3次元ナノスケール構造を形成するための方法及び装置
本発明は、3D構造の対称パターン及び非対称パターンを含む3D構造及び3D構造のパターンを基板表面上に形成するための方法及び装置を提供する。本発明の方法は、数十ナノメートル〜数千ナノメートルの範囲の横寸法及び縦寸法を含む正確に選択された物理的寸法を有する3D構造を形成するための手段を与える。一態様においては、フォトプロセスを受ける放射線感応材料とのコンフォーマル接触を確立できる適合可能なエラストマー位相マスクを備えるマスク要素を使用する方法が提供される。他の態様においては、形成される構造の厚さ全体にわたって延在しないナノスケール形態を有する複雑な構造を形成するために、フォトプロセスのために使用する電磁放射線の時間及び/又は空間コヒーレンスが選択される。
【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、本明細書に開示された内容と矛盾しない範囲でその全体を参照として本明細書に組み込まれる2003年12月1日及び2004年8月2日にそれぞれ提出された米国仮特許出願第60/526,245号及び第60/598,404号に対するU.S.C.119(e)に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ナノ科学及び技術の進歩は、ナノメートル法における長さ、高さ、幅などの選択された物理的寸法を有する形態を備える構造を形成するための技術に益々依存している。遠紫外線投影モードリソグラフィや電子ビームリソグラフィなどのマイクロエレクトロニクス産業から出現した方法は、超平坦ガラス又は半導体の表面上に2次元(2D)ナノ構造をパターン化に十分適したものである。しかしながら、これらの手法の焦点深度は限られているため、市販化できない場合、ナノテクノロジーの多くの分野において重要な3次元(3D)ナノ構造のタイプを直接的に形成することは、興味をかき立てられる取り組みである。これらの方法の適用可能性を広げるため、犠牲レジストを2Dパターニングして、機能材料を現像するとともに、それらをエッチング又は研磨して、犠牲層を除去することを含むステップを繰り返し適用して使用する間接的な3Dナノ構造形成方法が開発されてきた。しかしながら、これらの方法は、一般に、精巧な設備を必要とするとともに、かなりの数の層を要する構造において実施することが困難である。これらの十分に認識された限界の結果として、現在、様々なナノ構造を形成することができる高スループットで低コストな形成方法の要求がある。
【0003】
最近、3Dナノ構造を形成する新たな方法が開発されてきている。コロイド沈殿、高分子相分離、テンプレート成長、流体自己組織化、マルチビーム干渉リソグラフィに基づく方法、及び、印刷、成型、書き込みに基づく様々な手法は全て、様々なクラスのナノ構造を形成する場合に役立つ。それにもかかわらず、これらの技術は、幾何学的構成、物理的寸法、それらが形成できるパターンのサイズにおいて、ある限界を有する。例えば、2光子リソグラフィは、印象的な様々な構造を形成することができるが、その逐次操作により、広い基板領域をパターン化すること或いは多数の構造を形成することが困難であり労力を要する。
【0004】
また、ホログラフィ法及びフォトリソグラフィ法も、構造を形成する場合に役立つ方法を与える。パターン及び構造を形成するための例示的な方法は、Campbell,M.,Sharp,D.N.,Harrison,M.T.,Denning,R.G.及びTurberfield,A.J.による“Fabrication of Photonic crystals for the visible spectrum by holographic lithography”(Nature,Vol.404,53〜56頁(2000))、及び、Rogers,J.A.,Paul,K.E.,Jackman,R.J.及びWhitesides,G.M.,による“Generating 〜90 nanometer features using near field contact mode photolithography with an elastomeric phase mask”(J.Vac.Sci.Technology.B,Vol.16(1),59〜68頁(1998))に記載されており、これらの内容の全体は、この明細書本文と矛盾しない範囲で、参照として本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、3D構造及び3D構造のパターンを形成するための方法、装置、装置部品を提供する。本発明の目的は、明確な選択された物理的寸法を有する3D構造、特に数十ナノメートル数千ナノメートル程度の少なくとも1つの物理的寸法を有する複数の明確な形態を備える構造を形成するための方法を提供することである。本発明の更なる目的は、3D構造及び3D構造のパターン、特にレーザ又は多数の光学コンポーネントを必要としない簡単な光学的配置を利用するナノスケール形態を備える3D構造を形成するための効果的な方法を提供することである。本発明の更に他の目的は、幅広い範囲の有用な3D構造、例えばナノスケール形態の対称的なパターン、ナノスケール形態の非対称的なパターン、1つ以上の制御された欠陥部位を有するナノスケール形態のパターン、深さ依存性に応じた形態の選択された密度を有するナノスケール形態のパターンを備える3D構造を形成することができる多目的な製造方法を提供することである。
【0006】
本発明は、基板上、装置上、装置部品上又は基板内、装置内、装置部品内に3D構造及び3D構造のパターンを形成することができる方法、装置、装置部品を提供する。一実施形態において、本発明は、少なくとも1つのナノスケールの物理的寸法を有する複数の独立した3D構造を備えるパターンを形成するための方法を提供する。他の実施形態において、本発明は、ナノスケール形態を含む所定の形態のパターンを備える1つ以上の単一3D構造を形成するための方法を提供する。本発明の方法によって形成される3D構造及び3D構造の形態は、様々な形状、例えば立方体、列、リボン、ポスト(柱)、直方体、及び、様々な物理的寸法、例えば数十ナノメートル数千ナノメートルの範囲の高さ、長さ、幅、半径、曲率半径を有していてもよい。本発明の方法は、互いに対して選択された方向、配置、位置を有する複数の形態を備える複雑な3D構造及び3D構造のパターンを形成することができる。本発明の方法は、例えば軟質プラスチック、ガラス、セラミック、炭質、金属、ナノ金属等の一連の化学的組成を有する基板、及び、平面、湾曲面、凸面、凹面、平滑面、粗面を含む一連の物理的な幾何学的構成及び形態を有する基板上に3D構造及び3D構造のパターンを形成することができる。本発明の方法及び装置は、例えばマイクロ電子機器システム、ナノ電子機器システム、マイクロ流体システム又はナノ流体システムの選択された領域内で製造し、組み立て、及び/又は、組み込むなど、装置又は装置部品の少なくとも部分的に透明な領域内に3D構造及び3D構造のパターンを製造し、組み立て、及び/又は、組み込む(集積する)ことができる。1つ以上の制御された欠陥部位を有する3D形態のパターンを含む3D形態の周期的パターン又は非周期的パターンを備える3D次元構造が本発明の方法及び装置によって形成される。本発明の方法は、簡単で低コストな実験設備、例えば低圧水銀ランプ等の従来の狭帯域ランプとエラストマー位相マスク等のマスク要素とを備える実験設備を使用して非常に広い基板領域を効果的にパターン化することができる。
【0007】
本発明で使用される光学的配置の実験的容易性、及び、形成できる様々な3D構造は、3Dナノパターニングに対するこの手法の2つの魅力的な特徴である。本発明の方法によって形成される3D構造及び構造のパターンは、多種多様な材料タイプをパターン化する手段を与えるための犠牲テンプレートとして機能してもよい。本発明の方法及び装置の用途としては、ナノ技術、光通信、光バンドギャップ材料、検出、クロマトグラフィのためのカラム材料、担体、燃料電池、医療フィルタ、マイクロエレクトロニクス、マイクロ流体工学、ナノ流体工学、マイクロ電子機器システム、ナノ電子機器システム、サブ波長光学フィルタ、極薄ホログラフィック相関計、センサ用の高表面積素子、薬剤送達、湿潤現象を制御するためのナノ構造化された表面、情報記憶が挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
一態様において、本発明は、放射線感応材料を化学的及び/又は物理的に改質するために電磁放射線強度及び偏光状態の十分に特徴付けられた3D分布を有する光学的干渉パターンが使用される、3D構造又は3D構造のパターンを形成するための方法を提供する。1つの例示的な実施形態においては、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームが形成され、この電磁放射線ビームは、放射線感応材料と光通信した状態で、位相マスク等のマスク要素へと方向付けられる。電磁放射線をマスク要素に通過させると、光学干渉を受けた異なる伝播軸に沿って伝播する複数の電磁放射線ビームが形成され、これにより、放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成される。有用な実施形態においては、マスク要素及び放射線感応材料が直接的な光通信状態にあり、それにより、マスク要素によって形成される複数の電磁放射線ビームは、放射線感応材料中で電磁放射線ビームの方向を決め及び/又は当該ビームを合成するための集光レンズ等の更なる光学コンポーネントを使用することなく、放射線感応材料へと方向付けられて合成され、光学干渉を受ける。電磁放射線と放射線感応材料との相互作用は、放射線感応材料の全体にわたって選択的に分布される化学的又は物理的に改質された領域を形成する。一実施形態において、電磁放射線と放射線感応材料との相互作用は、1つ以上の3D構造を直接的に形成する。本発明の他の有用な実施形態においては、化学的又は物理的に改質された領域の少なくとも一部を除去することにより、或いは、化学的又は物理的に改質されていない放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、例えば電磁放射線を用いた処理後に放射線感応材料を現像することにより、1つ以上の3D構造が形成される。場合によって、本発明の方法は、更なるステップ、すなわち、(1)電磁放射線に対する露光中にマスク要素と放射線感応材料との間のコンフォーマル(conformal;等角)接触を確立して維持するステップ、(2)実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームのマスク要素に対する視準の程度(例えば、空間及び/又は時間コヒーレンス長)を選択するステップのうちの一方又は両方を更に備えていてもよい。
【0009】
本発明のマスク要素は、電磁放射線強度及び偏光状態の選択された明確な空間的分布を有する光学干渉パターンを与えるように、伝えられる電磁放射線(透過電磁放射線)の強度、マスク要素によって形成される電磁放射線ビームの数及び伝播方向、伝えられる電磁放射線の位相、伝えられる電磁放射線の偏光状態、又は、これらのパラメータの任意の組み合わせを選択的に調整する。例示的なマスク要素は、位相マスク、振幅変動光学素子、偏光変動素子、ビームスプリッタ及び/又はこれらの要素(素子)の様々な機能を組み合わせた単一光学素子を備える。本発明のマスク要素によって形成される光学干渉パターンは、放射線感応材料の選択された領域を化学的及び/又は物理的に改質する化学反応を光開始するために使用される。化学反応の光開始は、放射線感応材料内での単光子吸収プロセス、多光子吸収プロセス、又は、単光子吸収プロセス及び多光子吸収プロセスの両方の組み合わせの結果であってもよい。化学的又は物理的改質の程度及び局在性は、主に、放射線感応材料と相互作用する電磁放射線の強度及び偏光状態の3D空間分布によって決まる。したがって、電磁放射線の強度及び偏光状態の明確な空間分布を有する光学干渉パターンを形成することができるマスク要素を使用すると、放射線感応材料の化学的に改質された領域の3D空間分布を正確に制御することができる。本発明の能力によれば、選択された十分に特徴付けられる物理的寸法を有する形態を備える3D構造を形成することができる。また、本発明のこの態様によれば、高い精度で選択された相対的な方向、配置及び位置を有する複数の形態を備える3D構造及び3D構造パターンを形成することができる。
【0010】
本発明の3D干渉パターンを備える電磁放射線の強度分布、偏光状態分布又はこれらの両方は、光干渉法及びホログラフィ等の技術的に知られた任意の手段によって選択的に調整されてもよい。本発明のマスク要素によって形成される電磁放射線の強度及び偏光状態を選択的に調整する例示的な手段としては、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム又は実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの選択された成分の位相、伝達強度、伝播方向、ビーム数及び/又は偏光状態の操作が挙げられるが、これに限定されない。他の実施形態では、放射線感応材料内の電磁放射線の強度及び/又は偏光状態分布を制御して選択するために、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの時間及び/又は空間コヒーレンスが操作される。
【0011】
本発明の例示的な実施形態において、マスク要素によって伝えられる(透過される)電磁放射線の位相は、マスク要素又はマスク要素の領域の光学的厚さの選択により制御される。例示的なマスク要素は、選択された光学的厚さの2次元分布によって特徴付けられる。光学的厚さは、マスク要素又はマスク要素の領域の屈折率及び/又は組成の変化によって選択されてもよい。或いは、光学的厚さは、マスク要素又はマスク要素の領域の物理的厚さの変化によって選択されてもよい。例示的な実施形態において、マスク要素は、所望の3D形状又は構造に対応する光学干渉パターンを形成するために選択されるレリーフパターンによって与えられるような光学的厚さの2次元分布を有する少なくとも部分的に透明な位相マスクである。例示的なレリーフパターンは、放射線感応材料の接触面と接触した状態、例えばコンフォーマル接触した状態で位置付けられるマスク要素の接触面上に配置される。本発明の例示的なレリーフパターンは、1つ以上の選択された物理的寸法、例えば長さ、幅、高さ、半径、周期性を有するレリーフ形態のパターンを備え、又は、マスク要素を通過する光の波長に相当するレリーフ形態の周期性を備える。
【0012】
また、本発明は、マスク要素によって伝えられる(透過される)電磁放射線の強度がマスク要素又はマスク要素の領域の吸収特性、散乱特性又は反射特性の選択によっても制御される方法及び装置も含んでいる。例示的な実施形態において、マスク要素は、選択された吸収係数、吸光率、反射率、又は、こられのパラメータの任意の組み合わせの2次元分布によって特徴付けられ、それにより、所望の3D形状又は構造に対応する光学干渉パターンを与えるために選択される照明時に伝えられる電磁放射線強度の2次元分布をもたらす部分的に透明な光学素子である。本発明のこの態様において、マスク要素の選択された領域によって伝えられる電磁放射線は、吸収材料、散乱材料及び/又は反射材料をマスク要素中に組み入れることにより減衰されてもよい。例えば、マスク要素の選択された領域によって伝えられる(透過される)電磁放射線の強度は、入射する電磁放射線を反射し、散乱し、吸収する薄い金属、半導体又は誘電体膜等の薄膜を組み込むことによって選択されてもよい。薄い金属膜などの振幅変調要素を位相マスクの表面に加えて、反射基板を利用すると、本発明によって形成することができる3D構造のタイプに更に高いフレキシビリティが付与される。本発明の例示的な実施形態において、マスク要素は、マスク要素の1つ以上の面上に2次元パターン又は3Dパターンを備える薄膜を有する。例示的な薄膜としては、
約10nm〜約100nmの範囲にわたって選択された厚さを有する1つ以上の蒸着された薄い金膜が挙げられるが、これに限定されない。約80nm未満の厚さを有する薄い金膜では、入射する電磁放射線が部分的に透過され、また、約80nmを上回る厚さを有する金膜では、入射する電磁放射線が完全に吸収され、散乱され、及び/又は、反射される。
【0013】
放射線感応材料の大部分の内部で選択された方向及び位置の光学干渉パターンを与えるため、本発明のマスク要素及び放射線感応材料は互いに対して光学的に位置合わせされることが好ましい。放射線感応材料に対する光学干渉パターンの方向及び位置の制御は、所望の3D形状を有する構造を形成するために役立つとともに、良好な配置精度をもって、基板上又は装置上或いは基板内又は装置内に3D構造を与える(例えば、組み込む又は組み立てる)ために役立つ。マスク要素の外面と放射線感応材料とを明確な相対的方向で位置合わせすることができる任意の手段により、光学的な位置決めが行われてもよい。透過モードでは、マスク要素及び放射線感応材料が光学的に位置合わせされ、それにより、マスク要素によって伝えられる電磁放射線は、放射線感応材料内に選択された光学干渉パターンを形成する。このため、透過モードにおいて、光学干渉パターンは、マスク要素を通じた電磁放射線の透過により放射線感応材料内に形成される。反射モードでは、マスク要素と放射線感応材料とが光学的に位置合わせされることにより、マスク要素によって反射される電磁放射線が、放射線感応材料内に選択された光学干渉パターンを形成する。このため、反射モードにおいて、光学干渉パターンは、マスク要素による電磁放射線の反射により放射線感応材料内に形成される。また、本発明は、マスク要素を通じた電磁放射線の透過とマスク要素による電磁放射線の反射との組み合わせにより光学干渉パターンが放射線感応材料内に形成される実施形態も含んでいる。
【0014】
例示的な実施形態において、マスク要素及び放射線感応材料の1つ以上の接触面は、コンフォーマル接触状態にあり、好ましくは原子スケール(<5nm)のコンフォーマル接触状態にある。この説明の文脈において、用語「接触面」とは、互いに接触しているマスク要素及び放射線感応材料の表面のことである。マスク要素の少なくとも一部と放射線感応材料の少なくとも一部との間のコンフォーマル接触は、良好なパターン鮮明度及び分解能を有する3D構造を形成するために必要な処理中にこれらの要素の選択された光学アライメントを確立して維持する有効な手段を与える。放射線感応材料の表面とのコンフォーマル接触を確立することができるマスク要素の使用は、本発明において有用である。これは、これらの要素のコンフォーマル接触により、光学アライメントが縦方向(すなわち、マスク要素に入射する電磁放射線ビームの伝播軸と平行な軸に沿う方向)でナノメートル精度をもって成されるからである。また、マスク要素の少なくとも一部と放射線感応材料の少なくとも一部との間でコンフォーマル接触を確立すると、3D構造を基板上に或いは装置内に良好な配置精度をもって組み立て、組み込み、或いは、位置決めする有効な手段が得られる。また、本発明のコンフォーマル接触を使用すると、実験設備内での振動に対して耐久性の高い光学アライメントが得られる。
【0015】
コンフォーマル接触は、2つの要素を結びつけるファンデルワールス力、双極子間力、水素結合及びロンドン力などの分子間引力が形成されるように処理を受ける放射線感応材料とマスク要素(又は、その上のコーティング材)とを互いに十分に近接させることにより行われてもよい。「コンフォーマル接触」とは、マスク要素と放射線感応材料との光学アライメントを作り上げて、確立して、維持するために役立ち得る表面及び/又はコーティングされた表面間で確立される接触のことである。一態様において、コンフォーマル接触は、放射線感応材料の表面、例えば処理を受ける放射線感応材料の平坦面、平滑面、粗面、輪郭面(輪郭付けられた表面)、凸面、凹面の形状全体に対する位相マスク等のマスク要素の1つ以上の接触面の巨視的適合を伴う。他の態様において、コンフォーマル接触は、隙間の無い緊密な接触をもたらす放射線感応材料の表面の形状全体に対する位相マスク等のマスク要素の1つ以上の接触面の微視的適合を伴う。コンフォーマル接触という用語は、リソグラフィ及び材料科学の技術でのこの用語の使用と一致するべく意図されている。
【0016】
一実施形態において、本発明のマスク要素は、処理を受ける放射線感応材料の1つ以上の平面とのコンフォーマル接触を確立できる。また、本発明のマスク要素は、処理を受ける放射線感応材料の1つ以上の輪郭面、例えば湾曲面、凸面、凹面や、隆起、チャンネル又は他のレリーフ形態をその上に有する表面とのコンフォーマル接触を確立することもできる。柔軟でローモジュラスな高弾性材料、例えばエラストマーを備えるマスク要素の使用は、輪郭付けられた表面(輪郭面)上に3D構造を形成する場合に有益である。これは、そのような材料が、処理を受ける放射線感応材料の表面形態の少なくとも一部に適合できるからである。コンフォーマル接触は、位相マスク等のマスク要素の1つ以上の露出した接触面と放射線感応材料の1つ以上の面との間で確立されてもよい。或いは、コンフォーマル接触は、位相マスク等のマスク要素の1つ以上のコーティングされた接触面と放射線感応材料の1つ以上の面との間で確立されてもよい。エラストマー及びエラストマー成分を有する複合多層構造を備えるマスク要素の使用は、様々な放射線感応材料とのコンフォーマル接触を確立するための一部の用途において特に有益である。
【0017】
例示的な光学アライメント(光学的位置合わせ)の仕組みは、位相マスク等のマスク要素のレリーフ形態に対応する複数の不連続な接触面と放射線感応材料の表面との間でコンフォーマル接触を与える構成を含んでいる。また、本発明は、位相マスク等のマスク要素のレリーフ形態に対応する単一の連続な接触面が放射線感応材料の表面とコンフォーマル接触する光学アライメント方式を含んでいる。本発明において、マスク要素及び放射線感応材料の接触面は、処理を受ける放射線感応材料の表面とマスク要素との間で選択されたアライメントを行うために役立つ相補的アライメントチャンネル及び/又は溝等の特定のレリーフパターを有していてもよい。当業者であれば理解できるように、そのような「ロック・アンド・キー」アライメント機構、チャンネル、溝、システムの使用は、マイクロファブリケーション及びナノファブリケーションの技術分野において十分に知られており、本発明のマスク要素に容易に組み入れることができる。アライメントチャンネル及び/又は溝を備えるアライメント機構の使用は、基板上に3D構造を形成する場合に有益であり、或いは、良好な配置精度をもって、3D構造を装置内に組み込む場合に有益である。また、アライメント機構の使用は、基板上(又は装置内)に3D構造を配置する際に熱膨張及び/又は熱収縮に起因して生じる狂いを最小限に抑える場合に有益である。
【0018】
本発明は、マスク要素及び放射線感応材料の接触面の平行な光学アライメントを使用する方法及び装置を含んでいる。また、本発明は、マスク要素及び放射線感応材料の接触面の非平行アライメントを使用する方法及び装置を含んでいる。例示的な実施形態では、選択された非平行な方向性を与えるため、マスク要素と放射線感応材料との間に、楔、斜面、スペーサ、又は、これらの任意の等価物が設けられてもよい。また、本発明は、十分に特徴付けられた相対的方向でマスク要素及び放射線感応材料を保持することができる外部光学アライメントシステムによって行われる光学アライメントを含んでいる。
【0019】
例示的な実施形態において、マスク要素と放射線感応材料との光学アライメントは、電磁放射線に対する露光時間の全般にわたって一定に保持される。放射線感応材料の表面との良好なコンフォーマル接触を確立できる材料を備えるマスク要素、例えばエラストマー位相マスクの使用は、フォトプロセス(光学処理)時間の全般にわたってこれらの要素の縦及び横方向の光学アライメントを一定に維持する場合に特に有益である。しかしながら、本発明は、高い精度をもって選択された物理的寸法及び組成を有する最適化された3D構造を得るために製造中にマスク要素及び放射線感応材料の光学アライメントが選択的に調整(又は調節)される方法及び装置も含んでいる。
【0020】
本発明の3D構造製造方法は、実質的にコヒーレントな電磁放射線を使用する。本発明において、用語「実質的にコヒーレントな電磁放射線」とは、本発明の方法及び装置によって形成される3D構造を備えるナノスケール形態等の構造的形態の厚さ以上のコヒーレンス長を有する電磁放射線のことである。本発明の一部の用途において、実質的にコヒーレントな電磁放射線は、本発明の方法及び装置によって形成される3D構造を備えるナノスケール形態等の構造的形態の厚さの少なくとも約10倍のコヒーレンス長によって特徴付けられることが好ましい。一実施形態において、「実質的にコヒーレントな電磁放射線」とは、処理を受ける放射線感応材料の厚さ以上のコヒーレンス長を有する電磁放射線、好ましくは一部の用途においては処理を受ける放射線感応材料の厚さの約10倍を超えるコヒーレンス長を有する電磁放射線のことである。この明細書本文の文脈において、「放射線感応材料の厚さ」とは、電磁放射線ビームの伝播軸と平行な軸に沿って延びる放射線感応材料の層の物理的寸法に対応している。実質的にコヒーレントな電磁放射線は、時間コヒーレンス及び空間コヒーレンスに関して特徴付けられてもよい。本発明の一部の用途において有用な実質的にコヒーレントな電磁放射線は、約100ミクロン以上の時間コヒーレンス長によって特徴付けられる。本発明の一部の用途において有用な実質的にコヒーレントな電磁放射線は、空間的にコヒーレントな電磁放射線ビームによって特徴付けられる。
【0021】
時間コヒーレンス長は、所定の電磁放射線ビームの帯域幅に反比例するとともに、以下の方程式により帯域幅に関して表わされてもよい。
時間コヒーレンス長=λcenterx[λcenter/(π)(Δλ)] (I)
ここで、λcenterは中心波長であり、Δλは電磁放射線ビームの帯域幅である。したがって、ある状況では、本発明の方法及び装置において有用な電磁放射線を帯域幅に関して特徴付けることが有益である。狭帯域幅によって特徴付けられる電磁放射線ビーム、例えば約365nmに等しい中心波長と約4nm以下の半値全幅(FWHM)帯域幅とを有するビームは、本発明の方法及び装置において有用な実質的にコヒーレントな電磁放射線を与える。
【0022】
また、本発明は、本方法によって形成される3D構造における構造的形態の空間的分布及び/又は密度を制御するために電磁放射線の空間コヒーレンス、時間コヒーレンス、又は、これらの両方が選択される(或いは、選択的に調整される)実施形態を含んでいる。幾つかの実施形態において、空間及び/又は時間コヒーレンスは、ナノスケール及び/又はマイクロスケール形態が局在化される3D構造の領域のサイズを制御するために選択される。例えば、本発明は、3D形態が局在化される放射線感応材料とマスク要素との間の界面近傍の領域のサイズを制御するために電磁放射線ビームの空間及び/又は時間コヒーレンスが選択される製造方法を含んでいる。本発明のこの態様は、例えば放射線感応材料の接触面に局在する感光材料を介して部分的にのみ分布される複数のナノスケール形態を有する3D構造を形成する場合に特に有益である。感光材料を介して部分的にのみ分布される複数のナノスケール形態を備える本方法によって形成される3D構造は、一部の装置用途に十分に適する構造的堅牢性等の機械的特性を有するとともに、これらの構造を所定範囲の装置構成内に有効に組み込むことができる。そのようなコヒーレンス調節方法によって形成される3D構造の有益な構造的特性は、複数のナノスケール形態を備える領域と下側に位置する固体領域との間の連続的な界面に起因している。
【0023】
本発明において有用な電磁放射線源は、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給できる任意の電磁放射線源を含んでいる。本発明において有用な例示的な電磁放射線源としては、低圧水銀ランプ、亜鉛ランプ、電磁放射線の発光ダイオード源又はレーザ源などの狭帯域の電磁放射線源が挙げられる。この説明の文脈において、用語「狭帯域の電磁放射線源」とは、更なる光学的なフィルタリングを伴うことなく本発明の方法において電磁放射線を使用できるようにコヒーレンス長、空間コヒーレンス長及び/又は時間コヒーレンス長を有する電磁放射線を与える帯域幅を有する電磁放射線源のことである。本発明の方法において使用できる例示的な狭帯域の電磁放射線源は、365nmの中心波長及び4nmの帯域幅を有する電磁放射線源である。当業者であれば容易に理解できるように、狭帯域の電磁放射線源における帯域幅要件は、中心周波数、形成される3D構造の物理的寸法及び/又は放射線感応材料の厚さに伴って変わる。また、狭帯域の電磁放射線源は、本発明の方法では、フェブリペロフィルタ、カットオフフィルタ、偏光フィルタ、波長板、減光フィルタ、減衰フィルタ、又は、これらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない1つ以上のフィルタと組み合わせて使用されてもよい。
【0024】
また、本発明は、フェブリペロエタロン又はハイパスフィルタとローパスフィルタとの組み合わせ等の1つ以上の光学フィルタと組み合わせて、蛍光ランプ、黒体電磁放射線源、キセノンランプ、石英ランプ又は重水素ランプ等の広帯域の電磁放射線源を1つ以上備える電磁放射線源を使用して実施されてもよい。この説明の文脈において、用語「広帯域の電磁放射線源」とは、更なる光学的なフィルタリングを伴うことなく本発明の方法において電磁放射線を使用できないようにコヒーレンス長、空間コヒーレンス長及び/又は時間コヒーレンス長を有する電磁放射線を与える帯域幅を有する電磁放射線源のことである。本発明の一態様において、光学フィルタを使用すると、本発明の方法を実施するために必要なコヒーレンスを与える所定の帯域幅の透過電磁放射線が形成される。広帯域の電磁放射線源は、本発明の方法では、フェブリペロフィルタ、カットオフフィルタ、偏光フィルタ、減光フィルタ、減衰フィルタ、又は、これらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない1つ以上のフィルタと組み合わせて使用されてもよい。
【0025】
本発明の方法及び装置では、パルス電磁放射線源又は連続電磁放射線源を使用することができる。一部の実施形態において、フェムト秒〜マイクロ秒の範囲のパルス持続時間を有するパルス電磁放射線源は、処理を受ける放射線感応材料とマスク要素との間で確立されるコンフォーマル接触に起因する電磁放射線ビームの完全な時間的重なりを与えるために使用される。これらの実施形態において、時間的な重なりの深さはパルス持続時間の関数である。簡単な計算では、本発明の方法において100フェムト秒のパルス持続時間の電磁放射線源が使用されるときに最大で数十ミクロンの時間的重なりが形成されることが分かっている。本発明のこの態様は、コンフォーマル接触を与えない従来の全ての干渉技術とは異なっている。一部の用途では、低コストで、動作寿命が長く、アライメントが比較的容易であることから、レーザでない電磁放射線源が好ましい。本発明の例示的な電磁放射線源は、所定の放射線感応材料によって少なくとも部分的に吸収される波長分布を有する電磁放射線、好ましくは紫外線、可視光線及び/又は赤外線のスペクトル領域における電磁放射線を発生する。例示的な電磁放射線源は、放射線感応材料の厚さ及び/又は形成される構造の厚さよりも大きい、好ましくは5〜10倍大きいスポットサイズを照明する。この文脈において、用語「スポットサイズ」とは、マスク要素の照明面積のことである。本発明の例示的な実施形態は、0.75mm2以上の面積をもつスポットサイズを有する実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを使用する。
【0026】
本発明では、放射線感応材料の化学的に改質され及び/又は物理的に改質された領域を形成することができる任意の波長を有する実質的にコヒーレントな電磁放射線を使用することができる。一部の有用な実施形態では、処理を受けている感光性樹脂中において架橋反応などの重合反応を開始することができる実質的にコヒーレントな電磁放射線が使用される。重合反応は、本発明では、単光子吸収プロセス及び/又は多光子吸収プロセスによって光誘起されてもよい。多光子吸収プロセスを使用する本発明の方法は、紫外線スペクトル領域では殆ど透過しない材料を処理するためには望ましい場合がある。これは、そのような多光子吸収プロセスが一般に可視光及び近赤外光の電磁放射線によって促進され得るからである。また、本発明の多光子吸収方法は、一部の実施形態では、形態の分解能を高める。その理由は、放射線感応材料中で著しい多光子吸収を引き起こすことができる十分に高い電磁放射線強度は、マスク要素によって形成される光学干渉パターンの強度分布の最大値前後の領域に狭く局在するからである。また、多光子プロセスを使用すると、更に幅広い範囲の波長の電磁放射線を処理中に使用できるため、本発明のフレキシビリティが高くなる。例えば、1光子フォトプロセスにおいて一般に使用される従来の感光性材料と共に2光子プロセスを使用すると、1200nm波長程度の波長の電磁放射線を使用してパターニングを行うことができる。この能力は、光バンドギャップ材料の製造においては特別の重要性をもっている。その理由は、光バンドギャップは、処理中に使用される露光波長に正比例する特定の3D構造の格子定数の関数だからである。その結果、多光子処理との適合性は、特定の波長で選択されたバンドギャップを作る際に、より高いフレキシビリティを本方法に付与している。
【0027】
本発明において使用できるマスク要素は、電磁放射線強度、偏光状態、振幅及び位相の明確な選択された空間分布を有する光学干渉パターンを与えることができる任意の光学コンポーネント、光学装置、又は、光学コンポーネントと装置との組み合わせを備える。本発明の例示的なマスク要素は、1つ以上の実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームに晒されると、放射線感応材料内で光学干渉を受ける複数の実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを形成し、それにより、強度及び偏光状態の選択された空間分布を有する光学干渉パターンを形成する。マスク要素は、選択されたレリーフパターンを有するエラストマー位相マスク等の単一の光学素子を備えていてもよく、或いは、複数の光学素子を備えていてもよい。本発明のマスク要素は、放射線感応材料内で所望の3D干渉パターンを形成する透過及び/又は反射電磁放射線を供給してもよい。
【0028】
一実施形態において、マスク要素は、放射線感応材料内で光学干渉を受けた異なる回折次数に対応する複数の別個の(離散的な)電磁放射線ビームを形成することができる回折格子を備える。他の実施形態において、マスク要素は、異なる伝播軸に沿って伝搬し、且つ放射線感応材料内で光学干渉を受ける複数の電磁放射線ビームを形成することができる選択されたレリーフパターンを有する位相マスクを備える。本発明のこの態様の一実施形態において、位相マスクのレリーフパターンの外面は、処理を受ける放射線感応材料の接触面の特定の部分とのコンフォーマル接触を確立して維持することができる接触面を備える。レリーフパターンは、レリーフ形態の物理的寸法及び周期性に関して特徴付けられてもよい。一実施形態において、本発明の位相マスクのレリーフ形態は、処理のために使用される電磁放射線の波長に相当する厚さ(すなわち、マスク要素に入射する電磁放射線の伝播軸と平行な軸に沿って延びる寸法)、長さ(すなわち、電磁放射線の伝播軸に対して垂直な軸に沿って延びる寸法)、及び/又は、周期性(すなわち、レリーフ形態同士の間の間隔)を有する。本発明の位相マスクの例示的なレリーフパターンは、約120nm〜約5000nm程度、好ましくは約100nm〜約800nm程度の物理的寸法を有する。本発明のマスク要素は、対称なパターンのレリーフ形態、又は、例えば1つ以上の制御された欠陥部位を有するレリーフパターン等の非対称なパターンのレリーフ形態を備えるレリーフパターンを有していてもよい。
【0029】
本発明の一態様において、マスク要素は、1つ以上の高分子層を備える位相マスクを備える。一実施形態において、例えば、マスク要素は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)位相マスクなどのエラストマー位相マスクを備える。エラストマー材料などのローモジュラスな高弾性の高分子材料を備える位相マスクの使用は、その固有の柔軟性がマスク要素及び放射線感応材料の良好な光学アライメント、例えばマスク要素と放射線感応材料とのコンフォーマル接触により成されるアライメントを可能にするため、有益である。一実施形態では、本方法においては、約0.1MPa〜約100MPaの範囲より選択されるヤング率を有する位相マスクが使用される。本発明のこの態様の例示的なエラストマー位相マスクは、位相マスクを通過する光の波長に相当する1つ以上の選択された物理的寸法を有する複数のレリーフ形態を備えるレリーフパターンを有するPDMS位相マスク等の適合可能なゴム位相マスクを備える。或いは、本発明は、特に1つ以上の寸法に沿ってある程度の柔軟性を示す材料の薄いシートの形態を成すハイモジュラスな材料を備える位相マスクを使用する方法を含んでいる。
【0030】
この方法において有用な例示的な位相マスクとしては、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)層などのヤング率が低い高分子層、好ましくは一部の用途においては約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲より選択される厚さを有する高分子層を備える単層エラストマー位相マスクが挙げられる。或いは、本発明の位相マスクは、その全体を参照として本明細書に組み込まれる2004年4月27日に米国特許商標局に提出された“Composite Patterning Devices for Soft Lithography”と題される米国特許出願第60/565,604号に記載されるような複合多層位相マスクを構成している。本発明の方法において使用できる例示的な複合多層位相マスクは、PDMS層などのヤング率が低い高弾性の第1の高分子層と、ヤング率が高い第2の高分子層とを備える。この実施形態において、第1の高分子層の内面及び第2の高分子層の内面は、第2の高分子層の外面に作用する力が第1の高分子層に伝えられるように配置されている。本発明の複合多層位相マスクにおけるハイモジュラスな第2の高分子層の使用は、処理を受ける放射線感応材料の表面とコンフォーマル接触した状態で位置付けられるときにレリーフパターンの歪みを防止できる十分に大きい曲げ剛性を有する位相マスクを提供するため、有益である。例えば、約1×10−7Nm〜約1×10−5Nmの範囲より選択される曲げ剛性を有する位相マスクを使用すると、処理を受ける放射線感応材料の表面とコンフォーマル接触を確立する際に、位相マスクのレリーフ形態の位置及び物理的寸法における歪みが最小限に抑えられる。
【0031】
本発明の方法及び装置で使用できる放射線感応材料としては、電磁放射線に晒された際に化学的及び/又は物理的な変化を受ける任意の材料が挙げられる。本発明の放射線感応材料は、固体や液体であってもよく、或いは、ゲル、ゾル、エマルジョン(乳濁液)、発泡体いずれのコロイド材料であってもよい。例示的な放射線感応材料としては、電磁放射線の吸収時に光重合を受ける材料、例えば光重合可能な前駆物質が挙げられるが、これに限定されない。また、放射線感応材料としては、電磁放射線の吸収時に化学エッチングに影響され易くなる或いは影響され難くなる材料も挙げることができるが、これに限定されない。また、放射線感応材料としては、電磁放射線の吸収時に溶媒などの化学試薬に溶解するようになる或いは溶解しなくなる材料も挙げることができるが、これに限定されない。Microchem社のSU8などのネガフォトレジストとして機能する材料は、本発明の放射線感応材料として使用されてもよい。或いは、本発明の方法において有用な例示的な放射線感応材料としては、感光性樹脂、例えばポリウレタ系の様々なクラスのエポキシノボラック材料が挙げられるが、これらに限定されない。また、例示的な電磁放射線感応材料としては、電磁放射線の吸収時に放射線感応材料内で化学的又は物理的な変化を開始できる1つ以上の光開始剤を備える材料が挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
