説明

4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンのフマル酸塩

4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレート、このジフマレートを含有する医薬組成物、癌のような過剰増殖性障害の治療におけるこのジフマレートの使用、このジフマレートの製造の方法について記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリン(以下、「化合物(I)」)の塩、より特別には、化合物(I)のジフマル酸塩に関する。この塩は、erbB受容体シグナル伝達によって単独で、又は一部媒介される病態、特に癌のような増殖性疾患の治療又は予防に有用であることが期待されている。本発明はまた、該塩を含んでなる医薬組成物と、乳癌のような癌の治療又は予防に使用の医薬品の製造におけるその使用に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
EGFR、erbB2、erbB3、及びerbB4が含まれる、受容体チロシンキナーゼのerbBファミリーは、腫瘍細胞の増殖及び生存を促進することに頻繁に関与していて、それ故に、受容体のerbBファミリーは、例えば、乳癌(Sainsbury et al., Brit. J. Cancer, 1988, 58, 458; Guerin et al., Oncogene Res., 1988, 3, 21; Slamon et al., Science, 1989, 244, 707; Klijn et al., Breast Cancer Res. Treat., 1994, 29, 73 、及び Salomon et al., Crit. Rev. Oncol. Hematol., 1995, 19, 183 に概説されている)、腺癌(Cerny et al., Brit. J. Cancer, 1986, 54, 265; Reubi et al., Int. J. Cancer, 1990, 45, 269; Rusch et al., Cancer Research, 1993, 53, 2379; Brabender et al, Clin. Cancer Res., 2001, 7, 1850)が含まれる小細胞肺癌(NSCLC)、並びに他の肺癌(Hendler et al., Cancer Cells, 1989, 7, 347; Ohsaki et al., Oncol. Rep., 2000, 7, 603)、膀胱癌(Neal et al., Lancet, 1985, 366; Chow et al., Clin. Cancer Res., 2001, 7, 1957, Zhau et al., Mol Carcinog., 3, 254)、食道癌(Mukaida et al., Cancer, 1991, 68, 142)、結腸、直腸、又は胃癌のような胃腸系の癌(Bolen et al., Oncogene Res., 1987, 1, 149; Kapitanovic et al., Gastroenterology, 2000, 112, 1103; Ross et al., Cancer Invest., 2001, 19, 554)、前立腺癌(Visakorpi et al., Histochem. J., 1992, 24, 481; Kumar et al., 2000, 32, 73; Scher et al., J. Natl. Cancer Inst., 2000, 92, 1866)、白血病(Konaka et al., Cell, 1984, 37, 1035, Martin-Subero et al., Cancer Genet Cytogenet., 2001, 127, 174)、卵巣癌(Hellstrom et al., Cancer Res., 2001, 61, 2420)、頭頚部癌(Shiga et al., Head Neck, 2000, 22, 599)、又は膵臓癌(Ovotny et al., Neoplasma, 2001, 48, 188)が含まれる数多くの上皮癌に関係している可能性がある(Olayioye et al., EMBO J., 2000, 19, 3159 に概説されている)。
【0003】
従って、erbB受容体チロシンキナーゼの阻害剤は、ある癌腫の成長の選択的阻害剤として有用なはずであると認められてきた。いくつかのerbBチロシンキナーゼ阻害剤で臨床利益が実証されて、いくつかのerbBチロシンキナーゼ阻害剤について、癌の治療における使用が承認されている。例えば、進行性の非小細胞肺癌の治療用のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤、ゲフィチニブ及びエルロチニブと、erbB2チロシンキナーゼ阻害活性を有して、転移性乳癌に使用のラパチニブである。現在、他のいくつかのEGFR及びerbB2チロシンキナーゼ阻害剤が開発中である。
【0004】
化合物(I)は、国際特許出願公開公報番号:WO2005/028469において、その実施例1として開示されて、以下の構造である:
【0005】
【化1】

【0006】
化合物(I)は、erbB受容体チロシンキナーゼ阻害剤であり、特に、化合物(I)は、EGFR及びerbB2受容体チロシンキナーゼの強力な阻害剤である。
EGFR及びerbB2ホモ二量体を介したシグナル伝達に加えて、EGFR、erbB2、及びerbB3ヘテロ二量体によって媒介される細胞シグナル伝達も重要な発癌シグナル伝達経路であり得ることを示唆する前臨床及び臨床の証拠がますます増えている(Sergina et al., Nature, 2007, 445, 437; Ritter et al., Clin Cancer Res. 2007, 13, 4909; Johnston et al., JCO, 2008, 26, 1066)。erbB3は、固有のチロシンキナーゼ活性を有さないので、erbB3受容体の活性化は、他のキナーゼ活性受容体(特に、EGFR及びerbB2が含まれる)とのヘテロ二量体受容体複合体の形成を通してのみ達成される。erbB3とともに形成されるEGFR及びerbB2ヘテロ二量体は、これらの受容体が発現される腫瘍において腫瘍の成長を促進すると考えられている。
【0007】
我々は、前臨床実験において、化合物(I)が、リガンド刺激されたEGFR/erbB3及び/又はerbB2/erbB3ヘテロ二量体化に続くerbB3のリン酸化の阻害によってerbB3媒介性シグナル伝達も阻害することを見出した。従って、化合物(I)は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤として主に作用するゲフィチニブ又はエルロチニブのような他のerbBチロシンキナーゼ阻害剤と比較して、独自のerbBチロシンキナーゼ阻害効果を示す。我々は、ゲフィチニブ及びエルロチニブのようなEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と比較して、化合物(I)が改善された抗腫瘍効果を示すことを示唆する前臨床試験を行った。理論によって束縛されることを望まずに言えば、この改善された特性は、化合物(I)によるerbB3媒介性シグナル伝達の阻害より生じる可能性があると考えられる。
【0008】
WO2005/028469は、そこに開示される化合物が医薬的に許容される塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、又はマレイン酸のような無機酸又は有機酸と式Iの化合物の酸付加塩の形態で製造され得ることを示す。WO2005/028469のどこにも、フマル酸との塩についての示唆がない。WO2005/028469の実施例1では、化合物(I)が開示されて、遊離塩基として単離されている。WO2005/028469には、化合物(I)のどの特定の塩も開示されていない。
【0009】
我々は、化合物(I)が、図1のXRPDに示すように、やや非晶質性の結晶性であることを見出した。化合物(I)に関する示差走査熱量測定(図2A)は、おそらくは溶媒(最も可能性があるのは水)損失による76.2℃の開始点の広い吸熱に、126.2℃の開始点の融解吸熱が続くことを示す。化合物(I)に関する熱重量分析(図2B)は、25℃と95℃の間に1.2%の重量損失があることを示す。
【0010】
動的水蒸気吸着(図3)は、80%の相対湿度でほぼ1.9%(w/w)の水分取込みを示し、従って、化合物(I)は、適度に吸湿性である。
我々は、化合物(I)が相対的に低い固有溶解速度を(特に、pH6.0未満で)有して、高い細胞浸透性を有することを見出した。この低溶解性と高浸透性は、化合物(I)がBCS分類のクラスIIであることを示唆する。故に、この化合物の溶解特性は、薬物吸収と患者間変動性を、特により高い用量で制御するのに重要であり得る。これらの知見は、化合物(I)が一部非晶質で吸湿性であるという事実と相俟って、改善された特性のある化合物(I)の代わりの形態を見出すことの必要性をもたらしている。
【0011】
驚くべきことに、我々は、化合物(I)のジフマル酸塩が化合物(I)と比較して好ましい特性を有することを見出した。化合物(I)ジフマレートは、高い水溶性と良好な固有溶解速度を示す、好ましい溶解プロフィールを有する。さらに、化合物(I)ジフマレートは、好ましい固体状態特性、例えば、高い結晶性、低い吸湿性、及び/又は高い融点のような好ましい熱的性質を示す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の側面により、化合物(I)ジフマレートを提供する。
好適には、化合物(I)ジフマレートは、結晶性である。故に、本発明のさらなる側面により、結晶性の化合物(I)ジフマレートを提供する。
【0013】
化合物(I)ジフマレートは、非溶媒和型だけでなく、例えば、水和型のような溶媒和型で存在する場合がある。本発明には、化合物(I)ジフマレートのすべてのそのような溶媒和型及び非溶媒和型が含まれると理解されたい。
【0014】
我々は、化合物(I)ジフマレートの特別な結晶形、以下「A型」が、図4に実質的に示されるような粉末X線回折パターンを提供することで特徴付けられることを見出した。A型の最も顕著なピークを表1に示す。
【0015】
表1
A型の最も顕著な粉末X線回折ピーク
【0016】
【表1】

