説明

4−ピリジノン化合物および癌についてのその使用

式(I):


(I)
の化合物およびその塩が開示される。また、増殖性疾患、例えば癌の治療における該化合物の使用方法、並びに少なくとも一つの式(I)の化合物または医薬的に許容される塩を含む医薬組成物も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、4−ピリジノン化合物およびその塩、癌を含む疾患の治療におけるこのような化合物の使用方法、並びに少なくとも一つの前記化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。
【0002】
Met(肝細胞増殖因子受容体(HGFR)とも呼ばれる)は、主に上皮細胞で発現されるが、内皮細胞、筋芽細胞、造血細胞および運動ニューロンにおいてもまた確認されている。肝細胞増殖因子の過剰発現およびMetの活性化は、多数の異なる腫瘍型において、並びに転移性疾患の促進において、発症および進行に関係している。
【0003】
米国公開特許出願US 2005/0245530 A1は、Metのような増殖因子受容体のタンパク質チロシンキナーゼ活性を阻害し、そのため抗癌剤として有用となる単環式ヘテロ環化合物を開示する。認識されうるように、Met活性化癌の治療に有用であり、他の癌経路に対して有利に活性を有する抗癌化合物についての必要性が残されている。
【0004】
出願人は、Met活性化に依存している癌に対して活性を有しており、またVEGFR阻害剤として癌に対して活性を有している強力な化合物を見出した。出願人はまた、より可溶型の該化合物の投与に有用な該化合物のプロドラッグも発見している。Met活性化癌を治療するための現在知られている抗癌化合物と比較して、異なる薬理学的特性を有する化合物を今から提供することができ、それは、ドラッガビリティ(drugability)を保証する、安定性、バイオアベイラビリティ、溶解性、治療指数、および毒性値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明は、下記の添付図面を引用して説明される。
【0006】
【図1】図1は、GTL−16胃癌異種移植に対する実施例1および実施例2の抗腫瘍活性を示す。
【0007】
【図2】図2は、U87神経膠芽腫異種移植に対して、6.25mpk(mg/kg)、12.5mpk、および25mpkで、14日間、1日1回経口投与した実施例1の抗腫瘍活性を示す(矢印は投薬を示す)。
【0008】
【図3】図3は、実施例1および実施例2のpH−溶解度特性を示す。
【0009】
(発明の概要)
式(I):
【化1】

(I)
[式中、
Gは、H、−CHX−OP(=O)(OH)2、または−CHX−OC(=O)Zであり;
Xは、Hであるか、または一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいアルキルであり;
Zは、一つ以上のアルキル、OH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR34で適宜置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクロであり;並びに
1、R2、R3、およびR4は独立して、Hおよび/またはアルキルである]
の化合物またはその塩が記載される。
【0010】
少なくとも一つの式(I)の化合物もしくはその医薬的に許容される塩;並びに医薬的に許容される担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物もまた記載される。
【0011】
少なくとも一つの式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、治療が必要な哺乳類に投与することを特徴とする、癌の治療方法がさらに記載される。
【0012】
(詳細な説明)
本発明を記載するために使用される種々の用語の定義を以下に列挙した。これらの定義は、個々にまたはより大きい群の一部としてのいずれかで本明細書を通して使用されるとき(特定の例において特に断りがなければ)、それらの用語に適用される。
【0013】
用語「アルキル」および「アルク(alk)」とは、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルカン(炭化水素)基をいう。「アルキル」および/または「アルク」基の例には、これらに限らないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、およびドデシルが含まれる。
【0014】
用語「低級アルキル」とは、1〜4個の炭素原子、好ましくは1〜2個の炭素原子を含む「アルキル」および/または「アルク」基をいう。アルキルまたは他の基に言及して下付き文字を使用する際、下付き文字は、その基が含み得る炭素原子の数をいう。たとえば、用語「C0−C4アルキル」には、単結合および1〜4個の炭素原子を含むアルキル基が含まれ、用語「C1−C4アルキル」とは、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基をいう。低級アルキル基の例には、これらに限らないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびイソブチルが含まれる。
【0015】
「アルキル」および/または「アルク」基は、いずれの利用可能かつ置換可能な位置で、一つ以上の置換基、好ましくは1〜4個の置換基で適宜置換されていてもよい。置換基の例には、ハロゲン(例えば、単一のハロ置換基または複数のハロ置換基が形成され、後者の場合は、例えば、パーフルオロアルキル基、または−CCl3もしくは−CF3を有するアルキル基のような化学基)、ヒドロキシル、−NH2、−NH(アルキル)、−N(アルキル)2、およびシアノが含まれる。
【0016】
用語「シクロアルキル」とは、1〜4個の環を含み、1環あたり3〜8個の炭素原子を含む、十分に飽和の炭化水素基をいう。シクロアルキル基の例には、それだけには限定されないが、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが含まれる。シクロアルキル基は、いずれの利用可能かつ置換可能な結合点で、一つ以上の置換基、好ましくは1〜4個の置換基で適宜置換されていてもよい。置換基の例には、置換アルキルについて列挙した化学基が含まれる。
【0017】
用語「アリール」とは、1〜2個の芳香環を有する環状の芳香族炭化水素基、たとえば、フェニル、ビフェニル、またはナフチルなどをいう。アリール基が2個の芳香環を含む場合(たとえば二環など)、芳香環は、単一の点で結合されているか(たとえばビフェニル)、または縮合(たとえば、ナフチルおよびフェナントレニル)であり得る。
アリール基は、いずれの利用可能かつ置換可能な環位置で、または、原子価により許容される場合は、それと縮合もしくは結合している任意の環上で、一つ以上の置換基、好ましくは1〜5個の置換基で適宜置換されていてもよい。置換基の例には、アルキル、および置換アルキルについて列挙した化学基が含まれる。
【0018】
用語「ヘテロ環」、「ヘテロ環式」および「ヘテロシクロ」とは、十分に飽和、部分的に飽和、または十分に不飽和の芳香族(すなわち、「ヘテロアリール」)または非芳香族環式基をいい、それは、例えば、少なくとも一つの炭素原子含有環において少なくとも一つのヘテロ原子を有する、3〜7員単環式または7〜11員二環式環構造である。ヘテロ原子を含むヘテロ環、ヘテロ環式、またはヘテロシクロの各環は、N、O、および/またはSから選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有していてもよく、この場合、Nおよび/またはSヘテロ原子は、適宜酸化されていてもよく、Nヘテロ原子は適宜四級化されていてもよい。ヘテロ環、ヘテロ環式、またはヘテロシクロは、環または環構造のいずれのヘテロ原子または炭素原子で、分子の残りの部分に結合しうる。ヘテロ環、ヘテロ環式、またはヘテロシクロ基は、アルキル、および置換アルキルについて列挙したものから選択される少なくとも一つの置換基、好ましくは1〜4個の置換基を用いて、いずれの利用可能な結合点でも置換されうる。
【0019】
単環のヘテロ環、ヘテロ環式、またはヘテロシクロの例には、これらに限らないが、例えば、酸化エチレン;アゼチジニル;ピロリジニル;ピロリル;ピラゾリル;オキセタニル;ピラゾリニル;イミダゾリル;イミダゾリニル;イミダゾリジニル;オキサゾリル;オキサゾリジニル;イソオキサゾリニル;イソオキサゾリル;チアゾリル;チアジアゾリル;チアゾリジニル;イソチアゾリル;イソチアゾリジニル;フリル;テトラヒドロフリル;チエニル;オキサジアゾリル;ピペリジニル;ピペラジニル;2−オキソピペラジニル;2−オキソピペリジニル;2−オキソピロロジニル;2−オキソアゼピニル;アゼピニル;ヘキサヒドロジアゼピニル;4−ピペリドニル;ピリジル;ピラジニル;ピリミジニル;ピリダジニル;トリアジニル;トリアゾリル;テトラゾリル;テトラヒドロピラニル;モルホリニル;チアモルホリニル;チアモルホリニルスルホキシド;チアモルホリニルスルホン;1,3−ジオキソラン;およびテトラヒドロ−1,1−ジオキソチエニルが含まれる。
【0020】
二環のヘテロ環、ヘテロ環式、またはヘテロシクロの例には、これらに限らないが、例えば、インドリル;イソインドリル;ベンゾチアゾリル;ベンゾジオキソリル;ベンゾオキサゾリル;ベンゾオキサジアゾリル;ベンゾチエニル;キヌクリジニル;キノリニル;テトラヒドロイソキノリニル;イソキノリニル;ベンズイミダゾリル;ベンゾピラニル;インドリジニル;ベンゾフリル;ベンゾフラザニル;クロモニル;クマリニル;ベンゾピラニル;シンノリニル;キノキサリニル;インダゾリル;ピロロピリジル;フロピリジニル、たとえば、フロ[2,3−c]ピリジニル、フロ[3,2−b]ピリジニル]、およびフロ[2,3−b]ピリジニルなど;ジヒドロベンゾジオキシニル;ジヒドロジオキシドベンゾチオフェニル;ジヒドロイソインドリル;ジヒドロインドリル;ジヒドロキノリニル;ジヒドロキナゾリニル、たとえば、3,4−ジヒドロ−4−オキソ−キナゾリニル;トリアジニルアゼピニルなど;ならびにテトラヒドロキノリニルが含まれる。
【0021】
語句「治療上有効な」は、単独での各薬剤の治療によって、障害の重症度および発生頻度における改善の目標を達成し、一方で、典型的には別の治療法に伴う有害な副作用を回避する、各薬剤の量を定量化することを意図している。例えば、有効な抗癌剤は、患者の生存性を延ばし、腫瘍に伴って急速に増殖する細胞増殖を阻害し、または腫瘍の退縮を行う。
【0022】
式(I)の化合物は塩を形成し、それもまた本発明の範囲内である。本明細書中に使用する用語「塩」とは、無機および/または有機の酸および塩基と共に形成する酸性および/または塩基性の塩を意味する。加えて、式(I)の化合物が塩基性部分(例えば、これに限らないが、ピリジニル基)および酸性部分(例えば、これに限らないが、リン酸二水素基)の両方を含む場合には、双性イオン(「分子内塩(inner salt)」)を形成してもよく、これらは本明細書中で使用する用語「塩」に含まれる。他の塩もまた、例えば製造の間に使用されうる単離工程または精製工程において有用であるが、医薬的に許容し得る(すなわち、無毒の生理学的に許容し得る)塩が好ましい。式(I)の化合物の塩は、例えば、例えば該塩が沈降する媒質または水性媒質中で、式(I)の化合物をある量(例えば、等量)の酸または塩基と反応させ、続いて凍結乾燥することによって形成されうる。
【0023】
本明細書で用いられる語句「医薬的に許容される塩」には、特に断りがなければ、薬理学的に許容される陰イオンまたは陽イオンを含む塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、重硫酸、リン酸、酸性リン酸(acid phosphate)、イソニコチン酸、酢酸、乳酸、サリチル酸、クエン酸、酸性クエン酸(acid citrate)、酒石酸、パントテン酸、重酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ゲンチシン酸(gentisinate)、フマル酸、グルコン酸、グルカロン酸(glucaronate)、メシル酸、糖酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびパモ酸[すなわち、1,1'−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸)]の塩が含まれる。
【0024】
式(I)の化合物は、たとえば、式(I)の化合物を単離および/または精製するために使用できる塩を形成する。式(I)の化合物の塩は、たとえば、式(I)の化合物を、たとえば、等量の酸または塩基と、そのように形成された塩が、たとえば、沈殿、または凍結乾燥によって単離されることを可能にする媒体中で反応させることによって、形成することができる。
【0025】
式(I)の化合物が無機および/または有機の酸を用いて形成することができる酸性塩の例には、これらに限らないが、例えば、酢酸、アスコルビン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、重硫酸、重酒石酸、酸性クエン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ゲンチシン酸、グルコン酸、グルカロン酸、グルタミン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、イソニコチン酸、マレイン酸、メシル酸、メタンスルホン酸、硝酸、パントテン酸、リン酸、酸性リン酸、糖酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、乳酸、およびパモ酸[すなわち、1,1'−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸)]の塩が含まれる。そのような塩は、当業者に知られている方法に従って形成することができる。
【0026】
式(I)の化合物が無機および/または有機の塩基を用いて形成することができる塩基性塩の例には、これらに限らないが、例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属塩、たとえば、ナトリウム、リチウムおよびカリウムの塩など:アルカリ土類金属塩、たとえば、カルシウムおよびマグネシウムの塩など;有機塩基、たとえば、ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール(トリスアミンもしくはトリス)、ヒドラバミン(たとえばN,N−ビス(デヒドロアビエチル)エチレンジアミン等)、N−メチル−D−グルカミン、N−メチル−D−グリカミド、およびt−ブチルアミンなどを用いて形成した塩;アミノ酸たとえば、アルギニンおよびリシンなどを用いて形成した塩;ならびに、薬剤、たとえば、低級ハロゲン化アルキル(たとえば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物)、硫酸ジアルキル(たとえば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミルの硫酸エステル)、長鎖ハロゲン化物(たとえば、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物)、ハロゲン化アラルキル(たとえば、ベンジルおよびフェネチルの臭化物)などを使用して、塩基性窒素含有基を第四級化することによって形成した塩が含まれる。そのような塩は、当業者に知られている方法に従って形成することができる。
【0027】
本明細書中で用いる用語「プロドラッグ」とは、対象に投与した際、代謝的または化学的プロセスによる化学変換を受けて、式(II)の化合物またはその塩をもたらす化合物を示す。プロドラッグの様々な形態が当分野で周知である。そのようなプロドラッグ誘導体の例には、以下を参照されたい:
a)Design of Prodrugs、H. Bundgaard編、(Elsevier、1985)およびMethods in Enzymology、Vol. 112、pp. 309-396、K. Widder, et al.編(Academic Press、1985);
b)A Textbook of Drug Design and Development、Krosgaard-LarsenおよびH. Bundgaard編, Chapter 5、「Design and Application of Prodrugs」、H. Bundgaard、pp. 113-191 (1991);ならびに
c)H. Bundgaard、Advanced Drug Delivery Reviews、8:1-38 (1992)。
【0028】
本明細書で用いられる語句「遺伝子増幅」は、Metがコードされる染色体のMet遺伝子または断片の複数のコピーをもたらすDNA断片の選択的合成を意味する。
【0029】
本明細書で用いられる語句「活性化Met変異」は、構成的に(すなわち、永久に)リン酸化されているMetタンパク質をもたらす、MetのDNA配列における選択的変化を意味する。
【0030】
本明細書で用いられる語句「HGF刺激」は、表現型応答をもたらす受容体を活性化するように、その同族受容体(Met)に結合するHGFの能力を意味する。Metの場合、これは、細胞増殖、運動、分化および/または生存でありうる。
【0031】
本明細書で用いられる用語「患者」には、すべての哺乳類種、例えばヒト、雌ウシ、ウマ、イヌ、およびネコが含まれ;好ましくは、ヒトである。
【0032】
一つの態様において、式(I):
【化2】