例示的な実施形態において、放射線感応材料は、基板と接触し及び/又は基板によって支持される。本発明の一部の用途においては透明な基板を使用することが好ましい。その理由は、透明な基板は、マスク要素を通過して放射線感応材料内で形成される光学干渉パターンの強度分布に影響を与えることが可能である電磁放射線ビームの望ましくない後方反射を最小限に抑えるからである。しかしながら、本発明の方法は、反射性が高い或いは部分的に反射する基板及び/又は吸収性が高い或いは部分的に吸収する基板を含む多種多様な基板上に3D構造及び3D構造のパターンを形成するために使用されてもよい。
【0033】
本発明の方法は、様々な物理的寸法及び相対的空間配置を有するナノスケール形態等の形態を備える3D構造を形成することができる。本方法は、ナノスケール形態を有する複数の別個の3D構造を備える対称的又は非対称的なパターンを形成することができる。或いは、本方法は、対称的又は非対称的なパターンのナノスケール形態を備える単一3D構造を形成することができる。例えば、本発明は、ナノスケール形態を有する非対称なパターンの別個の3D構造、又は、1つ以上の制御された欠陥部位によって特徴付けられる非対称なパターンのナノスケール形態を備える単一3D構造を形成することができる。
【0034】
本発明の形成方法は、形成される3D構造の形態の横寸法及び縦寸法の制御を行う。本発明によって形成される例示的な3D構造としては、選択された横寸法及び縦寸法をもつ形態を有する3D構造が挙げられるが、これに限定されない。選択された縦寸法を有する構造を形成できることは、従来のリソグラフィック形成方法を上回る本発明の方法の大きな利点である。本発明の方法は、約20ナノメートル〜約5000ナノメートルより選択される縦寸法及び/又は横寸法をもつ形態を有する3D構造を形成することができる。本方法によれば、最大で100μmの厚さの膜及び3Dナノ構造を得ることができ、放射線感応材料の光学的吸収及び構造的一体性がこの厚さを制限する。
【0035】
一実施形態において、本発明は、複数のチャープ形態を有する3D構造を形成する方法、及び、基板表面上にチャープ3D構造のパターンを形成する方法を提供する。この説明の文脈において、用語「チャープ形態」又は「チャープ構造」とは、連続的に変化する周期性を有する形態又は構造のパターンのことである。一実施形態において、ほぼ対称な分布のレリーフ形態を備えるレリーフパターンを有するPDMS位相マスク等の適合可能な弾性位相マスクは、処理を受ける放射線感応材料とのコンフォーマル接触を確立している間又はその前に例えば拡張(すなわち伸長)又は圧縮によって物理的に変形される。位相マスクの物理的な変形は、レリーフパターン中のレリーフ形態の相対的な方向を変化させ、それにより、レリーフ形態のチャープ分布が形成される。位相マスクの物理的に変形された方向をほぼ一定に維持しつつ電磁放射線に晒すと、1つ以上の3D構造又はチャープ分布を有する3D構造のパターンが形成される。或いは、チャープ3D構造又は形態を備えるパターンは、それが変形されていない状態でチャープ形態のパターンを備えるレリーフパターンを有する位相マスクを使用して本方法により形成されてもよい。チャープ構造の例示的な用途は、光バンドギャップ材料中に点、線、面又は3D欠陥構造をも形成することである。これは、フォトントラップ、鋭角曲げ時のゼロ損失導波管、完全ミラーであってもよく、これらはフルフォトニックデバイスの重要な要素である。
【0036】
本発明は、3D構造を備える形態の物理的寸法にわたって、ある場合には20ナノメートル程度の小さい物理的寸法を有する形態の物理的寸法にわたって正確な制御が可能な高分解能形成方法を提供する。本技術の分解能限界は、感光性樹脂におけるナノメートルサイズ、放射線感応材料の粗さ、架橋結合半径(すなわち、架橋鎖反応の拡散距離)、露光波長、偏光状態及び偏光に対する材料反応、位相マスクの分解能を含む幾つかの原因によって生じる。幾つかの実施形態において、本発明の形成方法は、放射線感応材料の励起に関与する光子の数に等比例してより一層高い分解能を示す形態を有する3D構造を形成する多光子吸収開始重合反応を放射線感応材料中で使用する。
【0037】
本方法は、基板表面の広い領域上に3D構造を形成し及び/又はパターン化するための低コストで高スループットな方法を提供する。電磁放射線源のスポットサイズ及び位相マスクのサイズだけが、本方法によってパターン化される基板面積のサイズを制限する。本方法は、基板又は装置の広い領域を、少なくとも1つのナノスケール形態を有する複数の独立した3D構造でパターン化することができる。或いは、本発明は、基板又は装置の広い領域を、ナノスケールの物理的寸法を有する形態のパターンを備える膜などの単一3D構造でパターン化することができる。
【0038】
本形成方法は、一連の従来のマイクロファブリケーション技術及びナノファブリケーション技術、例えばマイクロ成型、エンボス加工、エッチング技術等で補われるフレキシビリティの高い方法である。一態様において、本発明はマスクレスリソグラフィ形成方法を提供する。この実施形態において、パターニング要素は、処理を受ける放射線感応材料の表面中へレリーフ形態を直接的に成型し、或いはエンボス加工するために使用される。レリーフ形態は、放射線感応材料の適切な操作が可能な任意の手段を使用して放射線感応材料に対して導入されてもよい。前記任意の手段としては、複数のレリーフ形態を有する本発明の位相マスク又は等価なパターニング装置を放射線感応材料の表面に接触させることが挙げられるが、これに限定されない。或いは、レリーフ形態は、ロッドやバー等の並進可能な押し込み具を放射線感応材料の表面の様々な領域に繰り返し接触させることにより導入され、それにより、適切なレリーフ構造が形成されてもよい。この実施形態において、放射線感応材料は、物理的に変形可能な状態のとき、例えばそのガラス点温度に近い温度で、パターニング要素と物理的に接触させることにより成型される。次に、放射線感応材料自体が電磁放射線に晒され、それにより、成型された領域及び場合によっては成型されていない領域の全体にわたって化学的又は物理的に改質された領域が形成される。その後、化学的及び/又は物理的に改質された放射線感応材料を現像することにより、様々な構造が形成される。したがって、レリーフ形態を有する放射線感応材料の部分自体は、放射線感応材料内に所望の3D構造に対応する光学干渉パターンを形作る複数のビームを形成するための位相マスクとして機能する。また、本発明は、選択されたレリーフパターンを有する放射線感応材料がフォトプロセス中にマスク要素と光通信を行う形成方法も含んでいる。この実施形態において、マスク要素及びレリーフ形態を有する放射線感応材料の部分自体の両方は、放射線感応材料内に所望の3D構造に対応する光学干渉パターンを形成するための位相マスクとして機能する。ナノメートルスケールの物理的寸法とミクロンスケールの物理的寸法との組み合わせを有するレリーフパターンを備える位相マスクを使用する電磁放射線の露光前に成型又はエンボス加工することは、ナノメートルスケールの形態及びミクロンスケールの形態の両方を有する3D構造を形成する場合に有益である。そのような構造のミクロンスケール形態は、カプラ、導波管及び他の装置などのミクロンスケール要素及びミリメートルスケール要素中に容易に組み込むことができ、一方、ナノスケール形態は、フィルタリング、フォトニック/フォニック特性又は流体混合能力などの3D構造の機能性を与えることができる。
【0039】
他の態様において、本発明は、3D構造を形成するための方法であって、(1) 実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、(2)前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料との直接的な光通信で、マスク要素へと方向付け、それにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、(3)前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、を備える方法を提供する。
【0040】
他の態様において、本発明は、装置内で3D構造を組み立てるための方法であって、(1)実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、(2)前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、前記装置内に位置付けられた放射線感応材料との直接的な光通信で、マスク要素へと方向付け、それにより、前記装置内の前記放射線感応材料中に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、(3)前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記装置内に前記3D構造を形成するステップと、を備える方法を提供する。
【0041】
他の態様において、本発明は、3D構造を形成するための方法であって、(1)放射線感応材料を設けるステップと、(2)前記放射線感応材料上にレリーフパターンを形成するステップと、(3)実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、(4)前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを前記レリーフパターンへと方向付け、前記レリーフパターンが複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、(5)前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、を備える方法を提供する。
【0042】
他の態様において、本発明は、3D構造を形成するための方法であって、(1)実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、(2)前記コヒーレントな電磁放射線ビームの空間コヒーレンス、時間コヒーレンス又はこれらの両方を選択するステップと、(3)前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料との光通信で、マスク要素へと方向付け、それにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、(4)前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、を備える方法を含んでいる。
【0043】
以下の説明、実施例、図面、請求項によって本発明を更に説明する。
【発明の詳細説明】
【0044】
図面を参照すると、同様の参照符号及び同様の要素を示しており、また、2つ以上の図面に現れる同じ参照符号は同じ要素を示している。更に、以下では、次のような定義が適用される。
【0045】
用語「電磁放射線」は電場及び磁場の波を示している。本発明の方法に有用な電磁放射線としては、ガンマ線、X線、紫外光線、可視光線、赤外線、マイクロ波、電磁波又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。本発明の方法及び装置は、波長の範囲に対応する強度分布に関して特徴付けられてもよい実質的にコヒーレントな電磁放射線のビームを使用する。本発明の実質的にコヒーレントな電磁放射線のビームは、ガウス分布、ローレンツ分布、又は、これらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の強度分布によって特徴付けられてもよい。本発明の実質的にコヒーレントな電磁放射線のビームは、コヒーレンス長、空間コヒーレンス、時間コヒーレンス長、帯域幅、中心波長、又は、これらの任意の組み合わせに関して特徴付けられてもよい。
【0046】
「光学的厚さ」は、層の厚さと屈折率との積であり、以下の方程式によって表わされてもよい。
光学的厚さ=(L)(n) (II)
ここで、Lは物理的な厚さであり、nは屈折率である。
【0047】
用語「強度(intensity)」及び「強度(intensities)」は、1つの電磁波又は複数の電磁波の振幅の平方(二乗)を示している。この文脈における振幅という用語は、電磁波の振動の大きさを示している。また、「強度(intensity)」及び「強度(intensities)」は、1つの電磁放射線ビーム又は複数の電磁放射線ビームの時間平均エネルギ束、例えば1つの電磁放射線ビーム又は複数の電磁放射線ビームの単位時間当たりの光子数/cm2を示していてもよい。
【0048】
用語「3D構造」とは、3次元空間を占める1つ以上の構造的形態を備える構造体のことである。一態様において、本発明の方法及び装置は、1次元、2次元又は3次元における各種の選択可能な長さを有する例えばナノスケール形態等の構造的形態によって特徴付けられる1つ以上の3D構造を形成する。本発明の方法によって形成される3D構造は、放射線感応材料の厚さに対応する軸に沿う各種の物理的寸法を有する形態によって特徴付けられてもよい。或いは、本発明の方法によって形成される3D構造は、マスク要素に入射する実質的にコヒーレントな電磁放射線の1本又は複数の伝搬軸と平行な1本又は複数の軸に沿う各種の物理的寸法を有する形態によって特徴付けられてもよい。また、本発明の方法によって形成される3D構造は、マスク要素によって反射される電磁放射線の1本又は複数の伝搬軸と平行な1本又は複数の軸に沿う各種の物理的寸法を有する形態によって特徴付けられてもよい。また、本発明の方法によって形成される3D構造は、マスク要素によって散乱される電磁放射線の1本又は複数の伝搬軸と平行な1本又は複数の軸に沿う各種の物理的寸法を有する形態によって特徴付けられてもよい。この論議の文脈において、本発明の方法によって製造される3D構造の長さ及び/又は物理的寸法は、マスク要素の物理的寸法及び/又は光学的特性の選択によって選ぶことができる。
【0049】
「形態」とは、3D構造の構造的要素を示している。本発明は、それぞれが少なくとも1つのナノスケール形態を有する複数の独立した3D構造を備えるパターンを形成する方法を提供する。また、本発明は、ナノスケール形態を備える単一3D構造を形成する方法を提供する。用語「ナノスケール形態」とは、約10nm〜約100,000nmの値の範囲より選択され、より好ましくは約100nm〜約50,000nmの値の範囲より選択される値を有する横寸法又は縦寸法等の少なくとも1つの物理的寸法を示す構造を成す形態のことである。
【0050】
用語「物理的寸法」又は「寸法」は、構造、形態、或いは、構造又は形態のパターンが2次元又は3次元においてどのようにして得られるか及び/又はどのようにして空間を占めるかを特徴付ける構造の物理的特徴、構造の形態、或いは、構造又は形態のパターンを示している。構造、構造の形態、或いは、構造又は形態のパターンの物理的寸法としては、長さ、幅、高さ、深さ、半径、曲率半径及び周期性が挙げられる。3D構造の縦寸法は、マスク要素に向けて方向付けられた実質的にコヒーレントな放射線の入射ビームの伝搬軸と平行な軸に沿って延びる寸法に対応している。3D構造の横寸法は、マスク要素に向けて方向付けられた実質的にコヒーレントな放射線の入射ビームの伝搬軸と垂直な軸に沿って延びる寸法に対応している。多種多様な形状を有する構造及び構造の形態は、その物理的寸法に関して特徴付けられてもよく、立方体、直方体、円柱、ポスト(柱)、リボン及びこれらの組み合わせを備える他の形状を含んでいるが、これらに限定されない。本発明の位相マスクのレリーフ(起伏、立体感)形態の横寸法は、電磁放射線の入射ビームの伝搬軸と垂直な軸に沿って延びる寸法を含んでいる。本発明は、正確に選択された物理的寸法を有する3D構造、例えばそれぞれが選択された物理的寸法を有する複数の形態を備える3D構造を製造するための方法、装置、装置部品を提供する。
【0051】
「エラストマー」は、引き伸ばし又は変形させることができ且つ実質的な永久歪みを伴うことなくその元の形状に戻ることができる高分子材料を示している。本発明において有用な例示的なエラストマーは、ポリマー、コポリマー、複合材料、又は、ポリマーとコポリマーとの混合物を備えていてもよい。エラストマー層とは、少なくとも1つのエラストマーを備える層のことである。また、エラストマー層は、ドーパント(添加物)及び他の非エラストマー材料を含んでいてもよい。本発明において有用なエラストマーとしては、PDMS、h−PDMS、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、ポリウレタン、ポリクロロプレン及びシリコンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
「ヤング率」とは、所与の物質における歪みに対する応力の比率を示す材料、装置又は層の機械的特性である。ヤング率は、以下の式によって与えられてもよい。
GE=(stress)/(strain)=[(L0/ΔL)x(F/A)] (II)
ここで、Eはヤング率であり、L0は平衡長であり、ΔLは加えられた応力下での長さの変化であり、Fは加えられた力であり、Aは力が加えられる範囲の面積である。また、ヤング率は、以下の方程式によりラメ定数に関して表わされてもよい。
E=μ(3λ+2μ)/(λ+μ) (III)
ここで、λ及びμはラメ定数である。ヤング率は、パスカル(Pa=Nm−2)等の単位面積当たりの力の単位で表わされてもよい。
【0053】
高いヤング率(又は「ハイモジュラス(高率)」)及び低いヤング率(又は「ローモジュラス(低率)」)は、所与の材料、層又は装置におけるヤング率の大きさの相対的な記述である。本発明において、高いヤング率は、低いヤング率よりも大きく、好ましくはある用途において約10倍大きく、より好ましくは他の用途において約100倍大きく、更に好ましくは更に他の用途において約1000倍大きい。一実施形態において、高いヤング率を有する材料は、約1GPa〜約10GPaの範囲にわたって選択されるヤング率を有しており、また、低いヤング率を有する材料は、約0.1MPa〜約100MPaの範囲にわたって選択されるヤング率を有する。
【0054】
用語「放射線感応材料の厚さ」は、マスク要素に対して方向付けられた電磁放射線の伝搬軸と略平行な軸に沿う放射線感応材料の厚さを示している。「光通信」とは、電磁放射線の1つ以上のビームが1つの要素から他の要素へと伝搬することができる2つ以上の要素の相対的配置のことである。光通信状態の要素は、直接的な光通信状態にあってもよく、或いは、間接的な光通信状態にあってもよい。「直接的な光通信」とは、集光レンズ等のビームの方向を決め及び/又はビームを合成するための光学コンポーネントを使用することなく電磁放射線の1つ以上のビームが第1の装置要素から他の装置要素へと直接的に伝搬する2つ以上の要素の相対的配置のことである。例えば、1つの有用な実施形態において、本発明のマスク要素は放射線感応材料との直接的な光通信状態にあり、それにより、マスク要素によって形成された電磁放射線の複数のビームは、放射線感応材料に向けて方向付けられるとともに、マスク要素によって形成されるビームを再結合するための集光レンズやリフレクタ等の更なる光学素子を使用することなく放射線感応材料内で組み合わされて光学干渉を受ける。一方、「間接的な光通信」とは、導波管、光ファイバ要素、リフレクタ、フィルタ、プリズム、レンズ、回折格子、及び、これらの装置部品の任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない1つ以上の装置部品を介して電磁放射線の1つ以上のビームが2つの要素間で伝搬する2つ以上の要素の相対的配置のことである。
【0055】
「電磁放射線のビーム」とは、同じ方向に伝搬する電磁放射線のことである。この明細書本文では、電磁放射線のビームという用語の使用を、光学及び分光学の技術におけるこの用語の使用に一致させようとしている。本発明の方法において有用な電磁放射線のビームとしては、電磁放射線ビームの実質的にコヒーレントなビーム、電磁放射線のパルス、電磁放射線の連続波ビームが挙げられる。一部の用途において有用な電磁放射線ビームのビームは、略平行な伝搬軸を有する光子を備える。この文脈において、用語「平行」とは、全ての時点において、2つの軸が互いに等距離にある幾何学的性質のことであり、また、用語「略平行」とは、完全な平行度からある程度外れたものをも含む幾何学的性質を示すことを意図しているものである。本発明において有用な電磁放射線のビームは、合焦してもよく、発散してもよく、視準されてもよく、半視準化されてもよく、又は、視準されなくてもよい。
【0056】
以下の説明では、本発明の正確な本質の十分な説明を行うために、本発明の装置、装置部品、方法の多数の特定の内容が示されている。しかしながら、当業者であれば理解できるように、本発明はこれらの特定の内容を伴うことなく実施することができる。
【0057】
図1Aは、基板表面上に3Dナノスケール構造又は3Dナノスケール構造のパターンを形成するための本発明の方法及び装置を示す概略図である。図1Aに示されるように、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100は、選択された厚さ125を有する放射線感応材料120と光通信を行った状態で、入射ビーム伝搬軸150に沿って位相マスク110へと方向付けられている。図1Aに示される実施形態において、位相マスク110は放射線感応材料120と直接的な光通信状態にあり、これにより、異なる伝播軸に沿って伝搬する電磁放射線の複数のビームが位相マスク110によって形成されるとともに、これらのビームは、マスク要素によって形成されるビームがビームを方向付け、或いは合成するための集光レンズ等の更なる光学素子を何ら通過することなく、放射線感応材料120内で組み合わされて光学干渉を受ける。放射線感応材料120は位相マスク110と基板122との間に位置付けられている。有用な実施形態において、放射線感応材料120は基板122によって支持され、また、本方法は、基板122の外面123を3D構造でパターン化するための手段、又は、複数の形態を有する1つ以上の単一3D構造を備える膜で基板122の外面123をパターン化する手段を提供する。
【0058】
位相マスク110は、外面130と、複数のレリーフ形態162を備えるレリーフパターン160とを有する。図1Bは位相マスク110の拡大図を示しており、位相マスク110は、選択された長さ163、幅164を有するレリーフ形態162の対称的なパターンと、選択された長さ163、幅164、厚さ165を有するレリーフ形態162のパターンとを備えるレリーフパターン160を示している。また、レリーフパターン160は、隣接するレリーフ形態162同士の間隔である周期性166によって更に特徴付けられる。レリーフ形態162は、その屈折率、組成、光路長によって更に特徴付けられてもよい。簡単なパターンの周期的なナノスケール3D構造又は形態及び/又は1つ以上の制御された欠陥部位を有する簡単なパターンの周期的なナノスケール3D構造又は形態を形成するために有用な一実施形態において、長さ163、幅164、厚さ165及び/又は周期性166は、例えば約2のファクタ内で、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100の中心波長に匹敵している。有用な実施形態において、長さ163、幅164、厚さ165及び/又は周期性166は、約50ナノメートル〜約5000ナノメートルの値の範囲、より好ましくは一部の用途において約300ナノメートル〜約1500ナノメートルの値の範囲より選択される。
【0059】
図1A及び図1Bを再び参照すると、レリーフパターン160のレリーフ形態162は、外面130の対向して配置され且つ放射線感応材料120の接触面170とコンフォーマル接触する複数の接触面140も有する。レリーフ形態162の接触面140と放射線感応材料120の接触面170との間のコンフォーマル接触は、入射ビーム伝搬軸150に沿う位相マスク110と放射線感応材料120との正確な光学アライメントを与える。製造用途において有用な本発明の幾つかの方法では、電磁放射線のコヒーレントなビームに対する位相マスク110及び放射線感応材料120の露出(露光)期間の全体にわたって、レリーフ形態162の接触面140と放射線感応材料120の接触面170との間のコンフォーマル接触が維持される。また、位相マスク110及び放射線感応材料120は、入射ビーム伝搬軸150と垂直な平面に沿うこれらの装置部品の選択された光学アライメントを行うための相補的なアライメント溝又はチャンネル(図1Aには図示せず)を有していてもよい。
【0060】
一実施形態において、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100は、狭帯域幅電磁放射線源等の電磁放射線源175によって直接的に形成される。他の実施形態において、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100は、電磁放射線が視準素子177及び/又は光学フィルタ178を通過するときに形成される。実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100は位相マスク110に対して方向付けられる。図1Aを参照すると、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームは、スポットサイズ180、好ましくは大面積パターニング用途においては0.75mm2以上の面積を有するスポットサイズを位相マスク110の外面130上に形成する。放射線感応材料120の全厚125にわたってナノスケール形態が分布されない構造を形成するために有用な本発明の方法において、視準素子177及び/又は光学フィルタ178は、コヒーレントな電磁放射線ビーム100のコヒーレンス(例えば、空間コヒーレンス及び/又は時間コヒーレンス長)の程度を選択する手段を与える。
【0061】
電磁放射線は、位相マスク110と相互に作用するとともに、複数の回折ビーム(ビーム200として概略的に描かれている)へと回折され、これらの回折ビームは、それらが重なり合う光学干渉を受けることにより、放射線感応材料120内に光学干渉パターンを形成する。放射線感応材料中に形成される光学干渉パターンの強度分布及び偏光状態は、レリーフパターン160のレリーフ形態162の長さ163、幅164、厚さ165、周期性166、組成及び屈折率によって決まる。図1Aに示される実施形態において、回折ビーム200は、放射線感応材料120の厚さ全体にわたって通り抜け、基板122によって透過される。少なくとも部分的に透過する基板122の使用は、一部の製造用途においては、放射線感応材料120内に形成される干渉パターンの強度分布に悪影響を与える可能性がある後方反射を最小限に抑える場合に有益である
【0062】
場合によって、位相マスク110は、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100の一部の透過を妨げる振幅変動領域(例えば非透過領域又は部分透過領域)172を有していてもよい。振幅変動領域172は、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100の一部を反射し、吸収し及び/又は散乱させることにより放射線感応材料120内に形成される光学干渉パターンの強度分布に影響を与える材料を備える。一部の製造用途において有用な一実施形態において、振幅変動領域172は、選択された反射率を有する金膜などの薄い金属膜である。
【0063】
電磁放射線と放射線感応材料120との相互作用は、放射線感応材料120内の選択された領域、例えば極めて強度の干渉パターンに晒される放射線感応座量120内の領域を化学的及び/又は物理的に改質する。一実施形態において、例えば、放射線感応材料120は、感光性樹脂であり、架橋反応等の光誘起重合反応による化学的及び/又は物理的改質を受ける、例えば化学エッチングや現像プロセスにより、及び/又は、1つ以上の溶媒に晒すことにより、放射線感応材料120の化学的又は物理的に改質された領域を除去すると、選択された物理的寸法を有する3Dナノスケール構造が基板122上に形成される。他の実施形態においては、例えば化学エッチングや現像プロセスにより、又は、1つ以上の溶媒に晒すことにより、改質されていない放射線感応材料を除去すると、選択された物理的寸法を有する3Dナノスケール構造が基板122上に形成される。
【0064】
当業者であれば理解できるように、図1A及び図1Bは、放射線感応材料内に光学干渉パターンを形成する例示的な方法を単に与えているだけである。本発明は、放射線感応材料内の光学干渉パターンがマスク要素110による電磁放射線の反射によって形成される方法と、放射線感応材料内の光学干渉パターンがマスク要素110を通じた電磁放射線の透過とマスク要素110による電磁放射線の反射との組み合わせによって形成される方法とを含んでいる。
【0065】
図2は、本発明の方法において有用な他の光学的配置400を示す概略図である。この構成において、放射線感応材料410は、電磁放射線源420とマスク要素430との間に位置付けられている。放射線感応材料410及びマスク要素430は、入射ビーム伝搬軸450を横切るように位置付けられている。図2に示されるように、電磁放射線源420は、1つ以上の実質的にコヒーレントな電磁放射線入射ビーム(矢印440によって概略的に表わされている)を発生する。実質的にコヒーレントな電磁放射線入射ビーム440は、選択された厚さ415を有する放射線感応材料410を通過して、マスク要素430と相互に作用し、それにより、放射線感応材料410を通過する1つ以上の電磁放射線反射ビーム(矢印460によって概略的に表わされている)を形成する。この光学的配置において、入射ビーム440と反射ビーム460との光学干渉は、強度、振幅、位相の選択された3D分布を有する光学干渉パターンを放射線感応材料420内に形成する。
【0066】
図1A、図1B、図2に示される光学的配置は、マスク要素の表面に対して垂直に方向付けられた入射ビーム伝搬軸と平行な伝搬軸に沿って伝搬する1つ以上の実質的にコヒーレントな電磁放射線入射ビームの使用を示しているが、本発明は、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームのマスク要素表面に対する非垂直な方向付けを使用する方法及び装置を含んでいる。具体的には、本発明は、位相マスク等のマスク要素と交差する任意の方向性を有する入射ビーム伝搬軸と平行に伝搬する実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを使用してもよい。
【0067】
図3は、基板表面上にナノスケール構造を形成するための本発明の例示的な方法におけるステップを示す概略図を示している。図3の左上の枠に示されるように、適合可能なエラストマー位相マスクには、放射線感応材料に晒される電磁放射線の光波長に匹敵する寸法を有するレリーフの形態が設けられている。本発明のこの実施形態において、必要な全ての光学コンポーネントは、適合可能なエラストマー位相マスクに組み込まれている。図3の左上枠内の挿入画は、シリコンウエハ上に248nm投影モードフォトリソグラフィによりパターン化されたフォトレジストの‘マスター’に対して接触させた状態で2つの異なるタイプのポリ(ヂメチルシロキサン)エラストマーから成る二重層(Sylgard 184;Dow Corning Corp.and VDT−731,HMS−301;Gelest,Inc.)を成型して硬化することによって形成される例示的な位相マスクの表面を斜めから見た走査型電子顕微鏡写真を示している。図3に示される実施例におけるレリーフ構造は、570nmの直径及び420nmの高さを有する円柱の正方形配列から成る。
【0068】
図3の右上の枠に示されるように、適合可能なエラストマー位相マスクは、感光性樹脂(SU−8;Microchem Corp.)を含む放射線感応材料から成るソリッドフィルム(回転成型(スピンキャスティング)により形成される5〜15ミクロン厚のフィルム)の外面と接触し、好ましくはコンフォーマル接触している。例示的な実施形態において、位相マスクと感光性樹脂のソリッドフィルムの外面との間の相互作用は、ファンデルワールス力によって促進される緊密な物理的接触を引き起こす。この簡単な処理は、感光性樹脂のソリッドフィルムの外面に対して垂直な軸に沿って原子スケール精度で位相マスクを感光性樹脂の表面に対して位置合わせする。図3の右上枠の挿入画は、ファンデルワールス‘ウェッティング’フロントが画像の上部から下部へ進行するときに集められた上側から見た顕微鏡写真を示している。数平方センチメートルにわたる完全な接触には1秒又は2秒を必要とする。
【0069】
図3の右下の枠に示されるように、電磁放射線ビームが適合可能なエラストマー位相マスクへと方向付けられる。電磁放射線がマスクを通過すると、感光性樹脂の特定の領域を電磁放射線に晒す複雑な3D強度分布が形成される。図3に示される実施形態では、感光性樹脂膜を支持するために透明ガラス基板が使用される。ガラス等の少なくとも一部が透明な基板の使用は、後方反射を最小限に抑えるため、本発明の一部の用途において有益である。透明基板の使用は本発明において必要ではないが、本発明は、部分的に反射する基板、部分的に吸収する基板、吸収性の高い基板又は反射性が高い基板の使用を含んでいる。
【0070】
電磁放射線ビームがエラストマー位相マスクを通過するときに形成される3D強度分布は、マスクの構成によって決まる。位相マスクは、明確な選択された物理的寸法、相対的方向性、屈折率及び組成を有する複数のレリーフ形態を含んでいることが有益である。また、電磁放射線ビームがエラストマー位相マスクを通過するときに形成される3D強度分布は、照射電磁放射線の波長分布、偏光、時間コヒーレンス及び空間コヒーレンスによっても決まる。照射電磁放射線の波長に匹敵する横寸法を有し且つπという高い割合で位相を変えることができる十分な深さ(すなわち、図3の左上枠の挿入画に示される深さと同様の深さ)を有するレリーフ構造は、適切なレベルのコヒーレンスを有する電磁放射線を使用してサブミクロンの周期的な3D強度分布を形成する。図3の右下枠の挿入画は、この強度分布の全ベクトルシミュレーション、すなわち、完全にコヒーレントな電磁放射線を照射したときの代表的なマスク構成を示している。スペクトルをフィルタリングしたランプ出力からの幾何学的に視準された電磁放射線は、十分なコヒーレンスを与えて、多くの感光性樹脂層の厚さ(一般的には<15ミクロン)全体にわたって高コントラストの強度分布を形成する。本発明のこの態様によれば、この種の低コスト電磁放射線源を使用して構造体を形成することができる。
【0071】
本発明においては電磁放射線のレーザ源が効果的に使用されてもよいが、本方法ではこれらは不要である。また、マスクと感光性樹脂との間のファンデルワールス結合は、照射(露光)時間が長い場合でも、これらの2つの要素の相対的な動きを縦寸法及び横寸法の両方で最小限に抑える。したがって、外部からの振動制御形態又は分離形態は本発明の方法では必要ないが、これらの形態は一部の用途においては役に立つ場合がある。したがって、光学的設備に関する要件は最小となる。位相マスクのピールバックにより露光処理が終了する。
【0072】
図3の左下の枠に示されるように、その後、適合可能なエラストマー位相マスクが取り除かれ、例えば従来の現像処理を使用して感光性樹脂膜が現像される。感光性樹脂の露光領域の光生成酸(photogenerated acids)は、高温(5〜10分間、75℃が使用された)で架橋反応を開始する。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒を用いて(又は、MicrochemCorp.から市販されている現像剤を用いて)感光性樹脂の露光されていない領域を洗い流すと、位相マスクによって形成される強度パターン(すなわち、3D強度分布)により規定される幾何学的形状を有する3Dナノ構造が得られる。本方法の例示的な実施形態では、超臨界CO2を用いて乾燥することにより、形成された3D構造から溶媒が除去される。図3の左下枠の挿入画は、本発明の方法によって形成される一般的な構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。また、現像後にこれらの構造をベーキングする(180℃で5分間)と、感光性樹脂が交差結合(架橋)され、形成される3D構造の物理的強度が高まる。
【0073】
超臨界乾燥は、脆弱な構造体の乾燥中の表面張力による破壊作用を妨げるのに有用な技術である。本発明の幾つかの方法で超臨界乾燥を使用すると、本技術によって形成される3Dナノ構造の質が顕著に高まる。これらの方法において、サンプルは、電磁放射線に晒された後、現像液(SU−8現像液、Microchem,Corp.)中で30分を越える時間にわたって現像され、新たな現像液を保持する超臨界乾燥チャンバへと受け渡される。チャンバを−10℃まで冷却した後、液体CO2が現像液上に加えられる。加熱により液体CO2をその臨界点(31.3℃、7382kPa)へともっていく。臨界点を上回るガスとしてCO2を除去することにより乾燥が終了する。
【0074】
以下の方法では、システムの光学素子を定性的に理解することができる。波長(λ)よりも小さく又は波長に匹敵するが約λ/4よりも大きい横寸法をもつバイナリ(すなわち2レベル)レリーフの形態を有するマスクを光が通過すると、マスクの表面の近傍には、(i)凹状領域及び段差縁部に深い強度最小値、(ii)凸状領域及び同じ縁部に強い強度最大値が形成される。両方の効果は、電場の連続性をマスクによってもたらされる位相のやや急激なシフトを維持する必要性から生じる。1番目は、位相誘導シャドーイングと見なすことができ、2番目は、レリーフ形態からの集束の形をとる。この振幅変調は、光が十分な空間コヒーレンス及び時間コヒーレンスを有する場合に、z軸(基板表面に対して垂直に方向付けられた軸)に沿う強度の周期的変動を引き起こす。
【0075】
他の一貫した概念的な考えは、画像形成のアッベ理論に基づいている。それは、遠距離音場で回折のように見える光がマスクの近傍の領域で重なり合ってそれ自体と干渉するときに形成する強度パターンを考慮している。この場合、マスク内の高次回折光の全内部反射に関連する絞りフィルタリング(aperture filtering)は、電場の強いx,y,z依存振幅変調を引き起こす。有限要素モデリングによって得られるマクスウェル方程式の全ベクトル解は、(遠距離音場回折光の再結合及び干渉によって予測することができない効果によって規定される)近距離音場現象が前述した殆どのシステムにおいて問題とならないことを示している。
【0076】
位相マスク等の本発明のマスク要素は、技術的に知られた任意の手段によって形成されてもよい。本発明の例示的なエラストマー位相マスクは、従来のフォトリソグラフィによって形成されるフォトレジスト(Shipley 1805)のパターン化されたラインから成るマスターに対して接触させた状態でポリジメチルシロキサン(PDMS)プレポリマー(Dow Corning Sylgard 184)を成型して硬化することによって形成される。図4は、本発明の方法において使用できるエラストマー位相マスクを形成するための例示的な方法を示す概略図である。この方法において、3Dマスターレリーフパターンは、従来のフォトリソグラフィによってフォトレジスト材料から形成される。図4に示されるように、エラストマー位相マスクは、マスター上にPDMSのプレポリマーを成型して、プレポリマーを硬化させ、マスターからエラストマー位相マスクを除去することにより形成される。位相マスクのレリーフパターンの深さは、フォトレジストの厚さを変えることにより変更される。例示的なマスクの全厚は約5mmであり、ヤング率は1〜10MPa程度である。
【0077】
