説明

4つの水素ブリッジを形成することができるモノマー及びこれらのモノマーと通常のモノマーとの共重合によって形成される超分子ポリマー

本発明は、4つの水素結合基を含むモノマーと1以上の他のモノマーとの共重合による4つの自己相補性水素基を含むポリマーの合成に関する。得られるポリマーは、複数の水素結合相互作用(超分子相互作用)に基づくポリマー鎖間の付加的な物理的相互作用の存在によって新規な特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4つの水素結合性基を含むモノマーと1以上の他のモノマーとの共重合による4つの自己相補的な水素基を含むポリマーの合成に関する。得られるポリマーは、複数の水素結合相互作用(超分子相互作用)に基づくポリマー鎖間における付加的な物理的相互作用の存在によって新規な特性を示す。
【背景技術】
【0002】
本発明は、異なるポリマー鎖間において物理的相互作用をもたらす水素ブリッジを形成することのできる単位を含むポリマーに関する。この物理的相互作用は、少なくとも4つの水素結合を含む自己相補性単位間における複数の水素結合相互作用(超分子相互作用)に由来する(本願では、少なくとも4つの水素結合を形成することのできる単位を「4H単位」または「4Hモノマー」と略記し、相互に交換可能な用語として使用する)。特許文献1及び非特許文献1は、2−ウレイド−4−ピリミドンからなる自己相補性単位を開示している。その実施例Xには、4H単位である6−(3−ブテニル)−2−ブチルウレイド−4−ピリミドンが開示されている。しかし、この化合物の炭素―炭素二重結合部分の重合によって得られるポリマーについては開示していない。
【特許文献1】米国特許第6,320,018号
【非特許文献1】Science、278、1601
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
テレケリック(両末端反応性)ポリマーの4H単位を使用した変性は公知である(B.J.B.Folmerら、Adv.Mater.2000、Vol.12、874;Hirschbergら、Macromolecules 1999、Vol.32、2696)。しかし、このような変性は、手間のかかる後変性プロセスによって重合後に行われる。これらの4H単位含有ポリマーの別の欠点は、ポリマーの末端に結合した4H単位のみが含まれることである。その結果として、末端基の数は末端基の量によって制限され(通常は2つ)、官能性単位は常にポリマーの周辺部に位置することになる。
【0004】
水素結合性モノマーの共重合によって合成される、主鎖に水素結合基を含むポリマーは、3つの水素結合を含む水素結合単位を使用することによって得られている(F.M.Langeら、Macromolecules 1995、Vol.28、782)。しかし、この手法では、スチレンとマレイミドとの交互共重合体しか使用できないとともに、ポリマー間の水素結合相互作用は4H単位に基づく水素結合よりもはるかに弱いため、材料特性が低下する。
【0005】
主鎖に4つの水素結合単位を含むポリマーは、ポリオレフィンの主鎖に4Hモノマーを共重合することによって得られている(G.W.Coatesら、Angew.Chem.Int.Ed.、2001、Vol.40、2153)。しかし、モノマーの調製と重合には複雑な化学が必要となる。また、ポリマーを得るために必要な触媒の固有感受性のため、この系の使用は特殊なポリオレフィン系に限定される。例えば、Coatesらは、チーグラー−ナッタ型ニッケル系触媒及び助触媒としての塩化ジエチルアルミニウムを使用した1−ヘキセンと6−ヘキセニル−2−ウレイド−4−ピリミドン誘導体の共重合を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、4H単位を含むモノマーの容易な合成と、広範に入手できる他のモノマーとの容易な共重合について開示するものである。本発明は、4H水素結合を有する様々なポリマーの調製に使用することができ、4H単位の導入によってポリマーに新規な材料特性を付与することができる。こうした新規な材料特性は、熱や希釈などの外部刺激によって材料特性の可逆的な変化を生じさせる、ポリマー鎖間の水素結合相互作用の可逆的性質に起因する。その結果、従来の高分子の機械的性質と有機化合物の低い溶融粘度とを併せ持つ材料を製造することができる。
【0007】
本発明に係るモノマーは、(a)重合可能基を有するモノマー単位(または重合性基を有するモノマー単位)と、(b)連結部分と、(c)少なくとも4つの水素ブリッジ、好ましくは4つの水素ブリッジを形成することのできる構造部分と、を含み、モノマーは以下の一般構造を有する。
【0008】
<式1>
(a)−(b)−(c)
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<4H単位を含むモノマーの説明>
4H単位を含むモノマーは、重合可能基と、連結部と、4H単位とを含む。特に、以下に模式的に示すように、重合可能基は、連結部を介して4H単位に結合している。
【0010】
<式2>
重合性基−連結部−4H単位
【0011】
本発明に係るモノマーは、(a)重合可能基を有するモノマー単位(すなわち、重合性基を有するモノマー単位)と、(b)連結部分と、(c)少なくとも4つの水素ブリッジ、好ましくは4つの水素ブリッジを形成することのできる構造部分と、を含み、モノマーは以下の一般構造を有する。
【0012】
<式3>
(a)−(b)−(c)
【0013】
好ましくは、(a)はエチレン性不飽和基またはイオン重合性基を有するモノマー単位を含む。最も好ましくは、(a)はエチレン性不飽和基を有するモノマー単位を含む。
【0014】
通常、少なくとも4つの水素ブリッジを形成することのできる構造部分は、下記一般式(1’)または(2’)で表される。
【0015】
【化1】