(I)
[式中、
Gは、H、−CHX−OP(=O)(OH)2、または−CHX−OC(=O)Zであり;
Xは、Hであるか、または一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいアルキルであり;
Zは、一つ以上のアルキル、OH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR34で適宜置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクロであり;並びに
1、R2、R3、およびR4は独立して、Hおよび/またはアルキルである]
の化合物またはその塩が提供される。
【0033】
一つの態様において、GがHである、式(I)の化合物またはその塩が提供される。この態様の化合物は、式(II):
【化3】

(II)
によって表される構造を有する。
【0034】
式(II)の化合物は、下式:
【化4】

(II−エノール)
によって表されるエノール型で存在しうる。
【0035】
本明細書で用いられるように、用語「式(II)の化合物」および「GがHである、式(I)の化合物」とは、ケト型、エノール型、またはケトおよびエノール型を含むいずれの混合物の式(II)の化合物をいう。
【0036】
別の態様において、式(II)の化合物は塩として提供される。式(II)の化合物の塩の例には、これらに限らないが、トリフルオロ酢酸塩および塩酸塩が含まれる。
【0037】
一つの態様において:
Gが、−CHX−OP(=O)(OH)2または−CHX−OC(=O)Zであり;
Xが、Hであるか、または一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいアルキルであり;
Zが、一つ以上のアルキル、OH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR34で適宜置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクロであり;並びに
1、R2、R3、およびR4が独立して、Hおよび/またはアルキルである、式(I)の化合物またはその塩が提供される。好ましくは、Xは、Hまたはメチルである。この態様の化合物またはその塩は、式(II)の化合物のプロドラッグとして有用である。哺乳類に投与すると、この態様の化合物またはその医薬的に許容される塩は、代謝過程または化学過程によってインビボで化学変換を受けて、式(II)の化合物をもたらす。
【0038】
一つの態様において、
Gが−CHX−OP(=O)(OH)2であり;
Xが、Hであるか、または一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいC1−C4アルキルであり;並びに
1およびR2が独立して、Hおよび/またはアルキルである、式(I)の化合物またはその塩が提供される。この態様の化合物は、式(III):
【化5】

(III)
の構造を有する。
【0039】
好ましくは、Xは、H、メチル、置換メチル、エチル、または置換エチルであり;より好ましくは、Xは、Hまたはメチルであり、最も好ましくは、XはHである。式(III)の化合物は、医薬的に許容される塩、例えば、エタノールアミン、ビスエタノールアミン、トリスアミン、ビストリスアミン、またはN−メチル−D−グルカミン塩として提供されうる。式(III)の化合物の例は、式(IIIa):
【化6】

(IIIa)
の化合物であり、それは塩として提供されうる。式(IIIa)の化合物の適当な塩には、これらに限らないが、エタノールアミン、ビスエタノールアミン、トリスアミン、およびビストリスアミン塩が含まれる。この態様の式(III)の化合物またはその塩は、式(II)の化合物のプロドラッグとして有用である。
【0040】
一つの態様において:
Gが−CHX−OC(=O)Zであり;
Xが、Hであるか、または一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいアルキルであり;
Zが、一つ以上のアルキル、OH、ハロゲン、シアノ,および/または−NR34で適宜置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクロであり;並びに
1、R2、R3、およびR4が独立して、Hおよび/またはアルキルである、式(I)の化合物またはその塩が提供される。好ましくは、Xは、H、C1−C4アルキル、または置換C1−C4アルキル;より好ましくは、H、メチル、エチル、置換メチル、または置換エチル;最も好ましくは、Hまたはメチルである。好ましくは、Zは、C1−C6アルキル、置換C1−C6アルキル、C3−C6シクロアルキル、置換C3−C6シクロアルキル、置換フェニル、適宜置換されていてもよい単環式または二環式ヘテロシクロである。より好ましくは、Zは、−NH2で置換されたC1−C6アルキル、または1つの窒素ヘテロ原子を含む5〜6員ヘテロシクロ、例えばピロリジニルおよびピペリジニル基である。この態様の式(II)の化合物またはその塩は、式(II)の化合物のプロドラッグとして有用である。
【0041】
別の態様において、Gが:
【化7】

