説明

3レベル電力変換装置の初期充電回路

【課題】小型で安価な初期充電回路を備えた3レベル電力変換装置を提供することを目的とする。
【解決手段】初期充電回路8をスイッチ81と絶縁トランス82とにより構成し、絶縁トランス82の2次巻線にスイッチ81を接続し、スイッチ81の3端子中の1端子をR相ユニットのスイッチング素子31bとスイッチング素子31cとの間に接続し、スイッチ81の3端子中の他の1端子をS相ユニットのスイッチング素子31fとスイッチング素子31gとの間に接続し、スイッチ81の3端子中の残りの1端子をコンデンサ41とコンデンサ42の接続点である中性点Mに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、それぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続される4個のスイッチング素子と2個のクランプダイオードとから構成された各相ユニットが複数組並列接続され、入力端子に入力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部と、複数個のコンデンサから構成されて中性点を有し、コンバータ部で変換された直流電圧を平滑化するコンデンサ部と、それぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続される4個のスイッチング素子と2個のクランプダイオードとから構成された各相ユニットが複数組並列接続され、コンデンサ部で平滑化された直流電圧を交流電圧に変換して出力端子から出力するインバータ部とを備え、3レベルの電圧を出力する3レベル電力変換装置の初期充電回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置の初期充電回路としては、例えば特許文献1に示すものが知られている。特許文献1は、2レベルの電力変換装置に関するものであり、コンバータ部とインバータ部とで形成される直流回路に並列に接続されたコンデンサを備えた電力変換装置において、コンバータ部の入力側に限流抵抗と短絡スイッチとの並列回路からなる初期充電回路を接続し、まず交流電源の閉路により前記限流抵抗を介してコンデンサの初期充電を開始し、次いで前記限流抵抗を前記短絡スイッチにより短絡してコンデンサの充電を完了するものである。
【0003】
一方、近年では高圧大容量化を比較的簡易に実現でき、かつ出力高調波が少ない等の理由から3レベル電力変換装置が注目されてきている。図3はこの3レベル電力変換装置の一例を示す回路図である。
【0004】
図において、1は電源投入用のコンタクト、2は3相の交流電源(主回路電源)から入力された各相(R相,S相,T相)の交流電圧を所定の電圧に変圧する入力トランス、3は交流電圧を直流電圧に変換する3レベルのコンバータ部、4は複数のコンデンサ(大容量のフィルターコンデンサ)41,42が直列接続され、コンバータ部3で変換された直流電圧を平滑化するコンデンサ部、5はコンデンサ部4で平滑化された直流電圧を交流電圧に変換する3レベルのインバータ部であり、インバータ部5の出力端子(U相,V相,W相)にはモータ等の負荷が接続される。また、6は初期充電回路であり、突入電流がコンバータ部3,コンデンサ部4に流れるのを防止するための限流抵抗62と、限流抵抗を短絡する短絡スイッチ61とから構成されている。なお、P,N,Mはそれぞれ直流電圧の正電位点,負電位点,中性点である。
【0005】
ここで、コンバータ部3には、IGBT等のスイッチング素子31a〜31l,フリーホイールダイオード32a〜32lおよびクランプダイオード33a〜33fが設けられている。コンバータ部3のR相ユニットは、正電位点Pと負電位点Nとの間に、スイッチング素子31a〜31dが互いに直列接続されるとともに、各スイッチング素子31a〜31dにはフリーホイールダイオード32a〜32dがそれぞれ逆並列接続されている。同様に、S相ユニットは、スイッチング素子31e〜31hが互いに直列接続されるとともに、各スイッチング素子31e〜31hにはフリーホイールダイオード32e〜32hがそれぞれ逆並列接され、T相ユニットは、スイッチング素子31i〜31lが互いに直
列接続されるとともに、各スイッチング素子31i〜31lにはフリーホイールダイオー
ド32i〜32lがそれぞれ逆並列接続されている。
【0006】
そして、R相ユニットのスイッチング素子31aとスイッチング素子31bとの接続点と、スイッチング素子31cとスイッチング素子31dとの接続点との間に、クランプダイオード33a,33bが直列接続されている。同様に、S相ユニットのスイッチング素子31eとスイッチング素子31fとの接続点と、スイッチング素子31gとスイッチング素子31hとの接続点との間に、クランプダイオード33c,33dが直列接続され、T相ユニットのスイッチング素子31iとスイッチング素子31jとの接続点と、スイッ
チング素子31kとスイッチング素子31lとの接続点との間に、クランプダイオード33e,33fが直列接続されている。
【0007】