【0016】
構造部分(c)が本発明では好ましい4つの水素ブリッジを形成することができる場合、構造部分(c)は下記一般式(1)または(2)で表されることが好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
上記一般式において、C−X及びC−Y結合は、単結合または二重結合をそれぞれ表し、nは4以上であり、X・・・Xは、それらに結合される対応する構造部分(2)を含む水素ブリッジ形成単位とともに水素ブリッジを形成する供与体または受容体を示し、Xが供与体である場合はYは受容体であり、Xが受容体である場合はYは供与体である。一般式(1’)、(2’)、(1)、(2)で表される構造部分の特性は米国特許第6,320,018号に開示されており、その開示内容はこの参照によって本願の開示の一部をなすものとする。
【0019】
構造部分(c)は、少なくとも4つの供与体または受容体、好ましくは4つの供与体または受容体を有し、対をなして少なくとも4つの水素ブリッジを形成することができる。構造部分(c)は、少なくとも2つの連続する供与体とそれに続く少なくとも2つの受容体、好ましくは2つの連続する供与体とそれに続く2つの受容体とを有し、好ましくは一般式(1’)、より好ましくはn=4である(1)において、XとXはともに供与体または受容体を示し、XとXはともに受容体または供与体を示す。本発明では、供与体と受容体は、好ましくは酸素、硫黄、窒素原子である。
【0020】
構造部分(c)を構成するために使用できる分子は、4つの水素結合部位の一部である尿素部分を得るために、イソシアネートまたはチオイソシアネートと反応させた窒素含有化合物、または活性化し、第1級アミンと反応させた窒素含有化合物である。窒素含有化合物は、好ましくは、イソシトシン誘導体(2−アミノ−4−チミドン誘導体)、トリアジン誘導体、またはこれらの誘導体の互変異体である。より好ましくは、窒素含有化合物は、アルキル基またはオリゴエチレングリコール基、最も好ましくはメチル基またはエチルへキシル基を6位に有するイソシトシンである。イソシアネートまたはチオイソシアネートは、単官能イソシアネートまたは単官能チオイソシアネート、二官能イソシアネートまたは二官能チオイソシアネート(例えば、アルキルまたはアリール(ジ)(チオ)イソシアネート)であってもよい。
【0021】
特に好適な本発明に係る構造部分(c)は、下記一般式(3)または(4)で表される化合物及びその互変異体である。
【0022】
【化3】

【0023】
式(3)または(4)で表される構造部分(c)は、好ましくは、R、RまたはRにおいて連結部分(b)に結合し(R、RまたはRが直接結合を示す)、残りのR基はランダム側鎖または水素原子を示す。より好ましくは、構造部分(c)はRにおいて連結部分(b)に結合し(Rが直接結合を示す)、R及びRは側鎖または水素原子である。最も好ましくは、Rはランダム側鎖であり、Rは水素原子であり、ランダム側鎖は6位に結合したアルキル基またはオリゴエチレングリコール基、最も好ましくはメチル基またはエチルへキシル基である。
【0024】
連結部分(b)は、あらゆる種類の短鎖または長鎖であってもよく、例えば、飽和または不飽和、分岐、環状または直鎖アルキル鎖、シロキサン鎖、エステル鎖、エーテル鎖、従来のポリマー化学で使用されるあらゆる原子鎖であり、エステル基、エーテル基、尿素基、ウレタン基などの官能基で置換されていてもよい。好ましくは、連結部分(b)は、C〜C20の直鎖または分岐アルキレン、アリーレン、アルカリーレン、アリールアルキレン基、より好ましくはC〜C10の直鎖または分岐アルキレン、アリーレン、アルカリーレン、アリールアルキレン基であり、これらのアリーレン、アルカリーレン、アリールアルキレン基は、他の基で置換されていてもよく、環状基を置換基または主鎖として含んでいてもよい。そのような基の例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、1,6−ビス(エチレン)シクロヘキサン、1,6−ビスメチレンベンゼン等が挙げられる。アルキレン、アリーレン、アルカリーレン、アリールアルキレン基は、ヘテロ原子、特に、酸素、窒素、硫黄から選択されるヘテロ原子によって途切れていてもよい。重合性基を有するモノマー単位(a)と構造部分(c)とを連結する連結部分(b)は、ヒドロキシ、カルボキシレート、カルボン酸エステル、ハロゲン化エステル、イソシアネート、チオイソシアネート、第1級アミン、第2級アミン、ハロゲン基などの官能基を少なくとも2つ有する化合物から誘導される。これらの官能基は、好ましくは末端基として存在する。本発明によれば、連結部分(b)が誘導される好ましい化合物は、好ましくはイソシアネートまたはチオイソシアネート末端基を有し、より好ましくはイソシアネート末端基を有する。最も好ましくは、これらの化合物はジイソシアネートまたはジチオイソシアネートであり、特にジイソシアネートであることが好ましい。本発明に好適に使用できるジイソシアネートの例としては、
1,4−ジイソシアナト−4−メチル−ペンタン、
1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、
1,6−ジイソシアナト−2,4,4−トリメチルヘキサン、
1,5−ジイソシアナト−5−メチルヘキサン、
3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート、
1,6−ジイソシアナト−6−メチル−ヘプタン、
1,5−ジイソシアナト−2,2,5−トリメチルヘキサン、
1,7−ジイソシアナト−3,7−ジメチルオクタン、
1−イソシアナト−1−メチル−4−(4−イソシアナトブト−2−イル)−シクロヘキサン、
1−イソシアナト−1,2,2−トリメチル−3−(2−イソシアナト−エチル)−シクロペンタン、
1−イソシアナト−1,4−ジメチル−4−イソシアナトメチル−シクロヘキサン、
1−イソシアナト−1,3−ジメチル−3−イソシアナトメチル−シクロヘキサン、
1−イソシアナト−n−ブチル−3−(4−イソシアナトブト−1−イル)−シクロペンタン、
1−イソシアナト−1,2−ジメチル−3−エチル−3−イソシアナトメチル−シクロペンタン、
3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート(IMCI)、
トルエンジイソシアネート(TDI)、
メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、
メチレンジシクロヘキサン−4,4−ジイソシアネート、
イソホロンジイソシアネート(IPDI)、
ヘキサンジイソシアネート(HDI)
が挙げられる。
【0025】
好適なチオイソシアネートの例としては、好適なジチオシアネートとして既に例示した化合物のジチオイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0026】
好ましくは、ジイソシアネートは、IPDI、HDI、MDI、TDI、メチレンジシクロヘキサン−4,4−ジイソシアネート、及びこれらのチオイソシアネート相当物である。ただし、本発明では、ジチオイソシアネートよりもジイソシアネートが好ましく使用される。
【0027】
重合性基を有するモノマー単位(a)は、重合性基を有するあらゆるモノマー単位であってもよい。重合性基を有するモノマー単位(a)は、エチレン性不飽和基またはイオン重合性基を有するモノマー単位を含むことが好ましく、最も好ましくは、重合性基を有するモノマー単位は、エチレン性不飽和基、すなわち、炭素−炭素二重結合を有するモノマーから誘導される基を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、重合性基を有するモノマー単位は、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、ハロゲン化エステル、イソシアネート、チオイソシアネート、第1級アミン、第2級アミン、ハロゲン基などの官能基を少なくとも1つ有する。本発明のより好ましい実施形態によれば、重合性基を有するモノマー単位は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、ビニルピリジン、その他のビニルモノマー、ラクトン、その他の環状エステル、ラクタム、環状エーテル、環状シロキサンから誘導される。本発明の最も好ましい実施形態によれば、重合性基を有するモノマー単位は、アクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、最も好ましくは酢酸ビニルから誘導される。本発明を実施するために特に有用な重合性基を有するモノマー単位の化合物の例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、酢酸ビニル、4−ビニルフェノール、4−ビニルアニリン、4−ヒドロキシメチルスチレン、4−アミノメチルスチレン、4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトン、4−(4−ヒドロキシフェニル)−ε−カプロラクトン、2,3−エポキシ−1−プロパノールが挙げられる。
【0028】
本発明によれば、モノマーは以下の方法によって調製することが好ましい。
【0029】
第1の方法では、第1の工程で重合性基を有するモノマー単位を少なくとも2つの官能基を有する化合物と反応させる。次の工程で、第1の工程で得られた生成物を窒素含有化合物と反応させる。重合性基を有するモノマー単位、少なくとも2つの官能基を有する化合物、窒素含有化合物の好適かつ好ましい構造は上述した通りである。
【0030】
第2の方法では、第1の工程で窒素含有化合物を少なくとも2つの官能基を有する化合物と反応させる。次の工程で、第1の工程で得られた生成物を重合性基を有するモノマー単位と反応させる。
【0031】
第3の方法では、窒素含有化合物を重合性基を有するモノマー単位と直接反応させ、モノマー単位は反応物間で尿素結合を形成することができる。
【0032】
これらの方法によれば、重合性基を有するモノマー単位は、最も好ましくはエチレン性不飽和基を有するモノマー単位、特に、炭素―炭素二重結合を有するモノマーから選択され、重合性基を有するモノマー単位は好ましくは少なくとも1つの官能基を有し、前記官能基は、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、ハロゲン化エステル、イソシアネート、チオイソシアネート、第1級アミン、第2級アミン、ハロゲン基から選択される。より好ましくは、重合性基を有するモノマー単位は、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、ハロゲン化エステル、イソシアネート、チオイソシアネート、第1級アミン、第2級アミン、ハロゲン基から選択される官能基を有するアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、ビニルピリジン、その他のビニルモノマー、ラクトン、その他の環状エステル、ラクタム、環状エーテル、環状シロキサンから選択される。さらに好ましくは、重合性基を有するモノマー単位は、アクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、特に酢酸ビニルから選択され、これらのアクリレート、メタクリレート、ビニルエステルは、好ましくは、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、ハロゲン化エステル、イソシアネート、チオイソシアネート、第1級アミン、第2級アミン、ハロゲン基から選択される官能基を有する。
【0033】
モノマーの調製方法の好ましい実施形態を以下のスキーム1〜3に示す。
【0034】
スキーム1
【化4】

