説明

4成分縮合反応による高分子コンジュゲートの調製

ポリマー−生体分子コンジュゲートが、4成分縮合反応によって、一般に部位特異的又は部位選択的な様式で調製される。この方法を使用して、生体分子上の単一の部位に2つのポリマー分子が結合したコンジュゲートを調製し得る。これらのコンジュゲートは典型的には水溶性であり、有利な薬理学的特性(例えば、低下した免疫原性及び増大した循環時間)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子の水溶性ポリマーとのコンジュゲート(conjugate)の調製、特に4成分縮合反応によるこのようなコンジュゲートの調製に関する。

【背景技術】
【0002】
ポリエチレングリコール(PEG)のような親水性ポリマーは、物質の免疫原性を低下させるため及び/又はその血中循環寿命を改善するために、ポリペプチド、薬物及びリポソームのような種々の物質の修飾のために使用されてきた(Zalipsky & Harris,1997)。例えば、非経口投与されるタンパク質は免疫原性であり得、短い薬理学的半減期を有する可能性がある。ある種のタンパク質は比較的水に不溶性でもあり得る。結果的に、患者におけるタンパク質の治療的に有用な血中レベルを達成することは困難であり得る。
【0003】
タンパク質への親水性ポリマー、特にPEGのコンジュゲート化(Zalipsky & Harris,1997)が、これらの困難を克服するためのアプローチとして記載されている。例えば、Davis et al.は、米国特許第4,179,337号において、生理的活性のかなりの部分をなお保持しながらもより低い免疫原性を有するPEG−タンパク質コンジュゲートを形成するための、酵素及びインスリンのようなタンパク質へのPEGのコンジュゲート化を記載している。Veronese et al.(Applied Biochem.and Biotech,11:141−152(1985))は、それぞれリボヌクレアーゼ及びスーパーオキシドジムスターゼへのコンジュゲート化のために、クロロギ酸フェニルでポリエチレングリコールを活性化することを記載している。Katre et al.は、米国特許第4,766,106号及び同第4,917,888号において、ポリマーコンジュゲート化によってタンパク質を可溶化することを記載している。米国特許第4,902,502号(Nitecki et al.)及びPCT公開番号WO90/13540(Enzon,Inc.)は、免疫原性を低下させ、半減期を増大させるための、組換えタンパク質へのPEG及び他のポリマーのコンジュゲート化を記載している。
【0004】
PEGは、リポソームの血中循環寿命を改善することに使用されることも記載されている(米国特許第5,103,556号)。PEGポリマーは、リポソームが細網内皮系によって認識及び除去されないようにマスク又は遮蔽するために、脂質の極性頭部基に共有結合される。
【0005】
生物学的に適切な分子へのPEGの結合のための種々のコンジュゲート化化学が検討されてきた(Zalipsky,1995a)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水溶性ポリマー、好ましくはPEGポリマーの、生物学的に活性な分子又は生物学的に適切な分子、特にポリペプチドとのコンジュゲートを調製するための多用途の方法を提供する。生体分子へのコンジュゲート化は、部位特異的又は部位選択的な様式でしばしば実施できる。この方法により、例えば、アミン、カルボン酸又は合成により導入されたアルデヒド若しくはケトンから選択されるポリペプチド上の官能基でPEG鎖が結合することが可能となる。この方法はまた、所望される場合、コンビナトリアルな様式での多様なコンジュゲートの調製を提供する。
【0007】
一態様において、本発明は、タンパク質又はポリペプチドの水溶性ポリマーとのコンジュゲートを調製する方法を提供し、この方法は、
以下の成分(a)〜(d):
(a)R−C(O)R’(カルボニル成分)、(式中R’はH又は低級アルキルであり、好ましくはH又はメチルであり、より好ましくはH(即ちアルデヒド)である)、
(b)R−NH(アミン成分)、
(c)R−C(O)OH(カルボン酸成分)、及び
(d)R−NC(イソニトリル成分)
を反応させて、R、R、R及びRによって示される各部分のうち少なくとも1つを組み込むコンジュゲート化生成物を形成するステップを含む。(a)〜(c)のうち少なくとも1つはタンパク質又はポリペプチドである。即ち、この反応は、反応性カルボニルを有するタンパク質又はポリペプチド(R−C(O)R’)、反応性アミンを有するタンパク質又はポリペプチド(R−NH)、及び/或いは反応性カルボン酸を有するタンパク質又はポリペプチド(R−C(O)OH)を含む。(a)〜(d)のうち少なくとも1つは水溶性ポリマーである。即ち、この反応は、反応性カルボニルを有する水溶性ポリマー(R−C(O)R’)、反応性アミンを有する水溶性ポリマー(R−NH)、反応性カルボン酸を有する水溶性ポリマー(R−C(O)OH)、及び/或いは反応性イソニトリルを有する水溶性ポリマー(R−NC)を含む。
【0008】
一実施形態において、このコンジュゲート化生成物は、成分(a)〜(d)の各々のうち正確に1つの残基を組み込む、形態RNH−C(O)−R’R−NR−C(O)Rのものである。例えば成分(a)〜(d)のうち1つが示された反応性官能基のうち1つより多くを有する他の実施形態(例えば、複数のアミノ基を有する成分R−NH又は複数のカルボン酸基を有する成分R−C(O)OH)において、このコンジュゲート化生成物は、他の成分のさらなる残基へとコンジュゲート化された当該成分を含んでもよい。
【0009】
このポリマー及びこれらの成分から形成されたコンジュゲートは、好ましくは室温及び生理的pHで水溶性である。
【0010】
このタンパク質又はポリペプチドは、上記(a)〜(c)から選択される少なくとも1つの成分によって示され、水溶性ポリマーは、上記(a)〜(d)から選択される少なくとも1つの異なる成分によって示され、(a)〜(d)の任意の残りの成分は、本明細書中で規定されるとおりの安定な非妨害性の化合物である。好ましい実施形態において、このタンパク質又はポリペプチドは、(a)〜(c)から選択される単一の成分であり、ポリマーは、(a)〜(d)から選択される異なる成分であり、(a)〜(d)の残りの成分は、安定な非妨害性の化合物である。
【0011】
これら残りの成分は、例えば、標的化部分、標識部分及び良性の(即ち、安定な非妨害性の)「プレースホルダー(placeholder)」基から選択してもよい。好ましくは、これら残りの成分は、本明細書中で規定されるとおりの低分子量成分である。このような低分子量化合物には、好ましくは、基R、R、R又はR(Rによって示され得る)が、1〜12個、好ましくは1〜8個の炭素原子並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される0〜4個のヘテロ原子を有する安定な有機部分であるものが含まれる。基R、R又はRは、水素であってもよい。
【0012】
好ましくは、Rは、水素でもメチルでもない場合、アルキル、アルケニル、エーテル、ヒドロキシル、カルボン酸エステル、ケトン及びアミドから選択される連結を含む。非限定的な例には、低級アルキル基、シクロアルキル基、低級ヒドロキシアルキル基、低級アルキルエステル及び低級アルキルアミドが含まれる。
【0013】
選択された実施形態において、このタンパク質又はポリペプチドは、(b)R−NH及び(c)R−C(O)OHから選択される。さらなる選択された実施形態において、この水溶性ポリマーは、(a)R−C(O)R’、(b)R−NH及び(d)R−NCから、或いは(a)R−C(O)R’、(b)R−NH及び(c)R−COOHから選択される。なおさらなる実施形態において、このポリマーは、(a)R−C(O)R’及び(b)R−NHから選択される。上記実施形態において、R’は好ましくはHである。別の好ましい実施形態において、成分(d)R−NCは水溶性ポリマーである。
【0014】
この水溶性ポリマーは、好ましくは官能化ポリアルキレンオキシド(PAO)(例えば、ポリプロピレンオキシド(PPO)、或いは好ましい実施形態では、ポリエチレングリコール(PEG))である。このような官能化ポリアルキレンオキシド分子は、(このポリマーがそれぞれ、R−C(O)R’、R−NH、R−COOH又はR−NCのいずれであるかに依存して、)利用可能なカルボニル官能基、アミン官能基、カルボキシル官能基又はイソニトリル官能基を有する。
【0015】
本明細書中に記載されるコンジュゲート化方法での使用に適したイソニトリル官能基を有するPEG分子又はPPO分子は、それ自体が本発明の別の態様を形成する。このような分子は典型的に、構造RCAP(OCHR”CH−X−N≡Cを有し、式中R”はH又はメチルであり、RCAPは安定な末端キャッピング基であり、Xは直接結合又は安定な連結部分を示し、nは10と約2300との間の整数であり、その結果、例えば、部分−(OCHCH−は、R”がHのとき、約440ダルトンと約100,000ダルトンとの間の分子量を有する。部分−(OCHCH−についての例示的な分子量には、例えば、2000ダルトン、5000ダルトン、10,000ダルトン、20,000ダルトン及び40,000ダルトンが含まれる。
【0016】
選択された実施形態において、RCAPは、アシル、アリール又はアルキル(例えばメチル)である。リンカーXは、好ましくは、アルキル、アリール、シクロアルキル、エーテル、アミド及びそれらの組み合わせから選択される連結からなる。より好ましくは、Xは、アルキル、シクロアルキル、アリール、並びにアルキル及びアリール又はアルキル及びシクロアルキルの組み合わせから選択される連結からなる。このリンカーは、好ましくは約12原子長までである。
【0017】
一実施形態において、成分(a)〜(d)の各々は単一の化合物である。コンジュゲートのコンビナトリアル合成において有用な他の実施形態において、成分(a)〜(d)のうち少なくとも1つは、複数の化合物を含む。
【0018】
好ましくは、タンパク質又はポリペプチドの水溶性ポリマーとのコンジュゲートは、ヒト被検体を含む被検体にin vivoで投与したときに、コンジュゲート化していないタンパク質又はポリペプチドと比較して、低下した免疫原性及び/又は循環中での増大した半減期を有する。
【0019】
コンジュゲート化反応は、上記成分の種々の異なる組み合わせを含んでもよい。例には、水溶性ポリマー成分がPEGで例示される以下の反応のサブセットが含まれる。しかし、他の水溶性ポリマー(例えばPPO)を、これらの反応のいずれかで使用してもよい。
【0020】
反応の第1のサブセットにおいて、(c)はタンパク質であり、(a)、(b)及び(d)のうち1つはPEG試薬であり、残りの成分は安定な非妨害性の化合物である。これらの反応において、(d)がPEG−イソニトリル試薬であるか又は(a)がPEG−カルボニル試薬である場合、成分(b)は好ましくは低分子量アミンであり、これは過剰に供給してもよい。(b)がPEG−アミン試薬である場合、この試薬は好ましくは低pKaのアミン(例えば、PEGオキシアミン、PEGヒドラジド、PEGカルバジド又はPEG芳香族アミン)である。
