説明

2つのピボット連結部を有する電動関節およびこの関節を実装したヒューマノイドロボット

本発明は、2つのピボット連結部を有する電動関節と、この関節を実装したヒューマノイドロボットとに関する。関節は、軸が平行でない2つのピボット連結部と、第一の減速機(21)によって2つのピボット連結部のうちの第一の連結部を駆動する第一のモータ(20)と、第二の減速機(23)によって2つのピボット連結部の第二の連結部(17)を駆動する第二のモータ(22)を備える。本発明によれば、2つの減速機の一方(23)は、この減速機(23)に関連するモータ(22)とピボット連結部(17)との間にかさ歯車(34)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのピボット連結部を有する電動関節と、この関節を実装したヒューマノイドロボットに関する。本発明は特に、人間工学的改良が望まれるヒューマノイドロボットの生産において特に有益である。
【背景技術】
【0002】
この種のロボットには多数の関節が設けられており、それによってロボットの体の頭や四肢といったさまざまな部分を動かすことが可能となる。人体の特定の関節、たとえば肩、肘または首は、ロボットにおいては、ダブルピボット連結部とも呼ばれる2つのピボット連結部を含む関節によって再現できる。より詳しくは、第一のピボット連結部の出口が第二のピボット連結部への入口を形成する。たとえば、肘では、前腕が上腕に関して関節接続され、前腕の延在する軸を中心とした前腕の第一の回転と、第一の軸に対して直角な軸を中心とした第二の回転を可能にする。すなわち、前腕は上腕に関して2回転自由度を有する。
【0003】
ロボットにおいて、関節は、たとえば回転電気モータによって電動化され、各モータで1回転自由度を制御することが可能である。したがって、前述のような相互に直角な2つの軸を有する関節の場合、2つのモータが必要であり、各々が回転を制御する。この関節を製作するために、モータを各々の回転軸と整列させることが可能である。このような配置は実装しやすいが、たとえば肘の場合、モータの一方は、関節に関して突出せざるをえない。この突出部は、ロボットの特定の運動の障害となる。
【0004】
さらに、ロボットが腕を体に沿わせることができるようにするためには、肘に設けたモータによってできる突出部が、体の外側に向かって延びていなければならない。突出部は、ロボットの脊柱を形成する縦軸に関して対称に配置される。この配置にするために、関節も対称であることが必要となる。関節を全く同じにすることはできないため、ロボットを構成する機械的部品を標準化できる度合いが低くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の問題のいくつかまたは全部を、モータに必然的に伴う突出部をなくすことによって解消することである。一般に、本発明により、2つのピボット連結部を有する関節をさらに小型化することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明の主題は、軸が相互に平行でない2つのピボット連結部と、2つのピボット連結部の第一の連結部を第一の減速機によって駆動する第一のモータと、2つのピボット連結部の第二の連結部を第二の減速機によって駆動する第二のモータと、を有する関節であり、2つの減速機の一方は、この減速機に関連するモータとピボット連結部との間にかさ歯車を有することを特徴とする関節である。
【0007】
本発明の目的は、本発明による少なくとも1つの関節を有するヒューマノイドロボットでもある。
【0008】
添付の図面に描かれている、例としてのいくつかの実施形態に関する詳細な説明を読むことによって、本発明をよりよく理解でき、他の利点も明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ヒューマノイドロボットの肘を形成する関節を示す。
【図2】本発明の第一の実施形態の運動図である。
【図3】図2に概略が示される関節の主要部分の実施形態を示す。
【図4】本発明の第二の実施形態の運動図である。
【図5】図4に概略が示される関節の主要部分の実施形態を示す。
【図6】その環境で組み立てられた第二の実施形態による関節の変形例と、遊星歯車列を有する減速機を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
明瞭を期すために、異なる図面においても、同じ要素には同じ参照番号を付す。
【0011】
本発明を、ヒューマノイドロボットの肘に関して説明する。本発明は、この肘に限定されず、どのような電動ダブルピボット連結関節、特に首や肩等のヒューマノイドロボットの肘以外の関節にも実装できることがわかるであろう。
【0012】
図1は、ヒューマノイドロボットの上肢10の一部を示す。上肢10は、上腕11と前腕12を含む。関節13によって、前腕12は上腕11に対して、2つの回転軸にしたがって動くことができる。第一の軸14は前腕11の主方向に沿って延び、第二の軸15は軸14に対して直角である。関節13は、2つのピボット連結部16、17を含む。ピボット連結部16により、前腕12による軸14の周囲の回転が可能となり、ピボット連結部17により、前腕12による軸15の周囲の回転が可能となる。図1において、ピボット連結部16、17は、上腕11と前腕12のケーシングによって部分的に隠れている。軸14、15が直角である構成が好ましい。本発明を実装するには、軸14、15が収束しない関節も製作できることがわかるであろう。一般に、本発明は、相互に平行でない軸14、15でも実装可能である。