一実施形態において、248nm投影モードフォトリソグラフィによりSiウエハ上にパターン化されるフォトレジス層は、本発明の位相マスクを形成するための‘マスター’としての機能を果たす。これらのウエハを小さな真空チャンバ内でパーフルオロ化された(水素をフッ素で置換した)トリクロロシラン(T2492−KG,United Chemical Technologies, Inc.)蒸気中に配置することにより当該ウエハ上に露光されたSiO2をコーティングすると、成型処理及び硬化処理中におけるウエハとシリコンエラストマーとの間の付着が防止される。2つのタイプのポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)から成る二重層構造は、比較的高さを有する形態を成すが横寸法が小さい要求の多いマスク構成を複製するために使用されてもよい。欠陥が無い表面レリーフ構造を形成するためには、特別な注意が必要な場合がある。成型は、例えば1000rpmでの40秒間のスピンキャスティングにより‘マスター’上にハイモジュラス(10MPa)型のポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)(VDT−731、HMS−301;Gelest Inc.)から成る薄膜をスピンコーティングすることによって始まる。ウエハを500rpmで30分間回転させ続けておくことにより、PDMSの均一な加湿及び部分的な架橋が可能となる。このようにすると、極めて滑らかな表面を得ることができる。他のローモジュラス(2MPa)形式のPDMS(Sylgard 184,Dow Corning Corp.)のプレポリマーを第1の層の上に注ぐと、マスクを容易に処理するための4〜5mm厚の柔軟なバッキングが形成される。二重層PDMS要素を完全に硬化させて(75℃で1時間)それを‘マスター’から剥がすと、適合可能な位相マスクが得られる。
【0078】
図5は、選択された横形態及び縦形態をもつ3D構造を製造するために必要な光学的特性を有するマスク要素を形成する例示的な方法を要約するフローチャートである。図5に示されるように、この方法は、形成される所望の3Dナノスケール構造の物理的寸法を与えるステップと、所望の3D構造を与えることができるマスク要素を形成するために必要な物理的寸法及び光学的特性を概算的に見積もるステップとを備える。この位相マスク構成によって形成される光学干渉パターンの強度分布は、位相マスク構成に対応する予測3Dナノスケール構造を形成するために計算されて使用される。予測3Dナノスケール構造の物理的寸法は、例えば従来のフィットアルゴリズムの厳密性(closeness)を使用することにより、所望の3Dナノスケール構造の物理的寸法と比較される。位相マスクの物理的寸法及び光学的特性は適宜変更される。変更された位相マスク構成に対応する予測3Dナノスケール構造も同様に形成されて所望の3Dナノスケール構造と比較される。図5に矢印で示されるように、このプロセスは、予測3Dナノスケール構造が選択された許容範囲内で所望の3Dナノスケール構造と一致するまで反復的に繰り返される。
【0079】
本発明の方法及び装置は、多数の装置のための装置部品の用途において有用な様々な3D構造、特にナノスケール構造を形成するために使用されてもよい。例えば、本方法は、1.5ミクロンの通信波長での動作のための約250nmの形態サイズを有する光結晶を形成するために使用されてもよい。例示的な実施形態において、これらの構造は、装置毎に数平方センチメートルの面積にわたって存在する。しかしながら、高スループット製造用途において、スループット及び歩留りは、直ぐに幾つかの装置に相当する面積にわたるパターン化によって利益を得る。また、本方法は、フィルタの意図する使用に応じて約100nm〜約5ミクロンの範囲の物理的寸法を有するナノ濾過膜を形成するために使用されてもよい。ナノ濾過膜を形成する例示的な方法は、個々のフィルタを形成するために細かく切断されてもよい多平方センチメートル領域の形成を伴っている。また、本方法は、数百ミクロンの面積にわたって1ミクロン超のサイズをもつ形態を有するマイクロ流体システム又はナノ流体システムのための受動ミキサを形成するために使用されてもよい。
【0080】
本明細書で使用された用語及び表現(式)は、説明の用語として使用されており、限定的用語として使用されているものではなく、また、そのような用語及び表現(式)の使用においては、図示されて説明された形態又はその一部の任意の等価物を排除しようとする意図はなく、本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが分かる。したがって、好ましい実施形態、例示的な実施形態、任意の形態によって本発明が具体的に開示されてきたが、本明細書で開示された概念の変更及び変形が当業者によって用いられてもよく、また、そのような変更及び変形が添付の請求項によって規定される本発明の範囲内にあると見なされることは言うまでもない。本明細書で与えられる特定の実施形態は本発明の有用な実施形態の例であり、当業者であれば理解できるように、本発明は、この明細書本文に示された装置、装置部品、方法ステップの多数の変形例を使用して実施されてもよい。本方法において有用な方法及び装置としては、光ファイバ素子、1/4波長板及び1/2波長板等の複屈折素子、FPエタロン等の光学フィルタ、高域カットオフフィルタ及び低域カットオフフィルタ、光増幅器、視準素子、コリメータレンズ、リフレクタ、チューブ絞り、ピンホール、モノクロメータ、プリズム、トリガパルス発生器、レーザ、局部発振器、回折格子、集光レンズ及びリフレクタ等の集光素子、リフレクタ、偏向器、光ファイバ結合器及び送信器、温度コントローラ、温度センサ、光学的パラメトリック増幅器、非線形結晶、音響光学変調器、広帯域光源及び狭帯域光源を含む多数の任意の装置要素及び部品を挙げることができる。
【0081】
この出願で挙げられている全ての引用文献は、それらがこの出願の開示内容と矛盾しない程度まで、その全体を参照として本明細書に組み込まれる。当業者であれば理解できるように、本明細書に具体的に記載されたもの以外の方法、装置、装置要素、材料、手続き、技術は、過度の実験に依存することなく、本明細書に広く開示された本発明の実施に適用することができる。本明細書に具体的に記載された方法、装置、装置要素、材料、手順、技法等の技術的に知られた全ての機能的等価物は、この発明によって包含されるものである。
【0082】
実施例1:マイクロ流体チャンネル内に組み込まれるナノ多孔質フィルタの製造
3Dナノ構造の実質的有用性は、それらの機械的堅牢性と、機能的な装置を製造するためにマイクロシステム、ナノシステム及び/又は大型部品内に組み込むことができる能力とに大きく依存している。本方法及び本装置によって形成されるナノ構造の効用を評価するために、ナノ多孔質フィルタが形成されてマイクロ流体システム内のマイクロ流体チャンネル内に組み込まれた。有用な3Dアノ構造を形成できる本発明の方法及び装置の能力は、構成されたナノ多孔質フィルタの良好な機械的特性及びフィルタリング性能を明らかにすることにより検証された。
【0083】
これらの特徴を示すため、複数の3Dナノ構造を備える3Dナノ構造フィルタ要素が形成されるとともに、流体の流れからサブミクロン粒子を分離するために当該3Dナノ構造フィルタ要素がマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた。この研究で使用される適合可能な位相マスクは、740nmの直径、420nmのレリーフ深さ、43%のデューティサイクルを有するレリーフ形態の正方形配列(丸みを帯びた正方形)を備える。ナノ多孔質フィルタが形成されるとともに、2段階の露光プロセスを使用して当該ナノ多孔質フィルタがマイクロ流体チャンネル内に組み込まれた。第1のステップはチャンネル構造を規定するために使用され、第2のステップは、位相マスク及び200μmの幅広スリットを介した露光によりナノ多孔質フィルタを備える3D構造をパターン化するために使用された。
【0084】
図6A〜Lは、本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造フィルタの走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。図6Aは、組み込まれたナノ多孔質フィルタを有するY接合チャンネル(チャンネル幅:100μm)を45°傾けた図を示している。図6Bは、マイクロ流体チャンネル内に組み込まれたナノ多孔質フィルタの拡大走査型電子顕微鏡写真を示している。図6Bに示されるように、ナノフィルタを備える3D構造の上端は、チャンネル壁の上端面と揃えられている。図6Cはチャンネルの端部近傍の領域の拡大図を示している。図6Dは、3Dナノ多孔質フィルタによってフィルタ処理された500nm粒子(F8812、FluoSpheres,Molecular Probes)を示している。図6D,6F,6Hにおいては、見易くするためにビーズに陰がつけられている。図6Eは、ナノ多孔質フィルタを備える3D構造の上端面の拡大図を示している。この図において、矢印は、ほぼ100nmのナノ構造を特定している。図6Fは、図6Dに示された画像の拡大図を示している。図6Gは、0.02%ビーズから成る含水懸濁物質をチャンネル内に3μl/分の割合で流すという実験条件に対応する画像を示している。流れ方向が図6Gに矢印で示されている。図6Hは、ナノ多孔質フィルタの端部に対応する図6Gに示される画像の選択された領域の拡大画像を示している。図6Gに示されるように、ビーズはフィルタの左側に残っており、したがって、ビーズのフィルタリングを示している。
【0085】
ナノフィルタを備える3D構造の最小部分でさえ、水溶液のウェッティング及びディウェッティングに対して及び加圧流体に対して機械的に堅牢であると観察された。このフィルタを通じてポリスチレンビーズ(500nm径)の懸濁液を流すことにより、ビーズではなく流体をナノ孔に通すことができる。この図の一部6D,6F,6Hの走査型電子顕微鏡写真は、構造によるビーズの閉塞(観察に資するべく、この画像では人工的に赤く着色されている)を示している。図の一部6Gにおける光学画像は、浮遊ビーズを有する濁った流体をフィルタの左側に示しており、ビーズの無い透明な流体を右側に示している。流れは左から右へ向かっている。
【0086】
本実施例で使用されるSU8等の放射線感応材料の現像液による膨張は、ガラス基板からの層間剥離を引き起こす場合がある。また、ガラス基板とSU−8層との間の接着力が、熱膨張係数の差及び超臨界乾燥ステップ中の熱循環により増大する熱応力に耐えられるほど十分に強くない場合もある。これらの問題を回避するため、本発明者らは、ガラス上に回転成型されて投光露出(flood expose)されたSU−8から成る5μm厚の膜を備える感光材料層を使用する。この層は、パターン化されたSU8層の基板に対する接着力を効果的に高めるとともに、処理中のあらゆる時点における層間剥離を防止した。この第1の均一な層を堆積させる前に、本発明者らは、最初に、O2反応性イオンエッチングを用いて5分間カバーガラス(コーニング)基板を処理する(30mTorr、100W、Uniaxis 790シリーズ)。反応性イオンエッチングの直後、5ミクロン厚のSU−8膜がスピコーティングされて(3000rpm、30秒間)、ソフトベーク処理される(5分、95℃)。その後、SU−8膜は、投光露出(200mJ/cm2)された後、180℃で5分間ハードベーク処理される。この膜の表面は、その後、ガラスを形成するために使用される同じ反応性イオンエッチングステップに晒される。3DパターニングのためのSU8層は、この既存のSU8膜上に回転成型により塗布される。この厚い(25ミクロン)層を回転成型してソフトベーク処理する際、しばしば、位相マスクと膜とのコンフォーマル接触を低下させた顕著なエッジビード(すなわち、基板の縁部近傍の厚い領域)を観察した。このエッジビードは、良好な接触を得るためにアセトンを用いて注意深く除去された。超臨界乾燥に関与する熱循環を回避するための他の方法は、現像されたサンプルをそれが未だ濡れているときに溶媒へと移動させることである。この他の方法で使用できる溶媒としては、エタノール、Hexa Methyle D1 Silazane(HMDS)、又は、表面張力エネルギが低い溶媒が挙げられる。この実施形態において、溶媒を現像液と置き換えて、サンプルが現像液中に浸漬されるときに膨張を最小限に抑える。サンプルを室温で乾燥すると、良好な3D構造が得られる。しかしながら、ある場合には、この他の処理ステップは、超臨界乾燥処理されたサンプルと比べて僅かに劣悪な構造を形成する。この他の方法を使用して形成された構造は、フィルタリング用途及び/又はミキシング(混合)用途を含むマイクロ流体の用途に対して十分に適用できる。
【0087】
Y接合マイクロ流体構造の形成は、チャンネルの幾何学的構成を有する振幅マスクを通じた露光から始まる。組み込まれる3Dナノ多孔質フィルタを形成するため、本発明者らは、200μm幅のスリットを有する振幅マスクを薄い(2mm)位相マスクの裏面に接触させる。この複合マスクを基板に接触させて再び露光すると、チャンネルのうちの1つに200μmの長さの領域に3Dパターン化された区域が形成される。現像後、SU8構造は、プラズマクリーナ(Harrick Scientific,Corp.)を用いて処理されるとともに、同じプラズマクリーナを用いて処理されたPDMSの平坦な断片に接触して配置される。サンプルを10分間70℃で加熱すると、PDMSとSU8との間に強い結合が形成される。この結合ステップにより、流体と共に取り込まれて圧送可能な密閉マイクロ流体システムの形成が完了する。構造全体は光学的に透明であり、それにより、光学顕微鏡を用いて簡単に見ることができる。水性懸濁物質の充填、圧送又は乾燥に起因する3D構造の劣化は観察されない。
【0088】
実施例2:本発明の位相マスクによって形成されるナノ構造及び強度分布のモデリング計算
図7A〜Lは、本発明の方法を使用して、大きな面積にわたって形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及びモデリング結果(挿入画を参照)を示している。これらの方法は、用途が非常に広く、様々な位相マスクタイプ、光学的配置、可視レーザ光や紫外線レーザ光及びフィルタ銀ランプ等の光源と共に使用されてもよい。厳密結合波解析は、枠7H,7I,7Jを除き、挿入画に示されるようにいずれの場合にも計算された強度分布を規定している。枠7H,7I,7Jは、これらの場合における厳密結合波解析の過度な計算の必要性を回避するために、フラウンホーファ解析を使用して決定された。モデリング結果及び走査型電子顕微鏡写真の定量的解析は、計算された強度分布と本発明を使用して形成された3Dナノ構造の形状との間の良好な一致を示している。
【0089】
モデリングは、画像形成におけるアッベ理論の概念と共に厳密結合波解析(RCWA)を使用する。特に、全ベクトル計算は、マスクを通じた透過後に遠距離音場に現れる回折ビームの強度及び位相を決定する。これらのビームを数値的に再結合すると、マスクの表面から離れた任意の位置で強度分布が得られる。この手法は近距離音場を無視している。しかしながら、2次元マスク(すなわち、ライン及び空間を持つマスク)のためのマクスウェル方程式の全ての解の個々の有限要素計算によれば、これらの効果が特定の状況においては重要となり得るが、ここで考慮される全てのケースでこれらの効果を無視できることが分かる。
【0090】
図7のパネルA〜Lは、本発明の方法及び装置を使用して形成された代表的な3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。図7A〜Lの挿入画は、対応する計算された光学的強度分布を示している。1例を除き、全てのケースにおいて、使用された適合可能な位相マスクは、異なる直径(d)、レリーフ深さ(rd)、デューティサイクル(dc)、断面形状(すなわち、円、正方形など)をもつ孤立した凸状の形態から成る正方形格子の幾何学的形状を成す表面レリーフを有していた。図7A〜7Dにおけるレリーフパターン寸法は、d=375nm、rd=420nm、dc=35%、及び、円形状である(位相マスク1)。図7Eと7Fにおけるレリーフパターン寸法は、d=570nm、rd=420nm、dc=50%、及び、円形状である(位相マスク2)。図7G−7Jにおけるレリーフパターン寸法は、d=1000nm、rd=420nm、dc=40%、及び、略正方形である(位相マスク3)。図7K−7Lにおけるレリーフパターン寸法は、ライン(300nm幅)及び空間のレリーフ形態であり、rd=310nm、dc=50%である(位相マスク4)。全てのケースにおける感光性樹脂層は、約10ミクロンの厚さを有していた。水銀ランプのフィルタ処理された365nmの光出力が使用された図7Dの構造及びArイオンレーザからの514nm光が使用された図7Fの構造を除き、Nd:YAGレーザの3出力(355nm)は全てのケースにおいて露光用の光を供給した。
【0091】
図7Aは、位相マスク1を使用して位相マスクのサイズのみによって限定される大きな面積にわたってパターン化された3Dナノ構造を示している。図7Bは、図7Aに示された構造の(110)断面図を示している。図7Cは同じ構造の平面図を示しており(赤色の矢印は、幅が約100nmの構造を示している)、図7Cの挿入画は、計算された光学的強度分布を示している(図7Cの挿入画の矢印は、露出光の偏光方向を示している)。図7Dは、マスク1を使用して形成された3Dナノ構造の(100)断面図、及び、従来の水銀ランプからの365nm輝線のフィルタ処理された出力を示している。図7Dの挿入画に示され且つ完全なコヒーレンスをとる計算された光学的強度分布は、この構造の形状を正確にとらえている。
【0092】
図7Eは、位相マスク2を使用して形成された構造及び355nm光を示している。図7Fは、514nmレーザ光を用いて位相マスク2により形成された構造を示しており、図7Fの挿入画は、対応する計算された強度分布を示している。計算された強度分布に存在するこの構造の上端層は、下側に位置する構造に対するその薄い接続形態に起因して剥離する。図7Gは、位相マスク3を使用して形成された構造を示しており、図7Hは、この構造の傾斜(100)面の拡大図を示している。図7Hの挿入画に示される計算された強度分布は、ポストの中央を切断した断面に対応している。図7Iは、図7G及び7Hに示される構造の上面の拡大図を示しており、図7Iの挿入画は、対応する計算された強度分布を示している。図7Jは、この構造の下面の画像を示しており、図7Jの挿入画は、対応する計算された強度分布を示している。図7Kは、位相マスク3を使用して形成された密閉ナノチャンネルの積層体の画像を示している。図7Kにおいて、偏光方向は(矢印で示されるように)ラインと平行である。図7Lは、図7Kの構造の拡大断面図を示しており、図7Lの挿入画は、対応する計算された強度分布を示している。図7Lの挿入画に示されるモデリング結果は、この構造の観察された幾何学的構成と良好な一致を示している。
【0093】
適合可能な位相マスクを形成するソフトリソグラフィ成型処理及び硬化処理は、これらの光学素子及びこれらの光学素子から形成される対応する強度分布の設計において高いフレキシビリティを付与している。本発明の方法では、図7A〜Lに示される構造の形成のために使用される周期的なレリーフパターンを有する位相マスクに加えて、非周期的なレリーフパターンを有する位相マスクが使用されてもよい。図8A〜Lは、特別に設計された適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、及び、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。示されている結果は、円柱から成る正方形格子内に‘欠陥’構造(すなわち、欠けているポスト)を含むマスクに対応している。共焦点顕微鏡写真で集められた一連の画像は、この高分子ナノ構造の3D形状全体を明らかにしている。フラウンホーファ回折理論を使用する簡単なモデリングの結果をもって、極めて良好な一致が観察される。光学のこのレベルの理解は、選択された所望の幾何学的構成に近づける強度分布を形成するための専用のマスクの設計への道を明らかにする。
【0094】
図8Aは、孤立し欠けているポストを有する位相マスク1を使用して形成された3Dナノ構造の表面の走査型電子顕微鏡写真を示している。図8Bは、図8Aに示された構造を形成するために使用される位相マスクの上から見た走査型電子顕微鏡写真を示している。図8Cは、欠けているポスト(すなわち、欠陥構造)から遠い位置yで撮られた構造のx−y平面の共焦点顕微鏡写真を示している。図8Dは、欠陥の場所で集められた同様の画像である。図8Dの挿入画は対応するモデリング結果を示している。この場合、破線は、欠陥伝播及びモデリングされた共焦点像の対応する領域を示している。図8E−Lは、x−y平面の共焦点像及び400nm(図8E及び図8F)、1.5μm(図8G及び図8H)、6μm(図8I及び図8J)、9μm(図8K及び図8L)のz−深さにおけるモデリングを示している。
【0095】
階段関数カットオフフィルタを計算された強度分布に対して適用すると、架橋プロセス及び現像プロセスに近づけるための簡単な方法が得られる。そのようなフィルタを用いると、高分子ナノ構造の予測上の幾何学的構成と観察上の幾何学的構成との間で量的な一致を得ることができる。図7A〜Lに示されるように、相互に嵌合した円柱構造から、複雑な構造の中空のポストの配列、密閉ナノチャンネルの積層体へと及ぶパターンが正確に形成されてモデリングされてもよい。感光性樹脂の非線形応答は、深いサブ波長スケール構造の形成において役立つことができるが、システムの材料性状(例えば、光形成酸の拡散、結果として得られる構造の機械的安定性)は、ある場合には、得られる分解能を制限する場合がある。図7A〜Lの構造において、最も詳細な形態(すなわち、ポスト径、線幅;赤色矢印参照)は、約100nmの直径を有しており、また、あるケースでは、50nm程度の形態が得られる場合もある。
【0096】
感光性樹脂中の露出光の波長(また、ある程度、処理条件)は、最も高い空間周波数を決定する。所与の位相マスクにおいて、緑(アルゴンイオンレーザからの514nm)光(図7f)で露光された膜は、紫外光(図7e)で露光された膜よりも構造が細かくないパターンを生じる。紫外線レーザ光(Nd:YEGレーザからの355nm3出力)を用いて形成されたパターンは、(直径が3mmで長さが17cmのブラックチューブを通過することにより)幾何学的に視準され且つそれとなく波長の差によって完全に決定付けられる場合があるスペクトル的にフィルタ処理された(365nmに中心付けられた2nm帯域幅;ASC i−ラインフィルタ、オメガオプティカル社)従来の水銀ランプ(HBO 350W Mercury Lamp,OSRAM.Lamp 87230,Oriel Instruments)の出力を用いて形成されたパターンとは異なっている。ランプからのフィルタ処理された光の部分コヒーレンス(この場合において、時間コヒーレンス長は約20□mである)の影響は、調査した全てのケースで無視できる。
【0097】
実施例3:本方法で使用される電磁放射線の空間及び時間コヒーレンスの選択的変化
多数の製造用途において有用な本発明の実施形態では、形成される3D構造の重要な構造的特徴、例えばナノスケール及び/又はマイクロスケール形態が局在化される3D構造の領域を制御するため、本方法で使用される電磁放射線の空間コヒーレンス及び/又は時間コヒーレンスが選択的に調節される。空間及び/又は時間コヒーレンスの選択的変化によって成される制御は、本発明のこれらの方法では、様々な用途、装置、装置構成、装置環境において選択された構造的特徴を最適化するために使用される。
【0098】
一実施形態において、放射線感応材料と光通信を行うマスク要素へと方向付けられた電磁放射線の時間及び/又は空間コヒーレンスは、形成される構造の別個の領域、例えばマスク要素の近傍に位置付けられる放射線感応材料の部分に対応する構造の領域に局在化される複数のナノスケール又はマイクロスケール形態を備える3D構造を形成することが選択される。本発明のこの実施形態は、形成された構造の全体にわたっては最後までは延びないナノスケール及び/又はマイクロスケール形態を備える別個の領域を有する3D構造を形成することができる。したがって、本発明のこの態様は、複数のナノスケール及び/又はマイクロスケール形態を有する第1の部分と、そのような形態が実質的に無い領域を備える第2の部分とを備える3D構造を形成する場合に役立つ。
【0099】
本発明のこの態様で使用される電磁放射線の時間コヒーレンスの選択的変化は、マスク要素へと方向付けられる電磁放射線の入射ビームの適切な帯域幅の選択によって行われる。一実施形態において、マスク要素に入射する電磁放射線の帯域幅は、フェブリペロ光学干渉フィルタや高域カットオフフィルタと低域カットオフフィルタとの組み合わせなどの光学フィルタ、プリズム、回折格子、モノクロメータなどの分散素子、或いは、これらの任意の組み合わせを使用して選択される。図9Aは、本発明の構造を形成する方法において電磁放射線の時間コヒーレンスを制御するための例示的な光学的配置600を示している。図9Aに示されるように、第1の時間コヒーレンスを有する電磁放射線605は、電磁放射線源610により形成されるとともに、光学干渉フィルタ(例えばフェブリペロフィルタ)などの光学フィルタ615を通過する。電磁放射線が光学フィルタ615を通過すると、電磁放射線ビームの帯域幅(Δλ)が変化し、それにより、基板635上の放射線感応材料630とコンフォーマル接触する位相マスク625上へと方向付けられる選択された時間コヒーレンスを有する電磁放射線620が形成される。入射電磁放射線の帯域幅の変化は、本方法では、例えばビームの伝播軸と垂直な軸を中心に光学干渉フィルタを回転させることにより或いはモノクロメータにおける入口及び/又は出口絞り(開口)の直径などの物理的寸法を選択的に調節することにより時間コヒーレンスを選択的に変化させ或いは「調節する」ために使用される。
【0100】
本発明のこの態様で使用される電磁放射線の空間コヒーレンスの選択的な変化は、電磁放射線源とマスク要素との間に位置付けられたレンズ、コリメーションチューブ、スリット及び/又はピンホールなどの視準光学素子により電磁放射線の入射ビームの入射角度範囲を選択的に調節することによって行うことができる。この実施形態におけるマスク要素に対するレンズ素子の位置又は開口(絞り)の物理的寸法の変化は、本発明では、空間コヒーレンスを選択的に変え又は「調節する」ために使用することができる。図9Bおよび図9Cは、本発明の構造を形成する方法において電磁放射線の空間コヒーレンスを制御するための例示的な光学的配置を示している。図9Bに描かれる光学的配置700に示されるように、第1の空間コヒーレンスを有する電磁放射線705は、電磁放射線源710によって形成されるとともに、電磁放射線ビームを集光するレンズ素子715を通過する。素子715によって行われる集光は、選択された時間コヒーレンスを有する電磁放射線720を形成する。その結果、電磁放射線は、基板735上の放射線感応材料730とコンフォーマル接触する位相マスク725を通過するときに僅かに集束される。図9Cに描かれる光学的配置800に示されるように、第1の空間コヒーレンスを有する電磁放射線805は、電磁放射線源810によって形成されるとともに、電磁放射線ビームの発散を増大するレンズ素子815を通過する。素子815によって成されるビーム発散の選択的な調整により、選択された時間コヒーレンスを有する電磁放射線820が形成される。その結果、電磁放射線は、基板835上の放射線感応材料830とコンフォーマル接触する位相マスク825へと方向付けられて通過する際に僅かに発散される。
【0101】
本発明のこの態様の一実施形態において、電磁放射線の入射ビームの時間コヒーレンス、空間コヒーレンス、又は、これらの両方は、放射線感応材料の厚さ全体にわたって延在しないナノスケール及び/又はマイクロスケール形態を有する3D構造を形成するために選択される。この実施形態における時間コヒーレンス、空間コヒーレンス、又はこれらの両方の選択は、ナノスケール及び/又はマイクロスケール構造が局在化される構造の領域の物理的寸法を選択するために使用することができる。例えば、本発明は、形態が構造の上側半分、1/3、1/4に局在化される3D構造であって、そのような形態が実質的に無い領域も備えている3D構造を形成するために使用することができる。本発明のこの態様の一部の実施形態において、局在化された形態を有する領域は、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲にわたって選択された厚さを有する。本発明のこの実施形態は、マイクロ流体装置、マイクロ電子機器装置、ナノ電子機器装置、又は、光システムなどの装置又は装置部品中に容易に組み込むことができる3D構造を形成する場合に特に有用である。例えば、これらの方法によって形成される構造は、形態が実質的に無い領域と接触することによりナノスケール及び/又はマイクロスケール形態を損傷させることなく容易に操作できる。また、形態が実質的に無い領域の露光面は、装置又は装置部品中へ構造を組み込むための結合面として有効に使用することができる。
【0102】
本発明のこの態様の他の実施形態において、電磁放射線の入射ビームの時間コヒーレンス、空間コヒーレンス、又は、これらの両方は、形成された構造の第1の領域内のナノスケール及び/又はマイクロスケール形態から形態が実質的に無い形成された構造の第2の領域へと向かう緩やかな連続的移行を有する3D構造を形成するために選択される。この文脈において、表現「連続的移行」とは、形態の密度が高い領域からそのような形態が実質的に無い或いは形態の密度が低い領域への形態密度変化のことである。高密度の形態を有する第1の領域から低密度の形態を有する或いは形態が実質的に無い第2の領域へのそのような連続的移行を有する構造の利点は、そのような構造が機械的堅牢性を高め、したがって、形態が応力下で壊れ或いは劣化する可能性が高くないということである。また、第1の領域から第2の領域へのそのような連続的移行を有する構造は、機能的特性を高めることができる。また、空間及び/又は時間コヒーレンスの選択又は調節は、連続移行領域内での形態密度勾配(又は傾き)を選択する手段も与える。したがって、それにより、ナノスケール形態又は構造の密度が放射線感応材料の厚さに応じて僅かに変化する小さな形態密度勾配によって特徴付けられる構造、および、ナノスケール形態又は、構造の密度が放射線感応材料の厚さに応じてやや急激に変化する大きな勾配によって特徴付けられる構造の形成が可能となる。
【0103】
図10Aおよび図10Bは、本発明によって形成された構造中の形態を含む層の厚さに対する空間コヒーレンスの選択的調整の影響を示している。この構造は、広帯域光源と、2ナノメートルに等しい半値全幅を有する光学フィルタと、約10ミクロンの厚さを有する層を備える放射線感応材料とを使用して形成された。2つの開口(絞り)直径は、この実施例では、電磁放射線の入射ビームの空間コヒーレンスを選択するために使用された。3ミリメートル径は図10Aに示される構造において使用され、7ミリメートル径は図10Bに示される構造において使用された。図10Aに示されるように、3ミリメートル径の開口を使用すると、10ミクロン層の全体にわたって延びる形態によって特徴付けられる構造が形成された。一方、図10Bに示されるように、7ミリメートル径の開口を使用すると、2つの領域、すなわち、高密度の形態を有する第1の領域と、形態が実質的に無い第2の領域によって特徴付けられる構造が形成された。図10Bに示される3D構造を形成するために使用される電磁放射線ビームの空間コヒーレンスの選択は、第1の形態を含む領域の厚さの制御を行った。図10Bにも示されるように、この構造の形態の密度は、構造の表面の高密度領域から形態が実質的に無い第2の領域へと連続的に変化するように観察された。図10Cは、放射線感応材料の深さ全体にわたって延在しない局在化されたナノスケール形態を有する本発明の方法により形成された他の構造の電子顕微鏡写真を示している。
【0104】
前述したように、例えばコヒーレンス長などの照射(露光)電磁放射線の特性の制御は、本発明の方法によって形成される構造の幾何学的構成を調整する感度の高い(感応)手段を与える。例えば、処理を受ける放射線感応材料(例えば感光性樹脂)の厚さよりも実質的に長いコヒーレンス長が選択されると、放射線感応材料の厚さ全体にわたり強度分布において良好なコントラストが得られる。一方、放射線感応材料の厚さよりも小さいコヒーレンス長が選択されると、膜の上側の領域(すなわち、コンフォーマル接触状態の位相マスクの近傍領域)だけが3D構成へと構造化される。これらの方法において、膜の下側部分は均一に硬化される。この固体の下層は、その上側の3D構造のための支持体としての機能を果たすとともに、下側の基板に対して強力に接着するための層としての機能を果たす。この能力は、機械的に堅牢な装置を得るための幾つかの用途において重要である。ランプからの光のコヒーレンス長は、波長の範囲(時間コヒーレンス)を調整するためのフィルタを使用して、及び/又は、入射角度の広がり(空間コヒーレンス)を制御するための簡単な視準光学素子(すなわち、中空チューブ、絞り、又は、レンズ)を使用することにより容易に制御することができる。本発明のこの態様は、本発明によって形成できる構造のタイプにおいてフレキシビリティを高める。
【0105】
実施例4:マイクロ流体用途における受動流体混合装置の形成
本方法及び装置によって形成されるナノ構造の有用性を評価するため、ナノ構造化された受動混合装置(passive mixing device)が形成されてマイクロ流体システムのマイクロ流体チャンネル内に組み込まれた。有用な3Dナノ構造を形成できる本発明の方法および装置の能力は、ナノ構造化された受動混合装置の良好な機械的特性および流体混合特性を明らかにすることによって検証した。
【0106】
本発明のこれらの特徴を示すため、複数の3Dナノ構造を備える3Dナノ構造化された受動流体混合要素が形成されるとともに、2つの流体流れを組み合わせて混合するために、当該受動流体混合要素がマイクロ流体システムの複数のチャンネル内に組み込まれた。効果的な流体混合を引き起こすように2つの別個の流体をナノ構造化された受動流体混合要素を通じて流した。流体混合用途において3Dナノ構造を備えるナノ構造化された受動流体混合要素を使用すると、これらの構造によって長い有効流体経路長が得られるため、特に有益である。
【0107】
図11は、本発明の方法によって形成され且つマイクロ流体システム中に組み込まれるナノ構造化された受動流体混合要素の光学顕微鏡写真を示している。図11に示されるように、純粋な流体流れが第1のマイクロ流体チャンネル(上側のチャンネル)内で形成されるとともに、着色流体流れが第2のマイクロ流体チャンネル(下側のチャンネル)内で形成されている。純粋な流体流れ及び着色流体流れはそれぞれナノ構造化された受動流体混合要素内に別個に導入される。両方の流体流れは、混合されることにより、ナノ構造化された受動流体混合要素から出て第3のマイクロ流体チャンネル(右へ向かうチャンネル)を通過する完全に混合された成分を形成する。図11Bは、受動流体混合要素が存在しない場合の混合度合いを示している。図11Cは、受動流体混合要素が存在する場合の混合度合いを示している。図11Bと図11Cとを比較すると、混合要素内での着色流体分布の大幅な空間的変化によって示されるように、本発明のナノ構造化された受動流体混合要素が高い流体混合度を与えることが分かる。また、本発明のナノ構造化された受動流体混合要素は、有用な流体流量および動作時間の範囲において構造的劣化を殆ど受けず或いは全く受けない。
【0108】
実施例5:光バンドギャップ材料およびフォノニックバンドギャップ材料の形成
光バンドギャップ材料およびフォノニックバンドギャップ材料は、半導体のエレクトロニクスの光子の特性と同様のレベルで光子の特性を制御できるため、研究団体の注意を引き付け続けている。光バンドギャップ材料および装置の分野における最も大きな課題の1つは、これらのシステムにおいて必要とされる3Dナノ構造のクラスを形成できる高スループット、大領域、低コスト製造技術の欠如である。半導体産業によって開発された高度な技術的方法は、これらの材料を形成するにはあまり適していない。これは、それらのパターニング能力が本質的に2次元(2D)だからである(すなわち、これらの方法は、超平坦面上で薄い材料層をパターン化する)。3D構造の製造には、多くの2Dパターニングステップを連続的に適用する必要があり、これは厄介であり遅い。また、この方法をかなりの数のパターン層において適用することは、最も高度で高価な設備を用いた場合であっても難しい場合がある。これらの限界により、現在、光バンドギャップ材料およびフォノニックバンドギャップ材料の製造において、高スループットの大領域製造方法が必要とされている。
【0109】
本発明の方法は、様々な光バンドギャップ材料およびフォノニックバンドギャップ材料を備える3D構造および装置の低コストで高スループットな製造に良く適しているため、この長い間にわたる切実な技術的必要性を満たす。特に、本方法によって形成される3D構造の物理的寸法の高い感度での制御は、有用な範囲の光学特性を有するフォトニック構造およびフォノニック構造を形成できる能力を与える。これらの材料および装置の製造において本発明の方法を適用する場合には、放射線感応材料とコンフォーマル接触して位置付けられるその表面上にエンボス加工されたレリーフのサブ波長形態を有する適合可能な位相マスクが利用される。本技術の利点は、全ての光学的要素がこの単一の光学素子中に組み込まれ、それにより、適合可能な位相マスクとパターン化される放射線感応材料の層との間にファンデルワールス相互作用を作り上げることで正確な光学アライメントが可能になるという点である。その結果として得られるこれらの要素間のコンフォーマル接触は、振動に対して耐久性の高い実験設備を与える。また、この実験設備は光学アライメントのための特定の処置を全く必要とせず、処理のために低コヒーレンス露光源を使用することができ、また、接触モード操作により分解能を非常に高くすることができる。本技術の他の利点は、適合可能な位相マスクの設計におけるフレキシビリティにより、欠陥構造および非周期的(すなわちチャープ)形態を容易に組み入れることができるという点である。
【0110】
フォトニック材料およびフォノニック材料の製造に対して本発明を適用するには、大きなバンドギャップを有する構造を生じさせる位相マスクを設計する必要がある。屈折率が十分に大きく変動する場合にはダイヤモンド格子構造がそのようなギャップを形成することは良く知られている。正方晶対称で層状正方対称な構造も良好なバンドギャップ特性を有し得る。適切な高さ(透過光の位相をπだけ変える場合に適する高さ)及び充填率(約50%)をもつ正方形配列のポスト(または穴)を有する位相マスクは、周期性によって決定される発散角度と同時に4つの同一平面内回折次数を形成する。ゼロ次を含む5ビーム構成は、体心正方晶構造をもつ強度分布を形成することができる。この簡単な対称性を有する位相マスクを使用すると、c/a格子定数比率が1.2に近い場合、光フルバンドギャップ(PBG)を有する構造が得られる。
【0111】
また、立方対称または六方対称の格子を形成できる六角形配列のポストを備える構造も、本発明を使用して形成することができる有用なフォトニック材料およびフォノニック材料である。そのようなマスクを用いて形成された7ビーム構成は、互いに上下に重ね合わされて互いに剛体回転する2つの面心立方格子から成る構造をもたらす。ダイヤモンド構造は、2つの重ね合わされた剛体並進を伴う面心立方格子として解釈することができる。両方の構造は、周期的な配列の正方晶形状のビルディングブロックから成る。周期性の高いこの種の配列の単位格子によれば、それらがダイヤモンドのレイアウトであろうと7ビーム構成によって形成されたレイアウトであろうと、バンドギャップを大きくすることができる。
【0112】
規則的で完全に周期的なバンドギャップ構造に加え、本方法は、例えば明確な点欠陥または線欠陥や、連続的に変化する周期性(すなわち、チャープ)などの非周期的な構造も形成することができ、更に多くの他の可能性をも有している。図12Aは、一例として、欠けているポストを備える孤立した欠陥を有する位相マスクの走査型電子顕微鏡写真を示しており、図12Bは、この位相マスクを使用して結果として形成された3D構造を示している。適切な構成の「マスター」により或いは空間的に変化するマスク自体の機械的圧縮によりこれらのタイプのマスクをチャープできることによって、広帯域操作を用いてバンドギャップ構造を形成することができる。また、振幅変調成分をマスクに対して加えることもでき、また、位相変調の深さを制御することもできる。