【0021】
タンパク質分子上の単一の結合部位に2つのポリマー鎖をコンジュゲート化するのに有用な反応の関連するサブセットにおいて、(c)はタンパク質であり、(a)、(b)及び(d)のうち2つはPEG試薬であり、残りの成分は安定な非妨害性の化合物である。
【0022】
反応の第2のサブセットにおいて、(a)はアルデヒド基又はケトン基を含むように修飾されたタンパク質であり、(b)、(c)及び(d)のうち1つはPEG試薬であり、残りの成分は安定な非妨害性の化合物である。これらの反応において、(b)がPEG−アミン試薬である場合、この試薬は好ましくは低pKaのアミン(例えば、PEGヒドラジド、PEGカルバジド又はPEG芳香族アミン)であり、(c)は好ましくは過剰に提供された低分子量カルボン酸(例えば、緩衝剤成分又は添加剤としてのアセテート)である。(c)がPEG−カルボキシル試薬である場合、(b)は好ましくは過剰に提供された低分子量アミンである。
【0023】
タンパク質分子上の単一の部位に2つのポリマー鎖をコンジュゲート化するのに有用な反応の関連するサブセットにおいて、(a)は反応性カルボニル(例えばアルデヒド基)を含むように修飾されたタンパク質であり、(b)、(c)及び(d)のうち2つはPEG試薬であり、残りの成分は安定な非妨害性の化合物である。この場合、(b)がPEG−アミン試薬であり、(d)がPEG−イソニトリル試薬である場合には、PEG−アミン試薬であるアミン試薬は好ましくは低pKaのアミン(例えば、PEGヒドラジド、PEGカルバジド又はPEG芳香族アミン)であり、(c)は好ましくは過剰に提供された低分子量カルボン酸(例えばアセテート)である。
【0024】
反応の第3のサブセットにおいて、(b)はタンパク質であり、(a)、(c)及び(d)のうち1つはPEG試薬であり、(a)、(c)及び(d)のうちの残り2つは安定な非妨害性の化合物である。これらの反応において、(d)がPEG−イソニトリル試薬である場合、(c)は好ましくは過剰に提供された低分子量カルボン酸である。
【0025】
タンパク質分子に2つのポリマー鎖をコンジュゲート化するのに有用な反応の関連するサブセットにおいて、(b)はタンパク質であり、(a)、(c)及び(d)のうち2つはPEG試薬であり、残りの成分は安定な非妨害性の化合物である。これらの反応において、(a)がPEG−カルボニル試薬であり(d)がPEG−イソニトリル試薬である場合、(c)は好ましくは過剰に提供された低分子量カルボン酸である。
【0026】
別の態様において、本発明は医薬組成物を調製する方法を提供し、この組成物は、医薬的ビヒクル中に生物学的に活性な分子又は適切な分子の生体適合性ポリマー(好ましくは水溶性ポリマー)とのコンジュゲートを含み、この方法は、
(i)以下の成分(a)〜(d):
(a)R−C(O)R’、式中R’はH又は低級アルキルであり、好ましくはH又はMeであり、最も好ましくはHである、
(b)R−NH
(c)R−C(O)OH、及び
(d)R−NC
を反応させて、R、R、R及びRによって示される各部分のうち少なくとも1つを組み込むコンジュゲート化生成物を形成するステップを含む。(一実施形態において、上述のように、このコンジュゲートは、R、R、R及びRによって示される各部分のうち正確に1つを組み込む、形態RNH−C(O)−CRR’−NR−C(O)Rのものである。例えば成分(a)〜(d)のうち1つが示される反応性官能基のうち1つより多くを有する他の実施形態(例えば、複数のアミノ基を有する成分R−NH又は複数のカルボン酸基を有する成分R−C(O)OH)において、このコンジュゲート生成物は、他の成分の複数の残基にコンジュゲート化された当該成分を含んでもよい。例えば、以下の実施例16のヒアルロン酸コンジュゲートを参照のこと。
【0027】
成分(a)〜(d)のうち少なくとも1つは生物学的に活性な分子又は適切な分子であり、成分(a)〜(d)のうち少なくとも1つは生体適合性の、好ましくは水溶性のポリマーであり、(ii)上記コンジュゲート又はその医薬的に許容可能な塩を、医薬的ビヒクル(好ましくは水性ビヒクル)中で製剤化する。形成されるコンジュゲートは好ましくは、室温及び生理的pHで水溶性である。
【0028】
コンジュゲートRNH−C(O)−CRR’−NR−C(O)Rの形成において、この生物学的に活性な分子は、上記(a)〜(d)から選択される、好ましくは(a)〜(c)から選択される少なくとも1つの成分によって示され、このポリマーは、上記(a)〜(d)から選択される少なくとも1つの異なる成分によって示され、(a)〜(d)の任意の残りの成分は、標識部分、標的化部分及び他の安定な非妨害性の化合物から選択される。好ましい実施形態において、この分子は(a)〜(c)から選択される1つの成分であり、このポリマーは(a)〜(d)から選択される異なる成分であり、(a)〜(d)の残りの成分は、標識部分、標的化部分及び他の安定な非妨害性の化合物から選択される。典型的には、これら残りの成分は、本明細書中で規定されるとおりの低分子量化合物である。
【0029】
好ましい実施形態において、この生物学的に活性な分子は、(a)R−C(O)R’、(b)R−NH及び(c)R−C(O)OHから、より好ましくは(b)R−NH及び(c)R−C(O)OHから選択される。選択された実施形態において、この分子はタンパク質又はポリペプチドである。
【0030】
さらなる選択された実施形態において、このポリマーは、(a)R−C(O)R’、(b)R−NH及び(d)R−NC、又は(a)R−C(O)R’、(b)R−NH及び(c)R−COOHから選択される。なおさらなる実施形態において、このポリマーは、(a)R−C(O)R’及び(b)R−NHから選択される。このポリマーは、好ましくは官能化ポリアルキレンオキシド(PAO)(例えば、ポリプロピレンオキシド(PPO)、又は好ましくはポリエチレングリコール(PEG)(例えば、利用可能なカルボニル官能基、アミン官能基又はイソニトリル官能基を有するPEG分子))である。特定の一実施形態において、このポリマーは本明細書中で開示したとおりのPEGイソニトリルである。
【0031】
ステップ(i)のコンジュゲート化反応は、上記反応の第1〜第3及び関連のサブセットを含む、上述の成分の種々の異なる組み合わせを含んでもよい。これらの反応におけるタンパク質は、別の生物学的に活性な分子(例えば、多糖、ポリヌクレオチド又は低分子薬物化合物)で置換してもよい。
【0032】
好ましくは、生物学的に活性な分子のポリマーとのコンジュゲートは、ヒト被検体を含む被検体にin vivoで投与したときに、コンジュゲート化していない生物学的に活性な分子と比較して、低下した免疫原性、低下した分解及び/又は循環中での増大した半減期を有する。
【0033】
さらなる態様において、本発明は、形態
NH−C(O)−CRR’−NR−C(O)R
の水溶性コンジュゲートを提供し、式中、
、R及びRのうち少なくとも1つがタンパク質又はポリペプチドであり、
、R、R及びRのうち少なくとも1つ、好ましくはRがポリアルキレンオキシド、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)であり、
、R、R及びRの残りのメンバーが、標識部分、標的化部分及びRから独立して選択され、Rは、1〜12個、好ましくは1〜8個の炭素原子並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される0〜4個のヘテロ原子を有する安定な有機部分である。RがR、R又はRの一実施形態である場合、Rは水素であってもよい。R’は好ましくはH又は低級アルキル(例えばCH)であり、より好ましくはHである。
【0034】
好ましくは、Rは、水素でもメチルでもない場合には、アルキル、アルケニル、エーテル、ヒドロキシル、カルボン酸エステル、ケトン及びアミドから選択される連結を含む。例には、低級アルキル基、シクロアルキル基、低級ヒドロキシアルキル基、低級アルキルエステル及び低級アルキルアミドが含まれる。
【0035】
このコンジュゲートは好ましくは、室温及び生理的pHで水溶性である。
【0036】
水溶性コンジュゲートRNH−C(O)−CRR’−NR−C(O)Rにおいて、タンパク質又はポリペプチドを示す部分R又はRは、上述のように、この分子R又はRが示された官能基の複数の存在を含む場合(例えば、複数のアミノ基を有するポリペプチドR−NH又は複数のカルボン酸基を有するポリペプチドR−C(O)OH)、他の成分のさらなる残基に連結されていてもよい。一実施形態において、これらの部分は、残りの成分のさらなる残基には連結されない。即ち、このコンジュゲートは、各残基R、R、R及びRのうち正確に1つを含む。このようなさらなる残基の存在又は不在は、反応条件、例えば存在する成分のモル比によって制御可能である。
【0037】
本発明は、上記条項の範囲内に、種々の組み合わせの上述の成分を有するコンジュゲートを含む。典型的には、このコンジュゲートは、1つ又は2つのPAO分子、好ましくはPEG分子にコンジュゲート化された単一のタンパク質分子又はポリペプチド分子を含む。このような組み合わせには、
はタンパク質であり、RはPEGであり、R及びRは標識部分、標的化部分及びRから独立して選択され、
はタンパク質であり、RはPEGであり、R及びRは標識部分、標的化部分及びRから独立して選択され、
はタンパク質であり、RはPEGであり、R及びRは標識部分、標的化部分及びRから独立して選択され、
はタンパク質であり、R及びRの各々はPEGであり、Rは標識部分、標的化部分又はRであり、
はタンパク質であり、R及びRの各々はPEGであり、Rは標識部分、標的化部分又はRであり、
はタンパク質であり、RはPEGであり、R及びRは標識部分、標的化部分及びRから独立して選択され、
はタンパク質であり、RはPEGであり、RはPEGであり、Rは標識部分、標的化部分又はRであり、
はタンパク質であり、RはPEGであり、R及びRは標識部分、標的化部分及びRから独立して選択され、
はタンパク質であり、RはPEGであり、R及びRは標識部分、標的化部分及びRから独立して選択され、
はタンパク質であり、RはPEGであり、RはPEGであり、Rは標識部分、標的化部分又はRであり、
はタンパク質であり、RはPEGであり、R及びRは標識部分、標的化部分及びRから独立して選択され、或いは
はタンパク質であり、RはPEGであり、RはPEGであり、Rは標識部分、標的化部分又はRである、コンジュゲートが含まれる。
【0038】
上記組み合わせの選択された実施形態において、非タンパク質の非PAO成分は、Rの実施形態である。他の実施形態において、1つのこのような非タンパク質の非PAO成分は、標識部分又は標的化部分である。
【0039】
本発明のこれら及び他の目的及び特徴は、添付の図面と組み合わせて以下の発明の詳細な説明を読めば、より完全に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
I.定義
「ポリペプチド」は、本明細書中で使用する場合、特定の長さに限定されないアミノ酸のポリマーである。従って、例えば、用語ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質及び酵素は、ポリペプチドの定義内に含まれる。この用語は、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などのポリペプチドの発現後修飾をも含む。
