説明

3レベルコンバータを制御する方法

直流入力電圧(Udc)を交流インバータ電圧(Vinv)に変換するインバータ(5)を、遷移時間(Ttr)内に有効電力(P)及び/又は無効電力(Q)の変更が実施される遷移の負荷(9)に前記交流インバータ電圧を供給するための基本周波数(ω)で制御する方法を提案する。この方法は、DCオフセットを回避するために、基本周波数の基本周期及びインバータ電圧Vinvと負荷電圧Vとの間の遷移後の目標位相角の関数である方程式において変数kが1〜8の間の小さな整数となるように、遷移時間Ttrが選択されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流入力電圧を交流インバータ電圧に変換するインバータを、交流インバータ電圧を負荷に供給するための基本周波数で制御する方法に関する。本発明は、特に、対応する整流器をも備える周波数コンバータ内におけるこのような方法の使用に関し、これらの両方は方形波変調モードで好適に動作する。
【背景技術】
【0002】
グリッド周波数から分岐する周波数を有する可変速発電装置、すなわち一般的に言えば発電機は、通常、発電機が生成した電圧及び周波数を電力グリッドの電圧及び周波数に適合させる変換器を介して電力グリッドに接続される。この目的のために、様々な装置が、例えば、いわゆる直接変換器などの変換器として使用され、この装置により、2つの異なる電圧及び周波数が、例えば(サイリスタ又はゲートターンオフサイリスタなどの)半導体スイッチを使用して直接変換(AC/AC)の形で互いに調整される。このような直接変換器は、例えば、いわゆるサイクロコンバータとして、或いは(例えば、米国特許第5,594,636号明細書に記載される)いわゆるマトリクスコンバータとして存在する。自然転流の場合、これらの直接変換器は、望ましくない、除去が困難な低周波の周波数成分を生成し、一方、強制転流の場合、これらの直接変換器は大幅なスイッチング損失を伴う。
【0003】
代替例として、間接変換の形で、発電機が電力グリッドに、電圧に適合した接続及び周波数に適合した接続を行うことを確実にすることができる。このような変換の場合、まず第1に、発電機が生成した交流から整流器が直流を生成し、次にインバータにおいてこの直流が電力グリッドの電圧及び周波数に適合される。このような制御されたコンバータも、同様に(GTO、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、又は集積ゲート転流サイリスタ(IGCT)などの)半導体スイッチを利用し、通常採用するスイッチング周波数において大幅なスイッチング損失を伴う。
【0004】
このようなシステム及びその動作モードについては、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10330473号明細書などに記載がある。この文献では、発電機が生成した交流電流と、発電機が生成した交流電圧とをグリッドに適合させる方法及び装置が提案されている。発電機は少なくとも1つの励起コイルを有し、発電機とグリッドとの間の適合に静止形周波数コンバータを採用し、グリッドに注ぐ電力を制御するために、一方では、少なくとも1つの励起コイルが生成する励起場の強さが安定化し、他方では、周波数コンバータ電圧と発電機又はグリッドの電圧との間の位相角を適切に制御する手段が提供されるという点で、低いスイッチング損失は伴うものの、グリッドに注ぐ電力を柔軟に適合させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,594,636号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10330473号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的の1つは、完全静止型周波数コンバータのみならず周波数コンバータのインバータ部分に関する改善した動作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
詳細には、直流入力電圧Udcを交流インバータ電圧Vinvに変換するインバータを、交流インバータ電圧を負荷に供給するための基本周波数ωで制御する方法を提案する。特に、遷移時間Ttr内に有効電力P及び/又は無効電力Qの変更を実施する方法を提案する。
【0008】
驚くべきことに、DCオフセットの欠点を伴わない高速ランピング制御が意外にも可能であることが判明した。事実、シミュレーションのために回路を巧みに削減することにより、遷移時間Ttrを特別に、すなわち方程式:
【数1】

において、kが10よりも小さな整数、より具体的には1〜8の間の整数(すなわちk=1、2、3、4、5、6、7、又は8)となるように選択し、Tを基本周期とするとともに、
【数2】

