説明

2波長半導体レーザ装置及びその製造方法

【課題】半田による短絡の発生を減少させたジャンクションダウン方式の2波長半導体レーザ装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の2波長半導体レーザ装置及びその製造方法は、以下の(1)〜(7)の工程からなることを特徴とする。(1)2波長半導体レーザ素子14を形成する工程、(2)サブマウント26の表面に互いに電気的に分離された2つの電極パッド27、28を設ける工程、(3)前記2つの電極パッド上にそれぞれ半田バリア層31、32を形成する工程、(4)前記半田バリア層の互いに対向する側の側面を除いて半田層33、34を形成する工程、(5)前記半田層を加熱して溶融する工程、(6)前記2波長半導体レーザ素子を前記2波長半導体レーザ素子のそれぞれの電極24、25が前記溶融した半田層上に位置するように載置する工程、(7)前記溶融した半田層を凝固させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2波長半導体レーザ装置及びその製造方法に関し、特に、2波長半導体レーザ素子をサブマウントにジャンクションダウン(Junction Down)方式で搭載する際の半田による短絡の発生を減少させた2波長半導体レーザ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光記録媒体として、コンパクトディスク(CD)、レコーダブルコンパクトディスク(CD−R)、書き換え可能なコンパクトディスク(CD−RW)、更に高密度なデジタル多用途ディスク(DVD)や記録型DVD等が知られており、特に近年に至り、次世代DVDとしてブルーレイディスク(Blu−ray Disk:登録商標名)やHD DVD(High Definition DVD:登録商標名)が開発されてきている。これらの記録媒体の記録及び再生用の光ピックアップには、光源として小型の半導体レーザ装置が慣用的に使用されている。
【0003】
これらの用途に使用される半導体レーザ装置は、多種類の光記録媒体に対して適用できるようにするため、一つのパッケージに異なる波長のレーザ光を発振できる2波長半導体レーザ装置が多く使用されている。2波長半導体レーザ装置は、既にいくつかの形式のものが開発されており、その概略を図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は従来例の2波長半導体レーザ装置の概略正面図であり、図4は同じく概略斜視図である。
【0004】
この2波長半導体レーザ装置50は、例えばDVD用の波長650nmのレーザ光とCD用の780nmのレーザ光を発振できるものであり、同一のGaAs基板51上に、波長が650nmのAlGaInP系第1半導体レーザ素子52と波長が780nmのAlGaAs系第2半導体レーザ素子53とが互いに分離した状態で集積化されている2波長半導体レーザ素子54を備えている。これらAlGaInP系第1半導体レーザ素子52及びAlGaAs系第2半導体レーザ素子53の具体的な微細構造はともに本願出願前に周知(下記特許文献1及び2参照)であるので、以下では簡略化して本発明の理解のために必要な部分のみを説明することとする。
【0005】
すなわち、2波長半導体レーザ素子54の第1半導体レーザ素子52においては第1発光部55が、同じく第2半導体レーザ素子53においては第2発光部56が形成され、また、この2波長半導体レーザ素子54のGaAs基板51の裏面には共通電極57が、第1半導体レーザ素子52の上面には第1電極58が、同じく第2半導体レーザ素子53の上面には第2電極59がそれぞれ設けられている。
【0006】
このような構成の2波長半導体レーザ装置50においては、第1電極58と共通電極57との間に電流を流すことにより第1半導体レーザ素子52を、また、第2電極59と共通電極57との間に電流を流すことにより第2半導体レーザ素子53を、それぞれ独立して駆動することができ、第1半導体レーザ素子52を駆動することにより波長650nmのレーザ光を、第2半導体レーザ素子53を駆動することにより波長780nmのレーザ光を、それぞれ発振させることができる。
【0007】
一方、半導体レーザ素子には、発振出力の制御のために光検出器が、また、発振波長の安定化及び高出力化のためにヒートシンクないしは冷却手段が、それぞれ必要とされる。上述の2波長半導体レーザ素子54はサブマウント60に取付けられているが、これらの2つの半導体レーザ素子52及び53を独立して駆動するために、サブマウント60の2波長半導体レーザ素子54の固着面には電流通路となるパターンニングされた第1電極パッド61及び第2電極パッド62が形成されている。そして、サブマウント60の2波長半導体レーザ素子54が取付けられる位置の後方にはフォトダイオード等の光検出器63が設けられている。
【0008】