【0041】
用語「ポリマー」は、本明細書中で使用する場合、生物学的に活性な分子(これ自体ポリマー性であっても)にコンジュゲート化される、親水性の、好ましくはPEGのような水溶性のポリマーをいうことを意図する。
【0042】
「PEG」とは、反復単位(CHCHO)を有するポリマーであるポリエチレングリコールをいい、ここでnは好ましくは約10〜約2300であり、これは約440ダルトン〜約100,000ダルトンの分子量に対応する。これらのポリマーは、実質的に分子量範囲全体にわたって水溶性である。ポリペプチドへのコンジュゲート化について、PEG分子量の好ましい範囲は、約2,000〜約50,000ダルトン、より好ましくは約2,000〜約40,000ダルトンである。PEGは、本明細書中に記載されるコンジュゲート化反応を妨害しない任意の基で末端キャップされていてもよい(例えば、適切な保護部分でブロックされたヒドロキシル、エステル、アミド、チオエーテル、アルコキシ又は種々の反応性基)。一般的な末端キャップされたPEGは、メトキシPEG(mPEG)である。PEGホモポリマーが好ましいが、この用語は、PEGの別のモノマーとのコポリマーを含むこともある。これは、例えば、プロピレングリコールのような別のエーテル形成モノマーであり得よう。
【0043】
「生物学的に活性な」分子とは、生物学的活性を有することが公知の分子及び/又は治療用途若しくは診断用途が意図された分子をいい、特に、治療活性を有すると予測される分子をいう。このような分子は「生物学的に適切な」ということもある。
【0044】
本明細書中に記載されるコンジュゲート化反応の反応成分に関して「安定な」及び/又は「非妨害性の」とは、反応成分が、コンジュゲート化反応におけるその意図された役割を果たす以外には、コンジュゲート化の条件下でいずれの化学反応も受けず、得られたコンジュゲート上に安定な生物学的に良性の置換基を提供することを意味する。
【0045】
本明細書中で使用する場合、典型的には非妨害性の反応成分に関して、「低分子量」とは一般に、約500ダルトン以下、好ましくは350ダルトン以下、より好ましくは200ダルトン以下を意味する。
【0046】
4成分縮合反応の成分に関して、「カルボニル」成分とは、本明細書中で使用する場合、アルデヒド又はケトンをいう。この成分はR−C(O)R’で示され得、式中、R’はH又は低級アルキルであり、好ましくはH又はメチルであり、より好ましくはHであり(即ち、このときこのカルボニル成分はアルデヒドである)、かつRは、本明細書中で規定されるとおりの、生物学的に活性な分子(例えば、タンパク質又はポリペプチド)、水溶性ポリマー又は安定な非妨害性の化合物の残基である。
【0047】
「アルキル」とは、炭素及び水素を含む完全に飽和した非環状の一価の基をいい、直鎖でも分枝鎖でもよい。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘプチル及びイソプロピルである。「シクロアルキル」とは、好ましくは3〜7個、より好ましくは5個又は6個の環炭素原子を有する、炭素及び水素を含む完全に飽和した環状の一価の基をいい、アルキルでさらに置換されていてもよい。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、メチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、エチルシクロペンチル及びシクロヘキシルが含まれる。
【0048】
「低級アルキル」とは、1〜6個の炭素原子のアルキル基をいい、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、イソアミル、n−ペンチル及びイソペンチルで例示される。選択された実施形態において、「低級アルキル」基は、1〜4個の炭素原子を有する。
【0049】
「アシル」とは、カルボニル基(即ちR−(C=O)−)に連結されたアルキル基(低級アルキル基であってもよい)をいう。
【0050】
「ヒドロカルビル」は、炭素及び水素からなる基(即ち、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル及び非複素環式アリール)を包含する。
【0051】
「アリール」とは、単環(例えばフェニル)、2つの縮合した環(例えばナフチル)又は3つの縮合した環(例えば、アントラシル又はフェナントリル)を有する、置換又は非置換の一価の芳香族基をいう。一般的には単環式基が好ましい。この用語は一般にヘテロアリール基を含み、これは、環中に1つ以上の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する芳香族環基(例えば、フリル、ピロール、ピリジル及びインドール)である。「置換」とは、アリール基中の1つ以上の環水素が、ハライド(例えば、フッ素、塩素又は臭素);1個又は2個の炭素原子を含む低級アルキル基;或いはニトロ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、メトキシ、ハロメトキシ、ハロメチル又はハロエチルで置換されていることを意味する。存在する場合、好ましい置換基には、フッ素、塩素、メチル、エチル及びメトキシが含まれる。
【0052】
用語「医薬的に許容可能な塩」は、例えば、有機又は無機の対イオン(例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、バリウム又はカルシウム);アンモニウム;或いは有機カチオン(例えば、ジベンジルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、フェニルエチルベンジルアンモニウム)など)を有するカルボン酸塩を包含する。他のカチオンには、塩基性アミノ酸(例えば、グリシン、オルニチン、ヒスチジン、フェニルグリシン、リシン及びアルギニン)のプロトン化形態が含まれる。
【0053】
この用語はまた、有機酸又は無機酸から誘導される対イオンを有する、アミンのような塩基性基の塩を含む。このような対イオンには、クロライド、サルフェート、ホスフェート、アセテート、サクシネート、シトレート、ラクテート、マレアート、フマレート、パルミテート、コレート、グルタメート、グルタレート、タータレート、ステアラート、サリチレート、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ソルベート、ピクラート、ベンゾアート、シンナマートなどが含まれる。
【0054】
「医薬的に許容可能な担体」は、ヒト被検体を含む被検体にコンジュゲートを医薬製剤として投与するのに適切な担体である。この担体は、典型的には、水性の生理食塩水、デキストロース、グリセロール又はエタノールのような水性ビヒクルである。緩衝剤、安定剤などのような不活性成分を、この製剤中に含めてもよい。本明細書中で使用する場合、「水性ビヒクル」は、その主要成分として水を含むが、上記のような溶質を含んでもよい。アルコール又はグリセロールのような共溶媒が存在してもよい。
【0055】
使用され得る固体製剤は、典型的には、不活性賦形剤(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース又はセルロースエーテル、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムなど)を含む。このコンジュゲートはまた、当該分野で公知の方法に従って、脂質若しくはリン脂質中、リポソーム製剤中、又は経皮若しくは吸入製剤中の、懸濁物として製剤化してもよい。
【0056】
II.高分子コンジュゲート
本発明の特定の態様によれば、少なくとも1つの水溶性ポリマーにコンジュゲート化された少なくとも1つの生物学的に活性な分子を含む高分子コンジュゲート及びその調製方法が提供される。
【0057】
これらのコンジュゲートは、図1(図中にはアルデヒド成分が示されている)に示されるように、カルボン酸成分、アミン成分、イソニトリル成分及びアルデヒド成分若しくはケトン成分を使用する4成分縮合(4CC)スキームを介して調製される。4成分反応の機構は、Ugi et al.(Ugi et al.,1959)によって最初に記載され、最近再検討された(Domling and Ugi,2000)。
【0058】
本発明によれば、上述の4成分は、カルボン酸成分、アミン成分及び反応性カルボニル(例えばアルデヒド)成分から選択される少なくとも1つの成分が、生物学的に活性な分子又は高分子(好ましくはポリペプチド)上に存在し、カルボン酸成分、アミン成分、イソニトリル成分及びカルボニル成分から選択される少なくとも1つの異なる成分が親水性ポリマー(好ましくはPEGのようなポリエーテル)上に存在するように、選択される。この親水性ポリマーは好ましくは、水性媒体中で可溶性であり、従って好ましくは架橋されていない。
【0059】
生物学的に活性な分子であることも親水性ポリマーであることも意図されない任意の残りの成分は、典型的に、安定な、安定な非妨害性の、好ましくは低分子量化合物として提供される。例えば、ギ酸又は酢酸をカルボン酸成分として使用してもよく、或いはtert−ブチルイソニトリル又はシクロヘキシルイソニトリルをイソニトリル成分として使用してもよい。これらの成分は、コンジュゲート生成物の連結部分上に、本質的に不活性な置換基(例えば、メチル基又は他のアルキル基)を形成し得る。
【0060】
これら残りの成分はまた、コンジュゲートに標識部分又は標的化部分を供給してもよい。例えば、ビオチン、クマリン−4−酢酸、7−アミノクマリン、Lucifer Yellow CH、葉酸及びキレート剤(例えばDTPA)が、このような目的のために潜在的に利用可能である。
【0061】
好ましくは、残りの成分の分子量は、コンジュゲートの形成を立体的に妨害しないような分子量である。好ましい分子量範囲は、500ダルトン未満、より好ましくは350ダルトン未満、最も好ましくは200ダルトン未満である。
【0062】
これらの成分は、反応して、R、R、R及びRによって示される各部分のうち少なくとも1つを組み込むコンジュゲートを形成する。一実施形態において、上述のように、このコンジュゲートは形態:
【化1】


のものであり、式中、Rはイソニトリル成分由来であり、Rは反応性カルボニル(例えばアルデヒド、このときR’=H)成分由来であり、Rはアミン成分由来であり、Rはカルボン酸成分由来である。この反応について一般に受容された機構が図1中に示される。
【0063】
例えば成分(a)〜(d)のうちの1つが示される反応性官能基を1つより多く有する他の実施形態(例えば、複数のアミノ基を有する成分R−NH又は複数のカルボン酸基を有する成分R−C(O)OH)において、コンジュゲート生成物は、他の成分の複数の残基にコンジュゲート化された当該成分を含んでもよい。例えば、以下の実施例16のヒアルロン酸コンジュゲートを参照のこと。このようなさらなる残基の存在、不在及び/又は数は、存在する成分のモル比のような反応条件によって制御可能である。
【0064】
