説明

3つの群を有する広角投映レンズ

【課題】少なくとも45°の半画角で像を出力でき、像には実質的に歪みがなく、ほとんど又は全くキーストーン補正を必要としない、投映距離の短い投映レンズ、光学エンジン、および背面投射型ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】広角投映レンズは、少なくとも1つの非球面を有する、負の屈折力の第1のレンズ群G1と、屈折力が実質的に0であり、内部またはその近傍に開口絞りがある第2のレンズ群G2と、正の屈折力の第3のレンズ群G3とを含み、以下の条件(1)〜(3)を満足する。|F1/F|<4.0(1)、|F2/F|>50(2)、|F3/F|<3.5(3)ここで、Fは、広角投映レンズの焦点距離であり、F1は、第1のレンズ群G1の焦点距離であり、F2は、第2のレンズ群G2の焦点距離であり、F3は、第3のレンズ群G3の焦点距離である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投映距離の短い応用に使用するための投映レンズおよびディスプレイ装置に関する。特に、投映レンズは、例えば、教育的、商業的、および家庭での使用のためのマルチメディアおよびディスプレイへの応用などの、前面投射型ディスプレイ装置と背面投射型ディスプレイ装置の両方に利用できる。さらに、本発明は、極端な軸外し像を生成でき、かつ実質的に歪みがなく、ほとんど又は全くキーストーン補正を必要としない像を生成する広角投映レンズを提供する投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子表示システムまたはビデオ表示システムは、ビデオまたは電子的に生成された像を表示可能な装置である。家庭用娯楽、広告、テレビ会議またはグループ会議に使用されるかどうかに関わらず、適切なディスプレイ装置に対する需要がある。
【0003】
消費者が適切なディスプレイ装置を決定するのに使用する要素の1つは画質である。一般に、画質は、画像の解像度および画像の色などの要素によって質的に決めることができる。一部の消費者が画像サイズの大きなディスプレイ装置を望む場合、画質が劣ることがある。一般に、大きな画像サイズは、スクリーンの対角線に沿って測定したスクリーンサイズが約40インチを超えるサイズのものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日の市場では多くのディスプレイ装置が入手可能であるが、他の装置を開発する持続したニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、広角投映レンズは、(a)少なくとも1つの非球面を有する、負の屈折力の第1のレンズ群と、(b)屈折力が実質的に0である第2のレンズ群と、(c)正の屈折力の第3のレンズ群と、を含む。語句「屈折力が実質的に0」は、レンズのパワーが3%未満であることを意味する。投映レンズは、以下の3つの条件を満たす。すなわち、条件(1)F/Fの比の絶対値が4.0未満である(すなわち、|F/F|<4.0)、条件(2)F/Fの比の絶対値が50より大きい(すなわち、|F/F|>50)、および条件(3)F/Fの比の絶対値が3.5未満である(すなわち、|F/F|<3.5)。これらの条件においては、Fは、広角投映レンズの焦点距離である。Fは、第1のレンズ群の焦点距離である。Fは、第2のレンズ群の焦点距離である。Fは、第3のレンズ群の焦点距離である。投映レンズの開口絞りは、第2のレンズ群の内部またはその近傍にある。前文においては、用語「近傍」は、第2のレンズ群の最後のレンズ要素の第2面までの開口絞りの距離と、投映レンズ軌跡(track)の距離との比が、約1/65であることを意味する。第3のレンズ群は、レンズから遠方に絞りを結像するように配置されており、これは、レンズが像空間においてほぼテレセントリックであることを意味する。広角投映レンズは背面投射型ディスプレイ装置に使用できる。広角投映レンズは前面投射型ディスプレイ装置に使用することもできる。
【0006】
別の実施形態においては、ディスプレイ装置は、照明システム、画像化システム、および投影光学系などの光学エンジンを含む。投影光学系は、少なくとも1つの非球面を有する、負の屈折力の第1のレンズ群を含む。投影光学系は、少なくとも45°の半画角で像を出力し、この像には実質的に歪みがない。出力像のサイズは対角線で約25インチ以上である。また、好ましい態様においては、この装置は実質的なキーストーン(keystone)補正を必要としない。さらに、投射装置は、実質的に歪みのない像を投射する。実質的に歪みがないとは、歪みが2%以下であることを意味する。好ましい態様においては、歪みは1%以下であり、最も好ましくは0.5%以下である。これらの歪み値では、少なくとも大部分の撮像応用では、電子的な歪み補正を必要としない。