【0013】
図2は、本発明の第一の実施形態の運動図である。関節13は、第一の減速機21によってピボット連結部16を駆動する第一のモータ20と、第二の減速機23によってピボット連結部17を駆動する第二のモータ22を備える。
【0014】
モータ20、22は回転モータである。これらは、どのような種類であってもよく、たとえば直流電気モータであってもよい。
【0015】
減速機21は、平行な軸を有する。これは、複数の直線歯車列を含む。図の例では、4つの歯車列24から27が連続して連結され、必要な減速比を得られるようになっている。モータ20は、歯車列24を駆動し、歯車列27の出力軸28は、ピボット連結部16の回転部分を形成する。ピボット連結部16の固定部分は、上腕11の支持構造29によって形成される。モータ20のステータ30も支持構造29と一体である。モータ20の回転により、ピボット連結部16において、減速機21によって支持構造29に関する出力軸28の運動の各種のパラメータ、すなわち角度位置、速度、トルクを制御することが可能となる。したがって、モータ20は軸14の周囲での前腕11の運動を制御する。
【0016】
減速機21の出力軸28はまた、減速機23の出力軸を形成する可動部分31とも一体である。出力軸28は軸14に沿って延び、可動部分31は軸15に沿って延びる。したがって、図の構成では、可動部分31は出力軸28に垂直である。減速機23は、二つの直線歯車列32、33および、モータ22の出力軸35に向かうかさ歯車を形成する歯車列34を含む。かさ歯車34によって、モータ22を前腕12の支持構造36と位置合わせすることが可能となる。より具体的には、モータ22の出力軸35は、前腕12の縦方向に従って延びる。かさ歯車34によって、モータ22が軸15と一致しないようにすることが可能である。実際、前腕12は軸15にほぼ垂直に延びる。有利な形態として、かさ歯車34によってピボット連結部17の軸15とモータ22の出力軸35との間はほぼ直角となる。ピボット連結部17の固定部分37は支持構造36と一体である。モータ22の回転により、ピボット連結部17において、減速機23によってピボット連結部17の固定部分37に関する可動部分31の運動と、ひいては軸15の周囲での前腕11の運動を制御することができる。
【0017】
図3は、図2に示される関節の主要部分の実施形態を示す。これは、減速機21によって出力軸28を駆動するモータ20を示す。図3が複雑になりすぎないようにするために、ピボット連結部16の中の出力軸28だけを示したが、関節は、支持構造29に対して出力軸28を回転させ、案内するための、図示されない軸受も含んでいる。出力軸28はフォーク40と一体であり、その中にピボット連結部17の可動部分を形成する軸31が固定されている。図3はまた、モータ22と減速機23を示している。この図では、減速機はかさ歯車34を含む4つの歯車列を有している。図2の運動図と比較して、直線歯車列の追加のステージ33aが加えられている。歯車列の数は本発明の実装において重要でない。これは、連結される減速機に求められる減速比に応じて異なる。
【0018】
かさ歯車34は、有利には、ピニオン42に関連付けられるフェースギヤ41を有し、ピニオン42はたとえば、モータ22の出力軸35と一体である。フェースギヤ41を使用することには、かさ歯車を設置するうえで、円錐歯車を使用した場合と比較していくつかの利点がある。円錐歯車の場合は、減速比が限定されており、それら自体の軸の位置ずれによる影響を受けやすく、フェースギヤと直線ピニオンとを関連付ける場合より生産コストが高くなる。フェースギヤと直線ピニオンとの関連付けによって、円錐歯車により生成される軸方向の力を排除することが可能となる。
【0019】
減速機21、23によれば、前腕12の小さな動きを正確に制御するために、約150から200という実質的な減速比を得ることができる。減速機21、23に損傷を与えずに、ロボットの外部への作用によって前腕12を動かすことができるようにするために、減速機21、23が逆転可能であることが有利である。この目的のために、ポリアミド等のプラスチックをベースとして作製された歯車であって、接触する歯車間の摩擦を制限するようにポリテトラフルオロエチレンを充填した歯車を使用することができる。ベース材料をカーボン繊維で充填し、減速機21、23の機械的な特徴を改良することも可能である。
【0020】
図4は、本発明の第二の実施形態の運動図である。関節13は、第一の減速機51によってピボット連結部16を駆動する第一のモータ50と、第二の減速機53によってピボット連結部17を駆動する第二のモータ52を有する。
【0021】
モータ50、52は、モータ20、22と同様である。減速機51は平行な軸を有する。これは、たとえば3つの連続する直線歯車列54から56を含む。モータ50は歯車列54を駆動し、歯車列56はモータ52のステータ60を駆動する。ステータ60は、ピボット連結部16の回転部分を形成する。ピボット連結部16の固定部分は、上腕11の支持構造29によって形成される。前述のように、モータ50の回転により、ピボット連結部16において、減速機51によって軸14の周囲の前腕11の角度位置を制御することが可能となる。モータ52のステータ60は、減速機51の出力軸14と一体である。