である、式(I)の化合物またはその塩が提供される。この態様の化合物は、塩として提供されうる。この態様の化合物またはその塩は、式(II)の化合物のプロドラッグとして有用である。
【0042】
一つの態様において、前記化合物が:
N−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(1);
(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル二水素リン酸エステル(2);
(S)−2−アミノプロパン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(3);
(S)−2−アミノ−3−メチルブタン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(4);
(S)−2−アミノ−4−メチルペンタン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(5);
ピペリジン−3−カルボン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(6);
(S)−ピロリジン−2−カルボン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(7);
(S)−ピロリジン−3−カルボン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(8);
ピペリジン−4−カルボン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(9);
ピペリジン−4−カルボン酸1−(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)エチル(10);
(2S)−2−アミノ−3−メチルブタン酸1−(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)エチル(11);または
1−メチルピペリジン−4−カルボン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(12)
である、式(I)の化合物またはその塩が提供される。
【0043】
肝細胞増殖因子(HGF)(インビトロでコロニー形成を破壊するその能力のため、分散因子(scatter factor)(SF)としても知られている)は、正常細胞および腫瘍細胞において、多面応答(multiple pleiotropic response)を誘導することが知られている間葉由来サイトカインである(Sonnenberg et al., J. Cell Biol., 123:223-235 (1993); Matsumato et al., Crit. Rev. Oncog., 3:27-54 (1992); および Stoker et al., Nature, 327:239-242 (1987))。これらの応答には、上皮および内皮細胞における増殖、上皮コロニーの個々の細胞への解離、上皮細胞の運動性(モトジェネシス(motogenesis))の刺激、細胞生存、細胞の形態形成の誘導(Montesano et al., Cell, 67:901-908 (1991))、および浸潤の促進(Stella et al., Int. J. Biochem. Cell Biol., 12:1357-1362 (1999) および Stuart et al., Int. J. Exp. Path., 81:17-30 (2000))、転移の基礎となっているすべての重要な過程が含まれることが知られている。HGFはまた、血管形成を促進することも報告されている(Bussolino et al., J. Cell Biol., 119:629-641 (1992))。また、HGFは、組織再生、創傷治癒、および正常な胚過程において重要な役割を果たし、そのすべては、細胞の運動性および増殖に依存している。
【0044】
HGFは、その同族受容体であるMetタンパク質チロシンキナーゼ受容体、確認されたプロトオンコジーンへの高親和性結合を通して、これらの生理的過程を開始する(Park et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:6379-6383 (1987) および Bottaro et al., Science, 251:802-804 (1991))。成熟型Metは、大きな細胞外ドメインを有する高度にグリコシル化された外部のα−サブユニットおよびβ−サブユニット、膜貫通領域、並びに細胞質チロシンキナーゼドメインからなる。リガンド結合は、自己リン酸化活性化受容体をもたらすMet二量体形成を誘導する。Metの活性化は、複数のエフェクタータンパク質をリクルートするのに関与する重要な細胞質チロシン残基のトランスリン酸化によって規定されるシグナル伝達カスケードを促進する(Furge et al., Oncogene, 19:5582-5589 (2000))。これらには、PI3−キナーゼのp85サブユニット、ホスホリパーゼCγ(Gaul et al., Oncogene, 19:1509-1518 (2000))、Grb2およびShcアダプタータンパク質、タンパク質ホスファターゼSHP2およびGab1が含まれる。後者のアダプターは、リガンド占有に応答してチロシンがリン酸化される、主要な下流のドッキング分子として現れている(Schaeper et al., J. Cell Biol., 149:1419-1432 (2000); Bardelli et al., Oncogene, 18:1139-1146 (1999) および Sachs et al., J. Cell Biol., 150:1375-1384 (2000))。他のシグナル伝達分子の活性化は、HGF刺激細胞、最も注目すべきは、Ras、MAPキナーゼ、STAT、ERK−1、ERK−2およびFAKにおいて報告されている(Tanimura et al., Oncogene 17:57-65 (1998); Lai et al., J. Biol. Chem., 275:7474-7480 (2000) および Furge et al., Oncogene, 19:5582-5589 (2000))。多くのこれらのシグナル伝達分子の役割は、細胞増殖において十分に確立されている。
【0045】
Met(肝細胞増殖因子受容体(HGFR)とも呼ばれている)は、主に上皮細胞で発現されるが、内皮細胞、筋芽細胞、造血細胞および運動ニューロンにおいても確認されている。HGFの過剰発現およびMetの活性化は、多数の異なる腫瘍型および転移性疾患の促進における発症および進行に関係している。Metを癌に結びつける最初の根拠は、キナーゼドメインミスセンス変異の同定によってサポートされており、それによって個体は乳頭状腎細胞癌(PRC)および肝細胞癌(HCC)になりやすくなる(Lubensky et al., Amer. J. Pathology, 155:517-526 (1999))。変異型のMetはまた、卵巣癌、小児HCC、胃癌、頭頚部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、結腸直腸転移においても確認されている(Christensen et al., Cancer Res., 63:7345-7355 (2003); Lee et al., Oncogene, 19:4947-4953 (2000) and Direnzo et al., Clin. Cancer Res., 1:147-154 (1995))。また、癌におけるMetの役割をサポートするさらなる根拠は、様々な腫瘍、例えば甲状腺癌、卵巣癌および膵癌におけるHGFおよびMet受容体の過剰発現に基づいている。それが結腸直腸癌の肝臓転移において増幅されることもまた示されている(Rong et al., Cancer Res., 55:1963-1970 (1995); Rong et al., Cancer Res., 53:5355-5360 (1993); Kenworthy et al., Br. J. Cancer, 66:243-247 (1992) and Scarpino et al., J. Pathology, 189:570-575 (1999))。TPR−Met(CMLにおけるBCR/Ablに類似する活性型)は、ヒト胃癌において記載および確認されている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4892-4896 (1991))。浸潤性乳癌を有する患者において、および非小細胞肺癌患者における最近の研究において、受容体またはリガンドの発現は生存の低下の予測因子であり、さらにMetを腫瘍進行に結びつける(Camp et al., Cancer, 86:2259-2265 (1999) and Masuya et al., Br. J. Cancer, 90:1555-1562 (2004))。一般に、間葉に由来する大部分のヒト腫瘍および腫瘍細胞株は、HGFRおよび/またはHGFを不適切に発現する。
【0046】
多数の実験データによって、最終的に転移につながる腫瘍浸潤、増殖、生存および進行におけるHGFおよびMetの役割がサポートされる。前臨床的に、HGFの遺伝子組換え発現によって、転移性の表現型がもたらされ(Takayama et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:701-706 (1997))、増幅/過剰発現したMetは、NIH−3T3細胞を自然に形質転換する(Cooper et al., EMBO J., 5:2623-2628 (1986))。
【0047】
HGFまたはMetを標的とする生物学的作用物質、例えばリボザイム、抗体およびアンチセンスRNAは、腫瘍形成を阻害することが示されている(Stabile et al., Gene Therapy, 11:325-335 (2004); Jiang et al., Clin. Cancer Res, 9:4274-4281 (2003) および Genentech US 6,214,344 (2001))。したがって、Metを標的とする選択的な小分子キナーゼ修飾因子は、癌の治療のための治療可能性を有することが期待され、その中で、Met受容体活性化は、一次的な腫瘍および二次的な転移の発生および進行において重要な役割を果たす。HGFが、腫瘍増殖および転移に重要な過程である血管形成を制御することもまた知られている。それゆえ、このクラスの修飾因子は、とりわけ、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、肥満症および炎症疾患(例えば関節リウマチ)が含まれうる血管形成依存性疾患にも同様に強い影響を与える可能性がある。
【0048】
式(II)の化合物は、癌、例えば、Met活性化に依存する癌の治療に有用である。Met活性化は、遺伝子増幅、活性化Met変異および/またはHGF刺激によって制御される。したがって、該治療は、式(II)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを患者に投与することを特徴とする。式(II)の化合物は、公知のMetキナーゼ阻害剤よりも効力が増大しているので、癌の治療に特に有用であることが分かっている。さらに、式(II)の化合物はまた、VEGFR(血管内皮増殖因子受容体)阻害剤、例えばVEGFR−2阻害剤としての活性も有しているので、癌の治療に特に有用である。
【0049】
一つの態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を治療が必要な哺乳類に投与することを特徴とする、癌の治療方法が提供される。この態様の方法は、様々な癌、例えば、これらに限らないが、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓/胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)、線維肉腫、神経膠芽腫/星細胞腫、メラノーマ、および中皮腫を治療するのに用いられうる。好ましくは、この態様の方法は、肺癌、頭頚部癌、胃癌、または膀胱癌を治療するのに用いられる。この態様において、治療方法における投与に適した化合物には、式(II)の化合物のプロドラッグ、例えば式(I):
[式中、
Gは、−CHX−OP(=O)(OH)2または−CHX−OC(=O)Zであり;
Xは、Hであるか、または一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいアルキルであり;
Zは、一つ以上のアルキル、OH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR34で適宜置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクロであり;並びに
1、R2、R3、およびR4は独立して、Hおよび/またはアルキルである]
の化合物が含まれる。好ましくは、Xは、H、C1−C4アルキル、または置換C1−C4アルキル;より好ましくは、H、メチル、エチル、置換メチル、または置換エチル;最も好ましくは、Hまたはメチルである。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0050】
一つの態様において、式(II)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを治療が必要な哺乳類に投与することを特徴とする、癌の治療方法が提供される。例えば、この方法において、式(II)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの治療有効量が投与されうる。この態様の方法は、様々な癌、例えば、これらに限らないが、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓/胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、MFH/線維肉腫、メラノーマ、中皮腫、および神経膠芽腫/星細胞腫を治療するのに用いられうる。好ましくは、この態様の方法は、肺癌、頭頚部癌、胃癌、または膀胱癌を治療するのに用いられる。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0051】
一つの態様において、式(II)の化合物の一つ以上のプロドラッグまたは前記プロドラッグの医薬的に許容される塩を治療が必要な哺乳類に投与することを特徴とする、癌の治療方法が提供される。例えば、該方法は、式(II)の化合物の一つ以上のプロドラッグまたは前記プロドラッグの医薬的に許容される塩の治療有効量を投与するのに用いられうる。哺乳類に投与した後、式(II)の化合物の一つ以上のプロドラッグは、代謝過程または化学過程によってインビボで化学変換を受けて、式(II)の化合物が生じる。一つ以上のプロドラッグの治療有効量とは、インビボで式(II)の化合物の治療有効量を与えるのに必要な投与されるプロドラッグの量をいう。好ましくは、この態様の方法において、1つのプロドラッグが投与される。より好ましくは、この態様の方法において、1つのプロドラッグの治療有効量が投与される。適当なプロドラッグには、式(I):
[式中、
Gは、−CHX−OP(=O)(OH)2または−CHX−OC(=O)Zであり;
Xは、Hであるか、または一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいアルキルであり;
Zは、一つ以上のアルキル、OH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR34で適宜置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクロであり;並びに
1、R2、R3、およびR4は独立して、Hおよび/またはアルキルである]
の化合物が含まれる。好ましくは、Xは、H、C1−C4アルキル、または置換C1−C4アルキル;より好ましくは、H、メチル、エチル、置換メチル、または置換エチル;最も好ましくは、Hまたはメチルである。この態様の方法は、様々な癌、例えば、これらに限らないが、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓/胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、MFH/線維肉腫、神経膠芽腫/星細胞腫、メラノーマ、および中皮腫を治療するのに用いられうる。好ましくは、この態様の方法は、肺癌、頭頚部癌、胃癌、または膀胱癌を治療するのに用いられる。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0052】
一つの態様において、式(IIIa)の化合物またはその医薬的に許容される塩を治療が必要な哺乳類に投与することを特徴とする、癌の治療方法が提供される。式(IIIa)の化合物は、式(II)の化合物のプロドラッグである。本方法において、治療上許容される量の式(IIIa)の化合物またはその医薬的に許容される塩が投与されうる。治療有効量の式(IIIa)の化合物とは、インビボで治療有効量の式(II)の化合物を与えるのに必要な投与されるプロドラッグの量をいう。この態様の方法は、様々な癌、例えば、これらに限らないが、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓/胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、MFH/線維肉腫、神経膠芽腫/星細胞腫、メラノーマ、および中皮腫を治療するのに用いられうる。好ましくは、この態様の方法は、肺癌、頭頚部癌、胃癌、または膀胱癌を治療するのに用いられる。好ましくは、哺乳類はヒトである。この態様の方法に有用な式(IIIa)の化合物の医薬的に許容される塩には、ビスエタノールアミン塩およびビストリスアミン塩が含まれる。
【0053】
一つの態様において、癌の治療剤の製造における、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用が提供される。好ましくは、本態様において、治療に付される癌は、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓/胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、メラノーマ、神経膠芽腫/星細胞腫、MFH/線維肉腫、または中皮腫である。
【0054】
一つの態様において、癌がMet活性化に依存しており、該Met活性化が、遺伝子増幅、活性化Met変異および/またはHGF刺激によって制御され、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、哺乳類における癌の治療方法が提供される。この態様の方法は、様々な癌、例えば、これらに限らないが、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓/胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、MFH/線維肉腫、メラノーマ、中皮腫、および神経膠芽腫/星細胞腫を治療するのに用いられうる。好ましくは、この態様の方法は、肺癌、頭頚部癌、胃癌、または膀胱癌を治療するのに用いられる。この態様において、治療方法における投与に適した化合物には、式(II)の化合物のプロドラッグ、例えば、式(I):
[式中、
Gは、−CHX−OP(=O)(OH)2または−CHX−OC(=O)Zであり;
Xは、Hであるか、または一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいアルキルであり;
Zは、一つ以上のアルキル、OH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR34で適宜置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクロであり;並びに
1、R2、R3、およびR4は独立して、Hおよび/またはアルキルである]
の化合物が含まれる。好ましくは、Xは、H、C1−C4アルキル、または置換C1−C4アルキル;より好ましくは、H、メチル、エチル、置換メチル、または置換エチル;最も好ましくは、Hまたはメチルである。好ましくは、哺乳類はヒトである。好ましくは、この態様の方法において、治療有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩が投与される。
【0055】
一つの態様において、癌がMet活性化に依存しており、該Met活性化が、遺伝子増幅、活性化Met変異および/またはHGF刺激によって制御され、式(II)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを患者に投与することを特徴とする、哺乳類における癌の治療方法が提供される。この態様の方法は、様々な癌、例えば、これらに限らないが、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓/胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、MFH/線維肉腫、神経膠芽腫/星細胞腫、メラノーマ、および中皮腫を治療するのに用いられうる。好ましくは、この態様の方法は、肺癌、頭頚部癌、胃癌、または膀胱癌を治療するのに用いられる。好ましくは、哺乳類はヒトである。好ましくは、この態様の方法において、治療有効量の式(II)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグが投与される。