この反応は、「ワンポット」反応として実施できる。コンジュゲート化の効率は、アミン成分及びカルボニル成分を最初に縮合させることによって図1中に示される第1の中間体を生成し、引き続いてこの中間体を残りの成分と反応させることによって改善され得る場合がある(以下の実施例7及び16を参照のこと)。
【0065】
A.生物学的に活性な分子
生物学的に活性な剤は、典型的には治療剤又は診断剤である。生物学的に活性な剤には、ポリマー性又はオリゴマー性の生体分子(例えば、タンパク質、多糖又は核酸)、或いは低分子化合物から選択される薬物物質が含まれる。「低分子」化合物は、ポリマーでもオリゴマーでもない有機化合物、無機化合物又は有機金属化合物として広く定義され得る。典型的に、このような化合物は、1000ダルトン以下、又は一実施形態では500ダルトン以下の分子量を有する。
【0066】
生物学的に活性な分子は、本明細書中に記載される反応では、しばしばアミン成分又はカルボン酸成分である。このような官能基は、ポリペプチド又は種々の低分子薬物物質のような生物学的に活性な分子中に一般に存在する。
【0067】
上述のように、生物学的に活性な分子が示された官能基の複数の存在を含む場合(例えば、複数のアミノ基を有するポリペプチドR−NH又は複数のカルボン酸基を有するポリペプチドR−C(O)OH)、コンジュゲート中のこの分子の残基は、残りの成分のさらなる残基に連結され得る。例えば、以下の実施例16のヒアルロン酸コンジュゲートを参照のこと。このようなさらなる残基の存在又は不在は、存在する成分のモル比のような反応条件によって制御可能である。
【0068】
異なる成分の官能基のうち1つより多くが生物学的に活性な分子中に存在する場合、反応条件は、好ましくは、他の反応よりも1つの反応に有利なように選択される。例えば、分子(例えばタンパク質)中のカルボン酸基よりもアミン基の反応を促進するために、この反応は、アセテートが、反応のカルボキシル成分として作用することにおいて分子上のカルボキシレート基と有効に競合するように、高いpH(例えば、7〜8.5)及び/又は高濃度のアセテート緩衝液の存在下で実施できる。或いは、分子中のアミンよりもカルボン酸の反応を促進するために、この反応は低いpHで実施できる。例えば、pH4〜6で、ポリペプチド中のアミンは大部分がプロトン化される。タンパク質アミノ基の反応性をさらに抑制するために、反応混合物は、低分子量の、好ましくは低pKaのアミン(例えば、ヒドラジド又は芳香族アミン)又はアミン含有緩衝剤(例えば、TRIS又はグリシンアミド)を過剰に含むこともできる。
【0069】
好ましい実施形態において、生物学的に活性な分子(例えば、ポリペプチド又は糖ペプチド)は、反応物中のカルボニル(例えばアルデヒド)成分である。アルデヒドは、アミン又はカルボン酸と比較すると生物学的に活性な分子(例えばポリペプチド)中にはあまり一般的に存在しないが、このような分子中に反応性カルボニルを合成により組み込むための種々の方法が存在する。例えば、Rodrigues et al.(J.Org.Chem.63:9614,1998)及びMarcaurelle et al.(Org.Lett.3:3691−94,2001)は、ペプチド中に組み込むことができるケトアミノ酸の合成を記載している。糖タンパク質上の1,2−cisジオール部分又は1,2−アミノアルコール部分の過ヨウ素酸酸化は、これらの化合物中にアルデヒド基を生成するための周知の方法である(例えば、Wilchek,1987;O’Shannessy,1987;Morehead,1991を参照のこと)。ガラクトピラノシド残基又はN−アセチルガラクトピラノシド残基上の6位のガラクトースオキシダーゼ媒介性の酸化は、糖タンパク質上にアルデヒド基を生成するための別の公知の方法である(Wilchek,1987)。セリン又はチロシンを含有するペプチド上でのアルデヒド官能基の導入は、これらのアミノ酸残基のヒドロキシル基の、それぞれ反応性のアルデヒド基及びケトン基への、DMSO/カルボジイミド媒介性の酸化によって達成できる(Di Bello et al.1972)。アルデヒドはまた、適切なヘテロ二官能性試薬(例えば、King et al.(1996)が記載したような4−ホルミル安息香酸NHSエステル)とポリペプチド上のアミンとの反応を介して、ポリペプチド中に組み込むこともできる。ペプチド又はアミノサッカライドのアミノ基は、例えばYarema et al.(1998)の方法によって、N−レブリノイル残基へと変換できる。
【0070】
糖タンパク質の過ヨウ素酸酸化(O’Shannessy et al.;Wilchek et al.)のような上記方法の多くは、ポリペプチド上の反応性カルボニルの部位特異的な生成を提供することによって、本発明の方法に従うポリマーの部位選択的なコンジュゲート化を可能にする。他の経路には、N末端にセリン又はスレオニンを含むペプチドの過ヨウ素酸媒介性の酸化が含まれ、これは、N末端のセリン又はスレオニンを反応性のN−グリオキサリル残基に変換する(Dixon,1987;Geoghegan et al,1992)。ペプチドのN末端アミノ基転移は、部位特異的様式で反応性カルボニル基を生成するための別の一般的な方法である(Dixon,1984で検討)。
【0071】
この様式で生成された反応性カルボニルは、生体分子の種々のヒドラジド化合物及びオキシアミン化合物とのコンジュゲート化に以前から使用されており、それぞれヒドラゾン及びオキシムが連結したバイオコンジュゲートを形成する(Gaerthner et al,1992;Zalipsky et al,1995c;Zalipsky and Menon−Rudolph,1997;Wei et al.,米国特許第6,077,939号)。しかし、これらの連結は、特に競合するヒドロキシルアミン誘導体又はヒドラジン誘導体の存在下では、酸性pHで不安定である。本明細書中に開示された方法に従って調製されたバイオコンジュゲートは、かなり高い安定性を提供する。
【0072】
B.ポリマー
生物学的に活性な分子にコンジュゲート化すべきポリマーは、アミン、カルボン酸、アルデヒド若しくはケトン、又はイソニトリルから選択される反応性の基を含むか含むように修飾できる任意の生体適合性ポリマーであり得る。好ましくは、このポリマーは非免疫原性の親水性ポリマーである。このポリマーは好ましくは水溶性であり、従って、このポリマーは架橋されているべきではない。好ましくは、このポリマーは室温及び生理的pHで水中で可溶性である。例示的な親水性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチル−アクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリアスパルトアミド及び上記列挙したポリマーのコポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドコポリマー)が含まれる。これらのポリマーの多くの特性及び反応は、米国特許第5,395,619号及び同第5,631,018号に記載されている。好ましい実施形態において、このポリマーは、PPO又はPEGのようなポリ(アルキレンオキシド)であり、より好ましくはPEG(ポリエチレングリコール)ポリマーである(用語ポリアルキレン「オキシド」及びポリアルキレン「グリコール」は等価であることに留意されたい)。
【0073】
アミン、イソニトリル、カルボキシル基、又はカルボニルを含むPEGポリマーの調製方法は、以下の実施例1〜4に記載される。Zalipsky(1995b)及びZalipsky & Harris(1997)も参照のこと。上記列挙したような親水性ポリマーの他のタイプは、ヒドロキシル含有ポリマーについて実施例1〜4の手順の修飾を使用して、或いは当業者に利用可能な合成手順に従って、同様に官能化できる。
【0074】
PEG−イソニトリル誘導体及びPPO−イソニトリル誘導体は、本発明以前には知られていなかった。このような誘導体において、PEG分子量の好ましい範囲は約2,000〜約50,000ダルトン、より好ましくは約2,000〜約40,000ダルトンである。PEGは、イソニトリルと反応しないか本明細書中に記載されるコンジュゲート化反応を妨害しない任意の安定な末端キャッピング基で、非イソニトリル末端にて末端キャップしてもよい(例えば、適切な保護部分でブロックされたエステル、アミド、チオエーテル、ヒドロキシル、アルコキシ又は種々の反応性基)。一般的な末端キャップされたPEGはメトキシPEG(mPEG)である。PEGホモポリマーが好ましいが、この用語はPEGの別のモノマーとのコポリマーを含むこともある。これは、例えば、プロピレングリコールのような別のエーテル形成モノマーであり得よう。
【0075】
本明細書中に提供されるようなPAO−イソニトリル化合物は、典型的には構造RCAP(OCHR”CH−X−N≡Cを有し、式中、RCAPは安定な末端キャッピング基であり、R”はH又はメチル、好ましくはHであり、Xは直接結合又は安定な連結部分を示し、nは10と約2300との間の整数であり、その結果、部分−(OCHCH−は、R”がHのとき、約440ダルトンと約100,000ダルトンとの間の分子量を有する。選択された実施形態において、RCAPはアシル、アリール又はアルキル(例えばメチル)である。
【0076】
リンカーXは、直接結合でない場合、好ましくは、直鎖又は分枝鎖アルキル、アリール、シクロアルキル、エーテル、アミド及びそれらの組み合わせから選択される連結からなる。より好ましくは、Xは、低級アルキル、シクロアルキル、アリール、並びに低級アルキル及びアリール又は低級アルキル及びシクロアルキルの組み合わせから選択される連結からなる。アリールは好ましくは単環(例えばフェニル)であり、シクロアルキルは好ましくはシクロペンチル又はシクロヘキシルである。このリンカーは、好ましくは約12原子長までであり、より好ましくは約8原子長までである。例示的なリンカーには、シクロヘキシル及び低級アルキル(例えば−(CH−(式中、nは1〜4である))が含まれる。
【0077】
PEG−イソニトリルの例示的な調製方法は、以下の実施例1に提供される。この方法は、ホルムアミド中間体(これは順に、PEGアミンのギ酸エチルとの反応によって調製される)の脱水を使用する。この経路は、安定なリンカー(例えば、アルキルリンカー又はシクロアルキルリンカー)を含むPEGイソニトリルの調製に適合させることができよう。
【0078】
ポリマー性アミン成分をポリペプチドへのコンジュゲート化に使用すべき場合、このポリマー上のアミン官能基は、ポリペプチド上のアミノ基より低いpKaを有することが好ましい。この様式において、上記のように、ポリペプチドとのコンジュゲート化は、ポリペプチド上のアミノ基(主に、約10のpKaを有するリシン側鎖)がプロトン化され、従って非反応性であるが、塩基性の低いポリマー性アミンはプロトン化されず、従って反応性である4〜7のpHで実施できる。約3のpKaを有するPEGカルバジド若しくはPEGヒドラジド、又は典型的には約4のpKaを有する芳香族アミンにコンジュゲート化したPEGが、この目的に適した試薬である。
【0079】
