2次元レーザ素子の外部キャビティ1次元多波長ビーム結合
外部キャビティ1次元多波長ビームコンバイナは、複数のレーザアレイから形成されたレーザスタックの積層次元に沿って多波長ビーム結合を行ない、各レーザアレイは、固有波長を有する光放射を発生させるように構成され、複数のレーザアレイの各々は、レーザスタックのアレイ次元に沿って配置された複数のレーザエミッタを含む。多波長ビームコンバイナは、レーザエミッタの遅軸に沿って各々のレーザエミッタを結像するように構成されたシリンドリカル望遠鏡と、複数のレーザアレイの各々からの光放射を遮って、レーザスタックの積層次元に沿って光放射を結合して多波長光ビームを形成するように配置された変換レンズと、光放射の重なり領域に位置して多波長光ビームを受けるとともに透過させる回折素子とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年11月5日に出願された「2−Dダイオードレーザ素子の外部キャビティ1次元(1−D)波長ビーム結合」("EXTERNAL-CAVITY ONE DIMENSIONAL (1-D)) WAVELENGTH-BEAM-COMBINING (WBC) OF 2-D DIODE LASER ELEMENTS")と題された米国仮出願番号61/111,258に基づく米国特許法第119条(e)のもとでの優先権を主張し、参照によって、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府の資金提供による研究開発
本発明は、合衆国空軍によって授与された助成番号FA8721−05−C−0002での政府支援によりなされたものである。合衆国政府はこの発明における一定の権利を有する。
【0003】
背景
発明の分野
本発明は、外部キャビティを用いるレーザ光源の分野に関し、より特定的には、2次元レーザ光源を用いる外部キャビティ1次元波長ビーム結合のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
レーザアレイを用いる高効率多波長レーザ光源が、材料加工、レーザポンピングおよび多数の医療処置を含むさまざまな用途に用いられる。ダイオードレーザアレイと2次元ダイオードスタックとの外部キャビティ1次元波長ビーム結合が、レーザアレイおよびスタックのパワーおよび輝度を高めるための技術として、米国特許第6,327,292に記述されている。
【0005】
図1Aを参照して、2次元レーザスタックの外部キャビティ1次元波長ビーム結合のための波長ビームコンバイナの基本構造の例が示されている。図1Aは、クローズドループ波長ビーム結合キャビティを示している。キャビティは、レーザスタック110を備え、レーザスタック110は、図示された例において、3つのレーザダイオードバーの縦方向スタックを含み、各バーは、結合された、エミッタとも呼ばれるレーザダイオードを複数備える。キャビティはまた、シリンドリカルレンズ120と、回折格子130と、部分反射出力カプラ140とを備える。シリンドリカルレンズ120は、レーザスタック110と回折格子130との間に、1倍の焦点距離に等しい間隔で設置される。シリンドリカルレンズ120は、スタック中の各ダイオードバーのレーザダイオード素子からの光ビームを、そのビームが空間的に重なり合い、回折格子130の表面において重なり領域を形成するように集束させる。部分反射出力カプラ140は、回折格子130からの1次回折ビームの光路に設置されて、各ビームの一部を、重なり領域へと反射して戻し、回折格子130は、光をレーザスタック110に反射して戻す。それにより共振キャビティが部分反射出力カプラ140とレーザスタック110のレーザダイオード素子との間に形成される。部分反射出力カプラ140と回折格子130とは、したがって、それぞれのダイオードバー中の各ダイオード素子に、固有(unique)でありながら制御された波長でレーザ光を出射させて、ニアフィールド(出力カプラ140において)およびファーフィールドにおいて光ビームを重ね合せさせるフィードバックを与える。したがって、図1Aに示されるように、シリンドリカルレンズ120と、回折格子130と、出力カプラ140との適切な配置によって、レーザスタック110中の各ダイオードバーに対して単一のビームが生成され得る。
【0006】
図1Aに示された例において、出力ビーム150は、3つのビームを含み、それらはレーザスタック110中の3つのダイオードバーの各々からのビームであり、3つの出力ビームの各々は、それぞれのダイオードバーを作るレーザダイオード素子からの空間的に重なり合った光ビームを備える。したがって、波長ビーム結合は、レーザスタック110の水平次元(horizontal dimension)に沿って実行される。縦の次元における複数のダイオードバーの積層は、パワースケーリングのためである。
【0007】
図1Bは、オープンループ波長ビーム結合キャビティを示す。オープンループキャビティにおいて、レーザ素子は波長チャープされた体積ブラッグ格子(VBG)160を用いることによって固有波長に波長安定化される。体積ブラッグ格子160はレーザスタック110にできるだけ接近して(たとえば約1mm)設置される。シリンドリカルレンズ120と回折格子130とは、体積ブラッグ格子160の波長広がりを一致させる。ここでも、レーザ素子の波長ビーム結合は水平次元で実行されて、縦の次元における複数のダイオードバーの縦方向の積層は、パワースケーリングのために行なわれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
局面および実施形態が、レーザ光源のパワーおよび輝度を高めるために、2次元レーザ光源(たとえばレーザアレイおよびダイオードレーザのためのスタック)の1次元波長ビーム結合のための方法および装置に向けられる。波長ビーム結合システムの重要な特性は、出力スペクトル、出力ビーム品質、サイズおよび効率を含む。上記のように、ダイオードレーザアレイのための従来の1次元波長ビームコンバイナにおいては、波長ビーム結合が「アレイ」に沿って、あるいは列の次元に沿って行なわれる。すなわち、単一のダイオードバーを形成する複数のレーザダイオード素子からの光ビームが結合される。これに対して、局面および実施形態によれば、波長ビーム結合は直交次元に沿って実行され、ダイオードレーザ光源にとっては、これはアレイの「積層(stacking)」次元に沿っている。すなわち、複数のダイオードバーの各々からの光ビームが結合され、それは、要求される許容範囲を緩和させて、低コストで市販のダイオードバーの使用を可能にする。特に、少なくともいくつかの実施形態は、以下にさらに説明されるように、ダイオードレーザ光源に適用された場合に、ロバスト性と効率とが「スマイル」およびポインティング誤差と実質的に独立である波長ビーム結合の実現に向けられている。積層次元に沿った波長ビーム結合は、従来の波長ビーム結合の場合よりも、より一層低いコストで高パワーレーザを構築することを可能にし、幅広いさまざまな用途における実用性を有する。
【0009】
1つの実施形態によれば、多波長ビームコンバイナは、レーザスタックを備え、レーザスタックは当該レーザスタックの積層の次元に沿って配置された複数のレーザアレイを備え、各レーザアレイは、固有波長を有する光放射を発生させるように構成され、複数のレーザアレイの各々はレーザスタックのアレイ次元に沿って配置された複数の光ゲイン素子を備える。多波長ビームコンバイナは、さらに、複数の光ゲイン素子の各々を、それら光ゲイン素子の遅軸に沿って結像するように構成されたシリンドリカル望遠鏡(telescope)と、複数のレーザアレイの各々からの光放射を遮り(intercept)、レーザスタックの積層次元に沿って光放射を結合して多波長光ビームを形成する変換レンズと、光放射の重なり領域に位置して多波長光ビームを受けるとともに透過させる回折素子とを備える。シリンドリカル望遠鏡は、回折素子上に複数の光ゲイン素子の各々を結像するように構成される。積層次元は、アレイ次元と実質的に垂直であり得る。
【0010】
1つの例において、複数のレーザアレイは、複数のレーザダイオードバーを備え、複数の光ゲイン素子は、複数のレーザダイオードエミッタを備える。別の例において、複数のレーザアレイは、複数のファイバレーザアレイを備え、複数の光ゲイン素子は、複数のファイバレーザエミッタを備える。別の例において、レーザスタックは、個別の(discrete)半導体レーザエミッタのスタックを備え、個別の半導体レーザエミッタは、アレイ次元に沿って列をなす半導体ダイまたは半導体のパッケージされたダイであってもよく、複数のレーザアレイの各々のレーザアレイは、個別の半導体レーザエミッタの列を備える。
【0011】
別の例によれば、多波長ビームコンバイナは、さらに体積ブラッグ格子を備え、体積ブラッグ格子はレーザスタックとシリンドリカル望遠鏡との間に位置するとともに、レーザスタックとともに自由空間キャビティを形成して複数の固有波長を発生させるように構成される。体積ブラッグ格子は、波長チャープされた体積ブラッグ格子であり得、波長は積層次元に沿ってチャープされる。1つの例において、変換レンズはレーザスタックから焦点距離離れて位置する。別の例において、回折素子は回折格子である。別の例において、変換レンズはシリンドリカル変換レンズである。シリンドリカル望遠鏡は、第1のレンズ素子と第2のレンズ素子とを備え得るとともに、変換レンズはその第1および第2のレンズ素子の間に位置し得る。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、さらに、回折素子から多波長光ビームを受けて、多波長光ビームの一部を重なり領域に反射して戻し、複数の固有波長を有する光放射を備えた多波長光ビームを透過させるように配置された部分反射出力カプラを備えてもよく、回折素子と、部分反射出力カプラと、レーザスタックとは、ともに複数の固有波長を生成する自由空間キャビティを形成する。部分反射出力カプラは、パッシブファイバ出力カプラであってもよい。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、さらに、レーザスタックとシリンドリカル望遠鏡との間に位置するアナモフィックビームエキスパンダを備え得る。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、また、回折素子と部分反射出力カプラとの間に位置するさらなるシリンドリカル望遠鏡を備え得るが、そのさらなるシリンドリカル望遠鏡は、部分反射出力カプラ上にアレイ次元に沿って複数のレーザダイオードエミッタを結像するように構成される。多波長ビームコンバイナは、さらに、レーザスタックと結合された複数のコリメーティングマイクロレンズを備え得る。
【0012】
別の実施形態によれば、外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、第1の波長を有する第1の光ビームを生成するように構成された第1のレーザアレイと、第2の波長を有する第2の光ビームを生成するように構成された第2のレーザアレイとを含むレーザスタックを備え、第1および第2のレーザアレイの各々は、レーザスタックのアレイ次元に沿って配置されて、光放射を生成して第1および第2の光ビームを発生させるように構成された複数の光ゲイン素子を備える。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、さらに、光放射を遮り、アレイ次元に沿って複数の光ゲイン素子の各々を結像するように配置されたシリンドリカル望遠鏡と、第1および第2の光ビームを遮り、レーザスタックの積層次元に第1および第2の光ビームを空間的に重ね合せて多波長光ビームを形成するように配置された変換レンズとを備える。さらに、外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、第1および第2の光ビームの重なり領域に位置する回折素子と、回折素子からの多波長光ビームを受けて、多波長光ビームの一部を重なり領域に反射して戻し、第1および第2の波長を有する光放射を備える多波長光ビームを透過させるように配置された部分反射出力カプラとを含む。回折素子と、部分反射出力カプラと、レーザスタックとはともに第1および第2の波長を生成する自由空間キャビティを形成し、積層次元はアレイ次元と実質的に垂直である。
【0013】
1つの例において、第1および第2のレーザアレイはレーザダイオードバーであり、各々のレーザダイオードバーは複数のレーザダイオードエミッタを備える。別の例において、レーザスタックは、アレイ次元に沿って列をなして配置された半導体レーザエミッタのスタックを備え、第1および第2のレーザアレイは、各々、半導体レーザエミッタの列を備える。別の例において、複数の第1および第2のレーザアレイはファイバレーザアレイであり、複数の光ゲイン素子は、複数のファイバレーザエミッタを備える。
【0014】
外部キャビティ多波長ビームコンバイナの1つの例において、変換レンズは、積層次元に沿って第1および第2の光ビームを結合することによって多波長光ビームを形成するように構成される。別の例において、シリンドリカル望遠鏡は、回折素子上に、光ゲイン素子の遅軸に沿って複数の光ゲイン素子の各々を結像するように構成される。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、さらにレーザスタックとシリンドリカル望遠鏡との間に位置するアナモフィックビームエキスパンダを備え得る。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、また、回折素子と部分反射出力カプラとの間に位置して、部分反射出力カプラ上に、アレイ次元に、回折素子上の像を結像するように構成された、さらなるシリンドリカル望遠鏡を備え得る。1つの例において、結像望遠鏡は、レーザスタックとシリンドリカル望遠鏡との間に位置して、積層次元に第1および第2の光ビームのビームサイズを低減するように構成される。結像望遠鏡(imaging telescope)は、第1のレンズおよび第2のレンズを備え得るが、第1および第2のレンズの少なくとも1つは球面レンズである。
【0015】
別の実施形態によれば、多波長ビームコンバイナは、複数のレーザダイオードバーの積層されたアレイを備え、各レーザダイオードバーは積層されたアレイのアレイ次元に沿って配置されて光を生成するように構成された1以上のレーザダイオード素子と、その1以上のレーザダイオード素子によって生成された光を受けるよう配置されて、アレイ次元に沿って光を結像するように構成されたシリンドリカル望遠鏡と、その光を受けるように配置されて、複数のレーザダイオードバーの各々によって生成された光の重なりビームを備える多波長の光のビームを形成するように構成されたシリンドリカル変換レンズとを備える。
【0016】
別の実施形態は、波長ビーム結合の方法に向けられる。方法は、複数のレーザアレイで、各々が固有波長を有する複数の光ビームを発生させる動作と、第1の次元に沿って複数の光ビームを結像する動作と、重なり領域において第2の次元に複数の光ビームを空間的に重ね合せて複数の固有波長を備える多波長光ビームを生成する動作とを備える。1つの例において、複数の光ビームを空間的に重ね合せることは、回折素子からの放射を受けるために位置する部分反射素子に、複数の光ビームを伝播する動作を備え、部分反射素子と複数のレーザアレイはともに複数の固有波長を生成する自由空間レーザキャビティを形成する。方法はさらに、部分反射素子を通じて、複数の固有波長を有する放射を備える多波長ビームを透過させる動作を備える。別の例において、方法はさらに、波長チャープされた体積ブラッグ格子で複数の固有波長を安定化させることを備える。
【0017】
これらの例示的な局面および実施形態の、さらに他の局面、実施形態および利点が以下に詳細に説明される。本明細書で開示される任意の実施形態は、本明細書で開示される対象、目的および必要に整合する任意の方式で、任意の他の実施形態と組合され得るが、「ある実施形態(an embodiment)」、「いくつかの実施形態(some embodiments)」、「代わりの実施形態(an alternate embodiment)」、「さまざまな実施形態(various embodiments)」、「1つの実施形態(one embodiment)」などの名称は、必ずしも相互に排他的なものではなく、実施形態に関連して記述される特定の特徴、構造または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれ得るということを示すことを意図している。本明細書において、そのような用語が現われることは、必ずしもすべて同一の実施形態を参照するということではない。添付の図面はさまざまな局面および実施形態の図示およびさらなる理解を与えるために含まれ、この明細書に取り入れられるとともに、その一部を構成する。図面は、本明細書の残りとともに記述されるとともに主張される局面および実施形態の原理および動作を説明するために提供される。
【0018】
少なくとも1つの実施形態のさまざまな局面が添付の図面を参照して以下に説明され、それらは縮尺して記載されることを意図していない。図中の技術的特徴、詳細な説明または任意の請求項が参照符号によって理解される場合、その参照符号は図面、詳細な説明および請求項の理解度を高める唯一の目的のために含まれている。したがって、参照符号の有無によらず、任意の請求項の要素の範囲において限定する効果は生じない。図面においては、さまざまな図面中に示される各々同一またはほぼ同一の要素は同様の符号によって示される。明確さの目的のため、各図において必ずしもすべての要素の符号が付されていないこともある。図面は、図示および説明の目的のために提供され、本発明の限定を定義することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】レーザダイオードスタックのアレイ次元に沿った1次元波長ビーム結合のための従来のクローズドループ基本構造の例を示す図である。
【図1B】レーザダイオードスタックのアレイ次元に沿った1次元波長ビーム結合のための従来のオープンループ基本構造の例を示す図である。
【図2】オープンループおよびクローズドループの従来の波長ビームコンバイナ構造の例に対する、スマイルによる有効自己フィードバックを示すグラフである。
【図3】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの1つの例の図である。
【図4A】本発明の局面に従う、図3のキャビティの、波長ビーム結合または積層次元での光学的に等価な図である。
【図4B】本発明の局面に従う、図3のキャビティの、非波長ビーム結合次元または積層次元における光学的な図である。
【図5A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの1つの例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図5B】図5Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図6A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図6B】図6Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図7A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図7B】図7Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図8A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図8B】図8Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図9A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図9B】図9Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図10】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図11A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的な図である。
【図11B】図11Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図12A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的な図である。