【0022】
モータ52の出力軸61は減速機53の入力を形成し、かさ歯車62と、これに続く2つの直線歯車列63、64を有する。歯車列64の出力軸65は、ピボット連結部17の可動部分を形成する。出力軸65は、前腕12の支持構造36と一体である。前述のように、かさ歯車62により、ピボット連結部17の、モータ52の回転する軸15と減速機53の出力軸65との間がほぼ直角となる。ピボット連結部17の固定部分は、モータ52のステータ60と一体である。モータ52の回転軸は、モータ50の回転軸に平行である。
【0023】
この実施形態において、モータ50、51あるいは減速機51、53のいずれも、前腕12の中には配置されていない。モータ50、51の電気制御手段はすべて、上腕11の中に配置することができる。すると、関節13を経由して通過する電気配線を制限することができる。この変形例によって、関節の慣性を減少させることも可能となる。実際、上腕の支持構造29に関連して、モータ52のステータ60は、その出力軸61の軸14の周囲のみで回転する。
【0024】
図5は、図4に示された関節の主要部分の実施形態を示す。これは、減速機51によってモータ52のステータ60を軸14の周囲で回転するように駆動するモータ50を示している。モータ52は、減速機53によって軸65と支持構造を軸15の周囲で回転するように駆動する。前述のように、かさ歯車62は、モータ52の出力軸61と一体の直線ピニオン67によって駆動されるフェースギヤ66を含んでいてもよい。
【0025】
上記の2つの実施形態において、減速機21、23、51、53はそれぞれ複数の直線歯車列を有しており、各減速機の中でこれを遊星歯車列に置き換えることができる。この種の歯車列は一般に、高減速比を得る場合に、一連の直線歯車列より小型化できる。
【0026】
図6は、その環境で組み立てられた、第二の実施形態の関節13の変形例を示す。モータ50、52および減速機51は、上腕11の中に配置されている。減速機53だけが、上腕11のケーシングと腕12のケーシングとの間に見える。この変形例において、減速機は、直線歯車列63、64の連続と置き換えることのできる遊星歯車列68を有する。
【0027】
有利な形態において、関節13はロボットの2つの要素を連結し、関節13のコンポーネントはこれらの要素の容積の中と、2つの要素の間に配置された球形の容積70の中とに収容され、容積70の直径は、2つの要素の横方向の寸法d11とd12より小さい。
【0028】
より詳しくは、第二の実施形態において、減速機53は、上腕11と前腕12との間に配置される球形の容積70の中に含めることができ、球形の容積70の直径は、上腕11と前腕12それぞれの横方向の寸法d11、d12より小さい。このようにかなり小さな球形の容積70によって、ロボットの運動の障害となりうる関節13からの突出をすべて回避できる。小さな寸法の球形の容積70はまた、第一の実施形態でも設けることができる。図6に示される変形例では、遊星歯車列68を用いることで、球形の容積70を小さくすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸(14、15)が相互に平行でない2つのピボット連結部(16、17)と、平行な軸を有する第一の減速機(51)によって前記2つのピボット連結部の第一の連結部(16)を駆動する第一のモータ(50)と、第二の減速機(53)によって前記2つのピボット連結部の第二の連結部(17)を駆動する第二のモータ(52)と、を備える関節であって、
前記第二のモータ(52)の回転軸は、前記第一のモータ(50)の回転軸に平行であり、前記第二の減速機(53)はかさ歯車(62)を含むことを特徴とする関節。
【請求項2】
前記かさ歯車(62)はフェースギヤ(67)を含むことを特徴とする請求項1に記載の関節。
【請求項3】
前記減速機(51、53)の一方は遊星歯車列を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の関節。
【請求項4】
前記減速機(51,53)が逆転可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の関節。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の関節(13)を少なくとも1つ含むことを特徴とするヒューマノイドロボット。
【請求項6】
前記関節(13)は、ロボットの2つの要素を連結し、前記関節(13)の構成要素は前記要素の容積の中と、前記2つの要素の間に配置される球形の容積(70)の中とに収容され、球形の容積(70)は、前記2つの要素の横方向の寸法(d11、d12)より小さな直径を有することを特徴とする請求項5に記載のヒューマノイドロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−516286(P2011−516286A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503412(P2011−503412)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054082
【国際公開番号】WO2009/124904
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(311003754)
【Fターム(参考)】