【0007】
別の実施形態においては、背面投射型ディスプレイ装置は、光学エンジンを備え、これは(a)照明システム、(b)画像化システム、および(c)有効焦点距離の約2倍より大きい後方焦点距離、および約F/3.1以下の速度を有する投映レンズを含む。投映レンズは、実質的に歪みがなく、かつ実質的にキーストーン補正を必要としない像を生成する。背面投射型ディスプレイ装置は、キャビネットと、キャビネットに支持され、像を受像するためのスクリーンと、光学エンジンを収容するための基部と、を含む。
【0008】
本明細書においては、用語「約」は、全ての数値を修飾するものと見なされる。
【0009】
上述の本発明の概要は、それぞれ示す本発明の実施形態または実装例を全て説明するものではない。以下の図面および詳細な説明は、これらの実施形態をより詳細に例示するものである。
【0010】
添付した図面は縮尺通りに描かれておらず、あくまで例示目的で描かれている。本発明には様々な変更形態および代替形態が考えられるが、その特定の具体例を一例として図面に示し、かつ詳細に説明している。しかしながら、本発明は、説明した特定の実施形態に限定されるものではないことを理解すべきである。これとは反対に、添付の特許請求の範囲によって規定された本発明の範囲にある全ての変更例、等価物、および代替物を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明において使用可能な例示的な光学エンジンの概略図である。
【図2】本発明において使用可能な例示的な投影光学系の概略図である。
【図3A】例示的な実施形態による背面投射型ディスプレイ装置の側面図を示す。
【図3B】例示的な実施形態による背面投射型ディスプレイ装置の等角図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の例示的な実施形態は、投映距離の短い応用に使用するための投映レンズおよびディスプレイ装置を提供する。特に、投映レンズは、例えば、教育的、商業的、および家庭での使用のためのマルチメディアおよびディスプレイへの応用などの、前面投射型ディスプレイ装置および背面投射型ディスプレイ装置の両方に利用できる。さらに、本発明は、極端な軸外し像を生成でき、かつ実質的に歪みがなく、ほとんど又は全くキーストーン補正を必要としない像を生成する広角投映レンズを提供する投射装置に関する。
【0013】
図1は、以下の構成要素の1つ以上を有する例示的な光学エンジン10を示す概略図である。これらの構成要素は、照明システム12または12’、画像化システム14、フォーカス機構15、および投影光学系16である。2つの別々の照明システム12および12’を示しているが、典型的には1つのみが使用される。照明システムが参照符号12で示す位置にある場合には、使用する画像化装置(imager)は、反射型画像化装置である。これとは対照的に、照明システムが参照符号12’で示す位置にある場合には、使用する画像化装置は透過型画像化装置である。光学エンジンは、投影スクリーン18または観察面に像を生成できる。視聴者と光学エンジンは、投影スクリーンの同一側にあるので、図1は、光学エンジン10を使用する前面投射型ディスプレイ装置を示す。図3Aおよび図3Bは、光学エンジン110を使用する背面投射型ディスプレイ装置を示す。光学エンジンにおける各要素は、以下詳細に説明する。
【0014】
照明システム12、12’は、ランプユニット、フィルタ(赤外光および/または紫外光除去フィルタなど)、色分解手段、およびインテグレータを含むことができる。例示的な一実施形態においては、ランプユニットは、リフレクタおよびランプを含む。適切な市販のランプとしては(i)オランダ国アイントホーフェンのフィリップス・セミコンダクタース社(Philips Semiconductors,Eindhoven,The Netherlands)からの、楕円リフレクタを使用するフィリップス(Philips)UHP型ランプユニットと(ii)独国ミュンヘンのオスラム社(OSRAM GmBH,Munich,Germany)からのオスラム(OSRAM)P−VIP250ランプユニットが挙げられる。