【0056】
一つの態様において、癌がMet活性化に依存しており、該Met活性化が、遺伝子増幅、活性化Met変異および/またはHGF刺激によって制御され、式(II)の化合物の一つ以上のプロドラッグまたは前記プロドラッグの塩を患者に投与することを特徴とする、哺乳類における癌の治療方法が提供される。哺乳類に投与した後、式(II)の化合物の一つ以上のプロドラッグは、代謝過程または化学過程によってインビボで化学変換を受けて、式(II)の化合物が生じる。一つ以上のプロドラッグの治療有効量とは、インビボで式(II)の化合物の治療有効量を与えるのに必要な投与されるプロドラッグの量をいう。好ましくは、この態様の方法において、1つのプロドラッグが治療有効量で投与される。適当なプロドラッグには、式(I):
[式中、
Gは、−CHX−OP(=O)(OH)2または−CHX−OC(=O)Zであり;
Xは、Hであるか、または一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいアルキルであり;
Zは、一つ以上のアルキル、OH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR34で適宜置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクロであり;並びに
1、R2、R3、およびR4は独立して、Hおよび/またはアルキルである]
の化合物が含まれる。好ましくは、Xは、H、C1−C4アルキル、または置換C1−C4アルキル;より好ましくは、H、メチル、エチル、置換メチル、または置換エチル;最も好ましくは、Hまたはメチルである。この態様の方法は、様々な癌、例えば、これらに限らないが、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓/胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、MFH/線維肉腫、神経膠芽腫/星細胞腫、メラノーマ、および中皮腫を治療するのに用いられうる。好ましくは、この態様の方法は、肺癌、頭頚部癌、胃癌、または膀胱癌を治療するのに用いられる。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0057】
一つの態様において、癌がMet活性化に依存しており、該Met活性化が、遺伝子増幅、活性化Met変異および/またはHGF刺激によって制御され、式(IIIa)の化合物またはその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、哺乳類における癌の治療方法が提供される。式(IIIa)の化合物は、式(II)の化合物のプロドラッグである。治療有効量の式(IIIa)の化合物とは、インビボで治療有効量の式(II)の化合物を与えるのに必要な投与されるプロドラッグの量をいう。好ましくは、治療有効量の式(IIIa)の化合物またはその医薬的に許容される塩が投与される。この態様の方法は、様々な癌、例えば、これらに限らないが、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓/胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、MFH/線維肉腫、神経膠芽腫/星細胞腫、メラノーマ、および中皮腫を治療するのに用いられうる。好ましくは、この態様の方法は、肺癌、頭頚部癌、胃癌、または膀胱癌を治療するのに用いられる。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0058】
癌の治療では、化学療法剤および/または他の治療(たとえば放射線療法)の組合せが多くの場合有利である。第2の(または第3の)薬剤は、第1の治療剤と同じまたはそれと異なる作用機構を有し得る。投与する2つ以上の薬物が異なる様式で、もしくは細胞周期の異なる段階で作用する、および/または2つ以上の薬物が重複しない毒性もしくは副作用を有する、および/または患者が現す特定の病状の治療において組み合わせる薬物の有効性がそれぞれ実証されている、細胞傷害性薬物の組合せを用いることが特に有用であり得る。
【0059】
一つの態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを治療が必要な哺乳類に投与すること;並びに一つ以上の別の抗癌剤を投与することを特徴とする、癌の治療方法が提供される。
【0060】
語句「別の抗癌剤」とは、以下のうちの任意の1つまたは複数から選択される薬物をいう:アルキル化剤(窒素マスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、エチレンイミン誘導体、およびトリアゼンを含む);抗血管形成剤(マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む);代謝拮抗剤(アデノシンデアミナーゼ阻害剤、葉酸拮抗剤、プリン類似体、およびピリミジン類似体を含む);抗生物質または抗体(モノクローナル抗体、CTLA−4抗体、アントラサイクリンを含む);アロマターゼ阻害剤;細胞周期応答モディファイヤー;酵素;ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ホルモン剤および抗ホルモン剤性ならびにステロイド(合成類似体、糖質コルチコイド、エストロゲン/抗エストロゲン[たとえばSERM]、アンドロゲン/抗アンドロゲン、プロゲスチン、プロゲステロン受容体作用剤、ならびに黄体形成ホルモン放出[LHRH]作用剤および拮抗剤を含む);インスリン様成長因子(IGF)/インスリン様成長因子受容体(IGFR)系モジュレーター(IGFR1阻害剤を含む);インテグリンシグナル伝達阻害剤;キナーゼ阻害剤(複数キナーゼ阻害剤および/またはSrcキナーゼもしくはSrc/ablの阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ[CDK]阻害剤、panHer、Her−1およびHer−2抗体、抗VEGF抗体を含めたVEGF阻害剤、EGFR阻害剤、マイトジェン活性化タンパク質[MAP]阻害剤、MEK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PDGF阻害剤、ならびに他のチロシンキナーゼ阻害剤またはセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤を含む;微小管撹乱物質、たとえばエクチナサイジンまたはその類似体および誘導体;微小管安定化剤、たとえばタキサン、天然に存在するエポチロンならびにその合成および半合成の類似体;微小管結合の不安定化剤(ビンカアルカロイドを含む);トポイソメラーゼ阻害剤;プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;白金配位錯体;シグナル伝達阻害剤;抗癌剤および細胞傷害性薬剤として使用される他の薬剤、たとえば、生物学的応答モディファイヤー、成長因子、および免疫調節剤。
【0061】
したがって、本発明の化合物を、癌または他の増殖性疾患の治療に有用な他の抗癌治療と組み合わせて投与してもよい。本明細書中の本発明は、癌を治療する医薬品の調製における式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩およびプロドラッグの使用をさらに含む、かつ/または、本明細書中の式(I)の化合物と、該化合物を他の抗癌もしくは細胞傷害性薬剤および癌を治療するための治療と組み合わせて使用するという指示書とのパッケージを含む。本発明はさらに、式(I)の化合物と1つまたは複数の追加の薬剤との組合せをキット形態で含み、たとえば、一緒に梱包されているか、またはキットとして一緒に販売する別々のパッケージに入れられている、または一緒に配合するように梱包されている。
【0062】
本発明の化合物は、前述の症状に関連する副作用に対処することにおける、その特定の有用性について選択される他の治療剤と共に配合するか、または同時投与することができる。たとえば、本発明の化合物は、制吐剤などの嘔気、過敏症および胃の不快感を予防する薬剤、ならびにH1およびH2抗ヒスタミン剤と共に配合し得る。
【0063】
本発明の化合物には、一つ以上の追加の非対称炭素原子が含まれていてもよく、そのため、2つ以上の立体異性体型で存在しうる。本発明には、そのすべての可能な個々の立体異性体、個々の互変異性体型、おおよびそれらの混合物が含まれる。
【0064】
ジアステレオマーの分離は、通常の技術、例えば、本発明の化合物の立体異性体の混合物、またはその適当な塩もしくは誘導体の分別結晶、クロマトグラフィまたはH.P.L.C.によって達成されうる。該化合物の個々のエナンチオマーはまた、対応の光学的に純粋な中間体から、または分割によって、例えば適当なキラル支持体(chiral support)を用いた対応のラセミ体のH.P.L.C.によって、または必要に応じて、対応のラセミ体を適当な光学活性酸または塩基と反応させることによって形成されるジアステレオマーの塩の分別結晶によっても製造されうる。
【0065】
一つ以上の無毒の医薬的に許容される担体および/または希釈剤および/または添加剤(集合的に「担体」物質と本明細書で呼ばれる)、並びに、必要であれば、他の活性成分と混合した、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩およびプロドラッグを含む医薬組成物のクラスもまた本発明に含まれる。式(I)の化合物は、いずれの適当な経路によって、好ましくはかかる経路に適応した医薬組成物の形態で、および意図される治療に有効な用量で投与されうる。本発明の化合物および組成物は、例えば、経口、粘膜、または非経口、例えば、血管内、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、胸骨内に、および注入技術、通常の医薬的に許容される担体、添加剤、およびベヒクルを含む単位製剤で投与されうる。例えば、医薬担体には、マンニトールもしくは乳糖および微結晶セルロースの混合物が含まれうる。混合物には、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)および崩壊剤(例えば、クロスポビドン)のような追加の成分が含まれうる。担体混合物は、ゼラチンカプセルに充填されるか、または錠剤として圧縮されうる。
【0066】
医薬的に活性な本発明の化合物は、患者、例えばヒトおよび他の哺乳類に投与するための薬剤を製造する薬学の通常の方法に従って加工されうる。
【0067】
経口投与について、医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、懸濁液または液体の形態でありうる。医薬組成物は、好ましくは特定量の活性成分を含む単位製剤の形態で製造される。かかる単位製剤の例は、錠剤またはカプセル剤である。例えば、これらには、約1〜2000mg、好ましくは約1〜500mg、より好ましくは約5〜150mgの活性成分の量が含まれうる。ヒトまたは他の哺乳類に適した1日用量は、患者の症状および他の因子に応じて大きく変化しうるが、再び、通常の方法を用いて決定されうる。
【0068】
投与される化合物の量、並びに本発明の化合物および/または組成物を用いた疾患症状を治療するための投与計画は、様々な因子、例えば、患者の年齢、体重、性別および病状、疾患の型、疾患の重症度、投与経路および投与回数、並びに用いた特定の化合物に依存する。したがって、投与計画は大きく変化しうるが、標準的な方法を用いて日常的に決定されうる。約0.01〜1500mg/kg 体重、好ましくは約0.5〜約50mg/kg 体重、および最も好ましくは約0.1〜20mg/kg 体重の1日用量が適当でありうる。1日用量は、1日あたり1〜4回に分けて投与されうる。
【0069】
治療目的のために、本発明の活性化合物は、通常、示された投与経路に適した一つ以上の添加剤と混合される。経口投与される場合、該化合物は、乳糖、ショ糖、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、ゼラチン、アカシア・ゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混合されてもよく、次いで投与に便利なように錠剤化またはカプセル化されうる。このようなカプセル剤または錠剤には、活性化合物のヒドロキシプロピルメチルセルロース分散で与えられるように、徐放性製剤が含まれうる。
【0070】
式(I)の化合物を含む乳濁液の油性相は、公知の方法で、公知の成分から構成されうる。該相には単に乳化剤が含まれうるが、それには、少なくとも一つの乳化剤と、脂肪もしくは油との混合物、または脂肪および油との混合物が含まれうる。好ましくは、親水性乳化剤が、安定剤として作用する親油性乳化剤とともに含まれる。油および脂肪が含まれるのもまた好ましい。同時に、安定剤の有無にかかわらず、乳化剤は、いわゆる乳化ろうを構成し、並びにワックスは、油および脂肪と一緒になって、いわゆる乳化軟膏基剤を構成し、それはクリーム製剤の油分散相を形成する。本発明の製剤に使用するのに適した乳化剤および乳濁液の安定剤には、ツイーン60、スパン80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、ジステアリン酸グリセリル(単独もしくはワックスとともに)、または当該技術分野でよく知られている他の物質が含まれる。
【0071】
医薬乳剤に用いられやすいほとんどの油中の活性化合物の溶解度は非常に低いので、製剤に適した油または脂肪の選択は、目的の表面特性(cosmetic property)を達成することに基づいている。したがって、クリームは、好ましくは、チューブまたは他の容器からの漏れを防ぐ適当な粘度を有する、べたべたしない非染色性の洗浄可能な生成物であるべきである。直鎖または分枝鎖の、一もしくは二塩基性アルキルエステル類、例えばジイソアジピン酸エステル、ステアリン酸イソセチル、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシルまたは分枝鎖エステル類の混合物が用いられうる。これらは、必要な特性に応じて、単独でまたは組み合わせて用いられうる。あるいは、高融点の脂質、例えば白色軟パラフィンおよび/または流動パラフィンまたは他の鉱油が用いられうる。
【0072】
非経口投与のための製剤は、水性または非水性等張無菌注射液または懸濁液の形態でありうる。これらの溶液および懸濁液は、経口投与のための製剤における使用について言及した一つ以上の担体または希釈剤を用いて、または他の適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いることによって、無菌散剤または顆粒剤から製造されうる。該化合物は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、トラガカント・ゴム、および/または様々な緩衝液に溶解してもよい。他の添加剤および投与方法は、当該医薬の技術分野でよくおよび広く知られている。活性成分はまた、適当な担体、例えば生理食塩水、デキストロース、もしくは水との組成物として、またはシクロデキストリン(すなわち、CAPTISOL(登録商標))、共溶媒可溶化(すなわち、プロピレングリコール)もしくはミセル可溶化(すなわち、ツイーン80)との組成物として、注射によっても投与されうる。
【0073】
無菌注射製剤はまた、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中、例えば1,3−ブタン−ジオール中の溶液として、無菌注射剤または懸濁剤でもよい。用いてもよい許容されるベヒクルおよび溶媒の中に、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム液体がある。さらに、無菌固定油は、通常、溶媒または懸濁媒として用いられる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含めて任意の無菌不揮発性油を用いてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製における使用が見られる。
【0074】
医薬組成物は、通常の医薬的操作、例えば滅菌法に付されてもよく、および/または通常の添加剤、例えば防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などを含んでいてもよい。また、錠剤および丸薬は、腸溶コーティングを用いて製造されうる。このような組成物にはまた、添加剤、例えば湿潤剤、甘味料、香料、および芳香剤が含まれていてもよい。
【0075】
本発明の医薬組成物には、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグが含まれ;並びに、適宜、キナーゼ阻害剤(小分子、ポリペプチド、抗体など)、免疫抑制剤、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗生物質、または抗血管過剰増殖化合物(anti-vascular hyperproliferation compound);並びにいずれの医薬的に許容される担体、添加剤またはベヒクルから選択される追加の薬剤が含まれていてもよい。本発明の代わりの組成物には、本明細書に記載した式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩;並びに医薬的に許容される担体、添加剤またはベヒクルが含まれる。このような組成物には、一つ以上の追加の治療剤、例えば、キナーゼ阻害剤(小分子、ポリペプチド、抗体など)、免疫抑制剤、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗生物質、または抗血管過剰増殖化合物が適宜含まれていてもよい。
【0076】
本発明の医薬組成物に使用することができる医薬的に許容される担体、添加剤およびベヒクルには、これらに限らないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化型薬物送達システム(SEDDS)、例えばd−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート、医薬製剤に使用される界面活性剤、例えばツイーンまたは他の類似するポリマー型送達マトリックス、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩類または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ロウ類、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が含まれる。シクロデキストリン類、例えばα−、β−およびγ−シクロデキストリン、または化学修飾誘導体、例えばヒドロキシアルキルシクロデキストリン(2-および3-ヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含む)、または他の可溶化誘導体もまた、本明細書に記載した式の化合物の送達を亢進するのに有利に用いられうる。
【0077】
式(I)の化合物は、以下のスキーム1〜4に従って製造されうる。該化合物は、当業者に知られている合成方法を用いて容易に合成される。記載した化合物の溶媒和物(例えば、水和物および塩)もまた、本発明の範囲内である。溶媒和および塩形成の方法は、当該技術分野で一般に知られている。したがって、本発明の化合物および実施例は、遊離または水和物型であってもよく、以下のスキームに例示した方法によって得られうる。
【0078】
式(II)の化合物は、スキーム1に概説される合成手順を用いて容易に製造されうる。触媒量の酢酸パラジウム(II)、ラセミ体のBINAP(2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチレン)および炭酸セシウムのTHF溶液の存在下、2,3−ジクロロピリジン(2)をジフェニルメタンイミン(3)と反応させることによって、ベンゾフェノンイミン4が得られうる。スキーム1に示される中間体4のメタル化−ホウ素化−酸化によって、3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4(1H)−オン(5)が得られ、それを次いで1,2−ジフルオロ−4−ニトロベンゼンおよび塩基、例えば炭酸セシウムですぐに処理して、中間体6を得てもよい。例えば、硫化アンモニウムのイソプロパノール溶液を用いた中間体6のニトロ置換基の化学選択的還元によって、アミン7が得られうる。標準ペプチドカップリング試薬、例えばO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸塩(HATU)を用いて、中間体7を、次いで5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボン酸(8)とカップリングさせて、中間体9を得てもよい。イミン9の酸触媒による加水分解によって、次いで目的の化合物(II)を得てもよい。
スキーム1
【化8】