本明細書中に記載されるコンジュゲート化反応の一実施形態において、2つの反応性成分が官能化ポリマー性試薬として提供され、例えば、ポリペプチド又は多糖は、そのカルボキシル基を介して、PEG−アミン成分とPEG−カルボニル成分との間の反応によって形成された、予め形成されたC=N連結されたジ−PEG付加体と反応し得よう(例えば、以下の表1の項目4、実施例7)。或いは、PEG−イソニトリル及びPEG−カルボニル(例えば、以下の表1の項目10)は、2つのPEG鎖の単一部位での結合を達成するために使用できよう。従って、本反応は、1つのアミノ酸残基又は糖残基に連結された2つの結合したPEG鎖を有するポリペプチドコンジュゲートを提供できる(表1の項目4、5、7及び10)。多腕(multiarm)のPEG試薬及び代替的な化学で調製されたそれらのコンジュゲートの利点について、以前に記載されたものもある(Monfardini et al.,1995;米国特許第5,932,462号)。
【0080】
C.他の反応成分
一般に、コンジュゲート化反応は、4つの必要な官能基のうち1つを含む親水性ポリマーと、4つの必要な官能基のうち別のものを含む生物学的に活性な分子とを使用する。各々が4つの必要な官能基のうち異なる1つを含む2つ又は3つの異なるポリマー(又は生物学的に活性な分子)を選択することによって、2つ又は3つさえもの親水性ポリマー(又は分子)を含むコンジュゲートを生成することも可能であり得る。
【0081】
残りの成分(存在する場合、一般に1つ又は2つ)は、安定な非妨害性の、好ましくは低分子量の化合物として提供される。「安定な」とは、成分が、コンジュゲート化反応におけるその意図された役割を果たす以外には、コンジュゲート化の条件下でいずれの化学反応も受けず、得られたコンジュゲート上に安定な生物学的に良性の置換基を提供することを意味する。「低分子量」とは、約500ダルトン以下、好ましくは350ダルトン以下、より好ましくは200ダルトン以下を意味する。例は、1〜12個の炭素原子及び約4個までのヘテロ原子を有する化合物である。これらの添加物中のR、R、R及び/又はR(集合的にRと呼ぶ)の性質は、Rが、所望のコンジュゲート化反応、又は得られたコンジュゲートの活性若しくは保存安定性を有害に妨害しないかぎり、重要ではない。
【0082】
は、標的化部分又は標識部分を提供し得る。例には、フルオロフォア(例えば、クマリン、フルオレセイン)及び標的化部分若しくは結合部分(例えば、ビオチン、フォレート又はピリドキサール)が含まれる。他の標的化部分には、本明細書中に参考により組み込まれる共有に係る米国特許第6,660,525号中に記載されたものが含まれる。
【0083】
或いは、Rは、非活性の生物学的に良性の「プレースホルダー」基であり、これはRによって示され得る。好ましくは、Rは1〜12個の炭素原子を有し、約4個までのヘテロ原子を含んでもよい。より好ましくは、Rは1〜8個又は1〜6個の炭素原子を有する。RがR、R又はRの一実施形態である場合、Rは水素でもよい。R内の任意の官能基は、コンジュゲート化反応の条件下で安定であるべきである(標識部分又は標的化部分のなかには、本明細書中で規定されるとおりのRの定義内に入り得るものもあることが理解される)。
【0084】
Rは、上記定義のようなアリール基を含んでもよい。好ましくは、Rは非芳香族であり、水素でもメチルでもない場合、アルキル、アルケニル、エーテル、ヒドロキシル、カルボン酸エステル及びアミドから選択される連結を含む。Rの例には、低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル又はtert−ブチル)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル)、低級ヒドロキシアルキル基、低級アルキルエステル、低級アルキルケトン及び低級アルキルアミドが含まれる。溶媒又は緩衝液として一般に使用される化合物が使用され得る。このような成分の特定の例には、R−NHとしてTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)又はグリシンアミド(HNCHC(O)NH)、R−COOHとして酢酸、R−CHOとしてアセトアルデヒド、及びR−NCとしてtert−ブチルイソニトリル、イソシアノ酢酸エチルエステル(C≡NCHC(O)OEt)又はイソシアノプロピオン酸エチルエステル(C≡NCHCHCOEt)が含まれる。後者のイソニトリルは、1当量のβ−アラニンを各生成物コンジュゲート中に組み込むので、得られたコンジュゲートの特徴付けに有利である。標準的なアミノ酸分析を使用して、こうして形成された結合の数を決定することができる。
【0085】
立体の考慮事項は、コンジュゲート化のために成分を選択する際に考慮すべきである。従って、大きい分子及び/又はポリマーが使用される場合、或いはこれらの実体のいずれかのうち1つより多くを使用すべき場合、残りの成分は、好ましくは小さい低分子量の化合物(例えば低級アルキル誘導体)である。
【0086】
II.反応条件
これらの反応は一般に、極性有機溶媒(例えば、メタノール、トリフルオロエタノール又はDMFなど)中で実施されるが、水性媒体中で実施される4CC反応の限定的な例が文献中にある(de Nouy,2000;Vredblad,1973;Goldstein,1993)。
【0087】
反応条件は、R、R、R及びRによって示される各残基のうち正確に1つを有するコンジュゲートを生成するため、或いは(上述のように、これらの成分のうち1つより多くが多官能性である場合には)例えば成分のモル比の選択によって、選択された残基の複数の存在を有するように、調整できる。
【0088】
反応条件はまた、上述の官能基のうち1つより多くを含み得る成分(例えば、アミン官能基及びカルボン酸官能基の両方を含むタンパク質)上の選択された官能基の反応に有利であるよう調整できる。反応条件は、それぞれカルボキシル成分として過剰な低分子量カルボン酸(例えばアセテート緩衝液)及び/又はアミン成分として低分子量アミン(例えばヒドラジド)を含むことによって、タンパク質上のカルボン酸又はアミンの反応を抑制するように調整してもよい。
【0089】
タンパク質側鎖アミンの反応は、側鎖アミン(主に、約10のpKaを有するリシン側鎖)がプロトン化され、従って非反応性である4〜7のpHで反応を実施することによっても抑制できる。この場合、反応することが所望されるアミン成分は、好ましくは低pKaのアミンである。例えば、PEG−アミン成分をタンパク質(又は反応性アミノ基を有する他の生体分子)へのコンジュゲート化に使用すべき場合、PEG−アミン官能基は、タンパク質上のアミノ基よりも低いpKaを有することが好ましい。この様式で、PEGアミンは、タンパク質側鎖アミンがプロトン化されるpH範囲で、プロトン化されず、従って反応性であろう。約3のpKaを有するPEGカルバジド若しくはPEGヒドラジド、又は典型的には約4のpKaを有するPEG−芳香族アミン試薬が、この目的に適した試薬である。
【0090】
コンジュゲート化効率を増大させるために、ある場合には、アミン成分及びカルボニル成分を最初に縮合させることによって4CC反応の第1の中間体を生成し、次いでこれに、コンジュゲート化の完了のために残りの成分を添加することが有利である(以下の実施例7を参照のこと)。
【0091】
コンジュゲート化反応は、4成分のうちの1つ又は反応条件を変化させ、それによって種々の程度の分子多様性を持つ混合物を生成して、同時に又は平行反応で複数のコンジュゲートを生成するためにも使用できる。この様式で生成された種々のバイオコンジュゲートは、種々の化学的特性及び/又は生物学的特性(例えば、分子量、ポリマー含量、レセプター結合又は細胞増殖)について迅速にスクリーニングできる。例えば、これら成分のうち1つとして異なるポリマー(例えば、R−NCの種々の実施形態(式中、Rは異なるポリマーを示す))を使用することによって、1つの分子上の同じ位置に異なるポリマーが結合した複数のコンジュゲートを形成できよう。或いは、1つより多くの成分を示す特定の分子(例えば、R−Xの種々の実施形態(式中、Rはコンジュゲート化すべきポリマー又は分子であり、Xは、アミン、カルボン酸、アルデヒド若しくはケトン、及びイソニトリルから選択される複数の基を示す))を使用することによって、コンジュゲート中の異なる結合を介してポリマー及び/又は生物学的に活性な分子が結合した複数のコンジュゲートを形成できる。
【0092】
III.例示的な4成分縮合(4CC)コンジュゲート化計画
以下の表は、例示の目的のためにコンジュゲート化すべきタンパク質及びPEG分子を使用する、種々のコンジュゲート化計画の非限定的な例を示す。
表1.例示的なコンジュゲート化反応計画
【表1】

【0093】
計画1〜5において、タンパク質がカルボキシル成分であり、他の成分のうち少なくとも1つがPEG試薬であるので、このタンパク質のカルボキシル基はPEG化される。計画4及び5において、タンパク質1つ当たり2つのPEG鎖が結合される。
【0094】
アミン成分がタンパク質ではない計画1〜8の各々において、上記のように、例えば低いpH(4〜6)で操作することによって、タンパク質側鎖よりも所望のアミン成分Rの反応に有利なように、方策をとってもよい。さらに、(計画2及び4〜7のように)PEGがアミン成分である場合、低pKaのアミン(例えば、PEG−ヒドラジド、PEG−カルバジド、PEG−オキシアミン又はPEG−芳香族アミン)を使用できる。PEGがアミン成分ではない場合(即ち、計画1、3及び8)、過剰のTRIS(HNC(CHOH))のような低分子量アミンを使用でき、低pKaのアミン(例えば、グリシンアミド、アセチルヒドラジド)を過剰に提供してもよい。
【0095】
計画6〜8において、タンパク質又は糖タンパク質上の合成により誘導されたカルボニル基がPEG化される。このような計画は図2に示される。図2に示されるスキームにおいて、Rは、小さい良性の残基、標識部分又は別のPEG鎖を示し得る。上記のように、このような反応は、タンパク質上の複数のアミノ基又はカルボキシル基のランダムなPEG化と比較して、結合の部位特異性の増大を提供できるので(図2)、特に魅力的である。
【0096】
計画9〜12において、タンパク質がアミノ成分であり、他の成分のうち少なくとも1つがPEG試薬であるので、このタンパク質のアミノ基はPEG化される。計画10及び12において、タンパク質1つ当たり2つのPEG鎖が、アミノ基及びカルボキシル基を介して結合される。計画9及び10において、タンパク質上のアミノ基のみを反応させるべき場合、過剰の低分子量カルボキシル成分(例えば、示されるように酢酸)を、タンパク質上のカルボキシル基の反応を抑制するために使用してもよい。
【0097】
一実施形態において、イソニトリル成分は、示されるようにイソシアノプロピオン酸エチルエステル(C≡NCHCHC(O)OEt)である。図1に示される機構から理解できるように、この成分は、コンジュゲート中でβ−アラニン部分(−NHCHCHCOEt)に変換され、これはコンジュゲート化タンパク質生成物のアミノ酸分析によって検出できる。このような分析は、コンジュゲートの組成を決定する及び/又はコンジュゲート化生成物の形成の完了を探索する、簡便な手段を提供する(実施例5、7、10及び11を参照のこと)。
【実施例】