【0017】
本発明のさらなる側面により、少なくとも1つの特異ピークが約2θ=26.4°にある粉末X線回折パターンを有するA型を提供する。
本発明のさらなる側面により、少なくとも1つの特異ピークが約2θ=26.4°、14.9°、又は7.1°にある粉末X線回折パターンを有するA型薬剤を提供する。
【0018】
本発明のさらなる側面により、特異ピークが約2θ=26.4°、14.9°、及び7.1°にある粉末X線回折パターンを有するA型を提供する。
本発明のさらなる側面により、少なくとも1つの特異ピークが約2θ=26.4°、24.0°、14.9°、12.4°、又は7.1°にある粉末X線回折パターンを有するA型を提供する。
【0019】
本発明のさらなる側面により、特異ピークが約2θ=26.4°、24.0°、14.9°、12.4°、及び7.1°にある粉末X線回折パターンを有するA型を提供する。
本発明のさらなる側面により、少なくとも1つの特異ピークが約2θ=26.4°、24.0°、23.0°、21.2°、17.3°、15.4°、14.9°、13.0°、12.4°、又は7.1°にある粉末X線回折パターンを有するA型を提供する。
【0020】
本発明のさらなる側面により、特異ピークが約2θ=26.4°、24.0°、23.0°、21.2°、17.3°、15.4°、14.9°、13.0°、12.4°、及び7.1°にある粉末X線回折パターンを有するA型を提供する。
【0021】
本発明の別の側面により、図4に示す粉末X線回折パターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを有するA型を提供する。
好適には、A型は、化合物(I)ジフマレートの他の形態を実質的に含まない。例えば、化合物(I)ジフマレートの少なくとも80%がA型の形態であり、化合物(I)ジフマレートの特に少なくとも90%、より特別には少なくとも95%、そしてなおより特別には少なくとも99%がA型の形態である。特別な態様では、化合物(I)ジフマレートの少なくとも98%がA型の形態である。本明細書において、例えば、化合物(I)ジフマレートの80%がA型の形態であるという言及は、化合物(I)ジフマレートの重量%を意味する。
【0022】
A型のDSCサーモグラムを以下の図5に示す。A型は、Mettler DSC820e装置を「実施例」に記載のように使用する示差走査熱量測定(DSC)分析によって決定されるように、開始温度が約210.4℃である鋭い融解吸熱を示す。従って、A型は、約210℃の融点を有する。
【0023】
我々は、化合物(I)ジフマレートが他の結晶形、例えば、本明細書の「実施例」に記載されるB〜Q型で存在し得ることを見出した。本発明のさらなる側面により、本明細書に記載されるB型〜Q型のいずれからも選択される結晶性の化合物(I)ジフマレートを提供する。好適には、記載される結晶性の化合物(I)ジフマレート形態のそれぞれは、化合物(I)ジフマレートの他の形態を実質的に含まない。例えば、化合物(I)ジフマレートの少なくとも80%は望ましい形態であり、化合物(I)ジフマレートの特に少なくとも90%、より特別には少なくとも95%、そしてなおより特別には少なくとも99%は、ジフマレートの望ましい結晶形である。
【0024】
本明細書に記載される化合物(I)ジフマレートの結晶形は、結晶性である。好適には、粉末X線回折データによって決定されるような結晶性の度合いは、例えば、約80%より大きいように、約60%より大きく、特に約90%より大きく、そしてより特別には約95%より大きい。本発明の態様において、粉末X線回折データによって決定されるような結晶性の度合いは、約98%より大きく、ここで結晶性(%)は、結晶性である全試料重量の重量%を意味する。
【0025】
化合物(I)の結晶形についての粉末X線回折ピークを明確にする先述のパラグラフにおいて、「約〜で」という用語は、「・・・約2θ=・・・」という表現において使用されて、ピークの正確な位置(即ち、引用される2θ角度値)を絶対値であるとして解釈してはならないことを示す。なぜなら、当業者により理解されるように、ピークの正確な位置は、測定機器ごとに、試料ごとに、又は利用する測定条件におけるわずかな変動の結果として、わずかに変動し得るからである。先述のパラグラフでは、化合物(I)ジフマレートA型が図4に示す粉末X線回折パターンと「実質的に」同じ粉末X線回折パターンを提供して、表1に示される実質的に最も顕著なピーク(2θ角度値)を有することも述べられている。この文脈において、「実質的に」という用語の使用も、粉末X線回折パターンの2θ角度値が測定機器ごとに、試料ごとに、又は利用する測定条件におけるわずかな変動の結果として、わずかに変動し得るので、種々の図面に示されるか又は種々の表に引用されるピーク位置も絶対値として解釈してはならないことを示すことを企図すると理解されたい。
【0026】
この点に関して、当該技術分野では、測定条件(使用する装置又は機械のような)に依存して1以上の測定誤差を有する粉末X線回折パターンが得られる場合があることが知られている。特に、粉末X線回折パターンの強度は、測定条件及び試料調製に依存して上下し得ることが一般に知られている。例えば、粉末X線回折の技術分野の当業者は、ピークの相対強度が、例えば、30ミクロンより大きい粒径と非ユニタリーアスペクト比によって影響を受ける可能性があり、それが試料の分析に影響を及ぼす場合があることを理解されよう。当業者はまた、試料が回折計に置かれる正確な高さと回折計の零点校正によって反射の位置が影響を受ける可能性があることを理解されよう。試料の表面平面性もわずかに影響を及ぼす場合がある。従って、当業者は、本明細書に提示する回折パターンデータを絶対的なものとして解釈してはならないことを理解されよう(さらなる情報については、Jenkins, R & Snyder, R.L.「Introduction to X-Ray Powder Diffractometry(粉末X線回折法入門)」ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(1996)を参照のこと)。故に、本明細書に記載される化合物(I)ジフマレートの結晶形は、図4に示される粉末X線回折パターンと同一の粉末X線回折パターンを提供する結晶に限定されず、図4に示されるものと実質的に同じ粉末X線回折パターンを提供するどの結晶も本発明の範囲内にあると理解されよう。粉末X線回折の技術分野の当業者は、粉末X線回折パターンの実質的な同一性を判定することができる。
【0027】
一般に、粉末X線回折図における回折角度の測定誤差は、約2θ=0.5°以下であり、図1及び4の粉末X線回折パターンについて考慮するとき、そして上記の本文と表1に参照されるピーク位置を解釈するときには、そのような測定誤差の度合いを考慮に容れるべきである。
【0028】
本明細書に記載される融点及びDSCのデータは、Mettler DSC820e装置(この使用については、以下により詳しく記載する)を使用して決定した。当業者は、DSCによって測定される融点のわずかな変動が試料純度、試料調製、及び測定条件(例、加熱速度)の変動の結果として生じる場合があることを理解されよう。他の種類の機器によるか又は下記の記載とは異なる条件を使用することによって、代わりの融点の読取値が得られる場合があることが理解されよう。従って、本明細書に引用される融点及び吸熱の数字は、絶対値としてみなしてはならず、DSCデータについて解釈するときには、そのような測定誤差を考慮に容れるべきである。典型的には、融点は、±0.5℃以下を変動する場合がある。
【0029】
本発明によるA型のような、化合物(I)ジフマレートの結晶形はまた、他の好適な分析技術、例えば、NIR分光法又は固体状態の核磁気共鳴分光法を使用して、他の物理形態より特徴付ける、及び/又は識別することができる。
【0030】
本発明の化合物(I)ジフマレートの化学構造は、定型的な方法、例えば、プロトン核磁気共鳴(NMR)分析によって確定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、化合物(I)遊離型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図2】図2Aは、化合物(I)遊離型に関する示差走査熱量測定トレースを示す。x軸は温度及び時間を示して、y軸は電力をmWで示す。図上の説明は、吸熱の開始温度と曲線の積分値(mJ)を示す。図2Bは、化合物(I)遊離型の熱重量分析トレースである。x軸は温度及び時間を示して、y軸は重量をmgで示す。このグラフ中の説明は、約30℃と80℃の間でのイベントの試料からの重量損失(%)と絶対的な重量損失を示す。
【図3】図3は、化合物(I)遊離型の動的水蒸気吸着の等温線プロットを示す。x軸は相対湿度(%)を示して、y軸は試料重量の変化(%)を示す。「ソープ(sorp)」は吸着サイクルを意味して、「デソープ(desorp)」は、脱着サイクルを意味する。
【図4】図4は、化合物(I)ジフマレートA型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図5】図5は、化合物(I)ジフマレートA型に関する示差走査熱量測定トレースを示す。x軸は温度及び時間を示して、y軸は電力をmWで示す。図上の説明は、融解吸熱の開始温度と曲線の積分値(mJ)を示す。
【図6】図6は、化合物(I)ジフマレートA型の熱重量分析トレースを示す。x軸は温度及び時間を示して、y軸は重量をmgで示す。このグラフ中の説明は、約30℃と80℃の間での試料からの重量損失(%)と絶対的な重量損失を示す。
【図7】図7は、化合物(I)ジフマレートA型の動的水蒸気吸着の等温線プロットを示す。x軸は相対湿度(%)を示して、y軸は試料重量の変化(%)を示す。「ソープ(sorp)」は吸着サイクルを意味して、「デソープ(desorp)」は、脱着サイクルを意味する。
【図8】図8は、化合物(I)ジフマレートB型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図9】図9は、化合物(I)ジフマレートC型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図10】図10は、化合物(I)ジフマレートD型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図11】図11は、化合物(I)ジフマレートE型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図12】図12は、化合物(I)ジフマレートF型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図13】図13は、化合物(I)ジフマレートG型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図14】図14は、化合物(I)ジフマレートH型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図15】図15は、化合物(I)ジフマレートI型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図16】図16は、化合物(I)ジフマレートJ型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図17】図17は、化合物(I)ジフマレートK型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図18】図18は、化合物(I)ジフマレートL型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図19】図19は、化合物(I)ジフマレートM型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図20】図20は、化合物(I)ジフマレートN型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図21】図21は、化合物(I)ジフマレートO型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図22】図22は、化合物(I)ジフマレートP型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【図23】図23は、化合物(I)ジフマレートQ型の粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。x軸は2θ値を示して、y軸はカウント数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
化合物(I)の合成
化合物(I)は、WO2005/028469に記載されるか又は本明細書の「実施例」に例解されるような方法を使用して合成し得る。
【0033】
WO2005/028469は、その実施例1として、化合物(I)の製造を以下のように開示する:
アセトニトリル(5ml)中の4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−[(ピペリジン−4−イル)オキシ]キナゾリン(120mg,0.3ミリモル)、ヨウ化カリウム(16mg,0.1ミリモル)、及び炭酸カリウム(50mg,0.36ミリモル)の混合物へ2−クロロ−N−メチルアセトアミド(32mg,0.3ミリモル)を加えた。この混合物を還流で1時間加熱した。溶媒の真空での蒸発後、残渣をジクロロメタンに取った。この有機溶液を水と塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒の真空での蒸発後、残渣をシリカゲルでのクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン中1%〜2% 7Nメタノール性アンモニア)によって精製して、化合物(I)を得た。
【0034】
我々は、2−クロロ−N−メチルアセトアミドの4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−[(ピペリジン−4−イル)オキシ]キナゾリンとの直接の反応により、ヨウ化カリウムの使用が回避されることを見出した。さらに、化合物(I)の特定の溶媒からの結晶化は、化合物(I)を高い純度で提供する。故に、この新しい方法は、化合物(I)の大量製造に適していると期待される。
【0035】
従って、本発明のさらなる側面として、化合物(I)を製造するための方法を提供し、該方法は:
(i)好適な塩基の存在下に2−クロロ−N−メチルアセトアミドを4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−[(ピペリジン−4−イル)オキシ]キナゾリン二塩酸塩と反応させる工程;
(ii)工程(i)からの反応混合物へエタノール、水、及びメタノールより選択される溶媒、又はこれらの混合物を加えて、化合物(I)の結晶化をもたらす工程;及び
(iii)化合物(I)を単離する工程を含んでなる。
【0036】
工程(i)の反応は、簡便には、WO2005/028469の30頁にある方法(c)に記載されるような好適な不活性溶媒において行なう。例えば、この反応は、アセトニトリルを溶媒として使用して行ってよい。この反応は、好適な塩基、例えば、トリエチルアミンのような、WO2005/028469の30頁にある方法(c)に記載される塩基の1つの存在下に行う。好適には、この反応は、上昇温度で、例えば約75℃で行う。
【0037】
1つの態様では、この方法の工程(ii)において、溶媒は水である。好適には、この態様において、工程(i)をアセトニトリル中で行うとき、水:アセトニトリルの容量比は、ほぼ1:3である。
【0038】
本発明の別の態様では、この方法の工程(ii)において、溶媒はエタノールである。好適には、この態様において、工程(i)をアセトニトリル中で行うとき、エタノール:アセトニトリルの容量比は、ほぼ3.5:7である。
【0039】
本発明のさらなる態様では、この方法の工程(ii)において、溶媒はエタノール及び水の混合物である。好適には、この態様において、エタノール対水の容量比は、約20:1〜約30:1、例えば、約21.9:1〜25:1である。工程(i)をアセトニトリル中で行うとき、好適には、ほぼ3.5容量のエタノールと0.15容量の水を7容量のアセトニトリルへ加えて、結晶化をもたらす。
【0040】
理解されるように、例えば、水:アセトニトリルの容量比が1:3であるという言及は、この方法の工程(i)の完了に続いて、反応容器に存在する3容量のアセトニトリルへ1容量の水を加えることを意味する。
【0041】
1つの態様では、この方法の工程(ii)において、工程(i)からの反応混合物を約70℃へ冷やして、エタノールを加える。次いで、反応混合物を約45℃へ冷やして、水を加えて、化合物(I)の結晶化をもたらす。求められるならば、反応混合物に化合物(I)を種入れして、結晶化を始めることを助長してよい。次いで、反応混合物を約20℃へ冷やして、結晶化を完了させる。
【0042】
工程(iii)における化合物(I)の単離は、慣用の方法、例えば、化合物(I)の濾過及び乾燥を使用して行ってよい。
出発材料として使用する4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−[(ピペリジン−4−イル)オキシ]キナゾリン二塩酸塩は、本明細書の「実施例」に記載されるように製造してよい。例えば、6−{[(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル]オキシ}−4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシキナゾリンへ塩酸を加えることによって。簡便には、この反応は、好適な溶媒、例えば、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、n−プロパノール、メタノール、1−ブタノール、酢酸エチル、酢酸tert−ブチル、イソプロパノール、又は工業用変性アルコール中で行う。特別な溶媒は、エタノール、又はより特別には、工業用変性アルコールである。
【0043】
6−{[(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル]オキシ}−4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシキナゾリンは、WO2005/028469の実施例1に記載の方法を使用して、4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−6−ヒドロキシ−7−メトキシキナゾリンを(4−メタンスルホニルオキシ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルと反応させることによって製造してよく、ここでこの反応は、DMAを溶媒として使用して、フッ化セシウムの存在下に85℃の温度で行う。
【0044】
この反応は、炭酸カリウムのような好適な塩基の存在下に、N−メチルピロリドン(NMP)の存在下に行ってもよい。この反応は、好適には、本明細書の「実施例」に記載されるような上昇温度で実施する。
【0045】
しかしながら、我々は、この反応をある溶媒の存在下に行うことによって、生成物が良好な形態で得られることを見出した。さらに、これらの溶媒のいくつかは、生成物の大量製造に適していることが期待される。
【0046】
従って、本発明のさらなる側面として、6−{[(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル]オキシ}−4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシキナゾリンの製造の方法を提供し、該方法は:
(i)好適な塩基の存在下に4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−6−ヒドロキシ−7−メトキシキナゾリンを(4−メタンスルホニルオキシ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルと反応させる工程(ここでこの反応は、N−メチルピロリドン、又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、及び工業用変性アルコールより選択されるアルコールより選択される溶媒中で行う);及び
(ii)6−{[(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル]オキシ}−4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシキナゾリンを結晶化させる工程を含んでなる。
【0047】
この方法の工程(i)は、例えば、炭酸カリウムのような、WO2005/028469に記載される好適な塩基の存在下に行う。この反応は、好適には、上昇温度で、簡便には還流温度で行なう。
【0048】
求められるならば、処理を支援するために、例えば、反応混合物の可動性を高めるために、工程(i)に使用する溶媒へ水を加えることができる。1つの態様では、この反応の工程(i)を、水の存在下であっても無くても、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、及び工業用変性アルコールより選択されるアルコール中で行う。さらなる態様において、この反応の工程(i)は、エタノール及び水の混合物中で行う。エタノール及び水の混合物を使用するとき、工程(i)におけるエタノール対水の容量比は、決定的でなく、例えば、エタノール対水の容量比は、約10:2までであってよく、約10:1のような容量比が適している。
【0049】
この方法の工程(ii)における結晶化は、簡便には、工程(i)からの反応混合物を冷やして(例えば、約70℃へ冷やす)、その混合物へ水を加えて結晶化をもたらすことによって行う。次いで、生成物は、「実施例」に記載されるような慣用法によって単離してよい。
【0050】
化合物(I)はまた、反応スキーム1に例解される方法に従って製造してよい:
【0051】
【化2】