【0079】
スキーム2に記載する化学を用いて、中間体である5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボン酸(8)を得てもよい。したがって、2−(4−フルオロフェニル)アセチルクロリド(10)を、ピリジンの存在下、2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(メルドラム酸)で処理し、生じた付加体をエタノール中で還流して、4−(4−フルオロフェニル)−3−オキソブタン酸エチル(12)を得てもよい。中間体12を、トリアジンおよびナトリウムエトキシドのエタノール溶液で処理することによって、必要なエステル中間体を得てもよく、それは水酸化ナトリウムの存在下、高温で加水分解されて、中間体8が得られうる。
スキーム2
【化9】

【0080】
スキーム3に記載する合成経路を用いて、リン酸プロドラッグである化合物(IIIa)(自己開裂可能なヒドロキシメチルリンカーによる化合物(II)のピリジノン窒素へのリン酸基の連結に関与する)を製造してもよい。塩基、例えば炭酸カリウムのDMF溶液の存在下、中間体9をクロロメチルリン酸ジ−tert−ブチル(化合物13、PCT WO 2005/090367を参照)で処理することによって、保護された中間体14を得てもよい。エタノール中の酸条件下での化合物14の全体的な脱保護によって、目的のリン酸プロドラッグである化合物(IIIa)を得てもよい。
スキーム3
【化10】

【0081】
スキーム4に説明する合成手順を用いて、上記の方法に類似する方法で、ヒドロキシメチルリンカーによって、アミノ酸を化合物(II)に連結してもよい。対応のN保護アミノ酸から生じるクロロメチルエステル16(Synth. Commun., 14:857-864 (1984)およびSynth. Commun., 24:767-772 (1994)に記載された手順を用いた)を、塩基、例えば炭酸カリウムの存在下、化合物(II)と反応させて、中間体17を得てもよい。酸条件下での窒素保護基(この場合、Boc(カルバミン酸t−ブチル)基)の除去によって、目的のアミノ酸エステルプロドラッグ18を得てもよい。
スキーム4
【化11】

【0082】
(実施例)
本発明は、以下の実施例においてさらに規定される。実施例は、説明のためだけに与えられることが理解されるべきである。上記の議論および実施例から、当業者は、その精神および範囲からはずれることなく、本発明の本質的特徴を確認することができ、本発明を様々な使用および条件に適合させるために様々な変化および修飾をなし得る。結果として、本発明は、以下の本明細書に示す実施例によっては限定されず、むしろそれに添付した特許請求の範囲によって規定される。
【0083】
すべての反応は、乾燥窒素またはアルゴンの雰囲気下、磁気撹拌を続けながら行った。すべての蒸発および濃縮は、減圧下、ロータリーエバポレーターにおいて行った。市販の試薬は、さらに精製することなくそのまま用いた。溶媒は市販の無水グレードであり、さらに乾燥または精製せずに用いた。シリカゲル(エメルクキーゼルゲル(EMerck Kieselgel)60、0.040〜0.060mm)を用いてフラッシュクロマトグラフィを行った。
【0084】
フェノメネックス ルナ(Luna) C18 S5 4.6mm×50mmカラムまたはYMC S5 ODS 4.6×50mmカラムを用いて、分析用逆相(RP)HPLCを行った。各場合において、以下の移動相系で、4分 直線グラジエント(100% A:%0 B〜0% A:100% B)を用いた:流速=4mL/分で、A=90% H2O/MeOH+0.2% H3PO4;B=90% MeOH/H2O+0.2% H3PO4および220nmでの検出。
【0085】
以下のカラムの一つにおける、10% メタノール、90% 水、0.1% TFA(溶媒A)および90% メタノール、10% 水、0.1% TFA(溶媒B)を用いた直線グラジエント溶離および220nmでの検出によって、プレパラティブ逆相(RP)HPLCを行った:
A−流速20mL/分での島津 S5 ODS−VP 20×100mmカラム;
B−流速20mL/分でのYMC S5 ODS 30×100mmカラム;
C−流速10mL/分でのフェノメネックス 30×250mmカラム;
D−流速10mL/分でのYMC S5 ODS 20×250mmカラム;
E−流速50mL/分でのYMC S10 ODS 50×500mmカラム;または
F−流速20mL/分でのYMC S10 ODS 30×500mmカラム。
【0086】
1H NMR、RP HPLC、エレクトロスプレーイオン化(ESI MS)または大気圧イオン化(API MS)質量分析によって、最終生成物を評価した。400MHz ブルカーまたは500MHz JEOL装置において、1H NMRスペクトルを得た。溶媒ピークに対するδの単位(百万分率、ppm)で場の強度を表現し、ピーク多重度を以下のように示す:s,一重線;d,二重線;dd,二重線の二重線;dm,多重線の二重線;t,三重線;q,四重線;br s,幅広い一重線;m,多重線。
【0087】
通常用いられる試薬について、以下の略語を用いる:
BocまたはBOC:カルバミン酸t−ブチル;
Fmoc:カルバミン酸9H−フルオレニルメチル;
TEA:トリエチルアミン;
NMM:N−メチルモルホリン;
Ms:メタンスルホニル;
DIEAまたはDIPEA:ジイソプロピルエチルアミンまたはヒューニッヒ塩基;
NMP:N−メチルピロリジノン;
BOP試薬:ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(トリメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロリン酸塩;
DCC:1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド;
EDCI:1−(ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩;
RTまたはrt:室温;
R:保持時間;
h:時間;
min:分;
PyBroP:ブロモトリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロリン酸塩;
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸塩;
TBTU:O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロホウ酸塩;
DMAP:4−N,N−ジメチルアミノピリジン;
HOBtまたはHOBT:ヒドロキシベンゾトリアゾール;
Na(OAc)3BH:トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム;
HOAc:酢酸;
TFA:トリフルオロ酢酸;
LiHMDS:リチウムビス(トリメチルシリル)アミド;
DMSO:ジメチルスルホキシド;
MeCN:アセトニトリル;
MeOH:メタノール;
EtOAc:酢酸エチル;
DMF:ジメチルホルムアミド;
THF:テトラヒドロフラン;
DCE:1,2−ジクロロエタン;
Et2O:ジエチルエーテル;
DCM:ジクロロメタンまたは塩化メチレン;
m−CPBA:4−クロロペルオキシ安息香酸;
ラセミ体のBINAP:2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチレン。
【0088】
実施例1
N−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド
【化12】