他の適切なランプおよびランプユニット構成も本発明において使用できる。例えば、メタルハライドランプまたはタングステンハロゲンランプまたは発光ダイオード(LED)を使用できる。本発明の実施形態において使用できるフィルタ、カラーホイール、およびインテグレータの種類は重要ではない。例示的な一実施形態においては、色分解手段は、画像化装置の光源における回転式の赤/緑/青(RGB)カラーシーケンシャルディスクである。例示的な市販のカラーホイールは、リヒテンシュタイン国バルザースのユナクシス・バルザース社(UNAXIS Balzers,LTD,Balzers,Liechtenstein)からのユナクシス(UNAXIS)RGBWカラーホイールである。液晶RGBカラーシーケンシャルシャッタも本発明の実施形態に使用できる。例示的な市販のインテグレータは、ユナクシス・バルザース社からの中空トンネル型インテグレータである。
【0015】
画像化システム14は画像化装置を含み、典型的には従来のエレクトロニクスも含む。本発明で使用できる有用な反射型画像化装置は、テキサス州ダラスのテキサス・インスツルメンツ社(Texas Instruments,Dallas,Texas)から入手可能な、対角線の寸法が約22mmであるXGAデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)である。代替的に、透過型または反射型液晶ディスプレイ(LCD)を画像化装置として使用できる。例示的な光学エンジンの実施形態においては、画像化装置の表面は、投影スクリーンの表面に実質的に平行に位置決めされる。
【0016】
いくつかの実装例では、手動あるいは電子的駆動機構の使用で調節可能な摺動式またネジ式のマウント(図示せず)に、後述する1つ以上のレンズを取り付けることにより焦点調整機構15が得られる。例えば、焦点調整は、可変焦点レンズまたはズームレンズを使用することにより行うことができる。代替的には、光学エンジン10と観察スクリーン18との間に設定された所定の固定位置を有する投影ユニットあるいは背面投射型の応用においては、使用者の焦点調整は必要でない。
【0017】
いくつかの実装例においては、スクリーン18は、多層材料、例えば、米国特許第6,179,426号明細書に説明されているように構成された複数のフレネル(Fresnel)要素を含んでもよい。スクリーンは、水平方向に広がる光分布を制御して、スクリーン前方に水平に位置する視聴者に提供するように設計できる。スクリーンの代替的な実施形態は、多層フィルム技術、デュアル輝度上昇フィルム(Dual Brightness Enhancement Film)(DBEF)技術、またはビキュイティ(VIKUITI)(商標)技術(全てミネソタ州セントポールの3M社(3M Company,Saint Paul,Minnesota)から入手可能)を含んでもよい。任意に、生成された像は、例えば、壁や他の構造など、いずれの表面上で、または標準的な観察スクリーン上で観察できる。
【0018】
図2は、光学エンジン10の投影光学系(ここでは「投映レンズ」または「広角投映レンズ」とも称される)の例示的な実施形態を示す。図2の投影光学系は、3つのレンズ群、すなわち、(出力側またはスクリーン側から特定して)第1のレンズ群(G1)、第2のレンズ群(G2)、および第3のレンズ群(G3)を含む。用語「スクリーン側」は、投影スクリーンに最も近い投映レンズの側を意味する。3つのレンズ群について以下詳細に説明する。本明細書で説明している技術分野の当業者には明らかであるように、より少数の、同じまたはより多数のレンズ要素を含む代替的な構成を含む投映レンズ16の代替的な構成を採用することができる。
【0019】
図2の例示的な投映レンズは、3つのレンズ群に合計11個の要素を含み、スクリーン側から番号を付けている。第1のレンズ群(G1)は、スクリーン側から順番に、負の屈折力の第1のレンズ要素(L1)、および第2面に非球面を有する第2のレンズ要素(L2)を含むことができる。好ましくは、G1は負の屈折力である。G1におけるF/Fの比は、−3.5<F/F<−2.3であるようにできる。第2のレンズ群(G2)は、従来の接着剤を使用して付着または接着された3つのレンズ要素(L3)〜(L5)を含むことができる。好ましくは、G2は実質的に屈折力が0である。別の実施形態においては、G2は、屈折力をわずかに正とすることができる。別の実施形態においては、G2は、屈折力をわずかに負とすることができる。