2波長半導体レーザ素子54をサブマウント60に取付ける際には、第1半導体レーザ素子52及び第2半導体レーザ素子53の放熱性を良好にするために、第1発光部55及び第2発光部56側をサブマウント60側に近づけて固着する、いわゆるジャンクションダウン構造がとられ、2波長半導体レーザ素子54の接合側の第1電極58及び第2電極59をそれぞれサブマウント60の第1電極パッド61及び第2電極パッド62を合わせるようにして半田付けすることにより組立が行なわれている(下記特許文献3参照)。
【0009】
そして、この2波長半導体レーザ素子54が固着されたサブマウント60を図示しない放熱板ないしはリードフレームに固着した後に、半導体レーザ素子54の共通電極57にワイヤー64を、第1電極パッド61及び第2電極パッド62にはそれぞれワイヤー65、66を、また、光検出器63にはワイヤー67を接続して図示しないリード端子と電気的に接続することにより2波長半導体レーザ装置が作製される。
【0010】
このように、2波長半導体レーザ素子54の接合側の第1電極58及び第2電極59とサブマウント60の第1電極パッド61及び第2電極パッド62とは半田付けによって固着されるが、この半田付けによる固着は、通常2波長半導体レーザ素子54の第1電極58及び第2電極59の表面にそれぞれ高融点金属層(図示せず)を形成し、第1電極パッド61及び第2電極パッド62の表面に半田層を形成し、次いで半田層が溶融する温度に加熱した後に高融点金属層と半田層とが接するように2波長半導体レーザ素子54をサブマウント60上に載置した後、冷却することにより行われている(下記特許文献3参照)。
【0011】
しかしながら、上述のような半田付けによる2波長半導体レーザ素子の固着方法では、半田の一部が第1半導体レーザ素子52及び第2半導体レーザ素子53の端面をはい上がってしまうために、それぞれの半導体レーザ素子が動作不能となることがあり、また、場合によっては第1半導体レーザ素子52と第2半導体レーザ素子53との間で短絡が生じてしまうことがあった。
【0012】
一方、下記特許文献4には、半導体レーザ素子の半田付けによる取り付けの際に半田のはい上がりを防止することが可能なサブマウント及び半導体装置の発明が開示されている。この下記特許文献4に開示されているサブマウント及び半導体装置の発明を図5及び図6を用いて説明する。なお、図5は下記特許文献4に開示されている半導体装置の製造方法を説明するための断面概略図であり、図6は得られた半導体装置の断面概略図である。
【0013】
図5に示すように、レーザ素子82を搭載するためのサブマウント83は、窒化アルミニウム等の基板84、Ti/Pt積層膜85、Au膜86、高融点金属からなる半田バリア層87及び半田層88を備えている。この例では、半田バリア層87の幅W0よりも半田層88の幅W1の方が広くなるように、半田層88は半田バリア層87を覆うように形成されるとともに、半田バリア層87の端面の少なくとも一部から外側に延在する端部89を有し、端部89がAu膜86の上部表面と接触するようになされている。
【0014】
サブマウント83に搭載されるべきレーザ素子82の幅W2は半田層88の幅W1よりも大きくなっていてもよいし、小さくなっていてもよい。電極層であるAu膜86の幅は、レーザ素子82接合時の半田層88の横方向への流動を促進するために、半田層88の幅W1及びレーザ素子82の幅W2よりも大きくなっている。
【0015】
図5に示したようなサブマウント83を準備した後、サブマウント83の半田層88を加熱・溶融した状態でレーザ素子82を矢印90に示すように所定の位置に搭載することによってダイボンド工程を実施し、その後、半田層88を冷却して凝固させると、半田層88によってレーザ素子82がサブマウント83上に接着固定されるが、このとき、溶融した半田層88の端部89がAu膜86の上部表面と接触しているため、溶融した半田層88がレーザ素子82の端面にはい上がることなく、Au膜86の上部表面上において横方向に広がるように流動する。この結果、図6に示したように、レーザ素子82の側壁面上に半田層88の端面にはい上がることを防止でき、レーザ素子82におけるレーザ光の発振を確実に行うことが可能な半導体装置81を得ることができるというものである。
【特許文献1】特開平11−186651号公報(特許請求の範囲、段落[0017]〜[0023]、図1)
【特許文献2】特開2002−329934号公報(特許請求の範囲、図1、図4)
【特許文献3】特許第2622029号公報(特許請求の範囲、2頁左欄24〜38行、3頁左欄12行〜第4頁左欄21行、第2図〜第5図)
【特許文献4】特開2002−359425号公報(特許請求の範囲、段落[0031]〜[0055]、図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のように、上記特許文献4に開示されているサブマウント及び半導体装置の発明によれば、半田バリア層87の表面を覆う半田層88をその端部89がAu膜86と接するようにしているので、半田層88とAu膜86との間の濡れ性が良好であるため、半田層88の溶融時にAu膜86側に流動し、半田層88がレーザ素子82側にはい上がることが防止されるという良好な効果を奏する。