これらのR相ユニット,S相ユニット,T相ユニットは並列接続されて、さらに直列接続されたコンデンサ41,42が各相(R相,S相,T相)ユニットと並列に接続されている。そして、コンデンサ41とコンデンサ42の接続点である中性点Mと、クランプダイオード33aとクランプダイオード33bとの接続点、クランプダイオード33cとクランプダイオード33dとの接続点、クランプダイオード33eとクランプダイオード33fとの接続点がそれぞれ接続されている。
【0008】
さらに、R相ユニットのスイッチング素子31bとスイッチング素子31cとの間、S相ユニットのスイッチング素子31fとスイッチング素子31gとの間、T相ユニットのスイッチング素子31jとスイッチング素子31kとの間に交流入力端子を備え、初期充電回路6を介して入力トランス2の2次巻線に接続されている。
【0009】
また、インバータ部5には、IGBT等のスイッチング素子51a〜51l,フリーホイールダイオード52a〜52lおよびクランプダイオード53a〜53fが設けられている。インバータ部5のU相ユニットは、正電位点Pと負電位点Nとの間に、スイッチング素子51a〜51dが互いに直列接続されるとともに、各スイッチング素子51a〜51dにはフリーホイールダイオード52a〜52dがそれぞれ逆並列接続されている。同様に、V相ユニットは、スイッチング素子51e〜51hが互いに直列接続されるとともに、各スイッチング素子51e〜51hにはフリーホイールダイオード52e〜52hがそれぞれ逆並列接され、W相ユニットは、スイッチング素子51i〜51lが互いに直列
接続されるとともに、各スイッチング素子51i〜51lにはフリーホイールダイオード
52i〜52lがそれぞれ逆並列接続されている。
【0010】
そして、U相ユニットのスイッチング素子51aとスイッチング素子51bとの接続点と、スイッチング素子51cとスイッチング素子51dとの接続点との間に、クランプダイオード53a,53bが直列接続されている。同様に、V相ユニットのスイッチング素子51eとスイッチング素子51fとの接続点と、スイッチング素子51gとスイッチング素子51hとの接続点との間に、クランプダイオード53c,53dが直列接続され、W相ユニットのスイッチング素子51iとスイッチング素子51jとの接続点と、スイッ
チング素子51kとスイッチング素子51lとの接続点との間に、クランプダイオード53e,53fが直列接続されている。
【0011】
これらのU相ユニット,V相ユニット,W相ユニットは並列接続されて、さらに直列接続されたコンデンサ41,42が各相(U相,V相,W相)ユニットと並列に接続されている。そして、コンデンサ41とコンデンサ42の接続点である中性点Mと、クランプダイオード53aとクランプダイオード53bとの接続点、クランプダイオード53cとクランプダイオード53dとの接続点、クランプダイオード53eとクランプダイオード53fとの接続点がそれぞれ接続されている。
【0012】
さらにU相ユニットのスイッチング素子51bとスイッチング素子51cとの間に交流出力端子Uを備え、V相ユニットのスイッチング素子51fとスイッチング素子51gとの間に交流出力端子Vを備え、W相ユニットのスイッチング素子51jとスイッチング素子51kとの間に交流出力端子Wを備えている。
【0013】
次に、その動作について説明する。
まず、電力変換装置の主回路であるコンバータ部3およびインバータ部5の起動に先立って、短絡スイッチ61を開路した状態でコンタクト1を投入する。交流電源から入力された各相(R相,S相,T相)の交流電圧は、入力トランスで所定の電圧に変圧され、コンバータ部3のフリーホイールダイオード32a〜32lで直流に整流される。ここで、電源投入直後の突入電流がコンバータ部3,コンデンサ部4に流れるのを防止するための限流抵抗62を介してコンデンサ部4を定格値まで充電する。これを初期充電という。
【0014】
次に、コンデンサ部4が定格値まで充電されたことを、例えば、不図示の電圧検出器などで確認した後、短絡スイッチ61を閉路して限流抵抗62を短絡する。その後、スイッチング素子31a〜31lおよびスイッチング素子51a〜51lにゲート信号が与えられて、コンバータ部3およびインバータ部5の運転を開始する。
【0015】
このコンバータ部3およびインバータ部5では、パルス幅変調制御が採用され、交流電圧の半サイクルの間に複数個のパルスを発生させて、各パルス幅に差を持たせることにより、交流出力を正弦波に近づけている。パルス幅変調制御で電圧調整を行う場合には、各パルスの幅を変化させている。
【0016】
また、3レベル電力変換装置は、直列に接続された2個のコンデンサ41,42にかかる直流電圧をEdとすると、各相の出力電圧として正側電位(+Ed/2)、零電位(中性点Mの電位)、負側電位(−Ed/2)の3値を出力できるという特徴を持っている。このため、各相の出力電圧として(+Ed/2)と(−Ed/2)との2値を出力する2レベル電力変換装置と比べて、出力電圧の出力レベル数が増加して高調波を低減できるという長所を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−140969号公報(図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来の電力変換装置では、上記したように限流抵抗62を介してコンデンサ部4の初期充電を行い、初期充電後にインバータ部5へ平滑化された直流電圧を供給するために短絡スイッチ61が使用されている。このため、初期充電後のコンバータ部3およびインバータ部5の運転時には、負荷電流は短絡スイッチ61を通って流れることになる。