G2におけるF/Fの比は、−95<F/F<−86であるようにできる。この例示的な実施形態においては、開口絞りは第2のレンズ群G2の内部またはその近傍にある。第3のレンズ群(G3)は6つのレンズ要素(L6)〜(L11)を含むことができる。好ましくは、G3は正の屈折力である。G3におけるF/Fの比は、2.5<F/F<3.2であるようにできる。図2に示すように、プリズムが、L11の右側、すなわち、前面投射型の応用における投影スクリーンから最も遠くに位置している。上述の説明においては、Fは広角投映レンズの焦点距離であり、Fは、第1のレンズ群の焦点距離であり、Fは、第2のレンズ群の焦点距離であり、Fは、第3のレンズ群の焦点距離である。
【0020】
詳細には、第1のレンズ群G1は、好ましくは負の屈折力である。第1の実施形態においては、第1のレンズ群G1は複数のレンズ要素を含む。例えば、スクリーンに対して最も近くにある第1のレンズ要素(L1)が、3つのレンズ群の全てのレンズで最も大きな直径を有し得る。例示的な一実施形態においては、第1のレンズ群の第1のレンズ要素L1は、大きな領域に像を投射するのに充分大きな直径を有し、例えばほぼ歪みなしで、半画角は、スクリーンの方向に45°より大きく、好ましくは50°より大きく、最も好ましくは約55°である。
【0021】
別の例示的な実施形態においては、第1のレンズ群の第1のレンズ要素L1は、60mmより大きく、75mm未満の直径を有する。さらに別の例示的な実施形態においては、第1のレンズ群の第1のレンズ要素は、約70mmの直径を有する。それゆえ、投射装置に実装された場合、第1のレンズ要素は、約110°〜約120°の視野を提供できる。
【0022】
図2の実施形態においては、第1のレンズ群G1は、少なくとも1つの非球面を有する第2のレンズ要素(L2)をさらに含む。この例示的な実施形態の非球面は、歪み効果を削減するのに寄与しつつ、大きな視野を提供できる。一態様においては、第2のレンズ要素は、約1.49の屈折率および約57.2のアッベ数を有する光学ポリマー、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などから作製できる。非球面の形状は、以下の式で定義できる。
【数1】


ここで、
Zは、光学系の光学軸からの距離rにおける表面サグであり、
cは、光学軸におけるレンズの曲率(単位:1/mm)であり、
rは、半径座標(単位:mm)であり、
kは、円錐定数であり、
αは、2次の項の係数であり、αは、4次の項の係数であり、αは、6次の項の係数であり、αは、8次の項の係数であり、α10は、10次の項の係数である。
【0023】
別の実施形態においては、第1のレンズ群の第1の要素の第2面の曲率半径は、第1のレンズ群の第2のレンズ要素の第1面の曲率半径と実質的に等しい。
【0024】
一実施形態においては、第1のレンズ群G1は、入れ子になった2つのメニスカス形状のレンズ要素を含む。第1のメニスカス形状の要素はガラスで作製され、第2のメニスカス形状の要素はプラスチックで作製されており、プラスチック要素は厚さが制御されている。PMMAなどのプラスチックが使用できる。2つの要素は、第1の要素の第2面と第2の要素の第1面との間の距離と、投映レンズの全体的な有効焦点距離との比が1/175であるように、離れている。
【0025】
例示的な実施形態においては、第2の形状の要素は、全体にほぼ均一な厚さを有する非球面レンズ(例えば、少なくとも1つの非球面を有するレンズ)を含む。このドーム形状の設計によって、熱的問題を低減でき、かつ簡単に製造できるようになる。
【0026】
代替的な実施形態においては、第1のレンズ群G1は、1つの一体化要素を形成するように、一緒に成形された2つの形状の要素を含むことができる。例えば、第1の形状の要素はガラス要素を含むことができ、第2の形状の要素は、第1の形状の要素の第2面の上に成形されたプラスチック(例えば、PMMA)要素を含むことができる。
【0027】
別の代替例においては、第1のレンズ群G1は、非球面が第1面もしくは第2面または両面に形成された単一要素(例えば、単一のガラス要素)を含むことができる。
【0028】
別の例示的な実施形態においては、第2のレンズ群G2は、実質的に0の屈折力とすることができる。第2のレンズ群は、複数のレンズ要素で形成できる。投映レンズ16の開口絞りは、第2のレンズ群の内部またはその近傍に位置し得る。例えば、一実施形態においては、図2を参照して、開口絞りはL5の周囲に設けることができる。