として定義し、θncを、インバータ電圧Vinvと負荷電圧Vとの間の遷移後の目標位相角とすれば、出力周波数と比較して非常に高速の遷移が可能となることが判明している。
【0009】
従って、本発明の重要な特徴の1つは、特に小さな整数値のkを発見することにより、意外にも平均線電流においてDCオフセットが全く或いはほぼ存在しなくなる点にある。
【0010】
ここで注目すべき点は、kをこのような整数値に非常に近くなるように選択すれば、ほぼ同じ結果を得ることができるという点であり、例えば、kの偏差をこれらの整数値から0.05以下とした場合、若干のDCオフセットは生じるが、これはたいした問題ではない。
【0011】
本発明の第1の好ましい実施形態では、kが1〜5までの間の非常に小さな整数となるように選択され、或いはより適切には1又は2であることが好ましい。このようにしてkの値を選択した場合、線電流におけるDCオフセットという点で欠点を全く伴わずに、極めて短い、今まで知られていなかった遷移時間が実現可能となる。
【0012】
インバータは、基本周波数クロッキングで動作することが好ましい。インバータは3レベルインバータとして設計されることが好ましく、中性点クランプ型インバータであることが好ましい。
【0013】
遷移時間の上記選択による具体的な利点は、インバータが方形波変調の形で動作する場合に特に顕著となる。
【0014】
以上すでに略述したように、この方法の主な応用例は、周波数コンバータの技術分野において見られることになる。より詳細には、この方法の応用例は、上述の最新技術との関連において、すなわちドイツ連邦共和国特許出願公開第10330473号明細書に基づく設計との関連において特に有用なものとなる。静止形周波数コンバータの詳細及びその動作モードに関連して、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10330473号明細書の開示は、相応に本開示に完全に組み入れられる。実際のところ、上記開示したインバータの動作方法は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10330473号明細書に開示されるように、特にインバータ部分の制御を改善するものである。
【0015】
従って、好ましい実施形態によれば、この方法は、整流器と共に、又は整流器との組み合わせで、或いは整流器に接続して静止形周波数コンバータを形成するインバータに適用される。この静止形周波数コンバータは3レベルコンバータであることが好ましく、中性点クランプ型コンバータであることがさらに好ましい。
【0016】
後者の場合、好ましい実施形態によれば、整流器及びインバータの双方が方形波変調(SWM)の形で動作する。
【0017】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10330473号明細書においてすでに明確に略述されているように、整流器の入力の振幅により及び/又は負荷とインバータ電圧との間の離調により、周波数コンバータの出力振幅の方が優先的に制御される。
【0018】
これに対応して、好ましくはガスタービンによって駆動される(高速)同期発電機により生成された交流を、グリッド又はネットワークへ供給するための交流へ変換するために上記方法を使用することが望ましい。しかしながら、この方法はまた、無効電力のための静的補償器又は類似の用途にも使用される。
【0019】
本発明のさらなる実施形態については、従属クレームにおいて略述する。
【0020】
添付図面において本発明の好ましい実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】3レベルコンバータを使用した最終的な応用例のブロック図を示す。
【図2】インバータ部分のみの専用の制御方法のブロック図を示す。
【図3】3つの状況A(a)、B(b)及びC(c)を表す電圧線及び電流線側の図を示す。
【図4】3つの状況についてのネットワーク側の基準信号及びそれらの間の遷移を示す図であり、a)は有効電力及び無効電力の基準信号を示し、b)は角度シフトの基準信号を示し、c)はDC電圧の基準信号を示す。
【図5】a)は計算用の単純化した回路を示し、b)は対応するベクトル線図を示す。
【図6】遷移時間リミタを示す図である。
【図7】シミュレーション結果を示す図であり、a)は有効電力及び無効電力を示し、b)はネットワーク電圧及びインバータ電圧、さらに時間の関数として線電流を示す。
【図8】k=0.25の場合のAからBへの第1の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【図9】k=0.25の場合のBからCへの第2の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【図10】k=0.5の場合のAからBへの第1の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【図11】k=0.5の場合のBからCへの第2の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【図12】k=1.0の場合のAからBへの第1の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【図13】k=1.0の場合のBからCへの第2の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【図14】k=1.5の場合のAからBへの第1の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