製造
Parr反応容器中に60.0gの20%Pd(OH)2/C、1213.1g(3.9mol)の中間体2a、及びイソプロパノールが充填されて撹拌され、次いで、ガスの下でパージされ、続いて触媒を加圧下で除去した。ろ液を〜20℃で真空下で濃縮して917gの乾燥褐色粉末が残った(粗収率〜84%)。
【0159】
実施例3:2−クロロ−8−シクロペンチル−5−メチル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの製造
【0160】
【化37】

【0161】
実施例3A:5−ブロモ−2−クロロ−4−シクロペンチル−アミノピリミジンの製造
エタノール中の1g(0.004mol)の5−ブロモ−2、4−ジクロロピリミジンへ、1.5kg(0.018mol)のシクロペンチルアミンを窒素下で加えた。混合物を25℃で2時間撹拌した。水を加えて生成物を析出させ、固体をヘキサン4:1を用いて再結晶して白色結晶生成物(3A)を得た。
【0162】
実施例3:2−クロロ−8−シクロペンチル−5−メチル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの製造
41.5g(0.15mol)の5−ブロモ−2−クロロ−4−シクロペンチルアミノピリミジン3a及び32.3g(0.375mol)のクロトン酸を100LのTHF及び105ml(1.6mol)のジイソプロピルエチルアミン中で窒素下で混合した。スラリーを撹拌し、窒素を3回排出して再充填した後、860mg(0.0022mol)のパラジウムジクロリドジベンゾニトリルコンプレックス及び685mg(0.0022mol)のトリ−オルト−トリルホスフィンが添加され、生じたスラリーを更に3回脱気した。次いで、16時間70℃で混合物を加熱し撹拌した後、35mlの無水酢酸を添加し、混合物をさらに1.5時間撹拌した。混合物を冷却し、100mlのMTBEで希釈し、次いで1N HClで抽出し、その後炭酸水素ナトリウム水及び食塩水。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮し、IPAから再結晶して、31.2g(68%)の粗精製生成物(3)を得た。
【0163】
実施例4:4−[6−(6−ブロモ−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ-ピリド[2,3−d]ピリミジン-2−イルアミノ)−ピリジン−3イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【0164】
【化38】

【0165】
実施例4A:2−クロロ-8−シクロペンチル−5−メチル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの製造
10g(0.04mol)の中間体3及び13g(0.16mol)の酢酸ナトリウムを、50mlの氷酢酸及び12g(0.08mol)の臭素と、窒素下で混合した。この溶液を50℃に加熱し、35時間撹拌し、次いで室温に冷却した。亜硫酸水素ナトリウムを、臭素色が消失するまで加え、次いでクエンチングし、ろ過し、そして洗浄して固体を得て、続いて500mlの熱IPA中に溶解し、熱時ろ過し、冷却した。生じた結晶を更にろ取し、真空化で65℃で乾燥して8g(61%)の粗精製生成物(4A)を得た。
【0166】
実施例4:4−[6−(6−ブロモ-8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン-2−イルアミノ)−ピリジン−3イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの製造
3.78g(2.10当量;13.6mmol)の中間体1、25mlのトルエン及びリチウムビス(トリメチルシリル)アミドの1M THF液(13.6mmol;13.6mL;12.1g)を10分間窒素下で混合して暗色溶液を生成させた。別のビーカー中で中間体4a(1.00当量、6.47mmol;2.50g)をトルエン中でスラリー化させ、次いで1を含有する混合物中へ添加して30分撹拌した後、合わされた混合物を25mlの1M炭酸水素ナトリウムでクエンチングし、濾過した。或いは、その合わされた混合物は、塩化アンモニウムでクエンチングされてもよい。ろ過ケーキをトルエン、次いでアセトン、次いで水で洗浄し、60℃で乾燥させて3.5g(92%)の灰黄色固体4を得た。
【0167】
実施例5:4−{6−[6−(1−ブトキシ−ビニル)−8−シクロペンチル−5−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの製造
【0168】
【化39】