【図12B】図12Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図13】本発明の局面に従うオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティの例の図である。
【図14A】本発明の局面に従うオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図14B】図14Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図15A】本発明の局面に従うオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図15B】図15Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図16A】本発明の局面に従うオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図16B】図16Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図17A】本発明の局面に従うオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティを取り込むマスタ発振器パワーアンプの1つの例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図17B】図17Aの例示的アンプの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図18A】本発明の局面に従う個別の光学素子の光学的に配置されたスタックの1つの例の上面図である。
【図18B】本発明の局面に従う、ダイオードアレイまたはバーの光学的に配置されたスタックの1つの例の上面図である。
【図18C】本発明の局面に従う、レーザスタックの光学的に配置されたスタックの1つの例の上面図である。
【図18D】本発明の局面に従う、ダイオードアレイまたはバーの光学的に配置されたスタックの別の例の上面図である。
【図19】本発明の局面に従う1次元波長ビームビーム結合の方法の1つの例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
局面および実施形態は、概して外部キャビティを用いてレーザ光源を高パワーおよび高輝度にスケーリングする分野に関し、特に、2次元レーザ光源を用いた外部キャビティ1次元波長ビーム結合のための方法および装置に関する。局面および実施形態は、さらに、重なりまたは同軸ビームを生成する高パワーおよび/または高輝度多波長外部キャビティレーザに関する。
【0021】
特に、局面および実施形態は、機械的または光学的に、行またはアレイおよび、列またはスタックに配置されてパワーおよび輝度を高めることが可能な2次元レーザ光源の1次元波長ビーム結合のための方法および装置に向けられる。たとえば、一般的な「市販された」高パワーレーザダイオードアレイおよびスタックに基づくレーザ光源は、広面積(broad-area)ダイオードレーザ素子に基づく。典型的には、これらの素子のビームの品質は、速軸に沿って回折制限(diffraction-limited)され、多くの場合、レーザ素子の遅軸に沿って回折制限される。以下の説明は、主としてレーザダイオード、ダイオードバーおよびダイオードスタックに言及し得るものであるが、本発明の実施形態は、レーザダイオードに限定されず、ファイバレーザ、個別にパッケージされたダイオードレーザ、半導体レーザおよび他の種類のレーザを含む多くの異なる種類のレーザエミッタで用いられ得ることが理解されるべきである。さらに、本明細書で用いられるように、「アレイ」との用語は、隣り合って配置された1以上のレーザ素子に言及する。アレイ次元は遅軸に沿っている。本明細書で用いられるように、「スタック」との用語は、ともに積層された2以上のアレイに言及する。スタックは機械的または光学的に配置され得る。1つの例において、機械的に配置されたスタックは、別のものの上部に物理的に積層されて、相互の上部に積層された出力ビームを生成する2以上のアレイを含む。光学的に配置されたスタックは、出力ビームが相互の上部に積層されるように、2以上のアレイからの出力ビーム(対応するアレイからの各ビーム)を配置するための光学系を用いることによって達成され得る。積層の次元はレーザ素子の速軸に沿っている。
【0022】
図18A〜18Dを参照して、光学的に配置されたスタックの例が示される。図18Aは、個別の光学素子1810の光学的に配置されたスタックを示す。ミラー1820は光学素子1830からの光ビームを並べるために用いられ、各光学素子1830は、個別の光学素子1810のスタック1860(水平次元)に対応する像1850(各光学素子1830からの光ビームを含む)を生成するためのニアフィールド像1840を有する。光学素子1830はスタックに配置されていなくてもよいが、ミラー1820は、像1850が光学素子1810のスタック1860に対応するように見えるように光ビームを並べる。同様に、図18Bにおいて、ミラー1820はダイオードバーまたはアレイ1870からの光ビームを並べてダイオードバーまたはアレイ1875のスタック1860に対応する像1850を生成するために用いられ得る。この例において、各ダイオードバーまたはアレイ1870は、バーまたはアレイ中の各々の個別素子からの光ビーム1845を含むニアフィールド像1840を有する。同様に、ミラー1820はまた、図18Cに示されるように、レーザスタック1880を、像1850に対応する個別のスタック1885の、明らかにより大きな全体スタック1860に光学的に配置するために用いられ得る。光学的に配置されたスタックの別の例が図18Dに示される。この例において、異なる高さに配置された折り返しミラー(folding mirror)1890は、光ビームダイオードアレイまたはバー1870を並べて、ダイオードアレイまたはバー1870の外見での物理的スタックに対応する像1850を生成するために用いられる。上記のように、各ダイオードアレイまたはバー1870は、アレイまたはバーにおける個別の素子からのビーム1845のアレイに対応する像1840を有する。図18Dに示された配置は、同様に、個別の光学素子1830および/またはスタック1880に適用され得る。したがって、本明細書で述べられるレーザスタックのいずれも、機械的あるいは物理的に配置されたスタックであり得るか、または、上記の例の1つ、あるいはこの開示の恩恵によって与えられる、当業者にとって明らかな他の光学的積層配置に従う、光学的に配置されたスタックであり得る。
【0023】
上記のように、従来の波長ビームコンバイナは、単一のダイオードバーの個別のレーザ素子からの光を結合して各々のダイオードバーに対して単一のビームを生成する。したがって、波長ビーム結合は、伝統的にレーザスタックのアレイ次元または遅軸に沿って行なわれる。この種のビーム結合は、ダイオードアレイの狭い許容範囲を課すとともに、非常にうまく製造された(well-manufactured)バーとそのバーの正確な積層との両方を要求し、その結果さらなるコストをもたらす。これに対して、1つの実施形態によれば、波長ビーム結合はレーザスタックの積層次元または速軸に沿って実行される。このことは、以下にさらに説明されるように、従来の波長ビーム結合キャビティに対して大きな利点を与え得る、より低いコストで安定したキャビティの構築を可能にする。
【0024】
波長ビーム結合システムのための重要な特性は、出力スペクトル、出力ビーム品質、サイズおよび効率を含む。スタック中のレーザ素子が両方の軸(すなわち速軸および遅軸)に沿って回折制限されたビーム品質を有するならば、出力スペクトル、出力ビーム品質およびサイズは、アレイ次元に沿って波長ビーム結合を実行する従来の構造の場合と、積層次元に沿って波長ビーム結合を実行する本発明の実施形態に従う構造の場合とで、実質的に同様になり得る。しかしながら以下にさらに説明するように、積層次元に沿った波長ビーム結合を実行する実施形態は、改善された効率および製造可能性を有し得る。さらに、レーザ素子が遅軸に沿って回折制限されていないならば、2次元における出力特性は、非常に異なり得るとともに、積層次元に沿った波長ビーム結合は、アレイ次元に沿った波長ビーム結合を実行する従来の構造よりも優れた性能および低いコストを含む、大きな利点を提供する。したがって、以下にさらに説明されるように、少なくともいくつかの局面および実施形態は、従来の波長ビーム結合技術を用いて達成可能なよりも、大幅に高パワーなレーザ光源を大幅に低いコストで達成し得る。
【0025】
本明細書で説明される方法および装置の実施形態は、以下の説明において述べられる、あるいは添付の図面に示される構成の詳細および要素の配置に限定されないことが理解されるべきである。方法および装置は、他の実施形態において実現可能であるとともに、さまざまな方法で実現または実行され得る。具体的な実現の例は本明細書において例示の目的のためにのみ与えられており、限定することを意図するものではない。特に、いずれか1以上の実施形態に関して説明される動作、素子および特徴は、いずれかの他の実施形態における同様の役割から除かれることを意図するものではない。
【0026】
また、本明細書で用いられる表現および用語は、説明のためであって限定としてみなされるべきではない。本明細書で単数形として参照される、システムおよび方法の実施形態または素子または動作のいかなる参照も、また、複数のこれらの要素を含む実施形態を包含し得る。そして本明細書での任意の実施の形態または要素または動作に対する複数形でのいかなる参照もまた、単一要素のみを含む実施の形態を包含し得る。単数形または複数形での参照は、ここに開示されたシステム、方法、それらの構成要素、動作または素子を限定することを意図していない。本明細書での「含む(including)」、「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「包含する(involving)」およびそれらの変形は、以下に挙げられた項目とその均等物とを、さらなる項目とともに包含することを意味する。「または(or)」との言及は、包含的であると解釈され得るので、「または」を用いた、記述される任意の用語は、記述された用語の1つ、1以上およびすべてのいずれかを示し得る。前(front)および後ろ(back)、左(left)および右(right)、上(top)および下(bottom)、上部(upper)および下部(lower)は、説明の便宜を意図するものであり、本システムおよび方法またはその構成要素を、いずれか1つの位置または空間的方向に限定することを意図するものではない。
【0027】
ダイオードアレイおよびスタックにおける堅牢で効率的な従来の波長ビーム結合のために強く望まれる2つの重要な特性は、本明細書で「スマイル」と呼ばれる低いパッケージング誤差、および低いポインティング誤差(コリメーション誤差とも呼ばれる)である。スマイル、すなわちパッケージングする間でのアレイの曲がり、およびアレイ上のコリメーティングマイクロレンズの位置ずれによって起こされるポインティング誤差は、出力ビームの品質を低下させてビーム結合効率を減少させる。図1Aおよび1Bに示されるような従来の波長ビーム結合キャビティは、スマイルおよびポインティング誤差を補償せず、したがって、堅牢で効率的な波長ビーム結合のためには、低いスマイルおよびポインティング誤差を有するダイオードアレイおよびスタックが必要とされる。したがって、所望のパワーおよび/または輝度の目標を満たすために、従来の構造には、構成要素、および構成要素の配置に対して厳しい許容範囲が課されている。これに対して、局面および実施形態は、波長ビーム結合キャビティのロバスト性および効率が、スマイルおよびポインティング誤差とは独立である方法および構造に向けられており、したがって低コストの「市販の」要素を用いることを可能にする許容範囲を緩和させる。
【0028】
図2を参照して、ダイオードバーにおけるスマイルの量の関数として、クローズドループキャビティ(曲線210)およびオープンループキャビティ(曲線220)の有効自己フィードバックのプロットが示される。本明細書で用いられるように、「自己フィードバック」との用語は、出力カプラ140に反射するとともにレーザ素子に戻される、個別のレーザ素子からの光の量を称する。曲線210は、出力カプラ140がレーザスタック110の前面(front facet)から1000ミリメータ(mm)に置かれている場合のクローズドループ波長ビームコンバイナ(図1Aに示されているような)に対応する。1000mmは、クローズドループ波長ビーム結合キャビティにおける出力カプラの典型的な配置である。曲線220は、体積ブラッグ格子160がレーザスタック110の前面から1mmに配置されたオープンループ波長ビームコンバイナ(図1Bに示されるような)に対応する。両方の場合において、レーザスタック中の各々のダイオードバーは、シリンドリカルレンズ120によって910ミクロンの焦点距離でコリメートされる。これは市販のダイオードアレイおよびスタックで用いられる典型的な焦点距離である。
【0029】
図2を参照して見られるように、クローズドループの例(曲線210)の場合、スマイルが0であっても、自己フィードバックの量は約22%に過ぎない。これは、ガウシアンビームの本来の発散によるものである。約0.3ミクロンのスマイルにおいて、自己フィードバックは本質的に0であり、従ってキャビティは、もはや正しく機能しない。体積ブラック格子がレーザスタック110から1mmに配置されたオープンループの例の場合、スマイルにおけるレーザ発光の依存性は、より敏感ではない。しかしながら、スマイルがわずか約0.2ミクロンである場合、自己フィードバックは約50%に低下する。スマイルが約0.2ミクロン未満であるとの信頼性を有するレーザダイオードバーを得ることは困難であるとともに高価であり得る。現在の最先端の単一ダイオードアレイは、約0.5〜1ミクロンのスマイルを有する。単一のアレイは、光学的に積層されてスタックを形成し得る。スマイルの量は、波長ビーム結合システムの性能を制限する。単一のアレイが無事に実装されてスタックが形成される場合、そのスタック中の各アレイの最高水準のスマイルは約1〜2ミクロンである。最も一般的な市販のスタックは機械的に実装される。機械的に実装された形態では、スマイルが0であっても、コリメーションシリンドリカルレンズ120の配置の後に、通常ではポインティング誤差が存在するであろう。スタック中のアレイが0のスマイルを有するとすると仮定すると、シリンドリカルレンズが0.3ミクロンだけオフセットされるならば、事実上、アレイ全体が0.3ミクロンのスマイルを有する。したがって有効フィードバックが本質的に0であるため、アレイ中のすべての素子は、適切に動作しないであろう。ダイオードアレイおよびスタックの現在の最先端のコリメーション誤差は約1ミクロンのオフセットである。したがって、従来の波長ビーム結合は、ダイオードアレイおよびスタックのパッケージング品質によって厳しく制限される。さらに、自己フィードバックを低減させるスマイルおよび配置に関する問題によって、どのようにしてダイオードバーが配置されるかということに対してレーザキャビティが非常に敏感であり得るので、信頼性があり、堅牢である波長ビームコンバイナの製造を困難にするとともに高価にする。
【0030】
1つの実施形態によれば、スマイルおよびポインティング誤差の両方を十分に補償することが可能であり、レーザダイオードアレイおよびスタックのパワーおよび輝度を高めるために用いられ得る、波長ビーム結合技術および構造が与えられる。1つの実施形態において、1次元波長ビーム結合キャビティは、波長ビーム結合がアレイの積層次元(またはダイオードレーザに対する速軸)に沿って実行される2次元レーザスタックを備える。キャビティにおける自己フィードバックは、実質的にスマイルおよびポインティング誤差の量とは独立している。1つの例において、格子および出力カプラは、自動的に、スマイルおよびポインティング誤差中の任意の誤差を十分に補償する。以下にさらに説明されるように、1つの例において、キャビティは積層次元に沿ったスマイルおよびポインティング誤差と同様に、アレイ次元における回折損失に向けられる。
【0031】
図3を参照して、クローズドループ波長ビーム結合キャビティ300の1つの例が示される。示された例において、明確さのために、3つのレーザアレイ305のみがレーザスタック310の積層次元に沿って積層されることが示される。しかしながら、本発明はそのように限定されず、レーザスタック310は任意の数のレーザアレイ305を備え得るということが理解されるべきである。各レーザアレイ305は、アレイ次元に沿って隣り合って配置された複数のレーザエミッタ315を備える。1つの例において、レーザアレイは、レーザダイオードバーであり、各バーは1以上のレーザダイオード素子を備える。レーザダイオードアレイ305の場合、各アレイ/ダイオードバー305は、速軸に沿ってコリメートされまたは集められ、あるいは、速軸の次元および遅軸の次元(図3に示さず)の両方においてコリメートされる。1つの実施形態において、キャビティは、焦点距離f1およびf3をそれぞれ有する2つのシリンドリカルレンズ325aおよび325bを備えるシリンドリカル結像望遠鏡320と、焦点距離f2を有するシリンドリカル変換レンズ330とを含む光学素子を備える。キャビティは、さらに積層次元に沿った分散を有する回折格子340と、部分反射出力カプラ350とを備え得る。波長ビーム結合は、積層次元に沿って実行される。上記のように、これは、ビーム結合次元がアレイ次元に沿っている、図1Aに示された従来の波長ビーム結合キャビティとは対照的である。
【0032】
図4Aを参照して、図3のキャビティの、積層次元(波長ビーム結合次元)における光学的な等価な物が示される。明確さのため、回折格子340は、図4Aにおいて透過で示される。しかしながら、回折格子340は、図3でのように反射であり得るか、透過であり得るということが理解されるべきである。図4Aに示されるように、焦点距離fmを有するコリメーティングレンズ370は、レーザスタック310のレーザアレイ305をコリメートするために用いられる。示された例は、3つのダイオードアレイ305a,305b,305cを含む。しかしながら、レーザスタック310は、機械的または光学的のいずれかに積層され得る任意の数のレーザアレイ305を含み得るということが理解されるべきである。レーザダイオードスタックの場合、レンズ370の光軸が対応するダイオードバーの光軸と位置ずれしているときにポインティング誤差が起こる。図4Bに示されるように、アレイ次元において、シリンドリカル結像望遠鏡320(325a,325b)は、エミッタ315からの光ビームをコリメートして、エミッタ315により生成される光ビーム中の発散によって起こされる、アレイ次元に沿った光損出力を低減させる。図4Aに示されるように、1つの実施形態において、積層または波長ビーム結合次元に沿って、シリンドリカル変換レンズ330は、回折格子340上に、スマイルを有するアレイ(たとえばダイオードバー)からのビームを含む、レーザスタック310中のすべてのレーザアレイ305からのビームを、空間的に重ね合わせる。すべてのレーザアレイからの光ビームの重なり領域が回折格子340の表面に形成されて、部分反射出力カプラ350が、回折格子340からの1次回折ビームの光路に配置されるように光学素子が配置され得る。1つの例において、シリンドリカル変換レンズ330は、レーザスタック310および回折格子340から、ほぼ焦点距離f2に配置される。コリメーティングレンズ370の焦点距離は、通常、残りの光学要素の焦点距離に比較して非常に短い。たとえば、コリメーティングレンズ370の焦点距離fmは、典型的には、他の光学要素の焦点距離よりも約100〜1000倍短い。図4Aに示されるように、コリメーティングレンズ370とシリンドリカル変換レンズ330との間の分離は、したがってfm+f2であり、fmが一般的にf2に比較して非常に小さいために、それはf2として近似し得る。したがって以下の説明では、光学系の配置に関するコリメーティングレンズ370の寄与は非常に小さく、本質的に無視できる。したがって、さまざまな光学要素とレーザスタックとの間の距離は、それぞれの光学要素の焦点距離として近似される。しかしながら当業者は、関連する光学要素とレーザスタック310との間の実際の距離が、コリメーティングレンズ320の焦点距離も含むことを理解するであろう。部分反射出力カプラ350は、各々のビームの一部を反射して重なり領域へと戻し、次に回折格子340は光をレーザスタック310に反射して戻す。したがって共振キャビティが、部分反射出力カプラ350とレーザ素子315の背面(back facet)との間に形成される。