【0035】
及びRは既に定義した通りであり、Rは水素またはメチル基であり、Aは分子鎖、好ましくはオリゴメチレン鎖またはオリゴエチレングリコール鎖であり(当業者には明らかなように、Aが存在せず、重合性基を有するモノマー単位がカルボン酸基を官能基として有してもよい)、Bは上述した連結部分(b)の分子鎖である。
【0036】
スキーム2
【化5】

【0037】
スキーム3
【化6】

【0038】
スキーム3において、R及びRはそれぞれ独立してC〜Cアルキル基を示し、Rは好ましくはメチル基である。
【0039】
<共重合及びポリマーの説明>
本発明のポリマーは、4H単位を含有するモノマーを、同一または異なるモノマー群に属する1以上の任意に異なるコモノマーと共重合させることによって得られる。これらのコモノマーは、好ましくは以下の群から選択される。アクリル酸;アクリル酸のC〜C30分岐または直鎖アルキルエステル;メタクリル酸;メタクリル酸のC〜C30分岐または直鎖アルキルエステル;アミド基が2以下のC〜C30分岐または直鎖アルキル基で置換されていてもよいアクリルアミドまたはメタクリルアミド;ビニルエステル、好ましくは酢酸ビニル;ビニル基を有するその他の化合物であって、好ましくはピロリドン、イミダゾール、ピリジン、カプロラクタム、ピペリドン、ベンゼン、それらの誘導体から選択される化合物;C〜C20アルカジエン;ラクトン;ラクタム;1〜5個の酸素原子を含む飽和または不飽和複素環式化合物。好適なコモノマーの例としては、アクリル酸、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル、N−ビニルピロリジノン、2−ビニルピリジン−1−オキシド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピペリドン、アクリロニトリル、スチレン、ブタジエン、イソプレン、カプロラクトン、ブチロラクトン、カプロラクタム、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、1,4−ジオキサン−2,5−ジオンが挙げられる。
【0040】
共重合は、あらゆる種類(例えば、塊状、分散、溶液、乳化、懸濁または逆相乳化)のものであってもよく、あらゆる反応機構(例えば、ラジカル重合、重縮合、遷移金属触媒重合、酵素重合、または開環重合)によるものであってもよい。
【0041】
得られるコポリマーのバックボーンは、あらゆる種類(直鎖状、分岐状、星型、多分岐状、樹脂状、櫛状など)のものであってもよい。
【0042】
生成されるコポリマーは、あらゆる構造を有していてもよい。例えば、ランダム型、規則型、テーパー型、またはブロックコポリマー型構造であってもよい。
【0043】
本発明によれば、ポリマーの分子量は高過ぎないことが好ましい。好ましい数平均分子量の範囲は、500〜20,000である。
【0044】
本発明に係るコポリマーは、特に、パーソナルケア(整髪料、皮膚用化粧品、洗濯助剤)、表面コーティング(皮革、繊維、光ファイバー、紙、塗料)、画像化技術(印刷、ステレオリソグラフィー、写真、リソグラフィー)、生物医学的用途(医薬品の制御放出用材料、組織工学材料、錠剤配合剤)、接着剤及び封止用組成物、増粘剤及びバインダーに関連する用途に好適である。
【0045】
[実施例]
【0046】
以下の実施例によって、本発明の好ましい実施形態をさらに説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。特に言及しない限り、化学品はアルドリッチ(Aldrich)社から入手した。
【0047】
<構造ブロックの合成>
【0048】
<実施例1>:イソシアネートIの合成
【0049】
【化7】