【0169】
768g(1.3mol)の中間体4を、395g(3.9mol)ブチルビニルエーテル、4.7Lのn−ブタノール及び275ml(1.6mol)のジイソプロピルエチルアミンと、窒素下で混合した。スラリーを撹拌し、約50torr(約6666Pa)真空度とし、次いで窒素で再充填した;これを2回以上繰り返した。この脱気された溶液へ、22g(0.03mol)のビス−(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド ジクロロメタンコンプレックスを加えて、生じたスラリーをさらに3回上記した通りに脱気した。次いで、混合物を95℃で20時間加熱して混合した。生じた薄い赤色のスラリーを4Lの分岐オクタン類で希釈し、約5℃に冷却した後、1Lの飽和炭酸カリウム水溶液を加え、その混合物をろ過し、500mlの分岐オクタン類でリンスした。16時間45℃で乾燥した後、664g(83%)の灰色固体生成物(5)が得られた。さらに、カラムクロマトグラフィーを行って更にその粗生成物を精製することができる。
【0170】
実施例6:6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの製造
【0171】
【化40】

【0172】
11.6g(1.00当量、19.2mmol)の中間体5、水(10.1当量;193mmol;3.48mL;3.48g)及びメタノール(3.62mol;146mL;116g)をあわせて55-60℃に加熱した。透明な溶液が得られるまでイセチオン酸をゆっくりと加えた;この終点に到達するためには3.3gのイセチオン酸が必要であった。生じた透明オレンジ溶液を、紙を通じてろ過し、20mlメタノールを用いてリンスした後、ろ液を55-60℃に再加熱し、残りのイセチオン酸を加えた(合計で9.93gが加えられた)。6時間、反応混合物が析出し、濃くなった。その後、冷却し、30-35℃に維持し、トリエチルアミン(2.92g;28.8mmol)を10%メタノール溶液としてゆっくりと12時間に渡って添加した。トリエチルアミン添加のおよそ中間で、所望の多形種晶を添加して所望の多形の形成を助長した。生じたスラリーを冷却し、5℃に15分保持し、結晶をろ取し、メタノールで洗浄した。固体生成物を真空化で55℃で乾燥して11gの標題化合物の黄色結晶を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I
【化1】

の化合物を製造する方法であって、
(a)式:
【化2】

の化合物と、式Id
【化3】

の化合物とを{式中、
は、水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル又はC−Cシクロアルキルであり;
は、Br又はIであり;
は、水素、OH、−NH、アリール、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル又はC−C−へテロサイクリルであり;
は、−(CR−N(PG)R、及び−(CR−(PG保護N環原子を含む3〜10員ヘテロサイクル)からなる群から選択される−R−PGであり、そしてPGは、酸不安定性アミン保護基であり;
、即ちPGを有さないRは、−(CRNR−又は−(CR−(N環原子を含む3〜10員ヘテロサイクル)であり、mは、0、1、2又は3であり;
は、C−Cアルキルであり;そして
及びRは、各々独立してH又はC−Cアルキルである}
、遷移金属触媒、塩基、及び場合によりホスフィン物質の存在下で、適切な溶媒中で、反応させ、式Ie又はIf
【化4】

の化合物を形成する工程;及び
(b)続いて式Ie又はIfの化合物又はそれらの混合物とイセチオン酸とを、適切な溶媒中で反応させる工程
を含む方法。
【請求項2】
Iの化合物が、化合物1:
【化5】

(PGはBocであり、Rはn−ブチルである)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属触媒が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム [(Ph3P)4Pd]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム [Pd2(dba)3]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0) [(dba)2Pd]、酢酸パラジウム [Pd(OAc)2]、塩化パラジウム (PdCl2)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム [(C6H5CN)2PdCl2] 及び(ビス−(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド ジクロロメタンコンプレックス (Pd(dppf)2Cl2)からなる群から選択されるパラジウム化合物であり、前記ホスフィン化合物が、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン (BINAP)、1,3 ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、トリフェニルホスフィン (Ph3P)、トリオルトトリルホスフィン [(o-CH3Ph)3P] 及びトリ−t−ブチルホスフィンから選択されるものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記遷移金属触媒が(ビス−(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド ジクロロメタンコンプレックス (Pd(dppf)2Cl2)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)における塩基が、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸リチウム、ジシクロへキシルメチルアミン及びトリエチルアミンからなる群から選択されるものである、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基がジイソプロピルエチルアミンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらに、
(c)式Ic
【化6】