【図15】k=1.5の場合のBからCへの第2の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【図16】k=2.0の場合のAからBへの第1の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【図17】k=2.0の場合のBからCへの第2の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【図18】k=10.3の場合のAからBへの第1の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【図19】k=10.3の場合のBからCへの第2の遷移を示す図であり、a)は角度シフトを示し、b)は電流を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照すると、これらは、本発明の好適な実施形態を示す目的のものであり、本発明の好適な実施形態を限定する目的のものではなく、AC電流に対する高速ランピングDCの除去方法と共に本発明について以下のように詳述する。
【0023】
1 導入
本願は、好ましくは3レベルコンバータのための中性点クランプ型(NPC)トポロジによる新しい制御方法について説明するものであり、方形波変調すなわちSWMの使用に基づく高い効率を特徴とする。このモードの主な利点は、スイッチング損失の準不在にある。(DC側の)インバータの入力における電圧振幅の適合化、並びにグリッド電圧と出力インバータ電圧との間の離調よって、生成された有効電力及び無効電力を制御することができる。この制御を使用する状況は特別な周波数コンバータによって生じ、この場合、すでに上述したドイツ連邦共和国特許出願公開第10330473号明細書に記載されるように、入力側と出力側の双方において方形波動作モードを使用することにより、入力電圧と出力電圧との比率が一定に保たれる。
【0024】
図1は、ガスタービン1により駆動される高速同期発電機2とグリッド又はネットワーク9との間のインタフェースとしての周波数コンバータ13の最終的な応用例を示す図である。この応用例では、入力電圧振幅と出力電圧振幅との間の比率が一定であるため、変換器13を「周波数専用コンバータ」として指定することができる。発電機の励起を変更することにより、ネットワークを通じて電力フローの制御に使用される電圧の適合化を達成することができる。
【0025】
図1には、DCリンク14を介して結合した整流器4及びインバータ5により静止形周波数コンバータが設けられる。このリンクにはキャパシタ15が備えられる。制御セクションには、位置エンコーダ3により与えられた形でガスタービンから位置情報が与えれ、主な基準信号6が最下部に示される。望ましい出力振幅に応じて、同期発電機2の励起システムに供給するために必要な電流/電圧が計算ユニット17において計算され、発電機に入力される。システムの実際の出力状態は、電圧変換器7により制御装置へ提供される。さらに、インバータの出力側にフィルタ8を設けることが可能である。
【0026】
図1の最上部には、ガスタービンを起動するために(矢印10、起動方向)、或いはエネルギを生成するために(矢印11、エネルギ生成方向)このようなシステムを動作させることができる旨を概略的に示している。
【0027】
この応用例では、ライン側の制御のみが主な関心事である。単純化した形として、インバータ5の入力側において、同期発電機2及びその整流器4を調整可能なDC電源18と置き換えることができる(図2を参照のこと)。
【0028】
異なる動作点及びそれらの間の遷移についてのシミュレーション結果により、提案する制御方法の性能が明らかとなる。これらの性能には、統一した力率及びより良好な電流品質で動作する能力が含まれる。この点について、多くの著者は総高調波ひずみの低さ又は効率の高さを重視するが、DC成分の減少に関して重視する著者はわずかしかいない。
【0029】
本願の目的は、AC電流のための新しい高速ランピングDCの除去方法について説明することにある。
【0030】
本願の本明細書部分は以下のように構成される。セクション2では、力学的状態を含む専用の制御方法を提示し、セクション3では、DC成分を除去するための新しい方法について説明し、セクション4ではシミュレーション結果を示す。最後にセクション5で本願の明細書部分を完結する。
【0031】
2 専用の制御方法
図2は、3レベルNPCインバータの原理回路図を示すとともに、その制御ブロックを例示する図である。
【0032】
この制御は、ネットワークと出力インバータ電圧との間の角度シフト並びにインバータの入力における電圧振幅の適合に基づくものである。図3のa)、b)及びc)のベクトル線図の形でそれぞれ示す3つの動作モードA、B、及びCを得ることができる。図3a)は、負荷のない状況、すなわちPnc=Qnc=0の状況を示す図である。図3b)は有効電力及び無効電力の注入を示し、図3c)は有効電力のみの注入を示す図である。
【0033】
図4はネットワーク側の基準信号を示す図であり、a)は有効電力及び無効電力の基準信号を示し、上側の線が有効電力の基準信号を示し、下側の線が無効電力の基準信号を示し、b)は角度シフトの基準信号を示し、c)はDC電圧の基準信号を示す。
【0034】
有効電力及び無効電力の基準信号から始めて、システムは、最初に有効電力及び無効電力が0に等しい状態(図4a)で、負荷のない動作(動作モードA)で起動する。インバータ電圧及びネットワーク電圧の両方は、公称に等しい振幅(方程式1)の同じ位相を有する。従って、電流線は非常に短い(図3−a、モードA)。
【数3】