【0019】
したがって、この短絡スイッチ61は初期充電完了後にインバータ部5への負荷電流を流すためにこの負荷電流に耐えるものを用いねばならず、大型かつ高価になるという問題点があった。
【0020】
この発明は、上記問題点を解消し、主回路(負荷電流が流れる経路)に初期充電回路を設ける必要がなく、小型で安価な初期充電回路を備えた電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、第1の発明は、それぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続される4個のスイッチング素子と2個のクランプダイオードとから構成された各相ユニットが複数組並列接続され、入力端子に入力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部と、複数個のコンデンサから構成されて中性点を有し、コンバータ部で変換された直流電圧を平滑化するコンデンサ部と、それぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続される4個のスイッチング素子と2個のクランプダイオードとから構成された各相ユニットが複数組並列接続され、コンデンサ部で平滑化された直流電圧を交流電圧に変換して出力端子から出力するインバータ部とを備えた3レベル電力変換装置において、3相制御電源と前記コンバータ部の入力端子または前記インバータ部の出力端子の任意の2相との接続および前記3相制御電源の残り1相と前記中性点との接続を開閉するスイッチと、前記3相制御電源から前記コンデンサ部に流れ込む電流を制限する限流手段とを備えるものである。
【0022】
また、第2の発明は、それぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続される4個のスイッチング素子と2個のクランプダイオードとから構成された各相ユニットが複数組並列接続され、入力端子に入力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部と、複数個のコンデンサから構成されて中性点を有し、コンバータ部で変換された直流電圧を平滑化するコンデンサ部と、それぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続される4個のスイッチング素子と2個のクランプダイオードとから構成された各相ユニットが複数組並列接続され、コンデンサ部で平滑化された直流電圧を交流電圧に変換して出力端子から出力するインバータ部とを備えた3レベル電力変換装置において、3相制御電源と前記コンデンサ部の正電位点,負電位点との接続および前記3相制御電源の残り1相と前記中性点との接続を開閉するスイッチと、前記3相制御電源と前記正電位点,負電位点との間に介挿された整流器と、前記3相制御電源から前記コンデンサ部に流れ込む電流を制限する限流手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0023】
この発明に係る3レベル電力変換装置によれば、コンバータ部およびインバータ部の起動前に、スイッチと限流手段とを含む初期充電回路を用いてコンデンサ部の初期充電を行うことにより、突入電流を効果的に抑制できるとともに、従来の初期充電回路に用いられているような大型で高価な限流抵抗および短絡スイッチが不要となり、小型で安価な装置とすることが可能になる。
【0024】
また、3相制御電源を任意の2相と中性点に接続することにより、単相と比べて制御電源電圧をほぼ1/2とすることが可能となり、小型で安価な装置とすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す回路構成図
【図2】この発明の第2の実施の形態を示す回路構成図
【図3】従来の電力変換装置を示す回路構成図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1はこの発明の第1の実施の形態を示す電力変換装置の回路構成図である。ここで、図3と同一機能を有するものについては同一の符号を付してその説明を省略する。