【0098】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するのであって、限定する意図はない。
【0099】
実施例1〜4は、親水性ポリマー(これらの実施例ではPEGで例示される)のようなコンジュゲート化反応の各成分を調製するための例示的手順を示す。
【0100】
実施例5〜16は、上記表1中に概説したような例示的コンジュゲート化プロトコルを示す。これらの各々は、生体分子の親水性ポリマー(これらの実施例ではPEGで例示される)とのコンジュゲートを提供するワンポット手順である。実施例16は、特定の成分の複数の残基を組み込むコンジュゲートを示す。
【0101】
実施例中の生体分子には、ラミニン由来の合成接着ペプチド、ウシ血清アルブミン(BSA)、エリスロポエチン(EPO)及びヒアルロン酸(HA)、結合組織障害の治療に使用されるグリコサミノグリカンが含まれる。
【0102】
(実施例1)
PEG−イソシアニド(イソニトリル)誘導体の調製
分子量2000DaのmPEG(mPEG2K)について以下に記載される、mPEG−OHのmPEG−イソニトリルへの変換のための一般的な手順は、他の分子量のPEGにも等しく適用可能である。
【0103】
A.mPEG2K−NHCHSO(mPEGアンモニウムメシレート)の調製
mPEG2Kメシレート(Harris et al.,J.Polym.Sci.Polym.Chem.Ed.22:341(1984))(20g,9.62mmol)を、プラスチックボトル中で水酸化アンモニウム水溶液(200ml)中に溶解し、60℃で48時間攪拌した。この溶液を室温まで冷却し、蒸発によりこの混合物からアンモニアを除去した。残渣を24時間凍結乾燥し、イソプロパノールを使用して再結晶化した。得られた生成物を、Pで減圧乾燥した。アンモニウム塩の収率は91%(18.43g)であった。
【化2】

【0104】
B.mPEG2K−NH−CHO(mPEGホルムアミド)の調製
上記のように調製したmPEG2Kアンモニウムメシレート(0.5g、0.238mmol)を、60℃でギ酸エチル(10ml)中に溶解させた。この溶液にトリエチルアミン(0.133ml、0.954mmol)を添加し、この反応混合物を60℃で24時間加熱し、その後TLCにより反応の完了が示された。過剰のギ酸エチルを蒸発によって除去し、残渣をイソプロパノール沈殿によって精製した。この生成物をPで減圧乾燥した。収率は88%(0.425g)であった。
【化3】

【0105】
C.mPEG2K−NC(mPEGイソニトリル)の調製
上記のように調製したmPEG2K−ホルムアミド(0.2g、0.1mmol)を、ジクロロメタン(2ml)中に溶解させ、0℃に冷却した。この溶液に、四塩化炭素(38μL、0.3944mmol)及びトリエチルアミン(137μL、0.986mmol)を添加し、この溶液を0℃で5分間窒素下で攪拌した。次いで、トリブチルホスフィン(98.26μL、0.3944mmol)を0℃で添加した。この反応混合物を室温で24時間攪拌し、その間に、この反応混合物は暗褐色になった。溶媒を蒸発させ、生成物をイソプロパノール沈殿で精製した。収率は88%(0.175g)であった。IR(ニート):2150(NC)、
【化4】

【0106】
mPEG−シクロヘキシルイソシアニドを調製するために、E.Ranucci and P.Ferrutti(Synth.Commun.20:2951(1990))の文献手順に従って、mPEG−OHをカルボニルジイミダゾールで最初に活性化し、次いで過剰の1,4−ジアミノシクロヘキサンと反応させた。得られたmPEG−シクロヘキシルアミンを、mPEG−アンモニウムメシレートについて上記したのと類似の様式で、イソシアニドに変換した。
【0107】
(実施例2)
PEG−アルデヒド誘導体の調製
mPEG−アセトアルデヒドの誘導体を、文献手順(例えば、Llanos and Sefton,Macromolecules 24:6065(1991);S.M.Chamow et al.,Bioconjugate Chem.5:133(1994))によって調製した。
【0108】
芳香族アルデヒドmPEG−NHC(O)−C−CHOを、mPEG−アミンの4−カルボキシベンズアルデヒドとの反応によって調製した。
【0109】
PEG−プロピオンアルデヒド誘導体は、Nektar Therapeutics、NOF Corporation又はSunBio Corporationから購入した。
【0110】
(実施例3)
PEG−アミノ誘導体の調製
PEG−アミノ誘導体は、種々の文献のプロトコル(S.Zalipsky(1995b)で検討された)に従って調製した。例えば、PEG−ヒドラジドは、Zalipsky et al.のWO92/16555(1992)に記載されたように調製した。PEG−カルバジドは、Zalipsky & Menon−Rudolph(1997)に記載されたように調製した。グリシンエステル誘導体は、Zalipsky et al.,J.Macromol.Sci.Chem.A21:839(1984)に記載されたように調製した。芳香族アミン誘導体は、D.Rozzell,Meth.Enzymol.136:479(1987);A.Pollak and G.M.Whitesides,J.Amer.Chem.Soc.98:289(1976)又はM.Weber and R.Staddler,Polymer 29:1064(1988)に記載されたように調製した。
【0111】
(実施例4)
PEG−カルボキシル誘導体の調製
PEG−カルボキシル誘導体は、S.Zalipsky(1995b)で検討されたような文献プロトコルに従って調製したか、市場供給者(Nektar Therapeutics、NOF Corporation又はSunBio Corporation)から入手した。
【0112】
(実施例5)
=mPEG5K、R=CH、R=CHCHCOEt及びR=BSAを利用した、PEG−BSAの調製(計画2、表1を参照のこと)
この反応において、PEGを、カルボキシル成分として使用するウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲート化する。低pKaのアミン成分(mPEG20K−カルバジド)を、このタンパク質中のアミノ側鎖よりもアミン成分の反応に有利なように、pH5で使用する。
【0113】
pH5に調整したMES緩衝液(25mM)中のウシ血清アルブミン溶液(1mg/ml、2ml)を、約20倍モル過剰のmPEG5K−カルバジド(235mg)、アセトアルデヒド(アセトニトリル中1M、50μl)及び最後にイソシアノプロピオン酸エチルエステル(アセトニトリル中1M、50μl)で処理する。得られた溶液を一晩攪拌し、次いで透析し、イオン交換クロマトグラフィーでさらに精製する。生成物をSDS−PAGE、MS及びアミノ酸分析で特徴付ける。
【0114】
(実施例6)
=mPEG5K、R=CH、R=CHCOEt及びR=HAを利用した、PEG−グラフト化ヒアルロン酸(HA)の調製(計画4、表1と類似)
この反応において、PEGを、カルボキシル成分として使用するカルボキシル化多糖であるヒアルロン酸(HA)にコンジュゲート化する。
【0115】
ヒアルロン酸ナトリウム(Genzyme,Cambridge,MA、6mg、15μmolのカルボキシル)を、水(1.5ml)中に溶解させ、HClでpH4.5に酸性化する。この溶液にmPEG5K−カルバジド(25mg、5μmol)を添加し、その後、アセトアルデヒド及びイソシアノ酢酸エチルエステル(0.1M、50μl、各々5μmol)のアセトニトリル溶液を添加する。この反応混合物を一晩攪拌し、次いで、蒸留水に対して十分に透析する(MWCO 100kDa)。PEG含量は、それぞれ2.0ppm及び3.7ppmでの、HA及びPEGのアセトアミドシグナル及びオキシエチレンシグナルのH−NMR積分によって決定する。
【0116】
(実施例7)
=mPEG5K、R=mPEG5K、R=CHCHCOEt及びR=BSAを利用した、PEG−BSAの調製(計画4、表1を参照のこと)
この反応において、2分子のPEGを、カルボキシル成分として使用するウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲート化する。低pKaのアミン成分(mPEG20K−カルバジド)を、このタンパク質中のアミノ側鎖よりもアミン成分の反応に有利なように、pH5で使用する。
【0117】
それぞれカルバジド末端基及びアルデヒド末端基を有するmPEG5Kの2つの誘導体(各々250mg=50μmol)を、アセトニトリル溶液(2ml)中で縮合させて、4成分縮合反応中の第1の中間体である(mPEG)−カルバゾンを形成させる。溶媒を蒸発によって除去し、pH5に調整したMES緩衝液(25mM)中のウシ血清アルブミン溶液(BSA、1mg/ml、2ml)を添加し、次にイソシアノプロピオン酸エチルエステル(アセトニトリル中1M、50μl)を添加する。この反応溶液を一晩攪拌し、生成物を透析し、次いでイオン交換クロマトグラフィーでさらに精製する。生成物をSDS−PAGE、MS及びアミノ酸分析で特徴付ける。
【0118】
(実施例8)
=mPEG5K、R=CH、R=mPEG5K及びR=BSAを利用した、PEG−BSAの調製(計画5、表1と類似)
この反応において、2分子のPEGを、カルボキシル成分として使用するウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲート化する。低pKaのアミン成分(mPEG20K−カルバジド)を、このタンパク質中のアミノ側鎖よりもアミン成分の反応に有利なように、pH5で使用する。
【0119】
pH5に調整したMES緩衝液(25mM)中のウシ血清アルブミン溶液(1mg/ml、2ml)を、約20倍モル過剰のmPEG5K−カルバジド(235mg)、アセトアルデヒド(アセトニトリル中1M溶液、50μl)及び最後にmPEG5K−NC(250mg)で処理する。得られた溶液を一晩攪拌し、次いで透析し、イオン交換クロマトグラフィーでさらに精製する。生成物をSDS−PAGE及びMSで特徴付ける。
【0120】
(実施例9)
=mPEG5K、R=CH、R=mPEG5K及びR=HAを利用した、PEG−グラフト化HAの調製(計画5、表1を参照のこと)
この反応において、2分子のPEGを、カルボキシル成分として使用するカルボキシル化多糖であるヒアルロン酸(HA)にコンジュゲート化する。
【0121】
HAナトリウム塩(6mg、15μmolのカルボキシル)を水(1.5ml)中に溶解させ、HClでpH4.5に酸性化する。この溶液にmPEG5K−カルバジド(25mg、5μmol)を添加し、その後、アセトアルデヒドのANアセトニトリル溶液(0.1M、50μl、5μmol)、及び最後にmPEG5K−イソニトリル(30mg)を添加する。この反応混合物を一晩攪拌し、次いで、蒸留水に対して透析する。PEG含量は、それぞれ2.0ppm及び3.7ppmでの、HA及びPEGのアセトアミドシグナル及びオキシエチレンシグナルのH−NMR積分によって決定する。
【0122】
(実施例10)