【0050】
1,6−ヘキシルジイソシアネート(650g)とメチルイソシトシン(2−アミノ−4−ヒドロキシ−6−メチル−ピリミジン、65.1g)を2リットルのフラスコ内で懸濁させた。次に、アルゴン雰囲気下、混合物を100℃で一昼夜撹拌した。室温に冷却後、撹拌を続けながら1リットルのペンタンを懸濁液に添加した。生成物を濾過してペンタンで洗浄し、真空乾燥した。これによって、白色粉末を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ13.1(1H),11.8(1H),10.1(1H),5.8(1H),3.3(4H),2.1(3H),1.6(4H),1.4(4H).FT−IR(neat):ν2935,2281,1698,1668,1582,1524,1256.
【0051】
<実施例2>:イソシアネートIIの合成
【0052】
【化8】

【0053】
イソホロンジイソシアネート(IPDI、50mL)にメチルイソシトシン(5.2g)を添加し、アルゴン雰囲気下、90℃で3日間撹拌した。得られた透明溶液をヘプタン中で沈殿させた。白色のゴム状物を採取し、150mLのヘプタン中で加熱し、氷冷し、濾過した。同じ手順を白色の残渣に対してもう一回繰り返し、白色粉末を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ13.1(1H),12.0(1H),10.1(1H),5.9(1H),4.1〜3.1(3H),2.1(3H),2.0〜0.9(15H).FT−IR(neat):ν(cm−1)2954,2255,1696,1662,1582,1524,1247.
生成物は、4種類の異なる異性体として存在する。上に示した2つのレジオ異性体は、シス構造及びトランス構造として存在する。4異性体の全てが存在しているが、以下では異性体の1種のみを示している。
【0054】
<実施例3>:イソシアネートIIIの合成
【0055】
【化9】

【0056】
35mLのTHFに溶解した4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI、8.1g)にメチルイソシトシン(2.0g)を添加し、アルゴン雰囲気下、75℃の油浴温度で撹拌した。4時間後に40mLのクロロホルムを添加し、白色の沈殿物を濾別してクロロホルムで洗浄した。H NMR(400MHz、DMSO−d6):δ10.0(1H),8.6(1H),7.4(5H),7.2(4H),5.8(1H),3.8(2H),2.1(3H).FT−IR(neat):ν(cm−1)3329,2954,2257,1699,1658,1578,1508,1244.
【0057】
<実施例4>:イソシアネートIVの合成
【0058】
【化10】

【0059】
メチルイソシトシン(2g)とトリメチル−1,6−へキシルジイソシアネート(2,2,4−トリメチル及び2,4,4−トリメチル異性体の混合物;24g)の懸濁液を撹拌し、100℃の油浴温度で21時間加熱した。混合物はアルゴン雰囲気下で保持した。反応混合物を室温まで冷却し、ペンタンを添加して沈殿を生じさせた。次に、懸濁液をガラスフィルターで濾過し、ゴム状残渣をペンタン中で撹拌・加熱した。生成物を冷却、濾過、乾燥し、白色粉末を得た。H NMR(300MHz、CDCl):δ13.1(1H),11.7(1H),10.1(1H),5.8(1H),3.4〜3.0(4H),2.2(3H),1.8(1H),1.6(2H)),1.3(1H),1.1(1H),1.05〜0.95(9H).FT−IR(neat):ν(cm−1)2933,2260,1693,1647,1580,1518,1248.
【0060】
トリメチルへキシルジイソシアネートはキラル性であり、2つのイソシアネート位で反応することができるため、生成物は8種類の異性体として存在する。すべての異性体が存在しているが、異性体の1種のみを立体中心を指定することなく図示する。
【0061】
<実施例5>:6−(1−エチルペンチル)−イソシトシンの合成
【0062】
【化11】

【0063】
エチルマロン酸カリウム(150g)とアセトニトリル(1.4L)をフラスコ内で撹拌し、10〜15℃に冷却した。混合物をアルゴン雰囲気下に保ちながら、トリエチルアミン(132mL)を滴下した。乾燥MgCl(101.6g)を添加後、懸濁液を室温で2時間撹拌した。次に、懸濁液を0℃まで冷却し、塩化2−エチルヘキサノイル(74mL)を滴下した。その後、混合物を室温に戻し、一昼夜撹拌した。アセトニトリルを留去し、400mLのトルエンを添加して蒸発させた。次に、700mLのトルエンを添加し、混合物を10℃に冷却した。塩酸水溶液をゆっくりと添加した後、有機層を分離し、塩酸水溶液及び重炭酸塩水溶液で洗浄した。次に、有機層をNaSOで乾燥し、濃縮することによって、β−ケトエステルを液体として得た。得られたβ−ケトエステル(50g)と炭酸グアニジン(49.8g)を、抽出筒にmolsieveを充填したソックスレー抽出装置を使用して、エタノール(300mL)中で2日間煮沸した。得られた懸濁液を濾過し、エタノールを蒸発させ、生成物をクロロホルム中に溶解した。重炭酸塩水溶液で洗浄後、有機層をMgSOで乾燥し、濃縮し、過剰量のペンタン中に滴下して白色粉末を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ11.6〜10.6(1H),7.6〜6.6(2H),5.6(1H),2.2(1H),1.5(4H),1.2(4H),0.8(6H).FT−IR(neat):ν3322,3152,2929,2860,1635,1463,1378,1582,1524.
【0064】
<4H水素結合単位を含むモノマーの合成>
【0065】
<実施例6>:モノマー1,4H水素結合単位を含むメタクリレートモノマー
【0066】
【化12】