の化合物をハロゲン化条件のもとでハロゲン化して、式Ic1
【化7】

(Xは、ハロゲン、スルフィド、スルホキシド又はスルホンである)の化合物を生成させる工程;及び、続く
(d)式Ic1の化合物と、式Ic3
【化8】

の化合物とを、リチウム塩基の存在下で適切な溶媒中で反応させて、式Idの化合物を生成させる工程を含む、請求項1、2、3、4、5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記ハロゲン化条件が、酢酸、酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの存在下における(Rである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リチウム塩基がリチウムビス(トリメチルシリル)アミドである、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
がClである、請求項7、8又は9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、
(e)式Ic
【化9】

の化合物と、式Ic3
【化10】

の化合物とを、リチウム塩基の存在下で適切な溶媒中で反応させて、Ic2
【化11】

の化合物を生成させる工程;及び
(f)式Ic2の化合物をハロゲン化条件下でハロゲン化して式Idの化合物を生成させる工程を含む、請求項1、2、3、4、5又は6に記載の方法。
【請求項12】
前記ハロゲン化条件が、酢酸、酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの存在下での(Rである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リチウム塩基が、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
がClである、請求項11、12又は13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、
(g)式Ib
【化12】

の化合物と式:
【化13】

(Rは、H、C−Cアルキル及び−C(O)−C−Cアルキルから選択される)
の化合物とを、塩基、遷移金属触媒及び場合によりホスフィン物質の存在下、適切な溶媒中で反応させる工程;及び
(h)工程(g)で生じた生成物を分子内環化反応させて式Icの化合物を生成させる工程を含む、請求項7、8、9、10、11、12、13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記遷移金属触媒が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム [(Ph3P)4Pd]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム [Pd2(dba)3]、ビス(ジベンジリデンアセトン) パラジウム(0) [(dba)2Pd]、酢酸パラジウム [Pd(OAc)2]、塩化パラジウム (PdCl2)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム [(C6H5CN)2PdCl2] 及び(ビス-(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド ジクロロメタンコンプレックス (Pd(dppf)2Cl2) からなる群から選択されるパラジウム化合物であり、前記ホスフィン化合物が、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン (BINAP)、1,3 ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、トリフェニルホスフィン (Ph3P)、トリオルトトリルホスフィン [(o-CH3Ph)3P] 及びトリ−t−ブチルホスフィンから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(g)における塩基がジイソプロピルエチルアミンであり、工程(g)における遷移金属触媒がパラジウムジクロリドジベンゾニトリルであり、工程(g)がトリオルトトリルホスフィンの存在下で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
がHであり、分子内環化がカップリング剤の存在下で行われる、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項19】
がHであり、分子内環化が無水酢酸又は酢酸クロリドの存在下で行われる、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項20】
さらに、
(i)式Ia
【化14】

の化合物と式R−NHの化合物とを、塩基の存在下で適切な溶媒中で反応させて式Ibの化合物を生成させる工程を含む、請求項15、16、17、18又は19に記載の方法。
【請求項21】
Ic
【化15】

(Rは、水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル又はC−Cシクロアルキルであり;
はBr又はIであり;そしてRは水素、OH、−NH、アリール、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル又はC−C−へテロサイクリルである)の化合物を製造するための方法であって;
(a)式Ib
【化16】

の化合物と式:
【化17】

(Rは、H、C−Cアルキル及び−C(O)−C−Cアルキルから選択される)の化合物とを、塩基、遷移金属触媒及び場合によりホスフィン物質の存在下で適切な溶媒中で反応させる工程;及び
(b)工程(a)で生じた生成物を無水酢酸で適切な溶媒中で処理して式Icの化合物を生成させる工程を含む方法。
【請求項22】
工程(a)の溶媒がトルエン及びTHFから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記遷移金属触媒が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム [(Ph3P)4Pd]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム [Pd2(dba)3]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0) [(dba)2Pd]、酢酸パラジウム [Pd(OAc)2]、塩化パラジウム (PdCl2)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム [(C6H5CN)2PdCl2] 及び(ビス−(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド ジクロロメタンコンプレックス (Pd(dppf)2Cl2)からなる群から選択されるパラジウム化合物であり、そして前記ホスフィン化合物が、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン (BINAP)、1,3 ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、トリフェニルホスフィン (Ph3P)、トリオルトトリルホスフィン [(o-CH3Ph)3P] 及びトリ−t−ブチルホスフィンから選択される、請求項21に記載の方法。

【公開番号】特開2008−94834(P2008−94834A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−232730(P2007−232730)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】