【0035】
t=0.04秒でのモードAとBとの間の第1の遷移では、ネットワークの有効電力及び無効電力が、Pnc=S×cosφ及びQnc=S×sinφにそれぞれランピングする。この結果、角度シフト及び連続電圧が、モードB(図3b及び図4b及びc)において(θn0,Ud0)から(θnc,Udc)へ変化する。これらの値は、有効電力及び無効電力の基準信号によって決まる(方程式2)。
【数4】

【0036】
t=0.1秒でのモードBとCとの間の第2の遷移では、無効電力Qが、図4a)に示すようにゼロにランプダウンする。この結果、角度シフト及び連続電圧は、(θnc,Udc)から(θ’nc,U’dc)へ変化しなければならなくなる。この時、統一した力率を使用して無効電力Qを補償するとともにシステムを動作させることができる。
【0037】
しかしながら、線電流は、過渡電流に起因する若干のDC成分を含むことができる。
【0038】
この問題を克服するために、有効電力及び無効電力の基準信号の遷移は高速でないことが望ましい。遷移時間Ttrが、基本周期(T=20ミリ秒)と比較して相対的に長ければ、電流を左右対称とみなし、DC成分を無視することができる。
【0039】
ここでの疑問は、方形波変調における電流過渡のスルーレートはどれほどの速さが許容されるのかという点である。
【0040】
3 AC電流のための高速ランピングDCの除去方法
単純な回路の使用による1つの研究により、Ttrの特定の選択によってDC成分をゼロに等しくできることが証明されている。
【0041】
3.1 単純なシステム
一例として、以下のような単純な回路(図5aを参照のこと。また対応するベクトル線図を図5bに示している)について考察する。
出力電圧は、V(t)=sinωt
入力電圧は、Vinv(t)=sin(ωt+θ(t))
θ(t)は、VとVinvとの間の角度シフトを表し、これについては図6(遷移時間リミタ)に示しており、方程式3で表される。
【数5】

【0042】
入力電圧及び出力電圧がインダクタンスLを通じて一体に接続される。
【0043】
回路において生成される電流は方程式4で表されることが知られている。
【数6】

【0044】
(3)を(4)に挿入して以下の方程式をもたらすことができる。
【数7】

【0045】
一方、電流の平均値は(6)で表される。
【数8】

【0046】
(5)で与えられた電流を(6)に代入して次の方程式を得ることができる。
【数9】

【0047】
電流の平均値imeanすなわちDC成分は、2つの項によって構成され、遷移時間Trに依存する。これらの項のうちの一方がゼロになったとき、DC成分はゼロに等しくなる。
【数10】

【0048】
trが比較的長い場合、方程式8が立証される。
【数11】

【0049】
trが基本周期の整数倍数に等しい場合、方程式9が立証される。実際には、Ttrは方程式10によって表される。
【数12】

この場合、
【数13】

となり、k=1、2、3...となる。
【0050】
備考:一定の入力電圧及び線形ランプのための解析計算を行っているが、図2に示すシステムは線形ではない。
【0051】
3.2 非線形システム
図2は3レベルインバータの制御ブロックを示す図である。セクション2に示すように、ネットワーク9と出力インバータ電圧との間の角度シフト並びにインバータの入力におけるDC電圧の振幅は、方程式11によって表される。
【数14】