【0067】
イソシアネートII(28g)をクロロホルム(0.5L)に溶解し、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、9.6mL)とジラウリル酸ジブチル錫(DBTDL)8滴とを添加した。混合物を90℃の油浴温度で4時間撹拌した後、冷却・濾過した。次に、濾液を濃縮し、過剰量のジエチルエーテルに滴下した。沈殿物を濾過によって採取し、ジエチルエーテルで洗浄した。次に、真空乾燥を行い、固形生成物を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ13.1(1H),11.8(1H),10.1(1H),6.1(1H),5.8(1H),5.6(1H),5.0(1H),4.3(4H),4.1〜3.6(1H),3.1〜2.9(2H),2.1(3H),2.0(3H),1.8〜1.5(2H),1.4〜0.8(13H).FT−IR(neat):ν3212,2954,1697,1660,1572,1520,1242,1165.
【0068】
<実施例7>:モノマー2,4H水素結合単位を含むアクリレートモノマー
【0069】
【化13】

【0070】
イソシアネートI(46g)をクロロホルム(1L)中に懸濁させ、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA、36mL)とジラウリル酸ジブチル錫(DBTDL)10滴とを添加した。混合物を90℃の油浴温度で4時間撹拌し、冷却・濾過した。次に、濾液を濃縮し、過剰量のジエチルエーテルを添加した。次に、白色の沈殿物を濾過によって採取し、ジエチルエーテルで洗浄した。その後、真空乾燥を行い、固形生成物を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ13.1(1H),11.8(1H),10.1(1H),6.5(1H),6.2(1H),5.9(2H),5.1(1H),4.4(4H),3.3(2H),3.2(2H),2.1(3H),1.7〜1.3(8H).FT−IR(neat):ν3307,2928,1725,1702,1682,1664,1584,1548,1258,1192.
【0071】
<実施例8>:モノマー3,4H水素結合単位を含むメタクリレートモノマー
【0072】
【化14】

【0073】
2−イソシアナトエチルメタクリレート(7.0mL)を、6−(1−エチルペンチル)−イソシトシン(13.4g)の乾燥ピリジン(150mL)溶液に添加した。次に、アルゴン雰囲気下で、反応混合物を80℃で4時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、クロロホルム/メタノール(4%)を使用してシリカで濾過した。次に、酢酸エチル/ヘキサンを使用してシリカカラムクロマトグラフィを行い、淡黄色のロウ状固形物を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ13.1(1H),12.0(1H),10.5(1H),6.2(1H),5.8(1H),5.6(1H),4.3(2H),3.6(2H),2.3(1H),1.9(3H),1.8〜1.5(4H),1.4〜1.2(4H),0.9(6H).FT−IR(neat):ν2959,2930,1720,1697,1645,1582,1555,1525,1462,1254,1160.
【0074】
<実施例9>:モノマー4,4H水素結合単位を含むメタクリレートモノマー
【0075】
【化15】

【0076】
PEG−MAアルコール(平均分子量Mn:360;2.2g)、イソシアネートI(1.8g)、数滴のDBTDLを、クロロホルム中で一昼夜煮沸した。次に、ヘキサンを添加して沈殿を生じさせた。濾過とヘキサン及びジエチルエーテルによる洗浄によって生成物を単離した。H NMR(400MHz、DMSO−d):δ7.5(1H),7.2(1H),6.0(1H),5.7(1H),5.6(1H),4.2(2H),4.0(2H),3.7(2H),3.6〜3.4(15H〜20H),3.1(2H),2.9(2H),2.1(3H),1.9(3H),1.4(4H),1.2(4H).
【0077】
<実施例10>:モノマー5,4H水素結合単位を含むアクリルアミドモノマー
【0078】
【化16】

【0079】
イソシアネートI(1g)を5mLのアクリル酸に溶解し、混合物を60℃に加熱した。次に、混合物をアルゴン雰囲気下で撹拌した。酢酸銅(II)(8mg)を添加後、60℃で2時間加熱を継続した。その後、反応混合物をジエチルエーテル中で沈殿させることによって生成物を得た。次に、得られた固形物を濾過し、クロロホルムに溶解し、重炭酸塩水溶液で洗浄した。NaSOで乾燥後、10%のメタノールを含むクロロホルムを使用したカラムクロマトグラフィーによって白色粉末を得た。H NMR(400MHz、CDCl/CDOD):δ7.4(1H),6.3〜6.1(2H),5.8(1H),5.6(1H),3.3〜3.2(4H),2.1(3H),1.7〜1.2(8H).FT−IR(neat):ν3278,2935,1699,1665,1652,1582,1525.
【0080】
<実施例11>:モノマー6,4H水素結合単位を含むビニルエステルモノマー
【0081】
【化17】

【0082】
6−(1−エチルペンチル)−イソシトシン(3.5g)を50mLのTHFに溶解後、2.5mLのエチル3−イソシアナト酢酸エチルを混合物に添加した。反応混合物を還流下で16時間撹拌して白色粉末を得、白色粉末を濾過し、クロロホルム(4.8g)で洗浄した。次に、エタノール(50mL)と1N水酸化ナトリウム水溶液(40mL)の混合液に得られた化合物を溶解し、室温で2時間撹拌した。氷冷した反応混合物にKHSOの飽和水溶液をpHが3になるまで添加し、得られた白色沈殿物を濾過し、水で洗浄した。次に、真空乾燥を行い、カルボン酸官能性ウレイドピリミドン4.4gを単離した。
【0083】
得られたカルボン酸官能性ウレイドピリミドン(2.0g)と、酢酸水銀(II)(30mg)と、酢酸ビニル(4.0g)と、濃硫酸(15μL)との混合物を60℃で2日間撹拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル中で沈殿させた。濾過及び真空乾燥を行い、4H酢酸ビニル(2.9g)を白色粉末として得た。
【0084】
<実施例12>:モノマー7,4H水素結合単位を含むスチレンモノマー
【0085】
【化18】