【0033】
図4Bを参照して、図3のキャビティのアレイ(非波長ビーム結合)次元における光学的に等価な図が示される。示された例において、レーザスタック310の各レーザアレイ305は、3つのエミッタ315a,315b,315cを含む。しかしながら、レーザアレイは、任意の数のエミッタを含み得ることが理解されるべきである。アレイ(非波長ビーム結合)次元において、シリンドリカル結像望遠鏡320は、出力カプラ350に、ダイオードエミッタのためのエミッタの遅軸に沿って、各レーザエミッタ315を結像させる。シリンドリカル結像望遠鏡の第1の素子325aは、レーザスタック310から第1の焦点距離f1に配置され得る。シリンドリカル結像望遠鏡の第2の素子325bは、出力カプラ350から第2の焦点距離f3に配置され得る。第1の素子325aと第2の素子325bとの間の距離は、焦点距離f1とf3との和である。上記のように、f1およびf3はシリンドリカル結像望遠鏡320の第1および第2の素子325a,325bのそれぞれの焦点距離である。アレイ次元に沿って、シリンドリカル変換レンズ330と回折格子340とは何もしない。
【0034】
図4Aにおいて、破線380は、いわゆる「スマイルエミッタ」、すなわちダイオードバーの湾曲(スマイル)によって、理想的な光路から反れた光放射を有するエミッタからの光路を示す。1つの実施形態によれば、スマイルを有する素子を含む、所定のダイオードバー内のすべての素子は、名目上は同じ波長でレーザ発振する。位置とスペクトルとの間に1:1対応が存在するので、このことは、図4Aに示されるように、出力カプラ350の後のアレイ次元におけるビームサイズに広がりをもたらす。しかしながら、積層次元において、スマイルを有するすべてのエミッタに対する有効フィードバックは、スマイルの量と独立して、本質的に100%であり得る。この理由は、アレイ次元にスマイルが存在するものの、共振キャビティが積層次元において動作するためであり、したがって、所定のダイオードバーのすべてのエミッタがスマイルとは独立に共振キャビティ内に含まれるためである。したがって、最小スマイルを有する、十分よく製造されたバーの必要が除かれるため、低コストの「市販の」ダイオードバーおよびスタックが用いられ得る。これに対して、ビーム結合およびキャビティ動作がスマイルとして同一の次元、すなわちアレイ次元にある、従来の波長ビームコンバイナにおいては、図2を参照して上述したように、スマイルは自己フィードバックを大きく低下させる。さらに、速軸に沿った波長ビーム結合構造の効率は、従来の結合構造の効率よりも大きくなるが、その理由は、スマイルおよびポインティング誤差にほとんど、あるいは全く依存しないためである。
【0035】
上記のように、波長ビーム結合システムの重要な特性は、出力スペクトル、出力ビーム品質、サイズおよび効率を含む。1つの実施形態によれば、広面積エミッタを用いた、速軸に沿った波長ビーム結合を実現する構造は、より狭い出力スペクトルと、より良好な出力ビーム品質と、より高い効率と、より小さいサイズとを有する。
【0036】
WBCキャビティの出力スペクトルは、以下の式で与えられる。
【0037】
【数1】
【0038】
式(1)において、xは結合の空間的次元であり、fは変換レンズ(たとえば図3における変換レンズ330)の焦点距離であり、gは回折格子340の溝の密度であり、θは光の入射角である。空間的次元は以下のように記述することができる。
【0039】
【数2】
【0040】
式(2)において、Nは結合されるべきレーザ素子の数であり、Wはレーザ素子のビームウエストであり、FFはニアフィールド曲線因子である。ビームパラメータ積(BPP)は、ビームウエストに開口数(N.A.)またはレーザ素子の発散半角を掛けることによって定義される。動作波長が1ミクロンである一般的な市販の広面積エミッタのウエストは、概して、速軸に沿って約0.5マイクロメータ(μm)であり、遅軸に沿って約45〜500μmである。1つの例において、典型的なN.A.は、速軸に沿って約0.5ラジアンであり、遅軸に沿って約0.1ラジアンである。したがって、速軸に沿ったBPPは、
【0041】
【数3】
【0042】
である。遅軸に沿ったBPPは、
【0043】
【数4】
【0044】
である。2つのBPPの比率すなわち18〜200は、レーザ素子ごとのスペクトルの利用の改善を与える。
【0045】
したがって、FF,N.A.,N,f,gおよびθがアレイ次元波長ビーム結合(WBC)構造(すなわちアレイ次元に沿って波長ビーム結合を実行するもの)および積層次元WBC構造(すなわち積層次元に沿って波長ビーム結合を実行するもの)との間で同じであるとすると、積層次元に沿ったWBCの出力スペクトルは18〜200倍(2つのBPPの比率)狭くなる。その代わりに、固定された出力スペクトルの場合、BPPの比率が20であるとすると、積層次元WBC構造のサイズが20倍小さくなる。狭いスペクトル帯域は好ましくあり得、したがって積層次元WBC構造は、スペクトル帯域幅における大きな改善を提供し得る。代わりに、両方の構造で出力スペクトルが同じ幅に固定されるならば、本発明の実施形態に従う積層次元WBC構造のサイズは、20倍小さくなる。したがって、積層次元WBC構造は、サイズおよび/または出力スペクトルに関して大きな改善を提供し得る。
【0046】
1つの実施形態によれば、ビーム品質(B.Q.)は、以下のように定義することができる。
【0047】
【数5】
【0048】
式(3)において、BPPeはエミッタのBPPである。従来のWBC構造の場合の合成出力ビーム品質(すなわち、速軸に沿ったBPPと遅軸に沿ったBPPとの積)は、以下の式で与えられる。
【0049】
【数6】
【0050】
式(4)において、FFF=0.5はアレイ次元に沿った曲線因子であり、BPPS=5mm.mrdは遅軸に沿ったエミッタのBPPであり、NBはダイオードバーの数であり、BPPF=0.25mm.mrdは速軸に沿った各々のダイオードバーのBPPであるとする。1つの実施形態に従う積層次元WBC構造の場合の合成出力ビーム品質(すなわち、速軸に沿ったBPPと遅軸に沿ったBPPとの積)は、以下の式で与えられる。
【0051】
【数7】
【0052】
式(5)において、FFE=0.5はアレイ次元に沿った曲線因子であり、NEはバーごとのエミッタの個数である。したがって、バーの個数がエミッタの個数と同じであるならば、出力ビーム品質は両方の構造に対して実質的に同じになる。しかしながら実際には、バーごとのエミッタよりもかなり多数のダイオードバーを有することが、現在ではより現実的である。この場合、出力ビーム品質は、積層次元WBC構造の実施形態を用いて実質的に改善し得る。
【0053】
以下の表1〜4は、従来のアレイ次元WBC構造と本発明の局面に従う積層次元WBC構造との異なる構成間での比較を示す。すべての比較において、光学要素および機械的誤差による出力ビーム品質の低下は無視されているが、それは、その低下が両方の構造に同様に影響を与えるためである。表1〜4に示された例の各々において、次の仮定が適用される。
【0054】
f=200mm
g=1800l/mm
θ=60°
表1は、49個の広面積レーザ素子を備える単一の1cm幅のダイオードバーを用いた従来のアレイ次元WBCシステムと、各バーが1個のエミッタを備える49個のダイオードバーを用いた積層次元WBCシステムの例とを比較している。両方のシステムにおける曲線因子は50%である。計算は上記で与えられた式に基づく。出力スペクトルのスペクトル線幅Δλは式(1)を用いて計算される。従来のWBCの場合の次元x=10mmとし、積層次元に沿ったWBCの場合、x=10mm/20(ここで20はBPPの比率)とする。
【0055】
【表1】
【0056】
表1からわかるように、この例では両方の構造の全体的な出力ビーム品質(両方の軸の積)は同じである。しかしながら、出力スペクトルは積層次元WBC構造において20倍狭くなる。変換光学系のサイズおよび出力パワーは両方の構造で実質的に同様である。積層次元WBC構造は、より高い効率を有する。輝度のためにバーの個数をスケーリングすることが、必要に応じて増大し得る。一方、両方のWBC構成に対して出力スペクトルが固定されたままであるならば、新しいWBC構造に対する変換光学系の焦点距離は20倍短くなり得る。
【0057】
表2は、従来のWBCを用いる、各バーが49個の広面積レーザ素子を含む1cm幅の49個のダイオードバーを備える49バースタックと積層次元WBCの例とを比較する。両方の次元における曲線因子は50%である。この曲線因子は一般的な市販のダイオードバーおよびスタックの場合に典型的である。計算は上記で与えられた式に基づく。従来のWBCの場合、次元x=10mmとし、積層次元に沿ったWBCの場合、x=10mm/20(ここで20はBPPの比率)とする。
【0058】
【表2】
【0059】
表2からわかるように、この例では両方の構造の全体的な出力ビーム品質(両方の軸の積)は同じである。しかしながら、出力スペクトルは積層次元WBC構造において20倍狭くなる。変換光学系のサイズおよび出力パワーは両方のシステムで実質的に同様である。一方、両方のWBC構成に対して出力スペクトルが固定されたままであるならば、新しいWBC構造に対する変換光学系の焦点距離は20倍短くなり得る。
【0060】
表3は、従来のWBCシステムと積層次元WBCシステムの例とを比較し、各システムは、各バーが49個の広面積レーザ素子を備える980個の1cm幅のダイオードバーを備える980バースタックを用いる。両方の次元における曲線因子は50%である。計算は上記で与えられた式に基づく。両方のWBC構造に対して、次元x=10mmとする。
【0061】
【表3】
【0062】
表3からわかるように、この例では両方のシステムにおいて出力スペクトルは同じ線幅を有する。しかしながら、積層次元WBCシステムの出力ビーム品質は20倍良好となる。両方のシステムにおいてサイズおよび出力パワーは実質的に同様である。この例において、バーあたり200Wの一般的な市販のダイオードバーを用いるとすると、最大で196,000W(100%のビーム結合効率と仮定)が、キャビティから取り出され得る。
【0063】
表4は、従来のWBCシステムと積層次元WBCシステムの例とを比較し、各システムは、各々のバーが49個の広面積素子を含む100個の1cm幅のダイオードバーを備える100バースタックを用いる。両方の次元における曲線因子は50%である。計算は上記で与えられた式に基づく。
【0064】
【表4】
【0065】
表4からわかるように、この例では積層次元WBC構造の出力ビーム品質および出力スペクトルの両方が従来の構造に対して改善される。サイズおよび出力パワーは両方のシステムで実質的に同様である。
【0066】
上記の例は、本発明の局面に従う積層次元波長ビーム結合キャビティの実施形態が、出力スペクトル、出力ビーム品質、サイズおよび効率を含む、キャビティの複数の重要な特性での改善を提供し得ることを示している。さらに上記のように、積層次元における波長ビーム結合はスマイルに対して鈍感であるため、一般的な市販のダイオードバーが用いられ得る。したがって、高い性能に加えて低コストのシステムが実現可能となる。
【0067】
図5Aを参照して、1つの実施形態に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の、積層次元(波長ビーム結合次元)における光学的に等価な図が示される。この例において、波長ビーム結合キャビティは、アナモフィックビームエキスパンダ510を含む。積層次元において、アナモフィックビームエキスパンダ510は、図5Aに示されるように、ビーム520のサイズおよび積層次元を低減するように機能する。各アレイのビームをより小さくすることによって、ビームはより大きく発散し、より大きく発散したビームは、シリンドリカル変換レンズ330によって積層次元にコリメートされる。したがって、格子340におけるビームのサイズがより大きくなる。したがって、格子340に入射するビームのパワー密度がより低くなり、したがってビームが格子を損傷し得る可能性が低減される。さらに、積層次元におけるサイズを低減することによって、システムのスペクトル帯域幅も低減される。図5Bは、アレイ(非波長ビーム結合)次元における、図5Aの光学的に等価な図を示す。1つの例において、アナモフィックビームコンバイナ510は、アレイ次元に沿ってビームサイズを低減しない。ビームの発散および集束は1つのレーザアレイ305aまたはレーザエミッタ315aに対してのみ示されているが、キャビティの素子は各ダイオードバーおよび各エミッタからのビームに同様に作用することが理解されるべきである。図5Aおよび5Bにおいて、破線は速軸および遅軸に沿ったレーザビームの発散を示す。
【0068】
図6Aを参照して、クローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の積層次元(波長ビーム結合次元)における光学的に等価な図が示される。図6Bは、図6Aに示されたのと同じキャビティのアレイ(非波長ビーム結合)次元における、対応する光学的に等価な図を示す。図6Aおよび6Bに示された例において、キャビティは、上記のように、アナモフィックビームエキスパンダ510を含む。さらなるシリンドリカル望遠鏡610が、格子340と出力カプラ350との間に配置される。図6Bに示されるように、アレイ次元において、さらなるシリンドリカル望遠鏡610の第1の素子620は焦点距離f3を有し、第2の素子630は、焦点距離f4を有する。1つの例において、焦点距離f1およびf2をそれぞれ有する構成要素325aおよび325bを有する第1のシリンドリカル結合望遠鏡320は、回折格子340にレーザ素子のアレイを結像させる。さらなるシリンドリカル結合望遠鏡610は、格子340上の像を出力カプラ350に結像させる。格子340が透過である例において、2つのシリンドリカル結像望遠鏡320,610を有することは、損失を低減させるとともに、キャビティの堅牢な動作を支援する。格子340が反射的である例において、1つのシリンドリカル結像望遠鏡320は、二重光路(double-passed)であり得るとともに、さらなるシリンドリカル望遠鏡610なしに用いられ得る。
【0069】
図7Aを参照して、クローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の積層次元(波長ビーム結合次元)における光学的に等価な図が示される。図7Bは、図7Aに示されたのと同じキャビティのアレイ(非波長ビーム結合)次元における、対応する光学的に等価な図を示す。図7Aおよび7Bに示された例において、さらなるシリンドリカル望遠鏡710は、図6Aおよび6Bを参照して既に説明されたアナモフィックビームエキスパンダと同様の機能を担う。さらなるシリンドリカル望遠鏡710は、示されるように、焦点距離f1およびf2をそれぞれ有する2つのレンズ720および730を備え得る。
【0070】
図8Aおよび8Bは、積層次元およびアレイ次元のそれぞれにおける、1つの実施形態に従う波長ビーム結合クローズドループキャビティの別の例を示す。波長ビーム結合は、この場合も積層次元に沿って実行される。図8Aおよび8Bに示された例において、システムは、上記のようなアナモフィックビームエキスパンダと同様に機能し得る第2のシリンドリカル望遠鏡710を含み、さらに、システムは、格子340と出力カプラ350との間に配置された第3のシリンドリカル望遠鏡810を含む。図6Aおよび6Bを参照して既に説明されたように、シリンドリカル結像望遠鏡320は、回折格子340上にアレイ次元に沿ってレーザ素子を結像させ、第3のシリンドリカル望遠鏡810は、出力カプラ350に格子340上の像を結像させる。
【0071】
図9Aおよび9Bを参照して、1つの実施形態に従うクローズドループ波長ビーム結合キャビティの別の例が示され、この場合も波長ビーム結合が積層次元に沿って実行される。図9Aは積層次元におけるキャビティの光学的に等価な図を示し、図9Bは、アレイ次元におけるキャビティの光学的に等価な図を示す。1つの例において、波長ビーム結合システムは、シリンドリカル望遠鏡710を備え、当該シリンドリカル望遠鏡は、図7Aおよび7Bを参照して既に説明されるとともに示される(図9Aにおけるビーム910を参照)ように、積層次元における光ビームのサイズを低減させて、ビームをより大きく発散させる。1つの例において、第1のレンズ720はシリンドリカルレンズよりもむしろ球面レンズである。球面レンズはいくつかの用途において現在好ましいものであり得るが、その理由は、球面レンズが等価なシリンドリカルレンズよりも、より低いコストでよりよい品質を提供し得るためである。第2のレンズ730はシリンドリカルレンズであり得る。システムはさらに、図9Bに示されるように、アレイ次元に沿って格子340上にエミッタを結像させるシリンドリカル結合レンズ920を備える。この例において、結像レンズ920は、シリンドリカル結像望遠鏡320の2つの要素325a,325bを組合せるシリンドリカル結像望遠鏡320を1つのレンズ920に置き換える。さらに、示された例において、システムは、出力カプラ350に格子340上の像を結像させる結像望遠鏡930を備える。1つの例において、結像望遠鏡930は、2つのレンズ940,950を備え、それらの各々は球面レンズである。
【0072】
別の実施形態によれば、効率的で高輝度のレーザ光源は、出力カプラとしての光ファイバを用いることで達成され得る。したがって、図10を参照して、積層次元において、光ファイバ1020に出力ビーム360を結合するための機構を含む積層次元波長ビーム結合システムの1つの例が示される。1つの例において、システムは、ビーム集束光学系1010と、上記の出力カプラ350に代わるパッシブファイバ出力カプラ1020を備える。ファイバは部分的に反射的である。共振キャビティは、レーザ素子305の背面と部分反射ファイバ1020との間に形成される。ビーム集束光学系1010とパッシブファイバ出力カプラ1020とは、図3〜9Bに示された例示的システムのいずれかを含む、さまざまな異なるシステムで用いられ得るということが、この開示の恩恵によって当業者に理解されるであろう。
【0073】
1つの実施形態に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例が図11Aおよび11Bに示される。図11Aは、積層または波長ビーム結合次元におけるキャビティを示し、図11Bはアレイ(非波長ビーム結合)次元におけるキャビティの光学的に等価な図である。上記のように、図11Aにおいて、破線はスマイルの影響を受けるレーザアレイ380からの光ビームを示す。この実施形態において、キャビティは2つの球面レンズ1120および1130を備える望遠鏡1110を備える。レンズ1120が球面レンズであるので、それは積層次元およびアレイ次元の両方においてレーザスタック310からの光ビームに作用する。したがって、レンズ1120は、望遠鏡1110の一部および球面変換レンズの両方として作用し、他の実施形態において用いられるシリンドリカル変換レンズ330の必要性を省くことができる。1つの例において、球面レンズ素子1120は、焦点距離f1を有し、レーザスタック310と格子340との両方から1倍の焦点距離に位置する。キャビティは、また、レンズ素子1130と出力カプラ350との間に位置するスリット1140を備える。スリット1140の目的は、レーザアレイまたはバーの間のクロス光トークを低減することである。
【0074】
図12Aおよび12Bを参照して、1つの実施形態に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例が示される。図12Aは、積層または波長ビーム結合次元におけるキャビティを示し、図12Bは、アレイ(非波長ビーム結合)次元におけるキャビティの光学的に等価な図である。この例において、キャビティは格子340と出力カプラ350との間に位置するシリンドリカル望遠鏡1210を備える。シリンドリカル望遠鏡は、第1のシリンドリカルレンズ素子1220と第2のシリンドリカルレンズ素子1230とを備える。積層次元において、図12Aに示されるように、第1のシリンドリカルレンズ素子1220は焦点距離f4を有し、第2のシリンドリカルレンズ素子は焦点距離f5を有する。1つの例において、2つのシリンドリカルレンズ素子1220および1230は、距離1240だけ離れて位置し、この距離は、2つのシリンドリカルレンズ素子の焦点距離の和(f4+f5)にほぼ等しい。シリンドリカル望遠鏡1210は、波長ビーム結合または積層次元に沿ったビームサイズおよび出力ビーム360における光クロストークを低減するよう動作する。