【0017】
しかしながら、近年、2波長半導体レーザ素子の小型化の目的から、2つの半導体レーザ素子間の距離を40〜100μmと極めて短くすることが要望されている。このような2つの半導体レーザ素子間距離が短い2波長半導体レーザ素子をジャンクションダウン方式によってサブマウントに固着すると、上記特許文献4に開示されている方法を採用しても、依然として2つの半導体レーザ素子間に短絡が見られた。
【0018】
この場合の短絡状態を示す概略正面図は、図7に示すとおりであった。すなわち、サブマウントを形成する窒化アルミニウム等の基板104の表面にはTi/Pt積層膜105、106、Au膜107、108、半田バリア層109、110、及び、半田層111、112が順次設けられており、半田層111、112が溶融された状態で2波長半導体レーザ素子101のそれぞれの電極102、103がこれらの半田層111、112上に載置され、2波長半導体レーザ素子101が矢印113の方向に押圧され、半田層111、112が冷却されて2波長半導体レーザ素子101がサブマウントの基板104上に固着される。
【0019】
その際、サブマウントの基板104の2波長半導体レーザ素子101の両側端側は、スペースに余裕があるので、Au膜107、108が広く設けられているため、溶融している半田は速やかにAu膜107、108上に広がる。しかしながら、2波長半導体レーザ素子101の中央部は、2つの半導体レーザ素子間距離が約40〜100μmと短いため、十分な面積のAu膜107、108を配置することができない。
【0020】
従って、半田層111、112が溶融しているときに2波長半導体レーザ素子を図7の矢印113方向に押圧すると、2波長半導体レーザ素子101の中央側の溶融した半田は、Au膜107ないし108と十分に接触することができないので、2波長半導体レーザ素子101の中央側へ膨れ出して膨大部114を形成することがある。この半田の膨大部114によって、2波長半導体レーザ素子の2つの半導体レーザ素子が短絡されてしまうわけである。
【0021】
発明者等はこのような2波長半導体レーザ素子をジャンクションダウン方式によってサブマウントに固着する際に、2つの半導体レーザ素子間の短絡が生じ難い構成を得るべく種々検討を重ねた結果、半田バリア層の表面に設ける半田層として、図5に示すように半導体バリア膜の表面全体に設けることなく、2波長半導体レーザ素子の中央側、すなわち、2つの半田バリア層の互いに対向する側面側には半田層を設けないようにすると、半田の膨大部が形成されることがなくなり、2つの半導体レーザ素子間の短絡が大幅に減少することを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0022】
すわち、本発明は、2波長半導体レーザ素子をサブマウントにジャンクションダウン方式で搭載する際の半田による短絡の発生を減少させた2波長半導体レーザ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記第1の目的を達成するため、本発明は、それぞれ独立して駆動可能な2つの半導体レーザ素子が形成されている2波長半導体レーザ素子と、サブマウントと、を備え、前記サブマウントの表面には互いに電気的に分離された2つの電極パッドが設けられ、前記2つの半導体レーザ素子のそれぞれの電極はジャンクションダウン方式により前記2つの電極パッドに電気的に接続されている2波長半導体レーザ装置において、前記サブマウントの2つの電極パッドの表面にはそれぞれ半田バリア層が設けられ、前記半田バリア層は互いに対向する側面側を除いて半田層が設けられ、前記2波長半導体レーザ素子のそれぞれの電極は前記半田層を介して前記サブマウントに固定されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、上記2波長半導体レーザ装置において、前記電極パッドの表面はAu層又はAu合金層からなることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、上記2波長半導体レーザ装置において、前記2つの半導体レーザ素子間の距離は40μm以上100μm以下であることを特徴とする。
【0026】
更に、上記第2の目的を達成するため、本発明のジャンクションダウン方式の2波長半導体レーザ装置の製造方法は、以下の(1)〜(7)の工程からなることを特徴とする。
(1)それぞれ独立して駆動可能な2つの半導体レーザ素子が形成されている2波長半導体レーザ素子を形成する工程、
(2)サブマウントの表面に互いに電気的に分離された2つの電極パッドを設ける工程、
(3)前記2つの電極パッド上にそれぞれ半田バリア層を形成する工程、