【0086】
イソシアネートI(5.6g)を50mLのクロロホルムに溶解した4−アミノスチレン(Aldrich社より入手、1.9g)に添加し、混合物を70℃に加熱した。混合物をアルゴン雰囲気下で12時間撹拌した。反応混合物から黄色の沈殿物を濾別し、クロロホルムで洗浄することによって生成物を得た。H NMR(400MHz、CDCl/DMSO−d6):δ7.8(1H),7.2(4H),6.6(1H),5.8(1H),5.5(1H),5.1(1H),3.4〜3.2(4H),2.1(3H),1.7〜1.2(8H).FT−IR(neat):ν3278,2935,1699,1665,1652,1582,1525.
【0087】
<実施例13>:モノマー8,4H水素結合単位を含むε−ラクトンモノマー
【0088】
【化19】

【0089】
4−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサノン(Fluka社より入手、8.2g)を100mLの2−ブタノンに溶解した溶液を、40mLの2−ブタノンに3−クロロペルオキシ安息香酸(9.3g)を溶解した溶液中に撹拌下で滴下した。5時間後、反応混合物を真空下で元の体積の30%まで濃縮し、50mLのジエチルエーテルを添加した。得られた白色の沈殿物を濾過によって採取し、真空乾燥した。得られた白色粉末を150mLのクロロホルムに再溶解し、イソシアネートII(11.8g)及び4滴のラウリル酸ジブチル錫を添加した。アルゴン雰囲気下、混合物を還流下で16時間撹拌した。次に、生成物をジエチルエーテル中で沈殿させて得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ13.1(1H),12.0(1H),10.1(1H),7.3〜7.0(4H),5.9(1H),5.4〜5.0(1H),4.4(2H),4.1〜3.8(2H),3.2〜2.6(4H)2.2〜0.9(22H).IR(neat):ν3211,2955,1724,1699,1660,1575,1505,1247,1211.
【0090】
<実施例14>:モノマー9,4H水素結合単位を含むアクリレートモノマー
【0091】
【化20】

【0092】
イソシアネートIV(11g)をクロロホルム(150mL)に溶解し、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA、4.1mL)とジラウリル酸ジブチル錫(DBTDL)4滴とを添加した。混合物を60℃の油浴温度で9時間撹拌した。次に、混合物を冷却し、ペンタン中で沈殿させ、沈殿物をジエチルエーテルで洗浄した。その後、白色粉末を濾過によって採取し、ジエチルエーテルで洗浄した。次に、真空乾燥を行い、白色の固形生成物を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ13.1(1H),11.8(1H),10.1(1H),6.5(1H),6.2(1H),5.9(2H),5.4及び5.1(1H),4.4(4H),3.3〜2.9(4H),2.1(3H),1.8〜0.9(14H).
【0093】
<実施例15>:モノマー10,4H水素結合単位を含むメタクリレートモノマー
【0094】
【化21】

【0095】
イソシアネート(79g)をクロロホルム(1.5L)中に懸濁させ、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、64mL)とジラウリル酸ジブチル錫(DBTDL)15滴とを添加した。混合物を90℃の油浴温度で4時間撹拌した後、冷却及び濾過した。次に、濾液を濃縮し、過剰量のジエチルエーテル中に滴下した。濾過によって白色の沈殿物を採取し、ジエチルエーテルで洗浄した。その後、真空乾燥を行い、白色の固形生成物(90g)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ13.1(1H),11.8(1H),10.1(1H),6.1(1H),5.8(1H),5.6(1H),5.0(1H),4.3(4H),3.3〜3.2(4H),2.1(3H),1.9(3H),1.7〜1.2(8H).FT−IR(neat):ν3301,2932,1720,1699,1685,1665,1582,1525、1258.
【0096】
<コポリマーの合成>
4H水素結合単位を含むコポリマーの実施例は、公知の数種類の異なる重合技術を使用して得た。その結果を表1に示し、一般的な操作を以下に説明する。
【0097】
<原子移動ラジカル重合(ATRP)法>
【0098】
<ポリHEMAポリマー(ポリマーA〜E)の調製>
CuBr(開始剤に対して約1当量;通常は0.06〜0.31g)、2,2’−ビピリジン(開始剤に対して約2当量)、適当量の4H水素結合単位を含有するモノマーを入れた25mLの丸底フラスコを真空脱気(脱酸素)した後、アルゴンガスで埋め戻し、このサイクルを2回繰り返した。HEMAとDMSO(同量、通常はともに2〜5mL)及び任意のPEG−MA(平均分子量Mn=360ダルトン;ポリマーB、Cの場合)を、少なくとも45分間アルゴン中でバブリングすることによって脱気(脱酸素)し、シリンジを使用して上記の25mLフラスコ中に添加した。反応混合物を全成分が溶解するまで撹拌し(場合によっては短時間の加熱後)、均一な暗褐色の溶液を得た。反応用フラスコを室温に維持した水浴中に配置し、ATRP開始剤(ベンジル−2−ブロモ−2−メチルプロピオネート)をシリンジを使用して添加した。ATRP開始剤のHEMAに対するモル比は、ポリマーA、C、D、Eの場合は約1:40、ポリマーBの場合は約1:20とした。重合が直ちに開始し、反応混合物の粘度が上昇した。約30分後、ポリマーをEDTA(25g/L)水溶液(ポリマーB〜E)またはクロロホルム(ポリマーA)中に沈殿させて単離した。得られたポリマーを洗浄及び乾燥した。
【0099】
<PMMAポリマー(ポリマーF〜G)の調製>
NiBr(PPh(約0.35g)及び任意の4H水素結合単位を含有するモノマー3を入れたフラスコを真空脱気(脱酸素)した後、アルゴンガスで埋め戻した。このサイクルを2回繰り返した。MMAとトルエン(同量、ともに5mL)を少なくとも45分間アルゴン中でバブリングすることによって脱気(脱酸素)し、シリンジを使用して上記のフラスコに添加した。最後に、ATRP開始剤(ベンジル−2−ブロモ−2−メチルプロピオネート、約185mg)をシリンジを使用して添加した。フラスコを70℃の油浴中に配置し、約20時間にわたって重合させた。得られた溶液をアルミナで濾過し、クロロホルム/メタノールで洗浄した。濾液を濃縮し、ヘキサン中に滴下した。その後、沈殿物を乾燥した。
【0100】
<フリーラジカル重合(FR)法(ポリマーH〜L)>
HEMA(5mL)、4H水素結合単位を含有するモノマー、AIBN(12mg)、連鎖移動剤としてのメルカプトエタノール(75μL;ポリマーIの場合は60μL)のDMF(15mL)溶液を、アルゴンで1時間パージすることによって重合に先立って脱気した。前記成分を80℃で約3〜4時間重合させた後、室温まで冷却し、ポリマーを非溶媒(ポリマーHとIの場合はTHF/ヘキサンの3:1混合物を使用し、ポリマーJ〜Lの場合は水を使用)中に沈殿させ、濾過及び乾燥して回収した。ポリマーHの場合には、異なる条件を使用した。すなわち、4.7mLのHEMA、30mLのDMF、モノマー3、20μLのメルカプトエタノール、22mgのAIBNを60℃で2日間撹拌した。AIBNは、重合開始時と重合開始後1日目に同量で添加した。
【0101】
<開環重合(ROP)法(ポリマーM)>
新たに蒸留して乾燥したε−カプロラクトン、ベンジルアルコール(開始剤)、ピリジン(開始剤に対して2当量)を、窒素雰囲気中でトリフルオロメタンスルホン酸錫(II)(触媒、開始剤に対して0.5当量)及び所望量のモノマー8を入れたシュレンク瓶(Schlenck bottle)に添加した。シュレンク瓶を油浴中に配置し、65℃で16時間加熱した。次に、粘性を有する反応混合物を同量のTHFで希釈し、メタノール中で沈殿させ、濾過・真空乾燥した。
【0102】
<乳化重合(EP)法(ポリマーN、O)>
ブチルアクリレート(5mL)、水(11mL)、任意のモノマー9(0.67g)、ドデシル硫酸ナトリウム(0.1g)、電荷移動剤としてのドデシルメルカプタン(0.3mL)、開始剤としての過硫酸ナトリウム(ポリマーNの場合は25mg、ポリマーOの場合は50mg)、重炭酸ナトリウム(ポリマーNの場合は30mg、ポリマーOの場合は25mg)を20℃で混合し、アルゴンで45分間パージした。次に、反応温度を50℃に上昇させ、混合物を4時間撹拌した。メタノールを加えてエマルションを凝固させ、ポリマー生成物を単離した。
【0103】
【表1】