【0113】
最終的な検討は、エラストマーマスクの機械的安定性、および、良好な長い範囲の空間コヒーレンスを有する構造を形成できるエラストマーマスクの能力である。過去の研究によれば、そのようなマスクをモールドとして使用することにより形成される分布帰還型レーザ格子の周期の変化は数平方センチメートルにわたって0.1%程度であることが分かっている。このレベルの歪みは、本発明の多くの用途において十分である。しかしながら、本発明は、PDMSから成る薄層がガラスまたはハイモジュラス高分子バッキング(裏当て材)に対して成型された複合要素を備える位相マスクを使用する実施形態を含んでいる。そのような複合要素を備える位相マスクは、コンフォーマル接触を確立する際に、PDMSだけを使用する場合よりも小さい歪みを示す。
【0114】
フォトニック材料およびフォノニック材料を形成する場合に役立つ例示的な位相マスクは、エラストマーポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS;Sylgard 184, Dow Corning)から成り、ソフトリソグラフィ成型および硬化処理を使用して簡単に低コストで形成される。これらのプロセスにおいて「マスター」としての機能を果たす構造は、投影モードフォトリソグラフィを使用してシリコンウエハ上でフォトレジストをパターニングすることにより形成される。感光性樹脂から成る固体薄膜などの放射線感応材料との接触時、表面力、例えばファンデルワールス型の相互作用により生じる表面力は、外部から力が加えられることなく、マスクを高分子の表面と原子スケール接触させる。この受動プロセスは、ナノメートル精度の光学アライメントを垂直方向でもたらす。マスクを通過する光は、感光性樹脂をその厚さ全体にわたって露光する3D強度分布を形成する。概念的には、この強度分布は、回折によって生じたビームのマスク表面近傍での空間的な重なりによって形成されるものとして説明することができる。マスクを除去するとともに、露出光により架橋されない高分子の部分を現像して取り除くと、形態サイズが50nm程度の強度分布の幾何学的構成を成す3Dナノ構造が得られる。高分子の露光はマスクの表面の近傍で起こるため、本発明者らは、この技術を近接場ナノパターニング方法と称することにする。以下の結果においては、感光性樹脂(SU−8、Microchem Corp.)から成る固体薄膜(約10μm厚)が使用された。
【0115】
サンプルの現像には、乾燥に伴う毛管力による構造の損傷を避けるため、および、結果として得られる構造の機械的堅牢性を最大にするために特別な注意が必要とされる。したがって、一部の実施形態においては、表面エネルギが低い流体を使用することが好ましい。また、超臨界乾燥(SCD)は、本方法において質の高い構造をもたらす。例示的な実施形態において、湿ったサンプルは、現像液から純粋なエタノールへと移され、その後室温で乾燥される。
【0116】
位相マスクの幾何学的構成は、結果として得られる3D構造を規定する。重要な設計要素としては、2D格子定数、デューティサイクル(すなわち、形態サイズ)(dc)、レリーフ深さ(rd)、レリーフ形態の形状およびサイズが挙げられる。4つの異なる位相マスクを使用することにより、この実施例で報告された構造を形成した。
マスク1:円形ドット(d=375nm)、dc=35%、rd=420nm
マスク2:円形ドット(d=570nm)、dc=50%、rd=420nm
マスク3:円形ドット(d=410nm)、dc=26%、rd=520nm
図13A〜Dは、本方法を使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。図13Aは、355nmの波長を有する電磁放射線に晒されたマスク1を使用して形成された構造を示している。図13Bは、514nmの波長を有する電磁放射線に晒されたマスク2を使用して形成された構造を示している。図13Cおよび図13Dは、810nmの波長を有する電磁放射線に晒されたマスク3を使用して形成された構造を示している。
【0117】
本形成方法は、単光子吸収プロセスおよび多光子吸収プロセスによる架橋重合反応などの放射線感応材料内での化学反応の光開始に対して適用できる。単光子開始重合反応および多光子開始重合反応の両方は、この実施例では、ナノスケール形態を備える3D構造を形成するために使用される。多光子吸収を使用する形成方法において、1kHzの繰返し率で再生的に振幅されるTi:サファイアレーザからの810nmの130フェムト秒(fs)パルスは、これらの実験で使用されるSU−8感光性樹脂の2光子閾値を満たすために使用される。各パルスのエネルギは約250μJであり、これは、直径が約500μmの円形のスポットサイズが使用されるときに2GWに近いピークパルス電力を引き起こす。一般的な露光時間は30秒〜240秒の範囲である。ビームは、1/4波長板を用いて円偏光されるとともに、ダイアモンドピンホールを用いて空間的にフィルタ処理された。多光子開始光化学を使用すると、感光性樹脂内で多光子吸収プロセスを促進させることができる十分に高い光子強度で、更に狭い空間分布に起因して形成される形態の分解能が高められる。
【0118】
本形成方法は、画像形成におけるアッベ理論の概念とともに厳密結合波解析(RCWA)を使用する成型の研究によって数値評価された。特に、位相マスク透過後に遠距離音場内に現れる回折ビームの強度および位相を決定するために、市販のソフトウェアパッケージ(Gsolver, Grating Solver Development Company)を用いた全ベクトル計算が使用される。これらのビームを数値的に再結合すると、マスクの表面から離れた任意の位置で強度分布が得られる。本発明に関与する同一平面上にない5つ以上のビームは、各ビームの偏光および位相に関して十分に考慮する必要がある。このモデリング方法は、この近接場ナノパターニング方法により形成できる3D構造を解析するための重要なツールである。しかしながら、このモデリング手法は近距離音場効果を無視している。しかしながら、2次元マスク(すなわち、ラインおよび空間を持つマスク)のためのマクスウェル方程式の全ての解の別個の有限要素計算によれば、これらの効果が特定の状況においては重要となり得るが、ここで考慮される全てのケースでこれらの効果を無視できることが分かる。
【0119】
位相マスクは、zに沿って最小値および最大値が周期的に現れる変調を電場内に形成する。z深さに沿う格子の自己画像形成(すなわちタルボット効果)は、この効果に関与している。タルボット距離は格子周期性および入射波長の関数である。この方程式は画像形成のアッベ理論の点から得ることができる。これは、画像形成に関与する次数が波長およびマスク周期性に依存する回折角度を有するからである。端数のタルボット距離は、同一平面内の回折次数間の相互作用によって理解することができる。正方形配列のドットを有するマスクの場合には、0次および1次以外の次数を無視できる程度に発散角度が十分に大きいと、5ビーム干渉から最も簡単な3D周期構造(すなわち、体心正方晶)を期待することができる。
【0120】
光源のスポットサイズおよび位相マスクのサイズだけがパターン化された領域のサイズを制限する。厚さが最大で100μmの3Dナノ構造化された膜を得ることができ、構造的一体性および感光性樹脂の光学的吸収だけがこの厚さを制限する。この新規な方法は、大領域で迅速かつ低コストな3Dナノパターニング−他の周知の技術において現在欠如している能力− のための一般的なプラットフォーム技術として非常に期待できる。
【0121】
本方法は、露出光と感光材料との多光子相互作用によって構造を形成できる能力を有する。例えば、通常は(すなわち、線形方式)紫外線(UV)領域でのみ感度があるSU−8感光性樹脂に基づく市販の感光性樹脂は、約800nmの波長を有する十分に強い露出光における2光子効果により架橋することができる。図14Aおよび図14Bは、本発明の多光子処理方法によって形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。これらの構造は、SU−8感光性樹脂に対して照射される電磁放射線の線源として増幅されたフェムト秒レーザを使用して形成された。多光子吸収プロセスによって開始される化学反応により構造を形成できる本発明の能力は重要である。これは以下の理由による。すなわち、(1)紫外線の透過における要件が緩和されるため、本発明と共に使用できる材料の範囲を拡大できるからであり、(2)更なる格子定数を得ることができるからである。例えば、この能力により、紫外電磁放射線はあまり透過しないが電磁スペクトルの可視領域において光を透過する放射線感応材料を使用できる。また、本方法を用いる多光子パターニングが非常に簡単で且つ実験装置の変更を要さないという点に留意することは重要である。従来の干渉リソグラフィによって同様の露光を行うことは実質上不可能である。その理由は、従来の干渉リソグラフィは、複数のビームの経路長を数十ミクロン内に合わせる必要があるからである。
【0122】
この近接場ナノパターニング技術と他の従来の或いは従来でない手法とを組み合わせると、カプラ、導波管、他の装置などのミクロンおよびミリメートルスケールの要素内に3Dナノ構造を組み込むことができる。図15Aおよび図15Bは、一例として、レリーフを感光性樹脂の表面中に直接的にモールドするため、また、このナノファブリケーション方法によりフォトプロセスを行うために位相マスクを使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。この場合、レリーフは、ミクロン幅および深さの隆起部上にある正方形配列のサブミクロンポストから成っていた。そのようなエンボス加工された構造をフラッド露光すると、感光性樹脂自体が3Dナノ構造および当該構造を支持する最終成型構造を形成するための光変調を行う構造が形成される。この手法を用いると、導波管や機能的なシステムのために必要な他の結合・調節装置内に3Dバンドギャップ構造を組み込むことが容易になる。
【0123】
また、本発明はマスクレスリソグラフィ形成方法も含んでいる。これらの方法において、レリーフパターニング要素(例えば、本発明の適合可能な位相マスクまたは押し込み具)は、選択されたレリーフパターンを、処理を受ける放射線感応材料の露光面上に直接的にエンボス加工するために使用される。1つの実施形態において、例えば、選択されたレリーフパターンを有する位相マスクなどのレリーフパターニング要素は、物理的に変形可能な状態で存在する放射線感応材料と接触される。2つの要素間の接触は、選択されたレリーフパターンを放射線感応材料の表面上にエンボス加工し或いは成型する。その後、パターニング要素を取り除き、放射線感応材料を電磁放射線に晒して現像すると、選択されたパターンのナノスケール形態がエンボス加工された構造の下側に位置付けられる1つ以上の領域が形成される。これらの方法において、エンボス加工されたレリーフパターン自体は、放射線感応材料の大部分の内部で選択された強度分布および偏光状態を有する適切な光学干渉パターンを形成するための位相マスクとして機能する。本発明のこの方法の利点は、露光後に位相マスクを除去するための余計な工程が避けられるという点であり、これは、位相マスクを放射線感応材料から分離する際にもたらされる機械的応力を回避する場合に有利である。また、本発明のマスクレスリソグラフィ形成方法によって形成される構造は、狭帯域光学フィルタまたはスーパースリムホログラフィック相関計において重要である。更に、これらの方法は、湾曲面上に3次元構造を形成する場合に役立つ。これは、適合可能な位相マスクなどのレリーフパターニング要素の湾曲可能な性質が、これらの面でのマイクロまたはナノ押し込み(圧痕)を助けるからである。また、本発明のマスクレスリソグラフィ形成方法は、位相マスクの濡れ性が低い場合及び/又は位相マスクと放射線感応材料との間で十分な接触を得ることが困難である場合に有効な方法である。
【0124】
また、成型され或いはエンボス加工されたレリーフパターンを有する放射線感応材料と光通信を行う位相マスクの使用も、様々な構造を形成するための本発明の有用な方法を与える。これらの実施形態では、位相マスクの光学的特性と成型され或いはエンボス加工された放射線感応材料の領域とを組み合わせることにより、放射線感応材料内に形成される光学干渉パターンを構成する強度および位相の分布が決定される。図16A−Cは、選択されたレリーフパターンを有する位相マスクが放射線感応材料のエンボス加工されたレリーフパターンとコンフォーマル接触した状態で位置付けられる本発明の方法における構造およびステップを示している。図15Aに示されるように、マイクロ成型は、ドットの圧痕を備えるエンボス加工されたレリーフパターンを形成するために使用される(図16Aの上側のパネル)。このエンボス加工されたレリーフ構造は、実質的にコヒーレントな電磁放射線が照射される感光性樹脂上の位相シフト要素としての機能を果たす。その後、放射線感応材料が現像され、その結果、図16Aの下側のパネルに示される構造が得られる。次に、ラインおよび空間が放射線感応材料に押し込み形成(圧痕形成)される(図16Bの上側および下側のパネルを参照)。位相マスクは、放射線感応材料の圧痕構造の上端とコンフォーマル接触した状態で位置付けられるとともに、電磁放射線に晒される。図16Cの上側のパネルは、溝内で位相シフトディンプル要素により多層位相マスクを形成し(上側のパネル)、その後、それを放射線感応材料に対して押し込むステップを示している。電磁放射線に晒した後に現像して形成される最終的な構造が図16Cの下側のパネルに示されている。
【0125】
この近接場ナノパターニング技術は、一般的には3Dナノ構造において、特にフォトニックバンドギャップ材料において、従来の製造技術を凌ぐ多くの利点を与える。固有の利点の多くは、感光材料に対する適合可能な回折光学素子の直接的なコンフォーマル接触に基づくものである。この構成は、振動に耐え、欠陥構造の処理および組み込みを容易にするとともに、光学的設備を簡略化する。透明な感光性樹脂における1光子露光を用いたその動作に加え、この実施例で与えられる結果は、2光子処理方法の実現可能性を明らかにしている。これらの能力および他の能力により、この近接場ナノパターニング方法は、以前に検討されなかった幾何学的構成をもつ有用なフォトニック構造およびフォノニック構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1A】光学干渉パターンを使用して3Dナノスケール構造を形成するための例示的な方法及び装置を示す概略図であり。
【図1B】対称的なパターンのレリーフ形態を備えるレリーフパターンを示す本発明の位相マスクの拡大図を示している。
【図2】放射線感応材料が電磁放射線源とマスク要素との間に位置付けられる本発明の方法において有用な光学的配置を示す概略図である。
【図3】基板表面上にナノスケール構造を形成するための本発明の例示的な方法におけるステップを示す概略図を示している。
【図4】本発明の方法において使用できるエラストマー位相マスクを形成するための例示的な方法を示す概略図である。
【図5】選択された縦及び横の物理的寸法を有する3D構造を形成するために必要な光学的特性を有するマスク要素を形成する例示的な方法を要約するフローチャートである。
【図6A】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6B】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6C】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6D】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6E】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6F】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6G】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6H】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図7A】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7B】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7C】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7D】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7E】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7F】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7G】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7H】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7I】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7J】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7K】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7L】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図8A】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8B】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8C】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8D】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8E】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8F】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8G】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8H】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8I】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8J】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8K】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8L】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図9A】本発明の構造を形成する方法において電磁放射線の時間コヒーレンスを制御するための例示的な光学的配置を示している。
【図9B】本発明の構造を形成する方法において電磁放射線の空間コヒーレンスを制御するための例示的な光学的配置を示している
【図9C】本発明の構造を形成する方法において電磁放射線の空間コヒーレンスを制御するための例示的な光学的配置を示している。
【図10A】本方法によって形成される構造中の形態を含む層の厚さに対する空間コヒーレンスの選択的調整の影響を示す3D構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図10B】本方法によって形成される構造中の形態を含む層の厚さに対する空間コヒーレンスの選択的調整の影響を示す3D構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図10C】本方法によって形成される構造中の形態を含む層の厚さに対する空間コヒーレンスの選択的調整の影響を示す3D構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図11】本発明の方法によって形成され且つマイクロ流体システム中に組み込まれるナノ構造化された受動流体混合要素の光学顕微鏡写真を示している。
【図12A】欠けているポストを備える孤立した欠陥を有する位相マスクの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図12B】この位相マスクを使用して形成された3D構造を示している。
【図13A】本方法を使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。355nmの波長を有する電磁放射線に晒された実施例5のマスク1を使用して形成された構造を示している。
【図13B】本方法を使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。514nmの波長を有する電磁放射線に晒された実施例5のマスク2を使用して形成された構造を示している。
【図13C】本方法を使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。810nmの波長を有する電磁放射線に晒された実施例5のマスク3を使用して形成された構造を示している。
【図14A】本発明の多光子処理方法によって形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図14B】本発明の多光子処理方法によって形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図15A】レリーフを感光性樹脂の表面中に直接的にモールドするため、また、このナノファブリケーション方法によりフォトプロセスを行うために位相マスクを使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図15B】レリーフを感光性樹脂の表面中に直接的にモールドするため、また、このナノファブリケーション方法によりフォトプロセスを行うために位相マスクを使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図16A】マイクロ成型を使用して多層位相マスクを形成することにより放射線感応材料のフォトプロセスを行う本発明の方法における有用な構造及びステップを示している。
【図16B】マイクロ成型を使用して多層位相マスクを形成することにより放射線感応材料のフォトプロセスを行う本発明の方法における有用な構造及びステップを示している。
【図16C】マイクロ成型を使用して多層位相マスクを形成することにより放射線感応材料のフォトプロセスを行う本発明の方法における有用な構造及びステップを示している。
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、本明細書に開示された内容と矛盾しない範囲でその全体を参照として本明細書に組み込まれる2003年12月1日及び2004年8月2日にそれぞれ提出された米国仮特許出願第60/526,245号及び第60/598,404号に対するU.S.C.119(e)に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ナノ科学及び技術の進歩は、ナノメートル法における長さ、高さ、幅などの選択された物理的寸法を有する形態を備える構造を形成するための技術に益々依存している。遠紫外線投影モードリソグラフィや電子ビームリソグラフィなどのマイクロエレクトロニクス産業から出現した方法は、超平坦ガラス又は半導体の表面上に2次元(2D)ナノ構造をパターン化に十分適したものである。しかしながら、これらの手法の焦点深度は限られているため、市販化できない場合、ナノテクノロジーの多くの分野において重要な3次元(3D)ナノ構造のタイプを直接的に形成することは、興味をかき立てられる取り組みである。これらの方法の適用可能性を広げるため、犠牲レジストを2Dパターニングして、機能材料を現像するとともに、それらをエッチング又は研磨して、犠牲層を除去することを含むステップを繰り返し適用して使用する間接的な3Dナノ構造形成方法が開発されてきた。しかしながら、これらの方法は、一般に、精巧な設備を必要とするとともに、かなりの数の層を要する構造において実施することが困難である。これらの十分に認識された限界の結果として、現在、様々なナノ構造を形成することができる高スループットで低コストな形成方法の要求がある。
【0003】
最近、3Dナノ構造を形成する新たな方法が開発されてきている。コロイド沈殿、高分子相分離、テンプレート成長、流体自己組織化、マルチビーム干渉リソグラフィに基づく方法、及び、印刷、成型、書き込みに基づく様々な手法は全て、様々なクラスのナノ構造を形成する場合に役立つ。それにもかかわらず、これらの技術は、幾何学的構成、物理的寸法、それらが形成できるパターンのサイズにおいて、ある限界を有する。例えば、2光子リソグラフィは、印象的な様々な構造を形成することができるが、その逐次操作により、広い基板領域をパターン化すること或いは多数の構造を形成することが困難であり労力を要する。
【0004】
また、ホログラフィ法及びフォトリソグラフィ法も、構造を形成する場合に役立つ方法を与える。パターン及び構造を形成するための例示的な方法は、Campbell,M.,Sharp,D.N.,Harrison,M.T.,Denning,R.G.及びTurberfield,A.J.による“Fabrication of Photonic crystals for the visible spectrum by holographic lithography”(Nature,Vol.404,53〜56頁(2000))、及び、Rogers,J.A.,Paul,K.E.,Jackman,R.J.及びWhitesides,G.M.,による“Generating 〜90 nanometer features using near field contact mode photolithography with an elastomeric phase mask”(J.Vac.Sci.Technology.B,Vol.16(1),59〜68頁(1998))に記載されており、これらの内容の全体は、この明細書本文と矛盾しない範囲で、参照として本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、3D構造及び3D構造のパターンを形成するための方法、装置、装置部品を提供する。本発明の目的は、明確な選択された物理的寸法を有する3D構造、特に数十ナノメートル数千ナノメートル程度の少なくとも1つの物理的寸法を有する複数の明確な形態を備える構造を形成するための方法を提供することである。本発明の更なる目的は、3D構造及び3D構造のパターン、特にレーザ又は多数の光学コンポーネントを必要としない簡単な光学的配置を利用するナノスケール形態を備える3D構造を形成するための効果的な方法を提供することである。本発明の更に他の目的は、幅広い範囲の有用な3D構造、例えばナノスケール形態の対称的なパターン、ナノスケール形態の非対称的なパターン、1つ以上の制御された欠陥部位を有するナノスケール形態のパターン、深さ依存性に応じた形態の選択された密度を有するナノスケール形態のパターンを備える3D構造を形成することができる多目的な製造方法を提供することである。
【0006】
本発明は、基板上、装置上、装置部品上又は基板内、装置内、装置部品内に3D構造及び3D構造のパターンを形成することができる方法、装置、装置部品を提供する。一実施形態において、本発明は、少なくとも1つのナノスケールの物理的寸法を有する複数の独立した3D構造を備えるパターンを形成するための方法を提供する。他の実施形態において、本発明は、ナノスケール形態を含む所定の形態のパターンを備える1つ以上の単一3D構造を形成するための方法を提供する。本発明の方法によって形成される3D構造及び3D構造の形態は、様々な形状、例えば立方体、列、リボン、ポスト(柱)、直方体、及び、様々な物理的寸法、例えば数十ナノメートル数千ナノメートルの範囲の高さ、長さ、幅、半径、曲率半径を有していてもよい。本発明の方法は、互いに対して選択された方向、配置、位置を有する複数の形態を備える複雑な3D構造及び3D構造のパターンを形成することができる。本発明の方法は、例えば軟質プラスチック、ガラス、セラミック、炭質、金属、ナノ金属等の一連の化学的組成を有する基板、及び、平面、湾曲面、凸面、凹面、平滑面、粗面を含む一連の物理的な幾何学的構成及び形態を有する基板上に3D構造及び3D構造のパターンを形成することができる。本発明の方法及び装置は、例えばマイクロ電子機器システム、ナノ電子機器システム、マイクロ流体システム又はナノ流体システムの選択された領域内で製造し、組み立て、及び/又は、組み込むなど、装置又は装置部品の少なくとも部分的に透明な領域内に3D構造及び3D構造のパターンを製造し、組み立て、及び/又は、組み込む(集積する)ことができる。1つ以上の制御された欠陥部位を有する3D形態のパターンを含む3D形態の周期的パターン又は非周期的パターンを備える3D次元構造が本発明の方法及び装置によって形成される。本発明の方法は、簡単で低コストな実験設備、例えば低圧水銀ランプ等の従来の狭帯域ランプとエラストマー位相マスク等のマスク要素とを備える実験設備を使用して非常に広い基板領域を効果的にパターン化することができる。
【0007】
本発明で使用される光学的配置の実験的容易性、及び、形成できる様々な3D構造は、3Dナノパターニングに対するこの手法の2つの魅力的な特徴である。本発明の方法によって形成される3D構造及び構造のパターンは、多種多様な材料タイプをパターン化する手段を与えるための犠牲テンプレートとして機能してもよい。本発明の方法及び装置の用途としては、ナノ技術、光通信、光バンドギャップ材料、検出、クロマトグラフィのためのカラム材料、担体、燃料電池、医療フィルタ、マイクロエレクトロニクス、マイクロ流体工学、ナノ流体工学、マイクロ電子機器システム、ナノ電子機器システム、サブ波長光学フィルタ、極薄ホログラフィック相関計、センサ用の高表面積素子、薬剤送達、湿潤現象を制御するためのナノ構造化された表面、情報記憶が挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
一態様において、本発明は、放射線感応材料を化学的及び/又は物理的に改質するために電磁放射線強度及び偏光状態の十分に特徴付けられた3D分布を有する光学的干渉パターンが使用される、3D構造又は3D構造のパターンを形成するための方法を提供する。1つの例示的な実施形態においては、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームが形成され、この電磁放射線ビームは、放射線感応材料と光通信した状態で、位相マスク等のマスク要素へと方向付けられる。電磁放射線をマスク要素に通過させると、光学干渉を受けた異なる伝播軸に沿って伝播する複数の電磁放射線ビームが形成され、これにより、放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成される。有用な実施形態においては、マスク要素及び放射線感応材料が直接的な光通信状態にあり、それにより、マスク要素によって形成される複数の電磁放射線ビームは、放射線感応材料中で電磁放射線ビームの方向を決め及び/又は当該ビームを合成するための集光レンズ等の更なる光学コンポーネントを使用することなく、放射線感応材料へと方向付けられて合成され、光学干渉を受ける。電磁放射線と放射線感応材料との相互作用は、放射線感応材料の全体にわたって選択的に分布される化学的又は物理的に改質された領域を形成する。一実施形態において、電磁放射線と放射線感応材料との相互作用は、1つ以上の3D構造を直接的に形成する。本発明の他の有用な実施形態においては、化学的又は物理的に改質された領域の少なくとも一部を除去することにより、或いは、化学的又は物理的に改質されていない放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、例えば電磁放射線を用いた処理後に放射線感応材料を現像することにより、1つ以上の3D構造が形成される。場合によって、本発明の方法は、更なるステップ、すなわち、(1)電磁放射線に対する露光中にマスク要素と放射線感応材料との間のコンフォーマル(conformal;等角)接触を確立して維持するステップ、(2)実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームのマスク要素に対する視準の程度(例えば、空間及び/又は時間コヒーレンス長)を選択するステップのうちの一方又は両方を更に備えていてもよい。
【0009】
本発明のマスク要素は、電磁放射線強度及び偏光状態の選択された明確な空間的分布を有する光学干渉パターンを与えるように、伝えられる電磁放射線(透過電磁放射線)の強度、マスク要素によって形成される電磁放射線ビームの数及び伝播方向、伝えられる電磁放射線の位相、伝えられる電磁放射線の偏光状態、又は、これらのパラメータの任意の組み合わせを選択的に調整する。例示的なマスク要素は、位相マスク、振幅変動光学素子、偏光変動素子、ビームスプリッタ及び/又はこれらの要素(素子)の様々な機能を組み合わせた単一光学素子を備える。本発明のマスク要素によって形成される光学干渉パターンは、放射線感応材料の選択された領域を化学的及び/又は物理的に改質する化学反応を光開始するために使用される。化学反応の光開始は、放射線感応材料内での単光子吸収プロセス、多光子吸収プロセス、又は、単光子吸収プロセス及び多光子吸収プロセスの両方の組み合わせの結果であってもよい。化学的又は物理的改質の程度及び局在性は、主に、放射線感応材料と相互作用する電磁放射線の強度及び偏光状態の3D空間分布によって決まる。したがって、電磁放射線の強度及び偏光状態の明確な空間分布を有する光学干渉パターンを形成することができるマスク要素を使用すると、放射線感応材料の化学的に改質された領域の3D空間分布を正確に制御することができる。本発明の能力によれば、選択された十分に特徴付けられる物理的寸法を有する形態を備える3D構造を形成することができる。また、本発明のこの態様によれば、高い精度で選択された相対的な方向、配置及び位置を有する複数の形態を備える3D構造及び3D構造パターンを形成することができる。
【0010】
本発明の3D干渉パターンを備える電磁放射線の強度分布、偏光状態分布又はこれらの両方は、光干渉法及びホログラフィ等の技術的に知られた任意の手段によって選択的に調整されてもよい。本発明のマスク要素によって形成される電磁放射線の強度及び偏光状態を選択的に調整する例示的な手段としては、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム又は実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの選択された成分の位相、伝達強度、伝播方向、ビーム数及び/又は偏光状態の操作が挙げられるが、これに限定されない。他の実施形態では、放射線感応材料内の電磁放射線の強度及び/又は偏光状態分布を制御して選択するために、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの時間及び/又は空間コヒーレンスが操作される。
【0011】
本発明の例示的な実施形態において、マスク要素によって伝えられる(透過される)電磁放射線の位相は、マスク要素又はマスク要素の領域の光学的厚さの選択により制御される。例示的なマスク要素は、選択された光学的厚さの2次元分布によって特徴付けられる。光学的厚さは、マスク要素又はマスク要素の領域の屈折率及び/又は組成の変化によって選択されてもよい。或いは、光学的厚さは、マスク要素又はマスク要素の領域の物理的厚さの変化によって選択されてもよい。例示的な実施形態において、マスク要素は、所望の3D形状又は構造に対応する光学干渉パターンを形成するために選択されるレリーフパターンによって与えられるような光学的厚さの2次元分布を有する少なくとも部分的に透明な位相マスクである。例示的なレリーフパターンは、放射線感応材料の接触面と接触した状態、例えばコンフォーマル接触した状態で位置付けられるマスク要素の接触面上に配置される。本発明の例示的なレリーフパターンは、1つ以上の選択された物理的寸法、例えば長さ、幅、高さ、半径、周期性を有するレリーフ形態のパターンを備え、又は、マスク要素を通過する光の波長に相当するレリーフ形態の周期性を備える。
【0012】
また、本発明は、マスク要素によって伝えられる(透過される)電磁放射線の強度がマスク要素又はマスク要素の領域の吸収特性、散乱特性又は反射特性の選択によっても制御される方法及び装置も含んでいる。例示的な実施形態において、マスク要素は、選択された吸収係数、吸光率、反射率、又は、こられのパラメータの任意の組み合わせの2次元分布によって特徴付けられ、それにより、所望の3D形状又は構造に対応する光学干渉パターンを与えるために選択される照明時に伝えられる電磁放射線強度の2次元分布をもたらす部分的に透明な光学素子である。本発明のこの態様において、マスク要素の選択された領域によって伝えられる電磁放射線は、吸収材料、散乱材料及び/又は反射材料をマスク要素中に組み入れることにより減衰されてもよい。例えば、マスク要素の選択された領域によって伝えられる(透過される)電磁放射線の強度は、入射する電磁放射線を反射し、散乱し、吸収する薄い金属、半導体又は誘電体膜等の薄膜を組み込むことによって選択されてもよい。薄い金属膜などの振幅変調要素を位相マスクの表面に加えて、反射基板を利用すると、本発明によって形成することができる3D構造のタイプに更に高いフレキシビリティが付与される。本発明の例示的な実施形態において、マスク要素は、マスク要素の1つ以上の面上に2次元パターン又は3Dパターンを備える薄膜を有する。例示的な薄膜としては、
約10nm〜約100nmの範囲にわたって選択された厚さを有する1つ以上の蒸着された薄い金膜が挙げられるが、これに限定されない。約80nm未満の厚さを有する薄い金膜では、入射する電磁放射線が部分的に透過され、また、約80nmを上回る厚さを有する金膜では、入射する電磁放射線が完全に吸収され、散乱され、及び/又は、反射される。
【0013】
放射線感応材料の大部分の内部で選択された方向及び位置の光学干渉パターンを与えるため、本発明のマスク要素及び放射線感応材料は互いに対して光学的に位置合わせされることが好ましい。放射線感応材料に対する光学干渉パターンの方向及び位置の制御は、所望の3D形状を有する構造を形成するために役立つとともに、良好な配置精度をもって、基板上又は装置上或いは基板内又は装置内に3D構造を与える(例えば、組み込む又は組み立てる)ために役立つ。マスク要素の外面と放射線感応材料とを明確な相対的方向で位置合わせすることができる任意の手段により、光学的な位置決めが行われてもよい。透過モードでは、マスク要素及び放射線感応材料が光学的に位置合わせされ、それにより、マスク要素によって伝えられる電磁放射線は、放射線感応材料内に選択された光学干渉パターンを形成する。このため、透過モードにおいて、光学干渉パターンは、マスク要素を通じた電磁放射線の透過により放射線感応材料内に形成される。反射モードでは、マスク要素と放射線感応材料とが光学的に位置合わせされることにより、マスク要素によって反射される電磁放射線が、放射線感応材料内に選択された光学干渉パターンを形成する。このため、反射モードにおいて、光学干渉パターンは、マスク要素による電磁放射線の反射により放射線感応材料内に形成される。また、本発明は、マスク要素を通じた電磁放射線の透過とマスク要素による電磁放射線の反射との組み合わせにより光学干渉パターンが放射線感応材料内に形成される実施形態も含んでいる。
【0014】