(4)前記半田バリア層の互いに対向する側の側面を除いて半田層を形成する工程、
(5)前記半田層を加熱して溶融する工程、
(6)前記2波長半導体レーザ素子のそれぞれの電極が前記溶融した半田層上に位置するように前記2波長半導体レーザ素子を載置する工程、
(7)前記溶融した半田層を凝固させる工程。
【0027】
また、本発明は、上記2波長半導体レーザ装置の製造方法において、前記(2)の工程において、電極パッドの表面に更にAu層又はAu合金層を設けることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、上記2波長半導体レーザ装置の製造方法において、前記(1)の工程において、前記2つの半導体レーザ素子間の距離を40μm以上100μm以下としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明は上記のような構成を備えることにより以下のような優れた効果を奏する。すなわち、本発明の2波長半導体レーザ装置によれば、サブマウントの2つの電極パッドの表面にはそれぞれ半田バリア層が設けられ、この半田バリア層は互いに対向する側面側を除いて半田層が設けられているため、半田バリア層の互いに対向する側面側には半田層が形成されていない。したがって、半田層を溶融して2波長半導体レーザ素子のそれぞれの電極が溶融した半田層上に位置するように2波長半導体レーザ素子を載置しても、2つの半田バリア層の互いに対向する側面側に半田がはみ出すことがなくなるため、従来例のように半田の膨大部が形成されることがなくなり、2波長半導体レーザ素子の2つの半導体レーザ素子同士が短絡することが非常に少なくなる。
【0030】
また、本発明の2波長半導体レーザ装置によれば、電極パッドの表面は半田層と濡れ性がよいAu層又はAu合金層からなるため、半田バリア層の表面に形成した半田層が溶融しても、この溶融した半田層はAu層又はAu合金層側に移動し易くなる。したがって、溶融した半田層が2波長半導体レーザ素子の端面側をはい上がることがなくなるので、レーザ光の発振を確実に行うことができる2波長半導体レーザ装置が得られる。
【0031】
また、本発明の2波長半導体レーザ装置によれば、2つの半導体レーザ素子間の距離を40μm以上100μm以下と短くしても2つの半導体レーザ素子が短絡を起こし難いので、小型の2波長半導体レーザ装置が得られる。2つの半導体レーザ素子間の距離を40μm未満としても一応2つの半導体レーザ素子間の短絡が少ない2波長半導体レーザ装置が得られるが、この間隔がより短くなるとより短絡が起こり易くなる。また、2つの半導体レーザ素子間の距離を100μmを越えるものとすると、得られる半導体レーザ装置が大型化するし、また、従来例のものと比して特に優れた効果を奏するとは認められなくなるので、好ましくない。
【0032】
更に、本発明の2波長半導体レーザ装置の製造方法によれば、上記の効果を奏する2波長半導体レーザ装置を容易に製造することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の発明を実施するための最良の形態について、図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は2波長半導体レーザ素子をマウントに半田付けする前の状態を示す概略正面図であり、図2は得られた2波長半導体レーザ装置の概略正面図である。なお、以下に示す実施例は本発明の技術思想を具体化するための2波長半導体レーザ装置を例示するものであって、本発明をこの実施例の2波長半導体レーザ装置に特定することを意図するものではなく、特許請求範囲に記載された技術的範囲に含まれるものに等しく適用し得るものである
【実施例】
【0034】
この実施例で作成した2波長半導体レーザ装置10は、例えばDVD用の波長650nmのレーザ光とCD用の780nmのレーザ光を発振できるものであり、同一のn型GaAs基板11上に、波長が650nmのAlGaInP系第1半導体レーザ素子12と波長が780nmのAlGaAs系第2半導体レーザ素子13とが互いに分離した状態で集積化されている2波長半導体レーザ素子14を備えている。
【0035】
これらAlGaInP系第1半導体レーザ素子12及びAlGaAs系第2半導体レーザ素子13の構成は、上述した従来例のものと同様であるが、その具体的な微細構造は以下のとおりである。
【0036】
すなわち、2波長半導体レーザ素子14のAlGaInP系第1半導体レーザ素子12においては、n型GaAs基板11上に、n型AlGaInP半導体層15及びp型AlGaInP半導体層16の間に単一量子井戸(SQW)構造ないしは多重量子井戸(MQW)構造を含む第1接合層17が形成され、この第1接合層の一部に第1発光部18が形成されている。同様に、AlGaAs系第2半導体レーザ素子13においては、n型GaAs基板11上にn型AlGaAs半導体層19及びp型AlGaAs半導体層20の間に前記第1接合層17と同様の構成の第2接合層21が形成され、この第2接合層21の一部に第2発光部22が形成されている。