【0075】
図3〜12Bを参照して既に説明された実施形態において、波長安定化は回折格子340と出力カプラ350とを用いて達成される。図13を参照して、波長安定化が波長チャープされた体積ブラッグ格子(VBG)1310を用いて達成されるオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティ1300の例が示される。波長は積層次元に沿ってチャープされる。1つの実施形態において、キャビティは、波長チャープされたVBG1310と、シリンドリカル結像望遠鏡320と、シリンドリカル変換レンズ330と、積層次元に沿った分散を有する回折格子340とを含む光学素子を備える。波長ビーム結合は積層次元に沿っている。シリンドリカル結像望遠鏡320は、アレイ次元に沿ってエミッタを結像して、回折格子340からの円錐回折をなくすまたは低減するように動作する。円錐回折は、出力ビーム360のビーム品質を低下させる。
【0076】
図14Aを参照して、図13のキャビティの積層(波長ビーム結合)次元における光学的に等価なものが示され、示された回折格子340は透過状態にある。キャビティ1300において、各レーザアレイ305の波長は、波長チャープされたVBG1310を用いて固有波長に安定化される。たとえば、レーザスタック310中の第1のレーザアレイ305aは、第1の波長λ1でレーザ光を発するように安定化され、第2のレーザアレイ305bは第2の波長λ2でレーザ光を発し、第3のレーザアレイ305cは第3の波長λ3でレーザ光を発し得る。1つの例において、VBG1310はレーザスタック310にできるだけ接近して配置される。変換レンズ330は、すべてのレーザアレイ305からのビームを回折格子340に空間的に重ね合わせる。1つの例において、変換レンズ330の焦点距離f2と回折格子340との組合せは、実質的にVBG1310の波長広がりまたは分散と一致する。したがって、出力ビーム360は単一のレーザアレイからのビームと実質的に同様であり得る。図14Bは、図14Aのキャビティのアレイ次元における光学的に等価なものを示す。アレイ次元は、パワースケーリングのために用いられ得る。
【0077】
オープンループ波長ビーム結合の別の実施形態が図15Aおよび15Bに示される。図15Aは、積層(波長ビーム結合)次元におけるキャビティの光学的に等価なものを示し、図15Bは、アレイ(非波長ビーム結合)次元における、キャビティの光学的に等価なものを示す。上記のように、シリンドリカル望遠鏡320は、アレイ次元に沿ったビームを格子340上に結像させて、変換レンズ330は積層次元に沿ったビームを空間的に重ね合わせる。示された例において、キャビティは、レーザスタック310と体積ブラッグ格子1310との間に配置された2つのさらなるシリンドリカル望遠鏡を備える。第1のシリンドリカル望遠鏡1510は、積層次元に沿って動作可能であり、第2のシリンドリカル望遠鏡1520はアレイ次元に沿ったビームに作用可能である。積層次元に沿った第1のシリンドリカル望遠鏡1510は、積層次元に沿ったビームの次元を減少させるように機能する。ビームのサイズを低減することによって、システムのスペクトル帯域幅は同じ量減少し得る。上記のように、少なくともいくつかの用途においては、スペクトル帯域幅は狭いほど好ましい。アレイ次元に沿った第2のシリンドリカル望遠鏡1520は、体積ブラッグ格子1310にアレイを結像させて損失を低減させる。
【0078】
図16Aおよび16Bを参照して(図16Aにおいては積層次元、図16Bにおいてはアレイ次元)、1つの実施形態に従うファイバレーザアンプの例が示される。マスタ発振器スタック1610は、1以上の発振器1620を備え、それらの各々はn個の発振器に対する固有波長λ1…λnで光ビームを発生させる。マスタ発振器スタック1620からのビームはアンプレーザスタック1640によって増幅され、増幅されたビームは、上記のように波長ビーム結合されて、多波長出力ビーム360が生成される。示された例において、マスタ発振器スタック1610は3つの発振器1620を備え、アンプスタック1640は3つのレーザアレイ1650を備える。しかしながら、マスタ発振器スタックは3に限定されず任意の数の発振器を備え得るとともに、アンプスタック1640は上記のように任意の数のレーザアレイ1650を備え得ることが理解されるべきである。図16Bに示されるようにアレイ次元において、ビーム結合光学系1630は発振器1620からのビームをアンプスタック1640に結合させる。1つの例において、アンプスタック1640はファイバレーザ素子1660の1以上のアレイを備え、それらの各々はパワーアンプであり得る。出力ビームは図10を参照して既に説明されるように、光ファイバに結合され得る。
【0079】
1つの実施形態によれば、1以上のマスタ発振器1620を備え得るマスタ発振器スタックは上記の1次元多波長ビームコンバイナの実施形態を用いて実現される。発振器1620は、さまざまな用途に用いられ得る。同様に、1次元波長ビームコンバイナの実施形態は、パワーアンプを提供するために用いられ得るとともに、通信システムのような発振器−アンプシステムに用いられ得る。
【0080】
たとえば図17Aおよび17Bを参照して、発振器1620は1以上のレーザアレイ305を備えるレーザスタック310aを備え得るが、各レーザアレイは、上記のように1以上のレーザ素子315を備える。図17Aに示されるように、積層次元において、発振器1620はn個の積層されたレーザアレイ305を含むレーザスタック310を備え、各レーザアレイは特定の波長λ1…λnを有する光ビームを生成し、nは1以上の整数である。アレイ次元において、各レーザアレイ305はn個のレーザ素子315を備え、それらはすべて特定のアレイの波長λmでレーザ光を発する。示された例において、発振器1620は、シリンドリカル望遠鏡320と、シリンドリカル変換レンズ330と、回折格子340と、出力カプラ350とを備え、それらは、上記のように積層次元に沿って波長ビーム結合をともに実行して、多波長出力ビーム360aを生成する。発振器は上記の波長ビーム結合構成のいずれかを用いて実現され得、したがって上記のさらなる光学素子のいずれかを、適切に備え得るということが理解されるべきである。
【0081】
さらに図17Aおよび17Bを参照して、中継光学系1710が発振器1620からの出力ビーム360aをパワーアンプ1720に結合するために用いられ得る。パワーアンプ1720は、発振器からの多波長ビーム360aをその成分波長λ1…λnに分割する波長ビーム分割光学系を含み得る。1つの例において、波長ビーム分割光学系は、回折格子340と、レンズ325aおよび325bを備えるシリンドリカル望遠鏡と、上記の対応する波長ビーム結合の、実質的に鏡像構成(mirror image configuration)に配置されたシリンドリカル変換レンズ330とを含む。平行光学系1730は、ビームλ1…λnをコリメートしてそれらをレーザスタック310bに結合し得る。レーザスタック310bは、n個のレーザアレイ305を備え、各アレイはn個のレーザ素子315を備える。マイクロレンズ370は、上記のようにレーザスタック310bからのビームをコリメートする。波長ビーム結合は、この場合も積層次元に沿って実行されて、高パワーで増幅された出力ビーム360bを生成する。さらなる増幅段がさらなる中継光学系を用いて実行されて、さらなる結合光学系などを通じて出力ビーム360bを別のアンプ1710に結合し得る。
【0082】
別の実施形態に従うと、上記のようなキャビティを用いた波長ビーム結合の方法が開示される。図19を参照して、1つの例において、波長ビーム結合の方法は、レーザスタック310を作る各レーザアレイからの光ビームを発生させるステップを含む(ステップ1910)。各光ビームは、それぞれのレーザアレイにおけるすべてのエミッタからの光を含む。1つの例において、レーザアレイがダイオードバーであるが、各光ビームは、それぞれのダイオードバーにおけるスマイルを有するダイオードエミッタおよびスマイルを有さないダイオードエミッタのすべてのダイオードエミッタからの光を含む。上記のように、各光ビームは、体積ブラッグ格子(オープンループキャビティの場合)または回折格子および出力カプラ(クローズドループキャビティの場合)のいずれかによって安定化された固有波長を有する。スティック1920において、光ビームは上記のシリンドリカル結像望遠鏡を用いてアレイ次元に沿って結像されてビームがコリメートされて光損失が低減される。方法は、さらに、変換レンズを用いて光ビームを空間的に重ね合わせることによって積層次元に沿って波長ビーム結合を実行して(ステップ1930)、重なり領域を形成するとともにレーザスタック310における各々のレーザアレイに対応する複数の固有波長を備える多波長光ビーム360を生成するステップを含む(ステップ1940)。
【0083】
波長ビーム結合レーザキャビティの上記の実施形態のいずれかは関連するレーザシステムに取入れられ得る。そのようなレーザシステムは、たとえば、波長ビーム結合キャビティと、ソフトウェアおよび/またはファームウェアと関連付けられる電気的、熱的、機械的、電気光学的(electro-optical)および光学機械的(opto-mechanical)なレーザ制御装置、および光パワー配送サブシステムを含み得る。波長ビーム結合レーザキャビティおよび関連するレーザシステムの実施形態は、波長ビーム結合キャビティを用いて作製された、具体化されたレーザ光源の高パワーおよび輝度の恩恵を受ける用途に用いられ得る。これらの用途は、たとえば、溶接、穴開け、切断、アニーリングおよびろう付けのような材料加工、マーキング、レーザポンピング、医療用途および指向性エネルギ用途を含み得る。これらの用途の多くにおいて、波長ビーム結合キャビティによって形成されたレーザ光源は、機械ツールおよび/またはロボットに取入れられてレーザ用途の性能を高めることを可能にする。
【0084】
少なくとも1つの実施形態のさまざまな局面が記述されたが、さまざまな代替例、変更例および改善例が当業者に直ちに思いつくことが理解されるべきである。そのような代替例、変更例および改善例は本開示の一部であることが意図されるとともに、本発明の範囲内であることが意図される。したがって、上記の説明および図は単に例示に過ぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲、およびその均等物の適切な構成から決定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年11月5日に出願された「2−Dダイオードレーザ素子の外部キャビティ1次元(1−D)波長ビーム結合」("EXTERNAL-CAVITY ONE DIMENSIONAL (1-D)) WAVELENGTH-BEAM-COMBINING (WBC) OF 2-D DIODE LASER ELEMENTS")と題された米国仮出願番号61/111,258に基づく米国特許法第119条(e)のもとでの優先権を主張し、参照によって、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府の資金提供による研究開発
本発明は、合衆国空軍によって授与された助成番号FA8721−05−C−0002での政府支援によりなされたものである。合衆国政府はこの発明における一定の権利を有する。
【0003】
背景
発明の分野
本発明は、外部キャビティを用いるレーザ光源の分野に関し、より特定的には、2次元レーザ光源を用いる外部キャビティ1次元波長ビーム結合のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
レーザアレイを用いる高効率多波長レーザ光源が、材料加工、レーザポンピングおよび多数の医療処置を含むさまざまな用途に用いられる。ダイオードレーザアレイと2次元ダイオードスタックとの外部キャビティ1次元波長ビーム結合が、レーザアレイおよびスタックのパワーおよび輝度を高めるための技術として、米国特許第6,327,292に記述されている。
【0005】
図1Aを参照して、2次元レーザスタックの外部キャビティ1次元波長ビーム結合のための波長ビームコンバイナの基本構造の例が示されている。図1Aは、クローズドループ波長ビーム結合キャビティを示している。キャビティは、レーザスタック110を備え、レーザスタック110は、図示された例において、3つのレーザダイオードバーの縦方向スタックを含み、各バーは、結合された、エミッタとも呼ばれるレーザダイオードを複数備える。キャビティはまた、シリンドリカルレンズ120と、回折格子130と、部分反射出力カプラ140とを備える。シリンドリカルレンズ120は、レーザスタック110と回折格子130との間に、1倍の焦点距離に等しい間隔で設置される。シリンドリカルレンズ120は、スタック中の各ダイオードバーのレーザダイオード素子からの光ビームを、そのビームが空間的に重なり合い、回折格子130の表面において重なり領域を形成するように集束させる。部分反射出力カプラ140は、回折格子130からの1次回折ビームの光路に設置されて、各ビームの一部を、重なり領域へと反射して戻し、回折格子130は、光をレーザスタック110に反射して戻す。それにより共振キャビティが部分反射出力カプラ140とレーザスタック110のレーザダイオード素子との間に形成される。部分反射出力カプラ140と回折格子130とは、したがって、それぞれのダイオードバー中の各ダイオード素子に、固有(unique)でありながら制御された波長でレーザ光を出射させて、ニアフィールド(出力カプラ140において)およびファーフィールドにおいて光ビームを重ね合せさせるフィードバックを与える。したがって、図1Aに示されるように、シリンドリカルレンズ120と、回折格子130と、出力カプラ140との適切な配置によって、レーザスタック110中の各ダイオードバーに対して単一のビームが生成され得る。
【0006】
図1Aに示された例において、出力ビーム150は、3つのビームを含み、それらはレーザスタック110中の3つのダイオードバーの各々からのビームであり、3つの出力ビームの各々は、それぞれのダイオードバーを作るレーザダイオード素子からの空間的に重なり合った光ビームを備える。したがって、波長ビーム結合は、レーザスタック110の水平次元(horizontal dimension)に沿って実行される。縦の次元における複数のダイオードバーの積層は、パワースケーリングのためである。
【0007】
図1Bは、オープンループ波長ビーム結合キャビティを示す。オープンループキャビティにおいて、レーザ素子は波長チャープされた体積ブラッグ格子(VBG)160を用いることによって固有波長に波長安定化される。体積ブラッグ格子160はレーザスタック110にできるだけ接近して(たとえば約1mm)設置される。シリンドリカルレンズ120と回折格子130とは、体積ブラッグ格子160の波長広がりを一致させる。ここでも、レーザ素子の波長ビーム結合は水平次元で実行されて、縦の次元における複数のダイオードバーの縦方向の積層は、パワースケーリングのために行なわれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
局面および実施形態が、レーザ光源のパワーおよび輝度を高めるために、2次元レーザ光源(たとえばレーザアレイおよびダイオードレーザのためのスタック)の1次元波長ビーム結合のための方法および装置に向けられる。波長ビーム結合システムの重要な特性は、出力スペクトル、出力ビーム品質、サイズおよび効率を含む。上記のように、ダイオードレーザアレイのための従来の1次元波長ビームコンバイナにおいては、波長ビーム結合が「アレイ」に沿って、あるいは列の次元に沿って行なわれる。すなわち、単一のダイオードバーを形成する複数のレーザダイオード素子からの光ビームが結合される。これに対して、局面および実施形態によれば、波長ビーム結合は直交次元に沿って実行され、ダイオードレーザ光源にとっては、これはアレイの「積層(stacking)」次元に沿っている。すなわち、複数のダイオードバーの各々からの光ビームが結合され、それは、要求される許容範囲を緩和させて、低コストで市販のダイオードバーの使用を可能にする。特に、少なくともいくつかの実施形態は、以下にさらに説明されるように、ダイオードレーザ光源に適用された場合に、ロバスト性と効率とが「スマイル」およびポインティング誤差と実質的に独立である波長ビーム結合の実現に向けられている。積層次元に沿った波長ビーム結合は、従来の波長ビーム結合の場合よりも、より一層低いコストで高パワーレーザを構築することを可能にし、幅広いさまざまな用途における実用性を有する。
【0009】
1つの実施形態によれば、多波長ビームコンバイナは、レーザスタックを備え、レーザスタックは当該レーザスタックの積層の次元に沿って配置された複数のレーザアレイを備え、各レーザアレイは、固有波長を有する光放射を発生させるように構成され、複数のレーザアレイの各々はレーザスタックのアレイ次元に沿って配置された複数の光ゲイン素子を備える。多波長ビームコンバイナは、さらに、複数の光ゲイン素子の各々を、それら光ゲイン素子の遅軸に沿って結像するように構成されたシリンドリカル望遠鏡(telescope)と、複数のレーザアレイの各々からの光放射を遮り(intercept)、レーザスタックの積層次元に沿って光放射を結合して多波長光ビームを形成する変換レンズと、光放射の重なり領域に位置して多波長光ビームを受けるとともに透過させる回折素子とを備える。シリンドリカル望遠鏡は、回折素子上に複数の光ゲイン素子の各々を結像するように構成される。積層次元は、アレイ次元と実質的に垂直であり得る。
【0010】
1つの例において、複数のレーザアレイは、複数のレーザダイオードバーを備え、複数の光ゲイン素子は、複数のレーザダイオードエミッタを備える。別の例において、複数のレーザアレイは、複数のファイバレーザアレイを備え、複数の光ゲイン素子は、複数のファイバレーザエミッタを備える。別の例において、レーザスタックは、個別の(discrete)半導体レーザエミッタのスタックを備え、個別の半導体レーザエミッタは、アレイ次元に沿って列をなす半導体ダイまたは半導体のパッケージされたダイであってもよく、複数のレーザアレイの各々のレーザアレイは、個別の半導体レーザエミッタの列を備える。
【0011】
別の例によれば、多波長ビームコンバイナは、さらに体積ブラッグ格子を備え、体積ブラッグ格子はレーザスタックとシリンドリカル望遠鏡との間に位置するとともに、レーザスタックとともに自由空間キャビティを形成して複数の固有波長を発生させるように構成される。体積ブラッグ格子は、波長チャープされた体積ブラッグ格子であり得、波長は積層次元に沿ってチャープされる。1つの例において、変換レンズはレーザスタックから焦点距離離れて位置する。別の例において、回折素子は回折格子である。別の例において、変換レンズはシリンドリカル変換レンズである。シリンドリカル望遠鏡は、第1のレンズ素子と第2のレンズ素子とを備え得るとともに、変換レンズはその第1および第2のレンズ素子の間に位置し得る。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、さらに、回折素子から多波長光ビームを受けて、多波長光ビームの一部を重なり領域に反射して戻し、複数の固有波長を有する光放射を備えた多波長光ビームを透過させるように配置された部分反射出力カプラを備えてもよく、回折素子と、部分反射出力カプラと、レーザスタックとは、ともに複数の固有波長を生成する自由空間キャビティを形成する。部分反射出力カプラは、パッシブファイバ出力カプラであってもよい。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、さらに、レーザスタックとシリンドリカル望遠鏡との間に位置するアナモフィックビームエキスパンダを備え得る。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、また、回折素子と部分反射出力カプラとの間に位置するさらなるシリンドリカル望遠鏡を備え得るが、そのさらなるシリンドリカル望遠鏡は、部分反射出力カプラ上にアレイ次元に沿って複数のレーザダイオードエミッタを結像するように構成される。多波長ビームコンバイナは、さらに、レーザスタックと結合された複数のコリメーティングマイクロレンズを備え得る。
【0012】