(1)
製造1A:3−クロロ−N−(ジフェニルメチレン)ピリジン−2−アミン
【化13】

(1A)
2,3−ジクロロピリジン(105.00g、710mmol)、Pd(OAc)2(3.98g、17.74mmol)、rac−BINAP(16.57g、26.61mmol)、炭酸セシウム(346.76g、1065mmol)、THF(1.05L)、およびベンゾフェノンイミン(124.67mL、745mmol)を、メカニカルスターラーおよび還流冷却器を取り付けた2L CHEMGLASS(登録商標)反応器に加えた。混合物を18時間撹拌しながら、還流するまで加熱した。該物質を濾過し、THF(100mL)で洗浄した。生じた濾液を1/3の容積に減圧濃縮し、さらに精製することなく用いた。
1H NMR (CDCl3) δ 6.79 (dd, 1 H, J = 4.6, 7.6 Hz), 7.19-7.60 (m, 9 H), 7.79-7.95 (m, 2 H), 8.16 (dd, 1 H, J = 1.5, 5.1 Hz); MS(ESI+) m/z 293.1 (M + H)+.
【0089】
製造1B:3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4(1H)−オン
【化14】

(1B)
4L CHEMGLASS(登録商標)反応器(滴下ロート、窒素ブランケット(nitrogen blanket)を取り付けた)に、未精製の3−クロロ−N−(ジフェニルメチレン)ピリジン−2−アミンおよびホウ酸トリイソプロピル(196.38mL、852mmol)を加えた。生じた溶液を0℃に冷却した。別の反応器に、ジイソプロピルアミン(169.78mL、1207mmol)およびTHF(1.05L)を加えた。この溶液を0℃に冷却し、n−ブチルリチウム(683.22mL、923mmol)をゆっくりと加えた。0℃で撹拌した後、この溶液を最初の溶液にゆっくりと加えた。冷却バスを用いずに反応混合物を30分間撹拌した(HPLCによって、出発物質の消費が示された)。水(1.05L)を混合物に加え、続いて過炭酸ナトリウム(336.34g、1065mmol)を1回で加えた。この混合物を20℃で1時間撹拌した。NaHSO3飽和溶液(〜1L)をゆっくりと加えた。水層を除去し、DMF(840.00mL)を有機層に加え、THFを留去した(THFからDMFへの溶媒交換)。DMFをさらに精製することなく用いた。
1H NMR (CDCl3) δ 6.02 (d, 1 H, J = 7.1 Hz), 7.10 (d, 1 H, J = 7.1 Hz), 7.20-7.80 (m, 10 H); MS (ESI+) m/z 309.07 (M + H)+.
【0090】
製造1C:3−クロロ−N−(ジフェニルメチレン)−4−(2−フルオロ−4−ニトロフェノキシ)ピリジン−2−アミン
【化15】

(1C)
2L CHEMGLASS(登録商標)反応器に、未精製の3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4(1H)−オン(上から、今回はDMF溶液)および炭酸セシウム(300.52g、923mmol)を加え、続いて3,4−ジフルオロニトロベンゼン(118.15mL、1065mmol)を加えた。混合物を2時間撹拌しながら約90℃に加熱した。混合物を10分間撹拌しながら25℃に冷却した。この溶液に水(1L)を加えた。混合物をEtOAc(1L)で抽出し、水相を廃棄した。有機物を濃縮して、油を得た。油をEtOH(200mL)に溶解した(時々加熱が必要)。溶液を25℃で4時間静置した後、固形物を濾過によって集めて、黄色固形物として、3−クロロ−N−(ジフェニルメチレン)−4−(2−フルオロ−4−ニトロフェノキシ)ピリジン−2−アミン(104.00g;収率32.73%)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ 6.52 (d, 1 H, J = 5.6 Hz), 6.80 (dd, 1 H, J = 8.1, 9.1 Hz), 7.21-7.60 (m, 8 H), 7.78-7.95 (m, 2 H), 8.00 (m, 1 H), 8.11 (dd, 1 H, J = 2.5, 9.6 Hz), 8.17 (d, 1 H, J = 5.6 Hz); MS (ESI+) m/z 448.01 (M + H)+.
【0091】
製造1D:4−(4−アミノ−2−フルオロフェノキシ)−3−クロロ−N−(ジフェニルメチレン)ピリジン−2−アミン
【化16】

(1D)
以下の物質を2L CHEMGLASS(登録商標)反応器に加えた:3−クロロ−N−(ジフェニルメチレン)−4−(2−フルオロ−4−ニトロフェノキシ)ピリジン−2−アミン(110.00g、221mmol)、イソプロピルアルコール(990.00mL)、硫化アンモニウム(〜40% 水溶液、297.00mL、2324mmol)。混合物を20℃で3〜4時間撹拌した。3−クロロ−N−(ジフェニルメチレン)−4−(2−フルオロ−4−ニトロフェノキシ)ピリジン−2−アミンは、HPLC分析によって検出されなかった。反応混合物を70℃に加熱し、3〜4時間撹拌した。反応が完了したら、水(14mL/g・LR)を加えた。反応混合物を1時間かけて20℃(反応温度)に冷却した。沈澱した固形物を冷却して、それを濾去し、水で洗浄し(12.5mL/g・LR)、続いてヘプタン:MTBE(4:1;5mL/g・LR)で洗浄した。LOD(〜25%)の後、95.3gの未精製の4−(4−アミノ−2−フルオロフェノキシ)−3−クロロ−N−(ジフェニルメチレン)ピリジン−2−アミン(90AP)を得た。約85℃に加熱することによって、未精製の4−(4−アミノ−2−フルオロフェノキシ)−3−クロロ−N−(ジフェニルメチレン)ピリジン−2−アミンをn−BuOAc(7mL/g・LR)に溶解した。85℃で、溶液が濁るまでヘプタン(7mL/g・LR)を滴下して加えた。溶液を次いで撹拌しながら20℃に冷却した。20℃になったら、スラリーを8時間熟成させた。固形物を濾過し、ヘプタン(5mL/g・LR)で洗浄し、次いで真空オーブン中、終夜60℃で乾燥して、薄黄色固形物として、4−(4−アミノ−2−フルオロフェノキシ)−3−クロロ−N−(ジフェニルメチレン)ピリジン−2−アミン(62.53g;収率67.69%)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ 6.23 (dd, 1 H, J = 1.0, 5.6 Hz), 6.43 (m, 1 H), 6.49 (dd, 1 H, J = 2.5, 12.1 Hz), 6.92 (t, 1 H, J = 8.6 Hz), 7.25-7.60 (m, 8 H), 7.87 (m, 2 H), 7.95 (d, 1 H, J = 6.1 Hz); MS(ESI+) m/z 418.6 (M + H)+.
【0092】
製造1E:4−(4−フルオロフェニル)−3−オキソブタン酸エチル
【化17】

(1E)
無水塩化メチレン(100mL)およびピリジン(11mL)に溶解した2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(メルドラム酸、8.0g、56mmol)の溶液に、窒素雰囲気下0℃で、2−(4−フルオロフェニル)塩化アセチル(7.6mL、9.6g、56mmol)をゆっくりと加えた。赤色溶液を0℃で1.5時間撹拌した。反応混合物をHCl(1N、13mL)で処理し、塩化メチレン(200mL)で希釈した。層を分離し、有機層を飽和塩化ナトリウム水で洗浄し、乾燥し、減圧濃縮して、5−(2−(4−フルオロフェニル)アセチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオンを得た。未精製の中間体を無水エタノール(150mL)に懸濁し、生じた混合物を4時間還流した。溶媒を次いで減圧留去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィ(SiO2、230〜400メッシュ、8:1 ヘキサン−酢酸エチルグラジエント溶離)で精製して、目的の生成物(4.6g、37%)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ 7.23-7.15 (m, 2 H), 7.05-6.98 (m, 2 H), 4.18 (q, 2 H, J = 7.0 Hz), 3.81 (s, 2 H), 3.46 (s, 2 H), 1.26 (t, 3 H, J = 7.0 Hz); MS(ESI+) m/z 225 (M+H)+.
【0093】
製造1F:5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボン酸
【化18】

(1F)
4−(4−フルオロフェニル)−3−オキソブタン酸エチル(4.6g、21mmol)の無水エタノール溶液(45mL)に、NaOEt溶液(21% NaOEtのEtOH溶液、7.7mL)およびトリアジン(1.67g、21mmol)を加えた。生じた混合物を1.5時間85℃に加熱し、室温に冷却し、追加分のトリアジン(0.08g、1mmol)およびNaOEt溶液(21% NaOEtのEtOH溶液、0.4mL)で処理した。反応混合物をさらに1時間加熱し、減圧濃縮した。反応のpHが約2になるまで、残渣をHCl(1N)で処理した。沈澱を集めて、黄色固形物として、目的のエステル中間体である5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボン酸エチル(4.5g、83%)を得た。
MS(ESI+) m/z 262 (M+H)+.
【0094】
上記のエステル(1.0g、3.8mmol)をNaOH(2N、20mL)に溶解し、2時間65℃に加熱した。生じた透明混合物を周囲温度に冷却し、固形物を濾去した。濾液を次いでHCl(1N)でpH=1に酸性化し、目的の生成物として、生じた黄色沈澱を集めた(0.73g、82%)。
1H NMR (DMSO-d6) δ 13.52 (br s, 1 H), 8.86 (s, 1 H), 8.51 (s, 1 H), 7.99-7.96 (m, 2 H), 7.55-7.51 (m, 2 H); MS(ESI+) m/z 234 (M+H)+.
【0095】
製造1G:N−(4−(3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド
【化19】