【0029】
例示的な実施形態においては、第2のレンズ群のレンズ要素全ては、球面を有することができる。例示的な一実施形態においては、第2のレンズ群G2は、接着された3枚構造(triplet)を含んでおり、球面収差およびコマ収差を制御する。G1でのレンズ要素とG2でのレンズ要素との間の軸上間隔は、必要に応じて変更できる。
【0030】
例示的な実施形態においては、第2のレンズ群G2は、長い有効焦点距離を提供する。さらに、例示的な実施形態においては、第2のレンズ群を構成する要素は、ガラスから形成される。
【0031】
代替的な実施形態においては、第2のレンズ群G2として2枚構造(doublet)が使用できる。この代替的な実施形態においては、2枚構造の要素の一方または両方が非球面を含むことができる。
【0032】
別の例示的な実施形態においては、第3のレンズ群G3は正の屈折力とすることができ、このレンズ群のレンズ要素全てが球面を有することができる。例示的な実施形態においては、第3のレンズ群G3は色収差補正(すなわち、一次および二次分散補償)を提供する。例えば、レンズL7、L8、L10、L11は同じガラス材料、例えば、MP52を含むことができる。あるいは、他のガラスを利用してもよい。
【0033】
第3のレンズ群G3と画像化装置14との間、例えば、スクリーン側から最も離れた位置に、プリズム(例えば、TIRプリズム、図示せず)を配置してもよい。あるいは、視野レンズを利用してもよい。
【0034】
図2に示す実施形態における一例として、下記の表1は、出力またはスクリーン側からの面番号(面1は第1のレンズ要素L1のスクリーン側に最も近い面である)、各面の光学軸近傍の曲率(c)(単位:1/ミリメートル)、面間の軸上間隔(D)(単位:ミリメートル)のリストであり、ガラスの種類も示している。当業者は、ガラスの種類から材料の屈折率およびアッベ数を決定可能であることを理解するであろう。面0は、物体表面または投影スクリーンの表面である。この実施形態においては、広角投映レンズは、全体の有効焦点距離が8.8mm、出力またはスクリーン側の方向における半画角が55°であり、F/2.8で動作する。第1のレンズ群G1の有効焦点距離は−25.4mmであり、第2のレンズ群G2の有効焦点距離は−800mmであり、第3のレンズ群G3の有効焦点距離は23.5mmである。この例示的な実施形態においては、投映レンズの全軌跡は130mmである。
【0035】
図2の実施形態については、第1のレンズ群における第2のレンズ要素の第2面(表1の面4として示す)は、上記式Iに規定されるような非球面であり、以下の係数値を有する。すなわちc=0.0901、k=−0.8938、α=0、α=1.99×10−5、α=−7.468×10−8、α=3.523×10−10、α10=−5.970×10−13である。図2の実施形態の広角投映レンズの全軌跡距離は130mmである。当業者は理解するように、前面投射型および背面投射型ディスプレイ応用など特定の応用においては、全軌跡距離が短いことが有利である。なぜなら、それによりコンパクトな投映レンズがもたらされるので、光学エンジン全体の空間要求を最小化できるからである。
【0036】
【表1】

【0037】
下記の表2および3は、図2の実施形態の全般的なレンズのデータおよび面データの概要のリストである。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
上記の表に提供されたデータは一例を表し、ここに説明する本発明の範囲を限定するものではない。
【0041】
上述の光学エンジンを様々なプロジェクション応用に利用できる。例えば、いくつかの前面投射型の応用が、関連した米国特許出願第11/003,252号明細書に説明されており、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0042】
例示的な背面投射型の応用においては、図3Aおよび図3Bは、背面投射型ディスプレイ装置100の側面図および等角図をそれぞれ示す。例示的な実施形態においては、ディスプレイ装置100は、および上述の投影光学系16と同様な広角投映レンズを含む、上述の光学エンジン10と同様な光学エンジン110を含む。
【0043】
背面投射型ディスプレイ装置100は、基部102、キャビネット104、およびスクリーン106を含む。図3Aおよび図3Bに示すように、背面投射型ディスプレイ装置をリアプロジェクションテレビとして実装できる。他の実装例としては、大きな(例えば、対角線が40インチ以上)画像を1人以上の視聴者に提供できる商業的および教育的なディスプレイ装置が挙げられる。