別の実施形態によれば、外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、第1の波長を有する第1の光ビームを生成するように構成された第1のレーザアレイと、第2の波長を有する第2の光ビームを生成するように構成された第2のレーザアレイとを含むレーザスタックを備え、第1および第2のレーザアレイの各々は、レーザスタックのアレイ次元に沿って配置されて、光放射を生成して第1および第2の光ビームを発生させるように構成された複数の光ゲイン素子を備える。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、さらに、光放射を遮り、アレイ次元に沿って複数の光ゲイン素子の各々を結像するように配置されたシリンドリカル望遠鏡と、第1および第2の光ビームを遮り、レーザスタックの積層次元に第1および第2の光ビームを空間的に重ね合せて多波長光ビームを形成するように配置された変換レンズとを備える。さらに、外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、第1および第2の光ビームの重なり領域に位置する回折素子と、回折素子からの多波長光ビームを受けて、多波長光ビームの一部を重なり領域に反射して戻し、第1および第2の波長を有する光放射を備える多波長光ビームを透過させるように配置された部分反射出力カプラとを含む。回折素子と、部分反射出力カプラと、レーザスタックとはともに第1および第2の波長を生成する自由空間キャビティを形成し、積層次元はアレイ次元と実質的に垂直である。
【0013】
1つの例において、第1および第2のレーザアレイはレーザダイオードバーであり、各々のレーザダイオードバーは複数のレーザダイオードエミッタを備える。別の例において、レーザスタックは、アレイ次元に沿って列をなして配置された半導体レーザエミッタのスタックを備え、第1および第2のレーザアレイは、各々、半導体レーザエミッタの列を備える。別の例において、複数の第1および第2のレーザアレイはファイバレーザアレイであり、複数の光ゲイン素子は、複数のファイバレーザエミッタを備える。
【0014】
外部キャビティ多波長ビームコンバイナの1つの例において、変換レンズは、積層次元に沿って第1および第2の光ビームを結合することによって多波長光ビームを形成するように構成される。別の例において、シリンドリカル望遠鏡は、回折素子上に、光ゲイン素子の遅軸に沿って複数の光ゲイン素子の各々を結像するように構成される。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、さらにレーザスタックとシリンドリカル望遠鏡との間に位置するアナモフィックビームエキスパンダを備え得る。外部キャビティ多波長ビームコンバイナは、また、回折素子と部分反射出力カプラとの間に位置して、部分反射出力カプラ上に、アレイ次元に、回折素子上の像を結像するように構成された、さらなるシリンドリカル望遠鏡を備え得る。1つの例において、結像望遠鏡は、レーザスタックとシリンドリカル望遠鏡との間に位置して、積層次元に第1および第2の光ビームのビームサイズを低減するように構成される。結像望遠鏡(imaging telescope)は、第1のレンズおよび第2のレンズを備え得るが、第1および第2のレンズの少なくとも1つは球面レンズである。
【0015】
別の実施形態によれば、多波長ビームコンバイナは、複数のレーザダイオードバーの積層されたアレイを備え、各レーザダイオードバーは積層されたアレイのアレイ次元に沿って配置されて光を生成するように構成された1以上のレーザダイオード素子と、その1以上のレーザダイオード素子によって生成された光を受けるよう配置されて、アレイ次元に沿って光を結像するように構成されたシリンドリカル望遠鏡と、その光を受けるように配置されて、複数のレーザダイオードバーの各々によって生成された光の重なりビームを備える多波長の光のビームを形成するように構成されたシリンドリカル変換レンズとを備える。
【0016】
別の実施形態は、波長ビーム結合の方法に向けられる。方法は、複数のレーザアレイで、各々が固有波長を有する複数の光ビームを発生させる動作と、第1の次元に沿って複数の光ビームを結像する動作と、重なり領域において第2の次元に複数の光ビームを空間的に重ね合せて複数の固有波長を備える多波長光ビームを生成する動作とを備える。1つの例において、複数の光ビームを空間的に重ね合せることは、回折素子からの放射を受けるために位置する部分反射素子に、複数の光ビームを伝播する動作を備え、部分反射素子と複数のレーザアレイはともに複数の固有波長を生成する自由空間レーザキャビティを形成する。方法はさらに、部分反射素子を通じて、複数の固有波長を有する放射を備える多波長ビームを透過させる動作を備える。別の例において、方法はさらに、波長チャープされた体積ブラッグ格子で複数の固有波長を安定化させることを備える。
【0017】
これらの例示的な局面および実施形態の、さらに他の局面、実施形態および利点が以下に詳細に説明される。本明細書で開示される任意の実施形態は、本明細書で開示される対象、目的および必要に整合する任意の方式で、任意の他の実施形態と組合され得るが、「ある実施形態(an embodiment)」、「いくつかの実施形態(some embodiments)」、「代わりの実施形態(an alternate embodiment)」、「さまざまな実施形態(various embodiments)」、「1つの実施形態(one embodiment)」などの名称は、必ずしも相互に排他的なものではなく、実施形態に関連して記述される特定の特徴、構造または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれ得るということを示すことを意図している。本明細書において、そのような用語が現われることは、必ずしもすべて同一の実施形態を参照するということではない。添付の図面はさまざまな局面および実施形態の図示およびさらなる理解を与えるために含まれ、この明細書に取り入れられるとともに、その一部を構成する。図面は、本明細書の残りとともに記述されるとともに主張される局面および実施形態の原理および動作を説明するために提供される。
【0018】
少なくとも1つの実施形態のさまざまな局面が添付の図面を参照して以下に説明され、それらは縮尺して記載されることを意図していない。図中の技術的特徴、詳細な説明または任意の請求項が参照符号によって理解される場合、その参照符号は図面、詳細な説明および請求項の理解度を高める唯一の目的のために含まれている。したがって、参照符号の有無によらず、任意の請求項の要素の範囲において限定する効果は生じない。図面においては、さまざまな図面中に示される各々同一またはほぼ同一の要素は同様の符号によって示される。明確さの目的のため、各図において必ずしもすべての要素の符号が付されていないこともある。図面は、図示および説明の目的のために提供され、本発明の限定を定義することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】レーザダイオードスタックのアレイ次元に沿った1次元波長ビーム結合のための従来のクローズドループ基本構造の例を示す図である。
【図1B】レーザダイオードスタックのアレイ次元に沿った1次元波長ビーム結合のための従来のオープンループ基本構造の例を示す図である。
【図2】オープンループおよびクローズドループの従来の波長ビームコンバイナ構造の例に対する、スマイルによる有効自己フィードバックを示すグラフである。
【図3】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの1つの例の図である。
【図4A】本発明の局面に従う、図3のキャビティの、波長ビーム結合または積層次元での光学的に等価な図である。
【図4B】本発明の局面に従う、図3のキャビティの、非波長ビーム結合次元または積層次元における光学的な図である。
【図5A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの1つの例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図5B】図5Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図6A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図6B】図6Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図7A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図7B】図7Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図8A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図8B】図8Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図9A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図9B】図9Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図10】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図11A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的な図である。
【図11B】図11Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図12A】本発明の局面に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的な図である。
【図12B】図12Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図13】本発明の局面に従うオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティの例の図である。
【図14A】本発明の局面に従うオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図14B】図14Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図15A】本発明の局面に従うオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図15B】図15Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図16A】本発明の局面に従うオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図16B】図16Aの例示的キャビティの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図17A】本発明の局面に従うオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティを取り込むマスタ発振器パワーアンプの1つの例の波長ビーム結合または積層次元における光学的に等価な図である。
【図17B】図17Aの例示的アンプの非波長ビーム結合またはアレイ次元における光学的に等価な図である。
【図18A】本発明の局面に従う個別の光学素子の光学的に配置されたスタックの1つの例の上面図である。
【図18B】本発明の局面に従う、ダイオードアレイまたはバーの光学的に配置されたスタックの1つの例の上面図である。
【図18C】本発明の局面に従う、レーザスタックの光学的に配置されたスタックの1つの例の上面図である。
【図18D】本発明の局面に従う、ダイオードアレイまたはバーの光学的に配置されたスタックの別の例の上面図である。
【図19】本発明の局面に従う1次元波長ビームビーム結合の方法の1つの例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
局面および実施形態は、概して外部キャビティを用いてレーザ光源を高パワーおよび高輝度にスケーリングする分野に関し、特に、2次元レーザ光源を用いた外部キャビティ1次元波長ビーム結合のための方法および装置に関する。局面および実施形態は、さらに、重なりまたは同軸ビームを生成する高パワーおよび/または高輝度多波長外部キャビティレーザに関する。
【0021】
特に、局面および実施形態は、機械的または光学的に、行またはアレイおよび、列またはスタックに配置されてパワーおよび輝度を高めることが可能な2次元レーザ光源の1次元波長ビーム結合のための方法および装置に向けられる。たとえば、一般的な「市販された」高パワーレーザダイオードアレイおよびスタックに基づくレーザ光源は、広面積(broad-area)ダイオードレーザ素子に基づく。典型的には、これらの素子のビームの品質は、速軸に沿って回折制限(diffraction-limited)され、多くの場合、レーザ素子の遅軸に沿って回折制限される。以下の説明は、主としてレーザダイオード、ダイオードバーおよびダイオードスタックに言及し得るものであるが、本発明の実施形態は、レーザダイオードに限定されず、ファイバレーザ、個別にパッケージされたダイオードレーザ、半導体レーザおよび他の種類のレーザを含む多くの異なる種類のレーザエミッタで用いられ得ることが理解されるべきである。さらに、本明細書で用いられるように、「アレイ」との用語は、隣り合って配置された1以上のレーザ素子に言及する。アレイ次元は遅軸に沿っている。本明細書で用いられるように、「スタック」との用語は、ともに積層された2以上のアレイに言及する。スタックは機械的または光学的に配置され得る。1つの例において、機械的に配置されたスタックは、別のものの上部に物理的に積層されて、相互の上部に積層された出力ビームを生成する2以上のアレイを含む。光学的に配置されたスタックは、出力ビームが相互の上部に積層されるように、2以上のアレイからの出力ビーム(対応するアレイからの各ビーム)を配置するための光学系を用いることによって達成され得る。積層の次元はレーザ素子の速軸に沿っている。
【0022】
図18A〜18Dを参照して、光学的に配置されたスタックの例が示される。図18Aは、個別の光学素子1810の光学的に配置されたスタックを示す。ミラー1820は光学素子1830からの光ビームを並べるために用いられ、各光学素子1830は、個別の光学素子1810のスタック1860(水平次元)に対応する像1850(各光学素子1830からの光ビームを含む)を生成するためのニアフィールド像1840を有する。光学素子1830はスタックに配置されていなくてもよいが、ミラー1820は、像1850が光学素子1810のスタック1860に対応するように見えるように光ビームを並べる。同様に、図18Bにおいて、ミラー1820はダイオードバーまたはアレイ1870からの光ビームを並べてダイオードバーまたはアレイ1875のスタック1860に対応する像1850を生成するために用いられ得る。この例において、各ダイオードバーまたはアレイ1870は、バーまたはアレイ中の各々の個別素子からの光ビーム1845を含むニアフィールド像1840を有する。同様に、ミラー1820はまた、図18Cに示されるように、レーザスタック1880を、像1850に対応する個別のスタック1885の、明らかにより大きな全体スタック1860に光学的に配置するために用いられ得る。光学的に配置されたスタックの別の例が図18Dに示される。この例において、異なる高さに配置された折り返しミラー(folding mirror)1890は、光ビームダイオードアレイまたはバー1870を並べて、ダイオードアレイまたはバー1870の外見での物理的スタックに対応する像1850を生成するために用いられる。上記のように、各ダイオードアレイまたはバー1870は、アレイまたはバーにおける個別の素子からのビーム1845のアレイに対応する像1840を有する。図18Dに示された配置は、同様に、個別の光学素子1830および/またはスタック1880に適用され得る。したがって、本明細書で述べられるレーザスタックのいずれも、機械的あるいは物理的に配置されたスタックであり得るか、または、上記の例の1つ、あるいはこの開示の恩恵によって与えられる、当業者にとって明らかな他の光学的積層配置に従う、光学的に配置されたスタックであり得る。
【0023】
上記のように、従来の波長ビームコンバイナは、単一のダイオードバーの個別のレーザ素子からの光を結合して各々のダイオードバーに対して単一のビームを生成する。したがって、波長ビーム結合は、伝統的にレーザスタックのアレイ次元または遅軸に沿って行なわれる。この種のビーム結合は、ダイオードアレイの狭い許容範囲を課すとともに、非常にうまく製造された(well-manufactured)バーとそのバーの正確な積層との両方を要求し、その結果さらなるコストをもたらす。これに対して、1つの実施形態によれば、波長ビーム結合はレーザスタックの積層次元または速軸に沿って実行される。このことは、以下にさらに説明されるように、従来の波長ビーム結合キャビティに対して大きな利点を与え得る、より低いコストで安定したキャビティの構築を可能にする。
【0024】
波長ビーム結合システムのための重要な特性は、出力スペクトル、出力ビーム品質、サイズおよび効率を含む。スタック中のレーザ素子が両方の軸(すなわち速軸および遅軸)に沿って回折制限されたビーム品質を有するならば、出力スペクトル、出力ビーム品質およびサイズは、アレイ次元に沿って波長ビーム結合を実行する従来の構造の場合と、積層次元に沿って波長ビーム結合を実行する本発明の実施形態に従う構造の場合とで、実質的に同様になり得る。しかしながら以下にさらに説明するように、積層次元に沿った波長ビーム結合を実行する実施形態は、改善された効率および製造可能性を有し得る。さらに、レーザ素子が遅軸に沿って回折制限されていないならば、2次元における出力特性は、非常に異なり得るとともに、積層次元に沿った波長ビーム結合は、アレイ次元に沿った波長ビーム結合を実行する従来の構造よりも優れた性能および低いコストを含む、大きな利点を提供する。したがって、以下にさらに説明されるように、少なくともいくつかの局面および実施形態は、従来の波長ビーム結合技術を用いて達成可能なよりも、大幅に高パワーなレーザ光源を大幅に低いコストで達成し得る。
【0025】
本明細書で説明される方法および装置の実施形態は、以下の説明において述べられる、あるいは添付の図面に示される構成の詳細および要素の配置に限定されないことが理解されるべきである。方法および装置は、他の実施形態において実現可能であるとともに、さまざまな方法で実現または実行され得る。具体的な実現の例は本明細書において例示の目的のためにのみ与えられており、限定することを意図するものではない。特に、いずれか1以上の実施形態に関して説明される動作、素子および特徴は、いずれかの他の実施形態における同様の役割から除かれることを意図するものではない。
【0026】
また、本明細書で用いられる表現および用語は、説明のためであって限定としてみなされるべきではない。本明細書で単数形として参照される、システムおよび方法の実施形態または素子または動作のいかなる参照も、また、複数のこれらの要素を含む実施形態を包含し得る。そして本明細書での任意の実施の形態または要素または動作に対する複数形でのいかなる参照もまた、単一要素のみを含む実施の形態を包含し得る。単数形または複数形での参照は、ここに開示されたシステム、方法、それらの構成要素、動作または素子を限定することを意図していない。本明細書での「含む(including)」、「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「包含する(involving)」およびそれらの変形は、以下に挙げられた項目とその均等物とを、さらなる項目とともに包含することを意味する。「または(or)」との言及は、包含的であると解釈され得るので、「または」を用いた、記述される任意の用語は、記述された用語の1つ、1以上およびすべてのいずれかを示し得る。前(front)および後ろ(back)、左(left)および右(right)、上(top)および下(bottom)、上部(upper)および下部(lower)は、説明の便宜を意図するものであり、本システムおよび方法またはその構成要素を、いずれか1つの位置または空間的方向に限定することを意図するものではない。
【0027】