【0052】
反応スキーム1に関する註
工程(i):Lgは、好適な脱離基、例えば、ハロゲノ、アルカンスルホニルオキシ、又はアリールスルホニルオキシ基、例えば、クロロ、ブロモ、メタンスルホニルオキシ、4−ニトロベンゼンスルホニルオキシ、又はトルエン−4−スルホニルオキシ基である(好適には、メタンスルホニルオキシ、4−ニトロベンゼンスルホニルオキシ、又はトルエン−4−スルホニルオキシ基であり、例えば、Lgは、メタンスルホニルオキシである)。
【0053】
Pgは、好適なアミン保護基である。そのような基は、例えば、「有機合成の保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」Theodora Green 著(出版社:ジョン・ウィリー・アンド・サンズ)のような、この主題に関する多くの一般的なテクストの1つに記載されるように、よく知られている。アミノ保護基の例には、アシル基、例えば、アセチルのようなアルカノイル基、アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、又はtert−ブトキシカルボニル基、アリールメトキシカルボニル基、例えば、ベンジルオキシカルボニル、又はアロイル基、例えば、ベンゾイルが含まれる。Pgの特別な例は、tert−ブトキシカルボニルである。
【0054】
この反応は、好適には、塩基、例えば、炭酸カリウムのような炭酸塩の存在下に行う。この反応は、簡便には、好適な不活性溶媒、例えば、イソプロパノールのようなアルコールの存在下に行う。この反応は、好適には、上昇温度で、簡便には、溶媒の還流温度で行なう。
【0055】
工程(ii):保護基Pgは、慣用法を使用して除去する。例えば、Pgがtert−ブトキシカルボニルであるとき、それは、塩酸、硫酸、又はリン酸、又はトリフルオロ酢酸のような好適な酸での処理によって外すことができる。
【0056】
工程(iii):Lgは、好適な脱離基、例えば、クロロのようなハロゲノである。この反応は、好適には、炭酸塩、有機アミン、又はアルコキシドのような好適な塩基の存在下に行う。好適な塩基には、炭酸カリウム又はトリエタノールアミンが含まれる。この反応は、簡便には、アセトニトリルのような不活性溶媒、又はエタノールのようなアルコールの存在下に行う。この反応は、好適には、上昇温度で、簡便には、溶媒の還流温度で実施する。
【0057】
工程(iv):ニトロ化は、芳香族環のニトロ化についてよく知られている方法を使用して、例えば、このような反応についてよく知られている条件を使用して、そして「実施例」に例解されるように、2−[4−(5−シアノ−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(4)を硫酸の存在下に硝酸で処理することによって実施することができる。
【0058】
工程(v):ニトロ基をアミンへ還元するのに適した還元反応はよく知られていて、例えば、亜ジチオン酸ナトリウムのような好適な還元剤の存在下での還元による。この反応は、好適には、水性溶媒、例えば水性メタノールの存在下に行う。この反応は、簡便には、上昇温度、例えば、40〜60℃で実施する。あるいは、水素化によって、例えば、パラジウム担持カーボン触媒(例えば、10%パラジウム担持カーボン触媒)のような好適な触媒を使用する接触水素化によって、還元を実施してよい。水素化は、簡便には、メタノールのような好適な溶媒中で行う。
【0059】
工程(vi):2−[4−(4−アミノ−5−シアノ−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(6)をN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールと反応させる。この反応は、簡便には、エーテル、例えば、2−メチルテトラヒドロフラン、又はトルエンのような芳香族炭化水素といった好適な溶媒の存在下に行う。この反応は、好適には、上昇温度で、例えば、約70〜105℃、好適には約76℃で実施する。
【0060】
工程(vii)
この反応は、好適には、酢酸、プロパン酸、コハク酸、フマル酸、及びクエン酸より選択される1以上の酸のような、好適な酸の存在下に行う。1つの態様において、この酸は、酢酸である。この反応は、好適には、不活性溶媒、例えば、メトキシベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒の存在下に行う。この反応は、好適には、上昇温度、例えば、約90〜約120℃で、好適には約90℃で行う。
【0061】
反応スキーム1に記載される方法は、本発明のさらなる側面を形成する。従って、2−[4−(5−シアノ−4−{[(ジメチルアミノ)メチレン]アミノ}−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(7)を3−クロロ−2−フルオロアニリンと好適な酸の存在下に反応させる工程を含んでなる、化合物(I)を製造するための方法を提供する。
【0062】
好適な反応条件は、反応スキーム1の工程(vii)に関連して上記に記載した通りである。
反応スキーム1に示すある種の中間体は新規であり、本発明のさらなる側面を形成する。従って、本発明の別の側面は、反応スキーム1の化合物2、3、4、5、6、及び7のいずれよりも選択される化合物、又はその塩を提供し;ここでPgは、上記に定義される通りである(例えば、tert−ブトキシカルボニル)。反応スキーム1の化合物(7)のような中間体のいくつかは、幾何異性中心(E及びZ−異性体)を有する場合がある。本発明には、そのようなすべての幾何異性体とその混合物が含まれると理解されたい。
【0063】
化合物(I)ジフマレートA型の合成
本発明のさらなる側面により、化合物(I)ジフマレート(A型)の製造の方法を提供し、該方法は:
(i)化合物(I)を十分量のフマル酸と反応させて、ジフマル酸塩を生成する工程;
(ii)A型を結晶化させる工程;及び
(iii)A型を単離する工程を含んでなる。
【0064】
工程(i)に関する註
簡便には、このフマル酸との反応は、例えば、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びジアセトンアルコールより選択される好適な溶媒中で行う。この反応は、好適な溶媒の混合物、例えば、メチルエチルケトン及びジメチルホルムアミド;メチルエチルケトン及びテトラヒドロフラン;メチルエチルケトン及びメタノール;メチルエチルケトン及びイソプロパノール;エタノール及びジメチルスルホキシド;エタノール及びテトラヒドロフラン;エタノール及びイソプロパノール;1−ブタノール及びジメチルホルムアミド;1−ブタノール及びジメチルスルホキシド;1−ブタノール及びテトラヒドロフラン;1−ブタノール及びメタノール;1−ブタノール及びイソプロパノール;酢酸エチル及びジメチルホルムアミド;酢酸エチル及びメタノール;酢酸エチル及びイソプロパノール;並びに、メタノール及びイソプロパノールより選択される混合物中で行ってもよい。
【0065】
1つの態様では、工程(i)の反応を水中で行う。
1つの態様では、工程(i)の反応をメチルエチルケトンとジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、及びイソプロパノールより選択される溶媒を含んでなる溶媒の混合物中で行う。
【0066】
別の態様では、工程(i)の反応をエタノールとジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、及びイソプロパノールより選択される溶媒を含んでなる溶媒の混合物中で行う。
別の態様では、工程(i)の反応を1−ブタノールとジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メタノール、及びイソプロパノールより選択される溶媒を含んでなる溶媒の混合物中で行う。
【0067】
別の態様では、工程(i)の反応を酢酸エチルとジメチルホルムアミド、メタノール、及びイソプロパノールより選択される溶媒を含んでなる溶媒の混合物中で行う。
別の態様では、工程(i)の反応を酢酸エチルとイソプロパノールを含んでなる溶媒の混合物中で行う。
【0068】
別の態様では、工程(i)の反応をメタノールとイソプロパノールを含んでなる溶媒の混合物中で行う。
工程(i)の反応をメタノールとイソプロパノールを含んでなる溶媒の混合物中で行う態様において、イソプロパノール対メタノールの容量比は、好適には、約3.4:1〜約1.0:1、例えば、約1.5:1〜約1.0:1の範囲にある。この反応は、好適には、上昇温度で、例えば、60℃を超える温度、好適には、65℃〜溶媒の還流温度で行う。簡便には、化合物(I)をイソプロパノールに溶かすか又は分散させて、この混合物をフマル酸のメタノール溶液又は分散液と反応させる。
【0069】
工程(i)の反応を酢酸エチルとイソプロパノールを含んでなる溶媒の混合物中で行う態様において、酢酸エチル対イソプロパノールの容量比は、好適には、約5.1:1〜1.9:1、例えば、約2.1:1のように、約3.9:1〜1.9:1の範囲にある。この反応は、好適には、約20〜約73℃の温度で、例えば、約40℃で行う。簡便には、化合物(I)を酢酸エチルに溶かすか又は分散させて、この混合物をフマル酸のイソプロパノール溶液又は分散液と反応させる。あるいは、化合物(I)を酢酸エチル及びイソプロパノールの混合物に予め溶かしてよい。求められるならば、イソプロパノールは、化合物(I)の溶解の後で、蒸留のような慣用法を使用して除去してよい。
【0070】
メタノール又はイソプロピルアルコールのようなアルコール中のフマル酸の溶液又は分散液を調製するとき、この混合物を加熱してフマル酸の溶解をもたらすことが必要となり得る。しかしながら、この混合物を上昇温度で延長された時間帯の間過度に加熱及び/又は保持することは、エステル形成を最少化するために回避すべきである。
【0071】
一般に、この方法の工程(i)では、化合物(I)を少なくとも2モル当量のフマル酸、例えば、約2〜約3、特別には約2〜約2.7モル当量のフマル酸と反応させる。しかしながら、ある溶媒系では、より少量のフマル酸を使用することができる。例えば、この反応を酢酸エチル及びイソプロパノールの混合物中で行うとき、我々は、化合物(I)ジフマレートを製造することが可能であるのは、フマル酸の化合物(I)に対するモル比が1.725以上であるときであることを見出した。
【0072】
工程(ii)に関する註
A型の結晶化は、化合物の溶液からの結晶化について知られている方法を使用して実施してよい。例えば、塩を含有する溶液の過飽和を引き起こすことによって。過飽和は、例えば、溶液を冷やすこと、溶液より溶媒を蒸発させること、又は好適な反溶媒の溶液への添加によって達成してよい。
【0073】
1つの態様では、溶液を冷やすことによって結晶化をもたらす。例えば、工程(i)の反応をメタノール及びイソプロピルアルコールの混合物中で行うとき、反応混合物は、約90分の時間帯にわたって約30℃へ冷やして、30℃に約30分間保つ。次いで、反応混合物を約2時間の時間帯にわたって約0℃の温度へさらに冷やしてよく、結晶化の完了を可能にするのに十分な時間、例えば、約1時間の間その温度に保つ。
【0074】
あるいは、工程(i)の反応を酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合物中で行うとき、反応混合物は、約20℃へ(例えば、約1時間の時間帯にわたって約40℃から約20℃へ)冷やす。次いで、反応混合物を、結晶化をもたらすのに十分な時間の間20℃に保つ。好適には、反応混合物を約20℃に少なくとも10時間、例えば、約13.5時間保つ。
【0075】
別の態様では、工程(i)の反応をメタノール及びイソプロピルアルコールの混合物中で行うとき、ある割合の溶媒を除去して、残る反応混合物の過飽和を引き起こすことによって、結晶化をもたらしてよい。溶媒は、蒸発又は蒸留によって除去してよい。好適には、約55〜65重量%、例えば約62%の溶媒を除去する。求められるならば、この混合物へさらなるイソプロパノールを加えて、ほぼ同じ重量の溶媒の蒸留を続けてよい。例えば、第一の蒸留に続いて、この混合物へほぼ50〜60%の追加イソプロパノールを加えてよい(ここで%は、反応容器に残る溶媒の重量%である)。イソプロパノールの追加に続いて、同様の重量の溶媒を蒸留によって除去する。さらなるイソプロパノールを加えて、この混合物を約8時間の時間帯にわたって約0℃へ冷やすことによって結晶化を完了させることができる。
【0076】
一般に、A型は、この方法の工程(ii)において自己結晶化するが、当業者により理解されるように、A型での種入れを使用して、結晶化を促進してよい。求められるならば、種結晶は、上記に記載されて化合物(I)ジフマレートA型の製造について「実施例」に例解される方法を使用して製造することができよう。
【0077】
工程(iii)に関する註
この方法の工程(iii)では、結晶性の材料を溶液から単離するのに当該技術分野で知られたどの好適な方法も使用してよい。好適には、濾過によってA型を採取する。A型の単離に続き、この塩を好適な溶媒、例えば、冷イソプロパノールで洗浄してよい。単離に続いて、慣用法、例えば、真空乾燥を使用して、A型を乾燥させてよい。
【0078】
従って、本発明の1つの態様において、化合物(I)ジフマレート(A型)の製造の方法を提供し、該方法は:
(i)化合物(I)のイソプロパノール溶液又は懸濁液をメタノール中の少なくとも2モル当量のフマル酸と反応させる工程(ここで、イソプロパノール対メタノールの容量比は、3.4:1〜約1.0:1、例えば、約1.5:1〜約1.0:1であり、そしてここでこの反応は、少なくとも60℃の温度で行う);
(ii)A型を結晶化させる工程;及び
(iii)A型を単離する工程を含んでなる。
【0079】
A型の結晶化及び単離に適した条件は、上記に定義される通りである。
従って、本発明の別の態様において、化合物(I)ジフマレート(A型)の製造の方法を提供し、該方法は:
(i)化合物(I)の酢酸エチル溶液又は懸濁液をイソプロパノール中の少なくとも1.725モル当量のフマル酸(好適には、少なくとも2モル当量のフマル酸)と反応させる工程(ここで、酢酸エチル対イソプロパノールの容量比は、好適には、約5:1〜1:1、例えば、約2.1:1のように、約5.1:1〜1.9:1であり、ここでこの反応は、約20〜約73℃(例えば、約40℃)の温度で行う;
(ii)工程(i)からの反応混合物を約20℃へ冷やして、その混合物をこの温度に保って、A型の結晶化をもたらす工程;及び
(iii)化合物(I)ジフマレートA型を単離する工程を含んでなる。
【0080】
A型の単離に適した条件は、上記に定義される通りである。
本発明の別の態様において、化合物(I)ジフマレート(A型)の製造の方法を提供し、該方法は:
(i)水中の化合物(I)を少なくとも2モル当量のフマル酸(例えば、約2.1モル当量のフマル酸のように、少なくとも2.05モル当量のフマル酸)と反応させる工程(ここでこの反応は、約85℃で行う);
(ii)工程(i)からの反応混合物を約60℃へ冷やす工程;及び
(iii)化合物(I)ジフマレートA型を単離する工程を含んでなる。
【0081】
好適には、工程(ii)において、反応混合物は、約60℃へゆっくりと、例えば、約1℃/分の冷却速度で冷やす。求められるならば、A型の結晶化は、この混合物の冷却の間にA型の種結晶を加えることによって誘導することができる。好適には、反応混合物を約77℃へ冷やしたときに、A型の種結晶を加える。工程(iii)におけるA型の単離に適した条件は、上記に記載される通りである。
【0082】
結晶性化合物(I)ジフマレートB〜P型は、例えば、本明細書の「実施例」に記載される方法によって製造することができる。
医薬組成物
本発明のさらなる側面により、化合物(I)ジフマレートを医薬的に許容される希釈剤又は担体と共に含む医薬組成物を提供する。化合物(I)ジフマレートは、本明細書に記載される形態のいずれ(例えば、A型)でも組成物に使用してよい。
【0083】
本発明の組成物は、経口使用に(例えば、錠剤、トローチ剤、硬又は軟カプセル剤、水性又は油性の懸濁液剤、乳剤、分散性の散剤又は顆粒剤、シロップ剤又はエリキシル剤として)、局所使用に(例えば、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、又は水性若しくは油性の溶液剤若しくは懸濁液剤として)、吸入による投与に(例えば、微細化散剤又は液体エアゾール剤として)、通気による投与に(例えば、微細化散剤として)、又は非経口投与に(例えば、静脈内、皮下、筋肉内への投薬用の無菌の水性又は油性溶液剤として、又は直腸投薬用の坐剤として)適した形態であってよい。
【0084】
本発明の組成物は、当該技術分野でよく知られている慣用の医薬賦形剤を使用する慣用の手順によって入手してよい。従って、経口使用に企図される組成物は、例えば、1以上の着色剤、甘味剤、香味剤及び/又は保存剤を含有してよい。
【0085】
例えば、化合物(I)ジフマレートは、好適には、以下の賦形剤を使用して、錠剤として製剤化される:
錠剤コア:
化合物(I)ジフマレート(例えば、A型);
乳糖;
微結晶性セルロース;
クロスポビドン;
ポリビドン(PVP);及び
ステアリン酸マグネシウム。
【0086】
錠剤コアは、HPMCベースのフィルムコーティング剤のようなフィルムコーティング剤でコートしてよく、該コーティング剤は、1以上の着色剤及び/又は光保護剤を含有してもよい。
【0087】
錠剤は、慣用法を使用して、そして「実施例」に例解されるように製造してよい。求められるならば、化合物(I)ジフマレートは、化合物(I)ジフマレートの錠剤中での均一な粒径分布をもたらすために、錠剤への製剤化に先立って粉砕してよい。例えば、化合物(I)ジフマレートを粉砕して、約5μmの平均粒径をもたらすことができる。好適な粉砕法がよく知られている。
【0088】
1以上の賦形剤と組み合わせて、単一の剤形を産生する有効成分の量は、必然的に、治療される宿主と特別な投与経路に依存して変動するものである。例えば、ヒトへの経口投与に企図される製剤は、例えば、0.5mg〜0.5gの有効成分(より好適には、0.5〜200mg、例えば、1〜30mg)を概して含有して、全組成物の約5〜約98重量パーセントまで変動し得る、適正で簡便な量の賦形剤と複合される。
【0089】
化合物(I)ジフマレートの療法又は予防目的のための用量の大きさは、状態の本質及び重症度、動物又は患者の年齢及び性別、及び投与の経路に従って、よく知られた医学の原理に従って、当然ながら変動するものである。
【0090】
化合物(I)ジフマレートを療法又は予防の目的に使用するとき、それは、分割用量で求められるならば、例えば、0.1mg/kg〜75mg/kg(体重)の範囲で1日用量が服用されるように概して投与される。一般に、非経口経路を利用するときには、より低い用量が投与される。従って、例えば、静脈内投与では、例えば、0.1mg/kg〜30mg/kg(体重)の範囲の用量が概して使用される。同様に、吸入による投与では、例えば、0.05mg/kg〜25mg/kg(体重)の範囲の用量が使用される。しかしながら、経口投与が、特に錠剤の形態で、好ましい。例えば、化合物(I)ジフマレートは、温血動物へ1日1gより少ないが1mgよりは多い単位用量で経口的に投与することができる。特に、化合物(I)ジフマレートは、温血動物へ1日につき250mg未満の単位用量で投与することができる。本発明の別の側面において、化合物(I)ジフマレートは、温血動物へ1日につき160mg未満の単位用量で投与することができる。本発明のさらなる側面において、化合物(I)ジフマレートは、温血動物へ1日につき50mg未満の単位用量で投与することができる。化合物(I)ジフマレートの用量は、単一の1日用量として、又は全1日用量の多数の画分として投与してよい。例えば、化合物(I)ジフマレートの全1日用量は、同じであっても異なっていてもよい2つの用量として投与してよい。しかしながら、好適には、全1日用量の各画分はほぼ均しいものであろう。例を挙げると、化合物(I)ジフマレートは、1.5、3.7、14.9、59.6,又は149mgの化合物(I)ジフマレート(1、2.5、10、40、又は100mgの化合物(I)遊離型に等しい)を含有する錠剤又はカプセル剤のような、1以上の経口剤形として投与してよい。さらなる態様では、40、80、100、160、200、又は240mgの化合物(I)に等しい化合物(I)ジフマレートの用量を1日2回投与する。特別な態様では、160mgの化合物(I)に等しい化合物(I)ジフマレートの用量を1日2回投与する。特別な態様では、200mgの化合物(I)に等しい化合物(I)ジフマレートの用量を1日2回投与する。別の特別な態様では、240mgの化合物(I)に等しい化合物(I)ジフマレートの用量を1日2回投与する。
【0091】
生物学的アッセイ
化合物(I)及び化合物(I)ジフマレートの阻害活性は、WO2005/028469に記載されるか又は本明細書の「実施例」に記載されるようなアッセイで測定することができる。
【0092】
本発明の化合物は、そのerbBファミリー受容体チロシンキナーゼ阻害活性、そして特に、混合したerbB2/EGF及び/又はerbB3/EGFプロフィールより生じると考えられる、抗癌特性のような抗増殖特性を保有する。
【0093】
従って、本発明の化合物は、erbB受容体チロシンキナーゼによって単独に、又は一部媒介される疾患又は医学的状態の治療に有用であることが期待される。即ち、該化合物は、erbB受容体チロシンキナーゼ阻害効果を産生するような治療を必要とする温血動物においてそれを産生するために使用することができる。このように、本発明の化合物は、erbBファミリーの1以上の受容体チロシンキナーゼの阻害を特徴とする、悪性細胞の治療の方法を提供する。特に、本発明の化合物は、erbB受容体チロシンキナーゼの阻害によって単独に、又は一部媒介される抗増殖及び/又は好アポトーシス及び/又は抗浸潤効果を産生するために使用してよい。特に、本発明の化合物は、腫瘍細胞の増殖及び生存を推進するシグナル伝達経路に関与するerbB受容体チロシンキナーゼの1以上の阻害に感受性がある腫瘍の予防又は治療に有用であることが期待される。従って、本発明の化合物は、抗増殖効果をもたらすことによって、乾癬、良性前立腺肥大症(BPH)、アテローム性動脈硬化症及び再狭窄、及び/又は癌の治療に、特にerbB受容体チロシンキナーゼ感受性の癌の治療に有用であることが期待される。このような良性又は悪性の腫瘍は、どの組織にも影響を及ぼす場合があり、白血病、多発性骨髄腫、又はリンパ腫のような非固形腫瘍とさらに固形腫瘍、例えば、胆管、骨、膀胱、脳/CNS、乳房、結直腸、子宮内膜、胃、頭頚部、肝臓、肺、神経細胞、食道、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、皮膚、精巣、甲状腺、子宮、及び外陰部の癌が含まれる。
【0094】
癌について言及される場合、特にそれは、食道癌、骨髄腫、肝細胞癌、膵臓癌、頚部癌、ユーイング腫瘍、神経芽腫、カポシ肉腫、卵巣癌、乳癌、結直腸癌、前立腺癌、膀胱癌、メラノーマ、肺癌−非小細胞肺癌(NSCLC)及び小細胞肺癌(SCLC)、胃癌、頭頚部癌、脳腫瘍、腎臓癌、リンパ腫、及び白血病を意味する。1つの態様において、それは、乳癌、例えば、ホルモン受容体陽性乳癌を意味する。別の態様において、癌は、SCLC、NSCLC、結直腸癌、卵巣癌、及び/又は乳癌を意味する。別の態様において、癌は、SCLCを意味する。別の態様において、癌は、胃癌を意味する。加えて、それは、NSCLCを意味する。加えて、それは、結直腸癌を意味する。加えて、それは、卵巣癌を意味する。加えて、より特別には、それは、乳癌を意味する。加えて、より特別にはそれは、ホルモン受容体陽性乳癌、具体的には、閉経後の女性におけるホルモン受容体陽性乳癌を意味する。1つの態様において、それは、初期の非転移性ホルモン受容体陽性乳癌、例えば、閉経後の女性における初期の非転移性ホルモン受容体陽性乳癌を意味する。なおさらにそれは、初期の非転移性エストロゲン及び/又はプロゲステロン受容体陽性乳癌、具体的には、閉経後の女性における初期の非転移性エストロゲン及び/又はプロゲステロン受容体陽性乳癌を意味する。加えて、より特別には、それは、転移性ホルモン受容体陽性乳癌、具体的には、閉経後の女性における転移性ホルモン受容体陽性乳癌を意味する。なおさらにそれは、転移性エストロゲン及び/又はプロゲステロン受容体陽性乳癌、具体的には、閉経後の女性における転移性エストロゲン及び/又はプロゲステロン受容体陽性乳癌を意味する。さらに、それは、膀胱癌、食道癌、胃癌、メラノーマ、頚部癌、及び/又は腎臓癌を意味する。加えて、それは、子宮内膜、肝臓、胃、甲状腺、直腸、及び/又は脳の癌を意味する。本発明の別の態様において、特に癌は、非転移性状態にある。本発明の別の態様において、特に癌は、転移性状態にある。本発明のさらなる態様において、特に癌は、転移性状態にあり、そしてより特別には、癌は、皮膚転移を産生する。本発明のさらなる態様において、特に癌は、転移性状態にあり、そしてより特別には、癌は、リンパ転移を産生する。本発明のさらなる態様において、特に癌は、転移性状態にあり、そしてより特別には、癌は、脳転移を産生する。
【0095】
癌の治療について言及される場合、特にこれは、erbBファミリーの受容体、例えば、EFGR、erbB2、及び/又はerbB3受容体の1以上を発現している癌性腫瘍の治療のことである。本発明による化合物(I)ジフマレートの抗癌効果は、抗腫瘍効果、応答の程度(例えば、腫瘍体積の低下、又は腫瘍負荷の低下)、応答率、臨床利益率(完全応答、部分応答、及び疾患安定の合計)、疾患進行への時間、無進行生存、及び全生存率の1以上に関して測定することができる。このような臨床試験のエンドポイントはよく知られていて、例えば、FDA出版物「制癌剤及び生物製剤の承認のための臨床試験エンドポイントガイダンス(Guidance for Industry Clinical Trial Endpoints for the Approval of Cancer Drugs and Biologics)」2007年5月(www.fda.gov/CbER/gdlns/clintrialend.htm)に記載されている。本発明による化合物(I)ジフマレート抗腫瘍効果は、例えば、腫瘍成長の阻害、腫瘍成長の遅延、腫瘍の退縮、腫瘍の縮小、治療中止時での腫瘍の再成長に至る時間の増加、又は疾患進行の鈍化の1以上であり得る。
【0096】
化合物(I)ジフマレートの使用には、ヒトのような温血動物において癌の発症を予防するのに有益な効果を及ぼす場合もある。
本発明のこの側面により、化合物(I)ジフマレートを医薬品としての使用に提供する。
【0097】
本発明のさらなる側面により、化合物(I)ジフマレートを、ヒトのような温血動物での抗増殖効果の産生における使用に提供する。
このように、本発明のこの側面により、ヒトのような温血動物での抗増殖効果の産生に使用の医薬品の製造における、化合物(I)ジフマレートの使用を提供する。
【0098】
本発明のこの側面のさらなる特徴により、抗増殖効果を産生するような治療を必要とする、ヒトのような温血動物においてそれを産生するための方法を提供し、該方法は、化合物(I)ジフマレートの有効量を前記動物へ投与することを含む。
【0099】
本発明のさらなる側面により、化合物(I)ジフマレートを、腫瘍細胞の増殖をもたらすシグナル伝達経路に関与している、EGFR及びerbB2及び/又はEGFR及びerbB3の組合せのような、erbB受容体チロシンキナーゼの阻害に感受性がある腫瘍の予防又は治療における使用に提供する。
【0100】
本発明のさらなる側面により、腫瘍細胞の増殖をもたらすシグナル伝達経路に関与している、EGFR及びerbB2及び/又はEGFR及びerbB3の組合せのような、erbB受容体チロシンキナーゼの阻害に感受性がある腫瘍の予防又は治療に使用の医薬品の製造における、化合物(I)ジフマレートの使用を提供する。
【0101】
本発明のこの側面のさらなる特徴により、腫瘍細胞の増殖及び/又は生存をもたらすシグナル伝達経路に関与している、EGFR及びerbB2及び/又はEGFR及びerbB3の組合せのような、erbBファミリーの1以上の受容体チロシンキナーゼの阻害に感受性がある腫瘍の予防又は治療の方法を提供し、該方法は、化合物(I)ジフマレートの有効量を前記動物へ投与することを含む。
【0102】
本発明のさらなる側面により、組み合わされたEGFR及びerbB2チロシンキナーゼ阻害効果をもたらすことに使用の医薬品の製造における、化合物(I)ジフマレートの使用を提供する。
【0103】
本発明のこの側面のさらなる特徴により、組み合わされたEGFR及びerbB2チロシンキナーゼ阻害効果をもたらすための方法を提供し、該方法は、化合物(I)ジフマレートの有効量を前記動物へ投与することを含む。
【0104】
本発明のこの側面のさらなる特徴により、化合物(I)ジフマレートを、組み合わされたEGFR及びerbB2チロシンキナーゼ阻害効果をもたらす使用に提供する。
本発明のさらなる側面により、EGFR、erbB2、及びerbB3より選択される2以上の受容体に対してチロシンキナーゼ阻害効果をもたらすのに使用の医薬品の製造における、化合物(I)ジフマレートの使用を提供する。
【0105】
本発明のこの側面のさらなる特徴により、EGFR、erbB2、及びerbB3より選択される2以上の受容体に対してチロシンキナーゼ阻害効果をもたらすための方法を提供し、該方法は、化合物(I)ジフマレートの有効量を前記動物へ投与することを含む。
【0106】
本発明のこの側面のさらなる特徴により、化合物(I)ジフマレートを、EGFR、erbB2、及びerbB3より選択される2以上の受容体に対してチロシンキナーゼ阻害効果をもたらす使用に提供する。
【0107】
本発明のさらなる側面により、erbB2/erbB3ヘテロ二量体のリン酸化によって全部又は一部媒介される状態(例えば、腫瘍)の治療に使用の医薬品の製造における、化合物(I)ジフマレートの使用を提供する。
【0108】
本発明のこの側面のさらなる特徴により、erbB2/erbB3ヘテロ二量体のリン酸化によって全部又は一部媒介される状態(例えば、腫瘍)の治療の方法を提供し、該方法は、化合物(I)ジフマレートの有効量を前記動物へ投与することを含む。
【0109】
本発明のこの側面のさらなる特徴により、化合物(I)ジフマレートを、erbB2/erbB3ヘテロ二量体のリン酸化によって全部又は一部媒介される状態(例えば、腫瘍)の治療における使用に提供する。
【0110】
本発明のさらなる側面により、癌(例えば、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、胆管、骨、膀胱、脳/CNS、乳房、結直腸、子宮内膜、胃、頭頚部、肝臓、肺(特に、非小細胞肺癌)、神経細胞、食道、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、皮膚、精巣、甲状腺、子宮、及び外陰部の癌より選択される癌、特に、乳房、胃、結直腸、頭頚部、卵巣、及び肺の癌より選択される癌、より特別には、乳癌)の治療に使用の医薬品の製造における、化合物(I)ジフマレートの使用を提供する。
【0111】
本発明のこの側面のさらなる特徴により、癌の治療を必要とする、ヒトのような温血動物において癌(例えば、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、胆管、骨、膀胱、脳/CNS、乳房、結直腸、子宮内膜、胃、頭頚部、肝臓、肺(特に、非小細胞肺癌)、神経細胞、食道、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、皮膚、精巣、甲状腺、子宮、及び外陰部の癌より選択される癌、特に、乳房、胃、結直腸、頭頚部、卵巣、及び肺の癌より選択される癌、より特別には、乳癌)を治療する方法を提供し、該方法は、化合物(I)ジフマレートの有効量を前記動物へ投与することを含む。
【0112】
本発明のさらなる側面により、化合物(I)ジフマレートを、癌(例えば、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、胆管、骨、膀胱、脳/CNS、乳房、結直腸、子宮内膜、胃、頭頚部、肝臓、肺(特に、非小細胞肺癌)、神経細胞、食道、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、皮膚、精巣、甲状腺、子宮、及び外陰部の癌より選択される癌、特に、乳房、胃、結直腸、頭頚部、卵巣、及び肺の癌より選択される癌、より特別には、乳癌)の治療における使用を提供する。
【0113】
上記に言及したように、特別な疾患の療法的又は予防的治療に必要とされる用量のサイズは、必然的に、治療される宿主、投与の経路、及び治療される病気の重症度にとりわけ依存して変動するものである。
【0114】
本発明のさらなる側面により、化合物(I)ジフマレートを医薬的に許容される希釈剤又は担体と共に含む医薬組成物を、癌の治療における使用に提供する。
疑念の回避のために言えば、癌の治療に適応される場合、それは、転移の予防と転移(即ち、癌の拡散)の治療も意味すると理解されたい。故に、本発明の化合物(I)及び化合物(I)ジフマレートは、転移がない患者をそれが生じないように治療するために、又はそれが生じる前の時間帯を長くするために、そしてすでに転移がある患者に対しては、転移それ自体を治療するために使用することができる。さらに、癌の治療とは、定着した単数又は複数の原発性腫瘍と進展中の単数又は複数の原発性腫瘍の治療も意味する。本発明の1つの側面において、癌の治療は、転移の予防に関する。本発明の別の側面において、癌の治療は、転移の治療に関する。本発明の別の側面において、癌の治療は、定着した単数又は複数の原発性腫瘍又は進展中の単数又は複数の原発性腫瘍の治療に関する。1つの態様において、癌の治療は、アジュバント治療に関する。別の態様において、癌の治療は、癌のネオアジュバント治療に関する。従って、本発明の態様では、本発明による化合物(I)ジフマレートをホルモン感受性乳癌のアジュバント治療薬として、特に、閉経後の女性におけるエストロゲン受容体陽性乳癌のアジュバント治療薬として使用する。本発明の別の態様では、本発明による化合物(I)ジフマレートをホルモン感受性乳癌のネオアジュバント治療薬として、特に、閉経後の女性におけるエストロゲン及び/又はプロゲステロン受容体乳癌のネオアジュバント治療薬として使用する。別の態様では、化合物(I)ジフマレートを進行性(転移性)ホルモン感受性(エストロゲン及び/又はプロゲステロン受容体陽性)乳癌、特に、閉経後の女性における進行性エストロゲン受容体陽性癌を治療するために使用する。
【0115】
さらなる態様において、本発明による化合物(I)ジフマレートは、ホルモン感受性乳癌の患者における治療時のネオアジュバント療法として使用し得る。別の態様では、本発明による化合物(I)ジフマレートをネオアジュバント治療薬として使用しない。
【0116】
「アジュバント療法」という用語は、原発性腫瘍の除去に続いて施される治療を意味する。癌が乳癌である場合、原発性腫瘍の除去は、例えば、外科(例えば、乳房腫瘍摘出術又は乳房切除術)及び/又は放射線療法によって実施し得る。
【0117】
「ネオアジュバント療法」という用語は、原発性腫瘍の外科又は放射線療法による除去に先立って施される治療を意味する。
本明細書において、癌の治療は、癌そのものの予防も意味する。
【0118】
本発明の1つの態様では、化合物(I)ジフマレートを、乳癌の治療における使用に適した内分泌作用剤と組み合わせて使用する。例えば、化合物(I)ジフマレートと、アロマターゼ阻害剤、選択的エストロゲン受容体モジュレータ、LHRHアゴニスト、及びエストロゲン受容体ダウンレギュレータより選択される内分泌作用剤との組合せ。例えば、化合物(I)ジフマレートとアロマターゼ阻害剤との組合せ。例えば、化合物(I)ジフマレートとタモキシフェンの組合せ。例えば、化合物(I)ジフマレートとアナストロゾールの組合せ。例えば、化合物(I)ジフマレートとレトロゾールの組合せ。例えば、化合物(I)ジフマレートとエクセメスタンの組合せ。化合物(I)ジフマレートと内分泌療法剤の組合せは、本明細書に記載されるように、乳癌の治療に特に適しているかもしれない。例えば、この組合せは、転移性エストロゲン及び/又はプロゲステロン陽性乳癌の治療に有用であり得る。あるいは、この組合せは、乳癌のアジュバント治療薬として、特にエストロゲン及び/又はプロゲステロン陽性乳癌のアジュバント治療薬として有用であり得る。この組合せはまた、内分泌療法(例えば、タモキシフェンのような選択的エストロゲン受容体モジュレータ、アナストロゾールのようなアロマターゼ阻害剤、又はエストロゲン受容体ダウンレギュレータ)を以前に受けていない患者におけるエストロゲン及び/又はプロゲステロン陽性乳癌の治療に有用であり得る。
【0119】
従って、本発明の1つの態様では、進行性(転移性)エストロゲン及び/又はプロゲステロン陽性乳癌の治療を必要とする、ヒトのような温血動物におけるその治療の方法を提供し、該方法は、アナストロゾールのようなアロマターゼ阻害剤の有効量と組み合わせた化合物(I)ジフマレートの有効量を前記動物へ投与することを含み、ここで前記動物は、例えば、タモキシフェンのような選択的エストロゲン受容体モジュレータ、アナストロゾールのようなアロマターゼ阻害剤、又はエストロゲン受容体ダウンレギュレータといった内分泌療法剤でかつて治療されたことがない。
【0120】
本発明の別の態様では、非転移性エストロゲン及び/又はプロゲステロン陽性乳癌の治療を必要とする、ヒトのような温血動物におけるその治療の方法を提供し、該方法は、アナストロゾールのようなアロマターゼ阻害剤の有効量と組み合わせた化合物(I)ジフマレートの有効量を前記動物へ投与することを含み、ここで前記動物は、例えば、タモキシフェンのような選択的エストロゲン受容体モジュレータ、アナストロゾールのようなアロマターゼ阻害剤、又はエストロゲン受容体ダウンレギュレータといった内分泌療法剤でかつて治療されたことがない。この態様では、この組合せを、好適には、アジュバント治療薬として投与する。
【0121】
乳癌の治療についての上記2つの態様において、温血動物は、好適には、閉経後の女性である。「閉経後の」という用語には、自然に閉経後である女性と、例えば、ゴセレリンのようなLHRHアゴニストでの治療によって閉経が誘導された女性が含まれる。本明細書において、患者が「内分泌療法剤でかつて治療されたことがない」と述べる場合、患者において早期の閉経を誘導するためにLHRHアゴニストで患者を治療することは、「内分泌療法剤でかつて治療された」とみなさないと企図されると理解されたい。従って、早期の閉経を誘導するためにLHRHアゴニストで治療された患者は、「内分泌療法剤で治療されて」いないものとして本明細書に記載される態様より除外されない。
【0122】
別の態様では、化合物(I)ジフマレートをパクリタキセル又はドセタキセルのようなタキサンと組み合わせて使用する。この組合せは、乳癌の治療に有用であり得る。例えば、erbB2の低い過剰発現を有する乳癌(特に、進行性/転移性乳癌)の治療において。「erbB2の低い過剰発現」という用語は、Her2蛍光 in-situ ハイブリダイゼーション(FISH)陰性である腫瘍に関連する。「erbB2の低い過剰発現」である特別な腫瘍は:
(i)免疫組織化学(IHC)によってHer2+であり;及び/又は
(ii)IHCによってHer2++であって、Her2蛍光 in-situ ハイブリダイゼーション(FISH)陰性であるものである。
【0123】
従って、本発明の特別な態様では、化合物(I)ジフマレートを:
(a)Her2 FISH陰性である乳癌;
(b)IHCによってHer2+である乳癌;及び
(c)IHCによってHer2++であり、Her2 FISH陰性である乳癌の1以上より選択される、erbB2の低い過剰発現を有する癌の治療において、パクリタキセル又はドセタキセルのようなタキサンと組み合わせて使用する。
【0124】
本発明のさらなる側面により、erbB2の低い過剰発現を有する乳癌の治療を必要とする、ヒトのような温血動物におけるその治療の方法を提供し、該方法は、化合物(I)ジフマレートの有効量をパクリタキセル又はドセタキセルのようなタキサンの有効量と組み合わせて前記動物へ投与することを含む。
【0125】
本明細書において、「組合せ」という用語を使用する場合、それは、同時、分離、又は連続投与を意味すると理解されたい。本発明の1つの側面において、「組合せ」は、同時投与を意味する。本発明の別の側面において「組合せ」は、分離投与を意味する。本発明のさらなる側面において、「組合せ」は、連続投与を意味する。投与が連続的又は分離的である場合、第二成分を投与するときの遅延は、この組合せの有益な効果を失わせるようなものであってはならない。
【0126】
理解されるように、本方法に記載される化合物(I)ジフマレートの使用への言及、本明細書に記載される使用及び医薬組成物は、本明細書に記載されるジフマレートのいずれにも(例えば、A型)関連する。
【実施例】
【0127】
本発明を、本発明のいくつかの態様を詳しく説明することを企図した、以下の実施例によってさらに例解する。これらの実施例は、本発明の範囲を制限することを企図していないし、制限すると解釈すべきでもない。特に本明細書に記載されるものとは別のやり方で本発明を実施し得ることは明らかであろう。本発明の数多くの変形及び変更形態が本明細書の教示に照らして可能であるので、それらも本発明の範囲内にある。
【0128】
「実施例」において、他に述べなければ:
(i)収率は例示のためにのみ示して、必ずしも達成し得る最大値ではない;
(ii)融点は、Mettler DSC820e装置を使用して、DSC分析によって決定した;開口した試料皿において1〜2mgの試料を正確に秤量して分析した;加熱は、25℃〜325℃まで10℃/分で行った;他に述べなければ、本明細書での融点は、DSCを使用して測定される融解吸熱の開始温度を意味する;
(iii)質量スペクトル(MS)は、直接曝露プローブを使用する化学イオン化(CI)モードにおいて70電子ボルトの電子エネルギーで操作した;指定される場合、イオン化は、電子衝撃(EI)、高速原子衝突(FAB)、又はエレクトロスプレー(ESP)によって実施した;m/zの数値を示す;一般に、元の質量を示すイオンだけを報告する;そして、他に述べなければ、引用する質量イオンは、プロトン化質量イオンを意味する(MH)であり;Mへの言及は、電子の損失によって産生される質量イオンに対し;そしてM−Hへの言及は、プロトンの損失によって産生される質量イオンに対する;
(iv)示す場合、NMRデータは、主要な診断プロトンへのδ値の形式であり、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対する百万分率(ppm)で示し、他に述べなければ、過重水素ジメチルスルホキシド(DMSO−d)を溶媒として使用して500MHzで決定した;以下の略語を使用した;s,一重項;d,二重項;t,三重項;q,四重項;m,多重項;br,ブロード;
(v)化学記号は、その通常の意味を有する;SI単位及び記号を使用する;
(vi)溶媒比は、容量:容量(v/v)用語で示す;
(vii)熱重量分析は、Mettler TG851機器を使用して行った[1〜5mgの試料をオープン皿において正確に秤量して分析した;加熱は、25℃〜325℃まで10℃/分で行った。
【0129】
(viii)シンチレーション検出器を取り付けたSiemens D5000粉末X線回折計を使用して、粉末X線回折分析を行った;X線源は、1.54A(オングストローム)の波長を与える、CuKαであった;2θ:0.02°の増分において、各増分に付き1秒で、2θ:2〜40°の範囲にわたってデータを回収して、以下の表2に確定するカテゴリーへ分類した:
表2
【0130】
【表2】