【0044】
基部102は、光学エンジン110などの構成要素、ならびに電源、制御電子回路、オーディオ部品、およびコネクタパネル(簡略化のために図示せず)を収容でき、その1つ以上が光学エンジン110に連結可能である。基部102は、ディスプレイ装置100に構造的な支持を提供するように構成することもできる。さらに、光学エンジン110の設計によっては、基部は、鏡112などの反射面をさらに含むことができる。それは光学エンジン110から投映された像を、スクリーン106へ、および/またはキャビネット104に収容された反射面または鏡114などの追加した1つまたは複数の反射面へ導くことができる。背面投射型ディスプレイ装置100に使用される反射面(または鏡)112、114は、例えば、第1の表面の鏡、反射フレネル面(または複数のフレネル面)、または別の高反射材料として構成できる。本明細書で説明している技術分野の当業者には明らかなように、1つ以上の反射面を本明細書で説明する光学エンジンと共に用いて、スクリーン106に映像を提供できる。
【0045】
キャビネット104は、上述したように1つ以上の反射面を収容するように構成できる。さらに、キャビネット104は、観察スクリーン106を支持できる。観察スクリーン106は、4×3フォーマット、または16×9フォーマットなどの1種以上の異なる画像フォーマットを提供するように構成できる。
【0046】
映像(例えば、図3Aに図示される仮想線の例を参照)が映されるスクリーン106は、映像のサイズおよびフォーマットに基づいてサイズおよび形状が変更可能である。スクリーン構成に関して、例えば、スクリーン106は、米国特許第6,179,426号明細書に説明されているように構成された多層材料、例えば、複数のフレネル要素を含んでもよい。スクリーンは、水平方向に広がる光分布を制御して、スクリーン前方に水平に位置する視聴者に提供するように設計できる。スクリーンの代替的な実施形態は、多層フィルム技術、デュアル輝度上昇フィルム(DBEF)技術、またはビキュイティ(商標)技術(全てミネソタ州セントポールの3M社から入手可能)を含んでもよい。
【0047】
上述のように、光学エンジン110は、図1に関して上述した光学エンジン10と同様の方法で構成でき、上述の投影光学系16と同様な広角投映レンズを含むことができる。さらに、光学エンジン110は、照明システムおよび上述と同様な画像化システムを含むことができ、異なる基部およびキャビネット設計を収容するように構造的に構成できる。
【0048】
例えば、光学エンジン110は、用いる画像化装置または照明システムのタイプに応じて、V字形状の配置、U字形状の配置、またはL字形状の配置を有することができる。広角/短投映タイプの光学エンジン110は、大きな視野、すなわち、45°より大きく、好ましくは50°より大きく、最も好ましくは約55°の半画角で像を提供できるので、キャビネット104の深さ(x)は、従来の背面投射型ディスプレイ装置よりも削減できる。例えば、キャビネット104の深さ(x)は約5インチ〜約15インチ、好ましくは約7インチ〜約12インチ、より好ましくは約7インチ〜約10インチである。本明細書での説明から理解できるように、キャビネット104の深さ(x)は、スクリーンの対角線のサイズおよび画像フォーマットなどの要因に基づいて変更できる。
【0049】
例示的な実施形態においては、光学エンジン110は、例えば、DLP、LCD、またはLCOS技術を用いた画像化装置または画像デバイスを含むことができる。例示的な一実施形態においては、光学エンジンは、4×3フォーマットを有する像を提供できる。別の例示的な実施形態においては、光学エンジンは、適切な画像化装置を用いて16×9フォーマットなどの異なるスクリーンフォーマットを提供するように実装できる。さらなる例示的な実施形態においては、照明システムは、上述と同様の方法で、例えば、ランプユニット(アークランプまたは他のタイプのランプなど)から構成できる。代わりに、光学エンジン110の照明システムは、レーザ方式のまたはLED方式のシステムなどの固体素子システムを用いることができる。
【0050】
代わりに、光学エンジンは、補正回路(例えば、従来のWARPチップ)と共に実装でき、これは投映距離が短くても十分な画質をもたらす。
【0051】