【0104】
<特性評価>
ポリマーA〜E及びMの分子量(Mn)は、H NMRを使用し、ベンジル末端基の積分値と繰り返し単位の積分値を考慮して測定した。ポリマーB、C、Iの分子量(Mn)と分散度(D)は、SEC(DMF中0.01M LiBr)を使用し、ポリスチレン標準に対して測定した(ポリマーB、CのNMRデータとの比較では、SEC測定によるMnとDの値は大きめに出ることが示されている)。ポリマーF、G、N、Oの分子量(MnまたはMtop)及び分散度(D)は、SEC(THF)を使用し、ポリスチレン標準に対して測定した。
【0105】
さらに、ポリマーA〜G及びMの場合には、重クロロホルムまたはDMSO−d中におけるH NMRを使用し、ポリマー末端基のベンジルシグナルの積分値と4H水素結合単位のアルキリデンシグナルの積分値を考慮することによって、ポリマー鎖あたりの4H水素結合単位の平均数を計算した。H NMRデータによって示されるように、ポリマーH〜L及びNは4H水素結合単位を含んでいる。
【0106】
<ポリマーの特性>
ポリマー鎖への4H水素結合単位の導入の効果は、表2に示すPMMAサンプルの20℃における溶液(動的)粘度データから明らかである。表2に示すように、本発明に係る4H水素結合単位の導入によって、顕著な増粘効果が得られる。
【0107】
【表2】

【0108】
本発明に係るポリマーへの4H水素結合単位の導入によって、材料特性も向上し、このことは、ポリマーN、Oの特性差に最も顕著に現れている。ポリ(ブチルアクリレート)Oが粘着性を有する粘性液体であるのに対して、4H水素結合単位を導入したポリ(ブチルアクリレート)Nは、ポリマーOよりも分子量が低いにも関わらず、弾性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重合可能基を有するモノマー単位(すなわち、重合性基を有するモノマー単位)と、(b)連結部分と、(c)少なくとも4つの水素ブリッジを形成することのできる構造部分と、を含み、前記モノマーは一般構造(a)−(b)−(c)を有し、前記連結部分(b)は、少なくとも2つの官能基を有する化合物から誘導され、前記構造部分(c)は下記一般式(1)または(2)で表されることを特徴とするモノマー。
【化1】



式中、C−X結合(i=1〜4)及びC−Y結合(i=1〜4)はそれぞれ単結合または二重結合を表し、nは4以上であり、X(またはX・・・X)は、結合される対応する一般式(2’)を含む水素ブリッジ形成モノマー単位と水素ブリッジを形成する供与体または受容体を表し、Xが供与体である場合はYは受容体であり、Xが受容体である場合はYは供与体である。
【請求項2】
前記官能基が末端基であることを特徴とする、請求項1に記載のモノマー。
【請求項3】
前記官能性末端基が、ヒドロキシ、カルボキシレート、カルボン酸エステル、ハロゲン化エステル、イソシアネート、チオイソシアネート、第1級アミン、第2級アミン、ハロゲンから選択されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のモノマー。
【請求項4】
及びXが供与体であり、X及びXが受容体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のモノマー。
【請求項5】
前記供与体及び受容体が、酸素、硫黄、窒素原子であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のモノマー。
【請求項6】
前記構造部分(c)が、下記一般式(3)または(4)で表されるか、それらの互変異体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のモノマー。
【化2】