ダイオードアレイおよびスタックにおける堅牢で効率的な従来の波長ビーム結合のために強く望まれる2つの重要な特性は、本明細書で「スマイル」と呼ばれる低いパッケージング誤差、および低いポインティング誤差(コリメーション誤差とも呼ばれる)である。スマイル、すなわちパッケージングする間でのアレイの曲がり、およびアレイ上のコリメーティングマイクロレンズの位置ずれによって起こされるポインティング誤差は、出力ビームの品質を低下させてビーム結合効率を減少させる。図1Aおよび1Bに示されるような従来の波長ビーム結合キャビティは、スマイルおよびポインティング誤差を補償せず、したがって、堅牢で効率的な波長ビーム結合のためには、低いスマイルおよびポインティング誤差を有するダイオードアレイおよびスタックが必要とされる。したがって、所望のパワーおよび/または輝度の目標を満たすために、従来の構造には、構成要素、および構成要素の配置に対して厳しい許容範囲が課されている。これに対して、局面および実施形態は、波長ビーム結合キャビティのロバスト性および効率が、スマイルおよびポインティング誤差とは独立である方法および構造に向けられており、したがって低コストの「市販の」要素を用いることを可能にする許容範囲を緩和させる。
【0028】
図2を参照して、ダイオードバーにおけるスマイルの量の関数として、クローズドループキャビティ(曲線210)およびオープンループキャビティ(曲線220)の有効自己フィードバックのプロットが示される。本明細書で用いられるように、「自己フィードバック」との用語は、出力カプラ140に反射するとともにレーザ素子に戻される、個別のレーザ素子からの光の量を称する。曲線210は、出力カプラ140がレーザスタック110の前面(front facet)から1000ミリメータ(mm)に置かれている場合のクローズドループ波長ビームコンバイナ(図1Aに示されているような)に対応する。1000mmは、クローズドループ波長ビーム結合キャビティにおける出力カプラの典型的な配置である。曲線220は、体積ブラッグ格子160がレーザスタック110の前面から1mmに配置されたオープンループ波長ビームコンバイナ(図1Bに示されるような)に対応する。両方の場合において、レーザスタック中の各々のダイオードバーは、シリンドリカルレンズ120によって910ミクロンの焦点距離でコリメートされる。これは市販のダイオードアレイおよびスタックで用いられる典型的な焦点距離である。
【0029】
図2を参照して見られるように、クローズドループの例(曲線210)の場合、スマイルが0であっても、自己フィードバックの量は約22%に過ぎない。これは、ガウシアンビームの本来の発散によるものである。約0.3ミクロンのスマイルにおいて、自己フィードバックは本質的に0であり、従ってキャビティは、もはや正しく機能しない。体積ブラック格子がレーザスタック110から1mmに配置されたオープンループの例の場合、スマイルにおけるレーザ発光の依存性は、より敏感ではない。しかしながら、スマイルがわずか約0.2ミクロンである場合、自己フィードバックは約50%に低下する。スマイルが約0.2ミクロン未満であるとの信頼性を有するレーザダイオードバーを得ることは困難であるとともに高価であり得る。現在の最先端の単一ダイオードアレイは、約0.5〜1ミクロンのスマイルを有する。単一のアレイは、光学的に積層されてスタックを形成し得る。スマイルの量は、波長ビーム結合システムの性能を制限する。単一のアレイが無事に実装されてスタックが形成される場合、そのスタック中の各アレイの最高水準のスマイルは約1〜2ミクロンである。最も一般的な市販のスタックは機械的に実装される。機械的に実装された形態では、スマイルが0であっても、コリメーションシリンドリカルレンズ120の配置の後に、通常ではポインティング誤差が存在するであろう。スタック中のアレイが0のスマイルを有するとすると仮定すると、シリンドリカルレンズが0.3ミクロンだけオフセットされるならば、事実上、アレイ全体が0.3ミクロンのスマイルを有する。したがって有効フィードバックが本質的に0であるため、アレイ中のすべての素子は、適切に動作しないであろう。ダイオードアレイおよびスタックの現在の最先端のコリメーション誤差は約1ミクロンのオフセットである。したがって、従来の波長ビーム結合は、ダイオードアレイおよびスタックのパッケージング品質によって厳しく制限される。さらに、自己フィードバックを低減させるスマイルおよび配置に関する問題によって、どのようにしてダイオードバーが配置されるかということに対してレーザキャビティが非常に敏感であり得るので、信頼性があり、堅牢である波長ビームコンバイナの製造を困難にするとともに高価にする。
【0030】
1つの実施形態によれば、スマイルおよびポインティング誤差の両方を十分に補償することが可能であり、レーザダイオードアレイおよびスタックのパワーおよび輝度を高めるために用いられ得る、波長ビーム結合技術および構造が与えられる。1つの実施形態において、1次元波長ビーム結合キャビティは、波長ビーム結合がアレイの積層次元(またはダイオードレーザに対する速軸)に沿って実行される2次元レーザスタックを備える。キャビティにおける自己フィードバックは、実質的にスマイルおよびポインティング誤差の量とは独立している。1つの例において、格子および出力カプラは、自動的に、スマイルおよびポインティング誤差中の任意の誤差を十分に補償する。以下にさらに説明されるように、1つの例において、キャビティは積層次元に沿ったスマイルおよびポインティング誤差と同様に、アレイ次元における回折損失に向けられる。
【0031】
図3を参照して、クローズドループ波長ビーム結合キャビティ300の1つの例が示される。示された例において、明確さのために、3つのレーザアレイ305のみがレーザスタック310の積層次元に沿って積層されることが示される。しかしながら、本発明はそのように限定されず、レーザスタック310は任意の数のレーザアレイ305を備え得るということが理解されるべきである。各レーザアレイ305は、アレイ次元に沿って隣り合って配置された複数のレーザエミッタ315を備える。1つの例において、レーザアレイは、レーザダイオードバーであり、各バーは1以上のレーザダイオード素子を備える。レーザダイオードアレイ305の場合、各アレイ/ダイオードバー305は、速軸に沿ってコリメートされまたは集められ、あるいは、速軸の次元および遅軸の次元(図3に示さず)の両方においてコリメートされる。1つの実施形態において、キャビティは、焦点距離f1およびf3をそれぞれ有する2つのシリンドリカルレンズ325aおよび325bを備えるシリンドリカル結像望遠鏡320と、焦点距離f2を有するシリンドリカル変換レンズ330とを含む光学素子を備える。キャビティは、さらに積層次元に沿った分散を有する回折格子340と、部分反射出力カプラ350とを備え得る。波長ビーム結合は、積層次元に沿って実行される。上記のように、これは、ビーム結合次元がアレイ次元に沿っている、図1Aに示された従来の波長ビーム結合キャビティとは対照的である。
【0032】
図4Aを参照して、図3のキャビティの、積層次元(波長ビーム結合次元)における光学的な等価な物が示される。明確さのため、回折格子340は、図4Aにおいて透過で示される。しかしながら、回折格子340は、図3でのように反射であり得るか、透過であり得るということが理解されるべきである。図4Aに示されるように、焦点距離fmを有するコリメーティングレンズ370は、レーザスタック310のレーザアレイ305をコリメートするために用いられる。示された例は、3つのダイオードアレイ305a,305b,305cを含む。しかしながら、レーザスタック310は、機械的または光学的のいずれかに積層され得る任意の数のレーザアレイ305を含み得るということが理解されるべきである。レーザダイオードスタックの場合、レンズ370の光軸が対応するダイオードバーの光軸と位置ずれしているときにポインティング誤差が起こる。図4Bに示されるように、アレイ次元において、シリンドリカル結像望遠鏡320(325a,325b)は、エミッタ315からの光ビームをコリメートして、エミッタ315により生成される光ビーム中の発散によって起こされる、アレイ次元に沿った光損出力を低減させる。図4Aに示されるように、1つの実施形態において、積層または波長ビーム結合次元に沿って、シリンドリカル変換レンズ330は、回折格子340上に、スマイルを有するアレイ(たとえばダイオードバー)からのビームを含む、レーザスタック310中のすべてのレーザアレイ305からのビームを、空間的に重ね合わせる。すべてのレーザアレイからの光ビームの重なり領域が回折格子340の表面に形成されて、部分反射出力カプラ350が、回折格子340からの1次回折ビームの光路に配置されるように光学素子が配置され得る。1つの例において、シリンドリカル変換レンズ330は、レーザスタック310および回折格子340から、ほぼ焦点距離f2に配置される。コリメーティングレンズ370の焦点距離は、通常、残りの光学要素の焦点距離に比較して非常に短い。たとえば、コリメーティングレンズ370の焦点距離fmは、典型的には、他の光学要素の焦点距離よりも約100〜1000倍短い。図4Aに示されるように、コリメーティングレンズ370とシリンドリカル変換レンズ330との間の分離は、したがってfm+f2であり、fmが一般的にf2に比較して非常に小さいために、それはf2として近似し得る。したがって以下の説明では、光学系の配置に関するコリメーティングレンズ370の寄与は非常に小さく、本質的に無視できる。したがって、さまざまな光学要素とレーザスタックとの間の距離は、それぞれの光学要素の焦点距離として近似される。しかしながら当業者は、関連する光学要素とレーザスタック310との間の実際の距離が、コリメーティングレンズ320の焦点距離も含むことを理解するであろう。部分反射出力カプラ350は、各々のビームの一部を反射して重なり領域へと戻し、次に回折格子340は光をレーザスタック310に反射して戻す。したがって共振キャビティが、部分反射出力カプラ350とレーザ素子315の背面(back facet)との間に形成される。
【0033】
図4Bを参照して、図3のキャビティのアレイ(非波長ビーム結合)次元における光学的に等価な図が示される。示された例において、レーザスタック310の各レーザアレイ305は、3つのエミッタ315a,315b,315cを含む。しかしながら、レーザアレイは、任意の数のエミッタを含み得ることが理解されるべきである。アレイ(非波長ビーム結合)次元において、シリンドリカル結像望遠鏡320は、出力カプラ350に、ダイオードエミッタのためのエミッタの遅軸に沿って、各レーザエミッタ315を結像させる。シリンドリカル結像望遠鏡の第1の素子325aは、レーザスタック310から第1の焦点距離f1に配置され得る。シリンドリカル結像望遠鏡の第2の素子325bは、出力カプラ350から第2の焦点距離f3に配置され得る。第1の素子325aと第2の素子325bとの間の距離は、焦点距離f1とf3との和である。上記のように、f1およびf3はシリンドリカル結像望遠鏡320の第1および第2の素子325a,325bのそれぞれの焦点距離である。アレイ次元に沿って、シリンドリカル変換レンズ330と回折格子340とは何もしない。
【0034】
図4Aにおいて、破線380は、いわゆる「スマイルエミッタ」、すなわちダイオードバーの湾曲(スマイル)によって、理想的な光路から反れた光放射を有するエミッタからの光路を示す。1つの実施形態によれば、スマイルを有する素子を含む、所定のダイオードバー内のすべての素子は、名目上は同じ波長でレーザ発振する。位置とスペクトルとの間に1:1対応が存在するので、このことは、図4Aに示されるように、出力カプラ350の後のアレイ次元におけるビームサイズに広がりをもたらす。しかしながら、積層次元において、スマイルを有するすべてのエミッタに対する有効フィードバックは、スマイルの量と独立して、本質的に100%であり得る。この理由は、アレイ次元にスマイルが存在するものの、共振キャビティが積層次元において動作するためであり、したがって、所定のダイオードバーのすべてのエミッタがスマイルとは独立に共振キャビティ内に含まれるためである。したがって、最小スマイルを有する、十分よく製造されたバーの必要が除かれるため、低コストの「市販の」ダイオードバーおよびスタックが用いられ得る。これに対して、ビーム結合およびキャビティ動作がスマイルとして同一の次元、すなわちアレイ次元にある、従来の波長ビームコンバイナにおいては、図2を参照して上述したように、スマイルは自己フィードバックを大きく低下させる。さらに、速軸に沿った波長ビーム結合構造の効率は、従来の結合構造の効率よりも大きくなるが、その理由は、スマイルおよびポインティング誤差にほとんど、あるいは全く依存しないためである。
【0035】
上記のように、波長ビーム結合システムの重要な特性は、出力スペクトル、出力ビーム品質、サイズおよび効率を含む。1つの実施形態によれば、広面積エミッタを用いた、速軸に沿った波長ビーム結合を実現する構造は、より狭い出力スペクトルと、より良好な出力ビーム品質と、より高い効率と、より小さいサイズとを有する。
【0036】
WBCキャビティの出力スペクトルは、以下の式で与えられる。
【0037】
【数1】
【0038】
式(1)において、xは結合の空間的次元であり、fは変換レンズ(たとえば図3における変換レンズ330)の焦点距離であり、gは回折格子340の溝の密度であり、θは光の入射角である。空間的次元は以下のように記述することができる。
【0039】
【数2】
【0040】
式(2)において、Nは結合されるべきレーザ素子の数であり、Wはレーザ素子のビームウエストであり、FFはニアフィールド曲線因子である。ビームパラメータ積(BPP)は、ビームウエストに開口数(N.A.)またはレーザ素子の発散半角を掛けることによって定義される。動作波長が1ミクロンである一般的な市販の広面積エミッタのウエストは、概して、速軸に沿って約0.5マイクロメータ(μm)であり、遅軸に沿って約45〜500μmである。1つの例において、典型的なN.A.は、速軸に沿って約0.5ラジアンであり、遅軸に沿って約0.1ラジアンである。したがって、速軸に沿ったBPPは、
【0041】
【数3】
【0042】
である。遅軸に沿ったBPPは、
【0043】
【数4】
【0044】
である。2つのBPPの比率すなわち18〜200は、レーザ素子ごとのスペクトルの利用の改善を与える。
【0045】
したがって、FF,N.A.,N,f,gおよびθがアレイ次元波長ビーム結合(WBC)構造(すなわちアレイ次元に沿って波長ビーム結合を実行するもの)および積層次元WBC構造(すなわち積層次元に沿って波長ビーム結合を実行するもの)との間で同じであるとすると、積層次元に沿ったWBCの出力スペクトルは18〜200倍(2つのBPPの比率)狭くなる。その代わりに、固定された出力スペクトルの場合、BPPの比率が20であるとすると、積層次元WBC構造のサイズが20倍小さくなる。狭いスペクトル帯域は好ましくあり得、したがって積層次元WBC構造は、スペクトル帯域幅における大きな改善を提供し得る。代わりに、両方の構造で出力スペクトルが同じ幅に固定されるならば、本発明の実施形態に従う積層次元WBC構造のサイズは、20倍小さくなる。したがって、積層次元WBC構造は、サイズおよび/または出力スペクトルに関して大きな改善を提供し得る。
【0046】
1つの実施形態によれば、ビーム品質(B.Q.)は、以下のように定義することができる。
【0047】
【数5】
【0048】
式(3)において、BPPeはエミッタのBPPである。従来のWBC構造の場合の合成出力ビーム品質(すなわち、速軸に沿ったBPPと遅軸に沿ったBPPとの積)は、以下の式で与えられる。
【0049】
【数6】
【0050】
式(4)において、FFF=0.5はアレイ次元に沿った曲線因子であり、BPPS=5mm.mrdは遅軸に沿ったエミッタのBPPであり、NBはダイオードバーの数であり、BPPF=0.25mm.mrdは速軸に沿った各々のダイオードバーのBPPであるとする。1つの実施形態に従う積層次元WBC構造の場合の合成出力ビーム品質(すなわち、速軸に沿ったBPPと遅軸に沿ったBPPとの積)は、以下の式で与えられる。
【0051】
【数7】
【0052】
式(5)において、FFE=0.5はアレイ次元に沿った曲線因子であり、NEはバーごとのエミッタの個数である。したがって、バーの個数がエミッタの個数と同じであるならば、出力ビーム品質は両方の構造に対して実質的に同じになる。しかしながら実際には、バーごとのエミッタよりもかなり多数のダイオードバーを有することが、現在ではより現実的である。この場合、出力ビーム品質は、積層次元WBC構造の実施形態を用いて実質的に改善し得る。
【0053】
以下の表1〜4は、従来のアレイ次元WBC構造と本発明の局面に従う積層次元WBC構造との異なる構成間での比較を示す。すべての比較において、光学要素および機械的誤差による出力ビーム品質の低下は無視されているが、それは、その低下が両方の構造に同様に影響を与えるためである。表1〜4に示された例の各々において、次の仮定が適用される。
【0054】
f=200mm
g=1800l/mm
θ=60°
表1は、49個の広面積レーザ素子を備える単一の1cm幅のダイオードバーを用いた従来のアレイ次元WBCシステムと、各バーが1個のエミッタを備える49個のダイオードバーを用いた積層次元WBCシステムの例とを比較している。両方のシステムにおける曲線因子は50%である。計算は上記で与えられた式に基づく。出力スペクトルのスペクトル線幅Δλは式(1)を用いて計算される。従来のWBCの場合の次元x=10mmとし、積層次元に沿ったWBCの場合、x=10mm/20(ここで20はBPPの比率)とする。
【0055】
【表1】
【0056】
表1からわかるように、この例では両方の構造の全体的な出力ビーム品質(両方の軸の積)は同じである。しかしながら、出力スペクトルは積層次元WBC構造において20倍狭くなる。変換光学系のサイズおよび出力パワーは両方の構造で実質的に同様である。積層次元WBC構造は、より高い効率を有する。輝度のためにバーの個数をスケーリングすることが、必要に応じて増大し得る。一方、両方のWBC構成に対して出力スペクトルが固定されたままであるならば、新しいWBC構造に対する変換光学系の焦点距離は20倍短くなり得る。
【0057】
表2は、従来のWBCを用いる、各バーが49個の広面積レーザ素子を含む1cm幅の49個のダイオードバーを備える49バースタックと積層次元WBCの例とを比較する。両方の次元における曲線因子は50%である。この曲線因子は一般的な市販のダイオードバーおよびスタックの場合に典型的である。計算は上記で与えられた式に基づく。従来のWBCの場合、次元x=10mmとし、積層次元に沿ったWBCの場合、x=10mm/20(ここで20はBPPの比率)とする。
【0058】
【表2】
【0059】
表2からわかるように、この例では両方の構造の全体的な出力ビーム品質(両方の軸の積)は同じである。しかしながら、出力スペクトルは積層次元WBC構造において20倍狭くなる。変換光学系のサイズおよび出力パワーは両方のシステムで実質的に同様である。一方、両方のWBC構成に対して出力スペクトルが固定されたままであるならば、新しいWBC構造に対する変換光学系の焦点距離は20倍短くなり得る。
【0060】
表3は、従来のWBCシステムと積層次元WBCシステムの例とを比較し、各システムは、各バーが49個の広面積レーザ素子を備える980個の1cm幅のダイオードバーを備える980バースタックを用いる。両方の次元における曲線因子は50%である。計算は上記で与えられた式に基づく。両方のWBC構造に対して、次元x=10mmとする。
【0061】
【表3】
【0062】
表3からわかるように、この例では両方のシステムにおいて出力スペクトルは同じ線幅を有する。しかしながら、積層次元WBCシステムの出力ビーム品質は20倍良好となる。両方のシステムにおいてサイズおよび出力パワーは実質的に同様である。この例において、バーあたり200Wの一般的な市販のダイオードバーを用いるとすると、最大で196,000W(100%のビーム結合効率と仮定)が、キャビティから取り出され得る。
【0063】
表4は、従来のWBCシステムと積層次元WBCシステムの例とを比較し、各システムは、各々のバーが49個の広面積素子を含む100個の1cm幅のダイオードバーを備える100バースタックを用いる。両方の次元における曲線因子は50%である。計算は上記で与えられた式に基づく。
【0064】
【表4】
【0065】
表4からわかるように、この例では積層次元WBC構造の出力ビーム品質および出力スペクトルの両方が従来の構造に対して改善される。サイズおよび出力パワーは両方のシステムで実質的に同様である。
【0066】
上記の例は、本発明の局面に従う積層次元波長ビーム結合キャビティの実施形態が、出力スペクトル、出力ビーム品質、サイズおよび効率を含む、キャビティの複数の重要な特性での改善を提供し得ることを示している。さらに上記のように、積層次元における波長ビーム結合はスマイルに対して鈍感であるため、一般的な市販のダイオードバーが用いられ得る。したがって、高い性能に加えて低コストのシステムが実現可能となる。