さらに、光学エンジンは、ほとんど又は全くキーストーン補正を必要とせずに、歪みを低減するように設計される。例えば、映像の歪み値は、2%以下、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下にできる(例えば、ここで歪み(d)は、d=(H−h)/h×100で決定できる。ここで、hは近軸の像の高さであり、Hは実際の像の高さである。))
【0052】
この例示的な光学エンジンを用いて、あまり複雑でないTIR部品を利用できるので、低コスト、薄型キャビネットの背面投射型ディスプレイ装置設計を達成することができる。大きなサイズ(例えば、40インチより大きい(対角線))の像が、短い距離および極端に軸外しの位置において得られるとともに、ディスプレキャビネットを比較的薄く保つことができる。さらに、ここで説明した光学エンジンは実質的に歪みがなく、ほとんど又は全くキーストーン補正を必要としない。
【0053】
代替的な実施形態においては、背面投射型ディスプレイ装置は、壁取り付け型または天井吊り下げ型の実装例として設計できる。ここでは、基部部分は、光学エンジンおよび他の電子回路を収容するように実装され、スタンドとして装置を支持する必要がない。
【0054】
当業者は、本発明が様々な異なる光学部品を使用してもよいことを理解するであろう。本発明を、例示的な好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲を逸脱せずに、本発明を他の特定の形態で実施してもよい。従って、ここで説明し、かつ図示した実施形態はあくまで例示を目的とするものであり、本発明の範囲を限定するものと考えるべきでないことを理解すべきである。本発明の範囲に従って、他の変形形態および変更形態も構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
G1…レンズ群、G2…レンズ群、G3…レンズ群、L1〜L11…レンズ要素、10…光学エンジン、12…照明システム、14…画像化システム、15…フォーカス機構、16…投影光学系、18…スクリーン、100…ディスプレイ装置、102…基部、104…キャビネット、106…スクリーン、110…光学エンジン、112…鏡、114…鏡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの非球面を有する、負の屈折力の第1のレンズ群と、
(b)屈折力が実質的に0である第2のレンズ群であって、第2のレンズ群の内部またはその近傍に開口絞りがある第2のレンズ群と、
(c)正の屈折力の第3のレンズ群と、を含む広角投映レンズであって、
以下の条件(1)〜(3)を満足するようにした広角投映レンズ。
|F/F|<4.0 条件(1)
|F/F|>50 条件(2)
|F/F|<3.5 条件(3)
ここで、Fは、前記広角投映レンズの焦点距離であり、Fは、前記第1のレンズ群の焦点距離であり、Fは、前記第2のレンズ群の焦点距離であり、Fは、前記第3のレンズ群の焦点距離である。
【請求項2】
前記レンズが背面投射型ディスプレイ装置に組み込まれている、請求項1に記載の広角投映レンズ。
【請求項3】
前記第1のレンズ群は、第1および第2のレンズ要素を含み、前記第2のレンズ要素は、その第2面に非球面を含むようにした請求項1に記載の広角投映レンズ。
【請求項4】
Fナンバーが約F/2.8以下である、請求項1に記載の広角投映レンズ。
【請求項5】
前記第1のレンズ群は、第1および第2のレンズ要素を含み、前記第1のレンズ要素の第2面の曲率半径が、前記第2のレンズ要素の第1面の曲率半径に実質的に等しい、請求項1に記載の広角投映レンズ。
【請求項6】
条件(1)が−3.5<F/F<−2.3であり、条件(2)が−95<F/F<−86であり、条件(3)が2.5<F/F<3.2である、請求項1に記載の広角投映レンズ。
【請求項7】
約F/3.0以下の速度、かつ約9の有効焦点距離を有する、請求項1に記載の広角投映レンズ。
【請求項8】
前記第1のレンズ群は、第1のメニスカス形状のレンズ要素を含み、前記第1のメニスカス形状のレンズ要素が第2のメニスカス形状のレンズ要素と入れ子構造になっている、請求項1に記載の広角投映レンズ。
【請求項9】
照明システム、画像化システム、および広角投映レンズを含むディスプレイ装置用の光学エンジンであって、前記広角投映レンズは、少なくとも負の屈折力の第1のレンズ群を含み、かつ少なくとも1つの非球面を有し、前記広角投映レンズは、少なくとも約45°の半画角で像を出力し、前記像には実質的に歪みがないようにした光学エンジン。