例示的な実施形態において、マスク要素及び放射線感応材料の1つ以上の接触面は、コンフォーマル接触状態にあり、好ましくは原子スケール(<5nm)のコンフォーマル接触状態にある。この説明の文脈において、用語「接触面」とは、互いに接触しているマスク要素及び放射線感応材料の表面のことである。マスク要素の少なくとも一部と放射線感応材料の少なくとも一部との間のコンフォーマル接触は、良好なパターン鮮明度及び分解能を有する3D構造を形成するために必要な処理中にこれらの要素の選択された光学アライメントを確立して維持する有効な手段を与える。放射線感応材料の表面とのコンフォーマル接触を確立することができるマスク要素の使用は、本発明において有用である。これは、これらの要素のコンフォーマル接触により、光学アライメントが縦方向(すなわち、マスク要素に入射する電磁放射線ビームの伝播軸と平行な軸に沿う方向)でナノメートル精度をもって成されるからである。また、マスク要素の少なくとも一部と放射線感応材料の少なくとも一部との間でコンフォーマル接触を確立すると、3D構造を基板上に或いは装置内に良好な配置精度をもって組み立て、組み込み、或いは、位置決めする有効な手段が得られる。また、本発明のコンフォーマル接触を使用すると、実験設備内での振動に対して耐久性の高い光学アライメントが得られる。
【0015】
コンフォーマル接触は、2つの要素を結びつけるファンデルワールス力、双極子間力、水素結合及びロンドン力などの分子間引力が形成されるように処理を受ける放射線感応材料とマスク要素(又は、その上のコーティング材)とを互いに十分に近接させることにより行われてもよい。「コンフォーマル接触」とは、マスク要素と放射線感応材料との光学アライメントを作り上げて、確立して、維持するために役立ち得る表面及び/又はコーティングされた表面間で確立される接触のことである。一態様において、コンフォーマル接触は、放射線感応材料の表面、例えば処理を受ける放射線感応材料の平坦面、平滑面、粗面、輪郭面(輪郭付けられた表面)、凸面、凹面の形状全体に対する位相マスク等のマスク要素の1つ以上の接触面の巨視的適合を伴う。他の態様において、コンフォーマル接触は、隙間の無い緊密な接触をもたらす放射線感応材料の表面の形状全体に対する位相マスク等のマスク要素の1つ以上の接触面の微視的適合を伴う。コンフォーマル接触という用語は、リソグラフィ及び材料科学の技術でのこの用語の使用と一致するべく意図されている。
【0016】
一実施形態において、本発明のマスク要素は、処理を受ける放射線感応材料の1つ以上の平面とのコンフォーマル接触を確立できる。また、本発明のマスク要素は、処理を受ける放射線感応材料の1つ以上の輪郭面、例えば湾曲面、凸面、凹面や、隆起、チャンネル又は他のレリーフ形態をその上に有する表面とのコンフォーマル接触を確立することもできる。柔軟でローモジュラスな高弾性材料、例えばエラストマーを備えるマスク要素の使用は、輪郭付けられた表面(輪郭面)上に3D構造を形成する場合に有益である。これは、そのような材料が、処理を受ける放射線感応材料の表面形態の少なくとも一部に適合できるからである。コンフォーマル接触は、位相マスク等のマスク要素の1つ以上の露出した接触面と放射線感応材料の1つ以上の面との間で確立されてもよい。或いは、コンフォーマル接触は、位相マスク等のマスク要素の1つ以上のコーティングされた接触面と放射線感応材料の1つ以上の面との間で確立されてもよい。エラストマー及びエラストマー成分を有する複合多層構造を備えるマスク要素の使用は、様々な放射線感応材料とのコンフォーマル接触を確立するための一部の用途において特に有益である。
【0017】
例示的な光学アライメント(光学的位置合わせ)の仕組みは、位相マスク等のマスク要素のレリーフ形態に対応する複数の不連続な接触面と放射線感応材料の表面との間でコンフォーマル接触を与える構成を含んでいる。また、本発明は、位相マスク等のマスク要素のレリーフ形態に対応する単一の連続な接触面が放射線感応材料の表面とコンフォーマル接触する光学アライメント方式を含んでいる。本発明において、マスク要素及び放射線感応材料の接触面は、処理を受ける放射線感応材料の表面とマスク要素との間で選択されたアライメントを行うために役立つ相補的アライメントチャンネル及び/又は溝等の特定のレリーフパターを有していてもよい。当業者であれば理解できるように、そのような「ロック・アンド・キー」アライメント機構、チャンネル、溝、システムの使用は、マイクロファブリケーション及びナノファブリケーションの技術分野において十分に知られており、本発明のマスク要素に容易に組み入れることができる。アライメントチャンネル及び/又は溝を備えるアライメント機構の使用は、基板上に3D構造を形成する場合に有益であり、或いは、良好な配置精度をもって、3D構造を装置内に組み込む場合に有益である。また、アライメント機構の使用は、基板上(又は装置内)に3D構造を配置する際に熱膨張及び/又は熱収縮に起因して生じる狂いを最小限に抑える場合に有益である。
【0018】
本発明は、マスク要素及び放射線感応材料の接触面の平行な光学アライメントを使用する方法及び装置を含んでいる。また、本発明は、マスク要素及び放射線感応材料の接触面の非平行アライメントを使用する方法及び装置を含んでいる。例示的な実施形態では、選択された非平行な方向性を与えるため、マスク要素と放射線感応材料との間に、楔、斜面、スペーサ、又は、これらの任意の等価物が設けられてもよい。また、本発明は、十分に特徴付けられた相対的方向でマスク要素及び放射線感応材料を保持することができる外部光学アライメントシステムによって行われる光学アライメントを含んでいる。
【0019】
例示的な実施形態において、マスク要素と放射線感応材料との光学アライメントは、電磁放射線に対する露光時間の全般にわたって一定に保持される。放射線感応材料の表面との良好なコンフォーマル接触を確立できる材料を備えるマスク要素、例えばエラストマー位相マスクの使用は、フォトプロセス(光学処理)時間の全般にわたってこれらの要素の縦及び横方向の光学アライメントを一定に維持する場合に特に有益である。しかしながら、本発明は、高い精度をもって選択された物理的寸法及び組成を有する最適化された3D構造を得るために製造中にマスク要素及び放射線感応材料の光学アライメントが選択的に調整(又は調節)される方法及び装置も含んでいる。
【0020】
本発明の3D構造製造方法は、実質的にコヒーレントな電磁放射線を使用する。本発明において、用語「実質的にコヒーレントな電磁放射線」とは、本発明の方法及び装置によって形成される3D構造を備えるナノスケール形態等の構造的形態の厚さ以上のコヒーレンス長を有する電磁放射線のことである。本発明の一部の用途において、実質的にコヒーレントな電磁放射線は、本発明の方法及び装置によって形成される3D構造を備えるナノスケール形態等の構造的形態の厚さの少なくとも約10倍のコヒーレンス長によって特徴付けられることが好ましい。一実施形態において、「実質的にコヒーレントな電磁放射線」とは、処理を受ける放射線感応材料の厚さ以上のコヒーレンス長を有する電磁放射線、好ましくは一部の用途においては処理を受ける放射線感応材料の厚さの約10倍を超えるコヒーレンス長を有する電磁放射線のことである。この明細書本文の文脈において、「放射線感応材料の厚さ」とは、電磁放射線ビームの伝播軸と平行な軸に沿って延びる放射線感応材料の層の物理的寸法に対応している。実質的にコヒーレントな電磁放射線は、時間コヒーレンス及び空間コヒーレンスに関して特徴付けられてもよい。本発明の一部の用途において有用な実質的にコヒーレントな電磁放射線は、約100ミクロン以上の時間コヒーレンス長によって特徴付けられる。本発明の一部の用途において有用な実質的にコヒーレントな電磁放射線は、空間的にコヒーレントな電磁放射線ビームによって特徴付けられる。
【0021】
時間コヒーレンス長は、所定の電磁放射線ビームの帯域幅に反比例するとともに、以下の方程式により帯域幅に関して表わされてもよい。
時間コヒーレンス長=λcenterx[λcenter/(π)(Δλ)] (I)
ここで、λcenterは中心波長であり、Δλは電磁放射線ビームの帯域幅である。したがって、ある状況では、本発明の方法及び装置において有用な電磁放射線を帯域幅に関して特徴付けることが有益である。狭帯域幅によって特徴付けられる電磁放射線ビーム、例えば約365nmに等しい中心波長と約4nm以下の半値全幅(FWHM)帯域幅とを有するビームは、本発明の方法及び装置において有用な実質的にコヒーレントな電磁放射線を与える。
【0022】
また、本発明は、本方法によって形成される3D構造における構造的形態の空間的分布及び/又は密度を制御するために電磁放射線の空間コヒーレンス、時間コヒーレンス、又は、これらの両方が選択される(或いは、選択的に調整される)実施形態を含んでいる。幾つかの実施形態において、空間及び/又は時間コヒーレンスは、ナノスケール及び/又はマイクロスケール形態が局在化される3D構造の領域のサイズを制御するために選択される。例えば、本発明は、3D形態が局在化される放射線感応材料とマスク要素との間の界面近傍の領域のサイズを制御するために電磁放射線ビームの空間及び/又は時間コヒーレンスが選択される製造方法を含んでいる。本発明のこの態様は、例えば放射線感応材料の接触面に局在する感光材料を介して部分的にのみ分布される複数のナノスケール形態を有する3D構造を形成する場合に特に有益である。感光材料を介して部分的にのみ分布される複数のナノスケール形態を備える本方法によって形成される3D構造は、一部の装置用途に十分に適する構造的堅牢性等の機械的特性を有するとともに、これらの構造を所定範囲の装置構成内に有効に組み込むことができる。そのようなコヒーレンス調節方法によって形成される3D構造の有益な構造的特性は、複数のナノスケール形態を備える領域と下側に位置する固体領域との間の連続的な界面に起因している。
【0023】
本発明において有用な電磁放射線源は、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給できる任意の電磁放射線源を含んでいる。本発明において有用な例示的な電磁放射線源としては、低圧水銀ランプ、亜鉛ランプ、電磁放射線の発光ダイオード源又はレーザ源などの狭帯域の電磁放射線源が挙げられる。この説明の文脈において、用語「狭帯域の電磁放射線源」とは、更なる光学的なフィルタリングを伴うことなく本発明の方法において電磁放射線を使用できるようにコヒーレンス長、空間コヒーレンス長及び/又は時間コヒーレンス長を有する電磁放射線を与える帯域幅を有する電磁放射線源のことである。本発明の方法において使用できる例示的な狭帯域の電磁放射線源は、365nmの中心波長及び4nmの帯域幅を有する電磁放射線源である。当業者であれば容易に理解できるように、狭帯域の電磁放射線源における帯域幅要件は、中心周波数、形成される3D構造の物理的寸法及び/又は放射線感応材料の厚さに伴って変わる。また、狭帯域の電磁放射線源は、本発明の方法では、フェブリペロフィルタ、カットオフフィルタ、偏光フィルタ、波長板、減光フィルタ、減衰フィルタ、又は、これらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない1つ以上のフィルタと組み合わせて使用されてもよい。
【0024】
また、本発明は、フェブリペロエタロン又はハイパスフィルタとローパスフィルタとの組み合わせ等の1つ以上の光学フィルタと組み合わせて、蛍光ランプ、黒体電磁放射線源、キセノンランプ、石英ランプ又は重水素ランプ等の広帯域の電磁放射線源を1つ以上備える電磁放射線源を使用して実施されてもよい。この説明の文脈において、用語「広帯域の電磁放射線源」とは、更なる光学的なフィルタリングを伴うことなく本発明の方法において電磁放射線を使用できないようにコヒーレンス長、空間コヒーレンス長及び/又は時間コヒーレンス長を有する電磁放射線を与える帯域幅を有する電磁放射線源のことである。本発明の一態様において、光学フィルタを使用すると、本発明の方法を実施するために必要なコヒーレンスを与える所定の帯域幅の透過電磁放射線が形成される。広帯域の電磁放射線源は、本発明の方法では、フェブリペロフィルタ、カットオフフィルタ、偏光フィルタ、減光フィルタ、減衰フィルタ、又は、これらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない1つ以上のフィルタと組み合わせて使用されてもよい。
【0025】
本発明の方法及び装置では、パルス電磁放射線源又は連続電磁放射線源を使用することができる。一部の実施形態において、フェムト秒〜マイクロ秒の範囲のパルス持続時間を有するパルス電磁放射線源は、処理を受ける放射線感応材料とマスク要素との間で確立されるコンフォーマル接触に起因する電磁放射線ビームの完全な時間的重なりを与えるために使用される。これらの実施形態において、時間的な重なりの深さはパルス持続時間の関数である。簡単な計算では、本発明の方法において100フェムト秒のパルス持続時間の電磁放射線源が使用されるときに最大で数十ミクロンの時間的重なりが形成されることが分かっている。本発明のこの態様は、コンフォーマル接触を与えない従来の全ての干渉技術とは異なっている。一部の用途では、低コストで、動作寿命が長く、アライメントが比較的容易であることから、レーザでない電磁放射線源が好ましい。本発明の例示的な電磁放射線源は、所定の放射線感応材料によって少なくとも部分的に吸収される波長分布を有する電磁放射線、好ましくは紫外線、可視光線及び/又は赤外線のスペクトル領域における電磁放射線を発生する。例示的な電磁放射線源は、放射線感応材料の厚さ及び/又は形成される構造の厚さよりも大きい、好ましくは5〜10倍大きいスポットサイズを照明する。この文脈において、用語「スポットサイズ」とは、マスク要素の照明面積のことである。本発明の例示的な実施形態は、0.75mm2以上の面積をもつスポットサイズを有する実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを使用する。
【0026】
本発明では、放射線感応材料の化学的に改質され及び/又は物理的に改質された領域を形成することができる任意の波長を有する実質的にコヒーレントな電磁放射線を使用することができる。一部の有用な実施形態では、処理を受けている感光性樹脂中において架橋反応などの重合反応を開始することができる実質的にコヒーレントな電磁放射線が使用される。重合反応は、本発明では、単光子吸収プロセス及び/又は多光子吸収プロセスによって光誘起されてもよい。多光子吸収プロセスを使用する本発明の方法は、紫外線スペクトル領域では殆ど透過しない材料を処理するためには望ましい場合がある。これは、そのような多光子吸収プロセスが一般に可視光及び近赤外光の電磁放射線によって促進され得るからである。また、本発明の多光子吸収方法は、一部の実施形態では、形態の分解能を高める。その理由は、放射線感応材料中で著しい多光子吸収を引き起こすことができる十分に高い電磁放射線強度は、マスク要素によって形成される光学干渉パターンの強度分布の最大値前後の領域に狭く局在するからである。また、多光子プロセスを使用すると、更に幅広い範囲の波長の電磁放射線を処理中に使用できるため、本発明のフレキシビリティが高くなる。例えば、1光子フォトプロセスにおいて一般に使用される従来の感光性材料と共に2光子プロセスを使用すると、1200nm波長程度の波長の電磁放射線を使用してパターニングを行うことができる。この能力は、光バンドギャップ材料の製造においては特別の重要性をもっている。その理由は、光バンドギャップは、処理中に使用される露光波長に正比例する特定の3D構造の格子定数の関数だからである。その結果、多光子処理との適合性は、特定の波長で選択されたバンドギャップを作る際に、より高いフレキシビリティを本方法に付与している。
【0027】
本発明において使用できるマスク要素は、電磁放射線強度、偏光状態、振幅及び位相の明確な選択された空間分布を有する光学干渉パターンを与えることができる任意の光学コンポーネント、光学装置、又は、光学コンポーネントと装置との組み合わせを備える。本発明の例示的なマスク要素は、1つ以上の実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームに晒されると、放射線感応材料内で光学干渉を受ける複数の実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを形成し、それにより、強度及び偏光状態の選択された空間分布を有する光学干渉パターンを形成する。マスク要素は、選択されたレリーフパターンを有するエラストマー位相マスク等の単一の光学素子を備えていてもよく、或いは、複数の光学素子を備えていてもよい。本発明のマスク要素は、放射線感応材料内で所望の3D干渉パターンを形成する透過及び/又は反射電磁放射線を供給してもよい。
【0028】
一実施形態において、マスク要素は、放射線感応材料内で光学干渉を受けた異なる回折次数に対応する複数の別個の(離散的な)電磁放射線ビームを形成することができる回折格子を備える。他の実施形態において、マスク要素は、異なる伝播軸に沿って伝搬し、且つ放射線感応材料内で光学干渉を受ける複数の電磁放射線ビームを形成することができる選択されたレリーフパターンを有する位相マスクを備える。本発明のこの態様の一実施形態において、位相マスクのレリーフパターンの外面は、処理を受ける放射線感応材料の接触面の特定の部分とのコンフォーマル接触を確立して維持することができる接触面を備える。レリーフパターンは、レリーフ形態の物理的寸法及び周期性に関して特徴付けられてもよい。一実施形態において、本発明の位相マスクのレリーフ形態は、処理のために使用される電磁放射線の波長に相当する厚さ(すなわち、マスク要素に入射する電磁放射線の伝播軸と平行な軸に沿って延びる寸法)、長さ(すなわち、電磁放射線の伝播軸に対して垂直な軸に沿って延びる寸法)、及び/又は、周期性(すなわち、レリーフ形態同士の間の間隔)を有する。本発明の位相マスクの例示的なレリーフパターンは、約120nm〜約5000nm程度、好ましくは約100nm〜約800nm程度の物理的寸法を有する。本発明のマスク要素は、対称なパターンのレリーフ形態、又は、例えば1つ以上の制御された欠陥部位を有するレリーフパターン等の非対称なパターンのレリーフ形態を備えるレリーフパターンを有していてもよい。
【0029】
本発明の一態様において、マスク要素は、1つ以上の高分子層を備える位相マスクを備える。一実施形態において、例えば、マスク要素は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)位相マスクなどのエラストマー位相マスクを備える。エラストマー材料などのローモジュラスな高弾性の高分子材料を備える位相マスクの使用は、その固有の柔軟性がマスク要素及び放射線感応材料の良好な光学アライメント、例えばマスク要素と放射線感応材料とのコンフォーマル接触により成されるアライメントを可能にするため、有益である。一実施形態では、本方法においては、約0.1MPa〜約100MPaの範囲より選択されるヤング率を有する位相マスクが使用される。本発明のこの態様の例示的なエラストマー位相マスクは、位相マスクを通過する光の波長に相当する1つ以上の選択された物理的寸法を有する複数のレリーフ形態を備えるレリーフパターンを有するPDMS位相マスク等の適合可能なゴム位相マスクを備える。或いは、本発明は、特に1つ以上の寸法に沿ってある程度の柔軟性を示す材料の薄いシートの形態を成すハイモジュラスな材料を備える位相マスクを使用する方法を含んでいる。
【0030】
この方法において有用な例示的な位相マスクとしては、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)層などのヤング率が低い高分子層、好ましくは一部の用途においては約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲より選択される厚さを有する高分子層を備える単層エラストマー位相マスクが挙げられる。或いは、本発明の位相マスクは、その全体を参照として本明細書に組み込まれる2004年4月27日に米国特許商標局に提出された“Composite Patterning Devices for Soft Lithography”と題される米国特許出願第60/565,604号に記載されるような複合多層位相マスクを構成している。本発明の方法において使用できる例示的な複合多層位相マスクは、PDMS層などのヤング率が低い高弾性の第1の高分子層と、ヤング率が高い第2の高分子層とを備える。この実施形態において、第1の高分子層の内面及び第2の高分子層の内面は、第2の高分子層の外面に作用する力が第1の高分子層に伝えられるように配置されている。本発明の複合多層位相マスクにおけるハイモジュラスな第2の高分子層の使用は、処理を受ける放射線感応材料の表面とコンフォーマル接触した状態で位置付けられるときにレリーフパターンの歪みを防止できる十分に大きい曲げ剛性を有する位相マスクを提供するため、有益である。例えば、約1×10−7Nm〜約1×10−5Nmの範囲より選択される曲げ剛性を有する位相マスクを使用すると、処理を受ける放射線感応材料の表面とコンフォーマル接触を確立する際に、位相マスクのレリーフ形態の位置及び物理的寸法における歪みが最小限に抑えられる。
【0031】
本発明の方法及び装置で使用できる放射線感応材料としては、電磁放射線に晒された際に化学的及び/又は物理的な変化を受ける任意の材料が挙げられる。本発明の放射線感応材料は、固体や液体であってもよく、或いは、ゲル、ゾル、エマルジョン(乳濁液)、発泡体いずれのコロイド材料であってもよい。例示的な放射線感応材料としては、電磁放射線の吸収時に光重合を受ける材料、例えば光重合可能な前駆物質が挙げられるが、これに限定されない。また、放射線感応材料としては、電磁放射線の吸収時に化学エッチングに影響され易くなる或いは影響され難くなる材料も挙げることができるが、これに限定されない。また、放射線感応材料としては、電磁放射線の吸収時に溶媒などの化学試薬に溶解するようになる或いは溶解しなくなる材料も挙げることができるが、これに限定されない。Microchem社のSU8などのネガフォトレジストとして機能する材料は、本発明の放射線感応材料として使用されてもよい。或いは、本発明の方法において有用な例示的な放射線感応材料としては、感光性樹脂、例えばポリウレタ系の様々なクラスのエポキシノボラック材料が挙げられるが、これらに限定されない。また、例示的な電磁放射線感応材料としては、電磁放射線の吸収時に放射線感応材料内で化学的又は物理的な変化を開始できる1つ以上の光開始剤を備える材料が挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
例示的な実施形態において、放射線感応材料は、基板と接触し及び/又は基板によって支持される。本発明の一部の用途においては透明な基板を使用することが好ましい。その理由は、透明な基板は、マスク要素を通過して放射線感応材料内で形成される光学干渉パターンの強度分布に影響を与えることが可能である電磁放射線ビームの望ましくない後方反射を最小限に抑えるからである。しかしながら、本発明の方法は、反射性が高い或いは部分的に反射する基板及び/又は吸収性が高い或いは部分的に吸収する基板を含む多種多様な基板上に3D構造及び3D構造のパターンを形成するために使用されてもよい。
【0033】
本発明の方法は、様々な物理的寸法及び相対的空間配置を有するナノスケール形態等の形態を備える3D構造を形成することができる。本方法は、ナノスケール形態を有する複数の別個の3D構造を備える対称的又は非対称的なパターンを形成することができる。或いは、本方法は、対称的又は非対称的なパターンのナノスケール形態を備える単一3D構造を形成することができる。例えば、本発明は、ナノスケール形態を有する非対称なパターンの別個の3D構造、又は、1つ以上の制御された欠陥部位によって特徴付けられる非対称なパターンのナノスケール形態を備える単一3D構造を形成することができる。
【0034】
本発明の形成方法は、形成される3D構造の形態の横寸法及び縦寸法の制御を行う。本発明によって形成される例示的な3D構造としては、選択された横寸法及び縦寸法をもつ形態を有する3D構造が挙げられるが、これに限定されない。選択された縦寸法を有する構造を形成できることは、従来のリソグラフィック形成方法を上回る本発明の方法の大きな利点である。本発明の方法は、約20ナノメートル〜約5000ナノメートルより選択される縦寸法及び/又は横寸法をもつ形態を有する3D構造を形成することができる。本方法によれば、最大で100μmの厚さの膜及び3Dナノ構造を得ることができ、放射線感応材料の光学的吸収及び構造的一体性がこの厚さを制限する。
【0035】
一実施形態において、本発明は、複数のチャープ形態を有する3D構造を形成する方法、及び、基板表面上にチャープ3D構造のパターンを形成する方法を提供する。この説明の文脈において、用語「チャープ形態」又は「チャープ構造」とは、連続的に変化する周期性を有する形態又は構造のパターンのことである。一実施形態において、ほぼ対称な分布のレリーフ形態を備えるレリーフパターンを有するPDMS位相マスク等の適合可能な弾性位相マスクは、処理を受ける放射線感応材料とのコンフォーマル接触を確立している間又はその前に例えば拡張(すなわち伸長)又は圧縮によって物理的に変形される。位相マスクの物理的な変形は、レリーフパターン中のレリーフ形態の相対的な方向を変化させ、それにより、レリーフ形態のチャープ分布が形成される。位相マスクの物理的に変形された方向をほぼ一定に維持しつつ電磁放射線に晒すと、1つ以上の3D構造又はチャープ分布を有する3D構造のパターンが形成される。或いは、チャープ3D構造又は形態を備えるパターンは、それが変形されていない状態でチャープ形態のパターンを備えるレリーフパターンを有する位相マスクを使用して本方法により形成されてもよい。チャープ構造の例示的な用途は、光バンドギャップ材料中に点、線、面又は3D欠陥構造をも形成することである。これは、フォトントラップ、鋭角曲げ時のゼロ損失導波管、完全ミラーであってもよく、これらはフルフォトニックデバイスの重要な要素である。
【0036】
本発明は、3D構造を備える形態の物理的寸法にわたって、ある場合には20ナノメートル程度の小さい物理的寸法を有する形態の物理的寸法にわたって正確な制御が可能な高分解能形成方法を提供する。本技術の分解能限界は、感光性樹脂におけるナノメートルサイズ、放射線感応材料の粗さ、架橋結合半径(すなわち、架橋鎖反応の拡散距離)、露光波長、偏光状態及び偏光に対する材料反応、位相マスクの分解能を含む幾つかの原因によって生じる。幾つかの実施形態において、本発明の形成方法は、放射線感応材料の励起に関与する光子の数に等比例してより一層高い分解能を示す形態を有する3D構造を形成する多光子吸収開始重合反応を放射線感応材料中で使用する。
【0037】
本方法は、基板表面の広い領域上に3D構造を形成し及び/又はパターン化するための低コストで高スループットな方法を提供する。電磁放射線源のスポットサイズ及び位相マスクのサイズだけが、本方法によってパターン化される基板面積のサイズを制限する。本方法は、基板又は装置の広い領域を、少なくとも1つのナノスケール形態を有する複数の独立した3D構造でパターン化することができる。或いは、本発明は、基板又は装置の広い領域を、ナノスケールの物理的寸法を有する形態のパターンを備える膜などの単一3D構造でパターン化することができる。
【0038】
本形成方法は、一連の従来のマイクロファブリケーション技術及びナノファブリケーション技術、例えばマイクロ成型、エンボス加工、エッチング技術等で補われるフレキシビリティの高い方法である。一態様において、本発明はマスクレスリソグラフィ形成方法を提供する。この実施形態において、パターニング要素は、処理を受ける放射線感応材料の表面中へレリーフ形態を直接的に成型し、或いはエンボス加工するために使用される。レリーフ形態は、放射線感応材料の適切な操作が可能な任意の手段を使用して放射線感応材料に対して導入されてもよい。前記任意の手段としては、複数のレリーフ形態を有する本発明の位相マスク又は等価なパターニング装置を放射線感応材料の表面に接触させることが挙げられるが、これに限定されない。或いは、レリーフ形態は、ロッドやバー等の並進可能な押し込み具を放射線感応材料の表面の様々な領域に繰り返し接触させることにより導入され、それにより、適切なレリーフ構造が形成されてもよい。この実施形態において、放射線感応材料は、物理的に変形可能な状態のとき、例えばそのガラス点温度に近い温度で、パターニング要素と物理的に接触させることにより成型される。次に、放射線感応材料自体が電磁放射線に晒され、それにより、成型された領域及び場合によっては成型されていない領域の全体にわたって化学的又は物理的に改質された領域が形成される。その後、化学的及び/又は物理的に改質された放射線感応材料を現像することにより、様々な構造が形成される。したがって、レリーフ形態を有する放射線感応材料の部分自体は、放射線感応材料内に所望の3D構造に対応する光学干渉パターンを形作る複数のビームを形成するための位相マスクとして機能する。また、本発明は、選択されたレリーフパターンを有する放射線感応材料がフォトプロセス中にマスク要素と光通信を行う形成方法も含んでいる。この実施形態において、マスク要素及びレリーフ形態を有する放射線感応材料の部分自体の両方は、放射線感応材料内に所望の3D構造に対応する光学干渉パターンを形成するための位相マスクとして機能する。ナノメートルスケールの物理的寸法とミクロンスケールの物理的寸法との組み合わせを有するレリーフパターンを備える位相マスクを使用する電磁放射線の露光前に成型又はエンボス加工することは、ナノメートルスケールの形態及びミクロンスケールの形態の両方を有する3D構造を形成する場合に有益である。そのような構造のミクロンスケール形態は、カプラ、導波管及び他の装置などのミクロンスケール要素及びミリメートルスケール要素中に容易に組み込むことができ、一方、ナノスケール形態は、フィルタリング、フォトニック/フォニック特性又は流体混合能力などの3D構造の機能性を与えることができる。
【0039】
他の態様において、本発明は、3D構造を形成するための方法であって、(1) 実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、(2)前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料との直接的な光通信で、マスク要素へと方向付け、それにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、(3)前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、を備える方法を提供する。
【0040】
他の態様において、本発明は、装置内で3D構造を組み立てるための方法であって、(1)実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、(2)前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、前記装置内に位置付けられた放射線感応材料との直接的な光通信で、マスク要素へと方向付け、それにより、前記装置内の前記放射線感応材料中に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、(3)前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記装置内に前記3D構造を形成するステップと、を備える方法を提供する。
【0041】
他の態様において、本発明は、3D構造を形成するための方法であって、(1)放射線感応材料を設けるステップと、(2)前記放射線感応材料上にレリーフパターンを形成するステップと、(3)実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、(4)前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを前記レリーフパターンへと方向付け、前記レリーフパターンが複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、(5)前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、を備える方法を提供する。
【0042】
他の態様において、本発明は、3D構造を形成するための方法であって、(1)実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、(2)前記コヒーレントな電磁放射線ビームの空間コヒーレンス、時間コヒーレンス又はこれらの両方を選択するステップと、(3)前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料との光通信で、マスク要素へと方向付け、それにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、(4)前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、を備える方法を含んでいる。
【0043】
以下の説明、実施例、図面、請求項によって本発明を更に説明する。
【発明の詳細説明】
【0044】
図面を参照すると、同様の参照符号及び同様の要素を示しており、また、2つ以上の図面に現れる同じ参照符号は同じ要素を示している。更に、以下では、次のような定義が適用される。
【0045】
用語「電磁放射線」は電場及び磁場の波を示している。本発明の方法に有用な電磁放射線としては、ガンマ線、X線、紫外光線、可視光線、赤外線、マイクロ波、電磁波又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。本発明の方法及び装置は、波長の範囲に対応する強度分布に関して特徴付けられてもよい実質的にコヒーレントな電磁放射線のビームを使用する。本発明の実質的にコヒーレントな電磁放射線のビームは、ガウス分布、ローレンツ分布、又は、これらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の強度分布によって特徴付けられてもよい。本発明の実質的にコヒーレントな電磁放射線のビームは、コヒーレンス長、空間コヒーレンス、時間コヒーレンス長、帯域幅、中心波長、又は、これらの任意の組み合わせに関して特徴付けられてもよい。
【0046】
「光学的厚さ」は、層の厚さと屈折率との積であり、以下の方程式によって表わされてもよい。
光学的厚さ=(L)(n) (II)
ここで、Lは物理的な厚さであり、nは屈折率である。
【0047】
用語「強度(intensity)」及び「強度(intensities)」は、1つの電磁波又は複数の電磁波の振幅の平方(二乗)を示している。この文脈における振幅という用語は、電磁波の振動の大きさを示している。また、「強度(intensity)」及び「強度(intensities)」は、1つの電磁放射線ビーム又は複数の電磁放射線ビームの時間平均エネルギ束、例えば1つの電磁放射線ビーム又は複数の電磁放射線ビームの単位時間当たりの光子数/cm2を示していてもよい。
【0048】
用語「3D構造」とは、3次元空間を占める1つ以上の構造的形態を備える構造体のことである。一態様において、本発明の方法及び装置は、1次元、2次元又は3次元における各種の選択可能な長さを有する例えばナノスケール形態等の構造的形態によって特徴付けられる1つ以上の3D構造を形成する。本発明の方法によって形成される3D構造は、放射線感応材料の厚さに対応する軸に沿う各種の物理的寸法を有する形態によって特徴付けられてもよい。或いは、本発明の方法によって形成される3D構造は、マスク要素に入射する実質的にコヒーレントな電磁放射線の1本又は複数の伝搬軸と平行な1本又は複数の軸に沿う各種の物理的寸法を有する形態によって特徴付けられてもよい。また、本発明の方法によって形成される3D構造は、マスク要素によって反射される電磁放射線の1本又は複数の伝搬軸と平行な1本又は複数の軸に沿う各種の物理的寸法を有する形態によって特徴付けられてもよい。また、本発明の方法によって形成される3D構造は、マスク要素によって散乱される電磁放射線の1本又は複数の伝搬軸と平行な1本又は複数の軸に沿う各種の物理的寸法を有する形態によって特徴付けられてもよい。この論議の文脈において、本発明の方法によって製造される3D構造の長さ及び/又は物理的寸法は、マスク要素の物理的寸法及び/又は光学的特性の選択によって選ぶことができる。
【0049】
「形態」とは、3D構造の構造的要素を示している。本発明は、それぞれが少なくとも1つのナノスケール形態を有する複数の独立した3D構造を備えるパターンを形成する方法を提供する。また、本発明は、ナノスケール形態を備える単一3D構造を形成する方法を提供する。用語「ナノスケール形態」とは、約10nm〜約100,000nmの値の範囲より選択され、より好ましくは約100nm〜約50,000nmの値の範囲より選択される値を有する横寸法又は縦寸法等の少なくとも1つの物理的寸法を示す構造を成す形態のことである。
【0050】
用語「物理的寸法」又は「寸法」は、構造、形態、或いは、構造又は形態のパターンが2次元又は3次元においてどのようにして得られるか及び/又はどのようにして空間を占めるかを特徴付ける構造の物理的特徴、構造の形態、或いは、構造又は形態のパターンを示している。構造、構造の形態、或いは、構造又は形態のパターンの物理的寸法としては、長さ、幅、高さ、深さ、半径、曲率半径及び周期性が挙げられる。3D構造の縦寸法は、マスク要素に向けて方向付けられた実質的にコヒーレントな放射線の入射ビームの伝搬軸と平行な軸に沿って延びる寸法に対応している。3D構造の横寸法は、マスク要素に向けて方向付けられた実質的にコヒーレントな放射線の入射ビームの伝搬軸と垂直な軸に沿って延びる寸法に対応している。多種多様な形状を有する構造及び構造の形態は、その物理的寸法に関して特徴付けられてもよく、立方体、直方体、円柱、ポスト(柱)、リボン及びこれらの組み合わせを備える他の形状を含んでいるが、これらに限定されない。本発明の位相マスクのレリーフ(起伏、立体感)形態の横寸法は、電磁放射線の入射ビームの伝搬軸と垂直な軸に沿って延びる寸法を含んでいる。本発明は、正確に選択された物理的寸法を有する3D構造、例えばそれぞれが選択された物理的寸法を有する複数の形態を備える3D構造を製造するための方法、装置、装置部品を提供する。
【0051】
「エラストマー」は、引き伸ばし又は変形させることができ且つ実質的な永久歪みを伴うことなくその元の形状に戻ることができる高分子材料を示している。本発明において有用な例示的なエラストマーは、ポリマー、コポリマー、複合材料、又は、ポリマーとコポリマーとの混合物を備えていてもよい。エラストマー層とは、少なくとも1つのエラストマーを備える層のことである。また、エラストマー層は、ドーパント(添加物)及び他の非エラストマー材料を含んでいてもよい。本発明において有用なエラストマーとしては、PDMS、h−PDMS、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、ポリウレタン、ポリクロロプレン及びシリコンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
「ヤング率」とは、所与の物質における歪みに対する応力の比率を示す材料、装置又は層の機械的特性である。ヤング率は、以下の式によって与えられてもよい。
GE=(stress)/(strain)=[(L0/ΔL)x(F/A)] (II)
ここで、Eはヤング率であり、L0は平衡長であり、ΔLは加えられた応力下での長さの変化であり、Fは加えられた力であり、Aは力が加えられる範囲の面積である。また、ヤング率は、以下の方程式によりラメ定数に関して表わされてもよい。
E=μ(3λ+2μ)/(λ+μ) (III)
ここで、λ及びμはラメ定数である。ヤング率は、パスカル(Pa=Nm−2)等の単位面積当たりの力の単位で表わされてもよい。
【0053】
高いヤング率(又は「ハイモジュラス(高率)」)及び低いヤング率(又は「ローモジュラス(低率)」)は、所与の材料、層又は装置におけるヤング率の大きさの相対的な記述である。本発明において、高いヤング率は、低いヤング率よりも大きく、好ましくはある用途において約10倍大きく、より好ましくは他の用途において約100倍大きく、更に好ましくは更に他の用途において約1000倍大きい。一実施形態において、高いヤング率を有する材料は、約1GPa〜約10GPaの範囲にわたって選択されるヤング率を有しており、また、低いヤング率を有する材料は、約0.1MPa〜約100MPaの範囲にわたって選択されるヤング率を有する。