【0131】
[先に述べたように、粉末X線回折の技術分野の当業者は、ピークの相対強度が、例えば、30ミクロンより大きい粒径と非ユニタリーアスペクト比によって影響を受ける可能性があり、それが試料の分析に影響を及ぼす場合があることを理解されよう。当業者はまた、試料が回折計に置かれる正確な高さと回折計の零点校正によって反射の位置が影響を受ける可能性があることを理解されよう。試料の表面平面性もわずかに影響を及ぼす場合がある。従って、提示される回折パターンのデータを絶対値として解釈してはならない(さらなる情報については、Jenkins, R & Snyder, R.L.「Introduction to X-Ray Powder Diffractometry(粉末X線回折法入門)」ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(1996)を参照のこと)];
(ix)動的水蒸気吸着は、SMS DVS(Surface Measurement Systems 社、イギリス)を使用して測定した。1分に付き200立方センチメートルのガス流を使用して、試料を25℃で分析した。相対湿度(RH)を0% RHより10% RHのステップで80% RHへ高めて、95% RHの最終ステップとした。次いで、吸着と同じRHステップパターンを使用して、試料を脱着させた;次いで、この手順を第二の吸着/脱着サイクルにおいて繰り返した。それぞれの湿度ステップでの平衡は、重量の経時(分)変化率が0.002%であるように設定する。
【0132】
(x)固有溶解速度は、光ファイバーuv検出器へ連結した溶解浴において測定した。
(xi)水溶解度は、HPLC UVを使用して測定した。
(xii)下記に示す実施例において、述べられるモル数と収率は、原材料と試薬を100(w/w)%として言及し、それによって使用する材料の純度を考慮する。
【0133】
実施例A
4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリン(化合物(I))の製造
2−クロロ−N−メチルアセトアミド(3.720kg,34.60モル)と4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−[(ピペリジン−4−イル)オキシ]キナゾリン二塩酸塩(13.70kg,27.25モル)をアセトニトリル(79.2kg)に溶かした。この撹拌懸濁液へ、周囲温度でトリエチルアミン(17.40kg,172.11モル)を加えた。得られる澄明な溶液を加熱して還流させて、3時間保持した。この溶液を20℃へ冷やした(生成物は50℃で結晶化した)。反応器へ水(54.2kg)を加えて、この懸濁液を20℃でさらに2時間撹拌した。生成物を濾過して、水(34kg)に続いて冷(0℃)アセトニトリル(13.0kg)で洗浄した。生成物をアセトニトリル(94.6kg)より再結晶させ、濾過によって単離して、冷(0℃)アセトニトリル(13.2kg)で洗浄した。次いで、この生成物の再結晶化を上記のようにアセトニトリル(75.2kg)より行った。次いで、固形物を真空で乾燥させて、表題生成物(6.50kg,50%)を白い固形物として得た;1H NMR スペクトル: (CDCl3) 1.98 (m, 2H), 2.08 (m, 2H), 2.46 (-m, 2H), 2.85 (m, 2H), 2.87 (d, 3H), 3.07 (s, 2H), 4.02 (s, 3H), 4.49 (m, 1H), 7.16 (m, 4H), 7.31 (m, 2H), 8.49 (m, 1H), 8.71 (s, 1H); 質量スペクトル: MH+474。
【0134】
出発材料として使用する4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−[(ピペリジン−4−イル)オキシ]キナゾリンは、以下のように製造した:
工程1:6−アセトキシ−4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシキナゾリン塩酸塩
6−アセトキシ−7−メトキシキナゾリン−4−オン(国際特許出願WO96/15118の実施例39;21.4kg,89.3モル)をトルエン(150kg)に懸濁させた。これへN−エチルジイソプロピルアミン(13.3kg,103モル)を加えた。この茶褐色の懸濁液を70℃まで加熱してから、オキシ塩化リン(36.0kg,228モル)を入れた。反応混合物を70℃で5時間撹拌した。さらなるトルエン(84.0kg)に続いて3−クロロ−2−フルオロアニリン(14.88kg,102モル)を加えた。反応混合物を70℃で2時間撹拌すると、この時間の間に固形物が沈殿した。この懸濁液を25℃へ冷やして、この温度に93時間保持した。反応混合物を濾過して、濾過ケークをトルエン(2x55.5kg)で洗浄した。このケークをエタノール(24.5kg)及び水(32.0kg)の混合物でさらに2回、次いでエタノール(50.5kg)で2回洗浄してから、この固形物を真空で乾燥させて、表題生成物(33.4kg,78%)をベージュ色の固形物として得た;1H NMR: 2.37 (s, 3H), 4.00 (s, 3H), 7.34 (ddd, 1H), 7.48 (s, 1H), 7.52 (ddd, 1H), 7.61 (ddd, 1H), 8.62 (s, 1H), 8.86 (s, 1H); 質量スペクトル: 362.4, 364.4。
【0135】
工程2:4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−6−ヒドロキシ−7−メトキシキナゾリン
工程1からの6−アセトキシ−4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシキナゾリン塩酸塩(33.5kg,69.6モル)をメタノール(198kg)に懸濁させた。この撹拌懸濁液へ25℃で水(86kg)と水酸化ナトリウム(31.5kg,32%)を加えた。得られる溶液を60℃で4.5時間撹拌してから、25℃へ冷やした。5.5〜6.0のpHに達するまで酢酸(ほぼ16.0kg)を加えると、この時点で生成物が溶液より沈殿した。さらなるメタノール(5.5kg)の添加後、この懸濁液を90分間撹拌した。生成物を濾過してから、25%水性メタノール(39.0kg MeOH+17.0kg水)に次いで、メタノール(55.5kg)で洗浄した。この粗製固形物を真空下に40℃で乾燥させた。この粗製固形物を水(145kg)でスラリー化させて、65℃で2時間撹拌した。このスラリーを20℃へ冷やして、濾過した。濾過ケークをメタノール(2x21.5kg)で洗浄してから、真空下に40℃で乾燥させて、表題生成物(21.85kg,98%)を淡褐色の固形物として得た;1H NMR: 3.95 (s, 3H), 7.19 (s, 1H), 7.23 (dd, 1H), 7.42 (dd, 1H), 7.50 (dd, 1H), 7.64 (s, 1H), 8.32 (s, 1H), 9.43 (s, 1H), 9.67 (br.s, 1H); 質量スペクトル: 320.4, 322.4。
【0136】
工程3:6−{[(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル]オキシ}−4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシキナゾリン
工程2からの4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−6−ヒドロキシ−7−メトキシキナゾリン(15.591kg,48.44モル)、(4−メタンスルホニルオキシ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(Chemical & Pharmaceutical Bulletin 2001, 49(7), 822-829 にあるように製造した;16.20kg,57.99モル)、及び炭酸カリウム(7.978kg,57.73モル)をN−メチルピロリジノン(114.2kg)に溶かして、この混合物を撹拌しながら100℃まで加熱した。加熱を100℃(95℃〜105℃)で5時間続けた。次いで、この混合物を80℃へ冷やして、水(216.6kg)の添加によって冷ました。
【0137】
このバッチを80℃でさらに60分間撹拌してから、2時間にわたり20℃へ冷やすと、この時間の間に生成物が結晶化した。生成物を濾過によって単離した。生成物を温(還流)メタノール(200L)に溶かした。この混合物へ水(20L)を加えると、結晶化を引き起こした。この懸濁液を0℃へ冷やして、濾過した。50℃での真空乾燥によって、表題生成物(18.80kg,77%)を得た;1H NMR: 1.40 (s, 9H), 1.60-1.65 (m, 2H), 1.95-2.00 (m, 2H), 3.20-3.25 (m, 2H), 3.65-3.70 (m, 2H), 3.92 (s, 3H), 4.68 (m, 1H), 7.21 (s, 1H), 7.27 (dd, 1H), 7.47 (ddd, 1H), 7.51 (dd, 1H), 7.85 (s, 1H), 8.36 (s, 1H), 9.53 (s, 1H); 質量スペクトル: 503.5, 505.5。
【0138】
工程4:4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−[(ピペリジン−4−イル)オキシ]キナゾリン二塩酸塩
工程3からの6−{[(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル]オキシ}−4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシキナゾリン(18.80kg,37.38モル)をイソプロパノール(139.8kg)に懸濁させて、撹拌しながら40℃まで加熱した。この容器へ塩酸(15.40kg,約156.3モル)を50分にわたり入れると、ほぼ9℃の吸熱が生じることを可能にした。酸の投入の間に懸濁液が溶けて、澄明な溶液となった。この溶液をほぼ90分にわたりゆっくり加熱して還流させてから、還流にさらに3時間保った。この還流時間の間に生成物が析出した。この濃厚な懸濁液を0℃へ冷やして、濾過した。濾過ケークを冷(0℃)イソプロパノール(2x20.6kg)で2回洗浄した。この生成物を真空下に50℃で乾燥させて、表題生成物(13.60kg,73%)を得た;1H NMR: 1.53-1.64 (m, 2H), 2.00-2.05 (m, 2H), 2.64-2.72 (m, 2H), 3.00-3.07 (m, 2H), 3.92 (s, 3H), 4.60 (m, 1H), 7.20 (s, 1H), 7.26 (ddd, 1H), 7.47 (dd, 1H), 7.50 (dd, 1H), 7.82 (s, 1H), 8.34 (s, 1H), 9.56 (s, 1H); 質量スペクトル: 403.2, 405.2。
【0139】
実施例B.4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリン(化合物(I))の製造
2−クロロ−N−メチルアセトアミド(24.22g,223.1ミリモル)と4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−[(ピペリジン−4−イル)オキシ]キナゾリン二塩酸塩(86.00g,160.9ミリモル)をアセトニトリル(537ml)中でスラリー化させた。この撹拌懸濁液へ周囲温度でトリエチルアミン(101ml,723.9ミリモル)を加えた。この反応物を75℃まで加熱して、5時間保持した。この溶液を70℃へ冷やして、エタノール(268ml)を加えた。この反応物を45℃へ冷やして、水(9.6ml)を加えた。化合物(I)(0.42g)を加えて結晶化をもたらしてから、このスラリーを2時間にわたり20℃へ冷やした。さらに12時間撹拌後、この生成物を濾過によって単離した。濾過ケークをアセトニトリル(102ml):エタノール(51ml):水(1.8ml)で2回、次いで水(153ml)で洗浄した。この生成物を60℃で真空乾燥させて、表題化合物(45.9g,60%)を白い固形物として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.76-1.87 (m, 2H) 2.01-2.11 (m, 2H) 2.35-2.44 (m, 2H) 2.64 (d, J=4.74 Hz, 3H) 2.72-2.80 (m, 2H) 2.95 (s, 2H) 3.95 (s, 3H) 4.51-4.63 (m, 1H) 7.23 (s, 1H) 7.29 (td, J=8.08, 1.29 Hz, 1H) 7.46-7.58 (m, 2H) 7.75 (q, J=4.60 Hz, 1H) 7.83 (s, 1H) 8.38 (s, 1H) 9.59 (s, 1H)質量スペクトル: MH+ 474。
【0140】
出発材料として使用する4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−[(ピペリジン−4−イル)オキシ]キナゾリン二塩酸塩は、以下のように製造した:
工程1:6−{[(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル]オキシ}−4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシキナゾリン
4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−6−ヒドロキシ−7−メトキシキナゾリン(実施例Aの工程2に記載のように製造した;60.00g,0.1828モル)、(4−メタンスルホニルオキシ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(88.04g,0.3107モル)、及び炭酸カリウム(30.31g,0.2193モル)をエタノール(584ml)と水(58ml)に懸濁させて、この混合物を撹拌しながら加熱して還流させた。加熱を還流で16.5時間続けた。次いで、この混合物を70℃へ冷やして、水(234ml)を60分にわたり加えた。
【0141】
このバッチを65℃でさらに2時間撹拌して、結晶化をもたらした。このスラリーを6時間にわたり20℃へ冷やした。生成物を濾過によって単離した。濾過ケークを水性エタノール(エタノール117ml,水58ml)でスラリー化させてから、水性エタノール(エタノール117ml,水58ml)で置換洗浄した。次いで、濾過ケークを水(175ml)でスラリー化させてから、水(175ml)で置換洗浄した。この生成物を40℃で真空乾燥させて、表題化合物(81.5g,84%)を得た;1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.42 (s, 9H) 1.60-1.70 (m, 2H) 1.96-2.04 (m, 2H) 3.23-3.30 (m, 2H) 3.65-3.75 (m, 2H) 3.95 (s, 3H) 4.68-4.75 (m, 1H) 7.24 (s, 1H) 7.29 (t, J=8.06 Hz, 1H) 7.49 (t, J=7.50 Hz, 1H) 7.54 (t, J=7.19 Hz, 1H) 7.88 (s, 1H) 8.39 (s, 1H) 9.57 (s, 1H); 質量スペクトル: 503.5, 505.5。
【0142】
工程2:4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−[(ピペリジン−4−イル)オキシ]キナゾリン二塩酸塩
6−{[(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル]オキシ}−4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシキナゾリン(10.00g,0.1879モル)を工業用変性アルコール(95ml)に懸濁させて、撹拌しながら35℃まで加熱した。この容器へ塩酸(6.59ml,ほぼ0.7891モル)を入れると、ほぼ5.5℃の吸熱が生じることを可能にした。酸の投入の間に懸濁液が溶けて、澄明な溶液となった。この溶液をほぼ90分にわたり70℃までゆっくり加熱してから、70℃にさらに1時間保った。次いで、この反応物を4時間にわたり0℃へ冷やすと、この時間の間に生成物が結晶化した。この生成物を濾過によって単離してから、濾過ケークを工業用変性アルコール(2x14ml)で2回洗浄した。この生成物を50℃で真空乾燥させて、表題生成物(9.04g,88%)を得た;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.91-2.01 (m, 2H) 2.27-2.35 (m, 2H) 3.15-3.26 (m, 2H) 3.26-3.35 (m, 2H) 4.02 (s, 3H) 5.07-5.15 (m, 1H) 7.35 (td, J=8.08, 1.29 Hz, 1H) 7.46 (s, 1H) 7.52 (ddd, J=8.03, 5.23 Hz, 1H) 7.63 (ddd, J=8.22, 6.76, 1.62 Hz, 1H) 8.83 (s, 1H) 8.91 (s, 1H) 9.02-9.13 (m, 1H) 9.20-9.31 (m, 1H) 12.51 (br. s., 1H)); 質量スペクトル: 403.2, 405.2。
【0143】
実施例C.4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリン(化合物(I))の製造
以下に示すスキームに従って、化合物(I)を製造した:
【0144】
【化3】