【請求項10】
前記広角投映レンズは、少なくとも約50°の半画角で像を出力する、請求項9に記載の光学エンジン。
【請求項11】
前記広角投映レンズは、少なくとも約55°の半画角で像を出力する、請求項10に記載の光学エンジン。
【請求項12】
映像サイズが少なくとも25インチ(対角線で測定)であり、実質的にキーストーン補正を必要としない、請求項9に記載の光学エンジン。
【請求項13】
映像フォーマットが、4×3フォーマットおよび16×9フォーマットの一方である、請求項9に記載の光学エンジン。
【請求項14】
前記光学エンジンが背面投射型ディスプレイ装置に組み込まれている、請求項9に記載の光学エンジン。
【請求項15】
前記第1のレンズ群は、負の屈折力の第1のレンズ要素、および第2面に非球面を有する第2のレンズ要素を含み、前記第1のレンズ群の焦点距離と投影光学系の焦点距離との比(F/F)が、−3.5<F/F<−2.3の関係を有する、請求項9に記載の光学エンジン。
【請求項16】
複数のレンズ要素を含み、前記第1のレンズ群に近接して配置された第2のレンズ群をさらに含み、前記第2のレンズ群の屈折力は実質的に0であり、前記第2のレンズ群の焦点距離と前記広角投映レンズの焦点距離との比(F/F)が−95<F/F<−86の関係を有する、請求項9に記載の光学エンジン。
【請求項17】
前記広角投映レンズの前記開口絞りが、前記第2のレンズ群の周囲に位置している請求項16に記載の光学エンジン。
【請求項18】
正の屈折力を有し、前記第2のレンズ群に近接して配置された複数のレンズ要素を含む第3のレンズ群をさらに含み、前記第3のレンズ群の焦点距離と前記広角投映レンズの焦点距離との比(F/F)が2.5<F/F<3.2の関係を有する、請求項16に記載の光学エンジン。
【請求項19】
前記第1のレンズ群は、単一要素を含み、前記単一要素の第1面および第2面の少なくとも一方に非球面が形成されている、請求項9に記載の光学エンジン。
【請求項20】
屈折力が実質的に0である第2のレンズ群であって、第2のレンズ群の内部またはその近傍に開口絞りがある第2のレンズ群と、
正の屈折力の第3のレンズ群と、をさらに含み、
以下の条件(1)〜(3)を満足するようにした請求項9に記載の光学エンジン。
|F/F|<4.0 条件(1)
|F/F|>50 条件(2)
|F/F|<3.5 条件(3)
ここで、Fは、前記投影光学系の焦点距離であり、Fは、前記第1のレンズ群の焦点距離であり、Fは、前記第2のレンズ群の焦点距離であり、Fは、前記第3のレンズ群の焦点距離である。
【請求項21】
前記第1のレンズ群は、負の屈折力の第1のレンズ要素と、全体にほぼ均一な厚さである第2のレンズ要素とを含む、請求項20に記載の光学エンジン。
【請求項22】
画像補正回路をさらに含む、請求項9に記載の光学エンジン。
【請求項23】
(a)照明システム、
(b)画像化システム、および
(c)有効焦点距離の約2倍より大きい後方焦点距離、および約F/3.1以下の速度を有する投映レンズであって、実質的に歪みがなく、かつ実質的にキーストーン補正を必要としない像を生成する投映レンズ、を含む光学エンジンと、
キャビネットと、
前記キャビネットに支持され、前記像を受像するためのスクリーンと、
前記光学エンジンを収容するための基部と、を含む背面投射型ディスプレイ装置。
【請求項24】
前記基部は、前記キャビネットおよびスクリーンを支持するようにした請求項23に記載の背面投射型ディスプレイ装置。
【請求項25】
前記キャビネットの深さが約7〜約10インチである、請求項23に記載の背面投射型ディスプレイ装置。
【請求項26】
前記基部および前記キャビネットの少なくとも一方が、前記像を前記スクリーンに向けるために反射面をさらに含む、請求項23に記載の背面投射型ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2012−181547(P2012−181547A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−113660(P2012−113660)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2008−502962(P2008−502962)の分割
【原出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】