説明

3レベル電力変換器のスナバ回路

【課題】1相分の1モジュール当たり2個必要であったスナバ抵抗を、1個にすることで体積を低減しコストの低減を図る。
【解決手段】図は直流を交流に変換するインバータの1相分を示し、主スイッチ素子T1に対しては、コンデンサ22とダイオード23との直列回路を並列接続するとともに、主スイッチ素子T2に対しては、ダイオード26とコンデンサ25との直列回路を並列接続し、コンデンサ22とダイオード23との接続点と、ダイオード26とコンデンサ25との接続点間には抵抗28を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3レベル電力変換器に適用して好適なスナバ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に、直流を交流に変換する電力変換回路の一般的な例を示す。
図5において、1,2は直列に接続された直流電源で、正側電位をPc、負側電位をNc、中点電位をMcとしている。なお、直流電源を交流電源システムから構成する場合は、一般的には図示されない整流器と大容量の電解コンデンサを2直列接続したもの等で構成することが多い。
【0003】
3,4はPc電位に接続されているIGBTとダイオード、5,6はNc電位に接続されているIGBTとダイオードで、これらが3相分設けられる。7,8はMc電位と交流出力端子9との間に接続された双方向性のスイッチデバイスで、逆耐圧を有するスイッチ素子を逆並列接続するか、または逆耐圧を有しないスイッチ素子をダイオードと組み合わせて構成され、各相に対応して設けられる。10,11,12はフィルタ用のリアクトル、13は負荷である。
【0004】
以上のような構成により、出力端子9からはPc電位,Nc電位,Mc電位のいずれかを出力することができ、3レベルのインバータとなる。図6に出力電圧波形例を示す。図5の回路は2レベルタイプのインバータに対し、低次の高調波成分が少ないことが特徴で、フィルタ10,11,12の小型化が可能となる。
図7(a)〜(d)に双方向性スイッチの具体例を示すが、いずれも同じ動作をするので、以下では逆阻止形IGBTを逆並列接続した図7(c)に示すものを用いることとして、説明する。
【0005】
図8のように、IGBTとダイオードを一体化したモジュールを直流電源回路(電解コンデンサ)17,18に接続する場合には、モジュールの各端子(14,15,16)と電解コンデンサの正側電位Pc,中点電位Mc,負側電位Ncの各端子(19,20,21)とを銅バーなどで配線するが、配線部分にはインダクタンス成分(LP1,LM1,LN1)が存在するため、IGBTがスイッチングする際に発生するサージ電圧を抑制する目的で、通常はモジュールの外部にコンデンサ,ダイオードおよび抵抗からなるスナバ回路(22〜27)が接続される。
【0006】
図9にIGBT(T1)がターンオフする際のコレクタ電流波形(ic)、コレクタ・エミッタ間電圧波形(VCE)、およびスナバコンデンサ電流波形(ics)を、図10には図9に示す各期間(t1,t2,t3)における回路動作(電流経路)を示す。なお、3レベルインバータで用いられるスナバ回路としては、例えば特許文献1,2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−052178号公報
【特許文献2】特開平08−182340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の課題は、1相分の1モジュール当たり2個必要であったスナバ抵抗を、1個にすることで体積を低減しコストの低減を図るとともに、3レベル動作時および2レベル動作時のいずれにおいても、スイッチング時の低サージ化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明では、直流電源回路の正側端子には、電流が通流する第2端子が接続される第1スイッチ素子とダイオードとの逆並列回路を接続するとともに、直流電源回路の負側端子には、電流が通流する第1端子が接続される第2スイッチ素子とダイオードとの逆並列回路を接続し、前記第1スイッチ素子の第1端子と前記第2スイッチ素子の第2端子との接続点を出力点とし、かつ前記接続点と2分割された前記直流電源回路の分割電位点との間には双方向スイッチデバイスを接続し、3レベルの電位を出力する3レベル電力変換器において、
前記第1スイッチ素子の第2端子と前記双方向スイッチデバイスの電源側端子との間には、第1スイッチ素子の第2端子側をコンデンサとするコンデンサとダイオードとの第1直列回路を接続するとともに、前記双方向スイッチデバイスの電源側端子と前記第2スイッチ素子の第1端子との間には、双方向スイッチデバイスの電源端子側をダイオードとするダイオードとコンデンサとの第2直列回路を接続し、さらに前記第1直列回路のコンデンサとダイオードとの中間点と、前記第2直列回路のダイオードとコンデンサとの中間点との間には、抵抗を接続することを特徴とする。
この請求項1の発明においては、前記第1直列回路のコンデンサとダイオードとの中間点と、前記第2直列回路のダイオードとコンデンサとの中間点との間に接続された前記抵抗に対し、ダイオードを並列に接続することができる(請求項2の発明)。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、スナバ抵抗を1個にすることができるので構成が簡略化され、小型化,低コスト化が可能となる利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態を示す回路図である。