式中、前記構造部分(c)はR、RまたはRにおいて前記連結部分(b)に結合し(R、RまたはRが直接結合を示す)、残りのR基はランダム側鎖または水素原子を示す。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のモノマーの製造方法であって、第1の工程で、重合性基を有するモノマー単位を少なくとも2つの官能基を有する化合物と反応させ、前記第1の工程で得られた生成物を窒素含有化合物と反応させることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のモノマーの製造方法であって、第1の工程で、窒素含有化合物を少なくとも2つの官能基を有する化合物と反応させ、前記第1の工程で得られた生成物を重合性基を有するモノマー単位と反応させることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のモノマーと、少なくとも1つのコノモマーと、を含むことを特徴とするコポリマー。
【請求項10】
前記コノモマーが、アクリル酸;アクリル酸のC〜C30分岐または直鎖アルキルエステル;メタクリル酸;メタクリル酸のC〜C30分岐または直鎖アルキルエステル;アミド基が2以下のC〜C30分岐または直鎖アルキル基で置換されていてもよいアクリルアミドまたはメタクリルアミド;ビニルエステル、好ましくは酢酸ビニル;ビニル基を有する他の化合物であって、好ましくはピロリドン、イミダゾール、ピリジン、カプロラクタム、ピペリドン、ベンゼン、それらの誘導体から選択される化合物;C〜C20アルカジエン;ラクトン;ラクタム;1〜5個の酸素原子を含む飽和または不飽和複素環式化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載のコポリマー。
【請求項11】
前記コポリマーが、直鎖状、分岐状、星型、多分岐状、樹脂状、または櫛状コポリマーであることを特徴とする、請求項9または10に記載のコポリマー。
【請求項12】
前記コポリマーが、ランダム、規則性、テーパー型、またはブロック構造を有することを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項13】
コポリマーの製造方法であって、請求項1〜6のいずれかに記載のモノマーを少なくとも1つのコモノマーと重合させることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記方法が、塊状、分散、溶液、乳化、懸濁、または逆相エマルション重合によって行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重合可能基を有するモノマー単位(すなわち、重合性基を有するモノマー単位)と、(b)連結部分と、(c)少なくとも4つの水素ブリッジを形成することのできる構造部分と、を含み、前記モノマーは一般構造(a)−(b)−(c)を有し、前記連結部分(b)は少なくとも2つの官能基を有し、前記構造部分(c)は下記一般式(1)または(2)で表されることを特徴とするモノマー。
【化1】



式中、C−X結合(i=1〜4)及びC−Y結合(i=1〜4)はそれぞれ単結合または二重結合を示し、nは4以上であり、X(またはX・・・X)は、それらが結合される対応する一般式(2’)を含む水素ブリッジ形成モノマー単位とともに水素ブリッジを形成する供与体または受容体を示し、Xが供与体である場合はYは受容体であり、Xが受容体である場合はYは供与体であり、前記官能基は、ヒドロキシ、カルボキシレート、カルボン酸エステル、ハロゲン化エステル、イソシアネート、チオイソシアネート、第1級アミン、第2級アミン、ハロゲンから選択される。
【請求項2】
前記官能基が末端基であることを特徴とする、請求項1に記載のモノマー。
【請求項3】
及びXが供与体であり、X及びXが受容体であることを特徴とする、請求項1または2に記載のモノマー。
【請求項4】
前記供与体及び受容体が、酸素、硫黄、窒素原子であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のモノマー。
【請求項5】
前記構造部分(c)が、下記一般式(3)または(4)で表されるか、それらの互変異体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のモノマー。
【化2】



式中、前記構造部分(c)は、R、RまたはRにおいて前記連結部分(b)に結合し(R、RまたはRが直接結合を示す)、残りのR基はランダム側鎖または水素原子を示す。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のモノマーの製造方法であって、第1の工程で、重合性基を有するモノマー単位を、少なくとも2つの官能基を有する化合物と反応させ、前記第1の工程で得られた生成物を窒素含有化合物と反応させることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のモノマーの製造方法であって、第1の工程で、窒素含有化合物を、少なくとも2つの官能基を有する化合物と反応させ、前記第1の工程で得られた生成物を重合性基を有するモノマー単位と反応させることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法によって得られることを特徴とするモノマー。
【請求項9】
請求項1〜5及び8のいずれかに記載のモノマーと、少なくとも1つのコノモマーと、を含むことを特徴とするコポリマー。
【請求項10】
前記コノモマーが、アクリル酸;アクリル酸のC〜C30分岐または直鎖アルキルエステル;メタクリル酸;メタクリル酸のC〜C30分岐または直鎖アルキルエステル;アミド基が2以下のC〜C30分岐または直鎖アルキル基で置換されていてもよいアクリルアミドまたはメタクリルアミド;ビニルエステル、好ましくは酢酸ビニル;ビニル基を有する他の化合物であって、好ましくはピロリドン、イミダゾール、ピリジン、カプロラクタム、ピペリドン、ベンゼン、それらの誘導体から選択される化合物;C〜C20アルカジエン;ラクトン;ラクタム;1〜5個の酸素原子を含む飽和または不飽和複素環式化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載のコポリマー。
【請求項11】
前記コポリマーが、直鎖状、分岐状、星型、多分岐状、樹脂状、または櫛状コポリマーであることを特徴とする、請求項9または10に記載のコポリマー。
【請求項12】
前記コポリマーが、ランダム型、規則型、テーパー型、またはブロック型構造を有することを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項13】
コポリマーの製造方法であって、請求項1〜5及び8のいずれかに記載のモノマーを少なくとも1つのコモノマーと重合させることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記方法が、塊状、分散、溶液、乳化、懸濁、または逆相エマルション重合によって行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜5及び8のいずれかに記載のモノマーと少なくとも1つのコモノマーとを共重合させることによって得られることを特徴とするコポリマー。

【公表番号】特表2006−508201(P2006−508201A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−528958(P2004−528958)
【出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000586
【国際公開番号】WO2004/016598
【国際公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(505057912)
【Fターム(参考)】