【0054】
用語「放射線感応材料の厚さ」は、マスク要素に対して方向付けられた電磁放射線の伝搬軸と略平行な軸に沿う放射線感応材料の厚さを示している。「光通信」とは、電磁放射線の1つ以上のビームが1つの要素から他の要素へと伝搬することができる2つ以上の要素の相対的配置のことである。光通信状態の要素は、直接的な光通信状態にあってもよく、或いは、間接的な光通信状態にあってもよい。「直接的な光通信」とは、集光レンズ等のビームの方向を決め及び/又はビームを合成するための光学コンポーネントを使用することなく電磁放射線の1つ以上のビームが第1の装置要素から他の装置要素へと直接的に伝搬する2つ以上の要素の相対的配置のことである。例えば、1つの有用な実施形態において、本発明のマスク要素は放射線感応材料との直接的な光通信状態にあり、それにより、マスク要素によって形成された電磁放射線の複数のビームは、放射線感応材料に向けて方向付けられるとともに、マスク要素によって形成されるビームを再結合するための集光レンズやリフレクタ等の更なる光学素子を使用することなく放射線感応材料内で組み合わされて光学干渉を受ける。一方、「間接的な光通信」とは、導波管、光ファイバ要素、リフレクタ、フィルタ、プリズム、レンズ、回折格子、及び、これらの装置部品の任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない1つ以上の装置部品を介して電磁放射線の1つ以上のビームが2つの要素間で伝搬する2つ以上の要素の相対的配置のことである。
【0055】
「電磁放射線のビーム」とは、同じ方向に伝搬する電磁放射線のことである。この明細書本文では、電磁放射線のビームという用語の使用を、光学及び分光学の技術におけるこの用語の使用に一致させようとしている。本発明の方法において有用な電磁放射線のビームとしては、電磁放射線ビームの実質的にコヒーレントなビーム、電磁放射線のパルス、電磁放射線の連続波ビームが挙げられる。一部の用途において有用な電磁放射線ビームのビームは、略平行な伝搬軸を有する光子を備える。この文脈において、用語「平行」とは、全ての時点において、2つの軸が互いに等距離にある幾何学的性質のことであり、また、用語「略平行」とは、完全な平行度からある程度外れたものをも含む幾何学的性質を示すことを意図しているものである。本発明において有用な電磁放射線のビームは、合焦してもよく、発散してもよく、視準されてもよく、半視準化されてもよく、又は、視準されなくてもよい。
【0056】
以下の説明では、本発明の正確な本質の十分な説明を行うために、本発明の装置、装置部品、方法の多数の特定の内容が示されている。しかしながら、当業者であれば理解できるように、本発明はこれらの特定の内容を伴うことなく実施することができる。
【0057】
図1Aは、基板表面上に3Dナノスケール構造又は3Dナノスケール構造のパターンを形成するための本発明の方法及び装置を示す概略図である。図1Aに示されるように、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100は、選択された厚さ125を有する放射線感応材料120と光通信を行った状態で、入射ビーム伝搬軸150に沿って位相マスク110へと方向付けられている。図1Aに示される実施形態において、位相マスク110は放射線感応材料120と直接的な光通信状態にあり、これにより、異なる伝播軸に沿って伝搬する電磁放射線の複数のビームが位相マスク110によって形成されるとともに、これらのビームは、マスク要素によって形成されるビームがビームを方向付け、或いは合成するための集光レンズ等の更なる光学素子を何ら通過することなく、放射線感応材料120内で組み合わされて光学干渉を受ける。放射線感応材料120は位相マスク110と基板122との間に位置付けられている。有用な実施形態において、放射線感応材料120は基板122によって支持され、また、本方法は、基板122の外面123を3D構造でパターン化するための手段、又は、複数の形態を有する1つ以上の単一3D構造を備える膜で基板122の外面123をパターン化する手段を提供する。
【0058】
位相マスク110は、外面130と、複数のレリーフ形態162を備えるレリーフパターン160とを有する。図1Bは位相マスク110の拡大図を示しており、位相マスク110は、選択された長さ163、幅164を有するレリーフ形態162の対称的なパターンと、選択された長さ163、幅164、厚さ165を有するレリーフ形態162のパターンとを備えるレリーフパターン160を示している。また、レリーフパターン160は、隣接するレリーフ形態162同士の間隔である周期性166によって更に特徴付けられる。レリーフ形態162は、その屈折率、組成、光路長によって更に特徴付けられてもよい。簡単なパターンの周期的なナノスケール3D構造又は形態及び/又は1つ以上の制御された欠陥部位を有する簡単なパターンの周期的なナノスケール3D構造又は形態を形成するために有用な一実施形態において、長さ163、幅164、厚さ165及び/又は周期性166は、例えば約2のファクタ内で、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100の中心波長に匹敵している。有用な実施形態において、長さ163、幅164、厚さ165及び/又は周期性166は、約50ナノメートル〜約5000ナノメートルの値の範囲、より好ましくは一部の用途において約300ナノメートル〜約1500ナノメートルの値の範囲より選択される。
【0059】
図1A及び図1Bを再び参照すると、レリーフパターン160のレリーフ形態162は、外面130の対向して配置され且つ放射線感応材料120の接触面170とコンフォーマル接触する複数の接触面140も有する。レリーフ形態162の接触面140と放射線感応材料120の接触面170との間のコンフォーマル接触は、入射ビーム伝搬軸150に沿う位相マスク110と放射線感応材料120との正確な光学アライメントを与える。製造用途において有用な本発明の幾つかの方法では、電磁放射線のコヒーレントなビームに対する位相マスク110及び放射線感応材料120の露出(露光)期間の全体にわたって、レリーフ形態162の接触面140と放射線感応材料120の接触面170との間のコンフォーマル接触が維持される。また、位相マスク110及び放射線感応材料120は、入射ビーム伝搬軸150と垂直な平面に沿うこれらの装置部品の選択された光学アライメントを行うための相補的なアライメント溝又はチャンネル(図1Aには図示せず)を有していてもよい。
【0060】
一実施形態において、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100は、狭帯域幅電磁放射線源等の電磁放射線源175によって直接的に形成される。他の実施形態において、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100は、電磁放射線が視準素子177及び/又は光学フィルタ178を通過するときに形成される。実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100は位相マスク110に対して方向付けられる。図1Aを参照すると、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームは、スポットサイズ180、好ましくは大面積パターニング用途においては0.75mm2以上の面積を有するスポットサイズを位相マスク110の外面130上に形成する。放射線感応材料120の全厚125にわたってナノスケール形態が分布されない構造を形成するために有用な本発明の方法において、視準素子177及び/又は光学フィルタ178は、コヒーレントな電磁放射線ビーム100のコヒーレンス(例えば、空間コヒーレンス及び/又は時間コヒーレンス長)の程度を選択する手段を与える。
【0061】
電磁放射線は、位相マスク110と相互に作用するとともに、複数の回折ビーム(ビーム200として概略的に描かれている)へと回折され、これらの回折ビームは、それらが重なり合う光学干渉を受けることにより、放射線感応材料120内に光学干渉パターンを形成する。放射線感応材料中に形成される光学干渉パターンの強度分布及び偏光状態は、レリーフパターン160のレリーフ形態162の長さ163、幅164、厚さ165、周期性166、組成及び屈折率によって決まる。図1Aに示される実施形態において、回折ビーム200は、放射線感応材料120の厚さ全体にわたって通り抜け、基板122によって透過される。少なくとも部分的に透過する基板122の使用は、一部の製造用途においては、放射線感応材料120内に形成される干渉パターンの強度分布に悪影響を与える可能性がある後方反射を最小限に抑える場合に有益である
【0062】
場合によって、位相マスク110は、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100の一部の透過を妨げる振幅変動領域(例えば非透過領域又は部分透過領域)172を有していてもよい。振幅変動領域172は、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビーム100の一部を反射し、吸収し及び/又は散乱させることにより放射線感応材料120内に形成される光学干渉パターンの強度分布に影響を与える材料を備える。一部の製造用途において有用な一実施形態において、振幅変動領域172は、選択された反射率を有する金膜などの薄い金属膜である。
【0063】
電磁放射線と放射線感応材料120との相互作用は、放射線感応材料120内の選択された領域、例えば極めて強度の干渉パターンに晒される放射線感応座量120内の領域を化学的及び/又は物理的に改質する。一実施形態において、例えば、放射線感応材料120は、感光性樹脂であり、架橋反応等の光誘起重合反応による化学的及び/又は物理的改質を受ける、例えば化学エッチングや現像プロセスにより、及び/又は、1つ以上の溶媒に晒すことにより、放射線感応材料120の化学的又は物理的に改質された領域を除去すると、選択された物理的寸法を有する3Dナノスケール構造が基板122上に形成される。他の実施形態においては、例えば化学エッチングや現像プロセスにより、又は、1つ以上の溶媒に晒すことにより、改質されていない放射線感応材料を除去すると、選択された物理的寸法を有する3Dナノスケール構造が基板122上に形成される。
【0064】
当業者であれば理解できるように、図1A及び図1Bは、放射線感応材料内に光学干渉パターンを形成する例示的な方法を単に与えているだけである。本発明は、放射線感応材料内の光学干渉パターンがマスク要素110による電磁放射線の反射によって形成される方法と、放射線感応材料内の光学干渉パターンがマスク要素110を通じた電磁放射線の透過とマスク要素110による電磁放射線の反射との組み合わせによって形成される方法とを含んでいる。
【0065】
図2は、本発明の方法において有用な他の光学的配置400を示す概略図である。この構成において、放射線感応材料410は、電磁放射線源420とマスク要素430との間に位置付けられている。放射線感応材料410及びマスク要素430は、入射ビーム伝搬軸450を横切るように位置付けられている。図2に示されるように、電磁放射線源420は、1つ以上の実質的にコヒーレントな電磁放射線入射ビーム(矢印440によって概略的に表わされている)を発生する。実質的にコヒーレントな電磁放射線入射ビーム440は、選択された厚さ415を有する放射線感応材料410を通過して、マスク要素430と相互に作用し、それにより、放射線感応材料410を通過する1つ以上の電磁放射線反射ビーム(矢印460によって概略的に表わされている)を形成する。この光学的配置において、入射ビーム440と反射ビーム460との光学干渉は、強度、振幅、位相の選択された3D分布を有する光学干渉パターンを放射線感応材料420内に形成する。
【0066】
図1A、図1B、図2に示される光学的配置は、マスク要素の表面に対して垂直に方向付けられた入射ビーム伝搬軸と平行な伝搬軸に沿って伝搬する1つ以上の実質的にコヒーレントな電磁放射線入射ビームの使用を示しているが、本発明は、実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームのマスク要素表面に対する非垂直な方向付けを使用する方法及び装置を含んでいる。具体的には、本発明は、位相マスク等のマスク要素と交差する任意の方向性を有する入射ビーム伝搬軸と平行に伝搬する実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを使用してもよい。
【0067】
図3は、基板表面上にナノスケール構造を形成するための本発明の例示的な方法におけるステップを示す概略図を示している。図3の左上の枠に示されるように、適合可能なエラストマー位相マスクには、放射線感応材料に晒される電磁放射線の光波長に匹敵する寸法を有するレリーフの形態が設けられている。本発明のこの実施形態において、必要な全ての光学コンポーネントは、適合可能なエラストマー位相マスクに組み込まれている。図3の左上枠内の挿入画は、シリコンウエハ上に248nm投影モードフォトリソグラフィによりパターン化されたフォトレジストの‘マスター’に対して接触させた状態で2つの異なるタイプのポリ(ヂメチルシロキサン)エラストマーから成る二重層(Sylgard 184;Dow Corning Corp.and VDT−731,HMS−301;Gelest,Inc.)を成型して硬化することによって形成される例示的な位相マスクの表面を斜めから見た走査型電子顕微鏡写真を示している。図3に示される実施例におけるレリーフ構造は、570nmの直径及び420nmの高さを有する円柱の正方形配列から成る。
【0068】
図3の右上の枠に示されるように、適合可能なエラストマー位相マスクは、感光性樹脂(SU−8;Microchem Corp.)を含む放射線感応材料から成るソリッドフィルム(回転成型(スピンキャスティング)により形成される5〜15ミクロン厚のフィルム)の外面と接触し、好ましくはコンフォーマル接触している。例示的な実施形態において、位相マスクと感光性樹脂のソリッドフィルムの外面との間の相互作用は、ファンデルワールス力によって促進される緊密な物理的接触を引き起こす。この簡単な処理は、感光性樹脂のソリッドフィルムの外面に対して垂直な軸に沿って原子スケール精度で位相マスクを感光性樹脂の表面に対して位置合わせする。図3の右上枠の挿入画は、ファンデルワールス‘ウェッティング’フロントが画像の上部から下部へ進行するときに集められた上側から見た顕微鏡写真を示している。数平方センチメートルにわたる完全な接触には1秒又は2秒を必要とする。
【0069】
図3の右下の枠に示されるように、電磁放射線ビームが適合可能なエラストマー位相マスクへと方向付けられる。電磁放射線がマスクを通過すると、感光性樹脂の特定の領域を電磁放射線に晒す複雑な3D強度分布が形成される。図3に示される実施形態では、感光性樹脂膜を支持するために透明ガラス基板が使用される。ガラス等の少なくとも一部が透明な基板の使用は、後方反射を最小限に抑えるため、本発明の一部の用途において有益である。透明基板の使用は本発明において必要ではないが、本発明は、部分的に反射する基板、部分的に吸収する基板、吸収性の高い基板又は反射性が高い基板の使用を含んでいる。
【0070】
電磁放射線ビームがエラストマー位相マスクを通過するときに形成される3D強度分布は、マスクの構成によって決まる。位相マスクは、明確な選択された物理的寸法、相対的方向性、屈折率及び組成を有する複数のレリーフ形態を含んでいることが有益である。また、電磁放射線ビームがエラストマー位相マスクを通過するときに形成される3D強度分布は、照射電磁放射線の波長分布、偏光、時間コヒーレンス及び空間コヒーレンスによっても決まる。照射電磁放射線の波長に匹敵する横寸法を有し且つπという高い割合で位相を変えることができる十分な深さ(すなわち、図3の左上枠の挿入画に示される深さと同様の深さ)を有するレリーフ構造は、適切なレベルのコヒーレンスを有する電磁放射線を使用してサブミクロンの周期的な3D強度分布を形成する。図3の右下枠の挿入画は、この強度分布の全ベクトルシミュレーション、すなわち、完全にコヒーレントな電磁放射線を照射したときの代表的なマスク構成を示している。スペクトルをフィルタリングしたランプ出力からの幾何学的に視準された電磁放射線は、十分なコヒーレンスを与えて、多くの感光性樹脂層の厚さ(一般的には<15ミクロン)全体にわたって高コントラストの強度分布を形成する。本発明のこの態様によれば、この種の低コスト電磁放射線源を使用して構造体を形成することができる。
【0071】
本発明においては電磁放射線のレーザ源が効果的に使用されてもよいが、本方法ではこれらは不要である。また、マスクと感光性樹脂との間のファンデルワールス結合は、照射(露光)時間が長い場合でも、これらの2つの要素の相対的な動きを縦寸法及び横寸法の両方で最小限に抑える。したがって、外部からの振動制御形態又は分離形態は本発明の方法では必要ないが、これらの形態は一部の用途においては役に立つ場合がある。したがって、光学的設備に関する要件は最小となる。位相マスクのピールバックにより露光処理が終了する。
【0072】
図3の左下の枠に示されるように、その後、適合可能なエラストマー位相マスクが取り除かれ、例えば従来の現像処理を使用して感光性樹脂膜が現像される。感光性樹脂の露光領域の光生成酸(photogenerated acids)は、高温(5〜10分間、75℃が使用された)で架橋反応を開始する。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒を用いて(又は、MicrochemCorp.から市販されている現像剤を用いて)感光性樹脂の露光されていない領域を洗い流すと、位相マスクによって形成される強度パターン(すなわち、3D強度分布)により規定される幾何学的形状を有する3Dナノ構造が得られる。本方法の例示的な実施形態では、超臨界CO2を用いて乾燥することにより、形成された3D構造から溶媒が除去される。図3の左下枠の挿入画は、本発明の方法によって形成される一般的な構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。また、現像後にこれらの構造をベーキングする(180℃で5分間)と、感光性樹脂が交差結合(架橋)され、形成される3D構造の物理的強度が高まる。
【0073】
超臨界乾燥は、脆弱な構造体の乾燥中の表面張力による破壊作用を妨げるのに有用な技術である。本発明の幾つかの方法で超臨界乾燥を使用すると、本技術によって形成される3Dナノ構造の質が顕著に高まる。これらの方法において、サンプルは、電磁放射線に晒された後、現像液(SU−8現像液、Microchem,Corp.)中で30分を越える時間にわたって現像され、新たな現像液を保持する超臨界乾燥チャンバへと受け渡される。チャンバを−10℃まで冷却した後、液体CO2が現像液上に加えられる。加熱により液体CO2をその臨界点(31.3℃、7382kPa)へともっていく。臨界点を上回るガスとしてCO2を除去することにより乾燥が終了する。
【0074】
以下の方法では、システムの光学素子を定性的に理解することができる。波長(λ)よりも小さく又は波長に匹敵するが約λ/4よりも大きい横寸法をもつバイナリ(すなわち2レベル)レリーフの形態を有するマスクを光が通過すると、マスクの表面の近傍には、(i)凹状領域及び段差縁部に深い強度最小値、(ii)凸状領域及び同じ縁部に強い強度最大値が形成される。両方の効果は、電場の連続性をマスクによってもたらされる位相のやや急激なシフトを維持する必要性から生じる。1番目は、位相誘導シャドーイングと見なすことができ、2番目は、レリーフ形態からの集束の形をとる。この振幅変調は、光が十分な空間コヒーレンス及び時間コヒーレンスを有する場合に、z軸(基板表面に対して垂直に方向付けられた軸)に沿う強度の周期的変動を引き起こす。
【0075】
他の一貫した概念的な考えは、画像形成のアッベ理論に基づいている。それは、遠距離音場で回折のように見える光がマスクの近傍の領域で重なり合ってそれ自体と干渉するときに形成する強度パターンを考慮している。この場合、マスク内の高次回折光の全内部反射に関連する絞りフィルタリング(aperture filtering)は、電場の強いx,y,z依存振幅変調を引き起こす。有限要素モデリングによって得られるマクスウェル方程式の全ベクトル解は、(遠距離音場回折光の再結合及び干渉によって予測することができない効果によって規定される)近距離音場現象が前述した殆どのシステムにおいて問題とならないことを示している。
【0076】
位相マスク等の本発明のマスク要素は、技術的に知られた任意の手段によって形成されてもよい。本発明の例示的なエラストマー位相マスクは、従来のフォトリソグラフィによって形成されるフォトレジスト(Shipley 1805)のパターン化されたラインから成るマスターに対して接触させた状態でポリジメチルシロキサン(PDMS)プレポリマー(Dow Corning Sylgard 184)を成型して硬化することによって形成される。図4は、本発明の方法において使用できるエラストマー位相マスクを形成するための例示的な方法を示す概略図である。この方法において、3Dマスターレリーフパターンは、従来のフォトリソグラフィによってフォトレジスト材料から形成される。図4に示されるように、エラストマー位相マスクは、マスター上にPDMSのプレポリマーを成型して、プレポリマーを硬化させ、マスターからエラストマー位相マスクを除去することにより形成される。位相マスクのレリーフパターンの深さは、フォトレジストの厚さを変えることにより変更される。例示的なマスクの全厚は約5mmであり、ヤング率は1〜10MPa程度である。
【0077】
一実施形態において、248nm投影モードフォトリソグラフィによりSiウエハ上にパターン化されるフォトレジス層は、本発明の位相マスクを形成するための‘マスター’としての機能を果たす。これらのウエハを小さな真空チャンバ内でパーフルオロ化された(水素をフッ素で置換した)トリクロロシラン(T2492−KG,United Chemical Technologies, Inc.)蒸気中に配置することにより当該ウエハ上に露光されたSiO2をコーティングすると、成型処理及び硬化処理中におけるウエハとシリコンエラストマーとの間の付着が防止される。2つのタイプのポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)から成る二重層構造は、比較的高さを有する形態を成すが横寸法が小さい要求の多いマスク構成を複製するために使用されてもよい。欠陥が無い表面レリーフ構造を形成するためには、特別な注意が必要な場合がある。成型は、例えば1000rpmでの40秒間のスピンキャスティングにより‘マスター’上にハイモジュラス(10MPa)型のポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)(VDT−731、HMS−301;Gelest Inc.)から成る薄膜をスピンコーティングすることによって始まる。ウエハを500rpmで30分間回転させ続けておくことにより、PDMSの均一な加湿及び部分的な架橋が可能となる。このようにすると、極めて滑らかな表面を得ることができる。他のローモジュラス(2MPa)形式のPDMS(Sylgard 184,Dow Corning Corp.)のプレポリマーを第1の層の上に注ぐと、マスクを容易に処理するための4〜5mm厚の柔軟なバッキングが形成される。二重層PDMS要素を完全に硬化させて(75℃で1時間)それを‘マスター’から剥がすと、適合可能な位相マスクが得られる。
【0078】
図5は、選択された横形態及び縦形態をもつ3D構造を製造するために必要な光学的特性を有するマスク要素を形成する例示的な方法を要約するフローチャートである。図5に示されるように、この方法は、形成される所望の3Dナノスケール構造の物理的寸法を与えるステップと、所望の3D構造を与えることができるマスク要素を形成するために必要な物理的寸法及び光学的特性を概算的に見積もるステップとを備える。この位相マスク構成によって形成される光学干渉パターンの強度分布は、位相マスク構成に対応する予測3Dナノスケール構造を形成するために計算されて使用される。予測3Dナノスケール構造の物理的寸法は、例えば従来のフィットアルゴリズムの厳密性(closeness)を使用することにより、所望の3Dナノスケール構造の物理的寸法と比較される。位相マスクの物理的寸法及び光学的特性は適宜変更される。変更された位相マスク構成に対応する予測3Dナノスケール構造も同様に形成されて所望の3Dナノスケール構造と比較される。図5に矢印で示されるように、このプロセスは、予測3Dナノスケール構造が選択された許容範囲内で所望の3Dナノスケール構造と一致するまで反復的に繰り返される。
【0079】
本発明の方法及び装置は、多数の装置のための装置部品の用途において有用な様々な3D構造、特にナノスケール構造を形成するために使用されてもよい。例えば、本方法は、1.5ミクロンの通信波長での動作のための約250nmの形態サイズを有する光結晶を形成するために使用されてもよい。例示的な実施形態において、これらの構造は、装置毎に数平方センチメートルの面積にわたって存在する。しかしながら、高スループット製造用途において、スループット及び歩留りは、直ぐに幾つかの装置に相当する面積にわたるパターン化によって利益を得る。また、本方法は、フィルタの意図する使用に応じて約100nm〜約5ミクロンの範囲の物理的寸法を有するナノ濾過膜を形成するために使用されてもよい。ナノ濾過膜を形成する例示的な方法は、個々のフィルタを形成するために細かく切断されてもよい多平方センチメートル領域の形成を伴っている。また、本方法は、数百ミクロンの面積にわたって1ミクロン超のサイズをもつ形態を有するマイクロ流体システム又はナノ流体システムのための受動ミキサを形成するために使用されてもよい。
【0080】
本明細書で使用された用語及び表現(式)は、説明の用語として使用されており、限定的用語として使用されているものではなく、また、そのような用語及び表現(式)の使用においては、図示されて説明された形態又はその一部の任意の等価物を排除しようとする意図はなく、本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが分かる。したがって、好ましい実施形態、例示的な実施形態、任意の形態によって本発明が具体的に開示されてきたが、本明細書で開示された概念の変更及び変形が当業者によって用いられてもよく、また、そのような変更及び変形が添付の請求項によって規定される本発明の範囲内にあると見なされることは言うまでもない。本明細書で与えられる特定の実施形態は本発明の有用な実施形態の例であり、当業者であれば理解できるように、本発明は、この明細書本文に示された装置、装置部品、方法ステップの多数の変形例を使用して実施されてもよい。本方法において有用な方法及び装置としては、光ファイバ素子、1/4波長板及び1/2波長板等の複屈折素子、FPエタロン等の光学フィルタ、高域カットオフフィルタ及び低域カットオフフィルタ、光増幅器、視準素子、コリメータレンズ、リフレクタ、チューブ絞り、ピンホール、モノクロメータ、プリズム、トリガパルス発生器、レーザ、局部発振器、回折格子、集光レンズ及びリフレクタ等の集光素子、リフレクタ、偏向器、光ファイバ結合器及び送信器、温度コントローラ、温度センサ、光学的パラメトリック増幅器、非線形結晶、音響光学変調器、広帯域光源及び狭帯域光源を含む多数の任意の装置要素及び部品を挙げることができる。
【0081】
この出願で挙げられている全ての引用文献は、それらがこの出願の開示内容と矛盾しない程度まで、その全体を参照として本明細書に組み込まれる。当業者であれば理解できるように、本明細書に具体的に記載されたもの以外の方法、装置、装置要素、材料、手続き、技術は、過度の実験に依存することなく、本明細書に広く開示された本発明の実施に適用することができる。本明細書に具体的に記載された方法、装置、装置要素、材料、手順、技法等の技術的に知られた全ての機能的等価物は、この発明によって包含されるものである。
【0082】
実施例1:マイクロ流体チャンネル内に組み込まれるナノ多孔質フィルタの製造
3Dナノ構造の実質的有用性は、それらの機械的堅牢性と、機能的な装置を製造するためにマイクロシステム、ナノシステム及び/又は大型部品内に組み込むことができる能力とに大きく依存している。本方法及び本装置によって形成されるナノ構造の効用を評価するために、ナノ多孔質フィルタが形成されてマイクロ流体システム内のマイクロ流体チャンネル内に組み込まれた。有用な3Dアノ構造を形成できる本発明の方法及び装置の能力は、構成されたナノ多孔質フィルタの良好な機械的特性及びフィルタリング性能を明らかにすることにより検証された。
【0083】
これらの特徴を示すため、複数の3Dナノ構造を備える3Dナノ構造フィルタ要素が形成されるとともに、流体の流れからサブミクロン粒子を分離するために当該3Dナノ構造フィルタ要素がマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた。この研究で使用される適合可能な位相マスクは、740nmの直径、420nmのレリーフ深さ、43%のデューティサイクルを有するレリーフ形態の正方形配列(丸みを帯びた正方形)を備える。ナノ多孔質フィルタが形成されるとともに、2段階の露光プロセスを使用して当該ナノ多孔質フィルタがマイクロ流体チャンネル内に組み込まれた。第1のステップはチャンネル構造を規定するために使用され、第2のステップは、位相マスク及び200μmの幅広スリットを介した露光によりナノ多孔質フィルタを備える3D構造をパターン化するために使用された。
【0084】
図6A〜Lは、本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造フィルタの走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。図6Aは、組み込まれたナノ多孔質フィルタを有するY接合チャンネル(チャンネル幅:100μm)を45°傾けた図を示している。図6Bは、マイクロ流体チャンネル内に組み込まれたナノ多孔質フィルタの拡大走査型電子顕微鏡写真を示している。図6Bに示されるように、ナノフィルタを備える3D構造の上端は、チャンネル壁の上端面と揃えられている。図6Cはチャンネルの端部近傍の領域の拡大図を示している。図6Dは、3Dナノ多孔質フィルタによってフィルタ処理された500nm粒子(F8812、FluoSpheres,Molecular Probes)を示している。図6D,6F,6Hにおいては、見易くするためにビーズに陰がつけられている。図6Eは、ナノ多孔質フィルタを備える3D構造の上端面の拡大図を示している。この図において、矢印は、ほぼ100nmのナノ構造を特定している。図6Fは、図6Dに示された画像の拡大図を示している。図6Gは、0.02%ビーズから成る含水懸濁物質をチャンネル内に3μl/分の割合で流すという実験条件に対応する画像を示している。流れ方向が図6Gに矢印で示されている。図6Hは、ナノ多孔質フィルタの端部に対応する図6Gに示される画像の選択された領域の拡大画像を示している。図6Gに示されるように、ビーズはフィルタの左側に残っており、したがって、ビーズのフィルタリングを示している。
【0085】
ナノフィルタを備える3D構造の最小部分でさえ、水溶液のウェッティング及びディウェッティングに対して及び加圧流体に対して機械的に堅牢であると観察された。このフィルタを通じてポリスチレンビーズ(500nm径)の懸濁液を流すことにより、ビーズではなく流体をナノ孔に通すことができる。この図の一部6D,6F,6Hの走査型電子顕微鏡写真は、構造によるビーズの閉塞(観察に資するべく、この画像では人工的に赤く着色されている)を示している。図の一部6Gにおける光学画像は、浮遊ビーズを有する濁った流体をフィルタの左側に示しており、ビーズの無い透明な流体を右側に示している。流れは左から右へ向かっている。
【0086】
本実施例で使用されるSU8等の放射線感応材料の現像液による膨張は、ガラス基板からの層間剥離を引き起こす場合がある。また、ガラス基板とSU−8層との間の接着力が、熱膨張係数の差及び超臨界乾燥ステップ中の熱循環により増大する熱応力に耐えられるほど十分に強くない場合もある。これらの問題を回避するため、本発明者らは、ガラス上に回転成型されて投光露出(flood expose)されたSU−8から成る5μm厚の膜を備える感光材料層を使用する。この層は、パターン化されたSU8層の基板に対する接着力を効果的に高めるとともに、処理中のあらゆる時点における層間剥離を防止した。この第1の均一な層を堆積させる前に、本発明者らは、最初に、O2反応性イオンエッチングを用いて5分間カバーガラス(コーニング)基板を処理する(30mTorr、100W、Uniaxis 790シリーズ)。反応性イオンエッチングの直後、5ミクロン厚のSU−8膜がスピコーティングされて(3000rpm、30秒間)、ソフトベーク処理される(5分、95℃)。その後、SU−8膜は、投光露出(200mJ/cm2)された後、180℃で5分間ハードベーク処理される。この膜の表面は、その後、ガラスを形成するために使用される同じ反応性イオンエッチングステップに晒される。3DパターニングのためのSU8層は、この既存のSU8膜上に回転成型により塗布される。この厚い(25ミクロン)層を回転成型してソフトベーク処理する際、しばしば、位相マスクと膜とのコンフォーマル接触を低下させた顕著なエッジビード(すなわち、基板の縁部近傍の厚い領域)を観察した。このエッジビードは、良好な接触を得るためにアセトンを用いて注意深く除去された。超臨界乾燥に関与する熱循環を回避するための他の方法は、現像されたサンプルをそれが未だ濡れているときに溶媒へと移動させることである。この他の方法で使用できる溶媒としては、エタノール、Hexa Methyle D1 Silazane(HMDS)、又は、表面張力エネルギが低い溶媒が挙げられる。この実施形態において、溶媒を現像液と置き換えて、サンプルが現像液中に浸漬されるときに膨張を最小限に抑える。サンプルを室温で乾燥すると、良好な3D構造が得られる。しかしながら、ある場合には、この他の処理ステップは、超臨界乾燥処理されたサンプルと比べて僅かに劣悪な構造を形成する。この他の方法を使用して形成された構造は、フィルタリング用途及び/又はミキシング(混合)用途を含むマイクロ流体の用途に対して十分に適用できる。
【0087】
Y接合マイクロ流体構造の形成は、チャンネルの幾何学的構成を有する振幅マスクを通じた露光から始まる。組み込まれる3Dナノ多孔質フィルタを形成するため、本発明者らは、200μm幅のスリットを有する振幅マスクを薄い(2mm)位相マスクの裏面に接触させる。この複合マスクを基板に接触させて再び露光すると、チャンネルのうちの1つに200μmの長さの領域に3Dパターン化された区域が形成される。現像後、SU8構造は、プラズマクリーナ(Harrick Scientific,Corp.)を用いて処理されるとともに、同じプラズマクリーナを用いて処理されたPDMSの平坦な断片に接触して配置される。サンプルを10分間70℃で加熱すると、PDMSとSU8との間に強い結合が形成される。この結合ステップにより、流体と共に取り込まれて圧送可能な密閉マイクロ流体システムの形成が完了する。構造全体は光学的に透明であり、それにより、光学顕微鏡を用いて簡単に見ることができる。水性懸濁物質の充填、圧送又は乾燥に起因する3D構造の劣化は観察されない。
【0088】
実施例2:本発明の位相マスクによって形成されるナノ構造及び強度分布のモデリング計算
図7A〜Lは、本発明の方法を使用して、大きな面積にわたって形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及びモデリング結果(挿入画を参照)を示している。これらの方法は、用途が非常に広く、様々な位相マスクタイプ、光学的配置、可視レーザ光や紫外線レーザ光及びフィルタ銀ランプ等の光源と共に使用されてもよい。厳密結合波解析は、枠7H,7I,7Jを除き、挿入画に示されるようにいずれの場合にも計算された強度分布を規定している。枠7H,7I,7Jは、これらの場合における厳密結合波解析の過度な計算の必要性を回避するために、フラウンホーファ解析を使用して決定された。モデリング結果及び走査型電子顕微鏡写真の定量的解析は、計算された強度分布と本発明を使用して形成された3Dナノ構造の形状との間の良好な一致を示している。
【0089】
モデリングは、画像形成におけるアッベ理論の概念と共に厳密結合波解析(RCWA)を使用する。特に、全ベクトル計算は、マスクを通じた透過後に遠距離音場に現れる回折ビームの強度及び位相を決定する。これらのビームを数値的に再結合すると、マスクの表面から離れた任意の位置で強度分布が得られる。この手法は近距離音場を無視している。しかしながら、2次元マスク(すなわち、ライン及び空間を持つマスク)のためのマクスウェル方程式の全ての解の個々の有限要素計算によれば、これらの効果が特定の状況においては重要となり得るが、ここで考慮される全てのケースでこれらの効果を無視できることが分かる。
【0090】
図7のパネルA〜Lは、本発明の方法及び装置を使用して形成された代表的な3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。図7A〜Lの挿入画は、対応する計算された光学的強度分布を示している。1例を除き、全てのケースにおいて、使用された適合可能な位相マスクは、異なる直径(d)、レリーフ深さ(rd)、デューティサイクル(dc)、断面形状(すなわち、円、正方形など)をもつ孤立した凸状の形態から成る正方形格子の幾何学的形状を成す表面レリーフを有していた。図7A〜7Dにおけるレリーフパターン寸法は、d=375nm、rd=420nm、dc=35%、及び、円形状である(位相マスク1)。図7Eと7Fにおけるレリーフパターン寸法は、d=570nm、rd=420nm、dc=50%、及び、円形状である(位相マスク2)。図7G−7Jにおけるレリーフパターン寸法は、d=1000nm、rd=420nm、dc=40%、及び、略正方形である(位相マスク3)。図7K−7Lにおけるレリーフパターン寸法は、ライン(300nm幅)及び空間のレリーフ形態であり、rd=310nm、dc=50%である(位相マスク4)。全てのケースにおける感光性樹脂層は、約10ミクロンの厚さを有していた。水銀ランプのフィルタ処理された365nmの光出力が使用された図7Dの構造及びArイオンレーザからの514nm光が使用された図7Fの構造を除き、Nd:YAGレーザの3出力(355nm)は全てのケースにおいて露光用の光を供給した。
【0091】
図7Aは、位相マスク1を使用して位相マスクのサイズのみによって限定される大きな面積にわたってパターン化された3Dナノ構造を示している。図7Bは、図7Aに示された構造の(110)断面図を示している。図7Cは同じ構造の平面図を示しており(赤色の矢印は、幅が約100nmの構造を示している)、図7Cの挿入画は、計算された光学的強度分布を示している(図7Cの挿入画の矢印は、露出光の偏光方向を示している)。図7Dは、マスク1を使用して形成された3Dナノ構造の(100)断面図、及び、従来の水銀ランプからの365nm輝線のフィルタ処理された出力を示している。図7Dの挿入画に示され且つ完全なコヒーレンスをとる計算された光学的強度分布は、この構造の形状を正確にとらえている。
【0092】