【0145】
2−[4−(5−シアノ−4−{[(ジメチルアミノ)メチレン]アミノ}−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(7,7.00g,17.71ミリモル)をメトキシベンゼン(35.8g)に懸濁させた。酢酸(16.6g)を入れて、得られる溶液へ3−クロロ−2−フルオロアニリン(2.71g,18.07ミリモル)を加えた。反応混合物を90℃で20時間加熱してから、20℃へ冷やした。この反応混合物へ水(37.04g)を入れて、有機層を捨てた。得られる水性混合物へイソプロパノール(39.00g)に続いて水性アンモニア(20.79g,25%)を入れた。反応混合物を30℃まで加熱して、化合物(I)で種入れして、結晶化を引き起こした。次いで、この反応物を0℃へ冷やして、生成物を濾過によって単離した。濾過ケークを水(7.28g)及びイソプロパノール(4.68g)の混合物で2回洗浄してから乾燥させて、化合物(I)(5.65g,収率55%)を得た;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.79 (m, 2H) 2.04 (m, 2H) 2.38 (m, 2H) 2.62 (d, J=4.5 Hz, 3H) 2.74 (m, 2H) 2.94 (s, 2H) 3.93 (s, 3H) 4.56 (tt, J=8.1, 3.8 Hz, 1H) 7.21 (s, 1H) 7.28 (m, 1H) 7.50 (m, 2H) 7.73 (q, J=4.5 Hz, 1H) 7.81 (s, 1H) 8.36 (s, 1H) 9.56 (br.s, 1H); 質量スペクトル: m/z (M + H)+ 474.2, 476.2。
【0146】
出発材料として使用する2−[4−(5−シアノ−4−{[(ジメチルアミノ)メチレン]アミノ}−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(7)は、以下のように製造した:
工程1.4−(5−シアノ−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−カルボン酸(2)tert−ブチルの製造
3−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾニトリル(1,6.00g,39.62ミリモル)、(4−メタンスルホニルオキシ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(16.6g,59.44ミリモル)(Chemical & Pharmaceutical Bulletin 2001, 49(7), 822-829)、及び炭酸カリウム(6.71g,47.55ミリモル)をイソプロパノール(78.98g)に懸濁させて、この混合物を撹拌しながら還流で加熱した。追加の(4−メタンスルホニルオキシ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(2.08g,7.43ミリモル)を加えて、この反応を完了させた。次いで、この混合物を冷やして、水(100.47g)の添加によって冷ました。4−(5−シアノ−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(2)での種入れに0℃への冷却を続けて結晶性の生成物を得て、これを濾過によって単離した。濾過ケークを水(8.86g)及びイソプロパノール(6.97g)の混合物に続いて水(23.64g)で洗浄してから乾燥させて、表題化合物(10.75g,収率80%)を得た;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.39 (s, 9H) 1.48 (m, 2H) 1.88 (m, 2H) 3.13 (m, 2H) 3.67 (m, 2H) 3.83 (s, 3H) 4.56 (tt, J=8.1, 3.8 Hz, 1H) 7.13 (d, J=8.4 Hz, 1H) 7.42 (dd, J=8.4, 1.9 Hz, 1H) 7.51 (d, J=1.9 Hz, 1H); 質量スペクトル: m/z (M + H)+ 333.1。
【0147】
工程2.4−メトキシ−3−(ピペリジン−4−イルオキシ)ベンゾニトリル(3)の製造
4−(5−シアノ−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(2,39.31g,118.26ミリモル)をエタノール(155.53g)に懸濁させて、40℃まで加熱した。このスラリーへHCl(46.61g,573.04ミリモル)をゆっくり加えた。この混合物を60℃まで加熱して、3時間保持した。反応混合物を20℃へ冷やして、種を入れて、結晶化を開始させた。得られる固形物を0℃で濾過によって単離し、エタノール(62.21g)で2回洗浄してから乾燥させて、表題化合物(29.84g,収率77%)を塩酸塩として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.84 (m, 2H) 2.09 (m, 2H) 3.02 (ddd, J=12.7, 8.9, 3.4 Hz, 2H) 3.20 (m, 2H) 3.84 (s, 3H) 4.63 (tt, J=7.7, 3.6 Hz, 1H) 7.15 (d, J=8.5 Hz, 1H) 7.45 (dd, J=8.5, 1.9 Hz, 1H) 7.56 (d, J=1.9 Hz, 1H) 9.16 (br. s, 2H); 質量スペクトル: m/z (M + H)+ 233.2。
【0148】
工程3.2−[4−(5−シアノ−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(4)の製造
4−メトキシ−3−(ピペリジン−4−イルオキシ)ベンゾニトリル塩酸塩(3,28.36g,95.82ミリモル)、2−クロロ−N−メチルアセトアミド(12.37g,114.98ミリモル)、及び炭酸カリウム(33.11g,239.55ミリモル)をアセトニトリル(161.36g)に懸濁させた。反応混合物を還流で3時間加熱した。反応混合物を20℃へ冷やして、水(386.26g)を入れた。この反応物を75℃まで加熱して、容量を蒸留によって減少させた。冷却するとすぐに、結晶化が生じた。得られる固形物を濾過によって単離し、水(77.25g及び128.75g)で2回洗浄してから乾燥させて、表題化合物(27.95g,収率94%)を得た;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.68 (m, 2H) 1.91 (m, 2H) 2.29 (m, 2H) 2.61 (d, J=4.7 Hz, 3H) 2.67 (m, 2H) 2.88 (s, 2H) 3.83 (s, 3H) 4.41 (tt, J=8.3, 4.0 Hz, 1H) 7.11 (d, J=8.4 Hz, 1H) 7.40 (dd, J=8.4, 1.9 Hz, 1H) 7.47 (d, J=1.9 Hz, 1H) 7.68 (q, J=4.7 Hz, 1H); 質量スペクトル: m/z (M + H)+ 304.2。
【0149】
工程4.2−[4−(5−シアノ−2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(5)の製造
2−[4−(5−シアノ−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(4,8.78g,26.11ミリモル)を酢酸(22.82g,364.87ミリモル)に懸濁させて、得られる反応混合物を5℃へ冷やした。これへ硫酸(23.64g,234.95ミリモル)を加えて、反応温度を30℃未満に維持した。得られる溶液へ硝酸(2.40g,26.63ミリモル)を加えた。次いで、反応混合物を35℃まで加熱して、3時間保持した。追加の硝酸(117mg,1.31ミリモル)及び硫酸(1.31g13.1ミリモル)を入れて、この反応混合物を35℃で30分間加熱した。この溶液を20℃へ冷やして、水性アンモニア(92.45g1.36モル)で冷ますと、温度の50℃までの上昇を生じた。得られるスラリーへプロピオニトリル(61.58g1.12モル)と水(19g)を加えた。この反応混合物を80℃まで加熱すると澄明な溶液を生じて、これは、静置時に2層をもたらした。下層を除去した。この反応混合物を20℃へ冷やすと、濃厚なスラリーを生じた。この固形物を濾過によって単離し、プロピオニトリル(6.16g112.0ミリモル)で洗浄し、乾燥させて、表題化合物(7.44g,収率82%)を得た;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.72 (m, 2H) 1.97 (m, 2H) 2.35 (m, 2H) 2.61 (d, J=4.7 Hz, 3H) 2.66 (m, 2H) 2.90 (s, 2H) 3.96 (s, 3H) 4.73 (tt, J=8.4, 4.0 Hz, 1H) 7.71 (q, J=4.7 Hz, 1H) 7.82 (s, 1H) 7.86 (s, 1H);質量スペクトル: m/z (M + H)+ 349.2。
【0150】
工程5.2−[4−(4−アミノ−5−シアノ−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(6)の製造
2−[4−(5−シアノ−2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(5,7.42g,19.38ミリモル)を水(44.52g)及びメタノール(5.35g)に懸濁させた。これへ亜ジチオン酸ナトリウム(11.91g,58.15ミリモル)を加えて、得られる反応混合物を60℃まで加熱した。この反応混合物へ塩酸(46.98g,463.89ミリモル)を加えると溶液を生じ、これを60℃で3時間保持した。次いで、反応混合物をそのまま20℃へ冷やした。水性水酸化ナトリウム(15.51g,182.2ミリモル)に続いて2−メチルテトラヒドロフラン(58.0g)を入れた。この反応混合物を60℃まで加熱すると、静置時に2層をもたらして、下の水層を捨てた。反応混合物の容量を真空蒸留によって減少させ、メチルtert−ブチルエーテル(18.54g)を加えてスラリーを得て、これを10℃へ冷やしてから、この固形物を濾過によって採取した。この固形物を2−メチルテトラヒドロフラン(5.8g)で洗浄し、乾燥させて、表題化合物(5.4g,収率78%)を得た;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.62 (m, 2H) 1.82 (m, 2H) 2.20 (m, 2H) 2.60 (d, J=4.7 Hz, 3H) 2.65 (m, 2H) 2.86 (s, 2H) 3.72 (s, 3H) 4.00 (tt, J=8.3, 4.0 Hz, 1H) 5.66 (br. s, 2H) 6.39 (s, 1H) 6.94 (s, 1H) 7.65 (q, J=4.7 Hz, 1H);質量スペクトル: m/z (M + H)+ 319.2。
【0151】
工程6.2−[4−(5−シアノ−4−{[(ジメチルアミノ)メチレン]アミノ}−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(7)の製造
2−[4−(4−アミノ−5−シアノ−2−メトキシフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(6,18.21g,52.05ミリモル)を2−メチルテトラヒドロフラン(99.62g)に懸濁させた。これへ酢酸(162.79mg)とN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMF−DMA)(8.63g,70.27ミリモル)を加えて、得られる反応混合物を76℃で16時間加熱した。この反応混合物へ追加のN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(639.41mg,5.20ミリモル)を加えて、反応を確実に完了させた。この反応混合物を30℃へ冷やすと、この時間の間に結晶化が生じた。得られる固形物を濾過によって単離し、2−メチルテトラヒドロフラン(14.23g)で洗浄して乾燥させて、表題化合物(19.53g,収率97%)を得た;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.65 (m, 2H) 1.86 (m, 2H) 2.24 (m, 2H) 2.60 (d, J=4.7 Hz, 3H) 2.66 (m, 2H) 2.87 (s, 2H) 2.95 (s, 3H) 3.04 (s, 3H) 3.81 (s, 3H) 4.19 (tt, J=8.2, 3.8 Hz, 1H) 6.72 (s, 1H) 7.15 (s, 1H) 7.67 (q, J=4.7 Hz, 1H) 7.90 (s, 1H); 質量スペクトル: m/z (M + H)+ 374.2。
【0152】
生物学的活性
化合物(I)の活性について:
a)リガンド刺激細胞においてEGFR、ErbB2、及びErbB3の活性化(リン酸化)を阻害する;及び
b)MCF−7細胞の基本増殖とリガンド刺激増殖を阻害するその能力を試験して評価した。
【0153】
(a)リガンド誘導(driven)アッセイにおける化合物(I)
方法:
American Type Culture Collection(ATCC)よりKB細胞とMCF−7細胞を入手して、RPMI 1640(フェノールレッドフリー)+10%胎仔ウシ血清+2mM L−グルタミンにおいて型通りに培養した。
【0154】
細胞の処理及び溶解
10% FBSを含有するRPMI 1640培地おいて96ウェルプレートに5000細胞/ウェルでKB細胞を、そして4000細胞/ウェルでMCF−7細胞を播いた。細胞を72時間インキュベートした後で、この培地を無血清RPMI 1640培地に24時間交換した。次いで、0〜10μMに及ぶ濃度の化合物(I)で細胞を90分間処理した。細胞溶解の直前に、MCF−7細胞とKB細胞を、受容体リン酸化を最大値の90%まで高めてアッセイ間比較を可能にするのに必要とされる濃度(ED90)のリガンド(MCF−7細胞ではヘレグリン(「HRG」)、そしてKB細胞では表皮増殖因子(「EGF」))とともに5分間インキュベートした。
【0155】
p−EGFR、p−ErbB2、及びp−ErbB3の測定
KB細胞のp−EGFR状態は、ヒトホスホ−EGFR Duoset ELISAキット(R&D systems,全EGFR #DYC1854,pEGFR #DYC1095)を使用して測定した。MCF−7細胞のp−ErbB2及びp−ErbB3含量は、ヒトホスホ−ErbB2 Duoset ELISAキット(R&D systems,DYC1768)とヒトホスホ−ErbB3 Duoset ELISAキット(R&D systems,DYC1769)をそれぞれ使用して測定した。このキットは、細胞全体のEGFR、ErbB2、又はErbB3のチロシンリン酸化を測定した。各ウェルに50μlの溶解液を加えて、製造業者の説明書に従ってアッセイを実施した。
【0156】
結果
この結果を表3に要約する。
表3 p−EGFR(KB細胞中)とp−ErbB2及びp−ErbB3(MCF−7細胞中)に対する化合物(I)の活性
【0157】
【表3】