=mPEG20K、R=YIGSR−NH、R=CHCHCOEt及びR=CHを利用した、mPEG−YIGSR−NHコンジュゲートの調製(計画6、表1を参照のこと)
この反応において、mPEGを、そのN末端でアルデヒド基で誘導体化されたYIGSR(ラミニン由来の合成接着ペプチド)にコンジュゲート化する。
【0123】
ホスフェート緩衝液(10mM、pH7)中のペプチドTYIGSR−NH(5mM、0.450ml)を、水中過ヨウ素酸ナトリウムの新たな溶液(100mM、50μl)で暗中で4℃で5分間処理し、亜硫酸ナトリウム(200mM、50μl)でクエンチする。得られた溶液を、アセテート緩衝液(0.5M、1ml、pH4.5)中のmPEG20K−カルバジド(0.45g、22μmol)溶液と混合する。アセトニトリル中のイソシアノプロピオン酸エチルエステル(C≡NCHCHCOEt)(250mM、0.1ml、25μmol)を添加し、得られた溶液を室温で一晩インキュベートする。生成物を、透析とその後のイオン交換クロマトグラフィーによって精製し、MSで特徴付ける。N末端コンジュゲート化を、配列決定及びアミノ酸分析によって確認する。
【0124】
(実施例11)
=mPEG20K、R=EPOのグリカン、R=CHCHCOEt及びR=CHを利用した、PEG−EPOの調製(計画6、表1を参照のこと)
この反応において、mPEGを、過ヨウ素酸塩で処理して分子のグリカン部分中にカルボニル官能基を生成したEPO(エリスロポエチン)にコンジュゲート化する。このタンパク質中のアミノ側鎖よりもアミン成分の反応に有利なように、低pKaのアミン成分(mPEG20K−カルバジド)を使用する。
【0125】
酢酸ナトリウム緩衝液(0.2M、pH5.0)中のエリスロポエチン溶液(EPREX(登録商標)、0.76ml、1mg)を、過ヨウ素酸ナトリウム(80mM、40μl)で暗中で4℃で10分間処理する。過剰な過ヨウ素酸塩を亜硫酸ナトリウム(300mM、20μl)でクエンチする。mPEG20K−カルバジド(20mg、1μmol)を添加し、その後アセトニトリル中のイソシアノプロピオン酸エチルエステル(20mM、50μl、1μmol)を添加する。得られたコンジュゲート化混合物を室温で24時間インキュベートする。このコンジュゲートをイオン交換クロマトグラフィーによって精製し、MS、アミノ酸分析及びSDS−PAGEで特徴付ける。グリカン特異的なコンジュゲート化を、オリゴ糖含量の決定によって確認する。
【0126】
(実施例12)
=mPEG5K、R=YIGSR−NH、R=mPEG5K及びR=CHを利用した、mPEG−YIGSR−NHコンジュゲートの調製(計画7、表1を参照のこと)
この反応において、2分子のmPEGを、そのN末端でアルデヒド基で誘導体化されたYIGSR(ラミニン由来の合成接着ペプチド)にコンジュゲート化する。
【0127】
ホスフェート緩衝液(10mM、pH7)中のペプチドTYIGSR−NH(5mM、0.450ml)を、水中過ヨウ素酸ナトリウムの新たな溶液(100mM、50μl)で暗中で4℃で10分間処理し、亜硫酸ナトリウム(200mM、50μl)でクエンチする。得られた溶液を、アセテート緩衝液(0.5M、1ml、pH4.5)中のmPEG5K−カルバジド(110mg、22μmol)溶液と混合する。実施例1に記載したように調製したPEG−イソニトリル誘導体(mPEG5K−NC、125mg、25μmol)を添加し、得られた溶液を室温で一晩インキュベートする。生成物を、透析とその後のイオン交換クロマトグラフィーによって精製し、MSで特徴付ける。N末端コンジュゲート化を、配列決定及びアミノ酸分析によって確認する。
【0128】
(実施例13)
=mPEG5K、R=EPOグリカン、R=mPEG5K及びR=CHを利用した、PEG−EPOの調製(計画7、表1を参照のこと)
この反応において、2分子のmPEGを、過ヨウ素酸塩で処理して分子のグリカン部分中にアルデヒド官能基を生成したEPO(エリスロポエチン)にコンジュゲート化する。上記のように、このタンパク質中のアミノ側鎖よりもアミン成分の反応に有利なように、低pKaのアミン成分(mPEG20K−カルバジド)を使用する。
【0129】
酢酸ナトリウム緩衝液(0.2M、pH5.0)中のエリスロポエチン溶液(EPREX(登録商標)、0.76ml、1mg)を、過ヨウ素酸ナトリウム(80mM、40μl)で暗中で4℃で10分間処理する。過剰な過ヨウ素酸塩を亜硫酸ナトリウム(300mM、20μl)でクエンチする。mPEG5K−カルバジド(100mg、1μmol)を添加し、その後mPEG5K−イソニトリル(100mg、1μmol)を添加する。得られたコンジュゲート化混合物を室温で24時間インキュベートする。このコンジュゲートをイオン交換クロマトグラフィーによって精製し、MS及びSDS−PAGEで特徴付ける。グリカン特異的なコンジュゲート化を、オリゴ糖含量の決定によって確認する。
【0130】
(実施例14)
=CH、R=H、R=mPEG5K及びR=BSAを利用した、PEG−BSAの調製(計画1、表1と類似)
この反応において、PEGを、カルボキシル成分として使用したウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲート化した。過剰の低分子量アミン成分(メチルアミン)を、このタンパク質中のアミノ側鎖よりもアミン成分の反応に有利なように、pH4.5で使用した。
【0131】
具体的には、6mgのBSA(0.09μmol)を、860μlのHO中に溶解させ、pHを0.25M HCl(約5μl)で4.5に調整した。ホルムアルデヒド(9μmol、100倍過剰)及びメチルアミン(9μmol、100倍過剰)を添加し、その後mPEG5KN≡C(5mg、1μmol、11.11倍過剰)を添加した。
【0132】
合計6個の25μlサンプルを、5分、10分、1時間、4時間、7.5時間及び24時間で採取し、各々を即座に230μlの2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5、BSAよりも約2×10倍過剰)に添加して、反応を停止させた。
【0133】
これらの段階の各々での生成物の組成を、SDS−PAGEで特徴付けた。PEG−タンパク質コンジュゲート生成物の量は時間と共に増大し、本質的に全ての出発BSAが、7.5時間の時点までに消費された。
【0134】
(実施例15)
=CH、R=H、R=mPEG5K及びR=リゾチームを利用した、PEG−リゾチームの調製(計画1、表1と類似)
この反応において、PEGを、カルボキシル成分として使用したリゾチームにコンジュゲート化した。過剰の低分子量アミン成分(メチルアミン)を、このタンパク質中のアミノ側鎖よりもアミン成分の反応に有利なように、pH4.5で使用した。
【0135】
具体的には、1.4mgのリゾチーム(0.09μmol)を、860μlのHO中に溶解させ、pHを0.25M HCl(約5μl)で4.5に調整した。ホルムアルデヒド(9μmol、100倍過剰)及びメチルアミン(9μmol、100倍過剰)を添加し、その後mPEG5KN≡C(5mg、1μmol、11.11倍過剰)を添加した。
【0136】
合計6個の25μlサンプルを、5分、10分、1時間、4時間、7.5時間及び24時間で採取し、各々を即座に230μlの2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5、BSAよりも約2×10倍過剰)に添加して、反応を停止させた。
【0137】
2つのさらなる反応を実行し、1つは3.1mg(0.2μmol)のリゾチームを使用し、他方は7.74mg(0.5μmol)のリゾチームを使用した。他の試薬の量及び反応条件は変更しなかった。
【0138】
これらのサンプルを、7000 MWCO Mini透析ユニット(Slide−A−Lyzer(登録商標)、50ユニット)で、PBS(4L、pH7.4)に対して4℃で一晩透析することによって精製した。各サンプルの生成物の組成を、SDS−PAGEで特徴付けた。
【0139】
PEG−タンパク質コンジュゲート生成物の量は各反応において時間と共に増大したが、タンパク質のなかには24時間でも未反応のままのものがあり、タンパク質のダイマー及びトリマーのいくらかの形成の証拠があった。
【0140】
(実施例16)
PEG−PPO−ヒアルロン酸コンジュゲートの調製:R=PPO、R=H、R=mPEG2K及びR=ヒアルロン酸(計画5、表1と類似)
【化5】

【0141】
(a)水(6ml)をヒアルロン酸ナトリウム(32mg、0.08mmol)に添加し、この溶液を透明になるまで室温で攪拌した(約30分間)。ホルムアルデヒド(6μl、0.08mmol、HO中37%)をこの溶液に添加し、次いでMeOH(12ml)中のアミノ−官能化ポリプロピレンオキシド(PPO−C−CH(CH)−NH、150mg、0.08mmol)を添加した。得られた溶液を、2N HCl(約36μl)で僅かに酸性化して、3〜3.5のpHとした。mPEGイソニトリル(mPEG2000−NC、168.08mg、0.08mmol)を添加し、この反応混合物を室温で50時間攪拌し、淡褐色の透明な溶液を得、次いでこれを凍結乾燥した。ゲル様の残渣をCHClで抽出して未反応のPPO及びPEGを除去し、生成物を濾過し、Pで減圧乾燥した。収率:36mg(10%)。
【化6】

【0142】
分析により、PPO/PEG1つ当たり約16〜17個のHA反復単位(即ち、上記構造中のm+nは約16〜17と等しい)を有するコンジュゲートが示された。従って、このコンジュゲートにおいて、複数の残基R、R及びRが、ヒアルロン酸ポリマーによって示されるRにコンジュゲート化されている(上記構造の描写は、PPO/PEG部分がHAポリマー鎖に沿って均等に分布していることを含意する意味では必ずしもない)。
【0143】
類似の反応を、以下のように、反応条件を変動させて実施した。
【0144】
(b)より短い期間(24時間)攪拌した以外は、上記反応条件を反復して、PPO/PEG部分1つ当たり約21〜25個のHA反復単位を有するコンジュゲート(28mg)を生成した。
【0145】
(c)さらなる反応において、pHをより高い値(4〜4.5)に調整したこと以外は(a)の元の条件に従った。この反応により、PPO/PEG部分1つ当たり約10〜11個のHA反復単位を有するコンジュゲート(18mg)を生成した。
【0146】
(d)さらなる反応において、アミノ−官能化ポリプロピレンオキシド(PPO−NH)及びホルムアルデヒドを最初に合わせ、2時間攪拌し、その後ヒアルロン酸ナトリウムを添加した。次いで、この反応は、上記(a)の元の反応条件で記載されたとおりに進行した。この反応により、PPO/PEG部分1つ当たり約11〜14個のHA反復単位を有するコンジュゲート(33mg)を生成した。
【0147】
(e)最後に、pHをより高い値(4〜4.5)に調整したこと以外は(d)の条件に従った。この反応により、PPO/PEG部分1つ当たり約1〜2個のHA反復単位を有するコンジュゲート(71.6mg)を生成した。
【0148】