この実施の形態では、図3の初期充電回路6に代えて初期充電回路8を備えた点を特徴としている。すなわち、この実施の形態の特徴的なことは、3相の制御電源7を電源とした初期充電回路8を備えた点であり、この初期充電回路8は、スイッチ81とコンデンサ部4に流れ込む電流を制限する限流手段(ここでは、絶縁トランス82の巻線抵抗,インダクタンスを用いた)とにより構成されている。そして、絶縁トランス82の2次巻線にスイッチ81が接続され、スイッチ81の3端子中の1端子は、R相ユニットのスイッチング素子31bとスイッチング素子31cとの間に接続され、スイッチ81の3端子中の他の1端子は、S相ユニットのスイッチング素子31fとスイッチング素子31gとの間に接続され、スイッチ81の3端子中の残りの1端子は、コンデンサ41とコンデンサ42の接続点である中性点Mに接続されている。なお、3相制御電源7は電力変換装置の制御機器(例えば、制御装置,リレー,冷却ファン等)に用いるために通常有している電源であり、入力端子R,S,Tに接続される主回路電源の電圧が数kV,容量が数百kVA〜数十MVAに対して、3相制御電源7は電圧が200Vあるいは400V程度で容量が数kVA程度の電源である。また、絶縁トランス82は3相制御電源7を絶縁して昇圧するものである。
【0027】
このようにスイッチ81の3端子中の2端子は、コンバータ部3のR相,S相の入力端子に接続され、残りの1端子は直流部の中性点Mに接続されて単相整流器を2式構成している。ここでは、コンバータ部3のR相ユニットとS相ユニットとを使って3相制御電源7との接続を行っているが、これに限定されるものではなく、スイッチ81の3端子はコンバータ部3の入力端子またはインバータ部5の出力端子のうちの任意の2相と直流部の中性点Mとに接続されていればよい。
【0028】
次に、その動作について説明する。
3レベル電力変換装置の主回路であるコンバータ部3およびインバータ部5の起動に先立ってスイッチ81を投入し、3相制御電源7より絶縁トランス82を介してコンデンサ部4への初期充電を行う。図1では、コンバータ部3の内のR相ユニットおよびS相ユニットの8個のフリーホイールダイオード32a〜32hで単相整流器が2式構成され、コンデンサ部4の初期充電を行うことができる。
【0029】
この初期充電回路8を構成する絶縁トランス82の巻線インピーダンスは抵抗分とインダクタンスであり、また抵抗値も大きいので、小型のものでも十分な限流効果を有している。
【0030】
次に、コンデンサ部4が定格値まで充電されたことを、例えば、不図示の電圧検出器などで確認した後、スイッチ81を開路する。このように、コンデンサ部4の初期充電が完了すると初期充電回路8が主回路から切り離される。その後、コンタクト1を投入されると、交流電源から各相(R相,S相,T相)に交流電圧が入力され、入力トランス2により所定の電圧に変圧される。そして、変圧された交流電圧は、コンバータ部3で直流電圧に整流され、さらに充電されたコンデンサ部4によって直流電圧が平滑化され、この平滑化された直流電圧をインバータ部5に入力する。その後、スイッチング素子31a〜31lおよびスイッチング素子51a〜51lにゲート信号が与えられて、コンバータ部3およびインバータ部5の運転を開始し、所望の電圧と周波数を持つ交流電圧に制御されたU相,V相,W相を出力する。
【0031】
このようにスイッチ81は、初期充電電流しか流れないため、図3で示した従来技術のように初期充電完了後のコンバータ部3およびインバータ部5の運転時の負荷電流が流れる短絡スイッチ61と比べて小型、安価なものを用いることができる。また、スイッチ81は主回路と3相制御電源7との断続を行えるものであればよく、機械的なスイッチの他、半導体を用いたスイッチを用いることも可能である。
【0032】
なお、コンデンサ部4の初期充電完了の確認や、スイッチ81のオン・オフ、コンタクト1の投入は、手動で行ってもよいし、自動制御手段を用いて一連の動作を自動的に行うようにしてもよい。
【0033】
図2はこの発明の第2の実施の形態を示す電力変換装置の回路構成図である。ここで、図1と同一機能を有するものについては同一の符号を付してその説明を省略する。
この実施の形態では、図1の初期充電回路8に代えて初期充電回路9を備えた点を特徴としている。すなわち、この実施の形態の特徴的なことは、3相の制御電源7を電源とした初期充電回路9を備えた点であり、この初期充電回路9は、スイッチ93と、コンデンサ部4に流れ込む電流を制限する限流手段(ここでは、絶縁トランス92の巻線抵抗,インダクタンスを用いた)と、ダイオード整流器94とにより構成されている。そして、絶縁トランス92の2次巻線の3端子中の任意の2端子は、ダイオード整流器94を介して正電位点Pと負電位点Nとに接続され、絶縁トランス92の2次巻線の3端子中の残りの1端子は、コンデンサ41とコンデンサ42の接続点である中性点Mに接続されている。
【0034】
次に、その動作について説明する。
3レベル電力変換装置の主回路であるコンバータ部3およびインバータ部5の起動に先立ってスイッチ93を投入し、3相制御電源7より絶縁トランス92,ダイオード整流器94を介してコンデンサ部4への初期充電を行う。この初期充電回路9を構成する絶縁トランス92の巻線インピーダンスは抵抗分とインダクタンスであり、また抵抗値も大きいので、小型のものでも十分な限流効果を有している。
【0035】