【0158】
表3は、化合物(I)が上記の細胞においてホスホ−EGFR、ホスホ−ErbB2、及びホスホ−ErbB3の強力な阻害剤であることを示す。
b)基本又はHRG刺激MCF−7細胞増殖アッセイにおける化合物(I)
方法
DMEM(フェノールレッドフリー)+10%胎仔ウシ血清+2mM L−グルタミンにおいてMCF−7細胞を型通りに培養した。
【0159】
1%活性炭/デキストラン処理済FBS及び2mMグルタミンを含有するDMEM培地において96ウェルプレートに4000細胞/ウェルで細胞を播いて、そのまま4時間静置した後で、それぞれ0〜3μM及び0〜10μg/mlに及ぶ濃度の化合物(I)で処理した。処理から2時間後、MCF−7細胞の増殖を最大値の90%まで高めるのに必要とされる濃度(ED90)である10ng/mlのHRGとともに細胞をインキュベートした。基本ウェルは、リガンドで刺激しなかった。4日間のインキュベーション後、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)アッセイを使用して、細胞生存度を評価した。
【0160】
HRG刺激された化合物処理細胞のIC50決定に先立って、読取値のそれぞれより96時間での平均基本増殖を引いて、HRGシグナル伝達を介して誘導される増殖を評価した。基本IC50値をGI50として表す。即ち、96時間後の読取値より0日目のプレート細胞数(基本読取値)を引いた。
【0161】
結果
この結果を表4及び5に要約する。
表4.HRG刺激増殖のIC50
【0162】
【表4】