(1G)
4−(4−アミノ−2−フルオロフェノキシ)−3−クロロ−N−(ジフェニルメチレン)ピリジン−2−アミン(836mg、2.0mmol)および5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボン酸(490mg、2.0mmol)のDMF溶液(10mL)に、室温で、HATU(913mg、2.4mmol)およびDIPEA(1.05mL、6.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌し、次いで冷水(50mL)を加えることによってクエンチした。形成した固形物を濾過によって集め、水およびエーテルで洗浄した。固形物をDCMに溶解し、フラッシュカラムクロマトグラフィ(SiO2、DCM〜10% MeOHのDCM溶液)で精製して、明黄色固形物として、目的の生成物(987mg、78%)を得た。
MS(ESI+) m/z 633 (M + H)+.
【0096】
実施例1
N−(4−(3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(410mg、0.65mmol)のTHF溶液(10mL)に、室温で、HCl水(2M、0.81mL、1.62mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで減圧濃縮した。冷たいNaHCO3水(5%、5mL)を次いで残渣に加えた。形成した固形物を濾過によって集め、水で洗浄し、次いでエーテルで洗浄し、減圧乾燥して、目的の生成物(275mg、90%)を得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ 13.31 (s, 1 H), 12.70 (br s, 1 H), 8.63 (d, 1 H, J = 1.30 Hz), 8.09 (d, 1 H, J = 1.50 Hz), 8.02 (dd, 1 H, J = 2.50, 13.10 Hz), 7.76 (d, 1 H, J = 5.50 Hz), 7.71 (m, 2 H), 7.44 (dd, 1 H, J = 1.50, 8.80 Hz), 7.31 (t, 1 H, J = 8.80 Hz), 7.27 (t, 2 H, J = 8.80 Hz), 6.43 (br s, 2 H), 5.96 (d, 1 H, J = 5.60 Hz); MS(ESI+) m/z 469 (M + H)+.
【0097】
N−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド,塩酸塩
N−(4−(3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(製造1G)のTHF溶液を、室温で、過剰のHCl水で処理することによって、N−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(実施例1)のHCl塩を得る。揮発物を減圧留去して、目的の化合物を得る。
【0098】
実施例2
(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル二水素リン酸エステル
【化20】

(2)
N−(4−(3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(5.0g、7.90mmol)のDMF溶液(50mL)に、室温で、炭酸カリウム(7.64g、55.3mmol)およびリン酸ジ−tert−ブチルクロロメチル(9.19g、35.5mmol、PCT WO 2005/090367を参照)を加えた。反応混合物を室温で2日間撹拌した。混合物を次いでEtOAc(250mL)で希釈し、水(200mL)、10% LiCl水(3×250mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過した。濾液を濃縮して、残渣を得て、それをEtOH(160mL)に溶解した。この撹拌溶液に、水(60mL)を加え、続いて濃HCl(40mL)をゆっくり加えた。生じた混合物を室温で15分間撹拌し、次いで終夜静置した。HPLC分析によって、反応が完了したことが示された。固形物を濾過によって集め、50% EtOH/H2O(5×)、水、EtOH、およびEtOAcですすいだ。固形物を減圧乾燥して、白色固形物として、標題の化合物(4.3g、93%)を得た。
1H NMR (TFA-d) δ 9.60 (s, 1 H), 8.79 (s, 1 H), 7.80-7.90 (m, 2 H), 7.65-7.75 (m, 2 H), 7.57 (d, 1 H, J = 7.04 Hz), 7.45 (t, 1 H, J = 6.80 Hz), 7.25-7.33 (m, 2 H), 6.50 (d, 1 H, J = 5.92 Hz), 6.39 (d, 2 H, J = 9.88 Hz); MS(ESI+) m/z 579 (M+H)+.
【0099】
実施例3〜11
以下の一般的手順を用いて、実施例3〜11を製造した:
N−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(実施例1、0.1mmol)および炭酸カリウム(0.4mmol)のDMF混合溶液(1mL)に、対応のクロロメチルエステル誘導体(0.3mmol、製造については、Synth. Commun., 14:857-864 (1984)を参照)を加えた。反応混合物を室温で1〜3時間撹拌し、DCMで希釈し、KH2PO4水溶液で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、N−Boc保護した中間体をカラムクロマトグラフィ(SiO2、DCM/EtOAcグラジエント溶離を用いた)で精製した。
【0100】
N−Boc保護した中間体を次いで30% TFA/DCM(2mL)で1時間処理した。溶媒を減圧留去し、生成物を分取HPLCで精製して、TFA塩として、標題の化合物を得た。
【化21】

表1
実施例3〜11
【表1】





【0101】
実施例12
1−メチルピペリジン−4−カルボン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル
【化22】

(12)
製造12A:N−(4−(2−(ベンズヒドリルアミノ)−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド
【化23】

(12A)
N−(4−(3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(製造1G、127mg、0.2mmol)のEtOH(5mL)およびTHF(5mL)溶液に、0℃で、NaBH4(300mg、7.93mmol)を加えた。混合物を0℃で3時間撹拌し、次いで室温で終夜撹拌した。反応を水でクエンチし、DCMで抽出し、MgSO4で乾燥した。濾過および減圧濃縮の後、白色固形物として、目的の物質(120mg)を得た。
MS(ESI+) m/z 635 (M + H)+.
【0102】
製造12B:4−(3−(4−(2−(ベンズヒドリルアミノ)−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル 1−tert−ブチル ピペリジン−1,4−ジカルボン酸エステル
【化24】

(12B)
N−(4−(2−(ベンズヒドリルアミノ)−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(120mg、0.189mmol)、K2CO3(104mg、0.756mmol)および1−tert−ブチル 4−クロロメチル ピペリジン−1,4−ジカルボン酸エステル(157mg、0.567mmol)のDMF混合溶液(2mL)を室温で3時間撹拌した。反応混合物を次いでDCMで希釈し、形成した固形物を濾去した。残渣をKH2PO4飽和水溶液で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、目的の生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィ(SiO2、DCM/EtOAcグラジエントで溶離)で精製して、白色固形物として、目的の化合物(145mg)を得た。
MS(ESI+) m/z 876 (M + H)+.
【0103】
製造12C:ピペリジン−4−カルボン酸(3−(4−(2−(ベンズヒドリルアミノ)−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル
【化25】

(12C)
4−(3−(4−(2−(ベンズヒドリルアミノ)−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル 1−tert−ブチル ピペリジン−1,4−ジカルボン酸エステル(135mg、0.154mmol)のDCM溶液(5mL)に、室温で、HCl(4N ジオキサン溶液、1mL)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、生じた残渣をプレパラティブ−HPLCで精製して、白色固形物として、目的の生成物(128mg)を得た。
MS(ESI+) m/z 776 (M + H)+.
【0104】
製造12D:1−メチルピペリジン−4−カルボン酸(3−(4−(2−(ベンズヒドリルアミノ)−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル
【化26】

ピペリジン−4−カルボン酸(3−(4−(2−(ベンズヒドリルアミノ)−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(60mg、0.077mmol)、ホルムアルデヒド(37% 水溶液、0.08mL、0.077mmol)および酢酸(0.03mL、0.077)のアセトニトリル混合溶液(2mL)に、室温で、NaCNBH3(50mg、0.8mmol)を加えた。生じた混合物を30分間撹拌した。溶媒を減圧留去し、粗生成物の残渣を、さらに精製することなく次の段階に直接用いた。
【0105】
実施例12
製造(12E)(0.077mmol)を、室温で30分間、TFA(3mL)で処理した。揮発物を減圧留去し、生じた残渣を分取HPLCで精製して、白色固形物として、標題の化合物(32mg)を得た。
1H NMR (CD3OD) δ 12.91 (br s, 1 H), 8.92 (d, 1 H, J = 2.52 Hz), 8.21 (d, 1 H, J = 2.00 Hz), 8.08 (dd, 1 H, J = 13.08, 2.04 Hz), 7.83 (d, 1 H, J = 7.08 Hz), 7.62-7.70 (m, 2 H), 7.48 (d, 1 H, J = 8.80 Hz), 7.39 (t, 1 H, J = 8.56 Hz), 7.20-7.28 (m, 2 H), 6.41 (d, 1 H, J = 6.28 Hz), 6.10 (s, 2 H), 3.50-3.60 (m, 2 H), 3.00-3.10 (m, 2 H), 2.89 (s, 3 H), 2.80-2.89 (m, 1 H), 2.25-2.35 (m, 2 H), 1.80-1.90 (m, 2 H); MS(ESI+) m/z 624 (M + H)+.
【0106】
実施例13
(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル二水素リン酸エステル,ビスエタノールアミン塩
【化27】

製造13A:ジ−tert−ブチル (3−(4−(3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル リン酸エステル
【化28】

(13A)
N−(4−(3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(1.0g、1.58mmol)のDMF溶液(10mL)に、室温で、Cs2CO3(1.3g、3.95mmol)、ヨウ化カリウム(525mg、3.16mmol)および次いでジ−tert−ブチル クロロメチル リン酸エステル(1.2mL、1.90mmol:2.0M DMF溶液)を加えた。反応混合物を室温で26時間撹拌し、次いで酢酸イソプロピル(10mL)および冷水(50mL)を加えることによってクエンチした。有機物を分離し、水(50mL)で洗浄した。86℃で連続蒸留することによって、イソプロパノール(10mL)と溶媒交換した。溶液を20℃に冷却し、固形物を沈澱させた。固形物を濾過によって集め、12時間60℃で減圧乾燥して、オフホワイトの固形物として、目的の生成物(0.98g、72%)を得た。
MS(ESI+) m/z 856 (M + H)+.
【0107】
実施例13
50mL 丸底フラスコに、ジ−tert−ブチル (3−(4−(3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル リン酸エステル(4g、4.68mmol)およびCH2Cl2(4mL)を加えた。混合物を0℃に冷却し、次いでトリフルオロ酢酸(4mL)を加えた。反応混合物を20℃に加温した。HPLCによって、ジ−tert−ブチルリン酸エステルが酸に加水分解されたことが示された。水(0.4mL)を20℃で加え、混合物を20℃で5〜6時間撹拌した。混合物は濃厚スラリーとなった。トルエン(20mL)を加え、次いで約5mLに濃縮して、過剰のトリフルオロ酢酸、CH2Cl2、および水を除去した。これを2回繰り返した。懸濁液をEtOH(120mL、100%)で希釈した。20℃で約8.1のpHが得られるまで、この懸濁液にエタノールアミンを加えた。添加の間、懸濁液は透明となった。添加後、溶液を75℃に加熱し、スクエアプレート(square plate)結晶の形成が観察された。混合物を20℃に冷却し、次いで24時間撹拌した。固形物を濾過によって除去し、EtOH(100%)で洗浄して、スクエアプレート結晶として、ビスエタノールアミン塩を得た。固形物を、エタノールアミン(〜0.1g)とともに、75℃で、EtOH(120mL、100%)を用いて再スラリー化した。棒状針状晶を懸濁液に加え、75℃で7時間撹拌した。混合物を20℃に冷却し、固形物を濾過で集めて、大きな棒状結晶として、ビスエタノールアミン塩を得た。結晶を14時間55℃で乾燥した。
【0108】
実施例14
(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル二水素リン酸エステル,ビストリスアミン塩
【化29】