【0067】
図5Aを参照して、1つの実施形態に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の、積層次元(波長ビーム結合次元)における光学的に等価な図が示される。この例において、波長ビーム結合キャビティは、アナモフィックビームエキスパンダ510を含む。積層次元において、アナモフィックビームエキスパンダ510は、図5Aに示されるように、ビーム520のサイズおよび積層次元を低減するように機能する。各アレイのビームをより小さくすることによって、ビームはより大きく発散し、より大きく発散したビームは、シリンドリカル変換レンズ330によって積層次元にコリメートされる。したがって、格子340におけるビームのサイズがより大きくなる。したがって、格子340に入射するビームのパワー密度がより低くなり、したがってビームが格子を損傷し得る可能性が低減される。さらに、積層次元におけるサイズを低減することによって、システムのスペクトル帯域幅も低減される。図5Bは、アレイ(非波長ビーム結合)次元における、図5Aの光学的に等価な図を示す。1つの例において、アナモフィックビームコンバイナ510は、アレイ次元に沿ってビームサイズを低減しない。ビームの発散および集束は1つのレーザアレイ305aまたはレーザエミッタ315aに対してのみ示されているが、キャビティの素子は各ダイオードバーおよび各エミッタからのビームに同様に作用することが理解されるべきである。図5Aおよび5Bにおいて、破線は速軸および遅軸に沿ったレーザビームの発散を示す。
【0068】
図6Aを参照して、クローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の積層次元(波長ビーム結合次元)における光学的に等価な図が示される。図6Bは、図6Aに示されたのと同じキャビティのアレイ(非波長ビーム結合)次元における、対応する光学的に等価な図を示す。図6Aおよび6Bに示された例において、キャビティは、上記のように、アナモフィックビームエキスパンダ510を含む。さらなるシリンドリカル望遠鏡610が、格子340と出力カプラ350との間に配置される。図6Bに示されるように、アレイ次元において、さらなるシリンドリカル望遠鏡610の第1の素子620は焦点距離f3を有し、第2の素子630は、焦点距離f4を有する。1つの例において、焦点距離f1およびf2をそれぞれ有する構成要素325aおよび325bを有する第1のシリンドリカル結合望遠鏡320は、回折格子340にレーザ素子のアレイを結像させる。さらなるシリンドリカル結合望遠鏡610は、格子340上の像を出力カプラ350に結像させる。格子340が透過である例において、2つのシリンドリカル結像望遠鏡320,610を有することは、損失を低減させるとともに、キャビティの堅牢な動作を支援する。格子340が反射的である例において、1つのシリンドリカル結像望遠鏡320は、二重光路(double-passed)であり得るとともに、さらなるシリンドリカル望遠鏡610なしに用いられ得る。
【0069】
図7Aを参照して、クローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例の積層次元(波長ビーム結合次元)における光学的に等価な図が示される。図7Bは、図7Aに示されたのと同じキャビティのアレイ(非波長ビーム結合)次元における、対応する光学的に等価な図を示す。図7Aおよび7Bに示された例において、さらなるシリンドリカル望遠鏡710は、図6Aおよび6Bを参照して既に説明されたアナモフィックビームエキスパンダと同様の機能を担う。さらなるシリンドリカル望遠鏡710は、示されるように、焦点距離f1およびf2をそれぞれ有する2つのレンズ720および730を備え得る。
【0070】
図8Aおよび8Bは、積層次元およびアレイ次元のそれぞれにおける、1つの実施形態に従う波長ビーム結合クローズドループキャビティの別の例を示す。波長ビーム結合は、この場合も積層次元に沿って実行される。図8Aおよび8Bに示された例において、システムは、上記のようなアナモフィックビームエキスパンダと同様に機能し得る第2のシリンドリカル望遠鏡710を含み、さらに、システムは、格子340と出力カプラ350との間に配置された第3のシリンドリカル望遠鏡810を含む。図6Aおよび6Bを参照して既に説明されたように、シリンドリカル結像望遠鏡320は、回折格子340上にアレイ次元に沿ってレーザ素子を結像させ、第3のシリンドリカル望遠鏡810は、出力カプラ350に格子340上の像を結像させる。
【0071】
図9Aおよび9Bを参照して、1つの実施形態に従うクローズドループ波長ビーム結合キャビティの別の例が示され、この場合も波長ビーム結合が積層次元に沿って実行される。図9Aは積層次元におけるキャビティの光学的に等価な図を示し、図9Bは、アレイ次元におけるキャビティの光学的に等価な図を示す。1つの例において、波長ビーム結合システムは、シリンドリカル望遠鏡710を備え、当該シリンドリカル望遠鏡は、図7Aおよび7Bを参照して既に説明されるとともに示される(図9Aにおけるビーム910を参照)ように、積層次元における光ビームのサイズを低減させて、ビームをより大きく発散させる。1つの例において、第1のレンズ720はシリンドリカルレンズよりもむしろ球面レンズである。球面レンズはいくつかの用途において現在好ましいものであり得るが、その理由は、球面レンズが等価なシリンドリカルレンズよりも、より低いコストでよりよい品質を提供し得るためである。第2のレンズ730はシリンドリカルレンズであり得る。システムはさらに、図9Bに示されるように、アレイ次元に沿って格子340上にエミッタを結像させるシリンドリカル結合レンズ920を備える。この例において、結像レンズ920は、シリンドリカル結像望遠鏡320の2つの要素325a,325bを組合せるシリンドリカル結像望遠鏡320を1つのレンズ920に置き換える。さらに、示された例において、システムは、出力カプラ350に格子340上の像を結像させる結像望遠鏡930を備える。1つの例において、結像望遠鏡930は、2つのレンズ940,950を備え、それらの各々は球面レンズである。
【0072】
別の実施形態によれば、効率的で高輝度のレーザ光源は、出力カプラとしての光ファイバを用いることで達成され得る。したがって、図10を参照して、積層次元において、光ファイバ1020に出力ビーム360を結合するための機構を含む積層次元波長ビーム結合システムの1つの例が示される。1つの例において、システムは、ビーム集束光学系1010と、上記の出力カプラ350に代わるパッシブファイバ出力カプラ1020を備える。ファイバは部分的に反射的である。共振キャビティは、レーザ素子305の背面と部分反射ファイバ1020との間に形成される。ビーム集束光学系1010とパッシブファイバ出力カプラ1020とは、図3〜9Bに示された例示的システムのいずれかを含む、さまざまな異なるシステムで用いられ得るということが、この開示の恩恵によって当業者に理解されるであろう。
【0073】
1つの実施形態に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例が図11Aおよび11Bに示される。図11Aは、積層または波長ビーム結合次元におけるキャビティを示し、図11Bはアレイ(非波長ビーム結合)次元におけるキャビティの光学的に等価な図である。上記のように、図11Aにおいて、破線はスマイルの影響を受けるレーザアレイ380からの光ビームを示す。この実施形態において、キャビティは2つの球面レンズ1120および1130を備える望遠鏡1110を備える。レンズ1120が球面レンズであるので、それは積層次元およびアレイ次元の両方においてレーザスタック310からの光ビームに作用する。したがって、レンズ1120は、望遠鏡1110の一部および球面変換レンズの両方として作用し、他の実施形態において用いられるシリンドリカル変換レンズ330の必要性を省くことができる。1つの例において、球面レンズ素子1120は、焦点距離f1を有し、レーザスタック310と格子340との両方から1倍の焦点距離に位置する。キャビティは、また、レンズ素子1130と出力カプラ350との間に位置するスリット1140を備える。スリット1140の目的は、レーザアレイまたはバーの間のクロス光トークを低減することである。
【0074】
図12Aおよび12Bを参照して、1つの実施形態に従うクローズドループ1次元波長ビーム結合キャビティの別の例が示される。図12Aは、積層または波長ビーム結合次元におけるキャビティを示し、図12Bは、アレイ(非波長ビーム結合)次元におけるキャビティの光学的に等価な図である。この例において、キャビティは格子340と出力カプラ350との間に位置するシリンドリカル望遠鏡1210を備える。シリンドリカル望遠鏡は、第1のシリンドリカルレンズ素子1220と第2のシリンドリカルレンズ素子1230とを備える。積層次元において、図12Aに示されるように、第1のシリンドリカルレンズ素子1220は焦点距離f4を有し、第2のシリンドリカルレンズ素子は焦点距離f5を有する。1つの例において、2つのシリンドリカルレンズ素子1220および1230は、距離1240だけ離れて位置し、この距離は、2つのシリンドリカルレンズ素子の焦点距離の和(f4+f5)にほぼ等しい。シリンドリカル望遠鏡1210は、波長ビーム結合または積層次元に沿ったビームサイズおよび出力ビーム360における光クロストークを低減するよう動作する。
【0075】
図3〜12Bを参照して既に説明された実施形態において、波長安定化は回折格子340と出力カプラ350とを用いて達成される。図13を参照して、波長安定化が波長チャープされた体積ブラッグ格子(VBG)1310を用いて達成されるオープンループ1次元波長ビーム結合キャビティ1300の例が示される。波長は積層次元に沿ってチャープされる。1つの実施形態において、キャビティは、波長チャープされたVBG1310と、シリンドリカル結像望遠鏡320と、シリンドリカル変換レンズ330と、積層次元に沿った分散を有する回折格子340とを含む光学素子を備える。波長ビーム結合は積層次元に沿っている。シリンドリカル結像望遠鏡320は、アレイ次元に沿ってエミッタを結像して、回折格子340からの円錐回折をなくすまたは低減するように動作する。円錐回折は、出力ビーム360のビーム品質を低下させる。
【0076】
図14Aを参照して、図13のキャビティの積層(波長ビーム結合)次元における光学的に等価なものが示され、示された回折格子340は透過状態にある。キャビティ1300において、各レーザアレイ305の波長は、波長チャープされたVBG1310を用いて固有波長に安定化される。たとえば、レーザスタック310中の第1のレーザアレイ305aは、第1の波長λ1でレーザ光を発するように安定化され、第2のレーザアレイ305bは第2の波長λ2でレーザ光を発し、第3のレーザアレイ305cは第3の波長λ3でレーザ光を発し得る。1つの例において、VBG1310はレーザスタック310にできるだけ接近して配置される。変換レンズ330は、すべてのレーザアレイ305からのビームを回折格子340に空間的に重ね合わせる。1つの例において、変換レンズ330の焦点距離f2と回折格子340との組合せは、実質的にVBG1310の波長広がりまたは分散と一致する。したがって、出力ビーム360は単一のレーザアレイからのビームと実質的に同様であり得る。図14Bは、図14Aのキャビティのアレイ次元における光学的に等価なものを示す。アレイ次元は、パワースケーリングのために用いられ得る。
【0077】
オープンループ波長ビーム結合の別の実施形態が図15Aおよび15Bに示される。図15Aは、積層(波長ビーム結合)次元におけるキャビティの光学的に等価なものを示し、図15Bは、アレイ(非波長ビーム結合)次元における、キャビティの光学的に等価なものを示す。上記のように、シリンドリカル望遠鏡320は、アレイ次元に沿ったビームを格子340上に結像させて、変換レンズ330は積層次元に沿ったビームを空間的に重ね合わせる。示された例において、キャビティは、レーザスタック310と体積ブラッグ格子1310との間に配置された2つのさらなるシリンドリカル望遠鏡を備える。第1のシリンドリカル望遠鏡1510は、積層次元に沿って動作可能であり、第2のシリンドリカル望遠鏡1520はアレイ次元に沿ったビームに作用可能である。積層次元に沿った第1のシリンドリカル望遠鏡1510は、積層次元に沿ったビームの次元を減少させるように機能する。ビームのサイズを低減することによって、システムのスペクトル帯域幅は同じ量減少し得る。上記のように、少なくともいくつかの用途においては、スペクトル帯域幅は狭いほど好ましい。アレイ次元に沿った第2のシリンドリカル望遠鏡1520は、体積ブラッグ格子1310にアレイを結像させて損失を低減させる。
【0078】
図16Aおよび16Bを参照して(図16Aにおいては積層次元、図16Bにおいてはアレイ次元)、1つの実施形態に従うファイバレーザアンプの例が示される。マスタ発振器スタック1610は、1以上の発振器1620を備え、それらの各々はn個の発振器に対する固有波長λ1…λnで光ビームを発生させる。マスタ発振器スタック1620からのビームはアンプレーザスタック1640によって増幅され、増幅されたビームは、上記のように波長ビーム結合されて、多波長出力ビーム360が生成される。示された例において、マスタ発振器スタック1610は3つの発振器1620を備え、アンプスタック1640は3つのレーザアレイ1650を備える。しかしながら、マスタ発振器スタックは3に限定されず任意の数の発振器を備え得るとともに、アンプスタック1640は上記のように任意の数のレーザアレイ1650を備え得ることが理解されるべきである。図16Bに示されるようにアレイ次元において、ビーム結合光学系1630は発振器1620からのビームをアンプスタック1640に結合させる。1つの例において、アンプスタック1640はファイバレーザ素子1660の1以上のアレイを備え、それらの各々はパワーアンプであり得る。出力ビームは図10を参照して既に説明されるように、光ファイバに結合され得る。
【0079】
1つの実施形態によれば、1以上のマスタ発振器1620を備え得るマスタ発振器スタックは上記の1次元多波長ビームコンバイナの実施形態を用いて実現される。発振器1620は、さまざまな用途に用いられ得る。同様に、1次元波長ビームコンバイナの実施形態は、パワーアンプを提供するために用いられ得るとともに、通信システムのような発振器−アンプシステムに用いられ得る。
【0080】
たとえば図17Aおよび17Bを参照して、発振器1620は1以上のレーザアレイ305を備えるレーザスタック310aを備え得るが、各レーザアレイは、上記のように1以上のレーザ素子315を備える。図17Aに示されるように、積層次元において、発振器1620はn個の積層されたレーザアレイ305を含むレーザスタック310を備え、各レーザアレイは特定の波長λ1…λnを有する光ビームを生成し、nは1以上の整数である。アレイ次元において、各レーザアレイ305はn個のレーザ素子315を備え、それらはすべて特定のアレイの波長λmでレーザ光を発する。示された例において、発振器1620は、シリンドリカル望遠鏡320と、シリンドリカル変換レンズ330と、回折格子340と、出力カプラ350とを備え、それらは、上記のように積層次元に沿って波長ビーム結合をともに実行して、多波長出力ビーム360aを生成する。発振器は上記の波長ビーム結合構成のいずれかを用いて実現され得、したがって上記のさらなる光学素子のいずれかを、適切に備え得るということが理解されるべきである。
【0081】
さらに図17Aおよび17Bを参照して、中継光学系1710が発振器1620からの出力ビーム360aをパワーアンプ1720に結合するために用いられ得る。パワーアンプ1720は、発振器からの多波長ビーム360aをその成分波長λ1…λnに分割する波長ビーム分割光学系を含み得る。1つの例において、波長ビーム分割光学系は、回折格子340と、レンズ325aおよび325bを備えるシリンドリカル望遠鏡と、上記の対応する波長ビーム結合の、実質的に鏡像構成(mirror image configuration)に配置されたシリンドリカル変換レンズ330とを含む。平行光学系1730は、ビームλ1…λnをコリメートしてそれらをレーザスタック310bに結合し得る。レーザスタック310bは、n個のレーザアレイ305を備え、各アレイはn個のレーザ素子315を備える。マイクロレンズ370は、上記のようにレーザスタック310bからのビームをコリメートする。波長ビーム結合は、この場合も積層次元に沿って実行されて、高パワーで増幅された出力ビーム360bを生成する。さらなる増幅段がさらなる中継光学系を用いて実行されて、さらなる結合光学系などを通じて出力ビーム360bを別のアンプ1710に結合し得る。
【0082】
別の実施形態に従うと、上記のようなキャビティを用いた波長ビーム結合の方法が開示される。図19を参照して、1つの例において、波長ビーム結合の方法は、レーザスタック310を作る各レーザアレイからの光ビームを発生させるステップを含む(ステップ1910)。各光ビームは、それぞれのレーザアレイにおけるすべてのエミッタからの光を含む。1つの例において、レーザアレイがダイオードバーであるが、各光ビームは、それぞれのダイオードバーにおけるスマイルを有するダイオードエミッタおよびスマイルを有さないダイオードエミッタのすべてのダイオードエミッタからの光を含む。上記のように、各光ビームは、体積ブラッグ格子(オープンループキャビティの場合)または回折格子および出力カプラ(クローズドループキャビティの場合)のいずれかによって安定化された固有波長を有する。スティック1920において、光ビームは上記のシリンドリカル結像望遠鏡を用いてアレイ次元に沿って結像されてビームがコリメートされて光損失が低減される。方法は、さらに、変換レンズを用いて光ビームを空間的に重ね合わせることによって積層次元に沿って波長ビーム結合を実行して(ステップ1930)、重なり領域を形成するとともにレーザスタック310における各々のレーザアレイに対応する複数の固有波長を備える多波長光ビーム360を生成するステップを含む(ステップ1940)。
【0083】
波長ビーム結合レーザキャビティの上記の実施形態のいずれかは関連するレーザシステムに取入れられ得る。そのようなレーザシステムは、たとえば、波長ビーム結合キャビティと、ソフトウェアおよび/またはファームウェアと関連付けられる電気的、熱的、機械的、電気光学的(electro-optical)および光学機械的(opto-mechanical)なレーザ制御装置、および光パワー配送サブシステムを含み得る。波長ビーム結合レーザキャビティおよび関連するレーザシステムの実施形態は、波長ビーム結合キャビティを用いて作製された、具体化されたレーザ光源の高パワーおよび輝度の恩恵を受ける用途に用いられ得る。これらの用途は、たとえば、溶接、穴開け、切断、アニーリングおよびろう付けのような材料加工、マーキング、レーザポンピング、医療用途および指向性エネルギ用途を含み得る。これらの用途の多くにおいて、波長ビーム結合キャビティによって形成されたレーザ光源は、機械ツールおよび/またはロボットに取入れられてレーザ用途の性能を高めることを可能にする。
【0084】
少なくとも1つの実施形態のさまざまな局面が記述されたが、さまざまな代替例、変更例および改善例が当業者に直ちに思いつくことが理解されるべきである。そのような代替例、変更例および改善例は本開示の一部であることが意図されるとともに、本発明の範囲内であることが意図される。したがって、上記の説明および図は単に例示に過ぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲、およびその均等物の適切な構成から決定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多波長ビームコンバイナであって、
複数のレーザアレイを含むレーザスタックを備え、前記複数のレーザアレイは前記レーザスタックの積層次元に沿って配置され、各レーザアレイは、固有波長を有する光放射を発生させるように構成され、前記複数のレーザアレイの各々は前記レーザスタックのアレイ次元に沿って配置された複数の光ゲイン素子を備え、前記多波長ビームコンバイナはさらに、
前記光ゲイン素子の遅軸に沿って前記複数の光ゲイン素子の各々を結像するように構成されたシリンドリカル望遠鏡と、
前記複数のレーザアレイの各々からの前記光放射を遮って、前記レーザスタックの前記積層次元に沿って前記光放射を結合して多波長光ビームを形成するように配置された変換レンズと、