【0037】
そして、この2波長半導体レーザ素子14のn型GaAs基板11の裏面には共通電極23が、第1半導体レーザ素子12の上面には第1電極24が、また、第2半導体レーザ素子13の上面には第2電極25がそれぞれ設けられている。
【0038】
このような構成の2波長半導体レーザ素子14においては、第1電極24と共通電極23との間に電流を流すことによりAlGaInP系第1半導体レーザ素子12を、また、第2電極25と共通電極23との間に電流を流すことによりAlGaAs系第2半導体レーザ素子13を、それぞれ独立して駆動することができ、第1半導体レーザ素子12を駆動することにより波長650nmのレーザ光を、第2半導体レーザ素子13を駆動することにより波長780nmのレーザ光を、それぞれ発振させることができる。
【0039】
この2波長半導体レーザ素子14をジャンクションダウン方式に取り付けるためのサブマウント26としては一般には電気絶縁性及び熱伝導率が良好なAlN、Al、Si、SiC等が採用される。その他に、熱伝導性が良好な半導体材料、例えばSiや、金属材料、例えば、Cu、Mo、W、これらの金属の合金などが使用されるが、これらの半導体材料や金属等を使用する場合には、表面に電気絶縁性を付与するために上述のAlN、Al、Si、SiC等の被膜を形成する。
【0040】
このサブマウント26の2波長半導体レーザ素子14の固着面には電流通路となるパターンニングされた例えばTi/Ptの2層膜からなる第1電極パッド27及び第2電極パッド28が形成されている。このうち、Ti層はサブマウント26との間の密着性が良な層であり、サブマウント26の形成材料に応じて適宜選択できる。そして、Pt層は拡散防止層としての機能を有している。
【0041】
更に、このTi/Ptの2層膜からなる第1電極パッド27及び第2電極パッド28の表面には、電気抵抗が小さく、半田との濡れ性が良好なAu層29、30が形成されている。このAu層29、30としては、Au金属単独だけでなく、Auを含む合金も使用し得る。
【0042】
更に、Au層29、30の表面には、2波長半導体レーザ素子14の第1電極24及び第2電極25と対向する位置に、高融点金属層からなる半田バリア層31、32が形成される。この半田バリア層31、32は、Pt、Ni、Ni−Cr等の金属ないし合金を使用し得る。なお、半田バリア層31、32の大きさ及び形成位置は、Au層29、30の面積よりも小さくし、平面視において少なくとも半田バリア層31、32が対向する側のAu層29、30の形成領域が小さくなるようにし、また、第1電極24及び第2電極25の大きさとの関係においては両者共に同程度の大きさであればよい。
【0043】
そして、この実施例においては、この半田バリア層31、32の表面に、半田バリア層31、32が互いに対向する側の側面を除いて、半田層33、34が形成される。本発明においては、この半田層33、34を半田バリア層31、32が互いに対向する側の側面を除いて設けることは必須であり、この条件を満たしている限りは半田バリア層31、32の互いに対向する側の上面の一部に半田層が設けられていなくてもよい。なお、この半田層33、34形成材料としては信頼性及び寿命の点からAuSn系半田が使用される。
【0044】
また、これらの第1電極パッド27及び第2電極パッド28、Au層29、30、半田バリア層31、32、及び、半田層33、34は、それぞれ従来例と同様の方法で形成することができ、またそれらの厚さも従来例のものと同様でよい。例えば、これらの製造方法としては、蒸着法、スパッタリング法、メッキ法等を採用でき、また、第1電極パッド27及び第2電極パッド28の厚さは0.01μm〜1.0μmであり、Au層29、30の厚さは0.1μm〜10μmであり、半田バリア層31、32の厚さは0.01μm〜1.5μmであり、更に、半田層33、34の厚さは0.1μm〜10μmとすることができる。
【0045】
図1に示したようなサブマウント26を準備した後、サブマウント26の半田層33、34を加熱・溶融させた状態で2波長半導体レーザ素子14を矢印35に示すように所定の位置に載置し、所定の圧力で押圧することによってダイボンド工程を実施し、その後、半田層33、34を冷却して凝固させると、半田層33、34によって2波長半導体レーザ素子14がサブマウント26上に接着固定される。
【0046】
このとき、半田バリア層31、32の表面には半田バリア層31、32が互いに対向する側の側面を除いて半田層33、34が形成されているから、溶融した半田層33、34は、半田層33、34とAu層29、30との間の濡れ性が良好であるため、半田バリア層31、32が互いに対向する面とは反対側の側面Au層29、30上に広がり、それに伴って半田バリア層31、32の上面に存在していた溶融した半田層33、34も半田バリア層31、32が互いに対向する面とは反対側に広がる状態となる。