(14)
50mL 丸底フラスコに、ジ−tert−ブチル (3−(4−(3−クロロ−2−(ジフェニルメチレンアミノ)ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル リン酸エステル(1g、1.17mmol)およびCH2Cl2(1mL)を加えた。混合物を0℃に冷却し、次いでトリフルオロ酢酸(1mL)を加えた。反応混合物を20℃に加温した。HPLCによって、ジ−tert−ブチルリン酸エステルが酸に加水分解されたことが示された。水(0.1mL)を20℃で加え、混合物を20℃で6時間撹拌した。混合物は濃厚スラリーとなった。トルエン(5mL)を加え、次いで約1mLに濃縮して、過剰のトリフルオロ酢酸、CH2Cl2、および水を除去した。これを2回繰り返した。EtOH(30mL、100%)を加え、それによって濁った懸濁液が得られた。懸濁液を75℃に加熱し、濃トリスアミン水溶液(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)を加えて、pH 〜7.3を得た。溶液は次いで透明になり、ビストリスアミン種晶を75℃で加え、懸濁液を4時間75℃で熟成した。懸濁液を20℃に冷却し、2時間熟成した。結晶性固形物を濾過で集め、55℃で減圧乾燥して、ビストリスアミン塩を得た。
【0109】
アッセイ
本発明の化合物の薬理学的特性は、多数の薬理学的アッセイによって確認されうる。以下に例示された薬理学的アッセイは、本発明の化合物および/またはその塩および/またはプロドラッグを用いて行った。
【0110】
Metキナーゼアッセイ
Metキナーゼアッセイに用いられるインキュベーション混合物には、バキュロウイルスで発現したGST−Metキナーゼ、合成基質ポリGlu:Tyr、(4:1)、ATP、ATP−γ−33P、並びにMn+2、DTT、BSA、およびトリスを含む緩衝液が含まれる。該反応液を60分間、30℃でインキュベートし、最終濃度8%まで冷トリクロロ酢酸(TCA)を加えることによって停止させた。フィルターメート(FILTERMATE)(登録商標)ユニバーサルハーベスター(universal harvester)(パッカードインスツルメント社、メリデン、CT)を用いてGF/Cユニフィルタープレート(GF/C UniFilter plate)(パッカードインスツルメント社、メリデン、CT)上にTCA沈殿物を集め、トップカウント96/384ウェル液体シンチレーションカウンター(TopCount 96/384-well liquid scintillation counter)(パッカードインスツルメント社、メリデン、CT)を用いて、該フィルターを定量化した。用量応答曲線を作成して、キナーゼ活性の50%を阻害するのに必要な濃度(IC50)を決定した。化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)中に10mMで溶解し、そして10個の濃度で、各2回評価した。該アッセイにおけるDMSOの最終濃度は1.7%である。非線形回帰によって、IC50値を導いた。
表2

表3

【0111】
GTL−16胃癌増殖アッセイ
GTL−16細胞増殖の阻害を、プロメガからのCELLTITER96(登録商標)水性非放射性増殖アッセイキットを用いたMTSアッセイによって評価した。キットは、新規テトラゾリウム化合物(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、分子内塩(inner salt);MTS)および電子カップリング試薬(フェナジンメトサルフェート、PMS)の溶液からなる。このカラーメトリック(colormetric)アッセイにおいて、MTSの水溶性ホルマザンへの変換は、代謝的に活性な細胞に見られるデヒドロゲナーゼ酵素によって達成される。490nmでのその吸光度によって測定されるホルマザン生成物の量は、培養生細胞の数に正比例する。
【0112】
GTL−16細胞を、0.5% ウシ胎児血清中、96ウェルマイクロタイタープレートの中に蒔き(inoculated)、37℃、5% CO2、95% 空気および100% 相対湿度で24時間インキュベートし、次いで化合物を加えた。薬物処置の時、細胞株の1つのプレートを、上記のキットを用いて処理して、薬物添加時の細胞集団の測定値を表す。薬物処置の後、プレートをさらに72時間インキュベートし、次いで処理し(processing)、細胞集団を測定する。未処理の対照試料のように、各化合物を8つの異なる濃度で3セット(in triplicate)試験した。エクセル(レーベンバーグ・マルカート(Levenburg Marquardt)アルゴリズムを用いてフィットしたデータとともに4パラメータ ロジスティック方程式を使用する)におけるデータの解析によって、50%の増殖阻害(IC50)を計算する。
VEGFR−2 キナーゼアッセイ

【0113】
VEGFR−2 アッセイに用いられるインキュベーション混合物には、合成基質ポリglu/tyr、(4:1)、ATP、ATP−γ−33P、並びにMn+2、DTT、BSA、およびトリス緩衝液を含む緩衝液が含まれる。酵素の添加によって反応を開始し、室温で60分後、30% TCA〜最終濃度15% TCAの添加によって終了する。阻害剤を100% DMSO中で10mMにする。アッセイは4つの96ウェルフォーマットにおいて調製する。化合物を100% DMSO中で1:500に希釈し、次いで最終DMSO濃度10%になるように、水中で1:10に希釈する。10% DMSOの96ウェルフォーマットにおいて、アリコート(10μL)をB−H列に加える。実行条件よりも5倍高い濃度で、化合物(20μl)をA列に加える。アリコート(10μL)を各列に移し、続いて混合しながら6つの段階希釈を行い、F列で10μLを廃棄する。列Gは化合物を含まない対照であり、列Hは化合物なしおよび酵素なしの対照である。酵素および基質は、Tomtec Quadraステーションを用いて送達される。
【0114】
プレートを粘着性のプレートトップ(plate top)で覆い、60分間27℃でインキュベートし、次いで氷の上で20分間、TCAで酸沈澱させる。トムテックまたはパッカードFILTERMATE(登録商標)ハーベスターを用いて、沈澱をユニフィルター−96,GF/Cマイクロプレートに移す。Microscint−20カクテルを、ユニフィルターマイクロプレートの各々の乾燥したウェルに加えた後、パッカード トップカウントマイクロプレートシンチレーションカウンターを用いて取り込まれた放射活性を定量化することによって、活性を測定する。
【0115】
表4は、Metキナーゼアッセイ、VEGFR−2アッセイ、および/またはGTL−16アッセイにおける実施例1並びに化合物AおよびBの活性を示す。化合物AおよびBの製造は、それぞれ、実施例56および101において米国特許公開2005/0245530に開示されている。
【化30】

表4

化合物A:N−(4−(2−アミノピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−ベンジル−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド,トリフルオロ酢酸塩
化合物B:N−(4−(2−アミノピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−1−(4−フルオロフェニル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド,塩酸塩
【0116】
インビボ有効性判定
GTL−16ヒト胃腫瘍異種移植モデルに対するインビボ有効性について、N−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(実施例1)および(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル二水素リン酸エステル(実施例2)を評価した。実施例2は実施例1のプロドラッグである。図1に説明されるように、GTL−16胃癌モデルにおいて、少なくとも一つの腫瘍倍加時間の間の50%超の腫瘍増殖阻害(TGI)によって明らかにされるように、実施例1および実施例2は活性であった。14日間、1日1回の投与の際、これらの服用レベルのいずれでも、明らかな毒性は観察されなかった。本研究において、等モル濃度の実施例1(25mg/kgの実施例1および31.2mg/kgの実施例2)によって、完全な腫瘍の停止がもたらされた。
【0117】
実施例1はまた、U87神経膠芽腫モデル、Met活性化のHGF自己分泌機構に基づくMet駆動腫瘍においても試験された。図2に示されるように、25mg/kgで完全な腫瘍の停止が観察され、それはGTL−16腫瘍異種移植に対して観察された活性に類似している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】

(I)
[式中、
Gは、H、−CHX−OP(=O)(OH)2、または−CHX−OC(=O)Zであり;
Xは、Hであるか、または一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいアルキルであり;
Zは、一つ以上のアルキル、OH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR34で適宜置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクロであり;並びに
1、R2、R3、およびR4は独立して、Hおよび/またはアルキルである]
を有する化合物またはその塩。
【請求項2】
GがHである、請求項1の化合物またはその塩。
【請求項3】
Gが、−CHX−OP(=O)(OH)2であり;並びに
Xが、Hであるか、または一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいC1−C2アルキルである、請求項1の化合物またはその塩。
【請求項4】
Xが、Hまたはメチルである、請求項3の化合物またはその塩。
【請求項5】
XがHである、請求項4の化合物またはその塩。
【請求項6】
Gが−CHX−OC(=O)Zであり;
Xが、Hであるか、一つ以上のOH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR12で適宜置換されていてもよいC1−C2アルキルであり;
Zが、一つ以上のアルキル、OH、ハロゲン、シアノ、および/または−NR34で適宜置換されていてもよい、C1−C6アルキルまたは1つの窒素ヘテロ原子を含む5〜6員ヘテロシクロであり;並びに
1、R2、R3、およびR4は独立して、Hおよび/またはC1−C4アルキルである、請求項1の化合物またはその塩。
【請求項7】
Xが、Hまたはメチルである、請求項6の化合物またはその塩。
【請求項8】
Gが:
【化2】

である、請求項7の化合物またはその塩。
【請求項9】
前記化合物が:
N−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(1);
(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル二水素リン酸エステル(2);
(S)−2−アミノプロパン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(3);
(S)−2−アミノ−3−メチルブタン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(4);
(S)−2−アミノ−4−メチルペンタン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(5);
ピペリジン−3−カルボン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(6);
(S)−ピロリジン−2−カルボン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(7);
(S)−ピロリジン−3−カルボン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(8);
ピペリジン−4−カルボン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(9);
ピペリジン−4−カルボン酸1−(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)エチル(10);
(2S)−2−アミノ−3−メチルブタン酸1−(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)エチル(11);または
1−メチルピペリジン−4−カルボン酸(3−(4−(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロフェニルカルバモイル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピリジン−1(4H)−イル)メチル(12)
である、請求項1の化合物またはその塩。
【請求項10】
少なくとも一つの請求項1の化合物またはその医薬的に許容される塩;並びに医薬的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
前記少なくとも一つの化合物が:
【化3】

またはその医薬的に許容される塩である、請求項10の医薬組成物。
【請求項12】
癌の治療剤の製造における、請求項1の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用。
【請求項13】
前記癌が、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓/胆嚢癌、前立腺癌、甲状腺癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、メラノーマ、神経膠芽腫/星細胞腫、MFH/線維肉腫、または中皮腫である、請求項12の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−510087(P2011−510087A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544403(P2010−544403)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/031649
【国際公開番号】WO2009/094417
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】