前記光放射の重なり領域に位置して前記多波長光ビームを受けるとともに透過させる回折素子とを備え、
前記シリンドリカル望遠鏡は、前記回折素子上に前記複数の光ゲイン素子の各々を結像させるように構成される、多波長ビームコンバイナ。
【請求項2】
前記レーザスタックと前記シリンドリカル望遠鏡の間に位置し、前記レーザスタックとともに自由空間キャビティを形成して前記複数の固有波長を発生させるように構成された体積ブラッグ格子をさらに備え、
前記体積ブラッグ格子は、波長チャープされた体積ブラッグ格子であり、
前記波長は、前記積層次元に沿ってチャープされる、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項3】
前記変換レンズは、前記レーザスタックから焦点距離離れて位置する、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項4】
前記積層次元は、実質的に前記アレイ次元に垂直である、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項5】
前記回折素子は、回折格子である、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項6】
前記変換レンズは、シリンドリカル変換レンズであり、
前記シリンドリカル望遠鏡は、第1のレンズ素子と第2のレンズ素子とを備え、
前記シリンドリカル変換レンズは、前記第1および第2のレンズ素子の間に位置する、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項7】
前記回折素子からの前記多波長光ビームを受けて、前記多波長光ビームの一部を前記重なり領域に反射して戻し、前記複数の固有波長を有する光放射を備える前記多波長光ビームを透過させるように配置された部分反射出力カプラをさらに備え、
前記回折素子と、前記部分反射出力カプラと、前記レーザスタックとはともに、前記複数の固有波長を生成する自由空間キャビティを形成する、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項8】
前記レーザスタックと前記シリンドリカル望遠鏡との間に位置するアナモフィックビームエキスパンダをさらに備える、請求項7に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項9】
前記回折素子と前記部分反射出力カプラとの間に位置するさらなるシリンドリカル望遠鏡をさらに備え、
前記さらなるシリンドリカル望遠鏡は、前記部分反射出力カプラ上に前記アレイ次元に沿って前記複数の光ゲイン素子を結像するように構成される、請求項7に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項10】
前記複数のレーザアレイは、複数のレーザダイオードバーを備え、
前記複数の光ゲイン素子は、複数のレーザダイオードエミッタを備える、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項11】
前記複数のレーザアレイは、複数のファイバレーザアレイを備え、
前記複数の光ゲイン素子は、複数のファイバレーザエミッタを備える、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項12】
前記レーザスタックは、前記アレイ次元に沿って列をなして配置された個別の半導体レーザエミッタのスタックを備え、前記複数のレーザアレイの前記各レーザアレイは、前記個別の半導体レーザエミッタの列を備える、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項13】
前記レーザスタックに結合された複数のコリメーティングマイクロレンズをさらに備える、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項14】
前記回折素子からの前記多波長光ビームを受けて、前記多波長光ビームの一部を前記重なり領域に反射して戻し、前記複数の固有波長を有する光放射を備える前記多波長光ビームを透過するように配置されたパッシブファイバ出力カプラをさらに備え、
前記回折素子と、前記パッシブファイバ出力カプラと、前記レーザスタックとはともに、前記複数の固有波長を生成する自由空間キャビティを形成する、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項15】
多波長ビームコンバイナであって、
第1の波長を有する第1の光ビームを発生させるように構成された第1のレーザアレイと、第2の波長を有する第2の光ビームを発生させるように構成された第2のレーザアレイとを備えるレーザスタックを備え、前記第1および第2のレーザアレイの各々は、前記レーザスタックのアレイ次元に沿って配置されて、光放射を生成して前記第1および第2の光ビームを発生させるように構成された複数の光ゲイン素子を備え、
前記多波長ビームコンバイナは、さらに、
前記光放射を遮って、前記アレイ次元に沿って前記複数の光ゲイン素子の各々を結像するように配置されたシリンドリカル望遠鏡と、
前記第1および第2の光ビームを遮って、前記レーザスタックの積層次元に前記第1および第2の光ビームを空間的に重ね合わせて多波長光ビームを形成するように配置された変換レンズと、
前記第1および第2の光ビームの重なり領域に位置する回折素子と、
前記回折素子から前記多波長光ビームを受けて、前記多波長光ビームの一部を前記重なり領域に反射して戻し、前記第1および第2の波長を有する光放射を備える前記多波長光ビームを透過させるように配置された部分反射出力カプラとを備え、
前記回折素子と、前記部分反射出力カプラと、前記レーザスタックとはともに前記第1および第2の波長を生成する自由空間キャビティを形成し、
前記積層次元は、実質的に前記アレイ次元に垂直である、多波長ビームコンバイナ。
【請求項16】
前記部分反射出力カプラは、パッシブファイバ出力カプラである、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項17】
前記レーザスタックと前記シリンドリカル望遠鏡との間に位置するアナモフィックビームエキスパンダをさらに備える、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項18】
前記回折素子と前記部分反射出力カプラとの間に位置するとともに、前記アレイ次元において、前記回折素子における像を、前記部分反射出力カプラに結像させるように構成されたさらなるシリンドリカル望遠鏡をさらに備える、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項19】
前記レーザスタックと前記シリンドリカル望遠鏡との間に位置するとともに前記積層次元において前記第1および第2の光ビームのビームサイズを低減するように構成された結像望遠鏡をさらに備え、
前記結像望遠鏡は、第1のレンズおよび第2のレンズを備え、
前記第1および第2のレンズの少なくとも1つは、球面レンズである、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項20】
前記第1および第2のレーザアレイはレーザダイオードバーであり、各々のレーザダイオードバーは、複数のレーザダイオードエミッタを備える、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項21】
前記レーザスタックは、前記アレイ次元に沿って列をなして配置される個別の半導体レーザエミッタのスタックを備え、前記第1および第2のレーザアレイの各々は、前記個別の半導体レーザエミッタの列を備える、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項22】
前記第1および第2のレーザアレイはファイバレーザアレイであり、
前記複数の光ゲイン素子は、複数のファイバレーザエミッタを備える、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項23】
波長ビーム結合の方法であって、
複数のレーザアレイで、各々が固有波長を有する複数の光ビームを発生させるステップと、
シリンドリカル望遠鏡で、第1の次元に沿って前記複数の光ビームを結像させるステップと、
シリンドリカル変換レンズを用いて、重なり領域において第2の次元に前記複数の光ビームを空間的に重ね合わせて、前記複数の固有波長を備える多波長光ビームを生成するステップとを備える、方法。
【請求項24】
前記複数の光ビームを空間的に重ね合わせるステップは、前記複数の光ビームを、前記重なり領域に位置する回折素子に伝播するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記多波長光ビームを、前記回折素子からの放射を受けるために位置する部分反射素子に伝播するステップをさらに備え、前記部分反射素子および前記複数のレーザアレイはともに、前記複数の固有波長を生成する自由空間レーザキャビティを形成し、
前記部分反射素子を通じて、前記複数の固有波長を有する放射を備える前記多波長ビームを伝達するステップをさらに備える、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
波長チャープされた体積ブラッグ格子で前記複数の固有波長を安定化させるステップをさらに備える、請求項23に記載の方法。
【請求項1】
多波長ビームコンバイナであって、
複数のレーザアレイを含むレーザスタックを備え、前記複数のレーザアレイは前記レーザスタックの積層次元に沿って配置され、各レーザアレイは、固有波長を有する光放射を発生させるように構成され、前記複数のレーザアレイの各々は前記レーザスタックのアレイ次元に沿って配置された複数の光ゲイン素子を備え、前記多波長ビームコンバイナはさらに、
前記光ゲイン素子の遅軸に沿って前記複数の光ゲイン素子の各々を結像するように構成されたシリンドリカル望遠鏡と、
前記複数のレーザアレイの各々からの前記光放射を遮って、前記レーザスタックの前記積層次元に沿って前記光放射を結合して多波長光ビームを形成するように配置された変換レンズと、
前記光放射の重なり領域に位置して前記多波長光ビームを受けるとともに透過させる回折素子とを備え、
前記シリンドリカル望遠鏡は、前記回折素子上に前記複数の光ゲイン素子の各々を結像させるように構成される、多波長ビームコンバイナ。
【請求項2】
前記レーザスタックと前記シリンドリカル望遠鏡の間に位置し、前記レーザスタックとともに自由空間キャビティを形成して前記複数の固有波長を発生させるように構成された体積ブラッグ格子をさらに備え、
前記体積ブラッグ格子は、波長チャープされた体積ブラッグ格子であり、
前記波長は、前記積層次元に沿ってチャープされる、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項3】
前記変換レンズは、前記レーザスタックから焦点距離離れて位置する、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項4】
前記積層次元は、実質的に前記アレイ次元に垂直である、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項5】
前記回折素子は、回折格子である、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項6】
前記変換レンズは、シリンドリカル変換レンズであり、
前記シリンドリカル望遠鏡は、第1のレンズ素子と第2のレンズ素子とを備え、
前記シリンドリカル変換レンズは、前記第1および第2のレンズ素子の間に位置する、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項7】
前記回折素子からの前記多波長光ビームを受けて、前記多波長光ビームの一部を前記重なり領域に反射して戻し、前記複数の固有波長を有する光放射を備える前記多波長光ビームを透過させるように配置された部分反射出力カプラをさらに備え、
前記回折素子と、前記部分反射出力カプラと、前記レーザスタックとはともに、前記複数の固有波長を生成する自由空間キャビティを形成する、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項8】
前記レーザスタックと前記シリンドリカル望遠鏡との間に位置するアナモフィックビームエキスパンダをさらに備える、請求項7に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項9】
前記回折素子と前記部分反射出力カプラとの間に位置するさらなるシリンドリカル望遠鏡をさらに備え、
前記さらなるシリンドリカル望遠鏡は、前記部分反射出力カプラ上に前記アレイ次元に沿って前記複数の光ゲイン素子を結像するように構成される、請求項7に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項10】
前記複数のレーザアレイは、複数のレーザダイオードバーを備え、
前記複数の光ゲイン素子は、複数のレーザダイオードエミッタを備える、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項11】
前記複数のレーザアレイは、複数のファイバレーザアレイを備え、
前記複数の光ゲイン素子は、複数のファイバレーザエミッタを備える、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項12】
前記レーザスタックは、前記アレイ次元に沿って列をなして配置された個別の半導体レーザエミッタのスタックを備え、前記複数のレーザアレイの前記各レーザアレイは、前記個別の半導体レーザエミッタの列を備える、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項13】
前記レーザスタックに結合された複数のコリメーティングマイクロレンズをさらに備える、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項14】
前記回折素子からの前記多波長光ビームを受けて、前記多波長光ビームの一部を前記重なり領域に反射して戻し、前記複数の固有波長を有する光放射を備える前記多波長光ビームを透過するように配置されたパッシブファイバ出力カプラをさらに備え、
前記回折素子と、前記パッシブファイバ出力カプラと、前記レーザスタックとはともに、前記複数の固有波長を生成する自由空間キャビティを形成する、請求項1に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項15】
多波長ビームコンバイナであって、
第1の波長を有する第1の光ビームを発生させるように構成された第1のレーザアレイと、第2の波長を有する第2の光ビームを発生させるように構成された第2のレーザアレイとを備えるレーザスタックを備え、前記第1および第2のレーザアレイの各々は、前記レーザスタックのアレイ次元に沿って配置されて、光放射を生成して前記第1および第2の光ビームを発生させるように構成された複数の光ゲイン素子を備え、
前記多波長ビームコンバイナは、さらに、
前記光放射を遮って、前記アレイ次元に沿って前記複数の光ゲイン素子の各々を結像するように配置されたシリンドリカル望遠鏡と、
前記第1および第2の光ビームを遮って、前記レーザスタックの積層次元に前記第1および第2の光ビームを空間的に重ね合わせて多波長光ビームを形成するように配置された変換レンズと、
前記第1および第2の光ビームの重なり領域に位置する回折素子と、
前記回折素子から前記多波長光ビームを受けて、前記多波長光ビームの一部を前記重なり領域に反射して戻し、前記第1および第2の波長を有する光放射を備える前記多波長光ビームを透過させるように配置された部分反射出力カプラとを備え、
前記回折素子と、前記部分反射出力カプラと、前記レーザスタックとはともに前記第1および第2の波長を生成する自由空間キャビティを形成し、
前記積層次元は、実質的に前記アレイ次元に垂直である、多波長ビームコンバイナ。
【請求項16】
前記部分反射出力カプラは、パッシブファイバ出力カプラである、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項17】
前記レーザスタックと前記シリンドリカル望遠鏡との間に位置するアナモフィックビームエキスパンダをさらに備える、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項18】
前記回折素子と前記部分反射出力カプラとの間に位置するとともに、前記アレイ次元において、前記回折素子における像を、前記部分反射出力カプラに結像させるように構成されたさらなるシリンドリカル望遠鏡をさらに備える、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項19】
前記レーザスタックと前記シリンドリカル望遠鏡との間に位置するとともに前記積層次元において前記第1および第2の光ビームのビームサイズを低減するように構成された結像望遠鏡をさらに備え、
前記結像望遠鏡は、第1のレンズおよび第2のレンズを備え、
前記第1および第2のレンズの少なくとも1つは、球面レンズである、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項20】
前記第1および第2のレーザアレイはレーザダイオードバーであり、各々のレーザダイオードバーは、複数のレーザダイオードエミッタを備える、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項21】
前記レーザスタックは、前記アレイ次元に沿って列をなして配置される個別の半導体レーザエミッタのスタックを備え、前記第1および第2のレーザアレイの各々は、前記個別の半導体レーザエミッタの列を備える、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項22】
前記第1および第2のレーザアレイはファイバレーザアレイであり、
前記複数の光ゲイン素子は、複数のファイバレーザエミッタを備える、請求項15に記載の多波長ビームコンバイナ。
【請求項23】
波長ビーム結合の方法であって、
複数のレーザアレイで、各々が固有波長を有する複数の光ビームを発生させるステップと、
シリンドリカル望遠鏡で、第1の次元に沿って前記複数の光ビームを結像させるステップと、
シリンドリカル変換レンズを用いて、重なり領域において第2の次元に前記複数の光ビームを空間的に重ね合わせて、前記複数の固有波長を備える多波長光ビームを生成するステップとを備える、方法。
【請求項24】
前記複数の光ビームを空間的に重ね合わせるステップは、前記複数の光ビームを、前記重なり領域に位置する回折素子に伝播するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記多波長光ビームを、前記回折素子からの放射を受けるために位置する部分反射素子に伝播するステップをさらに備え、前記部分反射素子および前記複数のレーザアレイはともに、前記複数の固有波長を生成する自由空間レーザキャビティを形成し、
前記部分反射素子を通じて、前記複数の固有波長を有する放射を備える前記多波長ビームを伝達するステップをさらに備える、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
波長チャープされた体積ブラッグ格子で前記複数の固有波長を安定化させるステップをさらに備える、請求項23に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19】
【公表番号】特表2012−508453(P2012−508453A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534880(P2011−534880)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/063101
【国際公開番号】WO2010/053911
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/063101
【国際公開番号】WO2010/053911
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
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