【図2】この発明の別の実施の形態を示す回路図である。
【図3】図1の動作説明図である。
【図4】図2の動作説明図である。
【図5】3レベルインバータの一般的な例を示す回路図である。
【図6】3レベルインバータの出力電圧波形例を示す波形図である。
【図7】双方向スイッチの具体例を示す回路図である。
【図8】スナバ回路付電力変換器の従来例を示す回路図である。
【図9】図8の動作を説明する波形図である。
【図10】図8の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1はこの発明の実施形態を示す回路図である。
図示のように、上アーム側のスナバ回路として、上アーム側スイッチ素子T1のコレクタ端子(電流が通流する第2端子)14と、双方向性スイッチ素子の電源端子側15との間には、コンデンサ22とダイオード23との直列回路を接続し、かつ下アーム側のスナバ回路として、双方向性スイッチ素子(T3,T4)の電源端子側15と、下アーム側スイッチ素子T2のエミッタ端子(電流が通流する第1端子)16との間には、ダイオード26とコンデンサ25との直列回路を接続し、さらに両直列回路(スナバ回路)の中間点間には抵抗28を接続して構成される。
【0013】
図3(a)に、上アーム側スイッチ(T1)がターンオフした後に、スナバコンデンサ22が過充電分を放電する場合の電流経路を点線にて示す。図示のように、コンデンサ22からダイオード26および抵抗28を介して放電が可能である。
また、図3(b)に、上アーム側スイッチ(T2)がターンオフした後に、スナバコンデンサ25が過充電分を放電する場合の電流経路を点線にて示す。図示のように、コンデンサ25からダイオード23および抵抗28を介して放電が可能である。
以上のように構成することにより、上下アームのスナバ回路でスナバ抵抗の共通化が可能となり、その分小型化,低コスト化が可能となる。
【0014】
図2はこの発明の別の実施の形態を示す回路図である。同図からも明らかなように、これは図1に示す抵抗28に対し、ダイオード29を並列に接続したものである。
図4(a),(b),(c)に、主回路が2アーム動作(中間素子T3,T4は常時オフ、T1とT2のみでスイッチングが行なわれる状態)となった場合の、上アーム側スイッチ(T1)がターンオフした後の動作を示す。
【0015】
ここでは、図4(b)のように、スナバ回路に流れる大部分の電流がダイオード29を流れることになる。一方、図1の回路では、通過するダイオードは23と26の2個となるため、ダイオード2個分の過渡オン電圧(一般にダイオード1個あたり数十V)がターンオフサージ電圧(図7に示すVCEpeak)に重畳するが、図2の回路では1箇所分で済むため、ターンオフサージ電圧の低減が可能となる。
【0016】
以上により、3レベル動作時または2レベル動作時とも、低サージ電圧でスナバ動作をすることが可能となる。
なお、以上では1相分のモジュールについて説明したが、3相分を1つのモジュールにした場合にも適用することができる。また、インバータの例について説明したが、コンバータについても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0017】
1,2…直流電源、3,5…IGBT(スイッチ素子)、4,6…ダイオード、7,8…双方向スイッチデバイス、9…出力端子、10〜12…出力フィルタ、14〜16…モジュール出力端子、17,18…電解コンデンサ、19〜20…端子、22〜29…スナバ回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源回路の正側端子には、電流が通流する第2端子が接続される第1スイッチ素子とダイオードとの逆並列回路を接続するとともに、直流電源回路の負側端子には、電流が通流する第1端子が接続される第2スイッチ素子とダイオードとの逆並列回路を接続し、前記第1スイッチ素子の第1端子と前記第2スイッチ素子の第2端子との接続点を出力点とし、かつ前記接続点と2分割された前記直流電源回路の分割電位点との間には双方向スイッチデバイスを接続し、3レベルの電位を出力する3レベル電力変換器において、
前記第1スイッチ素子の第2端子と前記双方向スイッチデバイスの電源側端子との間には、第1スイッチ素子の第2端子側をコンデンサとするコンデンサとダイオードとの第1直列回路を接続するとともに、前記双方向スイッチデバイスの電源側端子と前記第2スイッチ素子の第1端子との間には、双方向スイッチデバイスの電源端子側をダイオードとするダイオードとコンデンサとの第2直列回路を接続し、さらに前記第1直列回路のコンデンサとダイオードとの中間点と、前記第2直列回路のダイオードとコンデンサとの中間点との間には、抵抗を接続することを特徴とする3レベル電力変換器のスナバ回路。
【請求項2】
前記第1直列回路のコンデンサとダイオードとの中間点と、前記第2直列回路のダイオードとコンデンサとの中間点との間に接続された前記抵抗に対し、ダイオードを並列に接続することを特徴とする請求項1に記載の3レベル電力変換器のスナバ回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−252548(P2010−252548A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99912(P2009−99912)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】