【0047】
そのため、溶融した半田層33、34は半田バリア層31、32が互いに対向する側の側面にはみ出すことがなくなるので、第1半導体レーザ素子12及び第2半導体レーザ素子13間の短絡の恐れは非常に小さくなる。加えて、溶融した半田層33、34は、Au層29、30の上部表面上において横方向に広がるように流動するため、第1半導体レーザ素子12及び第2半導体レーザ素子13の側壁面上にはい上がることを防止でき、第1半導体レーザ素子12及び第2半導体レーザ素子13におけるレーザ光の発振を確実に行うことが可能な2波長半導体レーザ装置10が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】2波長半導体レーザ素子をマウントに半田付けする前の状態を示す概略正面図である。
【図2】得られた2波長半導体レーザ装置の概略正面図である。
【図3】従来例の2波長半導体レーザ装置の概略正面図である。
【図4】従来例の2波長半導体レーザ装置の概略斜視図である。
【図5】従来例の半導体装置の製造方法を説明するための断面概略図である。
【図6】得られた従来例の半導体装置の断面概略図である。
【図7】従来の2波長半導体レーザ装置の短絡状態を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 2波長半導体レーザ装置
11 n型GaAs基板
12 第1半導体レーザ素子
13 第2半導体レーザ素子
14 2波長半導体レーザ素子
15 n型AlGaInP半導体層
16 p型AlGaInP半導体層
17 第1接合層
18 第1発光部
19 n型AlGaAs半導体層
20 p型AlGaAs半導体層
21 第2接合層
22 第2発光部
23 共通電極
24 第1電極
25 第2電極
26 サブマウント
27 第1電極パッド
28 第2電極パッド
29、30 Au層
31、32 半田バリア層
33、34 半田層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ独立して駆動可能な2つの半導体レーザ素子が形成されている2波長半導体レーザ素子と、サブマウントと、を備え、前記サブマウントの表面には互いに電気的に分離された2つの電極パッドが設けられ、前記2つの半導体レーザ素子のそれぞれの電極はジャンクションダウン方式により前記2つの電極パッドに電気的に接続されている2波長半導体レーザ装置において、
前記サブマウントの2つの電極パッドの表面にはそれぞれ半田バリア層が設けられ、
前記半田バリア層は互いに対向する側面側を除いて半田層が設けられ、
前記2波長半導体レーザ素子のそれぞれの電極は前記半田層を介して前記サブマウントに固定されていることを特徴とする2波長半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記電極パッドの表面はAu層又はAu合金層からなることを特徴とする請求項1に記載の2波長半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記2つの半導体レーザ素子間の距離は40μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の2波長半導体レーザ装置。
【請求項4】
以下の(1)〜(7)の工程からなることを特徴とするジャンクションダウン方式の2波長半導体レーザ装置の製造方法。
(1)それぞれ独立して駆動可能な2つの半導体レーザ素子が形成されている2波長半導体レーザ素子を形成する工程、
(2)サブマウントの表面に互いに電気的に分離された2つの電極パッドを設ける工程、
(3)前記2つの電極パッド上にそれぞれ半田バリア層を形成する工程、
(4)前記半田バリア層の互いに対向する側の側面を除いて半田層を形成する工程、
(5)前記半田層を加熱して溶融する工程、
(6)前記2波長半導体レーザ素子のそれぞれの電極が前記溶融した半田層上に位置するように前記2波長半導体レーザ素子を載置する工程、
(7)前記溶融した半田層を凝固させる工程。
【請求項5】
前記(2)の工程において、電極パッドの表面に更にAu層又はAu合金層を設けることを特徴とする請求項4に記載の2波長半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項6】
前記(1)の工程において、前記2つの半導体レーザ素子間の距離を40μm以上100μm以下としたことを特徴とする請求項4又は5に記載の2波長半導体レーザ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−53483(P2008−53483A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228587(P2006−228587)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】