図7Eは、位相マスク2を使用して形成された構造及び355nm光を示している。図7Fは、514nmレーザ光を用いて位相マスク2により形成された構造を示しており、図7Fの挿入画は、対応する計算された強度分布を示している。計算された強度分布に存在するこの構造の上端層は、下側に位置する構造に対するその薄い接続形態に起因して剥離する。図7Gは、位相マスク3を使用して形成された構造を示しており、図7Hは、この構造の傾斜(100)面の拡大図を示している。図7Hの挿入画に示される計算された強度分布は、ポストの中央を切断した断面に対応している。図7Iは、図7G及び7Hに示される構造の上面の拡大図を示しており、図7Iの挿入画は、対応する計算された強度分布を示している。図7Jは、この構造の下面の画像を示しており、図7Jの挿入画は、対応する計算された強度分布を示している。図7Kは、位相マスク3を使用して形成された密閉ナノチャンネルの積層体の画像を示している。図7Kにおいて、偏光方向は(矢印で示されるように)ラインと平行である。図7Lは、図7Kの構造の拡大断面図を示しており、図7Lの挿入画は、対応する計算された強度分布を示している。図7Lの挿入画に示されるモデリング結果は、この構造の観察された幾何学的構成と良好な一致を示している。
【0093】
適合可能な位相マスクを形成するソフトリソグラフィ成型処理及び硬化処理は、これらの光学素子及びこれらの光学素子から形成される対応する強度分布の設計において高いフレキシビリティを付与している。本発明の方法では、図7A〜Lに示される構造の形成のために使用される周期的なレリーフパターンを有する位相マスクに加えて、非周期的なレリーフパターンを有する位相マスクが使用されてもよい。図8A〜Lは、特別に設計された適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、及び、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。示されている結果は、円柱から成る正方形格子内に‘欠陥’構造(すなわち、欠けているポスト)を含むマスクに対応している。共焦点顕微鏡写真で集められた一連の画像は、この高分子ナノ構造の3D形状全体を明らかにしている。フラウンホーファ回折理論を使用する簡単なモデリングの結果をもって、極めて良好な一致が観察される。光学のこのレベルの理解は、選択された所望の幾何学的構成に近づける強度分布を形成するための専用のマスクの設計への道を明らかにする。
【0094】
図8Aは、孤立し欠けているポストを有する位相マスク1を使用して形成された3Dナノ構造の表面の走査型電子顕微鏡写真を示している。図8Bは、図8Aに示された構造を形成するために使用される位相マスクの上から見た走査型電子顕微鏡写真を示している。図8Cは、欠けているポスト(すなわち、欠陥構造)から遠い位置yで撮られた構造のx−y平面の共焦点顕微鏡写真を示している。図8Dは、欠陥の場所で集められた同様の画像である。図8Dの挿入画は対応するモデリング結果を示している。この場合、破線は、欠陥伝播及びモデリングされた共焦点像の対応する領域を示している。図8E−Lは、x−y平面の共焦点像及び400nm(図8E及び図8F)、1.5μm(図8G及び図8H)、6μm(図8I及び図8J)、9μm(図8K及び図8L)のz−深さにおけるモデリングを示している。
【0095】
階段関数カットオフフィルタを計算された強度分布に対して適用すると、架橋プロセス及び現像プロセスに近づけるための簡単な方法が得られる。そのようなフィルタを用いると、高分子ナノ構造の予測上の幾何学的構成と観察上の幾何学的構成との間で量的な一致を得ることができる。図7A〜Lに示されるように、相互に嵌合した円柱構造から、複雑な構造の中空のポストの配列、密閉ナノチャンネルの積層体へと及ぶパターンが正確に形成されてモデリングされてもよい。感光性樹脂の非線形応答は、深いサブ波長スケール構造の形成において役立つことができるが、システムの材料性状(例えば、光形成酸の拡散、結果として得られる構造の機械的安定性)は、ある場合には、得られる分解能を制限する場合がある。図7A〜Lの構造において、最も詳細な形態(すなわち、ポスト径、線幅;赤色矢印参照)は、約100nmの直径を有しており、また、あるケースでは、50nm程度の形態が得られる場合もある。
【0096】
感光性樹脂中の露出光の波長(また、ある程度、処理条件)は、最も高い空間周波数を決定する。所与の位相マスクにおいて、緑(アルゴンイオンレーザからの514nm)光(図7f)で露光された膜は、紫外光(図7e)で露光された膜よりも構造が細かくないパターンを生じる。紫外線レーザ光(Nd:YEGレーザからの355nm3出力)を用いて形成されたパターンは、(直径が3mmで長さが17cmのブラックチューブを通過することにより)幾何学的に視準され且つそれとなく波長の差によって完全に決定付けられる場合があるスペクトル的にフィルタ処理された(365nmに中心付けられた2nm帯域幅;ASC i−ラインフィルタ、オメガオプティカル社)従来の水銀ランプ(HBO 350W Mercury Lamp,OSRAM.Lamp 87230,Oriel Instruments)の出力を用いて形成されたパターンとは異なっている。ランプからのフィルタ処理された光の部分コヒーレンス(この場合において、時間コヒーレンス長は約20□mである)の影響は、調査した全てのケースで無視できる。
【0097】
実施例3:本方法で使用される電磁放射線の空間及び時間コヒーレンスの選択的変化
多数の製造用途において有用な本発明の実施形態では、形成される3D構造の重要な構造的特徴、例えばナノスケール及び/又はマイクロスケール形態が局在化される3D構造の領域を制御するため、本方法で使用される電磁放射線の空間コヒーレンス及び/又は時間コヒーレンスが選択的に調節される。空間及び/又は時間コヒーレンスの選択的変化によって成される制御は、本発明のこれらの方法では、様々な用途、装置、装置構成、装置環境において選択された構造的特徴を最適化するために使用される。
【0098】
一実施形態において、放射線感応材料と光通信を行うマスク要素へと方向付けられた電磁放射線の時間及び/又は空間コヒーレンスは、形成される構造の別個の領域、例えばマスク要素の近傍に位置付けられる放射線感応材料の部分に対応する構造の領域に局在化される複数のナノスケール又はマイクロスケール形態を備える3D構造を形成することが選択される。本発明のこの実施形態は、形成された構造の全体にわたっては最後までは延びないナノスケール及び/又はマイクロスケール形態を備える別個の領域を有する3D構造を形成することができる。したがって、本発明のこの態様は、複数のナノスケール及び/又はマイクロスケール形態を有する第1の部分と、そのような形態が実質的に無い領域を備える第2の部分とを備える3D構造を形成する場合に役立つ。
【0099】
本発明のこの態様で使用される電磁放射線の時間コヒーレンスの選択的変化は、マスク要素へと方向付けられる電磁放射線の入射ビームの適切な帯域幅の選択によって行われる。一実施形態において、マスク要素に入射する電磁放射線の帯域幅は、フェブリペロ光学干渉フィルタや高域カットオフフィルタと低域カットオフフィルタとの組み合わせなどの光学フィルタ、プリズム、回折格子、モノクロメータなどの分散素子、或いは、これらの任意の組み合わせを使用して選択される。図9Aは、本発明の構造を形成する方法において電磁放射線の時間コヒーレンスを制御するための例示的な光学的配置600を示している。図9Aに示されるように、第1の時間コヒーレンスを有する電磁放射線605は、電磁放射線源610により形成されるとともに、光学干渉フィルタ(例えばフェブリペロフィルタ)などの光学フィルタ615を通過する。電磁放射線が光学フィルタ615を通過すると、電磁放射線ビームの帯域幅(Δλ)が変化し、それにより、基板635上の放射線感応材料630とコンフォーマル接触する位相マスク625上へと方向付けられる選択された時間コヒーレンスを有する電磁放射線620が形成される。入射電磁放射線の帯域幅の変化は、本方法では、例えばビームの伝播軸と垂直な軸を中心に光学干渉フィルタを回転させることにより或いはモノクロメータにおける入口及び/又は出口絞り(開口)の直径などの物理的寸法を選択的に調節することにより時間コヒーレンスを選択的に変化させ或いは「調節する」ために使用される。
【0100】
本発明のこの態様で使用される電磁放射線の空間コヒーレンスの選択的な変化は、電磁放射線源とマスク要素との間に位置付けられたレンズ、コリメーションチューブ、スリット及び/又はピンホールなどの視準光学素子により電磁放射線の入射ビームの入射角度範囲を選択的に調節することによって行うことができる。この実施形態におけるマスク要素に対するレンズ素子の位置又は開口(絞り)の物理的寸法の変化は、本発明では、空間コヒーレンスを選択的に変え又は「調節する」ために使用することができる。図9Bおよび図9Cは、本発明の構造を形成する方法において電磁放射線の空間コヒーレンスを制御するための例示的な光学的配置を示している。図9Bに描かれる光学的配置700に示されるように、第1の空間コヒーレンスを有する電磁放射線705は、電磁放射線源710によって形成されるとともに、電磁放射線ビームを集光するレンズ素子715を通過する。素子715によって行われる集光は、選択された時間コヒーレンスを有する電磁放射線720を形成する。その結果、電磁放射線は、基板735上の放射線感応材料730とコンフォーマル接触する位相マスク725を通過するときに僅かに集束される。図9Cに描かれる光学的配置800に示されるように、第1の空間コヒーレンスを有する電磁放射線805は、電磁放射線源810によって形成されるとともに、電磁放射線ビームの発散を増大するレンズ素子815を通過する。素子815によって成されるビーム発散の選択的な調整により、選択された時間コヒーレンスを有する電磁放射線820が形成される。その結果、電磁放射線は、基板835上の放射線感応材料830とコンフォーマル接触する位相マスク825へと方向付けられて通過する際に僅かに発散される。
【0101】
本発明のこの態様の一実施形態において、電磁放射線の入射ビームの時間コヒーレンス、空間コヒーレンス、又は、これらの両方は、放射線感応材料の厚さ全体にわたって延在しないナノスケール及び/又はマイクロスケール形態を有する3D構造を形成するために選択される。この実施形態における時間コヒーレンス、空間コヒーレンス、又はこれらの両方の選択は、ナノスケール及び/又はマイクロスケール構造が局在化される構造の領域の物理的寸法を選択するために使用することができる。例えば、本発明は、形態が構造の上側半分、1/3、1/4に局在化される3D構造であって、そのような形態が実質的に無い領域も備えている3D構造を形成するために使用することができる。本発明のこの態様の一部の実施形態において、局在化された形態を有する領域は、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲にわたって選択された厚さを有する。本発明のこの実施形態は、マイクロ流体装置、マイクロ電子機器装置、ナノ電子機器装置、又は、光システムなどの装置又は装置部品中に容易に組み込むことができる3D構造を形成する場合に特に有用である。例えば、これらの方法によって形成される構造は、形態が実質的に無い領域と接触することによりナノスケール及び/又はマイクロスケール形態を損傷させることなく容易に操作できる。また、形態が実質的に無い領域の露光面は、装置又は装置部品中へ構造を組み込むための結合面として有効に使用することができる。
【0102】
本発明のこの態様の他の実施形態において、電磁放射線の入射ビームの時間コヒーレンス、空間コヒーレンス、又は、これらの両方は、形成された構造の第1の領域内のナノスケール及び/又はマイクロスケール形態から形態が実質的に無い形成された構造の第2の領域へと向かう緩やかな連続的移行を有する3D構造を形成するために選択される。この文脈において、表現「連続的移行」とは、形態の密度が高い領域からそのような形態が実質的に無い或いは形態の密度が低い領域への形態密度変化のことである。高密度の形態を有する第1の領域から低密度の形態を有する或いは形態が実質的に無い第2の領域へのそのような連続的移行を有する構造の利点は、そのような構造が機械的堅牢性を高め、したがって、形態が応力下で壊れ或いは劣化する可能性が高くないということである。また、第1の領域から第2の領域へのそのような連続的移行を有する構造は、機能的特性を高めることができる。また、空間及び/又は時間コヒーレンスの選択又は調節は、連続移行領域内での形態密度勾配(又は傾き)を選択する手段も与える。したがって、それにより、ナノスケール形態又は構造の密度が放射線感応材料の厚さに応じて僅かに変化する小さな形態密度勾配によって特徴付けられる構造、および、ナノスケール形態又は、構造の密度が放射線感応材料の厚さに応じてやや急激に変化する大きな勾配によって特徴付けられる構造の形成が可能となる。
【0103】
図10Aおよび図10Bは、本発明によって形成された構造中の形態を含む層の厚さに対する空間コヒーレンスの選択的調整の影響を示している。この構造は、広帯域光源と、2ナノメートルに等しい半値全幅を有する光学フィルタと、約10ミクロンの厚さを有する層を備える放射線感応材料とを使用して形成された。2つの開口(絞り)直径は、この実施例では、電磁放射線の入射ビームの空間コヒーレンスを選択するために使用された。3ミリメートル径は図10Aに示される構造において使用され、7ミリメートル径は図10Bに示される構造において使用された。図10Aに示されるように、3ミリメートル径の開口を使用すると、10ミクロン層の全体にわたって延びる形態によって特徴付けられる構造が形成された。一方、図10Bに示されるように、7ミリメートル径の開口を使用すると、2つの領域、すなわち、高密度の形態を有する第1の領域と、形態が実質的に無い第2の領域によって特徴付けられる構造が形成された。図10Bに示される3D構造を形成するために使用される電磁放射線ビームの空間コヒーレンスの選択は、第1の形態を含む領域の厚さの制御を行った。図10Bにも示されるように、この構造の形態の密度は、構造の表面の高密度領域から形態が実質的に無い第2の領域へと連続的に変化するように観察された。図10Cは、放射線感応材料の深さ全体にわたって延在しない局在化されたナノスケール形態を有する本発明の方法により形成された他の構造の電子顕微鏡写真を示している。
【0104】
前述したように、例えばコヒーレンス長などの照射(露光)電磁放射線の特性の制御は、本発明の方法によって形成される構造の幾何学的構成を調整する感度の高い(感応)手段を与える。例えば、処理を受ける放射線感応材料(例えば感光性樹脂)の厚さよりも実質的に長いコヒーレンス長が選択されると、放射線感応材料の厚さ全体にわたり強度分布において良好なコントラストが得られる。一方、放射線感応材料の厚さよりも小さいコヒーレンス長が選択されると、膜の上側の領域(すなわち、コンフォーマル接触状態の位相マスクの近傍領域)だけが3D構成へと構造化される。これらの方法において、膜の下側部分は均一に硬化される。この固体の下層は、その上側の3D構造のための支持体としての機能を果たすとともに、下側の基板に対して強力に接着するための層としての機能を果たす。この能力は、機械的に堅牢な装置を得るための幾つかの用途において重要である。ランプからの光のコヒーレンス長は、波長の範囲(時間コヒーレンス)を調整するためのフィルタを使用して、及び/又は、入射角度の広がり(空間コヒーレンス)を制御するための簡単な視準光学素子(すなわち、中空チューブ、絞り、又は、レンズ)を使用することにより容易に制御することができる。本発明のこの態様は、本発明によって形成できる構造のタイプにおいてフレキシビリティを高める。
【0105】
実施例4:マイクロ流体用途における受動流体混合装置の形成
本方法及び装置によって形成されるナノ構造の有用性を評価するため、ナノ構造化された受動混合装置(passive mixing device)が形成されてマイクロ流体システムのマイクロ流体チャンネル内に組み込まれた。有用な3Dナノ構造を形成できる本発明の方法および装置の能力は、ナノ構造化された受動混合装置の良好な機械的特性および流体混合特性を明らかにすることによって検証した。
【0106】
本発明のこれらの特徴を示すため、複数の3Dナノ構造を備える3Dナノ構造化された受動流体混合要素が形成されるとともに、2つの流体流れを組み合わせて混合するために、当該受動流体混合要素がマイクロ流体システムの複数のチャンネル内に組み込まれた。効果的な流体混合を引き起こすように2つの別個の流体をナノ構造化された受動流体混合要素を通じて流した。流体混合用途において3Dナノ構造を備えるナノ構造化された受動流体混合要素を使用すると、これらの構造によって長い有効流体経路長が得られるため、特に有益である。
【0107】
図11は、本発明の方法によって形成され且つマイクロ流体システム中に組み込まれるナノ構造化された受動流体混合要素の光学顕微鏡写真を示している。図11に示されるように、純粋な流体流れが第1のマイクロ流体チャンネル(上側のチャンネル)内で形成されるとともに、着色流体流れが第2のマイクロ流体チャンネル(下側のチャンネル)内で形成されている。純粋な流体流れ及び着色流体流れはそれぞれナノ構造化された受動流体混合要素内に別個に導入される。両方の流体流れは、混合されることにより、ナノ構造化された受動流体混合要素から出て第3のマイクロ流体チャンネル(右へ向かうチャンネル)を通過する完全に混合された成分を形成する。図11Bは、受動流体混合要素が存在しない場合の混合度合いを示している。図11Cは、受動流体混合要素が存在する場合の混合度合いを示している。図11Bと図11Cとを比較すると、混合要素内での着色流体分布の大幅な空間的変化によって示されるように、本発明のナノ構造化された受動流体混合要素が高い流体混合度を与えることが分かる。また、本発明のナノ構造化された受動流体混合要素は、有用な流体流量および動作時間の範囲において構造的劣化を殆ど受けず或いは全く受けない。
【0108】
実施例5:光バンドギャップ材料およびフォノニックバンドギャップ材料の形成
光バンドギャップ材料およびフォノニックバンドギャップ材料は、半導体のエレクトロニクスの光子の特性と同様のレベルで光子の特性を制御できるため、研究団体の注意を引き付け続けている。光バンドギャップ材料および装置の分野における最も大きな課題の1つは、これらのシステムにおいて必要とされる3Dナノ構造のクラスを形成できる高スループット、大領域、低コスト製造技術の欠如である。半導体産業によって開発された高度な技術的方法は、これらの材料を形成するにはあまり適していない。これは、それらのパターニング能力が本質的に2次元(2D)だからである(すなわち、これらの方法は、超平坦面上で薄い材料層をパターン化する)。3D構造の製造には、多くの2Dパターニングステップを連続的に適用する必要があり、これは厄介であり遅い。また、この方法をかなりの数のパターン層において適用することは、最も高度で高価な設備を用いた場合であっても難しい場合がある。これらの限界により、現在、光バンドギャップ材料およびフォノニックバンドギャップ材料の製造において、高スループットの大領域製造方法が必要とされている。
【0109】
本発明の方法は、様々な光バンドギャップ材料およびフォノニックバンドギャップ材料を備える3D構造および装置の低コストで高スループットな製造に良く適しているため、この長い間にわたる切実な技術的必要性を満たす。特に、本方法によって形成される3D構造の物理的寸法の高い感度での制御は、有用な範囲の光学特性を有するフォトニック構造およびフォノニック構造を形成できる能力を与える。これらの材料および装置の製造において本発明の方法を適用する場合には、放射線感応材料とコンフォーマル接触して位置付けられるその表面上にエンボス加工されたレリーフのサブ波長形態を有する適合可能な位相マスクが利用される。本技術の利点は、全ての光学的要素がこの単一の光学素子中に組み込まれ、それにより、適合可能な位相マスクとパターン化される放射線感応材料の層との間にファンデルワールス相互作用を作り上げることで正確な光学アライメントが可能になるという点である。その結果として得られるこれらの要素間のコンフォーマル接触は、振動に対して耐久性の高い実験設備を与える。また、この実験設備は光学アライメントのための特定の処置を全く必要とせず、処理のために低コヒーレンス露光源を使用することができ、また、接触モード操作により分解能を非常に高くすることができる。本技術の他の利点は、適合可能な位相マスクの設計におけるフレキシビリティにより、欠陥構造および非周期的(すなわちチャープ)形態を容易に組み入れることができるという点である。
【0110】
フォトニック材料およびフォノニック材料の製造に対して本発明を適用するには、大きなバンドギャップを有する構造を生じさせる位相マスクを設計する必要がある。屈折率が十分に大きく変動する場合にはダイヤモンド格子構造がそのようなギャップを形成することは良く知られている。正方晶対称で層状正方対称な構造も良好なバンドギャップ特性を有し得る。適切な高さ(透過光の位相をπだけ変える場合に適する高さ)及び充填率(約50%)をもつ正方形配列のポスト(または穴)を有する位相マスクは、周期性によって決定される発散角度と同時に4つの同一平面内回折次数を形成する。ゼロ次を含む5ビーム構成は、体心正方晶構造をもつ強度分布を形成することができる。この簡単な対称性を有する位相マスクを使用すると、c/a格子定数比率が1.2に近い場合、光フルバンドギャップ(PBG)を有する構造が得られる。
【0111】
また、立方対称または六方対称の格子を形成できる六角形配列のポストを備える構造も、本発明を使用して形成することができる有用なフォトニック材料およびフォノニック材料である。そのようなマスクを用いて形成された7ビーム構成は、互いに上下に重ね合わされて互いに剛体回転する2つの面心立方格子から成る構造をもたらす。ダイヤモンド構造は、2つの重ね合わされた剛体並進を伴う面心立方格子として解釈することができる。両方の構造は、周期的な配列の正方晶形状のビルディングブロックから成る。周期性の高いこの種の配列の単位格子によれば、それらがダイヤモンドのレイアウトであろうと7ビーム構成によって形成されたレイアウトであろうと、バンドギャップを大きくすることができる。
【0112】
規則的で完全に周期的なバンドギャップ構造に加え、本方法は、例えば明確な点欠陥または線欠陥や、連続的に変化する周期性(すなわち、チャープ)などの非周期的な構造も形成することができ、更に多くの他の可能性をも有している。図12Aは、一例として、欠けているポストを備える孤立した欠陥を有する位相マスクの走査型電子顕微鏡写真を示しており、図12Bは、この位相マスクを使用して結果として形成された3D構造を示している。適切な構成の「マスター」により或いは空間的に変化するマスク自体の機械的圧縮によりこれらのタイプのマスクをチャープできることによって、広帯域操作を用いてバンドギャップ構造を形成することができる。また、振幅変調成分をマスクに対して加えることもでき、また、位相変調の深さを制御することもできる。
【0113】
最終的な検討は、エラストマーマスクの機械的安定性、および、良好な長い範囲の空間コヒーレンスを有する構造を形成できるエラストマーマスクの能力である。過去の研究によれば、そのようなマスクをモールドとして使用することにより形成される分布帰還型レーザ格子の周期の変化は数平方センチメートルにわたって0.1%程度であることが分かっている。このレベルの歪みは、本発明の多くの用途において十分である。しかしながら、本発明は、PDMSから成る薄層がガラスまたはハイモジュラス高分子バッキング(裏当て材)に対して成型された複合要素を備える位相マスクを使用する実施形態を含んでいる。そのような複合要素を備える位相マスクは、コンフォーマル接触を確立する際に、PDMSだけを使用する場合よりも小さい歪みを示す。
【0114】
フォトニック材料およびフォノニック材料を形成する場合に役立つ例示的な位相マスクは、エラストマーポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS;Sylgard 184, Dow Corning)から成り、ソフトリソグラフィ成型および硬化処理を使用して簡単に低コストで形成される。これらのプロセスにおいて「マスター」としての機能を果たす構造は、投影モードフォトリソグラフィを使用してシリコンウエハ上でフォトレジストをパターニングすることにより形成される。感光性樹脂から成る固体薄膜などの放射線感応材料との接触時、表面力、例えばファンデルワールス型の相互作用により生じる表面力は、外部から力が加えられることなく、マスクを高分子の表面と原子スケール接触させる。この受動プロセスは、ナノメートル精度の光学アライメントを垂直方向でもたらす。マスクを通過する光は、感光性樹脂をその厚さ全体にわたって露光する3D強度分布を形成する。概念的には、この強度分布は、回折によって生じたビームのマスク表面近傍での空間的な重なりによって形成されるものとして説明することができる。マスクを除去するとともに、露出光により架橋されない高分子の部分を現像して取り除くと、形態サイズが50nm程度の強度分布の幾何学的構成を成す3Dナノ構造が得られる。高分子の露光はマスクの表面の近傍で起こるため、本発明者らは、この技術を近接場ナノパターニング方法と称することにする。以下の結果においては、感光性樹脂(SU−8、Microchem Corp.)から成る固体薄膜(約10μm厚)が使用された。
【0115】
サンプルの現像には、乾燥に伴う毛管力による構造の損傷を避けるため、および、結果として得られる構造の機械的堅牢性を最大にするために特別な注意が必要とされる。したがって、一部の実施形態においては、表面エネルギが低い流体を使用することが好ましい。また、超臨界乾燥(SCD)は、本方法において質の高い構造をもたらす。例示的な実施形態において、湿ったサンプルは、現像液から純粋なエタノールへと移され、その後室温で乾燥される。
【0116】
位相マスクの幾何学的構成は、結果として得られる3D構造を規定する。重要な設計要素としては、2D格子定数、デューティサイクル(すなわち、形態サイズ)(dc)、レリーフ深さ(rd)、レリーフ形態の形状およびサイズが挙げられる。4つの異なる位相マスクを使用することにより、この実施例で報告された構造を形成した。
マスク1:円形ドット(d=375nm)、dc=35%、rd=420nm
マスク2:円形ドット(d=570nm)、dc=50%、rd=420nm
マスク3:円形ドット(d=410nm)、dc=26%、rd=520nm
図13A〜Dは、本方法を使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。図13Aは、355nmの波長を有する電磁放射線に晒されたマスク1を使用して形成された構造を示している。図13Bは、514nmの波長を有する電磁放射線に晒されたマスク2を使用して形成された構造を示している。図13Cおよび図13Dは、810nmの波長を有する電磁放射線に晒されたマスク3を使用して形成された構造を示している。
【0117】
本形成方法は、単光子吸収プロセスおよび多光子吸収プロセスによる架橋重合反応などの放射線感応材料内での化学反応の光開始に対して適用できる。単光子開始重合反応および多光子開始重合反応の両方は、この実施例では、ナノスケール形態を備える3D構造を形成するために使用される。多光子吸収を使用する形成方法において、1kHzの繰返し率で再生的に振幅されるTi:サファイアレーザからの810nmの130フェムト秒(fs)パルスは、これらの実験で使用されるSU−8感光性樹脂の2光子閾値を満たすために使用される。各パルスのエネルギは約250μJであり、これは、直径が約500μmの円形のスポットサイズが使用されるときに2GWに近いピークパルス電力を引き起こす。一般的な露光時間は30秒〜240秒の範囲である。ビームは、1/4波長板を用いて円偏光されるとともに、ダイアモンドピンホールを用いて空間的にフィルタ処理された。多光子開始光化学を使用すると、感光性樹脂内で多光子吸収プロセスを促進させることができる十分に高い光子強度で、更に狭い空間分布に起因して形成される形態の分解能が高められる。
【0118】
本形成方法は、画像形成におけるアッベ理論の概念とともに厳密結合波解析(RCWA)を使用する成型の研究によって数値評価された。特に、位相マスク透過後に遠距離音場内に現れる回折ビームの強度および位相を決定するために、市販のソフトウェアパッケージ(Gsolver, Grating Solver Development Company)を用いた全ベクトル計算が使用される。これらのビームを数値的に再結合すると、マスクの表面から離れた任意の位置で強度分布が得られる。本発明に関与する同一平面上にない5つ以上のビームは、各ビームの偏光および位相に関して十分に考慮する必要がある。このモデリング方法は、この近接場ナノパターニング方法により形成できる3D構造を解析するための重要なツールである。しかしながら、このモデリング手法は近距離音場効果を無視している。しかしながら、2次元マスク(すなわち、ラインおよび空間を持つマスク)のためのマクスウェル方程式の全ての解の別個の有限要素計算によれば、これらの効果が特定の状況においては重要となり得るが、ここで考慮される全てのケースでこれらの効果を無視できることが分かる。
【0119】
位相マスクは、zに沿って最小値および最大値が周期的に現れる変調を電場内に形成する。z深さに沿う格子の自己画像形成(すなわちタルボット効果)は、この効果に関与している。タルボット距離は格子周期性および入射波長の関数である。この方程式は画像形成のアッベ理論の点から得ることができる。これは、画像形成に関与する次数が波長およびマスク周期性に依存する回折角度を有するからである。端数のタルボット距離は、同一平面内の回折次数間の相互作用によって理解することができる。正方形配列のドットを有するマスクの場合には、0次および1次以外の次数を無視できる程度に発散角度が十分に大きいと、5ビーム干渉から最も簡単な3D周期構造(すなわち、体心正方晶)を期待することができる。
【0120】
光源のスポットサイズおよび位相マスクのサイズだけがパターン化された領域のサイズを制限する。厚さが最大で100μmの3Dナノ構造化された膜を得ることができ、構造的一体性および感光性樹脂の光学的吸収だけがこの厚さを制限する。この新規な方法は、大領域で迅速かつ低コストな3Dナノパターニング−他の周知の技術において現在欠如している能力− のための一般的なプラットフォーム技術として非常に期待できる。
【0121】
本方法は、露出光と感光材料との多光子相互作用によって構造を形成できる能力を有する。例えば、通常は(すなわち、線形方式)紫外線(UV)領域でのみ感度があるSU−8感光性樹脂に基づく市販の感光性樹脂は、約800nmの波長を有する十分に強い露出光における2光子効果により架橋することができる。図14Aおよび図14Bは、本発明の多光子処理方法によって形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。これらの構造は、SU−8感光性樹脂に対して照射される電磁放射線の線源として増幅されたフェムト秒レーザを使用して形成された。多光子吸収プロセスによって開始される化学反応により構造を形成できる本発明の能力は重要である。これは以下の理由による。すなわち、(1)紫外線の透過における要件が緩和されるため、本発明と共に使用できる材料の範囲を拡大できるからであり、(2)更なる格子定数を得ることができるからである。例えば、この能力により、紫外電磁放射線はあまり透過しないが電磁スペクトルの可視領域において光を透過する放射線感応材料を使用できる。また、本方法を用いる多光子パターニングが非常に簡単で且つ実験装置の変更を要さないという点に留意することは重要である。従来の干渉リソグラフィによって同様の露光を行うことは実質上不可能である。その理由は、従来の干渉リソグラフィは、複数のビームの経路長を数十ミクロン内に合わせる必要があるからである。
【0122】
この近接場ナノパターニング技術と他の従来の或いは従来でない手法とを組み合わせると、カプラ、導波管、他の装置などのミクロンおよびミリメートルスケールの要素内に3Dナノ構造を組み込むことができる。図15Aおよび図15Bは、一例として、レリーフを感光性樹脂の表面中に直接的にモールドするため、また、このナノファブリケーション方法によりフォトプロセスを行うために位相マスクを使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。この場合、レリーフは、ミクロン幅および深さの隆起部上にある正方形配列のサブミクロンポストから成っていた。そのようなエンボス加工された構造をフラッド露光すると、感光性樹脂自体が3Dナノ構造および当該構造を支持する最終成型構造を形成するための光変調を行う構造が形成される。この手法を用いると、導波管や機能的なシステムのために必要な他の結合・調節装置内に3Dバンドギャップ構造を組み込むことが容易になる。
【0123】
また、本発明はマスクレスリソグラフィ形成方法も含んでいる。これらの方法において、レリーフパターニング要素(例えば、本発明の適合可能な位相マスクまたは押し込み具)は、選択されたレリーフパターンを、処理を受ける放射線感応材料の露光面上に直接的にエンボス加工するために使用される。1つの実施形態において、例えば、選択されたレリーフパターンを有する位相マスクなどのレリーフパターニング要素は、物理的に変形可能な状態で存在する放射線感応材料と接触される。2つの要素間の接触は、選択されたレリーフパターンを放射線感応材料の表面上にエンボス加工し或いは成型する。その後、パターニング要素を取り除き、放射線感応材料を電磁放射線に晒して現像すると、選択されたパターンのナノスケール形態がエンボス加工された構造の下側に位置付けられる1つ以上の領域が形成される。これらの方法において、エンボス加工されたレリーフパターン自体は、放射線感応材料の大部分の内部で選択された強度分布および偏光状態を有する適切な光学干渉パターンを形成するための位相マスクとして機能する。本発明のこの方法の利点は、露光後に位相マスクを除去するための余計な工程が避けられるという点であり、これは、位相マスクを放射線感応材料から分離する際にもたらされる機械的応力を回避する場合に有利である。また、本発明のマスクレスリソグラフィ形成方法によって形成される構造は、狭帯域光学フィルタまたはスーパースリムホログラフィック相関計において重要である。更に、これらの方法は、湾曲面上に3次元構造を形成する場合に役立つ。これは、適合可能な位相マスクなどのレリーフパターニング要素の湾曲可能な性質が、これらの面でのマイクロまたはナノ押し込み(圧痕)を助けるからである。また、本発明のマスクレスリソグラフィ形成方法は、位相マスクの濡れ性が低い場合及び/又は位相マスクと放射線感応材料との間で十分な接触を得ることが困難である場合に有効な方法である。
【0124】
また、成型され或いはエンボス加工されたレリーフパターンを有する放射線感応材料と光通信を行う位相マスクの使用も、様々な構造を形成するための本発明の有用な方法を与える。これらの実施形態では、位相マスクの光学的特性と成型され或いはエンボス加工された放射線感応材料の領域とを組み合わせることにより、放射線感応材料内に形成される光学干渉パターンを構成する強度および位相の分布が決定される。図16A−Cは、選択されたレリーフパターンを有する位相マスクが放射線感応材料のエンボス加工されたレリーフパターンとコンフォーマル接触した状態で位置付けられる本発明の方法における構造およびステップを示している。図15Aに示されるように、マイクロ成型は、ドットの圧痕を備えるエンボス加工されたレリーフパターンを形成するために使用される(図16Aの上側のパネル)。このエンボス加工されたレリーフ構造は、実質的にコヒーレントな電磁放射線が照射される感光性樹脂上の位相シフト要素としての機能を果たす。その後、放射線感応材料が現像され、その結果、図16Aの下側のパネルに示される構造が得られる。次に、ラインおよび空間が放射線感応材料に押し込み形成(圧痕形成)される(図16Bの上側および下側のパネルを参照)。位相マスクは、放射線感応材料の圧痕構造の上端とコンフォーマル接触した状態で位置付けられるとともに、電磁放射線に晒される。図16Cの上側のパネルは、溝内で位相シフトディンプル要素により多層位相マスクを形成し(上側のパネル)、その後、それを放射線感応材料に対して押し込むステップを示している。電磁放射線に晒した後に現像して形成される最終的な構造が図16Cの下側のパネルに示されている。
【0125】
この近接場ナノパターニング技術は、一般的には3Dナノ構造において、特にフォトニックバンドギャップ材料において、従来の製造技術を凌ぐ多くの利点を与える。固有の利点の多くは、感光材料に対する適合可能な回折光学素子の直接的なコンフォーマル接触に基づくものである。この構成は、振動に耐え、欠陥構造の処理および組み込みを容易にするとともに、光学的設備を簡略化する。透明な感光性樹脂における1光子露光を用いたその動作に加え、この実施例で与えられる結果は、2光子処理方法の実現可能性を明らかにしている。これらの能力および他の能力により、この近接場ナノパターニング方法は、以前に検討されなかった幾何学的構成をもつ有用なフォトニック構造およびフォノニック構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1A】光学干渉パターンを使用して3Dナノスケール構造を形成するための例示的な方法及び装置を示す概略図であり。
【図1B】対称的なパターンのレリーフ形態を備えるレリーフパターンを示す本発明の位相マスクの拡大図を示している。
【図2】放射線感応材料が電磁放射線源とマスク要素との間に位置付けられる本発明の方法において有用な光学的配置を示す概略図である。
【図3】基板表面上にナノスケール構造を形成するための本発明の例示的な方法におけるステップを示す概略図を示している。
【図4】本発明の方法において使用できるエラストマー位相マスクを形成するための例示的な方法を示す概略図である。
【図5】選択された縦及び横の物理的寸法を有する3D構造を形成するために必要な光学的特性を有するマスク要素を形成する例示的な方法を要約するフローチャートである。
【図6A】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6B】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6C】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6D】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6E】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6F】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6G】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図6H】本発明の方法を使用してマイクロ流体システムのチャンネル内に組み込まれた3Dナノ構造の走査型電子顕微鏡写真及び光学顕微鏡写真を示している。
【図7A】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7B】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7C】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7D】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7E】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7F】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7G】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7H】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7I】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7J】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7K】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図7L】本発明の方法及び装置を使用して形成することができる広範囲の周期的構造における走査型電子顕微鏡写真及び計算された強度分布を示している。