次に、コンデンサ部4が定格値まで充電されたことを、例えば、不図示の電圧検出器などで確認した後、スイッチ93を開路する。このように、コンデンサ部4の初期充電が完了すると初期充電回路9が主回路から切り離される。その後、コンタクト1を投入すると、交流電源から各相(R相,S相,T相)に交流電圧が入力され、入力トランス2により所定の電圧に変圧される。そして、変圧された交流電圧は、コンバータ部3で直流電圧に整流され、さらに充電されたコンデンサ部4によって直流電圧が平滑化され、この平滑化された直流電圧をインバータ部5に入力する。その後、スイッチング素子31a〜31lおよびスイッチング素子51a〜51lにゲート信号が与えられて、コンバータ部3およびインバータ部5の運転を開始し、任意の交流電圧に制御されたU相,V相,W相を出力する。
【0036】
このように、小電流のダイオード整流器94を用いて初期充電回路9を構成することも可能であり、第2の実施の形態においても、スイッチ93は、初期充電電流しか流れないため、図3で示した従来技術のように初期充電完了後のコンバータ部3およびインバータ部5の運転時の負荷電流が流れる短絡スイッチ61と比べて小型、安価なものを用いることができる。また、スイッチ93は主回路と3相制御電源7との断続を行えるものであればよく、機械的なスイッチの他、半導体を用いたスイッチを用いることも可能である。
【0037】
なお、コンデンサ部4の初期充電完了の確認や、スイッチ93のオン・オフ、コンタクト1の投入は、手動で行ってもよいし、自動制御手段を用いて一連の動作を自動的に行うようにしてもよい。
【0038】
また、上記第1,2の実施の形態では、限流手段として絶縁トランス82,92を用いたが、必要に応じて保護ヒューズや、抵抗、リアクトルを設けて構成することも可能であり、この場合にも上記と同様の効果を得ることができる。
【0039】
さらに、上記第1,2の実施の形態では、コンバータ部3,インバータ部5のスイッチング素子としてIGBTを用いて説明したが、これ以外の半導体を用いたものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…コンタクト、2…入力トランス、3…コンバータ部、4…コンデンサ部、5…インバータ部、6,8,9…初期充電回路、7…3相制御電源。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続される4個のスイッチング素子と2個のクランプダイオードとから構成された各相ユニットが複数組並列接続され、入力端子に入力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部と、複数個のコンデンサから構成されて中性点を有し、コンバータ部で変換された直流電圧を平滑化するコンデンサ部と、それぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続される4個のスイッチング素子と2個のクランプダイオードとから構成された各相ユニットが複数組並列接続され、コンデンサ部で平滑化された直流電圧を交流電圧に変換して出力端子から出力するインバータ部とを備えた3レベル電力変換装置において、
3相制御電源と前記コンバータ部の入力端子または前記インバータ部の出力端子の任意の2相との接続および前記3相制御電源の残り1相と前記中性点との接続を開閉するスイッチと、前記3相制御電源から前記コンデンサ部に流れ込む電流を制限する限流手段とを備えたことを特徴とする3レベル電力変換装置の初期充電回路。
【請求項2】
それぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続される4個のスイッチング素子と2個のクランプダイオードとから構成された各相ユニットが複数組並列接続され、入力端子に入力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部と、複数個のコンデンサから構成されて中性点を有し、コンバータ部で変換された直流電圧を平滑化するコンデンサ部と、それぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続される4個のスイッチング素子と2個のクランプダイオードとから構成された各相ユニットが複数組並列接続され、コンデンサ部で平滑化された直流電圧を交流電圧に変換して出力端子から出力するインバータ部とを備えた3レベル電力変換装置において、
3相制御電源と前記コンデンサ部の正電位点,負電位点との接続および前記3相制御電源の残り1相と前記中性点との接続を開閉するスイッチと、前記3相制御電源と前記正電位点,負電位点との間に介挿された整流器と、前記3相制御電源から前記コンデンサ部に流れ込む電流を制限する限流手段とを備えたことを特徴とする3レベル電力変換装置の初期充電回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の3レベル電力変換装置の初期充電回路において、前記限流手段は絶縁トランスであることを特徴とする3レベル電力変換装置の初期充電回路。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−109801(P2011−109801A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261773(P2009−261773)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】