【0163】
表5.基本増殖のGI50
【0164】
【表5】

【0165】
KB細胞では、EGFRへ特異的に結合するEGFでの刺激がリン酸化とそれ故にこの受容体の活性化を引き起こす。同様に、MCF−7細胞では、ErbB3へ特異的に結合するHRGにより、それがErbB2とヘテロ二量体を形成することを引き起こし、両方の受容体がリン酸化されて活性化される。表4は、化合物(I)がHRG刺激MCF−7増殖の強力な阻害剤であることを示す。増殖に対する上記効果は、ErbB2/ErbB3ヘテロ二量体に対する上記化合物の活性によるものであり、化合物(I)は、このヘテロ二量体のきわめて強力な阻害剤であると考えられている。
【0166】
MCF−7基本アッセイは、erbB2/erbB3ヘテロ二量体形成の刺激も活性化も増加していない状況を表す。表5は、化合物(I)がこのような条件においてもMCF−7を阻害することを示す。
【0167】
実施例1
化合物(I)ジフマレートA型:2−[4−({4−[(3−クロロ−2−フルオロフェニル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}オキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミドジ[(2E)−ブト−2−エンジオエート]A型の製造
イソプロパノール(100ml)中の2−[4−({4−[(3−クロロ−2−フルオロフェニル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}オキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(化合物(I))(89%(w/w)で5.62g,10.55ミリモル)の混合物へフマル酸(2.7g,23.22ミリモル)のメタノール(95ml)溶液を加えて、温度を65℃より高く維持した。この混合物を還流で1時間加熱すると、澄明化した。この反応混合物を90分にわたり30℃へ冷やし、30分間保持すると、結晶化をもたらした。この反応物を2時間にわたり0℃へ冷やし、1時間保持した後で、濾過によって単離した。濾過ケークを冷イソプロパノール(2x10ml)で2回洗浄し、50℃で真空乾燥させて、表題化合物(5.84g,78%)を白い固形物として得た;1H NMR スペクトル: (DMSO) 1.85 (m, 1H), 2.08 (m, 1H), 2.50 (m, 1H), 2.66 (d, 3H), 2.83 (m, 1H), 3.05 (s, 2H), 3.96 (s, 3H), 4.58 (m, 1H), 6.64 (s, 4H), 7.23 (s, 1H), 7.28 (m, 1H), 7.46 (ddd, 1H), 7.55 (m, 1H), 7.70 (ブロード q, 1H), 7.85 (s, 1H), 8.38 (s, 1H)。
【0168】
実施例2
化合物(I)ジフマレートA型:2−[4−({4−[(3−クロロ−2−フルオロフェニル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}オキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミドジ[(2E)−ブト−2−エンジオエート]A型の製造
イソプロパノール(39kg)中の2−[4−({4−[(3−クロロ−2−フルオロフェニル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}オキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(2.93kg,84.8%(w/w),5.24モル)の混合物へフマル酸(1.4kg,12.1モル)のメタノール(26.6kg)溶液を加えて、温度を65℃より高く維持した。メタノール(3.6kg)のライン洗浄液を入れた。この混合物を還流で1時間加熱すると澄明化して、メタノール(7kg)のライン洗浄液を続けた。この反応混合物を大気圧で蒸留して、47kgの留出液を除去した。イソプロパノール(15.8kg)を加えて反応混合物を蒸留して、15.6kgの留出液を除去した。この蒸留の間に結晶化が生じた。イソプロパノール(21kg)を加えて、反応物を8時間にわたり0℃へ冷やし、1時間保持した後で、濾過によって単離した。濾過ケークを冷50:50 イソプロパノール:MeOH(4kg)に続いて冷イソプロパノール(4kg)で洗浄し、50℃で真空乾燥させて、表題化合物(3.64kg,98%)を白い固形物として得た;1H NMR スペクトル: (DMSO) 1.85 (m, 1H), 2.08 (m, 1H), 2.50 (m, 1H), 2.66 (d, 3H), 2.83 (m, 1H), 3.05 (s, 2H), 3.96 (s, 3H), 4.58 (m, 1H), 6.64 (s, 4H), 7.23 (s, 1H), 7.28 (m, 1H), 7.46 (ddd, 1H), 7.55 (m, 1H), 7.70 (ブロード q, 1H), 7.85 (s, 1H), 8.38 (s, 1H)。
【0169】
実施例3
化合物(I)ジフマレートA型:2−[4−({4−[(3−クロロ−2−フルオロフェニル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}オキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミドジ[(2E)−ブト−2−エンジオエート]A型の製造
2−[4−({4−[(3−クロロ−2−フルオロフェニル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}オキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(化合物(I))(88(w/w)%で60.19g,111.8ミリモル)を酢酸エチル(1550ml)に溶かした。この溶液を濾過によって澄明化して、フィルターを酢酸エチル(53ml)で洗浄した。この溶液を40℃へ冷やした。次いで、フマル酸(26.60g,257.0ミリモル)の澄明化イソプロパノール(408ml)溶液を1時間にわたり加えた。次いで、フマル酸溶液を澄明化するのに使用したフィルターをイソプロパノール(37ml)で洗浄した。40℃で1時間保持した後で、この反応物を1時間にわたり20℃へ冷やした。この反応混合物を13.5時間保持した後で、生成物を濾過によって単離した。濾過ケークを酢酸エチル(82ml):イソプロパノール(24ml)で2回洗浄してから、40℃で真空乾燥させて、表題化合物(72.32g,90%)を白い固形物として得た;1H NMR スペクトル: (DMSO) 1.85 (m, 1H), 2.08 (m, 1H), 2.50 (m, 1H), 2.66 (d, 3H), 2.83 (m, 1H), 3.05 (s, 2H), 3.96 (s, 3H), 4.58 (m, 1H), 6.64 (s, 4H), 7.23 (s, 1H), 7.28 (m, 1H), 7.46 (ddd, 1H), 7.55 (m, 1H), 7.70 (ブロード q, 1H), 7.85 (s, 1H), 8.38 (s, 1H)。
【0170】
実施例4
化合物(I)ジフマレートA型:2−[4−({4−[(3−クロロ−2−フルオロフェニル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}オキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミドジ[(2E)−ブト−2−エンジオエート]A型の製造
2−[4−({4−[(3−クロロ−2−フルオロフェニル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}オキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(化合物(I))(推定100(w/w)%で2.75g,5.80ミリモル)を酢酸エチル(94ml)及びイソプロパノール(14ml)に溶かした。この溶液を蒸留して、25.2mlの留出液を採取した。この溶液を40℃へ冷やした。次いで、フマル酸(1.38g,11.90ミリモル)の澄明化イソプロパノール(21ml)溶液を1時間にわたり加えた。化合物(I)ジフマレートA型の種(3.7mg,5.3μモル)を加えた。次いで、フマル酸溶液を澄明化するのに使用したフィルターをイソプロパノール(2ml)で洗浄した。40℃で1時間保持した後で、この反応物を2時間にわたり20℃へ冷やした。この反応混合物を15時間保持した後で、濾過によって生成物を単離した。濾過ケークを酢酸エチル(4.3ml):イソプロパノール(1.2ml)で2回洗浄してから、40℃で真空乾燥させて、表題化合物(72.32g,90%)を白い固形物として得た;1H NMR スペクトル: (DMSO) 1.85 (m, 1H), 2.08 (m, 1H), 2.50 (m, 1H), 2.66 (d, 3H), 2.83 (m, 1H), 3.05 (s, 2H), 3.96 (s, 3H), 4.58 (m, 1H), 6.64 (s, 4H), 7.23 (s, 1H), 7.28 (m, 1H), 7.46 (ddd, 1H), 7.55 (m, 1H), 7.70 (ブロード q, 1H), 7.85 (s, 1H), 8.38 (s, 1H)。
【0171】
実施例5
化合物(I)ジフマレートA型:2−[4−({4−[(3−クロロ−2−フルオロフェニル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}オキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミドジ[(2E)−ブト−2−エンジオエート]A型の製造
2−[4−({4−[(3−クロロ−2−フルオロフェニル)アミノ]−7−メトキシキナゾリン−6−イル}オキシ)ピペリジン−1−イル]−N−メチルアセトアミド(化合物(I))(1g,1.86ミリモル)とフマル酸(0.44g,3.81ミリモル)を水(4.4g)に懸濁させて、85℃まで加熱した。この反応混合物を1℃/分で60℃へ冷やして、温度が77℃であるときに化合物(I)A型の種を加えた。得られる固形物を濾過によって単離し、アセトン(1回の洗浄に付き0.70g)で2回洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させて、表題化合物(0.89g,収率68%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) d ppm 1.84 (m, 2H) 2.08 (m, 2H) 2.55 (m, 2H) 2.63 (d, J=4.7 Hz, 3H) 2.86 (m, 2H) 3.12 (s, 2H) 3.93 (s, 3H) 4.59 (tt, J=7.8, 3.7 Hz, 1H) 6.62 (s, 4H) 7.21 (s, 1H) 7.27 (td, J=8.1, 1.3 Hz, 1H) 7.49 (m, 2H) 7.86 (m, 2H) 8.36 (s, 1H) 9.63 (br. s, 1H)。
【0172】
化合物(I)ジフマレートA型の特性
化合物(I)ジフマレートA型は、自由浮遊性の粉末である。化合物(I)ジフマレートの粉末X線回折(図4)は、この材料が結晶性であることを示す。A型のXRPDパターンからの最も顕著なピークを上記に記載して、表1に収載する。示差走査熱量測定は、210.4℃で開始する、単一の融解吸熱を示す(図5)。熱重量分析では、明らかな重量損失を観測しない(図6)。動的水蒸気吸着は、化合物が非吸湿性で、95%の相対湿度まで0.5%未満の水分を吸収し、ヒステレシスの証拠はないことを示す(図7)。
【0173】
化合物(I)と化合物(I)ジフマレートA型の水溶性の比較
様々な水性緩衝液における化合物(I)の溶解度(48時間,25℃)を表4に記載する。化合物(I)は、水性緩衝液において、低いpHでは溶解度が高く(27.2mg/ml,pH2.7)、高いpHでは溶解度が低い(1μg/ml,pH7.9)というpH依存性の溶解度を明示する。化合物(I)の溶解度の著しい増加が生じるのは、pH6以下においてである。故に、低いpH値では、化合物(I)の溶解速度が速いと予測されるのに対して、6より高いpHでは、溶解速度が遅いと予測される。
【0174】
化合物(I)の水溶解度(48時間,25℃)は、1μg/ml(pH7.0)である。比較すると、化合物(I)ジフマレートA型の水溶解度(48時間)は、22.5mg/ml(pH3.5)である。様々な水性緩衝液において、化合物(I)ジフマレートA型と化合物(I)の固有溶解速度も測定した。表6に示すように、化合物(I)ジフマレートA型は、pH6.5リン酸緩衝液において、有意により高い固有溶解速度を有する。
【0175】
表6
化合物(I)と化合物(I)ジフマレートA型の水性緩衝液における固有溶解速度(37℃)
【0176】
【表6】

【0177】
化合物(I)と化合物(I)ジフマレートA型を比較する、イヌでの薬物動態試験
100mgの化合物(I)遊離塩基又は(ジフマル酸塩を含有する錠剤では)その同等量を含有する、以下の組成の直接圧縮錠剤として両方の化合物をイヌへ投薬した:
25%(w/w)化合物(I)(又はジフマル酸塩のその同等量);
10%(w/w)微結晶性セルロース(Avicel 102);
4%(w/w)クロスカルメロースナトリウム(AcDiSol);
1%(w/w)ラウリル硫酸ナトリウム;
乳糖で99%(w/w)へ
ステアリン酸マグネシウムで100%(w/w)へ。
【0178】
これは、錠剤では:
151mg 化合物(I);
60.4mg Avicel;
24.16mg AcDiSol;
6.04mg ラウリル硫酸ナトリウム;
356.36mg 乳糖;及び
6.04mg ステアリン酸マグネシウムに等しい。
【0179】
錠剤の全重量は604mgであった。
この固体剤形の性能について、in vivo イヌ試験の開始に先立って、in vitro で評価した。pH4.5の媒体(シンク条件に最も近い)における100mg(遊離塩基同等量)の化合物(I)のローディングでの固体剤形の溶解は、45分後に90%より多い放出を示して(表7)、これらの剤形をイヌPK試験に使用することの適格性を示した。
【0180】
表7 化合物(I)及び化合物(I)ジフマレートA型のpH4.5クエン酸塩緩衝液における溶解(%)
【0181】
【表7】

【0182】
イヌへ経口投与した錠剤組成物の性能を、20mg用量の化合物(I)の静脈内注射剤(注射用水に溶かした4mg/mLを含んでなり、25%(w/v)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)で容量を構成して、1M HClを使用してpHを4へ調整する)と比較した。
【0183】
イヌ試験の結果を表8に示す。
表8.雄性ビーグル犬に経口投与した化合物(I)及び化合物(I)ジフマレートA型と静脈内投与した化合物(I)の薬物動態変数の要約(n=4,平均±SE)
【0184】
【表8】