上記結果により、より高いpHでの反応が、PPO/PEGのHAポリマーへのより高いレベルのコンジュゲート化を生じる傾向が示される。HA及びPEG−イソニトリルの添加前のアミン成分及びアルデヒド成分の前反応は、類似ではあるがそれほど顕著ではない影響を有した。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本明細書中にその特定の実施形態が記載された、4成分縮合反応の一般的に受容された機構を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に従う、アセテート緩衝液中で実施した(即ちR=CH)、ポリペプチド上の部位特異的に生成されたカルボニル基へのPEGの結合を示すコンジュゲート化スキームを示す図である。この場合Rは、例えば別のPAO鎖、標識又は小さい良性の残基であり得よう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質又はポリペプチドの水溶性ポリマーとのコンジュゲートを調製する方法であって、
以下の成分(a)〜(d):
(a)R−C(O)R’、(式中R’はH又は低級アルキルである)、
(b)R−NH
(c)R−C(O)OH、及び
(d)R−NC
を反応させて、R、R、R及びRによって示される各部分のうち少なくとも1つを組み込むコンジュゲート化生成物を形成するステップを含み、
(a)〜(c)のうち少なくとも1つはタンパク質又はポリペプチドであり、(a)〜(d)のうち少なくとも1つは水溶性ポリマーであり、(a)〜(d)の任意の残りの成分は安定な非妨害性の化合物である方法。
【請求項2】
前記コンジュゲート化生成物が、RNH−C(O)−R’R−NR−C(O)R形態のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質又はポリペプチドが、(a)R−C(O)R’、(b)R−NH及び(c)R−C(O)OHから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質又はポリペプチドが(a)R−C(O)R’である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーが、(a)R−C(O)R’、(b)R−NH及び(c)R−COOHから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーがR−NCである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーが官能化ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーがPEGイソニトリル化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質又はポリペプチドが、(a)〜(c)から選択される少なくとも1つの成分によって示され、前記ポリマーが、(a)〜(d)から選択される少なくとも1つの異なる成分によって示され、(a)〜(d)の任意の残りの成分が、標識部分、標的化部分及び他の安定な非妨害性の化合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記タンパク質又はポリペプチドが、(a)〜(c)から選択される1つの成分であり、前記ポリマーが、(a)〜(d)から選択される異なる成分であり、(a)〜(d)の残りの成分が、安定な非妨害性の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
成分(a)〜(d)のうち少なくとも1つが複数の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記タンパク質又はポリペプチドが、(a)〜(c)から選択される1つの成分であり、前記ポリマーが、(a)〜(d)から選択される2つの異なる成分であり、残りの成分が、安定な非妨害性の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
医薬的ビヒクル中に生物学的に活性な分子の生体適合性ポリマーとのコンジュゲートを含む医薬組成物を調製する方法であって、
(i)以下の成分(a)〜(d):
(a)R−C(O)R’、(式中R’はH又は低級アルキルである)、
(b)R−NH
(c)R−C(O)OH、及び
(d)R−NC
を反応させて、R、R、R及びRによって示される各部分のうち少なくとも1つを組み込むコンジュゲート化生成物を形成するステップであって、
と称される成分(a)〜(d)のうち少なくとも1つが生物学的に活性な分子であり、Rと称される成分(a)〜(d)のうち少なくとも1つが生体適合性ポリマーであり、任意の残りの成分(a)〜(d)が安定な非妨害性の化合物であるステップと、
(ii)前記コンジュゲート又はその医薬的に許容可能な塩を、医薬的ビヒクル中で製剤化するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記コンジュゲートが、RNH−C(O)−CRR’−NR−C(O)R形態のものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生物学的に活性な分子が、(a)R−C(O)R’、(b)R−NH及び(c)R−C(O)OHから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的に活性な分子がR−C(O)R’である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーが水溶性である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーが(d)R−NCである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーが官能化ポリアルキレンオキシド(PAO)である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーがイソニトリル官能化ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマーが、利用可能なカルボニル官能基又はアミン官能基を有するポリエチレングリコール(PEG)である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記分子が、(a)〜(d)から選択される少なくとも1つの成分によって示され、前記ポリマーが、(a)〜(d)から選択される少なくとも1つの異なる成分によって示され、(a)〜(d)の任意の残りの成分が、標識部分、標的化部分及び他の安定な非妨害性の化合物から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記分子が(a)〜(d)から選択される1つの成分であり、前記ポリマーが(a)〜(d)から選択される異なる成分であり、(a)〜(d)の残りの成分が安定な非妨害性の化合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記ビヒクルが水性ビヒクルである、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
NH−C(O)−CHR−NR−C(O)R形態の水溶性コンジュゲートであって、
、R及びRのうち少なくとも1つがタンパク質又はポリペプチドであり、
、R、R及びRのうち少なくとも1つがポリアルキレンオキシド(PAO)であり、
、R、R及びRの残りのメンバーが、標識部分、標的化部分及びRから独立して選択され、Rは、水素、又は1〜8個の炭素原子並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される0〜4個のヘテロ原子を有する安定な有機部分である水溶性コンジュゲート。
【請求項26】
、R、R及びRの残りのメンバーが独立してRの実施形態であり、Rは水素ではない、請求項25に記載のコンジュゲート。
【請求項27】
がPEGである、請求項25に記載のコンジュゲート。
【請求項28】
がタンパク質であり、RがPEGであり、R及びRが、標識部分、標的化部分及びRから独立して選択される、請求項25に記載のコンジュゲート。
【請求項29】
がタンパク質であり、RがPEGであり、R及びRが、標識部分、標的化部分及びRから独立して選択され、Rは水素ではない、請求項25に記載のコンジュゲート。
【請求項30】
がタンパク質であり、R及びRの各々がPEGであり、Rが、標識部分、標的化部分又はRであり、Rは水素ではない、請求項25に記載のコンジュゲート。
【請求項31】
がタンパク質であり、RがPEGであり、RがPEGであり、Rが、標識部分、標的化部分又はRである、請求項25に記載のコンジュゲート。
【請求項32】
がタンパク質であり、RがPEGであり、R及びRが、標識部分、標的化部分及びRから独立して選択され、Rは水素ではない、請求項25に記載のコンジュゲート。
【請求項33】
がタンパク質であり、RがPEGであり、RがPEGであり、Rが、標識部分、標的化部分又はRである、請求項25に記載のコンジュゲート。
【請求項34】
構造RCAP(OCHR”CH−X−N≡Cを有する化合物であって、式中、RCAPは安定な末端キャッピング基であり、Xは直接結合又は安定な連結部分を示し、R”はH又はメチルであり、nは10と約2300との間の整数である化合物。
【請求項35】
CAPがアルキル、アシル又はアリールである、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
CAPがメチルである、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
R”がHである、請求項34に記載の化合物。
【請求項38】
部分−(OCHCH−が、約5000ダルトンの分子量を有する、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
部分−(OCHCH−が、約20000ダルトンの分子量を有する、請求項37に記載の化合物。
【請求項40】
Xが、直鎖又は分枝鎖アルキル、アリール、シクロアルキル、エーテル、アミド及びそれらの組み合わせから選択される連結からなる、請求項34に記載の化合物。
【請求項41】
Xが、低級アルキル、シクロアルキル、アリール、並びに低級アルキル及びアリール又は低級アルキル及びシクロアルキルの組み合わせから選択される連結からなる、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
Xがシクロヘキシルである、請求項41に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−502788(P2008−502788A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527690(P2007−527690)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/020138
【国際公開番号】WO2005/123140
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506353677)アルザ コーポレイション (23)
【Fターム(参考)】