【0052】
P(t)及びQ(t)は方程式12によって表される。
【数15】

【0053】
この時θ及びUは線形ではない。
【0054】
4シミュレーション結果
図2に示すシステムは、以下の特性を使用してシミュレートしたものである。V=1puはネットワーク電圧である。X=0.1puはインバータとネットワークとの間のインダクタンスである。S=1.5puは皮相電力である。
【0055】
図7は、3つの動作モードA、B及びCに関してシミュレートした有効電力P及び無効電力Qを示す図である。無効電力Qがゼロの場合、線電流はネットワーク電圧と同相になる。
【0056】
システムは、同じ条件で、同じ特性を使用して、異なる値の遷移時間Ttrについてシミュレートしている。
【0057】
図8、図10、図12、図14、図16及び図18のようにθ(t)がθn0からθncに変化し、システムがcosφ≠1で動作する場合、線電流は第1の遷移においてt=0.04秒で測定される。
【0058】
また、図9、図11、図13、図15、図17及び図19のようにθ(t)がθncからθ’ncに変化し、システムがcosφ≠1で動作する場合、線電流は第1の遷移においてt=0.4秒で測定される。
【0059】
図12、図13、図16及び図17のシミュレーション結果では、kがk=1、2、...などの整数である場合、DC成分がゼロになることが確認される。そうでない場合、図8、図9、図10、図11、図14、図15のようにk=0.25、0.5、1.5などのときにはゼロにはならない。
【0060】
図18、図19のように、k=10.3などの、kが大きな値の場合、DC成分を無視することができる。
【0061】
5 結論
3レベルインバータの新しい制御方法を示した。コンバータは、角度シフト及び連続電圧の適合を通じて任意の動作点に到達することができる。その主な利点は単純な構造にある。この構造は、通常、高速同期発電機とグリッドとの間のインタフェースとして使用され、この場合、発電機側とライン側の両方においてSWMを使用することにより、入力電圧と出力電圧との間の比率は一定に保たれる。最終的な用途では、発電機の励起を通じて電圧の適合を達成することができる。この用途では、ライン側の制御方法のみを示した。異なる動作点及びそれらの間の遷移についてのシミュレーション結果により、提案する制御方法の性能が明らかとなる。これらの性能には、連続した成分を伴わずに統一した力率及びより良好な電流品質で動作する能力が含まれる。
【0062】
図18及び図19に示すようなDC成分が含まれていない電流トランジェントを特徴づける通常の低速なトランジェントと比較して、単に基本周期の整数倍数に等しく定められた遷移期間を選択することにより、同様にDC成分が含まれていないより高速なトランジェントを達成できることが立証される。
【0063】
本明細書で示した解決方法により、上述の問題が解決されるとともに、この方法を無効電力のための静的補償器などの別の用途に適用することができる。
【0064】
図13及び図17に示すように、無効電力を迅速に、しかも線電流にDC成分を含まずに補償することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ガスタービン
2 同期発電機
3 位置エンコーダ
4 整流器、パルスコンバータ、周波数コンバータの整流器ステージ
5 インバータ、パルスコンバータ、周波数コンバータのインバータステージ
6 基準信号
7 電圧変換器
8 フィルタ
9 ネットワーク、グリッド、負荷
10 起動方向
11 エネルギ生成方向
12 整流器及びインバータゲートへの制御ライン
13 3レベルコンバータ
14 DCリンク、コンバータの直流ステージ
15 キャパシタ、コンバータの直流ステージのレベル間のキャパシタンス
16 アース
17 計算ユニット
18 DC電源、インバータの入力の電圧振幅適合
19 速度
P 有効電力
Q 無効電力
d0 無負荷時の連続した公称電圧振幅
nc ネットワークの有効電力
nc ネットワークの無効電力
θn0 無負荷時の位相角
ネットワーク電圧
inv インバータ電圧
ネットワーク電流
θnc 有効電力及び無効電力下での位相角
dc 有効電力及び無効電力下での電圧振幅
θ’nc 無効電力下での位相角
U’dc 無効電力下での電圧振幅
tr 遷移時間
インダクタンス
θ(t) VnとVinvとの間の位相角シフト
基本周期
PLL 位相ロックループ
A、B、C 動作モード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流入力電圧(Udc)を交流インバータ電圧(Vinv)に変換するインバータ(5)を、遷移時間(Ttr)内に有効電力(P)及び/又は無効電力(Q)の変更が実施される遷移の負荷(9)に前記交流インバータ電圧を供給するための基本周波数(ω)で制御する方法であって、
前記遷移時間Ttrは、
【数1】

の方程式においてkが1〜8の間の整数となるように選択され、Tは基本周期であるとともに
【数2】

として定義され、θncは、前記インバータ電圧Vinvと前記負荷電圧Vとの間の前記遷移後の目標位相角であることを特徴とする方法。
【請求項2】
kが1と5の間の整数となるように選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
kが1又は2となるように選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記インバータ(5)は基本周波数クロッキングで動作することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記インバータ(5)はマルチレベルインバータであり、好ましくは2、3、4、5又はそれ以上レベルのインバータであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記インバータ(5)は方形波変調で動作することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記インバータ(5)は、整流器(4)と共に動作してコンバータ(13)を形成し、該コンバータは、好ましくはマルチレベルコンバータであり、さらに好ましくは2、3、4、5又はそれ以上レベルのコンバータであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記インバータ(5)並びに前記整流器(4)は、周波数コンバータとして一体に接続され、これら双方は方形波変調で動作することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コンバータ(13)は周波数コンバータであり、該周波数コンバータ(13)の出力振幅は、整流器(4)の入力振幅、及び/又は負荷(V)の電圧とインバータ電圧(Vinv)との間の離調により制御されることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
好ましくはガスタービンにより駆動される同期発電機(5)が生成した交流の、グリッド(9)に供給するための交流への変換に関する請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項11】
無効電力のための静的補償器に関する請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3a)】
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【図3b)】
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【図3c)】
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【図4】
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【図5a)】
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【図5b)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2009−542171(P2009−542171A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515798(P2009−515798)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054470
【国際公開番号】WO2007/147678
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】