【0185】
表8は、95%信頼水準での対応あるt検定(n=4)において判定されるように、化合物(I)ジフマレートA型のバイオアベイラビリティ及びピーク血漿濃度(Cmax)が化合物(I)で得られるものより有意に優る(64%のバイオアベイラビリティに比べて113%)ことを示す。
【0186】
実施例6〜21.結晶性の化合物(I)ジフマレートB〜Q型
XRPD分析
Bruker D−8 Discover回折計とBruker社のGeneral Detector System(GADDS,v.4.1.20)を使用して、XRPDパターンを採取した。ファインフォーカスチューブ(40kV,40mA)、Gobelミラー、及び0.5mm二重ピンホールコリメータを使用して、CuKα放射線の入射マイクロビームを産生した。分析に先立って、シリコン標準品(NIST SRM 640c)を分析して、Si 111ピーク位置を検証した。試料を3μm厚フィルムの間にパックして、携帯可能なディスク形状の標本を作製した。この調製した標本を、並進ステージへ固定したホルダー中にロードした。ビデオカメラとレーザーを使用して、入射ビームに透過ジオメトリーで交差する対象領域を定位した。入射ビームを走査及びラスタ化(raster)して、配向統計を最適化した。ビームストップを使用して、入射ビームからの空気散乱を最少化した。試料より15cmに位置するHi−Star領域検出器を使用して回折パターンを採取して、GADDSを使用して処理した。0.04°2θのステップサイズを使用して、回折パターンのGADDS画像中の強度を積分した。この積分パターンは、回折強度を2θの関数として示す。
【0187】
可変温度−XRPD
Anton Paar HTK 1200高温ステージを取り付けたShimadzu(島津)XRD−6000粉末X線回折計を使用して、可変温度XRPDパターン(VT−XRPD)を採取した。分析に先立って、シリコン標準品(NIST SRM 640c)を分析して、Si 111ピーク位置を検証して、バニリン及びスルファピリジンの標準品を分析して、ステージ温度を検証した。試料をセラミックホルダーにパックして、2.5〜40°2θまで3°/分(0.4秒/0.02°ステップ)で分析した。
【0188】
XRPD−マイクロプレート分析
Bruker D−8 Discover回折計とBruker社のGeneral Area Diffraction Detection System(GADDS,v.4.1.20)でXRPDパターンを採取した。ファインフォーカスチューブ(40kV,40mA)、Gobelミラー、及び0.5mm二重ピンホールコリメータを使用して、CuKα放射線の入射ビームを産生した。ウェルプレートを並進ステージへ固定して、入射ビームに交差するように各試料を動かすことによって、試料を分析用に定位した。透過ジオメトリーを使用して、試料を分析した。分析の間、試料上で入射ビームを走査及びラスタ化(raster)して、配向統計を最適化した。ビームストップを使用して、低い角度での入射ビームからの空気散乱を最少化した。試料より15cmに位置するHi−Star領域検出器を使用して回折パターンを採取して、GADDSを使用して処理した。0.04°2θのステップサイズを使用して、回折パターンのGADDS画像中の強度を積分した。この積分パターンは、回折強度を2θの関数として示す。分析に先立って、シリコン標準品を分析して、Si 111ピーク位置を検証した。
【0189】
実施例6.化合物(I)ジフマレートB型の製造
過剰な固形物が存在するように、水へ十分な化合物(I)ジフマレートA型を加えることによって、スラリーを調製した。次いで、この混合物を密封バイアルにおいて4℃で7日間、激しく撹拌した。固形物を真空濾過によって単離して、分析した。得られるB型のXRPDパターンを図8に示す。B型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表9に示す:
表9
【0190】
【表9】

【0191】
B型は、水和物、おそらくは四若しくは五水和物であると考えられる。
実施例7.化合物(I)ジフマレートC型の製造
過剰な固形物が存在するように、IPA/水(90/10,v/v)へ十分な化合物(I)ジフマレートA型を加えることによって、スラリーを調製した。次いで、この混合物を密封バイアルにおいて15℃で6日間、激しく撹拌した。固形物を真空濾過によって単離して、分析した。得られるC型のXRPDパターンを図9に示す。C型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表10に示す:
表10
【0192】
【表10】

【0193】
C型は、水和物/溶媒和物の混合型であると考えられる。
実施例8.化合物(I)ジフマレートD型の製造
化合物(I)ジフマレートのアセトニトリル/水(50/50)溶液を調製して、アリコートをマイクロプレートウェルへ加えた。溶媒を蒸発させて、このウェルへ2−プロパノール/水(90/10,v/v)を加えた。このプレートを音波処理してから、溶媒を真空で蒸発させた。得られるD型のXRPDパターンを図10に示す。D型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表11に示す:
表11
【0194】
【表11】

【0195】
実施例9.化合物(I)ジフマレートE型の製造
化合物(I)ジフマレートのアセトニトリル/水(50/50,v/v)溶液を調製して、アリコートをマイクロプレートウェルへ加えた。溶媒を蒸発させて、このウェルへテトラヒドロフランを加えた。このプレートを音波処理してから、溶媒を真空で蒸発させた。得られるE型のXRPDパターンを図11に示す。E型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表12に示す:
表12
【0196】
【表12】

【0197】
実施例10.化合物(I)ジフマレートF型の製造
化合物(I)ジフマレートの飽和テトラヒドロフラン溶液を上昇温度で調製して、まだ温かい間に、0.2μmナイロンフィルターに通して、予熱したバイアルへ濾過した。このバイアルにカバーをして、そのまま室温へゆっくり冷やした。固形物の存在又は非存在に注目した。固形物が存在していないか、又は固形物の量がXRPD分析には少なすぎると判断されたならば、バイアルを冷蔵庫に入れた。固形物の存在又は非存在に再び注目して、それがなければ、バイアルを冷凍庫に入れた。形成した固形物を濾過によって単離して、そのまま乾燥させてから、分析した。得られるF型のXRPDパターンを図12に示す。F型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表13に示す。
【0198】
表13
【0199】
【表13】

【0200】
実施例11.化合物(I)ジフマレートG型の製造
化合物(I)ジフマレートのアセトニトリル/水(50/50)溶液を調製して、アリコートをマイクロプレートウェルへ加えた。溶媒を蒸発させて、このウェルへ2−プロパノール/水(90/10)を加えた。このプレートを音波処理してから、溶媒を真空で蒸発させた。得られるG型のXRPDパターンを図13に示す。G型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表14に示す。
【0201】
表14
【0202】
【表14】

【0203】
実施例12.化合物(I)ジフマレートH型の製造
化合物(I)ジフマレートのアセトン/水(95/5,v/v)溶液を調製して、アリコート添加の間に音波処理して、溶解を促進した。目視観察によって判断されるように、この混合物が完全な溶解に達したならば、この溶液を0.2μmナイロンフィルターに通して濾過した。この濾過した溶液を、蓋のないバイアルにおいて周囲条件でそのまま蒸発させた。生成した固形物を単離して分析した。得られるH型のXRPDパターンを図14に示す。H型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表15に示す:
表15
【0204】
【表15】

【0205】
実施例13.化合物(I)ジフマレートI型の製造
化合物(I)ジフマレートのメタノール溶液を周囲温度で調製した。次いで、この溶液をトルエン中へ周囲温度で濾過した。得られる固形物を濾過によって単離して、乾燥させてから、分析した。得られるI型のXRPDパターンを図15に示す。I型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表16に示す:
表16
【0206】
【表16】

【0207】
実施例14.化合物(I)ジフマレートJ型の製造
化合物(I)ジフマレートのメタノール溶液を周囲温度で調製した。次いで、この溶液を過剰のヘプタン中へ周囲温度で濾過した。得られる固形物を濾過によって単離して、乾燥させてから分析した。得られるJ型のXRPDパターンを図16に示す。J型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表17に示す:
表17
【0208】
【表17】

【0209】
実施例15.化合物(I)ジフマレートK型の製造
化合物(I)ジフマレートのアセトニトリル/水(50/50,v/v)溶液を調製して、アリコートをマイクロプレートウェルへ加えた。溶媒を蒸発させて、このウェルへフルオロベンゼンを加えた。このプレートを音波処理してから、溶媒を周囲条件で蒸発させた。得られるK型のXRPDパターンを図17に示す。K型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表18に示す:
表18
【0210】
【表18】

【0211】
実施例16.化合物(I)ジフマレートL型の製造
化合物(I)ジフマレートのアセトニトリル/水(50/50,v/v)溶液を調製して、アリコートをマイクロプレートウェルへ加えた。溶媒を蒸発させて、このウェルへ1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールを加えた。このプレートを音波処理してから、溶媒を周囲条件で蒸発させた。得られるL型のXRPDパターンを図18に示す。L型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表19に示す:
表19
【0212】
【表19】

【0213】
実施例17.化合物(I)ジフマレートM型の製造
化合物(I)ジフマレートのアセトニトリル/水(50/50,v/v)溶液を調製して、アリコートをマイクロプレートウェルへ加えた。溶媒を蒸発させて、このウェルへ2−プロパノール/水(90/10,v/v)を加えた。このプレートを音波処理してから、溶媒を周囲条件で蒸発させた。得られるM型のXRPDパターンを図19に示す。M型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表20に示す:
表20
【0214】
【表20】

【0215】
実施例18.化合物(I)ジフマレートN型の製造
化合物(I)ジフマレートのアセトニトリル/水(50/50,v/v)溶液を調製して、アリコートをマイクロプレートウェルへ加えた。溶媒を蒸発させて、このウェルへアセトン/水(60/40,v/v)を加えた。このプレートを音波処理してから、溶媒を4℃で蒸発させた。得られるN型のXRPDパターンを図20に示す。N型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表21に示す:
表21
【0216】
【表21】

【0217】
実施例19.化合物(I)ジフマレートO型の製造
化合物(I)ジフマレートのアセトニトリル/水(50/50,v/v)溶液を調製して、アリコートをマイクロプレートウェルへ加えた。溶媒を蒸発させて、このウェルへエタノール/水(30/70,v/v)を加えた。このプレートを音波処理してから、溶媒を4℃で蒸発させた。得られるO型のXRPDパターンを図21に示す。O型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表22に示す:
表22
【0218】
【表22】

【0219】
実施例20.化合物(I)ジフマレートP型の製造
化合物(I)ジフマレートのアセトニトリル/水(50/50,v/v)溶液を調製して、アリコートをマイクロプレートウェルへ加えた。溶媒を蒸発させて、このウェルへ2−プロパノール/水(90/10,v/v)を加えた。このプレートを音波処理してから、溶媒を4℃で蒸発させた。得られるP型のXRPDパターンを図22に示す。P型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表23に示す:
表23
【0220】
【表23】

【0221】
実施例21.化合物(I)ジフマレートQ型の製造
可変温度XRPD分析の間にB型を150℃まで加熱したとき、Q型を観測した。Q型のXRPDパターンを図23に示す。Q型の最も顕著な粉末X線回折ピークを表24に示す:
表24
【0222】
【表24】

【0223】
実施例22.化合物(I)ジフマレートの錠剤製剤
以下に示す粉末化成分を混合機へ入れて混合して、化合物(I)ジフマレートの均一な分布をもたらした。結合剤溶液を調製して、この散剤へ加えて、好適な湿った塊が形成されるまで、さらに混合した。この湿った塊を篩いに通過させて、得られる顆粒を好適な水分含量(例えば、2重量%未満)まで乾燥させた。この乾燥済みの顆粒を適正サイズの篩いに通過させて、ステアリン酸マグネシウムと混和した後で、慣用の打錠装置を使用して、錠剤コアへ圧縮した。次いで、慣用の穿孔ドラムコーターを使用して、この圧縮コアをフィルムコーティング成分の水性懸濁液でコートした。
【0224】
上記の記載のように製造した、2.5、10、40、及び100mgの化合物(I)に等しい化合物(I)ジフマレートA型を含有するフィルムコート錠剤を表25に例示する。
【0225】
表25
【0226】
【表25】

【0227】
好適な製造法を以下に概説する:
【0228】
【化4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレート。
【請求項2】
結晶性4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレート。
【請求項3】
4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型。
【請求項4】
少なくとも1つの特異ピークが約2θ=26.4°にある粉末X線回折パターンを有する、4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型。
【請求項5】
少なくとも1つの特異ピークが約2θ=26.4°、14.9°、又は7.1°にある粉末X線回折パターンを有する、4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型。
【請求項6】
少なくとも1つの特異ピークが約2θ=26.4°、24.0°、14.9°、12.4°、又は7.1°にある粉末X線回折パターンを有する、4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型。
【請求項7】
特異ピークが約2θ=26.4°、14.9°、及び7.1°にある粉末X線回折パターンを有する、4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型。
【請求項8】
特異ピークが約2θ=26.4°、24.0°、14.9°、12.4°、及び7.1°にある粉末X線回折パターンを有する、4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型。
【請求項9】
特異ピークが約2θ=26.4°、24.0°、23.0°、21.2°、17.3°、15.4°、14.9°、13.0°、12.4°、及び7.1°にある粉末X線回折パターンを有する、4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型。
【請求項10】
図4に示す粉末X線回折パターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを有する、4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型。
【請求項11】
約210°の融点を有する、4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型。
【請求項12】
4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型の製造のための方法であって:
(i)4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンを十分量のフマル酸と反応させて、ジフマル酸塩を生成する工程;
(ii)この4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートを結晶化させる工程;及び
(iii)4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型を単離する工程を含んでなる、前記方法。
【請求項13】
前記方法の工程(i)を、メタノールとイソプロパノールを含んでなる溶媒の混合物中で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
イソプロパノール対メタノールの容量比が約3.4:1〜約1.0:1である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法の工程(i)を、酢酸エチル及びイソプロパノールを含んでなる溶媒の混合物中で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
酢酸エチル対イソプロパノールの容量比が約5.1:1〜約1.9:1である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法の工程(i)を水中で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンを少なくとも2モル当量のフマル酸と反応させる、請求項12〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型の製造のための方法であって:
(i)4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンの酢酸エチル溶液又は懸濁液をイソプロパノール中の少なくとも1.725モル当量のフマル酸と反応させる工程
ここで酢酸エチル対イソプロパノールの容量比は、好適には、約5:1〜1:1、例えば、約5.1:1〜1.9:1であり、そしてここでこの反応は、約20〜約73℃の温度で行う;
(ii)工程(i)からの反応混合物を約20℃へ冷やし、その混合物をこの温度に保って、4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型の結晶化をもたらす工程;及び
(iii)4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型を単離する工程を含んでなる、前記方法。
【請求項20】
4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンを少なくとも2モル当量のフマル酸と反応させる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型の製造のための方法であって::
(i)4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンの水溶液又は懸濁液を少なくとも2モル当量のフマル酸と反応させる工程
ここでこの反応は、約85℃で行う;
(ii)工程(i)からの反応混合物を約60℃へ冷やす工程;及び
(iii)4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型を単離する工程を含んでなる、前記方法。
【請求項22】
工程(ii)において反応混合物を1分につき約1℃の速度で冷やす、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートを医薬的に許容される希釈剤又は担体と共に含む医薬組成物。
【請求項24】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレート;
乳糖;
微結晶性セルロース;
クロスポビドン;
ポリビドン;及び
ステアリン酸マグネシウムを含んでなり、1以上の着色剤及び/又は光保護剤を含有してもよいコーティング剤でコートされていてもよい錠剤である、医薬組成物。
【請求項25】
4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートが4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートA型である、請求項23〜24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
医薬品としての使用のための請求項1〜11のいずれか1項に記載の4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレート。
【請求項27】
癌の治療に使用の医薬品の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に記載の4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートの使用。
【請求項28】
癌の治療における使用のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレート。
【請求項29】
癌の治療を必要とするヒトのような温血動物においてそのような治療をするための方法であって、請求項1〜11のいずれか1項に記載の4−(3−クロロ−2−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−{[1−(N−メチルカルバモイルメチル)ピペリジン−4−イル]オキシ}キナゾリンジフマレートの有効量を前記動物へ投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
前記癌が、乳癌、胃癌、結直腸癌、頭頚部癌、卵巣癌、及び肺癌より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記癌が乳癌である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記癌が胃癌である、請求項29に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公表番号】特表2011−520857(P2011−520857A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509008(P2011−509008)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050496
【国際公開番号】WO2009/138781
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】