【図8A】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8B】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8C】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8D】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8E】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8F】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8G】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8H】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8I】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8J】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8K】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図8L】特別に設計された本発明の適合可能な位相マスクを用いて形成された非周期的構造の幾何学的構成をあらわす走査型電子顕微鏡写真、計算された強度分布、共焦点顕微鏡写真(Leica SP2)を示している。
【図9A】本発明の構造を形成する方法において電磁放射線の時間コヒーレンスを制御するための例示的な光学的配置を示している。
【図9B】本発明の構造を形成する方法において電磁放射線の空間コヒーレンスを制御するための例示的な光学的配置を示している
【図9C】本発明の構造を形成する方法において電磁放射線の空間コヒーレンスを制御するための例示的な光学的配置を示している。
【図10A】本方法によって形成される構造中の形態を含む層の厚さに対する空間コヒーレンスの選択的調整の影響を示す3D構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図10B】本方法によって形成される構造中の形態を含む層の厚さに対する空間コヒーレンスの選択的調整の影響を示す3D構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図10C】本方法によって形成される構造中の形態を含む層の厚さに対する空間コヒーレンスの選択的調整の影響を示す3D構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図11】本発明の方法によって形成され且つマイクロ流体システム中に組み込まれるナノ構造化された受動流体混合要素の光学顕微鏡写真を示している。
【図12A】欠けているポストを備える孤立した欠陥を有する位相マスクの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図12B】この位相マスクを使用して形成された3D構造を示している。
【図13A】本方法を使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。355nmの波長を有する電磁放射線に晒された実施例5のマスク1を使用して形成された構造を示している。
【図13B】本方法を使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。514nmの波長を有する電磁放射線に晒された実施例5のマスク2を使用して形成された構造を示している。
【図13C】本方法を使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。810nmの波長を有する電磁放射線に晒された実施例5のマスク3を使用して形成された構造を示している。
【図14A】本発明の多光子処理方法によって形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図14B】本発明の多光子処理方法によって形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図15A】レリーフを感光性樹脂の表面中に直接的にモールドするため、また、このナノファブリケーション方法によりフォトプロセスを行うために位相マスクを使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図15B】レリーフを感光性樹脂の表面中に直接的にモールドするため、また、このナノファブリケーション方法によりフォトプロセスを行うために位相マスクを使用して形成された構造の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【図16A】マイクロ成型を使用して多層位相マスクを形成することにより放射線感応材料のフォトプロセスを行う本発明の方法における有用な構造及びステップを示している。
【図16B】マイクロ成型を使用して多層位相マスクを形成することにより放射線感応材料のフォトプロセスを行う本発明の方法における有用な構造及びステップを示している。
【図16C】マイクロ成型を使用して多層位相マスクを形成することにより放射線感応材料のフォトプロセスを行う本発明の方法における有用な構造及びステップを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D構造を形成するための方法であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料との直接的な光通信で、マスク要素へと方向付け、前記マスク要素が複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記光学干渉パターンが、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの少なくとも一部が前記マスク要素を透過することにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学干渉パターンが、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの少なくとも一部を前記マスク要素によって反射することにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光学干渉パターンが、前記マスク要素を通じた前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの少なくとも一部の透過と、前記放射線感応材料による前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの少なくとも一部の反射との組み合わせにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記3D構造が、約20ナノメートル〜約1000ナノメートルの少なくとも1つの物理的寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の領域を重合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記光学干渉パターンが、電磁放射線の選択された位相分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記光学干渉パターンが、電磁放射線の選択された強度分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記光学干渉パターンが、電磁放射線の選択された偏光状態分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記マスク要素が、前記放射線感応材料の接触面とコンフォーマル接触する少なくとも1つの接触面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記マスク要素が位相マスクである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記位相マスクが適合可能なエラストマー位相マスクである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記エラストマー位相マスクがポリジメチルシロキサンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記位相マスクがレリーフパターンを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記レリーフパターンが、放射線感応材料の接触面とコンフォーマル接触した状態で位置付けられる複数の接触面を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レリーフパターンが、約5000ナノメートル〜約20ナノメートルの範囲にわたって選択された寸法を示す複数のレリープ形態を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記レリーフパターンが、対称なパターンのレリーフ形態を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記レリーフパターンが、非対称なパターンのレリーフ形態を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記マスク要素及び前記放射線感応材料の前記接触面が滑らかで平坦な面である、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記放射線感応材料が基板によって支持されている、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記基板が、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを少なくとも部分的に透過させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記放射線感応材料が感光性樹脂を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線が、前記放射線感応材料による単光子吸収が光重合を開始するような波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線が、前記放射線感応材料による多光子吸収が光重合を開始するような波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記マスク要素が、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線の一部の透過を妨げる1つ以上の振幅変調要素を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記振幅変調要素が、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線の一部を吸収し、反射し、或いは、散乱させる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記振幅変調要素が薄い金属膜である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記放射線感応材料を1つ以上の溶媒に対して晒すことにより、前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去するステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
超臨界CO2を用いて乾燥することにより前記溶媒を除去するステップを更に備える、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記3D構造をベークするステップを更に備える、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記電磁放射線に晒している最中に前記放射線感応材料を加熱するステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
基板上に3D構造のパターンを形成する方法を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記3D構造がナノスケール形態のパターンを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記3D構造が、
ナノ多孔質フィルタと、
光結晶と、
フォノン結晶と、
マイクロ流体システムのための受動ミキサと、
マイクロ電子機器システムにおける要素と、
ナノ電子機器システムにおける要素と、
担体と、
から成るグループより選択される装置又は装置部品である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記3D構造が、選択されたサイズの縦寸法を有する少なくとも1つの形態を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記3D構造が、選択されたサイズの横寸法を有する少なくとも1つの形態を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
3D構造を形成するための装置であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを発生するための電磁放射線源と、
放射線感応材料と直接的に光通信を行うマスク要素と、
を備え、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームが前記マスク要素へと方向付けられ、前記マスク要素が複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成し、前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造が形成される、装置。
【請求項38】
前記マスク要素が、前記放射線感応材料の接触面とコンフォーマル接触する少なくとも1つの接触面を有する、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記マスク要素が位相マスクである、請求項37に記載の装置。
【請求項40】
前記位相マスクが適合可能なエラストマー位相マスクである、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記エラストマー位相マスクがポリジメチルシロキサンを含む、請求項39に記載の装置。
【請求項42】
前記位相マスクが、放射線感応材料の接触面とコンフォーマル接触する複数の接触面を有するレリーフパターンを備える、請求項39に記載の装置。
【請求項43】
前記レリーフパターンが、約5000ナノメートル〜約20ナノメートルの範囲にわたって選択された寸法を示す複数のレリープ形態を有する、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記レリーフパターンが、対称なパターンのレリーフ形態を備える、請求項42に記載の装置。
【請求項45】
前記レリーフパターンが、約5000ナノメートル〜約50ナノメートルの範囲にわたって選択された周期性を有する、請求項42に記載の装置。
【請求項46】
前記レリーフパターンが、非対称なパターンのレリーフ形態を備える、請求項42に記載の装置。
【請求項47】
前記電磁放射線源が狭帯域の電磁放射線源を備える、請求項37に記載の装置。
【請求項48】
前記電磁放射線源が広帯域の電磁放射線源と光学フィルタとを備え、前記光学フィルタが、前記電磁放射線源と前記マスク要素との間に位置付けられている、請求項37に記載の装置。
【請求項49】
前記電磁放射線源と前記マスク要素との間に位置付けられたコヒーレンス選択要素を更に備え、前記コヒーレンス選択要素が、前記マスク要素へと方向付けられた前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームのコヒーレンスを選択するようになっている、請求項37に記載の装置。
【請求項50】
前記コヒーレンス選択要素が、
レンズと、
コリメーションチューブと、
ピンホールと、
光学干渉フィルタと、
モノクロメータと、
カットオフフィルタと、
から成るグループより選択される、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
基板を3D構造でパターン化するパターニング装置を備える、請求項37に記載の装置。
【請求項52】
約20ナノメートル〜約1000ナノメートルの範囲より選択される少なくとも1つの寸法を有する1つの3D構造を形成するための装置を備える、請求項37に記載の装置。
【請求項53】
約20ナノメートル〜約1000ナノメートルの範囲より選択される少なくとも1つの寸法を有する複数の3D構造を形成するための装置を備える、請求項37に記載の装置。
【請求項54】
装置内で3D構造を組み立てるための方法であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、前記装置内に位置付けられた放射線感応材料との直接的な光通信で、マスク要素へと方向付け、前記マスク要素が複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記装置内の前記放射線感応材料中に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記装置内に前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項55】
前記装置の少なくとも部分的に透明な領域に、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを通過させるステップを更に備える、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記装置が、
マイクロ流体システムと、
マイクロ電子機器装置と、
光学システムと、
導波管と、
光結晶アセンブリと、
ナノ電子機器装置と、
ナノ流体システムと、
から成るグループより選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
3D構造を形成するための方法であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記コヒーレントな電磁放射線ビームの空間コヒーレンス、時間コヒーレンス又はこれらの両方を選択するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料との直接的な光通信で、マスク要素へと方向付け、前記マスク要素が複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項58】
前記3D構造が、前記マスク要素の近傍のナノスケール構造、マイクロスケール構造又はこれらの両方を有する領域を備え、前記コヒーレントな電磁放射線ビームの前記空間コヒーレンス、時間コヒーレンス又はこれらの両方の選択が、ナノスケール構造、マイクロスケール構造又はこれらの両方を有する前記領域の物理的寸法を定める、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記空間コヒーレンス、時間コヒーレンス又はこれらの両方が、前記3D構造が当該3D構造の全体にわたって延びていないナノスケール形態、マイクロスケール形態又はこれらの両方を有するように選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記コヒーレントな電磁放射線ビームの空間コヒーレンス、時間コヒーレンス又はこれらの両方を選択する前記ステップが、
レンズと、
コリメーションチューブと、
ピンホールと、
光学干渉フィルタと、
モノクロメータと、
カットオフフィルタと、
から成るグループより選択されるコヒーレンス選択要素に前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを通過させるステップを備える、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
3D構造を形成するための方法であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料とコンフォーマル接触するマスク要素へと方向付け、前記マスク要素が複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項62】
3D構造を形成するための方法であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料と光学的に接触するマスク要素へと方向付け、前記マスク要素がレリーフパターンを有するとともに複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項63】
3D構造を形成するための方法であって、
放射線感応材料を設けるステップと、
前記放射線感応材料上にレリーフパターンを形成するステップと、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを前記レリーフパターンへと方向付け、前記レリーフパターンが複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項1】
3D構造を形成するための方法であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料との直接的な光通信で、マスク要素へと方向付け、前記マスク要素が複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記光学干渉パターンが、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの少なくとも一部が前記マスク要素を透過することにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学干渉パターンが、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの少なくとも一部を前記マスク要素によって反射することにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光学干渉パターンが、前記マスク要素を通じた前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの少なくとも一部の透過と、前記放射線感応材料による前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームの少なくとも一部の反射との組み合わせにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記3D構造が、約20ナノメートル〜約1000ナノメートルの少なくとも1つの物理的寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の領域を重合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記光学干渉パターンが、電磁放射線の選択された位相分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記光学干渉パターンが、電磁放射線の選択された強度分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記光学干渉パターンが、電磁放射線の選択された偏光状態分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記マスク要素が、前記放射線感応材料の接触面とコンフォーマル接触する少なくとも1つの接触面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記マスク要素が位相マスクである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記位相マスクが適合可能なエラストマー位相マスクである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記エラストマー位相マスクがポリジメチルシロキサンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記位相マスクがレリーフパターンを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記レリーフパターンが、放射線感応材料の接触面とコンフォーマル接触した状態で位置付けられる複数の接触面を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レリーフパターンが、約5000ナノメートル〜約20ナノメートルの範囲にわたって選択された寸法を示す複数のレリープ形態を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記レリーフパターンが、対称なパターンのレリーフ形態を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記レリーフパターンが、非対称なパターンのレリーフ形態を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記マスク要素及び前記放射線感応材料の前記接触面が滑らかで平坦な面である、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記放射線感応材料が基板によって支持されている、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記基板が、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを少なくとも部分的に透過させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記放射線感応材料が感光性樹脂を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線が、前記放射線感応材料による単光子吸収が光重合を開始するような波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線が、前記放射線感応材料による多光子吸収が光重合を開始するような波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記マスク要素が、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線の一部の透過を妨げる1つ以上の振幅変調要素を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記振幅変調要素が、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線の一部を吸収し、反射し、或いは、散乱させる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記振幅変調要素が薄い金属膜である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記放射線感応材料を1つ以上の溶媒に対して晒すことにより、前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去するステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
超臨界CO2を用いて乾燥することにより前記溶媒を除去するステップを更に備える、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記3D構造をベークするステップを更に備える、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記電磁放射線に晒している最中に前記放射線感応材料を加熱するステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
基板上に3D構造のパターンを形成する方法を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記3D構造がナノスケール形態のパターンを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記3D構造が、
ナノ多孔質フィルタと、
光結晶と、
フォノン結晶と、
マイクロ流体システムのための受動ミキサと、
マイクロ電子機器システムにおける要素と、
ナノ電子機器システムにおける要素と、
担体と、
から成るグループより選択される装置又は装置部品である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記3D構造が、選択されたサイズの縦寸法を有する少なくとも1つの形態を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記3D構造が、選択されたサイズの横寸法を有する少なくとも1つの形態を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
3D構造を形成するための装置であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを発生するための電磁放射線源と、
放射線感応材料と直接的に光通信を行うマスク要素と、
を備え、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームが前記マスク要素へと方向付けられ、前記マスク要素が複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成し、前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造が形成される、装置。
【請求項38】
前記マスク要素が、前記放射線感応材料の接触面とコンフォーマル接触する少なくとも1つの接触面を有する、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記マスク要素が位相マスクである、請求項37に記載の装置。
【請求項40】
前記位相マスクが適合可能なエラストマー位相マスクである、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記エラストマー位相マスクがポリジメチルシロキサンを含む、請求項39に記載の装置。
【請求項42】
前記位相マスクが、放射線感応材料の接触面とコンフォーマル接触する複数の接触面を有するレリーフパターンを備える、請求項39に記載の装置。
【請求項43】
前記レリーフパターンが、約5000ナノメートル〜約20ナノメートルの範囲にわたって選択された寸法を示す複数のレリープ形態を有する、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記レリーフパターンが、対称なパターンのレリーフ形態を備える、請求項42に記載の装置。
【請求項45】
前記レリーフパターンが、約5000ナノメートル〜約50ナノメートルの範囲にわたって選択された周期性を有する、請求項42に記載の装置。
【請求項46】
前記レリーフパターンが、非対称なパターンのレリーフ形態を備える、請求項42に記載の装置。
【請求項47】
前記電磁放射線源が狭帯域の電磁放射線源を備える、請求項37に記載の装置。
【請求項48】
前記電磁放射線源が広帯域の電磁放射線源と光学フィルタとを備え、前記光学フィルタが、前記電磁放射線源と前記マスク要素との間に位置付けられている、請求項37に記載の装置。
【請求項49】
前記電磁放射線源と前記マスク要素との間に位置付けられたコヒーレンス選択要素を更に備え、前記コヒーレンス選択要素が、前記マスク要素へと方向付けられた前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームのコヒーレンスを選択するようになっている、請求項37に記載の装置。
【請求項50】
前記コヒーレンス選択要素が、
レンズと、
コリメーションチューブと、
ピンホールと、
光学干渉フィルタと、
モノクロメータと、
カットオフフィルタと、
から成るグループより選択される、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
基板を3D構造でパターン化するパターニング装置を備える、請求項37に記載の装置。
【請求項52】
約20ナノメートル〜約1000ナノメートルの範囲より選択される少なくとも1つの寸法を有する1つの3D構造を形成するための装置を備える、請求項37に記載の装置。
【請求項53】
約20ナノメートル〜約1000ナノメートルの範囲より選択される少なくとも1つの寸法を有する複数の3D構造を形成するための装置を備える、請求項37に記載の装置。
【請求項54】
装置内で3D構造を組み立てるための方法であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、前記装置内に位置付けられた放射線感応材料との直接的な光通信で、マスク要素へと方向付け、前記マスク要素が複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記装置内の前記放射線感応材料中に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記装置内に前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項55】
前記装置の少なくとも部分的に透明な領域に、前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを通過させるステップを更に備える、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記装置が、
マイクロ流体システムと、
マイクロ電子機器装置と、
光学システムと、
導波管と、
光結晶アセンブリと、
ナノ電子機器装置と、
ナノ流体システムと、
から成るグループより選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
3D構造を形成するための方法であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記コヒーレントな電磁放射線ビームの空間コヒーレンス、時間コヒーレンス又はこれらの両方を選択するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料との直接的な光通信で、マスク要素へと方向付け、前記マスク要素が複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項58】
前記3D構造が、前記マスク要素の近傍のナノスケール構造、マイクロスケール構造又はこれらの両方を有する領域を備え、前記コヒーレントな電磁放射線ビームの前記空間コヒーレンス、時間コヒーレンス又はこれらの両方の選択が、ナノスケール構造、マイクロスケール構造又はこれらの両方を有する前記領域の物理的寸法を定める、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記空間コヒーレンス、時間コヒーレンス又はこれらの両方が、前記3D構造が当該3D構造の全体にわたって延びていないナノスケール形態、マイクロスケール形態又はこれらの両方を有するように選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記コヒーレントな電磁放射線ビームの空間コヒーレンス、時間コヒーレンス又はこれらの両方を選択する前記ステップが、
レンズと、
コリメーションチューブと、
ピンホールと、
光学干渉フィルタと、
モノクロメータと、
カットオフフィルタと、
から成るグループより選択されるコヒーレンス選択要素に前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを通過させるステップを備える、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
3D構造を形成するための方法であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料とコンフォーマル接触するマスク要素へと方向付け、前記マスク要素が複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項62】
3D構造を形成するための方法であって、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを、放射線感応材料と光学的に接触するマスク要素へと方向付け、前記マスク要素がレリーフパターンを有するとともに複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項63】
3D構造を形成するための方法であって、
放射線感応材料を設けるステップと、
前記放射線感応材料上にレリーフパターンを形成するステップと、
実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを供給するステップと、
前記実質的にコヒーレントな電磁放射線ビームを前記レリーフパターンへと方向付け、前記レリーフパターンが複数の電磁放射線ビームを形成することにより、前記放射線感応材料内に光学干渉パターンが形成され、前記電磁放射線と前記放射線感応材料との相互作用が、前記放射線感応材料の化学的に改質された領域を形成するステップと、
前記放射線感応材料の前記化学的に改質された領域の少なくとも一部を除去し、或いは、化学的に改質されていない前記放射線感応材料の少なくとも一部を除去することにより、前記3D構造を形成するステップと、
を備える方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A−L】
【図8A−L】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A−L】
【図8A−L】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【公表番号】特表2007−523468(P2007−523468A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541498(P2006−541498)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/040192
【国際公開番号】WO2005/054119
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506175840)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ イリノイ (30)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/040192
【国際公開番号】WO2005/054119
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506175840)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ イリノイ (30)
【Fターム(参考)】
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